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データはヘルスケアの問題を解決できるだろうか?
それだけでは無理だ。だが適切な使い手に適切なデータを手渡せば、おそらくかなり大きな前進を期待できるだろう。そしてそれこそが今回お話しするスタートアップの目的だ。
今回The Exchangeは、Truveta(トゥルベタ)社のCEOとCMOであるTerry Myerson(テリー ・ マイヤーソン)氏とLisa Gurry(リサ ・ ガリー)氏から話を聞いた。Truvetaは、ヘルスケア提供者から大量のデータを収集し、匿名化して集計し、それを第三者が研究のために利用できるようにすることを目指す若い企業だ【訳者注:米国英語の「ヘルスケア」は病院 / 医療を含む健康管理全般を意味する】。
これは大変な仕事だが、Truvetaを支えるチームは、大きなプロジェクトを遂行した経験を持っている。マイヤーソン氏は、Microsoft(マイクロソフト)時代にはトップの直下で、Windows(ウインドウズ)のようなよく知られたプロダクトを統括していたことで有名だ。またガリー氏はかつてMicrosoft内のリーダーの1人であり、直近ではMicrosoft Store(マイクロソフト・ストア)製品の戦略を担当していた。
その2人が、今はヘルステックデータの会社にいる。どうしてそうなったのだろう?Microsoftを退社した後、マイヤーソン氏はシアトルのベンチャーキャピタルであるMadrona(マドロナ)や、プライベートエクイティを得意とすろ巨大な投資グループのCarlyle Group(カーライル・グループ)で働いていた。その数年後、マイヤーソン氏のMicrosoft時代の元同僚数名が、ヘルスケア大手のProvidence(プロビデンス)に勤務していた。彼らは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が最初に米国をロックダウンしたときに、マイヤーソン氏に連絡してきた。マイヤーソン氏は、数回の通話に参加することには同意したが、家に閉じこもっていたため、チームに正式には参加しなかった。
その間、彼はProvidenceがTruvetaとなるアイデアについての白書をまとめたことを知った。それはヘルスケア提供者から十分な数と多様性のあるデータを収集することで、それを活用したあらゆる種類の研究が可能になるというものだった。マイヤーソン氏はそのコンセプトに強く惹かれ、後に会社を設立することとなった。そして、彼は創業を手伝ってもらうために、ガリー氏を含む元同僚たちを呼び寄せた。
Truvetaは現在約50人の従業員を抱えているが、2021年中に100人程度までその規模を拡大する予定だとマイヤーソン氏はいう。
読者の頭の中には疑問が溢れていると思う。Truvetaの事業はまだ早い段階だが、同社は米国時間2月11日に、そのデータ目標を達成するために、14のヘルスケア提供者と契約したことを発表した。それらの提携企業は同社に対する投資家でもある(マイヤーソン氏自身も資本を投入している)。
私は同社の事業計画に興味を惹かれた。マイヤーソン氏によれば、Truvetaはデータにアクセスしたいのが誰かによって異なる料金を請求するとのことだ。ご想像のとおり、営利団体は独立した個人研究者とは異なる対価を支払うことになる。
Truvetaの次の課題は、より多くのデータを取得し、内部のデータスキーマを整理し、研究者からのフィードバックを収集して、商業的なアクセスへつなげることだ。
米国のヘルスケアは不公平だ。これはTruvetaの2人の幹部が私たちとの通話中に繰り返し強調したことだが、それゆえに同社にはそれを改善し、人種差別や性差別を減らすための大きな市場が与えられる。
マイアーソン氏とガリー氏と彼らのスタートアップの話をするのは少し妙な感じがした。過去には彼らとMicrosoftの最大のプラットフォームのいくつかについて対談をしたことがあるからだ。彼らがTruvetaをどのくらいの速さで、すばらしいアイデアの段階から、成功した商業的な会社に変えられるのか、そして、どれだけ大きく育てることができるかを見守っていこう。
マーケットノート
ここ数日、手を伸ばせなかったことがたくさんあった。たとえばAdyen(アディエン)の利益について。この欧州発の決済プラットフォームは、下半期の売上を3億7940万ユーロ(約484億3800万円)と報告したが、これは前年同期比28%増である。そこから2億3680万ユーロ(約302億3000万円)のEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益)を報告している。フィンテックは儲からないと言ったのは一体誰だったろう?(もしStripe(ストライプ)の評価額や今後の株式公開が気になるのならAdyenのこの報告は必読だ)。
そして、私たちの指からこぼれ落ちたラウンドもあった。最近730万ドル(約9億3200万円)のシリーズA調達を行ったCloudTalk(クラウドトーク)がその例の1つだ。このスロバキア発のスタートアップは2019年に160万ドル(約2億400万円)のシードラウンドを行っている。このスタートアップは、その名が示すとおり、コールセンター向けにクラウド電話サービスを提供している。
リモートワークの世界的な成長のおかげで、私たちは、おそらく2020年がCloudTalkにとって良い年になったのではないかと考えていた。そのとおりだった。メールの中でCloudTalkは「Zoomのような成長は達していない」が、2020年における同社のサービスへの需要は「期待を上回るものだった」と述べている。最新のラウンドをそれが説明している。
The Exchangeはまた、私を含むソフトウェアオタクの間で急速に関心の高まっているトピックのサブスクリプション価格づけと利用量に基づく価格づけの対比について、同社が何らかの見解を持っているかどうかにも興味を持っていた(来週はAppianやFastlyなどからのコメントを交えてさらに個の話題をとりあげる)。同社によれば、CloudTalkは「基本料金に加えて利用量にも課金する」ということなので、価格設定の観点からは同社はハイブリッド企業である。CloudTalkは、その価格設定に関して「お客さまは、事前にいくら支払えば良いかを知りたいと考えますので、このやり方は双方にとってバランスが取れているやり方です」という。
心に留めておきたいスタートアップだ。外国人が自由に金融システムにアクセスできるようにすることに焦点を当てた、世界を相手にしたネオバンクのZolve(ゾルブ)も同様に心に留めておきたい。私は記事を書けなかったが、TechCrunchではカバーされている。詳しくはこちらから。
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さて、ここ数日仕事中にテレビを見る時間がなかった人のために、Robinhood(ロビンフッド)の話をしておこう。それは議会公聴会に出席する羽目になったが、フィンテック巨人である同社のビジネスモデルに関するいくつかの論点を除けば、ほとんど退屈な内容だった。
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先週は込み合うニッチなスタートアップ界にとっては、忙しい1週間となった。OKRのスタートアップにはさらに多くの資金が流れ込んだ、このことから、私たちの念頭には、将来的にVCたちが関連企業にも資本を投入するのではないかという問いが浮かぶこととなった。Public(パブリック)も数億ドル(数百億円)を調達した。予想通りだ。そしてローコードサービスのOutSystems(アウトシステムズ)は、1億5000万ドル(約191億5000万円)を調達した。いや、とんでもない1週間だった。
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その他のことなど
いくつかのデータを残しておこう。まず第一に、Clubhouse(クラブハウス)のメトリクスがようやく製品にまつわる誇大広告と一致し始めているということだ。人びとが人々は大挙して押し寄せ、その総ダウンロード数を1000万以上に押し上げている。
そして、私が見逃したニュースの中では、Substack(サブスタック)の登録者数が50万人を突破していた。すばらしい!
そして最後に。先週はシカゴを拠点とするKin(キン)という名の保険テックのスタートアップが、「総被保険者資産総額」100億ドル(約1兆531億円)を突破した。The Exchangeは同社にその経営状況を問い合わせた。結局のところ、50セントで1ドルを売れば、保険料のボリュームを増やすことは難しくはないということだ。
同社のRuth Awad(ルース・アワド)氏は、私たちの問い合わせに対して、同社の「損失率は53%、粗利率は32%」だと回答している。悪くない。保険テックが実験的なものから社会的成功を収めるまでにどれほどのスピードで進んできたのかを考えると、Kinは今後も注目したい企業だ。
最後に、週末には地元のヘビメタバンドの応援をお忘れなく(1、2、3、4)。
画像クレジット:Nigel Sussman
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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)