ロッキード・マーチンがロケットエンジンメーカーのエアロジェット・ロケットダインを約4550億円で買収

米国最大の防衛関連企業であるLockheed Martin(ロッキード・マーチン、LM)は、ロケットエンジンとミサイルメーカーのAerojet Rocketdyne(エアロジェット・ロケットダイン、AR)を負債と純現金を含めて44億ドル(約4550億円)で買収し、宇宙と超音速分野へと注力する。この動きは、宇宙・防衛産業における競争の激化の中で起きた。

LMはプレスリリースの中で、今回の買収によって同社のポートフォリオに推進システムに関する専門知識が加わり、ARの技術はすでにLMのサプライチェーンの 「重要なコンポーネント」 になっていると述べた。同社はすでに、ARの推進システムを航空、ミサイル、射撃管制に利用している。

ARの2019年の売上は約20億ドル(約2070億円)だった。同社はカリフォルニア州エルセグンドに本社を置き、5000人近い従業員を抱え、2013年にGenCorpのAerojetとPratt & Whitney Rocketdyneが合併して設立された。同社は国防総省向けに固体ロケットモーターのほか、戦術・戦略ミサイルを製造している。

ARはUnited Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス、ULA)のDelta 4とAtlas 5ロケットの上段に搭載されるRL10ロケットエンジンを製造しており、NASAのSpace Launch System用のRS-25エンジンも製造している。

LMの今回の動きは、SpaceX(スペースX)やBlue Origin(ブルーオリジン)などの新規参入企業に対抗して推進技術を強化し、米国政府との宇宙契約を獲得するためのものだ。一方でライバルのRaytheonは米航空宇宙・防衛大手のUnited Technologiesとの合併を準備している。

LMのJames Taiclet(ジェームズ・タイクレット)CEO は声明で、「ARの買収により、国内の防衛産業の基盤における重要な要素が維持・強化され、当社の顧客と納税者のコストが削減されます」と述べた。

ARのEileen Drake(アイリーン・ドレイク)CEOは「LMの一員として、私たちは米国の防衛と宇宙探査を可能にするという共通の目的を加速させるために、同社の豊富な専門知識と資源と私たちの高度な技術を集結します」と述べた。

買収は2021年後半に完了する見込みだが、規制当局やARの株主による承認プロセスが必要となる。

カテゴリー:宇宙
タグ:Lockheed MartinAerojet Rocketdyne買収

画像クレジット:NASA

原文へ

(翻訳:塚本直樹 / Twitter

2020年春の破産申請を乗り越えて通信衛星企業OneWebが36基の衛星をロシアで打ち上げ

積極的な打ち上げへの復帰において衛星コンステレーションオペレーターのOneWebは、軌道上の既存の宇宙船群に加えるため36個の新しい衛星を送り出した。2019年に6機、2020年の2、3月にそれぞれ34機の人工衛星を打ち上げ後における3回目となる同社の大規模打ち上げだった。前回の打ち上げ後、OneWebは財政難に陥り2020年3月に破産保護を申請したが、英国とBharti Globalが一部資金提供する契約のおかげで7月に破産から脱却した。これがOneWebにとってのこの1年間だ。

米国時間12月18日の打ち上げは、ボストチヌイ宇宙基地で行われ、ロシアのソユーズ2.1 bロケットが使用された。これはボストチヌイ宇宙基地で行われた最初の商業打ち上げになるが(以前、ロシアの国営宇宙開発企業Roscosmosが行っていた商業打ち上げはバイコヌール宇宙基地で行われていた)、OneWebの目標軌道との相対的な位置関係のため、34機ではなく36機の衛星を打ち上げることができた。

OneWebは、地球を拠点とするネットワークで使用するための広帯域接続を提供する低軌道衛星群を構築している。最終的には648基の衛星を軌道上に乗せることを目指しており、2022年までの目標達成に向けて打ち上げペースの加速を図り、顧客にグローバルなネットワークを提供できるようとしている。

OneWebが提供するサービスから収益を得られるようになるためには、運用を開始することが鍵となる。

同社はまた、SpaceX(スペースX)とAmazon(アマゾン)の両社が構築している資本力のある大規模なLEOネットワークとも競合している。しかし、先週行われた「TC Sessions:Space」で聞いたところによると、世界規模での高品質な接続性に対する需要には事欠かないため、LEOブロードバンド市場ではAmazonのDave Limpをはじめ複数の勝者が存在する余地は十分にあるという。

OneWebは英国とBharti Globalの提携で倒産から抜け出したが、、Bhartiのファウンダーで会長であるSunil Mittal(スニル・ミタル)氏は先週初め(SpaceNews記事)に、同社のコンステレーションを終えるためには総額25億ドル(約2580億円)を調達する必要があるだろうと述べている(その半分は英国とBhartiコンソーシアムから提供される)。

関連記事
倒産から再起したブロードバンド通信衛星企業OneWebが12月17日に打ち上げ再開
ソフトバンクが投資を止め破産申請中の通信衛星OneWebを英政府とインドのBharti Globalが買収し再建へ

カテゴリー:宇宙
タグ:OneWeb

画像クレジット:OneWeb

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

2021年には軌道上での燃料補給や製造が理論から現実へ変わる

軌道上を周回中の人工衛星や宇宙船に燃料補給したり、修理したり、さらには新しい機能を追加するというアイデアは、一般的には「理論としては素晴らしい」ものとされてきた。しかし、Maxar Technologies(マクサー・テクノロジーズ)、Astroscale(アストロスケール)、Orbit Fab(オービット・ファブ)のリーダーは、TechCrunch主催のTC Sessions: Spaceにて、2021年はそれが現実になる年だと語った。少なくとも現実的にはなるという。

ひとたび軌道に打ち上げられた衛星は、通常は減価償却する一方の固定資産とみなされる。次第に時代遅れとなり、やがて燃料が尽きれば軌道を外れる運命にある。だが、少し調整してやれば、いろいろなかたちで、桁外れに高価な宇宙船の寿命を延ばすことができる。新しい衛星を打ち上げるコストを思うと、そうしたビジョンが魅力的に見えてくる。

「打ち上げコストは下がり、同時に打ち上げ頻度、つまり宇宙に物を送り届けるケイデンスが高まっています」とMaxar Technologiesのロボティクス担当ジェネラルマネージャーLucy Condakchian(ルーシー・コンダクチェイン)氏は指摘した。「なので、小さな部品や、小さなペイロードや、その他もろもろのものが打ち上げられるようになれば、宇宙で物を組み立てることが可能になります。衛星の役割を変更することもできるでしょう。実際に動力システムの交換、カメラ装置やコンピューター関連要素の交換など、どんなことも、上に行ってやればいいのです」。

それこそが、MaxarとNASAが来年、これまでRestore-L(レストアエル)と呼ばれていたOSAM-1(オザムワン)で実証実験を進めようとしていることだ。この宇宙船は、軌道上でアイテムの保守、組み立て、製造を行う。ちなみにOSAMという名称は、Orbit(軌道)、Service(保守)、Assemble(組み立て)、Manufacture(製造)の頭字語だ。

「私たちに何ができるのかを宇宙で実証できれば、『はい、できますよ』という段階に達して、その道のずっと先にある好機の展開が期待できるようになります」とコンダクチェイン氏。同社の火星着陸専用ロボットアームは汎用性が実証されているので、その衛星用アームも幅広く活躍できると考えて差し支えないだろう。

Maxarは将来の宇宙船への機能の追加を目指しているが、それに対してAstroscale US(日本企業エアロスケールの米国法人)の社長Ron Lopez(ロン・ロペス)氏は、今の老朽化した宇宙インフラに期待を寄せている。

「軌道上での点検サービスを開発している企業はたくさんあります。それは、すでに軌道上を巡っているが、そうしたロボティック機能を持たない、あるいは将来、衛星のオーナーや運用者が軌道に留まらせるか否か判断する際に、そのようなロボティック機能を追加できる予算がない衛星を対象としています」と彼は説明する。

「この能力には、さまざまな使用事例があります」と彼は続けた。「例えば、衛星に異常が発生して保険を請求するときは、何が起きたのか、そして宇宙の状況をしっかり見極める必要があります。宇宙を飛び交う物体の増加が、みなさんの大きな懸念要素になっていることも、私たちはもちろん認識しています。何がどこで、何をしているのか、またそれが宇宙の他のオブジェクトに危険を及ぼさないかどうかを把握することが、非常に重要です」

シリーズE投資で5100万ドル(約53億円)を調達したAeroscaleは、数カ月以内に、軌道上の宇宙ゴミ(スペースデブリ)を検知して除去する実証実験ミッションを開始する。ゴミと言っても、ISSの船外活動で落とした予備のネジみたいなものではなく、軌道上に放置され、仕事もなく漂い続けている運用を終えた衛星などだ。それは何年間も宇宙に居座る。それらは、ちょっと押してやりさえすればよい。それで地球低軌道は、安全できれいになる。

Orbit FabのCEOで創業者のDaniel Faber(ダニエル・ファーバー)氏は、そもそもそうした状況に陥らないよう「宇宙のガソリンステーション」と彼が呼ぶものを構築しようとしている。ガソリンスタンドと言っても、地上にあるものとは少し違う。むしろ、ジェット機に燃料を補給する空中給油機に近いと言えば、なんとなく理解してもらえるだろうか。

「Orbit Fabが想定する未来は、宇宙経済が大いに協力的に賑やかになることです。すべての宇宙船にロボットアームを装着したところで、それは実現しません。何か不具合が発生したり壊れたりすれば、牽引トラックがどうしても必要になります。ロボットによる複雑なサービスも必ず必要になります。しかし現状では、点検保守を受けるように作られているものはありません。そのため、どんなタイプの宇宙船でも牽引できるトラックが必要なのです」と同氏は話す。

「衛星用ガソリンタンカーの製造は叶いませんでした。衛星に給油口がないからです。なので、私たちはそれを作りました」と同氏は同社のRAFTIコネクターについて説明した。現在、数十の提携企業がこれを各社の衛星に採用することにしている。「顧客の衛星に燃料補給できるようにするためには、その他の製品や技術を開発する必要もありました」。

同社のタンカーは、初めての軌道上テストを行う。その時期はもうおわかりだろう。来年だ。先日新たな資金調達を発表し、同社のシードラウンドは総額で600万ドル(約6億2000万円)に達した。それがテストの実現に拍車をかけたようだ。2021年は、宇宙産業のさまざまな分野にとってビッグな年になる。しかし、とりわけこの分野では、可能性が実証される時となり、その先の大な発展につなが年になることだろう。

関連記事
ロボットが軌道上で部品から宇宙船を組み立てるMaxarとNASAの実験
Astroscaleが約54億円を調達、静止衛星長寿命化や軌道上デブリ除去など業務を多様化
「宇宙のガソリンスタンド」を目指すスタートアップOrbit Fabがシードラウンドで6.2億円を調達

カテゴリー:宇宙
タグ:人工衛星、Maxar Technologies、Astroscale、Orbit Fab
画像クレジット:Maxar/NASA

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

人類を遠い星に連れて行く新推進システム開発のMagdriveが約2億円を確保

新しいタイプの宇宙船推進システムを開発するスタートアップが、スタートレックのような惑星間旅行を現実のものにするかもしれない。Magdrive(マグドライブ)は140万ポンド(約2億円)のシードラウンドを完了した。SpaceXの初期の投資家であるFounders Fundがリードし、Luminous Ventures、7%Ventures、Entrepreneur Firstが参加した。

Magdriveは小型衛星用の次世代の宇宙船推進装置を開発している。同社のエンジンの推力と効率は「ジェネレーショナルリープ(世代を超える飛躍)」であり、他のどんな電気推進装置をも寄せ付けないと同社は述べる。これにより、これまで不可能だった全く新しいタイプのミッションに宇宙産業を開放するという。このエンジンは、より大型かつ高価で、より重い化学推進装置には頼らない。同社は、このエンジンが超低軌道での運用だけでなく、手頃な高速惑星間宇宙旅行を可能にすると述べている。このエンジンはまた、軌道上での製造活動を以前よりはるかに現実的にする。

既存の電気ソリューションは非常に効率的だが推力はかなり低い。化学推進は推力が高いが効率が悪く、取り扱いに危険を伴うため費用がかかる。Magdriveは、同社のエンジンが1つのシステムで高推力と高効率の両方を実現すると言う。

Magdriveのプロトタイプレンダリング。画像:Magdrive

これが機能するなら、Magdriveエンジンは宇宙船をより長く、より速く動かせる。これにより、燃料の節約を心配することなく、複数の高速操縦が可能な衛星(またはXウイング戦闘機?)などの新しい宇宙ミッションに業界を開放できる。現在これを達成するためには衛星に化学推進装置が要るが、打ち上げの際、燃料にかなりのペイロードを必要とする。200kgの衛星は50kgのヒドラジン燃料を必要とし、発射重量だけで135万ポンド(約2億円)のコストがかかる。

共同創業者(およびスタートレックのファン)であるThomas Clayson(トーマス・クレイソン)氏は、プラズマ物理学の博士号を取得し、高度な電磁場の分野に取り組んでいる。同氏は、この分野が惑星間宇宙旅行に必要とされる加速を実現するプラズマ推進開発の基礎になる可能性があることに気づいた。 ロンドンのインペリアルカレッジで、同じように宇宙旅行の夢を持っていた機械エンジニアのMark Stokes(マーク・ストークス)に出会った後、彼らは衛星用の小規模推進装置を作ることに決めた。

だがMagdriveだけではない。他の企業はいわゆる「ホール効果スラスター(推進装置)」を開発している。これは1960年代から存在する技術だ。開発の多くは小型化と重量削減を目的としているが、推力と効率は同じままだ。Busek、Exotrail、Apollo Fusion、Enpusion、Nanoavionicsといった企業が取り組んでいる。一方、Aerojet RocketdyneやMoog ISPなどの豊富な技術ポートフォリオを持つ大規模な多国籍企業は、化学物質の推進力を改善し毒性をなくすことに取り組んでいる。

彼らは技術の適用範囲を拡げて、月や火星など遠距離の目的地に向け、(まずは軌道上の)より大型の有人宇宙船に動力を供給する計画だ。Magdriveのシステムでは燃料費が大幅に削減され再利用も可能なため、化学または原子力ソリューションよりもはるかに手頃な価格で利用できる。

7%Venturesの創業パートナーであるAndrew J Scott(アンドリュー・J・スコット)氏はこう述べる。「7%では『ムーンショット』の野心を持つ創業チームを目指しています。Magdriveを前にすれば、これはもはや単なる比喩ではありません。彼らの革新的なプラズマ推進は間もなく衛星に動力を供給することになりますが、将来的には私たちをより遠い宇宙に連れて行ってくれると思います。衛星の開発に関する英国の知見は世界的に有名ですが、推進力への注目はまだまだ少ないといえます。実際、英国は独自の衛星打ち上げ能力の開発に成功したものの、1970年代に諦めた唯一の国です。開発の中止は間違いなく英国の宇宙部門を停滞させました。ですから、この急成長するセクターで、世界をリードする企業になるというビジョンと野心を持つ新しい世代の英国の宇宙スタートアップの1つであるMagdriveを支援できることに興奮しています」

衛星産業は2020年時点で50億ドル(約5200億円)の規模がある。メガコンステレーション(多数の通信衛星による衛星網)の増加により、2030年までに300億ドル(3兆1200億円)に成長すると予測されている。今後2年間で約5000の衛星が打ち上げられる予定であり、衛星を打ち上げる企業の75%はすでに宇宙で何かを飛ばしている。

Magdriveはオックスフォードのハーウェルにある欧州宇宙機関のビジネスインキュベーションセンターで活動している。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット:Magdrive

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

NASAの有人飛行責任者がアルテミス月面着陸の2024年目標とクルー人選について語る

NASA(米航空宇宙局)の有人宇宙飛行責任者、Kathy Luders(キャシー・ルーダース)氏がTechCrunch SEssion:Spaceに参加し科学者でNetflixのホストでもあるEmily Calandrelli(エミリー・カランドレッリ)氏に、彼女のNASAでの仕事について話した。アルテミス計画の進捗や米国人宇宙飛行士を月面に再び送る話もあった。

NASAのアルテミス計画最初の月面着陸が2024年を目標としていることは、繰り返し同局が発言しており、現在のNASA責任者でバイデン新政権が誕生する2021年1月に任期を終えるJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタシイン)長官も正式に表明している。しかし、このスケジュールには外部から多くの疑問が投げかけられていて、新型コロナウイルス対策の在宅命令とNASAの遠隔勤務措置による遅れによって、一層困難になったと見られている。

「商業乗員輸送開発プロジェクトを立ち上げた時の目標は2017年でした」とルーダース氏。「2017年には飛ばしませんでした、2017年を目指してありとあらゆる努力をしたのですが。その2017年というゴールは、私が2017年という時期だけを考えて愚かな決定を下したという意味ではありません。慎重に検討を重ねた決断でした。そして結局2020年に飛ぶことになりました。実際には2019年にミッションを達成し、それは当初2017年のゴールだったものでした。2024年は我々にとって重大な目標なので、誰もがそこにこだわっています。しかし、私は慎重にこれを進めるべきであることもわかっているので、みなさんに進捗状況を伝えながらやるつもりです。これはこれまでのあらゆるプログラムでしてきたことでもありす。そして、安全で効果的な方法で飛行するために必要なミッションの能力を備えて飛ぶ準備ができたとき、実行します」。

ルーダース氏は多様性、および局内の人種多様性、および同局にとっての重要性に関する問題にも言及した。、氏は人間探査および運用ミッション総局の副責任者を務める最初の女性であり、NASA全体の有人飛行活動を指揮している。

「みなさんには私たちが行っていることを自分の目で確かめてほしいと思っています。なぜなら、重要なのはNASAがこれをやっていることではないからです」と彼女はいった。「重要なのはみなさんがすること、みなさんにできることです。最も印象深いのは、私のことが発表された直後にインドの9歳の少女からもらった『あなたがその仕事を得たのだから、私もいつかNASAの責任者になれると思います』という手紙でした。そしてアルテミス計画のクルーの多様性を見ればわかるように、みんなが自分がそこにいるところをを見て欲しいのです」

ルーダース氏は、つい最近発表された NASAのArtemis宇宙飛行士クラスに見られる多様性(NASAリリース)と、その中から実際にアルテミス計画初の月面着陸クルーに選ばれる人の可能性についても語った。

「私の気に入っていることの1つ、それは女性2人でいけないのかどうか、私にはまだわからないことです」と彼女はいった。「適切な人を選ぶ必要があります」

カテゴリー:宇宙
タグ:NASAアルテミス計画

画像クレジット:NASA

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXによる米偵察衛星を打ち上げが12月19日に延期、ロケット上段の液体酸素タンクに異常見つかる

東部時間午前11時15分(日本時間12月18日午前1時15分)アップデート:SpaceX(スペースX)は米国時間12月18日のミッションを中止し、米国時間で12月19日午前9時(日本時間同日午後11時)から始まる3時間の打ち上げウィンドウで再度挑戦する予定だ。ロケット上段の液体酸素タンクにて異常に高い圧力が確認されたが、同社はこれを解決するために作業を進める。

SpaceXは米国時間12月18日、Falcon 9ロケットをケネディ宇宙センターから、米国東部標準時午前9時(日本時間同日午後11時)に打ち上げる予定だ。ミッションでは米国国家偵察局(NRO)の偵察衛星が搭載され、Falcon 9の一段目のブースターの回収も予定されている。

このFalcon 9の第1段ブースターはこれまでに4回飛行しているが、その中にはSpaceXがNASAのために国際宇宙ステーション(ISS)に向け実施した2回の民間補給ミッションやStarlink衛星の打ち上げ、そして8月にアルゼンチンの宇宙機関のための衛星打ち上げであるSAOCOM 1Bミッションなどが含まれる。

SpaceXはケープ・カナベラル宇宙基地の着陸地点への着陸を試みる予定で、これは海上の2隻のドローン着陸船の使用に比べると珍しいケースだ。同社の洋上着陸は、陸上への着陸に十分な燃料が搭載されていなかったロケットブースターの回収を可能にするために導入された。一方で今回のNROミッションでは「打ち上げ地点への着陸」を可能にする。

気象条件にもよるが気象条件にもよるが、通常打ち上げウィンドウが長くなるとSpaceXはの最初の時間での打ち上げを目指す。現在の状況であれば、上記のストリームは東部標準時の午前8時45分頃(ウィンドウの15分前)に開始されるはずだ。

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceX、翻訳:塚本直樹

画像クレジット:SpaceX

原文へ

(翻訳:塚本直樹 / Twitter

ロッキード・マーティンのリサ・キャラハン氏が語る月着陸船共同開発の今

NASAのアルテミス計画はやっと進み始めたところだが、民間パートナー企業たちは、月着陸システム開発の名誉を獲得しようと競い合っている。なかでもこの取り組みをリードしているのが、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)とBlue Origin(ブルー・オリジン)だ。ロッキードの副社長であり商用民間宇宙担当ジェネラルマネージャーのLisa Callahan(リサ・キャラハン)氏は、共同作業は驚くほど円滑で成果も大きいと語る。

TC Sessions:Spaceに登壇したキャラハン氏は、そうした取り組みに最初から参加できることへの喜びを表していた。「やりたくない人なんて、いないでしょ?めちゃくちゃすごいことです」と彼女は話す。「私たちのスタッフには、アポロのときにはまだ生まれていなかった人が大勢います。なので、彼らは次世代の一員として、再び月に宇宙飛行士を送る計画に参加できることを、とても喜んでいます。私も個人的に、最初の女性を月に送ることになるという事実を誇らしく感じています」。

ロッキードは離陸モジュールの開発を行っており、その一方でNorthrup Grumman(ノースロップ・グラマン)とDraper(ドレイパー研究所)がその他のコンポーネントを、主契約者であるブルー・オリジンは着陸モジュールを担当していると、彼女は説明した。

「ブルー・オリジンの視点からすると、この企業の組み合わせは実におもしろいものです。ロッキードやノースロップ・グラマンやドレイパー研究所といったアポロの時代まで遡る老舗が、この国家的優先課題のために、ある意味、国民としての時間をともに過ごしているのですから」と彼女はいう。

昔からのライバルと新参企業との間に摩擦はないものかと案じるのは無理もないが、キャラハン氏によればその関係は非常に前向きだという。

「これは異なる文化の融合なのです。このチームのメンバー全員が、それによって成長していると私は考えています」と彼女はいう。「ブルー・オリジンは、元請け業者としてとてもよくやっています。みんなを大変に温かく迎え入れてくれます。私はその雰囲気を、社員章のない環境と呼んでいます。何らかの技術交流会議に出席しても、誰がどの会社の人間かはわからないでしょう。なぜなら全員が、取り組むべき仕事の担当者として適切な経歴を有する一流の人材だからです。なので、まったく境目がありません。その状態を、私たちはとても楽しんでいます」。

これはすべて、ほとんどの企業が業務方法の変更を余儀なくされたパンデミックの間のことだ。キャラハン氏は、計画を大転換するのではなく、まさしくこれまで続けてきた業務の近代化に重点を置いた賜物だと話した。

「おそらくこの5年間かそれ以上、私たちは、デジタルトランスフォーメーションと呼んでいるものに投資してきました。デジタルコラボレーションツールです。複数の人たちが同時にデザイン作業ができるよう、双子の宇宙船をデジタルで構築するものです」と彼女は説明する。「苦あれば楽ありといってもいいでしょうが、新型コロナウイルスのお陰でその取り組みが加速されました。このような仮想環境で、これまで思ってもみなかったかたちで、本当のコラボレーションができるのだと新型コロナは教えてくれています」。

ロッキードの次なる大きな節目は、Orion(オライオン)宇宙船を、ケープ・カナベラルのケネディー宇宙基地に届けることだ。

「本当にわくわくしてます。私たちがこのシステムをVBA(NASAの宇宙船組立棟)に届けると、その打ち上げ準備が完了します。2021年の予定です。そしてそれは、Space Launch System(スペース・ローンチ・システム)によって打ち上げられる最初のOrionとなります」とキャラハン氏は話していた。

ロッキード・マーティン、エアロスペース、アメリカ宇宙軍などがTC Sessions:Spaceに登場する。アクセス登録はこちらから

カテゴリー:宇宙
タグ:Lockheed Martinアルテミス計画

原文へ

(翻訳:金井哲夫)

「宇宙のガソリンスタンド」を目指すスタートアップOrbit Fabがシードラウンドで6.2億円を調達

TC Disrupt 2019にて衛星カップリングシステムを披露するOrbit Fabの最高開発責任者Jeremy Schiel (ジェレミー・シール)氏

「宇宙のガソリンステーション」の構築に特化した企業を自称する、軌道上でのサービス提供を目指すスタートアップOrbit Fab(オービット・ファブ)は、シード投資ラウンドに新たな投資者を迎えた。この追加拡張投資は、Munich Re Ventures(ミューニック・リー・ベンチャーズ、世界最大クラスの保険会社ミュンヘン再保険グループのコーポレートベンチャー投資部門)によるものだ。Munich Reグループは、特に衛星運用者には非常に重要な保険会社であり、打ち上げ前、打ち上げ時、軌道上の運用をカバーする保険商品を提供している。

2019年TechCrunch Disruptバトルフィールドの最終選考まで勝ち残った経験のあるOrbit Fabのシステムは、基本的には、宇宙船を軌道上の給油所まで誘導する宇宙タグボートで成り立つ。給油所には、同社が注文に応じて製作するインターフェイスを使って接続できる。新しく衛星を設計する際に、比較的簡単に組み込めるようデザインされており、キャプチャーやドッキングのための特別なロボットシステムなどを必要とせず、宇宙空間で簡単に燃料補給ができる。

このスタートアップの目標は、宇宙船の寿命を延ばして宇宙デブリを減らし、運用者の経費を削減することで、持続可能な軌道上の商用運用環境の構築を助けることだ。Munich Re Venturesの参加は、衛星運用者の打ち上げと運用のリスクモデルに持続可能性が高く運用期間が長い宇宙船を組み込めるという点で、極めて大きな前進となるずだ。

「推進剤のサプライチェーンの立ち上げを見てみると、その大部分は財務モデルです」と、Orbit Fabの共同創設者でCEOのDaniel Faber(ダニエル・ファーバー)氏はインタビューで私に話した。「顧客のリスクを移動し、設備投資を運営費用に確実に移動し、それでいて新たなリスクを招かないようにするには、これをどう使えばよいのか。そのすべてを、Munich Reの財務商品、保険とリスクの評価に任せることができます。なのでこれは、大変に意味深いパートナーシップなのです」。

ファーバー氏は続けて、Munich Re Ventures のTimur Davis(ティムア・デイビス)氏が宇宙関連のカンファレンスによく顔を出すようになり、そうしたイベントでファーバー氏は彼と言葉を交わすようになったと話した。それがやがて、宇宙でのサービスと基盤整備を見すえたMunich Re Venturesの投資計画に発展し、Orbit Fabはその新計画を背景とした最初の投資先となったわけだ。

この新規投資によって、Orbit Fabのシード投資ラウンドの総額は600万ドル(約6億2000万円)に達した。この中には、ベンチャー投資企業からのものに加えて、米国政府からの200万〜300万ドル(約2億6000万〜3億9000万円)の資金援助も含まれている。同社はまた、新たにドッキングのための「自動運転衛星」キットを着想し研究を行っている。これには、米国立科学財団から予備的な要求開発のための資金を獲得し、現在、その設計製造に着手できる段階に至っている。2021年は、宇宙産業の新企業にとっては大きな年となる。持続可能で規模の拡張が可能な衛星運用というアプローチを掲げるOrbit Fabも、間違いなくその中の1つだ。

関連記事:軌道上の人工衛星に燃料補給するスタートアップOrbit Fabが約3億2000万円を調達

カテゴリー:宇宙
タグ:Orbit Fab人工衛星保険持続可能性

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(翻訳:金井哲夫)

アマゾンのProject Kuiperは3236基の衛星打ち上げに複数企業の参加を期待

Amazon(アマゾン)のデバイスとサービス担当上級副社長であるDavid Limp(デビッド・リンプ)氏を米国時間12月16日のTC Sessions:Spaceに招いて、同社のブロードバンド衛星コンステレーションProject Kuiperについて、詳しい話を聞いた。リンプ氏は、Kuiperのチームがその革命的な顧客端末で解決した技術的設計のチャレンジを詳しく共有した。彼はまた、同社のコンステレーションの打ち上げ計画についても、情報を共有。FCCが認可した現在の計画では、それは3236基の衛星で構成されるという。

リンプ氏はまず「打ち上げは誰がやってもよい」という。「誰かロケットを持ってる人をご存知だったら、お電話をください。いまがコンステレーションに適したタイミングだと思う理由の1つは、打ち上げ産業に活気があるからです。毎日のように再利用のデモがあるし、画期的な新しいエンジンのデモがある。SpaceXのRaptorがあったかと思うと、次の日にはBlue OriginのBE-4という具合だ」。

アマゾンのコンステレーションに対するFCCの認可条件の1つが、それを構成する衛星の計画量の約半分を6年以内に打ち上げることだ。相当な数であるため、速いペースが必要となる。たとえばSpaceXのStarlinkは、衛星60基の打ち上げを16回行ったが、そのうちの14回は2020年内だ。これだけのペースを達成するためには、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が個人的に所有する打ち上げ企業Blue Originにも多少の打ち上げ能力はあるが、宇宙へ行くためのライドシェアをどこかで見つけないといけないとリンプ氏はいう。

「3200個以上の物を宇宙に運ぶためには、大量の打ち上げ能力が必要だ。希望としてはそれを1社でやるのではなく、複数の打ち上げ企業にお願いしたい」とリンプ氏。

Project Kuiperが求める衛星の仕様にもよるが、Astra、Relativity SpaceそしてVirgin Orbitなど、これは新興の小さな衛星打ち上げ企業にとって大きな活躍のチャンスだ。後者は先に、打ち上げ企業の進歩について語っている。またそれは、Rocket Labのような既存の企業にとっても棚ボタかもしれない。もしかして、SpaceXも打ち上げの助っ人になる可能性がある。

別の質問への回答でリンプ氏は、Project KuiperはSpaceXのStarlinkと直接には競合しない、と述べた。世界のインターネット未供用地域は、市場としても、あまりにも広いからだ。

関連記事:Amazon子会社Project Kuiperがブロードバンド衛星ネットワーク用の小型・低コスト顧客端末を開発

カテゴリー:宇宙
タグ:AmazonProject Kuiper

原文へ

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

小型衛星スタートアップCapella Spaceが最高解像度の市販SAR画像を提供

サンフランシスコを拠点とする小型衛星スタートアップのCapella Spaceは、商用の最先端合成開口レーダー(SAR)画像を独占的に提供している。同社は今回、これまで最高だった1m×25cmよりもはるかに高い解像度である50cm×50cmの「Spot」画像を提供することになった。SAR画像は雲や空気の状態、照明(昼夜を問わず)などに関係なく運用できるため、他のタイプの衛星による観測と比較して優位性がある。

Capella SpaceはSAR衛星の設計、構築、運用をすべて自社で行っており、米国で初めてSAR衛星を開発した企業だ。元JPLのエンジニアであるPayam Banazadeh(パヤム・バナザデ)氏によって設立された同社は、2020年8月末に1機のSAR衛星をRocket Lab(ロケット・ラボ)のロケットで打ち上げで軌道に投入した。同社によれば、年内にもSpaceX(スペースX)社のライドシェア契約でさらに2機の衛星を打ち上げを計画している。

Capellaの高解像度「Spot」画像の一例で、シンガポールのExxonMobil製油所施設を撮影(画像クレジット:Capella Space)

現在のところCapellaの商業的に利用できる画像の最大解像度は、実際には技術的に制限されているわけではなく、米国の規制当局が定めた最大値によって制限されている。Cappellaは米国政府の顧客に対してより精細な画像を販売することができ、規制が技術に追いつけば25cm × 25cmの解像度の画像を商業的に提供できるようになるだろうと指摘している。

このレベルの技術が一般的に入手しやすく手頃な価格で入手できるようになり、Capellaのようなスタートアップ企業が商業的サービスを提供できるようになることで、SAR画像は衛星画像市場を大きくシフトさせる可能性を秘めている。また分析データやその他のタイプの観測データをレイヤー化して、光学イメージングだけでは不可能だった詳細な洞察を得るためのリッチなプラットフォームにもなる。もちろんこの技術は国家安全保障機関にとっても大きな関心事であり、Capellaはすでに米国政府に支援され契約を結んでいる。

なお米国時間12月16日に行われるTC Sessions:Spaceイベントにバナザデ氏が参加しているので、この新しい高解像度画像とその応用について詳細が語られることだろう。

カテゴリー:宇宙
タグ:Capella Space

画像クレジット:Capella Space

原文へ

(翻訳:塚本直樹 / Twitter

Virgin Galacticのテスト飛行は宇宙に到達せず中断、フェールセーフが発動

Virgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)は米国時間12月13日土曜日にSpaceShipTwo Unity宇宙船のテスト飛行を試みたが、宇宙船が輸送機から切り離された後に飛行は中断された。これはロケットを監視しているコンピューターがエンジンとの接続を失ったため、フェイルセーフ(安全装置)が発動しロケットエンジンの燃焼を妨いだ結果だと、同社は12月14日月曜日に明らかにした。

フェールセーフの発動はSpaceShipTwo Unityと輸送機、そして搭乗していたパイロット全員が無事に地球に帰還し、着陸に成功したことを意味する。しかしこのテスト飛行は宇宙への飛行を意図していたものであり、ヴァージン・ギャラクティックのニューメキシコ宇宙港から最初の有人商業飛行の道を切り開くための、重要なイベントとなるはずだった。

ヴァージン・ギャラクティックは2018年と2019年の2回、宇宙への飛行を実施している。今回はニューメキシコからの初の軌道宇宙飛行となるはずで、これはこの運用拠点から商業サービスを顧客に提供するために必要な準備のステップだ。

「ヴァージン・ギャラクティックは現在、飛行後の分析を行なっており、現時点では推進システムを監視するオンボードコンピューターが接続を失い、ロケットモーターの点火を意図的に停止させるフェールセーフシナリオを引き起こしたことが報告できます」と、同社はブログ記事でテスト中の出来事を詳しく述べている。「このシステムは宇宙船の他のシステムと同様に、電力またはセンサーとの通信が失われると、常に安全な状態にデフォルト設定されるように設計されています。宇宙船のパイロットだけでなく、ミッションコントロールのエンジニアやパイロットも、輸送船からの離脱後にロケットモーターが発火しないシナリオを含め、飛行前のシミュレーション練習中に多くのシナリオを想定し練習し、どんな異常にも十分に備えています」。

これは明らかに上場済みのヴァージン・ギャラクティックにとって理想的な結果ではなく、市場の反応は公共投資家の失望を反映している。Virgin Galactic社のCEOであるMichael Colglazer(マイケル・コルグレイザー)氏は、このテスト飛行の結論は計画とは異なるが、安全対策が設計どおりに機能していることを示していると説明した。コルグレーザー氏によると、今回の試験をやり直した後にテスト飛行プログラムを継続するという。

カテゴリー:宇宙
タグ:Virgin Galactic

画像クレジット:Virgin Galactic

原文へ

(翻訳:塚本直樹 / Twitter)

衛星データ活用の宇宙スタートアップSynspectiveが災害時の浸水被害を評価するサブスク発表

衛星データ活用の宇宙スタートアップSynspectiveが災害時の浸水被害を評価するサブスク発表

衛星データ解析によるソリューション提供および小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を行うSynspective(シンスペクティブ)は12月11日、水害発生時に、全天候・高頻度観測による信頼性の高いSARデータによる、被害情報を迅速に提供する「Flood Damage Assessment Solution」のサービス提供を開始したと発表した。

Flood Damage Assessment Solutionは、災害対応のための浸水被害(浸水域、浸水深、被害道路、被害建物)を評価するサブスクリプション型サービス。

災害が発生した際は、広範な被害状況の一次情報に基づいて迅速に対応する必要がある。その際SAR衛星は、従来の光学衛星や飛行機・ドローンでの観察方式と違い全天候型の地上観測が可能なため、発災時の天候や時間帯に関わらず、より広範な地域の浸水被害の有無を迅速に把握できる。

さらに、AI技術など最先端分析手法を活用することで、より迅速に道路・建物などの施設への影響範囲を特定可能。

洪水発生時に、被害状況を一次情報に基づき迅速に評価する必要がある保険・金融業界・政府向けとして、SAR衛星による安定した高頻度データ、AI技術など最先端分析手法を活用し、サブスクリプション型サービスとしてウェブ上で提供。ユーザーの視点に立ったUI/UX構築にこだわり、衛星データの知識がなくても直感的に解析結果を理解できるソリューションとして実現させている。

Synspectiveは、自社初の実証衛星である小型SAR衛星「StriX-α」(ストリクス アルファ)を2020年内に打ち上げ予定。将来的にはこの「StriX」によるコンステレーション(衛星群)を構築し、そこから得たSARデータをソリューションに用いることで、より高頻度で安定したモニタリングが可能となるとしている。

2018年2月設立のSynspectiveは、データに基づき着実に進歩する世界の実現を目指し、衛星による観測データを活用したワンストップソリューション事業を行うスタートアップ企業。内閣府「ImPACT」プロジェクトの成果を応用した独自の小型SAR衛星により高頻度観測を可能にする衛星群を構築。その衛星から得られるデータの販売、および、それらを利用した政府・企業向けのソリューションを提供している。

リスク管理をテーマに開催された「UNDERSTANDING RISK FORUM 2020」カンファレンスにおいて、Singapore Space and Technology Ltd(SSTL)は、世界銀行が支援する東南アジア災害リスク保険施設(SEADRIF)と共に、洪水の範囲とその結果として生じる被害とニーズをより適切に分析するのに役立つソリューションを選定するため「SSTL x The World Bank HADR Challenge Pitching Session」を実施。

同HADR Challengeに参加したチームは、衛星画像から得られたリアルタイムの洪水範囲を、他の既存のデータセットやリアルタイムのデータソースからの洪水深度情報を活用したソリューション開発に挑戦。Synspectiveは「Flood Damage Assessment Solution」を活用した提案で、ファイナリスト4社に選ばれた。

関連記事
東大宇宙系スタートアップ「Synspective」が同社初の小型SAR衛星打上げ予定日を公開
日本の宇宙系スタートアップのシンスペクティブ製造の衛星をRocket Labが軌道に運ぶ
夢しかない宇宙!地表形状や高度・変位を測定する衛星開発のSynspectiveが累計109億円調達
衛星による毎日全地球観測インフラの実現へ、東大宇宙系スタートアップが総額25.8億円調達

カテゴリー:宇宙
タグ:サブスクリプション(用語)Synspective日本(国・地域)

NASAとボーイングが無人軌道飛行テストのやり直しを2021年3月に予定

NASAとBoeing(ボーイング)社は、現在進行中の商業乗員輸送プログラムにおける重要な資格認定実証ミッションである軌道飛行テスト2(OFT-2)について、可能な限り早い日付として2021年3月29日を検討している。ボーイングは、国際宇宙ステーション(ISS)へ宇宙飛行士を輸送する有人宇宙打上げシステムの開発と認可取得を行うためにNASAから選ばれた2社目の企業で、現在も宇宙船の認証に向けて作業を進めている。選ばれたもう1つの企業であるSpaceX(スペースX)は、すでに最初の現行サービスミッションに成功している。

ボーイングは2019年12月にこのミッションの最初のバージョンを打ち上げた。同社のStarliner(スターライナー)CST-100有人宇宙船は、ULAのロケットに搭載されて計画通りに離陸し、ミッションの一部を完璧にこなした。しかし、このカプセル型宇宙船に搭載されていたミッションタイマーにエラーが発生し、地上通信が一瞬途切れたため、修正が間に合わず、今回の実証飛行の最大の目的であった宇宙ステーションにドッキングするための軌道投入に十分な燃料を確保しておくことができなかった。

ボーイングはそれでも、スターライナーカプセルの大気圏再突入、降下、回収を成功させることができた。これらはすべて、他の重要なミッションの目標を達成するための良いテストになった。

しかし、ボーイングとNASAは、最終的な有人飛行による実証ミッションを実施する前に、無人軌道飛行テスト(OFT)を繰り返す必要があるという判断を下した。

長時間にわたる徹底的な調査の後、ボーイングとNASAは双方とも、ソフトウェア開発プロセスとパートナーシップの変更を実施し、ミッションタイマーに影響を与えたようなエラーが将来的に起こらないように対策した。

両社は当初、最初のトライから約1年後の2020年12月中にこのミッションの再打ち上げを望んでいたが、その後スケジュールがずれ込み、最終的には来年の第1四半期が最も早くて実施可能な時期となった。

NASAはボーイング社の宇宙船が認証を取得し、宇宙飛行士の地球低軌道への商業輸送サービスを、1社ではなく2社に頼ることができるようにしたいと望んでいる。そのように多様なプロバイダーの組み合わせが可能になれば、有人宇宙飛行を中心とした地球軌道上における商業活動の増加を促進するのにも役立つはずだ。

関連記事
ボーイングのStarliner乗員カプセルが軌道に乗り損ねてISSとドッキングできず
ボーイングとNASAは無人軌道飛行の再挑戦を2020年9月に設定

カテゴリー:宇宙
タグ:ボーイングSpaceXNASA宇宙船

画像クレジット:NASA / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

Blue Originの宇宙産業オールスターチームが人類を月に運ぶ着陸システムを提案

Blue Origin(ブルー・オリジン)が率いる「National Team」は、NASAのアルテミス計画の一環として次の宇宙飛行士を月面に運ぶために使用されるHuman Landing System(HLS)の提案書をNASAに提出(Blue Originリリース)した。ブルー・オリジンはNASAの有人月面着陸ミッションの契約入札に選ばれた3社のうちの1社で、Lockheed Martin(ロッキード・マーチン)やNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)、Draper(ドレイパー)で構成されるチームを率いている。他の参加企業は、SpaceX(スペースX)とDynetics(ダイネティクス)で、NASAに印象づけるに十分な提案をしていた。

ブルー・オリジンが提出した提案は、NASAのHLS提案のうちOption Aの部分に関するもので、2024年を現在のターゲットとするアルテミス計画で初の有人着陸を行うための適切なタイミングを提供するために設定されている。また、2026年の飛行実証を含む後期ミッションを含んだOption Bの提案もある。NASAは地球から国際宇宙ステーション(ISS)への輸送のための商用輸送プログラムで行ったことと同様に、同宇宙局の顧客として役割を果たし、最終的には宇宙船を製造する着陸システムを構築するための民間のパートナーを求めている。

HLSは月を周回し、月面に到達するためのベースとなるNASAのLunar Gateway(月軌道プラットフォームゲートウェイ)宇宙ステーションとドッキングするように設計されている。NASAの宇宙飛行士は、現在開発中のOrion宇宙船を使って月へと飛行する。この宇宙船はNASAが所有し、契約業者(ロッキード・マーチン、Airbus、Boeing)によって製造されるSpace Launch System(SLS)ロケットに搭載され打ち上げられる。

NASAはLunar Gatewayと月が科学や研究だけでなく、商業活動の拠点として機能する未来を想定しており、HLSは同宇宙局だけでなく、民間企業の顧客にもサービスを提供できるような着陸システムの開発を促進するために設計されている。

関連記事:NASAがSpaceX、Blue Origin、Dyneticsの3社を月面着陸船の開発に指名

カテゴリー:宇宙
タグ:Blue OriginNASAアルテミス計画

画像クレジット:Blue Origin

原文へ

(翻訳:塚本直樹 / Twitter)

SpaceXのプロトタイプロケットが着陸時に大爆発、しかし飛行テストは成功

 

現行のロケット「Falcon」の後継機にSpaceXはまた一歩近づいた。同社の宇宙船「Starship」のプロトタイプ「SN8」が米国時間12月10日、テキサス州南部にあるSpaceXの開発施設で、上空12.5kmまで上昇するという、現在進行中の宇宙船開発プログラムの中で重要なマイルストーンを達成したのだ。

離陸から約2分後、スターシップに搭載されている3基のRaptorエンジンのうちの1基は停止したが、このプロトタイプロケットは上昇を続けた。続いて3分後には、もう1つのエンジンが停止。1基のみが点火し稼働している状態となった。ロケットは上を向いたまま上昇を続けていたものの、どのくらいの高さまで上昇したのか、動画フィードからはわからなかった。そして4分30秒を過ぎた頃、3基目のエンジンが炎上し、スターシップは機体を水平にしながら地上に向けて自由落下を始めた。

ロケットが地上に近づくとエンジンが再点火し、再び垂直に姿勢を戻して落下速度を遅めた。しかし、予想よりも少し勢いよく着陸したため、爆発を起こしロケットは炎に包まれた。それでもテストは成功であり、SpaceXや多くの観察者の予想よりも上手くいった。ストリーム上ではSpaceXの管制室からチームの成功を祝福する声が聞かれた。

爆発と宇宙船の全損で終わった飛行は、成功したように見えないかもしれないが、まったく新しい宇宙船を設計しそのテストを行っていることを考えれば、間違いなく成功だ。SpaceXはこの試験飛行ではおそらくその目的のすべてを達成できないだろうと予想していたし、同社のElon Musk(イーロン・マスク)CEOは今週初めにTwitterで、目標高度は達成するかもしれないが、他のことはあまり期待していないと述べていた。だが、目標高度は達成されたようであり、機体を水平にして着陸時に再び正しい向きに戻す「ベリーフロップ」と呼ばれる動きを制御することもできた。ただ、着陸の際に少々スピードが速すぎたのだ。

今回のテストで、チームが多くの貴重なデータを収集したことは間違いなく、現在はそこで学んだことを次の試行の改善に役立てようとしている。SpaceXはすでに「SN9」と「SN10」という2機のプロトタイプを完成させており、実際に次のテストに向けて準備ができているのだ。これらのプロトタイプは、この日飛行したSN8と比較してもすでに改良されており、チームは今回の飛行とテスト中に得られたデータに基づいて、迅速に追加の改良を施す予定だ。

関連記事:SpaceXがStarshipプロトタイプの高度150メートル飛行試験に成功

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXイーロン・マスク宇宙船ロケット

画像クレジット:SpaceX

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

スペースXがStarshipの高高度飛行を再度ライブ中継

SpaceX(スペースX)のプロトタイプ宇宙船であるStarshipは米国時間12月9日午後(日本時間12月10日早朝)、高度約4万フィート(約12km)に達する初の高高度飛行を行った。12月8日はRaptorエンジンの1基が自動的にシャットダウンし、テストがさらに悪化するのを防ぐために最後の数秒で試験が中止されたため、これは2回目の試行となる。

この宇宙船はスペースXが構築したStarshipの最新プロトタイプの1機であり、高高度飛行のデモンストレーションに挑戦する最初の機体でもある。他のプロトタイプは最大約500フィート(約150m)まで上昇し、その後に制御着陸を達成している。今回のテストでもそれらが試されるが、スペースXのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、テストがうまくいかない可能性が非常に高いと述べている。これは、宇宙船開発の現時点での段階では予想の範疇だ。

ロケットはテキサス州にあるSpaceXの開発施設から打ち上げられ、4万フィートの高さまで飛行した後、ベリーフロップ・マヌーバを実行して旋回し、地球に落下して最終的には制御着陸を実行して垂直に降り立つ。

この結果は、スペースXのStarshipの開発に貴重なデータを提供することになる。

【Japan編集部】打ち上げは無事成功。現在、YouTubeで打ち上げの様子を見ることができる。

関連記事:SpaceXが地方ブロードバンド推進基金から920億円獲得、ファイバー網を引けない地域でのStarlink衛星サービスに期待

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceX

画像クレジット:SpaceX

原文へ

(翻訳:塚本直樹 / Twitter)

小型・安価な独自衛星打ち上げロケットを開発するドイツのIsar Aerospaceが95億円調達

航空宇宙産業はスタートアップの世界からの爆発的な活動の広がりを見てきたが、そこでは聡明なエンジニアたちが、大企業の下で働くよりも、ますます野心的になるベンチャー投資家から資金を調達して自分でスタートアップを起業し、壮大な計画を現実的なビジネスに変換する道を選んでいる。そんな中、最も新しい展開として、ミュンヘンのスタートアップが、ヨーロッパの宇宙技術業界で最高額の投資ラウンドによる資金調達を成功させた。

極めて小型で、現在市場で活躍している大型ロケットよりも安く超小型衛星の打ち上げができるロケットを開発するIsar Aerospace(イザー・エアロスペース)は、7500万ユーロ(約94億7000万円)を調達した。同社は、この資金を使って研究開発と建造を継続し、その過程で、2022年初頭に最初の商業打ち上げを実施する計画だ。

際立って画期的な設計のロケットを提供するだけではないが、打ち上げに成功すれば、Isarはヨーロッパの宇宙関連企業として初めて、世界の衛星市場で戦える確実な衛星打ち上げロケットのメーカーとなる。

今回のラウンドは、Lakestarrが主導するシーリズBで、以前からの支援者であるEarlybirdとVsquared Venturesも大きく貢献していると同社は話している。Earlybirdと戦略的支援者であるAirbus Venturesは、前回、2019年12月にクローズした1700万ドル(約17億7000万円)のラウンド(Isar Aerospaceリリース)を主導している。

このスタートアップは、名門ミュンヘン工科大学(TUM)からスピンアウトして生まれた。共同創設者のDaniel Metzler(ダニエル・メッツラー)氏、Josef Fleischmann(ヨーゼフ・フライシュマン)氏、Markus Brandl(マーカス・ブランドル)氏は、みなTUMで工学を学んだ。中でもフライシュマン氏には、Isar創設前にちょっと自慢できる出来事があった。彼は、米国で行われたHyperloop(ハイパーループ)のコンペにTUMチーム(Isar Aerospaceリリース)の一員として参加した。その功績により、米国の有名ベンチャー企業から非常に興味深い仕事に誘われたのだが、彼はドイツに帰り、自身の会社を立ち上げることを選んだ。それがIsar Aerospaceだ。

メッツラー氏はインタビューの中で、データソースの増強や刷新のために衛星技術を利用したい、または利用する必要に迫られた企業の累積需要が非常に大きいと説明していた。政府や通信事業者にそうした需要があることは簡単に想像がつくが、ナビゲーション、GPS、地図製作の専門家、農業関連産業、メディアおよびインターネット企業、その他、宇宙でしか実現し得ない高速かつ遠距離のデータアクセスを必要とする団体などもそこに含まれる。

問題は、衛星を軌道に乗せる現行技術は、費用も時間もかかりすぎることだ。

ロケットは大型で、打ち上げ頻度も低い。その積載スペースを確保するためには、長い準備期間と大量の投資が必要になる。運良くそれが叶っても、技術的問題や天候によって突然中止になることもある。

こうした問題は、SpaceX(スペースX)のような民間企業の成長でなんとか対処しようとしてきた。ロケットを量産し、広い場所にたくさんの発射台を備えて打ち上げ回数を増すことで、需要に応えるという方法だ。

だが、Isarのアプローチはまったく違う。新しい方式の打ち上げ台に加え、小型で安価な新型ロケットの建造だ。こうすることで、多くの団体がより安く、より簡単に柔軟に衛星の打ち上げを予約できるようになるという考えだ。目標は1000kg以上のペイロードを打ち上げることだ。

Isarのシステムに使用されている革新的な技術の中には、現在のロケットで通常使われているものとは異なる、軽い燃料を使う推進システムがあるとメッツラー氏は話す。また、ロケットの建造費用を低く抑える、新しいシンプルな設計アプローチの採用もその1つだ。

メッツラー氏によると、現在の衛星打ち上げ料金の相場は1kgあたり3万ドルから4万ドル(約310万円から420万円)だという。「私たちはさら斬り込んで、1kgあたり1万ドル(約104万円)を目指します」

この提案は「顧客からの問い合わせ」がすでに5億ドル(約520億円)に達しているほど魅力的なものだとIsarはいう。つまりそれは、同社の打ち上げ事業が開始された場合の売上げとなるであろう、緩い予約のようなものだ。

同社は、衛星打ち上げが需要対応の明らかなボトルネックだと考えている。

「週に1度宇宙に行くことは、3年前から準備してきた打ち上げ計画とはまったくの別物です」と彼は、現状と比較したIsarが想定すべき未来について語った。また彼は、Isarでは持続可能性を念頭にロケットを作っているとも話していた。地上で回収して再利用できない部分が1つでもあるなら、大気圏で完全に燃え尽きて、一切の残骸が出ないようにロケットを設計するべきだと考えている。

長期的には、Isarは宇宙探査や別の分野の開発にも乗り出す可能性がある。そうした意欲的なロードマップ(この場合はスカイマップか?)には、投資家も喜んで支援するだろう。

「私たちは、ヨーロッパの民間宇宙開発を目指すIsar Aerospaceを、最大手機関投資会社として支援できることを誇りに思います。地球低軌道の超小型衛星は、今後数十年間、計り知れないイノベーションとビジネスの可能性をもたらす主要な基盤技術となります。そのため、次なる技術革新を傍観者として眺めていたくなければ、ヨーロッパに競争力のある宇宙産業を持たなければならないのです」と、Earlybirdの共同創設者Hendrik Brandis(ヘンドリック・ブランディス)氏はいう。「特にこれだけの規模のラウンドを完全にドイツの資金だけで支援できたことを、私は誇りに思います。これは、近年この国でスタートアップとベンチャー投資産業が確実に育っている明白な証です」。

カテゴリー:宇宙
タグ:Isar Aerospaceロケット人工衛星ドイツ資金調達

画像クレジット:Isar Aerospace

原文へ

(翻訳:金井哲夫)

超小型人工衛星による新たな宇宙利用を開拓する東大発宇宙スタートアップASTROFLASHが資金調達

超小型人工衛星による新たな宇宙利用を開拓する東大発宇宙スタートアップASTROFLASHが資金調達

超小型人工衛星を用いた新たな宇宙利用を開拓する東大発宇宙スタートアップ「ASTROFLASH」は12月7日、JKISS型新株予約権と銀行融資により資金調達を実施したと発表した。調達金額は非公開。新規引受先は、ゼロワンブースター、KDパートナーズ合同会社、その他個人投資家複数名など。調達した資金により、2022年頃に予定している初号機「視覚で楽しむ衛星」(仮称)の打ち上げに向けて開発を加速させる。

2019年11月設立のASTROFLASHは、日本の超小型人工衛星技術をリードしてきた、東京大学中須賀船瀬研究室発の宇宙スタートアップ。すべての人にとって宇宙を身近にすることをミッションとしており、従来の人工衛星よりはるかに安価で手軽な超小型人工衛星(CubeSat)を活用した新たな宇宙利用を実現することで、日本と世界の宇宙産業の拡大と発展に貢献するとしている。

今回の資金調達により、ASTROFLASHが2022年頃に予定している初号機「視覚で楽しむ衛星」(仮称)の打ち上げに向けて開発を加速させる。同事業は、「令和2年度(2020年度) 『産業技術実用化開発事業費補助金』(宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業)」や「東京都ものづくりベンチャー育成事業」(Tokyo Startup BEAMプロジェクト)の支援を受けており、それらの補助事業と合わせて初号機開発に万全の体制を期しているとした。また同社は、今後の事業拡大を見据えて引き続き調達活動を継続する。

ASTROFLASHは、多くの人が体感できる新たな宇宙利用の実証として、初号機「視覚で楽しむ衛星」の2022年打ち上げを予定。初号機は3Uサイズ(10×10×30cm。重さ4kg)のCubeSatで、光源装置を搭載することで地上から肉眼で明るく見えるよう運用されるという。

衛星は、世界中の都市へ明るさ最大-2等級以上の光を届けながら、その色や明るさをユーザーがスマートフォンなどでリアルタイムでコントロール可能。ASTROFLASHは、この「視覚で楽しむ衛星」の実現により、宇宙とつながる体験を多くの人に提供することを目指す。なお、同衛星は天文観測の妨げにならないよう、特定の地域でのみ視認されるよう運用される。

またASTROFLASHは、初号機の開発を進めると共に、「視覚で楽しむ衛星」のグローバルな活用を利用したPRなどを行うスポンサー企業を募集。衛星の命名権や運用方法をはじめとし、衛星を用いた様々なプロモーションについても調整することが可能としている。

さらに、初号機で実証した技術を用いて将来的には複数機でのフォーメーションフライトを行い、見える人工衛星の表現の幅を広げることを検討。これにより宇宙エンターテインメント事業を拡大させていくとともに、CubeSat技術によって可能となる新たな宇宙利用を開拓していく。

関連記事
東大宇宙系スタートアップ「Synspective」が同社初の小型SAR衛星打上げ予定日を公開
アクセルスペースが日本初の超小型量産衛星4機の打上日を2021年3月20日予定と発表
エースタートが宇宙特化型「スペーステック2号ファンド」を運用開始、ファンド規模は38億円
夢しかない宇宙!地表形状や高度・変位を測定する衛星開発のSynspectiveが累計109億円調達
衛星による毎日全地球観測インフラの実現へ、東大宇宙系スタートアップが総額25.8億円調達

カテゴリー:宇宙
タグ:ASTROFLASH宇宙資金調達(用語)日本(国・地域)

SpaceXが100回目のFalcon 9打ち上げに成功、新Cargo DragonをISSへ

米国時間12月6日、SpaceXは21回目となるNASAの商用再補給サービス(CRS)ミッションを行い、新しいDragonカプセル宇宙船をISS(国際宇宙ステーション)に打ち上げた。新しいCargo Dragonは前回よりも輸送能力が大きく、ISSと完全に自律してドッキングすることが可能になっている。

今回の打ち上げは、再設計されたCargo Dragonにとって初の打ち上げであり、NASAとの契約を更新したSpaceXの新たなCRSミッションにとっても初のミッションとなる。Cargo Dragonには宇宙ステーションとその乗組員のための物資と、そこで行われている研究のための実験用品や機器の両方を6400ポンド(約2902kg)搭載されている。新バージョンのCargo Dragonは、SpaceXの以前の貨物宇宙船より20%多く物資を運ぶことができ、実験材料の温度管理輸送のための動力付きロッカーの数が倍となっている。

新しいCargo DragonはCrew Dragonの改良版で、5月に行われたDemo-2ミッションと2020年11月のCrew-1フライトの間に宇宙飛行士をISSに運んでいる。搭乗中の宇宙飛行士を守るために早期の中心が必要な場合、Falcon 9からカプセルを迅速に遠ざけるための推進力を与えるCrew Dragonに搭載されていたSuper Dracoエンジンの取り外しなどが改良点となっている。また、これまでのCargo Dragonは3回までしか再利用できなかったが、新バージョンは5回に増えている。

今回の打ち上げは、SpaceXにとって100回目の商業用ロケットであるFalcon 9の離陸成功であり、そのうち43回は回収、改修されたブースターで行われている。日曜日のミッションにはFalcon 9の第1ステージ回収も含まれており、これまでに合計4回飛行している。これはSpaceXにとってこれまでに68回成功したブースター着陸となる。

CRS-21の次のステップは、米国時間12月7日月曜日の夜に予定されているCargo DragonとISSの間のランデブーだ。カプセルは、ISSの新しいドッキングアダプターの1つと自律的にドッキングするよう特別に設計されている。このアダプターは11月にCrew Dragonがドッキングしたときから存在しているため、今回のCargo Dragonは2台目のドッキングとなる。

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXNASACargo Dragonロケット

画像クレジット:SpaceX

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

宇宙スタートアップAevumが世界初の完全自動軌道ロケット打ち上げドローンを公開

大きなロケットを大量の燃料を燃やした噴射力で垂直に打ち上げるだけが、宇宙にモノを送り込む方法ではない。スタートアップ企業のAevum(エイブム)は、水平に離着陸できる無人飛行機と、小さなペイロードを高高度まで運ぶ第2段とを組み合わせ、あとはペイロード自身で宇宙まで飛行させるという画期的なローンチビークルの形式で、その型を多方面から打ち破ろうとしている。

Aevumのモデルは、実際には基盤技術の新分野を大きく切り拓いたというわけでないと、CEOのJay Skylus(ジェイ・スカイラス)氏はいう。米国時間12月3日のRavn Xランチビークルの公式発表に先立ち、私は同氏に話を聞いていた。これまでにNASA、Boeing(ボーイング)、Moon Express(ムーン・エクスプレス)、Firefly(ファイヤーフライ)など宇宙産業の数々の有名企業やスタートアップで働いてきたスカイラス氏は、Aevumは、ほとんど既存の技術で成立する、ほぼ再利用可能な完全自動の小型ペイロード放出システムに特化した企業だと私に話した。

彼がいうように、Raven Xは現在あるジェット機とそうかけ離れた形状をしているわけでもなく、明らかにPredator(プレデター)などの地球上ですでに運用されている無人航空機とよく似た印象がある。このローンチビークルは、全長が80フィート(約24m)、翼幅は60フィート(約18m)、ペイロードを含めた最大総重量は5万5000ポンド(約25トン)。 いまのところ、このシステムの70%が再利用可能だが、比較的近い将来の目標は、再利用率が95%になるよう改良を重ねていくことだとスカイラス氏は話していた。

画像クレジット:Aevum

Raven Xの放出システムは、即応放出が可能なデザインになっており、小型衛星をわずか180分間で軌道に載せることができる。しかもその後、別の衛星を搭載して再び軌道に放出するための準備を短時間で整える能力も有する。同機は民間航空会社が使っているものと同じ、普通のジェット燃料を使用する。また、「実質的にどんな天候でも」離着陸が可能だとスカイラス氏はいう。離着陸も、普通の1マイル(約1.6km)滑走路を備えた飛行場ならどこでも行えるという。つまり理論上は、世界中で使われているどの空港でも離着陸可能ということだ。

他のロケット打ち上げスタートアップとAevumが決定的に違う点は、彼らが提示しているものは理論ではなく、また開発中のものでもないということだ。Raven Xには、すでに有料顧客がある。米国政府との10億ドル(約1040億円)の契約もその1つだ。最初のミッションは、米空軍のASLON-45小型衛星の打ち上げだ(2021年後半を予定)。さらに、今後9年間に20のミッションを実行する契約を、米空軍宇宙ミサイルシステムセンターと交わしている。事実、Aevumの量産型ローンチビークルの納入はすでに始まっているとスカイラス氏は話していた。

米国防省は、もう長い間、即応可能で短いターンアラウンドで打ち上げができるローンチシステムを懸命に探してきた。それは、Astra(アストラ)などの企業の目標と合致する。Astraは当初、DARPA(米国防高等研究計画局)による同様システムのコンテストに応募し、Rocket(ロケット)小型ランチャーで契約を勝ち取ることを目標にしていた(その後コンテストは勝者を出さずに終了)。Aevumのシステムには、基本的に既存の航空施設で完全に運用できるという付加的な利点もある。しかも、Virgin Orbit(バージン・オービット)が採用している打ち上げモデルと見た目はよく似ているものの、人間のパイロットを搭乗させる必要もパイロットを危険にさらす恐れもまったくない。

Aevumは、Raven Xを提供するだけでもない。打ち上げサービスで端から端までの徹底したロジスティックスを取り仕切ることも目指している。それには、ペイロードの輸送と組み付けも含まれる。これらの作業は既存の打ち上げサービスを提供する企業では見過ごされがちであったり、手薄になっている部分だとスカイラスス氏は話す。その上、ペイロードを製造する企業の多くは、稼動状態の小型衛星を実際に軌道に載せるまでの作業が、費用と時間のかかる複雑な仕事であることを知らないという。同スタートアップはまた、組み付けサービスにおいては「一から作り直す」ことはしない。スカイラス氏によると、同社は幅広い既存企業と提携しており、どこもこの分野で十分な実績を誇っているからだ。ただ、スカイラス氏が公共セクターと民間セクターの両方で想定しているような消費者向けサービスを提供しようという動機も必要性も、これまでなかっただけだ。

もうSpaceX(スペースX)のような企業は必要ないとスカイラス氏はいう。むしろ、SpaceXのおかげで、これでは政府機関との大型契約や、限られた数の大手既存ロケット企業のミッションに協力するという閉鎖的な形でのみ生きてこられた航空宇宙企業が潤うようになった。それらの企業は、費用対効果の高い通信ソリューション、環境観測、輸送、防衛などの目的の小型衛星をはじめとするペイロードを軌道に送り込む市場が大きく拡大し、オープンに仕事ができるようになった。

Aevumのソリューションは明白で確実な需要に対して、リスクプロファイル、再利用性、コスト、柔軟性といった側面に利益をもたらす形で応えるものだと、はっきり聞こえる。同社が実利を得る初めてのミッションは、潜在顧客も競合他社も、しっかり見ておく必要がある。

カテゴリー:宇宙
タグ:Aevumロケット

画像クレジット:Aevum

原文へ

(翻訳:金井哲夫)