Twitterのファクトチェック警告に怒り心頭のトランプ大統領、SNSを規制または閉鎖すると息巻く

ドナルド・トランプ米大統領は、またもや強硬手段に出る。郵送による投票についての自身のツイートに、ファクトチェックを要するという警告ラベルを付けられると、TwitterはTwitter(ツイッター)を再び強く非難した。

画像クレジット:Alex Wong/Getty Images

これまで大統領に好きなようにさせてきたサービスも含め、今までにないほどの強硬な方策を打ち出した。トランプ大統領は、各社ソーシャルメディアサービスは規制を受けるか、閉鎖しなければならないというのだ。共和党は、これまでずっとソーシャルメディアサイトには反保守的なバイアスがかかっていると考えてきた。

「共和党員は、ソーシャルメディアプラットフォームが保守派の声を完全に黙殺している、と感じている」と大統領はツイートした。「我々は、これが実現できるまで、それらを厳しく規制するか、閉鎖するつもりだ。彼らが2016年に何をしようとし、そして失敗したか、みんな知っている」。

関連記事:Twitterがトランプ大統領のツイートに「要事実確認」の警告を表示

この最後の部分は、2016年の大統領選挙で、TwitterやFacebook(フェイスブック)のようなプラットフォームが果たした役割について述べているのだろう。大統領は続いて、先に述べていた郵送による投票についての主張を繰り返し、パンデミックの中で簡単に投票できるようにすれば「不正、捏造、窃盗の温床になる」と非難した。

最初にTwitterが、要ファクトチェックのラベルを付けたのは、まさにこうした主張だった。ただし、この原稿を書いている米国東部標準時午前7時過ぎの時点では、新しいツイートにはまだそのようなラベルは付けられていない。祝日を加えた長い週末に続くここ数日、トランプ氏はお気に入りのメディアプラットフォームであるTwitterに頻繁に投稿していた。昨晩は、Twitterが「自由な発言を抑圧している」と非難していた。むしろTwitterは、利用規約に違反している疑いがあるにも関わらず、大統領の発言を削除したり、アカウントを停止したりすることを避けてきた経緯がある。

今朝も大統領は、ケーブルニュースのモーニングショーのホストを、その亡くなった妻に関する昔から言われている陰謀論に絡めてツイートし、ウォーターゲートよりも「オバマゲート」のほうが悪いと宣言していた。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

新型コロナウイルスに関するデマを暴くWhatsApp用チャットボット

WhatsApp(ワッツアップ)に何文字か書き込むだけで、新型コロナウイルス関連のデマを暴くことができるようになった。

ジャーナリズムを支援する非営利団体Poynter Institute(ポインター・インスティテュート)が、Facebook(フェイスブック)傘下のサービスであるWhatsAppで新しいチャットボットを公開した。これを使えば、世界中の人たちが、例えばこの感染症は中国・武漢の研究所から発せられたといったパンデミックに関する4000件を超えるデマの正体を暴けるようになる(武漢発祥の話は各方面で好まれている説だが、その主張を裏付ける証拠はまだ一般公開されていないため、今のところは虚偽とされる。念のためにいっておくが、ファクトチェック機関の言葉を引用したこのチャットボットは、そう示している)。

このチャットボットは、70以上の国々の100を超える独立系ファクトチェック機関が提供する情報に立脚している。Poyinter Instituteはそれを新型コロナウイルス(COVID-19)に関連するデマの暴露情報に関する最大のデータベースだといっている。このサービスは英語でのみ提供されているが、現在、ヒンディー語、スペイン語、ポルトガル語への対応に取り組んでいるところだとWhatsAppはいう。

チャットボットは次の方法でテストできる。連絡先に「+1 (727) 2912606」を登録して、「hi」と送信する。または、チャットボットの電話番号を連絡先に登録したくない場合は、http://poy.nu/ifcnbotをクリックする。

チャットボットに「hi」と送信し、「1」を送ると、チャットボットから新しいメッセージが届き、気になるキーワードまたは短い文章を入力するよう求められる。そして「origin(出所)」 や「garlic」(新型コロナウイルスにニンニクが効くという話は本当かを確かめたいとき)、その他の思いつく言葉を書いて送る(言葉を送ってから2、3秒待つと答えが返ってくるので、次の言葉を送るまで少し待とう)。

チャットボットはユーザーの国を特定し(モバイル機器の国番号を参照する)、その国に最も近いファクトチェック機関が審査した結果が示される。同時に、新型コロナウイルスに対処するための一般的なヒントも与えてくれる。

利用規約には、無料で24時間使えるとある。また、質問や調査機関やプログラムのパートナーからの回答とその他の対話を匿名化して集計し、共有する旨も書かれている。しかし「個人情報は絶対に共有しません」とのことだ。

IFCN(国際ファクトチェッキングネットワーク)のBaybars Orsek(バイバース・オーセック)氏は、声明の中で「毎月、友だちや家族とつながっていたい数十億人のユーザーがWhatsAppを頼りにしています。現在のような困難な時期には、すべてのプラットフォームで偽情報を広めて人々を惑わそうとする悪い人間が現れるため、ファクトチェック機関の仕事はこれまで以上に重要になります」と述べている。

この新しいチャットボットは、20億人以上のユーザーを擁するWhatsAppが、そのプラットフォーム上で偽情報が蔓延するのを防ごうと努力した最新の結果だ。この数カ月間、WhatsAppはWHOと協力して情報サービスを立ち上げたが、利用者は1日に100万人以上に達している。フェイスブックが所有するこのサービスはまた、各国の連邦政府や州政府とともに、感染症に関する信頼できる情報の提供も手伝っている。

WhatsAppは先日、メッセージの転送に新たな制限を加え、そのプラットフォーム上での転送量を大幅に削減し、さらに3月にはPoyinter InstituteのIFCNに100万ドル(約1億700万円)を寄付した。

画像クレジット:Jaap Arriens/NurPhoto / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:金井哲夫)

新型コロナ偽情報の急増でYouTubeが動画のファクトチェックを米国でも導入

YouTubeは米国時間4月28日のブログで、ついに米国でもファクトチェック機能を導入することを発表した。ブラジルとインドでは既に実施されており、今回の決定はオンラインや一部メディアを通じて新型コロナウイルス(COVID-19)に関する偽情報や陰謀論が急激に氾濫していることを受けたものだ。

ファクトチェック記事は、該当する検索結果とともに表示されるようになり、The Dispatch(ディスパッチ)、FactCheck.org(ファクトチェック・ドット・オーグ)、PlitiFact(ポリティファクト)、The Washington Post Fact Checker(ワシントン・ポスト・ファクトチェッカー)サードパーティー・パブリッシャーなど約10社のサードパーティー・パブリッシャーの記事が使用される。

YouTubeはブログで、新型コロナ関連の偽情報に対する懸念が同機能の導入範囲拡大の主要因であったことを強調し、目まぐるしく変化するニュースサイクルを追跡することの難しさを指摘した。

「我々のファクトチェック情報パネルは、サードパーティーによって事実確認された関連記事を検索結果の上に目立つように表示することで問題を解決しようとしている。視聴者はニュースでいわれていることを、確かな情報に基づいて自分で判断できるようになる」と同社は書いている。

この機能は、問題のある動画の削除に直接つながるものではなく、ユーザーが何かの話題を検索したときに前後関係や背景を提供するものだ。新機能が与える影響は、ユーザーがある説や情報源をどれだけ信じているかによって、当然異なってくる。新型コロナはデマであるという説に既にハマっている人は、PolitiFactやThe Washington Postの関連情報に揺らぐことはないだろう。

これはFacebook(フェイスブック)が2020年3月初めに行った、ウイルスに関する「有害な偽情報」に接したユーザーに警告する仕組みと同じ方向のものだ。Twitter(ツイッター)も新型コロナ関連ツイートに関するガイドラインを改訂し、5Gなどを巡る理論に関する有害情報を削除している。

YouTubeはこの新機能を「システムが全面的に活用できるようになるには時間がかかる」としている。システムの微調整、機能の効率向上や、対象地域をさらに拡大することなどが必要だ。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

トランプの新型コロナ「デマ」発言を巡りFacebookでファクトチェック抗争勃発

ファクトチェッカーは誰がファクトチェックするのか? トランプは新型コロナウイルスを民主党の「新たなデマ」だと言ったのか?

右派パブリッシャーThe Daily Caller(ザ・デイリー・コーラー)がPolitico(ポリティコ)とNBC News(NBCニューズ)の記事に「虚偽」のラベルを貼り付けた問題から、大きな疑問が湧き上がった。The Daily CallerのCheck Your Fact(あなたのファクトをチェック)部門は、Facebookのファクトチェックプログラムに加盟するファクトチェックパートナーであり、Facebook上のリンクに「虚偽」というラベルを添付する権限を持つ。ラベルが付けば、ニュースフィードでのランクも、その投稿者の全体的な露出度も下がることになる。

2019年4月、The Daily Callerをファクトチェックプログラムのパートナーに迎えたFacebookの判断は、批評家の激しい非難を浴びた。同社には、誤りであることが広く認知された記事をいくつも掲載した過去があるからだ。これにより、政治的に偏ったファクトチェックという恐れていた事態が現実になったと信じる人たちもいる。

トランプ大統領は、2月28日の夜、新型コロナウイルスの世界的な大流行を、弾劾とミュラー特別捜査官による捜査、そして自身の第1期の功績を不当に傷つけ批判する目的で仕組まれたリベラル派の陰謀と位置づけた。虚偽の情報です独立系ファクトチェッカーが判定しました。
画像クレジット:Judd Legum

今週、Judd Legum(ジャッド・レーガム)氏のニュースレターPopular Information(ポピュラー・インフォメーション)が指摘したように、Check Your Factは、Politicoの「トランプは新型コロナウイルスを『デマ』と扱うよう集会に参加した支持者に訴えた」と、NBC Newsの「トランプは新型コロナウイルスを民主党の『新たなデマ』と発言」という2つの記事を虚偽と評価した。このファクトチェックの説明には「トランプは実際には、新型コロナウイルスの脅威を『デマ』とする問題への彼自身の対応について説明していた」と書かれている。

トランプは、集会でこう述べていた(太字は編集部による)。

今、民主党は新型コロナウイルスを政治問題化している。知ってるだろ、違うか? 政治問題化してるんだ。我々は大きな仕事を成し遂げた

【中略】

彼らは弾劾という茶番を企てた。完璧なプロパガンダだ。やつらはあらゆる手を尽くした。何度も何度も挑んできた。なぜなら、こっちが選挙に勝ったからだ。逆転だ。やつらは負けた。逆転したんだ。考えてもみろ。考えてもみろ。これはやつらの新しいデマだ。だが我々は驚くべき手を打った。この巨大な国で「感染患者は」15人だ。早期に動いたから、早期に動いたから、我々はもっとやれた。

【中略】

誰も死んでない。なのに変だろ、マスコミはヒステリー状態だ

トランプがそこで何を言わんとしていたかを、正確に捉えるのは難しい。新型コロナウイルスをデマだと言っているようにも聞こえる。デマの深刻さを心配しているようでもあり、彼の対応への民主党の批判をデマだと言っているようでもある。定評あるファクトチェック機関Snopes(スノープス)は、トランプが新型コロナウイルスをデマ呼ばわりしたという主張を、嘘と本当が混在したものと評価し、次のように述べた。「彼の発言である程度の混乱が起きたものの、トランプは新型コロナウイルス事態をデマだとは言っていない」

結論:虚偽
この情報の中心的な主張は不正確です。
Check Your Factによるファクトチェック
「虚偽:トランプは実際には、新型コロナウイルスの脅威を『デマ』とする問題への大統領の対応について説明していた」
画像クレジット:Judd Legum

PoliticoとNBC Newsの見出しは、少々行き過ぎたかも知れない。またこれらの見出しは、トランプがこの事態をどう特徴付けているかを明確に表現している。

しかし最大の問題は、なぜThe Daily Callerの判定を他のファクトチェックパートナーが内部監査できないようにFacebookはこのファクトチェックシステムを設計したかだ。

これを問うと、Facebookは責任の所在をはぐらかし、すべてのファクトチェックパートナーは無党派の国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の認証を受けているため、内部監査の必要がないことを示唆した。この団体は倫理規定を公表しているが、そこにはチェックする者に「できる限り誤りのない作業を行うために、報告、記述、編集において高水準を保つ」ことを求める正確性の基準が含まれている。チェックする者はまた、記事の正確さを判断するための基準に従うことが要求され、「非常に疑わしい」や「見出しが虚偽」といった中間的なラベルを付けることも許されている。今回、The Daily Callerはそれらを使用しなかった。

The Daily Callerを真偽の判定者として相応しくないとは思っていないためIFCNの指針に頼ったと、Facebookは私に話した。またFacebookは、パブリッシャーがファクトチェックパートナーに直接掛け合い、判定の異議を申し立てもこともできると主張してた。だがさらに詳しく聞くと、パブリッシャーが異議申し立てができるのは、その判定を担当したパートナーに対してのみであり、他のパートナーに再判定を依頼したり、最初に付けられたラベルの内部監査を求めることはできないとFacebookは認めた。

これでは異論の多い、または不正確なラベルを撤回させられる余地はほとんどない。倫理規定に違反したファクトチェック団体は、IFCNから除外しFacebookのファクトチェックパートナーの資格も剥奪するべきだ。

たとえFacebook自身が真偽の判定をしたくないにしても、せめて決められた数のファクトチェックパートナーがその役割を果たせる制度を整えるべきだろう。ラベルが不正確だと複数のパートナーが合意したときは、記事のラベルの段階を軽くするか、ラベルを削除する。さもなければ、ひとつのファクトチェック団体の誤りや偏見が、報道機関の仕事全体を抑圧し、人々から真実を奪い去りかねない。

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(翻訳:金井哲夫)

ニュース記事の栄養成分表示で偽情報と戦うOur.News

Our.News(アワーニューズ)というスタートアップは、ユーザーをニュースの消費者として賢くするための努力を続けている。言い換えれば同社は、まったく手に負えない、ある大きな問題に立ち向かっている。そのひとつが、インターネット上に蔓延する膨大な量の偽情報だ。Our.Newsの創設者でCEOのRichard Zack(リチャード・ザック)氏は「悲しいことに、それが真実かどうかを故意にわかりづらくする人たちが世界には無数にいます」と話す。

同時に、メディアを信じない人や、ファクトチェッカーを信じない人(さらに、真実では考え方が変わらない人)も大勢いる。これらすべてが、何を信じるべきかを誰も知らない、または自分の信念を後押ししてくれる話だけを単純に信じる人たちばかりの環境に積み上がっている。

「人々に真実を告げても、偽情報と戦うことはできません。信じてもらえないからです」とザック氏。ではどうしたらいいのか?そのひとつが「ニュースの栄養成分表示」だと彼は言う。「良いか悪いかを示すものではなく、買うべきか止めるべきかを指示するものでもありません。その判断は消費者の自由です」。

ある意味このアプローチは、インターネット上の情報源を格付けするNewsGuardと似ている。実際、ザック氏も「私たちはNewsGuardと彼らのやり方を真剣に支持しています」と話している。だが彼は、パブリッシャーの評価が十分でないと指摘する。そこでOur.Newsは、個々の記事のラベル付けを開始したのだ。彼はそれを、どちらもグラハム・ミルズが製造するシリアルであることを知るに足る情報がない中で「ラッキーチャームかチェリオかで迷う」ようなものだと例えた。

別の言い方をすれば、パブリッシャーの話を鵜呑みにしないほうがいいということだ。超一流のメディアでも間違いはある。なので、彼らが何を主張しているのかを理解し、その情報源と、その主張が独立したファクトチェッカーの審査を受けたか否かを知っておくべきだ。

この記事は私たちのデータベースにインデックスされていません、追加しますか?

Our.Newsのラベルは、FirefoxかChromeの拡張機能、またはiOSで使える。このラベルには、Freedom Forumによるパブリッシャーの説明、AllSidesによる偏向評価、記事の情報源、著者、編集者に関する情報、PolitiFact、Snopes、FactCheck.orgなどの情報源によるファクトチェック情報、「クリックベイト」や「風刺」などの分類、ユーザーの評価とレビューといった情報が含まれる。

Our.Newsでは、1日におよそ5000件のラベルを作成し、今日までに60万件にのぼったと話している。もちろん、我々が読む記事にこのラベルが付いてないことのほうが多いが、そんなときでも、Our.Newsはパブリッシャー情報だけでも提示してくれることがある。また、ボタンをクリックしてその記事を彼らのシステムに追加することもできる。

「私たちはあえて、(記事に関する)客観的な事実と主観的な観点を混合しました」とザック氏。「それが解決策だと考えたのです。[中略]主観ばかりでは単なる人気投票になってしまう。客観性だけでは、誰が真実と判断するのか? となります。この2つを私たちは混在させ、すべてを栄養成分表示ラベルに凝縮したのです。それにより、ニュースの消費者は、より早く自身の判断ができるようになります」。

彼はまた、ユーザーによってこのラベルの扱い方が異なることに気がついた。たとえば、それでもファクトチェッカーは信用できないという人もいるが、パブリッシャーに、通常のコメント欄よりも体系化された形で意見を伝える方法を提供するという価値はあると、ザック氏は主張している。

また、ユーザーによる評価は、評価した人のラベルへの関与度に基づいて比重が変わるという。パブリッシャーの情報、情報源、ファクトチェックを読み飛ばした人による評価は、それらすべての情報を慎重に考慮した人の評価よりも価値は低めになる。

こうした現在の消費者向けの情報配信に加え、Our.Newsは、パブリッシャーやその他の業者がラベルを組み込めるサービスも開始した。ザック氏によるとこれは「ニュースパブリッシャー、コンテンツ収集サイト、ソーシャルネットワーク、記事を公開してるあらゆる組織」が利用できるという(これが同社の収入源にもなる)。

彼らの願いは、Our.Newsのパートナーたちがこのラベルを使うことで、読者がコンテンツをもっと楽に信頼できるようになり、そうした読者からの意見が集めやすくなることだ。ある程度のカスタマイズが可能だが、パブリッシャーはラベルの実際の内容を変更することはできないとザック氏は念を押していた。

関連記事:Facebookのファクトチェッカーは精を出す(未訳)

画像クレジット:Jon S Flickr under a CC BY 2.0 license

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(翻訳:金井哲夫)

Snopesは独自のクラウドファンディングで2020年の偽情報戦争に備える

2020年はおそらくここ数十年で最も激しく厳しい選挙の1つになると予想される。演説台やステージ上だけでなく、現代政治の真の戦場であるインターネット上でも争われることになる。古くからあるのファクトチェッカーであるSnopes(スノープス)も戦いに身を投じる。Snopesは、クラウドファンディングの導入を試み、真実は二の次になっているインターネットプラットフォームに依存しない運営を目指している。

TechCrunchが同社から最後に聞いた話は、ファクトチェックに関するFacebook(フェイスブック)との提携からの出直しだ。提携は、悲惨という言葉では強すぎるが、機能不全だったとは言える。優先順位が明らかに一致しなかったため、Snopesは自社の将来、特にファクトチェックに興味がない会社からお金をもらわずにミッションを遂行する環境を確保するにはどうすればよいのか慎重に考えた。

新しい計画では、Snopesのウェブサイトのかなりの読者が、何年もの間無料で使用していたサービスに対し少額の現金を支払うつもりがあるか見極める。現在のところ、標準的なノベルティ購入型の支援スキームがある(40ドル=約4400円でシャツとマグカップがもらえる)が、定期購読料金やその他のサポート手段はもうすぐ発表される。

「サイトの開設以来、我々がチェックした対象から見た我々の外観から資金調達の方法まで、すべてが長くゆっくりとした進化のプロセスだった。今回のことも、そのプロセスのほんの一部にすぎない」とサイト開設者のDavid Mikkelson(デイビッド・ミケルソン)氏は語った。「我々は、ただ道に導かれるまま進むだけだ」。

ここ数年で、Google、Facebook、Appleなど、ユーザーに実際にニュースを配信するサイトの近くには道が通っていないことが明らかになった。Snopesを新しい方向に率いたオペレーション担当副社長のVinny Green(ビニー・グリーン)氏は、上記の企業が現在行っていることを「信頼性の劇場」と呼んだ。

「FacebookのPRスタッフの人数が世界中の正式なファクトチェッカーよりも多いという事実は、状況の不均衡を示している」と同氏は述べた。「Apple NewsとGoogle Newsには、オンラインで健全な内容を流す使命や義務がない。流されるコンテンツの信憑性と信頼性の確保に関心を持つ誰かが立ち上がる必要がある。だから我々が立ち上がる。だが、資金とその調達先へのアクセスだけは、我々自身で拡大するものだ」。

そのため、グリーン氏とSnopesのチームは、クラウドファンディングのための独自のインフラを構築した。KickstarterやPatreonのようなものは避け、目的に合ったものを作った。出来上がった仕組みは、他のサイトでプロジェクトを支援している人なら誰でもなじみがあるものだ。Snopesの場合、コミュニティからの資金募集と見返りとしてのノベルティ付与が可能な汎用システムとして機能するように拡張可能になっている。

数日前のキャンペーン開始以来、すでに1000人の支持者を得ており、その半数だけが見返りとしてノベルティを求めた。この初めての取り組みは、口コミで存在を広め、バグを取り除くことを目的としている。2020年初めに定期購読料金のほか、新しいプロジェクトに紐付いた資金調達のオプションが登場する予定だ。

「ファクトチェックを行う組織はあるが、ファクトチェックを行うビジネスは多くない」とグリーン氏は述べた。企業は情報をそのまま流してしまう傾向があるか、Facebookのように「パートナーシップ」に素直に同意する傾向がある。巨大な資金力と影響力のある会社がパートナーシップという形でお金と注意を払ったのだから、偽情報に反対していると主張できるわけだ。

「数十億ドル(数千億円)規模のプラットフォームが、なぜ30の物事をチェックするのに月額3万ドル(約330万円)をファクトチェッカーに払うのか、本当に疑ってみる必要がある。Facebookのファクトチェックパートナーシップの主な目的は、彼らのプラットフォームで虚偽の情報の受け取りや表示を防ぐことではないことは明らかだ。それは二次的、三次的な目的だった。信頼できる情報のみを提示することは、彼らのビジネスモデルに反している」。

トラフィックとフィードバックは、Snopesが世界中の多くの人々に評価されていることを示している。なぜSnopesは自らを直接支えられないのか。

「情報を暴くという点では、2020年は大変なことになるだろうが、プラットフォームのビジネスモデルは改善しないだろう」とグリーン氏は語った。「トラフィックが増加し、従来の測定基準ではより大きく見える。一方、批判や歪曲のない情報をオンラインで消費したいという欲求もあると思う」。

ブラウザ拡張機能も計画されている

そのため、クラウドファンディングインフラがいくつかのことを可能にするとSnopesは考えている。第1に、最近報告されたようなFacebookページの不正なネットワークや、右翼メディアであるEpoch Timesへのリンクが疑われる偽のアカウントなどに関して、調査作業を直接サポートできる。Facebookは12月20日、その不正ネットワークの削除を発表し、「我々の調査によればこの動きは、米国に拠点を置くメディア組織であるEpoch Media Groupと、ベトナムで同組織のために活動する個人とつながりがある」と述べた。

Snopesについては言及されていないが、同社は不正なネットワークについて記述したメールが何百回も開かれたと指摘する。これは問題となっている会社間の関係を理解するヒントになるはずだ。このような調査に関するフォローアップや費用の支援目的で、読者に5ドル(約550円)をチップとして寄付してもらうことは、小さいながらも重要な変化を生み出す素晴らしい方法だ。読者はチップだけでなく情報提供もできる。

第2に、Snopesのスタッフが調査の過程で集めた膨大な情報に基づいて作成されるニュースアグリゲーターを正当化し、強化することができる。「包括的ではないが、アップロードした内容は保証できる」とグリーン氏は述べた。先行バージョンは来年春に立ち上げる。

また、サイトの最新版ウェブアプリの導入や、コミュニティからフィードバックとデータを取得する方法の改善なども計画されている。「我々には20億人のユーザーはいない。我々はユニコーンでもないが、我々にもできることがある」とグリーン氏は言う。

広告収入が枯渇し、サイトが潜在的な資金提供者と敵対関係にある場合、他に選択肢はあるだろうか。Snopesのニュースルームのスタッフは12人以下という非常に小さなビジネスだ。既に20年間にわたって使ったりやめたりを繰り返してきたユーザーなら、もう1つ定期購入を増やす余地があるかもしれない。

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(翻訳:Mizoguchi)

コンテンツリコメンデーションネットワークのRevcontentはPoynter Instituteを利用して個々の記事の真偽を判定

‘世界でもっとも急成長しているコンテンツ・リコメンデーション・ネットワーク’を名乗るRevcontentのCEO John Lempによると、同社は、虚偽の、あるいは人を惑わすような記事がたまたま同社のネットワークに載っても、それらからは一銭も収益を上げていない、という。

それを口だけで終わらせないために同社は、Poynter InstituteのInternational Fact Checking Networkが提供する事実チェック(fact-checking)を利用している。International Fact Checkingの二つの互いに独立のファクトチェッカーが、Revcontentネットワークがリコメンドしているある記事を虚偽と判定したら、その記事を指すウィジェットは削除され、記事に対する支払いはいっさい行われない(虚偽と判定される前に稼いだ額も含めて)。

ある意味でRevcontentのフェイクニュースや誤報との戦い方は、大手のソーシャルメディアのやり方に似ているようにも聞こえる。LempもTwitterと同様に、同社は真実の審判員ではありえない、と言い、またFacebookのように、センセーショナルで人を惑わす記事の投稿に伴う金銭的動機を取り去ることが重要、と強調する。

しかしLempによると、コンテンツリコメンデーションの存在意義は、パブリッシャーの個々のプラットホームへの依存を減らすところにある。そんな彼によると、巨大インターネット企業は“粗悪なネガティブPR”に反応してコンテンツを“恣意的に”取り下げている。それと対照的にRevcontentは完全に透明なやり方を採り、フェイクニュースの金銭的報酬は取り去るが人為的に誰かを黙らせることはしない。〔金銭的報酬のないサイトには載らなくなる。〕

Lempは過去に取り下げた記事を具体的に挙げないが、しかし最近の大事件はなんといってもInfowarsだ。今では誰も彼もが、Alex Jonesの極右的で世間に陰謀説を広めるサイトを締め付けている。そして最近の2週間では、関連のアカウントやコンテンツがかなり削除された。

Infowarsの一件はまた、個々の記事ベースでフェイクニュースと有効に戦うことの難しさを示唆した。それに対して、一貫して粗悪なコンテンツをポストしているパブリッシャーを切り離すことは、楽なのだ。

この問題についてLempは、Revcontentにはパブリッシャーをそのネットワークから完全に削除するオプションもあるが、それはあくまでも“最後の手段だ”、と言った。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Googleがファクトチェック(事実性の検証)の専門機関IFCNとパートナーして活動のグローバルな普及を目指す

昨年ごろからGoogleは、検索結果やGoogle Newsのファクトチェック記事を強調表示している。それには、人びとがそうだと信じたものを信じないようにする力はないが、情報の正しさを今なお気にする人には役に立つ。今日(米国時間10/26)Googleはその取り組みをさらに拡大して、ジャーナリスト育成校ポインター学院(Poynter Institute)の国際ファクトチェック・ネットワーク(International Fact-Checking Network, IFCN)とパートナーした。

2015年9月にできたIFCNは、ファクトチェッカーを育てるオンライン/オフラインの教育事業や研究集団への助成、ファクトチェックのための基本原則集の出版などを行っている。その基本原則の遵守を署名している企業や団体は、Associated Press(AP通信社)やWashington PostPolitiFactFactcheck.org、ドイツのCorrectiv、ブラジルのAos Fatosなど、多岐にわたる。

Googleの計画は、このパートナーシップを利用して公認のファクトチェッカーを増やし、またIFCNの基本原則集を各国言語に翻訳してファクトチェックという考え方を全世界的に広め、そうやってできるIFCNのコミュニティにファクトチェックのためのツールを提供することだ。また教育訓練など、そのほかのサポートにも取り組む。

[ファクトチェックの例]

[就任後最初の6か月で署名した法律の数はこれまでの大統領中で最多…トランプの主張。PolitiFactによるファクトチェック: 偽(false)。]

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa