ウガンダのバイクタクシー「SafeBoda」はスーパーアプリ化でパンデミック不況からの回復に賭ける

2020年初めに2万5000台のオートバイを擁していたSafeBoda(セーフボダ)は、ピーク時にウガンダとナイジェリアでオートバイ後部座席の乗客数千人を運んでいた。しかし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの到来とともにすべてが消え去った。在宅勤務推進などの感染対策はビジネスの不調を意味し、さらに都市封鎖や外出禁止令、公共交通機関の停止などが追い打ちをかけて、バイクタクシービジネスを苦境に追い込んだ。

この停滞はSafeBodaに悪影響を及ぼしたが、同時にこのスタートアップが、シングルサービスプロバイダーから統合マルチサービスおよびデジタル決済テクノロジープラットフォームへと戦略転換するきっかけを与えた。

同スタートアップは2017年に、Ricky Rapa Thomson(リッキー・ラパ・トムソン)、Alastair Sussock(アラステア・サソック)、Maxime Dieudonne(マクシム・デュードン)氏の3人が設立した。最近、ウガンダ中央銀行から決済ライセンスを取得してフィンテック分野で公式デビューを飾り、過去2年間に導入してきたた新サービスのリストに追加した。

「当社がこの分野に参入したとき、人々がタクシー以上のものを必要としていることに気づきました。アプリを利用する人たちは、もっと何かできるはずだと私たちに言い続けました。ユーザーの話を聞き、フィードバックを真剣に受け止め、調査を行った結果、タクシー以外にいくつかのサービスを提供することが可能になりました。そしてそれは、今後のビジネスの持続可能性に役立っています」とSafeBodaの共同ファウンダーであるトムソン氏はTechCrunchに語った。

画像クレジット:SafeBoda

SafeBodaの新しいウォレットを使って、ユーザーは相互に手数料無しで送金できる(telcosなどの同業者では手数料が必要)。これはタクシードライバーがキャッシュレス支払いを受けられることを意味している(アフリカ大陸ではカード支払いの普及は非常に遅れている)。さらにユーザーは、このウォレットを提携業者への支払いにも使える他、ウガンダの首都カンパラに点在する200以上の代理店で現金を引き出せる(要手数料)。SafeBodaウォレットの定期預金では年率10%の利息も得られる。

ある意味で、このウォレットはこの国の金融包摂(金融の機会平等化)に貢献している。ほとんどが銀行口座をもっていないバイクタクシーのドライバーたちが、報酬履歴をつくることによって、融資の際の信用力を高めることができる。これは新サービス導入の足固めにもなる。

「バイクタクシーのドライバーたちは実際収入を得ていますが、融資をはじめとする金融サービスを利用することもできていません。そして私たちは、機会平等を進めるためには、適切なパートナーを得るだけでなく、ユーザーの履歴を知る必要もあることがわかりました。当社のプラットフォームを使うことによって、ドライバーの報酬履歴を作ることが可能になり、これが大きな変革を起こそうとしています」。

トムソン氏によると、同社は近い将来一連の新サービスを提供する予定で、サービスの再評価と改善を繰り返す戦略に沿って、顧客が切望している利便性を拡大していく計画だ。新規市場への参入を目指すSafeBadaは、国境を超えたユーザーを対象にして新製品を作っている、と同氏は語った。

「アフリカ全土で利用できるグローバルな製品を作っています。SafeBodaは、ウガンダだけでなく、もっと多くの人たちよりよいサービスを提供することで、アフリカの誰もがクリック1つでサービスを利用できるようにすることが目標です。当社のドライバーたちの生活が改善されるようにすることはもちろんです」。

SafeBodaは、最近Googleによる5000万ドル(約57億円)のアフリカ投資ファンドの支援を受けた最初の会社となり、ユーザーベース(100万ダウンロード以上)を活用して、新規ビジネスの成長と競合他社の引き離しをはかっている。他の出資者には、Allianz X、Unbound、Go-Ventures、およびインドネシアでマルチサービス・スーパー・アプリを運用するGojekがいる。

SafeBodaが最近始めた事業の1つ、eコマースプラットフォームは、2020年4月にスタートし、所属ドライバーを配達のラストマイルに活用している。eコマース事業は、同社の小荷物および食品配達サービスに追加されたもので、ロックダウンでオートバイ・タクシーの利用が落ち込む中、ドライバーに仕事を与え、実質的に事業を継続させるためだった。同時に、同スタートアップのスーパーアプリへの道の始まりとなった。

画像クレジット:SafeBoda

ユーザーに提供する価値の選択肢を増やすことでSafeBodaは、Uber(ウーバー)やBolt(ボルト)といった資金豊富なライドシェアリング会社や、Jumia(ジュミア)などのEコマース・プラットフォームと対等に戦う準備を整えている。

2週間前、ウガンダのYoweri Museveni(ヨウェリ・ムセベニ)大統領は、2020年以来続いていたバイクタクシー(boda boda、ボダボダ)の禁止を解除し、SafeBoda、Uber、Boltによるライドシェア・サービス再開への道を開いた。

「当社はアフリカ最大のバイクタクシーによるライドシェアリング会社です。これまでさまざまな競争を経験し、大企業が私たちの市場に参入してきてからも、市場のリーダーを続けています。これからも成長を続け、強い競争力を維持していきます」とトムソン氏は語った。

新型コロナパンデミックがモビリティ産業に与える影響は、ウガンダ輸送業界に限らない。世界中の輸送サービスが、移動制限と都市封鎖によるひどい影響を受け、航空会社、タクシー会社など輸送産業のいくつかの会社が倒産に追いやられた。しかし、徐々に業界は息を吹き返し、全世界のライドシェアリング業界は、次の7年間に2倍以上成長して980億ドル(約11兆3000億円)に達し、年平均成長率10%が期待される、とこのレポートは伝えている。

画像クレジット:SafeBoda

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(文:Annie Njanja、翻訳:Nob Takahashi / facebook

印タタ・グループが導入準備中の「スーパーアプリ」に問題あり、内部関係者が告白

インドのコングロマリットであるTata Group(タタ・グループ)は、早ければ2022年3月にも「スーパーアプリ」の発表を計画している。これは、同社が確立したサービスや最近買収した消費者向けサービスの多くを、初めて1つの大規模なアプリとして統合することによって、Jio Platforms(ジオ・プラットフォームズ)やAmazon(アマゾン)などの企業に対抗しようというものだ。

Tataは当初、この「TataNeu(タタ・ニュー)」と名付けられたスーパーアプリを、2021年のうちに消費者向けに導入する予定で、数四半期前から同社の従業員を対象にテストを行っていた。2022年4月に開催されるIPLクリケットトーナメントでは、TataNeuのプロモーションのために大規模なマーケティング活動の展開が計画されている。

ただ、1つだけ問題がある。

本件に詳しい2人の関係者とTechCrunchに提供された資料によると、発表が遅れているにもかかわらず、TataNeuは決して現代的に見えるものではないようで、同社の幹部はどうすればこのスーパーアプリに消費者を惹き付けることができるか、いまだに悩んでいるという。

このアプリには、Tata Digital(タタ・デジタル)が2021年過半数の株式を取得したオンライン食料品店のBigBasket(ビッグバスケット)や、小売チェーンのCroma(クロマ)、エンターテインメントサービスのTata Play(タタ・プレイ)、富裕層向けオンライン通販サイトのTataCLiQ(タタクリク)、AirAsia(エアアジア)のフライトチケット、Taj(タージ)ホテルを運営するIHCL、タタ・グループとの合弁事業でインドに進出しているStarbucks(スターバックス)のフード&ビジネスなど、さまざまなサービスが含まれている。

さらにTataNeuは、個人間の送金、ブロードバンド、電気、水道、衛星テレビの料金の支払い、ローンなどの機能も提供する(支払い機能があることは興味深い。Tataは、インドで広く採用されているUPIに対抗できる、同国の新しい決済インフラの構築と活用を支援するためのNUEライセンスに入札している主要企業の1つでもある)。

しかし、このアプリは滑稽なほどバグが多く、恐ろしく遅くて、統合機能はさまざまなTataのサービスをアプリ内のブラウザを介して指し示すだけであり、しかも携帯電話なのに時々デスクトップ表示になることもあるという。

画像クレジット:TechCrunch

Tataが従業員を対象にしてテストしているこのアプリは、消費者向けに提供する予定のものと同じであり、大幅な改善には取り組んでいないと、この件に詳しい人物は語っている。

顧客へのインセンティブに、Tataは「NeuCoin(ニューコイン)」を報酬として提供することを計画している。1NeuCoinは1インドルピー(約1.54円)に相当する。同社は最終的に、BigBasketや1mg、その他のサービスが提供している異なる特典を段階的に廃止し、すべてのサービスでNeuCoinを統一的に使用するつもりだ。

この報酬は、幅広いカテゴリーで展開する自社サービスの「コネクティング・レイヤー」を構築しようとしているTata Groupにとって、大きな焦点の1つだ。これが成功すれば、155年の歴史を持つこの巨大企業グループは、国内最大のロイヤリティプログラムを構築することができる。

「TataNeuは、Tataの複数のブランドを結びつける統合プラットフォームで、これまでにないものです。スーパーアプリとして設計されたTataNeuは、食料品、電子機器、金融ソリューション、航空券、休暇旅行など、あらゆるものを提供します。TataNeuに掲載されている各ブランドは、NeuCoinという共通の特典でつながっています。NeuCoinは、オンラインでも実店舗でもすべてのブランドで獲得でき、同様に使用することができます」と、Tataは述べている。

しかし、Tataの現在の計画によると、顧客はBigBasketやその他のTataのサービスで直接買い物をすればNeuCoinsを蓄積することができ、そのためにTataNeuアプリを使用する必要はない。また、インドで数億人の消費者を相手に事業を行っているTataは、スターバックスをはじめ、所有権や提携関係が限定的な一部のブランドにも、新しいロイヤルティプログラムへの参加を全面的にあるいは部分的に認めさせようとして苦心していると、この件に詳しい人物は語っている。

Tataの消費者向けデジタルサービスには、多くの成果がかかっている。同社は2023年3月期のGMV(流通総額)で100億ドル(約1兆1500億円)を目標にしていると、インドのニュース・分析出版物であるCapTable(キャップ・テーブル)は2022年2月初めに報じた

2年前に同じインドのReliance Industries(リライアンス・インダストリーズ)が、デジタル・小売事業のためにMeta(メタ)やGoogle(グーグル)など多くの著名な投資家から270億ドル(約3兆1000億円)以上の資金を調達したように、Tata Groupもスーパーアプリのために資金調達を行っている。だが、関係者によると、主要な2つの投資家がすでに投資を見送る意向を示しているとのことだ。

Tata Digitalの広報担当者は今のところ、コメントの求めに応じていない。

画像クレジット:Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

あらゆるアプリを「スーパーアプリ」に変えるAppboxoが約8億円を調達

ミニアプリとは、より大きなアプリの中で動作する軽量のプログラムのことで、ユーザーのエンゲージメントと収益の追加的な源泉として機能する。ミニアプリは、WeChat、Alibaba、Grabなどの「スーパーアプリ」によって普及した。しかし、すべての開発者がこれらのハイテク企業のリソースを持っているわけではない。シンガポールを拠点とするAppboxo(アプボクス)は、この競争の場を均等にしたいと考えている。このスタートアップのプラットフォームでは、ミニアプリを自分で作ったり、サードパーティの開発者向けマーケットプレイスであるAppboxo Showroomからミニアプリにアクセスしたりして、開発者は自分のアプリをスーパーアプリに変えることができるのだ。

GCash(ジーキャッシュ)、Paytm(ペイティーエム)、VodaPay(ボダペイ)などを顧客に持つAppboxoは、米国時間2月16日、RTP Global(RTPグローバル)が主導するシリーズA資金調達で700万ドル(約8億円)を調達したことを発表した。その他、最初の投資家であるAntler(アントラー)と500 Southeast Asia(500ソースイースト・アジア)に加え、SciFi VC(サイファイ・VC)、Gradient Ventures(グラディエント・ベンチャーズ)(GoogleのAIに特化したベンチャーファンド)、エンジェル投資家のHuey Lin(ヒュー・リン)氏とKayvon Deldar(ケイボン・デルダー)氏といった新しい支援者が参加した。

Appboxoは、2019年にCEOのKaniyet Rayev(カニエト・レイエフ)氏、CTOのNursultan Keneshbekov(ヌルスルタン・ケネシュベコフ)氏によって設立された。TechCrunchが最初に取り上げたのは2020年12月でシード資金を発表したときだった。現在、東南アジア、インド、南アフリカの10のスーパーアプリに採用され、400以上のミニアプリの統合をサポートしており、その大半はサードパーティの開発者によって構築されたものである。同社によると、統合されたユーザー数は5億人以上とのこと。

同社は、主に2つの製品を提供している。1つは、ミニアプリを構築・起動するためのSDKやAPIを備えたSaaSプラットフォーの「Miniapp」例えば、モバイルウォレットは、フードデリバリー、ショッピング、レストラン予約などのミニアプリを統合することができる。

2つ目は、約1年前に登場した「Shopboxo」で、企業はモバイルデバイスを通じてカスタマイズ可能なオンラインストアを30秒以内に立ち上げることができる。

Shopboxoで作成したミニアプリは、Appboxoを通じてスーパーアプリに統合することができる。レイエフ氏は、中小企業の幅広い加盟店ベースにリーチできることで「特にAppboxoの顧客はすでにeコマースを中心に同社のプラットフォームを使用しているため、2022年はミニアプリの数が数千に拡大する」と予想している。「金融系スーパーアプリは、新しい垂直方向への多様化を望んでおり、現在の状況では、eコマースが最も明白な機会であり、最も実行しやすいように見えます」と語る。

レイエフ氏は、AppBoxoの新たな資金調達は、Shopboxoをさらに発展させ、同時に加盟店エコシステムを拡大し、国際的なプレゼンスを構築するために使われるとTechCrunchに語っている。当初は、スーパーアプリが最も優勢なアジア太平洋地域に焦点を当てるが、ヨーロッパと米国にも進出したいという。

画像クレジット:AppBoxo

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(文:Catherine Shu、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ドイツの金融スーパーアプリVivid Moneyが評価額約1020億円で130億円調達、欧州全域で展開へ

50万人の顧客を持つベルリン発のチャレンジャーバンクVivid Money(ビビッドマネー)は、基本的な当座預金と資金管理のサービスに加え、株式や暗号資産投資も扱う金融ワンストップショップの「スーパーアプリ」として有名になった。そしていま、同社はプラットフォームにサービスを追加し、欧州全域で事業を展開しようと、1億ユーロ(約130億円)を調達した。同ラウンドはGreenoaks Capitalがリードし、Ribbit Capitalと新規投資家のソフトバンク・ビジョンファンド2が参加した。

今回の資金調達でのVividの評価額は7億7500万ユーロ(約1020億円)だ。参考までに、この数字は同社が6000万ユーロ(約79億円)を調達した2021年4月の前ラウンド時の評価額(約473億円)の2倍以上だ。また、この間にユーザー数は5倍、売上は25倍になったという。Vividはプラットフォームへの預け入れ総額や取引件数など詳細については公表していないが、Vividの共同創業者であるAlexander Emeshev(アレクサンダー・エメシェフ)氏は、2022年中にユーザー100万人達成を目標としている、と述べた。

Vividは現在、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアの4つの市場で事業を展開しており、2022年中に新たに5つの市場に進出し、2023年末までに欧州全域で利用できるようにする計画だ。新商品としては、保険商品の展開が初期段階にあり、エメシェフ氏によれば、2022年後半に初のクレジット商品を導入する予定だ(Vividは現在、ユーザーにVisaデビットカードを提供している)。

2020年にスタートしたVividは「COVIDネイティブ」のスタートアップと言えるかもしれない。モバイルファーストのサービスは、従来の銀行や投資サービスからすでに遠ざかっていただけでなく、パンデミックのために自宅で過ごす時間が増え、金融面の管理方法を再考していた30代のユーザーに訴えるものだった。

他の多くのネオバンクと同様、Vividの基本となるフリーバンキングは、他のプロバイダー(Vividの場合は、ドイツの組み込み型金融の大手Solarisbank)のインフラの上に構築されている。顧客が目的に応じて資金を最大15個の「ポケット」に分けることができ、ポケット間の移動も簡単にできるなど、よりカスタマイズされた資金管理サービスやその他のパーソナリゼーションサービスを加えている。

こうした基幹サービスとともに、暗号資産やETF(上場投資信託)などの新しい取引形態の金融サービスの波も押し寄せてきており、Vividはこれらも取り込むつもりだ。

Vivid Moneyのもう1人の共同創業者であるArtem Iamanov(アルテム・アイアムノフ)氏はインタビューで「当社のビジョンは、投資と貯蓄の巨大市場であるヨーロッパ大陸をターゲットにすることでした」と語った。「我々は、分散型金融や他の種類の代替投資アプローチがブームとなっていて、それらが従来型の銀行の世界とあまりよくつながっていないことを知っていました」。

そのつながりのなさは、理解という点でだけでなく、消費者の金融生活全体が伝統的なプラットフォームに基づいているときに、新しいサービスに足を踏み入れる方法という点でもそうだった。

Vividのソリューションは、ユーザーが既存のフィアット口座を使って簡単に株式や通貨について学び、その後投資できるような一連のサービスを作ることだった。例えば、同社は現在50の暗号資産と3000の株式やETFを選択できるポータルを提供し、分散型金融の分野に慣れておらず、さまざまなことを試しているかもしれないユーザーにアピールするように設計されている(これらの新しい投資ビークルの中にはSPACもあり、Vividは欧州で一般消費者がこれらのビークルに投資できる数少ないプラットフォームの1つだ)。

「古いものと新しいものの間に大きなギャップがあることがわかったので、この2つの世界の間で交わる商品にユーザーがアクセスできるようなスーパーアプリを作ることにチャンスを見出しました」とアイアムノフ氏は話した。

Vividのプラットフォームでの投資は無料で、ユーザーが米国株に投資する場合など、為替レートやその他の手数料でVividは利益を得る仕組みになっている。また「Prime」(Amazonはどう思っているのだろう)として販売するサブスクリプションを設け、月額9.90ユーロ(約1300円)を払えば、ユーザーはそうした手数料を払わなくてもいいようになっている。

チャレンジャーバンクがひしめく市場で、Sequoiaの支援を受けたネオブローカーのTrade Republicなど、Vividと非常に近い競合相手もいるが、Vividの出資者は同社の牽引力と、新しい消費者投資家にアピールするオールインワンで簡単なアプローチにより、同社が事業を拡大するにつれ、ユーザーと利用が増えるだろうと考えている。

「Vivid Moneyはわずか1年余りで、すでに欧州で最も愛されている消費者向けバンキングプラットフォームの1つを構築し、ユーザーは金融生活全体を1つのアプリで管理できるようになりました。2021年投資して以来、Vivid Moneyの新製品開発のペースの速さを目にして感激しており、Vivid Moneyは既存ユーザーを喜ばせ、新規顧客を引き付け、プラットフォームの価値提案を深化させています」とGreenoaksのパートナー、Patrick Backhouse(パトリック・バックハウス)氏は声明文で述べた。「我々は消費者金融における革命のまだ初期段階にいると考えており、事業を拡大し続けるVividとのパートナーシップをさらに深化させることをうれしく思っています」。

画像クレジット:Vivid Money

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

データワーカーのためのスーパーアプリを構築するAcho、シード資金調達を実施

Vincent Jiang(ヴィンセント・ジャン)氏がソフトウェア開発者として働いていた頃、同氏の毎日の仕事は、金融アナリストが取引戦略における財務報告諸表を作成するためのテーブルを構築することだった。

同氏はしかし、この作業をエンジニアに頼るのではなく、アナリスト自身が行うことも可能ではないかと考えた。それには、きちんと機能する適切なツールが必要だ。

それが、データワーカーのためのスーパーアプリ「Acho(アチョ)」のアイデアの始まりだった。

ジャン氏は、共同創業者のSamuel Liu(サミュエル・リュウ)氏と協力して、2020年5月に会社を設立。Y Combinator(Yコンビネーター)の2020年夏のバッチを通過し、今回220万ドル(約2億5000万円)のシード資金を調達した。このラウンドはGoat Capital(ゴート・キャピタル)が主導し、Liquid2 Ventures(リキッド2ベンチャーズ)とCapital X(キャピタルX)が参加した。

Achoは、既存のデータインフラやITリソースの助けを借りずに、企業のデータ資産をパフォーマンスダッシュボード、プロジェクト管理、ウェブアプリなどのビジネスアプリケーションに変える。

「データチームが現在直面している最大の問題は、リテラシーです」と、ジャン氏はTechCrunchに語った。「何年もSQLを書いていない人は、SQLを使いこなせないでしょう。だからこそ、Achoを使えば、チームのために共同データベースを構築でき、深い技術的知識がなくてもデータを利用できるようにしようと、我々は考えたのです。リアルタイムデータベースのためのGoogle Sheet(グーグル・スプレッドシート)のようなものです」。

Achoのダッシュボードの一例(画像クレジット:Acho)

現在、Achoの顧客として50以上のチームが、データ、チームメイト、アプリケーションを1つにまとめるために、このアプリを使用している。ジャン氏によれば、3人だった同社のチームは、この3カ月で11人に増えたという。

2020年にYCを卒業した後も、製品ができてからまだ1カ月しか経っていなかったため、ジャン氏とリュウ氏は資金調達を少し延期し、顧客からより多くの支持が得られるのを待つことにした。結果的には、かなり早い段階で資金調達を完了させることができ、これには彼らも驚いたという。

「私たちの手がけている分野が、これほど強い関心を呼ぶとは思いませんでした」と、ジャン氏はいう。「私たちと同期のバッチだった企業の中には、1~2年のうちにデータ領域でユニコーンになった会社もあり、投資家からの需要が非常に大きいことを理解しました。しかし、希薄化を避けるために最初は少だけ資金を調達して、顧客にもっと集中したいと考えています」。

そのため、ジャン氏は今回調達した資金を、顧客が求めている機能やサービス、インフラを構築するために使用するつもりだ。また、毎月50%ずつ増加する顧客に対応するため、チームの規模を拡大したいとも考えている。

Goat Capitalの創業者であるRobin Chan(ロビン・チャン)氏は、Justin Kan(ジャスティン・カン)氏とともに、ジャン氏とリュウ氏が「本物のビジネスを構築する」ことに集中していると思い、彼らの迅速な牽引力に感銘を受けたと述べている。

「ヴィンセントは、強力なコアチームを構築した、非常に気骨のある起業家です」と、チャン氏は付け加えた。「それこそが、エンタープライズビジネスのこのカテゴリーで我々が惹かれる点です。世の中では、SaaS製品に資金が殺到していますが、そのために企業やベンダーの領域で多くの断片化が生じています。私たちが求めている人材は、データの組織や循環システムを構築し、会社の運営を、特にリモートというパラダイムの中で、よりスムーズにできる人たちです。このような断片的な製品を使って共同作業をするのは、人々にとってますます困難になっています。データに関する共通の基盤が必要です。それこそがヴィンセントが構築しているものであり、それは非常に強力です」。

画像クレジット:Acho / Acho co-founder Vincent Jiang

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】暗号資産の規制が米国でスーパーアプリが生まれるきっかけになるかもしれない

今や、中国社会の大部分が「スーパーアプリ」と呼ばれるものに依存するようになった。診察の予約からタクシーの配車、ローンの申し込みに至るまで、さまざまなタスクを1つのプラットフォームでこなすWeChat(ウィーチャット)などのアプリのことだ。

米国ではこのようなワンストップショップが勢いに乗ることはなかったが、ついに米国でもそのときが来たのかもしれない。フィンテック業界、とりわけ暗号資産を専門とするプラットフォームからスーパーアプリが誕生する可能性が高いのだ。

株価の高騰と金利の記録的な低下、近い将来に起きるインフレへの不安などが重なり、暗号資産は急速に人気を集めている。米国政府が暗号資産を全面的に規制することを決定した場合(現在、米国議会はこの議題を検討している)、暗号資産の正当性はさらに高まるかもしれない。

今後、暗号資産の発行体が規制当局と連携し、消費者を保護しながら金融および投資に関する新たなオポチュニティを生み出すための妥協案を見いだせた場合、Coinbase(コインベース)などの暗号資産専用プラットフォームの他、PayPal(ペイパル)、Venmo(ヴェンモ)、Stripe(ストライプ)など、最近になって暗号資産による決済機能を追加したサービスが米国版のスーパーアプリに進化する可能性がある。消費者が暗号資産を安全かつ正当なもの、そして使いやすいものとして見ることができれば、これがスーパーアプリの基盤となり得るだろう。

関連記事:オンライン決済の巨人「Stripe」が暗号資産市場に再参入

これらの暗号資産アプリや決済アプリを拡大し、他のアプリやサービスと統合すれば、さまざまなタスクが便利になるはずだ。結局のところ、人は銀行に行くときにだけ資金管理のことを考えているわけではない。そもそも銀行口座を持っていない人も存在する。人は、買い物や旅行をするとき、診察料を払うときにも資金管理について考えており、こうしたアプリはそれぞれの人に必要な金融サービスを各個人に合わせて提供する助けとなるだろう。

暗号資産による決済を他のタスクと統合することは、金融業界を一般に広く行き渡るものに変えるという面でも大きなカギとなるだろう。暗号資産を普及させることで、十分なサービスを受けていないコミュニティの他、信用履歴がなくクレジットカードやローンの申し込みが困難な人に対し、より幅広い金融サービスを提供できるようになるからだ。

スーパーアプリの台頭

WeChatは2011年に中国国内のメッセージングアプリとしてサービスを開始したが、2013年には決済プラットフォームとしての機能を果たし、その後まもなく買い物や食料配達、タクシーの配車といったさまざまなサービスを展開するようになった。

今や、WeChatは何百万もの種類のサービスを提供しており、その大部分は、各企業がWeChat内で動作するミニアプリを開発し、そのミニアプリを通してサービスを提供する形となっている。10億人以上のユーザー数を誇るAliPay(アリペイ)の仕組みも同様だ。これら2つのアプリは、過去10年間で中国を現金主義経済からデジタル決済に大いに依存する経済へと変換したとして評価されている。デビットカードやクレジットカードが普及する中間段階を飛び越えた形での進化だ。

この仕組みはインドネシアをはじめ、同地域の他の国でも普及が進んでいる。ここでカギとなるのは、スーパーアプリのサービスの多くに、決済手段を含む金融サービスが搭載されているという点だ。

米国と欧州でも、こうしたアプリの使用は急増している。Apple(アップル)やFacebook(フェイスブック)、Google(グーグル)などの大手テック企業が決済サービスを追加し、VenmoやSquare(スクエア)といった複数の決済アプリがさらに普及するようになった一方で、スーパーアプリの出現はいまだに見られていない

その理由の1つは、データプライバシーに関する規制だ。米国、そして特に欧州におけるプライバシー規制によってアプリ間のデータ共有が制限されているため、アリペイなどのスーパーアプリにミニアプリを自動統合するようなエコシステムの構築が困難となっている。

また、以前から米国に充実したインターネットエコシステムがあることも理由の1つだ。フェイスブックなどの人気ソーシャルメディアやペイパルなどの決済サイトがスマートフォンの誕生以前から存在したため、1つのアプリが複数のサービスを提供する代わりに、これらのプラットフォームがそれぞれ別のアプリを展開する結果となっている。一方中国では、インターネットの大半がモバイルファーストで、スマートフォンの出現以降に進化している。米国市場は長きにわたり、各タスクについて別個のプラットフォームを使用する形態に慣れていたというわけだ。

しかし、アナリストの多くは、さまざまなアプリやテック企業がサービスの種類を拡大している点(例えばTikTok(ティックトック)はショッピング機能を追加し、Snapchat(スナップチャット)はゲーム用のミニアプリを統合し、Appleは決済業界に参入)を指摘し、米国でもいずれスーパーアプリが台頭するか、たとえそうでなくても今より多機能の大型アプリが出現するだろうと述べている。1つのアプリにサービスを追加し、ユーザーのリテンションを維持する方法を見いだすことができれば、あるアプリでのユーザーの挙動を別のアプリと共有せずに済むため、プライバシー規制を回避することにもなる。

米国では、アジア市場のように1つまたは2つのアプリが群を抜いて市場を支配することは考えにくいものの、アプリの巨大化、そして包括的なものへの変化が進んでいることは明らかだ。

DeFiの進化

一方、過去10年間で暗号資産が生み出したものは決済アプリとスーパーアプリだけではない。ビットコインという1つの製品から誕生した暗号資産は、今や総合的なピア・ツー・ピアの金融システム、いわゆるDeFi(ディーファイ、分散型金融)へと進化した。これには、Ethereum(イーサリアム)やDogecoin(ドージコイン)など複数の通貨が含まれ、システム上でユーザーによるお金の投資、売買、消費、貸し出しが可能となっている。

新型コロナウイルス感染症の拡大によって経済の先行きが不透明になり、また従来の金融機関のなかにも暗号資産関連のサービスを一部提供する機関が増えたことで暗号資産の人気がさらに上昇している反面、暗号資産はいまだに主要の金融システムや金融セクターから除外されており、高い危険性があることを多くの専門家から指摘されている。暗号資産の発行体もまた、分散型の金融製品を生み出すという目標から外れるとして、規制に長らく抵抗してきた。

しかし、この状況には変化が生じ始めており、一部の暗号資産プラットフォームが規制の遵守に関心を示すようになっている。

例えば、Coinbaseはユーザーがコインを他人に預け入れた場合に利子を獲得できるという製品の提供を計画していた。ところが、米国証券取引委員会によるガイダンスの提供がなかったにもかかわらず、同委員会から「Coinbaseが製品をリリースした場合は同社を提訴する」との警告が発せられ、この計画を断念するに至った。事実、暗号資産の発行体は、一部の規制に従うことで自社の製品の正当性が高まり、より多くの人に幅広い目的で使用してもらうことができると認め始めているのだ。この流れには、最近、Stablecoin(ステーブルコイン)をはじめとする新たな暗号資産製品が市場に現れたことで、従来の通貨の価値が議論されていることも関係している。

暗号資産の規制については、米国証券取引委員会の委員長Gary Gensler(ゲーリー・ゲンスラー)氏をはじめ、一部の議員や暗号資産業界の人物が賛成の立場を表明しており、規制の実現は近づいていると考えられる。

暗号資産が米国初のスーパーアプリを後押しする存在に

暗号資産の発行体が政府関係者と連携し、イノベーションを制限することなく消費者を保護するような規制を定めることができた場合、暗号資産は長年動きのなかった米国のスーパーアプリの開発を促す要素となる可能性が高い。

Coinbaseが米国証券取引委員会と連携し、互いに調整しながら質の高い規制を定めることができたならどうだろうか。法令をもとにCoinbaseが、ユーザーが暗号資産として信頼できる、存続可能かつ認定された金融手段であることを立証し、魅力的な収益創出のオポチュニティとなる新規の金融製品のみならず、日常シーンでも使用できるツールとして成長させることができる。規制によって通貨に安定性が生まれれば、隠れた価値を持つ資産としてだけでなく、買い物に便利なツールとして変化させることができるだろう。現時点では日常生活で暗号資産を使おうとした場合、トランザクション時間の長さや手数料の高さ通貨価値の変動の大きさなどがユーザーエクスペリエンスに摩擦を生むことになるが、こうした規制により、面倒な一部の手順を排除することも可能だ。

規制のフレームワークを作成することで暗号資産の需要は圧倒的に増加し、飲食業から小売業に至るまで、暗号資産を使った決済処理への対応を希望する企業が突如として増えるだろう。そうなれば、既存の暗号資産決済アプリへの統合が加速し、それらがスーパーアプリに進化していくと考えられる。従来の通貨を銀行に預金する代わりに、これらのアプリで暗号資産の預金をする人も増え、経済、そして金融のエコシステム全体が根元から覆るだろう。

銀行はいつでも大衆が望む製品を生み出してきたが、暗号資産および分散型金融の業界はまぎれもなく、人が必要とする製品とサービスを提供してきた。現に、規制や法的な環境がはっきりしない今でさえ、何百万もの人が暗号資産を使用しているのだ。

中国では、クレジットカードのサービスを十分に受けられない市場で現金の代替手段が必要となり、そのニーズを満たすべく、ユビキタスかつ統合型のデジタル決済が急速に進化した。同じように、暗号資産ベースのスーパーアプリは従来の決済手段に代わって、あるいはそれに加えて、暗号資産を安全かつ効率的に使用することを望む消費者や企業のニーズを満たすものとなるだろう。

暗号資産が無規制のグレーゾーンにとどまる限り、そのプラットフォームもスーパーアプリに進化することなく、業界外の経済や日常生活から除外されたままとなってしまう。そうなれば、米国はモバイルファーストかつデジタルファーストな、革新的で新しい金融エコシステムを構築するチャンスを逃すことになるのである。

編集部注:本稿の執筆者David Donovan(デビッド・ドノヴァン)氏は、デジタルコンサルタント会社Publicis Sapientの米大陸におけるグローバル金融サービスプラクティスを率いており、元Fidelity Investmentsの幹部。

画像クレジット:loveshiba / Getty Images

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(文:David Donovan、翻訳:Dragonfly)

スペインの給与前払いスタートアップPayflowが約10.4億円獲得、スーパーアプリの成長戦略を促進

バルセロナを拠点とし、ネオバンクへの進化を目指すYC出資の給与前払いフィンテック企業Payflow(ペイフロー)が、シリーズA資金調達ラウンドで910万ドル(約10億4200万円)を調達した。それにより、事業設立の2020年1月からの調達額は1360万ドル(約15億5800万円)に達した。

このラウンドの投資家には、Payflowの新たな支援者であるスペインのSeaya Ventures(シーヤ・ベンチャーズ)や、C. Entrepreneurs Fund(C. アントレプレナーズ・ファンド)を通じたCathay Innovation(キャセイ・イノベーション)が共同リードを務め、Force Over Mass Capital(フォース・オーバー・マスキャピタル)、Y Combinator(Yコンビネーター)、Rebel Fund(リベル・ファンド)が参加するなど、国内外のファンドが混ざり合っている。

このスタートアップは、雇用主が従業員に提供するための給与前払いサービスを販売している。(他の給与系スタートアップが行っているように)給与の一部を早期に引き出すために利用者に手数料を課すのではなく、技術に対して雇用主に手数料を課しているのである。

Payflowによれば、このモデルは労働者評議会や労働組合の支持を得ているという。

また、同社は、このモデルは他の給与前払い系のスタートアップとの差別化要因であるとアピールしている。

共同創業者のAvinash Sukhwani(アビナッシュ・スクワニ)氏は「我々が他のオンデマンド型企業と異なるのは、従業員にサービス利用料を請求したことがないことです(我々のサービスは、全額会社負担の、初の真の従業員福利厚生です)」と語る。

また、共同創業者のBenoît Menardo(ブノワ・メナルド)氏は「(Payflowは)ユーザーにとって無料であり、今後もそうあり続けるでしょう。私たちのビジョンは、ブルーカラー労働者のための初の真の福利厚生を提供することであり、従業員がそれを支払わなければならないのであれば、それは本当の特典とは言えないと考えています」と述べている。

ユーザーの間ではダウンロード率が平均40%、一部のクライアントでは90%と、高い普及率を示しており、他のオンデマンド給与プラットフォームや他の社会福利厚生に比べて5〜10倍高いとしている。

また、同社のアプローチは、雇用主にとっても適切な条件を満たしているようで、すでに175以上のクライアントが契約している(10万人のユーザーをカバー)。

本製品はSaaS型のビジネスモデルで、利用する従業員の数に応じて段階的に料金を徴収する。

Payflowは大企業をターゲットにしている。同社によれば、顧客はあらゆる業界にわたるが、予想通り、ブルーカラー労働者の間で最も利用が多いとのことだ。

「レストランからスタートアップ、病院まで、あらゆる業種に対応していますが、ブルーカラーの人たちが一番利用しています」とスクワニ氏はいう。

給与前払い制度は、低所得者にとっては、急な出費に備えて月に何度も給与を受け取ることができるため、借金をする必要がなくなる。しかし、給料をすぐに受け取れるということは、例えば、給料をすぐに使ってしまい、月末にお金がないといった負のスパイラルに陥る可能性がある。

この点についてPayflowは「利用を制限したい場合に備えて」雇用主のダッシュボードに「安全限度額」を設けているという。

「ほとんどの企業はこの上限を50%程度に設定し、従業員が毎月の給与で少なくとも残りの50%を常に受け取れるようにしています」とメナルド氏はいい「そうすれば、家賃など毎月の必要経費を十分に確保することができます」と付け加えた。

同社のシリーズAの資金調達は、Payflowの海外展開に充てられる。

また、ネオバンクへの進化という目標を達成するために、製品開発にも費やす予定だ。

もちろん、ネオバンクの中には、給与前払いを追加機能として提供する企業もある(例えば、Revolutなど)。

フィンテックの場合、スタートアップの勝負は、顧客の取り込みを最大化するためのさまざまな戦略やアプローチに集約される。その後、十分な牽引力があれば、人気のある機能のユーザーを、先の機能の成功によって資金を得た、より本格的な銀行サービスにアップセルするチャンスがあるのだ。

つまり、フィンテックの競争は非常にダイナミックであるということだ。

特定のユーザー層は、他のユーザーよりも忠実で乗り換えが少ないかもしれない。もし、そのような層に、同社のサービスを知ってもらい、忠誠心を高めるような粘着性の高い機能を通じて銀行サービスを売り込むことができれば、今後何年にもわたって一連のサービスをクロスセルできる、解約の少ない銀行顧客基盤ができるかもしれない。もしくは、それがフィンテックの夢というものだろう。

製品開発の面では、Payflowは「スーパーアプリ」を開発し、機能セットの拡張を始めている。

「2022年には、ブルーカラーの従業員にファイナンシャルウェルネスをもたらすことを通じて、B2Bの価値提案を強化する2つの機能が追加されます。その後、多くのB2C機能を開発することで、(アプリの計画は)本質的にネオバンクに変わります」とメナルド氏はいう。

Payflowは、給与前払いSaaS事業を消費者直結のネオバンクに進化させるスケジュールを明らかにしていないが、メナルド氏は、顧客ベースを10倍以上に拡大したいと示唆し「このコンセプトは、数百万人のユーザーを獲得したときに、特に威力を発揮します」と述べた。

「2022年中に最初のD2C機能を開始する予定です」と彼は付け加えた。

スペインで顧客基盤を5倍に拡大することを目標に、市場統合のために新たな資金調達のうち300万ドル(約3億4300万円)を費やす計画である自国市場から、かなり大きな成長を期待している。

市場拡大の面では、Payflowは、すでにサービスを提供しているチリとコロンビアに加え、スペイン以外の2つの市場に進出することを計画している。

拡大は欧州と中南米が中心になる予定だ。

現在、イタリアとポルトガルで試験運用を行っている。また、ラテンアメリカでも2022年中にもう1市場開設する予定というから、2022年中に(現在の)3市場から合計5市場に拡大することになりそうである。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

メッセージ機能を含むPayPalの新しい「スーパーアプリ」が立ち上げ準備完了

PayPal(ペイパル)が自らを「スーパーアプリ」に変身させる計画が、立ち上げに向け動き出した。

PayPalのCEOであるDan Schulman(ダン・シュルマン)氏が、今週行われた第2四半期の決算説明会で投資家に向けて語ったところによると、同社の新しい消費者向けデジタルウォレットアプリの初期バージョンの「コードは完成」しており、同社はゆっくりと立ち上げに向け準備を整えているとのことだ。今後数カ月の間に、同社は米国内でのサービスを十分に強化し、四半期ごとに新しい決済サービス、金融サービス、コマース、ショッピングツールを提供していく予定だ。

これは、PayPalを、中国のWeChat(ウィーチャット)やAlipay(アリペイ)、インドのPaytm(ペイティーエム)の米国版にしようとするプロダクトの方向性の転換だ。こうしたアプリと同じように、PayPalはモバイル決済だけでなく、多くの消費者サービスをワンストップで提供することを目指している。

PayPalは過去の四半期で上記の新機能には、高機能な口座振替、小切手現金化、予算管理ツール、請求書払い、暗号資産サポート、サブスクリプション管理、今買って後で支払う機能などが含まれる可能性があると述べていた。また、2019年に40億ドル(約4400億円)を投じて買収したHoney(ハニー)のモバイルショッピングツールにより、商取引機能を統合するとも述べている。

これまでPayPalは、Honeyを単独のアプリケーション、ウェブサイト、ブラウザの拡張機能として運営してきたが、スーパーアプリには、取引検索や価格追跡など多くの機能を組み込む可能性があるという。

シュルマン氏は米国時間7月28日の決算説明会で、スーパーアプリには他にもいくつかの機能、すなわち、高利回りの預金、口座振替資金への早期アクセス、ピアツーピア決済以外のメッセージング機能(アプリのユーザーインターフェースにより家族や友人と直接チャットできること)などが含まれることを明らかにした。

PayPalは、これまでメッセージ機能を搭載する計画を発表していなかったが、今思えば、人々がチャットとピアツーピア決済を組み合わせることが多いという点で、この機能は理に適っている。例えばユーザーは、アプリから自動でリクエストを送るのではなく、自分で送りたいと思うかもしれない。また、お金を受け取った後に「ありがとう」などの感謝の言葉を伝えたい場合もある。現在、このような会話は、決済アプリの外で、iMessageなどのプラットフォーム上で行われている。だが、これは変わる可能性がある。

「これにより、プラットフォーム上で多くのエンゲージメントが得られるようになると考えています」とシュルマン氏は話す。「メッセージをやり取りするために、プラットフォームを離れる必要はありません」。

PayPalは、ユーザーのエンゲージメントが高まることで、アクティブなアカウント1件あたりの平均収益が向上すると見込む。

また、シュルマン氏は「暗号資産関連の機能追加」についても示唆したが、詳細は不明だ。PayPalは今月初め、米国内の適格なPayPal顧客を対象に、暗号資産の購入限度額を2万ドル(約220万円)から10万ドル(約1100万円)に引き上げた(年間購入限度額なし)。また、同社は2021年、消費者が暗号資産を使って何百万ものオンラインビジネスで決済することを可能にした。この場合、まず暗号資産を現金に換え、次に米ドルで決済する。

アプリのコードは完成しているが、シュルマン氏は今後もプロダクトエクスペリエンスを試行錯誤していく予定だと語り、初期バージョンが「すべてではない」と述べた。つまり、四半期ごとに着実にリリースし、新機能を追加していく予定だ。

ただし、初期の新機能としては、高利回りの貯金、ユーザーエクスペリエンスを向上させた請求書払い、請求先やアグリゲーターの増加、口座振替の早期利用、予算管理ツール、新しい双方向メッセージング機能などがあると話した。

すべての新機能をスーパーアプリに統合するため、PayPalはユーザーインターフェースの大幅な見直しを行う。

「明らかに、ユーザーエクスペリエンスは再設計されつつあります」とシュルマン氏は話す。「リワードとショッピングを追加します。また、クラウドソーシングや慈善団体への寄付など、寄付に関する機能も充実しています。さらに、今すぐ購入して後払いする機能も完全に統合されます。前回数えたところでは、スーパーアプリに搭載される予定の新機能は25個ほどになりました」。

また、デジタルウォレットアプリは、エンドユーザーに合わせてパーソナライズされるため、同じアプリは2つとない。これは、人工知能と機械学習の両方の機能を利用して実行され「各顧客の体験と機会を向上させる」とシュルマンは述べている。

PayPalの業績は、第2四半期の売上高については、ウォール街が予想した62億7000万ドル(約6900億円)に対して62億4000万ドル(約6860億円)となり、1株当たり利益は予想1.12ドル(約123円)に対して1.15ドル(約127円)となった。また、顧客からの総支払額も、アナリストが予想していた2952億ドル(約32兆4700億円)に対し、40%増の3110億ドル(約34兆2100億円)となった。しかし、eBayが独自のマネージドペイメントサービスに移行したことが影響し、第3四半期の見通しを下方修正したことから、同社の株価は下落した

なお、PayPalの新規アクティブアカウントは第3四半期に1140万件の純増となり、アクティブアカウント総数は4億300万件に達した。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:PayPalスーパーアプリアプリアメリカ決算発表

画像クレジット:Photo by Thomas Trutschel/Photothek / Getty Images (Image has been modified)

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

パンデミック後のアフリカのモバイルアプリ市場と急上昇するモバイルゲームアプリ利用率を読み解く

パンデミックは世界のアプリ市場に大きな影響を与えている。モバイルアプリに対する消費者の支出は2021年第1四半期および上半期にそれぞれ320億ドル(約3兆5200億円)、649億ドル(約7兆1700億円)となり、新記録を樹立した。

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アフリカの状況は世界のアプリ市場に関するレポートでもあまり言及されないので、正確な消費者支出を求めるのは難しい。それでも、Google(グーグル)とAppsFlyer(アップスフライヤー)が共同で発表した最新のレポートでは、2020年のパンデミック発生以降のアフリカにおけるアプリ市場の状況について、いくつかの重要な情報を読み取ることができる。

このレポートは、アフリカの3大アプリ市場(ケニア、ナイジェリア、南アフリカ)における、2020年第1四半期~2021年第1四半期のモバイルアプリのアクティビティを追跡している。

この3大市場における6000のアプリと20億のインストール数を分析したところ、2020年上半期から2021年上半期にかけて、アフリカのモバイルアプリ業界(主にAndroid)全体でインストール数が41%増加した。ナイジェリアは最も多く43%増、南アフリカ、ケニアではそれぞれ37%増、29%増となった。

ロックダウン期間の数字

アフリカでは2020年3月22日にルワンダが初めてロックダウンを実施。続いて、ケニア(3月25日)、南アフリカ(3月27日)、ナイジェリア(3月30日)でロックダウンが開始された。

2020年第2四半期からは自宅で過ごす人が増え、アプリのインストール数は3か国で20%増加。南アフリカではロックダウンの影響が最も早く表れ、インストール数は2020年第1四半期と比較して17%増加した。

一方、ナイジェリアとケニアにおける同時期のインストール数の増加は、それぞれ2%と9%だった。レポートによると、このような差は、各国の規制レベルの違いにより生じたものだという。南アフリカは規制レベルが最も厳しく、ロックダウンの頻度も高かった。

2020年第1四半期~第2四半期ではゲームアプリが好調に推移し、非ゲーム系アプリの販売が8%増であったのに対し、ゲーム系アプリは50%増となっている。これは、全世界で2020年第2四半期にゲームアプリのダウンロード数が急増(140億ダウンロード)し、過去最高を記録したトレンドと一致する。

アプリ内課金による収益と前年同期と比較した増加率

AppsFlyerによると、最も大きなトレンドとして注目されるのはアプリ内課金による収益だ。2020年第3四半期におけるアプリ内課金による収益の数字は、2020年第2四半期と比較して136%という驚異的な伸びを示し、2020年の総収入の33%を占めた。レポートによれば「アフリカの消費者が小売店での購入からゲームのアップグレードまで、アプリ内でどれだけ消費しているかがはっきりした」という。

アプリ内課金による収益は南アフリカで213%増加、ナイジェリアとケニアではそれぞれ141%、74%増加した。

スマートフォンの利用時間が増えたことから、アプリ内広告収入も前年同期比で大幅に増加し、2020年第2四半期から2021年第1四半期にかけて167%増加した。

先ほど2020年第1四半期~第2四半期で比較したゲームアプリと非ゲームアプリについては、2020年第2四半期と2021年第1四半期との比較では、それぞれ44%、40%増加している。

フィンテックとスーパーアプリ

過去5年間、アフリカのスタートアップに対するベンチャーキャピタルの投資は、フィンテック分野が圧倒的に多いが、それも当然である。フィンテックは、主にモバイルを利用する、大多数の銀行口座を持たない消費者、銀行口座を使いにくい消費者のみならず、銀行口座を持つ消費者にも多くの価値をもたらす。アフリカにおける10億ドル(約1100億円)規模のスタートアップのうち、1社を除いてすべてがフィンテックであるのは、この価値を踏まえてのことだ。

Disrupt Africa(ディスラプトアフリカ)のレポートによると、アフリカのフィンテックは、2017年から2021年の間に89.4%の成長を遂げ、現在、大陸全体で570社以上のスタートアップ企業が存在する。多くのフィンテックはモバイルベースで、アフリカの消費者が毎日利用するフィンテックアプリの数が反映されている。南アフリカとナイジェリアの消費者によるフィンテックアプリのインストール数は、前年比でそれぞれ116%、60%増加した。

AppsFlyerは、フィンテックアプリと同様に、スーパーアプリも増加していると報告している。スーパーアプリ、すなわち「オールインワン」アプリは、銀行業務、メッセージング、ショッピング、ライドヘイリングなど、さまざまな機能をユーザーに提供する。このようなアプリの増加は、大陸ではデバイスが限られることにも起因するが、フィンテックアプリの急増と同様、システム的な銀行口座の使いにくさも一因である。

レポートは「スーパーアプリは、ユーザーが直面する課題を解消し、顧客情報の取得や従来の銀行では実現できないレベルの利便性の提供を可能とする」と報告している。

AppsFlyerのEMEA & Strategic Projects担当リージョナルバイスプレジデント、Daniel Junowicz(ダニエル・ジュノヴィッチ)氏は、本レポートで取り上げられているトレンドについて次のように話す。「2020年来の(パンデミックによる)混乱にもかかわらず、アフリカのモバイルアプリ市場は盛況で、インストール数は増加し、消費者は今まで以上に多くのお金を費やしています。企業が収益を上げる上で、モバイルがいかに重要であるかがわかります」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:アフリカアプリケニアナイジェリア南アフリカフィンテックスーパーアプリ

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)