Virgin GalacticのSpaceShipTwo、2度目の動力飛行でマッハ1.9――宇宙観光に一歩近づく

Virgin Galacticが開発している宇宙往還機、SpaceShipTwoは2度目の動力飛行に成功した。ロケットエンジンを装備したこの航空機は将来旅客を乗せて宇宙に飛び立つことを目標としている。今日(米国時間5/29)テスト飛行したVSS UnityはSpaceShip Twoの2号機で、 高度35キロ、マッハ1.9、時速2100キロに達した。

Unityの最初の動力飛行は約2ヶ月前だった。Virgin GalacticはSpaceShip Twoの1号機Enterpriseは 2014年、テスト飛行中に操縦ミスで空中分解し死亡事故を引き起こした。

これ以後、多くの改良が加えられたが、Virgin Galacticの宇宙飛行システムの基本は変わっていない。伝統的な設計の双胴ジェット母機、WhiteKnightTwo(今回の機体はVMS Eve)がSpaceShipTwo (Unity)を吊るして高度万7000メートルまで上昇し、そこでSpaceShip Twoを切り離す。SapceShip Twoはロケットに点火し、大気圏外に飛び出した後、滑空飛行で基地に戻り、通常の航空機とほぼ同様のスタイルで滑走路に着陸する。

今回も厳密にマニュアル通りのフライトを行ったが、4月のテストに比べると目標ははるかに高く設定されていた。ロケットは延べ31秒間噴射され、SpaceShip Two特有の尾翼を直角に折り畳むフェザリング・システムは順調に作動し、機体の速度を減少させた。

Unityは今日のテストの2倍の速度を出せるようデザインされている。もちろんハードルは無理なく徐々に上げていく必要がある。システムはまず余裕を持った状態でテストを繰り返し、さらに過酷な条件に備えることになる。

Virginグループのファウンダー、リチャード・ブランソンはプレスリリースで「Unityが上昇して超音速を達成したのはまったくすばらしい。われわれはゴールにまた一歩近づいた。チームにおめでとうを言いたい」と述べた。

私はVirgin Galacticにテスト飛行に関するいくつかの詳細と次の飛行計画について質問しておいた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ジェフ・ベゾス、野心的な月植民計画を説明――宇宙協会のカンファレンスでアラン・ボイルと対談

Amazonのファウンダー、CEOのジェフ・ベゾスには月で実行したいビッグ・プランがある。すでに無数の実用衛星が軌道を回っているが、この宇宙テクノロジーをチューンアップすすれば月植民のプラットフォームになるという。この事業はNASAやESA(欧州宇宙機関)との協力の下に実行するのがベストだが、必要とあればベゾスはBlue Origin単独でもやり遂げるつもりだ。

ロサンゼルスで開催された米国宇宙協会の国際宇宙開発カンファレンスでベゾスは著名な科学ジャーナリストのアラン・ボイルと対談した。 ここでベゾスは月を製造業の拠点とするアイディアを説明した。これは地球の資源を守ることにも大いに役立つという。

「近い将来、といっても数十年、もしかすると100年後かもしれないが、現在われわれが地表でやっている仕事の多くが宇宙でもっと簡単にできるようになると思っている。もっとエネルギーが得られるようになるだろう。われわれは地球を離れるべきだ。われわれは宇宙をもっと使える場所にすべきだ」とベゾスは述べた。

ベゾスは、「ある種の鉱物や資源など地球でなければ手に入らないものがある」としながら、月への製造業の移転は必然的だと述べた。

月のある部分では太陽光が24時間常に利用でき、太陽光発電に理想的だ。また地下水の存在も探知されている。また粉状の月の表土は資源として魅力的だ(埃を吸い込まないようご注意)。「文字通りおあつらえ向きだ」とベゾスは述べた。

ベゾスは自分が設立したBlue OriginとNASAが月の利用で提携することを求めている。この月着陸船は月に植民して製造業の拠点する可能性を探るためのものだ。ペイロードは5トンで、これだけあれば月面利用に関して本格的な調査が行えるはずだ。

もちろん現在のところ、これらは可能性に過ぎない。 Blue Originが開発したロケットはカーマン・ラインを超えて低い高度に上昇することに成功したに過ぎない。

このNew Shepardの後継となるNew Glennロケットは軌道周回能力を備え、2020年代に入って実際に発射される計画だ。しかしベゾスは月利用計画に確信を持っており、ロケットが完成するまでプロジェクトを進めるのを待つつもりはない。

月植民計画は国際協力事業となるべきだとベゾスは信じている。国同士が競争するのではなく、各国は製造、居住の設備を共有し、「ルナー・ビレッジ」として力を合わせて目標の追求にあたるべきだという。

この高邁な目標を追求するBlue Originは現在のところベゾスが私財を投じるプロジェクトとなっている。ベゾスはこの事業を「誰かが引き継ぐか、私が破産するまで続ける」と述べた。ボイルとベゾスは後者の可能性はまずなさそうだという点で意見が一致した。

New Shepardの乗員カプセルのパラシュートによる回収成功を報じるTechCrunch記事

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SpaceX、明日NASAの重力観測衛星を打ち上げへ――地球の水循環をモニター

明日(米国時間5/22)打ち上げが予定されてSpaceXのFalcon 9ロケットには5基のIridiumコミュニケーション衛星と2基のNASAの観測衛星が搭載される。Iridium衛星の高度は800キロだがNASAの衛星は480キロ前後なのでFalcon 9は複雑な機動をする必要がある。NASAのGRACE-FO衛星は地球の重力を精密に測定して水の循環をモニターするのが目的で、いわばレーシングカーがシケインを抜けるような動きをする。

もちろん宇宙にシケインなどはないし、衛星のスピードも時速何万キロと桁外れに速い。しかし速度が変化する点は同じだ。

Falcon 9からNASAの衛星は一つが上方に、一つが下方に分離される。2つの衛星が220キロ離れたとき、下方の衛星が加速して他方の衛星の軌道に同期する。この動作には数日かかるが、Falon 9自身はNASAのGRACE-FO衛星を放出すると10分後にはIridium衛星打ち上げのためにエンジンを再点火する。

GRACEはGravity Recovery and Climate Experiment(重力取得による気候実験)の頭文字でFOはフォロー・オンの意味だ。Gravity Recovery and Climate Experimentはドイツの地球科学研究センターとの共同プロジェクトだ。オリジナルのGRACE衛星は2002年に打ち上げられ、15年間にわたって地球の水(地下水を含む)の循環をモニターしてきた。これは気象学の進歩にきわめて大きな影響を与えたが、今回のGRACE-FOはさらに精度をアップさせてその続きを行う。

地表の大きな質量の上空を一対の衛星が通過すると重力の変化によって軌道に微小な変動が起き衛星の間隔が変動する。これによって地表とその地下のようすを詳しく知ることができる。オリジナルのGRACEではこれによって地下の水を探知した。GRACE-FOにはレーザー測距装置が装備され、衛星間の距離測定の精度が文字通り桁違いにアップしているという。

今回用いられるロケットはこの1月にZuma衛星を打ち上げたその同じ機体だ。ZumaはFalconの2段目から無事に放出されたものの、衛星の不具合により軌道投入に失敗している。機密ミッションだったため何が起きたのか正確な情報がほとんどないが、SpaceXに原因がなかったことだけは間違いない。

Falcon 9は明日午後12:30にカリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から発射される予定だ〔日本時間は水曜日の明け方、4:30〕。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Orbital ATK、ISS向け重量物運搬ロケットを打ち上げへ(日本時間5/21夕方)

東海岸で早朝に起きた人は、3トン以上の貨物を国際宇宙ステーションに運ぶロケットの打ち上げを見られるかもしれない。東海岸時間5月21日(月)4:39(日本時間17:39)にバージニア州ワロップス島のNASA施設から打ち上げ予定のミッションは、天気がよければOrbital ATKにとって9回目のISSへの貨物輸送になる。

ロケット、Antaresの打ち上げは昨年11月以来で、当初は今日に予定されていたが、検査と天候の好転を優先して延期された。宇宙船には、補給物資、部品、装置のほか、ISS科学研究のために設計された小型衛星、CubeSatが3基積載される。CBSによると、量子物理学の研究のひとつとして「原子を絶対零度より10億分の1度高い温度まで冷却する実験」が行われる。

東海岸で早起きして見晴らしのよいところにいる人は空を見上げてみよう。Space.comの 説明によると、始めは流れ星のようだったものが彗星のように大きくなり、発射から4分半後頃にはロケットの噴煙が太陽光を受けて光り輝く。

この打ち上げは同社がNASAと契約したISSミッション11回のうちの1回で、あと6回追加される可能性がある。SpaceXは現在20回のミッションを契約している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASAの惑星探査衛星TESSが星だらけの最初の試験画像を送ってきた

先月NASAが打ち上げた衛星TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)は、何千もの星の中に地球に似た太陽系外惑星を探すことが目的だが、このほど最初の試験画像を送ってきた。それはとりあえずざっと撮ったもので“科学品質”のものではないが、それでもミッションの規模を伺わせるに十分だ。TESSが調べる領域は、この画像がとらえている領域の400倍の広さだ。

上図はケンタウルス座周辺のスターフィールドだが、2秒間の露出で20万あまりの星をとらえている。TESSにはこのような画像を撮るカメラが4基あり、それらをすべて同時に使い続ける。27日かけて二つの軌道を通り、宇宙のそれぞれ異なる領域を観察する。

下図は、中央のカメラだ:

これらのスターフィールドの高解像度の画像を繰り返し撮ることにより、地上のチームはわずかに暗くなる星(恒星)を見つけ、その星と太陽系の間を惑星が通過したことを検出する。この方法は類似のKeplerミッションに比べてはるかに多くの星を観察でき、比較的狭い視界でも、暗くなる星だけに着目することによって、今後調べる対象となる何千もの太陽系外惑星の証拠を見つける。

TESSはやっと昨日(きのう)、月からの重力アシストをもらって、最終軌道に接近できた。5月30日の最後のエンジン噴射によりその操作を終了し、その作者たちが設計したきわめて偏心的でまだ試されたことのない軌道に乗る。

軌道に到達し、すべてのシステムが良好なら、TESSが地球にもっとも接近する二週間おきの機会に、新しい画像を送ってくる。初めての、完全に調整された利用可能な画像、通称“first light”は、6月の予定だ。

画像クレジット: NASA

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

NASAの火星着陸探査機、順調に飛行開始――InSightの火星到達は11月

NASAはAtlas Vロケットを予定どおりの時間に打ち上げた! 現在第2段ロケットの燃焼が11秒になったところだ。ブースターは正常に分離された。

リフトオフ! 人類の新しい火星ミッションは地球を出発した! @NASAInSightは火星に向かう6ヶ月の宇宙の旅に出た。 到着後、火星の活動を詳しく調べ、この岩だらけ惑星の成り立ちを理解する手助けとなるはず。
https://t.co/SA1B0Dglms pic.twitter.com/wBqFc47L5p

フェアリングは花びらのようにきれいに分離した。2段目、Centaurロケットはあと数分弾道飛行を続ける。発射ブログはこちら。https://t.co/50dnoQSHB8

アップデート: 打ち上げ後17分。ロケットは軌道に投入された。霧が出ていたものの、人類初となるアメリカ西海岸のバンデンバーグ空軍基地からの打ち上げはすべて順調に進行した〔これまでの火星探査機は東海岸のケープカナベラル基地からの打ち上げ〕。

メインエンジン停止(MECO)を確認。 @ULALaunch#AtlasVロケットは順調に @NASAInSightを火星に向けて推進している。 https://t.co/SA1B0Dglms #InSight pic.twitter.com/YjCuQ0dhRB

アップデート: 打ち上げの最終段階も無事に終了。火星の成り立ちを詳しく調べる科学的機器を満載したミニ宇宙船、Mars Cube One(MarCO)は2段目Centaurロケット頭部のディスペンサーから無事に切り離され火星に向かった。

探査機は自立飛行に入った。#AtlasVロケットからの分離を確認。これでいよいよ火星#Marsに向けての6ヶ月の旅が始まる。打ち上げブログはこちら。https://t.co/50dnoQSHB8 pic.twitter.com/aQjGnvUvAc

【略】

〔日本版〕InSight探査機のミッションと構造を詳しく紹介したTechCrunch記事はこちら

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

NASAのInSight火星着陸機は、赤い惑星を掘り下げる

NASAによる最新の火星行ミッションであるInSightは、土曜日の早朝に打ち上げられる予定だ。宇宙旅行や惑星学における史上初の探究が数多く行われる。着陸機の装置は惑星表面を探査し、前例のない精度で地震活動をモニターする。またロケットに同乗する1対の小型のCubeSats(小型衛星)は小型宇宙船の惑星間旅行の可能性をテストする。

太平洋時間で土曜日の朝4時5分(日本時間では土曜日の20時5分)が、最初の発射予定時間だが、もし天候が悪けれはその後に引き続き再トライが行われる。打ち上げウィンドウが閉じてしまう6月8日まで、ずっと雲に覆われ続けるという可能性はほとんどないだろう。

InSight(洞察という意味)は単にイカした名前だというだけではない、それはInterior Exploration using Seismic Investigations, Geodesy and Heat Transport(地震調査、測地学、熱伝達を用いた内部探査)という、少々無理もある頭文字を並べたものだ。その搭載された機器は私たちに火星の内部について教え、火星そして地球を含む太陽系内の岩の惑星についての、過去と現在に関する洞察(insight)を与えてくれるだろう。

NASAのジェット推進研究所に所属する、本ミッションの主任研究員であるBruce Banerdtは、20年以上にわたってこの任務を推進してきているが、これは彼のほぼ全職業人生に相当する。

「これは、夏の間にタイヤショップで働いたこと以外で、私がやったことのある、唯一の職業なのです」と彼はNASAによる最近のポッドキャストで語っている。もちろん彼は、他の多くのミッションにも取り組んでいるが、このミッションに対する彼の献身は明らかに実を結んだ。実際には、当初は2016年に打ち上げの予定だったが、機器のトラブルのために彼らは次の打ち上げウィンドウを待つ羽目になった ―― それが今なのだ。

InSightはPhoenixスタイルの着陸機で、その大きさは小さな車ほどであるが、火星に向けて高速弾よりも速く発射する。打ち上げそのものも初の試みだ、NASAはこれまで惑星間ミッションを西海岸から打ち上げたことはない、しかし今回の条件を考えたときには、カリフォルニア州のヴァンデンベルク空軍基地が最良の選択肢だったのだ。それは行き先を決めるために重力の支援を行う必要もない。

ご存知ですか?私は米国の西海岸から別の惑星に飛び立つ最初の宇宙船になります。私の備えるロケットはそれが可能です。パワーは充分なのです
打上の詳細:https://t.co/DZ8GsDTfGc pic.twitter.com/VOWiMPek5x

「フロリダ州に行って、軌道に乗せるために地球の回転を利用しなくとも、私たちは素直に推進力を得ることができるのです」とBanerdtは同じポッドキャストの中で述べている。「そして南カリフォルニアでは、おそらく1000万人の人たちに見えるような形で打ち上げることができるでしょう、なにしろこのロケットはロスアンゼルスとサンディエゴのそばを飛行するのです。そしてもし朝4時に起きる気のある人は、本当に素晴らしい光のショーをその日見ることになるでしょう」。

ロケット下段のThe Atlas Vが着陸機を軌道に載せ、上段のCentaurが火星に向けて着陸機を押し出す役割を果たす。そののち6ヶ月の巡航を経て、地球カレンダーの11月26日に火星に着陸する予定だ。

その着陸は、Phoenixやその他の多くの着陸機同様に、エキサイティングな(かつ恐ろしい)ものになるだろう。火星の大気に突入する時点で、InSightの速度は時速2万1000キロ以上になっているだろう。まずそれは大気そのものによって減速し、新しい強化熱シールドとの摩擦によってその速度の90%が失われる。残りの速度のさらに90%がパラシュートによって減速される。しかしそれでもまだ時速160キロ以上の速度が残っている。もちろんこのままでは着陸はうまくいかない。そこで、地上数千フィートの場所でそれは着陸ジェットに移行する。それによって着陸機は狙った場所と方向に、安全な時速8.7キロほどで着陸することになる。

粉塵が(文字通り)落ち着いて着陸機がすべてが正常に動作していることを確認した後、着陸機は扇状の太陽電池(Solar array)を展開して作業を開始する。

ロボットアームと 自分を叩くロボットモグラ

InSightのミッションは、これまで以上の詳細さと深さで、火星の地質学に切り込むことだ。そのために、3つの主要な実験に向けて、機器が準備されている。

まずSEISは、小さな野球ドームのような外見の、地表に置かれる6台の地震センサーの集まりで、足元の地表の微かな振動に至るまでモニターを行う。微小な高周波振動や長周期振動も、すべて検知されることになる。

「地震学は、私たちが知っているほとんどすべてのものを得るために使った方法です、地球の内部についてのすべての基本的な情報を与えるもので、そしてアポロ時代には月の内部の性質を理解し測定するために用いられたのです」とBanerdtは言う。「そこで、やはり同じ技法を使いたいのですが、今回は火星の地震や、隕石の衝突によって引き起こされる振動を利用するのです。そのことで、核に至る深い火星の内部を探ります」。

熱流と物理特性プローブ(Heat Flow and Physical Properties probe)は興味深いものだ。それは、ミッションの継続中、惑星表面下の温度を継続的に測定する、だがそうするためにはもちろん、地面を掘り下げなければならない。その目的のために、チームが用意したのは「自分を叩く機械モグラ」だ。わかり易い名前だと思うよね?

この「モグラ」は太さ1インチ(2.54センチ)長さ16インチ(40.6センチ)ほどの中空の釘状のもので、内部のバネ仕掛けのタングステンブロックを使って自力で岩の中に入っていく。惑星表面における日々の、そして季節的な温度変動を避けるためには、5000回から2万回の撃ち込みを行って深い場所にたどり着く必要がある。

そして最後のものは、巨大な釘、小さな野球ドームなどを必要としないRotation and Interior Structure Experiment(自転と内部構造実験)だ。この実験には、地球との無線接続を使用して、火星が自転するに伴い、InSightの位置を極めて正確に追跡することも含まれている。とても信じられないことだろうが、その誤差はわずか10センチ以内である、その位置の変動は、惑星の自転のゆらぎを意味しており、その結果内部の構造を知ることができる。70年代と90年代に行われた同様の実験のデータと合わせることで、惑星学者たちは核がどのように溶融しているかを知ることができるのだ。

「いくつかの点で、InSightは45億年前に火星が形成された初期段階の情報を取り戻す、科学的なタイムマシンのようなものです」とBanerdtは以前のニュースリリースで述べている。「それは、地球、月、そして他の太陽系の惑星を含めて、岩石の塊がどのように形成されるのかを知るのに役立ちます」。

またInSightに備えられたロボットアームは、単に岩石を掴み上げて観察するだけでなく、その格納庫からものを取り出して作業場所に置く役割も果たす。そのアームの先の小さな指は、設置する各機器の上にあるハンドルを、人間のように掴むことができる。まあ、正確には多少やり方は違うかもしれないが、原則は同じだ。約244センチの長さであり、平均的な宇宙飛行士よりも遠い場所に手が届く。

ロケットに乗ったキューブ

MarCO CubeSatの1つ

InSightは間違いなく主要なペイロードだが、荷物はそれだけではない。同じロケットで打ち上げられるのは、Mars Cube OneまたはMarCOと呼ばれる2機のCubeSatである。それらは自ら動きを調整して軌道に乗るような制御手段を持たないので、ただInSightが着陸する際に火星の横で打ち出されるだけだ。

CubeSatのようなものはいつでも打ち上げられているじゃないか?もちろん ―― ただし地球軌道の上に。これはCubeSatを別の惑星に送り出す最初の試みである。成功した場合には、何ができるかに制限はない ―― ただしパンケースより大きなものを詰める必要はないと仮定しての話だが。

今回は特に超重要な実験は想定されていない。1つが故障することに備えて2つ用意されていて、どちらもデータを送受信するUHFアンテナと、何台かの可視光低解像度カメラを搭載しているだけだ。実際ここで行われる実験が対象にしているのは、CubeSat自身と、その打ち出し技術である。彼らが火星の軌道に乗れば、InSightの信号を地球に送る手助けをしてくれるかもしれない。もし彼らがそれ以上の働きを見せてくれたとしたら、それはあくまでもボーナスというものだ。

InSightの打ち上げはここから追うことができる。また昔からある擬人化されたTwitterアカウントもある。

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(翻訳:sako)

超機密衛星Zumaの失敗はSpaceXに責任なしと米政府も結論――ペイロードアダプターの不具合だった

今日(米国時間4/9)のWall Street Journalの報道によれば、今年初めに軍事衛星Zumaの打ち上げが失敗した問題で、アメリカ政府は打ち上げを実施したSpaceXに責任はないと判断した模様だ。Zuma衛星はFalcon 9に搭載されて発射されたものの、軌道投入に至らず太平洋上に落下して破壊された。

Zuma衛星の目的その他の詳細はきわめて高度な秘密事項でうかがい知ることができないが、 この衛星の開発費用は35億ドルにも上っていたという。発射のもようは通常どおりライブで広く公開されたが、ペイロードは厳重に秘匿されていた。情報源によれば、2つの異なるアメリカ連邦政府機関が調査を行い、それぞれが失敗の原因はペイロード・アダプターにあったと結論した。ZumaをFalcon 9の2段目にセットするアダプターを改造したのは衛星を開発したノースロップ・グラマンだった。

記事によれば、このペイロード・アダプターは無重量状態では所定の作動ができなかったという。

ノースロップ・グラマンはペイロード・アダプターを下請け業者から購入し、同社で大きな改造をした。事情に詳しい人物によれば、同社の3回の地上試験ではいずれも正常に動作していたという。しかし衛星軌道に達した後、無重量状態になるとアダプターはペイロードをロケットから切り離すことができなかった。

情報源によれば、衛星のセンサーは状態を適切に地上に送信できなかったため、当初、地上では重大な問題が発生していることが認識できなかったという。2段目の高度が低下し大気圏に引き戻される軌道になって始めて地上では衛星がロケットからの切り離しに失敗していることが判明した。衛星は最終的に2段目から放出されたたが、ときすでに遅く、失敗回復のすべがない高度にまで落下していた。

Falcon 9による打ち上げの成功の中にもかかわらず、Zumaの切り離しが失敗したことは目立ったいてが、u衛星自体の機密性のためにこれまで詳しい状況は明らかにされていなかった。SpaceXのロケットは過去にはなばなしい失敗を何度か繰り返しており、信頼性に対する公衆のイメージは必ずしも高くない。そのため同社は事故後「Falcon 9の作動は万全だった」と発表し、同社のテクノロジーに原因があったのではないかという憶測を否定した。

その後、Zumaの失敗はSpaceXのせいではないとする報道が相次いだ。政府による公式の調査も同様の結論に達したようだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

真菌建材から形を変えるロボット群まで、これがNASAの「野心的」最新プロジェクトだ

NASA Innovative Advanced Concepts program(NASA革新的先進コンセプトプログラム)は、おそらく馬鹿げているように聞こえるアイデアに、国家予算が使われていることを観察できる最適な場所だ。なぜならこのプログラムのマネージャーたちは、実現できたら本当に素晴らしい大風呂敷を狙っているからだ。

採択された研究者たちは約12万5000ドルと9ヵ月を与えられ「フェーズI」で自分たちのアイデアの実現に取り組む。これは気の遠くなるような作業か、ひたすら技術的に困難なものである。もし重要な進展が見られたり、そのコンセプトが有望であるとわかった場合には、「フェーズII」に進むことができて、ここではNASAの判断で、50万ドルまでの投資を受けることができる。

今年は、NIACプログラム担当者のJason Derlethによれば「特に競争は激烈でした。230以上の提案書が届き、その中からわずか25だけが採択されたのです」ということだ。それなりの数のフェーズII採択も行われた(おそらく昨年の採択者の何人かを覚えている読者もいるだろう)。

それらの多くをここに集め、できる限りのわかりやすい説明を添えてみた。NASAが考える未来の宇宙探索がどのようなものかを眺めてみて欲しい。

1:大気試験船の群


ただ1機の宇宙船を、厳しい大気の中を降下させて、ただ1箇所の測定値を集めるのではなく、それを数十の機体に分けて、数百マイルの範囲にわたってセンサーをばら撒けば良いのではないだろうか?これがLofted Environmental and Atmospheric VEnus Sensorsプロジェクトの背後にあるアイデアだ。このプロジェクトでは、降下中にお互いに協調しながら、より多くのデータを収集することにできる軽量ユニットの開発が目指されている。

2:小惑星の掘削

小惑星の中には何があるだろう?まだ誰も知らない。そしてそれを調査するためには大変な努力が必要とされる。高価な宇宙弾丸を作って撃ち込み、そのとき飛び散るものを観察する代わりに、隕石を使えばいいのではないだろうか?もともとそれらは宇宙の弾丸なのだし ―― それらを小惑星に撃ち込んでみれば

宇宙船から監視することなく、どうやって隕石を小惑星にぶつけるかが課題だが。

3:巨大な自己組立型望遠鏡

望遠鏡は一般的に、ひたすら大きなものが求められる一方である。しかし、本当に巨大なものを軌道に乗せることは簡単な話ではない。そして何かが上手く行かなければ、全てを廃棄することになりかねない。

その代わりに、ある研究者たちが提案するのは、数百もしくは数千の同一の宇宙船を打ち上げ、お互いを発見させながら、1つの巨大な面を構築させようというものだ。もし1つが壊れた場合には、他のユニットを送り込んでその場所を置き換えるのだ!

4:宇宙真菌

見知らぬ星の上で、居住区や作業区を作り上げることは、困難な作業だ。おそらく宇宙に馴化(じゅんか:生物が環境に慣れて変化すること)した様々な真菌類が、私たちを助けてくれることだろう。

とあるチームが、非常に強靭で、耐火性があり、絶縁性であり、成長させることが容易ないくつかの菌糸型素材を発見した。もちろん、それらが火星で生育可能かどうかはまだ検証されていない。

5:軌道上の小さなデブリ(破片)を検出する

軌道上のデブリ(破片)はその付近にいるもの全てにとって危険な代物だ。しかし小さくて動きの速い物体を検出することは困難である。このプロジェクトは、そのような物体がプラズマの中を飛行する際の一種の航跡を検出することを狙っている。高度400から1600キロメートルにある物体を「100個以下のキューブサット」を使ってマッピングするのだ。話を聞くだけなら簡単そうだ!

6:粒子ビームを用いた宇宙船の推進

巨大なレーザーを使用して宇宙船を推進しようという考えは、使われるレーザーの幅が数キロメートルに及ぶという事実を除けば、実用的である。

この非常に興味深いプロジェクトは、基本的にレーザービームを中性粒子の流れと絡ませようというものだ。粒子は光子の経路を限定する導波路効果を生み出し、光子は粒子が引き付けられる高エネルギーコアを生み出す。この「ソリトン」ビームはレーザー単独よりも細く強力で、宇宙船を光速の1/10まで加速することができる。

またクールな名前も付けられている。PROCSIMA(Photon-paRticle Optically Coupled Soliton Interstellar Mission Accelerator):光結合型光子粒子ソリトン恒星間ミッション加速装置だ。

7:「仮想」衛星ネットワークを展開する

これは非常に巧妙なプロジェクトである。本質的には、現在互いに数百フィート以内の場所に、例えば200機の衛星を配置することは不可能である。しかしそのような配置を行うことができれば、とても興味深いデータを収集することが可能だろう。

そこで、実際にそのような配置を行う代わりに、R-MXAS(Rotary Motion Extended Array Synthesis)プロジェクトは、すべてのセンサーを円筒状の衛星上に配置し、その衛星を「転がしながら」地球に対する動きと同期させて、移動しながらさまざまなセンサーを向ける。

麺棒に凹凸が刻まれたデザインを想像して欲しい。生地に沿ってそれを転がすことで、円筒上のパターンが2次元に展開される。それがここでの基本アイデアだ。

8:形を変えるロボット探索機

地球のような複雑な表面環境では、飛行、水泳、歩行、転がりなどの多くの運動形態を必要とする。同じことはエウロパ(木星の衛星)、火星、その他の目的地でも言うことができる。

Shapeshifterは、可能な限り多くの移動形態を持つロボットプラットフォームの構築を目指している。それはボールのように転がり、ドローンとして飛んだりホバリングしたり、魚雷のように水中を進み、それでいて「最小限のデザインで非常にシンプル」なものになる予定だ。

これは、依然としてSFの分野に片足を突っ込んだような話だが、私はこうしたものが拡大していくことを想像することが大好きだ。

9:蒸気式地表ホッパー

蒸気は19世紀と20世紀にはとても役に立った。それを21世紀に使ってはいけない理由はないだろう。

この小さな物体は、海のある世界に投入される、親着陸船がホッパーに電力と氷を供給する。ホッパーはその氷を蒸気に変換し、周囲へホップするための推進力を生み出す、これによって障害物を気にする必要はなくなる。彼らはこれを「完全地形非認識方式」(complete terrain agnosticism)と呼んでいる。

略語もぴったりだ。SPARROW (Steam Propelled Autonomous Retrieval Robot for Ocean Worlds):海洋世界のための蒸気推進型自律回収ロボットである(注:sparrow にはスズメという意味がある)。

10:反物質駆動装置

このコンセプトは、かつて存在していた「非現実的な量の反物質」を利用するという馬鹿げた考えを捨て去り、その代わりに「放射性同位元素陽電子触媒融合推進」を利用するというものだ、要するに反物質を生成しながら進むらしい。

まあ、いいんじゃない?

11:自律生活支援ロボット

新しい宇宙服たちは、背中に巨大な生命維持システムを装着する必要があるためにクールさが台無しになっている。それは外見を台無しにするだけでなく、嵩張るし重いものだ。

その代わりに、もし背中のユニットが、そばにいる犬のように横を一緒に移動してくれるとしたらどうだろう?まあ良いかも。とはいえ、露出したパイプが単一障害点にみえるので、私にはデザインの欠陥のように思えてならない。

12:火星フラッパー

このための技術は、それほど多くは存在してはいないものの、多くの点で簡単なもののように思える。ローバーまたはランダーを基地として、遠隔地の調査や標本採取のために飛行する小さな翼を持つドローンたちだ。

Marsbeeプロジェクトでは、特に火星の大気中で飛行する羽ばたき(フラッパー)ロボットを狙っている。チームの一部は既に地球上で飛行できるハチドリサイズの羽ばたきロボットを作成している。なので実現可能性が全くないわけではない。

13:小惑星を削り取るソフトロボット

これらの配備可能なロボットは、単一の高価な着陸装置を小惑星の表面に送り込むというリスキーなアプローチに対する代替手段だ。そのソフトな外殻は、着地を容易にし、地形にそって這って移動し、最終的にはフジツボのように表面をしっかりと掴むことを可能にする。

一旦固定されると、サンプリング機構が物質を表面から「削り取り」それらを待機中の宇宙船に送ることができる。

私はこれを昨年から覚えているが、デザインは少々改良されて、一種のパンケーキや虫のようなものから、花のようなものに進化している。

14:キロメートル幅の宇宙望遠鏡

このプロジェクトは、そのような望遠鏡があれば手に入るであろう様々な便益を追求することが目的で、キロメートル幅の望遠鏡を構築することそのものが目的ではない。便益のいくつかは明白だが、他のものはそうではなく、チームは研究室でそれをあれこれ研究している最中だ。

彼らはそれがどのように構築できるかも研究しているが、それはまだまだ遠い先の話である。彼らのデータは、キロメートル幅であろうとなかろうと、次世代宇宙望遠鏡の製作に役立つことだろう。

15:恒星間移動のためのレーザー推進

これも昨年から続くもう一つのフェーズIであり、この推進方法の難しさを例証している。良いニュース:レーザーの幅は10キロメートルに及ぶ必要はない…たったの2キロで大丈夫だ。悪いニュース:100メガワットの出力では不十分だ。必要なのは400メガワットである。

それでも、イオンエンジンを併用して移動するレーザー駆動の宇宙船のアイデアは有望であり、必要とされる高効率(50%超)の太陽電池は、それ自身興味深い研究プロジェクトである。

16:メガドライブ

いや、これはSEGAのものではない。これはMach Effect Gravity Assist driveシステムである。これは「加速度と内部エネルギーの変化が同時に起こる際の、物体の静止質量の一時的な変化」を利用する。私たちは、このシステムが「技術的に信頼できる物理学」に基づいていると確信している。。

これは(Emdriveのような)どちらかと言えば骨折り損の研究のように聞こえるかもしれない、しかしそれはこの種の研究につきものなのだ。そしてフェーズⅡも選択されたという事実は、それが何らかの成果を得る見込みがあることを意味している。

17:宇宙線からの宇宙船の保護

長期にわたる宇宙旅行の主な問題の1つは、放射線被曝である。もちろん、鉛やその他の遮蔽材を使用することはできるが、完全にクリーンなものにしたい場合には、有害な放射線を能動的に排除するシステムを最初から作る必要がある。それがこのプロジェクトの基本アイデアである。

本質的にはそれは巨大な環状マグネットであり、「銀河の宇宙線の大部分を偏向させる並外れた能力を持ち」、一次衝突から発生する二次粒子への対処の必要をなくすものである。

いやちょっと待った、実はまだ続きがある!磁気遮蔽は、物理的な遮蔽が少なくて済み、船体自体の必要質量が減少することを意味するのだ。これは超有望な技術なのだ。

18:自己給油式プローブ

太陽系の中で、木星以遠の惑星に到達することは、宇宙的尺度で言えば比較的簡単な仕事である。しかし、そこでサンプリングを行い、そのサンプルを地球に持ち帰ることは難しい!到着時に減速しなければならないだけでなく、帰る際には逆方向に加速しなければならないからだ。このためには燃料が必要だ。

The Nano Icy Moons Propellant Harvester(NIMPH)は、惑星や衛星の表面に着陸機を送り、地球に帰るために十分な燃料を作るために必要な材料を集める。これはまた、最初の打ち上げ質量を減らし、ミッションを行いやすくする。

19:海王星のトリトンで跳ね回る

トリトンは海王星の最大かつ奇妙な衛星である。文字通り、太陽系内の他のすべての衛星とは異なり、それは惑星の自転の反対方向に公転している。その表面は奇妙で、滑らかな部分と、凸凹した部分が交互になっており、その起源は冥王星に似たものだと考えられている。

その探査のために提案された着陸船は、凍った窒素を動力に使って飛び跳ねながら、その衛星の荒れた地形の上を移動することを狙っている。

20:太陽系外惑星の太陽重力レンズ画像

遥か遠方の太陽系外惑星を見ることは困難である。しばしばそれらを直接見るのではなく、その惑星の従属する恒星からの光を反射した光によって間接的に見ることになる。このプロジェクトは、太陽重力レンズの概念を利用することによって、より直接的なイメージングを可能にすることを目指している。

基本的には、太陽系外惑星から届き、私たちの太陽の周りで曲げられた非常に少量の光でも、それをモデル化することで一種の3D写像を作り出して見ることが可能なのである。

それはとても野心的なことのように聞こえるかも知れないが、もし物理学によって裏付けの計算が行われれば、30パーセク離れた太陽系外惑星のメガピクセルサイズの画像を得ることができるだろう。

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(翻訳:sako)

Virgin Galactic、VSS Unityの動力飛行に成功――2014年の事故以来、最初の宇宙往還機飛行実験

今日(米国時間4/5)、Virgin Groupの宇宙企業、Virgin Galacticは3年にわたって開発してきたロケット宇宙往還機の初飛行テストを行い、無事成功させた。発射母機のSpaceShipTwoは往還機、VSS Unityを吊り下げて離陸した。所定の高度に達した後、往還機は母機から切り離され、ロケットを30秒にわたって作動させた。これによりUnityはマッハ1.6まで加速された。

Virgin Galacticにとって2014年にSpaceShipTwo Enterpriseが悲劇的な事故により破壊されて以来、初の動力飛行テストだった。

前回の事故以後、リチャード・ブランソンの宇宙計画は大幅な見直しを迫られ、多数のパーツが再設計された。最近、実験はスピードアップされ、Unityの滑空テストに成功していた。

今日のテストパイロット、Mark “Forger” StuckyとDave Mackayの2人が母機から切り離されたVSS Unityを操縦した。オリジナルのSpaceCraftTwoと異なり、今回のUnityはVirgin Groupの企業、The Spaceship Companyによって製造された。同社はさらに2機の同型機を製造している。

Virgin Galacticは今回のテストで目標としていた高度、速度をまだ発表していない。今回の飛行はVirgin Glacticにとってきわめて重要なテストだったが、同社はこれまでできる限りメディアへの露出を避けてきた。これはメディアに豊富な情報を提供するイーロン・マスクのSoaceXとは対照的な方針だ。

アップデート:リチャード・ブランソンは実験の成功後、簡単な内容のツイートをしている。

Virgin Glacticは活動を再開、動力飛行に成功した。マッハ1.6。飛行データを検討した後、次のフライトに進む。いまや宇宙は手の届くところに来た。 ――リチャード・ブランソン

Virgin Galacticは再利用可能な宇宙往還機を開発、運用することを目的とする企業で、これまで同社の往還機は最高高度110キロの弾道飛行に成功している。1人あたり25万ドルの料金で乗客に宇宙観光を提供するのが目的だ。今回のテスト成功で事業のフィージビリティーは大きくアップした。同社は前回の死亡事故から立ち直ったが、万一同様な事故が再発すれば会社にとって致命的となるだろう。

〔日本版〕Virgin Galacticがさきほど公開したビデオ映像。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SpaceX、Dragon補給船打ち上げ成功――ISSから故障したロボットを持ち帰る予定

先ほどSpaceXはCRS-14ミッションを開始し、Falcon 9によるDragon補給船の打ち上げに成功した。これは国際宇宙ステーションに対する14回目の物資補給で、再利用されたDragonはISSに物資を補給した後、故障したロボット、Robonaut 2を持ち帰る予定だ。

今回のDragon補給船が宇宙に出るのはこれが2回目だ。最初の飛行は2年前のCRS-8ミッションだった。 Falcon 9ロケットも再利用だが、今回の飛行が最後となる。つまりブースターの回収は行われない。

補給物資には食品など生活必需品の他に 興味深い科学実験設備が含まれている。ASIM( Atmosphere-Space Interactions Monitor)は大気と宇宙の相互作用を観測して雷発生のメカニズムの解明に役立てようというものだ。スプライト、エルブ、ブルージェットなどと呼ばれる上層大気で強い光が放たれる現象が観測されている。これはすべて高圧放電だという。

エルブ、レッドスプライト、ブルージェット等の発生する高度

また宇宙における加工テクノロジーに期待が集まるなか、新型のHP 3Dプリンターも宇宙ステーションに運び込まれる。マイクログラビティ(微小重力)状態を利用した積層プリンティングの実験が行われる予定だ。

生理学の分野でも各種の薬剤の代謝にマイクログラビティがどのように影響するかモニターする実験が行われる。また植物の生育に関する影響も調査される。

Dragon補給船はISSに1ヶ月ほど結合され、慎重に物資の搬入、搬出が行われる。故障したRobonaut 2は数年前からISSで運用実験が行われてきたが、最近このロボットにいくつかの不調が発見された。日曜日のNASAの記者会見によると科学者は回路のショートなどの電気的不具合を疑っているという。

しかしISSに修理のためのツールも時間もないため、Robonaut 2は地上に帰ってメンテナンスを受けることになった。ロボットは1年程度後に再び宇宙に向かう。その間、宇宙ステーションには多少余分の空間が生まれる。

画像:NASA

トップのビデオでは14:30からミッションの説明があり、19:50で打ち上げとなる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

中国の宇宙ステーション、天宮1は間もなく墜落――重量9.4トン、正確な落下地点は不明

「上がったものはやがて下りてこなければならない」とことわざに言うが、使命を終えた衛星にも当てはまる。中国の最初の宇宙ステーション、天宮1( Tiangong-1)は7年近く軌道にあったものの、制御不能となり降下を続けている。今夜〔太平洋夏時間〕にも盛大な火の玉となって太平洋上に落下するはずだが…正確な場所はわからない。

不明な要素が多すぎるため天宮-1の軌道は推測するしかない。専門家が一致しているのは向こう24時間以内に大気圏に再突入するだろうという点だ。落下地点は北緯43度から南緯43度の間だという。

しかしESA(欧州宇宙機関)の専門家が最近説明したところによれば、巨大な物体が超高速で上層大気に突入するという事態の性質上、正確な時刻、地点はそれが起きるまで分からないという。

それだけ聞けば深刻な事態のように思えるが、実際にはさほどでもない。

天宮1はバスくらいの大きさで重量は9.4トンある(The Aerospace Corporationのビデオではスクールバスと比較されている)。しかし同サイズの隕石に比べると天宮1は内部が空洞なのできわめて軽く、脆弱だ。大気圏に突入すれば容易にばらばらになる。宇宙ステーションははるか以前に放棄されており乗員はいない。他の有人衛星と衝突する可能性もないという。

天宮1は2011年後半に2つの衛星として打ち上げられ、軌道上で結合された。中国の宇宙開発計画で最初の試みだった。その後2年にわたって3基の神舟(Shenzhou)衛星が宇宙ステーションとのドッキングに成功している。神舟8は無人のロボット衛星で、神舟9、10はそれぞれ3名の宇宙飛行士が搭乗していた。

天宮1は中国の宇宙ステーション技術をテストするプラットフォームだった(その後2016年に天宮2が打ち上げられている)。2013年には予定されたミッションを終えて退役した。中国の宇宙機関はスラスターを噴射させて天宮1を洋上に落下させる予定だった。いかに危険は小さいとはいえ、よその国にスペースデブリを振りまくのは良いマナーとはいえない。

The Aerospace Corporationによる図解。天宮1の軌道高度は120km程度で、高度80km程度まで降下したところで分解し、大きな破片は幅70km、長さ2000kmの区域のどこかに落下する。

残念ながら2年前から宇宙ステーションは地上からの指令に反応しなくなった。つまり制御された落下は不可能になった。落下日時が推定されたのは数ヶ月前だ。

テレメトリーが作動していないので、天宮1の現状は外部からの観察に頼るしかない(ドイツのフラウンホーファー研究所のレーダー画像)が、不確定要素が多数あるため正確は予測はできない。24時間程度の誤差で落下予測が可能になったのは先週のことだ。

天宮1の落下を目撃できれば大型隕石が大気圏に突入するときのような火の玉が出現するだろう。宇宙ステーションが上層大気と衝突してランダムに旋転し、分解、炎上するところは中国の宇宙機関の表現によれば「壮大な」宇宙ショーになるはずだ。おそらく1分以上目視可能だろう。

落下が近づくにつれて予測精度はさらに改善される可能性があるので、新たな情報があれば記事をアップデートする。

画像:Fraunhofer

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

FCC、SpaceXの衛星ブロードバンド計画を承認―― 4425個の小型衛星で世界をネットワーク

数千個の小型衛星のネットワークで世界的ブロードバンド網を建設するSpaceXの計画にFCC〔連邦通信委員会〕が承認を与えた。しかもこの計画は(少なくとも宇宙計画の一般的スピードでいえば)近々実行に移されるはずだ。承認された計画によれば、SpaceXは向こう6年間に計画されている衛星の半数を打ち上げることになっている。

FCCのAjit Pai委員長が先月メモを発表して、アメリカ企業による世界初の衛星による地球規模のブロードバンド網を建設する計画の称賛したため、SpaceXの提案がFCCから承認されることは確実になっていた。無論この称賛にイーロン・マスクも異議を唱えていない。

SpaceXのCOO、Gwynne ShotwellはFCCの承認に関連してTechCrunchに次のようなコメントを寄せた。

われわれはSpaceXの衛星ブロードバンド計画をFCCが詳細に調査した上で承認したことを喜んでいる。きわめて複雑な計画であるため、今後なすべきことは数多いが、FCCの承認はSpaceXが次世代の衛星ネットワークを建設する上できわめて重要なステップだった。このサービスは経済的であり、信頼性が高く、重要な点として現在インターネットに接続する手段を持っていない人々を結びつけるために特に役立つものとなるだろう。

Starlinkと呼ばれるSpaceXの計画は、OneWeb、Spireなど他の衛星事業者から反対を受けていた。単に事業のライバルが増えるということ以外に、何千個もの衛星が軌道と電波の帯域を混雑させることに対する懸念だ。

SpaceXのインターネット衛星網:FCCへの申請書から

たとえばOneWebは、SpaceXの衛星軌道は自社の衛星から高度にして125キロ以上離すべきだととしている。もちろん衛星間の干渉を防ぐ必要はあるが、それにしてもこれほどの距離が必要かどうかは疑わしい。

しかし軌道上に散らばるスペースデブリを極力減らすべきだという点はFCCによっても留意された。【略】SpaceXとしては計画を実行に移す前にさらに研究を続ける必要がある。

しかも問題は早急に解決する必要がある。FCCはSpaceXに対して「急がないなら承認を再検討する可能性もある」としている。FCCでは2024年3月29日までに計画している衛星の50%を打ち上げるよう求めている。【略】SpaceXでは最終的に1万2000基の衛星によるネットワークの構築を計画しているが、今回承認されたのは軌道高度が高い4425基の分だ。残りの衛星は高度と使用する周波数帯が異なるため別個の承認を必要とする。

Falcon 9がStarlink衛星を実験打ち上げ。2月22日

なおFCCのRosenworcel委員は、委員長のものとは別の声明で宇宙の商業利用に関するFCCの諸規制を根本的に見直す必要があると述べている。

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ボウイのLife on Mars?をBGMにFalcon Heavyが宇宙へ――メインブースター回収失敗映像も

先月のFalcon Heavyの打ち上げを見た人も見損なった人々もこの短いビデオクリップは興味深いだろう。イーロン・マスクのTeslaと宇宙服を着たStarmanが準備されるようすから、ロケットの搬出、打ち上げ、さらにはブースターの回収まですべてがプロの手によってビデオ化されている。

デヴィッド・ボウイのLife on Mars?をBGMにした2分のクリップにはダミー・ペイロードの搭載、ハンガーから引き出されるロケット、オンボードカメラで撮影されたTeslaとStarman、青い地球、惜しくも海中に落下するメインブースターなど数々の貴重なシーンが散りばめられている。

Falcon Heavyのテスト飛行を詳しくウォッチしていた視聴者にもこのビデオは初めてみるシーンがたくさんある。特にFalcon HeavyのメインブースターがSpaceXの自動航行艀をニアミスして大西洋に巨大なしぶきを上げる部分が公開されたのはこれが最初だ。多数の重要な場面が目まぐるしいほどのスピード描写されている。

自動航行艀からの映像はリアルタイムでは公開されず、SpaceXは記者会見の場で洋上回収が失敗に終わったことを発表した。ブースターが直近に落下したため艀のスラスターが損傷したという。

上にエンベッドした『ウエストワールド』のプロデューサー、ジョナサン・ノーラン製作のビデオの終わり近くで2基のサイドブースターがシンクロして着地する。これはFalcon Heavyのテスト打ち上げというミッション全体をよく象徴するものだろう。SpaceXにとって完璧に近い成功だった。

〔日本版〕ビデオの最後の場面はグリーンの表示で *Made on Earth by humans*(人類によって地球で製作された)と記されている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SXSWにイーロン・マスクがサプライズ登場――宇宙旅行のビジョンを語る

TeslaとSpaceXの共同ファウンダー、イーロン・マスクは、HBOのSFスリラー、Westworld,(ウエストワールド)をテーマとしたSWSXのパネルディスカッションに突如現れて喝采を浴びた。 テレビ・ドラマのシリーズの共同製作者、ジョナサン・ノーランの紹介でステージに登場したマスクに聴衆は「イーロン、アイラブユー!」と叫んだ。

ステージでマスクは宇宙旅行の素晴らしさについて語った。 Teslaを宇宙に送れたことについて「こういう時代に生まれたことに幸運を感じる」と述べた。マスクはまず現代の社会で不幸な出来事が無数に起きていることを認めた。

「世界中で恐ろしいことが毎日起きている。解決しなければならない問題が数多くある。意気阻喪させられるような悲劇だらけだ」とマスクは言う。

「しかし悲惨な問題をひとつずつ解決していくことだけが人生ではない。人生には自分を奮い立たせるような目標が必要だ。毎朝目を覚ましたときに人類の一員であることに喜びを感じられるような目標だ。これがわれわれが目標としていることだ」

マスクはSpaceXが最近、Falcon Heavyの発射に成功したことについて触れた。Falcon 9にブースターをさらに2基追加した大型ロケットはダミーのペイロードとしてマスクの愛車のチェリーレッドのTeslaとSpaceXが開発した宇宙服を来たマネキンを搭載していた。

またマスクはロシアの科学者で宇宙旅行の父と呼ばれるコンスタンチィン・ツィオルコフスキーに深い感謝を表明した。ツィオルコフスキーは「地球は人類のゆりかごだ。しかし人類はずっとゆりかごに留まってはいないだろう」述べたことでも知られる。

マスクは「人類は宇宙に向けて飛び立ち、そうすることによって認識の枠組も変えていかねばならない」というツィオルコフスキーのビジョンを知って興奮したことを述べた。

「うまく表現できないくらい興奮した。生きていてよかったと思った。皆さんも同様であってほしい」

ジョナサン・ノーランとウエストワールド・シリーズの共同製作者、リサ・ジョイは以前、Falcon Heavyの打ち上げを紹介する短いビデオを製作したことがある。このビデオはマスクのInstagramからアクセスできる。

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画像;Photo by Amy E. Price/Getty Images for SXSW/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

新惑星の発見に貢献したNASA/Googleの機械学習システムAstroNetをあなたも利用できる

おぼえておられると思うが、昨年12月に、NasaのデータとGoogle Brainの脳力を利用する機械学習により、二つの新しい惑星が見つかった。あなたがそれと同じことをやってみたいなら、そのシステムを作ったチームが今日(米国時間3/8)、その天文学的偉業の達成に使われた、AstroNetと呼ばれるプログラムのコードをリリースしたから、試してみたらどうだろう。

NASAのKepler宇宙望遠鏡は、銀河系を何年もかけてスキャンし、惑星サイズのオブジェクトが星の前面にあって、そこだけやや暗くなってるところ(上図)を観察した。

そのデータセットは、機械学習のシステムにとってすばらしい遊び場だ。量が膨大でノイズも多いため、微妙な変異を単純な統計学的方法や人間による精査では見つけることができない。そのような、データの泥沼からおもしろい結果を取り出すためには、畳み込み式ニューラルネットワークが格好のツールだった。

しかし例によってAIは、人間がやった先例に従わなければならない。そのニューラルネットワークは、すでにラベルがついていて惑星か非惑星かを検証されている何千ものKeplerのスキャンデータで訓練された。この訓練されたモデルが、Kepler-90iとKepler-80gの発見に貢献した。

研究者たちによると、プロジェクトのソースを公開したことによってそれがさらに正確になり、研究がもっと早いペースで進み、また新しいデータセットも取り入れることができる、と期待される。ドキュメンテーションを読んでコードをフォークしてみたい人は、GitHubへ行ってみよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

SpaceXがFalcon 9の50回目の打ち上げとミッションに成功、重量6トンの通信衛星を軌道へ運ぶ

SpaceXがFalcon 9ロケットの50回目のミッションを打ち上げた。搭載したのは静止衛星ペイロードとしてはこれまで最大のHispasatユニットで、そのサイズは都市バスぐらいある。

打ち上げは今朝(米国時間3/5)フロリダ州ケープカナベラルから行われ、計画通り進行してHispasat 30W-6をそのターゲットの静止遷移軌道に配達した。そのStandish衛星は重量が6トンあり、この宇宙企業のこの種の衛星向けとしては新記録となった。

これは、Falcon 9ロケットにとって大きな節目となる。このロケットは、最初のバージョンがSpace Xのためのサービスを2010年に開始した。Space Xはまた最近、初めて同社のFalcon Heavyを打ち上げ、さらに次世代の打ち上げ機BFRを目指している。BFRは、語呂合わせで‘big f*cking rocket’と呼ばれることもある。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

宇宙スタートアップ、SpinLaunchが3000万ドル調達へ――リング状カタパルトでで衛星打ち上げを目指す

衛星を打ち上げるのに巨大なロケットを飛ばさずにすむとしたらどうだろう? カタパルトで宇宙に出るというアイディアは一見クレージーだが、SpinLaunchが狙っているのはまさにそれだ。このスタートアップは2014年Jonathan Yaneyによって創立され、ステルス状態を保ってきた。YaneyはGoogleが買収したことで大きな話題となった巨大な成層圏ドローンを開発したTitan Aerospaceの創立者だ。

TechCrunchは3つの情報源からSpinLaunchがシリーズAのラウンドで3000万ドルという巨額の資金調達を試みていることをつかんだ。この資金は同社が実際に宇宙カタパルト・テクノロジーを完成させるために使われるという。Yaneyは4年間の沈黙を破ってTechCrunchのインタビューに応じたので以下にそのもようをお伝えする。

【略】SpinLaunchでは真空にして抵抗を減少させたリング状のチューブ中で飛翔体を加速する。チューブから発射される際の速度は、ある情報源によれば、時速3000マイル(4828キロ)程度になるという。飛翔体はそのまま宇宙に向けて飛び立つ。飛翔体には大気圏を出るために必要とされる速度を得るために補助的なロケットが設置され、カタパルトはロケットを含めて加速できる。

ステルス状態を破ることについては躊躇があったというが、YaneyはTechCrunchの取材に応ずることを決め、SpinLaunchの格納庫を案内して写真撮影を許可してくれた(上に掲載)。「宇宙開発の最初期からずっとロケットが唯一の運搬手段だった。この状態は70年も基本的に変わっていない。テクノロジーの進歩は遅い上に漸進的だ。宇宙が商業的に採算が取れるものとして広く開放されるためには現在の10倍以上のテクノロジーが必要だ」とYaneyは言う。【略】

SpinLaunchのファウンダー、CEOのJonathan Yaney

最近までSpinLaunchに関して分かっていることはほとんどなかった。SpinLaunchのウェブサイトにはパスワードがかかっているし、サニーベール本社の求人情報も「成長いちじるしい宇宙スタートアップ」とあるだけだった。しかし先月、ハワイ州上院にSpinLaunchが「電動式小型衛星打ち上げシステム」を建設することを援助するために2500万ドルの支出を求める法案が提出された。これはシステム建設にともなう各種のビジネス機会や雇用の創出、また宇宙へのアクセスをハワイにもたらすことを期待したものだった。

SEC〔証券取引委員会〕に提出された書類によれば、Yaneyは2014年SpinLunchの創立後、株式で100万ドルの資金を得ている。2015年には290万ドルを株式で、2017年半ばには220万ドルを借り入れでそれぞれ調達している。2017年後半にはさらに200万ドルを借り入れており、Yaneyが述べたところではSpinLaunchは総額1000万ドルの資金を調達してきたという。Yaney自身もSpinLaunchに出資している。今回のシリーズAの3000万ドルについては投資家と交渉中であり、「まだラウンドが実行されたわけではない」という。

マスドライバーは1960年代から研究されており、最近の例としては電磁レールガンコイルガン電磁加熱化学ガンライトガスガンラムジェット・アクセラレータブラストウェーブ・アクセラレータなどが考案されている。NASAでは円形ではなく直線のカタパルトから飛翔体を発射するマスドライバーを研究したことがあるが、コストパフォーマンスその他の点でいずれも実用化への条件を満たさなかったという。

Yaneyのカタパルトはこれと異なる。「SpinLaunchではリング状のカタパルト内で角速度を次第にアップすることにより飛翔体を加速する。これにより発射システムに要求される強度も必要な推進力も大きく低下する」という。SpinLaunchでは1回の発射コストを50万ドル程度に下げたいとしている。Yaneyによれば、従来のロケットの場合、1回ごとに500万ドルから1億ドルが必要だという。

NASAもカタパルト式マスドライバーを実験していた

2人の情報源は、SpinLaunchのテクノロジーを検討した物理学者の見解として、空気との摩擦がもっとも大きな課題となるだろうと述べた。地球の低層大気は濃密なため、飛翔体がカタパルトから大気中に打ち出されたとき、いわば「レンガの壁に衝突する」ような衝撃を受けるという。飛翔体に搭載されるコンピューターやセンサーなどの精密機器はすべてこの高Gに耐える能力が求められる。上の写真に見られるように、飛翔体がきわめて鋭く尖った細長いデザインなのはこの点を反映しているのだろう。

実際にこのカタパルトが建設できるかどうかだが、Yaneyは「過去3年間の開発でコアとなるテクノロジーは完成し、テストずみだ。ほとんどリスクについては解決方法を発見している。残っているのは、他の巨大なハードウェアと同様、実際のシステムを建設すること伴う課題だ」という。宇宙開発というのは安上がりにはできない。SpinLaunchは大規模なベンチャーキャピタルから継続的な支援を得る必要があるわけだ。

SpinLaunchがテクノロジー上の課題を克服できた場合、宇宙ビジネスへの参入障壁は大幅に低くなる。無重量状態を利用するイノベーションも数多く生まれるだろう。一般人の宇宙旅行から惑星における採鉱までこれまで純粋にSFと考えられていた分野が現実のものとなる可能性がある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SpaceX、フェアリングの洋上ネットキャッチに惜しくも失敗――Falcon 9による衛星打ち上げは成功

Falcon 9で複数の衛星を打ち上げる今日(米国時間2/22)のミッションは成功したが、SpaceXはペイロードのフェアリングを洋上でキャッチするのには惜しくも失敗した。

機敏に操縦できる回収船、Mr. Stevenの後甲板に巨大なアームを設置し、ネットを張り渡してパラシュートで降下してくるフェアリングを捕獲しようというのが当初の計画だった。わずか数百メートルの距離だったが、フェアリングは標的から外れて海中に落下した。しかしその後フェアリングは無事に海中から引き上げられたという。

SpaceXのCEO、イーロン・マスクはFalcon 9の打ち上げ直後に、フェアリングをキャッチしようと試みているとツイートした。フェアリングにはパラシュートが装備され、艀がキャッチできる程度のスピードで降下させる計画だった。パラシュートは予定どおり作動した。

これまでのSpaceXのフェアリング回収の努力は部分的な成功だった。大気中を飛行する際にペイロードを保護するフェアリングは宇宙に出たところでロケットから分離し、地表に向けて落下する。前回は(今日同様)海中に落下し、SpaceXはそれを船上に拾い上げていた。艀上のネットで捕獲すれば海中から回収する手間が省ける上にフェアリングに対するダメージも少ない。しかしこのネットによるキャッチは今回のミッションでいちばん困難な部分でもあった。

数百メートルの差でミス。 しかしフェアリングは無事着水。もう少し大きいパラシュートで降下速度を減らせばキャッチできるはず。 ― イーロン・マスク

フェアリング回収にこだわる理由はコストだ。フェアリングは600万ドルの部品で、Flcon 9を使い捨てで打ち上げるとした場合のコストの1割を占めるという。フェアリングを回収して繰り返し利用できるようになれば大幅なコスト削減につながる。SpaceXではロケットのほとんどあらゆる部分を再利用し、宇宙に出るコストを劇的に低下させることを目指している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SpaceX、Falcon 9のフェアリング回収にネット装備艀を準備

SpaceXが目標とするのは、なんといっても打ち上げコストの削減だ。現在同社が取り組んでいるのはフェアリングの回収だ。フェアリングはロケットの先端に取り付けられ、なんであれ搭載されたペイロードを保護する部品だ(Falcon Heavyのテスト飛行の場合はTesla Roadsterとスターマンが搭載されていた)。これまで打ち上げのたびにフェアリングは使い捨てとなっていた。

フェアリングの製造コストは600万ドルだという。多数の打ち上げでフェアリングを回収し、複数回使えることになればコスト削減の総額は大きい。SpaceXでは昨年フェアリングの回収に成功しているが、今回はさらに信頼性が高く、再利用にも適した新しい方式を開発した。

それがMr. Stevenと名付けられた自動航行艀だ。Teslaratiの Pauline Acalinが撮影した写真によれば、Mr. Stevenには巨大なアームが装備され、その間にネットが張り渡してある。Mr. Stevenは次回Falocon 9が打ち上げられる予定となっているカリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地の近くの港に停泊している。Falcon 9のPAZミッションではスペインのレーダー地上観測衛星の他に、SpaceX独自の通信衛星も搭載される。これはSpaceXが計画しているインターネットのブロードバンド接続を提供するサービスのための実験だという。

Falcon 9のこの打ち上げは日は若干延期され、2月21日(日本時間2/22)に予定されている。フェアリングはGPSによる位置制御が可能なパラシュートによって太平洋上に降下し、それをMr. Stevenが待ち構えてキャッチする計画だ。

フェアリングは2つの部分からなるが、SpaceXがその片方でも無事に回収し、再利用できるなら打ち上げコストをさらに引き下げることができるだろう。完全使い捨ての場合の場合、Falcon 9は打ち上げコストは6300万ドル程度と推定されている。そこでブースターの回収はもちろんだが、600万ドルのフェアリングであっても回収に成功すれば利益に対する寄与は大きい。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+