NASAの有人月探査船ミッションのメンバーに選ばれたアン・マクレーン宇宙飛行士が次世代宇宙船の設計と操縦について語る

NASAは有人月探査プロジェクトであるアルテミス計画に参加する宇宙飛行士を発表した。ISS国際宇宙ステーションで203日間過ごし、船外活動を2回行ったAnne McClain(アン・マクレーン)氏もそのメンバーに選ばれた。宇宙ビジネスは10年前とは様変わりし、宇宙船のテクノロジーは一新されている。マクレーン氏は本人や他の飛行士の宇宙に関するビジョンを語ってくれた。

マクレーン陸軍中佐がISSに搭乗していたのは2018年12月から2019年6月までだ。スペースシャトルの退役後の時代だったため、軌道への打ち上げも降下もロシアのソユーズが利用された。しかしアルテミス計画では、米国製の新しいロケットと宇宙船が使用される。マクレーン氏はCrew Dragon宇宙船を操縦はしていないが、カプセルがISSにドッキングしたときに内部を実際にチェックしている。同氏は次のように述べた。

ソユーズに搭乗できたことはうれしい経験でした。ソユーズは簡素ですが非常に信頼性が高い宇宙船であり、歴史の一部を飛ばしているように感じました。もちろん将来は新しい宇宙船に搭乗できるはずだと知っていました。DM-1(Dragonカプセル)がISSにドッキングしたとき、私はISSにいたので実際に体験する機会がありました。(Drogaonの)船内を遊泳してタッチスクリーンのモニターなどのコントロールをチェックする機会がありました。テクノロジーが民間旅客機の機内なみに進歩したことに驚きました。

Dragonカプセルを軌道上で最初に操縦したのはDoug Hurley(ダグ・ハーリー)とBob Behnken(ボブ・ベンケン)の両宇宙飛行士だった。後に両氏は「(コントロール類が)まるきり違っている」と感想を述べている。実際、Dragonの主要なインターフェースはタッチスクリーンだった。マクレーン氏はソフトウェアがインターフェイスとなるにつれて、命を預けられる信頼性を確保するのが大事業となっていることを次のように強調した。

現在の宇宙船は大部分がソフトウェアでコントロールされており、インターフェイスはタッチスクリーンです。物理的なスイッチはあまりありません。リレーはほとんどソフト化されています。しかし、読者もよく知っていると思いますがソフトウェアの信頼性確保は難しく、非常に複雑なタスクとなります。システムを深く理解し、デザイナーが想定していない分野でさえシステムを使いこなせるようになりたいと考えています。

システムを深く理解し、デザイナーが想定していない分野でさえシステムを使いこなせるようになりたい

どんな場合に人間がシステムに介入する必要があり、どんな場合に自動化すべきなのか我々は常に注目しています。また自動化の場合、そのソフトウェアが有人宇宙飛行に十分な信頼性を備えていることをどのように知ることができるかという問題も重要です。ある時点で、「これこれの事態が発生したら人間がシステムに介入する」ということを決めておかねばなりません。ソフトウェアの信頼性テストの結果が出るのを10年間も漫然と待っているわけにはいきません。

マクレーン氏はパイロットとして当然意見を持っており、ハーリー、ベンケン両宇宙飛行士とともに早い段階からSpaceXと協力してきた。マクレーン氏は、宇宙船Orion宇宙船と宇宙船Starlinerが彼女のような専門家から同様の注目を受けたことを指摘している。

ボブ(・ベンケン)、ダグ(・ハーリー)と仕事をすることができて幸運でした。私はCrew Dragon宇宙船コックピットのコントロールについて非常に早い段階からSpaceXにアドバイスしてきました。

SpaceXのCrew Dragon宇宙船の歴史的成功を祝って拳を打ち合わせるボブ・ベンケン氏とダグ・ハーリー氏

会社の名前が宇宙船を作るわけではない。スペースシャトルやISS宇宙ステーションを作った人々は現在、宇宙ビジネス全体に広がっている

中でもシステムの柔軟性は最も重要だった。プログラムがわずかでも予期と違う動作をする場合、ツールが柔軟であり、人間の介入に対する制限とならないことが絶対に必要だ。

我々パイロットは 常に柔軟なオプションが欲しいと考えます。何か起きたときは対処のオプションが必要です。我々は地上でできるかぎりあらゆる状況を想定してシナリオを練り上げます。しかし現場では必ず予測されていない事態がおきる可能性があることを常に強く意識しています。そうなったら、オプションが必要です。システムを十分に理解し、設計者が直接想定していないような方法でもシステムを操作できるしたいと考えています。ソフトウェアが人間の選択肢を制限しないことが何より重要です。これが宇宙船のハードとソフトをまったく予想されていなかった方法で使用した(奇跡的に地球生還を果たした)アポロ13号のケースをNASAが重視している理由の1つです。

Jeffrey Bezos(ジェフ・ベゾス)氏のBlue Originのような新しい宇宙企業と仕事をするのはこれまでと違うのかと私が尋ねたところ、マクレーン氏は「違うのは名前だけです」と答えた。

Blue Originとロッキードによる月着陸船の予想画像(CG)

こうした企業と協力した経験は十分にあります。会社の名前が宇宙船を作るわけではありません。こうした会社にはこれまでに宇宙船を建造した人々が大勢います。スペースシャトルやISS宇宙ステーションを作った人々は現在、宇宙ビジネス全体に広がっています。これはまさにNASAが望んだことなのです。これが宇宙事業の核心となる人的資本です。もう1つ自信を持っていえるのは、NASAがこうした新しい宇宙企業と協力する方法です。NASAはテストと設計レビューを徹底的に行います。ですからロケットが発射台に乗ったときにはシステムが徹底的にチェックされていることに私は確信を持てます。

コミュニケーション・テクノロジーは乗員の精神の健全性を保つために不可欠。こうしたテクノロジーはいわば地球をまるごと宇宙船に持ち込む

つまりマクレーン氏によれば、新しい宇宙船には地上のノウハウと能力がすっかり搭載されており宇宙飛行士とともに宇宙に出るのだという。私は最後に、たとえばビデオチャットのような消費者向けテクノロジーの発達によって、宇宙で長期間過ごすことが楽になったかどうか尋ねた。マクレーン氏によれば答えはイエスだ。

まさにそのとおりです。ビデオチャットがなかったら、我々が陥っているパンデミックははるかに耐えがたいものになっていたでしょう。現在、大切な人と自由に会えずにいます。相手が地上にいても宇宙にいてもつ会えないのは同じです。たとえばビデオチャットで両親の顔を見て会話ができるのは本当にすばらしいこどです。これは士気高めるだけではありません。ミッションは6カ月、いや1年も続くかもしれません。その間コミュニケーションテクノロジーは乗員の精神の健全性を保つために不可欠です。こうしたテクノロジーはいわば地球をまるごと宇宙船に持ち込むのです。

マクレーン氏は アルテミス有人月面着陸ミッションに参加する18人の宇宙飛行士の1人に選ばれた。他の宇宙飛行士についてはこちらで知ることができる

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タグ:NASAアルテミス計画Crew DragonSpaceX

画像クレジット:NASA / Bill Ingalls

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イーロン・マスク氏「SpaceXは発射台のアームでSuper Heavyブースターを回収する」

SpaceXはロケットブースターを回収、再利用するために現在と大幅に異なるアプローチを試みると創業者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は述べた。発射台のアームが打ち上げ前のロケットを支えて安定させている。マスク氏は開発中の大型ブースターをこのアームを利用してキャッチしようと考えている(Twitter投稿)。現在のFalcon 9ブースターはエンジンを逆噴射し、組み込みの脚を展開して着陸する。しかし極めて大きな次世代ロケットであるSuper Heavyでは脚を廃止するのが目標(Twitter投稿)だとマスク氏は述べた。

Super Heavyも減速のためにロケットを逆噴射するが、姿勢制御には本体上部に装備されているグリッドフィンを利用する。このフィンをブースターのキャッチに利用する。つまりブースターが着陸する寸前に発射台のアームをグリッドフィンに引っかけるわけだ。この方法では、非常に精密な姿勢制御が必要になる。Super Heavyから着陸脚を完全に省くことができればコストと重量の両方を大幅に節約できる。

マスク氏が指摘したもう1つの利点は、Super Heavyブースターがそのまま元の発射台に定置されることだ。ブースターの上段に新しいペイロードを搭載したStarship宇宙船をセットすれば「1時間以内(Twitter投稿)」に再飛行が可能になる(SpaceXは現在、Starship宇宙船の開発とテストを実施中)。

Starship宇宙船とSuper Heavyブースターの目標は、現在のFalcon 9(およびFalcon Heavy)と比べてさらに再利用を進めたシステムだ。Starshipをジェット旅客機のように定期的かつ頻繁に飛行させることをマスク氏は目標としている。地球上の2点間を結ぶ超高速飛行、地球軌道付近のミッション、月(や最終的には火星)への長距離ミッションなどだ。 火星に「維持可能な植民」を行うためにはこうした能力が必須となる。今回提案された新しい着陸方法はこうした目標を達成するためSuper Heavyで迅速な再飛行サイクルを確立するためのものだという。

Starshipのプロトタイプは現在、テキサス州ボカチカで建設およびテストされている。2019年、SpaceXはここでは試作宇宙船の飛行テストを繰り返してきた。同社はSuper Heavyブースターを開発中だが、マスク氏は同システムの各部分の飛行試験を数カ月以内に開始できるよう全力で取り組んでいると述べている。

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画像クレジットSpaceX

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

シリコンバレーに広がる冷笑主義に対抗する方法はSubstack、Clubhouseそしてマイアミ脱出だ

映画「Field of Dreams(フィールド・オブ・ドリームス)」ではないが「それを作れば人はやってくる」というのがスタートアップの信念だ。しかし残念ながら本当に人が来るまでの道のりには、何もかも否定しようとするシニシズム(冷笑主義)が満ちることになる。

今年だけでもテクノロジービジネスでは何百万回ものギャンブルがあった。そうした賭けの一部にはベンチャーキャピタルの投資の決断も含まれていた。また地域を選ぶ賭けもあった。サンフランシスコの未来に賭けるのがいいだろうか?それとも他のテクノロジーハブの成長に賭けるべきか?プロダクトに新機能をリリースするべきか、既存機能のブラッシュアップに時間を割くべきか?今の会社に賭けるか、新しい会社を探すか?

2020年の締めくくりとして、こうした賭けの結果について成績表を作ってみよう。このビジネス全体を通してその未来に熱狂な支持を集めることに成功したのは「メディア、特にオーディオメディア、米国のある有名大都市」の3つだけだった。

具体的にいえば、ニュースレター配信のSubstack、ソーシャルメディアのClubhouse、そして新興テクノロジーハブのマイアミだ。もちろんまだ先物買いではある。どれも夢を実現するまでにはまだまだ距離がある。Substackは、テキストベースのジャーナリズムを再建しようと試みている。Clubhouseは、対話可能な音声ベースのソーシャルプラットフォームとしてラジオを活性化するつもりだ。マイアミはこれまでスタートアップ育成の巨大なエコシステムがなかった場所にもサンフランシスコ、ニューヨーク、ボストンに匹敵するテクノロジーハブを建設できるという賭けだ。

こうしたオプティミズム(楽観主義)は脅威、失敗、障害の可能性を仔細にいい立てる人々からあらゆる否定を浴びている。

現在のテクノロジー業界を覆う否定的な空気は、パンデミックを筆頭に業界を絶え間なく襲った悪いニュースに疲れたための一時的な倦怠感に過ぎないといいいたいところだ。しかしここに底流するシニシズムは新型コロナウイルスがトレンドトピック入りするはるか以前から業界に深く浸透していた。

今までにないほど、多くのスタートアップが資金を調達している(評価額も上昇を続けている!)し、買収や上場によって「出口」を得たスタートアップの数も2020年12月初めの時点で過去数年間で最高だ。

それでも悲観的分析は根強い。そのほとんどをは、テクノロジー業界を覆うある種の不安から生じている。Substackはテクノロジーの不安とメディアの不安が重なる部分に位置するので特に目立つ。テクノロジー側からの批判は、「あんなものはただのメールサービスだ!」と要約できる。誰もがSubstackのようなサービスならこの10年、誰でも構築できたはずだ。そう思えるだけにSubstackの単純さと巨大な評価額は脅威だ。

事実、もともとのコンセプトが単純なだけにSubstack的な試みは何度もあった。しかし単純さは他の多くの成功した消費者向けスタートアップに共通するDNAだ。なるほどSubstackのテクノロジーの本質は電子メールだ。StripeにCMSエディターをプラスしたメール配信サービスともいえる。有能なエンジニアはコンセプト版でよいなら1日で書ける。ところが誰もやらなかった。そこでスタートアップの世界では疑いと不安が始まる。

メディアの観点からはどうだろう?ニュースも出版も過去数年間はひどい状態だった。当然のことながら、マスコミのシニシズムはひどく強いものとなっている(もともとジャーナリストというのは楽観的なことを口にしない人種だ)。マスコミ側の批判の大部分は「Substackは数年前からあったのにマスコミの崩壊を止めるのに少しも役立たたなかった」と要約される。

そのうちに助けになるかもしれないが、大きな影響を与えるようなサービスが出現するには時間がかかる。スタートしたばかりの企業がマスコミを完全に再構築する可能性さえあると見られるているという事実が、まさにSubstack(や類似のスタートアップ)を賭けるべき対象として魅力あるものにしているのだ。Substackは今すぐに解雇された数万人のジャーナリストに再び職を与えたり、ニュース報道や出版ビジネス内の不平等を是正したり、フェイクニュースを追放したりすることはできない。しかしこのペースで成長し機能の構築が続くとしたら、10年後にはできるかもしれない。

現在すでに完璧でないといって対象を否定するシニシズムは、2020年のスタートアップビジネスに流れる奇妙な動きの1つだ。1人か多くて数人の起業家と少数の社員のスタートアップが、創立初日に完璧なプロダクトをリリースし、欠点が表面化する以前にそれを是正しているなどと期待するのは道理に合わない。スタートアップが提供するプロダクトが過早にもてはやされ、プロダクトの真価を理解している少数が理解しない多数の渦の中に飲み込まれているという方が実際に近いだろう。

このパターンはClubhouseの場合にもはっきりしている。幸いにしてTechCrunchでは、おおむね避けるのに成功してきたシニシズムの側面があらわになっている。Clubhouseは新しいダイナミクスを備えた新しいソーシャルプラットフォームだ。もちろん数年先にどうなっているかは誰に断言はできない。投資家、ユーザーはもちろん、(彼なりのビジョンはあるだろうが)創立したPaul Davison(ポール・デイヴィソン)でさえ確たることはいえないだろう。先週、Clubhouseが主催した「Lion King(ライオン・キング)」のライブミュージカルイベントには数千人が参加した。Clubhouseがそうした存在になるとは誰ひとり予想していなかったはずだ。

SubstackにもClubhouseにも解決すべき課題は多々ある。当然だ。しかし創立後日が浅いスタートアップとしてとしては、市場の地形を探り、プラットフォームにユーザーを引き込むために決定的となる機能を発見し、最終的には成長の方程式を見つけねばならない。コンテンツがユーザー投稿であるということは特に安全性と信頼性における問題を生む。成長の過程で問題を発見しなかったスタートアップなど、これまで設立されていない。重要な質問は「このスタートアップには問題が発見されたときにそれを即座に修正することができるリーダーシップを持っているか?」だ。私の見たところ(現実のお金を投じてはいないが、これも賭けだが)答えはイエスだ。

リーダーシップについて語るならマイアミのFrancis Suarez(フランシス・スアレズ)市長を抜きにするわけにはいかない。スアレズ市長の「マイアミはスタートアップを手助けする用意がある」というツイートはシリコンバレー信者はの愛好家や根っからの悲観主義者の間に途方ないばかげた騒動を引き起こした。

Keith Rabois(キース・ラボイス)氏をはじめとする何人かのベンチャーキャピタリストや起業家はサンフランシスコから脱出してマイアミに移れというトレンドのパイオニアとなっている。地元のビジネスと連携して、それまでになかったより良いエコシステムを構築しようとしている。ここで賭けられているのは場所だ。スタートアップとテクノロジーのハブをシニシズムに覆われた既存の場所の外に明るく楽観的な場所を見つけることができるという賭けだ。

マイアミに対するシニシズムは、10年前よりもさらに正当化されにくくなっている。サンフランシスコ、ニューヨーク、ボストンとそれらの周辺はもちろん米国のハイテクスタートアップのメッカだ。しかしシアトルはもちろん、この10年でソルトレイク、ポートランド、シカゴ、オースティン、デンバー、フィラデルフィアなどの都市が着々と得点を挙げている。マイアミは550万人が暮らす大都市であり、米国最大の経済圏の1つだ。マイアミも成功するかもしれないと考えるのは的外れではない。改革のきっかけとしては、たとえばラボイス氏のようなベンチャーキャピタリストの移住が十分だったかもしれない。

シニシズムから意味あるものが生まれた例はない。「そんなことできっこない」という態度がスタートアップを作った試しはない。こういうシニシズムへの反発が人を起業家にするきっかけとなったことならあるかもしれない。

意味のあるもの作るには、時間がかかる。最初のプロダクトを手にしてから育て上げてるに時間が必要だ。スタートアップのエコシステムを構築し自立したものにするにももちろん時間がかかる。重要なことは、成功のためには個人の力では不十分だという点だ。人々のチーム、コミュニティとメンバーの並外れた努力が必要だ。未来というのは決定論的に固定されたものではない。努力によって変化する可塑性に富んだ存在だ。賭けの報酬は大きい。我々は後ろ向きにあれこれの問題や欠陥を指摘するのを止めて「どんな未来を作りたいのか?」と自問すべきだろう。私は何に賭けたいのかが一番重要なポイントだ。

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カテゴリー:その他
タグ:SubstackClubhouseマイアミ

画像クレジット:John Coletti / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

対面以上のオンラインコミュニケーションを目指すCommonGroundが19億円調達

「4Dコラボレーション」とファウンダーが呼ぶ新しいオンラインコミュニケーション方式を開発しているスタートアップであるCommonGroundが1900万ドル(約19億6000万円)の資金を調達したことを発表した。

Amir Bassan-Eskenazi(アミル・バサン-エシュケナジ)氏とRan Oz(ラン・オズ)氏が共同でスタートアップを立ち上げたのはこれが初めてではない。2人はテクノロジー関連のエミー賞を2つ受賞したビデオネットワークのBigBand Networksを創立しており、同社は2007年に上場公開され、2011年にArrisGroupに買収された。これ以前にはオズ氏が共同ファウンダーとして創立したデジタル圧縮のOptibaseでバサン-エシュケナジ氏がCOOを務めた。

CommonGroundはいわゆるステルスモードでPR活動をしておらず、2021年最初のプロダクトを完成させるまで全貌を公開する予定はないという。それでも共同ファウンダー2人は取材に対してビジョンの概要を説明してくれた。両氏は「最近、ビデオ会議の体験は大幅に改善されたものの、対面コミュニケーションにははるかに及ばない」ことを指摘した。バサン-エシュケナジ氏はこう述べた。

一般的なビデオ会議ソリューションでは達成できない部分がいくつかあります。近年改善されていますが、それでも現実のバーやパーティーに入ったときに誰もが受ける「あの感じ」は達成できていません。【略】我々は会話している人々のグループをちらりと見るだけで、誰が誰であるかがすぐにわかります。誰が驚いているのか、不満に思っているのか、口ごもっているのかなども見てとれます。

CommonGroundの共同ファウンダーであるアミル・バサン-エシュケナジ氏とラン・オズ氏

バサン-エシュケナジ氏、ラン・オズ氏とそのチームが作るろうとしているのはまさにこの点を解決できるサービスだ。対面でのコミュニケーションのニュアンスをよりよくとらえるだけでなく、対面の会話以上に優れたオンラインコラボレーションプラットフォームを目指しているという(4Dというキャッチフレーズは3Dを超えるという意味らしい)。私は「ビデオ会議システムに各種のコラボレーションツールを組み合わせたものになるのだろうか?」と尋ねた。オズ氏は「コンピュータービジョンやCGなどのテクノロジーを駆使した『ビデオを超えた存在』を想像してください」と答えた。

バサン-エシュケナジ氏は、CommonGroundに1年以上前から取り組んできたという。「つまりパンデミックによるロックダウンへの対応として始められたプロジェクトではありません」と付け加えた。2021年、ビジネスが平常に戻ってオフィスが再開されても依然としてチャンスは大きいという。

またバサン-エシュケナジ氏は「プロジェクトを開始したとき、問題は一部のビジネスパーソンだけが感じている課題でした。しかし今は私の母も実感している問題です。(ソーシャル・ディスタンスの強制のために対面で)孫に本を読んで聞かせることが難しくなっているからです」という。

今回のラウンドはMatrix artnersがリードし、Grove VenturesとStageOne Venturesが参加した。MatrixのジェネラルパートナーであるPatrick Malatack(パトリック・マラタック)氏は声明で「ファウンダー両氏は、コミュニケーションを再発明するという大胆なビジョンを持っています。2人のビデオテクノロジーにおける知識、能力と、大型買収に成功しているなどのビジネスにおける成功実績を考えれば、投資を決定するのは簡単でした」と述べている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:CommonGroundビデオチャット資金調達

画像クレジット:Ada Yokota / Getty Images (Image has been modified)

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

AI利用の動画ベース求人プラットフォームmyInterviewがシード資金5.2億円調達に成功

履歴書の処理は求職者にとっても、採用企業にとっても面倒な仕事だ。特に現在の採用環境では困難が大きい。ソーシャルメディアにはすでに動画は無数にあるが、求人分野でまだほとんど使われていない。しかし動画なら、テキストベースでは十分に表現できない応募者の個性がはっきりわかる。オーストラリアのシドニーを拠点とするmyInterviewは、動画をリクルートビジネスの必須な部分に変えたいと考えており、ユーザーが質問に回答していくだけでいわばバーチャル面接ができるようなプラットフォームを開発した。採用担当者はオプションとしてmyInterview Intelligenceも利用できる。これは機械学習ベースのツールで多数の応募者から最終候補リストを自動的に作成する。

myInterviewはイスラエルとオーストラリアにオフィスを置くスタートアップで、イスラエルのアーリーステージベンチャーキャピタルであるAlephがリードしたシードラウンドで500万ドル(約5億2000万円)を調達した。今回のラウンドには既存投資家のEntrée Capital、SeedIL Venturesも参加した。myInterviewはこの2社とLinkedInの東南アジア、オーストラリア、ニュージーランド事業の元トップだったCliff Rosenberg(クリフ・ローゼンバーグ)氏から160万ドル(約1億7000万円)のプレシード資金を調達している。

myInterviewはすでに米国と英国を中心にオンラインスーパーマーケットのOcado、小売業のB&M、P&OFerriesなどを含め2000社以上で利用されている。またFacebook(フェイスブック)のCareer Connectionsとも連携し、英国最大の求人検索サイトであるreed.co.ukと戦略的パートナーシップを結んでいいる。これまでに200万人以上の求職者がmyInterviewを使用しているが、同社の目標は数千万人規模だという。

今回の資金はプロダクト、セールス、開発チームの拡大するために利用されるという。

Guy Abelsohn(ガイ・アベルソン)氏とBen Gillman(ベン・ギルマン)氏は就職活動をしている際に、履歴書を目立たせることが非常に難しいことに気づいた。これがきったけとなって両氏は2016年にMyInterviewを創立した。当初、myInterviewは、企業の既存の採用システムに統合できる各種ツールを提供していたが、2019年初めに独自の動画履歴書プラットフォームを立ち上げた。これは新型コロナウイルスによってパンデミックが発生するかなり前のことだった。ギルマン氏はTechCrunchの取材に対してこう述べている。

すでに2019年から2020年の初めにかけてすでに好調にユーザーを集めていたので、我々成功は新型コロナが主たる原因ではないと考えます。しかし採用側企業にはパンデミックは大きな影響がありました。我々のユーザー企業には新しいテクノロジーを利用して採用プロセスの効率化を図る必要が生じました。myInterviewは、多数の応募者に対してソーシャルディスタンスを保ちながら効果的、効率的な面接を行うために動画を全面的に取り入れました。

ギルマン氏によればmyInterviewの動画プラットフォームはどんな職種の採用にも適しているというが、数百人から数千人も応募者が殺到する初級職の募集で利用されることが多い。

myInterviewを使用するために、企業はプラットフォーム上にポータルを設定する。ここには求職者に動画で回答を求める質問のリストと応募にあたっての諸注意を記述する。求職者は、動画履歴書の送信する前に、応答を再生し、気に入らなければ再度撮影することができる。送信されるたファイルには採用担当者が各種の基準でソート可能なタグが自動的付与される。

採用プロセスに動画の統合を試みているスタートアップで最近資金を調達した会社にはVCV.AIJobUFOWilloがある。

myInterviewがライバルと競争する上での武器の1つはmyInterview Intelligenceだ。採用担当者はmyInterview Intelligenceを使用してキーワードとフレーズで検索ができる。また応募者の応答動画の音声から口調の分析も可能だ。

スクリーンショット:myInterview Intelligence

MyInterviewのAIツールは、パーソナリティの研究で広く利用されている「ビッグ5」というフレームワークに基づいている。「ビッグ5」ないし「性格の五因子モデル」は採用プロセスで長年使われてきた。myInterviewは検査様式に回答を記入させる代わりに、動画を解析したスクリプトに基づいてプロセスを自動化する。

myInterviewによれば、職場文化との適合性に重点を置いた機械学習により最終候補者リストを自動的に作成することで、採用担当者は時間的余裕を得ることができ、従来の方法では見落とされがちだった適格者を発見するのに役立つという。ギルマン氏によると、同社のプラットフォームは、行動心理学者と協力し、多様な動画データセットを使用してアルゴリズムをトレーニングすることで採用プロセスに混入しがちなバイアスを最小化させようとしている (AIを使用して採用における各種のバイアスを克服する試みとしては、最近資金調達に成功させたRippleMatchなどがある)。

あらゆる関係についていえるが、特定の企業文化に適合する性格がどんなものであるか明確に定義するのは難しい場合が多い。myInterviewのデベロッパーにはプログラマーだけでなく行動心理学者、機械学習エンジニアが含まれており、優れたチームを構成する要素がなんであるか解読しようとしているという。ギルマン氏はこう説明する。

複雑な階層構造を持つ大企業に向いた求職者もいれば、家族的な自由な空気の小規模な企業でうまくいく求職者もいます。これらははっきりした結果をもたらす要素です。我々は求職者と雇用企業の双方にメリットのあるプラットフォームの実現を目指しています。

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カテゴリー:HRテック
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(翻訳:滑川海彦@Facebook

フラッシュカード方式で日本語他9カ国語の言語学習を助けるFluent Foreverが5.1億円を調達

オンライン言語学習システムのFluent ForeverはデンバーのベンチャーキャピタルであるStout StreetCapitalがリードしたラウンドで490万ドル(約5億1000万円)の資金を調達した。このスタートアップは新しい学習システムを開発して短期間で効率的に新しい外国語をマスターできるようにすることを狙っている。このラウンドにはThe Syndicate、LAUNCH、Mana Ventures、Noveus VC、Flight.VC、Insta VC、UpVentures、Firebrand Ventures、Cultivation Capital、Spero Ventures、LoftyVenturesが参加している。

Fluent ForeverのライバルにはDuolingoやBabbelを始めとして多数のオンライン言語学習サービスがある。Fluentが主張する特長はユーザーごとにカスタマイズされたリスニングのトレーニングが提供されることだ。またビジュアル、間隔反復法的な反復によって単語やフレーズを覚えるのを助ける。Fluentは有料サブスクリプション(14日間の無料トライアルがある)で、料金は月額10ドル(約1040円)からとなっている。長期契約すれば割引が適用される。

ファウンダーでCEOのGabriel Wyner(ガブリエル・ワイナー)氏は、語学学習のために広く利用されているフラッシュカード式暗記アプリのAnkiを使い、このアプローチによる言語学習法について本を書いた。またAnkiシステムを利用した言語学習のワークショップも開催した。しかしワイナー氏が指摘するとおり、Ankiは高度なツールであり、利用方法を学ぶためだけでも相当の時間とエネルギーが必要だ。

画像クレジット:Fluent Forever

ワイナー氏は取材に対して「大勢の人々が言語学習に失敗しています。そしてまず『うん、やり方がまずかったんだ。オーケー、ではこのオンライン学習ならどうだろう?』と考える。そしてもっと効果的にできそうなツールを発見して興奮する。ところがまた失敗するのです。その理由はテクノロジー上の問題です。そんなことで学習者がまた失敗するのを見るのは非常にいらだたしい」と述べた。

Fluent Foreverは全体的にワイナー氏のフラッシュカード方式を利用する。学習用フラッシュカードデッキをユーザーが自分の作成する。これが学習システムの中核であり、作成されたデッキはユーザーのニーズに適合した使いやすいアプリケーションとなる。

「ユーザーが望むのはボタンを1つ押すだけで学習できるツールでしょう。しかしそういう近道はありません。これに対しては断固としていわねばならない。声を大にしますが、答えはノーです。絶対にない。適切なツールはユーザー自身が構築しなければならないのです。これが私が一番強調したい点です」とワイナー氏は述べている。

ワイナー氏は言語学習に対する自分のアプローチをDuolingoと比較して「(母国語の単語と対照させる)2言語翻訳的な手法は、長期的には実際に使える言語スキルを生みません」と主張する。Duolingoのユーザー体験、ゲーム化等々の出来栄えはFluentよりもはるかに優れていることを認めるが、Fluentのシステムのほうが学習者ははるかに良い結果を得る確信している。

画像クレジット:Fluent Forever

「我々は ユーザーに『Fluentを使う理由は何ですか Duolingoなら無料なのになぜFluentにお金を払うのですか?』と尋ねることがあります。すると『このサービスはあちこち荒削りだ。いろいろ修正してほしい部分がある。しかしFluentのおかでたった2週間でスペイン語で考えることができるようになった』という答えが返ってくるのです。Fluent Foreverは現在、日本語、フランス語、ロシア語、スペイン語(メキシコ、スペイン)、イタリア語、韓国語、ドイツ語、ブラジル・ポルトガル語の9言語をサポートしています。現在、チームが取り組んでいるのはオランダ語です」とワイナー氏。

ワイナー氏が語ったところではFluentは2019年に資金調達に苦しんだ。当時Fluentの規模が横ばいだったことも一因だった。「残念ながら投資家は言語学習に非常に懐疑的です。いわゆる『セクシー』な分野ではない。言語学習サービスは好かれていません。その上、市場を支配しているように見えるDuolingoがライバルになるというのでは魅力的な投資対象ではありませんでした」という。しかし2020年に入ると新型コロナウイルス(COVID-19)によるリモートワーク化の進展以前に成長が回復し始めた。同時にFluent Foreverは著名なエンジェル投資家であるJason Calacanis(ジェイソン・カラカニス)氏のLaunch Acceleratorに参加した。

ワイナー氏のビジョンは、Fluent Foreverが言語を教える講師をライブでシステムに登場させることだった。オンライン上のライブ個別指導は以前から行われており、Preplyのようにこれに特化している会社もある。しかしFluentが目指していたのはオンライン言語学習サービスに短いライブセッションを組み込みんで、ある種のコンポーネントを作成することだった。間隔伸張反復法の手法により、ユーザーは一定時間後にまたそのセッションに戻ることができる。ライブサービスを利用するのは原則として有料のサブスクリプションユーザーであり、ライブ指導の時間を使用してそれぞれのニーズに合わせた独自の文章を作ることができる。Fluentのシステムは、この文章を多くのユーザーが共有できるコンテンツにすることができるわけだ。これがFluentの手法の大きな利点の1つだという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ゲームチャットDiscordが145億円調達、月間アクティブユーザーは1.4億人

ソーシャルディスタンスの強制が続くことも大きな要因となってあらゆるコミュニケーションのリモート化は我々の社会、経済活動においてますます重要な地位を占めている。そこから利益を得ている企業には資金も集まってくるようだ。ゲーマーをはじめ多くの人に使われている人気チャットのプラットフォームであるDiscordがさらなる資金調達で1億4000万ドル(約144億8000万円)を調達し、月間アクティブユーザー数も1年前の2倍となる1億4000万人に達するという。

Discordに近い複数の情報源は今回のラウンドの会社評価額が70億ドル(約7238億円)だったと明かした。これはわずか6カ月前の評価額の2倍にあたる。

我々はDiscordがシリーズHラウンドの調達総額1億4000万ドル、評価額は70億ドルに達する見込みだと書いている。これは同社がデラウェア州当局提出した会社情報によるもので、最初に発見したのはPrime Unicorn Indexだった。つまりDiscordがすでに調達した1億ドル(約103億4000万円)にさらに4000万ドル(約41億4000万円)を調達する(そしておそらくはすでに調達した)ことを意味する(我々はアップデートでこの部分を確認した)。

Discordの共同創業者でCEOのJason Citron(ジェイソン・シトロン)氏は声明でこう述べた。

信じられないほど多様なコミュニティがDiscordを集まる場所に選び、驚くほどの成長を達成できたことを光栄に思い、また身の引き締まる思いをしています。2021年に向けて、無料サービスと有料のサブスクリプション、Nitrの双方をさらに改善するために調達した資金役立てる予定です。

今回のラウンドはGreenoaks Capitalがリードし、Index Venturesも参加していることを複数の情報源が確認している。Greenoaks Capitalの創業者でマネージングパートナーであるNeil Mehta(ニール・メタ)氏は次のように述べている。

(Greenoaksは)ゲームをプレイするにも、レシピを共有するにも、ビジネス上で共同作業するにもコミュニティが集まるのに最適な場所がDiscordだと信じています。これは人々の交流の方法が限りなくイノベーションを続け、成長し、最終的には世界中の何十億もの人々をつなぐ場所となるはずです。Discordチームとのパートナーシップを長期的な続けることができることは幸運です。

PrimeUnicornのレポートは、数週間前のTechCrunchの記事を裏づけてる。情報源は同社が2020年11月末に最大70億ドルの評価額でラウンドを実施中だと確認した(我々はこの評価額が事実かどうか確認しようとしている)。

今回のラウンドの情報はしばらく前から流れており、一部では「未公開のスタートアップの上場を準備する「プレIPOラウンド」だとしていた。Prime UnicornはDiscordの今回のラウンドでの1株あたりの評価価格は280.2487ドルで、シリーズGでは144.1809ドルだったとしている。

同社の既存投資家はGreylock、IVP、Spark Capital、Tencent、Benchmarkなどだ。ラウンドHの1億4000万ドルを含めてスタートアップが調達した総額は4億2000万ドル(約434億3000万円)になる。

これほど大規模な資金調達は、コミュニケーションのためのバーチャルチャンンルが現在の我々の生活の重要な部分だというの証であるのはもちろんだが、Discord自体の急成長をも意味する。

Discordはもともと人気オンラインゲームをプレイする際のコミュニケーションチャネルだった。簡単にいえば、誕生当初はゲームの副産物だ。ジェイソン・シトロン氏とStanislav Vishnevskiy(スタニスラフ・ヴィシュネフスキー)氏はHammer&Chiselゲームスタジオの一部として、ゲーム(自身で開発したものはもちろん、サードパーティーのゲームも含めたすべてのゲーム)をプレイしながら戦術その他の情報を共有するツールとしてスタートした。

Amazon(アマゾン)が提供するゲームストリーミングサービスのTwitchやeスポーツののプラットフォームでは、プレイヤーと観客の双方が「今画面で何が起きてきるのか」についてリアルタイムで解説が得られる場所を持つことが特に重要になる。

今や本格的ゲームだけでなくカジュアルゲームも、マスマーケットをターゲットとしなければならない。そこでゲーマーのコミュニケーションツールも大規模化が自然の流れとなる。事実、Discordの成長は爆発的で、月間アクティブユーザー数は2020年は2倍の1億4000万人に達し、1日あたりのダウンロード数は80万に上るという。

DiscordはAmongUsのようなバイラルに人気が出たゲームで使われており、ゲーム以外の用途にも拡張されている。こうしたことが追い風の要因だろう。

同社は2020年初めに35億ドル(約3618億7000万円)の評価額で1億ドル(約103億4000万円)を調達しており、その時点でシトロン氏とヴィシュネフスキー氏は、Discordのプラットフォームがすでにゲームという分野を超えた存在になっていることを示唆した。両氏はこう述べている。

多くのユーザーにとってDiscordはもはやビデオゲームの付随サービスではないことが判明した。これは情報の交換にせよ、充実した時間を過ごすためにせよ、 単に親しい友だちと居心地よく会話するためにせよ、Discordが最適なツールとなっている。

しかしながら、ゲーム世界の外への成長は同時に痛みをともなうものでもあった。Discordは、プラットフォームで白人至上主義のような不快なメンバーと戦わざるを得なかった。同社はこうした戦いは峠を過ぎており、プラットフォーム上にBlack Lives Matterの主催者もいるし、そもそも非政治的なソーシャルメディアのインフルエンサーも多いと主張している。ただしすべての批判者を納得させるところまではいっていないようだ。まだ過去の話ではなく引き続き取り組むべき課題なのだろう。しかしこれは他のソーシャルプラットフォームも同じだ。

Data & Society Research Instituteのメディアバイアスの上席研究員であるJoan Donovan(ジョーン・ドノヴァン)氏は、数年前にSlate のインタビューで「Discordはが暴露や嫌がらせキャンペーンの組織化の中心」になっていると非難した。

ラウンドGの直後にラウンドHで1億4000万ドルもの資金調達が実施できたことは興味深い。同社とその投資家はDiscordがゲーマーだけでなく、オンラインに参加している多くの々のために優れたコミュニケーションのプラットフォームとなる明確な野心を持っていまる。ただしこれは巨額の資金を要する野心だ。

しかし野心の一部はすでに実現されている。Discordの画面共有機能がデスクトップからiOSとAndroidアプリに拡張されるという最近のニュースがいい例となる(Twitterが最近Squadを買収したことに似ている)。

ラウンドHの1億ドルの資金調達をリードしたIndexVenturesのDanny Rimer(ダニー・リマー)氏、「Facebookのように投稿をそのまま表示するのではなく、(Discordは)コンテキストを含めたコミュニティにおける有体験を提供します。Slackがビジネスチャットで果たしている役割をDiscordはソーシャル分野の会話で果たすでしょう」と述べている。

なおPrime Unicorn は、シリーズHラウンドでは「精算時に残余財産があった場合の分配をすべてのラウンドの参加者を同一権利として扱うパリパス方式によるものとしていることに注意するよう」促している。

Prime UnicornIndex_Discord_COI_12112020(デラウェア州提出文書・PDF)

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Discord資金調達ゲーム

画像クレジット:Discord

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

MITメディアラボの新所長は元NASA副長官のデイヴァ・ニューマン教授

学際的研究・開発のパイオニアであり各方面に大きな影響を与えてきたMIT Media Lab(マサチューセッツ工科大学メディアラボ)の新所長はいわば裏庭から選ばれた(MIT News記事)。候補者は世界中に数多くいたが、オバマ政権におけるNASA副長官で現在MITで航空工学と宇宙工学の教授を務めるDava Newman(デイヴァ・ニューマン)氏がこの重要な知的ハブを指揮することになった。

Media Labは自由な気風の中、知性とテクノロジーとの融合によって数々の業績を上げてきた。しかし伊藤穰一氏の辞任以後、1年以上リーダー不在の状態が続いていた。伊藤氏の辞任は児童買春容疑で有罪となって自殺したJeffrey Epstein(ジェフリー・エプスタイン)氏がメディアラボに出資していたことが明らかとなったことによる。報道によれば見返りとしてエプスタイン氏はメディアラボの研究に特別のアクセスが許されていたという。

新所長はまったく予想外の人選ではない(ニューマン氏とMITの関係は何十年も前からだ)が、新しい血を入れることになったことは確かだ。メディアラボは60人の候補者を選び、うち13人と面接したという。最終的にニューマン教授を選んだ理由についてMITのHashim Sarkis(ハシム・サルキス)学部長は任命を発表したメールで次のように述べている。

候補者はいずれもそれぞれの分野でトップクラスの人々でしたが、ニューマン教授は、研究の先駆性、幅広い学際的な取り組み、強いリーダーシップで際立っていました。ニューマン教授はデザイナー、思想家、メーカー、エンジニア、教育者、メンター、組織者、コミュニケーター、未来派、ヒューマニストであり、そして重要なことですが楽観主義者なのです。

ニューマン教授は先週TechchCrunchの宇宙関連の話題を扱うセッション、TC Sessions:Spaceで講演を行い、偶然にも(ではないかもしれないが)、NASAが準備している有人月面探査であるアルテミス計画のような大きなプロジェクトに参加することの重要性についてビジョンを述べた。


TC Sessions:Space

「(アルテミス計画には)科学者とエンジニアが集まるでしょうが、プロジェクトにはアーティストが必要であり、デザイナーも必要です。つまりビジョナリーが必要なのです」と彼女は述べた。

リーダーが持つべき重要な資質は指揮下に入る人々の話によく耳を傾けることだが、ニューマン教授はまさにこの点から仕事を始めるようだ。MITの発表声明でこう述べている。

多くの人々に聞き取りを行って学んでいくことから仕事を始めるつもりです。人々が働く現場に出向き、素晴らしいアイデアをすべてテーブルの上に置いてもらうよう勧めます。これが教職員、学生、スタッフなどコミュニティ全体と協力し、人々の創造性を活用して前進していくための最善の方法だと思います。仕事を始めるのが待ちきれません。

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タグ:MITNASA

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GitHubがCookie追放を発表、わずらわしいCookieバナーも消える

Microsoft(マイクロソフト)傘下のGitHubは12月17日、必須ではないCookieをプラットフォームからすべて追放すると発表した。これにより、GitHub.comとそのサブドメインにCookie配置への同意を求めるバナーが表示されなくなる。仕事に取りかかる前のわずらわしいクリックが1つ少なくなるわけだ。

GitHubのCEOであるNat Friedman(ナット・フリードマン)氏は声明に「Cookieバナーが好きな人間は誰もいない。しかしCookieは至るところにある!」と書いている。

わずらわしいバナーを表示しなければならない理由はEUのGDPR(一般データ保護規則)やこれに相当する米国での規制によるものだ。Cookieの使用がオンラインにおけるプライバシーを低下させるおそれがあるため、ユーザーにCookieを拒否する権利を与えるために、デベロッパーはCookieバナーを表示する義務を課せられている。なるほどこうした規制はユーザー保護を最大の狙いとしているが、その結果はどんなサイトを見るにもまずCookieバナーをクリックしなければならないという状態だ。

フリードマン氏は「GitHubは開発者のプライバシー保護を追求している。しかしCookieバナーはいらだたしい。そこで解決策を探すことにした。その方法はすぐ判明した。必須ではないCookieを使用しなければいいのだ。まったく簡単なことだった」と書いている。

公平を期すためにいえば、GitHubのようなデベロッパー向けサービスの場合、通常のコンテンツサイトよりCookie廃止は簡単だったはずだ。実際、このTechCrunchサイトを開くときにCookieバナーが表示される読者は多いはずだ(もちろ私はこれに気づいているが、大勢の読者がコメントで指摘してくるに違いない)。結局のところGitHubは有料サービスを提供しているし、オーディエンスの大半は十分に知識があるので拡張機能を使用して不要なCookieやトラッカーをブロックしているに違いない。そのためCookieでは、さほど意味あるデータは収集できないのかもしれない。とはいえGitHubはCookie追放を決めた最初の大規模サイトの1つであり、多少でもトレンドを動かす可能性がある。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:GitHubCookieプライバシー

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グラフィックデザインのように作業するブラウザで動く共同動画編集ツール「Scenery」

Mike Folgner(マイク・フォルグナー)氏は動画編集ツールの分野で十分な実績を持っている。創立したJumpcut.comはYahoo(未訳記事)が、 SnappyTVはTwitter(未訳記事)が買収した。しかしフォルグナー氏は「動画編集の分野にはまだまだ仕事が残っている」とMediumに書いている

「現在、生産性ソフトウェアは、デスクトップアプリからウェブアプリによるストリーミングへ大きく飛躍しました。ところが、こうしたテクノロジーの大幅な進歩にもかかわらず、プロ用の動画編集ツールはこの飛躍に遅れを取っています。WebGL、WASMおよびその他、進歩は続いています。ウェブの本質的に適合したパフォーマンスが高く、機能豊富なアプリケーションを構築できるはずです」。

フォルグナー氏はJumpcutとSnappyTVの共同ファウンダーであるRyan Cunningham(ライアン・カニンガム)氏、JumpcutのリードエンジニアであるAshot Petrosian(アショト・ペトロシアン)氏と協力してTensilという新しいスタートアップを創立した。Tensilの最初のプロダクトである「Scenery」はブラウザで動作するフル機能の動画編集ソフトだ。サイトに登録すればアルファ版をテストできる。同社最初の主要エンジニアは Chris Martin(クリス・マーティン)氏だ。

TensilはFreestyleVCがリードしたラウンドで389万ドル(約4億円)の資金を調達した。このラウンドにはPrecursor Ventures、Wireframe Ventures、Transmedia Capital、Uphonest Capital、Rembrandt Venture Partners、Kayvon Beykpour、Kevin Weil、Elizabeth Weil、Russ Fradin、Ross Walker、Joe Bernstein、Keith Coleman、David Pidwell、Ryan Peirce Don Ryanが参加している。

画像クレジット:Tensil

まだ開発途上であるため実際にプロダクトをテストできなかったがフォルグナー氏、Petrosianに電話取材してビジョンを聞くことができた。ペトロシアン氏はこう語っている。

少し立ち止まって現代のビデオエディターがどうあるべきか考えるなら、1970年に構築されたままのツールでいいわけはないと気づくでしょう。Sceneryは、既存ビデオエディターが標準的に採用するのはビデオクリップを時間軸に沿って並べるタイムラインビューです。しかし我々のSceneryは2次元のキャンバスモデルです。つまりビデオエディターがグラフィックデザイナーのように考えることを可能にします。

ペトロシアン氏は「いい換えれば、Sceneryは現在のビデオ制作と編集のニーズをもっと適切に反映してチームが迅速かつ協調的に動画を制作できるようにすることを目的としています」という。実際、彼は、Sceneryを単なる編集ツールだと考えることは十分な認識でないと述べた。「動画制作システムに近い」ものと考えるべきだという。

「ビジュアルコレボレーションツールのFigmaがデザイン分野で新しいメンバーをリモートで簡単にチームに加えることができるようにしたのと同様、Sceneryもプロセスをブラウザに移行させることにより新しい協力者を簡単に編集プロセスに参加させることが可能になります」とフォルグナー氏は述べた。

「結局、動画編集はチームスポーツとして考えるべきなのです。我々はSceneryの未来に興奮しています」とフォルグナー氏は結んだ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Scenery動画編集

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2020年に収入を9倍に伸ばした生産性ツールのClickUpがシリーズBの会社評価額が10億ドルのユニコーンに

生産性ツールのスタートアップ、ClickUpが最初のベンチャー資金調達からわずか6カ月後にシリーズBのラウンドを実施し、1億ドル(約103億5000万円)を調達(ClickUpリリース)した(第一報はBloombergが報じている)。この際の会社評価額は10億ドル(1035億5000万円)に達したという。

同社は過去数カ月で、ユーザー数を2倍の200万人にするなど驚異的な成長を遂げて新しいユニコーンの地位を確立している。プレスリリースによれば、同社は2020年に入ってから収入を9倍に伸ばしている。

今回の1億ドルのラウンドは、カナダの企業Georgianがリードし、6月に3500万ドル(約36億2000万円)のシリーズAをリードしたCraft Venturesも参加した。 高い評価額の生産性ソフトウェア分野における大規模なユーザー数増大を受けて投資意欲が極めて高くなっていることによる。これはパンデミックにより企業がリモートワークに前向きに取り組むようになった姿勢の変化も追い風としている。

ClickUpは今後も社員数とプロダクトのラインナップを拡張するためにさらに資本調達を行う予定だ。CEOのZeb Evans(ゼブ・エヴァンス)氏はTechCrunchに対して「我々は前回の資金調達時から規模を2倍にし、現在社員200人を擁しているが、向こう数カ月のうちにさらに2倍にしたいと考えている」と語った。

ClickUpの生産性ソフトの特長は表計算、プロジェクト管理、カレンダーなど多数のツールを単一のプラットフォームに統合し、ユーザーが新たにインストールし習熟する必要があるソフトの数を大きく削減できるところにある。 最近、同社のエンジニアはメールなどのツールをユーザーが独自のワークフローに統合できるよう開発を進めている。

エヴァンス氏は「単にいくつかのツールを1つのアプリにまとめるだけでなく、多数のツールに習熟するための時間とフラストレーションをなくし企業が求める本質的なソリューションを提供します。これによって業務の効率を大きくアップできます」と語った。

iOSアプリは2020年12月15日にアップデート版がリリースされたが(Android版は翌日予定)、同社は今後も長期的にアプリを毎週更新して新しいエコシステムを構築していくという。

ただしエヴァンス氏は今回調達した資金のバーンレートについては明らかにしなかった。「この(資金で)しばらく保つと思います。しかし正直にいうと、シリーズAのときも同じことをいったかもしれません(が、すぐにシリーズBが必要となった)」とエバンス氏は語っている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:ClickUp資金調達生産性向上ツール

画像クレジット:ClikcUP

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IndiegogoがJETROと提携して日本の起業家支援、グローバル・ファストトラック導入へ

IndiegogoはGlobal Fast Track Program(グローバル・ファストトラック・プログラム)を日本に拡大(Indiegogoリリース)して起業家のクラウドファンディングを支援しようと計画している。

Indiegogoは数年前に中国でこのプログラムをスタート(未訳記事)させた。狙いはその市場の起業家にグローバルな消費者、特に米国とヨーロッパの消費者向けのキャンペーン作成に指針を与え必要な支援を提供することだ。

Indiegogoのゼネラルマネージャーでグローバル戦略の責任者、Lu Li(リ・ルー)氏は私の取材に対し「このプログラムはすでに670人以上の起業家がキャンペーンを開始するのをサポートしており、そのうち40のキャンペーンが100万ドル(約1億円)以上を調達しました」と語っている。これをサポートするために、Indiegogoは中国に「最も質の高いキャンペーンを成功させるためにセールスとマーケティングにこの上なく真剣に取り組む」チームを置いているという。

日本でもすでにIndiegogoを利用したキャンペーンがいくつも生まれているが、同社は日本でも中国におけるのと同様の方法でその存在を拡大する計画だ。これを実現するためIndiegogogは日本の公的な輸出支援組織であるJETROと提携した。

JETROサンフランシスコ事務所次長の樽谷範哉(たるたに・のりや)氏はこの提携について次のような声明を発表した。

JETROとIndiegogoのパートナーシップを発表できることを大変うれしく思います。最近、日本のクラウドファンディングは年率40%以上の伸びを示しており、日本のスタートアップ企業からクラウドファンディングを活用して素晴らしい製品を世界市場に投入する方法についての問い合わせが数多く寄せられるようになりました。私たちのコラボレーションは海外に進出する日本のスタートアップへの支援となることはもちろん、Indiegogoの日本におけるスタートアップ援助活動を含め、我々双方の事業に有益であると確信しています。

これを機に、Indiegogoは、日本円ベースのキャンペーンのサポートを開始する。またMade in Japanというコレクションによって世界に日本製品の紹介を開始するという。

IndiegogoのCEOであるAndy Yang(アンディー・ヤン)氏は、「市場を支配する既存の巨大企業に挑戦する最近の活気に満ちたスタートアップエコシステムを日本に展開するのにいまはまさに適切な時期です」と述べた。

ヤン氏は同社はキャッシュフローはプラスであり、パンデミック中も成長を続けているとし、またクラウドファンディング業界の現状についてもこう述べている。

クラウドファンディングは2016年にブームとなり大きな盛り上がりを見せたものの、その後業界全体として困難な時期を経験しました。起業家、出資者ともにクラウドファンディングの仕組みをさらに理解し、何を期待すべきか学ぶ必要がある時期となりました。しかしクラウドファンディングは絶えず進歩しているプロセスです。【略】現在、新しい販売チャネルを見つけるようとする起業家の意欲が強い追い風となっています

【Japan編集部】JETROによるIndiegogoとの提携説明資料(日本語 PDF)

カテゴリー:ネットサービス
タグ:IndiegogoJETRO日本クラウドファンディング

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アダルト動画配信のPornhubが数百万の投稿を全面凍結、違法動画掲載の非難を受けて

アダルト動画大手のカナダのサイトであるPornhubがユーザー投稿の動画数百万の公開を停止するという前例のない措置を取ったことを発表した。同社は「ユーザー生成プラットフォームの歴史の中で、最も包括的なセーフガード措置」と呼んでいる。これは「サイトにはレイプ動画がはびこっている」と非難したThe New York Timesの意見記事を受けたものだ。

Pornhubは先週、アップロードを認証済みユーザーのみに制限すると発表した。Motherboardが確認した(VICE記事)とおり、同サービスは、既存の提携サイトまたはモデルプログラムのメンバーによってアップロードされた動画のみを公開し、それ以外のコンテンツを動画を凍結している。一時停止されたコンテンツは2021年初めから開始されるPornhubによる審査の対象となる。

Pornubは声明で「新しい約款はユーザー生成コンテンツプラットフォーム中で間違いなく最も厳しいものだ」と述べている。「これは、Pornhubコンテンツはすべてが認証済みユーザーからのアップロードであることを要求する。Facebook(フェイスブック)、Instagram、TikTok、YouTube、Snapchat、Twitter(ツイッター)などのプラットフォームもこういう要求はしていない」と同社は述べている。

New York Timesは悪質な動画が存在する(一部は直接確認したという)というNicholas Kristof(ニコラス・クリストフ)氏の記事の中で「検索エンジン、銀行、クレジットカード会社が子どもや意識不明の女性への性的暴行を収益化する会社を援助する必要はない。PayPalがPornhubとの協力を停止できるのなら、American Express、Mastercard、Visaもそうできるはずだ」と書いている。

主要なクレジットカード会社も結局この主張を受け入れた。MastercardとVisaが続き、DiscoverもPornhubのサポートを停止すると発表した(Bloomberg記事)。これはPornhubにすでに発表した以上の強い行動を取る圧力となった。

Pornhubは声明を発表し、インターネット監視団体であるInternet Watch Foundationがサイトで118件の児童虐待を発見したと述べたことについて「118件というのは根拠のない数字だ」と反発した。同社はアダルトコンテンツに重点を置いているために攻撃の的に選ばれたとしてこう述べている。

Pornhubが攻撃されたのは約款や他のサービスとの比較によるものではない。我々がアダルトコンテンツのプラットフォームであるためにターゲットにされたことは明白だ。攻撃者はこの50年、プレイボーイ、国立芸術基金、性教育、LGBTQの権利、女性の権利、さらには米国図書館協会さえ悪魔のように非難してきた。今回はそれがPornhubの番になった。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Pornhub

画像クレジット:Pornhub

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eコマースロジスティックスのShippitが23.6億円調達、東南アジア事業拡大を目指す

Shippit(オーストラリア、シドニー)のeコマースのロジスティックスのプラットフォーム、ShippitがTiger GlobalがリードするラウンドBで3000万豪ドル(約23億6000万円)を調達することに成功した。ラウンドにはJason Lengaも加わっている。同社はこの資金により東南アジアにおける存在を拡大する計画だ。2014年に創立されたShippitはロジスティックス全般を効率化することを目的とする。同社は発注に対する最適の配送業者の選定、積荷のトラッキング、返品の処理などを自動化するテクノロジーを持つ。

今回のシリーズBによりShipitは2017年以降、4100万豪ドル(約32億2000万円)を調達したことになる。資金は東南アジアを中心とする事業拡大に使用され、ソフトウェア開発者50人を含む100人を新規採用し、社員数を倍増させる計画だ。

Shippitによれば、現在オーストラリアでSephora、Target、Big W、Temple&Websterなど数千の小売業者の配送を月に500万件処理しているという。同社は5月にシンガポール、8月にマレーシアにオフィスを開設した。

共同ファウンダーで共同CEOのWilliam On(ウィリアム・オン)氏はTechCrunchの取材に対してこう語った。

東南アジアは5年以内に世界最大のeコマース市場になると予測されています。我々がターゲットとする市場は東南アジアだけですでにオーストラリアの5倍、米国の2倍の規模です。我々はフィリピンとインドネシアへの事業拡大を検討しています。東南アジア事業については今後3年間、最低でも前年比100%の成長を見込んでいます。

オン氏はまた「オーストラリにおけるShippitの事業も、過去12カ月で取扱量が3倍に増加しました」と述べた。

eコマースが拡大する中、新型コロナウイルス流行によるサプライチェーンとロジスティクスチェーンの不安定性があらわになったことはShippitのようなロジスティックスサービスの重要性を強調することとなった。アジア太平洋地域の電子商取引はパンデミック以前に急成長路線に乗っていた。Forresterによれば、こ同地域のオンライン小売売上高は2019年の1兆5000億ドル(約156兆円)から、2024年には2兆5000億ドル(約260兆円)へと、年平均成長率11.3%で成長すると予測している。

ライバルのスタートアップにはShipStation、EasyShip、Shippoなどがある。Shippitの競争戦略は、オンラインショッピングをできるかぎりシンプルにすることだという。このためオンラインショッピングカートと運送業者割当エンジンの統合などを目指している。これにより注文と同時に最適な運送業者の
決定までが自動的に行われるようになる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Shippiteコマース物流東南アジア

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アップルの新ヘッドフォンAirPods Maxファーストインプレッション、超高品質で非常に重くサウンドはしっかりしている

Apple(アップル)の新しいオーバーイヤーヘッドフォン、AirPods Maxを使ってみた。ただし手にしてからまだ24時間経っていない。こんな短期間では本式のレビューは書けないそうにない。しかし「第一印象」には大いに反響があるようだ。私も読者と共有したい体験をした。以下の報告は主にプロダクトの品質についてだが、最初に聴いてみたときの感想も含まれている。

断っておくが、これは現在私が受けている印象であり、テストは今後も続けるつもりなので評価もそれに応じて深化すると期待している。レビューではないにしろ、ある種のレビューのドラフトと考えていただきたい。いわばプロトレビューだ。

まず、これはゴージャスな製品だ。アルミニウムのイヤーカップは美しい。左右のイヤーカップを接続するヘッドバンドはおそろしく頑丈。ヘッドバンドのメッシュネット部分は高級家具のように緻密だ。伸縮するステムのデザインも仕上げも優れている。ステムは高級車のエンジンのピストンのように精密にヘッドバンド部にはめ込まれており、スムーズに引き出せる。

メッシュ、イヤーパッド、巧妙な(いまではそれほど珍しくなくなったが)マグネットセンタリングがきちんと固定する。イヤーカップカバーはシームレスにフィットする。それぞれのイヤーカップはアルミニウム板から一体成型されている。コストパフォーマンス?米国では550ドル(日本では税抜6万1800円)は高くない。素材と仕上げからいって、AirPods Maxははるかに高価な製品だと感じさせるものだ。

ただし、この「レビューのドラフト」でも触れておかねばならないトレードオフがある。AirPods Maxは重い。ヘッドフォンの重さが気になるなら購入はお勧めできない。この製品は強く自己主張する。まっすぐに座るか、背もたれに寄りかかる姿勢が確実に要求される。家の中を歩き回り、床から子供の服やおもちゃを拾ったりするなら、ヘッドフォンの重量で頭が前方に引っ張られることを感じるだろう。重量は386gありBeats2セットよりさらに100g以上重い。ハイエンドヘッドフォンのユーザーならこの重さは予期しているかもしれない。しかしそのようなハイエンドのユーザーは少ないだろう。この点については慣れもあるので、後日もっと詳しく説明したい。

またいくつかデザイン上の問題も見られた。ピストン方式で伸縮するイヤカップは驚くべき仕組みだが、カップ自体のスプリング内蔵バックルの可動範囲が限られているため、BoseのQuietComfort 35 IIやSonyのWH-1000XM4といったヘッドフォンのように内側に折り畳むことができない。これは不便だ。

これまでのところコントロール類は悪くない。ダイヤル式つまみはApple Watchとほぼ同様の感触だが、多少抵抗が強い。つまみを長押しするか「Hey Siri」と呼びかけることでSiriの機能が起動する。これも問題ない。イヤーカップは精密な位置検出機能を内蔵するので、1つのイヤーカップを軽く持ち上げるだけで再生を一時停止できる。

ヘッドフォンを頭から外して下に置くとオフになる。電源ボタンはない。これは非常に自然で、いかにもアップルらしい仕組みだ。頭にかければ使える。外せば停止する。非常に簡単だ。

充電器は同梱されていないが、どんな電源アダプタからでも充電できる。アップルによれば5分間の充電で1.5時間作動するというが、急速充電はサポートされていない。USB充電の場合、出力電力と無関係に2時間だ。

BoseやSonyの製品と異なり、3.5mmケーブルが付属していないので飛行機のシートバックシステムその他を音源としたい場合は35ドル(約3600円)の追加支出が必要となる。

旅行といえば、上で触れたように折り畳んで格納できないこと、メッシュの素材、重量その他の方向性は明確で、ごく初期の印象でも旅行に持って出るような製品ではないと感じた。それに製品のケースがまた見た目どおり具合の悪いしろものだ。残念ながらケースはMagSafeデュアル充電パッドと同じくらい危っかしく 安っぽく、汚れやすい。到底トラベルケースに必要な能力を備えていない。だいたい見た目も人間のお尻に似ている。

サウンドは素晴らしい。Beatsヘッドフォンのような騒がしいコンサート会場向きの低音を効かせた音ではない。低音は十分に出ているが、はるかにニュアンスの豊富な音だ。全周波数帯で鮮明な音作りがされている。映画を観たり、音楽を聴いたり、電話で会話したりしてみたが、どのユースケースでも素晴らしい音だった。たとえば空間オーディオは大型のスピーカードライバーと耳を覆うイヤーカップによって大幅に改善されている。Atmosのコンテンツで試してみたが、オーディオの方向定位やパンは非常に巧妙だった。iOS デバイスを通じて動画を観た場合、巨大な音空間内にいてその中心がデバイスのスクリーンであるように感じる。ヘッドフォンを通して音を聞いているとは思えず、まさにその部屋にいるように感じる。これは信じられないほどすごい。

と、まあ現在のところはそんなことろだ。これからも引き続きチェックしていくつもりだ。いまいえるのは「これまでのところ超高品質で非常に重くサウンドはしっかりしている」ということになる。

興味のある読者のためにいっておくと、私はレイテンシーをテストする予定だが、セットアップにコーディングが必要なので、まだ結果を報告できる段階にない。

【更新】有線接続によるレイテンシーをテストしたが、問題ないようだ。

オーディオ関係で最も多かった質問の1つに答えておこう。これは特にポッドキャスターから尋ねられた点だ。有線接続すればレイテンシーはなくなる(ツールでテストはしていない)。つまりポッドキャスティングとオーディオミキシング作業のために利用できる。ただし35ドルのケーブルが必要だ。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleAirPods Maxヘッドフォンレビュー

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

マイクロソフトが反復の多い作業のワークフローを効率化するPower Automateの機能を強化するProcess Advisorを公開

Power Automateは、企業における反復の多い作業のワークフローを効率化することを目的とするMicrosoft(マイクロソフト)のプラットフォームだ(以前のMicrosoft Flow)。こうしたRPA(ロボット化によるプロセスオートメーション)ツールの市場は現在活況を呈しており、マイクロソフトがこの分野の強化に力を入れるのは驚くにあたらない。数カ月前、マイクロソフトのチームはSoftomotiveを買収し、同社のテクノロジーでPower Automate Desktopを立ち上げた。これは、ユーザーがレガシーのデスクトップアプリケーションのワークフローを自動化するのを助ける。

今回のニュースの目玉(Microsoftリリース)は、マイクロソフトがProcess Advisorという新ツールをプレビュー公開したことだ。これは業務のさまざまなアクティビティを可視化するプロセスマイニングツールの一種だ。デベロッパーと業務のユーザーが協力して自動化プロセスを作成できるコラボレーション環境が提供される。

業務を実施している企業は、特定のプロセスがどのように機能するのか最もよく知るユーザーだ。デベロッパーはオートメーションの専門家であっても特定企業における特定業務プロセスの詳細は知らない。Process Advisorを使用すると、たとえば払い戻し処理にあたってどんな活動が行われたかログを取得してデベロッパーに送信できる。

同様に重要なのはこのシステムが既存プロセスのボトルネックを特定できる点だ。その部分を自動化することにより既存のワークフローを大幅にスピードアップすることができる。

画像クレジット:Microsoft

マイクロソフトのローコードアプリケーション担当コーポレートバイスプレジデントのCharles Lamanna(チャールズ・ラマンナ)氏は取材に答えてこう述べている。

Power Platformについて以前から強調してきたことに戻りますが、困難な作業ですが開発はチームの努力だという点です。これがマイクロソフトの努力の焦点の1つです。デベロッパーとビジネスの現場は通常、接点がありません。こうした人々の間にコラボレーションできる環境を作り、スムーズに共同作業できるようにすることが目的です。ロボットを構築して自動化を行う専門家と、毎日プロセスを実行するビジネスユーザーを実際に結び付けることがオートメーションに素晴らしい結果を産みます。

このツールはPower Automateのバックエンドで作動し、ユーザーが何をどのように使っているか、あらゆる操作を正確にキャプチャーする。次にこの情報はすべてクラウドにアップロードされる。払い戻しのような単純な作業であれば動作を5〜6回記録するだけでPower Automateのシステムはプロセスをマッピングできる。ワークフローが複雑、特異である場合にはプロセスを構築にあたって何度も記録を得ることが必要になる場合もある。

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ラマンナ氏が指摘するように、企業がワークフローとプロセスマップを構築することは自動化のROI(投資効果)を正確に把握するのにも役立つ。

ワークフローマップは自動化を構築するために必須ですが、各ステップでどのくらいの時間がかかった把握し、各自動化のROIを把握するのにも役立ちます。Process Advisorは、今後登場するこれらすべてのローコード / ノーコードテクノロジに採用される最も重要なエンジンの1つになると考えています。企業はリソースを振り向ける価値がある箇所、つまスタッフをトレーニングし、アプリを構築し、AIを利用する価値がある作業を特定できます。効率化を要する部分がわかれば引き続きPower Automateを利用してプロセス・ロボット化していくことができます。

ラマンナ氏は、これをマーケティングにおいてROI(投資効果)を初めて定量化できるようになったデジタル広告の出現に例えた。

PowerAutomateのプロセスマイニング機能は現在プレビュー版として利用できる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook