NEDOが100平方メートル規模の触媒パネル反応器で人工光合成によるソーラー水素製造に成功

NEDOが100平方メートル規模の触媒パネル反応器で人工光合成によるソーラー水素製造に成功

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)とARPChem(人工光合成化学プロセス技術研究組合)は8月26日、100m2規模の「太陽光受光型光触媒水分解パネル反応器」と「水素・酸素ガス分離モジュール」を連結した光触媒反応システムを開発。世界初の実証実験に成功したことを発表した。この実験結果は8月25日公開の英科学誌「Nature」オンライン速報版に掲載されている

これは、2019年8月から1年以上にわたって実施された自然太陽光下での光触媒パネル反応システムの実証実験。水を分解して水素と酸素の混合気体を生成し、そこから高純度のソーラー水素を分離・回収するというもの。ソーラー水素とは、太陽光で水を分解して水素を製造する技術のことで、クリーンで持続可能性のあるエネルギーとして注目されている。今回の実験では、ソーラー水素製造を大規模化しても安全性や効率性が保たれることが実証され、実用化とさらなる大規模化への道筋が見えてきた。

このプロジェクトは、NEDOとARPChemが、東京大学、富士フィルム、TOTO、三菱ケミカル、信州大学、明治大学との協力のもとに進めてきたもので、光触媒パネル反応器の開発、分離膜の開発、合成触媒の開発という3つのテーマで構成されている。

人工光合成プロジェクトの概要(今回の成果は「光触媒開発」のテーマ)

  • 光触媒開発:太陽光エネルギーを利用した水分解で水素と酸素を製造する光触媒およびモジュールの開発
  • 分離膜開発:発生した水素と酸素の混合気体から水素を分離する分離膜およびモジュールの開発
  • 合成触媒開発:水から製造する水素と発電所や工場などから排出する二酸化炭素を原料としてC2~C4オレフィンを目的別に合成する触媒およびプロセス技術の開発

光触媒パネル反応器の実証

光触媒パネル反応器は、ひとつのモジュールが3m2。透明なガラス板の下に、25cm角のチタン酸ストロンチウム光触媒シートが並べられている。ガラスと光触媒シートとの間には0.1mmの隙間があり、そこに水を流し込むことで反応が起きる。そこで発生した水素と酸素の気泡がスムーズに流れ、気泡の滞留によって光が散乱しないようにすることが重要となるが、このシステムでは、光の散乱の影響はほとんどなかった。

NEDOが100平方メートル規模の触媒パネル反応器で人工光合成によるソーラー水素製造に成功

光触媒パネル反応器の基本単位(写真左)と紫外光照射時の水分解反応時の様子(写真右)

NEDOが100平方メートル規模の触媒パネル反応器で人工光合成によるソーラー水素製造に成功

3m2規模の光触媒パネル反応器(左)と100m2規模の光触媒パネル反応器から生成した水素と酸素の混合気体(右)

このシステムでは紫外光のみに反応するが、量子収率(光子ひとつが反応を起こす割合)がほぼ100%と高効率を示した。また実験室では、水分解の活性が、初期の8割以上を2カ月以上維持できた。これは、日本の屋外条件では約1年の耐久度に相当する。この光触媒シートは、光触媒を基板にスプレーするだけで簡単に作れるとのこと。

疑似太陽光を昼夜連続照射したときの活性の時間変化

混合気体からのソーラー水素の分離

光触媒パネル反応器で発生した水素と酸素の混合気は、ガス分離モジュールに送られる。そこでは、水素は分離膜を通過し、酸素は通過できずに残留する。今回の実験では、開発中の分離膜ではなく、市販のポリイミド中空糸分離幕を使用したが、擬似実験では、1日分離を行った結果、混合気は、水素濃度約94%の透過ガスと酸素濃度約60%の残留ガスに分離でき、水素の回収率は天候、季節に関わらず73%を達成した。

100m2規模の光触媒パネル反応器に接続されたガス分離モジュールの性能

合成触媒

合成触媒は、水分解で作り出した水素を、工場や発電所から排出された二酸化炭素と反応させて、C2からC4オレフィン(高分子化合物)を目的別に合成するというもの。これはプラスティックの原料として利用される。

光触媒パネル反応システムの安全性試験

ソーラー水素の製造では、非常に燃えやすい水素の管理が課題になるが、1年以上にわたるこの屋外実験では、1度も自然着火や爆発は起きなかった。また、爆発リスクの確認のために、光触媒パネル反応システムの混合気体が存在する場所に意図的に火を点けてみたが、光触媒パネル反応器、ガス捕集用配管、中空糸分離膜を含むガス分離モジュールともに破損は確認できなかったという。

今後は、このシステムの社会実装を目指して、光触媒を可視光に対応させて太陽光エネルギーの変換効率を5〜10%に引き上げ、低コスト化、さらなる大規模化、ガス分離システムの性能とエネルギー効率の向上を目指すとしている。

東京大学齊藤研究室とバベルがAIエンジニアコミュニティ設立、wav2vec 2.0利用し日本語関連OSSプロジェクト開始

東京大学齊藤研究室とバベルがAIエンジニアコミュニティ設立、wav2vec 2.0利用し日本語関連OSSプロジェクト開始

AIオートメーション技術を軸にグローバルで事業展開を行うバベルは8月24日、東京大学大学院工学系研究科齊藤研究室(東京大学 齊藤研究室)と、誰でも参加可能なAIエンジニアコミュニティ「AI Automation Lab」(AIオートメーション・ラボ)を設立。日本語学習済みAIモデルのオープンソースソフトウェア(OSS)化を前提とする日本語音声書き起こし・会話の解析技術の共同研究を開始したと発表した。ベースとなるモデルとして、音声認識フレームワーク「wav2vec 2.0」を利用し、日本語に合わせて調整する。

wav2vec 2.0と呼ばれる書き起こしのモデルは、大規模なラベルなしデータを利用した事前学習を行うことで、少数のラベル付きデータセットでも高精度の書き起こしが可能という。日本語のような少数派の言語では、大規模なラベル付きデータを学習に利用することが困難な状況なものの、wav2vec 2.0はまさにそのような状況にある言語に適しているとした。

AI Automation Labには、connpass上の「AI Automation Lab(AI オートメーション・ラボ)」より参加できる。

昨今「音声書き起こし」に関する技術は全世界で著しく発展しており、英語や中国語を中心とした各国の言語に対して、wav2vec 2.0などの最新の学習済みAIモデルがOSSで公開され、それらを活用した最新のAIプロダクトが数多く開発されている。

一方日本においては、言語の壁の影響により関連するAI技術発展に乗り遅れ、最新のAI技術の恩恵を享受できていないという課題が存在しているという。情報処理推進機構(IPA)「AI白書2020」によると、すでにAIを導入している企業は4.2%、AI導入に興味はあるがまだ導入していない企業は78.3%という。

今後、最新のディープラーニング・モデルを日本語で扱うためには、莫大なGPUコストと時間のかかる日本語の追加学習が必要となり、その開発には一定の研究規模や開発環境が求められる。

そこで今回、東京大学 齊藤研究室とバベルが共同でAIエンジニアコミュニティAI Automation Lab(AIオートメーション・ラボ)で研究開発を行うことで、その開発の知見を日本で活躍するAIエンジニア・AI技術開発に携わる方々と共有し、さらにその成果となる日本語学習済みモデルをOSSとして無料公開することで、広く日本語ユーザーが最新AIモデルの恩恵を受けられる環境作りに貢献する。学術研究を含めて日本のAI分野の発展に寄与するとしている。

東京大学 齊藤研究室は、物理学と応用物理学の両者にまたがる量子物性の最先端の開拓を標榜し、次世代電子技術の基本物理原理を築く先端研究と世界で活躍する人材の輩出で科学技術と社会に貢献。スピントロニクス、量子ナノ系の研究に加え、最近では量子物理と情報物理を応用した新しいAI科学領域の研究を行っている。

バベルは、「世界中の人々の役に立つ事業を創り続ける」というミッションのもと、AI オートメーションを軸にユーザーエンゲージメントを最大化させ、ステークホルダー全員に感動を届ける事で世界をより良くするためにグローバルに事業展開している。

東京大学とIBMがゲート型商用量子コンピューター「IBM Quantum System One」の日本初始動を発表

東京大学とIBMがゲート型商用量子コンピューター「IBM Quantum System One」の日本初始動を発表東京大学IBMは7月27日、日本初のゲート型商用量子コンピューティング・システム「IBM Quantum System One」が「新川崎・創造のもり かわさき新産業創造センター」(KBIC)において稼働開始したと発表。また発表会を開催した。

発表会では、東京大学総長 藤井輝夫氏、文部科学大臣 萩生田光一氏、科学技術政策担当大臣 井上信治氏、参議院議員および自由民主党量子技術推進議員連盟会長 林芳正氏、駐日米国臨時代理大使 レイモンド・グリーン氏、慶應義塾長 伊藤公平氏、東京大学教授・元総長 五神真氏、東京大学教授 村尾美緒氏、川崎市長 福田紀彦氏、QII協議会会長およびみずほフィナンシャルグループ取締役会長 佐藤康博氏 QII協議会メンバーおよびJSR名誉会長 小柴満信氏、IBM シニア・バイス・プレジデントおよびIBM Research ディレクター ダリオ・ギル氏、日本アイ・ビー・エム代表取締役社長 山口明夫氏が登壇した。

東京大学とIBMがゲート型商用量子コンピューター「IBM Quantum System One」の日本初始動を発表

同システムの稼働は、2019年12月にIBMと東京大学で発表した「Japan–IBM Quantum Partnership」に基づくもので、東京大学が占有使用権を有している。東京大学は同システムを活用し、企業、公的団体や大学等研究機関と量子コンピューターの利活用に関する協力を進める。

「新川崎・創造のもり」地区に位置する産学交流によるインキュベーション施設であるKBICは、川崎市の全面的な支援により、電気・冷却水・ガスなどのインフラの安定供給や耐振動環境といった量子コンピューターの常時安定稼働に必要となる最適な環境を実現しており、同システムが安定稼働することで研究活動が加速することが期待される。

東京大学、川崎市、日本IBMは、量子コンピューティング技術の普及と発展に関する基本協定書を2021年6月に締結した。3者は、量子コンピューターの安定稼働、量子コンピューター利活用の拡大や普及促進、量子コンピューターを活用した人材育成について、引き続き協力するとしている。

東京大学総長の藤井輝夫氏は、「変化の早い量子技術分野において、世界に伍して高度な社会実装を実現するためには、量子技術に関する要素やシステムの開発だけでなく、次世代人材の育成が極めて重要です。本学は研究人材の裾野も広く、すでに学部学生からハイレベルな量子教育を進めていますが、この「System One」を活用して次世代の量子ネイティブの育成をより一層進めて参りたいと考えております」と述べた。

東京大学とIBMがゲート型商用量子コンピューター「IBM Quantum System One」の日本初始動を発表

また、IBM シニア・バイス・プレジデント、IBM Researchディレクターのダリオ・ギル(Dario Gil)氏は、「IBMは、グローバルな量子エコシステムの成長と、さまざまな研究のコミュニティー間によるコラボレーションの促進に取り組んでいます」とコメント。「このグローバルな取り組みの一環として、日本の商用量子コンピューターを発表できることを誇りに思い、日本の世界クラスの学術、民間部門、政府機関による成果を楽しみにしています。共に私たちは、さまざまな分野で科学の進歩を加速するための大きな一歩を踏み出すことができるのです」とした。

東京大学とIBMがゲート型商用量子コンピューター「IBM Quantum System One」の日本初始動を発表

また、同システムの稼働に加えて、東京大学とIBMは、量子コンピューターの普及と発展に向けた活動を強化する取り組みを実施している。量子コンピューター技術の研究・開発を行うハードウェア・テストセンター「The University of Tokyo – IBM Quantum Hardware Test Center」を、東京大学 浅野キャンパス内に2021年6月に開設した。2021年8月中旬には、東京大学が設立した「量子イノベーションイニシアティブ協議会」会員企業の交流・情報共有の場として、「コラボレーションセンター」(仮称)を東京大学本郷キャンパス(理学部1号館10階)に設置する予定。

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フィジカルインターネットを見据えるモノフルが東大先端科学技術研究センター「先端物流科学寄付研究部門」参画

パートナー企業との協業や様々なソリューションの組み合わせで物流業界を支える「ロジスティクス・エコシステム」を推進するモノフルは6月30日、高度物流人材の育成を支援するため、東京大学先端科学技術研究センターの「先端物流科学寄付研究部門」に参画すると発表した。

モノフルは、物流施設の開発・管理・運用を行うGLPの日本法人「日本GLP」のグループ会社の出資により2017年に創設された。物流施設や工場におけるトラックの長時間待機問題を解消し効率的な運用を行う「トラック簿」、配車や集車を効率化する「配車プラス」、倉庫スタッフの人材確保と管理を行う「適材ナビ」といった物流SaaSを展開し、オープンな業務提携、プロダクト連携、スタートアップ投資などを通じて物流業界の課題解決に取り組んでいる。

東京大学の「先端物流科学寄付研究部門」は、ヤマトホールディングス、SBSホールディングス、鈴与といった大手物流企業と日本政策投資銀行からの寄付で2019年に設立され、西成活裕教授をリーダーに、企業の枠を超えた物流やサプライチェーンの最適化研究を行っている。「従来とは異なる科学的視点で、ビッグデータやAI、IoT、ブロックチェーンなどの新技術を活用し、サイエンスで物流の未来を創ることのできる高度物流人材」の育成を目指している。

モノフルは、インターネットでデータを送るように物を運ぶという、次世代の物流の形として注目されている「フィジカルインターネット」において、「シェアリング、ルーティングなどの高度な技術的視点を持った人材」の育成が不可欠と考えていた。それが「先端物流科学寄付研究部門」の取り組みと一致したことから、参画を決めたという。

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タグ:東京大学(組織)フィジカルインターネット(用語)物流 / ロジスティクス / 運輸(用語)モノフル(企業)日本(国・地域)

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HarvestXがイチゴの完全自動栽培ロボットシステムの研究開発施設「HarvestX Lab」開設

HarvestXがイチゴの完全自動栽培ロボットシステムの研究開発施設「HarvestX Lab」開設

ロボットによる受粉と収穫で植物工場での果菜類の完全自動栽培を目指す農業機器開発スタートアップHarvestX(ハーベストエックス)は6月21日、イチゴの完全自動栽培ロボットシステムの研究開発施設「HarvestX Lab」を、東京大学本郷キャンパス内のアントレプレナーラボに開設したと発表した。

イチゴ農園などとの協力で受粉と収穫のための技術の検証を続け、すでに要素技術の概念実証を完了したHarvestXは、次にロボットシステムの検証、評価項目の追加、試験サイクルを加速する目的で、年間を通じて実験が可能なこの施設を開設した。植物工場事業者と同等の栽培設備を使うことで、開発環境と運用環境を効率化し、製品の機能や品質を向上させ、2021年夏ごろ、「植物工場に特化した機能拡充に向けて」新たなロボットを発表する予定とのこと。

HarvestXは、「ロボットによる完全自動栽培で農業人材不足・食料の安定生産に貢献する」をミッションに、未踏やロボコンの出身者が集まって2020年8月に創設された。おもに「ミツバチを媒介とした虫媒受粉」という不安定で手間のかかる受粉方法に依存している果物類を、ロボットで自動化する研究を重ねている。

HarvestX Lab設立に伴い、「検出や制御システムを担う人材」の採用を進めてゆくという。

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カテゴリー:ロボティクス
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PCやスマホで建機・重機を遠隔操作できる「Model V」を東大発ARAVが提供開始、後付け装着でも利用可能

建設現場のDX・自動化を目指す東京大学発スタートアップのARAVは6月18日、スマホ・PCなどで建設機械(建機)を遠隔操作できるようにするシステム「Model V」の提供を開始した。10~20年以上前に発売されたような古いタイプの建機でも、改造することなく後付けで装着することで遠隔操作が可能になる。

現在建築現場では、「年間死亡者数が多い」「若者の就業率が低く高齢化が深刻」「建設・採掘の人手不足が加速」といった課題があり、安心・安全な働きやすい環境を整備することが急務となっている。

  • 年間死亡者数が約300人以上おり、全産業の33%前後と危険な現場
  • 29歳以上の就業者が11%。全産業と比較して若者の就業率が低く高齢化が深刻
  • 建設・採掘の有効求人倍率が約16%と人手不足が加速

また建築現場の建築機械についても、「粉塵が舞っている」「『高所や斜面での作業』といった環境要因を改善し、作業員が働きやすい環境を作りたい」「『夏は暑く冬は寒い』という季節要因にとらわれず作業をしたい」といったニーズがあるという。

ARAVではこれらの課題を解決するため、インターネット経由で建機を遠隔操作可能なシステムを開発・提供してきた。そして今回、過去に提供してきたシステムを改善・パッケージ化し、Model Vとして提供を開始した。ARAV調べ(2021年5月31日現在)では、スマートフォンやノートPCなどマルチデバイスに対応し、独自技術でセキュアにインターネットを介し建機を遠隔操作できるのは同社のみとしている。

Model Vは、エッジコンピューターやアタッチメントなどのハードウェア、遠隔操作組み込みソフトウェア、操作時のインターフェースを含むシステムとして構成されている。プロダクトを建設機械に取り付けることで、スマートフォン・タブレット・PCなどの通信機器から遠隔操作が可能になる。

PCやスマホで建機・重機を遠隔操作できる「Model V」を東大発ARAVが提供開始、後付け装着でも利用可能

プロダクトイメージ。画像は制作途中のものにつき、実際の仕様とは異なる場合がある

PCやスマホで建機・重機を遠隔操作できる「Model V」を東大発ARAVが提供開始、後付け装着でも利用可能

取り付けイメージ。画像は制作途中のものにつき、実際の仕様とは異なる場合がある

また遠隔操作時にスマートフォン・タブレットを利用している場合は、タッチ操作に対応。専用・汎用のコントローラーを取り付けるとより快適に操作できるという。無線・有線の汎用コントローラー、ジョイスティックコントローラーなども接続でき、ARAVは操作者に合わせたインターフェースを用意するとしている。

東大発ARAVがスマホ・PCで建機建機を遠隔操作できる「Model V」を提供開始、後付け装着でも利用可能

ノートPCとジョイスティックコントローラーを組み合わせた利用イメージ

東大発ARAVがスマホ・PCで建機建機を遠隔操作できる「Model V」を提供開始、後付け装着でも利用可能

スマホを利用した操作イメージ

なお「Long Range Ver.」と「Short Range Ver.」の2種類があり、Long Range Ver.では、1141km離れた土地からも遠隔操作が可能だ(実証実験を伴う接続可能距離の最大実測値)。過去に富士建と行った共同の実証実験では、東京・佐賀間で遠隔操作に成功しており、離れた県での使用も問題なく行なえるという。

Short Range Ver.では、100kmまでの接続・操作が可能としている。これは、「現場と本社」「現場と操作者がいる場所」などの距離が100km圏内であることが前提の場合に適しているそうだ。

 

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HACARUSと東京大学がアルツハイマー病やパーキンソン病の治療法開発を目指すAI創薬研究を開始

HACARUS(ハカルス)と東京大学大学院薬学系研究科は6月16日、アルツハイマー病やパーキンソン病の治療法開発を目指す、AI創薬の共同研究を開始すると発表した。今回の共同研究では、両疾患の病因となるタンパク質の凝集・散開するメカニズムの解明をHACARUSのAIを活用した画像解析技術を用いて試み、治療法開発を目指す。

アルツハイマー病、パーキンソン病ともに、脳内でのタンパク質凝集が病因となることがわかっている。人間にはタンパク質を分解する能力(オートファジー)が備わっているものの、アルツハイマー病・パーキンソン病は、この能力の機能不全であることも解明されてきているという。

研究課題としては、アルツハイマー病では、病因となるタンパク質の生産を抑制する阻害剤がいくつか見つかっているものの、毒性の問題があり治療への活用に至っていないこと、またパーキンソン病では対症療法が「L-ドパ」という薬を使ったドパミン補充が中心であることを挙げられている。ともに根本的な治療法が発見されておらず、新たな予防・診断・治療法の開発が必要としている。

東京大学大学院薬学系研究科は、「医薬品」という難度が高く、かつ高い完成度が要求される「生命の物質科学」と、国民生活に直結した「生命の社会科学」を探求し、2つの科学の最終目標である「人間の健康」を最重要課題としていることが最大の特徴の部局。同機能病態学教室の富田泰輔教授は、アルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとする神経変性疾患の病態生化学に関する研究を行っている。

HACARUSは、スパースモデリング技術をAIに応用したデジタルソリューションを提供しており、少ないデータ量で高精度なAIを活用できることから産業分野だけでなく、希少疾患への応用など医療分野でも数多くの課題解決に貢献している。

富田教授によると、様々な神経変性疾患において、細胞内外の異常タンパク質の蓄積や細胞内輸送の異常などが発症プロセスにおいて重要であることが明らかとなっており、これらを定量的に解析し、様々な薬剤の影響を見積もる必要が出てきているという。ただ従来は、細胞や組織を染色後画像データの解析を人為的に行っていたため、HACARUSと共同でそのプロセスを自動化し、機械学習を用いてノンバイアスに解析する手法を開発することで詳細に解析できるのではないかとしている。

またHACARUSは、スパースモデリング技術を用いた画像診断およびR&Dプロセスの自動化に取り組んできており、その2つの強みを掛け合わせて、CNS(中枢神経系)分野において富田教授と共同研究に取り組むとしている。

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東大発スタートアップ「ソナス」が地震モニタリングシステム用無線振動計測システムを関西電力本社ビルに設置

東京大学発スタートアップ「ソナス」が地震モニタリングシステム用無線振動計測システムを関西電力本社ビルに設置

関電ビルディングと設置イメージ図

東京大学発IoTスタートアップ「ソナス」は6月15日、関西電力の41階建て本社ビルをはじめとする7棟の拠点建物に、地震モニタリング用の無線振動計システムを導入したと発表した。

この無線振動計測システムは、配線工事が不要なため1日で設置可能という。またソナスの試算によると、機器のコストも従来の有線システムの1/10に圧縮できるという。41階建てという大きな建物でも、複数のノードを経由してパケットを送るマルチホップ方式によって、単一のネットワークでカバーできる。

東京大学発スタートアップ「ソナス」が地震モニタリングシステム用無線振動計測システムを関西電力本社ビルに設置

無線振動計測システムのセンサーユニット(子機)

さらに、「同時送信フラッティング」と「細粒度スケジューリング」という技術を高度に組み合わせてソナスが独自開発した無線通信規格「UNISONet」(ユニゾネット)により、「安定」「省電力」「拘束」「双方向低遅延」「データロス」「時刻同期」「ネットワーク内多数収容」という7つの性能が同時に実現されている。「有線システムに匹敵する『抜けのない』『時刻同期のとれた』高品質データが収集可能」であり、これが関西電力が提示した「配線工事が不要で設置が簡単、機器のコストも安価でありながら、通信品質を保ち、広範囲計測やデータロスレス、時刻同期も実現」という条件を満たし、導入が決まった。

またソナスの無線振動計測システムは、建物の常時微動のような微弱な振動や、モーターなどの故障の予兆として現れる異常振動の計測にも使われている。

関西電力の担当者は、「通信性能の実証に加え、トライアルから設置まで短期間で丁寧にご対応いただいたことも、スムーズな導入に至ったポイントです」と話している。

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東京大学が国内初の「数理・データサイエンス・AIモデルカリキュラム」完全準拠教材を無償公開

東京大学が数理・データサイエンス教育の充実に向け「数理・データサイエンス・AIモデルカリキュラム」完全準拠教材を無償公開

東京大学 数理・情報教育研究センター(MIセンター)は6月8日、数理・データサイエンス・AIモデルカリキュラム(モデルカリキュラム)に準拠したスライド教材・実習用補助教材を開発し、国内すべての大学・高等専門学校などに向けて無償公開したと発表した。この取り組みは、政府の「AI戦略2019」に対応したもので、モデルカリキュラムの内容のすべてに対応した教材の公表は、全国で初めての試み。ライセンスとして、クリエイティブ・コモンズ ライセンスの「CC BY-NC-SA」を採用しており、原作者のクレジット表示、非営利目的での利用、再配布などが可能となっている。

モデルカリキュラムに完全準拠した教材の開発・公開によって、数理・データサイエンス・AI教育の全国的な広がり、教育の質向上が図られるとともに、教育コンテンツなどを直ちに完備することが困難な大学での活用、専門分野の教員の不足の解消などの効果が期待されるとしている。さらに、近年のデータサイエンティストへの期待の高まりを受け、高等教育機関だけでなく、社会人教育の場などに教材の活用が広がることも期待しているという。

同教材の活用により数理・データサイエンス・AIの基礎的素養を持つ人材を幅広く輩出し、デジタル改革やDX推進の一助となることを期待しているとした。

今後、東京大学が幹事校を務める数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアムの活動の一環として、同教材を活用したワークショップなどを行い、具体的な活用方法も含めて広く全国に普及・展開する。これらの取り組みによって、国内の数理・データサイエンス・AI教育の底上げを図るとともに、教えることができる教員の不足を解消しデジタル改革の推進の一助となることを期待しているという。

数理・データサイエンス・AIモデルカリキュラム

数理・データサイエンス・AIモデルカリキュラムとは、国内すべての大学・高等専門学校が参照可能な全国的なモデルとなるカリキュラムとして、数理・データサイエンス・AI 教育強化拠点コンソーシアムが策定したもの。これまでに、「数理・データサイエンス・AI(リテラシーレベル)モデルカリキュラム ~データ思考の涵養~」(2020年4月公表)および「数理・データサイエンス・AI(応用基礎レベル)モデルカリキュラム ~AI×データ活用の実践~」(2021年3月公表)を公開している。

モデルカリキュラムには、獲得する知識・スキルをキーワードとして列記しており、その数はリテラシーレベルで84、応用基礎レベルで108に及ぶ。

ただこれらは、学修項目や知識・スキルが体系的・網羅的に整理されている一方で、実際の授業に際し内容・構成をどうすべきかわからない、モデルとなる教材がほしいなど意見が多くの大学などからあったという。そこで今回公開の教材では、各大学の課題解決にも資するものとして、モデルカリキュラムを教材に落とし込むことでより一層の理解を図り、数理・データサイエンス・AI 教育の全国への普及に貢献するものとしている。

MIセンターが開発・公開した教材は、前述192のキーワードをすべて取り上げているほか、各大学の利便性を考慮し、キーワードと教材の対応なども掲載している。また、各大学などの授業内容に合わせてスライド教材をページ単位で使用できるなど、条件を設けずに自由に利用できるようにしており、学生の自学自習での活用も期待されるという。今後、教材の利用者アンケートを随時行うことで、意見を反映して適宜改善する予定。

またMIセンターは、コンソーシアムの活動の一環として同教材を使用した模擬授業を含むワークショップを行う予定。2021 年 6月24日に第1回目を開催し、順次拡大していく。詳しくはコンソーシアムのサイトを参照。

AI戦略2019は、2019年6月に統合イノベーション戦略推進会議が決定した政府主導の戦略。具体目標として「文理を問わず、すべての大学・高専生(約50万人卒/年)が、課程にて初級レベルの数理・データサイエンス・AIを習得」「文理を問わず、一定規模の大学・高専生(約25万人卒/年)が、自らの専門分野への数理・データサイエンス・AI の応用基礎力を習得」などを掲げている。

数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアムは、2016年12月に数理及びデータサイエンスに係る教育強化を目的として幹事校の東京大学を含めた6校(北海道大学、東京大学、滋賀大学、京都大学、大阪大学、九州大学)が文部科学省より拠点校に選定され、各大学内での数理・データサイエンス教育の充実に努めるだけでなく、全国の大学に取組成果の波及を図るため、地域や分野における拠点として他大学の数理・データサイエンス教育の強化に取り組んでいる。

2019年度には協力校として国立大学20校、2020年度には全国展開の活動をさらに加速するために、協力校3校と特定分野協力校7校、公私立大学校および国立高等専門学校機構も連携校となった。2021年4月現在では120校が参加している。

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IBMと東京大学が量子コンピューター実用化に必要な部品の試験を行うハードウェア・テストセンターを開設

IBMと東京大学が量子コンピューター実用化に必要な部品の試験を行うハードウェア・テストセンターを開設

IBMは6月7日、将来の量子コンピューター技術の研究開発を行うハードウェア・テストセンター「The University of Tokyo – IBM Quantum Hardware Test Center」を東京大学浅野キャンパスに開設し、量子コンピューター動作環境を再現するプラットフォーム「量子システム・テストベッド」を設置したことを発表した。

同センターの開設は、IBMと東京大学が2019年12月に設立を発表した「Japan–IBM Quantum Partnership」に基づくもの。このパートナーシップは、「産業界とともに進める量子アプリケーションの開発」「量子コンピューターシステム技術の開発」「量子科学の推進と教育」の3つの推進を目指している。IBMはこれを「量子コンピューターの研究開発を進めるための日本の産学連携プログラム」と位置づけている。

東京大学に設置した量子システム・テストベッド

量子システム・テストベッドは、量子コンピューターに必要な部品の試験を行うための大規模なプラットフォームだ。IBMと東京大学は、日本の参加企業や団体にアクセスを提供し、量子コンピューターの実用化に不可欠な材料や部品・技術の研究開発を行うことにしている。たとえば、「高度な極低温マイクロ波コンポーネントとサブシステムおよび制御エレクトロニクス」「超伝導量子ビットを安定的に動作させるために必要な材料」「高品質な信号伝送に必要な高周波部品や配線」、さらに「極低温を実現するために必要な冷凍機やコンプレッサー」とそれらの制御技術などが含まれる。

また、ナノ構造物理や超伝導などの研究で知られる仙場浩一氏が6月1日付けで東京大学大学院理学系研究科に特任教授に着任し、各メーカーとの協業から研究開発を牽引してゆくことになった。

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電通国際情報サービスは5月24日、東京大学大学院に、協賛企業9社による「量子ソフトウェア」寄付講座を開設すると発表した。期間は2021年6月1日から2024年5月31日までの3年間。

この講座は、東京大学大学院理学系研究科に設置され、同研究室科の「知の物理学研究センター」の協力で推進される。寄付講座とは、大学外部の団体から資金や人材などの寄付を受けて開かれる講座のこと。協賛企業は、CSK、NTTデータ、電通国際情報サービス、日鉄ソリューションズ、三井住友フィナンシャルグループ日本総合研究所、日本電気、日本ユニシス、富士通、blueqat。

この講座の目的は次の3つ。

  1. 量子コンピューター、情報圧縮や計算の効率化に役立つテンソルネットワーク、情報抽出を行うサンプリング手法などを組み合わせた新しい量子機会学習手法や量子アプリケーションの開発
  2. 大規模シミュレーションによる量子コンピューターの背後に潜む物理の理解と最先端知見の獲得による社会実装における課題の解決
  3. 量子ネイティブな専門人材育成

2021年度は、試行段階として、学生向けのセミナー形式の講義、社会人向け講義、シンポジウムなどのイベントの実施を予定している。2022年から本格的な講座を開始し、量子ネイティブ人材の育成を行う。協賛企業は、自社社員をここで学ばせることもできる。

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サイバーセキュリティ事業のFlatt Securityがセキュアコーディング向けeラーニング「KENRO」正式公開

サイバーセキュリティ事業のFlatt Securityがセキュアコーディング向けeラーニング「KENRO」正式公開

サイバーセキュリティ事業を展開するFlatt Securityは4月13日、ウェブエンジニアのセキュアコーディング習得を支援するSaaS型eラーニングサービス「KENRO」(ケンロー)を正式リリースした。正式リリースにあわせて、β版時のサービス名「Flatt Security Learning Platform」からKENROに変更した。

また、一部制限されたコンテンツを除いて、自由に試用できるトライアルを現在無料で提供している。まずはサービスに実際に触れて利用を検討してみたい、コンテンツを精査したいという場合は問い合わせるよう呼びかけている。β版期間に試用しサービスを評価したサイバーエージェントは、2021年度新卒研修において約80名規模で導入したそうだ。

KENROは、「資料に目を通して三択問題のテストを受けるだけ」といった一般的なeラーニングとは異なり、攻撃者が用いる手法を体験する「ハッキング演習」や、開発者の立場で脆弱なソースコードを修正する「堅牢化演習」を通じて、より実践的なトレーニングを一元的に受講できるという。

また正式リリースでは、「堅牢化演習」における修正対象のソースコードとして、Python、Java、Goで書かれたソースコードがダウンロード可能となっている。4月中にRubyも追加予定という。

また、学習コンテンツ中に含まれるサンプルコードに関しても、複数の言語に表示を切り替えられる。

サイバーセキュリティ事業のFlatt Securityがセキュアコーディング向けeラーニング「KENRO」正式公開

正式リリースでは、管理画面も大幅に拡充。学習の進行状況を直感的に把握できるダッシュボード機能や、未受講の受講者に通知する機能など、大規模なグループでの学習も便利に利用しやすくなったとしている。

サイバーセキュリティ事業のFlatt Securityがセキュアコーディング向けeラーニング「KENRO」正式公開

このほか、ボリュームのある学習コンテンツの中から、求める内容に素早くアクセスできるよう目次を追加するなど、受講者体験を向上するためのUI改善を実施。全体的なカラーテーマについても、白基調を採用している。

サイバーセキュリティ事業のFlatt Securityがセキュアコーディング向けeラーニング「KENRO」正式公開

2017年5月設立のFlatt Securityは、サイバーセキュリティ領域を手がける東京大学発のスタートアップ。各種パブリッククラウドやmBaaS、ウェブアプリ・スマホアプリ・ネットワーク・IoTを対象として、顧客情報の流出やデータ改ざんにつながる脆弱性がないかセキュリティエンジニアが診断する「セキュリティ診断サービス」も提供している。

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