自宅で野菜やハーブを栽培しよう、Rise Gardensが10億円の資金調達で成長拡大

野菜を中心とした食事や、持続可能な食生活を実践する消費者が増える中、Rise Gardensは、誰もが自宅で植物を栽培できるシステムを展開している。

シカゴを拠点とし、スマートな屋内水耕栽培ビジネスを展開するRise Gardensは、このたび、TELUS Ventures(テラスベンチャーズ)が主導するシリーズAラウンドにおいて、オーバーサブスクライブ(申し込みが上回る)で900万ドル(約10億円)を調達した。ラウンドには既存の投資家であるTrue Ventures(トゥルーベンチャーズ)とAmazon Alexa Fund(アマゾンアレクサファンド)、および新規投資家であるListen Ventures(リッスンベンチャーズ)が参加。Rise Gardensの創業者かつCEOのHank Adams(ハンク・アダムス)氏は、TechCrunchの取材に応じ、2017年の設立以来、ベンチャーキャピタルから合計1300万ドル(約14億4000万円)を獲得した、と答える。

スポーツテクノロジーの専門家だったアダムス氏は、2019年に最初の製品を発売するまで、設立前から数年かけてプロトタイプに取り組んできたと話す。IoTを利用したRise Gardensシステムでは、野菜、ハーブ、マイクログリーンを1年中栽培できる。

Rise Gardensシステムは3つのサイズから選択可能で、ユーザーは約300ドル(約3万3000円)で「庭」を持つことができる。

何かを育てることには「一種の喜び」があるが、手間がかかったり、ストレスになったりするような趣味には手を出したくない、だからサポートが必要なのだ、とアダムス氏は話す。Rise Gardensに付属するモバイルアプリは、水量や植物の成長状況をモニターし、水や肥料の与え方、手入れのタイミングをユーザーに知らせてくれる。

アダム氏はこう続ける。「皆が食べ物に注意を払い、自分の食事に気を配っています」「自分が食べるものを育てることに興味を持つ人が増えました。世界的なパンデミックも一因でしょう」。

実際、消費者の関心は高く、2020年にはRise Gardensの売上高は7桁(日本円では1億円)を超え、Gardensシステムは1年間に3回も完売した。ユーザーは10万本近くの苗を購入し、5万本を収穫している。

同社は、2019年の製品発売以来、フードロスを907kg以上削減し、946トンの水を節約することに貢献したと推定している。

屋内ファームのコンセプトは新しいものではない。すでに同様のサービスを展開している企業には、AeroGarden(エアロガーデン)、2020年11月にScotts Miracle-Gro(スコッツ・ミラクル-グロー)に買収されたAeroGrow(エアログロー)、Click & Grow(クリックアンドグロー)などがある。Rise Gardensは、Gardyn(ガーディン)などと同様、資金調達を行った新しいスタートアップ企業の1社である。

Rise Gardensは、粉体塗装の金属やガラスを使った、室内で人目をひくようなデザインのGardensシステムで、競合他社との差別化を図っている。さらに、ユーザーが自分の「庭」でさまざまなことを試せるようにしている。

「趣味も極めると飽きてしまうので、柔軟性のあるものがいいと考えました」「レベル1からスタートして、トレイの蓋を交換することで、より高密度に栽培することができます。マイクログリーンキットを追加したり、トマトやピーマン用に支柱を追加したり、スナップエンドウをつるすためのトレリスを作ったりすることもできます」とアダムス氏。

シリーズAの資金は製品開発、在庫管理、製造、新市場への進出、チームの増強(特にカスタマーサービスとマーケティング)に充てられる。現在、同社の従業員は約25名で、2021年中にさらに8名を増員する予定だ。

Rise Gardensのプロダクトは、(同社のウェブサイト以外では初めて)Amazonでの販売も間もなく開始される。学校にも進出し、アダムス氏はこれを「学校菜園バージョン2.0」と呼んでいる。

TELUS Venturesのプレジデント兼マネージングパートナーであるRich Osborn(リッチ・オズボーン)氏は、屋内ファームの分野を評価した際、Rise Gardensとアダムス氏が選ばれたのは、彼らのバックグラウンド、データエクスペリエンス、そしてAmazonとの協力体制によるものだ、とTechCrunchに語る。

オズボーン氏によると、この種の製品に対する消費者の需要だけでなく、この種の投資から生み出される持続可能性と社会的影響は、強調してもし過ぎることはない、という。

TELUS Agriculture(テラスアグリカルチャー)の暫定プレジデントであり、アグリビジネス・グローバルマネージングディレクターであるNishan Majarian(ニシャン・マジャリアン)氏は、作物の成長には個体差があるので、将来的に作物の管理は植物単位で行われるようになるだろう、と話す。

マジャリアン氏は次のように続ける。「Climate Corp.(クライミットコーポレーション)がMonsanto(モンサント)に買収されて以来、次の10億ドル(約1105億)を獲得すべく、農業に大規模な投資が行われています」「農業作物は、分類化されていないサプライチェーンです。作物1つ1つが異なり、市場も異なります。そのため、これらの問題と規模を解決するために資金を調達するスタートアップ企業にとっては、身近で、複雑で、いうなれば肥沃な土壌になるのです」。

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画像クレジット:Rise Gardens

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(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)

ぶどうを畑から包装場まで運ぶ農業用自律走行ロボットのBurroがトヨタなどから約12億円調達

Burroと最初に出会ったのは、アグリテック企業である同社が、2020年に開催されたTechCrunchロボティクスイベントのピッチオフに参加したときだった。この(以前はAugeanという、今ほど楽しくない名前で活動していた)会社は、今週、シリーズAで1090万ドル(約12億1500万円)の資金を調達したことを発表し、着実にステップアップしているようだ。今回のラウンドは、S2G VenturesとToyota Ventures(トヨタ・ベンチャーズ)が主導し、既存投資家であるRadicle GrowthとffVCに加えて、F-PrimeとADM Capitalが参加した。

Burroの主な製品は、農作物を畑から移動させるための自律走行ロボカートだ。Burroは、同社が「ポップアップ自律性」と呼ぶ、トレーニングなしで空間を移動できるシステムを活用している。このシステムは、現在不足している農園作業員を補充するために使用することができる。

画像クレジット:Burro

同社はすでに約90台のロボットを現場に投入しており、それらはブドウを運搬しながら1日に約100~300マイル(約161〜483km)移動し、週6日運用されているという。今回の資金調達は、既存および新規顧客向けの生産拡大のために使用され、2022年には世界で500台以上のロボットを導入する計画だ。

Charlie Andersen(チャーリー・アンダーセン)CEOはリリースでこう述べている。「農業分野に参入した多くの自律化企業は、まず自律走行トラクターや自律除草、収穫などに焦点を当て、非常に難しい技術的作業を包括的に自動化しようとしてきましたが、多くの場合、大規模な市場への参入には苦戦しています。このアプローチのすばらしさは、最も労働集約的な農業分野におけるどこにでもある問題を中心に、今日、スケールアップできる点にあります。また、我々のプラットフォームがデータを取得し、多くの環境について学習することで、他の数え切れないほどのアプリケーションにスケールアップするための基盤を提供します」。

画像クレジット:Burro

アグリテックは、パンデミックの際に労働力不足が顕著になったことで、関心が加速したいくつかのロボティクス分野の1つだ。自社の技術を迅速に実用化することで、Burroが投資家の関心を集めたことは間違いない。

画像クレジット:Burro

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

Iron Oxのロボット温室は農業の環境負荷を大幅に減らす

ベイエリアを拠点に自動化農業の開発を手がけるスタートアップ企業のIron Ox(アイアン・オックス)は先週、5300万ドル(約59億円)の資金調達を実施したことを発表した。Breakthrough Energy Venture(ブレークスルー・エナジー・ベンチャー)が主導した今回のシリーズCラウンドで、同社の資金総額は9800万ドル(約109億円)に達した。

Iron Oxは人口増加、気候変動、労働力不足など、さまざまな問題が山積する21世紀の農業に革命を起こそうとしている数多くの企業の1つだ。同社のソリューションは、大規模な屋内農園から、従来の農園でもプラグアンドプレイで運用できる農場ロボットまで、多岐にわたる。

このスタートアップは、そのアプローチを「クローズド・ループ・システム」と呼んでいる。それは実質的に、独自の収穫技術を活用したロボット温室だ。収穫量について同社は、従来の農業とほぼ同等と、突飛な主張はしていないものの、環境への負荷を大幅に軽減し、一般的な農業よりも季節の変化に左右されないモデルを目指しているという。

Iron Oxのシステムでは、従来の農業に比べて水の使用量を約90%削減することができる。また、この種のシステムでは、すべてのプロセスにデータが統合されているため、栽培した農産物に関する多くの情報を収集し、将来の収穫量の向上に役立てることもできる。

「世界的な投資家たちは、人類の最も重要な課題は気候変動を食い止めることだと知っています。そのためには、持続可能な作物を少しずつ増やしていくだけでは足りませんし、消費者に味や利便性、価値の面で妥協を求めることもできません」と、共同創業者兼CEOのBrandon Alexander(ブランドン・アレクサンダー)氏は、今回のニュースに関連したリリースで述べている。「私たちは、増加する人口を養うために必要な土地、水、エネルギーの量を最小限に抑える技術を適用しています。Iron Oxのチームは、農業をカーボンネガティブにするという長期的な使命を果たすまで、決して立ち止まりません」。

同社によれば、今回の資金調達は、製造規模の拡大、米国での事業拡大、研究開発の強化、従業員の増員に充てられるという。

画像クレジット:Iron Ox

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

農業DXプラットフォームにより産地とともに持続可能な農業を作るAGRI SMILEが1.7億円調達

産地とともに持続可能な農業を作るDXプラットフォームを提供するAGRI SMILEが1.7億円調達

「耕作することが産業である続ける世界。」というビジョンの下、DXプラットフォームにより産地とともに持続可能な農業を作るAGRI SMILEは9月27日、第三者割当増資による総額約1億7000万円の資金調達を発表した。引受先は、個人投資家の梅田裕真氏(メディカルノート代表取締役CEO)、鈴木達哉氏(ギフティ代表取締役)、既存投資家のマネックスベンチャーズ、THE SEED。調達した資金は、農業DXプラットフォームの展開加速と組織拡大に投資する。累計調達額は2億1000万円となった。

持続可能な農業の実現に向け、AGRI SMILEでは技術の伝承・共有・向上をサポートするDXプラットフォームを展開している。「産地」にフォーカスする理由は、R&Dと連携して技術を向上させるための大規模なデータ集積が可能な点が挙げられるという。

例えば、近しい気象条件で集積された多圃場の栽培管理データから栽培管理方法による差異のメカニズムを実験室レベルで明らかにし、得られた知見を産地へフィードバックする。これに基づき栽培管理を改善し、新たなデータを集積していくことで、科学的根拠に立脚したPDCAサイクルを生み出す。同様に、活用を見据えた形式でマスデータを蓄積し、栽培領域のデータと科学的知見を結びつけることで、大きな価値を産地へもたらせると考えているという。産地とともに持続可能な農業を作るDXプラットフォームを提供するAGRI SMILEが1.7億円調達産地とともに持続可能な農業を作るDXプラットフォームを提供するAGRI SMILEが1.7億円調達

衛星データ+機械学習+スマート調節弁で作物の灌漑を細分制御、コストを最大80%削減するVerdi

米国時間9月21日、TechCrunch DisruptのStartup Battlefield(スタートアップ・バトルフィールド)コンペで発表されたVerdi(ヴェルディ)は、スマートバルブ(調節弁)のクラスターを「swarms(スウォーム、群れ)」と呼んでいる。この言葉は、同社が北米の農場で展開しようとしている高密度の導入を意味している。同社のシステムは、既存の灌漑技術に後付けすることで、農家が作物に供給する灌漑をよりコントロールできるようにすることを目的としている。

同社のシステムは、人工衛星(将来的にはドローンも)によって収集された第三者データを利用して、特定の作物のどの部分に十分な水が供給されていないかを判断する。このシステムでは、作物を小さなゾーンに分け、機械学習(ML)を活用して、必要な場所に適切な量の水が届くようにする。

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    画像クレジット:Verdi
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    画像クレジット:Verdi
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    画像クレジット:Verdi
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    画像クレジット:Verdi

共同創業者兼CEOのArthur Chen(アーサー・チェン)氏は、TechCrunchにこう語った。「植物の生育にはさまざまなバリエーションがありますが、それは土壌や気候の違いによるもので、畑の中のわずか数メートルの範囲で起こることもあります」。

「既存のインフラでは、植物の生育条件がそれぞれ異なるにもかかわらず、すべての植物を同じように取り扱うという、画一的な処理しかできませんでした。私たちがここでやろうとしているのは、農家の方々に、個々の植物のグループ、あるいは畑の中の単一の植物に対して、水や、例えば肥料の散布をカスタマイズする能力を提供することです」。

同社は2019年、ブリティッシュコロンビア大学のスピンアウトとしてスタートした。コロナ禍の影響で渡航が制限されていることもあり、これまで彼らのオリジナル技術のほとんどはブリティッシュコロンビア州で展開されている。

今のところシステムの導入には担当者の立ち会いが必要なため、Verdiは1月初旬のロールアウト以来、多くの試験を同州内で行ってきた。ただし、カリフォルニア州やワシントン州でも試験的に導入されている。

このシステムは、従来の方法に比べて、灌漑コストを最大80%削減し、最大10倍の精度を実現することができるという。同社の農家への主なアピールポイントはより正確な灌漑を行うことだが、潜在的な投資家にアピールする際には、水の使用量削減の可能性を強調した方がいいだろう。投資家たちは、より多くのグリーン企業をポートフォリオに加えたいと考え探しているはずだ。特に干ばつに悩まされているカリフォルニア州では、より多くの節水ソリューションが検討されるべきだ。

現在までに、4人のフルタイム社員からなるチームは、Startup Haven、Rarebreed Ventures、Alchemist Acceleratorから、108万ドル(約1億2000万円)のプレシード資金を調達している。

画像クレジット:Verdi

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

スマホでロボットを遠隔操作し農作業に参加できるRaraaSをH2LとPwC財団が共同開発

スマホでロボットを遠隔操作し農業作業を行えるRaraaSをH2LとPwC財団が共同開発

「オーディオビジュアルに次ぐ新世代の感覚共有技術BodySharingの研究開発」を進めるH2Lは9月15日、環境社会問題に取り組む団体への助成を行う公益財団法人PwC財団と共同で、スマートフォンで遠隔地のロボットを操作して農作業に参加できるシステム「RaraaS」(ララース)を開発した。RaraaSは、Remote Agricultural Robot as a Service(遠隔農業ロボットサービス)の略称という。

RaraaSは、農業従事者の減少、都市一極集中型の社会構造、障害者の社会参画機会の制限と低賃金という3つの社会課題の解決を目指して開発された。H2Lは、筋肉の動きを検出する独自の筋変位センサーで人の動作や感覚をデータ化して、それをバーチャルアバター、ロボット、他の人に伝えるという「BodySharing」(ボディシェアリング)技術を開発している。RaraaSは、それを使って農作業を支援しようという試みだ。細かな指の動きや力の入れ具合などがロボットに伝えられ、ロボットからは果実の重さをフィードバックするといったシステムの実現を目指している。

7月から、RaraaSを使った「遠隔ロボットdeいちご摘み」という体験会が実施されている。現在は開発関係者のみで行われているが、10月から12月までは一般から募集した参加者が体験できるようになる予定。申し込み方法などの詳細はまだ発表されていないが、所要時間は15分程度で、Zoomに接続できるPCとiOSを利用できる15歳以上の人が対象となるとのことだ。体験者には、体験写真、遠隔ロボットの操作レポートなどが贈られるとのこと。

2012年7月設立のH2Lは、肉の膨らみから手の動作を検出する技術と、多電極の電気刺激を腕に与えて触感を伝える技術に強みを持つスタートアップ。これらの技術と、アバター合成技術、遠隔操作ロボットなどを組み合わせ、BodySharingを実現している。

PwC財団は、PwC Japanグループに属するPwCコンサルティング合同会社が設立。「人」と「環境」に関する社会課題に取り組む団体を支援するために2020年5月1日に設立され、2021年5月1日に公益財団法人へ移行した。教育やアップスキリング(スキルの向上)、個性や多様性(ダイバーシティ&インクルージョン。D&I)の支援、環境問題への対策など、社会における重要な課題解決に取り組む団体を対象に、公募による助成金交付を中心とした活動を行っている。

CuboRexがねこ車を電動化できる「E-Cat Kit」と独自開発の低重心ねこ車フレーム「Cat Frame」をセット販売、耐荷重100kg

CuboRexがねこ車を電動化できる「E-Cat Kit」と独自開発の低重心ねこ車フレーム「Cat Frame」をセット販売

農地や被災地など悪路環境で使える乗り物や運搬器具を製造開発するハードウェアスタートアップCuboRex(キューボレックス)は9月14日、低重心型の作業用一輪車を開発し、それに同社の一輪車電動化キット「E-Cat Kit」(イーキャット・キット)を組み合わせた「E-Catコンプリートパッケージ」の販売を開始した。同社販売ページで購入できる。

CuboRexは、作業用一輪車、いわゆる「ねこ車」を、ほぼタイヤ交換だけで電動化できるキット「E-Cat Kit」を2020年10月に正式リリース。和歌山県や広島県のJAや代理店をはじめ、傾斜地での作業が多いみかん農家を中心に300台以上を販売してきた。

そんななかでCuboRexは、和歌山県有田市で広く使われている低重心で安定性が高い「有田式アルミ製三つ積みねこ車」を電動化できれば、農家のさらなる作業効率の向上と負担軽減が実現できると考えた。そこでCuboRexは有田式ねこ車のフレーム「Cat Frame」を独自に製造することにした。これに「E-Cat Kit」を組み込んだものが「E-Catコンプリートパッケージ」だ。

今後は「Cat Frame」と「E-Cat Kit」の販売拡大とともに、「E-Cat Kit」の販路を農業以外の運搬に関わる仕事にも広げてゆくという。

「E-Cat コンプリートパッケージ」概要

  • 販売価格:19万7780円(税込。「E-Cat Kit」と「Cat Frame」のセットでの提供価格)
  • 対荷重量:最大100kg
  • 荷台サイズ:380×1120 mm
  • 重さ:12kg(一輪車単体5kg)
  • 商品詳細・販売:https://cuborex.base.shop/items/52127770

Pivot Bioの改良型微生物は農家の費用と時間、さらに環境への負担の軽減させる

Pivot Bioは肥料を作るが、直接作り上げるのではない。同社によって改良した微生物が土壌に添加され、窒素を生成する。本来ならトラックで運ばれてそこに投棄されるような土壌が有益性を持つことになる。バイオテックを利用したこのアプローチは、農家の費用と時間を節減し、最終的には環境への負担の軽減にもつながり得る。この巨大な機会に投資家たちは、同社の最新の資金調達ラウンドを通じて4億3000万ドル(約473億6000万円)を投入した。

窒素は作物が生育するために必要な栄養素の1つである。農家が今日のペースの成長を維持するには、肥料を土に撒いて混合することが不可欠だ。しかしある側面において、何世代も前に先人たちが行っていたことが今でも続けられている。

「肥料は農業を変革し、前世紀において多大な成果を生み出しました。しかし、肥料は作物に栄養を与える完璧な方法とはいえません」とPivot BioのCEO兼共同創業者であるKarsten Temme(カルステン・テンメ)氏は語る。同氏は、何千エーカー、まして1万エーカーをも超える農地に肥料を散布することは、大量の人員、重機、貴重な時間を必要とする、機械的かつ物流上の大きな課題を含んでいるという単純な事実を指摘した。

いうまでもなく、大雨によって大量の肥料が吸収・利用される前に失われてしまうリスクや、肥料を施す過程で発生する温室効果ガスの多大な影響も懸念される(微生物学的アプローチは環境に対して相当に優れているようだ)。

もっとも、このアプローチを採用する根本的な意図は、土壌中に生息し、自然に窒素を産出する微生物の働きを模倣することにある。植物とこれらの微生物は何百万年も前から相互に関係しているが、単純に、小さな微生物では十分な産出に至らない。Pivot Bioが10年以上前にスタートしたときの洞察は、いくつかの微調整によりこの自然の窒素循環を強化できるというものだった。

「微生物に取り組むべき道があることを、私たちは確信していました」とテンメ氏は語っている。「元々根系の一部として存在する微生物に、肥料を感知するとエネルギーを蓄えるために窒素を生成しないというフィードバックループがあることを知っていました。その微生物に含まれる、窒素を生成する遺伝子の能力が、休眠状態になっていたのです。私たちが唯一行ったことは、それを覚醒させる作業でした」。

IndigoやAgBiomeのような、農業に特化した他のバイオテクノロジー企業も、植物の「マイクロバイオーム」、つまり特定の植物の近くに生息する生命体の改変や管理に着目している。改変されたマイクロバイオームは、有害生物に対して耐性を発揮したり、病害を減少させるなど、さまざまな利点をもたらし得る。

画像クレジット:Pivot Bio

これは、生きた発酵剤としての働きが広く利用されている、おなじみのイースト菌のようなものだ。イースト菌は、砂糖を消費し、ガスを発生させるように培養された微生物で、発生したガスの作用で生地の中に空気のポケットが作られる。同社が手がける微生物も同じように、植物から分泌される糖を継続的に消費し、窒素を排出するという作用により直接的に関わる改変が加えられている。そして土壌に固形肥料を加える必要性を大幅に減らす速度で、それを行うことができる。

「従来使われてきた何トンもの物理的な素材を、パン職人が使うイースト菌のように手になじむ粉末に圧縮したのです」とテンメ氏はいう(厳密には、この製品は液体として使われる)。「農家の経営が一気に楽なものへと変わっていくでしょう。トラクターに乗って肥料を畑に撒く時間から解放されます。種を植えるときに私たちの製品を加えればいいのです。そして、春に豪雨が襲っても、すべてを洗い流さないという確信を得ることができます。世界的な視点で言えば、肥料の約半分は流されてしまうのですが、微生物ならその心配はありません」。

そうした状況でも、微生物は土の中に静かに潜み、1エーカー(約4047平方メートル)あたり最大40ポンド(約453.6グラム)の割合で窒素を排出する。これは非常に古めかしい測定方法ではあるものの(1平方センチメートルあたりのグラム数でもよいのではと思う)、農業に時折見られる時代錯誤的な傾向に沿うものではあるかもしれない。作物や環境によっては、肥料を一切使わなくても十分な場合もあれば、半分以下という場合もある。

微生物によってもたらされるその割合がどのようなものであっても、同社の製品を採用することが魅力的なものであるのは確かなようだ。Pivot Bioは2021年に収益を3倍にしているからだ。なぜ2021年の半ばに過ぎないのにこれほど確実な結果が得られるのか不思議に思うかもしれないが、同社は現在、北半球の農家にしか販売しておらず、この製品は作付け時期の早い時期に適用されているため、2021年の売上はすでに終了していることになる。2020年の売上の3倍になることが確実視されている。

作物が収穫されると微生物は死滅するので、生態系への恒久的な変化とはならない。そして来年、農家がさらに多くのものを求めてきたときには、微生物はさらに改良されているかもしれない。窒素生成のために遺伝子のスイッチを切り替えるということにとどまらず、糖から窒素への酵素的経路の改善、微生物が休止状態からプロセスを開始すると決定するしきい値の調整も可能である。最新製品であるProven 40は前述のような生産性を備えているが、さらなる改良が計画されており、戦術変更に手間をかける価値があるかどうか決めかねている潜在顧客を引き付けることを同社は目指している。

経常収益と成長のポテンシャル(同社の現在の推定によると、総市場2000億ドル[約22兆円]の約4分の1に対応可能だという)は、DCVCとTemasekが主導した今回の巨大なDラウンドにつながった。同社のプレスリリースには、間違いなく極めて慎重に検討された秩序で、その他に存在する十数社の投資家の名前も記されている。

テンメ氏は、今回の資金をプラットフォームの深化と拡大、また同社の製品を試して魅力を感じているように思われる農家との関係強化に充てる予定だと述べている。同社の微生物は今のところ、トウモロコシ、小麦、米に特化されたものだ。もちろんこれらは多くの農業分野をカバーしているが、合理化され、強化された窒素循環の恩恵を受ける産業分野は他にもたくさん存在する。そしてそのことは、テンメ氏と共同創業者であるAlvin Tamsir(アルビン・タムシール)氏が15年前に大学院で抱いていたビジョンの強力な裏付けとなることは間違いないと同氏は話す。その発言には、同じようなポジションに今いる、そうしたことに価値があるのだろうかと考えている人たちに向けて、同社の実証が糧となって欲しいという願いが込められているようだ。

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画像クレジット:Pivot Bio

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

リクルートと信州大学農学部が農地情報整備の共同研究、航空写真から特定農地区分を高精度で検出するAI開発

リクルートと信州大学農学部が農地情報整備の共同研究、航空写真から特定農地区分を高精度で検出するAI開発

リクルートの研究開発機関アドバンスドテクノロジーラボは9月9日、信州大学農学部との共同研究「水田活用における畦畔(けいはん)管理の効率化に関する取り組み」を2020年12月より開始。今回、約半年間にわたる研究の成果と今後の見通しについて発表した。

畦畔(けいはん)とは、水田に流入させた用水が外にもれないように、水田を囲んで作った盛土などの部分のこと。AIの活用により、手作業では計測が難しかった畦畔の面積や傾斜角などの情報を可視化する技術を開発し、中山間地域(農業地域類型区分のうち、中間農業地域と山間農業地域を合わせた地域)における農業課題の解決を目指す取り組みを進めてきたという。

リクルートと信州大学農学部が農地情報整備の共同研究、航空写真から特定農地区分を高精度で検出するAI開発

赤い枠内が畦畔(けいはん)

同共同研究では、リクルートが培ってきたAI技術および画像処理技術と、長野県林務部が作成した「航空写真×数値標高モデル」でAIモデルを作成する技術を確立。水田の畦畔面積・傾斜角、農地に占める畦畔の割合(畦畔率)を計測し可視化、長野県全域の水田約5万haに対し、畦畔データ(GIS用座標付ポリゴンデータ)の作成に成功した。この研究結果は、農業工学分野やシステム農学分野の学術学会での報告、さらに各学会誌への論文投稿を行う予定。

また今後、畦畔データの作成技術を、リクルートから信州大学農学部へ移転することによって研究を継続する。

信州大学農学部では、作成したデータをベースに水田1枚ごとの畦畔データを作成することで、農家が所有する水田ごとの畦畔の面積・傾斜角、畦畔率の計測を可能にするとしている。また、予測モデルの精度を上げることで、長野県以外の地域においても、同様の結果を得られる高い汎用性を目標とする。さらには、水田の畦畔を含めた全国の農地のGISオープンデータの公開を通じて、県・市町村など地域行政と連携した「農地・畦畔見える化プロジェクト」の発展を目指す。

中山間地域では、若手農家や農業法人の新規参入が進まず、経営規模を拡大しようとしても、平地と比べ傾斜地が多いという条件不利性から、労働費用が多くかかり農業機械の効率化が進んでいない。その課題の1つである畦畔管理作業にかかる費用(人件費・機械費・燃料費)を「見える化」することによって、より適切な耕作管理方法や機械の導入の検討を可能にし、新規参入や経営規模の拡大につなげていくことを最終的な目標に据えている。

一方リクルートでは、今後共同研究で得られた「低解像度イメージに情報を付加することで高解像度化する技術」と「精度の高いAIモデルを作成するノウハウ」をビジネスに活用することも視野に入れているという。

信州大学農学部との共同研究の概要

畦畔は、水稲栽培に必要な水を田んぼにためる重要な役割を果たしており、大雨時の一時的な貯留などの役割も担っている。これを維持するため、漏水を防ぐための畔塗りなどの管理とともに、畦畔の崩落を防ぎ病虫害の発生を抑えるため、定期的な草刈りの作業が必要となる。

しかし、傾斜地の多い中山間地域の水田では、平地と比べて畦畔斜面の面積や角度が大きく、そこでの過大な労働負荷や管理コストの負担が課題となっているそうだ。また、畦畔斜面の傾斜角度を考慮した実質的な畦畔面積を測量することは多大な時間と費用を要するため、畦畔農地情報は整備されておらず、中山間地域の水田農業の経営改善が進まない一因となっているという。

農林水産省や地方自治体がまとめる農地基盤情報では、農地面積や圃場(ほじょう。農地の中で耕作可能な部分)面積については整備されてきているものの、畦畔斜面を含めた実質的な畦畔の面積や角度、畦畔率といった情報は未整備であり、畦畔管理にかかる費用の算出・実態の把握が困難であるという課題は残されたままになっている。

信州大学農学部は2020年、畦畔の正確な地形情報を計測すべく、地理情報システム(GIS)上で畦畔ポリゴンと圃場ポリゴンを作成し、長野県林務部が作成した精密標高データ(DEM。Digital Elevation Model)を用いて、畦畔の面積・傾斜角、畦畔率の測定を開始した。しかし、手動でポリゴンを作成していたため、煩雑な作業負荷が課題となっていた。

この解決策として、リクルートは、ディープラーニングを中心としたAI技術と画像処理技術を提供し応用できると判断。信州大学農学部との共同研究を通じ、長野県が保有する航空写真とDEMを組み合わせることで、水田圃場部分の「水張領域」と「畦畔領域」を判別し、それぞれの領域のポリゴンを自動作成するAIの開発を目指し共同研究に取り組んできたという。リクルートと信州大学農学部が農地情報整備の共同研究、航空写真から特定農地区分を高精度で検出するAI開発

生成したAIモデルの評価では、エリアや特徴の異なるデータを無作為で抽出した上で、正解データ(1308イメージ)を作成、「畦畔領域」「水張領域」「その他領域」の3つのクラスによる特定農地区分を97.7%の精度で検知したという。リクルートと信州大学農学部が農地情報整備の共同研究、航空写真から特定農地区分を高精度で検出するAI開発

新規就農者・異業種参入企業への栽培指導を可能にするSaaS「農の相棒Mr.カルテ」を手がけるINGENが5000万円調達

新規就農者・異業種参入企業への栽培指導を可能にするSaaS「農の相棒Mr.カルテ」を手がけるINGENが5000万円調達

栽培指導SaaS「農の相棒Mr.カルテ」開発・運営を手がけるINGENは9月1日、5000万円の資金調達を発表した。引受先はANRI、NEXTBLUE。日本の農業技術を新しい形で継承できるサービス・事業を構築し、農業業界を若手農家・異業種参入企業など次世代が安心して参入できる業界に変えるとしている。

INGENは「JAPANクオリティの農産物を世界の食卓へ」をミッションとして掲げ、2015年に創業した農業ITスタートアップ。日本の農業技術の継承を目的とし、新規就農者・異業種参入企業に対してより良い栽培指導を可能にするSaaS「農の相棒Mr.カルテ」を開発・運営している。

同社は、農業専門SaaS企業として、栽培指導者に寄り添った独自の肥料などデータベース(特許取得済)や、導入支援を強みとしているという。今回の調達した資金は、それら栽培指導の機能強化のスピードアップと、データベース更新・導入支援体制の拡大にあてる。

農の相棒Mr.カルテは、栽培指導・処方のDX化支援を通じ、農業者が遠方からでもオンラインで優れた栽培指導・処方を受けられるようにする農業SaaS。この処方とは、土壌分析や生育状況から肥料・土壌改良材などの組み合わせ・使用量に関する提案を指すという。栽培指導者が作った「カルテ」は、農業者側はそのまま「日誌」として活用できるそうだ。

農家にとっては「指導・処方が記録に残り技術が身につきやすい」「農資材使用のタイミングや超早期病害対策が身につく」をメリットとして挙げており、栽培指導者にとっては「職員だれでも一定レベルの指導が実現」「オンラインでも精度の高い栽培指導が可能」「農資材の単品販売ではなく、栽培指導・処方の一環として農資材提案が行える」としている。新規就農者・異業種参入企業への栽培指導を可能にするSaaS「農の相棒Mr.カルテ」を手がけるINGENが5000万円調達新規就農者・異業種参入企業への栽培指導を可能にするSaaS「農の相棒Mr.カルテ」を手がけるINGENが5000万円調達

INGENによると、日本の農産物は「味・質・鮮度」技術を強みとしており、これを活かすと同時に生産量の安定を両立する技術が求められてきたという。

具体的には、「病害虫・天候不良に対する超早期対策」の技術継承が両立に直結していることから、Mr.カルテではこれを可能とすることで新規就農者・異業種参入者の独り立ち促進と減農薬・減肥をサポートするとしている。

レーザーを使って雑草を刈る自律型除草機開発のCarbon Roboticsが約29.7億円を獲得

農業用ロボットを開発する企業のCarbon Robotics(カーボン・ロボティクス、バトルフィールドの元出場者と混同してはいけない)は今週、2700万ドル(約29億7000万円)の資金を確保したと発表した。Anthos Capital(アントス・キャピタル)、Ignition Capital(イグニション・キャピタル)、Fuse Venture Partners(フューズ・ベンチャー・パートナーズ)、Voyager Capital(ボイジャー・キャピタル)が参加した今回のラウンドは、2019年に調達した840万ドル(約9億2400万円)のシリーズAに続くものだ。同社の資金調達総額は約3600万ドル(約39億6000万円)となった。

「除草は農家が直面する最大の課題の1つであり、特に除草剤耐性のある雑草の増加や、オーガニックや再生法への関心の高まりを受けて、除草の重要性が高まっています。今回のラウンドの投資により、この技術に対する需要の高まりに対応して事業を拡大することができるようになります。さらに、この資金で、当社のチームは新製品の開発を続け、テクノロジーを農業に応用する革新的な方法を見出すことができるようになります」と創業者兼CEOのPaul Mikesell(ポール・マイクスル)氏はリリースで述べている。

シアトルを拠点とするこのスタートアップ企業の主要製品は、レーザーを使って雑草を刈る自律型ロボットだ。今回のラウンドは、Carbonが2021年4月に発表した最新型のAutonomous Weederに続くもので、1時間あたり約10万本の雑草を除去することができるという。世界的なパンデミックは、労働力の不足が続く中、多くの農業用ロボット企業への人々の関心を高め続けている。

Carbonは、世界的にさまざまな農薬が使用禁止になっていることを受け、多くの農家が代替手段を模索していることを指摘している。有害な化学物質を使用せずに動作し、人手不足に悩まされることの多い業界において、人手を減らすことができるシステムは、明らかに魅力的だ。

同社によると、2021年と2022年の在庫はすでに完売しており、今回のラウンドでは、生産量と人員数の拡大が重要な投資対象になると考えられる。

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(文:Brian Heater、翻訳:Akihito Mizukoshi)

世界の食糧難に対処するためBeta Hatchは家畜の飼料となるミールワームを生産

筆者がこの前、香港に行ったとき、あるスタートアップ企業がおやつにミールワームの瓶をくれた。見た目は少々奇妙だが、食べるとパリパリとしている(焼いた幼虫の入った瓶から想像するとおり)。だが、味はあまりしないので、自分で調味料を用意したほうがいいかもしれない。

持続可能な社会を実現するために、人間やその他の生物にとっての代替タンパク源には、大きな関心が寄せられている。Beta Hatch(ベータハッチ)という会社は、明らかにその後者、つまり家畜やペットを主要な対象とし「実質的に廃棄物を出さない」農法に取り組んでいる。

セントルイスを拠点とする同社は米国時間8月18日、Lewis & Clark AgriFood(ルイス&クラーク・アグリフード)が主導するラウンドで1000万ドル(約11億円)の資金を調達したと発表した。この投資ラウンドには、以前から出資していたCavallo Ventures(カヴァロ・ベンチャーズ)とInnova Memphis(イノーヴァ・メンフィス)も参加した。Beta Hatchは、ワシントン州カシミアにある旗艦農場の拡大を視野に入れ、今回の資金調達を実施したという。

「私たちは、ワシントン州の農業コミュニティの一員として、農業の未来を築く一翼を担えることを誇りに思います」と、創業者でCEOのVirginia Emery(バージニア・エメリー)氏は、リリースで述べている。「増加する世界の人口に食糧を供給するために、私たちはこれらのコミュニティの人々を雇用し、協力し合うことで、米国の農村における私たちの存在感が高まることを期待しています」。

同社によると、この新しい施設は北米で最大規模のものであり、Beta Hatchの生産量を今後1年間で現在の10倍に増やす計画に貢献するという。この施設は現在、再生可能エネルギーで運営されている。

ミールワームは、2019年にフランスのŸnsect(インセクト)という企業が1億2500万ドル(約137億円)もの資金を調達したことでも証明されたように、食糧供給源の食糧供給源として(つまり家畜の飼料として)興味深いことが認められている。

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画像クレジット:Beta Hatch

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

1度の飛行で2ヘクタールの團場に農薬散布できる16リットルタンク搭載ドローン「ヘリオスアグリ16」販売開始

16リットルタンクを搭載した農薬散布ドローン「ヘリオスアグリ16」正式販売開始

産業用ドローンの開発と販売を行う東京ドローンプラスは8月17日、1度の飛行で2ヘクタールの團場に農薬散布できる16リットルタンクを備えた「ヘリオスアグリ16」の販売を開始した。購入時は問い合わせる必要がある。

特に大規模農家では、農薬散布はコスト面でも体力面でも負担が大きいとされている。ヘリコプターによる散布は高額であり、夏場に防護服を着て散布を行うのは身体的負荷が高い。そんな農家のニーズに応えるべく、東京ドローンプラスは研究開発を進め、2017年に「ヘリオスアグリ5」(5リットル)と「ヘリオスアグリ10」(10リットル)を誕生させた。「ヘリオスアグリ16」は2018年から開発を始め、国土交通省の飛行認可も取得したものの、農家の期待に添った価格面と安定したサポート体制を実現するために改良を重ねていたという。

「ヘリオスアグリ16」には、次の3つの特徴がある。

  • 業界屈指の積載量:16リットルの液剤を2ヘクタールに一度に散布可能
  • 大容量のバッテリーと6枚羽形式の採用により、長時間の安定飛行を実現
  • 操縦が不安な方でも安心、経験豊かな講師による現地でのマンツーマン講習

16リットルタンクを搭載した農薬散布ドローン「ヘリオスアグリ16」正式販売開始

「ヘリオスアグリ16」の主要スペック

  • 全幅:1800mm、折りたたみ時900mm
  • 全長:1800mm
  • 全高:600mm
  • 本体材質:カーボン
  • 総重量:15.3kg
  • モーター:120KV ブラシレスモーター
  • プロペラ:32inch
  • ESC:80A
  • フライトコントローラー:JIYI K++
  • バッテリー:LiPo 6セルバッテリー×2(22000mAh)

飛行スペック

  • 最大飛行時間:19分(16リットル散布時13分)
  • 飛行モード:GPS・ATTI・ABモード
  • 送信機メーカー形式(技適済み):Skydroid T12
  • 仕様周波数帯:2.4GHz
  • 飛行制限距離:200m
  • 飛行制限高度:30m
  • 緊急時対応:緊急停止コマンド搭載

液剤散布装置

  • 最大積載重量:16kg
  • タンク容量:16リットル
  • タンク材質:ポリエチレン
  • 最大吐出量:毎分/0.8リットル
  • 吐出幅(3m上昇時):7000mm
  • ノズル:液剤対応(個数4)

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カテゴリー:ドローン
タグ:東京ドローンプラス(企業)農業 / アグリテック(用語)日本(国・地域)

農業機械大手ジョンディアが自動運転トラクター開発Bear Flag Roboticsを約276億円で買収、労働力不足解決を目指す

ロボット関連のスタートアップ企業の世界では、買収が良い結果を生むことがしばしばある。ロボットトラクターのスタートアップに関して言えば、John Deere(ジョンディア)に買収されるのも悪くないだろう。この大手農業機械メーカーは米国時間8月5日、Bear Flag Robotics(ベア・フラッグ・ロボティクス)を2億5000万ドル(約276億円)で買収すると発表した。

2017年に設立されたこの企業は、サンフランシスコ・ベイエリアに拠点を置き、自動運転型の農業用重機を専門に開発している。同社が初めて我々の注目を浴びたのは、設立から翌年のYC Winter 2018に参加した時のことだ。

「私たちは果樹園を見学し、労働問題がいかに深刻であるかを知りました」と、共同創業者のAubrey Donnellan(オーブリー・ドネラン)氏は当時、TechCrunchに語っていた。「トラクターの座席を埋めるのに苦労しているのです。私たちは、カリフォルニアの他の生産者にも話を聞きました。すると、何度も同じことを言われました。労働力は最も重要な痛点の1つです。質の高い労働力を確保することはとても難しい。労働者の高齢化が進み、地元を離れて他の産業に移っていく人も多いのです」。

その後、John Deereは独自に起ち上げたStartup Collaboratorプログラムで、Bear Flagと提携する。その一方で、このロボット企業はその技術を米国内の非公開の(彼らの表現によれば「限定的な」)拠点で展開も始めていた。

「今日、農家が直面している最大の課題の1つは、農業の成果に影響を与える時間に制約された作業を行うことができる熟練労働者の確保です。自動運転は、この課題に正面から対処することができる、安全で生産性の高い代替手段を提供するものです」と、共同創業者でCEOを務めるIgino Cafiero(イジーノ・カフィエロ)氏はリリースの中で述べている。「機械の自動化によって、世界の食糧生産量を増やし、食糧生産コストを削減するというBear Flagのミッションは、Deereと一致しています。Deereのチームに参加し、より多くの農場に自動化を導入できるようになることに興奮しています」。

農業分野は、以前から問題となっていた労働力不足が、新型コロナウイルスの世界的な大流行によってさらに悪化していることで、2020年から関心が高まっているロボット分野の1つである。もちろん、そのように関心が高まっているからといって、ロボット工学スタートアップを起ち上げることの難しさは変わらない。

2021年7月、リンゴ収穫ロボットをてがけるAbundant(アバンダント)という企業は「プロトタイプのリンゴ収穫機を使った一連の有望な商業試験の後、開発を継続して量産システムを立ち上げるための十分な資金を調達できなかった」として、事業を終了することを認めた

Bear Flagのような企業にとって、買収は納得の行く結果だろう。このスタートアップ企業は巨大な新オーナーから多くのリソースを得ることができ、その新オーナーはポートフォリオに新しい技術を加えることができる。実際、John Deereはここ数年、ロボットやドローンなどの最先端技術への進出をかなり積極的に検討している。

Bear Flagはこれまで通り、ベイエリアで事業運営を続ける予定だという。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:John DeereBear Flag Robotics農業自動運転買収

画像クレジット:Bear Flag Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

農家のための恋活・婚活アプリ「あぐりマッチ」が農業女子と就農希望男性をつなぐサービスを開始

「農業と自然が好きな人のための恋活・婚活マッチングアプリ」(Android版iOS版)を提供するあぐりマッチは8月5日、好きな伴侶と家業の農業を継ぎたい女性と、就農したい非農家男性とを結ぶ新サービスの開始を発表した。あぐりマッチは、これまで農家の男性に非農家の女性を結ぶサービスを展開してきたが、この新サービスで農業や自然が好きな人たちの出会いの場をさらに活性化するという。

平成27年(2015年)の国勢調査では、日本の農業従事者のうち男性は124万人、女性は84万人となっている。また農水省の「令和元年新規就農者調査」によると、実家を継いで農業をする人が減っているものの、従業員として農業に従事する人や、農業で起業する人が増えており、このことから、農業に関心のある若者が増えていることがわかるとしている。一方、パートナーがなく、女手ひとつでは農業を継げないために離農する女性も少なくないという。

そこで、あぐりマッチは、そんな悩みを抱える農家の女性に、就農したいが単独ではハードルが高いと考えている男性の架け橋となるべく、このサービスを開始した。基本的に、サービスが「ジェンダーレス」になったということだ。新サービスのおもな内容は次の4つ。

  • 会員プロフィールで「農家」または「非農家」が指定できる
  • 「農家」を選ぶと、行っている農業に関する詳しい情報を登録し、相手に公開できる
  • 「一緒に農業をしたい!」のようなメッセージ付きの「いいね」が送れる
  • 普段の生活を見てもらえるタイムライン機能が追加
会員は農家か非農家かを選択でき、それによって使える機能や表示項目を切り替える可能。農家モードはサービス登録時に選択します。編集したい際には、プロフィール編集ページの「農家モード」にて切り替えられる

会員は農家か非農家かを選択でき、それによって使える機能や表示項目を切り替える可能

「農家」を選ぶと、行っている農業に関する詳しい情報を登録し、相手に公開できる

「農家」を選ぶと、行っている農業に関する詳しい情報を登録し、相手に公開できる

普段の生活を見てもらえるタイムライン機能が追加

普段の生活を見てもらえるタイムライン機能が追加

あぐりマッチは2021年7月1日に設立したばかりだが、2021年末には登録者数7000人を目指し、将来的には、「農家だけでなく田舎や自然、地方への観光が好きなすべての方向けにサービスを展開する予定」とのこと。

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タグ:あぐりマッチ(企業)農業 / アグリテック(用語)マッチングアプリ / デートアプリ(用語)日本(国・地域)

NTTドコモが「空の産業革命」実現にらみドローン向け新料金プラン「LTE上空利用プラン」日本初提供、月額4万9800円

NTTドコモが日本初のドローン向け新料金プラン「LTE上空利用プラン」提供、月額4万9800円NTTドコモが日本初となるドローン向け新料金「LTE上空利用プラン」の提供を開始しました。

同プランは、月額4万9800円(税込)で上空におけるLTE通信を120GBまで利用可能。また、同プランの契約者がドローンを利用する際に、利用場所や日時・台数・高度などを事前に予約できる「LTE上空利用予約」もセットで提供します。

従来、上空のモバイルネットワーク利用は、地上で利用する電波への干渉を避けるため、電波法のもと限定的な利用となっていました。

しかし、官民が提唱した「空の産業革命」のもと、上空での送信電力制御や、上空で利用する周波数帯の限定などを条件に、2020年12月に上空におけるモバイルネットワーク利用を拡大する制度が整備されました。

今回、同プランを活用することで、目視外への長距離飛行やリアルタイムデータ伝送も可能となり、広範囲の農薬散布や生育監視、遠隔地への長距離物流、災害発生時における遠隔地のリアルタイム映像伝送など、幅広いシーンに活用できるといいます。

なお、携帯キャリアがドローン向けの専用プランの提供を開始するのは国内初。ドコモは7月16日・19日に開催する5Gソリューションの展示会「docomo 5G DX MEETUP for business」に同プランおよびサービス内容の詳細を出展します。

(Source:NTTドコモEngadget日本版より転載)

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タグ:NTTドコモ(企業)自然災害 / 火災(用語)通信 / 通信網(用語)ドローン(用語)農業 / アグリテック(用語)物流 / ロジスティクス / 運輸(用語)日本(国・地域)

IoT開発支援システムを展開するcynapsがきのこ栽培遠隔管理システムでスマート農業分野に進出

IoT開発支援システムのcynapsがきのこ栽培遠隔管理システムでスマート農業分野に進出

IoT対応のCO2モニタリングやIoT開発を支援するプラットフォーム「LIMZERO」(リムゼロ)を展開するcynaps(シナプス)は7月6日、構築と運用のコストが従来と比較して大幅に削減できる、きのこ栽培環境の遠隔管理システム「Mushview」(マッシュビュー)を開発したと発表。すでに一部顧客農家に導入され、稼働しているという。

「普及価格」のきのこ栽培環境のトータル管理システム「Mushview」は、ハウス内の温度、湿度、大気中成分、明るさ、換気状況、排水状況などをデータ化し、複数ハウスの状況を遠隔で一元管理できる。

cynapsによると、従来こうしたシステムは、導入費が数千万円から数億円、運営費が月に数十万円から数百万円かかり、小規模~中規模の生産者に重い負担となっていたという。cynapsは、センサーの配置を最適化して個数を削減、費用対効果の高いデバイスを選択的に使うことで単価を削減、同社のIoT二酸化炭素濃度計「Hazaview」(ハザビュー)のソフトウェアモジュールを転用してソフトウェアの開発コストを削減するという方法で、導入から運用のコストを通常の数分の1から数十分の1に抑えることに成功したとしている。

今後は、「全国のきのこ栽培事業者向けにMushview販売を強化していく一方、Mushviewの技術とノウハウをきのこ以外の農作物に展開するべく、スマート農業・アグリテック分野の研究開発を推進していく予定です」とcynapsは話している。

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NTT西日本・愛媛大学・青空がドローン空撮画像解析で野菜の生育状況を見える化し農作物生産をコントロールする共同実験

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NTT西日本グループは7月5日、愛媛大学、農家の契約栽培の支援などを行う青空と共同で、廉価な汎用ドローンと空撮画像の解析を活用した「圃場分析技術」による農作物生産コントロールの実証実験を開始すると発表した。低コストなデジタル活用により圃場内の農作物の生産品質・収量の安定化、余剰生産による廃棄ロスを抑止し生産性の高い農業を実現する。

現在国内農業は、農業就業人口や農家数の減少により、少数の大規模農家が多数の圃場(ほじょう:畑、水田、牧草地など耕作地の総称)を管理して生産を行う形に移行しつつあるという。しかし広大な圃場では、エリアによって作物の育成にばらつきが出る。少ない労力ではきめ細かい管理が行き届かず、さらに天候不順の影響による収穫量の増減を吸収しようとすれば、常に余剰生産を行うことになり、大量の廃棄ロスが生じてしまう。生産の安定化と廃棄ロスの削減を実現するには、既存の手法では高価な機材を導入せざるを得ない。

そこでNTT西日本グループは、同社ドローン・ソリューションとクラウド基盤と、愛媛大学が開発した抵コストで導入できる圃場分析技術(特許出願中)とを組み合わせた農作物の育成状況を分析する仕組みを構築。圃場分析の結果に基づく施肥による、生産量と品質の安定化を目指した実証実験を行うことになった。

今回の実験には、「生産の安定性に向けた実証」と「廃棄ロス抑止に向けた実証」の2つの要素がある。生産の安定性では、岡山県真庭市にある青空のレタス圃場を廉価な汎用ドローンで空撮し、その俯瞰画像データからSPAD値(植物の葉の葉緑素含有量)を分析。レタスの葉緑素の推定濃度から生育状況を可視化し、それに基づき、必要な箇所に必要な量の施肥を(可変施肥)行うことで、生育、品質のばらつきの抑制を目指す。

廃棄ロス抑止では、レタスの生育状況の分析データ、天候データ、青空の栽培ノウハウを活かし、収穫可能時期と収量の予測から、需要に対する余剰量を早期に予測し、余剰分の販売先を事前に確保という、収益性に優れた営農手法の確立を目指す。

それぞれの役割分担は、NTT西日本がクラウド基盤の提供(分析環境)と収量予測モデルの作成、NTTビジネスソリューションズがビジネス性評価とドローン自動化撮影、愛媛大学が葉緑素推定アルゴリズムの提供と圃場葉緑素分布マップの作成、青空が圃場葉緑素分布に基づく可変施肥の実施、農作物品質および収量評価、収量予測ノウハウの提供となっている。2021年6月から2022年3月まで行われる。

NTT西日本グループでは、2022年度の「農業生産DXソリューションの事業化」を進めると話している。

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イチゴを傷つけずに収穫するロボットのTrapticが商業展開を開始

Trapticを初めて取り上げたのは、2019年のDisrupt SFのBattlefieldで決勝に残ったときだ。米国時間7月1日、サウスベイのロボティクススタートアップは、いくつかの大きな進展を発表した。Trapticは2021年7月初めに、イチゴを収穫するモバイルロボットの商業展開を開始する。

Trapticによると、米国のイチゴ生産者のトップ5に入るBlazer-Wilkinsonが、6月にこの技術の導入を開始し、システムは人間のピッカーと連携して仕事をしている。これは、パンデミックの影響で多くの農業関連企業が支援を求めていた2020年の試験運用に続くものだ。

新型コロナウイルス(COVID-19)以前にも、人手不足による廃棄物は非常に多かった。Trapticの調査によれば、米国のイチゴの約10%が収穫されずに畑で腐っており、年間で3億ドル(約334億8000万円)もの廃棄物が発生しているという。パンデミックの際には、H-2A労働者の渡航が制限されていたため、さらに大きな問題となった。

同社の飛躍は、2019年後期のパンデミック前に500万ドル(約5億6000万円)のシリーズAを未発表で調達したことの効果が大きい。そのときの投資家は、Collaborative Fund、Homebrew Ventures、そしてK9 Venturesだった。共同創業者でCEOのLewis Anderson(ルイス・アンダーソン)氏は「最新の資金はパイロットモデルを成功させるために使いました。商用機の設計と製造、そして弊社初の顧客が代価を払うデプロイを、どうしても成功させる必要がありました」と語る。それ以前の資金調達は、2017年のアーリーステージ300万ドル(約3億3000万円)、さらにその前は前年となる2016年の40万ドル(約4500万円)だった。同社の合計調達額は840万ドル(約9億4000万円)になる。

 

Collaborative FundのCraig Shapiro(クレイグ・シャピロ)氏は、TechCrunchへのコメントの中で「記録的な熱波によって農作業者が屋内に閉じ込められ、収穫ができなくなっている現在、Trapticの使命はこれまで以上にタイムリーなものになっています。」と述べている。「彼らのロボット式イチゴ収穫機が商業用の畑に投入されたことは、100億ドル(約1兆1160億円)規模のイチゴ市場にとって大きな前進であり、広く農業生産の未来を覗き見ることができます。Collaborativeは、作物の安全性を高め、フードサプライチェーン全体でより安全な雇用を創出する技術を支援できることを誇りに思っており、Trapticがそのビジョンを実現するための適切なチームであることを確信しています」と述べた。

Trapticのシステムは、ロボットのアームに3DカメラとAIによる視野を組み合わせて、傷つきやすい果実を破壊せずに収穫する。同社は現在、主にロボット工学とエンジニアリングの分野で約10人の従業員を抱えており、カリフォルニア大学バークレー校のPieter Abbeel(ピーテル・アブベル)氏とコーネル大学のSerge Belongie(セルジュ・ベロンジー)氏がアドバイザーを務めている。

関連記事:3Dのコンピュータービジョンと特製のロボットアームでイチゴの収穫を自動化

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Traptic農業資金調達

画像クレジット:Traptic

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

寒い季節でもミツバチの健康を保つ技術で収穫量を最大90%も増加させるBeeflow

ミツバチは私たち人間の農業や、地球上の生態系、そして地球上の生物種としての全体的な幸福のために、絶対的に必要不可欠な存在だ。しかしながら、ミツバチの個体数は減少しており、絶滅の懸念が大きくなっている

米国時間6月29日、スタートアップ企業Beeflowは830万ドル(約9億2000万円)のシリーズAラウンドの完了を発表した。同社はミツバチを救うことと、農家の経営効率を上げることの両立を追究している。

Beeflowは、独自の科学技術を用いて、特に寒い季節においてミツバチをより健康にする。膨大な研究の結果、ある種の植物性食品や分子をミツバチに与えると、ミツバチの死亡率が最大70%減少し、寒い気候での元気が増すことがわかった。

元気という表現は何のことを曖昧だと思うかもしれないが、それは当然だ。

ミツバチは地球上の天然の受粉媒介者だ。花を実らせるために、花粉をある場所から別の場所へと運んでいく。多くの農家では、養蜂家からミツバチを「レンタル」してもらい、農場で植物の受粉をやってもらっている。しかし、その効果はほとんどすべての面で測定することができず、ミツバチ自体を本当の意味でコントロールすることも不可能だ。

Beeflowの技術により、ミツバチは健康で丈夫になり、寒冷な気候の中でも、それがない場合に比べて最大7倍もの飛翔が可能になる。これは、ミツバチが農家のために効果的、効率的に作物を受粉させる可能性が高くなることを意味する。

同社は、ミツバチの死亡率を下げるだけでなく、ブルーベリーやアーモンドといった特定の作物を狙うようにミツバチを訓練する「ToBEE」という製品も提供している。

これらのBeeflowのプロダクトを組み合わせることで、農家は作物の収穫量を最大90%増加させられるという。

Beeflowのビジネスモデルは2つある。1つが自社で保有するミツバチを農家に貸し出して受粉させるというもの。もう1つが、養蜂家と協力して彼らをBeeflowのネットワークに参加させるというものだ。養蜂家はBeeflowの技術にお金を支払のではなく、農家との関係を権利として提供する。

アルゼンチン出身のMatias Viel(マティアス・ビエル)氏が設立したこのスタートアップは、主にラテンアメリカと米国西海岸で事業を展開しているが、今後は東海岸やメキシコにも進出する予定だ。

「最大の課題は、オペレーションとその実行です。非常に多くの需要があり、我々は今、チームとオペレーションの規模を拡大する必要があります」とビエル氏はいう。

今回の資金調達ラウンドはOspraie Ag Scienceがリードし、Future VenturesのSteve Jurvetson(スティーブ・ジャーベンソン)氏やJeff Wilke(ジェフ・ウィルク)氏、Vectr Ventures、SOSVのIndieBioとGrid Exponentialが参加した。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:Beeflow農業ミツバチ資金調達

画像クレジット:Beeflow

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(文:Jordan Crook、翻訳:Hiroshi Iwatani)