日本のリクルート、アウトソーシングのオンライン市場Freelancer.comを4億ドルで買収か?

〔この記事はMahesh Sharmaの執筆〕

日本の人材紹介とメディアの大手、リクルートは このところ上場準備に忙しかったようだが、最近、再び企業買収に積極的になっている。昨年のIndeed.comの買収から1年後、先月はインドのNuGridを買収した。人材募集のポータル、Indeed.comの買収金額は公表されていないが、11億ドルだったとされてる。

事情を知る情報源によれば、リクルートは短期業務をアウトソースするオンライン・マーケットのFreelancer.comに対し、4億ドルで買収する申し出をしたという。Freelancer.comの買収は、Indeed.com買収の際と同様、Morgan Stanleyがアドバイザーを務めているという。Freelancer.comはこの申し出を考慮中ということだ。

Freelancer.comは、ウェブサイトのデザイン、アプリの開発、情報収集、記事の執筆といったプロフェッショナルな業務を入札方式でアウトソースすることができるオンライン市場だ。業務請負の登録者880万人で、これまでに完了した業務は総額12億ドルにもなると発表されている。

Feelancer.comはオーストラリアのスタートアップだが、そのネットワークは世界に広がっており、特に北米、東南アジア、インドに多数のアウトソース先を持っている。また昨年はカナダのScriptlanceを買収し、デベロッパーのアウトソース市場のvCoderに数百万ドル分の業務を発注している。.

Freelancerは売上など財務内容を公表していない。リクルートの売上は100億ドル前後とみられる。この買収が成功すればリクルートはアウトソース市場、特にアメリカなど英語圏の市場で大きな足場を築くことになる。

リクルートは海外での売上を全売上高の50%にまで高めることを目標としている(Indeed.comの買収以前の海外売上は4%だった)。また近い将来株式を上場する計画だ。リクルート・グループの傘下には人材募集、eコマースから旅行、美容、教育など多分野にわたる出版社など80の企業が存在する。

上でも述べたようにリクルートは最近M&Aを活発化させている。8月にはインド最大のエグゼクティブ転職サービスのNuGridを買収(金額は不明)、4月にはアジア最大のエクゼクティブ転職サービス、Bo Leを完全子会社化した。Indeed.comの買収を発表したのは昨年の9月25日だった。

われわれはリクルートとFreelancer.comの両方にコメントを求めている。新たな情報が得られたらアップデートする。

〔日本版〕Freelancer.comでテープ起こし業務をアウトソースした体験がこのブログ記事に詳しく載っている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


日本のリクルート、アウトソーシングのオンライン市場Freelancer.comを4億ドルで買収か?

〔この記事はMahesh Sharmaの執筆〕

日本の人材紹介とメディアの大手、リクルートは このところ上場準備に忙しかったようだが、最近、再び企業買収に積極的になっている。昨年のIndeed.comの買収から1年後、先月はインドのNuGridを買収した。人材募集のポータル、Indeed.comの買収金額は公表されていないが、11億ドルだったとされてる。

事情を知る情報源によれば、リクルートは短期業務をアウトソースするオンライン・マーケットのFreelancer.comに対し、4億ドルで買収する申し出をしたという。Freelancer.comの買収は、Indeed.com買収の際と同様、Morgan Stanleyがアドバイザーを務めているという。Freelancer.comはこの申し出を考慮中ということだ。

Freelancer.comは、ウェブサイトのデザイン、アプリの開発、情報収集、記事の執筆といったプロフェッショナルな業務を入札方式でアウトソースすることができるオンライン市場だ。業務請負の登録者880万人で、これまでに完了した業務は総額12億ドルにもなると発表されている。

Feelancer.comはオーストラリアのスタートアップだが、そのネットワークは世界に広がっており、特に北米、東南アジア、インドに多数のアウトソース先を持っている。また昨年はカナダのScriptlanceを買収し、デベロッパーのアウトソース市場のvCoderに数百万ドル分の業務を発注している。.

Freelancerは売上など財務内容を公表していない。リクルートの売上は100億ドル前後とみられる。この買収が成功すればリクルートはアウトソース市場、特にアメリカなど英語圏の市場で大きな足場を築くことになる。

リクルートは海外での売上を全売上高の50%にまで高めることを目標としている(Indeed.comの買収以前の海外売上は4%だった)。また近い将来株式を上場する計画だ。リクルート・グループの傘下には人材募集、eコマースから旅行、美容、教育など多分野にわたる出版社など80の企業が存在する。

上でも述べたようにリクルートは最近M&Aを活発化させている。8月にはインド最大のエグゼクティブ転職サービスのNuGridを買収(金額は不明)、4月にはアジア最大のエクゼクティブ転職サービス、Bo Leを完全子会社化した。Indeed.comの買収を発表したのは昨年の9月25日だった。

われわれはリクルートとFreelancer.comの両方にコメントを求めている。新たな情報が得られたらアップデートする。

〔日本版〕Freelancer.comでテープ起こし業務をアウトソースした体験がこのブログ記事に詳しく載っている。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


マイシェフは3,000円から利用できる女性のための出張シェフサービス

仕事に家事に忙しい女性にとって嬉しいサービスがローンチされた。場所と日時、好みのシェフを選ぶと1あたり3,000円程度の低価格で自宅にプロのシェフが来てくれるというサービス、マイシェフがオープンした。

このサービスが特徴的なのは食材選びから、調理、食事後の後片付けまで全てを行ってくれることだ。もちろん事前に苦手な食材などを伝えるとそれを考慮したメニューを提供してくれる。現在は主に東京(関東)で利用でき、対応エリアの一覧はこちらから確認できる。

さて、実はこのサービス/会社を運営しているのはSEOツールなどを提供しているGinzametrics Japanのカントリーマネージャーを務めている清水昌浩氏なのだ。なぜ、彼は女性向けのシェフ出張サービスを始めたのか。清水氏は「女性は出産により環境が大きく変わり、お友達と会う時間や美味しいものを食べる機会は減ってしまう(お子さんのために少し我慢されている)」ことが課題だと感じ、子供持ちの女性が友達と会う場を気軽に実施できるよう、美味しくオシャレな料理を提供することで、彼女らがもっと楽しく過ごせるようにとマイシェフを立ち上げたという。

米国では似たようなサービスとしてKitchitがあるほか、シェフの料理をデリバリーするタイプとしてGobbleMuncheryといったサービスも存在している。これらのサービスはは2011年に資金を調達したり、ローンチしたりと賑わっていた。

とはいえ、これまで女性にフォーカスしたものは日本でも米国でも無かったのでマイシェフの試みは興味深い。男性が注文することは現時点では出来ないが、Webサイト上には男性向けサービス開始時にお知らせを受け取るためのフォームが用意されているので、将来的には利用できそうだ。なお、女性が注文した際に男性が同席する分には構わないとのこと。

今後は、「ちゃんとした料理を食べたいと思ったらレストランに出向くのが一般的であったが、3年後にはシェフが家庭に訪問するスタイルを一般的な選択視の1つになっている」ようにしていきたいそうだ。


ドコモのイノベーションビレッジが初のデモデイを26日に開催、第2期生も募集開始

NTTドコモが今年2月に発表した新しいベンチャー支援の取り組みであるインキュベーション事業、ドコモ・イノベーションビレッジのプログラムに採択された第1期生のデモデイが今月26日に開催される。

ドコモ・イノベーションビレッジのプログラムは他のインキュベータと同様に社内・社外のメンターによるメンタリングや、オフィスの無償提供、サーバーやデバイスといった開発環境の提供が含まれている。社外メンターにはgumi代表取締役社長の国光宏尚氏、リブレンス取締役の桂大介氏らが参加している。500 Startupsと提携しており、George Kellerman氏が今期はメンタリングに来たようだ。

この他、このプログラムが特徴的な点はドコモの一部API(音声認識、アプリ検索、翻訳など)が利用できることや、開発助成金としてコンバーチブルノートで200万円の資金提供を受けられることがあげられる。

このようなプログラムを5カ月間実施した後、デモデイでプロダクトのプレゼンテーションを行うことになる。今期の採択チームはすでにホームページ上に公開されており、写真共有サービスや食品ECサービスなど6社が選ばれている。

本日からはこのプログラムの第2期生の募集も開始している。募集概要の詳細はこちらから確認できる。第2期では新たに「パートナーブースト枠」が設けられており、NTT西日本、NTTぷらら、NTTデータの3社が指定したテーマと合致したサービスを採択し、ドコモからの支援に加えてパートナー企業からの支援も受けられるそうだ。

テーマは
・スマートテレビを中心とした新しい視聴スタイルや生活スタイルを実現するサービス
・銀行・証券・保険をはじめとした金融サービスを担うソリューションおよび行政、ヘルスケア、農業、観光分野におけるソリューション
となっている。

第2期の応募はこちら、第1期のデモデイの参加はこちらから。なお、デモデイにはSkype、ベンチャーキャピタルAtomico創業者のニクラス・ゼンストローム氏が来日し登壇する予定だそうだ。

 


イラスト制作クラウドソーシングのMUGENUPが1億3000万円を調達、3Dデータ制作効率化も

ゲームアセット等のクラウドソーシングサービスを運営しているMUGENUPが1億3,000万円の資金調達を実施した。MUGENUPにとってシリーズBとなるこのラウンドにはIGPI(経営共創基盤)、SMBCベンチャーキャピタルの2社が参加した。

MUGENUPは主にゲーム内のキャラクターのイラストを取り扱っているサービスでゲーム制作会社とクリエイターを仲介する役割を担っている。現在このサービスに登録しているクリエイターは約1万人となっている。

MUGENUPが特徴的なのは発注者とクリエイターの間に入り、必ず仲介している点だ。クリエイターが自身のポートフォリオを提示するとMUGENUPがスキルのレベルをチェックし、彼らのスキルに応じてタグを登録しておく。そして、発注(コンペ)の際にイラストにも必要なスキルなどのタグが設定されており、クリエイターとイラストのタグをマッチングさせることで受注者を決定させているという。

また、クリエイターとMUGENUPの担当者がコミュニケーションを取るためのグループチャットも用意されており、このチャット上でイラストに赤入れできる機能などを備えている。このように2つシステム–クラウドソーシング、制作プラットフォーム(グループチャット)–を展開している。

だが、ここまでクラウドソーシングサービスを運営するスタートアップだとご紹介してきたが、MUGENUP代表取締役の一岡亮大氏は「クラウドソーシングの会社でも、イラスト制作の会社でもなく、デザインデータを効率よく大量に作ることをテーマにしている会社」だという。

このテーマの入り口の1つとしてクラウドソーシングサービスを提供してきたそうだ。現在MUGENUPでは2Dのイラストが主であるが、最近では3Dのデータも扱っておりグループチャット上で2Dと同様に3Dデータも確認、赤入れできるシステムの構築も完了したところだ。

すでにフィギュア作成も進んでいるようで、今後はこのような需要が増すと予想している。このような3Dデータも含めデザインデータを解析し、市場を効率化していくことが目標だと一岡氏は語る。

というのも、例えばフィギュアを3Dプリンタで出力する際に、キャラクターの羽と体の素材が違う場合などは収縮率も調整しなければならず、その微妙な調整は各社の職人だけが知っている状態であり、非常に効率が悪いそうだ。そのためMUGENUPでは、このようなデータを蓄積/分析し、共有することで効率化を図りたいという。

今後も現状のサービスはもちろん継続するが、今回調達した資金はこうしたデータ解析や3Dデータを扱えるクリエイター確保のためのマーケティングに投下していくとのこと。


容量無制限のクラウドストレージBitcasaが日本での展開を本格的に開始

2011年の本家TechCrunch Disruptに出場し、実現可能なのか!?と話題になったスタートアップBitcasaが本日から完全に日本語にも対応した上、東京にローカルキャッシュ機能を持ちファイルアップロードのスピードを向上させるなど日本展開を本格的に開始した。

Bitcasaは月額10ドル(年間99ドル)で無制限の容量を手に入れられるクラウドストレージサービスだ。Dropboxの容量が年間99ドルで100GBということを考えると、Bitcasaの気前の良さに驚く。

しかしながら、普段使っているパソコンやスマートフォンの容量を見てみるとパソコンで数百GB、スマートフォンで数十GB程度で(もちろん、職種によっては数TBの人も居ると思うが)、そのうち、クラウドストレージに保存するのは数GBで十分というユーザーも多いだろう。

だが、米国の調査会社ガートナーによると一般世帯のデジタルコンテンツの保存料は2016年までに3.3TBにまで増加すると予想されており、そのデータ量をデバイスを買い替えるごとに転送することは非効率的だと言える。このような将来的な需要も見越してBitcasaは無制限ストレージを構築しているのだろう。

では実際にどのような技術を用いて無制限の容量を実現しているのだろうか。TechCrunch Disrupt出場時にCEOのTony Gaudaが語ったところによれば、参考にしているのはConvergent Encryptionと呼ばれる論文だという(暗号化界では有名らしい)。

(僕を含め)素人には到底理解できない論文であるが、いくつか重要なポイントを抑えておこう。例えば、Bticasaフォルダに映画を保存するとクライアント側でデータを暗号化しクラウドへデータを送る。この時にBticasaは他のユーザーがアップロードしているデータの中で重複したものが無いかをチェックする。もし、重複したものがあれば映画はBticasa上にアップロードされることはなく、重複したものが無ければアップロードされるという仕組みだ(もう少し詳しく知りたい方はこちらの記事を参照していただきたい[1] [2])。

このように重複したデータを排除するとユーザーごとの固有データは25GB程度だとTony Gaudaはいう。彼によるとユーザーのデータの60%は複製であるから、月額10ドルで無制限ストレージを提供できるそうだ。これが低価格の理由というわけだ。

なお、本日から日本、およびアジアでの発売を記念して年間79ドルで利用できるプロモーションコードも用意されている「ASIA20」。Bitcasaはブラウザ、iOS、Android、Windoowsで利用できる。


日本発Google Glass対抗「Telepathy One」が約5億円を調達して目指すものとは?

Google Glass対抗のメガネ型ウェアラブル・デバイス「Telepahy One」を開発するテレパシーが米国時間の8月21日、Firsthand Technology Value FundがリードするシリーズAラウンドで500万ドル(約5億円)の資金を調達したと発表した。新たにシリコンバレーに開設する研究開発拠点で人材の採用を加速するという。2013年秋にSDKを限定公開し、2014年の製品発売を目指す。テレパシーは同時に、アップルでQuickTimeの開発で中心的役割を果たし、MPEG4の標準化にも貢献したピーター・ホディ氏(Peter Hoddie)がアドバイザリボードに加わったことも発表している。

最初に普及するのは汎用的デバイスより、一点突破型

2014年の発売開始が噂されるGoogle Glassとともに市場に並んだ場合、どこにTelepathy Oneの勝機があるのだろうか。モバイル向け汎用OSとしてAndroidの完成度は高まっているし、エコシステムも大きい。Google Glassのようなウェアラブルデバイスに市場性があるかどうかは未知数だが、もしあるとして、オープンな開発環境を当初から備えたGoogle Glassに、Telepathy Oneは対抗できるのだろうか? Telepathy Oneは、少なくともリリース当初は限られたサードパーティしかアプリを開発できないようだ。

セカイ・カメラで一世を風靡した(そして後に期待の分だけ落胆もさせたと個人的には思っているが)、元頓智ドット代表取締役で、現在テレパシーを率いている井口尊仁氏は、こういった新しいデバイスが広まるのは「一点突破」によるのだと汎用指向を切り捨てる。東京・渋谷のオフィスで井口氏はTechCrunchに以下のように語った。

「(開発環境やエコシステムが)オープンというのが勝利につながるわけじゃない。それに、(アプリ開発を自社外に無制限に開放するのは)悪い言い方をすると第三者に使い方を考えてくれって言ってるようなものですよね。アップルのスティーブ・ジョブズがコア・アプリはみなさんに任せますとか最初から言ってたら怒りますよね。どういうふうにコミュニケーションが変わるんですか、という未来想像図をリアルに描いて提示しないと」(井口尊仁氏)

Telepathy Oneはシンプルなデバイスだ。超小型のプロジェクタによる映像が目の前に見え、ディスプレイが視野の一部に浮かんでいるように見える。ここに通信中の相手のカメラが捉えた映像が見える。つまりTelepathy Oneは「見ているものの共有」をするためのデバイスだ。映像を見る方はPCなどほかのデバイスでも構わない。通信が1対1なのか、1対Nになるのかも、まだこれからのソフトウェアの作り込み次第のようだ。

Google GlassとTelepathy Oneの印象はだいぶ違う。斜め上を見上げて画面を確認する感じになるGoogle Glassと異なり、Telepathy Oneでは映像が風景に溶け込む印象だ。ディスプレイ部を小さく保ち、アームもなるだけ視界をさえぎらないよう工夫を重ねているという。例えば光学系を手がけるのは元ソニーのエンジニア、バッテリは元パナソニックのエンジニア、というように日本の製造業のトップ企業からスタートアップの世界にチャレンジしに来たベテランエンジニアが東京のオフィスに机を並べている。

LTE搭載も噂されるGoogle Glassと異なり、Telepathy Oneの通信系はWiFiとBlootoothのみという割り切りで、スマフォなどを通してネットに接続する。コスト抑制やバッテリ持続時間の確保という意味と、いきなりキャリアを開発プロセスに巻き込むと自由度が低くなるという懸念があるという。

「かつてモトローラはRazrにiPodプレイヤーを入れたiPod携帯というものを作っていましたが、あまりにデキが悪くて、それにジョブズがぶちきれてiPhoneを作り始めたという話もあります」

「iPodの音楽プレイヤーのように、キラーアプリ、キラーデバイスがあったことで、iPhoneは弾みがついたわけですよね。iPodに相当するような有効なユースケースがあれば、第2フェーズからでもモバイルキャリアと組めます」

「iPodのクルクル回すホイール状のインターフェースとか、iPhoneのピンチ操作とか、それを触っているだけでも楽しかったですよね。同じように、Telepathy Oneでもジェスチャーという新しいインターフェースで、触っているだけでワクワクするようなもの作っています」

Google Glassが音声中心の操作であるのに対して、Telepathy OneはジェスチャーをUIの主軸とするという。

Telepathy Oneの狙いは「ディスプレイとUIの刷新」という。PCは、机に置いたビットマップディスプレイとGUI、マウスがセットだった。これをiOSは、携帯できる小型ディスプレイとマルチタッチジェスチャーで置き換えた。こうした変革に相当することを、Telepathy Oneではアイウェアとジェスチャーという組み合わせで実現しようとしているという。単眼カメラでジェスチャーを認識できる処理能力やソフトウェア技術が出てきていることが背景にある。「次世代のディスプレイとUI。これをきっちり入れたプレイヤーはiPhoneの次が取れる」(井口氏)。逆にスマートウォッチでは、結局スマフォに従属する便利な表示端末止まりになる。だから井口氏は投資家にスマートウォッチを開発したらどうかと言われても取り合わないのだという。

一点突破の「一点」とは何だろうか? 映像ストリーミング共有?

「動画共有とは違います。われわれは体験共有といっています。大きなビジョンとしては人間のコミュニケーションを変えたいということ。写真や映像の共有はUstreamやInstagramがあるが、そういうものを作りたいのではないのです。共有したいというとき、いかにステップを減らして楽しくやれるか。そうしたものができれば、究極的には電話を置き換えるのではないかと思っています」

説明を聞いても、上のデモ動画を見ても、肝心のコアアプリケーションとなる「コミュニケーション」の具体的な形がまだ良く分からない。本当に広げた風呂敷の大きさに見合うだけの新たな共有体験をTelepahy Oneは見せることができるのか。井口氏が、そこそこ売れるデバイスを目指しているのではない、というのだけは確かなようだけれども。


モバイル決済のSquare、ぐるなびと決済機能強化で提携–導入店舗をさらに拡大へ

モバイル決済のパイオニアSquareが新たに「ぐるなび」と決済機能の強化を目的とした提携を開始することを発表した。ぐるなびが提供するチェックイン/ポイントサービス、顧客管理サービスである「ぐるなびPRO認証システム(以下、ぐるなびシステム)」導入済の約1万店舗に向けて新しい決済手段を追加するようだ。

ぐるなびシステムは来店客が「ぐるなびウォレット」を利用し、お店にチェックインするとポイント貯めることができる他、お店側は客の来店回数や前回の来店日時を専用のタブレット端末に表示するようなサービスだ。

これまでのぐるなびシステムではクレジットカードの決済には別途専用の端末が必要であったが、今回の提携により、ぐるなびシステム導入済の端末でSquareを利用することで対応できるようになった。

なお、Squareは今月6日にもローソンとの提携により、カードリーダーを日本国内約1万店舗で販売を開始するなど普及促進を加速している。


グロースハッカーごとサービスで提供――、日本発の新A/Bテストの「Kaizen Platform」

コンバージョンレートを上げるためにA/Bテストをしたほうが良いとは分かっていても、コストや運用を考えると難しいというサービス運用担当者は多いだろう。だからここ数年はJavaScriptのスニペットの埋め込みや、モバイル開発向けSDK提供によるビーコンの埋め込み方式などで、クラウドベースのA/Bテストをサービスとして提供するところが増えてきた。

中でもオバマ大統領のキャンペーンにおいて複数のテキストとビジュアル要素の組み合わせ全24パターンをA/Bテストすることで成果を上げたことで知られるDan Siroker氏が共同創業者であるY Combinator出身のOptimizely伸びが顕著なようだ。この市場の動向としては老舗のAdobe(Omuniture)のTest&Targetが市場をリードしていたが、Optimizelyが使い勝手の良さと低価格攻勢で実績を伸ばしているといったところ。Optimizedlyは2009年創業で社員数70人。合計3000万ドル(30億円)以上の資金を調達しているなど「本命感」がある。

Kaizenが80万ドルの資金調達をして9月にも本格始動へ

Optimizelyのデモ動画を見れば分かるが、既存サイトをブラウザで閲覧しつつ、ブラウザ上でボタン位置やテキスト要素を変更してA案、B案、C案……と作っていくインターフェイスは、「これ以上どうやれば簡単にできるのか」というほどよく出来ている。

ところが、そのOptimizedlyでも結局はコストは下がらないとして、新たなアイデアと実行力をもってA/Bテスト・サービスに参入しようとしているのが、日本発のスタートアップのKaizen Platformだ。2013年6月末にリクルートを退社した須藤憲司氏らが立ち上げた野心的なこのスタートアップは、3月にアメリカで法人登記を済ませ、グローバル展開を視野に入れて9月にも一般サービス提供の開始を予定している。Kaizen Platformは今日、グリーベンチャーズ、GMOベンチャーパートナーズ、サイバーエージェント・ベンチャーズの3社から合計80万ドルのシードファンディングの資金調達を発表した

Kaizen Platformが「planBCD」と名付けた新サービスで解決しようとしている問題は何か? 現在までに3カ月、計10社ほどのクローズドβを経て新サービスに確かな手応えを感じ始めている共同創業者の1人でKaizen Platform須藤CEOに話を聞いた。

本当のコストはコミュニケーションとオペレーション

Kaizen Platformが提供するA/Bテスト・サービス「planBCD」の提供形態は2種類ある。

1つはOptimizedlyと同様のもの。まず既存ページに対して、ブラウザ上で動的にHTMLやCSSを書き換えたり、画像を追加したりしてB案、C案……、と作る。これはKaizen側のサーバに蓄積される。続いて、このページに対してKaizenが生成したJavaScriptを外部から読み込むよう既存ページのヘッダに1行だけHTMLコードを書き加える。ページ来訪者のブラウザは、Kaizenが提供するJavaScriptコードをAWSのCDN(CloudFont)から読み込むことになる。これによって、A案、B案、C案……と、異なるページが一定の割合でページ訪問者に表示されるようになる。ログ集計もKaizen側で行い、十分なトラフィックがあるページであれば、リアルタイムに各バリエーションの表出確率を変動させることもやってくれる。つまり、「ボタンを大きくして上の方に配置したほうがコンバージョンレートが高い」というB案が実際にデータからも確認されれば、1週間程度でB案の表出確率を上げてくれる。

コンバージョンレートというのは、いわゆるランディングページから会員登録ページへ遷移することだったり、資料請求ボタンをクリックすることだったり、ECサイト上なら商品をカートに入れることだったりする。ページ来訪者がビジネスに直結する成果につながるアクションを起こしてくれる率のことだ。

ここまでは、Optimizedlyと同じだ。Kaizen Platformが提供するサービスがユニークなのは、B案、C案の作成と提案を、Kaizenが抱える200人ほどのUI/UXデザイナーに対してクラウドソーシングできてしまうマッチングサービスも提供しているところだ。

「結局、お客さん側でページをいじるハードルが高いのが問題なんです」と須藤氏。たいていの企業では、Webサイト運営はシステム部門の管理下にある。システム部門というところは長らく、社内ITシステムの運用をやってきたために、短いサイクルでA/Bテストを回すといったアジャイル的な開発・運用フローと相性が悪い。せっかくB案を作って比較テストをしようと思っても「デプロイは2カ月後です」という冗談のような事態が発生しがちだ。

OptimizedlyやplanBCDは、ここをゴソッと外出しにする仕組みを作った。デプロイ作業の社内調整や実作業をなくして、JavaScriptによるページ埋め込みを動的に行う。

世界中から改善提案を受けて、A/Bテストを実施

残るのはデザイナやエンジニアの実働およびコミュニケーションのコストだ。どうすればビジネスの指標が改善するのかを考えてB案やC案を提案して、それを実際のページに落とし込むことを社内だけでやろうと思うと、たとえOptimizedlyのようなツールを使ったとしてもコストがかかるというのがKaizenの言い分だ。「実際オペレーションコストのほうが高いのです。ツールの利用料で10万円のテストをやろうと思うと、実際には人件費を入れると月に100万円ぐらいかかったりします。それなりに規模のあるサイトで継続的にA/Bテストを使った改善をやろうとするとエンジニア2人とデザイナ1人を貼り付けたりするので、すぐに月間50万円、100万円とコストがかかります」(須藤氏)。

planBCDでは、このエンジニア、デザイナをクラウドソーシングで外注にできる「Open Offer」をA/Bテストサービスのツールと合わせて提供する。

9月中旬以降に提供を予定しているサービスでは、サイトやページに対して改善案を提示するUI/UXデザイナは現在約200人。120人が国内で、北米が50人、アジアが30人程度が登録しているという。ビジネスの要点を理解して会員数やコンバージョンレート向上に寄与するデザイン上の提案ができる人材は最近「グロースハッカー」と呼ばれるが、こうした人々をクラウドソースできるというのが、planBCDの新しいところだ。問題は単純に人件費だけでなく、エンジニアリングとマーケティングの両面が分かる人材の確保ということもある。

「各デザイナごとに成績を取っています。誰がどれだけコンバージョンを上げたかをモニターし、その成績によってトップ10%のマエストロ、トップ50%のプロフェッショナル、残りをスタンダードとランク分けして、それぞれ月額50万円、20万円、10万円という料金設定にしています。デザイナの取り分は7割で、いまは各国のデザインファームとアライアンスを組み始めているところです。デザインというのは、ある程度は文化に紐付く面があるので、地域ごとにデザイナのネットワークを作っていこうと考えています」(須藤氏)。

グロースの部分を外注にする場合、その成果物や効果測定の結果は、事例としてオープンに共有していくよう推奨しているという。そうしないとデザイナが実績を示しづらいし、知見の共有も進まないからだ。効果的な良いデザインを顧客やデザイナたちが「互いにパクれる」という言い方をするとネガティブなニュアンスがあるかもしれないが、ビジネスの根本ではない非本質的な部分で広く組織の壁を超えて知見を共有するというのはオープンソース的とも言えそうだ。

planBCDの利用料はデザイナへの月額支払のほか、JavaScriptによるコンテンツの配信部分でかかる予定だ。

現在は、社内外でデザイナーやエンジニアの部隊を抱えるエンタープライズ向けのプラットフォームのレンタルから開始しており、月額50万円〜(1500万PVのコンテンツ配信料まで込み)で提供、既に数社の顧客を抱えている。須藤氏は前職のリクルートでアドオプティマイゼーション推進室の室長を務めていて、特に大手の企業ユーザーが抱える問題点やコスト感を良く理解している。「A/Bテストはツール提供のビジネスのように見えるかもしれません。でもわれわれが取り組んでいるのは“試すコストを下げる”ということ。ツールはその一部なんです」(須藤氏)。現状で200〜300万円のオペレーションコストをかけてA/Bテストを回しているエンタープライズ市場の顧客からすれば、planBCDの価格設定は十分に魅力的だという。すでに年内の黒字化は見えていて、年明けにも次の大型の資金調達を考えているという。

今のところWebページだけがA/Bテストの対象だが、ネイティブアプリについてもSDKを提供予定という。例えば最近ネイティブアプリで問題となっているのがアクティベート率。ダウンロードやインストールはしても、その後のアカウント作成まで進まないケースが一般に5割程度。アクティベート率の高いアプリでも8割ほどという。この数字をいかに上げていくかは、起動時のサービス説明画面のデキに依存する面があり、A/Bテストが必要とされる場面だという。また、利用者の性別や年齢、初回訪問か2回目、3回目かなどによってA/B/C案を出し分けるようなサービスも考えているという。例えば通販サイトでは、商品を陳列する1画面内の列数によって購買率が変わったりするが、性別によってウケるUIも異なるからという。

現在、Kaizen Platformはパートタイマーも入れて社員は14人。うち11人がエンジニアという。クローズドβ中の顧客は日本企業だが、法人登記は最初から米国だ。須藤CEOもビザが降り次第、年内にも米国に渡るという。開発は東京中心で行い、顧客開拓も外資系の日本法人をターゲットにするなど足元からのスタートだが、今後はヨーロッパ、アジア、南米に拠点設置を検討しているなどグローバル展開を狙っているという。


ヴォラーレが1.75億円を調達、ディレクトリ型アプリ検索「Appliv」にSEO事業の知見を投入

ヴォラーレは2007年に創業されたスタートアップで、主にSEOを中心としたコンサルティング事業や自社サービスの運営を行っている。そのヴォラーレが本日、日本ベンチャーキャピタル、元クックパッドCFOの成松淳氏を引受先とした総額1.75億円の資金調達を実施した。

ヴォラーレはSEO/コンサルティング事業で経営は順調なようだが、今回調達した資金を自社サービスの運営に充て、サービスの拡大を目指すという。ヴォラーレ代表取締役社長の高橋飛翔氏は創業後から主にB向けの事業を展開していたが、昔からC向けのサービスを展開したいと考えており、2011年12月ごろからはアプリ発見サービス「Appliv」に注力してきた。

ApplivはブラウザベースでiOSアプリを発見するためのサービスで、各アプリにはヴォラーレの公式レビューとユーザーからのレビューが掲載されている。App Storeではスクリーンショットと短いアプリ紹介分だけで情報が少ないが、Applivではどのようなアプリかを詳しく掲載することで目的に合ったアプリを発見しやすくしている。

このサービスがリリースされたのは昨年8月で、現在は月間UU(ユニークユーザー)120万、600万PVほどにまで成長しており、レビューはヴォラーレ公式のものを含め1万8,000件ほど掲載されている状態だ。

ヴォラーレは以前TwizardといったTwitterクライアントも提供していたが、今は主にApplivに絞って展開している。この事業に注力した理由の1つはSEO事業で培った技術、知識を活かせるサービスだからであると高橋氏はいう。

では、実際にどのような点でこのサービスにSEOのノウハウが活かされているのだろうか。それはCGM型のサービスであり、ディレクトリ構造にしている点である。

CGM型のサービスでは飲食店なら食べログ、料理ならクックパッドが有名であるが、これらでSEOは非常に重要であるという。前者なら「地名+料理のカテゴリ」、後者なら「食材名+調理法」などの検索ワードで上位に表示されることはトラフィックを集めるには大切である(もちろん、その前に検索対象となるコンテンツも必要だが)。

また、ApplivはApp Storeのカテゴリよりも細かく1,200個以上にカテゴライズされていて、細かなディレクトリ構造を取っている。例えばApp Storeでは「ファイナンス」という1つのカテゴリになっているが、Applivではその下の階層に「投資・資産運用」、「家計簿」、「計算機」というように細かく分けられている。このディレクトリ構造はSEO的にも有効なのだという。

このディレクトリ構造についてはSEO事業会社としての視点を高橋氏は語ってくれた。「Web領域においては、Yahoo!のディレクトリ型検索エンジンに対し、Googleのロボット型検索エンジンが勝利したという歴史があるが、アプリ領域においてはロボット型検索エンジンを確立することは困難である」そうだ。

なぜ、アプリ領域でロボット型検索エンジンが機能しないのかというと、Googleの検索エンジンはテキストコンテンツやハイパーリンクなどを解析することで主に検索結果の表示順位を決定しているが、アプリにはテキストコンテンツがない場合もあるし、アプリ間をハイパーリンクが繋いでいるという状況でもないからだそうだ。

このような背景から現状のiOS、Androidアプリマーケットではロボット型検索エンジンは機能しないと考え、ApplivではWeb上でテキストのレビューを掲載し、ディレクトリ構造を取ってハイパーリンクを繋ぎ、ロボット型検索エンジンが機能するようにしているという。このような仮説を基にSEO事業で培ったノウハウを活かしているようだ。

さて、今後の展開についてだが、早速本日から新たに「Appliv Ad」という成果報酬型の広告サービスを提供するようだ。広告主が予算の上限を決めると自動的にAppliv内で最適な箇所にアプリを目立たせて表示してくれる。広告のリンク先はAppliv内のレビューページで、料金が発生するタイミングはユーザーがレビューを読み、App Storeへのリンクを踏んだ時となっている。

高橋氏は「リワード広告などではなく、レビューをしっかり読んで興味を持った人がインストールすることでアクティブ率も高くなるのではないか」と語る。

なお、前述の通りApplivは現在iOSアプリのみの掲載となっているが、今年末までにはAndroidアプリの掲載も予定しているそうだ。


SmartNewsのゴクロが4.2億円を増資、データサイエンティストなど人材採用を加速

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スマートフォン向けニュースアプリ「SmartNews」を開発、運用するゴクロが今日、グロービス・キャピタル・パートナーズを割当先とする第三者割当増資を実施して4億2000万円を調達したと発表した。増資実施後のゴクロの資本金は4億8000万円となる。

SmartNewsはiPhone、iPad、Android向けアプリとして提供されていて、事前にダウンロードしたコンテンツをモバイル端末に合わせた独自UIで読めるニュースアプリ。メディア各社と提携していて、現在25社43媒体と提携、もしくは協業が進行中という(情報開示:TechCrunch Japanも協業媒体の1つ)。ダウンロード数は公開されていないが、2013年7月8日現在でiOS版の評価平均が4.66(8527人の評価)、Android版の評価平均が4.58(3379人の評価)というから評判は上々のようだ。

ニュースのアグリゲーション・キュレーション市場では、SmartNews以外にもGunosyや、Anntena、Flipboardなどがある。Antennaを運営するグライダーアソシエイツが8月8日にマクロミルから15億円の出資をすることを発表しているなど注目分野だ(もっともAntennaへの出資についてはバリュエーションが過大ではないかという意見も各方面から聞こえてくるが)。

SmartNewsは単にモバイル画面で見やすいニュースということではなく、今回の増資でエンジニアや「データサイエンティストを採用する」と明言しているように、情報のフィルタリングが1つのキモだ。ゴクロの鈴木健氏がTechCrunchに語ったところによれば、ユーザーに届ける記事の選別は、Twitterで得た情報を独自開発のリアルタイム解析技術「Crowsnest」を使って行なっている。

また、OSネイティブの描画コンポーネントではなく、独自の表示エンジンを使っているのも特徴という。ページめくりのエフェクトというのもあるが、もう少し地味でありながらもUIを使いやすいものにする工夫がある。例えば、記事の見出しを形態素解析を行って品詞の連接状況から折り返し位置を決定して表示しているほか、カーニングや長体処理(文字幅を縮めたり伸ばしたりする処理)をかけることで、スマフォなど限られた画面に最適に文字が表示されるよう腐心している。OSやブラウザ標準の描画コンポーネントを使うと、特に横幅を狭めたようなときのテキスト表示では、禁則処理で無駄な空白ができてしまいがちなので、それを回避しているということだ。SmartNewsのタイル表示された記事見出しをよく見ると、一部の記事の枠に淡い色がついているが、こうした配色がなく真っ白な状態だと、ぱっと画面をみた時にどの写真(画像)がどのテキストと関係しているのか人間には分からなくなってしまう、ということもあるという。

ゴクロは今回調達した資金で、主に人材獲得を加速する。エンジニア、データサイエンティストらを中心に、現在6名の社員を1年以内に40名規模の体制する。さらに、海外市場を視野に入れた事業の準備に着手するという。

PCからモバイル、Webからアプリ、人間によるコンテンツ編成から統計処理と、いろんな流れにうまく乗っているように見えるSmartNewsですが、果たしてポストPC時代のヤフーポータルのような存在になれるのか注目ですね。


携帯電話の通信設備を屋内に設置するスタートアップ、JTOWERが10億円の資金調達を実施

JTOWERは携帯電話事業者などの通信キャリアに基地局を設置するためのアンテナやケーブルといったインフラ設備を提供するスタートアップである。具体的には商業施設やオフィスビル、マンションなどで、JTOWERが設置するインフラ設備を複数の携帯電話事業者に共有してもらう事業をスタートさせようとしている。米国では同種の事業はAmerican Towerなどがあり上場も果たしていて、大きな企業に成長している。このJTOWERが産業革新機構JA三井リースアイティーファームを引受先とした総額10億円を上限とする第三者割当増資を実施した。

JTOWERのビジネスは、通信企業のインフラコストを抑えようというものだ。携帯電話などでは電波が確実に端末に届くことが重要になるが、屋内では電波の遮蔽が起こり、電波が届きにくいところがある。このために各通信キャリアは商業施設やオフィスビルなどの屋内に自前でアンテナや基地局を設置する必要があるが、それにはそれなりのコストがかかっている。たとえば、大きなビルでは数億円程度の設置費用がかかるのだという。このコストは通信キャリアだけでなく、商業施設やビルを所有する不動産事業者も負担を強いられることもあった。そこでJTOWERがその設備を敷設し、通信キャリアはその設備を複数社で利用することで、そのコストを抑えようというわけである(下記、産業革新機構の資料参照)。

通信業界のような大型の設備投資が必要な業界に新たな事業にチャレンジするスタートアップが登場するのはとても興味深いことだ。このアイデアを実現したJTOWERの代表取締役の田中敦史氏は、イー・アクセスの創業メンバーでイー・モバイルのCFOなどを務めていた人物である。通信業界に深く関わってきたからこそ、こういったビジネスの可能性が存在していたことに気がついたのだろう。田中氏は「この事業はこれまでの通信業界の枠組みに変化をもたらす可能性があると考えているが、実績がない中で大型の増資を実現するのには相当の努力をした」と語っている。今後は各通信事業者との継続的な調整を重ね、不動産会社各社と協業していく予定だとしている。また設備投資もさることながら、人員拡充、特に通信技術者を採用していく予定だという。


ウォンテッド、メール解析で連絡帳を作成するアプリ「CARD」をローンチ

日本のスタートアップ界隈ではエンジニアやデザイナーの人材採用時によく使われているソーシャルリクルーティングサービス「Wantedly」のβ版が公開されたのは2年程前のことだ。現在は約1,400社と5万のユーザーが利用しており、最近ではスタートアップだけでなく、複数の上場企業も同サービスを活用しているそうで、順調に成長している。

そして本日、このWantedlyを運営するウォンテッドが2つ目のプロダクトである名刺管理アプリ「CARD」のローンチを発表した。まずはiOSでのみ提供される。CARDを簡潔に説明すると「メールアドレスを登録するとメールを解析し、自動で連絡帳を作成してくれるアプリ」だ。

このアプリはメールアドレスを認証すると、受信したメールと送信したメールの本文を解析し、署名欄などから相手の名前、会社名、役職、電話番号といった情報を取得することで自動的に連絡帳をCARD内に作成してくれる。自動作成された連絡先はデフォルトの連絡帳のようにアプリ内で名前や会社名を入力し検索することも可能だ。

一度自分のメールアドレスをアプリで認証すれば、それ以降の更新は自動でやってくれるので、ユーザーが必要な作業はほとんど発生しない。また、メールは受信したものを全て解析して連絡帳に登録するわけではなく、1往復以上のやり取りをした相手だけ連絡先として登録する仕様になっている。

名刺管理サービスというと、本誌でも紹介した三三が提供する「Eight」(最近はTVでCMも放送している)やScanSnapとEvernoteを組み合わせるなどして、もらった名刺全て登録しておく利用法が一般的だが、CARDは「メールのやり取り」が基本なので、他のサービスと比べるとより密な関係にある人に絞った名刺管理サービスとなる。

ウォンテッドはWantedlyを見てわかる通り「何をするか」よりも「誰とするか」を重視しているから、このようなサービス設計をしたことにも納得できる。これを強調するかのようにCARDにはライブ機能と呼ばれるものもあり、これは他のユーザーの連絡先情報をリアルタイムにアップデートしてくれる。

ライブ機能をONにしておけば、自分が異動などをした際にプロフィールを更新するだけで、自分が登録されている他のユーザーの連絡帳で情報がアップデートされる。この機能を使うことで、一度関係を作れば、その後最新の情報が常に登録されている状態になるわけだ。

しかし、このような個人情報を取扱うサービスには、企業によってはセキュリティなどの不安があることも確かだろう。

この点に関しては「セキュリティはもちろん気にかけているし、メールの意味解析などはせず、アカウント情報は暗号化し、連絡先作成・更新に必要な情報は一定期間後に破棄している」とウォンテッド代表取締役社長の仲暁子氏はいう。

その上で、仲氏は「こういうもの(CARD)が便利だということを認識してもらいながら、使ってもらえる企業からどんどん展開していきたい」という。最近では大企業でもGoogle Appsを使ったり、iPhoneを支給してiCloudに接続しているケースもあるから、こういった取り組みを行っている会社には使ってもらえるのではないかと考えているそうだ。

Wantedlyでは転職者というごく一部の層にしかリーチできず、企業理念である「シゴトでココロオドル人を増やす」には対象者が少なすぎた。だから、CARDではビジネスパーソン全員をターゲットにして、”ココロオドル”人をもっと増やしていきたいと仲氏はいう。

今後の展開としては現在iOSにのみ対応のところ、他のデバイス・OSも順次提供。また、IMAPのみに対応しているがPOP3にも対応する予定とのこと。


GrowthPushはグロースハックのためのプッシュ通知分析サービス

300万DLを達成している写真共有サービスのMy365を提供することで知られるシロクが、新サービスを開始した。GrowthPushと名付けられた新サービスは、字面から想像できるとおりプッシュ通知でグロースハックを手助けするためのサービスだ。具体的にはプッシュ通知をユーザーごとに最適化し、それを分析することでリテンションを高めることを目的としている。

グロースハックはユーザーの流入と流出について測定、最適化を行い、新規サインアップ数の増加、そこからアクティブユーザーの確保、さらにエンゲージメントの向上などプロダクトの成長を促すものだ。昨年後半ごろからグロースハックは日本でも注目され始め、今ではグロースハックに特化したイベントも開催されるほどになっている。

グロースハックの中でもGrowthPushはユーザーの継続率に焦点を当てている。というのも、リワードやアドネットワークを通じてユーザーにアプリをダウンロードしてもらっても、1週間後には大半のユーザーがアプリを使用しなくなってしまう。だから、アプリインストール後に開発者から行える重要なアクションの1つであるプッシュ通知でこの問題を解決したいとシロクCOOの向山雄登氏はいう。

GrowthPushではユーザーの属性、アクションの有無(例:課金/無課金)などでセグメント化し、文言や時間帯を変えてプッシュ通知を送ることができる。

例えばソーシャルゲームの場合、登録まもないユーザーと課金を何回もするほどのヘビーユーザーとでは送るべき内容が違ってくるだろう。使い始めならば、どのような使い方ができて何をすべきかを教え、ヘビーユーザーにはイベントのお知らせなどを積極的に送る方が効果が高いかもしれない。

Verizonやインテル、セールスフォースなどから出資を受けているプッシュ通知サービスを運営するUrban Airshipによると、プッシュ通知を送るのと送らないのでは半年後の定着率が2倍違うというデータもある

実際にシロクが運営するアバターアプリ「ピプル」では文言を分けてプッシュ通知を送ったところ、文言によってアプリの起動率が1.4倍から2.3倍も違ったそうだ。

しかし、プッシュ通知を送り過ぎてアンインストールされてしまう可能性があることも確かだ。この点に関しては今後データを集めながらアンインストールに繋がる頻度なども提供していく予定とのこと。

料金体系は5万リクエストまでは無料で、200万リクエストは2万円(スタートアップ)、600万リクエストは5万円(ビジネス)など5つのプランが用意されている。目安としては3万ユーザーほどの規模で毎日プッシュ通知を送るとスタートアッププランを、300万DLを突破したMy365規模になるとビジネスプランをそれぞれ少し上回るそうだ。

GrowthPushはSDKとタグを入れるだけですぐに利用でき、登録はこちらからできる。


国産モバイル決済のCoiney(コイニー)も決済手数料を3.24%に変更、入金サイクルも短縮し競争が本格化

今年5月にSquareが日本でローンチされてから、国内のモバイル決済サービスの競争は加速している。

PayPal Hereと楽天スマートパスはカードリーダーを有料で販売していたが、実質無料になるキャンペーンを行うなど様々な施策を行っている。

その中でも大きな動きが決済手数料だった。PayPal Hereと楽天スマートパスはSquareの3.25%に対抗し、3.24%へと改定してきた。そして本日、少し遅れて日本のモバイル決済スタートアップのCoineyも決済手数料を3.24%にすると発表した(現在は4%)。

8月21日からCoineyの取引は全てこの手数料で利用できる。これで国内で展開されているモバイル決済サービスの手数料はSquareの3.25%を除いて他3社は3.24%となり、手数料に関してはSquareの優位性はなくなった。

また、Coineyは入金サイクルの短縮も発表している。Squareと楽天スマートペイは銀行口座への振込が決済日の翌日/翌営業日で、PayPal Hereは(銀行により異なるが)3日から1週間ほどかかる。これに対してCoineyは毎月25日締め翌月末の振込になっており、資金繰りが厳しい店舗からすると導入の障壁になっていただろう。

しかし、手数料変更日と同じく8月21日からは月に6回までの支払いが可能となった。締め日が5日ごとになり、支払いはそれぞれの締め日から12日後にまで短縮された。

入金サイクルはSquare、楽天スマートペイに比べると依然差はあるが、今後実績が積み上がるにつれて改善されることだろう。なお、入金時の手数料に関しては3万円未満が105円、3万円以上は210円をユーザーが負担する。この点に関しては楽天スマートペイは210円(楽天銀行は手数料無料)、PayPal Hereは5万以上は210円、Squareは無料となっている。

この他、これまではメールでのみの対応だったレシートをプリントアウトできるように、9月中旬からプリンターを試験的に提供するそうだ。

Squareが日本でローンチした際には決済手数料の安さと入金サイクルの早さが目立っていたが、こぞって競合サービスが改善してきた。今後はさらにこれらの点では差別化が難しくなるだろう。となると、この先重要になってくるのはPOSレジの機能やSquare Walletのような顔パス決済(ここまで来ると”モバイル”決済ですらないが)といった点になるのかもしれない。

今後の各社の動きにも引き続き注視していきたい。


モバイル決済のSquare、カードリーダーを全国のローソン約1万店舗で販売開始

モバイル決済のSquareが日本でのサービス提供を開始したのは2カ月程前のことだ。競合サービスよりも圧倒的に安い決済手数料3.25%という発表で話題となった。そのSquareが本日から全国のローソンでSquareリーダー(カードリーダー)の販売を開始したことを発表している。

これまではオンライン上でSquareに申請した後にカードリーダーを郵送で受け取るか、国内のApple Store7店舗で購入できたのだが、今日からはコンビニでも手に取ることができる。ローソンは全国に約1万店舗あるというから、多くの人の目に触れることになるだろう。

Squareリーダーの料金は980円(税込)だが、Apple Storeでの販売と同様に、商品パッケージ内に記載されているコードを入力すると銀行口座に1,000円が振り込まれるため、実質無料となっている。

さて、ここで競合サービスとの比較を簡単におさらいしておこう。ソフトバンクと組んだPayPal Hereは7月1日から決済手数料を3.24%へ変更し、リアル店舗での販売はソフトバンクショップ・ソフトバンク取扱い店を合わせて約2,700店舗で展開しているそうだ。

楽天のスマートペイもPayPal Hereと同様に決済手数料を3.24%に変更し、初期費用が無料になるキャンペーンを開始したりと奮闘している。最後にクレディセゾンと提携したCoineyだが、今のところ決済手数料は4%のままである(8月21日から3.24%に変更予定)。この2つのサービスに関してはオンラインのみでの申し込みとなっているようだ。

その他、口座振込までの時間や入金手数料といった様々な条件が人気を左右することになるが、Squareが決済手数料を除いては全てリードしている印象だ。


TechCrunch Tokyo 2013を11月に開催します!

TechCrunch Japanは、今年もTechCrunch Tokyo 2013を開催します。今年は初となる2日間の開催予定で、小会場のほうでハッカソンを並行して行うなどパワーアップしています。国内外のキーパーソンや、海外からTechCrunchスタッフが今年もやってきて、これからのテクノロジービジネスの話題やスタートアップの現在について、講演やパネルディスカッションが繰り広げられる予定です。

もちろんスタートアップバトルをやります! スタートアップ企業による未来のプロダクトをオーディエンスの方々の前で披露してもらいます。今年も優勝者には100万円の賞金を用意しますので、イケてるプロダクト・サービスを披露したいスタートアップ企業の方々は、ぜひご応募くださいませ。

昨年同様に、リクルートとのコラボレーションによる日本最大級のWebアプリ開発コンテストのMashup Award 9の授賞式も併催で行われます。テクノロジーのトレンドや新しいアイデアに触れられる盛りだくさんの2日間。食事をしながらのミートアップがあるので、インターネットビジネスに携わる人やスタートアップ起業家、エンジニア、投資家などなど多くの方との交流ができます。皆さまの参加をお待ちしています!

イベント概要

  • イベント名称:TechCrunch Tokyo 2013(ハッシュタグ #tctokyo)
  • 開催日:2013年11月11日(月)、11月12日(火)
  • 会場ベルサール渋谷ファースト(東京都渋谷区東1-2-20 住友不動産渋谷ファーストタワーB1)
  • 主催:AOLオンライン・ジャパン株式会社
  • プログラム
    • セッション・キーノートスピーチ――現在調整中
    • スタートアップバトル――スタートアップ企業によるプロダクトのデモプレゼンテーション
    • ハッカソン――ソフトウェア開発やデザイナのチームによる短期プロダクト開発のコンテスト
    • Mashup Award 9表彰式――リクルートが毎年開催するWebアプリ開発コンテストのMashup Award 9の授賞式を行います。
    • ミートアップ――食事や飲み物をご用意してこのイベントに来場した方とのネットワーキングを楽しんでもらうものです。2日目の夜にはスタートアップバトルの勝者の表彰式も執り行います。

※プログラム以外に会場内にスタートアップを中心としたデモブースを設けます。ブース参加の応募も近日中にご案内予定です。

スタートアップバトル参加企業の募集を開始します!

TechCrunch Tokyo 2013では、プロダクトのデモンストレーションを審査して、優秀なスタートアップを決定するスタートアップバトルを開催します。

応募のスタートアップ企業の優れたプロダクトの中から、一次審査によって30社前後のチームを選出し、TechCrunch Tokyo 2013のイベントに登壇していただきます。予選で10社に絞込み、決勝で勝者を決定します。みごと勝者に輝いたチームには賞金と、そのほかの賞品を用意しています。成功を目指すスタートアップ企業のみなさんのご応募をお待ちしています! 詳しくは、特設イベントページをご覧ください。


視聴時間単位で広告枠を販売するDennooがニッセイ・キャピタルから110万ドルを追加調達

単にブラウザに広告が読み込まれただけではなく、実際にユーザーに表示された時間単位で広告枠を販売する事業を展開するのがDennooだ。このスタートアップについては以前に本誌でも取り上げている

そのDennooが新たにニッセイ・キャピタルから110万ドルを追加調達したことを発表している。今年2月にはニッセイ・キャピタル、サイバー・コミュニケーションズ、サイバーエージェント・ベンチャーズと数名の個人投資家から117万ドルを調達しており、それ以前に調達した83万ドルと合わせると、累計調達額は310万ドルとなっている。

Dennooが手掛ける新しい広告の取組みは、興味深い。一方で、表示時間ごとに支払う広告主側のメリットは大いにあるが、広告を掲載する媒体側からすると従来の単純なインプレッション数で計測した方が視聴時間で計測するよりも収益性が高いのではないかという懸念点が存在することは確かだ。この点について、Denno共同創業者の長山大介氏は、同社が提供する「Viewable Time*計測サービス」でどの広告枠がCPV販売によって収益増につながるかを予め予想することができる」としている。(*Viewable Time:ユーザーの画面上に広告が表示されている状態)

Dennno共同創業者の梅田茂利氏は「このサービスの真価を発揮するのは動画広告だ」と語っており、今年6月からサイバー・コミュニケーションズと共に動画広告サービス「Adjust Display Cost-per-View」の提供を開始している。

この動画広告はユーザーの画面に広告の50%以上が表示されていて、一定秒数(15秒から30秒)以上が表示された場合のみ広告料金が発生するというものだ(YouTubeの動画広告である30秒間視聴されたら料金が発生する「True Viewインストリーム」と似ている)。すでに大手IT企業、通信会社や官公庁などから発注を受けているそうだ。

今後は今年秋ごろに「Cost-per-View」の売買を自動的に行うことでができるプラットフォーム「Dennoo Display CPV Demand Side Platform (仮称)」をリリース予定としており、年内には米国でも同サービスを提供予定だそうだ。


TC Tokyoでデビューしたクラウド会計ソフトのfreeeが2.7億円の資金調達を実施

昨年のTechCrunch Tokyoでデビューを果たし、今年3月にローンチしたクラウド会計ソフトのfreeeは順調に成長しているようだ。現在もプロダクトの開発にフォーカスをしていて、いよいよ8月には有料版がリリースされる。現在は6500の事業所が登録しているということだが、有料版への移行も順調に進んでいるという。

このfreeeを開発するCFOが今回資金調達を発表した。第三者割当増資を実施して総額で2.7億円を調達したというものだ。引受先はInfinity VentursとDCMで、DCMはシードラウンドで投資をしている既存株主である。CFOはこの資金調達と同時タイミングに社名もサービス名と同じfreeeに変えている。

この資金調達によって、さらなるプロダクトの開発にフォーカスをしたいと代表取締役の佐々木大輔氏は語っている。たとえば、現在は銀行やクレジットカードなどのサービスをクローリングすることで、データを取得しているが、今後は現金の動きも取り込めるようにしたいという。具体的にはレジアプリやレシートの読み込みアプリなど、現金の動きを扱うアプリやサービスなどの連携を考えているのだという。ほかにもCRMツールとの連動などオープンな設計を目指している。

また、これまでは経理担当者のみが使うためのツールだったが、会計事務所や社員が使うようなコラボレーション機能なども導入していきたいという。たとえば、これによって経費精算などを社員が直接入力するような機能が実装されることになる。彼らがこだわっているのはビジネスアプリとしてのエクスペリエンスで、使い心地やデバイスそのもの広がりにも大きな投資をしていくという。

海外ではXeroのようなクラウドベースの会計ソフトが台頭しているが、今後はfreeeも海外での展開を目指して行きたいと佐々木氏は語っている。freeeは今回の資金調達以前にDCMから5,000万円を調達している。また、最近ではInfinity Ventures SummitのLaunchpadでの優勝を果たしている。


国内12兆円市場を狙う「住」のソーシャルサイト「SUVACO」が今朝ローンチ

「ソーシャル・ホームデザイン・サイト」という耳慣れないジャンルのWebサイト「SUVACO」(スバコ)が今朝、プレオープンした。建築家やリフォーム業者、インテリアメーカーといった「住」のプロフェッショナルや業者と、その顧客である施工主を結びつけるオンラインのコミュニティサイトだ。リフォームや、新築デザインを建築家やインテリアデザイナーに依頼したいが、そもそもどこを探せばいいか分からない私やあなたのような人と、まだ発掘されていないような建築家を結ぶプラットホームを目指す。


SUVACO共同創業者の黒木武将氏(左)と、中田寿氏(右)

ぱっと見は一種のカタログサイトだ。建築家のホームデザインの事例や、インテリア写真を雑誌感覚で眺められる。もともと住宅やインテリア関連の雑誌を眺める層には、サイトを巡回するだけでも楽しめそうなサービスだが、2013年のローンチなので、狙いソーシャルなインタラクションが発生するプラットフォームとなることだ。お気に入りの建築家をフォローしてみたり、コミュニケーションを取るとか、気に入った画像を家族や友人とシェアするといったことができる。建築家の作品に対してコメントを入れるとかデザインを相談するといったことも可能だ。こうしたインタラクティブなやり取りを通して、自分のイメージにあう理想の部屋やインテリアを探し、それを作れるプロに出会えるというのがSUVACOだという。

なんだ、またマッチングサイトかと思うかもしれないが、これは注目のスタートアップだ。

何しろリフォームや注文住宅は12兆円もある巨大市場という。SUVACO共同創業者の1人で、過去11年にわたってメリルリンチ等の外資系証券会社などでIPOを手がけてきた中田寿氏は「ネット企業がdisruptしていない最後の巨大市場」とし、次のメガベンチャーが登場する可能性がある市場規模と話す。生命保険の37兆円、銀行の15兆円、ファンションの7兆円、旅行の6兆円、化粧品の2兆円といった市場では、それぞれライフネット生命、ソニー銀行やじぶん銀行、zozotownといったようにネット企業が既存勢力のパイを侵食しているが、同様の変化は住宅関連市場では、まだ起こっていないという。

「まだ起こっていない」というのは、米国では同コンセプトのプラットフォームとして2009年2月に「Houzz」がスタートし、現在月間アクティブユーザー数が1600万人にのぼるコミュニティに成長しているからだ。Houzzはこれまでにセコイアキャピタル、KPCBなどを含むVCから計3度、総額49億円ほどの資金調達をしているレイターステージの成長株だ。Houzzはこれまでに蓄積したデータから「現実的なリフォームの相場」を米国の州ごとに表示するような機能を追加したり、雑誌の切り抜きをスクラップするようにお気に入りのアイテムを貯めることができるideabookという機能を提供していたりする。内装写真の各所に付けられたタグにマウスオーバーすれば、アイテムの商品情報や販売サイトへのリンクが表示されるなど、単にカタログ雑誌の写真をオンライン化した以上のイノベーションを起こしつつある。

本日プレオープンとなったSUVACOは、Houzzほど高度な機能はさすがにまだ提供できていないものの、スッキリした美しいUIで、建築やインテリア好きなら眺めているだけでも飽きないかもしれない。すでに書いたようにフォロー機能やFacebookの「いいね!」的な「クール」ボタン、ユーザーがアイテムや部屋に対して付けたコメントが時系列に表示されるタイムラインとして「みんなの投稿」というソーシャル要素も実装されている。プレオープン時点で、すでに50人の建築家などの専門家、約700のアイテム、1,000強の部屋のデザイン例を集めている。こだわりを持って作られた「作品」が並ぶ。

リフォーム市場の7兆円、建売住宅以外の注文住宅市場が5兆円。このうち建築家が手がける約3兆円の市場、それに家具の6,000億円の市場がSUVACOのひとまずのターゲットという。例えば5,000万円の案件の場合、デザイン料として一般的に建築家は1割の500万円の対価を得るが、この対価のうちさらに1割の50万円がSUVACOの取り分となるという(建築家か工務店か、リフォームか注文住宅かなどで1〜5%とSUVACOの手数料率は異なる)。現状でも市場規模は大きいが、追い風も吹いているという。日本は新築市場の比率が高く、他国に比べてリフォームやリノベーション市場の割合が小さい。このことからリフォーム市場には成長余地があるとして、2020年までに倍増すると政府の成長戦略に盛り込まれている。

中田氏とともにSUVACOを共同で創業した黒木武将氏が自ら建築家を口説いて回った。富士銀行でキャリアをスタートし、シカゴ大学MBA、米国でも日本でも買収案件を手がけてきた金融業界20年のエリートが、なぜ住宅関連のITベンチャーなのか? 黒木氏は「日本にLBOが入り始めたころからM&Aを手がけてきた。もうやり尽くしたという思いもあり、新しい価値を作って行きたい。われわれミドルの人間がやらないと」という。長くIPOを手がけてきた中田氏には米中に大きく水を空けられてるIPOの市場規模の現状に対して、日本のスタートアップ業界に必要なのは数を増やすことよりも、量を増やすことという問題意識があったという。「必要なのは次のメガベンチャーを生み出すこと」という思いから住宅市場に取り組むことに決めた。「中田も私も建築業界の非効率性を外部の人間としてビジネスの観点から見れる。そこを建築家や事業会社の方々にご説明して賛同いただいた上でSUVACOに参加していただいている」という。必ずしも賛同が得られる場合ばかりだはなかったというが、黒木氏は「このままじゃダメだと思っている建築家が多かったのは発見」といい手応えを感じている。現状、建築家と施工主の出会いは前時代的な口コミがメイン。一般的な建築事務所だとアシスタントが何人かいて、事例を掲載するWebサイトもあるかもしれないが、潜在的な施工主がこうしたページにたどり着く道筋はほとんどないのが現状という。部数10万部程度の住に関する雑誌は数誌あるが、こうした雑誌が扱うのは個別案件ではなく、コミュニケーションも発生しない。

建築業界は言語や文化、地域性が強いビジネスだが、4年先を行っているHouzzが将来に日本市場に将来参入しないとも限らない。グローバルな視点で見た場合の競合はどう見るのか? 「3年から5年あれば日本市場を取れると見ています。その後はアジア圏を目指したい。アジアでは日本の建築のデザインや品質に対する評価は高い」と黒木氏は語る。

「ソーシャル」と聞くと写真共有やコミュニケーションのことを思い浮かべて食傷気味に思う読者も多いかもしれないが、巨大市場に切り込む地に足の着いたベンチャーの門出を祝いつつ、TechCrunchとしてはSUVACOの9月のグランドオープンも引き続き注目していきたい。