ウクライナの副首相が語る企業制裁と戦時中の政府運営について

ロシア軍がウクライナに侵攻を開始したのは3週間前だ。紛争は初日から多面的な様相を見せている。地上戦に加え、ウクライナ政府はデジタル戦線にもすばやく対応した。国家の代表者が暗号資産の寄付を求め、ハイテク企業にロシアでの販売やサービスを停止するように呼びかけ、デジタルレジスタンスを組織した。

ロシアの侵略に対する政府の反応を体現している公人の1人が、Mykhailo Fedorov(ミハイロ・フェドロフ)氏である。2019年、28歳でウクライナ初のデジタル変革担当大臣に就任した。またウクライナの副首相でもある。Oleksandr (Alex) Bornyakov(オレクサンドル[アレックス]ボルニャコフ)情報変革(Information Transformation)担当副大臣も、ウクライナ政府で重要な役割を果たしている。先週TechCrunchのIngrid Lunden記者は、ボルニャコフ氏にインタビューを行っている

ミハイロ・フェドロフ氏は、米国時間3月15日未明のTechCrunchによるインタビューで「戦争前のことですが、Zelensky(ゼレンスキー)大統領と一緒に考えていたのは、デジタル利用できる公共サービスという点で、世界で最も便利な国作りでした」と述べている。

現在、これらのプロジェクトの多くは保留されているが、ウクライナ政府はデジタル変革の取り組みによる効果をすでに実感しているところだ。フェドロフ氏は、デジタル外交の面でも積極的に活動している。彼は、ビッグテック企業が国際関係においてかなりの力を持つようになったことをよく理解している。だからこそ、彼らにウクライナの味方になってもらうために、あらゆる手を尽くしているのだ。

Zoomを使った幅広いインタビューの中で、フェドロフ氏は通訳の助けを借りながら、戦時中に政府に参加することがどのようなものかについての洞察を語った。なおインタビューの内容は、わかりやすく簡潔にするため、若干の編集が加えてある。

TechCrunch:いまどちらにいらっしゃいますか?現在のご自身の状況について教えてください。

ミハイロ・フェドロフ氏:私は活動のまさに中心にいます。セキュリティの関係上、所在地をお伝えすることはできませんが、すべてのプロジェクトについて、24時間休みなく、大統領のチームと連絡を取り合っていることは断言します。

数カ月前と今とでは、日常生活が大きく変わっていると思います。対ロシア戦争時の、日々の仕事と役割について教えていただけますか?

我々は非常に若い省庁です。ゼレンスキー大統領が当選したときに、彼のプログラムの重要な部分を実行するために設立されました。選挙前、私は大統領のデジタルキャンペーンの責任者でした。彼が当選した後、私たちはデジタル国家という共通のビジョンを実現するために力を合わせたのです。

ゼレンスキー大統領との戦争前のビジョンは、デジタルで利用可能な公共サービスという点で、世界で最も便利な国を作ることでした。私たちが目指したのは、ダブルタップでサービスが受けられるような行政です。お役所の干渉をできるだけ受けないように、半自動化するのです。つまり、みなさんが期待するような政府というよりも、Uberに近い存在になろうとしていたのです。

この危機的状況の中でウクライナの人々を支援するために、そうしたデジタル公共サービスを活用する方法はないのでしょうか?

公共サービスを立ち上げるための工場のようなものを作りました。それを可能にしているのが、1500万人のユーザーを持つ私たちのアプリです。また、この期間を通じて実装することができた、政府が運営するすべてのデータベースの相互運用と、新しいサービスを立ち上げて提供するために微調整された管理組織も、それを可能にしています。

例えば、この戦時中に、戦闘で大きな被害を受けた地域からの移住を余儀なくされた人たちに、現金を支給するなどのサービスを開始することができました。また、無料の公共テレビと無料のラジオを埋め込むこともできました。また、公式なルートで軍への募金を行えるようにしました。

敵の動きも追跡して報告できるサービスもあります。基本的にはクラウドソーシングによる情報提供ですが、戦争が勃発してからわずか数日でそれを開始することができました。

なぜなら、私たちの内部諜報機関は非常に特殊であり、誰もが持っているようなものではないからです。また戦時中に、誰であろうと、どこにいようと、どんな身分であろうと、内部移動と公共サービスを受けるための重要な情報をすべて網羅した追加書類を公開することができました。また、将来の手続きのために、基本的に戦争で損害を受けたり破壊されたりした場合に備える資産目録サービスにも取り組んでいます。

これらのサービスは、今いる場所からインターネットサービスにしっかり接続できることを意味しています。携帯電話、固定電話ともに接続の現状はどうでしょう?

通信産業のおかげで、今のところ非常に安定しているし、自信も持てるのだと言えるでしょう。24時間体制で働く彼らは、真のヒーローです。停電が発生すると、すぐに修理に駆けつけてくれます。

そのため、国土の大部分において安定したインターネット接続を維持することができているのです。また、EU圏内で最も多くのStarlink(スターリング)端末を保有しています。

軍と政府の両方から預かっている機密データについては、どうなさるつもりですか?現在データの拠点はウクライナ国内にあるのでしょうか?また、最悪の事態に備え、データを海外に移動する計画はあるのでしょうか?

デジタル国家を構築すると、露出度や攻撃界面が増えます。つまり、私たちは常にサイバーセキュリティに細心の注意を払い、真剣に取り組んできたのです。また、デジタル国家を構築していく中で、ロシア連邦から常にサイバー攻撃の標的にされてきました。

詳しくいうまでもなく、私たちのデータは安全だと言いたいと思います。バックアップもあります。データの整合性と安全性を確保する手段を備えています。つまり、何が起きようとも、ウクライナ国民のために信頼性の高いサービスを提供し続けることができるのです。

話題を変えて、対ロシアの企業制裁の話をしたいのですが、大臣はTwitter(ツイッター)やメディアで「欧米の企業は今すぐロシアでの販売を停止すべきだ」と企業に呼びかけていますね。このアイデアはどこから来たのでしょう、そして効果的だと思いますか?

私たちはこのプロジェクトをデジタル封鎖と呼んでいます。そして、この戦争に勝つためには、これが非常に重要な要素であると考えています。そして、将来的には、政府は古典的な政府ではなく、ハイテク企業に似てくるだろうと思っています。

デジタルプラットフォームは、複数の重要なサービスを提供しています。社会の仕組みにしっかり組み込まれてしまっているのです。このようなサービスを攻撃者から1つずつ取り除いていけば、彼らの社会構造に実際のダメージを与え、日常生活を送る上で非常に不愉快な思いをすることになるのです。

私たちはこれを、まったく新しい未踏の戦場と考えたいと思っています。そしてこれは、ロシアの発展を何十年も後戻りさせることになると予想される制裁を、補完する措置でもあるのです。

また、ハイテクビジネスは非常に大きな付加価値を生むと思っています。だからこそ、Tesla(テスラ)はGazprom(ガスプロム、世界最大の天然ガス企業)よりも価値があるのです。こうした付加価値を生み出す技術系の人材は、実はとても身軽でノマド的なのです。このような不利な条件をロシア内に生み出してしまえば、技術系の人材は他に移ってしまうことになるでしょう。

これが今回のデジタル封鎖を可能な限り徹底的かつ包括的に行う理由です。ロシアの戦車と兵士がわが国から撤退し、わが国民の殺戮を止める瞬間まで続けます。

副大臣のご意見として、ロシアでの販売停止やビジネス停止などが十分でなく、もっとやるべきことがある企業はあるでしょうか?

特に名前を挙げたいのはSAPですね。銀行や大企業にERPを提供しているドイツの会社です。基本的に、彼らはロシア企業にITインフラを提供し、またロシアで税金を納めることで侵略戦争に貢献しているのです。こうして彼らは、ウクライナ国民や民間人を殺害している軍隊を支持しているのです。

現在のウクライナのハイテク産業、ハイテクコミュニティについて教えてください。私たちは技術コミュニティで起きていることを多く取り上げていますので、ウクライナの技術者たちが今どのように反応しているのかを知りたいのです。

ウクライナには約30万人の技術系人材がいます。国際企業のほとんどは、ウクライナでの事業を安定させ、事業継続を確保することができました。難しいことではありますが、ほとんどの人が何とかやっています。

ブロードバンドインターネット、安全な場所、税制優遇、移動手段などを提供し、技術系企業のニーズに応えようと考えています。つまり基本的に、彼らに何か問題があったときに、ワンストップで対応できるような存在になることを目指しています。

昨日(米国時間3月14日)には、ウクライナ軍がClearview AI(クリアビューAI)の顔認識技術を利用しているという報道がありました。このClearview AIとの提携について、詳しくお話ししていただけますか?

現在、このプロジェクトは非常に初期の段階にあると言えます。進捗状況についてコメントする立場にはありませんが、結果が出れば、喜んで結果をシェアしたいと思っています。

Clearview AIを活用する場合、どのようなユースケースを想定なさっているのでしょうか。

まず最初に、これらのユースケースのほとんどは非公開のもので、公にお知らせできるものではないということをお断りしておきます。

でも、ちょっとだけお話しするなら、総務省との仕事があります。ウクライナ国内で殺害されたり、捕虜になったりしたロシア軍を特定しようとするものです。ご存知のように、ロシア政府は彼らの存在を否定し始め、書類なしで送り込んだりしています。

もう1つは、検問所を通過する人をチェックするユースケースです。もう1つは、行方不明者の捜索です。

関連記事:ウクライナ情報変革副大臣インタビュー「IT軍団と29億円相当の暗号資産による寄付」について語る

暗号資産による寄付についてもお聞きしたいのですが。暗号資産に関する戦略について、最新情報を教えていただけますか?

現時点で、5500万ドル(約65億2000万円)を調達することができました。そして、そのすべてがウクライナ軍へ振り向けられました。

我々は暗号資産にやさしい国家も目指しています。具体的な内容もお伝えできます。国会で仮想資産に関する法律が採択されました。数日のうちに大統領が署名して法制化されると思います。ですから、私たちはできるだけ仮想資産にやさしくするように努めています。そして、戦時中もこの取り組みを続けています。

ウクライナで暗号資産に関する新しい法律が程なく成立するというお話が出ましたね。政府のメンバーとして、現在どれくらい緊密に働いていますか?新しい法律をどのように成立させ、政府の他の部分とどのようにチームとして働いているのでしょう。

それはすばらしい質問です。戦時中は、政府は基本的にオーバードライブモードで動いています。私たちは24時間、土日も関係なく働いています。戦争前は会議は毎週開催でしたが、現在は毎日開催しています。

ちょうど、軍隊の勇敢な軍人たちが、土日祝日もなく昼夜を問わず国を守っているようなものです。私たちも同じようにやっています。

私たちは、軍事面でも、技術面でも取り組みを行っています。また、経済面でも取り組んでいます。わが国の政府は、経済の自由化を進め、経済におけるあらゆるハードル、障害、ボトルネックを取り除くことに特に力を注いできたのです。税制の簡素化も進めています。私たちは税関を開放していて、ああ、戦争にもかかわらず経済的に国を発展させようとさえしています。

現状で知りたかったことは、すべてお尋ねしたつもりです。もしよろしければ、毎週、あるいは2週間おきに定期的にお話しして、近況を共有しましょう。ひとます今回は、ご回答ありがとうございました。

もちろん、フォローアップ会議を企画したいと思います。あと、結論として、以下のことを記事に書いていただければと思います。

技術コミュニティ全体に感謝したいと思います。技術コミュニティが私たちの側、明らかに善い側を選んでくれたと信じているからです。私たちはそれを心で感じ、技術者コミュニティの行動で感じることができています、とても感謝しています。

画像クレジット:Future Publishing / Getty Images

原文へ

(文:Romain Dillet、翻訳:sako)

ドイツがカスペルスキーの利用を控えるよう警告、ロシアの侵攻で「相当程度」のサイバーリスク

ドイツ連邦情報セキュリティ局(BSI)は、ロシアによるウクライナでの戦争が続く中、カスペルスキー・アンチウイルスソフトウェアがサイバースパイに利用されたり、サイバー攻撃を仕掛ける恐れがあるとして、さまざまな組織に対して警告を発した。

当局はカスペルスキーの使用を明確に禁止したわけではないが、ドイツのさまざまな組織に対し、モスクワに本社を置く同社製の製品を、ロシア以外のベンダーの代替ソフトウェアに変えるよう促した。また、ロシアのウクライナにおける軍事・情報活動や、その欧州、NATO、ドイツへの脅威は「IT攻撃が成功するリスクが相当程度ある」ことを意味していると警鐘を鳴らしている。

「ロシアのITメーカーは、自ら攻撃的な作戦を実行したり、意に反して標的とするシステムへの攻撃を強いられたり、それとは知らずにサイバー作戦の犠牲者としてスパイされたり、その会社の顧客に対する攻撃の道具として悪用される可能性がある」とBSIは声明で述べた。また、カスペルスキーなどのアンチウイルスソフトはシステムに深くアクセスするため、そのメーカーは自社のサーバーへの接続を暗号化し、検証不可能な状態で恒久的に維持するはずだと説明した。「セキュリティに特別な関心を持つ企業や当局、重要なインフラの運営者は特に危険にさらされている」とも述べている。

BSIは、攻撃が成功した場合、消費者が「最後の標的」になる可能性が高いものの「巻き添え」被害や波及的に被害者になる可能性もあると付け加えた。

BSIはこの警告を「起こりうる危険に対する認識を高めることのみが目的」だとしたが、すでにドイツの組織、例えばサッカークラブのEintracht Frankfurt(アイントラハト・フランクフルト)などが、カスペルスキーとの関係を断つに至っている。「私たちはカスペルスキーの経営陣に対し、スポンサー契約を直ちに終了することを通知しました」とクラブの広報担当社であるAxel Hellmann(アクセル・ヘルマン)氏はプレスリリースで述べた。「我々はこの展開を非常に残念に思っています」。

イタリアのコンピュータセキュリティインシデント対応チーム(CSIRT)も、カスペルスキーについて明確には言及していないが、ロシア企業やロシアとつながりのある企業から提供されているテクノロジーを緊急にリスク評価するようさまざまな組織に呼びかけている

カスペルスキーは、BSIの決定は、同社製品の技術的な評価に基づくものではなく、政治的な理由に基づくものだと考えていると述べた。

カスペルスキーの広報担当者であるFrancesco Tius(フランチェスコ・ティウス)氏はTechCrunchに対し「私たちは、パートナーや顧客に対して、製品の品質と完全性を保証し続けるとともに、BSIの決定について明らかにし、同社や他の規制当局の懸念に対応するための方法を模索するつもりです」と述べている。「カスペルスキーは民間のグローバル・サイバーセキュリティ企業であり、民間企業として、ロシアやその他の政府とは関係がありません」。

「私たちは、平和的な対話が紛争を解決する唯一の可能な手段であると信じています。戦争は誰にとっても良いものではありません」と同社は付け加えた。

この声明は、同社のCEOであるEugene Kaspersky(ユージン・カスペルスキー)氏の同様のコメントに続くものだ。同氏は2022年3月初め「歩み寄り」につながる交渉を歓迎するとツイートし、怒りの反応を引き起こした。ロシアでは最近、ウクライナにおけるロシア政府の軍事作戦を「戦争」または「侵略」と呼ぶことをジャーナリストに禁じる法律が施行されたが、これがロシアに拠点を置く企業に適用されるかどうかは不明だ。

カスペルスキーとロシアとのつながりは以前から知られているが、長い間論争の種となってきた。トランプ政権は2017年、同社とロシア政府とのつながりが疑われることを懸念して、政府機関がカスペルスキーのソフトウェアを使用することを禁止した。翌年には欧州議会が、同社とロシア情報機関とのつながりが疑われることから、同社のソフトウェアを「悪質」と分類する決議を採択した

画像クレジット:Andreas Rentz / Getty Images

原文へ

(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

HackerOneがウクライナのハッカーへのバグ報奨金支払いを停止

ウクライナのハッカーやセキュリティ研究者によると、バグ報奨金制度プラットフォームのHackerOne(ハッカーワン)は、場合によっては数千ドル(数十万円)にもなるバグ発見・報告の報酬金を保留し、ハッカーが報酬を引き出せないようにしているという。

HackerOneのアカウントを持つ複数のハッカーや研究者は、2022年2月末のロシアのウクライナ侵攻にともなう経済制裁と輸出規制を理由に、HackerOneが支払いをブロックしているが、自分たちには制裁は適用されないとツイートしている。

HackerOneのサポート担当者がセキュリティ研究者のVladimir Metnew(ウラジミール・メットニュー)氏に送ったメールには「ウクライナ、ロシア、ベラルーシにお住まいの場合、すべての通信と取引(スワッグの発送を含む)は当分の間、一時停止されます」とあり、メットニュー氏はその文面をツイートしている。ウクライナ人だが現在は欧州連合内にいるメットニュー氏はアカウントが凍結されているとTechCrunchに語った。「ウクライナから登録した人全員への支払いをブロックしたのだと思います」と同氏は話した。

バグ報奨金プログラムを展開するHackerOneは、セキュリティバグを発見・報告するハッカーやセキュリティ研究者と、製品やサービスの修正を依頼する企業の仲介を行っている。2020年にHackerOneは1億700万ドル(約126億円)超のバグ発見報酬金を研究者に支払い、彼らの多くはその収益を収入源としている。

ウクライナに残っている他のハッカーや研究者からも「口座が凍結された」「資金を引き出せない」といった同様の状況が報告されている。発見したバグTechCrunch定期的に報じられているウクライナのセキュリティ研究者Bob Diachenko(ボブ・ディアチェンコ)氏は、2月以降の収益3000ドル(約35万円)が現在保留されているとツイートで述べた。

HackerOneからの明白な公式連絡がなく、ウクライナ人全員への支払いを止める動きは怒りと混乱をもって受け止められている。HackerOneがどのような制裁や輸出規制を指しているのかは不明だ。米国、欧州連合、その他いくつかの同盟国は、ロシアとベラルーシに対して厳しい経済制裁を科し、現在分離主義のグループが保持しているウクライナ東部のドンバス地方や、2014年にロシアに併合されたクリミアに対する禁輸措置も行っている。しかし、ウクライナはそうした制裁の対象ではない。

影響を受けているハンドルネームkazan71pのあるウクライナ人ハッカーは「クリミアやドンバス出身ではない【略】あなたはすべてのウクライナ人のアカウントを停止し、国全体を制裁下に置いただけだ」とHackerOneに言及したツイートで述べた。

HackerOneは、ウクライナのハッカーや研究者への支払いをブロックした理由や、適用されると考えている特定の制裁を引用していない。TechCrunchが本稿公開の数時間前にHackerOneに連絡を取ったところ、同社の広報担当者はすぐにコメントしたり質問に答えたりすることはできなかった。詳細が分かり次第、更新する。

アカウント凍結は、HackerOneのCEOであるMarten Mickos(マーチン・ミコス)氏が、制裁対象国、特にロシアやベラルーシに住むハッカーの収益を慈善事業に「再ルート」すると述べたた頃に実施されたようだ。同氏はツイートのスレッドでそのように発言し、そのスレッドはすでに削除されている。

xnwupというハンドルネームのあるハッカーは、HackerOneが2万5000ドル(約295万円)の収益を「私がベラルーシ市民だから」奪っていると述べた。ウクライナへの支持を表明しながらも、ベラルーシ政権に反対する発言で安全が脅かされることを恐れたこのハッカーは、自分たちの収益は「長年の努力の結果」だと語った。

ミコス氏は新しいツイートスレッドで資金のルート変更についてのコメントを撤回し、今度はハッカーの許可を得た場合にのみハッカーの報酬を寄付することを申し出た。

画像クレジット:Alexandre Dulaunoy / Flickr

原文へ

(文:Zack Whittaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロシア、脅迫どおりInstagramのアクセスをブロック

ロシアは現地時間3月14日、Meta(メタ)傘下のInstagram(インスタグラム)をブロックするという脅迫を実行し、同国のユーザー数千万人へのアクセスを遮断した。

ロシアではInstagramは人気だ。Sensor Towerのデータによると、Metaのアプリの中で、ユビキタスなメッセージングサービスWhatsApp(ワッツアップ)に次いで2番目に人気がある。2014年以降、ロシアのApp StoreとGoogle Playで合わせて1億6600万回インストールされていて、Facebook(フェイスブック)の3倍人気がある。

ロシア政府は48時間の「移行期間」を経てInstagramへのアクセスを制限すると同国の検閲機関Roskomnadzorが発表した後、InstagramのトップAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏は同国の8000万人に影響を与えるロシアの行動を非難した。

「ご存知のように、Meta Platforms Inc.は3月11日、同社のソーシャルネットワークFacebookとInstagramにロシア市民に対する暴力の呼びかけを含む情報の投稿を許可するという、前例のない決定を下しました」とRoskomnadzorは3月11日のブログ記事で、Metaがロシア人に対する暴力を助長したと非難している。

ロイターは先週、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえてMetaがコンテンツポリシーを密かに調整し、ウクライナ国内でのロシア兵に対する暴力の呼びかけを認めていると報じた

同社のグローバル問題担当のNick Clegg(ニック・クレッグ)社長は、このポリシーの変更を「自衛の表現としての言論に対する人々の権利を守る」ための一時的な変更と位置づけ、これを擁護した

「事実、もし私たちが何の調整もなしに標準的なコンテンツポリシーを適用した場合、私たちは今、侵攻する軍に対する抵抗と怒りを表現する普通のウクライナ人のコンテンツを削除することになり、それは当然受け入れ難いとみなされるでしょう」とクレッグ氏は書いている。

ロシア政府によるInstagramの制限は厳しいように聞こえるが、経験豊富なユーザーはブロックされた同アプリにアクセスするためにVPNとTorを使って自分の位置情報を隠す方法を見つけることができる。Twitter(ツイッター)は先週、ロシアの規制を考慮して独自の検閲回避策を開始し、ユーザーを専用Torバージョンに誘導している。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

原文へ

(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

ベラルーシ当局がロシア語版ウィキペディアの主要編集者を逮捕、ロシア「フェイクニュース法」に抵触?

ベラルーシ当局がロシア語版ウィキペディアの主要編集者を逮捕、ロシア「フェイクニュース法」に抵触?

berean via Getty Images

ベラルーシの報道機関Zerkaloが、ロシア語版Wikipediaのトップ編集者マーク・バーンスタイン氏がベラルーシ当局に逮捕されたと報じました。バーンスタイン氏はロシアが先日定めた「フェイクニュース法」に違反したと伝えられています。

ロシアのフェイクニュース法は外国人も対象とされ、ロシア軍に関する「誤情報」、特にウクライナ侵攻に関する虚偽の情報(ロシア政府は特別軍事作戦と呼称)を拡散した者に対しては最長で禁固15年に処される可能性があるとされます。施行前後の3月4~10日にはウクライナ情勢を伝えるため現地に入っていた英BBCなどが取材活動を一時的に取りやめるに至っていました。

今回バーンスタイン氏はベラルーシの組織犯罪対策当局であるGUBOPiKに拘束されたとされ、逮捕直前にはバーンスタイン氏のWikipediaにおけるハンドルネームや勤務先といった情報がGUBOPiKの公開Telegramチャンネルに流れていたとされます。またこのチャンネルではバーンスタイン氏の逮捕の様子をとらえた動画も共有されたとのこと。

ただ、ロシアの法律をベラルーシ当局が適用して誰かを逮捕することは、普通ならできません。The Vergeはこの逮捕が一体何の罪状によるものなのか、どの記事がロシアのフェイクニュース法に抵触するのか定かではないとしています。

ロシアはウクライナ侵攻に関する政府公式の発表と異なる情報やその発信源の取り締まりを強化しており、フェイクニュース法によってロシア国内の独立系メディアを一掃しています。その独立系メディアのひとつである「Novaya Gazetaの編集長ドミトリー・A・ムラトフ氏はNew York Times紙に対して「ロシア政府によるプロパガンダ以外の情報はすべて削除される」と述べました。

Wikipediaを展開するWikimedia財団の広報は「財団の信頼と安全と人権のチームは、ウクライナで進行中の危機を監視してきました」と述べ「彼らの安全確保とニーズに対応するために、各地域の我々のコミュニティと連絡を密にしている」とし、状況を注意深く見守っていると述べました。

(Source:The VergeEngadget日本版より転載)

ロシア、アップルとグーグルに対し「野党支援アプリの削除か刑務所送り」と脅迫との報道―2021年秋から抑圧の下地作り

ロシア、アップルとグーグルに対し「野党支援アプリの削除か刑務所送り」と脅迫との報道―2021年秋から抑圧への下地作り進行

Mikhail Klimentyev/TASS via Getty Images

ウクライナ侵攻が続くなか、ロシア当局のハイテク大手に対する規制も強まり、プロパガンダを抑制しようとしたFacebookやTwitterも国内でブロックされました。そうした圧力は侵攻以前からあり、アップルやGoogleにプーチン政権にとって不都合なアプリを消すよう脅迫していたことが報じられています。

これはロシアの野党指導者で投獄されているアレクセイ・ナワリヌイ氏が構想したアプリ「Smart Voting」をめぐってのことです。本アプリはロシア政府や与党「統一ロシア」に選挙で対抗するために、最も有利な候補者を支援するものでしたが、ロシア当局はアップルとGoogleにアプリストアから削除するよう要請。はじめ両社とも従いませんでしたが、結局は圧力に屈してどちらも削除しています

米The Washington Postによると、アップルとGoogleのモスクワにいる幹部らは、このプーチン大統領が嫌っているアプリに関して、9月に直接脅迫されたとのこと。それぞれの幹部の自宅に捜査官が現れ「24時間以内にアプリを削除しないと刑務所に入れるぞ」と脅したと伝えられています。

そのうちGoogleは宿泊客と警備員が近くにいればある程度は守られると考え、速やかに幹部を偽名でホテルに移したそうです。が、捜査官は部屋に現われて「まだ時間は残っている」と告げたとのこと。この人物は、秘密警察KGBの流れを汲む治安機関FSB(ロシア連邦保安庁)の職員だと見られています。

この脅迫戦術は功を奏し、アプリは数時間のうちにGoogle PlayとApp Storeから削除されたと報じられています。その後にアップルを初めとしたハイテク大手に現地オフィスを開設を命じた(各企業や従業員らがロシアの法制度や政府の要求に対してより脆弱になる)ことも合わせて、The Washington Postは「現在ロシアで進行中の、ソ連式に表現の自由を抑圧する下地となった」と分析しています。

アップルはロシア政府の要求通りに現地オフィスを開設したとの報道もありましたが、他にも様々な圧力がかけられていたとすれば、やむを得なかったのかもしれません。

(Source:The Washington Post。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

YouTubeがロシア国営メディアを世界的にブロック

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対応するポリシーをさらに拡大し、YouTube(ユーチューブ)はクレムリンの支援を受けたメディアを、欧州だけでなく世界的にブロックすると発表した。欧州では現地時間3月2日以降、ロシア国営メディアであるRT(旧ロシア・トゥデイ)とSputnik(スプートニク)、およびその子会社が、欧州連合(EU)による制裁として、放送や配信を禁じられている

このコンテンツをブロックするYouTubeの措置はいかなる法的義務をも上回るものだが、まったく前例がないわけではない。Apple(アップル)はウクライナのMykhailo Fedorov(ミハイロ・フェドロフ)副首相から要請を受け、世界中のApp Store(アップ・ストア)からRTとスプートニクのアプリを引き上げた。フェドロフ副首相はアップルのTim Cook(ティム・クック)CEO宛に、ロシアでのデバイス販売の停止とApp Storeへのアクセスを完全に遮断することを求める書簡を送っているアップルはロシアでの製品販売も停止した)。

つまり、YouTubeの文言は、EUが制裁した(合計で)6つのRTとスプートニクの事業を禁止するよりも、さらに進んでいく可能性を示唆しているということだ。同社は現在「ロシアの国営メディアとそれに関連するYouTubeチャンネルへのアクセスを、全世界的にブロックしている」と書いている(なお、TechCrunchでは禁止の範囲についての明確化を同社に求めているところだ)。

YouTubeがツイートで発表したポリシーの更新によると、ロシアの国営メディアに対するYouTubeのブロック拡大は「直ちに実施」されるものの、この変更が有効になるまで時間がかかる可能性があると注意を促している。同プラットフォームは「システムの立ち上げには時間がかかることが予想されます」と書いている。

もう1つの新たなステップとして、YouTubeはそのコミュニティガイドラインにある特定のポリシーから、ウクライナに焦点を当てた執行を実施するという。それは「十分に立証されている暴力事件」を、否定、軽視、または些細なものとして矮小化するコンテンツを禁止する規定だ。「私たちは現在、このポリシーに違反するロシアのウクライナ侵攻に関するコンテンツを削除しています」と、YouTubeは述べている。

ここまで執行を強化することは、おそらく初めてであり(ポリシー自体は新しいものではないが)、これはウクライナ国内で起こっていると報じられている現実を否定するため量産され、急速に流布されているロシアのプロパガンダに対応することを意図しているものと思われる。

例えば、ウクライナ南部の港町マリウポルがロシア軍に砲撃され、産科・小児科病院が爆破された最近の事件では、ロシアのメディアはすぐに陰謀論の標的にして、写真や動画に写った犠牲者が俳優であるとか、怪我をした演技をしていると示唆した。さらに、ウクライナ軍兵士の大隊が狙撃位置についたため、病院から患者や職員がいなくなり、病院そのものが正当な標的となったという、同じ様な偽りの主張も行っている。

TechCrunchは、この執行発表に関するより幅広い背景についても、YouTubeに質問を送っている。

YouTubeは、ウクライナ関連の措置を講じた最近の更新を実施して以降、ヘイトスピーチポリシー、誤報に関するポリシー、映像コンテンツなど、多くのポリシーに違反しているとして、1000以上のチャンネルと1万5000以上の動画を削除したと発表している。

また、YouTubeは戦争に関する「質の高い」情報を増幅させる、つまりクレムリンのプロパガンダよりも真実の報道が優先されるようにするという、以前発表した施策の進捗を示したいとも考えている。ユーザーをこのコンテンツに誘導する(ホームページのニュース速報と「トップニュース」セクションを通じて)変更を行って以来、ウクライナの「信頼できるニュースソース」の視聴回数は約1700万回を超えたと述べている。

ロシアのYouTubeユーザーを対象とするさらなるステップで、YouTubeは同国のYouTube広告およびGoogle(グーグル)広告を一時的に停止した措置を拡大し、ロシアのユーザーが同プラットフォーム上で収益化できる方法のすべてをカバーするようにした、つまり収益を生み出す機会をすべて断ち切ったことも認めた。これまでYouTubeは、ロシアのユーザーにいくつか収益化するための選択肢を残していた。

Googleはまた、ロシアの銀行を標的とする西側の制裁措置によって生じた「決済システムの混乱」を理由に、ロシアにおけるGoogle Play(グーグル・プレイ)ストアでの課金や、YouTubeの支払いシステムを一時的に停止すると、米国時間3月10日に発表している

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ウクライナ出身のVC、故郷の難民のために支援金を募って送金

「今まであなたが会った中で最も幸運な人の1人だ」とニューヨークのオフィスで語るのはAlex Iskold(アレックス・イスコルド)氏だ。イスコルド氏はベンチャー企業2048 Venturesの共同創業者でマネージングパートナー。それ以前は、ニューヨーク市のプログラムのマネージングディレクターとしてTechstarsに5年間勤務し、100社以上のスタートアップに投資や支援を行った。

また、イスコルド氏は膨大な人脈を培ってきた。その人脈を2年ぶりに活用する。活用するのは今回が2回目で、1回目はパンデミック時に仲間のVCであるMinda Brusse(ミンダ・ブリュッス)氏とともに友人や知人に呼びかけて困っている家族に資金を提供した。ニューヨークタイムズ紙が表現したように、一種のヒューマンブロックチェーンを形成した。イスコルド氏によると、この活動は最終的におよそ1000世帯に300万ドル(約3億5000万円)を届けたという。

そして今、同氏は「1K Project」と名付けたこの活動を復活させ、国外に逃れたウクライナ難民、そしてウクライナ国内に取り残され、突然職を失い、もはや家と呼べる場所もない家族に必要な支援を提供しようとしている。

「1K Projectを再開することになるとは思ってもいませんでした。しかしロシアのウクライナ侵攻が何を意味するのかを理解するやいなや、電話をかけ始めました」と同氏はいう。

1カ月前には想像もつかなかったのに、すでに200万人超が避難し、1000億ドル(約11兆7000億円)超の被害が出ているこの戦争に、多くの人と同様、イスコルド氏も恐怖を感じている。しかし、それは個人的なことでもある。同氏はウクライナ人だ。人生の最初の19年間をウクライナで過ごし、今でも多くのいとこや友人、知人がウクライナにいる。実際、3番目のいとことその家族は、ロシア軍がウクライナに侵攻してすぐに出国した。その一方で、その他の人はウクライナ国内にとどまっている。というのも、家族の中に出国が禁じられている18〜60歳の息子や夫がいるためだ。

イスコルド氏のネットワークは、サポートの呼びかけにすばやく反応した。11日前、ウクライナの人々に支援金を届けるために1K Projectを復活させるとツイートして以来、開発者からデータアナリストまで30人のボランティアによるネットワークが活動を開始し、スポンサーと支援を受ける側が連絡を取り合うまでの道のりをスムーズにするために動き出した。

「私たちが構築した最も強力なものは、スポンサーと家族の迅速な申請を可能にする分散型ネットワークです。関心のある人は応募用紙を私たちのサイトで見つけることができます。スポンサーには軽い審査、支援を受ける家族の側にはより厳しい審査があります。しかし、スポンサーと家族が承認されると、両者はマッチングされ、スポンサーは(唯一の送金サービスである)Wise.comを通じて家族に資金を提供する方法をテキストまたは電子メールで指示されます」とイスコルド氏は説明する。

1000ドル(約11万7000円)単位の寄付は、税金の控除対象ではない。もっと多額の寄付をして税控除を受けたい人のために、財政スポンサーとして「OpenCollective.com」という団体を利用しているとイスコルド氏は説明した(例えば5世帯以上に寄付する場合、1K ProjectはOpenCollectiveへの寄付の方法を案内する。そしてOpenCollectiveを通じて1K Projectが各世帯に寄付を配分する)。

より多くのボランティア、そして寄付者が必要だ。1K Projectは「3人以上の子どもを持つ家庭を支援することに重点を置いている」とイスコルド氏は説明する。ここには紛争地域にいる女性、子どもを連れて避難している女性も含まれ、すでに対応しきれないほどの需要がある。「私たちにはランキングアルゴリズムがあり、間もなく1200世帯に資金を提供する予定です」と同氏はいう。「しかし、1万2000もの応募があり、全員に資金を提供することはできません。十分な資金がないのです」。

資金がどのように使われているかについては「実に多くの使用例があります」とイスコルド氏は話す。同氏はウクライナの銀行システムが完全な混乱の中でも機能し続けていることを評価している。

資金を使ってより安全な地域に移住した家族もいれば、すでにウクライナ国外にいて、子どものための食料を購入するのにこの資金を使う家族もいる、と同氏は説明する。

どのケースも家族は非常に困難な状況にあるという。「ある日はソファに座っていたのに、翌日には爆撃で家が完全に吹き飛ばされ、住むところもなく、Tシャツ1枚でそこから脱出する方法を考えなければならない、というような家族の話をたくさん聞いてきました」。

そうした話はイスコルド氏を苦しめる。「お礼のメッセージをもらって、いつも泣いているんです」。さらに悪いことに、同氏の広範にわたる熱心なネットワークにできることは限られていることを同氏は知っている。「軍用の弾薬や医療品など、私たちが支援できない問題が山積しているのです」。

そんな中、同氏は自身が知っている人のことを心配している。特に、彼らが追跡困難な状態に陥るときは心配だ。「(スマートフォンに)緑の点が表示されるときとされないときがありますよね?」。

その一方で、イスコルド氏は自分にできることを行い、少しずつ前進しているようだ。1K Projectを新たに立ち上げてから、人々は100万ドル(約1億1700万円)を800超の世帯に寄付した。すべてを一瞬で置き去りにした「難民にとって非常に役立つ」サポートだ。

しかし、そのニーズはさらに膨らみそうだ。「ウクライナ国内で避難生活を送る家族が運良く難民センターに入れた場合、多くのものが提供されます。難民センターに入れない家族は、食べ物や助けが必要なのです」とイスコルド氏は話した。

画像クレジット:Beata Zawrzel/Anadolu Agency / Getty Images

原文へ

(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロシアでテック企業が販売を停止するなか、スマホやクラウドサービスなどのビジネスへの影響は?

ロシアがウクライナを攻撃して以来、ここ数週間で、さまざまな業界の企業とともに、多くのテック企業がロシアでの営業を停止していることを耳にした。これは幅広い反響を呼んでおり、企業がロシアで通常どおりビジネスを続けることはできないというメッセージであることは明らかだが、これらの行動は、営業を停止した企業に実際にどのような経済的影響を与えるのだろうか?

IDCが今週初めに発表したレポートで指摘したように、ウクライナが攻撃を受けており、ロシアに制裁が適用されているため、その地域で事業を行うテクノロジー企業に何らかの影響を与えることは必至だ。

「紛争によってウクライナの事業活動は停止しており、ロシア経済は欧米の制裁の初期の影響を受けている。2022年には現地市場の需要は2桁の縮小し、両国の技術支出に強く影響するだろう」と、同社は書いている。

しかし、純粋な数字で見ると、ロシアとウクライナを合わせても、大国ではあるものの、世界の技術支出全体に占める割合はそれほど大きくはない。実際、IDCの報告によると、この2カ国を合わせても、ヨーロッパの技術支出の5.5%、世界の技術支出のわずか1%を占めるに過ぎない。

Canalys(カナリス)は、ロシアでの販売を停止していないテック企業は、停止するようにプレッシャーを受けていると述べている。「Accenture(アクセンチュア)、Apple(アップル)、Cisco(シスコ)、Dell(デル)、HP、HPE、Oracle(オラクル)、SAP、TSMC(半導体)などが、ロシアとの関係を断つ(あらゆるセクターの)国際企業のリストに名を連ねている。そうしない企業は、世界の情勢にますますそぐわなくなる」と、同社は今月初めに発表した報告書の中で述べている。

Canalysによると、ロシアはヨーロッパのスマートフォン市場の20%、PC市場の8%を占めている。AppleはロシアのPC市場の17%を占め、Lenovo(レノボ)とリードを分け合っている。HPは15%でわずかに及ばない。

画像クレジット:Canalys

Canalysによると、この数字はこれらの企業の売上高全体の約2%に相当する。市場をリードする3社ともロシアでの販売を停止している。中国企業であるレノボが、その決定を覆すよう中国政府から圧力を受けているとの報道は注目に値する。

スマートフォンについては、中国のスマートフォンメーカーのXiaomi(シャオミ)が31%で市場をリードし、Samsung(サムスン)が27%で続き、Appleは11%で3位に大きく後退している。

画像クレジット:Canalys

これは、Apple全体の売上高の2%、Samsungの4%を占めている。Apple、Samsungともにロシアでの販売を停止している。

Canalysは、ロシアがこの問題を解決するために、中国の技術に目を向ける可能性があると推測している。「西側諸国が技術輸入に制裁を加えているため、ロシアは(制裁に反対すると表明している)中国にもっと目を向けると予想される。特にロシア政府は、西側ブランドを置き換え、主要技術へのアクセスを維持しようと急いでいる。欧米の貿易禁止措置の犠牲となったHuawei(ファーウェイ)などの中国ベンダーが勝者となる可能性が高い」と、同社は書いている。

しかし、Lenovoの状況が示すように、欧米の顧客と大きな取引をしている中国企業にとっては、より複雑な状況になっている。

Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)の3大クラウドベンダーはどうだろう。クラウド市場を調査するSynergy Research(シナジーリサーチ)の主席アナリストであるJohn Dinsdale(ジョン・ディンズデール)氏は、ロシアがこれらの企業のビジネス全体の1%に満たないことを指摘している。

「AWS、Microsoft Azure、Google Cloudの観点からすれば、ロシアの顧客を切り離してもほとんど影響はないでしょう」と、彼はいう。

しかし、それらの顧客にとっては、やはり痛みをともなう可能性がある。「もちろん、切り離されるかもしれない顧客にとっては、その影響は非常に意味のあるものになるかもしれません。ロシアは特に発展した市場ではありませんが、クラウドベースの業務に大きく移行した企業にとって、その後に軌道修正するのは大変なことです」と、同氏は述べた。

CanalysのアナリストBlake Murray(ブレイク・マレー)氏もこれに同意していますが、スマートフォンやPCと同様に、制裁によって窮地に立たされた顧客が中国のクラウド大手に目を向ける可能性もあると述べている。「全体として、ロシアの企業はYandex(ヤンデックス)のようなロシアのCSPや、国内にデータセンターを持つ中国のプロバイダーに軸足を移すと予想されます。また、Officeのようなソフトウェアをロシアで登録された同等品に置き換えることも検討されるでしょう」と述べている。

それは簡単なことではない。しかし、マレー氏によると、ロシア国内の多くの組織が、少なくともこの方向で移行作業を始めているとのことだ。

SaaS企業への影響も気になる。ディンズデール氏は、SaaS市場はより細分化される傾向にあり、国内にもより多くの選択肢があると述べている。とはいえ「ロシアは、世界のSaaS売上高の1%未満しか占めていない小さな市場です。MicrosoftとSalesforce(セールスフォース)の両社にとって、ロシアはSaaSビジネスの1%未満に過ぎません」。

最後に、インターネットバックボーンプロバイダーがロシアから撤退すると報じられており、Cogent(コジェント)とLumen(ルーメン)が今週、事業を停止することを発表した。

「我々が提供するビジネスサービスは、我々の物理的存在と同様に極めて小規模で、非常に限定的なものです」と、Lumenは声明で述べた。「しかし、我々はこの地域でのビジネスを直ちに停止する措置をとっています」。

Cogentは公式声明を出していないが、ロシアでの事業を停止していることは広く報道されている。どのような影響があるかは不明だが、Cogentのネットワークマップを見る限り、ロシアにデータセンターはないようだ。

それでも、インターネットアクセスが遮断されることは、国外のニュースを得ようとする人々や、ビジネスを行おうとする企業にとって、深刻な影響を及ぼす可能性がある。ディンズデール氏が指摘するように、インターネットに接続できなければ、どんなクラウドサービスにもアクセスできないので、深刻な影響を及ぼす可能性がある。

画像クレジット:kynny / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Yuta Kaminishi)

英国で制裁を受けたチェルシーFCのロシア人オーナー、Truphoneの株式に影響を与える「関連利益」なし

サッカー・プレミアリーグで大成功を収めているチェルシーのオーナーでロシアのオリガルヒ(新興財閥)のRoman Abramovich(ローマン・アブラモビッチ)氏は今週、ロシアのウクライナへの正当な理由なき侵攻を理由に、英国政府が自身などに科したロシア制裁の一環としてクラブの資産を差し押さえられた。しかし、現在のところ、アブラモビッチ氏のテクノロジーとの結びつきには触れられていない。同氏を主要な資金提供者とする2つのファンドから2億ドル(約233億円)超を調達し、事実上その2つのファンドを主要オーナーとしていることを明らかにしているTruphone(トゥルーフォン)は、アブラモビッチ氏と同社の関係は「間接的」であるため、現在、制裁は同社のビジネスや持ち株に影響を与えていないと述べている。

Truphone Limitedの顧問弁護士Rachel Chapman(レイチェル・チャップマン)氏は「3月10日に英国政府によって、Truphoneと間接的な関係を持つローマン・アブラモビッチ氏に制裁が科されたことを承知しています」とTechCrunchに提供した声明の中で述べている。「しかしアブラモビッチ氏は、英国の制裁法の目的に照らしてTruphoneとの『利害関係』はありません。これは、Truphoneの事業が通常通り続くことを意味します。Truphone がいかなる制裁措置の対象にもなっていないことは強調する必要があります。法的なアドバイスを受けながら、常に状況を監視しています」。

このスタートアップの2大株主が事実上アブラモビッチ氏の投資ビークルでありながら、アブラモビッチ氏自身から手の届かない距離にいるという事実は、テック業界で資金調達を追跡することがいかに難しいかを浮き彫りにしている。特に「直接」投資と「間接」投資、つまり公式にも非公式にも制裁の影響を受けるものを紐解くことの難しさがある。

アブラモビッチ氏は、従来のネットワークを迂回したグローバルな音声・データ接続を可能にするeSIMやその他の技術を開発する通信技術企業であるTruphoneに、自身が出資する投資ビークルを通じて、数年にわたって一連の投資を行ってきた。

2013年に同氏の会社Minden(ミンデン)は7500万ポンド(約115億円)のラウンドをリードし、うち7000万ポンド(約107億円)を出資した。2018年には、今度はMindenとVollin Holdings(ヴォリン・ホールディングス)の2つのアブラモビッチ氏所有の会社を通じて、Truphoneはさらに5400万ポンド(約82億円)を受け取っている(1800万ポンド[約27億円]を前払い、残りを「条件付き」で後払い)。そして2020年には、さらに3000万ポンド(約46億円)をやはりVollinとMindenから受け取っている。

PitchBookによると、VollinはTruphoneの72.45%、Mindenは22.77%を所有しており、両社には他にアクティブな投資先はない。Truphoneの評価額は2020年に5億1600万ドル(約603億円)とされている。

(補足:これらの投資をTechCrunchが取り上げた際、Truphoneは投資会社周辺の詳細を控えめにしようとした。広報担当者から「記事で名前を出さないでくれ」と少し慌てた様子の電話が筆者にかかってきて、自身の関与を軽くしようとしたのを覚えている。まったく怪しくない)

アブラモビッチ氏は先週、状況を踏まえてチェルシーFCを売りに出し、ウクライナの救済に寄付をすると発表していた。しかしその手続きは、アブラモビッチ氏がそれまでに持ち株からいかなる利益も得られないようにするため、3月10日政府によって保留にされた。今後チェルシーFCは、新規のチケット販売(すでに代金を支払ったシーズンチケット保持者のみ入場可能)、グッズ販売、選手の移籍・放出が認められないなど、制限付きライセンスのもとで運営される。

アブラモビッチ氏のテック分野への関わりに何が起こるか、また、政府が間接投資と言われるものをどのように、そして実際に追求するのかを見守る価値はありそうだ。

アブラモビッチ氏は、英国国外にも投資ビークルを持っている。PitchBookでTruphoneを唯一の投資先としているMindenとVollinに加えて、同氏は英領ヴァージン諸島に拠点を置くNormaと、Impulse VCという2つのVCにつながっている。Impulseはモスクワに拠点を置き、合計61件の投資を行っている(同じスタートアップに対して複数回のラウンドを行ったものもあり、また撤退したものもある)。Normaは、バッテリーのスタートアップStoreDot、OpenWeb(旧Spot.IM)、BrainQ Technologiesなど13件に投資している。

アブラモビッチ氏は、数年前のTelegram(テレグラム)の不運なICO(新規暗号資産公開)で、複数のロシア人投資家の1人として名を連ねている。しかし筆者はTelegramのPavel Durov(パーヴェル・ドゥーロフ)氏に連絡を取り、アブラモビッチ氏が現在投資家であるかどうかを尋ね、そうではないことを確認した。

「いいえ、幸いにも彼らは誰も当社の投資家ではありません 」とドゥーロフ氏はTelegramのメッセージで筆者に話した。

ある人がいうには、欧州のベンチャーマネーの45%はロシアに由来するという。鉄のカーテン崩壊後、自由になったソ連のインフラで富を築いた人々による、いわゆる「オリガルヒ」資金や、(ある人が主張するように)再建のためにロシアに流れ込んだ資金が別の場所に流れただけではない。そのような資産の裏側で、その間に何十億もの利益を得てきた。その後の他の事業からの配当、そしてもちろんロシアの事業家が長年にわたって通常の手段で稼いできた金もある。

Index VenturesEQTなど、いくつかの投資家はここ数日、ロシアやロシアマネーとの関係について声明を発表している。これらの声明は、ロシアやロシア出身のLPからの資金が「直接」ではないことを注意深く指摘している。そのため「間接的」というのがどのような役割を果たすかという疑問が生じる。一方、彼らはロシアのスタートアップへの投資から撤退し、ロシアで事業を展開する投資先企業にもその事業を縮小するよう促している。

画像クレジット:Alexander Hassenstein – UEFA / Getty Images

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

ツイッター、被害者の妊婦を「とてもリアルなメイクをした役者」と主張するロシア大使館のツイートを削除

隣国ウクライナへのおそろしい侵攻が拡大するのにともない、ロシア大使館に関する一連のTwitterアカウントは誤情報をばらまいているが、長くは続かないだろう。

というのも米国時間3月10日、Twitterはマリウポリの病院爆撃の現場から避難しようとする被害者の妊婦を「とてもリアルなメイクをした役者」だと主張する、特にひどいツイートに対して行動を起こしたからだ。そのアカウントはロンドンにあるロシア大使館のもので、現在行われているウクライナでのロシアに侵略行為に関する嘘の情報を熱心に撒き散らしていた。

爆撃の後の妊婦の写真へのレスとして@RussianEmbassyは次のようにツイートした。

彼女のメイクはとてもリアルだ。美容に関する彼女のブログも良くできている。しかも彼女は爆撃のとき、その産院にいたはずがない。あそこはかなり前からネオナチのアゾフ連隊が占拠し、スタッフ全員がそこを退去するよういわれていた。

このデマは、ロシア語のTelegramチャンネルから発信されたようで、病院にいたウクライナ人ブロガーが、爆破現場で2人の異なる妊婦の役を演じていたと非難している。

ロシアはウクライナへの軍事侵攻を否定し、歪曲し続けている。それらには、簡単にばれる嘘がくっついていることが多い。しかし、その情報は現在でも誤報のエコシステムの中で跳ね回っている。そしてますます活発になり、次のもっと奇怪な主張を煽っている。

Twitterはこの24時間で、ロンドンのロシア大使館による少なくとも3件のツイートをルール違反で削除している。それでも、大使館のフィードのトップに固定されたツイートは、ウクライナが、地元の指導者がロシア政権に支援されている同国東部の2地域の人々を「絶滅」させようとしていると非難している。

「絶滅」という言葉は、ウクライナへの宣戦布告を正当しようとするロシアの大統領ウラジミール・プーチンの、誤解を招く表現に呼応している。プーチンは2022年2月、「本日、ドンバスで起きていることはジェノサイドだ」と宣言し、侵攻のための偽りの基礎を築いた。侵攻に関するロシアの偽情報に対して、Twitterはどのような線引きをしているのかに関しては問い合わせをしている。

ロシアが「バーチャル」な大使館の存在を利用して自分たちだけの説をばらまくのは、これが初めてではない。Atlantic CouncilのDigital Forensic Research Lab(デジタル犯罪捜査研究所)は、ロシア政府が公式と非公式のアカウントのありとあらゆるかたちで組み合わせて、その歪曲されたメッセージをオンラインで増幅している方法を調査研究している。

上級研究員のBen Nimmo(ベン・ニモ)氏は「使用するチャネルの一部は明白かつ公式で、その他は内密で独立と称しています。すべてが協働して複数の声と視点を装い、組織化されていることを隠蔽します」と述べている。

米国時間3月10日、Twitterは、少なくとも1つの、顕著な偽情報ソースsuspending @asbmilitaryに対するより決定的アクションを行った。このアカウントは、ウクライナに米国の生物兵器研究所があるという、偽りの陰謀理論の拡散で活動的な役割を演じた。バイデン政権は、生物兵器関連の誤報の殺到が、ロシアの化学兵器攻撃の前触れなのかもしれないと懸念している

関連記事
Reddit、誤報の「大量」発生を理由にr/Russiaを隔離
TikTokがロシアの「フェイクニュース」法を受け同国内での投稿を停止

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

原文へ

(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ツイッター、ロシアのユーザーがインターネットブロックを回避できるTorサービスを開始

Twitter(ツイッター)は、ウクライナ侵攻後のロシアでブロックされた数日後、Tor(トーア)オニオンサービスを起ち上げた最新の大手テック企業となった。このサービス開始により、ロシアのTwitterユーザーは、国全体で情報の流れを妨げている政府のインターネットブロックを回避できるようになる。

米国時間3月8日に発表されたこのプロジェクトの背後には、Torネットワークに長く携わってきたサイバーセキュリティ研究者Alec Muffett(アレック・マフェット)氏がいる。Twitterの新しいTorサービスは、マフェット氏が開発した、ウェブサイト所有者が数分で自分のサイトのドメインに「.onion」URLを追加できるEnterprise Onion Toolkit(エンタープライズ・オニオン・キット、EOTK)というツールをベースに、Twitterの「並外れた生産要件」に合わせてカスタマイズされたバージョンとなっている。

「これはおそらく、私が今まで作成した中で最も重要かつ待望されたツイートです」と、マフェット氏はツイートしている。「Twitterに代わって、彼らの新しいTor Projectオニオンサービスを発表できることを、大変うれしく思います」。

マフェット氏によると、このソーシャルメディアプラットフォームのTor版は、同氏がFacebook(フェイスブック)のTorサービス開始を手伝った2014年から、ゆっくりと開発が進んでいたという。Facebookは2016年の時点で、Torブラウザーを使って同プラットフォームにアクセスする人の数が、100万人を突破したと発表している。

Torネットワークは「オニオンルーター」とも呼ばれるもので、インターネットトラフィックを暗号化し、世界中にある何千ものサーバーを経由することで、ユーザーに匿名性と、監視や検閲からの自由を提供する。

Twitter in the Tor browser.

TorブラウザでTwitterを閲覧したところ(画像クレジット:TechCrunch)

TwitterがTorサービスを開始したのは、ロシアが情報の自由な流れを弾圧し続ける中、同国の通信規制当局であるRoskomnadzor(連邦通信・情報技術・マスコミ分野監督庁)によって同ソーシャルネットワークのサービスがブロックされているようだと報道されてから、わずか数日後のことだった。この報道を受け、TwitterはTechCrunchに対し、ロシアのユーザーが同社のサービスに「ますますアクセスしにくくなっている」ことを認め、調査を行い完全なアクセスを回復するよう取り組んでいると述べていた。

Twitterは、Torサービスのタイムリーな開始が、ロシアにおける明らかなブロックと直接関係があるかどうかについては言及を避けたが、Twitterの広報担当者は、ユーザーがよりアクセスしやすいサービスを提供するための取り組みは、同社にとって「継続的な優先事項」であると述べ、Twitterがサポートするブラウザに、現在はTorが含まれていることも指摘した。

TwitterのTorバージョンのアドレスは次のとおり。twitter3e4tixl4xyajtrzo62zg5vztmjuricljdp2c5kshju4avyoid.onion

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

原文へ

(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アマゾン、マイクロソフト、グーグルの3社がロシアでのクラウド販売を停止

ウクライナでの戦争が続く中、Exxon(エクソン)、Visa(ビザ)、McDonald’s(マクドナルド)、Coca-Cola(コカ・コーラ)などさまざまな企業がロシアでの販売を停止している。Adobe(アドビ)、Apple(アップル)、PayPal(ペイパル)といったテック企業も、ここ数週間のうちにこれに加わっている。

我々はAmazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)、IBM、Cloudflare(クラウドフレア)といった世界トップクラスのクラウドインフラストラクチャベンダーに、ロシアのウクライナ攻撃に対する各社の対応を問い合わせた。各社とも、公開ブログ記事をそのまま伝えたいメッセージとして共有したが、Google Cloudだけは例外で、自社の立場を表明する簡単な声明をTechCrunchに送っている。

AWSは3月4日のブログ記事で、ロシアに同社のデータセンターはなく、方針としてロシア政府とは取引していないことを示した。また、ロシアの顧客はいるが、いずれも本社はロシア国外にあるとし、販売停止には至らなかったと述べていた。しかし3月8日、同社はブログ記事を更新し「ロシアとベラルーシにおけるAWSの新規サインアップを停止した」と変更した。

Microsoftもロシア向けの販売停止という措置をとった。「本日、ロシアにおけるMicrosoftの製品およびサービスの新規販売をすべて停止することを発表します」と、Brad Smith(ブラッド・スミス)氏はこの措置を発表した3月4日のブログ記事で書いている。その中にはAzureのインフラサービスも含まれていると思われる。

3大クラウドインフラベンダーの最後を飾るGoogleについては「現時点では、ロシアではGoogle Cloudの新規顧客を受け入れていないことが確認できています。引き続き、動向を注視していきます」と述べている。

IBMも同様の立場をとっており、Arvind Krishna(アルヴィンド・クリシュナ)CEOが書いた3月7日のブログ記事で、ロシアでの販売を停止することを発表している。「先週のウクライナ戦争に関する発表に対し、多くの方からご意見をいただきました。まず、はっきりと申し上げておきたいのは、当社はロシアでのビジネスをすべて停止したということです」とクリシュナ氏は投稿の中で述べた。

Cloudflareは純粋なクラウドインフラベンダーではなく、ロシアやウクライナを含む世界中の数百のデータセンターを通じて、安全なインターネットアクセスの提供を支援している。インターネットプロバイダーである同社は、ロシアでのサービス停止を求める声がある中で、同国でのインターネットを維持することが重要だと考えている。

「さらに、ロシア国内におけるCloudflareの全サービスを停止するよう求める声も複数寄せられています。当社はこれらの要請を慎重に検討し、政府や市民社会の専門家と議論を行いました。それらの専門家と協議した結果、ロシアに必要なのはインターネットアクセスの拡大であって、縮小ではないというのが我々の結論です」と同社はブログで書いている

今週発表されたIDCのレポートによると、これらの措置をとるクラウド企業が受ける経済的影響は、おそらくわずかなものであろうということは注目すべき点だ。「IDCは、ロシアとウクライナのICT支出が急減し、ゆっくりと回復すると予測していますが、この減少による世界的な影響は幾分限定されています。この2カ国を合わせても、欧州の全ICT支出の5.5%、世界の1%を占めるに過ぎません」と同社は報告している。

画像クレジット:Ralwel / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Den Nakano)

グーグル、ロシアでPlayストア課金とYouTubeの決済を停止

Google(グーグル)は、ロシアの銀行に対する西側の制裁措置に関連した「決済システムの混乱」を理由に、ロシアでのモバイルアプリストアPlayでの課金を停止し、YouTube(ユーチューブ)ユーザー向けの決済サービスを一時停止している。

ロイター通信が先に報じたこの事態は、ロシアのウクライナ侵攻と、それに続くロシアの銀行に対する制裁をきっかけに、欧米がプーチン大統領の欧州での戦争に対する経済的対応を選択したことに起因している。

Android開発者向けウェブサイトのサポートノートで、GoogleはPlayの課金停止を認め、こう書いている。

「決済システムの混乱のため、当社は数日内にロシアのユーザーのためのGoogle Playの課金システムを一時停止する予定です。これにより、ユーザーはロシアでGoogle Playを使用してアプリやゲームの購入、サブスクリプションの支払い、デジタル商品のアプリ内購入を行うことができなくなります。無料アプリは引き続きPlayストアで利用できます」

別のノートでは「最近制定されたPlay開発者に対する国際制裁」に関して、Googleは次のように述べている。

「当社は、適用されるすべての制裁および貿易コンプライアンス法を遵守することを約束し、最新のガイダンスを引き続き監視しています。影響を受ける地域のユーザーは、無料アプリのダウンロードを含め、引き続きGoogle Playを利用することができますが、購入することはできません」

また、FAQ(よくある質問とその回答)では、制裁を受けた地域の既存のサブスクリプションは、請求サイクルの終了時にキャンセルされることをPlayの開発者に警告している。

「状況は急速に進展しているため、このページに戻ってきて最新情報をチェックすることをお勧めします」と付け加えている。

YouTubeの広報担当者は、ロシア国内での支払いベースのサービスの「一時停止」を認め、以下の声明をTechCrunchに送ってきた。

「当社は最近、ロシアですべてのGoogleとYouTubeの広告を一時停止しました。追加措置として今この一時停止を、ロシアの視聴者向けのYouTubeプレミアム、チャンネルメンバーシップ、スーパーチャット、商品販売を含むすべての収益化機能に拡大しています」

支払いベースのYouTubeサービスの停止が米国太平洋標準時3月9日午後1時時点でロシアで実施されたとTechCrunchは理解している。YouTubeプレミアム会員、チャンネル会員、スーパーチャット、スーパーステッカー、商品販売に影響を及ぼしている。

今回の措置は、以前発表されたロシア国内でのGoogleのサービスに対する制限を拡大するものだ。

同社は3月4日、同国における自社の広告販売の停止を発表した。ただし、ロシア人向けの広告販売を完全に打ち切ったわけではなく、その時点では、同国の事業者がロシア国外で配信される広告を購入することは引き続き許可すると述べている。

現在、PlayとYouTubeでの決済を妨害している銀行制裁によって、Googleがロシアでの残りの広告販売を停止せざるを得ないかどうかは確認されていない。ロイター通信によると、ロシアのYouTubeチャンネルは、広告や有料機能を通じて国外の視聴者から収入を得ることができるため、完全に遮断されるわけではないとのことだ。しかし、西側の制裁が厳しくなるにつれ、ロシア人が外国企業との間で決済を行ったり、支払いを受け取ったりすることはますます難しくなっているようだ。

ここ数日でApple(アップル)、Airbnb(エアビーアンドビー)、Microsoft(マイクロソフト)といった他のハイテク大手も、ロシアでの販売や事業を停止する同様の措置を取っており、プーチン大統領のウクライナでの戦争に対する抗議としてロシアを事実上ボイコットしたり同国から撤退したりする多国籍企業の増えつつあるリストに加わっている。

また、ロシア政府が支援する国営メディアのRussia TodayとSputnikに対するEUの制裁に対応して、Googleなどが2社のYouTubeチャンネルアプリのジオブロックを発表するなど、テックプラットフォームはロシアの偽情報への対応を調整する措置も取っている。

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグル、ウクライナのAndroid携帯に空襲警報機能を追加

Google(グーグル)は米国時間3月10日、ウクライナのAndroid携帯電話向けに、迅速な空襲警報システムの導入を開始すると発表した。この新機能は、ロシアによる今なお続くウクライナへの侵攻を受けた同社の最新の措置だ。

「悲劇的なことに、ウクライナの何百万人もの人々は現在、空爆警報に頼って安全な場所に避難しようとしています。ウクライナ政府の要請を受け、そして同政府の協力を得て、当社はウクライナのAndroid携帯電話向けに迅速な空襲警報システムの展開を開始しました」と、グローバルアフェアーズ担当社長のKent Walker(ケント・ウォーカー)氏はこの発表に関するブログ記事で述べた。

ウォーカー氏によると、同社のシステムの展開はウクライナの既存の空襲警報システムを補完するもので、ウクライナ政府によってすでに配信されている警報に基づいている。

Googleのエンジニアリング担当副社長Dave Burke(デイブ・バーク)氏は一連のツイートで、このシステムは、同社が地震警報用に構築した低遅延警報メカニズムを活用していると説明している。また、バーク氏はこのシステムが3月10日から展開されており、今後数日間でウクライナのすべてのAndroid携帯電話を対象とする予定だと述べている。

TechCrunchは同システムの詳細についてGoogleに問い合わせており、回答があり次第、この記事を更新する。

同じブログ投稿でGoogleはまた、同社がプラットフォーム全体で多くのロシア国営メディアのレコメンデーションを制限する取り組みを継続することを発表した。同社はまた、ロシアにおける商業活動のほとんどを一時停止している。

「ロシアでのGoogle広告を一時停止するという先週の発表に続き、当社はロシアにおける商業活動の大部分を一時停止しています。ここには、ロシアに拠点を置くすべての広告主を対象にした、当社の世界中のプロパティとネットワークでの広告、クラウドの新規登録、当社サービスのほとんどの決済機能、ロシアのYouTube視聴者向けのマネタイズ機能などの停止が含まれます」。

Googleによると、検索、Gmail、YouTubeなどの無料サービスはロシアで引き続き展開されている。同社は今後も動向を見守るとしている。

画像クレジット:lex Tai/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

原文へ

(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソニーがロシアでPlayStation Storeとゲーム機販売を停止

Sony(ソニー)もロシアのウクライナ侵攻を受けてロシアでの事業を停止する。

ソニーのゲーム部門であるソニー・インタラクティブエンタテインメントは米国時間3月9日、ロシア政府の侵攻激化を受けてロシア国内のハードウェア出荷とソフトウェア販売を停止すると発表した。

同社はさらにロシアでの対応について、オンラインのゲームストアであるPlayStation Storeの運営を停止し、シリーズ累計売上40億ドル(約4640億円)を超える人気レーシングゲーム「グランツーリスモ7」の発売を見合わせるとしている。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)はグローバルコミュニティの一員としてウクライナの平和を求めます。当社はロシアにおけるすべてのソフトウェアとハードウェアの出荷「グランツーリスモ7」の発売、PlayStation Storeの運営を停止します。

ソニーグループは人道支援として200万米ドル(約2億3200万円)を国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と国際NGOのSave the Childrenに寄付し、この悲劇の被害者を支援することを発表しました。

多くのテック、ゲーム企業各社に続いてソニーもロシアでの事業を停止した形だ。競合のMicrosoft(マイクロソフト)は米国時間3月4日にロシア国内での販売停止を発表していた。

ロシアが侵攻を始めた直後にウクライナのMykhailo Fedorov(ミハイロ・フョードロフ)副首相はゲーム業界に対し、特にMicrosoft(マイクロソフト)とソニーを名指ししてロシアでの事業を停止するよう求めていた。フョードロフ副首相はeスポーツ界に対してもロシア選手の参加を停止し、ロシアで開催されるイベントを中止するよう求めていた。同副首相は「2022年においては、戦車や多連装ロケット砲、ミサイルに対する最も有効な答えはおそらく最新テクノロジーです」と述べている。

@Xbox @PlayStation
ウクライナで今何が起きているか、あなた方はもちろんご存じでしょう。ロシアはウクライナに対してではなく、すべての文明社会にして宣戦布告をしたのです。あなた方が人間の価値を支援するのなら、ロシア市場で示すべきです!

画像クレジット:BEHROUZ MEHRI/AFP / Getty Images

原文へ

(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Kaori Koyama)

アマゾン、ロシアでPrime Videoへのアクセスと同国への商品出荷を停止

ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、Amazon(アマゾン)はロシアの顧客のPrime Video(プライム・ビデオ)へのアクセスを一時停止している。また、同社はこの発表に関するブログ記事に、ロシアとベラルーシの顧客への小売商品の出荷を停止したことも記している。加えて、同社はロシアとベラルーシを拠点とするAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)顧客とAmazonのサードパーティー販売者の新規受け入れを停止する。Amazonがロシアで直接販売している唯一のビデオゲーム「New World」の注文受付も終了する。

「ロシアとウクライナで進行中の状況に鑑み、同地域で追加の措置を講じました。注意事項として、他の米国のテクノロジープロバイダーとは異なり、AmazonとAWSはロシアにデータセンター、インフラ、オフィスを持っておらず、ロシア政府とビジネスを行わないという長年の方針を持っています」と同社はブログ記事で述べた。

Amazonは先週、AWSがアプリケーションの安全性を維持するためにウクライナの顧客やパートナーと緊密に連携していることを発表した。同社は、攻撃をかわすためにウクライナのIT組織と緊密に連携し、リアルタイムのインテリジェンス共有でウクライナを拠点とする組織と協業しているという。

今回の発表は、Netflix(ネットフリックス)が今週初めにロシアでのサービスを停止すると発表したことに続くものだ。Netflixのロシアでのサービス停止は、ストリーミング配信会社に20のロシアのプロパガンダチャンネルをホストすることを求めるロシアの新法に従わないと同社が先週述べたことに続く措置だ。Netflixはまた、ロシアで制作する予定だった今後のプロジェクトをすべて一時停止した。

ウクライナへの攻撃を受け、ロシアでの事業を停止する企業が増えている中、Amazoもそこに仲間入りをした。今週初めには、PayPal(ペイパル)、Mastercard(マスターカード)、Visa(ビザ)など、複数の企業が同国での事業を停止すると発表している。Apple (アップル)は先週、ロシアでの製品販売を停止したことを認めた。ハードウェアの巨人はまた、App StoreからSputnikとRT Newsを削除し、同国でのApple Payサービスの一部を無効にしたGoogle(グーグル)はAppleに続いて自社のモバイルアプリストアからRT(ロシア・トゥデイ)とSputnikのアプリを削除した。同社はロシアでの広告販売も一時停止した

原文へ

(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

ツイッターがTor経由で匿名アクセスできる公式サイトを開設、ロシア当局による検閲回避のため

ツイッターがTor経由で匿名アクセスできる公式サイトを開設、ロシア当局による検閲回避のため

Jakub Porzycki/NurPhoto via Getty Images)

ロシア政府は今月初め、ウクライナ侵攻に伴い国内でTwitterをブロックしました。これを受けてTwitterがTor(The Onion Router)匿名化ネットワークを経由してアクセスできるWebサイトを開設したことが明らかとなりました。

これは元Facebookのセキュリティインフラストラクチャ担当者で、Tor Onionサービスの展開を容易にするEnterprise Onion Toolkitを開発したAlec Muffett氏がTwitterで表明したことです。「おそらく、私がこれまで作成した中で最も重要かつ待望のツイートだ」「Twitterを代表して、彼らの新しいTorプロジェクトのOnionサービスを発表できることを嬉しく思います」と述べられています。

Torとはデータを匿名で送信する技術のこと。The Onion Router、すなわち玉ねぎルーターと呼ばれるのは、わざと通信経路に多段プロキシおよびルーターを設定し、中継のたびに玉ねぎの皮のように暗号化を重ねることで送信元(IPアドレス)の特定を困難にする技術であるためです。

TwitterのTor版のアドレスは、https://twitter3e4tixl4xyajtrzo62zg5vztmjuricljdp2c5kshju4avyoid.onion。このURLにアクセスするためにはTor対応ブラウザをインストールする必要があり、Tor非対応のブラウザでは開けません。

このTor版Twitterサイトは、ウクライナ侵攻とロシア当局によるSNSや独立系メディアへのアクセスに対する締め付けが激しさを増す中で登場した文脈を考えると、史上最も重要なTor onionサービスの1つになると思われます。

米Motherboardに対して、Twitterの広報担当者は「わが社のサービスをよりアクセスしやすくすることは、優先すべきことであり続けています」とメールで語り、上記のTor版サイトのURLが含まれているサポートページに言及したとのことです。

Tor Project(Tor匿名ネットワークのソフトウェアの保守を担当している非営利団体)が管理しているデータによると、3月までにはTorリレーユーザーの12.77%がもともとロシアから接続していたそうです。またFacebookはすでに2014年にTor版を立ち上げており、1ヶ月で接続ユーザーが100万人を突破したと発表していました

いま現在のロシア国内では、ウクライナの現状の映像を流したり、ウクライナ侵攻を批判することが厳しく取り締まられています。それを受けてAnonymousがロシア国営TVなどの配信チャンネル乗っ取った一件もありましたが、独自の「正義」を持つ人々に任せきりにしていいとも思われません。TwitterやFacebookなど一応のフェイクニュースチェック機構を備えたSNS等を通じて、ロシアの人々が正しい情報に触れることを祈りたいところです。

(Source:Alec Muffett(Twitter)MotherboardEngadget日本版より転載)

Instagramがロシア国営メディアをシェアしたユーザーに警告、ロシアとウクライナのユーザーのフォローリストを非表示に

Instagram(インスタグラム)は米国時間3月8日、ロシア政府のプロガンダを弱体化し、ウクライナとロシア全体のユーザーのプライバシーを保護する一連の手段を講じることを発表した。

同社は、ロシア政府関連メディアによる投稿のランクを下げる措置を開始した。これらの報道機関の発信した記事は他のニュース源のコンテンツよりも下に置かれるようになる。該当するアカウントから発信された記事をシェアしようとしたユーザーには、ポップアップが表れ「ロシアの国家支配下にあるメディア」を拡散しないようにというメッセージが表示される。

「Instagramは、この投稿を作成したアカウントが部分的あるいは完全にロシア政府の編集管理下にあると確信しています」とメッセージに書かれている。

画像クレジット:Instagram

ロシア国家メディアに関連付けられたドメインを指し示すリンクスタンプのある記事をシェアしようとしたユーザーも同じ扱いを受ける。ロシア国家支配下アカウントのコンテンツは、Instagramがアルゴリズムで収集した発見エリア(リールや発見タブなど)には表れなくなる。検索結果にも表示されない、とInstagramは言っている。

ロシアのウクライナ侵攻に関する国家主導の誤情報拡散を防ぐInstagramによる行動は、Facebook(フェイスブック)の同様の取り組みを追従している。Facebookは、ロシア国家メディアを警告ラベルとランク下げによって埋没させる同様の試みを先週発表した。当時、Meta(メタ)のセキュリティポリシー責任者Nathaniel Gleicher(ナサニエル・グレイチャー)氏は、警告ラベルの付加は「数日以内」に実施すると言っていた。

関連記事:フェイスブックとInstagramがロシア国営メディアの情報拡散を抑制、紛争地域のIGユーザーに暗号化DM提供へ

Instagramは、ウクライナとロシアを拠点とするユーザーの一部に対して、新たなプライバシー対策も実施する。これらの国の個人アカウントは、フォロー中およびフォロワーのリストをプライベートに設定し、友達リストを隠すことが可能になる。実世界の社会的つながりを覆い隠すことで、新たな保護レイヤーが追加される。

以前、InstagramとFacebookの親会社であるMetaは、ウクライナとロシアの成人ユーザー全員に暗号化されたDMの利用を可能にし、コンテンツとアクティビティの一括削除を容易にすると発表した。

関連記事:Instagram、ダイレクトメッセージ暗号化機能をウクライナとロシアで提供

画像クレジット:LIONEL BONAVENTURE / Contributor / Getty Images

原文へ

(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップル、ロシアのApp Storeでの検索広告を「追って通知があるまで」停止

先週のロシアにおける製品の販売停止に続き、Apple(アップル)はデベロッパーのコミュニティに対して、ロシアのApp Store上のApple Search Adsサービスを停止すると発表した。デベロッパーと共有したメールによると、デベロッパーがApp Store上で広告キャンペーンをするために使っていたApple Search Adsの広告は「追って通知があるまで」保留にされる。

さらにメールでは保留が続いている間、ロシアのApp Storeでは新たなSearch Adsキャンペーンが展開適格になることはないと述べている。

Search Adsの停止のニュースは最初Bloombergが報じたが、そのニュースはTwitter上でそれを共有したモバイルアプリの大きなコミュニティにいるデベロッパーその他の人たちツイートから得たものだ。

AppleはロシアのApp Storeですべての検索広告を停止した。

ご参考までに。

デベロッパーたちによると、メールは以前Search Adsに登録したメールアドレスに届いたが、そのメールはロシアのApp Storeデベロッパーや、その国で現在、Search Adsキャンペーンを行っているデベロッパーだけでなく、グローバルマーケットのその他のデベロッパーにも届いたという。今、ロシアでキャンペーンをしていなくてもだ。

Appleはこの件でコメントをしていない。しかしTechCrunchは、そのメール(上図)が本物であることを確認した。

ロシアでSearch Ads事業を休止する動きの前にはすべての製品の販売を停止するAppleの最近の決定と、Apple Payの制限、そしてロシア以外のすべての市場のAppStoreからの、国営メディアのアプリ、RTとSputnik Newsの削除があった。そして同社はさらに、Appleマップにあるウクライナの交通とライブのインシデントを安全のために無効にした。

Appleは、ウクライナの副首相Mykhailo Fedorov(ミハイロ・フョードロフ)氏は同社CEOのTim Cook(ティム・クック)氏宛の公開書簡で、Appleのサービスや製品をロシアに供給しないことを求めたことを発表している。その書簡はApp Storeへのアクセスのブロックも求めているが、それはこれまで行っていなかった。しかし今回の、ロシアにおけるSearch Ads事業の停止でAppleは、ロシアをさらに孤立させ、この国でビジネスをすることから退くための、さらなる一歩を踏み出そうとしている。

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)