pixiv、収益度外視のクリエイター向け無料ECサイト構築サービス

イラスト投稿サービス「pixiv」を運営するピクシブは、クリエイターがECサイトを無料で構築できるサービス「BOOTH(ブース)」を12月19日に公開する。初期費用や月額料金、販売手数料はゼロ。ピクシブの片桐孝憲社長によれば、自社の収益は考えず、「クリエイターを支援する一機能」と割り切っているのだという。ショップを開設するにはpixiv IDが必要となる。

BOOTHはpixivに投稿されているイラストだけでなく、書籍や同人誌、グッズ・手作りのアイテムのほか、イラストやゲーム、音楽、写真、動画、電子書籍といったデジタルコンテンツを販売できるプラットフォーム。商品登録数は無制限。サンプル配布向けの「ゼロ円設定」も可能だ。

BOOTHの倉庫で商品の保管・梱包・発送を代行するサービスも用意している。送料は一律700円。倉庫の保管費用は半年間無料、その後はサイズに応じて料金が発生する。現時点でサポートしている決済はクレジットカードのみだが、1月より銀行振込とコンビニ決済にも順次対応していく。

無料のECサイト構築サービスは国内では「STORES.jp」「BASE」などがあるが、BOOTHの強みは900万人以上が利用するpixivと連携している点だ。クリエイターはpixivのフォロワー(ファン)に自分の商品を通知できるほか、作品の検索結果画面や作者のプロフィールに商品を表示する機能も近々搭載する。今後はクリエイターの制作支援にも注力する。「例えば、自分の描いたキャラのぬいぐるみを作りたい!という要望にも応えていきたい」(片桐氏)。

片桐氏によれば、2007年にpixivをリリースした1、2年後くらいから、「pixivは作品の発表と販売の場にしたい」と考えていたという。このタイミングでBOOTHを公開したのは、「ユーザーが900万人を突破し、pixivを中心にしたECサービスでも成立する規模になったと判断したため」と話している。

クリエイターからは初期費用や月額料金、販売手数料を徴収しない。クレジットカード決済にかかる手数料(商品代金の3.6%+10円)は発生するが、当面はBOOTHでの収益は考えていないという。「今の予想では数年は大赤字ですが、将来的にpixivとの相乗効果でビジネスモデルを作っていきたいと思っています(笑)」。

pixivといえば、登録ユーザー数900万人突破を記念して、有料会員限定で提供していた一部機能を無料会員にも開放したところ、有料会員が大幅に減ってしまったことが記憶に新しい。「うちなんか一生収益化なんかできませんよ」と自嘲気味に語る片桐氏だが、BOOTHではpixivのユーザーが楽しく創作活動ができたり、作品の売買を介したコミュニケーションが生まれればと話している。


カップル専用SNS「Pairy」が1億円増資、来年早々に夫婦版と海外展開

カップル専用アプリ「Pairy」を運営するTIMERは18日、ベンチャーキャピタル4社を引受先とする総額約1億円の第三者割当増資を実施した。増資をもとに開発人員を拡大し、今年度中に夫婦に特化したアプリをリリースするほか、世界展開も予定している。割当先はインキュベイトファンド、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、East Ventures、NTTドコモ・ベンチャーズ。

Pairyは、想い出の写真を2人で共有するアルバム機能、2人だけのチャット機能、行きたいデートスポットを共有できるデート機能、予定調整に使えるカレンダー機能、2人のまとめをつくるペアプロフ機能などがある。デート機能については、これまで15万件以上のスポットのリンクが投稿されていて、うち25%が実際にデートに訪れられているのだとか(デート機能ではリンクを「気になる」へ登録し、行った後は「行った」へと切り替える機能がある)。

当然のことながら、ユーザーは1人の相手としかペアリングできない。別れてしまった場合は「ペア解除」機能があり、解除するとこれまでやりとりしたデータはお互いに見られなくなる。ただし、復縁して再度同じ相手とペアリングすると、今までのデータがすべて復旧するシステムも搭載されている。

アプリは2012年6月に公開し、2013年9月時点で登録会員数13万人を突破。現時点の会員数は非公開。まずはユーザー獲得に注力し、来年度以降に有料会員モデルや広告、ユーザーのアルバムデータを活用したフォトブック販売などを検討する。詳細は未定だが、来年度以降はフジテレビとの連動番組も予定しているという。

カップル向けSNSとしては、Y Combinator出身者による「Pair」や韓国発の「Between」、国内でもリクルートによる「Sweetie」などがあり、これから普及期を迎えようとしているのかもしれない。TIMERの田和晃一郎COOによれば、カップルと夫婦は国内だけでも2000万人以上がターゲット。今回の増資をもとに、夫婦に特化したアプリや海外向けサービスをリリースし、より多くのカップル・夫婦間で使われるサービスを提供したいと話している。


「進撃の巨人」に「パズドラ」―アジアでのGoogle検索トップ10は来年の世界のトレンドか?

2013年はアジア企業が世界のインターネット文化に明確に影響を与え始めた最初の年として記憶されることになるかもしれない。たとえば、去る1月に、MGSieglerは「Samsungが世界的に重要なテクノロジー企業ではないという主張はますます間違ったものになりつつある」とTechCrunch読者に警告した

まさにそのとおり、Samsungは今や世界最大のモバイル・デバイス・メーカーの一つだ(その急成長も最近やや頭打ちになっているが)。ソフトウェアやサービスの部門でもアジア発のメッセージ・システムのLineがソーシャル・プラットフォームとしてFacebookPathと並ぶ存在になりつつある。

TencentはSnapchatのファウンダーがモデルとした。中国の新興スマートフォン・メーカー、Xiaomi(小米)はGoogleからAndroidのトップエンジニア、Hugo Barraを引き抜いた

アジアのトレンドを検討するのは世界市場における未来を予測する賢明な方法だ。 Googleの アジアにおける2013年のトップ検索キーワードには来年、世界の消費者が関心を抱く可能性の高いゲーム、アプリ、バイラルビデオが先取りされている。

Googleの検索キーワード・リストの中でも最大のヒットは日本のテレビ・アニメ、進撃の巨人(Attack of Titans)だ。このキーワードは日本だけでなく、香港、台湾、韓国でもトップ10に入っている。アジアでの全検索件数を合計するとマッドメン(Mad Men)とホームランド(Homeland)の全世界での検索件数の合計より多い。今年アメリカでハリケーンに乗ってサメの大群が町を襲うSharknadoやパシフィック・リム(“Pacific Rim)がヒットしたことを考えると、皮膚のないヒューマノイド型の怪物が悪役になるアニメ・シリーズの進撃の巨人にも大いに国際的な成功の可能性がある。

一方、アジアでもっとも人気のあるゲームはパズル&ドラゴンズ(Puzzle and Dragons)だ。発祥の地の日本だけでなく香港でもトップ10に入っている。Puzzle And Dragons’の英語版はまだこれというほどの成功を納めていないが、アジアでの絶大な人気のおかげでメーカーのガンホー・オンライン・エンタテインメント(GungHoOnline Entertainment、TechCrunchのKim-Mai Cutler記者が6月に紹介している)の株価は1兆5460円に高騰し、一時は任天堂の時価総額を抜いたほどだ。台湾ではMMORPGのFantasy Frontierが大ヒット中だ。英語版のAura Kingdomも近く公開される。

カンナム・スタイル(Gangnam Style)が驚異的なバイラル・ヒットになったことは記憶に新しいが、そのサイ(Psy)のカンナム・スタイルの次作Gentlemanも6億ビューを記録している。前作、カンナム・スタイルの19億ビューに比べれば小さいが、それでもYouTubeの2013年の再生回数のトップになった。.

サイの成功にヒントを得たのかどうか、韓国の女性歌手ハリ(Hari)が歌うキヨミ(Gwiyomi)は手の動きがキュートなダンスで催眠術的効果を挙げ大人気となっている。同じく韓国の女性5人のグループ、Crayon Popも韓国の検索トップ10入りした。

Googleのトップ検索リストはアジアのユーザーのスマートフォンに対する考えについても重要な情報を明らかにしている。たとえば、Appleが公式に否定したにもかかわらず、アジアでは多くのユーザーがiPhone 5cはAndroidに対抗できるくらい安い価格になると期待していた。結局iPhone 5cはフラグシップモデルのiPhone 5sに比べてさほど変わらない価格になった。このことは急成長中の市場で、人気が5cより5sに集中している背景として参考になる。たとえばフィリピンではiPhone 5sはトップ10検索に入っているが5cは入っていない。

深刻なテーマでは、Googleのデータで自然災害の際に市民がますますインターネットの情報を頼りにする傾向が確認された。たとえば、今年Haiyan台風が襲った際には、昨年のBopha台風のときと比べて検索トラフィックは5倍にも増えた。このことは政府や救援活動組織は災害の際に市民に対して緊急インターネット接続を提供する必要があることを示すものだ。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


セカイカメラ終了のお知らせ……開発元・頓智ドット「目指した思想は諦めていない」

TechCrunch 50で華々しくデビューし、一世を風靡したセカイカメラが、2014年1月22日に全サービスを終了する。開発元の頓智ドットが12月17日に明らかにした。同社によれば、サービス終了の理由は、セカイカメラの進化版と位置付けるアプリ「tab」にリソースを集中するためだが、「セカイカメラが目指した思想自体は諦めていない」のだという。

iPad版セカイカメラのスクリーンショット

セカイカメラは、現実の背景に情報を重ねて表示する「拡張現実(AR)」技術を用いたスマートフォン向けアプリ。写真やメッセージを場所に紐付いたかたちで投稿できる。セカイカメラをかざすと、ディスプレイ上では目の前の景色とともに、場所に関連する「エアタグ」と呼ばれる文字や画像などがオーバーレイ表示される。

これまでにダウンロードされたアプリは300万、投稿されたエアタグは150万件に上る。過去に投稿したエタタグのデータはアプリ終了に伴いすべて削除されるが、KML形式でエクスポートできる。エクスポートしたKMLファイルは、KML形式をサポートしているGoogle Earthなどで表示することが可能。

サービス終了の理由について頓智ドットは、同社が手がける「tab」の開発に全リソースを集中するためと説明している。(tabは「行ってみたい」と思ったものをクリップしておけば、近くに来た時にお知らせを受け取れるアプリ。)以下はセカイカメラ終了に際して頓智ドットから得たコメントだ。

セカイカメラが目指していた思想自体を諦めたわけでは決してありません。むしろ、セカイカメラの課題を解決し、より発展させるためにtabをリリースし、リソースをそちらに割いてきました。セカイカメラの終了がこのタイミングとなったのは、1月よりtabのさらなる強化を図るためです。tabが目指すもの、それは「世界の可視化」を通じて、興味の発見や体験をしやすく、そして毎日の生活がもっと楽しくなることです。

セカイカメラを開発したのは、11月に開催したTechCrunch Tokyo 2013の基調講演に登壇してくれた井口尊仁氏(関連記事:「井口さん、Telepathyは本当に作れるんですか?」TechCrunch Japan編集長が自社イベントで切り込む)。

2008年のTechCrunch 50で井口氏が披露したデモ動画では、現実世界にセカイカメラをかざすところから始まり、店や商品、看板などにエアタグがポップアップする様子を紹介するもので、聴衆から多くの喝采を浴びた。その一方で、「面白いで終わってしまいそう」「怪しい」といった懐疑的な声もあった。その井口氏は2012年12月に頓智ドットを退職、2013年1月にTelepathyを創業した。現在はメガネ型ウェアラブルデバイス「Telepathy One」を開発していて、2014年中に製品リリースする予定だ。


「50分議論するだけ」リブセンスとクックパッドが始めた起業家支援の狙いとは

アルバイト求人サイト「ジョブセンス」を運営するリブセンスとクックパッドが、スタートアップを支援するプログラム「STARTUP50」を1月に始動する。米国のインキュベーター「500 Startups」を意識したような名称だが、代表を務めるリブセンスの村上太一社長によれば、その取り組みは意外にも「起業家と50分間ディスカッションするだけ」。村上氏に発足の経緯や狙いについて聞いた。

リブセンスの村上太一社長

STARTUP50では原則、村上氏とクックパッド代表執行役兼取締役の穐田誉輝氏らが起業家と50分間、無料のディスカッションを1回行うのみ。500 Startupsのように投資を前提とせず、起業家の事業プランについて「上から目線でなく」議論するという。「穐田さんは様々なウェブサービスを見てきているし、僕も人材サービス以外の領域も把握しているので、必要に応じて技術面や事業運営のノウハウをアドバイスします。起業家にとって最良の選択肢であれば投資や協業もするというイメージ。とにかく濃い50分間を共有したいです」。

支援の対象となるのは、起業準備中の学生や社会人などスタートアップ段階の起業家。国籍や年齢、性別、学歴は一切不問、事業の領域や規模も問わない。まずは1月8日から2月16日まで、専用サイトからエントリーを受け付け、書類選考や面談を経て3月中に5〜10人の起業家を絞り込む。選考基準は「やりたい度の高さ」。市場性や事業継続性だけでなく、「こんな世界を作りたいというモチベーションを持っていて、それを実現するために行動している起業家」を求める。今後は年2回のペースで起業家を公募していく。

ところでなぜ「50分」なのか。

掲載料0円の成功報酬と採用決定者にお祝い金を支払う求人サイトで業績を伸ばし、2012年10月に当時25歳という史上最年少の若さで東証一部上場を果たした村上氏。順風満帆な道のりを歩んできたようにみえるが、早稲田大学在学中の2006年2月に創業してから2009年頃までは「行き詰っていた」と振り返る。そんな状況の中、元カカクコム社長で当時クックパッド社外取締役だった穐田氏との出会いが人生を大きく変えたのだという。

「ジョブセンスで苦戦していた頃に穐田さんと出会い、50分間のアドバイスを受けたことが、その後の事業成長や史上最年少上場へつながる大きな転機になりました。ひとことで言うと『シンプルにユーザーのことだけを考えろ』というアドバイスなんですが、机上の空論ではなく、穐田さんの経験と実績を踏まえたシンプルな思想が心に刺さったんです。悩んでいる起業家や起業を志す人にもこんな体験をしてもらいたいと、穐田さんに声をかけたのが発足の経緯です。」

投資を前提としないフラットな空気感の「マネーの虎」のようにも思えるSTARTUP50。起業家支援を前提としているため収益目標は設定していない。「目標人数は決めていませんが、とにかく起業家を増やしたいですね。挑戦する人が増えれば日本が良くなりますし、友達も増えますし(笑)。僕がそうだったように、人生に影響を与えたベスト10に入るような出会いが生まれれば。将来的には、流行っているサービスにはことごとくSTARTUP50出身者が関わっているようになればうれしいですね」。


なぜLINEのQ&Aアプリ「LINE Q」は回答率99%なのか

LINEが12月5日に公開したスマートフォン向けQ&Aアプリ「LINE Q」が順調な滑り出しを見せているようだ。リリースから1週間の利用状況を見ると、1日あたりの質問投稿数は約1万件、回答数は約8万件と、1つの質問に平均8件の回答が寄せられている。サービス開始直後で「とりあえず使ってみる」人が多いからかもしれないが、回答率は99%。回答時間もPC向けサービスと比べると早いようで、質問から最初の回答が付くまでの平均時間は3分。質問の94%は5分以内に回答が投稿されているのだとか。(アプリのダウンロード数は非公開)

LINE Qはスマートフォンから質問でき、回答者はチャット形式の画面でテキスト・写真・動画・位置情報・スタンプを組み合わせて回答できる。質問する際には、「分野」(カテゴリー)を指定してLINE Qユーザー全体から回答を求める“分野への質問”と、LINEの友だちに限定して回答を求める“友だちへの質問”を選べる。

LINE執行役員の舛田淳氏の言葉を借りれば、「カジュアルなQ&Aサービス」だ。

「PC向けのQ&Aサービスは、投稿に対するハードルが高いので“普通のユーザー”が少なく、一部のユーザーだけが回答を投稿するモデルだった。スマホであればいつでもどこでも思いついた瞬間にQを投げて、すぐにAが返ってくる。Q&Aの本質はコミュニケーション。Qに対してAだけで終わるものではない。LINE QではQ&Aサービスを再定義する。」

LINE Qの企画を担当する伊熊導人氏

若いLINEユーザーが使っているせいか、学校生活や恋愛に関する質問が多く投稿されているという。「明日のデートに何を着ればいいのかわからない」という男子中学生に対して、女性ユーザーがその場で撮影したコーディネートの写真を送って回答するなど、「スマホならではの使い方も目立つ」とLINE Qの企画を担当する伊熊導人氏は話す。「ユーザーインターフェイスがLINEのようなチャット形式なので、投稿が盛んな分野はコミュニティのような賑わいを見せている」。

一部のQ&Aでは回答を得るというよりも、雑談や大喜利で盛り上がっているが、それはそれで良いのかもしれない。

実名利用を前提としたLINEと異なり、LINE Qでは専用IDを取得して質問・回答を投稿する。聞きにくい質問や答えにくい回答には、LINE Q専用IDを隠して匿名で投稿することも可能だ。「実名制のQ&Aサービスは信頼性が担保できる反面、一部の“スター”に回答が集中して裾野が広がらないデメリットもある。思想や信条を出すのをためらう人もいるので、あえてハンドルネームによる匿名制を採用した」(舛田氏)。

LINEならではの「投稿の質を上げる仕組み」としては、LINE Qを利用しているLINEの友達に対して、自分が興味のある質問を拡散する「私も知りたい」ボタンを用意。リツイートのようなこの機能によって、自分が知らない質問に友達が答えてくれたり、その友達がわからない質問でも「あの人なら知ってるかも」と思ってもらえれば、さらに質問を拡散してもらうことが期待できるのだという。自分の友達の友達にまで質問が届く「質問の再生産」が行われることで、多種多様な観点の回答が集まる「ナレッジの連鎖」が起こると、舛田氏は期待している。

「私も知りたい」ボタンで質問が拡散するイメージ

投稿を促す施策としては、質問や回答などのアクションに応じて換金可能なポイントを付与するインセンティブ制度を導入。ここでも投稿の質を上げるために、質問者が選ぶ最も良い回答「ぴったりアンサー」に選ばれたり、「私も知りたい」経由でぴったりアンサーが生まれた場合などには、通常よりも高いポイントを付与している。質問や回答を投稿するにはLINE IDのログインが必須なため、ポイント目的の無意味な投稿や、いわゆる“荒らし”も起こりにくいのだという。

収益面は「ゼロ」(舛田氏)。当面は良質な回答を蓄積することに注力していく。


TechCrunch日本版読者アンケートご協力のお願い

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「リブセンス」型転職サイトをインドネシアでタイムマシン経営する日本のベンチャー

ネットバブルと呼ばれた時代では、海外で成功したビジネスモデルをいち早く日本に“輸入”する「タイムマシン経営」が盛んだった。最近では、「価格.com」型のサービスをインドネシアで展開するスタートアップが登場(関連記事:「価格.com」モデルを東南アジアでタイムマシン経営する日本のスタートアップ)するなど、日本の成功モデルを東南アジア方面に“輸出”する試みが出てきているようだ。

成功報酬型であることに加え、採用が決まった求職者に「お祝い金」を贈呈する求人サイトといえば、社長の村上太一氏が当時25歳という史上最年少の若さで東証一部上場を果たしたリブセンスが手がけるビジネスモデルだ。日本のベンチャー企業のアメイズメントがこの仕組みをインドネシアに持ち込み、同国初となる成功報酬型の転職サイト「JOBNEXT」を11日に開設した。

JOBNEXTを手がける藤井忠勝氏によれば、インドネシアの転職市場は事前に掲載料金を支払う求人媒体と、成功報酬型だが費用が高い人材紹介サービスが主流。人材紹介サービスについては、リクルートやテンプスタッフなどの日本企業も参入しているのだとか。インドネシアの広告求人市場規模に関する明確なデータはないそうだが、「日本の広告求人市場は1兆円規模なので10分の1はある」(藤井氏)と見込んで転職サイトを立ち上げることにした。

JOBNEXTは、リブセンスが日本で成功したビジネスモデルに近い転職サイトだが、独自の仕組みも採用。職能レベルに応じて50万ルピア(5000円程度)、年収の5%、年収の10%を求人企業から徴収する3段階の成果報酬プランを設けたり、求職者がJOBNEXTに登録すると換金可能な20万ルピア(2000円程度)分のポイントを付与することで、既存の転職サイトのシェアを獲得しようとしている。

現時点では中国検索大手のBaiduやアフィリエイトサービスのアドウェイズのインドネシア法人など50社がJOBNEXTを利用することが決まっているといい、2014年までに求職者1万人、求人企業数500社、売上高50億ルピア(約5000万円)を目指す。

藤井氏は日本で、タレントのブログ事業やアプリ・ウェブ開発を手がけてきた人物。経済成長率の高さと親日国であることからインドネシアに着目し、タレントのファンクラブ運営を検討していたが、「公式ファンクラブにお金を払う文化が皆無だった」ことから断念。「日本よりも賃金上昇率が高く、転職回数も多い」(藤井氏)インドネシアの転職市場に勝機を見出し、ウェブ開発の技術を活かして転職サイトをスタートさせたのだという。


世界最大の感染国は日本、Bitcoin発掘不正プログラムの狙いは高性能PC

ネット上で取り引きされる仮想通貨「Bitcoin(ビットコイン)」。10月2日には123ドルだった終値が12月4日には1230ドルと、10倍以上の価値が出る値動きを見せている。世界中から投機対象となっているBitcoinだが、サイバー犯罪者も熱い視線を向けているようだ。セキュリティ会社のトレンドマイクロによると、Bitcoinを発掘する不正プログラムの被害が世界的に確認されていて、これまでに日本でも3000台のPCが感染しているのだという。

Mt.Gox取引所が公開しているBitcoinの価格推移

Bitcoinは発行元となる運営会社を持たず、P2Pのシステムにより運営されている点が特徴。P2Pベースであるため低いコストで取り引きでき、取引の匿名性が高くなっている。P2PベースのBitcoinの処理を支えるのが「マイニング(発掘)」という仕組みだ。これは、取引に必要な計算に協力した対価としてBitcoinを獲得できるというもの。このBitcoinのマイニングが攻撃者に悪用されていると、トレンドマイクロは指摘している。

過去3カ月におけるBitcoin発掘不正プログラムの国別感染割合(トレンドマイクロ公式ブログより)

具体的な攻撃手法としては、外部から侵入したPC上でBitcoinマイニング用ツールをインストールしたり、不正プログラム自身がBitcoinマイニングの処理を行って金銭利益を得るという。トレンドマイクロが被害傾向を調査したところ、過去3カ月でBitcoin発掘不正プログラムに感染したPCは世界で1万2213台に上り、国別の内訳では日本(24%)と米国(21%)がとりわけ多く、世界の感染台数の4割以上を占めていた。

PCに感染した不正プログラムは、Bitcoinを発掘するためのツールを外部のサイトよりダウンロードする。このとき、発掘の成果は攻撃者に届くよう設定される。つまり、攻撃者によって、ユーザーのPCリソースが盗用されているわけだ。Bitcoinの発掘には非常に多くのCPUパワーが必要なため、攻撃者の視点で考えれば、性能の高いPCを使用しているユーザーを狙う方が効率的だ。トレンドマイクロは、「標的とすべき性能の高いPCを使用している可能性が高い国として、日本が狙われている」と推測している。

Bitcoinで一儲けをたくらんでいる攻撃者はそのほかの手段も講じている。11月には最大規模のBitcoin取引所サイト「Mt.Gox」を装ったフィッシングサイトが確認された。12月にはファイヤーウォールや検閲を回避するソフトが、ユーザーに無断でBitcoinを発掘していたことも発覚した。このソフトはEULA(ソフトウェア利用許諾書)に「プログラムを走らせた際の数値計算の結果による手数料などは弊社に帰属する」という一文を入れたうえで、堂々と発掘していたことも付け加えておく(関連記事:YourFreeProxy、ツールバーが裏でBitcoinを発掘していたことが発覚)。


マーケターは抑えておきたい、日本で人気のYouTube動画広告トップ10

日本でも盛り上がりを見せつつある動画広告。YouTubeでは多くの企業やブランドがプロモーションを行っているが、グーグルが12月9日、今年日本で人気を集めた動画広告のランキング「YouTube Ads Leaderboard」を発表した。トップ10では著名人が出演するTVCMの映像が目立つ一方で、15秒や30秒といったCMの時間的な制限にとらわれないメイキング映像も数多くランクインしている。以下、マーケティングに携わる人にとって広告戦略のヒントになるかもしれないトップ10の動画広告を紹介する。

1位は炭酸飲料スプライトのTVCM「スプラッシュ自販機」篇の15秒メイキング特別映像

2位は千葉県船橋市の非公認キャラクター「ふなっしー」がドワンゴの着ボイス「お・も・て・なっしー」をアピールするTVCM

3位はビキニ姿の美女がスバルのフォレスターで荒野を爆走するショートムービー

4位は再びスプライトのTVCM「スプラッシュ自販機」のドキュメンタリームービー

5位は心がざわつくと話題になった NIKE BASEBALLの選手宣誓

6位は2月20日にニューヨークで開催されたPlayStation Meeting 2013のイメージムービー

7位はAKB48の小嶋陽菜が出演する下着ブランド「ピーチジョン」のドリームブラを宣伝するショートムービー

8位は矢沢永吉がHeyJudeを熱唱するサントリー「ザ・プレミアム・モルツ」のショートムービー

9位は外国人ユニット「デジタル本兄弟」がノリノリでダンスを踊りながら電子書籍ストア「BookLive!」の魅力を伝えるショートムービー

10位はきゃりーぱみゅぱみゅが東京の街をスマホで操ることでauが目指す世界観を表現したショートムービー


太刀魚日本一の有田市「本物の海の幸」が届く釣りゲームアプリを公開

ウェブサイトよりもアプリを使ってPRするのが今風なのかもしれない――。和歌山県有田市がこのほど、Android向けの釣りゲームアプリ「漁獲王in ARIDA」を公開した。釣りゲーと言ってもただ単に遊べるだけではない。実際の海の幸がもらえるのだ。「ゲームを通じて若者に有田市の魅力を知ってもらえれば」と、市役所の担当者は語っている。

アプリでは、ゲーム内に登場する幻の太刀魚「ゴールデン・キング・タッチー」を釣ったり、市役所に「ふるさと募金」(実際の募金ではない)をすると、市区町村レベルで漁獲量が日本一という太刀魚が当たる懸賞に応募できる。市の担当者によれば、3カ月ごとに数人に送る予定なのだという。

ゲームではまず、架空の会社を設立。最初は中古の小型船でコツコツ漁業をして貯めたお金で船を強化していく。有田市の「箕島漁業協同組合」の監修のもと、実際の底引き網漁の方法や魚料理レシピをゲームに盛り込んでいて、現実世界に沿った内容にしている。

有田市はこれまでも、みかん農場経営ゲーム「Android AR-ARIDA」を公開。ゲームでみかんを育てることで、実際の「みかんの木を1本」や有田みかんが抽選で当たるキャンペーンを実施していて、アプリは累計8万ダウンロードを突破したのだという。今回の釣りゲーは有田市の公式アプリ第2弾となる。


出版特化型クラウドファンディング「ミライブックスファンド」がローンチ

ワンモアと大日本印刷(DNP)が5日、出版に特化したクラウドファンディングサイト「ミライブックスファンド」を公開した。クラウドファンディングサービスを手がけるワンモアと、出版物を制作するDNP、出版取次会社が協力し、出版に必要な企画立案から資金調達、流通、制作までに至るプロセスをワンストップで提供する。

出版者(出版社ではなく個人やチーム)は、出版物のテーマやストーリー、必要な資金と募集期間、支援者へのリターンの内容などプロジェクトの詳細をサイト上で告知し、購入希望者による支援を呼びかける。募集期間内に必要な資金が集まれば、支援者へ所定のリターンを提供する。出版者は集まった資金の20%を手数料として支払う。

リターンはプロジェクトによって異なるが、コアなファン向けに限定本を提供したり、新人作家の出版などのプロジェクトに対しては、支援者の名前入りの書籍をプリントオンデマンドで制作したり、限定フィギュアを3Dプリンターで制作したりすることを想定しているのだという。

第1弾プロジェクトとしては、クラウドソーシングサービスを運営するランサーズが、特定の企業に所属せずに働くフリーランスの活動を紹介する書籍を出版する。取材や書籍カバーデザインなどの制作者についてはクラウドソーシングをフル活用し、ランサーズ上で募集する。

プロジェクトの募集期間は12月5日から1月23日まで。目標金額は300万円で、支援金は500円から100万円まで受け付けている。リターンは、完成した書籍への広告掲載や出版パーティー参加権などを用意している。

出版に関するクラウドファンディングといえば、絶版漫画の配信サービス「Jコミ」が作品のPDFセットなどを販売する際に利用しているが、「出版の企画から流通、制作までを一気通貫で手がける出版特化型のクラウドファンディングは日本初」(ワンモア)。ミライブックスファンドでは2015年度までに100件のプロジェクト実現を目指す。

出版者としては、出版物の企画段階からサイト上でプロモーションができるため、出版に伴うリスクを低減できることがメリット。また、取次の協力があるため、書店や電子書籍ストアでも販売されるのも自費出版と異なるところだろう。その一方、販売力のある大手出版社の書籍と異なり、書店でどれだけ売れるかは未知数だ。


世界中の本をクラウドソーシングで翻訳、電子書籍化する「BUYMA Books」

エニグモは、世界中の書籍をクラウドソーシングで翻訳して電子書籍で販売するサービス「BUYMA Books(バイマブックス)」を3月に開始する。著者・出版社が翻訳の許諾を出した著作物が対象で、BUYMA Booksに登録している翻訳者が日本語や英語を含む他言語に翻訳する。翻訳された著作物は電子書籍形式に変換され、BUYMA Books上で販売される。売上の35%が著者・出版社に支払われ、残りは翻訳者とエニグモで分配する。

著者や出版社は翻訳にかかる初期コストがなく、低いコストとリスクで世界中に著作物を販売できるのがメリット。BUYMA Booksに書籍を登録する際に、翻訳言語と販売地域を設定することが可能だ。翻訳された著作物は、BUYMA Booksが契約するネイティブによってチェックされる。翻訳物の著作権は著者・出版社に帰属し、電子書籍の価格設定も行える。

翻訳者は、著者や出版社が翻訳を許諾した書籍の中から好きなものを選んで翻訳できる。翻訳の期限はケースバイケースだが、「だいたい1〜3カ月程度が目安」(エニグモ)。翻訳された電子書籍には、翻訳者のニックネームとIDが記載されるため、自分の実績を積めるのだという。

読者は専用アプリをダウンロードすれば、海外の著作物を母語で読める機会が増えるという。

12月4日にサイトをプレオープンし、著者や出版社、翻訳者の会員登録を開始した。BUYMA Booksではビジネス書、ノンフィクション、絵本、アーティストコンテンツ、ブログ、コラムなどの著作物を随時受け付けている。


満足しなければ全額返金、高級旅館専門の予約サイト「relux」が会員機能をオープン化

「宿泊予約サイトは情報が多過ぎてなかなか選べない」「行ってみたら写真と実態がかけ離れていた」――。旅行にまつわるこんな不満を解消すべく、独自の審査基準で選んだ高級旅館だけを掲載し、しかも満足しなければ全額返金する“満足度保証”をうたっている宿泊予約サイトが「relux(リラックス)」だ。12月2日に、これまで会員登録時に必須だった審査をなくし、会員機能をオープン化した。

reluxが扱うのは部屋や風呂、料理、サービス、雰囲気など100項目からなる独自の審査基準を満たした高級旅館のみ。運営元のLoco Partnersの社員が現地を訪れ、実際にチェックをした旅館だけを掲載している。今年1月にオープンし、11月時点で80件の宿泊施設と契約、年内には100件を超える見込みだ。

これまでは取り扱う宿泊施設が少なかったこともあり、会員登録時に同社による審査を必須としてユーザーを限定していたが、12月2日に会員機能をオープン化。誰でも予約できるようになった。ユーザー数は10月時点で1万5000人、年内に3万人、2014年6月までに10万人を目標に掲げている。

満足度保証を支える機能としては、希望する宿泊地域や料理などに応じた旅館を提案するコンシュルジュデスクをサイト上に用意。「妻の誕生日に部屋から富士山が見える宿に泊まりたい」といったざっくりとした要望にも応えていて、予約者のうち2割以上が利用しているのだとか。

1予約あたりの平均単価は約9万円。「競合サイトよりも3倍以上高い」(篠塚孝哉社長)が、競合サイトの同一プランと比べて最も安い料金を提供する最低価格保証を行っている。滞在して不満だった場合は宿泊費の全額返金に応じているが、「いままでに1件もない」。累計流通総額は10月で1200万円、12月に3000万円に達する見込みだ。

楽天トラベルやじゃらん、一休などの競合サイトと比べた優位性は、宿泊施設から受け取る手数料の高さ。「楽天やじゃらん、一休の手数料率は宿泊代金の10%程度。それに対してreluxは15%」(篠塚氏)。競合サイト比べて予約平均単価も高いreluxは、手数料収入による高い利益率が強みとなっているのだという。

なぜ、強気の手数料を設定できるのか。篠塚氏によれば、一部の超有名旅館を除けば、1年中満室の旅館はごくわずか。そこでreluxは、Facebookや検索エンジンの広告を通じて、競合サイトがリーチできていないという「富裕層」を獲得し、旅館が宿泊予約サイトで取り込めなかった層を送客している。旅館としても稼働率が上がるメリットがあるため、高い手数料を許容しているようだ。

篠塚氏は2007年にリクルート旅行カンパニーに新卒入社。在籍中は大手宿泊施設の企画やマーケティングに携わってきた。2011年にLoco Partnersを創業し、2013年3月にreluxをローンチしたが、そこで感じたのは旅行業界の“常識”に対する疑問だったと話す。

「旅行業界は宿泊施設を“箱”としかとらえない傾向がある。いかに単価が高く、収容人数が多い施設に人を流し込むか、というモデル。それは旅行代理店や宿泊予約サイトでも同じ。良い旅館が埋もれているのが悔しくて仕方ない。reluxは会員に満足度の高い旅行体験を約束し、旅行業界の既存モデルを変革したい。」

Loco Partnersの篠塚孝哉社長


「最先端でなくていい、当たり前のことをやろう」古川享氏が若手プログラマーに檄

「(現代は)他人との関わりを自由にデザインできるのがいいところ。隣に座ってペアプログラミングしたり、リモートで仕事をしたり、ツールの支援もあるから自分で決められる。20世紀のように大部屋で一緒にやらなければならないということはない」

体験をなぞるだけでいいの?

そう話すのは、Rubyアソシエーション理事長で角川アスキー総合研究所の主席研究員も務めるまつもとゆきひろ氏。角川アスキー総合研究所が12月2日に東京・秋葉原で開催したシンポジウム「なぜプログラミングが必要なのか」での一幕だ。

「(プログラミングができることで)誰かが決めた世界じゃなくて、このソフトにこう関わるということを主体的に決められる」。まつもと氏によれば、この「主体的に決められる」ことがハッピーなのだという。「プログラミングの世界も経済的な報酬は十分ではないが、名声は十分得られるのではないか」

こうした思いは「(ソフトを開発する人とソフトを使う人で)世界は二極分化する」という持論から出てきた。「ソフトを使うだけの単なるユーザーは自分でコンピュータを操作できなくて、誰かが決めたプログラムを利用するだけ。プログラムを作った人の経験や体験をなぞるだけだ」。

もちろん体験をなぞるだけでハッピーなユーザーもいるが、最初から自分でやりたい人もいるし、そういう主体的な人であればぜひプログラミングにチャレンジしたらいいというわけだ。その結果、冒頭のように働き方も主体的に決められるようになる。

Rubyアソシエーション理事長で角川アスキー総合研究所の主席研究員も務めるまつもとゆきひろ氏

一方、シンポジウムに同席した慶応義塾大学大学院教授の古川享氏(元マイクロソフト会長)も「PCが8ビットのころは優秀なプログラマーの自負があった」という。だが16ビット時代は大学生のバイトに負けた。当時アスキーにバイトで入って来た中島聡さん(その後、マイクロソフトでWindows95、Windows98、Internet Explorer 3.0/4.0のチーフアーキテクトを務めた)が書いているコードが読めなくなった」のだ。古川氏いわく26〜27歳のころである。

確かに「相手が悪い」(まつもと氏)のも事実だが、当時大学生だった中嶋氏の待遇を大幅に向上させるよう、アスキーに働きかけたのは、古川氏である。「能力を知っているからこそ、もっと優遇しなくちゃいけない。中島さんにも3億円、本人は1億円ぐらいと言っているが、それだけ還元した。成果を共有するために報酬は重要だ。その采配を許してくれたアスキーには感謝している」(古川氏)。プログラマーとしては大学生に負けた古川氏であったが開発環境を整えるなどして「(プログラマーの)外側から楽しんでいた」(古川氏)。

まつもと氏が言うように世界が二極分化するのであれば「この壁を取り除く役割の人が必要」(古川氏)なのだ。「ソフトウェア技術者が社会をデザインするようになるのは必然。そうしたエンジニアのカタパルトになりたい」。

慶応義塾大学大学院教授の古川享氏(元マイクロソフト会長)

最先端じゃなくてもいいがチャンスは逃すな

そんな古川氏が不満げに話すのは最近の若手プログラマーや起業家のこと。「(プロダクトが技術的に)必ずしも最先端じゃなくてもいい。むしろ当たり前のことをなぜやらないのか。チャンスがあれば最初に手をあげるべきだ」。

引き合いに出したのはWindows黎明期のころの話。当時、Windowsネイティブのアプリケーションを作ってもらうべく、多くのソフトウェアベンダーに営業していた古川さんがある日、徳島からの電話を受けた。その会社は酪農家向けのプログラムを提供していたという。電話を切る間際に「いつか一緒にできるといいですね」と古川氏が伝えた。するとその1週間後に徳島から社長が古川氏を押し掛けて来たのだ。そう、ジャストシステムの浮川和宣社長(当時)である。結局それがきっかけになり、JS-WORD(一太郎の前進)が生まれたのだ。

電話の切り際、わずかな一言がきっかけになったケースだが、さすがにこれはレアケース。だが現在であればSNSなどを使うことで、もっとコミュニティーやパートナーを見つけやすくなっている。営業が苦手なら営業マンを探せばいいだけというわけである。

まつもと氏も「一歩踏み出せばいい。私自身も自分の作ったソフトを必要に応じて、デリバリーして説明をつけただけ。100人やったら100人が成功するとは思わないけど、100人やったら20人ぐらいは成功するんじゃないかな」と笑って話した。


ヤフーとFacebook活用の恋人探しアプリ「Omiai」が業務提携

Facebookユーザーのみが使える恋人探しアプリ「Omiai」とヤフーが運営する「Yahoo!パートナー」が3日、業務提携した。Omiaiは、Yahoo!パートナーからユーザーを誘導してもらう。ヤフーは、Facebook認証を使うことでしか実現できない出会いをユーザーに促すことで満足度を高めることが狙いのようだ。

Omiaiは、Facebookのプロフィール写真や年齢、交際ステータス(既婚や交際中のユーザーは利用できない)を見ながら好みの異性を探せるアプリ。Facebookアカウントはログイン時に利用するのみで、相手には実名が公開されない。アプリからFacebookに一切投稿しないだけでなく、Facebookでつながっている異性はマッチングされないため、友達に知られずに使えるのも特徴という。

アプリ上では年齢や身長、性格、年収など30項目以上から検索でき、気になる相手が見つかったら「いいね!」を押し、相手から「ありがとう よろしくネ!」ボタンを押してもらったらマッチングが成立する。ここまでは無料だが、その後は男性のみ有料で、匿名でメッセージを投稿したり、お互いのFacebookアカウントを教えあうことも可能だ。

Omiaiを運営するネットマーケティングによれば、累計会員数は38万人(男性26万5000人、女性11万5000人)。平均年齢は男性30歳、女性26歳で、これまでに111万7195組のマッチングが成立しているのだという。

今回の業務提携では、Yahoo!パートナーのページにOmiaiへの導線を掲載してユーザーを誘導する。Omiaiは有料サービスの決済手段として、2014年をめどに「Yahoo!ウォレット」を導入する。なお、Yahoo!パートナーとOmiaiのユーザーデータは、お互いのサービスで利用されることはない。


狙いは”アパレル総EC化”、ZOZOTOWNが個人間取引に参入

ファッションEC大手の「ZOZOTOWN」が、激戦区のC2C市場に参入する――。個人間で取り引きするC2C市場には近年、ヤフーやミクシィ、サイバーエージェント、LINE(先行登録段階)など大手ネット企業が次々と参入している。ZOZOTOWN運営元のスタートトゥデイは、8月に子会社化したECサイト構築サービス「STORES.jp」のブラケットと共同でアパレル特化型のマーケットプレイス「ZOZOMARKET」を1月15日に開設する。大手アパレルを扱うZOZOTOWNは、C2C参入で中小・個人のブランドまでをも取り込む狙いだ。

ZOZOMARKETのティザーサイト。12月2日に先行登録受付をスタートした

ZOZOMARKETは、アパレル関連の商品を持っている個人や法人であれば誰でも出品できるマーケットプレイス。出品するにはSTORES.jpでストアを開設し、ZOZOMARKETが定める規定に沿っていれば自動的に商品がZOZOMARKETに掲載される。初期費用や出店料は無料でECサイトを構築でき、販売額の10%を手数料としてZOZOMARKETに支払う仕組み。


ZOZOTOWNは約2200ブランドの人気アイテムを扱い、流通総額(2013年3月期)は958億円、過去1年の購入者は280万人に上る。ZOZOMARKETを展開する狙いは、中小規模のアパレルブランドを取り込み、ロングテールのビジネスモデルを構築することだ。これにより、「大手アパレルはZOZOTOWN、中小アパレルはZOZOMARKET」となり、すべてのアパレル市場がターゲットになる。

STORES.jpはこれまでに6万サイトが開設され、うち7割は中小のアパレルブランド。専門知識がなくても「最短2分」でECサイトを構築できるのが特徴だが、「簡単にサイトは作れたけれど、うまく販売できない」というストアオーナーが少なくなかったと、ブラケットの光本勇介社長は指摘する。販売力のあるZOZOTOWNとの協業は、STORE.jpにとって「売るための動線」になると見ている。

確かに中小ブランドのオーナーにとって、「STORES.jpに出せばZOZOで販売できる」のは魅力かもしれない。STORES.jpとしても、競合となるECサイト構築サービスとの差別化につながる。その一方、人気ブランドの「指名買い」が多いZOZOTOWNのユーザーが、知名度の低い中小ブランドのアイテムをどれだけ探してくれるかは未知数だ。

この点について光本氏は、「商品が埋もれる可能性があるのは、C2Cサービス全般に言えること」と前置きした上で、「中小アパレルブランドの大規模なマーケットプレイスはこれまで存在していなかった。指名買いではなく、ネット上で良いアイテムを探すことを楽しむカルチャーを醸成しつつ、最適な売り方を模索したい」と話す。「究極的には全国のアパレルブランドをすべてEC化して、オンライン上でアパレル商材を買うときはZOZOTOWNかSTORES.jpが関わっているようなイメージを描いている」。


実名グルメ「Retty」が3.3億円調達、「行きたい」ユーザーにクーポン配布で収益化

実名ベースの飲食店口コミサービス「Retty」を運営するRettyは2日、シリーズBラウンドとして、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、みずほキャピタル、既存投資家を割当先とする総額3億3000万円の第三者割当増資を実施した。これに伴い、Rettyを収益化する人員や体制を強化し、2014年春から飲食店向けの課金サービスを始める。

Rettyはお気に入りの飲食店の情報を友達と共有できるソーシャルグルメサービス。登録ユーザーの8割以上がFacebookアカウントでログインしているので、信頼性の高い実名ベースの口コミが投稿されるのが特徴だ。他のユーザーの投稿に「行きたい」ボタンを押して「行きたいお店」リストに追加し、外出先からスマホで現在地周辺の「行きたい」店を確認するといった使い方もできる。

「Retty上でグルメな友人や食の嗜好が合う人をフォローすれば、例えば渋谷で働く人がランチで通っている飲食店がわかったり、広告代理店の人がオススメする接待用の飲食店をチェックすることもできます。備忘録のかわりに気に入った飲食店を登録するユーザーも結構多いですね。」(Rettyの武田和也社長)

最近では検索エンジンやソーシャルメディア経由の流入が増え、10月にはユニークビジター数が100万人を突破、翌11月には130万人まで伸びている。これまでに投稿された口コミは70万件を超え、掲載されている飲食店16万件のうち8割に「行きたい」ボタンが押されているのだという。

2011年5月にサービスを開始して以来、ユーザー数を増やすことに注力してきたRettyだが、いよいよ収益化に着手する。まずは「行きたい」ボタンを押したユーザーに対して、飲食店がクーポンを配信するツールを有償で提供する。実名ベースで「行きたい」意志を表しているユーザーにリーチできるので、単なるバラマキのクーポンよりも効果が高いとみている。資金調達では、収益化に向けたエンジニアやマーケティング人員を強化。社員を現在の7名から約30名に増員する。

余談になるが、Rettyは7名の社員全員に「ランチ自転車」を与えているのだという。オフィス周辺にあるRettyで話題の飲食店でランチする際の移動手段として使うためだ。Rettyは赤坂、新宿、六本木、築地と次々にオフィスを移転しているが、理由は「周辺の飲食店をすべて制覇したため」(武田氏)。そして築地の飲食店を食べ尽くしたのか、12月には恵比寿に引っ越しした。

「単なるグルメ好きと思われるかもしれませんが、サービスの運営メンバーはいちばんのヘビーユーザーであるべきなんです。Rettyをやっていると行きたいお店がどんどん増えてきて、実際に投稿すればバグも見つかり改善案も出てくる。もちろんグルメが好きなので、恵比寿でもエンゲル係数を気にせずに食べ尽くしていきますよ。」

Rettyは2012年10月、グリーベンチャーズ、NTTインベストメント・パートナーズ、三菱UFJキャピタルの3社を引受先として、総額1億円のシリーズAラウンドの資金調達を実施。その1年前には、サイバーエージェント・ベンチャーズとエンジェル投資家から2200万円を調達している。


マネーフォワードがクラウド会計に参入、専門知識不要の自動入力サービス

日本には2000万人超の確定申告者がいると言われているが、申告手続きはいまだ面倒な手書きが中心。法人の会計業務も手作業が多く、専門的な会計知識が求められる。マネーフォワードが29日に公開したクラウド会計サービス「マネーフォワード For BUSINESS」は、確定申告や会計業務の手作業を極力減らして自動的に入力することで、会計知識が不十分な人でも使えるというサービスである。(先日開催したTechCrunch Tokyo 2013のスタートアップバトルで初披露し、PR TIMES賞を獲得している。)

そもそもマネーフォワードは、銀行やクレジットカードなどの複数口座を一括で管理し、入出金情報を自動入力してくれる家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」を提供するスタートアップだ。同サービスは入出金情報を「食費」「日用品」「交通費」といった項目に自動分類、自分で入力する手間を大幅に省略してくれるのが特徴。家計簿に挫折したり、日ごろ忙しくて家計簿が付けられなかった人に多く使われているのだという(関連記事:“挫折しない”家計簿サービス「マネーフォワード」が5億円調達)。

マネーフォワード For BUSINESSは、既存サービスと同様に1300以上の金融機関から自動で明細を取得。専門的な会計知識が求められる仕訳は、入出金データの文言をもとに自動で実行してくれる。勘定科目が間違っている場合は、プルダウンメニューから正しいものを選べば修正できる。請求書作成や自動消し込みにも対応している。経営状況を把握するツールとしては、キャッシュフローや収益費用の内訳をグラフでレポートする機能がある。マネーフォワードで利用していた入出金データも引き継げる。

会計知識が不十分な人でも簡単に使えるように――。こうした考えのもとに開発したマネーフォワード For BUSINESSでは、難解な会計用語を平易な言葉に置き換えている。一例としては、「仕訳を切る」を「取り引きを登録する」と言い換えたり、「消費税の経理方式」といった取っ付きにくい用語はポップアップ画面で解説するとともに、「税込を選択すると会計業務がよりシンプルになります」といったアドバイスまでしている。

競合となるプロダクトとしては、パッケージソフトで大きなシェアを占めている弥生の「弥生会計」や「青色申告」、同じクラウド会計サービスとしては、2012年のTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルでデビューした「freee」がある。

パッケージ型会計ソフトの多くはMacに非対応なので、会計ソフトのためだけにWindowsを購入する人もいるようだが、マネーフォワードはブラウザ経由で使うためOSや端末を問わずに利用できるのが強み。とはいえ、クラウド会計サービスは日本でも始まったばかりとあって、即座に会計ソフトのユーザーを取り込むのではなく、当面は新たに創業したり、既存のソフトに不満を持っていたり、青色申告をする個人をターゲットとするようだ。

サービス開始1年後の目標としては、1万5000ユーザー獲得を掲げている。2014年1月まではベータ版として無償提供し、正式版移行後は個人は月額980円、法人は月額1980円で提供する予定だ。正式版リリースに向けて、決算書類の作成機能や消費税変更への対応も進めていく。


「LINE」3億ユーザー突破、2億達成からわずか4カ月で、来年は5億を視野

スマホ向け無料通話・チャットアプリ「LINE」の登録ユーザー数が11月25日、世界で3億人を突破した。2011年6月にサービスを開始し、13年1月に1億ユーザーを超えると、半年後の7月には2億ユーザーを突破。それからわずか4カ月で3億ユーザーに到達した。それまでに要した期間は3年5カ月だった。

成長の牽引役は海外ユーザーだ。世界のユーザー比率は海外が80%、日本が20%。国別では日本が5000万人と最も多いが、台湾では国民の半数以上の1700万人、タイで2000万人、インドネシアで1400万人、インドで1300万人と、特にアジア圏での成長が著しい。ヨーロッパでもスペインで1500万人、南米でもブラジルやメキシコなどで伸びているという。

ただし、アジアやヨーロッパ一部地域のユーザー数を公表している一方で、LINE以外のメッセンジャーアプリが受け入れられている米国や中国での数字は明らかにしていない。LINEは今後もさらに世界展開を進めるが、米国発「WhatsApp」や中国発「WeChat」といったサービスの牙城を崩せるかどうかは未知数だ。

25日に東京・渋谷のLINEのオフィスで開かれた記者会見で森川亮社長は、「2014年中に世界5億ユーザー達成を目標に掲げている」と述べ、今後はインドやブラジル、ロシアに加えて、米国を含む北米などをターゲットにするとコメント。北米市場の勝算については、「まずは我々のサービスの価値を理解してもらうことが必要」と語るにとどめた。噂されている株式公開に関しては、「あくまで可能性のひとつとして検討中」と明言を避けた。

なお、LINEはこれまで、日本の月間アクティブユーザー数(MAU)を公表していたが、現在は「日本や台湾、タイなどのLINEが浸透している国では80%以上」としており、その他の地域は「これから伸びていく市場のため公表していない」(森川氏)。今後は、WhatsAppがそうしているようにアクティブユーザー数を公表することも検討するという。

ちなみに、月間アクティブユーザー(MAU)が11億人以上と言われるFacebookは11月14日、メッセンジャーアプリにおいて、友達として繋がっていないユーザー同士でも、電話番号を使ってメッセージを送信できるLINE的なサービスを開始。4月にはメッセンジャーアプリにスタンプ機能を追加するなど、LINEを追従するような動きも見せている。

LINE社長の森川亮氏(右)と執行役員の舛田淳氏