家庭用ゲーム市場は2年連続の前年比増、ソフト首位はポケモン

ゲーム総合情報メディアの「ファミ通」は4月2日、2017年度の国内家庭用ゲーム市場の概況を速報として発表した。同レポートによれば、2017年度の国内家庭用ゲーム市場規模は前年比121.8%の3878.1億円となり、2年連続の前年比増となった。

ゲームソフトの販売本数ランキングで首位を獲得したのは、2017年11月17日発売のニンテンドー3DSソフト「ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン」だった。推定の販売本数は約219万本。

画像:ファミ通発表のレポートより

家庭用ゲーム市場規模が拡大したのは、前年度に引き続き「Nintendo Switch(以下、Switch)」の販売台数が好調であることも理由の1つだ。任天堂は1月31日、2018年3月期第3四半期の決済説明会にて、Switchの全世界販売台数が累計1300万台を突破したと発表している(国内は約351万台)。また、任天堂の公式サイトでは、最新の販売台数は約1480万台となっている。ゲームソフトの販売ランキングを見ても、10位までのタイトルのうち4タイトルがSwitchのソフトだ。

2018年度には、Switchの「大乱闘スマッシュブラザーズ」やPS4の「キングダムハーツⅢ」など、発売前から注目を集める大型タイトルの販売が控えている。今後もこれらのタイトルの販売動向に注目が集まりそうだ。

70億人のファッションをITで変える「スタートトゥデイテクノロジーズ」発足、VASILYなど3社が合併

スタートトゥデイは4月2日、子会社のスタートトゥデイ工務店、VASILY、カラクルを合併する形で新会社スタートトゥデイテクノロジーズを発足したことを明らかにした(発足は4月1日)。新会社では「70億人のファッションを技術の力で変えていく」をミッションに、グループの持つ技術力を集約。保有するビッグデータの活用や技術革新の加速を目指す。

スタートトゥデイ工務店を存続会社、VASILYとカラクルを消滅会社とする吸収合併の形式で、合併後はスタートトゥデイ工務店へ権利義務を承継。VASILY、カラクルの事業はスタートトゥデイテクノロジーズの社内組織として発足する事業部に引き継ぎ、サービスを継続する(なおVASILYは2017年10月、カラクルは同年12月にスタートトゥデイの子会社となった)。

新会社の代表取締役には旧スタートトゥデイ工務店代表取締役社長の久保田竜弥氏と、旧VASILY代表取締役社長の金山裕樹氏が就任。久保田氏は代表取締役社長として「ZOZOTOWN」の開発やプライベートブランド販売サイトの事業を担当し、金山氏は代表取締役CIO(Chief Innovation Officer)として「WEAR」、「IQON」などの運営、新規事業の開発、スタートトゥデイ研究所などイノベーション創出を担当する。また旧カラクル代表取締役社長の大久保貴之氏は、執行役員として研究所福岡拠点のリーダーを務めるという。

今後は現在提供しているサービスの開発業務全般に加えて、スタートトゥデイ研究所によるR&D、テクノロジードリブンな新規事業の創造を行っていく予定。同社では「これまで感覚的に語られてきたファッションという分野を科学的に解明し、テクノロジーによって実用化することで、世界中の人がよりファッションを楽しむことができる世の中を目指します」としている。

なおスタートトゥデイテクノロジーズでは「7人の天才と50人の逸材」を募集する求人サイトも公開。機械学習や人工知能を専門とする研究員や、エンジニア、デザイナーなどを募る。最大7人の“天才枠”には1000万円から1億円、最大50人の“逸材枠”には400万円から1000万円の報酬が与えられるようだ。

ソーシャルギフトのgiftee運営が総額5.84億円を資金調達、ASEAN展開も視野に

メールやSNSでURLを送るだけで手軽にギフトが贈れるソーシャルギフトサービス「giftee」。運営元のギフティは4月2日、ジェーシービー(JCB)未来創生ファンド丸井グループを引受先とする第三者割当増資と、三菱UFJ銀行からの融資により、総額約5億8400万円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回の資金調達はシリーズCラウンドに当たる。

ギフティは2010年8月に設立されたスタートアップ。Open Network LabのSeed Accelerator Programの第1期、KDDI ∞ Labo (ムゲンラボ)の第1期に参加した経験を持つ。2016年4月には三越伊勢丹イノベーションズとの資本業務提携を実施。2017年8月にはトヨタ自動車のオープンイノベーションプログラム「TOYOTA NEXT」で協業企業に選定されている。

ギフティが提供するサービスには、2011年3月にローンチしたソーシャルギフトサービスのgifteeのほか、2014年1月に法人向けに提供開始したオリジナルギフトの販売システム「e-Gift System」、2016年4月にスタートした粗品や景品の配布に使えるデジタルチケット販売サービス「giftee for business」がある。また、2016年5月にはスマホで使える電子地域通貨システム「Welcome! STAMP」を、JCBグループの傘下でギフトカードオペレーション業務などを営むJ&Jギフトと共同で提供開始している。

資金調達の発表と同日、ギフティではJCBとの資本業務提携契約の締結も発表した。提携により、JCBが提供するプリペイド型カード「JCBプレモ」のスキームを活用し、協業に取り組むことが決まっている。JCBでは今春、JCBプレモをカードレスで発注・納品可能なソーシャルギフト「JCB PREMOデジタル」のリリースを予定している。

今回調達した資金についてギフティでは、ASEANを中心としたeギフト事業の海外展開を見据え、サービス開発と事業体制の強化に充てるとしている。また、JCBとの業務提携プロジェクトの推進資金、未来創生ファンドの出資者であるトヨタ自動車のTOYOTA NEXTでの協業プロジェクト資金などにも充当する予定だ。

資産運用RPAサービスのロボット投信が約1億円を調達

金融機関向けに資産運用業務の自動化サービスなどを提供するロボット投信は4月2日、みずほ証券プリンシパルインベストメント(MSPI)を引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。今回の調達は、2月1日に発表された総額約4億円の調達と同じシリーズAラウンド。シリーズ全体では合計約5億円を調達した、ということなので、今回は約1億円を調達したことになる。

ロボット投信は2016年5月の創業。2016年9月にはインキュベイトファンドから1億円を調達している。

ロボット投信では金融機関向けに「RPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務の自動化)」サービスを開発・提供。具体的には株式、投信に関する電話問い合わせへの応対の自動化や、投信データの分析、ロボアドバイザーエンジンの開発・提供など、複数の大手金融機関に対してソリューション提供を行っている。

直近では2017年12月、みずほ証券に電話自動応答システムを用いた投資信託および市況概況情報のサービス提供を開始。コールセンターのオペレーターが対応していた投資信託の基準価額の問い合わせや、前日の市況概況などの情報提供を自動応答で行うことで、24時間対応を可能にした。

この自動応答サービスは、Twilioが提供するクラウド型ASPを利用して構築されており、SNSをはじめとした他のチャネルへの接続も可能になっているという。これにより音声だけでなく、テキスト、ビデオなどデータ通信によるさまざまな手段で、金融機関とのコミュニケーションの実現が期待できる。

ロボット投信では今回の調達により、「株主およびそのグループとの事業連携も推進しつつ、より幅広い事業領域で資産運用RPAソリューションの開発に取り組み、テクノロジーを活用した資産運用プラットフォームの構築を進める」としている。

AIを用いて法務の仕事をスマートに——弁護士起業家が立ち上げたLegalForceが8000万円を調達

業界の課題を現場で体験した専門家が起業し、テクノロジーを駆使して新しいソリューションを提供する。近年のスタートアップをみるとそんなケースが増えたきたように思う。

今回紹介するLegalForceもそのひとつ。もともと森・濱田松本法律事務所で働いていた2人の弁護士が2017年4月に設立した、「テクノロジーの活用で企業法務の効率化」を目指すスタートアップだ。

同社は4月2日、京都大学イノベーションキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、京都大学学術情報メディアセンター/情報学研究科知能情報学専攻兼担 森信介教授を含む複数名の個人投資家から8000万円の資金調達を実施したことを明らかにした(資金調達は2018年2月〜3月にかけて実施)。

条文の内容をAIがレビューし、修正案を提案

LegalForceが現在開発を進めているのは、自然言語処理を用いた契約書レビュー支援サービス「LegalForce」。同サービスではAIやクラウドによって契約書のレビューにかかる負担と、それにまつわるコミュニケーションや情報管理の手間を削減する。

大きな特徴となりえるのがAIによる修正案のサジェスト機能だ。これは契約書内の条項を選択すると、過去の修正履歴やLegalForceのデータベースをもとに修正内容が提案されるというもの。イメージとしては「ここの箇所に漏れがあるので、○○のように修正してはどうですか?」といった具合だ。従来は担当者がフォルダを引っ張り出して、手作業で行っていた業務を自動化する試みとなる。

開発中のサジェスト画面のイメージ

LegalForce代表取締役の角田望氏によると、この機能はレビュー業務の効率化はもちろん、担当者が気づいていなかった要素を“発見”できるメリットもあるという。「すでに記載のある内容を修正することは、そこまで難易度は高くない。一方で『もともと書かれていないが、本来は書いておくべきこと』をゼロから発見することは難しい」(角田氏)

これまでであれば、担当者の経験や知識レベルに依存する部分もあっただろう。だからこそ過去のデータを基に、抜け漏れも含めてAIが修正案のチェックをサポートする利点も大きい。

ただ角田氏の話では「技術的にチャレンジングな領域」であり、同社の株主で自然言語処理技術の専門家の森教授と開発を重ねている段階だという。契約書は企業ごとに色があるため、ユーザーごとにデータを蓄積していき、個々に最適な提案をする必要もある。今後のステップとしては、企業の法務部や法律事務所とパートナーシップを組み、実証実験という形から始める方針だという。

法務担当者の負担を削減する業務支援サービス目指す

また上述した通り、LegalForceは契約書レビュー時のオペレーションを効率化する機能も備える。これは角田氏の言葉を借りると「(契約書に特化した)グーグルドキュメントとチャットワークを足したようなもの」に近い。

開発中の契約書レビュー画面のイメージ

ドキュメントの共有やステータスの管理、関連するコミュニケーションをクラウドに一元化。各条文ごとにチャット機能を備えることで、従来はWordのコメントやメール、ビジネスチャットで行っていたコミュニケーションをLegalForce上だけで完結できるようにする。

「実際に現場でレビューしていて、コミュニケーションの部分で課題を感じることが多かった。たとえばチャットでやりとりする場合は情報がどんどん流れてしまうし、メールでは話が混線してしまう。大事な内容を見落とす原因にもなるので、やりとりを一元化したいという思いがあった」(角田氏)

まずは4月末を目処にベータ版の公開、そして複数社との実証実験にも着手する予定。ベータ版にはAIを活用したサジェスト機能は搭載されず、正式版からの提供になるという。

「契約書×テクノロジー」といえば、弁護士ドットコムの「CloudSign(クラウドサイン)」やリグシーの「Holmes(ホームズ)」など契約書の作成や締結をスムーズにするサービスの印象が強い。LegalForceのようにレビュー支援に着目したサービスはあまりなかったように思う。

「弁護士や法務部の担当者に聞いても(レビューを含む)契約書業務が大変という話をよく聞く。なにより自分自身もそうだったので、自然言語処理の技術をはじめとするテクノロジーによってもっと便利にできるのではないかと感じていた。最近はAIというと『仕事を奪う』という文脈で捉えられることもあるが、そうではなく弁護士や法務担当者の負担を削減し、自分の価値を発揮できる仕事、クリエイティブな仕事により多くの時間を使ってもらえるような業務支援サービスを目指したい」(角田氏)

Amazon Echo一般発売、もう招待なしで買えます

eng-logo-2015Amazon.co.jpは、音声アシスタント「Alexa」を搭載したスマートスピーカー「Echo」シリーズの一般販売を本日(3月30日)開始しました。本日より予約販売を受け付け、出荷は4月3日を予定します。もう招待メールなしで購入できるようになります。

Echoシリーズは、2017年11月に招待者限定で国内発売。招待メールを受け取るには、amazon.co.jpの製品ページからメールをリクエストする必要がありました。しかし、リクエストから何か月が経っても招待が届かないというユーザーが続出。『買いたくても買えない』というユーザーが存在していた経緯があります。

一般販売開始にあわせ、3モデルのうちメイン機の「Echo」と廉価機の「Echo Dot」は、エディオン、ケーズデンキ、ジョーシンなど、全国の家電量販店1000店舗以上でも購入可能に。(上位機の「Echo Plus」はAmazon.co.jpのみ)4月3日以降はPrime Nowでの取り扱いも開始します。

Echoシリーズの本体価格は下記の通りです(いずれも税込)

・Echo Dot:5980円
・Echo :1万1980円
・Echo Plus:1万7980円

今回の一般販売開始を記念して、割引キャンペーンも実施します。「Echo Dot」は期間限定で1500円割り引くほか、「Echo Plus」は「Philips Hue」のスマート電球1個とのセット商品として、割引価格で販売します。

また、二子玉川 蔦屋家電(東京都世田谷区)では、Echoシリーズのタッチアンドトライコーナーを本日(3月30日)より設置するということです。

Engadget 日本版からの転載。

LINEがライブクイズ「LIVEトリビア」を4月10日から開始、初回MCはふなっしー

アプリのトレンドに敏感なTechCrunch読者からは「何をいまさら」と思われるかもしれないが、昨今“ライブクイズ”サービスが流行っている。

これはその名の通りライブ配信とクイズ番組を組み合わせたもので、ユーザーはオンライン上でクイズに参加。あらかじめ賞金が設定されていて、全問正解者でその賞金を山分けできる点が特徴だ。Vineの創業者らが立ち上げた「HQ Trivia」がよく知られているほか、日本ではグノシーが「グノシーQ」を始めている。

そしてどうやらLINEもこのライブクイズに目をつけたようだ。同社は4月10日よりライブ配信サービス「LINE LIVE」において、参加型エンターテイメントSHOW「LIVEトリビア」を開始することを明らかにした。

LIVEトリビアではマル・バツで答えられる簡単な問題から、一般教養やトレンド知識、運が試されるものまで幅広いクイズを出題。全問正解者の間で賞金を山分けする(賞金は「LINE Pay」にて支払われる)。

4月10日以降は毎日20時30分から20時45分までの配信を予定しているほか、4月1日から3日間限定で先行体験版を実施。MCは日替わりで、初回は「ふなっしー」が担当する。

今後はLINE LIVEアプリに加えて、LINEのトークルーム上でもクイズへの参加ができるようになるほか、オンラインだけでなくオフラインでもLIVEトリビアがコミュニケーションツールになることを目指していくという。

野村アセットがロボアド「クロエ」のエイト証券を買収、出資額は16億円

野村アセットマネジメントは3月30日、ロボアドザイザーサービスの「クロエ」を提供するエイト証券および、同社の親会社である香港の金融持株会社8 Limited(エイト・リミテッド)に出資することを明らかにした。

エイト証券に対する出資額は約16億円、8 Limitedに対する出資額は約11億円の予定。エイト証券については発行済株式総数の過半数を保有することになるという。払込みは4月上旬の予定だ。

クロエは2017年2月にローンチされたロボアドザイザーサービス。最初にライフステージに応じた目標を設定し、それに基づく形で1万円から投資を行っていく。ポートフォリオは東京証券取引所に上場するETFによって構成。円建てで投資するため、為替変動による影響は受けないのも特徴だ。

同じく8 Limited傘下の8 Securities Limited(エイト・セキュリティーズ・リミテッド)も香港でロボアドバイザーサービスや株式取引サービスを展開。野村アセットでは8グループと連携してクロエのサービス拡充に取り組むとともに、他の金融機関等を通じたサービスの提供も目指す。

また今秋を目処にインデックスファンド「Funds-i(ファンズアイ)」をエイト証券で取扱う予定で、同社とともにアプリ開発を含めた準備も進めていくという。

(編集部注:3月30日17:20、「Funds-i」の取り扱い時期について誤りがあったため、訂正いたしました。)

「パズドラのようなゲームを、サーバの知識なしで作れる環境を」ゲームインフラのGS2が8000万円を調達

「パズドラやモンストのようなゲームを、サーバの知識がなくても作れるような環境を整えていきたい」——ゲームサーバのクラウドサービスを提供するGame Server Services(GS2)で代表取締役社長CEOを務める丹羽一智氏は、同社の展望についてこう話す。

GS2が手がけているのはゲームサーバの開発・運用を行わずにゲームを作れるようにする、開発者向けのインフラサービスだ。同社は丹羽氏がセガや任天堂を経て2016年に創業。同年12月にワンダープラネットから資金を調達し、サービスのベータ版を公開している。

そんなGS2は3月30日、4社を引受先とした第三者割当増資により8000万円を調達したことを明らかにした。引受先となったのは大和企業投資GameWithKLab Venture Partnersディー・エヌ・エーだ。今回調達した資金を基に開発体制を強化し、サービスの拡充を目指すという。

サーバの保守、管理、運用が不要に

同社が手がけるプロダクトや、背景にある近年の技術トレンドについては前回の調達時に詳しく紹介している。ポイントとなるのは2015年ごろから注目されている「サーバレスコンピューティング」や「FaaS」と呼ばれる技術だ。

サーバレスというのは「サーバが一切必要ない」ということではなくて、「サーバの保守、管理、運用がいらなくなる」という意味。代表的なのはAmazonが手がけるAmazon Lambdaで、「API Gateway にHTTP リクエストが届いたら○○を実行せよ」というように、イベントが発生した際にあらかじめ登録しておいた関数を実行できる。

このFaaSによって開発者の負担も減った。プログラムの実行時間に対して課金されるので「利用した分だけ払う」ということができるようになる。従来はサーバの起動時間に対して課金されていたため、アクセスが少なくてもサーバを起動していれば費用が発生する点がネックになっていた。

このような概念をゲーム分野に持ち込んだのがGS2のサービスだ。GS2自身もサーバレスコンピューティングを活用して設計。低価格ながら大量のアクセスを捌けるスケーラビリティと、サーバダウンが発生しない高可用性を併せ持ったサービスを目指している。

具体的にはゲーム専用のSDKとAPIを開発。「ゲーム内通貨(魔法石)の管理機能」や「チャット機能」など、ゲームに必要な各要素を細かく切り分けて提供する。2016年12月の取材時には9個だったAPIの数は、現在21個になったそうだ。

初期費用は一切不要。1時間あたり数円〜数十円、ゲームサーバへのAPIリクエスト1000回〜10000回あたり数円というように、各サービスごとに使用時間またはAPIのリクエスト回数に応じて料金を支払う。「APIをたたくだけで使えるが、裏側ではすごいデータベースが動いている。使う側はシンプルで、かつ大量のアクセスにも耐えられる」(丹羽氏)サービスだ。

「FaaSは便利な一方で使いこなすのが難しいという側面もある。たとえばamazonが提供しているフルマネージドサービスは、独自のアーキテクチャで作られていて流儀を覚えるのに学習コストがかかる。サーバの基本的な知識ですら学習コストがかかるのに、FaaSの学習コストまでをみんなが支払う必要はない」(丹羽氏)

サーバのノウハウがなくてもゲームを作れる環境

GS2のサービスによって大きく2つの変化が起きる。1つはサーバを開発・運用するノウハウがない人でもゲームを作れるようになること。もう1つは従来に比べて開発の効率化が見込めるということだ。

「たとえばこれまで家庭用ゲーム機の開発をやってきた開発者たち。その中には面白いゲームを作ることはできるが、サーバには詳しくないという人も少なくない。そんな開発者が自分たちだけでもモバイルゲームを作れるようになる、というのを1つの目標にしている」(丹羽氏)

昨今ではモバイルゲームの配信開始時やイベント実施時に、サーバ障害が発生したというニュースもよく目にする。丹羽氏によると、これらは「設計ミス」「実装ミス」「キャパシティ予測ミス」のいずれかが原因となっているケースが多いそうだ。GS2であればゲーム毎にサーバシステムを都度開発する必要はないし、サーバ開発の経験や専門知識は必須ではなくなる。

「任天堂プラットフォームでは、ゲームサーバの開発・運用をせずともネットワーク対応のゲームを作れるような環境を実現できていた。一方でモバイルゲームにおいてはそれができていないため、開発効率の面で課題があったり、サーバ知識のない開発者が困ったりしている」(丹羽氏)

開発費の高騰や開発規模の大規模化、期間の長期化などはモバイルゲーム業界の課題。これらを解決するためには、開発効率向上を避けては通れない。

「Unityのようなゲームエンジンが開発効率を向上させ広がっていったように、サーバ側でこのような環境を提供していきたい。サーバのノウハウがないためにモバイルゲームを作れなかった開発者がチャレンジできるようになった結果、ユニークな発想の新しいゲームが生まれてくると嬉しい」(丹羽氏)

英単語アプリのmikanがビットコイン用ウォレットアプリ「Yenom」をリリース

英単語の高速暗記アプリ「mikan」を運営するmikanが、ビットコイン用ウォレット事業への参入を発表したのは、3月9日のこと。今日3月30日、リリースが予告されていたウォレットアプリ「Yenom(エノム)」のiOS版・Android版が日本語・英語の2言語で正式公開された。

エノムは、ビットコインキャッシュ(BCH)の受け取り・送金専用のウォレットアプリ。ビットコインキャッシュが利用できるECサイトや一部飲食店で決済に使えるほか、個人間でもビットコインキャッシュの送受信ができる。

mikan代表取締役社長の宇佐美峻氏は、機能や通貨の種類を絞ったことについて「とにかく簡単に使えるウォレットを作って、ビットコイン利用のハードルを下げたかった」と説明する。

※この記事では宇佐美氏の発言に沿って、通貨としてのビットコイン自体を表す場合には「ビットコイン(BTC)」、ビットコイン(BTC)とそこから派生した暗号通貨を総称する場合には「ビットコイン」と表記しています。

エノムと既存の暗号通貨(仮想通貨)のウォレットとの違いは、機能がシンプル、ということのほかにもある。既存のモバイルウォレットでは、インストール後のチュートリアル、バックアップの手順があって、なかなかすぐに送受金ができる、というわけにはいかない。

これにはもちろん理由があって、例えば「12個の復元フレーズを書き留める」といった形でバックアップを行うのは、スマホ自体をなくしたときでもフレーズさえ保管してあれば、ウォレットに移した暗号通貨を復元することができるようにするためだ。

暗号通貨がどういう仕組みでやり取りされるもので、どのように保護すべきかが分かっている人や、既に多額の暗号通貨を保有していて、取引所には置いておきたくない、ハッキングの心配が少なく保全性の高いウォレットに通貨を移したい、という人なら、こうしたウォレットを利用する意義もあり、積極的に使っていくべきだろう。

しかし「少額でいいからビットコインというものを使ってみたい」「友だちの持つビットコインを受け取ってみたい」という初心者にとっては、ウォレットを作ることのハードルが高く、そのことが「ウォレットにさわれない、あるいは場合によっては取引所に通貨を置いたままにしてしまう理由にもなっている」と宇佐美氏は言う。

英語版のYenom。左から受け取り、送金、取引履歴の各画面。

エノムはインストールすると、利用規約の確認・同意後すぐ、ビットコインキャッシュの受け取り画面が表示される。チュートリアルの説明を読み込む必要もないし、パスフレーズの入力も不要だ。宇佐美氏は「スマホをなくしたらエノムに入っていた通貨はなくなってしまう。資産としての暗号通貨を保持するには向いていない。これまでのウォレットが銀行口座のようなものを目指しているのに対して、エノムは常に持ち歩くお財布のような存在だ」と説明する。

「お財布に数百万円、数千万円を入れて歩く人はいない。エノムでは、簡便さと引き換えに“資産”の保全はやらない。少額の暗号通貨を触ってみたい、受け取ってみたいという人が、初めて使うためのウォレットアプリだ」(宇佐美氏)

ビットコインを通貨としてもっと使いたい、使わせたい

そもそも、英単語アプリの開発・運営を行うmikanがなぜ、ウォレットアプリを提供するのか。そのきっかけは、昨年5月末にリリースされた「VALU」にあると宇佐美氏は言う。

VALUは個人の価値を株式のように発行し、ビットコイン(BTC)で取引できるSNSサービス。このVALUを通じて、取引のためにビットコインを買ったり、自分でもビットコインをもらったりして、宇佐美氏はビットコインにはまったという。

その後、昨年8月のビットコイン(BTC)のハードフォークイベントの際、「(ハードフォークで誕生する)ビットコインキャッシュ(BCH)を持ちたい」と考えたことが、さらに宇佐美氏をビットコインにのめり込ませることになる。「自分でウォレットを作って、そこにビットコイン(BTC)を保有すれば、ビットコインキャッシュを受け取ることができる。そう考えてウォレットをつくり、自分でビットコインキャッシュを分離した」(宇佐美氏)

フォークイベントの後も「最初は土日の趣味として始めたものが、いつの間にか月曜もビットコインのことを調べていて、そのうち火曜も、水曜も……。ホビーのつもりが完全にはまってしまって」と話す宇佐美氏。「マイニングもトレードも一通りやって、調べていく中で知った暗号通貨の考え方や仕組み、歴史もすべてが面白かった」と言う宇佐美氏は、ついには「何かビットコインのためにできることはないか」と考え始めたという。

そうしているうちに宇佐美氏が気づいたのは「他の人にビットコインのことを説明するのが難しい」ということだった。「日本ではそもそも、株や通貨の取引も日常的にやっている人が少なくて、その比喩ではビットコインのトレードの面白さもあまり伝わらない。『じゃあ、とにかく一度少し送るから受け取ってみてよ』というのが(理解してもらうのに)早いかな、と思っても、ウォレットのインストールが面倒で『ああ、やっぱまた今度にするわ』となってしまう。実際に触っている人が少ないのがウォレットのせいなら、簡単に使えるウォレットを作ってみよう、と考えた」(宇佐美氏)

「取り扱う暗号通貨にビットコインキャッシュを選んだのは、通貨としての価値と決済のしやすさにある」と言う宇佐美氏は「暗号通貨普及のキラーアプリは“通貨”だと考えている。であれば、普通のお金と同じように誰もが簡単に使えないといけない」と話している。そして「暗号通貨の中には、投機などを中心にしていて通貨を目指しているものが少ない。その中で、世界的に普遍的な通貨として使えるのはビットコインだ」と言う。

「暗号通貨の通貨としての堅牢性や、データの整合性は、コンピューティングパワーの強さで担保される。ビットコインはネットワーク効果が非常に強い。ネットワーク効果が強ければ通貨として強いのはリアルな貨幣と同じで、現段階でビットコインが世界最大の暗号通貨と言っていい」(宇佐美氏)

一方で宇佐美氏は「ビットコイン(BTC)は通貨として決済に使われるのを目指していないのではないか」とも指摘する。「ビットコイン(BTC)の送金手数料は、高いときには数千円、今でも数百円かかり、少額決済向けではない。データベース改ざんなどに強く、高額決済ではリアルマネーより相対的に手数料が低いので、高額決済には良いけれども」(宇佐美氏)

宇佐美氏は「諸説あるが」と前置きした上で、ビットコインキャッシュはビットコイン系暗号通貨のひとつと捉えている、とし、その中でビットコインキャッシュを選択した理由について、こう述べている。「ビットコインキャッシュは、通貨として日常的に使われることを指向していて、手数料を安くしている。通貨は使われることが大事。鶏が先か卵が先か、みたいな話だが、使われることでマイニングへの参加も増えて、参加が増えれば増えるほど改ざんもされにくくなる」(宇佐美氏)

エノムのマネタイズについては「今は考えていない」と宇佐美氏は言う。「現在世界で最も使われているウォレット『Blockchain』のアカウントが2〜3万ぐらい。当面はそれを超える世界一のウォレットになること、そして世界中でビットコインが使われることを目標とする」(宇佐美氏)

宇佐美氏は「お金がある人が使うものなのだから、何らかの形でいずれ収益化は考えられる。それより今は、ビットコインをとにかく使いたいし、使わせたい。エノムを提供することで『これで使えますよ』というふうにしたい」と語り、「ビットコイン周りでやりたいことは、ほかにもいろいろあるけれど、まずはウォレットにフォーカスして、みんなが使うアプリにしていきたい」としている。日英に続き、中国語やほかの言語への対応も、近日予定しているとのことだ。

ちなみに英単語アプリのmikanの方も事業は順調で、昨年黒字化を果たしたとのこと。「今年は学校用プロダクトのリリースも予定していて、事業として軌道に乗り始めた。こちらも引き続き、運営を行っていく」と宇佐美氏は話していた。

住宅ローン借り換え支援のMFSが3.3億円調達、BtoBtoC型サービス開始でユーザーリーチ拡大めざす

住宅ローンの借り換え支援サービス「モゲチェック」などを提供するMFSは3月30日、YJキャピタルゴールドマン・サックスを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達総額は3億3000万円だ。

写真左より、MFS代表取締役の中山田明氏、COOの塩澤崇氏、CTOの大西貴之氏

低金利が続く日本では、以前に組んだ住宅ローンを借り換えることで金銭的なメリットを得られることが多い。MFSが提供するモゲチェックでは、ユーザーが11項目の質問に答えるだけで、借り換えによる金銭的メリットの総額と、融資を受けられる確率を判定する。また、MFSは同じく11項目の質問に答えることでユーザーの信用度をスコアリングして推定の融資可能額を表示するという、新規で住宅ローン借り入れるユーザーに向けた「モゲスコア」も提供している。

MFSはこれら2つのサービスを無料で提供している。マネタイズポイントは、その後に提供する手続き代行サービスだ。融資が完了したときのみ、住宅ローンの支払い削減額の10%を成功報酬として受け取る。MFSはこれまでに3000件の借り換え相談を受け、うち約440件ほどが成約しているという。

そして、そのMFSが今回の資金調達とともに発表したのが、BtoBtoC型サービスの「モゲチェックPLUS(以下、PLUS)」だ。同サービスは不動産会社向けのサービスで、不動産会社は不動産を購入しようとしている消費者のデータをPLUSに入力することで、融資確率を判定し、最適な住宅ローンを推薦することができる。また、PLUS上でローン申し込みの手続きが可能で、ユーザーが銀行に来店する必要がなくなる。

少し考えてみると、PLUSが提供する機能は従来サービスのモゲチェック、モゲスコアと大差ない。重要なのは、これまでC向けにしか展開してこなかったサービス群を、B向けにも展開することを決断した点だ。その理由として、MFS代表取締役の中山田明氏は、住宅ローンの借り換えメリットをエンドユーザーに直接説明するのは非常に難しかったと話す。また、もともとMFSはエンドユーザーとの接点として来店型の相談窓口を展開していたが、これも現在はコールセンターに相談と手続き代行の機能を集約し、今後は直接店舗を増やす予定はないという。

MFSと同じく住宅ローンの借り換え支援サービスを提供するWhatzMoneyは、2016年6月に不動産会社向けのローン仲介サービスとして一足早くBtoBtoC型サービスを提供開始した。そのことからも分かるように、住宅ローンの借り換えメリットをエンドユーザーに直接説明するのは非常に難しいようだ。

2009年に創業のMFSは、2015年9月にマネックスベンチャーズなどから9000万円を調達。つづいて2016年6月には2億円を、2017年8月には2億5000万円を調達している。今回のラウンドを含む累計の調達金額は8億7000万円となる。

AIの活用で介護領域の課題解決へ、エクサウィザーズが産業革新機構などから8.9億円を調達

医療・介護領域を中心に、AIを活用して様々な業界の課題解決を目指すエクサウィザーズ。同社は3月29日、産業革新機構など合計8社から総額8.9億円を調達したことを明らかにした。今回のラウンドに参加したのは以下の企業だ。

  • 産業革新機構
  • 三菱東京UFJ銀行
  • SOMPOホールディングス
  • D4V
  • iSGSインベストメントワークス
  • Scrum Ventures
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • IDATEN Ventures

エクサウィザーズは「介護×AI」分野でサービス展開をしていたデジタルセンセーションと、大手クライアント向けにAIソリューションを提供していたエクサインテリジェンスが2017年10月に経営統合してできたスタートアップだ。

デジタルセンセーションはリクルートでAI研究所を立ち上げた石山洸氏がジョインした際にTechCrunchでも紹介。一方のエクサインテリジェンスも京都大学等の研究者・学生と、ディー・エヌ・エー元取締役会長の春田真氏らが運営するベータカタリストが共同で立ち上げたスタートアップとして2016年に取り上げた(エクサウィザーズでは春田氏が代表取締役会長、石山氏が代表取締役社長を務める)。

これまで同社では認知症ケア技法「ユマニチュード」の普及や、熟練者のケア技能を解析することで特徴を抽出し、介護者の育成を促進する「コーチングAI」の開発に力を入れてきた。これらの活動には今後も力を入れつつ、今回の調達を機に新しい取り組みも始めるという。

AIを活用した科学的裏付けに基づくケアの確立(ケアのエビデンス・ベースド化)はそのひとつ。介護領域ではケアの内容を科学的に評価・検証することが難しかったが、現場にあるデータをAIで解析することで、新たな評価手法の確立を目指すという。

構造化されたデータだけではなく、動画や音声、テキストなどのデータも合わせて解析。この結果から優れたケアの動作や対話を可視化できるようにれば、それをケアの内容に反映することもできそうだ。今後は産業革新機構や政府機関、地方自治体と連携を強化し、実証実験や事業化を進めるという。

またエクサウィザーズではAIを活用して、自治体が保有する介護データの無料解析サービスも始める。こちらについては認知症ケアの現場などが抱える課題の解決を目的としている。

認知症は時間の経過と共に症状が進行していくため、ケアの介入効果を検証することが困難だった。同サービスを活用すれば事前に適切な介入タイミングを予測し、予測結果に対する介入効果の比較検証ができるようになる。症状進行前に介入することも可能で、予防介護にも繋がるという。

なお直近では今回の資金調達先でもあるSOMPOホールディングス、三菱UFJフィナンシャル・グループと業務提携を締結(三菱UFJフィナンシャル・グループについては、子会社であるJapanDigitalDesignと提携)。SOMPOホールディングスとは介護や認知症の領域おける取り組みを、JapanDigitalDesignとはオンラインファイナンス関連商品やHR Techサービスの開発検討を進めていく方針だ。

ITとクラウドワーカーの力で民泊運営を効率化するSQUEEZE、ケネディクスから約8億円を調達

民泊を中心とした宿泊事業者向けの運営代行サービス「mister suite」などを展開するSQUEEZEは3月28日、不動産アセットマネジメント会社のケネディクスと資本業務提携を締結し、総額約8億円を調達したことを明らかにした。

今回の業務提携を通じて、両社では「サービスアパートメントと民泊のハイブリッド運用モデルの共同開発」と「SQUEEZEが運営するスマートホテル施設の調達および投資」を行っていくという。

SQUEEZEは2014年9月の設立。同年にmister suiteをリリースした。同サービスは物件の運用に必要となる業務を、専業の登録ユーザーに依頼できるクラウドソーシングの機能を備えている点が特徴だ。集客に関わるチャネルのマネジメント、部屋料金の自動調整、24時間のカスタマーサポート、清掃スケジュールの自動化など幅広い業務をカバーする。

同社ではクラウド上で物件の情報を一元管理できる「suitebook」やスマートロックの販売事業も展開。民泊を中心とした宿泊事業者が行う一連のタスクを、システムとクラウドワーカーの力で効率化している。

また2017年からは他事業で培った知見をもとに、「Minn」というブランドでスマートホテルの自社運用をスタート。この領域においては今後ケネディクスと協業していく予定だ。加えてSQUEEZEではケネディクス傘下のスペースデザインと連携し、6月15日に施行される住宅宿泊事業法の下でサービスアパートメントと民泊のハイブリッド運用にも取り組むという。

SQUEEZEは今回調達した資金でさらなる体制強化を図るほか、スマートホテル施設の調達やsuitebookのシステム開発を進める方針だ。なお同社は、2016年5月にジャフコ、インキュベイトファンド、その他事業会社、個人投資家らから総額約4.2億円の資金調達を実施している。

検索直前の「アクションデータ」を武器にデジタル広告を革新、A1 Media Groupが4億円を調達

インターネット広告関連の事業を複数展開するA1 Media Group。同社は3月29日、Global Catalyst Partners JapanSBIインベストメントデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムなどを引受先とした第三者割当増資により、総額4億円を調達したことを明らかにした。

調達した資金をもとに、さらなる事業拡大に向けて開発・営業体制の強化を図る方針。合わせて今回のラウンドに参加するVCや事業会社とは、今後データ連携や広告商品の共同開発、海外市場での協業などを行っていく予定だという。

アクションデータを軸に、日韓で複数事業を展開

A1 Media Groupは日本に本社を置き、日韓でインターネット広告代理事業やプレミアム媒体社向け広告配信事業を行っているスタートアップだ。同社の特徴は「アクションデータ」と呼ばれるオーディエンスデータを保有していること。これはユーザーがコンテンツを閲覧した際に行った意図的なアクションを指し、URLやキーワードのコピー、文章のハイライト、SNSのシェア、読了率や閲覧時間といったコンテンツのViewデータなどが該当する。

韓国ではこのデータを軸にした特許をすでに3件取得。たとえば「アクションデータをベースに、広告主が指定したキーワードに興味を持つユーザーへターゲット広告を配信する技術」はそのひとつだ。ハイライトされた文章などをデータマイニングにかけて、ユーザーの意図に沿ったキーワードを抽出。そこから広告セグメントを作成することで、広告主は精度の高いターゲット広告を配信できるようになる。

そのほか保有するユーザーのプロファイルに合わせてカスタマイズ広告やコンテンツを配信する技術(広告配信前に、予算に応じて獲得できるリーチ数などを予測・プランニングできる)や、アクションデータに基づいた広告ランディングページの最適化技術(イメージとしてはA/Bテストに近いが、数百万個に及ぶ広告物とLPを一気に管理、最適化できるのが特徴)で特許を保有しているという。

ユニークな「アクションデータ」とそれを分析・活用する技術を通じて、広告主や媒体社向けに複数の事業を展開しているのがA1 Media Groupの現状だ。

媒体の広告収益最大化へ、毎日新聞と記事広告プロジェクト実施

現在A1 Media Groupが日本で進めている事業の1つが、アクションデータを用いた媒体社向けの広告商品の開発だ。たとえば直近では毎日新聞と共同で、タイアップ記事広告のプロジェクトを実施している。

「特にコンテンツを大事にしているメディアにとっては、記事広告は重要な収益源であり今後伸ばしていきたい広告商品だ。一方で費用が高いのにリーチできる人数が少ない、PVやクリックが効果測定の中心になっているという課題もある。ユーザーがコンテンツをどのように消化したのか、どの箇所に興味関心を示したのかを見える化して活用できれば、差別化された広告商品の開発にもつながる」(A1 Media Group代表取締役のジョン・ジェウ氏)

この事例では記事広告の作成と、ユーザーのアクションデータを分析したレポートを商品として提供。ハイライトや読了率などユーザーの行動やそれに至った意図、他のどんなコンテンツに関心をもっているかといった属性分析や潜在顧客の分析までをカバーする。

オプションとして記事広告で獲得したアクションデータをもとに、ネイティブ広告などを通じて外部から親和性の高いユーザーを誘導するパッケージも開発。このオプションを実施した結果、記事広告のPV数が2.4倍、アクション数が2.5倍に上昇した例もあるそうだ。

「『アクションデータを取得、分析できるようになりました』というだけで終わるのではなく、そのデータを活用することで、親和性の高いユーザーを抽出して誘導し、記事内でのアクションを増やすことまでできるという点で価値を感じてもらえている」(ジョン氏)

ジョン氏によるとアクションデータの活用はメディアに限った話ではなく、ECなどにも展開できるそうで、韓国では結果もでているという。すでにA1 Media Groupでは日本と韓国で70以上の媒体、ECサイトにおける匿名のユーザーアクションデータを分析済み。今後は記事広告を含めた関連広告商品の開発と広告代理事業に力を入れていく。

A1 Media Groupは2016年1月の設立。代表のジョン氏は1998年に24/7 Media Koreaを創業し、2004年に同社をNasdaq上場企業である24/7 Media(現WPPグループのXaxis)に売却。その後24/7 Media APACの社長を務めた経験を持つ起業家だ。

ソニーのPSVRヘッドセットが100ドル値下げ――仮想現実の体験が容易になった

VR on PS4でVRを体験するのがさらに容易になった。

ソニーはPlaystation 4向けVRヘッドセット、PSVRのバンドル価格を100ドル値下げした。カメラとDoom VFRバンドル版ののメーカー希望小売価格は299ドルになった。Skyrim VRのバンドルはMoveコントローラーが付属し、メーカー希望価格は349ドルだ。

これまでもあちこちのストアでセールを探せばこの価格のPlayStation VRを見つけることもできなくはなかったが、やはりメーカー自身の価格が299ドルからになったことの意味は大きい。このヘッドセットが2016年に発売されたときの定価は399ドルで、専用PSVR用カメラは別売だった。

この1、2年でハイエンドのVRヘッドセットの価格は急激に安くなっている。このトレンドのパイオニアはやはりFacebookのOculusだろう。HTCのViveも今や499ドルでOculus Riftは399ドルだ。これらと比較するとPS4をベースとしたソニーの総合的な優位性が見えてくる。他のハイエンド・ヘッドセットはパソコンを必要とするが、これは性能も価格もまちまちだ。

ヘッドセットの価格低下に伴い、ベースシステム、ヘッドセット、カメラ、モーションコントローラーなどをひっくるめた仮想現実を体験するために必要なデバイスのコストも大きく引き下げられつつある。今日の値下げでソニーPS4の場合は649ドルになった。ソニーはパソコン接続タイプのヘッドセットでは世界のトップに立っていないが、PS4というポピュラーかつクローズドなシステム上のVRは利用も容易でアプリケーションも多い。PlayStation 4のオーナーには魅力的なプロダクトになっている。

〔日本版〕日本ではソニーストアが34,980 円+税で販売開始。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

累計調達額438億円のスタートアップが集う、口外無用の起業家コミュニティ「千葉道場」

ここに1つの血判状がある。「千葉道場NDA」と呼ばれるこの書面は、これからその会場で話される内容を一切口外しないという誓いを表したものだ(血判状とは言っても、指につけるのはインクだから安心してほしい)。徹底した秘密主義で作られるこのコミュニティこそが、個人投資家の千葉功太郎氏が主催する「千葉道場」だ。

口外無用、秘密のコミュニティ

3月9日、千葉道場が湯河原で開かれた。スタートアップ40社、総勢83名が参加したこのイベントは、今回で7度目の開催となる。参加者は全員、主催者の千葉氏が投資するスタートアップの経営幹部たちだ。千葉氏は、2001年にケイ・ラボラトリー(現在のKLab)取締役に就任。その後、2008年にコロプラを設立した。副社長として同社を一部上場まで導いたのち、個人投資家やドローンファンドのパートナーとして活躍している。

千葉道場の集合時間は、午前8時30分。会場は湯河原駅から少し離れた場所にあるので、東京から参加する起業家たちの朝は早い。遅刻せずに参加できるかどうか。それが起業家に与えられた最初の試練というわけだ。ちなみに僕の家からだと、午前5時には家を出なければいけなかった。

午前9時、研修施設のホールを貸しきったメイン会場に千葉氏が「KINTONE」と呼ばれるセグウェイ型の乗り物に乗って現れた。マイクを持った千葉氏は、「千葉道場では、全員が自分が持っているノウハウを他人に分け与えるGiver(ギバー)という気持ちで参加してほしい。全員が秘密を守ることで、本当のGiveができる」と語った。

写真:Masanori Sugiura

その後、マッサージや正しい姿勢を保つことでカラダと精神を整えるという、早い朝にぴったりなセッションが開かれたが、僕たちが参加できたのはそこまで。その後は別に用意された控室で待機するように命じられた。その後のすべてのセッションで立ち入り禁止ということだ。

湯河原まで来て何も聞けないというのは僕たちにとっては正直残念な話ではあるが、「話すのも起業家、聞くのも起業家」という環境を徹底して作ることによって、自分たちの生々しい経験を他の起業家に共有することができるという。会場の中では、「NDAを結んでいたとしても話せない、個人的な話」(千葉氏)が共有されるのだ。後半には「しくじり先生」と呼ぶ定番セッションがあるそうで、そこでは起業家が自分たちの失敗を赤裸々にさらけ出し、他の参加者はその失敗談から学ぶ、過去には、その話を聞いて参加者が涙するということもあったそうだ。

スタートアップの採用やマネジメント、資金調達の詳しい方法論が文章化されているものは少ない。一般論として述べられたものはあるが、起業家たちが本当に知りたいのは経験に基づくリアルな情報であり、そこから学べることは多い。

千葉道場の前身となるコミュニティを立ち上げたのは、アオイゼミCEOの石井貴基氏と、ザワット代表取締役CEOの原田大作氏。今では無事イグジットを果たした両氏だが、創業当時は起業家としての課題や苦悩を共有できる友人がいないことに辛さを感じていたのだという。石井氏は、「スタートアップが成長していく過程で起こる問題は共通している。千葉道場ではその問題について赤裸々に話すことができる」と話す。原田氏は、「今でこそ『起業のファイナンス』(磯崎哲也著)があり、起業家は資金調達について学ぶことができる。でも、当事者だからこそ“ぶっちゃけた”話ができる場所は欲しかった」と語った。

写真左より、ザワットCEOの原田大作氏、千葉功太郎氏、アオイゼミCEOの石井貴基氏

参加者のあいだで引き継がれるノウハウは、確かに彼らの糧となっているようだ。千葉氏によれば、変化の激しいスタートアップ業界において、コミュニティに参加するスタートアップが倒産したという事例はこれまでないという。2017年8月から2018年2月末までの半年間で、参加企業の累計調達金額は119.9億円(エクイティは81.3億円、デットは38.6億円)、累計額では438億円にまで達した。

お金はまわり、人は財産として残る

千葉氏は個人投資家だ。リスクを引き受けてみずからの資金を投じる投資家にとって、リターンを生み出すことは使命だ。千葉氏も、「僕は数百倍のリターンを求める投資家だ」と明言している。でも、千葉道場を取材して感じたのは、その金銭的なリターンを超えた何かを千葉氏が求めているということだった。

千葉氏は、「せっかく起業家という道を選んだのであれば、自分たちが感じている社会的課題をみずからの頭で考えて解決する起業家になってほしいと思っている。千葉道場から、大好きな日本を元気にしてくれるようなメガベンチャーがたくさん誕生させたい」とコニュニティに参加する企業への想いを語った。

「僕がいま持っているお金は、すべてインターネット業界から受け取ったもの。これは還流させるべきお金だと思っている。大きなリターンを求めるのは、それだけ多くのお金をエコシステムに還流させたいからでもある」と千葉氏は話す。その言葉のとおり、コミュニティにはエグジットを経験した起業家も参加していて、彼らへの投資から得たリターンが、新たに参加した若い起業家に投資されている。

お金が千葉道場の中でまわり、参加者である人が財産として残る。そして、その起業家たちが次の世代へと知識や知恵を引き継いでいるのだ。

写真:Masanori Sugiura

“商品ありすぎ、チャネル多すぎ”な化粧品の購入体験を変革、コマースメディア「noin」が3億円を調達

「コスメの最安値がわかるのが便利」「コスメに特化した価格.comのようなもの」——化粧品コマースメディア「noin」のApp Storeのレビューには、そのようなコメントが並ぶ。2017年10月にiOSアプリをリリースし、12月にはApp Storeのライフスタイルカテゴリで1位を獲得。レビュー数はリリースから約5ヶ月で5000件を超える。

そんなnoinを提供するノインは3月28日、グリーベンチャーズ500 Startups JapanKLab Venture Partnersみずほキャピタルおよび個人投資家を引受先とした第三者割当増資を実施。約3億円を調達したことを明らかにした。またこれに合わせて、グリーベンチャーズの堤達生氏が同社の取締役に就任するという。

化粧品の「選定時」と「購入時」の課題を解決

noinは大きく2つの特徴を持つ、動画コマースアプリだ。1つは冒頭でも触れたように、気になる化粧品の最安値を整理したECとしての機能。そしてもう1つが新作情報やメイクのハウツーを紹介する動画メディアとしての機能だ。

ユーザーはAmazon、yahoo!ショッピング、楽天、マツモトキヨシといったショッピングサイトの最安値を横断で把握できるだけでなく、人気ブランドのセール情報を取得可能。動画を通じて商品の特徴や使い勝手も知ることもでき、気になる商品をお手頃価格で購入したい人を中心に支持を集めている。

もともとは分散型の動画メディア「noin.tv」を2017年2月にスタート。10月にコマースメディアとしてnoinをリリースした。ノイン代表取締役の渡部賢氏によると、化粧品の領域においては情報の発信者となるメーカーやショップと、受け手となる消費者の間に「情報の非対称性」が2つ存在するという。

「1点目は『化粧品選び』の課題。たとえばリップだけで約5000点の商品が販売されているように、商品がありすぎて、本当に自分に合ったものがわからないという女性も多い。そして2点目は『購入時』の課題。販売チャネルが多様化した結果、在庫と価格のブレが生じている。各ショップがすべての商品を揃えているわけではないし、知らないだけで実はもっとお得に買える場所があることもある」(渡部氏)

つまりノインでは動画コンテンツを通じて化粧品選びの、コマース機能を通じて購入時の情報の非対称性を埋めようとしているわけだ。

化粧品のEC化を推進、経験財からの脱却へ

もっとも化粧品領域の「動画メディア」については、すでに複数のプレイヤーが存在する。そこにはC Channelのような女性向けの総合メディアや、美容系のYouTuberも含まれるだろう。ノインでも動画制作のノウハウや実績はあるというが、軸になるのはコマースの部分。それによってユーザーの利用シーンも違ってくるというのが渡部氏の見解だ。

「(商品購入体験の初期段階に)情報収集の目的で使われるメディアは、購入までに距離がある。欲しい商品を見つけてもすぐに買うわけではなく、口コミアプリなどで参考になるレビューを探す消費者が多い。その後、店舗で試すなど検証をして、納得のいく価格を見つけた上で購入する。ノインの特徴は、確度があがった“購入寸前”のユーザーが利用するアプリだという点にある」(渡部氏)

たとえばamazonは商品詳細ページから購入までのコンバージョンが平均で3%と言われているが、noinから送客したユーザーの購入率は平均で10%になるそう。化粧品メーカーなどブランド側としては最終的に自社製品を買って欲しいため、購入意欲が高いユーザーが多いことは大きな価値になるという。

近年、化粧品のEC化率は伸びてきているものの、2016年では約5%ほどというデータもあるように決して高いとはいえない(『電子商取引に関する市場調査』における、化粧品、医薬品のEC化率)。一般論として化粧品はいわゆる「経験財」で、実際に試してみてから購入するものであると考えられてきたため、約5%という数値はそこまで驚くものではないだろう。

ただこの考え方については、若い世代を中心に少しずつ変わってきていると渡部氏は言う。

「『タグる』という言葉が広がってきているように、SNS上などで自分に近い人や共感する著名人が発信する情報を参考に商品を購入するというケースも増えてきている。noinでも動画のアプローチなど、コンテンツの見せ方や届け方を工夫することで、EC化率をもっと上げていきたい」(渡部氏)

実際noinを使っているユーザーの90%以上はF1層の女性。特に20代前後が多いため、従来とは違ったプロセスで化粧品の情報にアクセスし、購入に至る割合も高そうだ。

化粧品業界の新しい流通プラットフォーム目指す

写真左がノイン代表取締役の渡部賢氏、右はグリーベンチャーズの堤達生氏

ノインは2015年1月の創業。代表の渡部氏が個人事業として始め、2016年11月に法人化している。渡部氏はネイバージャパンでキャリアをスタートし、グリーでスマホ版のGREE NEWSの立ち上げなどに従事。その後プロデューサーとして複数のサービスに携わってきた。

「検索サイトもニュースも、受け手が欲しい情報と発信される情報のミスマッチをなくしていくことは同じ。さまざまなサービスに関わる中で情報の非対称性をなくしていくことが自分の得意分野であり、興味のある領域だとわかった。動画制作に携わる中で知見も貯まっていたので、これらを活かして何か新しい変化を起こせる市場がないか、それを探っていった結果noinに行き着いた」(渡部氏)

2017年2月から分散型メディアをスタートし、同年7月には500 Startups JapanとKLab Venture Partnersから4000万円を調達。今回の資金調達はそれに続くラウンドとなる。

ノインでは調達した資金をもとに人材採用の強化、広告投資の強化を進める方針。またAndroid版の開発に加え、化粧品メーカーや小売業者がnoin上で商品の販売を行えるように事業提携を進め、化粧品業界の新しい流通プラットフォームを目指していく。

「たとえばライブコマースや共同購入の仕組みなども含めて、商品を購入するまでのプロセスを楽しめる要素を増やしていく。(そこで収益化したいという意図ではなく)noinをたくさん開いてもらうきっかけを作り、アクションメディアとしてのバリューを拡大していきたい」(渡部氏)

NHKに”AIアナウンサー”が登場 「ヨミ子さん」がニュース読みます

NHKのニュース番組に、「AIアナウンサー」が登場する。

4月からニュース番組「ニュースチェック11」(平日夜11時10分〜※)の水曜日のコーナーに登場する。NHK放送技術研究所が開発した平昌オリンピックの「ロボット実況」に使われた技術がベースになっており、AIによる音声合成でニュース原稿を読み上げる。

名前は「ニュースのヨミ子」。キャラクター「コップのフチ子さん」を手がけたタナカカツキさんがデザインを担当した。

(※)2018年3月まで放送開始時間は夜11時15分から。4月から放送開始時間が夜11時10分に変更になる。

ニュースのヨミ子さん。(C)NHK

ヨミ子さん、スマートスピーカーでもニュースを読むよ

「ニュースのヨミ子」は、Google Homeなどスマートスピーカーにも対応する。

現状、スマートスピーカーでは収録済みのラジオ放送などを再生しており、視聴者が「聞きたいニュース」を選べるようになっていない。

スピーカーに「ヨミ子につないで」と呼びかけるとヨミ子さんが登場し、ニュースの項目やジャンルを選ぶと、最新のニュースを自動的に読み上げるという。はじめはジャンル別でしかニュースを選べないが、今後は「大雪のニュース」などキーワードでニュースを選べるようになる予定。

また、拡張現実(AR)でヨミ子と一緒に写真撮影ができるサービスなども提供する。

ヨミ子さんがARで出現するカメラアプリ。 KEI YOSHIKAWA / HUFFPOST JAPAN

AIアナウンサーが速報にも対応する?

NHKによると、「ニュースのヨミ子」は「より一層多くの人にニュースに親しんでもらいたい」との思いで企画開発された。

報道局ネットワーク報道部の熊田安伸専任部長は、26日の報道説明会で、「新人のため、まだたどたどしいが、将来的には自由な会話も実現させたい」と説明。

AIアナウンサーが発展して速報に対応できるようになると、NHKスタッフの働き方改革の一環にも繋がると期待を寄せた。

「例えば、真夜中に高速道路で交通事故が起きて通行止めになった時、AIアナウンサーが自動的にラジオを通してニュースを届けるなど、将来的にはそういった使い方も考えている。人間のアナウンサーはよりクリエイティブな仕事に集中できるようになる」

はじめは女性のAIアナウンサーのみでスタートを切るが、ヨミ子の機械学習が進み、基礎的な技術が完成した後は男性のAIアナウンサーを開発することも視野に入れているという。

HuffPost Japanからの転載。

宿泊権利の売買サービス「Cansell」、ホテル向けにキャンセル料の保証含むプログラム開始

宿泊予約の権利売買サービス「Cansell(キャンセル)」を提供するCansellは3月26日、キャンセル料の保証などの特典を盛り込んだ宿泊施設向けのパートナープログラムを開始すると発表した。Cansellは本日よりプログラムの事前登録を開始し、2018年6月よりプログラムを提供開始する予定だ。

Cansellは、ホテルの宿泊予約をしたユーザーがやむを得ずキャンセルした場合、その宿泊権利を他のユーザーに売却できるマーケットプレイスだ。

Cansellのユーザーは宿泊予約の権利を第三者に販売することで、キャンセル料を払う場合に比べて費用を節約できる可能性がある。権利の購入者は通常より安い宿泊料でホテルに泊まることができ、ホテル側も通常の宿泊料金を受け取れるというメリットがある。

これまではユーザー同士だけが利用するマーケットプレイスという“場”を提供していたCansellだが、その同社がはじめて法人向けのプログラムを発表した。概要は以下の通りだ。

  • パートナープログラム会員の施設で無断キャンセルが発生した場合、請求するキャンセル料の一部を保証(保証率などの詳細は2018年6月のサービスリリース時までに決定する)
  • キャンセル料の保証は、リスク保証会社のGardiaとの提携により行う。キャンセルを行ったユーザーへの請求はホテルの代わりにGardiaが行い、Cansellが同社へ手数料を支払う
  • Cansellの各ホテルページから、パートナーの宿泊施設公式サイトへ送客
  • パートナーの宿泊施設の予約が出品され売買が成立した場合、そこで発生する成約手数料の一部を予約変更手数料としてパートナーに還元
  • パートナーの宿泊施設は、TrustYou、SmartHR、BASE FOODなど、Cansellと提携しているサービスを利用優待付きで利用可能

このように、キャンセル料保証などのメリットがあるパートナープログラムをCansellが無料で行う理由は2つある。業界からの理解度の強化と、ホテル側も巻き込んだマーケットプレイスへと進化するための足場づくりだ。

元々、Cansellというサービスはホテルとの提携を必ずしも必要としないサービスだった。同サービス上で宿泊権利の売買が成立した場合、Cansellがユーザーの代わりにホテルに連絡し、宿泊名義人の変更を行うという方法を採っていたからだ。

しかし、Cansell代表取締役の山下恭平氏は「ビジネスの仕組み自体はホテルと提携しなくても可能なものだが、ユーザーへ安心・安全なサービスを提供するため、そしてこのサービスが当たり前になるためには、やはり業界からの理解は必要不可欠。長く続く、それでいてユーザーからも愛されるようなサービスを創りたいという思いから、ホテルとタッグを組む道を選んだ」と話す。

山下氏は、Cansellを単なるユーザー同士のマーケットプレイスではなく、ホテルがもつ課題の解決手段として業界に根付かせたい考えだ。その課題の一つが無断キャンセルが発生した場合のキャンセル料請求であり、それを解決するためにキャンセル料の保証という特典をプログラムに組み入れた。

また、将来的には、直前キャンセルをホテル側が出品できるというような、ホテルも利用できるサービスへ進化するという考えもあるようだが、「最終的にホテルからの出品を受け付けるかどうかはまだ検討中」(山下氏)としている。

生徒の苦手分野をAIが特定し、教材を自動生成――atama plusが初の増資で5億円調達

AIを利用した教育プログラムを提供するatama plusは3月26日、DCMベンチャーズを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は5億円だ。これが同社にとって初めての外部調達となる。

同社が提供する「atama+(アタマプラス)」は、AIが生徒の得意・苦手・目標・過去の学習内容などに応じて生徒それぞれに最適な学習教材を自動作成するサービスだ。例えば、数学の正弦定理が苦手な生徒がいたとする。その場合、正弦定理の問題を片っ端から問いて力ずくで覚えるという学習方法が一般的だろう。でも、atama plus代表取締役の稲田大輔氏は、その方法はとても非効率だと話す。

正弦定理を理解するにはまず、平方根や三角形の内角など、より基礎的な要素を理解する必要がある。それを理解しないまま正弦定理の問題をただひたすら解くというのは非効率だ。一方、atama plusでは生徒の苦手分野を特定するためのオンラインのテストをさまざまな角度から出題し、その生徒が何を理解していないのかを把握する。そして、その苦手分野を補う5分程度の短い動画教材や例題などを組み合わせたカリキュラムを自動で生成するのだ。

atama plusが追求するのは“学習の効率性”だ。解いても意味のない問題を解かせるのではなく、AIが特定した苦手な部分だけを集中して解かせる。「Googleで活躍できるような人材を育てるには、“基礎学力”とプレゼン力などの“社会で生きる力”をつける必要がある。そして、その社会で生きる力をつけるには、基礎学力の習得にかかる時間を短縮するしか方法がないと考えている」(稲田氏)

atama plusは、提携する塾に対して同サービスのライセンスを付与するというかたちでビジネスを展開している(ライセンス料は非公開)。2017年4月の創業から約11ヶ月が経過した現在、Z会エデュース、学研塾ホールディングス、駿台教育センターなど学習塾大手がatama+を活用した授業を行っているという。現時点での対応教科は、中高数学、高校英文法、高校の物理化学だ。

同社によれば、2017年12月末に行なったatama+の冬期講習(約2週間)を受講した25人の生徒が、受講前に解いたセンター試験過去問の得点と、2018年1月のセンター試験本番の得点を調べたところ、その得点の伸び率の平均は50.4%だったという。2週間という短期間でこれだけの成果をあげているのは、正直驚きだった。

稲田氏は「塾の先生の役割は2つある。学習を教える“Teaching”と、目標までの到達をサポートする“Coaching”だ」と話す。TeachingはAIの得意領域で、人間の先生は勝てない。でも、Coachingは人間の先生こそが得意とする分野なのだという。atama plusでは、ある生徒が問題を解くのに手間取っていたり集中力が落ちていることを問題を解く時間などからAIが判断し、タブレット端末を持った先生にアラートする。そして、先生がその生徒を手助けにいく。人間がCoachingするのをAIがサポートするのだ。

人に何かを教えるという役割は、もう人間の役割ではなくなったのかもしれない。