“置き配”は再配達率を減らす救世主になるか、置き配バッグ「OKIPPA」が3.5億円調達

スマホアプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA」を展開するYperは4月24日、ニッセイ・キャピタルとみずほキャピタルを引受先とした第三者割当増資により3億5000万円を調達したことを明らかにした。

同社にとっては昨年ニッセイキャピタルから5000万円を調達して以来となる、シリーズAラウンドという位置付け。調達した資金を活用してバッグ量産体制の整備と人材採用、経営体制の強化を進めながら国内における再配達率の改善を目指していく。

アプリ連動型の「置き配バッグ」を展開

過去に何度か紹介しているけれど、OKIPPAは狭いスペースでも手軽に活用できる“簡易的な宅配ボックス”のような置き配バッグだ。普段は手のひらサイズに折りたたむことができ、設置するための工事も不要。玄関口に収納したバッグをかけておけば置き配を利用できる。

バッグの最大容量は57リットルで耐荷重は13kg。拡げると割と大きな荷物も入れることができ、撥水加工も施されている。盗難が心配なユーザー向けに、アプリのプレミアムプランとして東京海上日動と共同開発した置き配保険も展開済みだ。

またバッグ以外のプロダクトとして、YperではOKIPPAと連動したスマホアプリを手がけている。

このアプリではバッグに荷物が預入された際に通知が届く仕組みになっているほか、ヤマト運輸や日本郵便など配送会社5社に再配達依頼ができる機能、Amazonや楽天を含むECサイトで注文した商品の配送状況を追跡できる機能などを搭載。バッグを持っていないユーザーでも荷物管理用のアプリとして単体で使うことが可能だ。

今回Yperでは同様の特徴を持つ「荷物管理/荷物管理Lite」を吸収合併し、「荷物管理OKIPPA」としてアプリのリニューアルを実施。荷物管理/荷物管理Liteを開発していたチームもYperの開発体制に加わり、さらなる機能拡充と利用者数の拡大を目指していく。

なおOKIPPAの概要や開発背景については以前詳しく紹介しているので、そちらも参考にして頂ければと思う。

複数社が置き配サービス開始、置き配検討会もスタート

「この1年だけでも置き配を取り巻く環境が大きく変わってきた」——。Yperで代表取締役を務める内山智晴氏は2018年から2019年にかけての置き配市場についてそう話す。

同社では最初のプロトタイプを翌年2月に開発した後、4月にクラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げ、9月下旬から一般販売をスタート。現在OKIPPAバッグの累計販売数は全国で1万個を突破しているという。

昨年4月にMakuakeで実施したクラウドファンディングプロジェクトでは、目標を大きく上回り、1800人以上が参加(2000個以上が売約)した

開発当初に置き配サービスをやっていたのはYperとファンケルぐらいだったそうだが、そこから昨年6月に楽天が自社サービス内で置き配に対応。今年2月にはAmazonが試験的に一部エリアで置き配を指定できるようにしたほか、日本郵便も3月からサービスを始めた。

置き配に注目が集まる背景にあるのは再配達率の高さだ。国土交通省の発表では2018年(平成30年)4月期の宅配便再配達率は約15.0%。この数値を2020年度には13%程度まで削減することを目標に掲げている。

近年この課題を解決する有力なソリューションとして注目を集めてきたのが「宅配ロッカー(宅配ボックス)」だったわけだけれど、現時点で十分に普及しているとは言えず、これのみで再配達を劇的に減らすのは難しい。そこで新たな打開策として置き配への関心が高まっているわけだ。

それを象徴するように、3月には国交省と経産省が再配達削減検討に向けて「置き配検討会」を新設。検討会の委員名簿にはアスクルやアマゾンジャパン、日本郵便、楽天、ZOZOなどと並んでYperの名前も含まれている。

「今まではそもそも『置き配』とは何か、明確な定義やルールもなかった。国としてその環境の整備を進めていく検討会に委員として参加できるのは大きい。自分たちとしては当初からOKIPPAを『置き配のインフラ』にすることを目指してやってきた。置き配自体が国主導でスタンダードなものになって行けば、配送会社も積極的に検討しやすくなるし、OKIPPAをどのように活用するか議論もしやすくなる」(内山氏)

ECヘビーユーザーをターゲットにまずは100万個設置へ

Yperでは昨年12月に日本郵便と共同で、OKIPPAによる再配達削減の効果を検証するための実証実験を実施した。この実証実験は東京都杉並区の1000世帯にOKIPPAを無料配布し、約1ヶ月の期間に渡って再配達率への影響を調査するというものだ。

期間内に約6000個の宅配物が配送され、参加者の不在率は約51%だったそう。同実験ではこの51%に当たる約3000個の宅配物を「潜在再配達個数」とし、その内OKIPPAを活用することで受け取れた荷物(OKIPPA受取個数)が占める割合を「再配達削減率」として算出した。

そのロジックに基づくと、週ごとの結果では最大で再配達率を61%削減。トータルではOKIPPAを通じて1744個の荷物を受け取ったことになり、約57%の削減に繋がった。

「OKIPPAのメインターゲットはECサイトで週1回以上買い物をするようなヘビーユーザーで、かつ自宅に宅配ボックスが内容な人たち。彼ら彼女らは一般の消費者に比べて年間で3~4倍ほど荷物を受け取る機会が多く、その人たちに置き配の選択肢を提供できれば再配達率を6割以上削減することも可能だと考えている」(内山氏)

そのためにはそもそもバッグがしっかりと行き届いて使われる状態になっている必要があるし、配送員への認知の拡大なども含めてインフラとして整備される必要もある。内山氏によるとコアのターゲット層がだいたい200万人ほど全国にいると試算しているそうで、当面はその約半数に当たる100万人への提供を目標にしていくという。

現在の1万個から100万個はなかなか簡単ではないようにも思えるが、バッグの普及に関してはすでに複数の施策を始めているようだ。

たとえば消費者に直接販売するだけでなく、事業者と組んでエンドユーザーに無料配布する取り組みを実施。東京電力グループのPinTや建設会社のオープンハウス・アーキテクト経由で、それぞれのサービス利用者などに無料でOKIPPAを提供するB2B2Cモデルにも力を入れている(事業者がバッグを購入しユーザーに提供する仕組み)。

またOKIPPAに限らず置き配サービスの障壁となるオートロックマンション向けにも、それに対応したシステムを開発中だ。

「ドライバーは減っていっている一方で、宅配物の数は増えている。特にB2Cの宅配物の増加がネックで、そこにどうやって対応していくのかは大きな社会課題だ。配送の無駄をなくし配送効率をあげることは不可欠で、置き配は日本の治安の良さを活かした配送方法としてインフラ化できる可能性がある」(内山氏)

OKIPPAバッグが普及すればECサイトなどでOKIPPAの配送プランを作り、コンビニの宅配便取次手数料のようなモデルでのマネタイズも検討していきたいとのこと。今回調達した資金を用いて、月産数十万個単位で生産可能な量産体制を整備し、最低限のインフラを整えるべく事業を加速させるという。

「再配達は誰にとっても無駄なもの。ユーザーにとってはストレスだし、配送会社にとっても負担が大きい。それにも関わらず今はそこに対してコストを払っている。OKIPPAを通じて再配達を減らすことで、誰も損しない形で、サービスとしてもしっかり成長できるような仕組みを目指したい」(内山氏)

Yperのメンバー。左から3人目が代表取締役の内山智晴氏

ペットテックのシロップがチュートリアル徳井氏らから資金調達、ペット領域でD2Cコマースの展開も

写真右からシロップ代表取締役の大久保泰介氏、チュートリアル徳井義実氏

ペットテック領域で2つの事業を展開するシロップは4月23日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資と融資を合わせ、総額で8000万円を調達したことを明らかにした。

今回のラウンドには既存投資家であるFFGベンチャービジネスパートナーズ、ミラティブCFOの伊藤光茂氏、エウレカ共同創業者の西川順氏、獣医師の佐藤貴紀氏に加えて、新規の投資家としてお笑いコンビのチュートリアル・徳井義実氏ら3名の個人投資家が参加している。

過去に調達した金額も含めると、シロップの累計調達額は約1億5000万円。今回の8000万円については前回資金調達を行った2017年12月以降、複数回に分けて集めたものとのことだ。

これまで保護犬猫と飼いたい人をマッチングする「OMUSUBI」とペットライフメディア「ペトこと」を運営してきたシロップ。今後は人材採用を強化しながら両サービスのアップデートを進めるほか、新たなチャレンジとして5月〜6月を目処にD2C事業もスタートする。

また個人投資家として加わった徳井氏は同社の広報担当のような役回りで、共に情報発信やサービス開発に取り組むそう。まずは第1弾として4月24日より読者参加型の連載小説をペトこと上で展開する予定だという。

徳井氏によるとスタートアップに出資するのは今回が初めてとのこと。出資の背景や今後の取り組みについては本人に直接話を聞くことができたので、そちらは明日詳しく紹介したい。

ペット版のPairsと飼い主向けメディアを展開

前回も紹介した通りシロップは「蓄積したデータを用いて、個々の犬猫に最適な情報や商品を提供するペットライフ・プラットフォーム」の構築を目指しているスタートアップだ。

その軸となるのが現在運営するOMUSUBIとペトこと。位置付けとしてはOMUSUBIが人とペットとの“出会い方”を変える役割、そしてペトことが“ペットの育て方”を変える役割を担う。

保護団体と保護犬猫を飼いたいユーザーを繋ぐOMUSUBIの特徴は「保護団体の完全審査制を採用していること」と「転職エージェントのように密なカスタマーサポートを実施していること」の2点だ。譲渡トラブル回避や譲渡率向上のために、保護団体の現地調査や資格調査、運営状況調査などを実施しつつ、お迎えコンシェルジュとしてユーザーのサポートを手厚くすることで細かいニーズを汲み取る。

シロップ代表取締役の大久保泰介氏によると、従来は「例えば1人暮らしはNGなど、条件が厳しいことで応募が入っても実際に譲渡される確率は10〜20%くらいだった」そう。OMUSUBIの場合は上述した特徴などによって、この割合を43%まで高めているという。

現在は募集団体の数が全国で50団体を超え、募集数も増加傾向にあるとのこと。ユーザー側にも主に検索エンジンやソーシャルメディア経由でリーチしていて、2年間で約150件のマッチングを実現。累計応募数は前年比で258%増加、累計譲渡数も160%増加するなど「まだまだ数は小さいが、徐々に成果に結びついてきた」(大久保氏)状況だ。

もう一方のペトことは飼い主向けにお出かけやアウトドアといったライフスタイル系の情報から、獣医療のように専門性の高いトピックまで、幅広いコンテンツを提供するペットライフメディア。「信頼性にこだわっていて、獣医師でも“がん専門医”など領域に特化した専門家が執筆段階から関わっている」(大久保)のがウリで、直近では月間約160万UU、400万PVほどの規模に成長している。

大久保氏の話では記事を読んだユーザーが次のアクションとして、コンテンツ経由でペットと泊まれる宿泊施設を予約したり、グッズをAmazonで購入する事例が多いそう。1ヵ月の流通総額(記事経由の購入金額 / 2019年1月時点)は約9000万円になるという。

蓄積してきたデータやナレッジを活かして事業を加速

今後シロップでは、これまで蓄積してきたデータやコンテンツをもっと活用することで、事業をさらに加速させる方針だ。

OMUSUBIでは以前から大久保氏が「ペット版のPairs」を目指すと言ってきたように、データを用いたレコメンドマッチングの強化に向けてリニューアルを実施する。

「従来は見た目の好みで選びがちだったが、応募者と向き合う中で『前に飼っていた犬と同じ名前だから』『シュナウザーが好きなので(雑種でも)タイプが似ているから』など、様々な要素でマッチングできる可能性があることがわかった。データを上手く使うことで、今までは気づかなかった犬猫との出会いのチャンスを提供し、ペットショップに行かずとも正しくペットを迎えられる窓口を作りたい」(大久保氏)

現在のOMUSUBI。今後は犬猫と飼い主の相性度がスコアリングされる機能を実装し、データを活用したマッチングを実現する計画だ

具体的には飼い主がユーザー登録時に簡単な質問に回答すると、サービス上の犬猫との相性度が表示される機能を実装。そのスコアに基づいて犬猫をレコメンドしていく仕組みを構築する。

「犬猫の種類は300種を超えていて、それぞれがどんな性格で、どのような育て方をするのが適切なのか分からないことがミスマッチを引き起こしている。それが最終的には飼育放棄に繋がり、保護犬猫が増える原因にもなっていた。自分に合った犬猫と出会えるシステムを作ることで、結果的には殺処分問題の解決などにも繋げていきたい」(大久保氏)

OMUSUBI同様にぺトことでもデータの活用を進める。直近ではペットと一緒に行けるスポットを検索できる機能やマイページ機能、各ユーザーごとにパーソナライズしたレコメンド機能などを実装予定。中長期的にはライフログやコミュニティ機能を加えるほか、獣医療など新たな領域にも進出していく計画だという。

D2Cに進出、「ペットライフスタイル企業」として拡大へ

OMUSUBIとペトことに続く「新しい領域」という意味では、5〜6月ごろにリリースを予定しているD2C事業がまさにそうだろう。

1.5兆円のペット市場の中でコマースは半分近くの7200億円を占める重要な領域。今までは大量販促型の生産モデルが基本で、ホームセンターやペットショップといったオフラインの小売店舗でペット用品を購入するケースが多かったが、若い飼い主も増えオンラインでの購買体験のニーズも高まっている。

大久保氏は前回もコマース領域での事業展開については言及していて、ペトことを通じて厳選したグッズを販売する取り組み(販売はBASEを活用)にも着手済み。今後はメディアで蓄積したデータやニーズを基にペトことブランドでオリジナル商品を手がけつつ、自分たちで作らないものはパートナーとタッグを組みながら販売していくモデルを検討しているそうだ。

ペトことの「GOODS」カテゴリではシロップが厳選したグッズが販売されている

「第1弾として、まずはオンラインとも相性の良いフードから始める予定。既存事業が地固めできてきた中でD2Cコマースをしっかり育てていきたい」(大久保氏)

現在シロップの収益源となっているのはOMUSUBIとペトことで連動した広告(アドセンス、タイアップ、アフィリエイト)だが、ゆくゆくはコマースが大きな柱になることを見込んでいる。

加えて大久保氏の頭の中には、国内の1.5億円市場に留まらず事業を広げていく構想があるようだ。成長市場であるアジアへのサービス展開はもちろん、国内でも新たな可能性が見え始めているという。

「ペット市場だと1.5兆円だが、『ペットを飼っている人のライフスタイル』という文脈では電力や保険、自動車、アウトドア、住宅といった周辺の市場も関わってきて、より大きなポテンシャルがある。実際(15才未満の)子供よりペットの数の方が多くなっていることもあり、自分達のクライアントにもこれまでペット市場に入っていなかったような企業が増えた。ペット企業ではなく、ペットライフスタイル企業としてさらなるチャレンジをしていきたい」(大久保氏)

飼料と肥料に革命を起こすハエ技術のムスカ、丸紅に続き伊藤忠と提携し10億円超調達へ

ムスカが有する超抜イエバエは羽化する前に収穫・飼料化されるが、ムスカは遂に飛翔することになる。同社は、TechCrunch Tokyo 2018の「スタートアップバトル」で応募100社超の頂点、最優秀賞に輝いた2016年12月設立のスタートアップ。

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伊藤忠商事は4月23日、ムスカに出資し、戦略的パートナーシップを締結することを発表した。大手商社との提携は、3月1日に発表された丸紅との戦略的パートナーシップ締結に続く快挙だ。

伊藤忠商事の出資額は明らかになっていないが、建設費用10億円と言われるムスカのバイオマスリサイクル設備の第1号プラントへ参画することも併せて発表されたため、十数億規模と見られる。これにより同社はムスカの新株予約権を取得することになる。

ムスカのイエバエを活用したバイオマスリサイクルシステム

現在、世界の深刻な食糧危機により飼料としての魚粉が供給限界に達すると言われているほか、人口増加によって有機肥料市場が今後高騰することも確実。伊藤忠商事はこういった現状を打破するためにムスカとの提携を決めた。

ムスカは45世代1100交配を重ねたイエバエの繁殖技術を擁する

ムスカが擁する45年1100回以上の交配を重ねた超抜イエバエは、通常は2〜3週間かかる生ゴミや糞尿の肥料化を約1週間で処理できるのが特徴。しかも、イエバエの幼虫が出す消化酵素により分解されるため、温室効果ガスの発生量も抑えられるという。

伊藤忠商事の食料カンパニーは、食糧原料から製造加工、中間流通、小売りまで幅広いネットワークを有する

前述のように伊藤忠商事はムスカの1号プラントへ参画するが、そのほか国内外における伊藤忠グループのネットワークを駆使して、既存事業やビジネスとの相乗効果を創出し、将来の食糧危機解消の一翼を担う狙いだ。伊藤忠商事や丸紅のネットワークを活用できることで、日本国内はもちろんムスカの海外への展開も現実のものとなってきた。

クラウド型マニュアル作成ツール開発のスタディストがDNX Venturesなどから8億円超を調達

クラウド型マニュアル作成ツール「Teachme Biz」(ティーチミー・ビズ)を開発・提供しているスタディストは4月22日、米国のDNX Venturesおよび、既存株主である日本ベンチャーキャピタル、セールスフォース・ドットコムの投資部門であるSalesforce Ventures、三井住友海上キャピタル、三菱UFJキャピタルの計5社を引受先とする第三者割当増資により、総額8億2500万円の資金調達を発表した。

Teachme Bizは、国内外の約2500社の有償法人ユーザーを擁するマニュアル作成ツール。ちょっとした社内マニュアルから標準業務手順書(Standard Operating Procedure)までをスマホやタブレット端末で簡単に作成・修正・閲覧できるのが特徴。製造業や小売業、飲食業を中心に導入が進んでいるとのこと。作業手順の可視化や現場浸透を図るための業務基盤として活用している企業もあり、人材育成時間の大幅削減に貢献するほか、単なるマニュアルではなく「正しい手順」であることを保証することが要求されるケースにも役立つという。

今回の資金調達により、サービス提供から5年半が経過したTeachme Bizのマーケティング強化を進め、2020年2月までに大手企業を中心に1000社への新規導入を目指すとのことだ。

猫用ロギングデバイス「Catlog」開発のRABOが初の資金調達

RABOは4月22日、複数のエンジェル投資家を引受先とする第三者割当増資を発表した。シードラウンドでの資金調達で正確な金額は非公開だが、4000万〜6000万円程度になる模様。出資者は、鬼頭秀彰氏(リクルートホールディングス顧問)、松本龍祐氏(メルペイ取締役CPO)、石塚亮氏(メルカリ共同創業者)、鈴木明人氏(GMO Tech代表取締役社長)、家本賢太郎氏(クララオンライン代表取締役社長)など。

同社は、首輪型の猫用ロギングデバイス「Catlog」を開発している2018年2月22日(猫の日)設立のスタートアップ。Catlogは、猫の行動を24時間記録でき、歩行や走行はもちろん、睡眠や飲食などの状況もスマホでチェックできる。2018年10月29日から2019年2月22日までMakuakeにて先行予約販売を実施したところ、支援者423人、支援総額457万1600円が集まり、達成率は1523%となった注目のプロダクトだ。今年8月の発売を予定しており、4月5日からは東京・二子玉川にある「蔦屋家電+」にて展示販売(予約販売)も始まっている。

将来的には、他猫との比較のほか、家族や獣医・キャットシッターとアカウントを共有する機能も実装する予定で、愛猫を多くの人で見守れるようになる。

RABO代表の伊豫愉芸子氏によると、今回の資金調達で同社は採用とマーケティングを強化するとのこと。特に採用については、Catlogの事業推進の肝となる各専門領域に知見が深い人材を、早い段階からメンバーに入れることを目指しているという。

8月にローンチされるCatlogの進捗状況について伊豫氏は「ソフトウェア側は、機械学習を用いた行動分類の精度上げとアプリの主要提供機能のユーザー体験とデザインのブラッシュアップをしています。主要機能を盛り込んだUT(ユーザーテスト)版と、今年8月リリースを予定しているProduction版と機能を分けて開発を進めており、現在はUT版のブラッシュアップをしています」とのこと。そして「具体的には、初期設定の簡略化と、猫の現在の様子、今日の様子、これまでの様子がわかるタイムラインと猫ダイアリー(仮)を主に磨いています」とのこと。

月定額のマイカー賃貸サービス「カルモ」を展開するナイルが15億円を資金調達

月定額で自動車を保有できるサブスクリプションサービス「カルモ」を運営するナイルは4月22日、総額約15億円の資金調達を発表した。このラウンドのリードインベスターは、未来創生2号ファンドを運営するスパークス・グループで、ほかSBIグループ、AOKIグループなど複数の投資家を引受先として第三者割当増資を実施している。

ローンで車を購入するのと、レンタカーやカーシェアリングで一時的に車を借りるサービスとの中間にあたる、車をある程度の長期にわたって「賃貸」するサービス、それがカルモだ。

以前、本誌記事でも紹介しているが、カルモは月額定額料金でメーカー保証付きのディーラー新車に乗れる、個人向けのカーリースサービス。取り扱い車種は国産全メーカーのほぼ全車種を網羅。日本全国に納車が可能だ。

カルモでは、1年から9年の賃貸期間、車種や契約期間によるが月額1万数千円からの定額で利用できる。料金には税金などの法定費用が含まれ、オプションで、返却時の原状回復費用補償や車検整備、消耗品交換などのメンテナンスも月額払いで受けられるプランもある。2019年2月には事前に契約しておくことで、リース契約満了後に乗っていた車がもらえるオプションも加わった。

自家用車を家のように賃貸する「カルモ」

ナイルは2007年1月に、当時大学在学中だった代表取締役社長の高橋飛翔氏により設立された(当時の社名はVOLARE)。設立からしばらくは、ウェブソリューションやSEOなど、法人向けのデジタルマーケティング事業を展開してきた。その後「Appliv」などのインターネットメディアをスタート。さらに2018年1月、個人向けの自動車サブスクリプションサービス、カルモをリリースし、最近では個人向けサービスにも注力している。

車好きの両親の影響もあって、幼い頃から車が好きだという高橋氏。実は2012年のAppliv立ち上げのときにも車に関するサービスを検討するほど、自動車関連事業については注目をしてきたそうだ。カルモ立ち上げのきっかけも、車好きの実家の両親が「ヤフオク!」で自動車を買おうとしていたことに衝撃を受けたことから。「実物を見ないで買うような時代になっている」と驚いたという。

「既存で展開してきたサービスからは、カルモは不連続なサービスに見られることが多いが、デジタルマーケティングで社会を良くするのがナイルの使命。ソリューションサービスに加えて、世の中に残る事業を作り、社会を良くしたいと始めたのがカルモだ」(高橋氏)

高橋氏は「モビリティの分野はこれから10年は伸び続ける革新的な分野だが、プレイヤーは日本ではまだ少ない」として、「今までになかったものができる」と考えている。

この分野で今注目されているサービスとして、高橋氏が挙げるのは「コネクテッドカー」「自動運転」「電気自動車」そして「シェアリング」の4ジャンルだ。

大手メーカーやGAFAが手を付ける前者3ジャンルはさておくとして、高橋氏がはじめに着目したのはカーシェアリングだった。しかし「自家用車のシェアリングは、日本では(適法な状態での)解禁はまだ見込みがない。また人口が密集していない地方では、損益分岐点が高く採算が取れず、サービス展開が現実的でない」と分析。

その“地方”に目を付け、「車のサブスクリプションサービス」ならニーズがある、と踏んだ。

「地方は都市設計的に車が必要なようにできている。地方での人口1人あたりの自動車(乗用車)の所有率は60%以上で、まさに必須アイテムだ。となれば、車の所有の概念を変えた方がいい」そう考えた高橋氏は、自家用車を家のように賃貸するサービス、カルモを立ち上げた。

ナイル代表取締役社長 高橋飛翔氏

「スマホのように車が持てる」世界を目指す

他の領域でもサブスクリプションモデルのサービスが注目を集める中で、利用者を着実に増やしているカルモ。月額固定の料金設定に加えて、オプションとして提供されているメンテナンスサービスも評判となっているそうだ。

メンテナンスに関しては、車検や修理を取り扱う自動車整備工場やガソリンスタンドなどからも、経営が苦しい中でのクロスセル商材として注目されているという。

利用の80%は地方で、7年以上の契約が多数を占める。「カーローンの返済期間設定は3〜5年がほとんど。だけど地方では同じ車に7年、8年、9年と長く乗る人が多く、実は利用者のニーズを外している。7年とか9年の契約なら、リースでも月当たりの金額は十分減らすことができる」(高橋氏)

サービス開始から1年3カ月で、カルモは累計申込数が約3000件に達した。高橋氏は「このサービスはより伸びるという感触を得た」という。既存事業は順調で「資金調達しなければ困るという状況にはない」という同社だが、あえて調達を行い、投資によりさらにカルモの成長を加速させる考えだ。

カルモは現在は新車のみの扱いだが、今年の初夏をめどに、中古車版カルモの立ち上げを目指している。「地方で車が必須アイテムなのだとすれば、対象を中古車にも展開することで利用料金を引き下げ、より拡大が目指せる」と高橋氏。中古車買取事業者などとの提携により、全国でサービスを展開し、数万台の在庫から選べるようにしたいという。

「必需品として、スマートフォンの分割払と月額利用料を合わせた金額ぐらいで車が持てるようになれば。中古車版カルモなら、月額7500円ぐらいからの価格設定も実現可能ではないかと見込んでいる。サービスが広く地方にも利用されるようになったところで、『シェアリング機能付き』サービスなども展開して、より低料金で誰もが利用しやすいサービスにしていきたい」(高橋氏)

フリーランス営業職のマッチングプラットフォーム「kakutoku」が1.4億円調達

カクトクは4月18日、大和企業投資、朝日メディアラボベンチャーズ、iSGSインベストメントワークス、ドーガン・ベータが運営するファンドを引受先とした、約1.4億円の第三者割当増資を発表した。同社としてはシリーズAラウンドの資金調達となる。

左から、朝日メディアラボベンチャーズ白石氏、同山田氏、カクトクCEO満田氏、同CTO仙石氏、 iSGSインベストメントワークス五嶋氏、 KLab Venture Partners御林氏

同社は、フリーランスの営業職と企業をマッチングサービス「kakutoku」を提供しており、今回の資金調達によりサービス拡大に向けた営業・マーケティング体制の強化、kakutoku上で営業即戦力を組織化するためのサポート強化およびびマネジメント機能の開発を進めていくとのこと。

ランサーズがまとめた「フリーランス実態調査2018年版」によると、フリーランスの経済規模は20兆円と拡大傾向にあり、国内のフリーランス人口1119万人のうち137万人がビジネス系、営業職が占めているとのこと。

企業はkakutokuを通じて、自社サービスや商品と相性の合う営業人材に業務委託形式で仕事を依頼できるのが特徴。採用難による採用コストの増加や人材のミスマッチを回避できるほか、業務委託形式のため短期間で営業組織の拡大が可能となる。

フリーランス側としては、オンライン上で自分に適したうサービスや商品を提供している企業を検索できるほか、複数の企業から案件を請け負うことも容易になる。同社によると、現在kakutokuに登録済みのフリーランス営業は2500人を超えており、合計報酬が1000万円超えの人材も誕生しているとのこと。

高勝率のトレーダーを”マネ”して自動で取引、仮想通貨取引の「マネコ」が1億円調達

仮想通貨のフォロートレードサービス「マネコ」を運営するGaiaは4月16日、NOW、リミックスポイント、名称非公開の上場企業1社、複数の個人投資家から総額1億円を調達したと発表した。

フォロートレードとは、みずから取引をするのではなく、勝率の高いトレーダーと同じ注文を”まね”することができるサービスだ。利用は簡単で、ランキングで過去の利益額などを参考に理想のトレーダーを探し、投資金額などを設定すればいい。あとは、そのトレーダーが出した注文通りに自動的にトレードが行われる。自分で取引のタイミングを考えたりする必要がないため、「とりあえず仮想通貨に触れてみたい」という初心者には適したサービスなのかもしれない。

Gaiaは同サービスを2018年12月にリリース。2019年3月までに仮想通貨取引所のLiquidとBitMEXに対応している。同社は今回調達した資金を利用して、アライアンスの強化、中長期的な人材強化、海外展開や他の金融商品への展開を進めるとしている。

ピッチデックで自滅しないために、やっちゃいけない3つの間違い

資金調達は、いつだってブラックボックスだ。好調な企業からすれば、そよ風のようなものかも知れないが、大抵の起業家はそのために眠れない夜を過ごす。私が初めて立ち上げたPursuit.comというスタートアップは、シード投資を獲得できたものの、信じられないほどキツかった(結局、Facebookに買収された)。DocSendは私の2番目のスタートアップだが、そこで私は資金調達のプロセスに関する多くのことを学んだ。自社の資金を集める方法だけではない。製品そのものが、特有な方法でピッチの大きな傾向を明らかにしてくれたのだ。

2014年以来、文書のトラッキングと共有を行う私たちのプラットフォームでは、10万人以上のユーザーが220万を超えるリンクを共有していて、2億2000万回の閲覧数を記録している。毎日、何千という会社創設者が未来の出資者を求めて資金調達のための資料を公開している。さらに、私たちの製品の多くのユーザーに、営業や事業開発やカスタマーサクセスの情報も発信している。こうした活動全般をよく理解したいと思った私たちは、ハーバードビジネススクールと長期の協力関係を結び、シードやシリーズAラウンドの投資を獲得を目指すスタートアップの、匿名化された資金調達に関するデータの分析を行ってきた。

私たちは、初期の分析結果を、「完璧なピッチデックの研究からの教訓」という記事(本文は英語)にして2015年にTechCrunchに掲載したが、今回は、その後の4年間のデータ(とユーザー数の大幅な増加)から判明した新しい情報をお伝えしたいと思う。

シード投資を獲得できたピッチデックと、獲得できなかったピッチデックとの違いは何か? 成功したピッチも失敗したピッチも、長さは平均18ページで変わりがない。違うのは、内容の組み立て方だ。投資家がその資料を読む時間も平均3.7分と変わらないが、成功したピッチと失敗したピッチとには共通して、時間をかけて読まれた箇所に違いがあった。ここに、避けるべき3つの過ちを詳しく解説しよう。

ピッチデックで「やるべき」大切なことについては、Extra Crunchの補足記事「Data tells us that investors love a good story」(有料会員向け記事)を読んでいただきたい。

間違い1:製品紹介から始めてはいけない

とくに技術系企業の創設者には、その製品がいかに画期的であるかを最初に説明したがる傾向がある。開発までにどれほどの時間がかかったか、どれほどの独自技術が積み重ねてきたか、そしてMVP(実用最小限の製品)の作り方を知っていることを力説する。

「失敗したピッチデックは、すべてが製品の話から始まっている。投資家は、成功したピッチデックと比較して、製品のスライドを読むのに4倍の時間をかけている」

よいことだと思うかも知れない。製品のスライドをじっくり見てくれているのだとね。だが、それは違う。データによれば、投資家は、その製品の価値と現在の市場のニーズとを照らし合わせ、その2つの間の明確な接点がなかなか掴めないために、詳しく見ているのだ。

また、ターゲットにした投資家は、ターゲットとなる消費者とは違う。スクリーンショットや製品の詳細は、彼らを混乱させるだけだ。では彼らは何を見ているのか?なぜ問題なのか?ほとんどの製品は生産が可能だ。むしろ彼らが答を知りたがっている疑問は、なぜこの製品が大きなビジネスを生み出すかだ。

ピッチデックの成功例と失敗例との閲覧時間(青が成功例、赤が失敗例)グラフ横軸(左から)企業の目的、チーム、製品、問題、解決策、ビジネスモデル、市場規模、なぜ今か、競争、決算、期首残高、会計報告DocSendより

間違い2:「Why」から始めていない

今では、サイモン・シネック氏がTedで話した「Whyで始めよ」の考え方が私たちの頭に浸透しているのに対して、失敗したピッチデックでは「なぜ今なのか」や「なぜ私たちなのか」といった疑問が最後に残されている。成功したピッチデックでは、企業の目的から始まり、なぜこのチームなのか、なぜこの製品を今出すべきなのかと続く。

「成功したピッチデックはすべて、企業の目的とその存在意義からスタートしている」

成功したピッチデックでは、投資家は「なぜ今か」と「なぜ私たちなのか」のスライドを平均27秒で見ているが、失敗したピッチデックでは62秒かかっている。ここから、投資家がチームやその能力の判断に、成功したピッチデックの場合よりも多くの時間をかけていることがわかる。この部分に時間をかけているということは、起業家の期待とは裏腹に、投資家はこのベンチャーに確信が持てずにいる証拠だ。ピッチを行う側は、「なぜ」のスライドに重点を置き、その流れを崩さず、なぜ今まで大きなビジネスになっていなかったのだろうと投資家に思わせることが大切だ。

「なぜ今か」と「なぜ私たちなのか」がスライドに登場した回数赤は失敗例(38.4パーセント)、青は成功例(61.6パーセント)DosSendより

間違い3:ストーリーがない

誰でも良い物語が大好きだ。投資家もその例に漏れない。成功したピッチデックはみな、面白いストーリーを含んでいて、それに合わせた語り口で話が進む。まず企業の目的から入り、彼らが立ち向かっている大きな問題、なぜ今でなければいけないのか、なぜ自分たちがその問題解決に取り組む最適な人材なのかと続く。失敗したピッチデックは、まず製品の話から入り、ビジネスモデル、競合の状況へと続く。成功したピッチデックでもこの話はしているが、かならず、直感的な理解をもたらす物語の延長線上にある。一方、失敗組には面白い物語がない。

「失敗したピッチデックでは、投資家は、製品、チーム、会計の説明を、平均で6分かけて読んでいる。成功したピッチデックでは2分だ」

また成功したピッチデックは、繰り返し訪れる回数が多い。失敗したピッチデックの2.3倍の再閲覧数がある。さらに、失敗したピッチデックよりも転送される数も多い。

トータル閲覧数グラフの横軸(左から)成功例、失敗例DocSendより

目的のほうが製品よりも大切

企業の創設当初は、起業家は実用最小限の製品(MVP)の構想を練り製作することに多くの時間を費やす。当然、投資家にピッチをしたくてたまらない気持ちになる。しかし、意外なことに、ビジネスの可能性、つまり「なぜ今か」「なぜ自分たちなのか」を上手に物語る前に製品を見せないほうがよいという結果がデータには表れている。この重要なポイントが投資家に伝わったらな、製品の詳細やロードマップをどんどん見せることができるが、製品から先に入ってはいけない。

この記事は、資金調達シリーズの第1弾だ。この補足記事を、Extra Crunchに掲載した(有料会員向け記事)。データが示すピッチデックでぜひやるべきことの話だ。今後は、シード、シリーズA、シリーズBの各ラウンドの違いや、会社が成長するに従って資金調達の方法がどう変わるかについて解説していきたいと思っている。次の記事では、他よりも多くの資金を獲得したピッチデックの秘密を解説する。それまで、最良の資金調達の方法に関して質問があれば、私たちのブログ、Twitterアカウント@rheddlestonまたは@docsendを利用してほしい。

【編集部注】筆者のRuss Heddlestonは、DocSendの共同創設者およびCEO。以前はスタートアップPursuit.comの買収にともないFacebookに移籍し、プロダクトマネージャーを務めた。Dropbox、Greystripe、Truliaでも活躍した。@rheddlestonまたは@docsendでフォローできる。

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(翻訳:金井哲夫)

イベント特化型ビジネスSNS運営のEventHubがSalesfoce Venturesから資金調達

イベントマーケティングサービス「EventHub」を運営するEventHubは4月15日、セールスフォース・ドットコムの投資部門であるSalesforce Venturesを引受先とする第三者割当増資を実施した。EventHubとしてはシードラウンドの調達で、金額は非公開。

今回の調達にあわせ、Salesforce上の取引データを基にイベントのビジネス機会を創出するためのデータ連携を開始する予定とのこと。具体的には、イベントに参加する企業がイベント内で獲得したリードや実施した商談の情報を自動的にSFAに記録する仕組みや、自社の取引データベースを参照して既存の取引先や親和性が高い企業がイベント会場にいる際に両社を結びつけるといった仕組みを提供するとのこと。

EventHubは、イベント参加者同士をマッチングするSNSサービス。EventHub上で、参加者の社名や役職などのプロフィールを見られるほか、商談やミーティングの要望を出せる。商談やミーティングについては、相手が要望を承諾して日時と場所を設定することで成立する。マッチングした参加者同士は、直接会うだけでなくチャットでの情報もやり取りできるなど、イベント限りのコミュニケーションツールとして活用できる。

宇宙ゴミ除去に取り組むアストロスケールが約33億円を調達、米国拠点の開設も発表

スペースデブリ(宇宙ごみ)除去サービスに取り組むアストロスケールホールディングスは4月11日、米国拠点の開設に加えて、約30百万米ドル(約33億円)の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回の調達はシリーズDラウンドの追加調達という位置付け。INCJ、東京大学協創プラットフォーム開発、三井住友トラスト・インベストメント、エースタート、平尾丈氏から出資を受け、同ラウンドの累計調達額は約132百万米ドル(約146億円)となる。

以前も紹介した通り、スペースデブリとは宇宙空間に漂っている役目を終えた衛星、ロケットの一部や金属片のこと。アストロスケールの昨年の発表によると宇宙空間には1cm以上のデブリだけでも約75万個が存在すると言われていて、これらが宇宙機の安全航行を脅かす存在として問題視されている。

同社では2013年の創業期より、増加し続けるデブリの低減・除去策として、宇宙機が故障や運用終了を迎えた際の除去(EOL サービス)や、既存デブリ除去(ADR サービス)などの技術開発に取り組んできた。現在はデブリ除去の技術実証ミッションである「ELSA-d(エルサディー)」の2020年初頭打上げに向けて設計・開発を進めている。

今回の資金調達は、デブリ問題に対する世界での認識の高まりや需要の顕在化に伴い、更なる開発・製造・運用能力の増強を目指したもの。新たに米国拠点をコロラド州デンバーに開設してグローバル展開を加速させる計画で、同拠点のマネジングディレクターには航空宇宙業界での経験が豊富なロナルド・ロペス氏が就任するという。

なおアストロスケール創業者兼CEOの岡田光信氏は、本件について以下のようにコメントしている。

「アストロスケールにとって、米国拠点の開設は、従業員や顧客にとっても多くの恩恵をもたらす、非常に重要なマイルストーンであると捉えています。米国はこれまで、宇宙交通管制(STM)や軌道上デブリの低減に積極的に取り組んできました。米国に拠点を構えることで、グローバル課題であるデブリ問題について、政策立案者や業界リーダーとの密なコミュニケーションが可能となり、持続的な解決策に向けて考察を深められると考えています」(岡田氏)

主婦の在宅ビジネスを支援するインドの「GlowRoad」が1000万ドルを調達

インドのソーシャルコマース領域のスタートアップのGlowRoadは、1000万ドルをシリーshoppuズBラウンドで調達したと発表。ラウンドは中国の投資会社のCDH Investmentsが主導し、Accel Partnersも引き続き参加した。

前回の調達は2017年9月に発表されたシリーズA。引受先はAccel Partners、サービスローンチの数ヶ月後に発表された。

GlowRoadの創業者Sonal Vermaは、2008年に遠隔医療会社HealthcareMagicを共同設立、それ以前は医師として地域医療に専念していた。

小売業、すなわち「商品の再販」業を営んでいる

Vermaは医師として働く中で、多くの専業主婦が住んでいる地域で小売業、すなわち「商品の再販」業を営んでいることに気付く。GlowRoadは、ドロップシッピングを用いて、彼女たちのビジネスのオンライン化を手助けするプラットフォームだ。

同プラットフォームでは、製造元は参画前にスクリーニングされており、販売者は自分の店舗に追加する商品、そして販売方法などを決定する。同社いわく、現在、10万人以上のリセラー、2万人のサプライヤー、そして30万人のバイヤーが同プラットフォームを利用しているという。

GlowRoadの最大の競合はMeeshoで、Crunchbaseによると、同社は、Shunwei Capital、Sequoia Capital India、RPS Ventures、Y Combinator、Venture Highway、SAIF Partners、DST Partnersなどの投資家から合計6520万ドルを調達している。

(本稿は米国版TechCrunchの記事を翻訳・編集したものです)

[US版TechCrunchの記事はこちら]

動画制作・プロデュースのFIREBUGがANRIなどから4.2億円を資金調達

写真左からFIREBUG代表取締役CEO・宮﨑聡氏、代表取締役CCO・佐藤詳悟氏、社外取締役に就任した中川綾太郎氏

動画などのコンテンツ制作事業やアーティストのプロデュースなどを行うFIREBUGは4月10日、ANRIをはじめとする複数のVCや事業会社、エンジェル投資家を引受先として、総額4億2000万円の第三者割当増資による資金調達を行ったことを明らかにした。

同時に経営体制強化を目的として共同代表制へ移行したことも発表。新たにサイバーエージェントで執行役員などを務めていた宮﨑聡氏が代表取締役CEOに就任し、現代表の佐藤詳悟氏は代表取締役CCO(Chief Content Officer:最高コンテンツ責任者)となる。また、ペロリ創業者の中川綾太郎氏が社外取締役に就任する。

FIREBUGは2016年2月の設立。創業者の佐藤氏は吉本興業でマネージャー業を経験した後、2015年1月にクリエーターのエージェント会社であるQREATOR AGENTを立ち上げた。FIREBUGでは、2017年7月にRKB毎日放送およびエイベックス・ベンチャーズ、個人投資家などから、数億円規模の資金調達を実施。2018年4月にはAOI TYO Holdings、アカツキ、読売新聞東京本社から資金調達を行っている。

設立からしばらくは、テレビ番組やウェブ動画、イベントなどの企画やプロデュース、PRなどを事業としていたFIREBUG。2017年9月に新事業として、スマートフォン向け短尺縦型動画配信サービス「30(サーティー)」を開始し、企業向けの短尺動画制作なども行ってきた。現在は、スタートアップを中心とした企業向けにクリエイティブも含むマーケティング・PR支援や、アーティスト・クリエイターのプロデュース、TV、ネットも含めたコンテンツ制作事業を手がけている。

今回の資金調達と経営体制変更により、FIREBUGではマスメディアでの経験豊富な佐藤氏と、デジタル業界の広い知見を持つ宮﨑氏がタッグを組み、中川氏の協力も得ながら、さらに事業拡大を目指していくという。具体的には、新たに著名人やインフルエンサーを対象に、YouTubeを中心とした動画プラットフォームでのマネタイズをサポートするエージェント事業を開始する、といったことが想定されている。

同社では、今後もエンターテインメントスタートアップとして「テクノロジーを活用した新しいコンテンツフォーマットの創造」の実現に向け、尽力するとしている。

今回投資に参加した引受先の一覧は下記の通りだ。

ANRI
East Ventures
アカツキ
静岡放送
中京テレビ放送
北海道文化放送
ユナイテッド
加藤恭輔氏(メドレー執行役員)
佐藤裕介氏(ヘイ代表取締役社長)
高野秀敏氏(キープレイヤーズ代表取締役)
古川健介氏(アル代表取締役)
光本勇介氏(バンク代表取締役兼CEO)

ライブ配信老舗の「ツイキャス」が6.5億円を資金調達

日本発、2010年2月スタートの「ツイキャス(TwitCasting)」はライブ配信サービスとしては老舗と言えるプラットフォームだ。そのツイキャスを運営するモイは4月10日、総額6億5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

第三者割当増資の引受先はグローバル・ブレイン6号ファンド、KDDI Open Innovation Fund 3号ファンド、SBI AI&Blockchainファンドの各ファンド。今回の増資で、モイの累計資金調達額は13.4億円となる。

スマートフォンでライブ配信ができる、というと最近ではYouTubeやInstagram、Facebookなどの大御所プラットフォームにもその機能が備わっているし、アイドルやタレントの配信が多い「SHOWROOM」や、画面をそのまま配信できるゲーム実況向きの「Mirrativ(ミラティブ)」など、それぞれに特徴ある配信サービスも注目されている。

そんな中で、ツイキャスは登録ユーザー数が2500万人を超え、1日あたりの配信者数/累計配信回数では国内最大級のライブ配信サービスとして成長を続けているとのこと。今回の調達資金はツイキャス事業および新規サービスの開発・マーケティングと、それに伴う人員強化に充てるという。

米国の保険スタートアップの2018年の資金調達は過去最高の2780億円

保険は地獄のようなややこしさだが、基本のビジネス部分は至ってシンプルだ。契約者にとっては、何か悪いことが起こった時に支払いを受ける手段であり、保険会社は災いを免れた人への課金で儲けを得る。

多くの大手保険会社が1世紀以上もビジネスを続けていることを考えれば、契約書を作成する側にとっては明らかに成功してきたビジネス手法だ。他の産業は変革の波にのまれてきたが、大手保険会社は大手として生き残り、収益をあげてきた。

しかし過去数年間、資金力のある新興スタートアップが保険にフォーカスした商品を拡大している。Crunchbaseデータによると、保険やインシュアテックの企業の2018年のベンチャー資金調達は空前の額となり、グローバルそして米国のトータル額は過去最高水準となった。かつて数億ドル規模だったベンチャー投資はいまでは数十億ドル規模となっている。

インシュアテックでもまた巨額の投資がある。既存のベンチャー企業がこの業界では活発だが、驚くことに投資の大半は、まさにスタートアップがディスラプトしようとしている保険大企業のコーポレートベンチャー部門からきている。

「私が思うに、結局、保険はグランドスラムの機会と見られている」とInsureTech Connectの会長で、ベンチャー企業QED Partnersの前設立パートナーCaribou Honig氏は語った。「ベンチャーコミュニティは、値段は安いものではないと言う。しかしチャンスを見つけられれば、そこには大きな可能性がある」。

下に、最近の投資データを参考までに示す。投資額や、どの企業が積極的に資金調達を行っているかが示されていて、そしてなぜエグジットがさほど多くみられないのかも推測できる。まず初めに保険ディールのコスト上昇について話そう。

人々は、保険額が数ドル上がると文句を言う。それは、保険スタートアップ投資家が対処せざるを得ないものに比べると何ほどのことでもない。引っ張りだこのスタートアップの評価額は右肩上がりで、ラウンドの規模も膨張する一方だ。結局、米国の保険・インシュアテックのスタートアップは2018年に25億ドル超を調達し、これは2017年の倍以上だ。一方、グローバルの投資は40億ドルに満たない。

下のチャートでは、米国におけるラウンドの回数と投資額の急増ぶりがわかる。

そして次は米国を含むグローバルマーケットの5年間のデータだ。

3、4年前にシード期の保険スタートアップの大きな波が起こったとHonig氏は指摘する。それが、平均的なラウンドの規模がかなり大きくなっている理由だ。そうした分野でホットな企業は急速に成熟していて、これまでになく大規模のレイターステージラウンドを模索している。

米国では、50社近くの保険・インシュアテックの企業が、巨額のものも含め1000億ドル超の資金を調達していた。最も大きなグローバル調達を行った企業のいくつかを下に挙げる。

コーポレート資金

立ち上げや部門拡大を図ろうとする保険会社のトレンドは数年前に始まり、加速を続けてきた。Crunchbaseのデータでは、スタートアップへの投資を行っているのは13の保険会社で、それらのほとんどは企業ベンチャー部隊を通じたものだ。全体的に、リストにある投資家はよりアクティブになっている。2018年にはわかっているだけで42の投資ラウンドに参加し、額にして計4億ドル出資した。

そうした動きを促進する要素もある。例えば先月、ドイツ大手保険会社Allianzはコーポレート・ベンチャー・キャピタル部門AllianzXの規模を当初の倍の11億ドルに拡大した。だからといって、検討の対象となる保険スタートアップが十分にあるだろうか?「必ずしもそうではない」と言うのはNew York Life Venturesを率いるJoel Albarella氏だ。というのも、New York Life Venturesや他のコーポレートVCが支援するディールの多くが保険に特化したスタートアップではないからだ。

たとえば、New York Life Venturesが最近手がけたディールのいくつかには禁煙プラットフォームのデベロッパーのCarrot、データ解析ソフトウェアスタートアップのTrifactaが含まれる。このコーポレートベンチャーファンドではまた、2年前にモバイルセキュリティのSkycureをSymantecに売却するという益の多いエグジットがあった。「こうした例はすべて、他の部門と同様にインターネットテクノロジーを保険に応用している」とAlbarella氏は語った。

Albarella氏はまた、インシュアテックが特にコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)投資家にとってホットな分野になっていて、それに伴う評価額の上昇を懸念している。それは明らかにCVCが関わっているディールでプレミアムな価格となっている、とAlbarella氏は話した。そして資金は潤沢にある。

エグジット

保険スタートアップにいく資金について、そうした金はすべて表に出てくると考える人もいるかもしれない。しかし、少なくとも米国スタートアップに限ってはそうではない。

保険業界でテクノロジーを活用している数社は手堅いエグジットを確保した。しかしこれまでのところ、かなりの資金を調達しているピュアプレイ(Oscar HealthMetromileなど)のいずれもM&AやIPOのルートを取っていない。

現実世界に勧善懲悪を適用するなら、保険スタートアップの投資家たちは本当に悪いことが起こった後に儲けを手にすることになる。それですら、膨大な書類を提出し、何時間も待たされてからだ。

少なくともHonig氏は、より現実的なシナリオとしていくつかの本当に巨大なエグジットがあるだろう、とみている。しかし、おそらくそれらはこれから数四半期のうちにはない。当面、急成長中の保険にフォーカスしたスタートアップはプライベートマーケットで簡単に資金を確保できる。多くのケースでは、企業は自社のブランド構築に時間をかけて売上を上げ、IPOをする前に態勢を整えることを好む。M&Aはどうかといえば、大手保険スタートアップの買収はこれまでさほどなかった。Honig氏は「保険会社はまだ静観モードだ」とみている。

従って、私たちは明らかに保険ディールとはみられないスタートアップが関わっている大きなディールを目にしてきた。そうしたものの一つとして、Honig氏は昨年Amazonに10億ドルで買収されたドアベルメーカーのRingを挙げた。RingのIoTテクノロジーは家所有者向けの保険に応用がきく、とHonig氏は語った。そしてRingは投資家に保険会社のAmerican Familyを抱えている。

控除額を超える

さしあたり、インシュアテックのベンチャーへの投資家はほとんどそのまま残っていて、価値がこのまま大きくなることを願っている。もちろん、そうなるかはわからない。しかし、往々にして的を射ている保険に関するマーフィーの法則を記しておく。それは、損失が控除額を超えることはめったにない、ということだ。保険会社のエグジットの自然な結果は、投資した資金をほとんど超えないリターンということになるのかもしれない。

もちろん悲観論者は通常、ベンチャーキャピタルのディールとは距離を置いている。

イメージクレジット: Brian A Jackson / Shutterstock

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(翻訳:Mizoguchi)

15兆円の運送業界をITで変革へ、中古トラック売買サービス運営のAzoopが4.5億円を調達

写真中央がAzoop代表取締役社長の朴貴頌氏

「取り組んでいるのは15兆円規模と言われる運送業界をテクノロジーでアップデートすること。この業界は手書きの台帳やFAXを用いた受発注など未だにアナログな側面が多い。今後はドライバー不足や配達量の増加などが深刻になる中で、従来のような『人を増やす』アプローチは通用せず、業務の効率化や生産性の向上によって対応していく必要がある」

そう話すのはAzoop代表取締役社長の朴貴頌氏だ。同社では運送業界を変革するための一歩として、2018年1月に運送業界向けの車両売買プラットフォーム「トラッカーズ」をローンチ。今後もこれに続くサービスを複数立ち上げることで、「運送業界の総合プラットフォーマー」になる構想を掲げている。

そのAzoopは4月9日、事業の拡大に向けてジャフコとマネックスベンチャーズを引受先とした第三者割当増資により総額4.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社にとっては2017年に個人投資家から出資を受けて以来、2回目となる外部調達。調達した資金を活用して人材採用やプロダクト開発を加速させる計画だ。

トラック売買の非効率をテクノロジーで解決

現在Azoopが展開するトラッカーズは、トラックやトレーラーなど運送企業が保有する車を対象とした売買プラットフォーム。朴氏の言葉を借りれば「トラック版のメルカリやヤフオク」のように、車を買いたい企業と売りたい企業をマッチングする。

仕組み自体は比較的シンプルなものだが業界内ではオンライン上で車両を売買できる仕組みがなかったため、これまでは基本的にリアルな繋がりの中で完結していた。

車を売りたい企業は周囲の買取業者に相見積もりをし、その中で1番良さそうな業者へ売却。新しい車を探している企業も同じように、自分が直接アクセスできる業者から選ぶ。そこには「非効率な部分や価格面で改善できる部分が多くある」(朴氏)と言う。

トラッカーズの場合は各社に見積もりを依頼しなくとも、Azoop1社に問い合わせるだけで最大100社からオファーが届く。そのため相見積もりの手間がなくなる上に、繋がりのない企業にも車を売れるチャンスがある。これは買い手にとっても同様で、トラッカーズを通じて自分が繋がりのない企業からも車を購入できる可能性がある。

既存の仕組みでは存在していた複数の中間業者がなくなることもあり、今まで以上に「安く買える」「高く売れる」体験がしやすいのが特徴だ。

またトラックを筆頭に運送企業が売買する車両は、ネット上で売買されるような洋服や小物などに比べると当然単価も高い。トラッカーズの平均流通単価(成約単価) は1台あたり約130万円で、それをオンライン上のみでやりとりすることに不安を感じるユーザーもいるだろう。

その心理的なハードルやリスクを抑えるため、トラッカーズでは車両検査のほか3日間の保証制度を設けている。「購入して3日間は何かあれば運営が責任をとります、という形をとることでネットだけでも売買しやすい環境を作った」(朴氏)ことで取引も増加。2018年1月のローンチから2019年2月末までの約1年間で500社以上の企業が利用するプラットフォームになった。

目指すは運送業界の総合プラットフォーマー

Azoopは2017年5月の創業。代表を務める朴氏の父親は愛知県で中古トラックの販売・買取事業を展開する経営者で、そのバッググラウンドがトラッカーズにも密接に関わっている。

「もともとは稼業を継ぐつもりもなかった」と話す朴氏はリクルートでHR領域のセールス担当者として実績を積んだ後、独立。別の事業も考える中で父親に話をしたところ、ちょうど東京拠点を立ち上げる話が上がたっため、それをリードする役割として家業である日光オートに入社した。

実際に様々な運送企業に通う中で朴氏が感じたのが「運送業界の実態とトラックの売買における非効率さ」。マーケットの大きさやポテンシャル、そして業界内で起こり始めている変化などを踏まえてこの領域で事業を立ち上げることを決断し、スピンアウトのような形でAzoopを立ち上げた。

「国内で運送業を営む企業はコンビニの数よりも多く、約6.2万社ある。その内の約85%が従業員30名以下のスーパーロングテールな業界。そこに対してアナログな体質を変え、データ・ドリブンでより効果的な経営をできるようなサポートができれば、社会的な価値も大きい」(朴氏)

朴氏の話では、ちょうど業界も全体的に新しいフェーズを迎えているそう。具体的には多くの企業で創業社長から2代目への引き継ぎが増えているタイミングで、新たに会社を率いることになった30〜40代の経営者の中には「変わらざるを得ないという危機感」を感じている人も少なくないという。

現在運営するトラッカーズは車両の「調達」と「売却」に関する課題の解決を目指したサービスだが、それはあくまで1つのピースにすぎない。今後Azoopではその間にある「稼働」や「整備/修理」の工程についてもテクノロジーを活用することでアップデートしていく計画だ。

「会社として目指しているのは、運送業界の総合プラットフォーマーとして業界の課題解決や成長を後押しすること。トラッカーズの運営を通じて業界の中に入っていくほど解像度も高くなり、課題も見えてきた。車両の流通だけでなく業界全体の効率化やアップデートに繋がる事業を作っていきたい」(朴氏)

オンライン結婚式準備サービス運営のリクシィがXTech Venturesなどから約1.6億円調達

オンライン結婚式準備サービス「Choole」(チュール)を運営しているリクシィは4月8日、プレシリーズAラウンドとして約1.6億円の資金調達を発表した。XTech Ventures、SMBCベンチャーキャピタル4号投資事業有限責任組合、個人投資家8名を引受先とする第三者割当増資による調達となる。同社の資本金は、資本準備金含み合計2億7162万円になったとのこと。

Chooleは、ウエディングドレスやヘアメイクなどの必要なアイテムを自分の好みで選んだうえで結婚式場を決められるサービス。今回の資金調達で、中長期的なサービス運営体制を強化する。また今回の資金調達にあわせて、スクリーンショットを送るだけで結婚式場やドレスを提案してくれる「Chooleスクショリコメンド」のサービスを開始する。同サービスをべースに、ユーザーの嗜好に合わせた結婚式場やドレス、ショップ、クリエイターなどをAIにより提案できる新機能の開発を目指す。

同社によると、提供中のウエディングプラットフォーム事業である「gensen wedding」(ゲンセンウエディング)は、サービス開始以来350組以上の結婚式のプランニングを手掛けているとのこと。

睡眠課題を解決するSleepTech企業のニューロスペースが3.4億円を調達

ニューロスペースの経営陣と投資家陣。写真中央が代表取締役社長の小林孝徳氏、その右隣が取締役COOの北畠勝太氏

テクノロジーを用いて睡眠課題を解決するSleepTech(スリープテック)。近年注目を集めるこの領域で複数の事業を展開するニューロスペースは4月8日、第三者割当増資と融資を合わせて総額3.4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回同社に出資したのはMTG Ventures、東京電力フロンティアパートナーズ、日本ベンチャーキャピタル、東急不動産ホールディングスの「TFHD OpenInnovation program」、およびユーグレナSMBC 日興リバネスキャピタル(リアルテックファンド)の5社。第三者割当増資の総額が2.5億円で、ここに0.9億円の融資を含めトータル3.4億円となる。

ニューロスペースでは調達した資金を活用して、SleepTech事業の拡大へビジネスサイドや開発サイドの人事採用を強化する計画。調達先のMTG、東京電力グループ、東急不動産ホールディングスグループとは協業も進める。

同社は2013年の創業。2017年11月にもリアルテックファンドや個人投資家らから約1億円を調達している。

1万人以上のデータを活用した睡眠解析プラットフォームへ

創業から一貫して睡眠×テクノロジー領域で事業を展開してきたニューロスペース。現在同社では大きく2つのアプローチから睡眠課題の解決に取り組んでいる。

1つ目が企業向けの睡眠改善プログラム。正確には企業に対して従業員の睡眠を改善するプログラムを提供する、B2B2Eモデルのサービスだ。

背景には近年働き方改革や健康経営、生産性向上などの文脈で、企業内でも今まで以上に従業員の体や心をケアしようという動きが高まっていることがある。

中でも従業員の睡眠不足は重要なポイントのひとつ。企業が日々の生産性の損失として課題視するプレゼンティズム(出勤しているが体調不良やメンタル面の不調などが原因で従業員のパフォーマンスが低下している状態)において睡眠不足が2番目に大きな損失とされるなど、睡眠課題は早急に手を打つべき存在となっている。

ニューロスペースではこれまで睡眠実態のモニタリングや集合形式のラーニングプログラムなどを通じて、従業員の睡眠課題や生活習慣の把握から、浮かび上がった課題の解決までをサポートしてきた。累計の支援企業数は70社、プログラムを提供した従業員は1万人を突破。大手企業を中心に業界や業種も多岐にわたる。

合わせて同社では睡眠データを計測するデバイスや、個々に合わせた睡眠改善アドバイスを提供するアプリを含めた「睡眠解析プラットフォーム」を開発し、吉野家やKDDIらと実証実験を実施。同サービスを6月にも正式ローンチする計画だ。

デバイスはイスラエルのIoTスタートアップ「EarlySense」が手がける非接触型睡眠計測デバイスを導入。マットレスの下に挿入することで、ユーザーの負担を増やさずに、就寝までの時間や中途覚醒時間・回数など個人の細かい睡眠傾向を測定する。

そこから取得したデータやこれまで蓄積してきたナレッジなどを用いて、睡眠改善助言アプリ上でユーザーごとにパーソナライズしたケアを行う。たとえば前日の睡眠データから眠気が強くなる時間帯や集中しやすい時間を予測したり、日々の傾向から具体的な改善アドバイスをしたりすることができるという。

事業会社とタッグでSleepTech事業を推進

この睡眠改善プログラムや睡眠解析プラットフォームの開発だけでなく、ニューロスペースでは事業会社と協業して一般の生活者向けにもサービスを展開してきた。これが2つ目のアプローチだ。

2018年9月にはANAと共同で「時差ボケ調整アプリ」を発表。2019年3月にはKDDI・フランスベッドと共同で睡眠×ホームIoTサービスを開発している。

ANAと共同開発した「時差ボケ調整アプリ」

KDDIと共同開発した「睡眠×ホームIoT」

「前回調達した資金を通じて睡眠解析プラットフォームの開発を進めてきた。これはニューロスペースが様々な企業と協業してSleepTechビジネスを創出していく際に共通して使うシステム基盤となるもの。このプラットフォームを活用し、KDDIやANA、東京電力などとの協業にも取り組んでいる。今後はプラットフォームの更なる技術力強化とパートナー企業との協業事業をより加速していく」(ニューロスペース代表取締役社長の小林孝徳氏)

冒頭でも触れた通り今回の調達先であるMTG、東京電力グループ、東急不動産ホールディングスグループとは共同で新サービスや新規事業を立ち上げる方針だという。

「そもそも眠りとは食事と同じく人間が生きていくために根源的にある欲求だ。現在はまだ『睡眠を改善する、つまりimproveする』というフェーズにあるが、今後は様々な食事が選べるように『睡眠も楽しめて更にはデザイン出来る』、そんな世界をSleepTechのコアテクノロジーで実現していく。最終的には人間が地球を出てどんな環境に行こうと、パラメーターをコントロールすることでいつでも最高の眠りと休息がとれる世界を目指したい」(小林氏)

ニューロスペース取締役COOの北畠勝太氏によるとSleepTech市場は海外で先行して盛り上がっていて、CES(世界各国から最新の家電製品が集まる見本市)では2017年から専用のコーナーが開設されているそう。スタートアップ界隈でもマットレスのD2C事業を展開するCasperが先日実施したシリーズDラウンドでユニコーン企業に仲間入りするなど、大きなニュースが増えてきた。

日本では昨年7.2億円を調達したサスメドや今年1月に2.2億円を調達したO:(オー)らがこの領域でプロダクトを手がける。ニューロスペースも含め、2019年が日本における本格的なSleepTech元年となるのか、引き続きその動向に注目だ。

Uberの旅行コンシェルジュ版目指す「tabiko」が6000万円を調達

写真左からFAST JAPAN代表取締役の片野由勇岐氏、最高技術責任者のKrishna Prahasith氏

「目指しているのは旅行コンシェルジュ版のUberのようなサービス。数百万人がドライバーとしてUberに参加しているように、世界中からユニークなコンシェルジュが集まるプラットフォームを作っていきたい」

そう話すのは訪日観光客向けのチャットコンシェルジュアプリ「tabiko(タビコ)」を展開するFAST JAPAN代表取締役の片野由勇岐氏だ。

これまでは日本を訪れる観光客の悩みを、自社で採用したコンシェルジュがチャットを通じて解決していた同サービス。5月からはまさにUberやAirbnbのように、旅行情報を持つ人がコンシェルジュとして参画できる「コンシェルジュプログラム」をスタートする。

FAST JAPANは4月5日、同プログラムの基礎固めを含めてtabikoをより強化する目的で、複数の投資家より6000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。調達先はDGインキュベーションとキャナルベンチャーズ、そして既存投資先であるKLab Venture Partnersの3社だ。

訪日観光客の悩み事をチャット上のコンシェルジュが解決

2017年2月にローンチされたtabikoはチャット上で訪日観光客にコンシェルジュサービスを提供するアプリ。観光地や交通情報の案内、宿泊施設・レストランの予約を始め、旅行に詳しいコンシェルジュが様々な相談に乗ってくれる。

チャットボットなど機械ベースのものではなくあくまで人間のコンシェルジュが対応する仕組みなので、幅広い悩みやちょっとしたリクエストにも応じられるのがひとつのウリ。「タクシーで忘れ物をしてしまったのだけどどうすればいいか?」といった困り事が寄せられる場合もあれば、「日本で彼女にプロポーズをしたい」という男性ユーザーを手助けするといった場合もあるという。

「旅行に関するプロダクトは増えてきているが、その多くは“予約”という領域に着目したもの。旅行者にとって必要なのは予約だけではない。tabikoは旅の始まりから終わりまで全てのサポートを、コンシェルジュと共にデザインしていきたいという思いで運営してきた」(片野氏)

現在は英語と中国語(繁体字)の2言語に対応。これまで広告によるプロモーションはほとんど実施しておらず、口コミを軸にオーガニック経由で約13万人の会員を獲得した。

ユーザーにとっては、検索エンジンや旅行系のメディアを通じて毎回苦労しながら調べていたような情報を、現地に詳しいコンシェルジュからすぐに仕入れられるのがtabikoを使うメリットだ。たとえばレストランの予約は日本を訪れる外国人にとって大きなペインポイントであり、片野氏によると毎月数千件のレストランをtabikoがユーザーに代わって予約しているという。

ローンチから2年を迎えた今年の2月にはサービスをリニューアルし、コンシェルジュに対してチップを支払える「Star Rewards(スターリワード)」機能を導入。ユーザーは各チャットごとにマイクロ課金ができるほか、コンシェルジュのプロフィールから大きめの課金をすることが可能になった。

「昨年はtabikoのコアバリューではないホテルや航空券の販売を通じてマネタイズをしようとしてしまっていた。そこを欲していたのは一部のユーザーで、全ユーザーにとって本当に価値となっているのはコンシェルジュの部分。マネタイズもその体験に紐付けるべきだと考えた」(片野氏)

Star Rewardsはまだ始まったばかりの仕組みではあるけれど、開始後1ヶ月で約10%のユーザーが1回はチップを払っていて、手応えを感じているという。

Uberの旅行コンシェルジュ版目指し、新たな取り組みも開始

冒頭で触れたように、tabikoでは5月から新しくコンシェルジュプログラムを取り入れる計画。自社で採用したコンシェルジュだけでなく多様な人材が同サービスに参画することで、今まで以上に幅広いニーズに応えられるプラットフォームへと進化させるのが狙いだ。

「(自社で採用したコンシェルジュだけに限定してしまうと)提供できる価値も限られてしまう。世の中にはローカル特有の情報やユニークな旅行体験を持つ人がたくさんいるので、そういった人にコンシェルジュとして参画してもらい、旅行者と繋がれるようなサービスにしていきたい」

同プログラムを通じてtabikoに加わるコンシェルジュは、隙間時間を活用しながら旅行者への情報提供を行う。片野氏の話では上述したチップの機能などとも連動し、獲得したStar Rewardsや対応したチャット数、需給バランスなどを加味した上で報酬を支払うモデルを考えているという。

またAirbnbのホストであれば、自身が同サービス上で掲載しているリスティングや旅行体験を積極的に紹介するのも問題ないとのこと。「ホスピタリティに溢れたコンシェルジュはtabikoの特徴」(片野氏)であり、その点ではAirbnbのホストと相性が良いというのが片野氏の考えだ。

今回調達した資金も、コンシェルジュプログラムを含めたプロダクトの基盤強化に用いる方針。今後は日本だけでなくグローバルでのサービス展開も見据える。

「コンシェルジュが増えてユニークな旅行体験を提供できるサービスができれば、より多くのユーザーが集まるようになる。このモデルが積み上がりコンシェルジュがtabikoを通じて稼げるようになるとスケールできるので、まずはそのモデルの構築を目指していく」(片野氏)

FAST JAPANは2015年11月の創業。片野氏は大学4年時にオンラインギフト事業で一度起業していて、同社が2度目の起業となる。もともとはLINEなどを通じて旅行の相談ができるチャットサービスや旅行メディアなどを展開していたが、サービスの軸を変える形で2017年2月にtabikoをスタートした。

創業期に現メルペイ取締役CPOの松本龍祐氏(当時はソウゾウ代表取締役)から、2016年にはKLab Venture Partnersなどから資金調達を実施。それ以降もベンチャーユナイテッドやエウレカ創業者の赤坂優氏を含む複数のエンジェル投資家より出資を受けているという。

商品を広めたいメーカーとオフィスや施設をつなぐ「aircatalog」が約1億円を調達

商品のプロモーションを行いたい“メーカー”とその商品を配布したい“施設”をオンライン上でマッチングする「aircatalog(エアカタログ)」。同サービスを展開するquatre(キャトル)は4月4日、複数の投資家より約1億円を調達したことを明らかにした。

同社に出資したのはセレス、voyage ventures、ハックベンチャーズの3社。そのうちセレスとは業務提携も締結している。quatre代表取締役の横町享之氏に聞いたところ、今回の資金調達は現在同社が実施中の調達ラウンドの一環として行われたものだという。

aircatalogは「商品をもっと多くの人に体験してもらいたい」メーカーと、「顧客や従業員の満足度を高めたい」企業やホテルなどの施設をマッチングすることで、双方のニーズに応えるサービスだ。

商品のタッチポイントを広げたいメーカーはaircatalog上に商品情報とターゲットの情報を登録。するとその商品を配布したい施設からリクエストが届くので、メーカーが承認すればマッチングが成立となる。

これによってメーカーとしては自社の商品を本当に体験して欲しい人にだけ届けることができ、一方の施設側もコストをかけずに顧客や従業員に対して良いサービスを提供できるのが特徴だ。

たとえば美顔器を手がける美容家電メーカーとホテルの事例では、ホテル側で宿泊客向けに美顔器を体験できるプランを作成。アメニティ用品のような位置付けでターゲットユーザーに商品を体験してもらえる仕組みを作った。

aircatalogには商品の配布先として1万5000箇所を超える施設が登録されていて、ホテルやフィットネスジムの他、一般企業のオフィスも対象になる。ビジネスパーソン向けにコーヒーやエナジードリンクを訴求したいメーカーと企業がマッチングされる場合など、同サービスが企業における「無料の福利厚生ツール」の役割を果たすこともある。

横町氏によるとIT企業などがそのような用途で導入するケースが増えているそう。商品を提供する登録メーカーの数も約170社まで拡大しているとのことだ。

直近では新しい試みとして、最新家電など大型の商品を一定期間オフィスや宿泊施設に貸し出す「ディスプレイプラン」や、企業の社内イベントにメーカーが協賛してセミナー形式で商品体験の場を儲ける「セミナー型商品体験プラン」もスタート。

前者では空気清浄機とIT企業をマッチングした事例、後者ではユーザベースの社内交流イベントにキリンがドリンク協賛し、ビールセミナーとクラフトビールの提供を含めた商品体験会を実施した例などがある。

なお冒頭でも触れた通り、投資家の1社であるセレスとは業務提携も締結。セレス側では今回の提携について「セレスでは、モッピーをはじめとしたポイントサイト等の運営を通じて、インターネット上の価値を現実世界の価値へと転換するサービスを展開しております。セレスの運営するポイントサイト等の事業とquatreの運営するaircatalogは親和性が高いと考えており、今回の資本業務提携を締結いたしました」とコメントしている。

quatreは2014年12月の創業。2018年2月にはハックベンチャーズや名古屋テレビ・ベンチャーズから5250万円を調達済みだ。