エッジで安価にディープラーニング活用、Ideinが1.8億円を調達

処理性能が高くないエッジデバイスでディープラーニングを使った画像認識などを実用化する技術を開発するスタートアップ企業のIdein(イデイン)は今日、グローバル・ブレインDG LabファンドからシリーズAラウンドとして合計1億8000万円の資金調達を実施したことを発表した。Ideinは2015年4月の創業で、これまでエンジェル投資家や日本政策金融公庫などから3000万円の資金を得て、受託や研究開発を進めてきた。2016年末には黒字化しているが、「高度センシングデバイス」と、それらを使うためのクラウド側のインフラをSaaSで提供するという狙いでビジネスをスケールさせるという狙いだ。

クラウドではなくエッジでDLを活用

静止画や動画を解析して「そこに何が映っているのか」「何が起こっているのか」を理解するコンピュタービジョンという研究と応用の領域が、ディープラーニングによって近年劇的に性能が向上している、というのは皆さんご存知のとおり。GoogleやAmazon、Microsoft、IBMが次々とAPIを公開して民主化も進んでいる。もう各企業がモデルのトレーニングをしたり、開発者がディープラーニングのライブラリの使い方を学ばなくてもディープラーニングの恩恵を受けることができるようになってきた。

問題は画像を認識する場所だ。

APIベースにしろ、自社でディープラーニングを使うにしろ、今のところ多くの処理はサーバー上(クラウド上)で起こる。サーバー上で認識(推論)するということは、そのための画像データをネットワークで送信する必要があるが、その通信コストは用途によってはペイしないかもしれない。監視系のIoTなんかが、そうした応用の1つだ。

Idein創業者で代表の中村晃一氏は「画像認識APIを呼び続けるよりもエッジデバイスでディープラーニングを使うことで安くできます。普通にクラウドでやると通信コストは月額数十万円になり、これは削りづらいところです」と話す。

認識するのは画像だけではなく、音や加速度といったセンサーも組み合わせる。ポイントはセンサーから入ってきた情報をクラウドに投げるのではなく、エッジ側でディープラーニングを使った処理をしてしまうところ。サイズが小さく構造化したデータをクラウドやサービスに接続することでデータ収集や監視を行うのが狙い、という。

Idein創業者で代表取締役の中村晃一氏

例えばヘルスケアや介護の見守りの領域で応用が可能だ。医療関係の知人から「睡眠時無呼吸症候」の相談を受けて2014年末に試作した電球型のセンシングデバイスで手応えを感じたことが、そもそもの今回の取り組みのスタートという。「実際に3Dプリンターを使って3ヶ月ほどで作ってみたら、デバイスでイベントを取得するというのは他にも需要がありそうだ、これは結構いけるぞと思ったんです」(中村氏)

中村氏をはじめIdeinの11人のチームメンバーは情報科学系の研究者とエンジニア。中村氏は 東京大学情報理工学系研究科コンピューター科学でコンパイラの最適化技術に取り組んだりしていたそう。

Ideinの強みは、汎用のRaspberry Pi上で高速にディープラーニングを使うソフトウェア環境を整えたこと。Ideinが使っているのはプロセッサもソフトウェアも汎用のものだ。Raspberry Piはスマホと似たプロセッサだし、ディープラーニングにはChainerやCaffeといったオープンソースのライブラリを使う。難しいのはRaspberry Pi搭載のGPUであるVideoCore IVを使うために、アセンブラ、コンパイラ、数値計算ライブラリなど一通りのツールチェーンを自分たちで作った部分という。これによって10倍から30倍の高速化となり、以下の動画にあるように、30ドル程度の汎用デバイスでGoogleNet(Googleが配布している画像認識の学習モデル)による認識時間が0.7秒という実用的な速度になっている、という。

戦略としてはライブラリの一部はオープンソースとしていき、むしろソフトウェアのデプロイ(エッジデバイスに配布する)や管理、センシングで得たイベント情報のネット側のつなぎこみの部分で課金をしていくモデルを考えているそう。センサー自体も高度なものである必要がないほか、ソフトウェアのアップデートによって、新しい学習モデルを使った認識機能を増やしていくことができる。例えば顔認識は最初から組み入れつつ、後から顔の方向や表情を取得するといったようなことができるそうだ。

貿易業務の効率化クラウドサービス「Zenport」が資金調達とオープンβ公開を発表

貿易業務の効率化クラウドサービス「Zenport」を提供するZenportは7月10日、合計2社の投資家から資金調達を実施したと発表した。調達金額は非公開だが、数千万円規模の調達とみられる。同時に、Zenportはこれまでクローズドβ版として提供してきたZenportのオープンβテストを開始すると発表した。

投資家リストは以下の通り:

また、これまでに同社はエンジェルラウンドでDGインキュベーションから500万円を調達している。

Zenportは、煩雑な貿易業務の効率化をサポートするクラウドサービスだ。貨物のトラッキングや受発注・在庫管理、データ分析、貿易書類の管理などの機能を提供している。

Zenportが効率化する分野は大きく分けて2つある。書類管理と輸送管理だ。

貿易業務には多くの書類が必要になる。エクセルで船積依頼書を作成し、それをサプライヤーに提出する。そして、次はサプライヤーから船積通知書などの書類を受け取るなど、各業者間での書類のやり取りが頻繁に行なわれている。

Zenportを利用すれば、フォームに入力していくことで船積依頼書を作成することができ、ソフトを通してサプライヤーに送信することもできる。

次にZenportが効率化するのが輸送管理。現状、荷主が輸送状況を確認したい場合、まずフォワーダー(荷主と輸送業者をつなぐコーディネーターの役割)に電話などで連絡をし、その後フォワーダーがシステムで輸送状況を確認して荷主に折り返し連絡をするというやり取りが行なわれているそうだ。

Zenportを導入すれば、フォワーダーがスマートフォンを通して荷物の輸送状況を更新することで、直接連絡を取らなくともWeb上から輸送状況を確認することが可能になる。

ただ正直、これだけでは従来の輸送管理方法と大差ないように感じるが、Zenport代表の加世田敏宏は「将来的には荷物につけるタグを導入するなどして、完全自動化を行いたい」と話す。

マッチングプラットフォームや融資サービスへの展開も

加世田氏によれば、2017年4月に開始したクローズドβテストには約10社の企業が参加しているという。Zenportの主なターゲットとなるのは、年商が100〜3000億以下の中堅貿易企業だ。

料金設定はまだ未定だが、物流量に応じて3パターン程度の月額料金プラン(数万円から数十万円のレンジ)を設定する方法を考えているようだ。

加世田氏は今後の事業プランについて、「Zenportで貿易業務に関するデータを集めたあと、荷主と輸送業者をつなぐマッチングプラットフォームをつくりたい。また、将来的にはL/C決済システム(参考)をソフトに埋め込み、それにより集めた決済データを利用して貿易事業者向けの融資業務を行うことも考えている」と語る。

貨物輸送や貿易の分野は、セクシーではないが100兆円とも言われる巨大な市場規模をもつマーケット。旧態依然としたその市場にイノベーションを起こすべく、海外ではFlexportHavenなどのスタートアップが誕生した。日本でも、つい先日の5月に国際物流クラウドサービスの「shippio」が数千万円規模の資金調達を実施している。

前列左から2番目がZenport代表の加世田敏宏氏

出張写真撮影サービス運営のラブグラフが1.4億円の資金調達

カップル・家族のための出張写真撮影サービス「Lovegraph(ラブグラフ)」を運営するラブグラフは7月7日、GREE Venturesほか、数名の個人投資家を引受先とした、総額1.4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

調達した資金は既存事業の拡大、採用のほか、オウンドメディアの拡大、新規ブランドの立ち上げなどに充てるとしている。

カップルだけではなく、ウェディング、家族での利用も

ラブグラフの創業は2015年2月。もともと、同社の代表取締役CEOである駒下純兵氏が個人的な趣味として、カメラの練習も兼ねて友人カップルのデートに同行し、写真を撮影。その写真をウェブサイトに公開したところ、SNSで拡散され、撮影の依頼が増えたことから法人化した、という経緯だ。

Lovegraphの利用料金は、写真撮影やカメラマン出張料、 写真編集など全て込みで1万6000円(平日、休日ともに)となっている。

 

最初は“カップル”に特化した写真撮影サービスだったが、約2年半、事業を運営していく中で少しずつ用途が拡大。結婚式の前撮り、後撮りのほか、家族写真、友人同士の写真の撮影にも使われ始め、これまでに8000人以上が利用しているとのこと。

サービス開始以降、成長は続けているものの、今度は新たな課題が浮き彫りになってきた、と駒下氏は語る。

「ありがたいことに、『カップルの写真撮影といえばLovegraph』とイメージしてもらえるくらいカップル領域におけるブランディングには成功しました。ただし、そのイメージが強すぎることもあって、(一度は増えた)結婚式の前撮りや家族写真の撮影での利用にためらいを感じてしまうユーザーも出てきてしまいました」(駒下氏)

そうした状況を踏まえ、ラブグラフは新規ブランドの立ち上げに着手する。具体的には、現在のLovegraphはカップル向けにしつつ、ウェディング向け、家族向けに特化したブランドをつくる、というわけだ。既に友達同士のための出張フォト撮影サービス「Lovegraph friends(ラブグラフフレンズ)」は立ち上がっている。

ミレニアル世代にLovegraphを浸透させていく

駒下氏の趣味から始まったサービスだが、今後はミレニアル世代における「カメラマンによる写真撮影」の文化をつくっていくことが目的だという。

「これまで、写真撮影のサービスは七五三や成人式など、特別なタイミングでしか使うことはありませんでしたが、自分はもっと日常的に写真を撮る文化があってもいいと思っています。その役割をLovegraphが担いたい」(駒下氏)

そのためにラブグラフは新規メディアを立ち上げ、まだLovegraphを知らないミレニアル世代にアプローチを行っていく。「現在、ミレニアル世代の総人口は2500万人ほどいるのですが、その10〜20%をLovegraphのユーザーにしていきたい」と駒下氏。ラブグラフはカメラマンによる写真撮影を、より日常的なものにしていくことを狙っていく——。

OB訪問サービス「VISITS OB」運営元がパーソルHDなどから5.7億円を調達、協働でHR Techの研究開発も

左からパーソルキャリア 執行役員 岩田亮氏、 パーソルホールディングス 取締役副社長COO
高橋広敏氏、VISITS Technologies 代表取締役 松本勝氏、 PERSOL INNOVATION FUND 代表パートナー 加藤丈幸氏

OB訪問サービス「VISITS OB」を提供するVISITS Technologiesは7月6日、第三者割当増資および日本政策金融公庫の新事業挑戦支援制度を用いた借入により総額5.7億円を調達したことを明らかにした。第三者割当増資の割当先については、PERSOL INNOVATION FUND(旧 Temp Innovation Fund)、ベクトル、三菱UFJキャピタル、グローブアドバイザーズ及び既存株主やエンジェル投資家など。またパーソルホールディングスとは資本提携に加え、HR Tech領域の研究開発を協働で実施していくべく業務提携も結んでいる。

VISITS Technologiesは2015年にシードラウンドで4000万円を、2016年6月に代々木ゼミナールグループ、ウィルグループインキュベートファンド、エンジェル投資家数名から2.5億円を調達しており、今回はシリーズBに相当するラウンドだ。今後HR Techカンパニーとして成長を目指し、社名をVISITS WORKSからVISITS Technologiesへ変更したことも合わせて明かしている。

HR業界の課題をテクノロジーで解決するべく2014年に設立

同社の設立は2014年。元ゴールドマンサックスのトレーダーで、人工知能を用いた投資ファンド設立や大学生向けキャリア教育プラットフォーム「キャリア大学」の立ち上げなどを行ってきた松本勝氏が代表を務めるスタートアップだ。

松本氏を含め金融業界やコンサルティングファームでデータサイエンスに携わってきたメンバーが集結。「HR業界は市場が大きい一方で、まだまだアナログな部分が多く課題を感じていた」ことから、テクノロジーを用いてこの市場の課題解決に取り組み始めた。

2015年12月にリリースしたVISITS OBも、ファーストキャリアの選択はその後の人生に大きな影響を及ぼすにも関わらず、情報の非対称性が大きく、見える化されていない情報が多いという課題を解決するべく開発したもの。データ解析力を生かし「会えば会うほどいい人と出会える」ことが売りで、現在300以上の企業で活用されており、リリース1年8ヶ月で50万マッチを達成している。

「既存のOB訪問サービスは名簿をオンライン化したようのものも多いが、私たちの強みはそれを科学していること。一見アナログなサービスに見えるかもしれないが、裏側では培ってきたAIやビックデータ解析の技術を駆使しているので、特に導入企業様に対しては新卒採用に関する分析サービスを提供していると思っている」(松本氏)

今後はVISITS OBの改良に加えて、まだ課題が残る人材領域で新たな事業を立ち上げることを考えており、今回パーソルホールディングスの中核会社であるパーソルキャリア(旧インテリジェンス)と業務提携を実施している。パーソルキャリアが蓄積した人材領域における膨大なノウハウと、VISITS Technologiesのデータ解析力、技術力を合わせて、転職や社内人材管理に関するサービスを協働で研究、開発していくという。

「規模が大きく、アナログの要素が大きく残っている市場の代表が不動産とHR。特にHRは社会に対するインパクトも大きく、一部でデジタル化も進んできていて、今自分たちが培ってきた技術を発揮するには最適だと思っている。まだまだ日本のHR Techは世界に比べて遅れているので、一緒にこの市場を変えていきたい」(松本氏)

ルネサス出身者が設立した不揮発メモリーベンチャーのフローディアが16億円を調達

不揮発メモリーのIPライセンス事業を展開するフローディアは7月5日、シリーズBラウンドで合計9社の投資家から16億円を調達したと発表した。投資家リストは以下の通り:

ルネサスエレクトロニクス出身のエンジニアが設立したフローディアの特徴は、そのビジネスモデルにある。

同社は、メモリ製造に必要な工程や回路をIP(回路情報や製法)としてライセンス提供するビジネスモデルを展開している。つまり、顧客からの要求スペックに応じた最適なメモリの開発設計を行う一方で、その先にある製造は自社で行なわず、製造に必要な情報をライセンスとして売り出すモデルだ。

フローディアと同様に知的財産をもとにしたビジネスモデルを展開するのが、2016年9月にソフトバンクが約3.3兆円をかけて買収したAMRで、このようなモデルは資本効率が極めて高いとされている。参考として紹介すると、ARMが発表した最新の決算報告によれば、その営業利益率は48%となっている。

不揮発メモリー開発に強み

フローディアが得意とするのは、電源供給を行なわない状態でも書き込まれたデータが消えない不揮発性メモリー(参考)の開発だ。また、同社は追加コストを抑えながら不揮発性メモリーを他の演算用半導体と同じチップに埋め込む技術をもち、これにより低コスト化と省スペースを実現している。

さらに、ゲートと基盤のあいだに高電圧をかけて不揮発メモリー化させる”FNトンネル方式”を利用したフローディアのメモリーは、セル1個あたりの消費電力が従来の10〜100万分の1程度に抑えられているそうだ。

このような省スペース、省電力という特徴から、フローディアが開発する組込型不揮発性メモリーはIoTデバイスや車載用部品などへの利用に適しているという。

本ラウンドに参加した産業革新機構の代表である勝又幹英氏は、「フローディアが開発・提供する組込型不揮発性メモリは、省電力・省スペース・低コスト化の要求を確実に実現することにより、車載アプリケーションへの対応に加え、従来の組込型不揮発性メモリの適用領域を大きく超える可能性を持っている」と語る。

2011年創業のフローディアは、2015年6月に産業革新機構などから8億円を調達している。同社によれば、「これまでの開発成果を事業に拡大すること」が今回のラウンドを実施した目的だ。

SaaS株好調の中、ついにDropboxがIPO準備中との噂――年内上場の可能性も

【編集部注】執筆者のAlex WilhelmはCrunchbase Newsの編集長で、VCに関するTechCrunchのポッドキャストEquityの共同司会者でもある。

設立からかなりの時間が経ち、その間にエンタープライズ向けサービスへのピボット、そして2つの新たな信用枠の獲得を果たし、これまでに大金を調達しながらも再度コスト削減に努めているDropboxが、ようやくIPOに向けて動き始めたかもしれない。

ロイターによれば、クラウドストレージサービス(恐らくDropboxは「エンタープライズ向けプロダクティビティソフト」という情報も追加してほしいと考えているのだろうが)を提供する同社は、「年内のIPOに向けて、引受人を探している」ようだ。

さらに同記事は、DropboxのIPOが「Snap Inc以来、アメリカのテック企業としては最大級」になる可能性があり、情報源については「本件に詳しい情報筋」としている。私たちはロイターの報道内容の中でも、特に引用した箇所に注目している。というのも、ここにはタイミングと規模という、IPOに関して私たちがもっとも気にかけている情報が含まれているのだ。

もっと簡単に言うと、私たちはいつ今年が終わるか知っているし、SnapのIPOについても知っているので、もし全てがロイターの記事通りだとすれば、DropboxのIPOのタイミングは実質的にどちらかに絞られたことになる。

だが、恐らく人々の関心は収益と評価額に向いているだろうから、まずはその話をしよう。

収益、キャッシュフロー、上辺の利益、本当の損失

TechCrunchでは、Dropboxが今年の春に発表した業績に関連して「Dropbox really wants us to know its finances are healthy(Dropboxは健全な経営状況をかなりアピールしたいようだ)」と題された記事を公開した。

会社が健全な状態にあるというのは素晴らしいことだし、特に何か言うべきこともない。ちょうどいいので、去年から今までに発表(自主的かどうかは別として)されたDropboxのマイルストーンを確認してみよう。

そして今月に入って、DropboxはIPOに向かって動き出したと言われている。

各マイルストーンを確認したのは、読者の皆さん(そしてこの記事を書いた私自身)を退屈させるためではなく、他の企業と比較する上で重要な点を洗い出すためだ。その結果、良くも悪くもBoxが上場企業の中ではDropboxのベンチマークとしてふさわしいことがわかった。次は収益や評価額を比較するため、収益の質について考えたい。

企業価値はどのくらいなのか?

Dropboxの10億ドルという収益額は直近12ヶ月のものではない。彼らの正式なコメントは次の通りだ。「Dropbox is proud to announce that our business has surpassed $1 billion in revenue run rate(Dropboxのランレートがこの度10億ドルを突破したことをお知らせします)」

同社のコメントには、通常SaaS企業が収益を表すときに使う言葉が入っていない。それは月間ランレート(MRR)と年間ランレート(ARR)だ。

しかしDropboxは、コメントを発表したブログポストの中で、自分たちの業績を数十億ドルのARRを誇るSalesforceなどのSaaS企業と直接比較していたため、この10億ドルという数字をARRと解釈しても問題ないだろう。

それでは、今年の第1四半期にDropboxが10億ドルのARRを達成したと仮定しよう。つまり、私の脳がきちんと動いていれば、第1四半期のランレートは2億5000ドルだったということになる(非公開企業の情報は限られているので、ここではかなり大雑把に計算している。しかし、少なくともDropboxは真実を伝えているとしよう)。

これでDropboxの指標が揃った。四半期収益が2億5000万ドルでフリーキャッシュフローはポジティブ、さらにEBITDAベースで黒字、というのが同社の現状だ。

次は直近の四半期(2017年4月30日締め)における、Boxの業績を見てみよう。

  • 収益:1億1700万ドル
  • 営業・フリーキャッシュフロー:共にポジティブ
  • EBITDA:ネガティブ

Dropboxよりも規模の小さなBoxだが、フリーキャッシュフローはDropboxよりも早いタイミングでポジティブになり、前年比での成長率は30%を記録している。Dropboxの成長率に関する情報は手元にないが、同社の数字の多くはBoxのものに近いため、成長率も同じくらいの水準と考えることにする。

では、Boxの収益の質はどうなのか? 直近12か月の収益をもとにした同社の株価売上高倍率は5.73だ。また、今年の第1四半期の収益を4倍にしたものを年間収益と仮定した場合、株価売上高倍率は5.2となる。将来的な収益を割り引いて現在価値を求めると、この数字はさらに下がるが、そこまではしないでおこう。

いずれにしろ、これでかなり比較しやすくなった。先述の通りDropboxの成長率はBoxとほぼ同じだと仮定し、Boxの株価売上高倍率である5.2と、Dropboxの10億ドルという(仮定上の)年間収益を使ってDropboxの評価額を算出すると……約52億ドルということになる。

さらに、DropboxはBoxと違ってEBITDAベースで黒字のため、Dropboxの評価額はここから上がる可能性がある。また、もしもDropboxがBoxを上回るスピードで成長すれば、投資家はさらにDropboxの評価額を吊り上げるだろう。そして最後に、Dropboxは長らくフリーキャッシュフローをポジティブに保ってきたため、バランスシート上もBoxを凌駕しているかもしれず、これはIPO時の時価総額に良い影響を与えるだろう。

実際どうなるかはこれからの様子を見守っていくしかないが、一部のテック株が史上最高額に近い値をつけている中でDropboxが上場を狙っているということは注目に値する。まさにブームといったところか。その一方で、結局直近のラウンドよりも低い評価額がつくという可能性ももちろんある。

ここで冒頭の問いをもう一度見てみよう。

さらに同記事は、DropboxのIPOが「Snap Inc以来、アメリカのテック企業としては最大級」になる可能性があり、情報源については「本件に詳しい情報筋」としている。私たちはロイターの報道内容の中でも、特に引用した箇所に注目している。というのも、ここにはタイミングと規模というIPOに関して私たちがもっとも気にする情報が含まれているのだ。

そしてSnapのIPOの規模については、Forbesが以下のように報じている。

Snap Inc.は売り出し価格17ドルで水曜日に上場し、時価総額は236億ドルに達した。人気メッセージングアプリSnapchatの開発元である同社は、2億株を発行し、2014年以来最高額となるIPOで34億ドルを調達したと言われている。

SnapのIPOは規模が大きすぎるため、Dropboxの上場のシグナルとなる評価額の上限値はハッキリと見えないが、現時点の情報でできることはこのくらいだ。情報量が増えてくれば、さらに細かな分析ができるようになるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

2人で手を握りあって入れる「MRお化け屋敷」が夏にデビュー、日本のTyffonが1億円調達

VR市場はB向けのバーティカル市場の立ち上がりが早いようだが、B2B2Cのエンタメ方面も盛り上がりそうだ。AR/VR/MR時代にホーンテッド・マンションを作り直すとしたら、こんな感じになるだろうという独特の世界観と、それを可能にする先進的なMR技術を作っている日本のスタートアップ企業がある。 今日インキュベイトファンドから1億円の資金調達を発表した「Tyffon」(ティフォン)は、この夏にも商業施設などで体験できるMRコンテンツ展開を始める。早速ぼくは東京・三田にある同社で以下のような何とも空疎な空間を歩くことで、ひと足早くこの未来感のある「21世紀のホーンテッドマンション」ともいえる「Magic-Reality: Corridor」を体験してきた。

上の写真を見ればわかる通り、体験者は何もない空間を歩く。ぐるぐる歩く。だけど、体験者がみているのは、以下のようなおどろおどろしい怪物が徘徊し、死体がうめく呪われた洋館の世界だ。

上の動画をよく見るとお分かりいただけると思うが、これは単なる360度動画ではない。体験者は自分の腕や、自分が手に持つランタンをVR中の画像上で見ることができるが、これは自明のことではない。VRヘッドマウントディスプレイとして利用するHTC Viveのカメラから取り込んだ映像をリアルタイムに3次元空間に再度落とし込み、仮想空間内の光などを反映した上で体験者に見せているのだ。だからこれはVRではなく、MR(Mixed Reality)と呼ばれる。

足元を見ると自分の足が見えるし、隣に立っている同伴者も見える。つまりドキドキしながら館に足を踏み込んだ2人が一緒に仮想空間に「入った」ような感覚を作り出す。そんな現実と仮想が混じる世界を作り上げようとしている。VRコンテンツは長尺になると体験者が感じる「孤独」が問題と言われることもあるが、こうした複数人で入れる仮想世界のMRには大きな可能性を感じるところだ。

やろうと思えば、際限なく怖くできてしまう

今回のTyffonへの出資を決めたインキュベイトファンドの投資家、赤浦徹氏は、取材に訪れたぼくに対して「事前にトイレに行ってください」と念を押した。初めはお決まりの冗談なのかと思ったが、必ずしも誇張ということではなかったようだ。これは、かなり怖い。

暗がりから襲いかかってくる化け物は、本当に……、襲ってくるし、うめき声を上げるゾンビだか死体だか分からない何かが目の前の毛布の下でうごめく。仮想空間内で壁に当たらないように廊下を進んでいくと、上にあるクロマキー処理のための単色カーテンで区切られた狭い空間をぐるぐる歩くことになる。だが、実際には館の中は小部屋に分かれて、次々と背後で嫌な音を立てて扉がしまったりする。ある時はエレベーターに入ったと思えば、ものすごい速度で落下するような映像に包まれる。

「床を振動させたり、体験者に風を当てるとか、そうしたこともやっていきたいですね」

そう語るのはTyffon創業者で代表取締役の深澤研氏だ。4D映画のように冷気や匂いなど、まだまだ体験をリアルにするためにやれることはあるという。ただ、商業施設で導入するとした場合、あまり利用者が怖がりすぎないよう安全面の配慮が必要そうではある。実際、ぼくが体験した10分ほどのコンテンツは怖さを抑え気味にしていたものだそう。本当は化け物に食べられてしまって腸内を歩くコンテンツとか、後ろから大きな口が追いかけてくるようなものもあるそうだ。ぼくが体験したコンテンツは初心者向け。同じ方向にぐるぐる回るものだったので方向感覚も保てたが、コンテンツによっては迷宮の中を歩くようなものにできるし、どんな長大なコンテンツも原理的には可能という。当然こうしたコンテンツには年齢制限が課されることになる。

HTC ViveのようにカメラがあるVRヘッドマウントディスプレイを使って撮影した映像を、仮想空間内に再現して合成するコンテンツというのは今のところ多くない。撮影した腕を3次元空間内に再現するのは自明の処理ではなく、普通にやると単に平面にカメラ映像を貼った感じになってしまう。これを曲面のようにするのは特殊な処理で、ほかにも撮影した人物などを館の中の照明の方向や色に合わせる処理をすることで没入感を作り出しているそうだ。

ぼくがやったデモでは2万匹のイナゴにわっと囲まれるという、実に嫌なシーンもあった。そろそろと廊下を歩いていると壁に何かがいる。何だろうとランタンを近寄せて照らすと、赤いイナゴがぞわぞわうごめいている。もっとランタンを近づけるとイナゴがサッと散る。かと思えば背後でドアがバタンと閉まり、狭い空間に閉じ込められる。そして大量のイナゴがどこからともなく沸いてきて、イナゴの大群に襲われる。頭でCGと分かっていても、これは本当に気味が悪いものだった。と、同時にいくら背中にそれなりの処理性能のPCを背負っているとはいえ、高度なCG処理だなとも思えた。聞けば、3万匹程度は実用的な速さで動かせるという。

ホラーの世界観に魅せられた少年

Tyffonの深澤氏は、2011年11月の創業以来、アプリ開発を手がけてきた。撮影した顔写真がソンビになり動き出すという一種のセルフィーアプリ「ゾンビブース」は2012年のリリース以来、バージョン2の続編も含めて3500万DLという大きなヒット作品となり、アイテム課金で黒字化していたそうだ。

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深澤氏はゾンビブースやMacig-Reality Corridorを作るべき経歴と嗜好をもっている。

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Tyffon創業者の深澤研氏

「これが中学2年生のときに描いた絵なんです」。そういって指差したオフィスに置かれた油絵をみると、立派なホラーテイストの頭蓋骨。14歳の息子が描いたとしたら親が将来を心配してギョッとしそうな絵ではある。聞けば、5歳の頃に体験したディズニーランドのホーンテッドマンションの影響を強く受けているのだとか。テクノロジーとアートの融合する領域で何か作りたかった、という深澤氏は、3DのCGアニメーションを作って海外の映画祭で上映するなどアート方面の活動もしていた。大学では情報科学の1領域としてフェイシャル・アニメーションを研究していたし、Tyffon創業に前後して顔写真から表情の動くアニメーションを作る技術を持つ、モーションポートレートにも参画していた経緯もあるという。

2014年にディズニーのアクセラレーターの第1回プログラムに選ばれて渡米。参加8社のうち1社のみが日本のスタートアップだったといい、このときディズニーからシード投資も受けている。実は同じプログラムに参加していたのが、スターウォーズの丸いキャラ「BB-8」で知られるスフィロだ。BB-8が生まれたキッカケはまさにこのディズニーのプログラムで、ディズニーCEOのロバート・A・アイガーがアクセラレターの初日、2日目とやってきて、そこでスフィロと話をしたところから、あの愛嬌のあるBB-8は生まれたそうだ。

グローバルにみれば、似た領域で取り組んでいるスタートアップとしてThe VOIDZero Latencyがある。どちらも、お化け屋敷やホーンテッド・マンションといったジャンルと異なるシューティングゲームを作っている。

すでにTyffonは大手メディア企業と組んで都内で体験スペースを設けることが決まっているほか、テーマパークや大手小売店舗からの引き合いがあるという。設置面積が小さくて済むメリットから都市型アミューズメント施設を中心に導入が進みそうだ。Tyffonは米ディズニーからも投資を受けているので、海外展開にも期待したいところだ。

無名のユニコーンたち:資金がない状態から始まった35の大企業ーーVCは起業に必須ではない

【編集部注】著者のJoe FlahertyはFounder CollectiveのContent & Communityディレクターである。

ベンチャーキャピタルは麻薬だ、そしてVCでクスリ漬けになる可能性もある。しかしほとんどの創業者たちにとってそれは贅沢な悩みだ。より頻繁に投資家たちが耳にする質問は「私のスタートアップを支えてくれるVCを見つけるにはどうすればいいですか?」というものだ。こうした創業者たちは、過剰資本が彼らのIPOをどれほど厄介なものにするのかを心配してはいない。とにかく彼らは最初の条件規定書(term sheet)に署名してくれる誰かを(誰でもいいから)得ようと躍起になっている。

世の中の創業者たちの間で広く信じられているものの1つに、ベンチャーキャピタルは成功の前兆だというものがある。VCは多くの成功したテクノロジーベンチャーに見られる共通点だが、必須の条件というわけではない。特に初期段階では。

起業家は、ほとんどまたはまったく資本のない状態で、かなりのことを成し遂げることができる。資本によって洞察に富んだ会社になるわけではない。創造的に1ドルを10ドルを変えられないのに、何故100万ドルを1000万ドルにできると思えるのか?

スタートアップが進むことのできる方法を説明するために、以下に数千ドルあるいは額の汗だけを資本に始まった35社の例を示す。これらはみな私が「効率的な起業家精神」と呼ぶもののお手本となったものたちだ。

これらの企業の多くは、その後10億ドルの評価額を得ている、その中には10億ドルの収益を上げているものもある。しかしいずれもシードラウンドとみなされるもの以外で始まった企業はない。これらのスタートアップのほとんどは後にVCから資金を調達したものの、それはもう投資家からの資金調達の有無に関わらず成功できるという事実を確立したあとに過ぎない。現在でも、彼らの多くは広くは知られていない。彼らは、ハイテク業界の目に見えないユニコーンなのだ。

なので、投資家たちとのミーティングを慌てて予定する前に、これらのストーリーを読んで欲しい。これらは多くの創業者たちが抱いているVC中心の見方に対する釣り合いを取らせるものであり、資金調達について考える際に別の方法を提供するものだ。

以下に続くのは、こうした企業たちの簡単で簡潔な説明(彼らがとったアプローチ別に分類されている)と、それらの詳細を読むことができるストーリーへのリンクだ。忘れないで欲しい。ベンチャーキャピタルを受け入れることは、強制ではなく選択でなければならないのだ。これらの会社は、その方法を見せてくれる。

何かを生み出し、その後お金を調達する

ほとんどの業界で、もし顧客の本当の問題を解決してその費用を求めることができるなら、始めるためにベンチャーキャピタルは必要ではない。これについて考える際には3つの方法がある:

ワークフローの自動化

有益なプロダクトを生み出す最も簡単な方法は、日々のワークフローの一部を自動化することだ。これにより、構築しているものへの需要が証明され、プロジェクトのための資金調達源が確実に得られる。

MailChimp :共同創業者/CEOのBen Chestnutが、2000年にデザインコンサルティング事業を経営していたときに、電子メールニュースレターを発行したいという顧客が連続してやって来た。唯一の問題は、彼がそれらをデザインすることを面倒だと思っていたことだった。そこで、チームを退屈させないために、彼はプロセスを合理化するツールを作ることにした。 年商4億ドルのビジネスMailChimpは、このようにして生まれた。

Lynda:Lynda Weinmanは、1990年代後半に、ウェブデザイナー向けのツールの教師としてスタートした。書店でのセミナーは退屈だったので、彼女はやがて生徒たちをより良く指導できるトレーニング動画の作成を始めた。次々に作られたチュートリアルによって、彼女の会社はソフトウェア開発者とデザイナーたちのスキル向上を手助けして来た。彼女はコンテンツライブラリの構築を20年続け、その技術資産の蓄積はLinkedInが15億ドルで買収するまでに成長することができた。

資本効率の高い製品から始める

多くの起業家は業界リーダーに真正面から挑み、通常は失敗に終わることになる。これは特にハードウェアの場合に当てはまる。Appleのような会社と競争しようとする代わりに、こうした向こう意気の強いスタートアップたちはRadioShackによって残されたギャップを埋め、敬意を受け見習われる価値のあるビジネスを生み出した。

AdaFruit Industries:Limor Friedは、MITの学生の時代に、既製の部品で構成されたDIYキットを提供することで、彼女のDIY eコーマス帝国を開始した。Friedはエレクトロニクス商店で見られるものと同じビルディングブロックを商品化したものの、同時にユニークなコンテンツも用意して、スペースインベーダー筐体のレプリカを、ハンダ付けしたくなるような気にさせた。現在、彼女は85人の従業員を抱え、年間3300万ドルを稼いでいる。

SparkFunAdaFruitと同様に、Nathan Seidleが大学寮の部屋で、エレクトロニクスキットや奇妙な部品を、エキゾチックな新しいセンサーやシステムを試したいエンジニア仲間向けに売り始めたのが、SparkFunの始まりだ。現在、彼のeコマース帝国は154人を雇用しており、年間収益は3200万ドルだ。

既存の問題を解決し、既存のビジネスモデルを活用する

スタートアップはビジネスモデルの面で特に革新的である必要はない。より現代的な技術プラットフォーム、またはUXレイヤーの上に優れた製品を構築すれば十分だ。ここで見る企業は、どれも車輪の再発明を行なってはおらず、全てが真のバリューを生み出している。

Braintree Payments :オンラインで詐欺師に騙されることなく、お金を交換することは、ウェブ上での最も古い問題の1つだ。取引に関わる全ての当事者たちは、素晴らしい体験のためなら、公平な「税金」を支払うことには喜んで同意する。Braintreeはより良い技術ソリューションを構築し、8億ドルの買収に先行する、2回のVCラウンドで6900万ドルを調達する前に、4年間に渡ってそうした取引からの収益で生き延びていた。

Shopify:Shopifyの創業者は、スノーボーダーのためのeコマースサイトを開始したときに、ショッピングカートのソリューションを探していた 。しかし適当なものを見つけることができなかった彼らは、自分たちの痒みは自分たちで掻くことを決め、当時ホットだったRuby on Railsフレームワーク上に特注ソリューションを構築した。これは、より多くの人々にとっても完璧な解決策であることが判明し、創業者たちはそれが生み出す収入によって、6年の間独立したビジネスを運営していた。彼らは最終的にVCから資金を調達し、その後IPOを行い10億ドルの評価を受けた。

自立ルール

多くの起業家は「CEOを務める」という時間を無駄にしながら、戦略を策定しビジネスがどのように成長するのかの夢の組織図を描きがちだ。それをしてはならない。その代わり、自分が持っているリソースだけを使って、持っているアイデアを前進させるために、今日できることを見つけよう。

Ipsy:一般女性向けに、化粧品の詰め合わせボックスを、毎月サブスクリプションベースで送るサービスは、Birchboxのような先駆者のおかげで成長産業となっている。YouTubeスターのMichelle Phanは、先行者としての優位性は持っていなかったが、オンライン有名人(800万人以上のYouTubeフォロワー)としての地位、化粧品ブランドとのコネ、そして50万ドル以下のシード資金を活用して、化粧品サブスクリプションスタートアップを開始した。その後VCから1億ドルを調達する前に売り上げは1億5000万ドルに達している。

資本によって洞察に富んだ会社になるわけではない。

ShutterStock:Jon Oringerはプロのソフトウェア開発者で、アマチュア写真家でもあった。彼はこのスキルを組み合わせて、個人フォトライブラリから3万枚写真を使いフォトストックサービスを開始した。現在の価値は20億ドルである。資本効率が報われて、ついには彼を本当に自力で辿り着いた億万長者に変えた。

SimpliSafe:人々はハードウェアビジネスをブートストラップしようとする考えを嘲笑するが、SimpliSafeのChad Lauransはそれを実行した。彼は友人や家族から少額の資金を調達し、その後8年間に渡って家庭用セキュリティビジネスを構築して来た。お金を節約するために、最初のプロトタイプは文字通り自分でハンダ付けを行った。8年後、ビジネスは数十万の顧客を獲得し、数億ドルの収入を上げ、Sequoiaから5700万ドルのVC資金を手に入れた

どこから集めてもお金はお金 … (誰のお金も緑色)

資金調達は、数百万ドルが一度にやってくるとは限らない。創業者たちは助成金、インキュベーター、エンジェル、あるいはプリセールスなどからお金をかき集めることが可能だ。もっともやり手の起業家たちは、プロダクトを提供する前から支払いを集めることのできるビジネスモデルをデザインし、顧客を成長資金の源泉にする。

Tough Mudder:陸上競技起業家のWill Deanは貯金の7000ドルを使って、年商1億ドル以上の会社を生み出した。その秘密は、レースへの事前登録を販売し、そこで集まった売上を運転資金として、Tough Mudderを有名にした電化障害物コースを建設したのだ。

CoolMiniOrNot:CoolMiniOrNotは、マニア同士がDungeons&Dragonsのフィギュアをペイントする能力を自慢し合うウェブサイトとして始まった。最終的にサイトの創設者たちは、Kickstarterをチャネルとして活用して、独自のゲームをデザインして配布することを決めた。彼らは27回のKickstarterキャンペーンを実施し、3594万3270ドルの非希釈的(non-dilutive)資金を調達した。ゲームは続く。

売れ!売れ!売れ!

通常、最良の資金源は顧客だ。売ることには2つの利点がある。まず、まず直ぐにキャッシュレジスタを鳴らすことができること。第2に、顧客と共感するものをすばやく学び、それらの洞察を使って商品を洗練することができることだ。

ScentsyDNVB(Digitally-Native Vertical Brands)は大流行りだが、そうしたものは妙に凝った紹介ビデオやFacebookでの広告に過度に依存して売上を上げている。Scentsyは広告を買う余裕がなかった時代には、不要物交換会でロウソクを売っていた。それは格好良いものではなかったが、創業者たちは買い手と共鳴するための確かなメッセージを受け取っていた。今では年間収入は5億4500万ドルを超えている。

CarGurus:このアプリは、データ分析を活用して、顧客が中古車に関する最良の取引を見つけるのに役立つものだ。しかし同社のCEOは、年間5000万ドルの収益と利益率の高さの理由を、同社がライフサイクルの早い段階で営業チームを雇用したからだと言う。同社の350人近くの従業員のほぼ半数が、ソフトウェアを作成するのではなく、セールス電話をかけている。

LootCrate:LootCrate(毎月ギーク商品詰め合わせが届く定期便サービス)は制度的な資金調達を行なう以前に、既に60万人以上の顧客と1億ドルの以上の収入があった。彼らが非常に効率的だった理由の一部は、同社が設立した最初の週末から、顧客に課金を開始したことだ。創業者たちはハッカソンでランディングページをセットアップし、注文を集め、その資金を使ってパッケージを埋めるギークな商品を購入した。

マーケティングをケチる

スタートアップのマーケティング担当者は、無計画なブランドマーケティングで時間を無駄にしたくないだろう。効率的な起業家たちは、即座に付加価値のあるキャンペーンを必要としている。

Wayfair:この家庭用品のeコマース会社は、ブランド広告をスキップし、一般的な検索用語に完全に一致する何百ものドメイン名を購入したおかげで、最初の営業月から利益を上げることができた。このモデルは、最終的には同社が公開直前にシリーズAで1億6500万ドルを調達し、40億ドルの時価総額となるまで、10年に渡る利益性の高い成長を支えた。

創造的に1ドルを10ドルを変えられないのに、何故100万ドルを1000万ドルにできると思えるのか?

Cards Against Humanity:Kickstarterからのわずか1万5700ドルの資金で、Cards Against Humanityチームは最初の年に合計1200万ドルとなるビジネスを作り上げた。彼らはまた、一連の抜け目ないマーケティング上の妙技を披露した。牛の糞ピカソ作品の断片トランプ後のアメリカの虚無感を表現する大きな穴、 そしてトランプからの「緊急避難」バッグを販売し、さらに何の見返りもなしにお金を送ることを募った。これらのプロモーションは安く実行することはできないが、支払ったコストに見合う収入を得ることができて、一方沢山のフリーメディアに掲載して貰うこともできる。

GoFundMe:バイラルマーケティングはビジネスモデルのおまけとして扱われる場合には、当然ながら真面目に取り扱われることはないが、ビジネスモデルにきちんと統合された場合には非常にパワフルな道具となる。超効率的なコンバージョン率最適化手法(CRO:conversion rate optimization)と組み合わせることで、それは無敵なものになる可能性がある。GoFundMeの創業者たちは、このペアの力を使って、ビジネスを約6億ドルで評価される時点までブートストラップすることができた。

効率 > 資金

スタートアップは、しばしば彼らが調達した資金によって評価される。しかし、もっと重要なことは、それらの企業がいかに効率的に資金を使用しているかを尋ねることだ。効率性とは、ひたすら倹約するという意味ではない。その代わり、本質的に資本を組み合わせることでより効率的になる、テクノロジーもしくはビジネスモデルを中心にしたビジネスを指向する起業家たちを見つけることだ。

PaintNite:画家のモネとメルローの赤ワインを組み合わせるという考えはしばらく存在していたが、PaintNiteの創始者はこのモデルをより費用対効果の高いものにしたいと考えた。他の競合相手が、動きが遅く高価なフランチャイズセールスモデルに頼っていたのに対して、PaintNiteはアート教師たちと平日にワインを売りたいと思っていたバーにペアを組ませて、ベンチャーキャピタルから調達を行なう前年には3000万ドルの収益を上げるビジネスを作り上げた。

Plenty of Fish:2003年に設立されたこの出会い系サイトは機能も見かけも10年間ほとんど変化しなかった。他のサイトには、より多くの機能、鮮やかなグラフィックス、豊富なベンチャー資金が注ぎ込まれていたが、Plenty of Fishは無料で、そのリソースの大部分をスパムアカウントとの戦いに費やしていた。Craigslistと共に、Plenty of Fishの最大の資産は、「良質の魚がいる池だ」という評判だ。同社は時間の経過とともにサイトを改良したが、大量の資本注入は必要としなかった。最終的に同社は、5億7500万ドルで売却された。

Mojang:Minecraftの背後にいるレンガ職人たちは決してベンチャーキャピタルの資金調達を行わなかった。たった50人の従業員で、Microsoftに買収される前には、利益で10億ドル近くを稼いでいた。このスウェーデンのスタジオは、Zyngaにインスパイアされたソーシャルスパミングや略奪的な小規模取引のような流行には決して巻き込まれることはなかった。Minecraftはユーザーに定額料金を請求することで成長し、その結果25億ドルの買収が行われた。

幸運は”退屈”を好む

退屈は価値判断ではない。資本なしでなんとか成長できた、最も印象的で成功した企業の多くが、差し迫ってはいるものの、ある意味つまらない問題を解決することで繁栄してきた。もし難しい問題を解決すれば、顧客はそれに喜んで資金を提供する。

  • SurveyMonkeyは90年代のドットコムバブルで設立されて、同類のKosmoのような破壊力は持っていないと思われていたが、会社としてはより耐久性があった。同社はドットコムのクラッシュを生きのび、着実に9桁のランレートになるまでに成長した。開始から11年経って、やっと1億ドルを調達しただけだ。
  • ProtolabsはVistaprintが名刺作成に使っている、プラスチック射出成形を行なっている。現在の評価額は12億ドルである。
  • 13億ドルの価値を持つCventは、イベント管理ツールを開発し、 建設管理を行うTexturaは、6億63300万ドルで買収された。どちらのマーケットもホットで流行っているものとは思われていない。
  • Grasshopperは、15万の顧客と3000万ドル以上の年間収入を持つ電話ネットワーク会社だが、VCに関わったことはなく、最終的にはCitrixに買収された。
  • EpicはJudith Faulknerによって1979年に設立された。ウィスコンシン州に拠点を置くこの電子カルテプロバイダは、おそらく今日稼働している自己資金だけで大きくなった最大のソフトウェア会社である可能性がある。
  • eClinicalWorksは、世の中が「速く成長しよう」と声を揃えていた1999年に設立された。同時代の企業の多くがクラッシュし燃え尽きている。臨床データを管理するという、退屈だが利益を生む作業に力を注ぐことで、会社は生き残り、現在は4000人以上の従業員を抱え、年に3億2000万ドルの収益を生み出している。
  • Unityは、ゲーム開発のなかの(クロスプラットフォームや「バンプマッピング」などの)あらゆる退屈な部分にフォーカスすることで、モバイルゲーム産業のバックボーンとなることができた。彼らは資金調達をすることなく、何年も過ごして来たが、現在は15億ドル以上の評価を与えられており、他の多くのブランドゲームよりも成功している。
  • GitHubは、バージョン管理から苦痛を取り除き、資金調達前に既に、ハイテクエコシステムの重要な一部となっていた。
  • Qualtricsは、学校や企業の調査を管理するためのツールとして、ユタ州の地下室でスタートし、今では1000人の従業員を抱え、年に1億ドルの利益を掻き集める。

ファウンディングを受けられないものは幸いである

資本調達がほとんど不可能なときもある。私たちは数千万ドルの収益を上げ、3桁の成長率を達成し、その他の利点を持ちながら、少額の資金調達にさえ苦労している企業を見てきている。幸いなことに、このようなスタートアップは、このような明らかな不利な条件にも関わらず、最終的には勝つ傾向がある。

Atlassian:シリコンバレー、ニューヨーク、ロスアンゼルス、ボストンの外でスタートアップを始める利点の1つは、VCがあまりないことだ。これは呪い言葉のように聞こえるかもしれない。だが結局のところ、資金のアクセスが得られないのなら、それが何の役に立つというのだろう。それは変装した祝福かもしれないのだ。

このような孤立は、調達した何百万ドルで何をしようかと考える空想からあなたを守り、あなたの目の前にいる、実際にお金を払ってくれる顧客を幸せにするように強制する。オーストラリアに拠点を置くAtlassianは、自力で40億ドルの時価総額へと上った。もし同社がより安易な資金調達を行なうことができていたら、低品質の成長を追いかけ、いかに効率的に成長するかを見出す前に沈んでいた可能性がある。

スタートアップを始めて規模を拡大するのに、資金提供者たちからの許可は必要ない。

Campaign Monitor:資本効率の高い企業の奇妙な特徴の1つは、資金調達の最初のラウンドが、IPOからの収益に近いような、目立った金額になる傾向があることだ。Campaign Monitorの場合、最初の資金調達ラウンドの金額は、2億5000万ドルだった。 シドニーに拠点を置くCampaign Monitorは、ベンチャーキャピタルへのアクセスが容易ではなかったため、ビジネスを自力で始めて、ユニークなテクノロジーを構築した。そのテクノロジーは、Disney、Coca-Cola、そしてBuzzfeedなどへ優れた電子メール解析機能を提供するのものだった。2億5000万ドルの資金調達が、会社を助けるのか傷つけるのかは、やがてはっきりすることだろう。しかしそれは彼らのこれまでの成長に対する確かな評価の1つなのだ。

The Trade Desk:創業者のJeff Greenはプログラム広告業界を発展させるために独自の見解を持っていたが、現代的なアドテックの資金調達サイクルの終盤になってThe Trade Deskを開始した。この市場の過剰資本化は、投資家が悪いパフォーマーによって燃え尽きることと相まって、企業がそのライフサイクルを通した資金調達のあらゆるラウンドで苦労することになった。Greenは、申し分のないスタートアップCEOであり、同社の最初の6年間でベンチャーキャピタルから2640万ドルだけを調達し、ナスダックで取引される10億ドルの事業へと転換した。でもどうやって?より少ない資金を持つという制約を受け入れることで、最高のリターン活動に焦点を当て、資金の注入よりもむしろアイデアで動くイノベーションの文化を構築したのだ(情報開示:Founder CollectiveはThe Trade Deskの投資者の1つである)。

VCは完璧ではないし、最善のVCでも確かに思えるアイデアを見逃してしまうこともある。創業者たちがかつて、投資家たちに対して、やがて10億ドルのビジネスに育ったビジネスを売り込むことができなかった話を耳にすることは驚くほど普通のことなのだ。AppLovinの創業者Adam Foroughiは、その事業を14億ドルで売却したが、収益が多くてもベンチャーキャピタルから資金調達をすることは困難だった。「合理的な評価額(おそらく400万から500万ドル)だと思った金額では投資家を見つけることができませんでした。1年目の終わりまでに、私たちは利益を上げるようになっていて、月の収益は100万ドルを超えていました」。残りは、彼らが言うように、歴史だ。

覚えておくこと:VCを中心としたビジネスのデザインは避ける

あまりにも多くの創業者たちが、創業1日目からその事業をベンチャーキャピタル中心に考えて始める。かつてスタートアップは、何かを形作ったあと、お金の調達を考えたものだ。しかし今日では、彼らは何かを形作るためにお金を調達しようとする。創薬や航空機開発をしようとしているのでなければ、これは通常間違った判断だ。実際、リソースを使わずに前進することは、VCがあなたの会社に関心を持つようにするための最良の方法だ。上記で述べた企業たちは長期間資金を調達しないことを選択したが、彼らがそうしたときには、投資家に対する選択肢が生まれ、条件を設定することができた。

私たちのアドバイスは、ビジネスを未来永劫、自己資金だけでブートストラップせよというものではない。ベンチャーキャピタルは、AppleからZapposに至るまで、ほぼすべての大手テック企業に資金を供給してきた。単に、始めるためにはお金はいらないのだ、ということだけを覚えていて欲しい。スタートアップを始めて規模を拡大するのに、資金提供者たちからの許可は必要ない。したがって、VCが次にあなたに「合格です」と言ったときには、次の3つの原則を覚えていて欲しい。

  • 最初に資金がなくても、テクノロジーを武器にしたビジネスを離陸させることは可能だ。
  • 僅かな資金でテクノロジービジネスを迅速に拡張することは可能だ。
  • 彼らが取る資本の量を制限することが、創業者の最大の関心事であることがよくある。

自己資金で並外れた成果を出しつつある企業をご存知なら、是非お知らせ願いたい。

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(翻訳:Sako)

たった15分で顔検知アプリが作れる――映像解析システム開発基盤「SCORER」が2.1億円調達

映像解析システムの開発プラットフォーム「SCORER」などを提供するフューチャースタンダードは7月4日、スパイラルベンチャーズテックアクセルベンチャーズ、および既存投資家を引受先とした第三者割当増資を実施し、総額2.1億円を調達したと発表した。

フューチャースタンダードが手がけるSCORERは、映像解析技術を使ったプロダクト/サービスの開発を簡易化する開発プラットフォーム。SCORERの特徴は、映像データの生成、クラウド上での映像データの保存、映像解析技術の利用、解析データの分析・保存などの機能群を一元的に管理できる点だ。

「すでにある機能を仕入れて、使い易くする」

実装済みの機能の例として、オムロンの年齢推定、NECの表情認識、SENSETIMEの人流解析などがある。SOCRERではこれらの機能がモジュールとして用意されていて、ユーザーはそれらの映像解析技術を利用したサービスをスピーディーに構築することができる。また、同社が提供しているRaspberry Pi 3用の「SCORER SDK」を利用すれば、ブラウザで完結する開発環境を整えることが可能だ。

SCORERで提供される基本機能は無料で利用できる。同社は今後、一部のオプション解析や一定期間以上のデータの保存に課金することでマネタイズしていく。

フューチャースタンダード代表の鳥海哲史氏は、「カメラで顔を検知するとLINEで通知するというようなアプリであれば、15分程度の時間で作ることができる」と話す。

「私たちがやらないことは、解析アルゴリズムを自分たちでつくること。人の検知などのアルゴリズムは世の中にたくさん存在していて、ある意味ではコモディティ化している。そのため、私たちが提供する価値は、すでに存在するものを仕入れて、それを使い易くするということだと思っている」(鳥海氏)

映像解析技術を自製せず、他社がすでにつくりあげたものを使う。だからこそ、ある技術が陳腐化したとしても、SCORERは新しく生まれた技術を”仕入れる”だけでいい。

しかし一方で、そのようなビジネスモデルの参入障壁は低くなってしまうことも事実だろう。それについて鳥海氏は、「私たちは2年かけて映像解析アルゴリズムを集めてきた。他社が同じことをやろうとしても、同程度の時間がかかるだろう」と語る。「どれだけ早くエコシステムを構築するかが鍵となるでしょう」(鳥海氏)

他社との共同開発

もう1つのマネタイズ手段、およびプラットフォームの認知度向上の手段として、フューチャースタンダードは他社と共同のプロダクト/サービス開発も行っている。

その例が、カメラ映像を利用した屋外広告の効果測定だ。表示回数やクリック回数で簡単に効果測定できるWeb広告とは違い、これまでの屋外広告の効果測定では、最寄り駅の乗降人数、広告を視認できる高速道路の流入量、広告周辺の交通量調査などのアナログなデータを利用するしかなかった。

そこで、フューチャースタンダードは看板・ディスプレイ施工大手のクレストと手を組み、カメラ映像を解析してデジタルサイネージや屋外広告の効果測定を行う「Esasy(エサシー)」を2016年2月に発表した。

たとえば、屋外広告の効果測定を行う場合、屋上に設置したカメラの映像を解析し、横断歩道で待っている人数、彼らの顔の向きなどを解析する。これにより、従来の方法よりも精度の高い効果測定を行うことが可能だという。

この他にも、フューチャースタンダードは以下のような共同プロダクト/サービス開発を行っている:

  • TISとの協業で、工場向け導線解析ツールの開発・導入支援を実施
  • スパリゾートハワイヤンズにおける、プール内安全確認映像解析システムの開発
  • 東京大学との共同研究として、空家物件の各種情報(騒音レベルや日当たりなど)を可視化するデバイスを提供

フューチャースタンダードはこのような共同プロジェクトを通してSCORERの利便性や開発スピードの速さをアピールすることで、プラットフォームの認知度の向上を図るという。

2014年創業のフューチャースタンダードは、これまでにインキュベイトファンドなどから1.3億円を調達している。

メルカリがCtoCに特化した出資を加速、「メルカリファンド」を立ち上げ

7月2日に設立4周年を迎えたメルカリ。同社が発表したインフォグラフィックスによると、フリマアプリ「メルカリ」のダウンロード数は7500万件(日本5000万件:米国2500万件)まで拡大している。そんな同社がCtoC事業やその周辺事業を行う企業への出資を加速するため、7月4日に「メルカリファンド」の開始を発表した。

メルカリファンドはいわゆるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)や子会社による投資ではなく、あくまでメルカリ本体でのプロジェクトを指している。

このプロジェクトでは、商材やサービスなど、特定の分野に特化したCtoC事業を行う企業や、マーケットプレイスの活性化を促進する事業を行う企業等を対象として投資を行う。メルカリはこれまでもネットショップ開設サービス「BASE」運営のBASEや家電・カメラ等のレンタルサービス「Rentio」運営のレンティオ、スマートフォンアプリ向け語学レッスンサービス「flamingo」運営のフラミンゴに出資している。このうちフラミンゴに関しては、メルカリファンドからの出資という扱いだという。

メルカリファンドの出資金額については特に上限を設定せず、個別案件ごとに検討するという。また出資する事業に関しては、メルカリやメルカリ アッテなどのサービスとの連携も検討する。メルカリは2月にフリマアプリ「スマオク」を手がけるザワットを買収しているが、「投資検討をする中で買収という選択肢をとることも視野に入れる」(メルカリ)としている。問い合わせはメールアドレス「mercari-fund@mercari.com」宛てとなっている。

目的はCtoCプラットフォームの拡大

ただメルカリが今回の取り組みで狙うのは、買収ありきというものではなく、あくまで特化型CtoCサービスや周辺サービスの支援によるCtoCプラットフォームの拡大だという。

この構造は、今やゲームの会社となったミクシィが、SNSの会社だった頃に取り組んだ「ミクシィファンド」に近いものを僕は感じる。ミクシィファンドもCVCではなくあくまでプロジェクトとして、ミクシィのSNSプラットフォーム向けにサービスを提供する事業者に出資し、プラットフォーム拡充を進めるというモノだった。実はこのミクシィファンドの立ち上げにも関わっているのが、当時ミクシィにいた、現・メルカリ取締役社長兼COOの小泉文明氏。そしてそのミクシィファンドの第1号案件がコミュニティファクトリー。同社は現在メルカリ アッテを提供しているソウゾウ代表取締役の松本龍祐氏が立ち上げたスタートアップだ。

7500万のユーザーを抱えるメルカリはいよいよプラットフォームとなった。であれば自分たちでCtoC領域の事業を展開するだけでなく、パートナーを募ってより大きなサービス群を立ち上げていく。その手段として、今回のメルカリファンドがあるというわけだ。

訪日外国人向けウェブマガジン「MATCHA」運営が星野リゾートと資本業務提携、千葉功太郎氏からも資金を調達

日本語をはじめとして、全9カ国語で訪日旅行者向けに観光情報を発信するウェブマガジン「MATCHA」。運営のMATCHAは7月3日、星野リゾートとの資本業務提携の締結に合意したことを明らかにした。MATCHAはこの資本業務提携に加えて、エンジェル投資家の千葉功太郎氏からも出資を受け、合計約5000万円の資金を調達した。今回のラウンドでは総額1億円程度の資金調達を目指すとしている。

MATCHAは2013年12月の設立。現在は月間350万ページビュー、アクティブユーザー150万人を誇るサイトだ。最もアクセスがあるのは台湾やタイといったアジア圏。それに英語圏が続く。記事は東京・浅草に拠点を置く編集部と、日本各地に居る外部ライターが協力して制作している。特に台湾からのアクセスが多いこともあり、日本在住の台湾人を中心にした編集チームが記事の拡充を進めている。

「もともとは(資金調達をするような)スタートアップ的な成長というのはあまり考えていませんでした。ベンチャーキャピタルから声をかけてもらうこともありましたが、やっていることはすぐ結果が出るわけではないので、地道にやっていこう、と」(MATCHA代表取締役社長の青木優氏)。当初はVCからの調達は避け、エンジェル投資家や事業会社などの支援を受けてきた。

これまでMATCHAは、広告をビジネスの中心としてきた。サイトローンチから間もなくクライアントとなったのは佐賀県や東急ハンズ。その後も地方自治体や官公庁、大手企業からの引き合いが相次いだという。「最初の半年は売上ゼロでした。しかしすぐに大手からの引き合いがありました。最近ではWELQ問題などもあって、メディアへの不信感が高まりもしていますが、しっかり信用してもらえています。ですがそれだけでは労働集約型なビジネスとして限界があります」(青木氏)。

そこでMATCHAでは、今後は宿泊施設やアクティビティ予約のアフィリエイトや、人材ビジネスでのマネタイズを強化するという。「訪日外国人は1人17万円くらいを旅行で使いますが、その6割は事前決済です。まずは旅行前の決済についてMATCHAから送客をしていきます。そのために会員機能を強化し、アプリの提供を進めます」(青木氏)。また人材に関しては、日本に訪れる、もしくは日本在住の外国人などに関わる人材ビジネスを検討しているようだ。また星野リゾートは、今回の提携を受けて、日本全国の星野リゾート施設や施設周辺に関する情報を発信し、各施設と連携した新たな取り組みも進めるという。

サイトについては、6月にパフォーマンス向上のためのリニューアルを実施。今後は会員向けのクリッピング機能や予約機能などを追加するほか、レコメンドの強化を進める。「例えば『清水寺』に関するページがあったとき、その1本裏の通りのおいしいお店を紹介するとか、お寺に興味がありそうだから、興味関心がある情報を提供するなどしていく。今は形態素解析で関連記事を出しているが、国が公開している訪日関連のビッグデータなども取り込み、コンテンツの結び付けを進めます」(MATCHA 最高技術責任者の若林竜彰氏)「メディアとしてやれることはまだまだあります。単純なメディアから、より構造化したサービスにしてきます」(青木氏)

左からMATCHA代表取締役社長の青木優氏、最高技術責任者の若林竜彰氏

インテリア写真SNS「RoomClip」が8億円調達――「2年後の上場目指す」

インテリア写真SNSの「RoomClip」を運営するTunnelは7月3日、合計9社を引受先とした第三者割当増資を実施し、総額8億円を調達したと発表した。投資家リストは以下の通り:

Tunnelは今回調達した資金を利用して、アプリリニューアル、人員強化、ECサイト向けの新サービス提供などを実施する予定だ。

RoomClipは、家具や雑貨などのインテリアの写真を投稿することができるSNSアプリ。写真を共有したり、その写真にコメントをつけてコミュニケーションをとることができる。現在、RoomClipのMAUは270万人で、累計で約240万枚の写真が投稿されている。投稿された写真の表示回数は1カ月あたり2.5億回だ。

この2年間はマネタイズにフォーカス

前回TechCrunch JapanがTunnelを取材したとき、彼らのテーマは“グロースからマネタイズへの転換”だった。2013年頃は10万件だった写真投稿数を100万枚までに増やし、これから収益化を目指すというフェーズだ。

Tunnel代表の高重正彦氏は、「これまではグロースに注力してきたが、過去2年間はマネタイズにフォーカスしてきた」と語り、現在Tunnelの売上高は「数千万円規模」だと明かした。

Tunnelのマネタイズ手段は大きく分けて2つある。

1つ目はアフィリエイト手数料だ。RoomClipでは、ユーザーが写真に写っているインテリアなどのアイテムをタグ付けできる。それぞれのアイテムページに設置されたリンクを通して商品が購入された場合、Tunnelに手数料が入る仕組みだ。現在、アフィリエイトの流通総額は数億円程度だという。

ユーザーに報酬が入ることはないが、それでも全体の20%の写真にタグがつけられている。高重氏は、「RoomClipのユーザーには“人の役に立ちたい”というモチベーションがある」と語る。2016年から本格化したこの取り組みだが、Tunnelはこの数字を早期に今の20%から100%に近づけていくことを目標にしている。「はじめは人力でタグをつけて教師データをつくる。そのデータでトレーニングした画像認識アルゴリズムでタグ付けを自動化する予定だ」(高重氏)

2つ目のマネタイズ手段は、インテリアや家具をあつかう企業やECサイトへの写真販売。これが同社にとってメインの収益源だ。

一般のユーザーが投稿した実例写真は、商品購入の決め手になるほど説得力を持つものだ。これらの実例写真が消費者の購買意欲をかき立て、クライアントのECサイトではコンバージョン率が3倍になった例もあるという。

RoomClipに投稿された写真の著作権は投稿したユーザーが保有しているが、二次利用権はTunnelにある。実際に写真をカタログなどに利用する場合はユーザーに確認をとるが、「これまで一度も断られたことはない」(高重氏)という。自慢のインテリアの写真が企業に利用されるということで、投稿したユーザーのモチベーションも上がるというわけだ。

ECサイト向けの新サービス開始

Tunnelは今回調達した資金を利用して、2017年8月よりECサイト向けの新サービス「おすすめショップ」の提供を開始する。

このサービスを利用するECサイトには、RoomClip内に専用のアカウントが与えられる。ユーザーはそれらのアカウントをフォローすることが可能だ。そして、RoomClipにそのECサイトが取り扱う商品が写った(タグ付けされた)写真が投稿されると、アカウントのフォロワーにその写真が自動で配信される仕組みだ。

これにより、ECサイトは集客プロセスを半自動化することが可能になる。

RoomClipと同様の写真SNSを手がけるInstagramは、Facebookに買収された。しかし、高重氏が目指すのは、M&Aによるエグジットではなく、上場だ。「2年後までに2500万人のユーザー数を目指す。また、同じく2年後の上場を目指すために動いているところだ」と彼は話す。

ステークホルダーへの責任を考えれば、サステイナブルな企業を目指すのは当然であり、それを実現する手段が上場であると高重氏は考えている。

Delivery Hero、取引初日に時価総額が50億ドルを突破

フランクフルト証券取引所への上場を果たしたフードデリバリー企業Delivery Heroの時価総額が、取引初日(現地時間6月30日)に50億ドルを突破した。

今月に入ってから上場の意向を示した同社のIPO価格は、1株あたり25.50ユーロに設定され(仮条件の上限値)、取引初日の最高値は27.70ユーロ(約8.6%の値上がり)だったとBloombergが報じている。つまり、設立から6年が経ち40か国以上で営業しているDelivery Heroの時価総額は、最高で47億ユーロ(53億ドル)に達したのだ。

Delivery Hero自体はIPOで4億6500万ユーロ(5億3000万ドル)を調達し、この資金は債務の返済やビジネスの成長のために使われる予定だ。一方、その24時間ほど前にニューヨーク証券取引所で上場を果たした食材宅配サービスのBlue Apronは、Delivery Heroとは対照的に前途多難なスタートを切った

IPOがうまくいったとはいえ、Delivery Heroは未だ黒字化を果たせておらず、昨年度の純損失は2億200万ユーロ(2億3000万ドル)だった。その一方で、2016年の売上高は3億4700万ユーロ(3億9000万ドル)で前年比71%の伸びを見せ、オーダー数も51%増加した。これにはRocket Internet傘下だったFoodPandaの買収が深く関係している。Delivery HeroはこのM&Aを通じて、東欧や中東、アジアを含む合計20か国への進出を果たし、その他の市場でも大きな力をつけることができたのだ。

FoodPandaの売却によってDelivery Heroの株式の35%を手に入れたRocket Internetにとっても、本日のIPOは大きな追い風となった(投資会社NaspersもIPO直前の投資を通じて、同社の株式の10%を保有している)。

ドイツのインキュベーター兼投資会社であるRocket Internetは、ポートフォリオ企業の赤字体質で批判を受けてきたが、Delivery HeroのIPOによってこれまでに合計2社をエグジットさせたことになる。さらに同社は、FoodPandのほかにも先日東南アジアのEC企業Lazadaの株式を全て売却した。逆にAlibabaは、今週10億ドルもの資金を投じてRocket InternetやTescoを含むさまざまな投資家からLazada株を買い取り、同社の持株比率は51%から83%に上昇した。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ICOファンドとは?――業界に先駆け1億ドルのファンドを設立したVCに聞いてみた

多くの投資家がイニシャルコインオファリング(ICO)に関する情報をかき集めている。テック業界で野火のように広がるこの資金調達方法に、さまざまな人が期待すると同時に、困惑や恐れを感じているのだ。

簡単に説明すると、ICOとは独自の仮想通貨の発行・販売を通じて、ユーザーから資金を集める資金調達方法だ。ユーザーは購入した通貨を将来的に販売元のスタートアップのサービスに使ったり、取引所で売却したりできる。

まだ規制環境が整っていないため、ほとんどのVCはICOへの参加に慎重な姿勢を示している。自分たちのビジネスが脅かされようとしているにもかかわらずだ(顧客が喜んで出資してくれるというのに、わざわざ投資家に株式を売り渡す人はいないだろう)。

しかし、サンフランシスコに拠点を置くあるVCはICO投資に積極的に取り組んでいる。そのVCの名はPantera Capital。以前Tiger Managementに在籍していたDan Moreheadが14年前に設立したこのVCは、ビットコインをはじめとする仮想通貨に特化したファンドを業界に先駆けて立ち上げたことでも知られている。

他社が手を出せないでいる領域に、Panteraがいち早く進出するというのは、もはや驚くべきことではない(彼らは現在1枚あたり約2500ドルの値がついているビットコインに1枚65ドルの頃から投資し始め、大きな成功をおさめた)。しかし、常に前のめりなPanteraとはいえ、今回のファンドのサイズ(今年の夏中に1億ドルの調達を予定しており、既に3500万ドルが集まった)は大きすぎるようにも感じられる。

新しいファンドの詳細を知るため、MoreheadとPanteraパートナーのPaul Veradittakit、そして最近チームに加わったJoey Krug(Augur共同ファウンダー)に話を聞いたので、以下にその様子をお伝えしたい。なお、Augurは分散型の未来予測プラットフォームで、ICOという言葉が知られるずっと前の2015年にICOで530万ドルを調達している。

昨年Thiel FellowにもノミネートされたKrugは、Panteraの新しい投資ビークルでMoreheadと共に共同チーフインベストメントオフィサーを務める予定だ。

TC:ICOの件数は今年一気に増え、特にここ数か月はかなり盛り上がっています。ICOに特化した新しいファンドの準備にはどのくらいの期間をかけましたか?

DM:ファンドの骨子をつくるのに数か月かかり、その一部としてJoeyをチームに迎えました。彼は私と一緒にファンドの運用を行い、Paulは資金調達を担当する予定です。

TC:投資家の顔ぶれはいかがでしょうか? 個人投資家と機関投資家だと、どちらの方が多いですか?

DM:大手の戦略投資家は1社のみですが、名前を伝えることはできません。残りは仮想通貨に手を出したいと考えている個人・機関投資家の両方ですね。

TC:機関投資家の中にはVCも含まれていますか?

PV:はい、含まれています。皮肉なことですが、多くのVCはファンドの規約のせいで仮想通貨へ直接投資できないことになっています。しかし、仮想通貨やICOについてもっと知るため、そして(この新しい資産に)実際に投資するために、ICOファンドに参加しているVCやベンチャーファンドはたくさんあります。

TC:AngelListはICOでの資金調達を考えているスタートアップのために、新たなプラットフォームを他社と共同でローンチしましたし、仮想通貨に投資しているファンドも存在します。ただ、これだけICOに特化したファンドというのは聞いたことがありません。そもそも似たようなファンドは存在するんですか? また、ファンドの仕組みについても教えてください。

DM:ICOに特化したファンドが他にもあるかどうかはよくわかりません。ファンドの仕組みについては、まず一般販売が始まる前にトークンを購入し、その後販売が始まってから再度追加でトークンを購入するようにしています。

PV:つまり私たちは、創業チームとホワイトペーパー(プロダクトの技術的な部分や、スタートアップが取り組もうとしている問題、その解決策などについて書かれた文書)しか揃っていないような企業のICOにできるだけ早い段階で関わることで、トークンを安く手に入れようとしているんです。逆に私たちはそのような企業に対して、マーケティングや人材採用、ビジネス開発などに関するコネクション作りの手助けをしています。

TC:今のところ規制当局はICOの動向を傍観しているようですが、そのうちこの分野にも規制がかかってくると思います。ICOで販売されるトークンは、発行主体の情報開示や事業者登録が必要な証券ではなく、サービスや製品のような存在として扱われていると理解していますが、もしこの考え方が変わった場合はどうしますか?

DM:トークンの性質はさまざまで、商品先物取引委員会(CFTC)や内国歳入庁(IRS)を含む世界中の規制団体が、既に仮想通貨に対する明確なスタンスを示しています。まだ判断を下せていない団体も存在しますが、仮想通貨の売買と同じように、既存のルールに当てはめられるのか、もしくは新たなルールを導入しなければいけないのか、ということを判断するのにはある程度の時間がかかると思います。

TC:これまでにICOファンドから投資したスタートアップの数はどのくらいですか? また、投資先を決める際の基準について教えてください。

DM:これまでの投資先はKik(ICOはこれから行われる予定)、OxFunFairOmiseCivicの5社です。Civicに関しては、以前からエクイティ投資も行っています。

JK:投資先を選ぶ基準のひとつとして、仮想通貨がサービスに欠かせないような仕組みになっているかという点を重視しています。サービスネットワークの中で使われているのがその通貨のみかどうかということです。

TC:トークンの保有割合ついては目標値を設けていますか?

DM:特に具体的な基準は設けておらず、それぞれのICOを個別にチェックしています。出来る限り保有割合を大きくしたいとは考えていますが、トークンの発行数にもよります。KikとFunFairに関しては、恐らく私たちが筆頭”トークン主”ですが、他の企業に関しては私たちより多くのトークンを購入した投資家がいます。

PV:現状、トークン市場の規模はおよそ40億ドルと言われています。Kikは従来の方法で十分な資金を調達しながらも、ビジネスモデル全体をトークンベースに変えようとしており、今は彼らにとって大きな転換期だと考えています。もしもKikの試みがうまくいけば、グロースステージにある企業でもトークンの導入が進んでいくでしょう。そして彼らがトークンを使って何億ドルという資金を調達し始めれば、市場規模は一気に拡大していくと思います。

TC:エグジットに関してですが、Panteraではまず一般販売前にトークンを購入し、スタートアップがIPOに向けてプロダクトを開発する手助けをしていくということでしたよね。最終的には最近増えてきている取引所で、値上がりしたトークンを売却するんですか?

DM:その通りです。現在(Panteraが利用する可能性のある)取引所はKrakenPoloniexBittrexを含めて10か所ほどですが、今後新たな取引所が設立され、取引価格が妥当であればそこもオプションに加えていく予定です。

TC:一度に大体どのくらいの数の企業に投資していますか?

DM:10〜20社です。

TC:何か特定のバックグラウンドを持つファウンダーに投資するようにしていますか? というのも、かなりの数の企業がトークンを導入しているため、その中から有望な企業を見つけるのは難しいですよね。

JK:私たちがこれまでに話をした何百という数の企業のうち、今は30社の動向を追っています。トークンベースのビジネスを行う上で、起業経験は必ずしも必要ではありません。起業経験があるというのは、何かしらのビジネスのやり方を知っているという意味では価値がありますが、私たちが投資しているようなビジネスでは、そこまで重要なことではないんです。

トークンベースのビジネスは、普通のビジネスとは大きく異なります。トークンは株式と違いコミュニティーが保有するものなので、意思決定やガバナンスのプロセスもかなり違うんです。

TC:学歴に関してはどうですか?

JK:全ての条件が同じであれば、恐らく大規模なオープンソースコミュニティの構築経験があるかというのが重要なポイントになると思います。

TC:いずれICOの規模が株式を対価とするベンチャー投資の規模を上回ると思いますか?

DM:長期的に見れば、VCが資金調達を仲介する必要がなくなる可能性はあると思います。ウェブブラウザを開発するBraveのICOでは、24秒で3500万ドルが集まりましたからね。

2017年第二四半期のブロックチェーン企業による資金調達の様子を見てみると、ICOへの投資総額(2億1000万ドル)がVCの投資総額(1億8000万ドル)を上回っていました。この傾向が今後強まると考えているからこそ、私たちはICOファンドを立ち上げたんです。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

住宅ローン借り換え支援のWhatzMoneyが8000万円調達――ローン仲介サービスを開始

住宅ローン借り換え支援サービス「ゼロカラリフォーム」などを展開するWhatzMoneyは6月29日、8000万円の資金調達を完了したと発表した。投資家リストは以下の通り:

  • D4V
  • 木下友宏氏

木下氏は産業用太陽光発電のバローズの創業者。2017年3月に同社をマザーズ上場のAbalanceに事業譲渡したのち、現在は大阪のコワーキングスペース「Campanio(カンパニオ)」を運営している。

WhatzMoneyは2016年3月に同じくD4Vなどから総額4500万円を調達しており、累計調達金額は1億2500万円となる。

WhatzMoneyが手がけるゼロカラリフォームは、住宅ローン借り換えのメリットを試算するサービスだ。ユーザーとなるリフォーム会社が同サービスを利用することで、借り換えのメリットを原資にしたリフォーム提案を行うことができる。これまでに、約20社のリフォーム会社が同サービスを利用しているという。ゼロカラリフォームについては以前にもTechCrunch Japanで紹介しているので、こちらの記事も参考にしてほしい。

WhatzMoney代表の前田一人氏によれば、日本の住宅ローン利用者は全体で約1000万人。これは、中国、アメリカに次ぐ第3位の市場規模だという。

記録的な低金利が続く日本では、住宅ローン借り換えによってメリットを得られる人も多い。WhatzMoneyの試算によれば、全体の70%、つまり約700万人の人々が住宅ローンの借り換えで100万円以上のメリットを得られるそうだ。

8月よりローン仲介サービスを開始

しかし、ゼロカラリフォームによって顧客に借り換えのメリットを伝えられたとしても、”手続きが面倒くさい”などの理由から実際に借り換えをするまでに至らないケースも多い。

そこでWhatzMoneyは、今回調達した資金を利用してローン仲介サービスを開始することを決めた。これは、同社が顧客の属性をふまえて最適な住宅ローンをリコメンドし、これまでは顧客が行っていた手続きを同社がすべて代行するというサービス。

同社がエンドユーザーから受け取る手数料は10〜20万円を想定しているという。これらの手数料が(新しく借り換える)住宅ローンの借入金に上乗せされるかたちだ。

仮に、100万円以上のメリットが得られる700万人が借り換えし、手数料が20万円だとすると1兆4000億円の市場規模になる。

また、同社はエンドユーザーを直接獲得する”B2Cモデル”ではなく、あいだにリフォーム会社などの事業会社を挟んだ”B2B2Cモデル”に注力していく。エンドユーザーを1人1人獲得するのはコストが掛かり過ぎるからだ。

これに対し、競合サービスであるMFSの「モゲチェック」は、リアル店舗を設置して最終顧客に直接営業をかけている。中間に事業会社を挟んでマーケティング費用を節約するWhatzMoneyとの戦略の違いは非常におもしろいところだ。

同社は住宅ローンの仲介サービスで基盤を固めたあと、借入額が大きい投資物件用ローン市場にも参入していく構えだ。「投資物件用ローンの借り換えでは、メリットが2000万円を超えることもある。そうすれば手数料も100万円程度に設定することも可能だろう」(前田氏)

同社は8月までに貸金業の登録を完了し、その後ローン仲介サービスを開始する予定だ。

WhatzMoneyチーム。右から2番目が代表の前田一人氏。

徒歩5分圏内で探している目当てのモノが見つかる「Pathee」、シリーズAで3億円を資金調達

Googleとスマホがあっても難しい検索がある。新宿駅を降りて「この辺でボールペンの替芯が買えるところは?」というような場所に関連した探しものだ。もっと難しいのはカレンダーを買うような場合。自分がほしいタイプのカレンダーを扱っているのは文具店かもしれないし、雑貨屋かもしれない。探しているのは「文具店」という店舗情報ではなく、具体的な商品ジャンルなのに、いまは探す手立てがないのだ。

これは徒歩5〜10分圏内にあるはずなのに、既存の地図アプリや検索エンジンで探すとなると30分くらい多数のページを行ったり来たりすることになる問題と言い換えてもいい。その解決に挑戦しているのが空間検索エンジン「Pathee」を開発するスタートアップ企業のトライトゥルーだ。

トライトゥルーは今日、Fidelity系投資ファンドのEight Roads Ventures Japan、関西の朝日放送のCVCであるABCドリームインキュベート、既存投資家である大和企業投資から合計3億円の資金調達を実施したことを発表した。これまで同社は2014年にオプトベンチャーズから1.3億円を調達しているほか、2012年のシード期にサムライベンチャーズから数百万円規模の資金調達を実施している。

ふとした思い付きから生まれた新サービス「Patheeまとめ」に手応え

トライトゥルー代表取締役CEOの寺田真介氏

Googleが2016年5月に明かしたデータ によれば、モバイル検索というのはユーザーがいる場所や、これから行く場所に関連したものが約3分の1を占める。ただ、トライトゥルー代表取締役CEOの寺田真介氏はTechCrunch Japanの取材に対して「中華料理とか文房具とかジャンルによる検索はできます。でも、水着を売っているはどこか、業務用ホッチキスはどこに行けば買えるか、というものはまだまだ」と話す。店舗名に「水着」と入っていないとGoogleでは出てこないからだ。同様の問題としてハロウィングッズを探しているのに「ハロウィン」で検索すると、そういう店名の中古車ショップとか飲食店が出てきてしまうということもある。

Patheeはネット上の情報を場所に関連付けて探せる検索サービスだ。現在は日本語で書かれた約2億ページをクロールしていて、例えばURLのパターンから、どこの地理関連の情報が含まれるかなど判定している。この判定には機械学習を使っていて、7割程度の精度で判定できるそうだ。

実際にスマホアプリで少し試してみた。例えば「(郵便)ポスト」とか「ATM」、あるいは「ハンバーガー」「自転車」といった検索語で東京都内の自宅周辺や会社周辺、通勤経路を調べると、こういうところが出てきてほしいなという以上の情報が出てきて好印象だ。店舗のウェブページをクロールしているので「カフェ 電源」という検索でもけっこう精度の高い情報が出てくる。同じ検索語をGoogleマップに入れても、1駅以上も離れた場所に数か所ポツポツと情報が出てくるだけで関連性も低い。

面白いのは、寺田氏が2017年のお正月に思い付きで作ったテストページが思わぬ鉱脈に繋がりつつある、という話だ。

Patheeを運営している経験から、もともと新宿で文房具を探している人が多いことを知っていた寺田氏は、ならばと単体のHTMLページで「新宿の文房具」の詳しい地図とページを作ってみたそうだ。ユーザー獲得に繋がると考えてのことだ。このページには予想を超えた手応えがあった。

そこで同様の「地域情報まとめ」を作り、これをサービス化。「Patheeまとめ」と名付けたサービスは2月から本腰で作り始めたばかりだが、すでに月間アクティブユーザー数が100万人を超えているという。位置情報が扱えるCMSとアナリティクスを自前で用意して、検索クエリの量を見ながらコンテンツを増やしているそうだ。コンテンツは今はトライトゥルーが社内で制作している。

例えば、読者の皆さんは秋葉原に「武器屋」というものがたくさんあるのを、もちろんご存じだと思う。モデルガンや日本刀を取り扱うショップのことだ。以下の「Patheeまとめ」を見れば分かるように狭い範囲に十数店舗は存在する。

Patheeまとめは、Patheeという検索アプリ(サービス)のためのコンテンツマーケティングのような位置付けだが、トラフィックに手応えがあることから、単体でのマネタイズも考えているという。といっても広告料の有無によって店舗のリスト順を変えるようなことではなく、商品名と、それが買える小売店を結びつけるようなマネタイズ手法を考えているそうだ。ちなみに、このPatheeまとめには、LINE Qというチャット型のQAサイトから多くのトラフィックが流れてきているという。

意外にトラフィック(ニーズ)があるのが、無料休憩所の場所情報。よくエレベーターの横っちょにベンチが置いてあるが、そうした「ちょっと休めるスペース」や、喫煙スペースを探している人というのは実は多いのだそうだ。ほかにもコンタクトレンズやボルダリング、花屋、女性ものの下着なんかの検索が多いそう。東京・日比谷にある帝国ホテルには下着が買えるお店があるが、そういうのは普通ユーザーは知らないし、ネットで検索できない情報の1種だ。もう1つ面白いのが、Patheeまとめの特徴は乗換駅に関するトラフィックが多いこと。仕事帰りに花を買いたい、というケースが多いんだとか。

ちょうど先日TechCrunchでもお伝えしたとおり、Googleはスモールビジネス向けに検索可能な投稿を開放するようになったし、Facebookも位置情報を取り込もうとしてる。そういう意味ではゴライアスのいる競争の激しい領域ではあるが、Patheeの取り組む領域にニーズがあることの証拠でもあるのだろう。

現在トライトゥルーは社員が8人。寺田氏は、東京大学で博士号を取得後に、日立の研究所に3年ほど勤め、ネットワークの経路最適化や通信プロトコル作りをしていた。今年4月には東京大学の客員研究員に就任するなど情報処理の専門家だ。

Cloudflareがデベロッパープラットホームとその開発努力を支える1億ドルのファンドを創設

Cloudflareが今日(米国時間6/27)、Cloudflare Appsと呼ばれるアプリケーション開発プラットホームを立ち上げ、またデベロッパーたちのアイデアの実現を助けるためのファンド(当初1億ドル)Cloudflare Developer Fundを発表した。

開発プラットホームは、そこでCloudflareのエコシステムを利用するアプリケーションの構築ができ、それらをCloudflare Appsストアに置いたり、またコーディング不要でWebページにマップやフォームなどの機能を容易に配置できる。

CEOで協同ファウンダーのMatthew Princeは、同社上に開発プラットホームがあることの意味をこう説明する: “今のCloudflareは600万を超える顧客のインターネットプロパティの前に座っている〔CDNや他のリバースプロキシサービスで〕。弊社は世界最大のネットワークを稼働させており、データセンターは世界中に115箇所ある。そのネットワークを毎日大量のトラフィックが通っているが、それらが通るときには、それをいろんな方法で変える/加工する方法と機会がデベロッパーにある”。

今回のデベロッパープラットホームは、Cloudflareが昨年12月にEagerという小さな企業を買収したことが契機だ。今日の発表はその買収の成果だ、とPrinceは説明する。

ひとつの例として、ライブのWebページにGoogleのマップを(コードを書かずに)挿入するやり方がある。Eagerの技術を使うとそれは、Cloudflare AppsストアでGoogle Mapツールをクリックするだけだ。そのあとドロップダウンリストからセレクトして、目的の場所へドロップダウンする。ささいなこと、と思えるかもしれないが、なにしろプロのプログラマーがいなくても、誰でも、地図をWebページに加えることができるのだ。その工程は、とても簡単で早い。

1億ドルのファンドの件は、Princeによると、Cloudflareのアイデアではなくて、投資家たちの提案だ。“彼らはとても熱心だった。NEA、Venrock、それにPelion Venture Partnersらは、人びとがCloudflareのプラットホームの構築と拡張に挑戦すれば、そのスケールとパワーを自分でも納得するだろう、そしてそれが、もうひとつのすごい企業を作る機会であることに気づく、と主張するのだ”、と彼は語る。彼らは、Cloudflareをベースとするアプリケーションを、Cloudflareの新たな分身のように感じている。

NEAのマネージングゼネラルパートナーでCloudflareの取締役でもあるScott Sandellも、同じ意見だ。“このDeveloper Fundでデベロッパーは、Cloudflareのネットワーク上で何千ものエンタープライズや何百万ものユーザーにアクセスできるだけでなく、デベロッパーがビジョンを実現できるための資本も提供されるのだ”、と彼は言う。

Cloudflareは2011年にアプリケーションストアを立ち上げ、約30のアプリケーションをサポートしたが、その後、企業の成長戦略の方が忙しくなって、立ち消えになった。Eagerの技術が使える今は、APIを提供する最初の試みよりもずっとデベロッパーフレンドリーだ。プロトタイプもきわめて迅速に作れる、とPrinceは語る。

Cloudflareは2010年9月のTechCrunch Disruptでデビューし、その後1億8000万ドルあまりを調達している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

依頼者とプロをつなげるマッチング・プラットフォームのミツモアが4800万円調達

カメラマンやリフォーム工務店などの事業者と、サービスを依頼したい消費者をつなげるマッチング・プラットフォーム「ミツモア」を運営するミツモアは6月27日、エンジェルラウンドで合計9人の個人投資家から約4800万円を調達したと発表した。投資家の個人名は非公開だが、ミツモア代表の石川彩子氏によれば、出資に参加したのは「日米両国の個人投資家」だという。

ミツモアは各種の事業者と依頼者をつなげるマッチング・プラットフォームだ。例えば、自分のプロフィール写真を撮影したい依頼者は、ミツモアを利用してカメラマンを探し、Web上で見積もりを請求することができる。

事業者はプロフィール写真、名前、活動地域などを登録したあと、依頼者に対してサービスの見積もりを提案することができる。ミツモアがユニークなのは、依頼者が5人の事業者から見積もりを受け取った時点でその案件がクローズするという点だ。その理由として、事業者の労力を考えると、見積もりを送った数十人の事業者の中から1人しか選ばれないという状況は好ましくないという考えがあるようだ。

 

2017年4月のサービスリリース以降、これまでに約1000の事業者がミツモアに登録している。ユーザー数、成約件数は非公開とのことだが、「人気のある”サービス✕地域”だと月に10件以上の依頼を受ける人もいる」(石川氏)そうだ。

現在、ミツモアを通して依頼を送ることができるサービスは30〜40カテゴリーで、同社は将来的にこの数を500カテゴリー程度にまで拡大する構えだ。今のところ、カメラマンやリフォーム業者の登録が多いという。

クラウドソーシングとの違い

ミツモアと同種のサービスとして挙げられるのが、クラウドワークスランサーズなどのクラウドソーシング・サービス。

石川氏は、ミツモアと他のクラウドソーシング・サービスを比べた場合の違いについて、「『事業者の顔が見えるサービス』をつくりたいと思っている。『格安で依頼ができる』という言葉によってCV率は上がるかもしれないが、ミツモアではそれをやらない。『あなたにピッタリの事業者が見つかる』というのが一番の訴求ポイント。この世界観をつくりあげられるかが、勝負の分かれ目になると思っている」と語る。

また、ミツモアでは依頼者と事業者の両者ともに登録料や月額手数料はかからない。依頼者が負担するのは事業者への報酬だけだ。一方で、事業者は見積もりの提案1件ごとに料金が発生する仕組みになっている(現在はキャンペーン中のため無料。石川氏によれば、キャンペーン後にこの手数料がどの程度になるのかは未確定だという)。

一方、クラウドソーシング・サービスの多くは報酬額の〇〇%という料金体系だ。しかし、その料金体系だからこそ問題になるのが、一度マッチングした依頼者と事業者がその後サービスを介さずに直接やり取りをする”直接取引”だ。これに関して石川氏は、「当社では直接取引をリスクだとは考えていません。ユーザーがミツモアを使わずに事業者と直接やり取りしたいと思うのであれば、ミツモアが提供するバリューは一旦終わっていると考えている」と話す。それが見積もりの提案1件あたりに課金するというマネタイズ・モデルを選択した理由だ。

ミツモア創業者兼CEOの石川氏は、東京大学を卒業後、ベイン・アンド・カンパニーでコンサルタントとして勤務。その後の2017年2月にミツモアを創業した。「創業の原体験となったのはコンサル時代。専門知識をもつ中小企業や個人事業主が、全体の6〜7割の時間を営業のために使っていることをその時に知った。その問題に対するソリューションが絶対に必要だと思ったのが創業のきっかけです」と石川氏は語る。

Change.orgの最新の資金調達は生き残りを賭けた資本再構成だった

数週間前に本誌TechCrunchは、LinkedInの協同ファウンダーReid Hoffmanが、社会的正義のための署名運動プラットホームChange.orgに投資したことを報じた

しかし、その後多くの関係筋から得た情報によると、その投資ラウンドの実態は、報じられた額よりも相当低い評価額で行われた資本再構成*であった。言い換えると、Change.orgの所有構造が大幅に変わり、これまでの投資家たちの保有分は今や極小である。〔*: 資本再構成, recapitalization, recap, 資本の構成を変えること, 資本再構築ともいう〕。

どうやらHoffmanが所有権の大半を保有するか、それに近い状態になるようだ。Bill GatesやSam Altmanのようなビッグネームも最近資本を貢献したが、彼らの所有権は形ばかり、と言われている。

この新たな所有構造により、Hoffmanは、そのほかの一部の投資家と並んで、売却を阻止するに十分な権限を持つ。彼らはChange.orgを公益企業(public benefit corporation)に変えて、個々の投資家による買収阻止をやりやすくする。

しかしHoffmanに、利益を得るつもりはない。同社のブログ記事によると、“Reidは、彼のチャリティへの投資の持ち分価値のいかなる増加をも寄付と見なす心算である”、ということだ。

関係筋の中には、これを“リセット”と呼ぶ人たちもいる。資本再構成という言葉がネガティブな響きを持つことを、おそれるからだ。ZenefitsやMuncheryも、その大きな苦難の時期に資本再構成を行った。

結局のところ同社は、もっとましな資金獲得オプションを見つけることができず、継続のために必要な資本が得られなかった、という。資本構成をオーバーホールしたことによって、Change.orgの生き残りが青信号になった。

Change.orgはその苦難の一部について率直だ。昨年晩くにはレイオフを行い、その後ビジネスモデルの変更を発表した。たとえば、署名運動の賛同企業にはスポンサーとしての支援を求めたが、最近ではクラウドファンディングによる収益獲得を目指している。

しかし業界観測筋の一部は、最近のラウンドに対するChange.orgの性格付けは誤解を招く、と言っている。同社の資金繰りを野次馬たちがどうけなしても関係ない、と思いたいところだが、もっと大きな懸念は、その資金繰りを肯定的にのみ説明することは、今および将来の社員に対して公正でないかもしれない。また、同様の道を進もうとするそのほかの起業家を、惑わすかもしれない。

資本再構成は、学習機会でもありえる。投資家にとっての教訓だった、とも言えよう。

いずれにしても、資本再構成は通常、スタートアップがチャレンジに直面しているサインであるけど、もっと良い道を見つけるチャンスでもある。これがChange.orgの前進を助け、最終的には株主たちに新たな価値をもたらすことも、十分にありえる。

このプラットホームが、多くの人びとの役に立ってきたことは、間違いない。2007年の創業以来、変化(change)を求める20000件あまりのキャンペーンに、2億近くの人びとが署名を提供してきたのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

クラウド型マニュアル作成「Teachme Biz」運営がリクルートなどから総額1.2億円を資金調達

クラウド型マニュアル作成・共有プラットフォーム「Teachme Biz」を提供するスタディストは6月26日、リクルートホールディングス日本ベンチャーキャピタル三菱UFJキャピタルを引受先とする第三者割当増資を実施したことを発表した。調達額は1.2億円。スタディストでは、5月にもセールスフォースからの資金調達を発表している。また、日本ベンチャーキャピタルと三菱UFJキャピタルからの資金調達は、2015年12月に行われた総額1.5億円の調達に続くものとなる。

Teachme Bizは、写真・動画を選んで説明文を追加するだけで、業務マニュアルを作成し、共有できるサービスだ。PCはもちろん、スマホだけでもマニュアル作成ができる。2013年9月のサービス本格展開から約3年9カ月で、有償利用社数を1500社に広げており、そのうち、飲食、宿泊、小売などのサービス業での導入は約350社、2年で6倍に拡大したという。

スタディストでは、今回の出資を通じたリクルートとの業務提携により、サービス業でのTeachme Bizの導入拡大を図る。特に飲食や宿泊業界を中心としたサービス業に強いリクルートとの提携で、同業界で新規100社への導入を目指す。調達資金は主にサービス業界に特化した新機能開発や、販売体制の増強にあてるとしている。