説明責任向上を目指してNorrsken VCはパートナー報酬にポートフォリオ企業の持続可能性達成度を紐づけ

最新の投資ファンドをクローズさせたNorrsken VC(ノルスケンVC)は、そのポートフォリオ企業が、単に経済的なリターンだけでなく、世界にもたらした有益な変化の評価も加味してパートナーへの報酬を決めるという、前代未聞の一歩を踏み出した。

2021年3月第4週に、2020年の影響評価を発表した同社は、国連が定める17の持続可能な開発目標(SDGs)のうちの7つに取り組む企業に投資を行い、その目標達成度を、厳しく監視されたものから、ややわかりきった当たり前のものまで、幅広い基準で審査してきた。

場合によっては、目標は単なる顧客満足度となることもある(製品に多くの顧客がつくことは、それだけよくやっている証だ)。しかし公正を期すならば、それは教育や医療など、企業のサービスが与えるインパクトを正確に測定するのが難しい分野に限られる。

同社のポートフォリオ企業は、気候変動緩和や持続可能分野において、はっきりと目に見える進歩を遂げている。排出削減やエネルギー効率の向上などの成果は、実際に簡単に測定できる。そしてそうしたエネルギー効率化や排出削減は、同社のフードテックおよびアグテック事業に関連する廃棄物低減の取り組みと相まって、同社では最高のパフォーマンスを示している。

ポートフォリオ企業がエグジットすれば、そのパフォーマンスは、Norrskenのパートナーに多大な影響を及ぼす。彼らの報酬は、直接それに左右されるからだ。

「私たちが投資を行うときは、その1つ1つに、インパクト面で期待される事業に関して投資前の目標を定めます」と、Norrsken VCのジェネラルパートナーTove Larsson(トーブ・ラーソン)氏はいう。「私たちはそれを、ファンドの主要なリミテッドパートナー数名とともに決めています。目標設定は、諮問委員会の承認を必要とするからです。目標は各年ごとに定め、その後は1年ごとに見直します」。

「ファンドがサイクルの終わりに到達すると、私たちはすべてのインパクトKPIを集計し、各企業の投資額に応じてウェイトを振り分けます。それに基づいて、Norrskenは各社の成功報酬の有無を判断します」。

ポートフォリオ企業は、Norrskenと諮問委員会が定めたインパクト目標の60パーセントを達成できた場合、成功報酬の半分を受け取ることができ、残りは慈善団体に寄付される。「割合は100パーセントまでの間で直線的に変化します。もし目標が達成できなかった場合は、成功報酬は慈善団体やNGOに寄付されます」とラーソン氏は話す。

「◯」はインパクト目標の達成度、「■」は成功報酬の割合(画像クレジット:Norrsken VC

Norrskenのパートナーは、その画期的な報酬構造を差別化のポイントと見定めつつ、特に国連のSDGsに関連するテーマに注力する企業の劇的な増加が継続されることに期待を寄せている。

「投資を開始したとき、私たちは一番手グループの一員でした。それは4年前です。それから市場は急速に変化しました。あまりにも変化が早いために、どうしたら突出できるのか、自分たちが本当のインパクトプレイヤーなのかどうか、どうすれば知ることができるのかを、みんなに聞いて回ったほどです」とNorrskenのジェネラルパートナーAgate Freimane(アガト・フリーメイン)氏は話す。

「これがDNAの中核部分です。私たちは良い結果を出して、有言実行を示さなければなりません」とフリーメイン氏はいう。そこで同社は、欧州投資基金の先例に倣うことにした。同基金は、報酬に同じような制限を課していると彼女はいう。「このやり方を聞いたとき、100パーセント納得できる、どうしてみんなやらないのかと感じました」。

これまで、同社が自ら定めた目標を達成できなかったことはなかった。「2020年の目標は119パーセント達成しました」とフリーメイン氏。それでも、長期目標の12パーセントに過ぎない。「現時点で実現したのは、私たちがファンドの期限内に行わなければならないことの10分の1です」。

不正確かも知れないが、その目標の一部として、同社のポートフォリオ企業が取り組んだ温室効果ガス排出とフードロスの削減、エネルギーの効率化には、計測可能な本物のインパクトがある。それは、データセンターのエネルギー需要を10ギガワット時まで削減するSubmer(サマー)の技術であり、食品廃棄量を1万1000トン削減できるKarma(カーマ)、Whywaste(ホワイウェイスト)、Matsmart(マットスマート)、 Olio(オリオ)の事業であり、洗車に使う水を400万リットル削減できるWoshapp(ウォッシュアプ)であり、Alight(オーライト)による38メガワットのソーラープロジェクトだ。

画像クレジット:Norrsken VC

「私たちが最も誇りに感じているのは、私たちが今これを実行しているということです」とラーソン氏。「現在開発中のものは完ぺきではありませんが、それは誰かが始めなければならないことだと、私たちは真剣に考えています。また、産業界がもっと透明になることが必要です。それを追跡し公開していることが1つの成果だと、私たちはまず言いたいのです」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:ノルスケン財団SDGs環境問題持続可能性

画像クレジット:Malte Mueller / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

燃費規制の罰金引き上げを延期する米国の決定にEVメーカーが反発

燃費基準を達成できなかった自動車メーカーに課せられる罰金の引き上げを延期する決定に、電気自動車メーカーが反発している。

従来の自動車メーカー(その多くは、現在ゼロエミッション車に多額の投資を行っている)を代表するロビー団体は、新型コロナウイルスによる大規模な混乱に業界が直面している時期に、罰金を引き上げ れば経済的に著しい影響があると主張。しかし、自動車産業に新規参入したEVメーカーは、罰金の仕組みが自動車の排出ガスを減らし、さらに低排出ガスまたはゼロエミッション(排出ガスをまったく出さない)技術への投資を促す強力で効果的な誘引になると述べている。

米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が2021年1月に発表したこの決定は、罰金の引き上げを、2019年モデルイヤーの初めから、2022年モデルイヤーまで延期するとしている。Tesla(テスラ)は、この延期が同社に「継続的かつ回復不能な損害を与え」、非遵守の重要性を軽減し「不公平な競争条件」を生み出しているとして、この判決の見直しを米国第2巡回区控訴裁判所に申し立てている。

CAFE(Corporate Average Fuel Economy:企業平均燃費)の罰金は、1975年に導入されて以来、一度だけ引き上げられた。自動車メーカーの平均燃費値が基準に満たない場合、1ガロンあたりの走行可能な距離が0.1マイル (約0.04km/L)増えるごとに生じる罰金が、5ドル(約546円)から5.50ドル(約601円)に上げられたのだ。米国議会はインフレの影響を是正するため、2015年に罰金の額を14ドル(約1530円)に引き上げることに決めたが、NHTSAと裁判所はそれをいつから適用するかについて議論を重ねてきた。2020年8月の第2巡回区の判決では、2019年モデルから罰金を引き上げることで決着がついたように思われたが、自動車メーカー各社は2020年10月、罰金引き上げの延期を求める申し立てを行っていた。

CAFE規制の罰金は、ゼロエミッションの自動車メーカーにとって大きな利益となる。排ガスを出さないクルマ(つまり電気自動車)を製造している自動車メーカーはクレジットを受け取り、燃費基準を達成できなかった他の自動車メーカーにそれを売ることができるからだ。テスラは規制当局に提出した最近の報告書の中で、他の自動車メーカーにクレジットを販売することで得られる金額は、2019年の5億9400万ドル(約649億円)から2020年には15億8000万ドル(約1726億円)に増えたと述べている。罰金の引き上げを遅らせることは、クレジットの増額を見込んで経済的意思決定を行った企業に害を与えると、テスラは主張している。

新規EVメーカーのRivian(リビアン)とLucid Motors(ルーシッド・モーターズ)も、CAFE罰金の引き上げ延期に反対すると、TechCrunchに語った。

Lucid Motorsの法務顧問を務めるKevin Vincent(ケビン・ビンセント)氏は、TechCrunchに次のように述べている。「クレジット市場はEV産業全体にとって非常に有益なものです。EVの製造を始めようとしているすべての企業は、新興企業であれ既存のメーカーであれ、EVを製造する際に確かなクレジットを得られることが恩恵となるからです。多くの既存メーカーは、結局自分自身でクレジットを売買することになるので、燃費を向上させている先見性のある企業には恩恵があります」。

Rivianのパブリックポリシー担当VPで規制法務責任者のJames Chen(ジェームズ・チェン)氏は、TechCrunchに送られてきた声明の中で、CAFEやその他の排出基準を後退させることは、排出削減(温室効果ガスおよび基準汚染物質)、燃料効率の向上、外国産石油への依存度の低減、技術面のリーダーシップ、およびEVの普及において、米国を後退させるだけだと述べている。また、同社は「より厳しい排出ガス基準と、基準を満たせなかった場合の罰則強化を含む、EVの普及を促進する取り組みを強く支持する」と続けている。

NHTSAは、すでに製造されたモデルイヤーに遡って罰金を適用すべきではないという理由で、引き上げを延期した。自動車メーカーはすでに製造済みの車両の燃費を向上させる手段を持たないため「抑止効果がなく、法律の遵守を促進することがないモデルイヤーにまで、修正された規則を適用するのは不適切である」とNHTSAは述べている。

自動車メーカー各社もまた、ロビー団体「Alliance for Automotive Innovation(自動車イノベーション協会)」が提出した嘆願書および補足コメントの中で、新型コロナウイルス感染流行による経済的苦難を引き合いに出している。Mercedes-Benz (メルセデス・ベンツ)は、パンデミックによりサプライチェーン、労働力、生産に混乱が生じたと、NHTSAに述べている。

「このような厳しい経済状況の中で、遡って罰金率の引き上げを適用することは非良心的であり、新型コロナウイルスの経済的影響を考慮して規制緩和を促進しようとする政権の取り組みとは相反すると我々は考えます」と同自動車メーカーは述べている。

テスラは、新型コロナウイルスの感染流行を根拠とすることは、遅延の理由を示す具体的な証拠がない限り「通用しない」と、裁判所に提出した訴状の中で主張している。

また、カリフォルニア州やニューヨーク州など16の州の司法長官や、環境保護団体のSierra Club(シエラ・クラブ)、Natural Resources Defense Council(天然資源防護協議会)も、この延期に異議を唱えている。

NHTSAの決定は訴訟番号NHTSA-2021-0001として公開されている。テスラは第2巡回区に案件番号21-593で申請している。

カテゴリー:モビリティ
タグ:電気自動車NHTSA地球温暖化環境問題アメリカ

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「Natureスマート電気」が基本料金0円で電気を使った分だけ支払う固定単価新プランの先行受付開始

「Natureスマート電気」が基本料金0円で電気を使った分だけ支払う固定単価新プランの先行受付開始

Natureが提供する「Natureスマート電気」は3月18日、基本料金0円で電気を使った分だけ料金を支払う新プラン「固定単価プラン」を2021年5月より提供すると発表。先行受付を開始した。提供エリアは東京電力エリア、関西電力エリア。

また、先行申込を行った新規契約ユーザーを対象に、スマートリモコン「Nature Remo mini 2」をプレゼントするキャンペーンも同時開催している。キャンペーン期間は3月31日15時まで。

固定単価プランは、基本料金0円で電気を使った分だけ電気料金を支払うというプラン。東京電力エリアは26.4円/kWh、関西電力エリアは22.4円/kWhと1kWhあたりの電力量料金単価が決まっており、電力市場価格に連動して単価が変動する市場連動プランは不安という場合でも、気軽に始めやすいシンプルな料金体系としている(燃料調整費額・再生可能エネルギー発電促進賦課金は別途かかる)。
「Natureスマート電気」が基本料金0円で電気を使った分だけ支払う固定単価新プランの先行受付開始

またNatureスマート電気では、電力需要のピークを分散し、火力発電所の不要な稼働を減らすことで、温暖化の原因となる温室効果ガスの排出削減に取り組んでいるという。固定単価プランにおいても、電力使用量が多いピーク時間を避けて電気を使う顧客には、特典が受けられるデマンドレスポンスの仕組みを提供予定としている。

デマンドレスポンスとは、電気の需要・供給のバランスをとるために、電気料金価格の設定や、インセンティブの支払に応じて、需要家(消費者)側が電力の使用を抑制するよう電力の消費パターンを変化させることを指す。

5月には、市場連動プランから固定単価プランへの変更も可能になり、契約ユーザーはライフスタイルに合わせてプランを選択できるという。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:環境問題(用語)Nature(企業)Nature RemoNature Remo E日本(国・地域)

スウェーデンのノルスケン財団が162.5億円のインパクト投資ファンドを応募超過でクローズ間近

約4年前、社会的インパクト組織のNorrsken Foundation(ノルスケン財団)は、後援者であるKlarna(クラーナ)の共同創業者Niklas Adalberth(ニクラス・アダルバース)氏から受け取った約3000万ユーロ(約39億円)の資金を投資する小規模なプログラムを開始した。

現在はその取り組みが独自のインパクト投資会社「Norrsken VC」となっており、関係者によると、初の独立した投資ビークルである1億2500万ユーロ(約162億5000万円)のファンドを間もなくクローズする予定だという。ウェブサイトには、同ファンドは「世界の最大の問題を解決する」スタートアップへの投資に焦点を当てていくとある。

同社の資金調達計画についてNorrsken VCにコメントを求めたが、回答は得られていない。

この若い会社はすでに、どんなベンチャーキャピタルのポートフォリオでも傑出していると判断される企業への投資を行っている。Norrsken VCは、Volkswagen(フォルクスワーゲン)から140億ドル(約1兆5000億円)相当の電気自動車用バッテリーを受注したばかりのNorthvoltの初期投資家でもあった。

電気飛行機の技術を開発したHeart Aerospace、自律走行EV開発のEinride、そしてバッテリーのモニタリングやデータ管理を行うスタートアップのNorticalなどをポートフォリオに持つこのアーリーステージVCにとって、「電気化」は大きなテーマとなっている。

Einrideは、最近また大きな成功を収めた。同社はSPACの可能性を探りながらも、同時に7500万ドル(約82億円)の新規資金調達に近づいているとTechCrunchに報じられている。

実際、ノルスケン財団の投資活動は、化石燃料から再生可能資源やその他のゼロカーボンエネルギー源への移行を支援する方法を模索しているベンチャー投資家、一般市場、起業家の間で、気候変動や持続可能性に焦点を当てた活動が急増することを予見していた。

このエネルギー消費に関するテーゼは、エネルギー効率の高いデータセンターの設計・技術開発を行うSubmerなど、同社のポートフォリオの他の分野にも当てはまる。

電気化や効率化が気候変動対策の1つの分野であるとすれば、Norrskenはほかに廃棄物対策やフードチェーンの効率化にも取り組んでいる。そちらの分野は、おそらく同社の現在のポートフォリオの中で電気化以外の最大の重点分野であり、カテゴリーの初期の勝者がいくつか浮上しているようだ。

それらの投資はWeFarmやIgnitiaのような農業に焦点を当てたスタートアップから、Olio、Matsmart、Whywasteなどの食品業界における消費者の廃棄物処理まで、多岐にわたる。

気候変動と持続可能性というテーゼは最大かつもっとも時宜を得た投資対象だが、ヘルスケアとウェルネスも同社の投資マンデートに含まれている。Winningtempのようなスタートアップは、同社の投資テーゼを示す興味深い存在だ。このスタートアップは、従業員のメンタルヘルスをモニターし、サポートする方法を提供している。

関連記事:すでにある技術を利用して、「お金になる方法」で気候変動の危機に対処しよう

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:環境問題

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Aya Nakazato)

すでにある技術を利用して、「お金になる方法」で気候変動の危機に対処しよう

著者紹介:本稿を執筆したBertrand Piccard氏は、Solar Impulse Foundationの創始者であり、 ソーラー駆動の飛行機で歴史上初の世界一周飛行を成し遂げた人物だ。

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5年前、私は航空史上初となる太陽光エネルギーのみを動力とした世界一周飛行を終えて、Solar Impulse 2をアブダビに着陸させた。

エネルギーとテクノロジーの歴史的なマイルストーンでもあった。 Solar Impulseは実験用飛行機で、重量は自家用車と同程度であり1万7248個の太陽電池を使用していた。それは空飛ぶ実験室のようなもので、創成期のテクノロジーが満載で、再生可能エネルギーを作り出し、保管し、必要なときに最も効率のよいやり方で使用できた。

再びテクノロジーを利用するときが来た。私たちの誰もが影響を受ける気候変動の危機に対処するためだ。気候変動に関するアクションにとって最も重要な10年間、そして地球温暖化を1.5℃に制限するおそらく最後のチャンスを、私たちは迎えている。クリーンな技術が唯一の受け入れ可能な規範であることを、ここで確実にしておく必要がある。こうしたテクノロジーはすでに存在するし、今この重大な時期に、収益を上げるやり方で実装することができる。

ここで説明する4つのイノベーションは私たちの太陽光発電飛行機が生み出したもので、市場は今すぐこれらを利用し始めればよい。手遅れにならずに済むようにだ。

操縦室の断熱から住宅の断熱へ

建築セクターは世界中で最も大きなエネルギー消費者のひとつだ。冷暖房を二酸化炭素排出量の多い燃料に依存していることに次いで、断熱性能の低さとそれにまつわるエネルギー損失が主な理由に挙げられる。

Solar Impulseのコックピットの内側の断熱は、飛行機が非常に高い高度を飛行するために決定的に重要だった。オフィシャルパートナーのCovestroが超軽量の断熱素材を開発してくれた。コックピットの断熱性能は当時の標準よりも10%も向上した。断熱フォームの孔の大きさを40%小さく、マイクロメーターでなければ計測できないほどのサイズにまでしたからだ。密度は40kg/立法メートルと非常に低く、おかげでコックピットは超軽量になった。

この他にも多くのテクノロジーが存在する。市場のあらゆる参加者が自ら進んで、極めて効率の高い建物断熱を標準的な作業手順に組み込むことを、ここで確実にしておく必要がある。

電気航空機の推進からクリーン・モビリティの推進へ

Solar Impulseは最初にして最高の電気航空機だった。4 万3000キロメートルを一度も燃料不足を起こさず飛行した。4つの電気モーターの効率は記録的な97%、標準的な熱エンジンの27%という残念な数字に比べはるかに高い。これはつまり、使用したエネルギーのわずか3%しか失われなかったのに比べ、燃焼による推進では73%が失われたということだ。現在、電気自動車の売り上げが上昇している。国際エネルギー機関によれば、Solar Impulseが2016年に着陸したとき、路上を走行する電気自動車の数はおよそ120万台だった。この数字は現在では500万台を越えている。

しかしながら、このような加速で十分とはまったく言えない。電源ソケットが給油ポンプに取って代わるには今もってほど遠い。運輸セクターは依然として世界中のエネルギーに関連する二酸化炭素排出の4分の1を占めている。電化をもっと迅速に引き起こして、排気管からの二酸化炭素の排量を削減しなければならない。それには、政府が明確な税制上のインセンティブを与え、ディーゼル車とガソリンエンジンを禁止し、大規模なインフラストラクチャー投資を行うことで、電気自動車の採用を押し上げる必要がある。2021年は私たちがゼロエミッション車へと向かう一方通行に入り、熱エンジンを行き止まりに追いやる年であるべきだ。

航空機マイクログリッドはオフグリッドコミュニティにも使える

何日間か昼も夜もなく飛行し、理論上の無限の飛行能力に達すると、Solar Impulseは日中に集めて貯蔵しておき夜間のエンジン駆動に使用していたエネルギーに依存していた。

Si2で小規模ながら利用可能になったものが、将来にわたって有効な、完全に再生可能エネルギーだけの発電システムへの道を開くはずだ。それまでの間は、Si2で使われたようなマイクログリッドが地方のコミュニティのオフグリッドシステムに役立てたり、あるいはエネルギーアイランドによってディーゼルなどの二酸化炭素を多く排出する燃料を今日からでも廃止できたりする。

大規模には、スマートグリッドを模索している。すべての「愚かなグリッド」がスマートグリッドに置き換えられたら、たとえば街は、エネルギーの生産、保管、配送、消費を管理できるようになり、エネルギー需要のビークを下げることで、二酸化炭素の排出量は劇的に減少するだろう。

空中と陸上のエネルギー効率

Solar Impulseの理念は、エネルギーを増産しようとせず、エネルギーを削減することだった。だからこそ、比較的少量の太陽光エネルギーを収集しただけで昼夜の飛行に十分だったのだ。したがって、航空機のあらゆるパラメーター、たとえば翼長、空力、スピード、飛行プロファイルとエネルギーシステムなどは、エネルギー損失を最小化するように設計されていた。

残念ながら、今日のエネルギー使用の大半にある非効率を見ても、このアプローチは未だに際立っている。国際エネルギー機関(IEA)は2000年から2017年にかけてエネルギー効率が推定13%向上したことを明らかにしたが、これは十分とは言えない。投資家を勇気づけるには、政治家の勇気ある行動が必要だ。そのための最も優れた方法のひとつは、エネルギー効率の厳格な基準を導入することだ。

たとえば、カリフォルニア州は建物とコンシューマーエレクトロニクスや家電製品などの機器について、エネルギー効率の基準を定めており、これによって消費者は公共料金の支払額を100ドル(約1万500円)以上節約したと推定されている。環境にも家計にもやさしい対策だ。

Si2は未来だったが、今こそ現在を定義する

こうしたさまざまなイノベーションを使用して制作した当時は、Solar Impulseは先駆的で未来的だった。今、これらは現在を定義するものであって、これらを規範としなければならない。上述のテクノロジーに続く何百ものクリーン技術ソリューションが存在し、お金を生む方法で環境を保護している。そのような技術の多くが「Solar Impulse 高エネルギー効率ソリューションラベル」を保有している。

Si2テクノロジーと同じように、こうした技術がメインストリーム市場に参入することを、ここで確実にしておかなければならない。その規模拡大が迅速であるほど、パリ協定の目標達成と持続可能な経済成長の実現に向けて、より迅速に経済を軌道修正できるだろう。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:再生可能エネルギー 環境問題 コラム

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(文:Bertrand Piccard、翻訳:Dragonfly)

Salesforce創業者やロバート・ダウニー・Jr氏が出資する竹のトイレットペーパー企業がペーパータオルを発売

昨年、竹でつくられたトイレットペーパー(と有名人による投資)で話題になったスタートアップCloud Paper(クラウドペーパー)が、今度はペーパータオルの販売に乗り出す。同社は俳優のRobert Downey, Jr(ロバート・ダウニー・Jr.)氏やGwyneth Paltrow(グウィネス・パルトロウ)氏、Salesforce創業者のMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏、Uber(ウーバー)のCEOであるDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏、NBAダラス・マーベリックスのオーナーMark Cuban(マーク・キューバン)氏などのセレブや億万長者が支援していることで知られる。

同社は米国時間3月16日から、持続可能な方法で調達された竹製ペーパータオルの12ロールパックの予約販売を開始した

シアトルを拠点とするこの会社は、元Uber(ウーバー)の社員であるRyan Fritsch(ライアン・フリッチ)氏とAustin Watkins(オースティン・ワトキンス)氏の2人によって設立された。両氏は物流スタートアップのConvoyに勤めたあと、Cloud Paperを立ち上げた。同社のトイレットペーパー(そして現在はペーパータオル)ビジネスは、消費者に竹ベースの生活用品への切り替えを促しているいくつかの企業の一つだ。

Cozy EarthEttitudeは竹素材のシーツや寝具を販売し、The Bamboo Clothing Co.ThoughtTascFree Fly Apparelなどは竹繊維の服を作っている。Biteはプラスチックを使わない歯磨き粉やフロスに合わせて、竹製の歯ブラシを提供している。

だが(筆者の言葉でいうと)、このような超富裕層や著名な投資家から札束とともに流してもらえるのは、Cloud Paperだけかもしれない。それでも、Grove、TushyReel、そしてふさわしい名前の「Who gives a crap, Inc(屁のかっぱだ、という慣用句とcrap〔うんち〕をかけている)」といった企業が、104億ドル(約1兆1300億円)規模のトイレットペーパー市場の一角を占めようとしている

共同設立者のフリッチ氏によると、Cloud Paperのミッションは1ロールずつ、製紙業界をより持続可能にしていくことだという。

他の企業が綿やプラスチックの代替品として竹に注目しているのに対し、Cloud Paperについて同氏は、トイレットペーパーとペーパータオルに焦点を当てていると語る。

同社はすでに100万ロールのトイレットペーパーの生産を発注し、数十万ロールのトイレットペーパーを出荷しているが、消費者が同社の製品に乗り換える根拠はシフトしてきたという。

「コロナ禍でシャットダウンが起こったとき、確かに後押しされた瞬間はありました」とフリッチ氏はいう。「しかし、(消費は)トイレットペーパー不足のパニックから、『簡単で便利な、持続可能な選択肢がある』という方向にシフトしました。以前ほどの熱狂的な買いあさりはありません」とも。

米環境NGOのNational Resources Defense Council(天然資源保護協議会、NRDC)も、便器のために犠牲になる廃棄物の量に強く反対の立場を表明している

NRDCによると、カナダの伐採産業は米国のトイレットペーパー需要を満たすために、気候変動の影響を受けやすい森林を100万エーカー(約4000平方キロ)以上も劣化させているという。米国のトイレットペーパー需要が大幅に増加したため、近年、カナダの原生林消失率は、ロシア、ブラジルに次いで世界第3位となっており、そのほとんどが伐採によるものだとNRDCは述べている。

そのうちの90%は、気候変動を悪化させる皆伐だ。NRDCは2020年の報告書で、最も保守的に見積もった場合でも、「北方林での伐採は、森林の炭素を多く含む土壌からの排出を促進し、森林の炭素吸収能力を損なうことで、2600万トンの炭素を放出します」と書いている。「トイレットペーパーは寿命が短いため、残った炭素をすぐに大気中に放出してしまうので、トイレットペーパーの影響はさらに深刻です。そのため、Environmental Paper Networkによると、木を原料につくられたトイレットペーパーは、リサイクル素材を使ってつくられたトイレットペーパーの3倍の気候変動への影響があるとのことです」。

だから森林からつくられたペーパーを拭い去ることは、気候変動対策のために真の恩恵をもたらすのだ。

「1位のトイレットペーパーと2位のペーパータオルが(紙の)使用の大部分を占めており、それ以降の市場規模は非常に小さくなります。当社はペーパー分野で継続していくつもりです」とフリッチ氏はいう。

Cloud Paperは今後、レストランやホテル、さらにはスタジアムやアリーナなどの企業と協力して、ビジネス向けペーパー製品への転換を進めていく予定だ。

「我々はもともとB2B企業として会社を立ち上げました。WeWorkやレストランと提携し、市場、つまり私たちのペーパー製品がどこで使われているかを見てきました」とフリッチ氏は語る。「そして、これからのもうひとつの大きな焦点は、より大きな収容能力を持つ商業施設のお客様のために製品を作ることです」。

画像クレジット:Cloud Paper

関連記事:ごみ拾いSNS「ピリカ」やマイクロプラスチック調査サービス「アルバトロス」運営元が1億円調達

カテゴリー:EnviroTech
タグ:環境問題

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Aya Nakazato)

ごみ拾いSNS「ピリカ」やマイクロプラスチック調査サービス「アルバトロス」運営元が1億円調達

ごみ拾いSNS「ピリカ」やマイクロプラスチック調査サービス「アルバトロス」運営元が1億円調達

環境領域スタートアップ「ピリカ」(Pirika)は3月15日、第三者割当増資による総額1億円の資金調達を発表した。引受先は、瀧口浩平氏など複数名の個人投資家。調達した資金により人材採用を強化し、サービスの開発、営業網の拡大などを通じて、ごみの自然界流出問題をはじめ環境問題の解決に向けた事業を加速する。

ピリカは、2011年の創業以来ごみの自然界流出問題をはじめ環境問題の解決に取り組み、ごみ拾い活動を共有・促進するSNS「ピリカ」(Android版iOS版)、画像解析技術で広範囲のポイ捨て状況を調査できる「タカノメ」、マイクロプラスチックの流出量調査や製品特定などを行う「アルバトロス」といった独自のサービスやソリューションを開発・提供している。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:環境問題(用語)資金調達(用語)ピリカ(企業・サービス)マイクロプラスチック(用語)日本(国・地域)

持続可能な自動車製造を目指すBMWが二酸化炭素を排出しない製鉄技術を開発したBoston Metalに投資

Boston Metal(ボストン・メタル)が開発した二酸化炭素を排出しない鉄鋼生産技術を支援する投資家グループに、BMWが加わった。

ボストンを拠点とするこのスタートアップ企業は、TechCrunchでも報じたように、2021年初めに5000万ドル(約54億5000万円)の資金調達を目標としていたが、同社の関係筋によると、BMWが加わったことでこのラウンドは終了したとのこと。

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自動車メーカーの投資部門であるBMW iVentures(BMW iベンチャーズ)の支援を受けることで、Boston Metalはより持続可能な製造方法を大規模に求める企業と関係を築くことになる。例えば、欧州にあるBMWグループのプレス工場では、年間50万トンを超える鉄鋼を加工しているという。

「当社は、サプライヤーネットワークにおいて、生産時のCO2排出量が最も多い原材料や部品を体系的に特定しています」と、BMW AGの取締役会メンバーであり、購買およびサプライヤーネットワークを担当するAndreas Wendt(アンドレアス・ヴェント)博士は、声明の中で述べている。「鉄鋼もその1つですが、自動車の生産には欠かせません。そこで私たちは、鉄鋼のサプライチェーンにおけるCO2排出量を継続的に削減することを目指しています。2030年までに、CO2排出量を現在よりも約200万トン削減する必要があります」。

従来の鉄鋼生産では、二酸化炭素を排出する高炉が必要だが、Boston Metalによると、同社が開発した方法では、電気分解セルで鉄鋼に加工される銑鉄を生産することができるという。

Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏が率いるBreakthrough Energy Ventures(ブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズ)をはじめとする既存の戦略的・財務的投資家とともに、BMWは業界に莫大な影響力を持つ企業パートナーとしてこの投資家グループに加わり、今回の資金調達プロセスを締めくくることになった。

「当社の投資家は、上流の鉱山・鉄鉱石会社から下流の最終的な顧客まで、鉄鋼のバリューチェーン全体に及んでおり、高品質の鉄鋼を競争力のあるコストで大規模に生産できるBoston Metalの革新的なプロセスを評価してくれています」と、最高経営責任者で創業者のTadeu Carneiro.(タデウ・カルネイロ)氏は述べている。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:BMW二酸化炭素Boston Metal資金調達環境問題投資持続可能性

画像クレジット:aydinmutlu / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Natureが電力需給に応じ電気料金が変動する「Natureスマート電気」を発表、東京電力・関西電力エリア対象

Natureが電力需給に応じ電気料金が変動する「Natureスマート電気」を発表、東京・関西対象

Natureは3月1日、東京電力・関西電力エリアの家庭を対象に、電力小売サービス「Natureスマート電気」の提供開始を発表した。5月にはスマートリモコン「Nature Remo」との連携を予定。

また、昨今懸念されている電力卸売市場価格高騰のリスクを鑑みて、電力購入料の上限価格を100円に設定することで、ユーザーのリスクが限定的になるよう設計しているという(電力購入料の他に託送料金、再エネ割賦金、事業運営費がかかる)。

電力需給と電気料金が連動する「Natureスマート電気」

Natureスマート電気は、電力の需要供給に応じて電気代が変動するプランを採用し、「電気を賢く使う」新しい電気のカタチを提案。ユーザーはマイページから翌日の電力量料金単価(1kWhあたり)を確認でき、電気代が高い時間には家電の利用を控え、電気代が安い時間に消費電力の大きな洗濯機・乾燥機を使うことで、電気代を節約できるとしている。

またこれら電気代の節約は、電力需要のピーク分散につながるため、火力発電所の不要な稼働を減らし、温暖化の原因となる温室効果ガスの排出削減に寄与するという。

Natureが電力需給に応じ電気料金が変動する「Natureスマート電気」を発表、東京・関西対象

「Natureスマート電気 」マイページのイメージ

さらに同社は、2021年5月にはスマートリモコン「Nature Remo」との連携を予定しており、その日の電力量料金単価に応じた家電の自動操作が可能になるとしている。例えば、電気代が高くなる時間にエアコンが反応し、自動で設定温度や風量の調節を行うなどを設定可能(ユーザー自身による事前設定が必要)。ユーザーは、快適さを損なうことなく自動で賢く電気代を節約できるという。

Natureは「自然との共生をテクノロジーでドライブする」をミッションに、IoTプロダクトを活用し、クリーンエネルギーへのシフトを目指すスタートアップ企業。

2017年にスマートリモコンの草分け的存在として「Nature Remo」が誕生。2019年には「Nature Remo E」で本格的にエネルギー事業に参入。今後は次世代の電力システムの構築により、ホームオートメーションからデジタル電力革命への発展を遂げ、電力の新しい未来を創造していく。

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カテゴリー:IoT
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日立が設備・サービスごとの再生可能エネルギー使用状況をスマートメーターとブロックチェーンで見える化

日立が設備・サービスごとの再生可能エネルギー使用状況をスマートメーターとブロックチェーンで見える化

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、過去1週間分について重要かつこれはという話題をピックアップしていく。今回は2021年1月17日~1月23日の情報から。

日立製作所(日立)は1月22日、再生可能エネルギー由来の電力で稼働する建物・設備やサービスなどの電力使用状況を、スマートメーターとブロックチェーン技術を活用し見える化するシステムの開発を発表した

また同システムを中央研究所内に導入し、設備やサービス単位での使用電力が100%再生可能エネルギーであることを「Powered by Renewable Energy」として証明するシステムの運用を2月1日より開始する。

同社が開発したシステムは、スマートメーターとブロックチェーン技術を活用し、個々の建物や設備等製造ラインごとの単位まで、再生可能エネルギーの使用量を見える化できるというもの。企業全体として再生可能エネルギーのみでの事業運営の早期実現が困難な場合でも、企業の環境意識の向上や再生可能エネルギー利用の普及に貢献できるという。ちなみにスマートメーターとは、電気使用量をデジタルで計測するほか通信機能を備える電力メーター。スマートメーターを導入することで自動検針と電気使用量のデータ通信が可能になる。

日立は、中央研究所内の「協創棟」と呼ばれる特定の建物やエレベーターなどの特定の設備に対して同システムを導入。使用電力が100%再生可能エネルギーであることを「Powered by Renewable Energy」として証明していく。

日立が設備・サービスごとの再生可能エネルギー使用状況をスマートメーターとブロックチェーンで見える化
同システムにより「Powered by Renewable Energy」を証明できることで、将来的には、個々の製品・サービスが100%再生可能エネルギーで稼働していることを訴求した付加価値の高いサービスが提供可能という。

例えば、再生可能エネルギーで100%充電された電気自動車によるタクシー事業者が、車両に「Powered by Renewable Energy」マークを表示させて乗車サービスを提供することで、環境価値を訴求したサービスの提供が可能になる。

国際的な地球温暖化対策「パリ協定」では、温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質ゼロにすることなどを目標に掲げている。これを受けて、世界の主要国政府および地域が2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという目標の達成を掲げたカーボンニュートラルを宣言している。1月20日には、トランプから政権を引き継いだジョー・バイデン大統領によって、アメリカのパリ協定への復帰が表明され、注目を浴びている。

また企業や団体においては、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的環境イニシアチブ「RE100」(Renewable Energy 100%)に加盟するなど、脱炭素社会の実現に向けた活動が進みつつある。

日立は、同システムの提供により、事業者への再生可能エネルギーの導入を支援し、企業の脱炭素化を促進していく。今後は、様々な業界のパートナー企業と協力し合い、同システムおよび証明コンセプトを活用したサービスの提供に向けた検討を進め、脱炭素社会の実現への貢献を目指すという。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:SDGs(用語)カーボンニュートラル環境問題(用語)再生可能エネルギー(用語)スマートメーター日本(国・地域)

chaintopeが佐賀市ごみ発電の環境価値をブロックチェーンで記録・電子証書化するシステムを開発

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暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、過去1週間分について重要かつこれはという話題をピックアップしていく。今回は2021年1月10日~1月16日の情報から。

chaintopeみやまパワーHDは1月12日、佐賀県佐賀市における「地域循環共生圏」構想の一環として、佐賀市内でのエネルギーなどの地域内循環を可視化し、ごみ発電電力の地産地消による環境価値を電子証書化するシステムを試作し、「地域循環共生圏」の具体化可能性の検証作業を行うことを発表した

2050年脱炭素社会の実現を推進する佐賀市は、2010年に環境都市宣言を行い「地域循環共生圏」を推進。「資源循環」「炭素循環」「人の循環」「経済循環」をキーワードに、地域の資源や可能性について再考・有効活用しながら環境・経済・社会を改善し、資源を融通し合うネットワークをつくろうと、市民と共に取り組んでいる。

みやまパワーHDとchaintopeは、このような地域循環共生圏内での価値の循環を、ブロックチェーン技術により可視化し、さらに多くの市民の行動変容を促し、脱炭素と地域経済活性化につながることを期待し、同検証作業の実施を行っていく。

chaintopeが佐賀市ごみ発電の環境価値をブロックチェーンで記録・電子証書化するシステムを開発

佐賀市は、ごみ処理を佐賀市清掃工場に集約し、清掃工場で生み出されるごみ発電による電気(再生可能エネルギー)の量を増やした。ごみ発電による再生可能エネルギーは、市内の公共施設に供給できるようになっており、「電力の地産地消」を行っている。ちなみに清掃工場で生み出される電力量は平成30年度実績で3203万kWh/年、そのうちの1568万kWh/年が佐賀市内の小中学校および公共施設112カ所にて利用され、1700万kWh/年は他に売却されたという実績をあげている。

また、同清掃工場は、ごみを焼却した際に発生する排ガスから二酸化炭素(CO2)のみを分離回収する設備を設置。回収したCO2を利活用する日本初CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)プラントという。CO2を野菜や藻類培養に利用する「炭素循環」も行っている。

再生可能エネルギーの発電・利用実績をブロックチェーンに記録し、電力が地産地消された証明として「資源循環証書」を発行

しかし、こうした活動によって生まれた環境価値は、誰が見ても正しいと認められる形で公開することが難しいのが課題という。そこで、Chaintopeが開発したブロックチェーン「Tapyrus」(タピルス)を用いて、誰もがその真正性を確認できる電子証書として公開する取り組みを開始する。環境価値を電子証書として公開することで、環境価値取引などの新しいビジネスの創造や、将来は地域通貨との連携による地域経済活性化につながることも見込まれるとしている。

chaintopeが佐賀市ごみ発電の環境価値をブロックチェーンで記録・電子証書化するシステムを開発
同取り組みは、第1段階として、佐賀市清掃工場でのCO2排出削減量の見える化、価値化から開始する。具体的には、清掃工場による再生可能エネルギー発電実績と公共施設での再生可能エネルギー電気供給サービス利用実績をブロックチェーンに記録し、佐賀市内にて電力が地産地消された証明として「資源循環証書」を発行する実証実験を行っていく。

またChaintopeは、資源循環証書の実証実験を足がかりに、将来的には、地域循環共生圏づくりにおける「炭素循環」「人の循環」「経済循環」の取り組みについてもTapyrusを利用した地域通貨の仕組みなどを使い、持続可能なまちづくりへの貢献を目指す。

「J-クレジット制度」との連携も視野

さらに、国家の新たな成長戦略として位置づけられたエネルギー・環境分野における「J-クレジット制度」との連携も視野に入れていく。J-クレジット制度は、再生可能エネルギー設備や省エネルギー機器の導入などによる、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度。同制度により創出されたクレジットは、低炭素社会実行計画の目標達成やカーボンオフセットなど、様々な用途に活用できる。

エンタープライズ向けブロックチェーン「Tapyrus」(タピルス)

今回の取り組みで活用するブロックチェーンTapyrusは、Chaintopeが独自に研究開発をしてきたエンタープライズ向けブロックチェーンおよび、最先端のブロックチェーン関連技術を統合的に利用できるシステム開発プラットフォーム。同社はTapyrusをオープンソースとして提供しており、ソースコードはGitHubで公開している。

Tapyrusは、誰でもネットワークに参加でき自由に分散台帳を閲覧できる透明性を持つパブリックチェーンでありながら、複数法人で共同運営するコンソーシアムの方針に合わせて、新しい記録を分散台帳に書き込む際のルールを設計できる。また、開発者はTapyrusプラットフォームの各種サービス(特許技術を含む)を利用し、ブロックチェーンの複雑な要素技術を意識することなく、安全かつ高信頼のアプリケーションを開発できるという。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:オープンソース / Open Source(用語)環境問題(用語)再生可能エネルギー(用語)J-クレジット
Tapyruschaintope日本(国・地域)

核融合技術で新エネルギー開発に取り組む「京都フュージョニアリング」が約1.2億円調達

核融合技術で新エネルギー開発に取り組む「京都フュージョニアリング」が約1.2億円調達

京都フュージョニアリング(KF)は1月20日、第三者割当増資による総額1億1600万円の資金調達を発表した。引受先は、Coral Capitalおよび個人投資家、創業メンバーなど。累計調達額は総額3億4400万円となった。

調達した資金は、市場展開力の強化と、人材の追加採用を中心に使用。先進的な研究成果の実用化と事業化を通じ、社会への貢献を進めていく。

2019年10月設立のKFは、京都大学エネルギー理工学研究所の小西哲之教授が中心となって開発した、核融合装置とエネルギー利用に関する事業を手掛けるエンジニアリング企業。日本発の核融合テクノロジーで新しいエネルギー産業を切り拓くことを目的としているという。

クリーンで持続的なエネルギーを生み出す核融合炉は、「地上の太陽」とも呼ばれ、世界をリードする研究開発が本邦で進められてきた。現在、2025年稼働を目指し、日本も参加する7極の国際共同プロジェクトにおいて「熱核融合実験炉」(ITER)の建設が進められ、核融合炉からのエネルギーの取り出しが現実味を帯びてきているという。

同時に、米・英・加などでは、より早期の核融合炉の実現を目的として、すでに複数のベンチャー企業が設立されており、2020年代の実証炉実現に向けた装置の開発・建設が加速しているとした。

KFでは、これら欧米の大学関連企業や国際共同で建設が進められている複数の核融合炉プロジェクトに対して、主要機器であるブランケットやダイバータ、ジャイロトロンなどを提供したり、プラントの設計を支援したりすることで、世界のエネルギー環境問題の根本的な解決に貢献する。

ブランケットは、核融合で生じた熱を炉外に取り出し、燃料となる三重水素を生産する装置。ダイバータは、核融合で生じたヘリウムなどの不純物を炉内から取り出す装置のこと。またジャイロトロンは、核融合炉の起動時にプラズマを発生させ、加熱し、電流を駆動する電磁波発生装置という。

核融合エネルギーは、今後爆発的に増加する途上国のエネルギー需要に応えつつ、高レベル放射性廃棄物が発生しないため、パリ協定の求める温室効果ガス削減に対応し得る技術として、近い将来大きく成長する可能性を持つ市場としている。

調達した資金は、これらの先進機器への研究開発を通じた市場展開力の強化と、海外営業人材およびエンジニア人材の追加採用を中心に使用する。さらに、これらの先進的な研究成果の実用化と事業化を通じて、社会への貢献を進めていく。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:エネルギー核融合(用語)環境問題(用語)京都フュージョニアリング資金調達(用語)日本(国・地域)

100%植物性・完全生分解性の素材を開発するアミカテラが資金調達、国内初の工場を熊本で6月稼働

100%植物性・完全生分解性の素材を開発するアミカテラが資金調達、熊本で国内初の第一工場を6月稼働

100%植物由来および完全生分解性を示す新素材「プラントファイバーセラミック」(PFC)を開発するアミカテラは1月20日、第三者割当増資による資金調達を発表した。引受先は、EEI4号イノベーション&インパクト投資事業組合、伊藤園、イノベーション創出投資事業有限責任組合(阿波製紙)、住友商事、ハウス食品グループ-SBIイノベーション投資事業有限責任組合など(50音順)。

これに伴い、2021年6月に国内初となる第一工場(熊本県益城町)稼働を開始し、PFC製品の開発・製造販売を推進する。さらに2022年1月には、第二工場(熊本県水俣市)の稼働も予定している。

アミカテラが製造するPFCは、「プラスチックによる環境汚染問題の解決」と「大量廃棄される植物残渣の有効活用」を目指して開発されたプラスチック代替素材。

PFCは植物繊維を主原料とし「100%植物由来」であるため、「自然環境下で100%生分解する」特性を備え、「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」両面の特性を持つ稀有な素材という。

また、植物繊維であれば原料となりうるため、植物残渣の活用や間伐材、製材残渣、放置竹林問題などへの貢献も可能。PFCの製造を先行開始している台湾では、すでに大手コーヒーチェーンやコンビニエンスストアなどで多数の採用実績があるそうだ。

アミカテラによると、日本工場における将来的な事業スキームは、「廃棄物完全ゼロ」への挑戦という。製造の過程では、地域の農業廃棄物や、食品・飲料メーカーなどから出る残渣などを引き取り、原料として活用。製品の使用後は、回収し、粉砕・再製造するという一貫した自然環境のリサイクル活動を目指す。

これは、2015年9月の国連サミットで採択された「SDGs」(持続可能な開発目標)17の目標の達成に向けて、また菅政権が掲げる「2050年カーボンニュートラル」への挑戦に向けた取り組みとしても貢献につながると考えているという。

関連領域における豊富なリソースを有する事業会社と連携することで、PFCならではの強みを生かし、循環型社会の実現に向けた新たなビジネスモデル構築を推進していくとしている。

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新たな景気刺激法案、新エネルギー政策に352億ドル

TechCrunchが入手した要約文書によると、議会で承認された新たな景気刺激策案には、エネルギー政策のための約352億ドル(約3兆6420億円)が含まれている。

「これはおそらくこの10年間で最大のエネルギー法案です」と語るのは、カリフォルニア大学サンタバーバラ校ブレン環境科学・マネジメント研究科で助教授を務める政策アナリスト、Leah Stokes(リア・ストークス)博士だ。

支出は2020年エネルギー法と環境エネルギー法に分かれており、どちらも大規模な技術イニシアチブのための新規資金を含む。

「『2020年エネルギー法』は、超党派的な二院制によるエネルギー革新パッケージであり、DOEのポートフォリオ全体で350億ドルを超えるRD&D活動を認め、市場への新技術の進出に不可欠なプログラムを強化または創設する」と同法案の概要文書には記されている。

この支出パッケージには、新しい技術イニシアチブのための41億ドル(約4240億円)以上が盛り込まれている。

最大の恩恵を受けるのは、太陽光発電、新しい輸送技術、エネルギー効率化技術だ。

モジュール、集光型太陽電池技術、新しい太陽光発電技術、太陽電池の製造とリサイクル技術を拡大するための取り組みなど、新規太陽電池技術に15億ドル(約1550億円)が割り当てられている。また、輸送技術のために26億ドル(約2690億円)が確保され、エネルギー効率化プログラムと気象改善プログラムは気象改善支援プログラムの17億ドルの再承認により引き続き支援される形だ。

エネルギーグリッド技術は、短期、長期、季節的および輸送用エネルギー貯蔵技術を支援するための10億8000万ドル(約1118億円)と、スマートユーティリティおよびエネルギー配給技術を支援するための23億6000万ドル(約2442億円)により、34億4000万ドル(約3560億円)の増加を得た。

さらに6億2500万ドル(約647億円)が、陸上および洋上風力技術のための新しい研究、開発、商業化に充てられる。地熱技術開発には8億5000万ドル(約880億円)、海洋エネルギーと水力発電技術には9億3300万ドル(約965億円)が割り当てられている。水力発電機のアップグレードには1億6000万ドル(約166億円)、既存の連邦インフラのアップグレードとして連邦エネルギー管理プログラムに1億8000万ドル(約186億円)が充てられている。

脱炭素化が技術的に最も困難な産業であり、確実な資金とイノベーションの推進に向けて、鉄、鉄鋼、アルミニウム、セメント、化学のような業界のステークホルダー、また脱炭素化を目指す海運、航空、長距離輸送など輸送関連企業に5億ドル(約517億円)を確保している。

報告書の概要によると、2020年エネルギー法はこうした重要な投資を今行うことで「我が国の温室効果ガス排出量を削減し、米国に高賃金の雇用をもたらし、これらの技術を今後何年にもわたって海外の成長市場に輸出することを可能にする」とされている。

すでに広く商業的に支持されている次世代技術が後押しを受けている分野であるとすれば、まだ商業規模での実用性が実証されていない技術の商業化を支援するためには、さらに多額の資金が必要となる。

その中には炭素回収利用および貯蔵の技術が含まれており、産業やエネルギー分野での展開に向けた支援が62億ドルとなる見込みだ。連邦議会はまた、大規模な商業用二酸化炭素除去プロジェクトのための4億4700万ドル(約463億円)の研究開発プログラムを承認しており、年間少なくとも5万トンの二酸化炭素を回収する施設における直接空気回収の競合に1億ドル(約103億円)の研究助成金が提供される。

既存の原子力発電所の近代化と先進的な原子炉の開発に66億ドル(約6830億円)の資金を提供したおかげで、原子力技術も全盛期を迎えている。また、基礎研究と応用研究への投資を掘り起こしたことで、新興の溶融技術産業は利用可能な資金にさらに47億ドル(約4860億円)を加えることができる。

これらの支出には、先進テクノロジーを排除しないための資金も含まれている。29億ドル(約3000億円)の予算が割り当てられたARPA-Eは、インターネットに関する技術の開発を支援してきたDARPAプログラムに似た構造の政府のエネルギー高度研究機関である。また、多くの技術を商業化したNASAの戦略に倣い、国立研究所のパートナーシップを推進するOffice of Technology Transitions(OTT)を設置し、空軍と国防総省が広く効果的に利用しているマイルストーンベースのプロジェクトを採用している。

新エネルギー法案には、太陽光、風力、地熱による25ギガワットの公共発電を2025年までに達成するという内務省への指令が明記されている。

「私の理解では、彼らは連邦政府が太陽光発電と風力発電に何をしてきたかに目を向け、他の技術にどうすればそれが活用できるか検討しようとしています」とストークス氏は語る。

彼女にとって、景気刺激策の他の部分も気候の観点から同じように重要だ。地球温暖化と気候変動の大きな原因となっているハイドロフルオロカーボンの使用を2035年まで段階的に削減するという目標が掲げられている。冷蔵やその他の用途におけるこれらの化学物質の使用を世界的に段階的に削減することで、温暖化を0.5℃抑えることができる。これは大きな取り決めだ。

ストークス氏は、期間延長が比較的短い一部の税額控除の期間や、電気自動車に対する税額控除がないことに異議を唱えた。「EVの税額控除は、導入に不可欠な消費者向けのメリットになります。EVと内燃エンジン車の均衡を十分に保てたはずです」とストークス氏は述べている。

景気刺激策のこの部分に組み込まれたものはすべて気候活動家にとって喜ばしいニュースではあるものの、ストークス氏は地球規模の気候変動への懸念について楽観的になるべきではないと指摘する。

「このパッケージは気候危機を完全に解決するものではありません」とストークス氏は続ける。「来年、共和党が主導権を握り、新しく就任する議長はそこまで寛大ではないかもしれません。ここでの達成を祝い、称賛することも大切ですが、何が欠けているかを認識する必要があります。それは多く存在します」。

関連記事:Klimaは一般消費者が二酸化炭素排出量を簡単に把握できるカーボンオフセットアプリをリリース

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:環境問題 アメリカ

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

Klimaは一般消費者が二酸化炭素排出量を簡単に把握できるカーボンオフセットアプリをリリース

Klima(クリマ)は消費者が二酸化炭素排出量を把握し、相殺(オフセット)することを支援するアプリだ。共同創業者であるAndreas Pursian(アンドレア・プルシアン)、Markus Gilles(マークス・ジル)、Jonas Brandau(ジョナ・ブランドー)の3氏は、最初に起業家としてHyperで成功を収めた。

彼らが開発したモバイル雑誌出版ツールキットは2017年にMicに売却されたが、それは10年近く前から始まった一連のコラボレーションの最新の成果にすぎなかった。

Klimaの最高経営責任者であるジル氏は2020年初めのインタビューで「私たちはテクノロジーや、社会を改善するためにできるあらゆる素晴らしいことに魅了されました」と述べた。

2020年12月に立ち上げられたKlimaは、ある意味その努力の集大成だ。

ジル氏とプルシアン氏は最初大学で出会い、後にブランドー氏も合流し、最初のアプリであるPinoを立ち上げた。これは、ドイツのAngela Merkel(アンゲラ・メルケル)首相もプラットフォームの初期の寄稿者として参加した、モバイルベースのビデオ論説ページだ。

政治やメディアとのつながりはMicに売却された出版プラットフォームHyper、そしてKlimaでも継続された。このアプリで3人の共同創業者は、メディアに精通した強みを消費者の行動の変化とオフセットにより二酸化炭素排出量を削減および中和させる目的に利用した。

「私たちが社会を再建している間、私たちにはオフセットという救済手段が与えられ、時間を稼ぐことができます」とジル氏はいう。「今後10年間で50%の排出削減を達成する必要がありますが、これは非常に困難な作業です。あらゆる気候変動の解決策をただちに駆使する必要があります」。

Klimaは他のアプリと同様に、排出量を削減する重要な個人的なステップの1つが食事だと考えている。クルマを自転車や電気自動車に置き換えたり、ファストファッションを減らして古着を購入したりすることもインパクトがある。

Klimaのアプリには二酸化炭素計算機が含まれており、カーボンフットプリントを測定し、ユーザーはパーソナライズされた月額サブスクリプションをカーボンオフセットに使える。同社のアプリは、排出量を削減するためのライフスタイルのヒントも提供する。最後にこのアプリはソーシャルシェアリング機能も提供し、気候変動の戦士の候補が温室効果ガスの排出と気候変動を減らすための戦いへ参加することを可能にする。

「私たちはいま、特別な状況に置かれています」とジル氏はいう。「私たちが創業者として行っていること。私たちは、パンデミックだからといって気候危機が一時停止しているわけではないことを知っています。私たちは、パンデミックが終わったときに、なおそこにいるために十分な資金を調達しました」。

同社にはWoogaの創業者であるJens Begemann(イェンス・ベグマン)氏、Blinkistの共同創業者であるNiklas Jansen(ニクラス・ジャンセン)氏、Pitchの創業者であるChristian Reber(クリスチャン・レーバー)氏、そしてe.ventures、HV Holtzbrinck Ventures、468Capitalなどの機関投資家が投資している。

これまでにKlimaは580万ドル(約6億円)を調達した。同社はユーザーに3種類のオフセットを提供している。1つ目は、植樹プロジェクトのような自然の解決策。2つ目は、太陽光発電設備のような技術ベースの解決策。3つ目は、薪ストーブを家庭用の電気ストーブまたはガスストーブに置き換えるなどの社会的解決策だ。

「これまでのところ、このアプリは大きく前進しています」とジル氏は述べた。同社のアプリは現在、米国、カナダ、豪州、ニュージーランドを含む18カ国で公開されており、現在市場に出回っている気候オフセットアプリの中で最大のユーザーベースを持っていると同社は語った。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Klimaカーボンオフセット環境問題

画像クレジット:Klima

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(翻訳:Mizoguchi

アップル共同創業者ウォズニアック氏がエネルギー効率化投資を支援するブロックチェーン基盤サービス開始

アップル共同創業者ウォズニアック氏がエネルギー効率化投資を支援するブロックチェーン基盤サービス開始

Apple(アップル)の共同創業者であるSteve Wozniak(スティーブ・ウォズニアック)氏は、マルタ島において新会社EFFORCE(エフォース)を共同設立し、エネルギー効率化プロジェクトへの投資に特化したブロックチェーン基盤プラットフォーム「EFFORCE」を開始した。

アップル共同創業者ウォズニアック氏がエネルギー効率化投資を支援するブロックチェーン基盤サービス開始
EFFORCEは、ブロックチェーンと暗号資産(仮想通貨)WOZXを活用したウェブプラットフォームを介して、投資家が世界中のエネルギー効率化プロジェクトに対して投資・支援できるサービス。

同社は12月3日、WOZXが暗号資産取引所HBTC.COMに上場をはたし、上場後わずか13分でその時価総額を上場価格の10倍となる9億5000万ドル(988億円相当)に達したことを発表した。また、新たに12月7日にも取引所Bithumb GlobalでWOZXが上場をはたしたことを報告している。ちなみに両取引所におけるWOZXの取引は、いずれもステーブルコインUSDTでのみ売買可能。

企業がコストをかけずにエネルギー効率化対策に取り組めるようにする

EFFORCEは、企業がコストをかけずにエネルギー効率化対策に取り組めるようにし、その節約により生まれた流動性をより他の重要な業務に投資できるようにする。EFFORCEによって、エネルギー効率化市場は、小規模な個人投資家から大規模な投資機関まで国境を問わず参加可能となるという。投資家は、WOZXトークンにより譲渡可能になったエネルギー節約分を収益化できるとしている。

同社によると、エネルギー効率化対策における事業は、金融や規制上の課題が複雑に絡み合い資金調達が難しいことが課題となっており、経済成長のブレーキになっているという。

Wozniak氏がAppleを立ち上げた当初の目標は、より小さくて効率の良い機械(コンピューター)を作り、誰もが手に入れられるようにすることだったという。Wozniak氏はEFFORCEへの参加を通じて、引き続き効率性に焦点をあてて、エネルギー改善へのビジネスアクセスを広げ、エネルギー効率化投資への一般の参加を拡大させることを目標とするそうだ。

「世界のエネルギー消費量とCO2排出量は指数関数的に増加し、気候変動と環境への深刻な影響をもたらしている。私たちは習慣を変えることなく、エネルギー使用量を改善し、エネルギー消費量を減らせる。より多くのエネルギーを改善するだけで環境を救える」とWozniak氏。「私たちは、世界中のエネルギー効率化プロジェクトに誰もが参加し、資金的な利益を得るとともに、有意義な環境変化を生み出せる最初の分散型プラットフォームを目指し、EFFORCEを立ち上げた」と語っている。

エネルギー効率化対策に立ち向かう多くの中小企業は苦戦する中、EFFORCEのプロジェクトリーダーで共同設立者のJacopo Visetti氏は「EFFORCEを利用することで、事業主はエネルギー改善プロジェクトをウェブ上で安全に登録し、世界中の投資家から資金を確保できる。そうすることで、事業主はインフラ整備や雇用など、他の重要なプロジェクトに使える資金を増やせる」と発言している。

EFFORCEにより、資金調達やプロジェクトの実施プロセスを合理化

現在、エネルギー効率化プロジェクトの市場規模は、2500億ドル(26兆円相当)という驚異的な規模に達しているという。市場は民間企業が貢献しているだけでなく、様々な政府もエネルギー効率化に向け多額の投資・資金提供を行っている。しかし、国際エネルギー機関(IEA)の「効率的な世界シナリオ」の達成には、このセクターの投資規模を2025年までに2倍以上の5800億ドル(60兆円相当)に拡大させる必要があるという。

その実現において、エネルギーサービス企業(ESCO)と呼ばれる投資家グループは、エネルギー効率改善に向け多額の資金を用意する必要があるものの、従来の銀行チャネルに頼ることができないケースが少なくないという。銀行には、投資収益率を適切に評価する技術的な専門知識が不足しているためだ。

対照的に、EFFORCEのプラットフォームは市場を民主化し、それを補っていく。EFFORCEを使用することで、資金調達やプロジェクトの実施プロセスを合理化する。ESCO企業は、エネルギー効率化を目的としたプロジェクトをEFFORCEに登録し、それをEFFORCEチームが検証していく。

投資の必要性評価、予想されるリターンの計算など記載したエネルギー性能契約書(EPC)の作成

EFFORCEは、投資の必要性の評価、予想されるリターンの計算、企業と投資家のための節約量とリターンの期間を詳細に記載したエネルギー性能契約書(EPC)の作成など、企業と共にプロジェクトを開発する。その後に、プラットフォームは、クラウドファンディングに向けてプロジェクトをリストアップする。プラットフォームの参加者は、WOZXを使ってプロジェクトを購入できる。

EFFORCEは、ブロックチェーンに接続されたスマートメーターを通じて、これらのプロジェクトの省エネ性能を測定する。節約によって蓄積されたデータは、投資家が使用または販売できる投資家節約エネルギークレジットとしてプロフィールに利益として分配される仕組みを備えるという。

なお、EFFORCEについては同社よりホワイトペーパーが公開されている。詳細については、そちらを参照されたし。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:環境問題(用語)再生可能エネルギー(用語)steve wozniak

バイデン次期大統領の気候変動対策はグリーンニューディールに依存しない

グリーンニューディールは、多くの民主党議員が推し進めている気候関連イニシアチブの広範な決議案である。しかしそれがなくとも、Joe Biden(ジョー・バイデン)次期大統領には、インフラや景気刺激策の一環として、意欲的なエネルギー転換計画を進める多くの機会があるだろう。

専門家、投資家、次期大統領のアドバイザーによると、共和党が上院の支配を維持することができたとしても、議会が初仕事として取り組むことになるインフラや景気刺激策の法案に、気候に優しい政策を組み入れるチャンスはいくらかあるようだ。

これは、地球規模の気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量を削減する技術に注力している既存企業や相次ぐスタートアップにとっては朗報だ。そして、Mitt Romney(ミット・ロムニー)氏のような穏健派の共和党員でさえ頑なな態度を示す気候問題にも関わらず、前述のような変化が起きる可能性がある。

11月、ロムニー氏は報道番組「Meet the Press(ミート・ザ・プレス)」で、「多くの人が、保守的な原則が依然として我が国の世論の大部分を占めていると言っていることは知っています」と述べ、「私は、皆さんがグリーンニューディール政策の可決を望んでいるとは思いません。また、皆さんが石炭、石油、ガスの撤廃を望んでいるとは思っていませんし、すべての人へのメディケアや増税など、経済を減速させる政策には興味がないと思っています」と続けた。

既に、現在の市況により、石油、ガス、エネルギーの大手企業の中には、再生可能エネルギーへの移行を余儀なくされている企業もある。これらの企業が米国内の製油所の閉鎖を始めると、これらの雇用に対する代替案の整備へのプレッシャーを議会はますます強く感じることになるだろう。

例えば、11月初めにShell(シェル)はルイジアナ州にあるプラントを閉鎖し、約650人の従業員を解雇すると発表した。閉鎖は主に新型コロナウイルス感染症のパンデミックによってもたらされた石油需要の減少によるものだが、オランダに本社を置くシェルも、英国に本社を置く同業のBPも、化石燃料の消費は2019年にピークを迎え長期的な減少に向かうと考えている

米大手の石油・ガス企業といえども、新型コロナウイルス感染症の経済的影響や世界規模の化石燃料離れに対する免疫を持ち合わせてはいなかった。Chevron(シェブロン)とExxonMobil(エクソンモービル)の大手2社の株価は、石油業界の需要の急激な減少と他の下げ要因が考慮され、この1年で下落している

一方、米国の大手電力会社の中には、化石燃料を使用した発電の段階的な廃止に取り組んでいるところもある

再生可能エネルギーへの移行は、少なくともここ米国では、政府の指導があまりなくても、すでに市場が後押しする形で進行している。このような背景から、問題は、政府が再生可能エネルギーへの移行を支援すべきかどうかではなく、米国の雇用を救うためにどれだけ早く刺激策を実行できるかということである。

次期大統領のアドバイザーも、「[近いうちに]出てくるであろう本当に重要な気候関連の政策の多くは、実際には再生可能エネルギーに関連するものではないだろう」と語っている。

では、景気刺激策はどのようなものになるのだろうか。どのように配分され、何を財源とするのだろうか。

画像クレジット:Artem_Egorov/Getty Images

 

景気刺激、新型コロナウイルス感染症、そして気候変動

バイデン次期大統領は、次期政権の最初の優先事項をすでに詳しく述べている。既に23万8000人(記事執筆時点)を超える米国人が死亡した新型コロナウイルス感染症パンデミックの対策が何よりも優先されるが、パンデミックへの対応によって引き起こされた景気低迷への対応もすぐに後に続くだろう。

アナリストやアドバイザーによると、気候に優しいイニシアチブは、その取り組みの過程で大きな存在感を示し、化石燃料ビジネスの老舗企業だけでなく、新しいテクノロジー企業にも恩恵をもたらす可能性があるという。

今年の初め、バイデン陣営のアドバイザーは「問題を再燃させることなく私たちが確実に前に進む絶好の機会となる計画に資金を投入していく」と語っている。

手にした何兆ドルもの資金がどのように使われるのかを推測するには、短期、中期、長期の目標について考えると良いだろう。

短期的には、できるだけ早く始められる「shovel-ready(ショベル・レディ)な」プロジェクトに力が注がれるだろう。例えば、環境のための改築や建物の改修、水道設備や電力網の修理とアップグレード、電気自動車の製造に対するインセンティブを増やすこと、環境修復や埋め戻しプロジェクトのための資金を増やす計画などのイニシアチブだ。

これらの支出は、いくつかの試算によると総額7500億ドル(約78兆円)に達する可能性があり、国内経済に長期的な利益をもたらす可能性のある産業や製造業を中心に米国人の雇用を回復させるのに役立つだろう。低所得者の農山村部や都市部のコミュニティを支援するために全米各地に設けられた政府指定のオポチュニティ・ゾーンを対象とした支出については特にそう言える。

これらの取り組みにオポチュニティ・ゾーンを組み込めば、資金をさらに迅速に活用する機会となる。また、テック要素を含むインフラプロジェクトの優先順位を高く定める方法があれば、技術的なリスクを克服してきたスタートアップにとって、より望ましい環境が整う。

「政策、特に連邦政府の政策を立案するときはいつでも、達成したい目標に適したインセンティブを設けなければならない」とバイデン氏のアドバイザーは述べる。

中長期的な目標は、より新しいテクノロジーに依存する場合があるため、計画や開発に時間がかかる可能性が高く、また、連邦政府の資金を受けて建設を開始する以前に、自治体や州のレベルで計画手続きを踏まなければならない。

さまざまな業種の労働市場に向けた労働力を準備するために、これらのプロジェクトには、開発、および労働者の訓練や再教育のための資金として、さらに600億ドル(約6兆2000億円)が費やされると予想される。

義務ではなくインセンティブによる促進

バイデン政権の気候政策が直面する最大のリスクの1つは、トランプ政権下で任命された、ますます保守層に共感的になる司法から法的な異議申し立て受ける可能性があることだ。

そのような異議申し立てにより、バイデンチームは、規制の鞭よりもビジネスに優しい飴を採用することの経済的利益を強調せざるを得なくなるかもしれない。

次期大統領のアドバイザーは、「可能な限り、市場が自ら解決策を見いだし、いつでもまず、義務化ではなくインセンティブに委ねるのが望ましい」と述べた。

今週のニュースで報じられたように、Pfizer(ファイザー)が新型コロナウイルス感染症のワクチンについて良好な結果を得たことから、現政権下で進行中のワクチン開発計画の中に有望なモデルがいくつかあることが判明した。

ファイザーは保健福祉省の「ワープ・スピード作戦」には参加していないが、同社は、ワクチンの市場を保証する20億ドル(約2100億円)の契約を政府と結んだ

コネチカット州のクリス・マーフィー上院議員が言及しているような官民パートナーシップは、特に石炭からの脱却によって最も打撃を受けるであろう地域を中心に、気候変動の分野でも採用される可能性がある。

特にダコタ州、モンタナ州、ウェストバージニア州、ワイオミング州など、化石燃料からの転換によって最も打撃を受けるであろう地域では、その支出保証の一部は、放棄された天然ガスの井戸や石炭採掘事業の環境修復という形で提供されるかもしれない。その中には、過去数十年間にエンジニアリング会社や石油会社が培ってきたものと同様のスキルを要する、新しい地熱エンジニアリングプロジェクトの開発によるものもあるだろう。

また、水素をベースとした経済にも明るい兆しがある。水素をベースとした経済は、国内にある石油やガスのインフラや専門知識を活用して、よりクリーンなエネルギーの未来へと移行することができる(注:必ずしもクリーンなエネルギーの未来とは限らないが、以前よりもクリーンになることは確かだ)。

既に日本のような国では、石油を水素燃料に置き換えるための基盤の構築が進められており、このようなインセンティブに基づいたプログラムや官民パートナーシップは、いくつかの業界のスタートアップにとっても大きな後押しとなるだろう。

Electrical transmission grid and power plant

画像クレジット:Cameron Davidson/Getty Images

 

富を分かち合う(農山村部編)

バイデン政権が制定する政策は、経済的機会に広く取り組む必要があり、選挙キャンペーン中に提案された計画の多くは、その必要を満たすものだった。政権移行に向けたウェブサイトによると、なかでも重要な提案の一つは、「取り残された地域社会の優良な組合員や中産階級の雇用を創出し、汚染の影響を受ける地域社会の過ちを正し、農山村部、都市部、部族など、私たちの偉大な国家全体から最高のアイデアを打ち出す」というものであった。

電力網や公益事業のインフラに早期に重点を置くことで、米国全土に雇用創出の大きな機会が生まれ、テクノロジー企業にとっても後押しとなる可能性がある。

エネルギーと気候に焦点を当てたベンチャーキャピタル、Congruent Ventures(コングレント・ベンチャーズ)の共同設立者であるAbe Yokell(エイブ・ヨーケル)氏は、「この国の電力インフラは古く、老朽化しており、安全ではない。インフラの観点から見ると、送配電は切実にアップグレードを必要としているのに、長い間、十分な資金が投入されてこなかった。そしてそれは、再生可能エネルギーを米国全土に普及させることと、あらゆるものの電化を実現することに直結している」と述べている。

電気インフラの再生と、電力や水道の新しいブロードバンド機能や監視技術を組み合わせることは、Verizon(ベライゾン、TechCrunchの親会社)や他のネットワーク企業に大きな利益をもたらすだろう。さらに、公益事業会社にとってはありがたいことに、料金を調整する方法が整備されることになる。

インフラをアップグレードするこのようなプロジェクトは、コストがかさんでますます使い物にならなくなっている石炭関連資産を再利用する方法を見つけるのにも役立つ。

ヨーケル氏は次のように語る。「石炭を燃やす意味はもうない。資金がないにもかかわらず、発電所は責務上の理由から石炭を燃やし続けているが、現役の炭鉱でさえも閉鎖したいとみんな思っている」。

ヨーケル氏によると、これらの炭鉱を廃止し、エネルギー貯蔵を使用して分散型エネルギーグリッドのノードとして再利用することができれば、石炭プラントが以前行っていたように、電気容量の平滑化を行うことができ「大勝利」となる。エネルギー貯蔵の導入は、かつてはコストの問題だった。しかし「今では立地の問題だ」と同氏は言う。

より新しい効率的なテクノロジーを使って古い水力発電資産で再発電することは、「ショベル・レディ」プロジェクトで再生事業を大きく進展させるもう一つの方法であり、スタートアップがこの動きの恩恵を受けることができる分野でもある。それはまた、農山村部のコミュニティに雇用をもたらすことにもつながる。

インフラへの投資は、都市部でも農山村部でも有望だが、刺激策の効果はそれだけでは終らない。

農山村地域には、バイデン政権移行チームが指摘するように「気候に配慮した農業や、放棄された油田や天然ガス田を埋め戻したり、放棄された石炭、石材、およびウランの鉱山を再生利用したりする25万人分の雇用を含む回復と保護の分野」でビジネスチャンスがある。また、石油産業の労働者にとっては、新しく成長しているテクノロジーを駆使した地熱エネルギー産業で職を得る大きなチャンスがある

トランプ政権下で急増した農業助成金は、気候により一層の焦点を当てた形で継続される可能性がある。トランプ政権が2020年の間に農家に配る予定の460億ドル(約4兆8000億円)と同程度の補助金が、単にそのまま農家に支給されるのではなく、「カーボンファーミング(炭素貯留農法)」への補助金という形で支払われると予測される。炭素貯留農法への補助金を約束して農場の票を取り込むことは、炭素価格(政府関係者の間ではほとんど失敗している)をめぐる議論を再開するきっかけになるかもしれない。炭素貯留農法以外にも、生体材料、コーティング、さらには食品などに利用される合成生物学の急速な技術革新により、米国中西部の大規模なバイオ燃料発酵槽や原材料を活用する新たなバイオ製造業が誕生する可能性がある。

さらに、水圧破砕法の本格化や石油価格の高騰に後押しされて鉄道インフラが拡大すれば、全米への鉄道輸送が可能な他の分野の製造業を発展させる機会と可能性が広がる。

Volkswagen(フォルクスワーゲン)は、2019年11月13日水曜日、電気自動車計画の北米拠点となるテネシー州で、8億ドル(約830億円)規模の工場拡張に着工した。画像クレジット:Volkswagen

 

富を分かち合う(都市編)

地方経済活性化に有効な支出策は、米国の大都市にも同様に適用できる。電気自動車を中心としたインセンティブや、車両のアップグレードを義務付ける連邦政府の指令を通じて自動車産業を活性化させる動きは、自動車メーカーと関連OEMメーカーにとって絶大な効果があるだろう。

都市インフラのための官民パートナーシップは、まずアップグレードの計画と管理のために確保された資金から支援を受けることができる。そうすることで、全米のスタートアップによる新技術の採用が促進されると同時に、その実装の過程で相当数の新たな雇用が創出される可能性がある。

都市経済の再活性化と気候政策が交錯しうる大きな分野の1つは、耐気候構造化、エネルギー効率の高い電化製品の設置、建物の改修といった、比較的地味な分野だ。

不動産管理会社Jonathan Rose Companies(ジョナサン・ローズ・カンパニーズ)の環境影響担当ディレクター、Lauren Zullo(ローレン・ズーロ)氏は次のように述べている。「どの地方自治体も、グリーン経済や低炭素経済への移行に高い関心を寄せており、都市は民間の不動産部門と提携する方法を本気で模索している。建築物がグリーン経済とは無関係ではいられないことが分かっているためだ。そして、地元の建物を改修するあらゆる仕事は、そのまま地元の経済活動になる」。

グリーンレトロフィット(既存の建築物を環境への配慮に基づいて改修すること)や分散型再生可能エネルギーの導入に資金を投入することは、地域経済、特に気候変動の最前線にいるコミュニティを優先的に支援する地域経済にとって、大きな追い風となる。

ズーロ氏は、オバマ政権の第1期に可決された2009年の米国復興・再投資法(American Recovery and Reinvestment Act of 2009)に言及し、次のように語った。「多くの投資が復興法に基づいてこのような形で行われてきた。多くの[資金]は、低所得者向けの住宅や手頃な価格の住宅に割り当てられた低所得者向けの耐気候構造化を中心に支出された。[これらの]資金により、エネルギー消費量を30%から50%削減することができ、光熱費の節約が達成できたことは、対象のコミュニティに変革をもたらした」。

これらのプログラムの重要性について、ズーロ氏は、さらに次のように説明した。「低所得者は、公共料金やエネルギーコストの負担が不釣り合いに大きい。低所得者層のコミュニティに割り当てる、または彼らを対象にする形で提供できる、あらゆる種類の省エネの機会は、単に二酸化炭素排出量だけでなく、それらの低所得者層のコミュニティの生活や成功にも影響を与える」。

財源の確保

このように控えめな法案でさえ、景気刺激策の財源は何か、どのように配分されるのかという質問にバイデン政権が答えることができなければ、議会を通過させることはできないだろう。

ツイートの中で、政治評論家のMatthew Yglesias(マシュー・イグレシアス)氏は、国には「アイスクリームパーティーを開く余裕がある」、つまり、共和党は減税を続け、それと同時に政府は景気刺激策への支出を続けることができる、と述べた。

「[金利]は非常に低いのです。国は、我々はいくつかの有望な事業に投資し、減税で『相殺』するアイスクリームのオプションを買う余裕があります」とイグレシアス氏はツイートしている。

バイデンのアジェンダには「この有望な事業に投資し、富裕層への課税によってそれを回収しよう」というようなもので溢れています。

しかし、金利は非常に低いのです。国は、我々はいくつかの有望な事業に投資し、減税で「相殺」するアイスクリームのオプションを買う余裕があります。

-Matthew Yglesias (@mattyglesias)2020年11月10日

大恐慌の初頭にHerbert Hoover(ハーバート・フーバー)政権が設立した復興金融公社(Reconstruction Finance Corporation、RFC)のように、議会は、資金を分配するための組織を設置することもできるだろう。復興金融公社は、Franklin Delano Roosevelt(フランクリン・デラノ・ルーズベルト)政権下で拡大され、破綻の危機にある金融機関や農場、企業などに資金を分配することができるようになった。

この制度自体が成功だったかどうかは定かではないが、RFCは、連邦預金保険公社や関連する商品金融公社(RFCとは異なり、現存する)とともに、1940年代に米国が大恐慌から脱却し、世界が戦争に巻き込まれる中で製造業を促進するための基礎を築いた。

現在まで長年にわたり存続している商品金融公社は、政府が設立したいと考えているインフラストラクチャ金融公社のモデルになるかもしれない。

一部の投資家はこのアイデアを支持している。インフラ分野のある投資家はこう語る。「これは、州、地方自治体、または民間企業に資金を渡し、地方債や通行料で賄うことができる近代的なインフラプロジェクトを提案している事業体への多額の補助金付き融資を、州、地方自治体、または民間企業レベルで引き受けられるようにするということだ。これにより、インフラへの投資を希望し、関連する技術的な要件を有する可能性があるどの事業でも融資が受けられる環境が整う」。

一部の投資家は、インフラ銀行を通じた融資から得られる資金を産業のリショアリング(海外に移した生産拠点を自国内に戻すこと)に充て、企業からの潜在的な税収で融資コストの一部を相殺することを提案した。このような施策の中には、融資が地元の金融機関を通じて行われるようになれば、さらなる経済的恩恵をもたらすものもあるだろう。

都市インフラを中心に投資するベンチャーキャピタルファンドUrban.us(アーバン・ドット・アス)のマネージングパートナーであるMark Paris(マーク・パリス)氏は、「これらの資金を提供するための手段をどうするか。実は、既存のアーキテクチャが使える。それは地方債市場だ」。

インフラの答え

バイデン政権は、トランプ政権の気候変動政策の流れを反転させるための手段には事欠かないが、これらの連邦政策の変更の多くは法廷論争に発展する可能性が高い。

David Roberts(デヴィッド・ロバーツ)氏はVox(ヴォックス)の記事の中で、バイデン氏が米国経済の脱炭素化に向けた道筋に沿って取ることができる直接的な政策のいくつかについて、非常にわかりやすく説明している。それらには、トランプ大統領が取り消しまたは縮小した125を超える気候・環境規制を復元すること、環境保護庁と協力してオバマ時代のクリーンパワープラン(電力事業者向けの二酸化炭素排出削減に関する政策)の拡大版を新しく策定すること、運輸省による新しい燃費基準の開発を推進すること、そしてカリフォルニア州独自の非常に積極的な車両基準を支持することが含まれる。

また、バイデン氏は、投資のための金融モデルに気候リスクを織り込むよう金融市場を促すことにより、気候に優しいビジネスへの投資や化石燃料からの撤退をさらに促進できる、とロバーツ氏は指摘する

米国最大の金融サービス機関のいくつかは、すでにそのような取り組みを行っており、石油・ガス会社は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で株価が下落し、需要が急落する中、再生可能燃料や無公害燃料への移行の必要性と格闘している。

昨年Mother Jones(マザー・ジョーンズ)氏が示唆したように、トランプ政権が移民を国家安全保障上の緊急事態と宣言したのと同様に、バイデン政権が気候変動を国家安全保障上の緊急事態と宣言することもあり得る。そうなれば、バイデン氏は経済を再構築し、産業政策に直接影響を与える広範な権限を持つことになる。

国家気候緊急事態を宣言すれば、バイデン氏は次期大統領のエネルギー計画を構成するインフラ構想の多くを実現するために必要な権限を手にすることになるが、それを支持する国民の信認が得られるとは限らない。

その一歩を踏み出す前に、バイデン氏は、まず立法面で手を尽くそうとするかもしれない。ねじれ状態にある議会では、それはインフラ、雇用、産業インセンティブに焦点を当てることを意味する。

バイデン氏は9月の演説で「気候変動の影響は選択できません。それは党派的な現象ではないからです。それは科学です。私たちの対応も同じでなければなりません。科学に基づいて、共に行動する。全員で取り組むことが必要です」と述べた。

そして次のように続けた。「これらは雇用を創出し、気候変動を緩和し、遅くとも2050年までの排出実質ゼロを軌道に乗せるための具体的で実行可能な政策です。インフラに投資して、それをより強く、より回復力のあるものにすると同時に、気候変動の根本原因に取り組むことができます」。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ジョー・バイデン 環境問題

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(翻訳:Dragonfly)

石油由来樹脂・合成紙の使用量を大きく削減可能な新素材「LIMEX」開発のTBMが20.6億円を調達

石油由来樹脂・合成紙の使用量を大きく削減可能な新素材「LIMEX」開発のTBMが20.6億円を調達

TBMは11月24日、第三者割当増資として、20.6億円の資金調達を実施したと発表した。

引受先は、アデランス、島精機製作所、Spotlight 1号(日本テレビ放送網、博報堂グループのquantumによる共同出資)、摂津倉庫、DCMホールディングス、電通グループ、日本コルマー、薬王堂、ヨドバシホールディングスなど(五十音順)。

今回の第三者割当増資の目的は、循環型社会の実現に向けた事業の発展を目指し、石灰石など無機物を主原料とするLIMEX(ライメックス)素材や、再生材料を50%以上含む資源循環を促進する素材「CirculeX」といった環境配慮素材の用途拡大、資源循環を実現するサプライチェーンの強化。関連領域における豊富なリソースを有する事業会社と連携することで、シナジーを創出し、資源循環のシステム構築を進める。

具体的には、同社の環境配慮素材を活用したパッケージなど製品の共同開発や導入、店頭など販売チャネルにおける販売拡大、市場における弊社素材の認知拡大のためのマーケティング、回収・再生に向けたサプライチェーンの構築などにおいて連携を進める。

LIMEXは、炭酸カルシウムなど無機物を50%以上含む、無機フィラー分散系の複合素材。日本でも自給自足可能で枯渇リスクの低い石灰石などの無機物を主原料としており、耐水性を備えることからプラスチックや紙の代替素材として、国内で5300以上の企業・団体で導入されているという。従来の素材の製造に必要な石油由来プラスチックや水、木材などの資源量を大きく抑制できることから、メニュー表(印刷物)やマスクケースなどで活用されているそうだ。単価の安い石灰石を主原料とすることで価格競争力を有する点も特徴としている。

また、昨今のプラスチック問題を背景に、世界中の既存設備で製造と活用ができる「LIMEX ペレット」の海外生産を本格的に開始。中国・河南省やモンゴル、東南アジアなどにおいて地産地消型のサプライチェーンを構築しながら、グローバル展開を推進している。

TBMは2020年、再生材料やプラスチック代替素材の世界的なニーズの高まりに対して、排出された廃プラスチックを適切に再生利用することを目的にした、再生材料を50%以上含む資源循環を促進する素材「CirculeX」を立ち上げ。これまで、LIMEX素材の回収・資源循環については、企業や自治体と協働して仕組みづくりを進めてきたが、さらに効率の良い循環型社会の実現に向けて、CirculeXも含めた資源循環モデルを構築していくとしている。

2020年10月には、再生材料を98%使用し、従来品と比較してCO2削減が可能なCirculeX製のごみ袋を販売開始。さらにTBMグループのバイオワークスとTBMは、ポリ乳酸の繊維でつくられた植物由来で肌に優しいマスク「Bio Face」を共同開発した。

またTBMは、一般消費者向けのEC「ZAIMA」を開始し、「Bio Face」やLIMEX製品などを販売している。

同社は今後も、企業や団体だけでなく、一般消費者も含めた様々なステークホルダーの環境配慮行動を支えるために、エコロジーとエコノミーの両立を追求し、サステナビリティ領域におけるイノベーションを推進していくとしている。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:環境問題(用語)CirculeXTBM代替プラスティックLIMEX資金調達(用語)日本(国・地域)

ナタリー・ポートマンとジョン・レジェンは革ではなく菌糸の服を着る

女優のNatalie Portman(ナタリー・ポートマン)とミュージシャンのJohn Legend(ジョン・レジェンド)は、ベンチャー投資家とMycoWorks(マイコワークス)が支援する無名のファッションブランドからなるグループに参加した。MycoWorksは、皮革に置き換わる菌類を材料にしたバイオ素材の技術を商品化しようと4500万ドル(約47億円)を調達したばかりだ。

その目的は、動物やハ虫類の皮を使った服飾品から菌類ファッションへと消費者に乗り換えてもらうことにある。

同社は、すでにいくつかの大手ファッションブランドとパートナー契約を交わしており、その素晴らしい菌類素材を、これまで伝統的に動物の皮で作られてきた靴、財布、ベルトといった製品に加工して多くの人に広めたいと考えている。

「私たちは高級ブランドやフットウェアの大手メーカー数社と緊密に協力しています」と、MycoWorksのCEO、Matt Scullin(マット・スカリン)氏は話す。

無名のファッションブランド数社は、靴、既製服、バッグなどの幅広い製品を販売店に向けてすでに生産を開始していると、スカリン氏はいう。

MycoWorksは、菌類素材の普及や植物ベースの繊維製品の定着を目指す他社との差別化を、その繊維製品の耐久性を強調することで図りたいと考えている。競合企業には、キノコを使うBolt Threads(ボルト・スレッズ)、パイナップルの繊維を使うAnanas Anam(アナナス・アナム)、サボテンの皮を使うDesserto(デザート)などがある。

「私たちは、さまざまな皮革製服飾品、室内装飾品、ハンドバッグや財布といった一般的な皮革製品など、広範にわたる応用方法で製品をテストしています。私たちが作る素材がキノコから作られた皮と大きく異なる点は、構造成分が非常に高いことにあります」とスカリン氏。「私たちは、さまざまな用途に対応できるこの素材の性能の高さに自信を持っています。そのため、これには幅広い使い道があります」。

ゆくゆくは、高級品市場への参入をMycoWorksは目指している。「ブランドは持続可能性のために性能を犠牲にしているという誤解がありますが、それは間違いです」とスカリン氏はいう。「このような業界では、高い性能を示せば、本格的に受け入れられるのです」。

スカリン氏は、MycoWorksの素材の価格について、またその素材で製品を作っている企業の具体的な名前は明かさなかった。ただ彼は、いずれは伝統的な皮革市場だけでなく、皮革代替品となるプラスチック市場においても価格で勝負できるようにしたいと話していた。プラスチック代替品市場の価値は1年間だけで700億ドル(約7兆3000億円)に達する。

スカリン氏によれば、同社では年間に数万平方フィート(約930平方メートル)の菌類素材を生産する能力があるとのこと。つまりMycoWorksは、数十億平方フィート(約930万平方メートル)の生産能力を誇る皮革業界に追いつくには、まだ時間がかかるということだ。

MycoWorksへの財政支援には目を見張るものがあるが、ファッション業界では、それぞれに牽引力を発揮する他社との戦いもある。

2020年10月、Bolt Threadsは長年のパートナーであるAdidas(アディダス)、Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)、そしてBalenciaga(バレンシアガ)などのブランドを支えるファッションハウスとともに協議会を立ち上げ、キノコ革を使った製品の研究を行うと発表した。

台北のWTT Investment Ltd.、DCVC Bio、Valor Equity Partners、Humboldt Fund、Gruss & Co.、Novo Holdings、8VC、SOSV、AgFunder、Wireframe Ventures、Tony Faddell(トニー・ファデル)氏といったMycoWorksの投資家には、競合は折り込み済みだ。しかしその機能性から、彼らはMycoWorksは代替皮革界の王者だと信じている。

「Fine Mycelium(ファイン・マイシリアム、細かい菌糸という意味)の革は、クライアントの要望に応じてカスタマイズができます」とDCVC Bioの投資家Kiersten Stead(キルステン・ステッド)氏はいう。「形と用途においてカスタマイズ可能です。価格も用途と顧客が求める品質に応じて異なります」。

これまでにMycoWorksは6200万ドル(約64億5000万円)を調達しているが、今回の資金調達の発表は、カリフォルニア州エメリービルの新しい生産工場のオープニングと偶然にも重なった。これにより、現在の数万平方フィートという菌糸革の置換能力は大幅に強化される。

動物の皮に替わるものを求めるこうした動きの背景には、衣服や靴などの皮革素材の伝統的な製造方式にともなう問題点が次第に知られるようになったことがある。その製造では、非常に毒性の高い薬品や汚染物質が使われているのだ。皮をなめすとき、染めるとき、廃物処理の段階で環境が汚染される。また動物の皮革でもプラスチックの合成皮革でも、廃棄物の埋め立てという問題がある。

「菌糸体の育成プロセスはカーボンネガティブです。消費者は私たちの製品と動物の革を比べて、こっちを選ぶしかないというでしょう」とスカリン氏は話す。「加えてそこには、動物を傷つけないという側面と、プラスティックを使わないという側面があり、これらは現在、大変に多くの意志決定の動機になっています。私たちのブランドパートナーにとって、私たちの本当の姿は、進歩した製造業者です。持続可能性が私たちの原動力です。サプライチェーンを改革する道を、私たちは彼らに示しているのです」。

関連記事:Bolt Threadsがバレンシアガやグッチ、アディダスなどと新素材マッシュルーム代替皮革で提携

カテゴリー:バイオテック
タグ:MycoWorksファッション環境問題

画像クレジット:Songsak Paname/Eyem / Getty Images under a license.

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(翻訳:金井哲夫)

AIによるダイナミックプライシング活用の電力サービス開始、電気自動車の充電シフト実証実験も

AIによるダイナミックプライシング活用の電力サービス開始、電気自動車の充電シフト実証実験も

デジタルイノベーションで脱炭素化社会の実現を目指すCleanTech(クリーンテック)企業のアークエルテクノロジーズは11月5日、業界初のAIによるダイナミックプライシングを活用した電力サービス「アークエルエナジー」を発表した。AIを活用し、変動する価格で電力を購入できる「DPプラン」、100%クリーンなCO2フリー電気だけを使用した基本料金無料の従量料金プラン「フラットプラン」を用意。両プランともすでに開始済みで、九州エリアより順次全国展開予定。

また、経済産業省・資源エネルギー庁の実証事業「令和2年度 ダイナミックプライシングによる電動車の充電シフト実証事業」に採択され、電力卸取引市場の動きによって価格が変動する「ダイナミックプライシング」による電気自動車(EV)の充電シフトに関する実証実験を、11月1日より開始したと明らかにした。

AIによるダイナミックプライシングを活用した電力サービス「アークエルエナジー」

アークエルエナジーは、利用者のニーズに合わせて「DPプラン」(ディーピープラン)と「フラットプラン」というふたつの料金プランからCO2フリーなクリーン電力の購入方法を選べる電力サービス。

DPプランは、AIを活用し、変動する価格で電力を購入できる業界初のダイナミックプライシングを活用したプラン。税別1000円の月額利用料を支払うことで、30分ごとに変動する電気料金を原価で購入可能となる。利用者は、事前にLINEで通知された電気料金を参考に安いタイミングで電気を利用することで、家庭の電気料金を1〜3割節約できるという。AIによるダイナミックプライシングを活用した電力サービス「アークエルエナジー」

AIによるダイナミックプライシングを活用した電力サービス「アークエルエナジー」

電力小売市場では、クリーン電力の供給量が増加する昼の時間帯に電気料金が安くなる傾向にあるため、同サービスが普及し安価な電力の利用を促進することで、クリーン電力の有効活用促進を狙う。

DPプランは、30分ごとに変動する日本電力卸売市場(JEPX)の価格によって電気料金(従量料金の部分)を決定。託送料と電気料金はアークエルテクノロジーズが原価で提供する。また、アプリからマイページを参照することで、EVの充電履歴や料金を確認できる。

料金の概要は、サービス料(月1000円固定)+託送料(kWhあたり固定)+電気料金(kWhあたり変動)の合計(再エネ賦課金は別途発生)となっている。

例えば、一般的な戸建て3人世帯の電気代(九州電力の従量電灯B 40A契約で、毎月556kWh使用の場合)では、毎月約5164円(約35%)節約可能としている。AIによるダイナミックプライシングを活用した電力サービス「アークエルエナジー」AIによるダイナミックプライシングを活用した電力サービス「アークエルエナジー」

フラットプランは、100%クリーンなCO2フリー電気だけを使用。基本料金無料で、使用量に応じて電気料金を支払う従量料金プランとなっている。一般的な電力会社とは異なり、どれだけ電力を使用しても1kWhあたりの単価が変わらないため月々の支払い料金を抑えられる(九州電力管内においては、一律1kWhあたり税込23.3円で提供)。

例えば、一般的な戸建て3人世帯の電気代(九州電力の従量電灯B 40A契約で、毎月556kWh使用の場合)では、毎月約1745円(約11%)節約可能としている。AIによるダイナミックプライシングを活用した電力サービス「アークエルエナジー」

「ダイナミックプライシング」による電気自動車(EV)の充電シフトに関する実証実験

今回の実証実験では、EVやPHV(プラグインハイブリッド自動車)がさらに普及した未来社会に向け、クリーンエネルギーを有効活用した電力供給をどのように実現していくかの検証を行う。令和2年(2020年)9月から九州電力エリアで実証実験を開始し、令和3年度(2020年度)以降は全国に拡大予定。

アークエルテクノロジーズが小売電気事業者として、日本卸電力取引所(JEPX)での取引を活用し、電力市場価格に連動した料金契約サービスを提供。30分ごとに電気料金が変化している中、同社が料金情報をLINEやウェブ上から利用者に通知することで、電気料金が安い時間帯での充電を促進できるとしている。

実証実験における利用者への情報通知は、同社が開発を進めるエッジAIとIoT機器を活用した「充電を最適化するアルゴリズム」をもとにして行う予定。現在、東京大学先端科学技術研究センターと連携し、同センターの特任助教である辻真吾氏を中心とした学術指導のもと、開発を進めている。

また実証実験にともない、同社ではモニターを募集。モニターは、同社開発のIoT機器をEV(ダッシュボード)と自宅(ブレーカー周辺)に設置する。

実証実験で使用する車載器

実証実験で使用する車載器

実証実験で使用する検定なしメーター(自宅/事務所に設置)

実証実験で使用する検定なしメーター(自宅/事務所に設置)

電気料金が安い時間帯の充電とクリーンエネルギーの有効活用

同社は、電気が安い時間帯に充電することがクリーンエネルギーの有効活用となる理由として、再生可能エネルギーの導入が拡大すると、季節・時間帯によっては電気が余る時間帯が出てくる点を指摘。すでに九州では、よく晴れた春と秋に太陽光発電の出力を制御することが多くなっており、2019年は出力制御が48日(一般家庭約年間1万世帯分に相当)発生しているという。「ダイナミックプライシング」による電気自動車(EV)の充電シフトに関する実証実験

発電量が需要量を上回る場合、まず火力発電の出力抑制、揚水発電のくみ上げ運転による需要創出、連系線を活用した他エリアへの送電を行う。それでも解消されない場合、バイオマス発電の出力制御の後、太陽光発電、風力発電の出力制御を実施する。水力・原子力・地熱は「長期固定電源」と呼ばれ、出力の小刻みな調整が技術的に難しく、最後に抑制するという。これを「優先給電ルール」と呼び、手順が法令で定められているそうだ。

電力は日本電力卸取引市場(JEPX)を通じて電力会社間で30分単位で取引されている。九州において太陽光発電の出力制御が行われている時間帯では、その取引価格が急激に下がり、通常5円~7円/kwhのところ0.01円(1銭)/kwhに貼りつく状況が見られるという。

またこの時市場では、電力供給に余裕のある時間帯は取引価格が安く、需給が逼迫している時間帯は取引価格が高いという特徴が見られるとした。これらの理由から、市場価格と連動するダイナミックプライシングによる充電シフトは、クリーンエネルギーの有効活用に寄与すると考えているという。「ダイナミックプライシング」による電気自動車(EV)の充電シフトに関する実証実験

2018年8月設立のアークエルテクノロジーズは、ソーシャルアントレプレナー精神とともに「デジタルイノベーションで脱炭素化社会を実現する」をミッションとして掲げ、福岡・東京の企業を中心に「脱炭素化プラットフォームサービス事業」「DXコンサルティング事業」などのサービスを提供。

脱炭素化社会に向けては、化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトが重要である一方、再生可能エネルギーは変動が大きく余剰になることも多いという課題がある。この解決に向け同社はテクノロジーを活用し、クリーンエネルギーを最適に利用できる社会システムの構築を目指している。

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カテゴリー: 人工知能・AI
タグ: アークエルテクノロジーズ環境問題(用語)再生可能エネルギー(用語)電気自動車 / EV(用語)モビリティ日本