神戸市が新型コロナ対策として遠隔ICUシステムを導入、スタートアップのT-ICUと連携

神戸市は8月12日、新型コロナウイルス感染症患者の入院を受け入れている市内の医療機関に「遠隔ICUシステム」を導入することを発表した。遠隔地からネットワークを通じて集中治療専門医による診療支援が可能にすることで、重症化の早期発見など感染症患者への適切な医療の提供と市内の医療提供体制の充実を図るのが狙いだ。

現在、神戸市内の医療機関のすべてで新型コロナウイルスに感染した患者を受け入れられる態勢が整っているわけではない。一部の医療機関が、軽症・中等症患者向け病床と、重症者向け病床を確保して懸命に治療に当たっているという状態だ。しかし現状では、中等症患者が重症化するリスクを考慮して、各医療機関が重症者病床を設けている中央市民病院に患者を早期に転送することが多くなっている。これにより最後の砦である中央市民病院の業務が逼迫するという悪循環が起きる恐れがある。

一方で市内すべての医療機関が感染症の専門ではないため、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる医療機関であっても、重症化しつつある患者の見極めが難しいケースもあり、結果的に治療が遅れてしまうリスクもある。

神戸市はこういった問題を解決するために、遠隔ICUシステムを導入。専門医によるリモート診断によって、軽症、中等症、重症を見極め、適切な処置が受けられる医療機関に患者を振り分けることで、重症者向け病床を持つ中央市民病院はもちろん、軽症・中等症患者向け病床を持つ市中の医療機関が逼迫しないように調整するのが狙いだ。

遠隔医療には、神戸市拠点のスタートアップであるT-ICUが開発したシステムを利用。市内の医療機関に導入するこで、T-ICUに登録している集中治療専門医が待機するサポートセンターとネットワークでつなぎ、生体情報モニター、電子カルテなどの情報を共有してテレビ会議にてコンサルテーションを行うという。もちろん、感染症指定医療機関である神戸市立医療センター中央市民病院が、T-ICUに知見を共有し、治療方針などの助言も行う。

導入スケジュールは以下のとおり。

  • 2020年4月〜:中央市民病院と西市民病院、および西神戸医療センターの間で試験導入し、有用性を検証
  • 0220年8月:市内医療機関での導入先調整
  • 2020年9月:システム設置、運用開始
  • 2021年3月末:事業終了予定(新型コロナウイルス感染症の状況により延長の必要性を検討)

AI医療機器スタートアップのアイリスが資金調達を実施、累計調達額が約29億円に

アイリス

AI医療機器スタートアップのアイリスは8月6日、資金調達を実施し、2017年11月創業からの累計資金調達額が約29億円となったと発表した。引受先は、トヨタ自動車を主な出資者として、スパークス・グループ運営の「未来創生2号ファンド」、CYBERDYNEと同社子会社運営のCEJファンド(サイバニクス・エクセレンス・ジャパン 1号投資事業有限責任組合)。

調達した資金は、AI医療機器のさらなる研究開発の加速とグローバル展開に向けた準備、優秀な人材の獲得に利用する。

アイリスは、AI技術を用いた高精度・早期診断対応のインフルエンザ検査法の開発を進行。2019年4月には第一種医療機器製造販売業を取得、2019年5月には塩野義製薬とBeyond Next Venturesを引受先とする12.5億円の資金調達を実施。冬季には大規模な臨床試験を実現し1万人以上のデータを収集するなど成長を続けてきた。

2020年6月にはPreferred Networksとの取り組みを開始し、同社が開発するAI医療機器の上市に向けた支援を実施している。

アイリスは、技術開発と事業のさらなるスピードアップを目指しており、また、開発する機器や技術は広く世界に向けて提供できると考えているという。こうした背景から今回、知能化技術への投資に注力する「未来創生2号ファンド」および医療機器の豊富な海外展開実績を有するCYBERDYNEからの資金調達を実施した。

今後もインフルエンザAI診断支援機器だけでなく、他疾患への展開など、アイリスがミッションとして描く「すべての医師が匠の医療技術を共有し育てることのできる社会の実現」を目指すとしている。

なおアイリスは8月4日、AIエンジニアの吉原浩之氏が所属するチームが、世界的AIコンペティションプラットフォームKaggleの「Prostate cANcer graDe Assessment (PANDA) Challenge」(PANDA Challenge)においてGoldメダルを受賞したことを発表している。また吉原氏は、これまでに獲得していた3つのSilverメダルとこの受賞で、Kaggle Masterの称号を獲得した。同社は、吉原氏が参加したPANDA Challengeは前立腺癌の生体組織診断という医療分野コンペティションにあたり、参加によって得られた技術はアイリスのAI医療機器開発にも大いに活かされるとしている。

東大IPCがアドリアカイムに3億円出資、迷走神経を刺激し心筋梗塞領域を縮小させる治療機器を開発中

東大IPCがアドリアカイムに3億円出資、迷走神経を刺激し心筋梗塞領域を縮小させる治療機器を開発中

東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)が運営する協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合(協創1号ファンド)は8月4日、アドリアカイムに対して3億円の出資を行ったと発表した。同社は、迷走神経を刺激することで心筋梗塞領域を縮小させる世界初・新発想の治療機器の開発を進めている。

東大IPCは、アドリアカイムの技術が日本生まれの世界初新発想コンセプトであること、未解決の治療ニーズ(アンメット メディカル ニーズ。Unmet Medical Needs)に対応するものであることなどの理由からこの度の出資を決定した。今後のアドリアカイムの事業について、東大IPCは積極的に支援する。

アドリアカイムは、オリンパスで医療機器の研究開発に長年携わってきた⼩林正敏CEOや今林浩之CTOが2018年11月に設立した医療機器スタートアップ。国⽴循環器病研究センターとの長年の共同研究の成果を活かし、急性心筋梗塞患者の慢性心不全への移行を軽減するための世界初の迷走神経刺激デバイスの開発を進めている。

急性心筋梗塞患者は、日本国内で10万人、アメリカでは100万人が毎年発症し、大部分の患者さんが救急搬送されて手術を受けているという。近年、カテーテル治療などの治療体制が進歩し、急性心筋梗塞で直接的に命を落とす患者さんは減ったものの、退院後に予後不良となる患者もいるそうだ。

アドリアカイムが開発を進める治療デバイス「ARIS」(開発コード名)は、急性心筋梗塞患者の迷走神経を刺激することで心筋梗塞領域縮小を図るもの。薬剤で実現できない迷走神経の賦活化を電気的刺激で実現し、より高い治療効果を目指しているという。

今回、東京大学大学院新領域創成科学研究科 久田俊明名誉教授(UT-Heart研究所 代表取締役会長)のチームが開発したヒト心臓モデルを用いたシミュレーターの技術を活用。同シミュレーション技術は、従来動物実験に頼っていた電気刺激による神経賦活の現象を予測解析し、同医療機器の開発に大きく貢献した。開発段階の医療機器の検証手法として、非常に有効であり、今後も多方面への活用が期待されるとしている。

東大IPCの協創1号ファンドは、東京大学関連スタートアップの育成促進と、東京大学を取り巻くベンチャーキャピタルの質・量の充実を中心にすえて運用することで、東京大学の周辺に持続可能なイノベーション・エコシステムを構築し、世界のスタートアップ創出拠点のひとつとなることへの寄与を目的としている。

具体的な運用として、今までに6つのベンチャーキャピタルへのLP出資(ファンド オブ ファンズ)と、16社の東京大学関連スタートアップへの直接投資を行い、現在も積極的に東京大学関連スタートアップへの直接投資を行っている。

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遺伝子検査のHelixが新型コロナ検査体制拡大に向け米国立衛生研究所から約35億円獲得

米国立衛生研究所(NIH)は、Rapid Acceleration of Diagnostics(RADx、診断迅速化)プログラムの最初の受益者を発表した。サンマテオに本拠を置くHelix(へリックス)が連邦政府から3300万ドル(約35億円)を受け取ることになった。Helixは2015年創業のヘルステックスタートアップで個人の遺伝情報から得られる洞察に注目している。同社はRT-PCR法を用いてSARS-CoV-2(新型コロナのウイルス名)の存在を検出する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検査も開発した。

資金は、新型コロナ検査の規模を拡大するHelixの取り組みを支援するために使用される。同社は今秋までに、1日当たり10万回のテストを達成し、その後スループットキャパシティ(単位時間当たりの処理量)をさらに拡大することを狙う。Helixの検査は2020年7月初めにFDAのEmergency Use Approval(EUA、緊急使用承認)を取得して以来、米国全体で利用可能になった。同社の検査は翌日に結果が出る。

Helixは第2のタイプの検査もEUAに申請した。これはNGS(DNAまたはRNA配列解析技術の1つ)検査で、より多くの検査量に対してより高いスループットを提供するとともに、偽陰性をなくしウイルスの存在を正確に検出する感度の良さを持ち合わせる。この検査は、承認されればということだが、RADxプログラムが最終的な目的とする今よりはるかに大規模な検査体制をHelixが実現するための鍵となる。

現在承認申請中の2つ目の検査システムは、1日当たり最大2万5000件を処理できる。この検査システムはサプライチェーンの負担を軽減する方法を使用している。

画像クレジット:Helix

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(翻訳:Mizoguchi

レントゲンに代わる低コスト小型スキャナー開発のNanoxが約62億円調達、5G利用で救急車搭載も夢ではない

イスラエルのスタートアップNanox(ナノックス)はスキャン装置のサイズとコストを抑えるハードウェア、そして画像の質と画像から得られる洞察を高めるソフトウェアでもって、医療画像と画像分析の世界を席巻しようという野心を持っている。7月28日、同社はその計画さらに前に進めるための大きなステップを発表した。5900万ドル(約62億円)を新たに調達し、これによりシリーズBを1億1000万ドル(約115億円)でクローズした。新たな資金をもとに、体全体をスキャンするハードウェアの開発を継続し、顧客をさらに開拓する。同社はすでに13カ国で契約を獲得している。

今回の資金はSK Telecom(SKテレコム)やカナダの保険グループIndustrial Alliance、Foxconn(フォクスコン)、Yozma Korea(ヨズマコリア)といった戦略的投資家が拠出した。シリーズBではこれまで2回にわたって5100万ドル(約54億円)調達された。最新のものは6月の2000万ドル(約21億円)で、戦略的投資家SK Telecom(SKテレコム)が出資した。同社はNanoxのハードウェアを韓国で製造するための工場を建設中だ。実は日本にも工場がある。

Nanoxはバリュエーションを明らかにしていないが、6月時点では6億ドル(約630億円)だった。そしてTechCrunchが把握しているところでは、今回が上場前の最後の調達となりそうだ。ただ、上場のタイムラインはまだ設定されていない。もちろん、スタートアップの資金調達の世界ではこうしたタイムラインは決して明らかにされることはない。

Nanoxの創業者でCEOのRan Poliakine(ラン・ポリアキン)氏は7月28日のインタビューの中で、同社の売上の大半はライセンス取引で上げていると述べた。FoxconnやSK、富士フイルムなどのメーカーがNanoxのコンセプトに基づくデバイスを製造するのにIPを提供する。計画では今後7年間でスキャナー1万5000台を製造する。

長期的には、Nanoxはサービスの提供を開始するために、同社のマシンが設置される全マーケットで現地当局の承認を得る。サービスは、ハードウェアから得られた画像に洞察を提供するというものだ。承認取得のための作業は進められているが、新型コロナウイルスの影響で遅延している。実際の承認取得などその後の多くのプロセスもずれ込むことになる。

Nanoxの事業はサービスという点において特に興味深い。というのも、医療サービスが現在、そして将来どのように提供されるかというところで大胆なシフトを強調するものだからだ。

よりパワフルなコミュニケーションネットワークや改良された画像テクノロジー、かなりの人件費、そして施設を最新の状態に保つための高額のメンテナンス費用の影響で、病院などの施設は分析業務をオンサイトラボからリモート施設にアウトソースするようになった。これにより、新たなチャンスに入りこもうとする事業が数多く生まれることになった。

「通信会社は5Gの販売方法をめぐり、機会を模索している」とSK Telecomの会長Ilung Kim(イルウン・キム)氏は6月のインタビューで述べた。「そしていま、5Gデータを使いながら救急車の中で使用できるほどのサイズのスキャナーが期待できる。業界にとってゲームチェンジャーだ」。

Nanoxは当局の承認を待っているが、すでにこのサービスで契約を結んでいて、つまりマーケットの需要があることを示している。直近では、USA Radiology(USAラジオロジー)と契約を結んだ。この契約では、全米とその他15カ国でのスキャン・アズ・ア・サービス事業でNanoxのテックを使う。

もちろんNanoxはそうした契約では2つの面で利益を上げる。サービスのテックをライセンス貸しするだけでなく、製造して販売するハードウェアの接続ライセンス料も徴収している。

以前述べたように、Nanoxシステムは占有のデジタルレントゲン技術をベースとしている。これは画像をとらえて処理するのにレントゲンではなくデジタルスキャンに頼るという、画像分野では比較的新しい技術だ。Nanoxの主力製品であるARCハードウェアは重さ70kg。これに比べ、平均的なCTスキャナーは2000kgもある。そして製造コストはCTスキャナーが100〜300万ドル(約1〜3億円)なのに対し、ARCは約1万ドル(約105万円)だ。

ポリアキン氏によると、小型のマシーン(よって安い)で、画像処理のほとんどをクラウドで行うのに加えて、Nanoxシステムは1秒もかからずに画像を生成できる。既存の方法に比べて放射線被曝という点においてかなり安全だ。そのため、マシーンの所有が簡単で安くなり、そして通常のスキャンで一部の箇所だけでなく体全体をカバーでき、そこからさらに知見を得ることができる。Nanoxはまた、そうした画像からさらに正確な知見を「読む」複雑なアルゴリズムを構築している機関と提携している。

Nanoxの取り組みは、かなり注目せずにはいられないものだ。以前指摘したように、画像はこのところかなりニュースで取り上げられている。というのも、画像では新型コロナウイルスが肺や他の器官にダメージを与えているかが確認でき、画像は新型コロナ患者もしくは新型コロナに罹っているかもしれない人の症状の進行状況を最も正確に把握する手段の1つだからだ。

その一方で、グローバルの新型コロナパンデミックで人々は互いに距離を取ることを余儀なくされ、ヘルスケア分野では遠隔から患者を簡単に診断できるサービスの需要が高まった。このため、医療分野が今後どういう方向に展開されるかという点で、Nanoxと同社のアプローチは脚光を浴びることになった。

事業を次のレベルに進められるよう、Nanoxは必要な当局の承認が得られるはずだ。

「世界を変えることを目指している、と言うのはたやすい」とポリアキン氏は声明で述べた。「そうした言葉の最大の課題は常に実行にある。当社は早期発見でがんや他の病気の撲滅をサポートするという大胆なビジョンを持っている。夢を現実のものにするグローバルの医療画像サービスインフラ展開のために鋭意取り組んでいる」。

画像クレジット: Nanox

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(翻訳:Mizoguchi

相鉄ビルマネジメントが横浜・相鉄ジョイナスで予約制トイレ「QREA」の実証実験を開始

相鉄ビルマネジメント QREA Duchamp 佐賀県やわらかBiz 相鉄×髙島屋 アクセラレーションプログラム

相鉄ビルマネジメントは7月29日、横浜駅西口の商業施設「相鉄ジョイナス」で、予約制トイレ「QREA」(クリア)の実証実験を実施すると発表した。実証期間は7月30日から8月30日まで。

QREAは、2020年1月設立のDuchamp(デュシャン)が開発しているサービスで、「佐賀県やわらかBiz創出事業」として佐賀県が事業化を支援。QREA活用のもと、Duchampと共同で、相鉄ジョイナスの地下2階トイレ(男女各1個室)において、商業施設トイレの混雑に関する課題解決およびコロナ禍において密になる場面の緩和などを目的に実証実験を実施する。

  • 実施期間: 7月30日から8月30日(相鉄ジョイナス休館日8月18日を除く)
  • 実施時間: 14時~19時
  • 実施場所: 相鉄ジョイナス 地下2階 エレベーター前トイレ 男女各1個室
  • 特設サイト: QREA実証実験特設サイト(https://qrea.app/)を7月30日開設予定

相鉄ビルマネジメント QREA Duchamp 佐賀県やわらかBiz 相鉄×髙島屋 アクセラレーションプログラム

QREAは、「誰も漏らさずに済む世界」をコンセプトとしており、過敏性腸症候群(IBS。Irritable Bowel Syndrome)の方を主な対象としている。過敏性腸症候群の方は、日本人の10人に1人、全国に1200万人いるといわれ、トイレが混雑している場合、利用できず困ることがあるという。

同サービスでは、後付け可能な専用の鍵とLINE公式アカウントを用い、トイレの検索・予約・確保が行える(実証実験期間中は無料)。

トイレを利用したい際は、LINE公式アカウントから予約すると、リモートで施錠される。予約したトイレに着いたら、LINE公式アカウントで鍵を開け、利用可能となる(使用時は内側から手で施錠)。予約がない場合は、トイレは通常通り使用できる。相鉄ビルマネジメント QREA Duchamp 佐賀県やわらかBiz 相鉄×髙島屋 アクセラレーションプログラム

相鉄グループと髙島屋は、横浜駅西口地区を次世代にふさわしい最先端の街とするために、スタートアップ企業の支援と新たなサービスを創造する「アクセラレーションプログラム」を共同で推進。スタートアップ企業と共に横浜駅西口地区の活性化に取り組んでいる。

今回は、SDGs(持続可能な開発目標)における「3 すべての人に健康と福祉を」「6 安全な水とトイレを世界中に」「9 産業と技術革新の基盤を作ろう」「11 住み続けられるまちづくりを」の目標に対し、商業施設として、必要とする方が安心してトイレを使える仕組みをアプリ上の地図に表示することで、トイレへの適切な誘導・案内を実施することに取り組むとしている。

またQREAは、「相鉄×髙島屋 アクセラレーションプログラム第3期」に応募があったものの1つ。相鉄グループでは、誰もが暮らしやすい社会を実現するためSDGsの目標も踏まえて、地域の課題解決や地域に貢献する施設づくりに取り組むとしている。

佐賀県やわらかBiz創出事業は、佐賀県内法人・個人による、IT・クリエイティブ産業を活用した新たなビジネスにつながる事業に対して、1000万円を上限に必要となる費用を補助するというもの。採択後は、起業支援関係者とともに、ビジネス化を支援している。

東京工業大学発ベンチャー認定企業aiwellが資金調達を実施

aiwell AIプロテオミクス

東工大発ベンチャー認定企業aiwellは7月29日、シリーズA’ラウンドにおいて、第三者割当増資として資金調達を実施したと発表した。調達額は非公開。引受先は個人投資家の栢孝文氏(シグナルトーク 代表取締役)。

2018年1月創業のaiwell(アイウェル)は、東京工業大学 生命理工学院 准教授 博士(理学)林宣宏氏の研究室と次世代技術「AIプロテオミクス」に関する共同研究を2018年10月より開始。2019年4月に東京工業大学 大岡山キャンパス内に「東京工業大学・aiwell AIプロテオミクス協働研究拠点」を開設し、2019年12月には東工大発ベンチャー認定企業となった。

AIプロテオミクスとは、林宣宏氏が発明した、生体の状態をプロファイルする次世代特許技術。二次元電気泳動技術の(大量の検体を扱うための)ハイスループット化と(微量な検体でも分析を可能とする)高感度化に成功。

生体内の遺伝子産物を網羅的に解析するプロテオミクスの基盤技術である二次元電気泳動法を用いて、
血中タンパク質の二次元電気泳動画像をAIが学習することで、様々な病気や怪我になる一歩手前の状態を発見する研究として注目されているという。敗血症においては、98.2%の精度で的確な判断を可能にした。

aiwellは、AIプロテオミクスに関する研究開発とその実用化、社会実装を推進することで、病気や怪我の自覚症状が出る前、そして重篤化をする前にAIの画像判断による診断支援や遠隔診療支援、創薬支援が可能になるサービスの実現を進めている。

今回調達した資金は、AIプロテオミクスの社会実装、実用化のさらなる推進に活用。aiwellは今後も資金調達を進めるとしている。

栢孝文氏は、会員数130万人超のオンライン麻雀ゲーム「Maru-Jan」やヘルスケアサービスを開発・運営するシグナルトークの代表取締役。個人投資家として、ヘルスケア事業など社会貢献性の高いスタートアップの支援を行っている。

SlackやMS Teamsでの日常のやり取りから従業員コンディションを解析する「Well」開発のBoulderが1億円調達

SlackやMicrosoft Teamsを利用して従業員のコンディションを確認・解析できるエンプロイーサクセスプラットフォーム「Well」(ウェル)を開発・運営するBoulderは7月28日、プレシリーズAラウンドで総額1億円の資金調達を発表した。第三者割当増資による調達で、引受先はジェネシア・ベンチャーズとOne Capital。ちなみにOne Capitalは、元Salesforce Ventures代表の浅田氏が創設した新ファンドだ。

関連記事:元Salesforce Ventures浅田氏が独立系VCのOne Capital設立、1号ファンドは50億円規模でスタート

資金調達にあわせて、これまで一部企業にクローズドで提供していたWellのベータ版をパブリックベータとして一般公開する。Wellは、SlackやMicrosoft Teamsでの応答速度や内容などの行動データを機械学習で解析し、従業員や組織のコンディションを客観的かつリアルタイムに可視化できるのが特徴のSaaS。普段のメッセージのやり取りだけではわからない部分については、より調査が必要な従業員だけに向けてアンケート(サーベイ)を実施することで正確性・信憑性を補う仕組みだ。

2015年12月に「労働安全衛生法」が改正され、従業員50人以上は同じ場所で働くオフィスや営業所、支店などを持つ企業は、ストレスチェックや面接指導が法律で義務づけられている。多くの企業は、ウェブページやSlackなどのコミニュケーションツール上で従業員のコンディションをチェックするためのアンケートを実施し、それを基に上司や人事、総務、産業医との面接というのが一般的だ。

この場合、アンケートの頻度を上げることで従業員のコンディション見極めの精度も上がるが、アンケート頻度が多いと総務・人事側も従業員側も大きな負担になる。アンケートに適当に回答する従業員も増えてしまい、逆に精度が下がってしまう恐れもある。

Wellはまさにこういった問題を解決してくれるサービス。Slackなどでやり取りされているメッセージとサーベイを通じて、従業員の業務負荷やコミュニケーション・人間関係、モチベーションなどを解析してくれる。解析結果を基に適切な解決策を提案してくれるレコメンド機能も備える。なお、サーベイ機能とレコメンド機能、Microsoft Teams対応はベータ版からの新機能だ。なお、部署ごとに使っているツールがSlackとMicrosoft Teamsに分かれている企業については、今後解析データの一元管理も可能になるとのこと。

料金については個別対応となるが、導入初期費用不要で従業員数300名まで一律、その後1アカウント追加ごとに数百円が加算される体系だ。実際にベータ版を導入している企業の多くは月々数万円のコストで運用できているとのこと。正式版のリリースが気になるところだが、同社によると12カ月~18カ月後のリリースを目指しているという。

インフォームドコンセントを動画で支援するContreaがシード資金調達

医師から患者への医療情報提供の支援ツールを開発するContrea(コントレア)は7月28日、East Venturesからシードラウンドでの資金調達を実施したことを明らかにした。調達金額は非公開だ。

診療説明を動画で“処方”するシステム

Contreaが開発するのは、患者が納得して治療を受けられるように医師が行う説明を、オーダーメイドの動画で支援するツール「MediOS(メディオス)」だ。

Contrea代表取締役の川端一広​氏は、診療放射線技師でもある。4年半、病院で勤務する中で、レントゲンやCT、MRI、PETといった医療画像を提供し、医師が患者に画像を使って説明することを助けてきた。ただ、特にがんなどの高度な診療が必要な患者への説明では、たとえ画像を使ったとしても、説明が専門的になることは避けられず、患者にとっては分かりづらくなる。

川端氏は「医師・医療従事者から患者さんへ情報を届けたい」との思いから、まずは病院勤務を続けながら、VRを使って、医師からがん患者へ医療画像を説明するためのプロダクトを作った。これは、CTやMRIで撮影した画像から、機械学習を用いて病気の部分を抽出し、医師・患者の双方がVR空間上でそのデータを見ながら、説明が行える/受けられるというものだ。

ところが実際にがんに罹患した人たちの患者会などで川端氏が話を聞いていくと、患者にとっては「がんがどれくらいの大きさか」といった画像データで得られる情報だけでは断片的で、知りたいのは「このがんがどういう病気で、どんな検査・治療を行い、予後はどうなる可能性があるか」という一連の情報だと分かった。

これらの情報は専門性が高く、患者にとっては分かりづらい。「いろんな患者さんが『難しくて分からないが、分からなくてもしょうがない』という感じだったのを見て、何とかしたいと思った」と川端氏。そこで川端氏は、病気の状態から、検査・治療法、合併症や副作用などの一連の情報を患者に分かりやすく伝えるために、「説明動画の“処方”システム」としてMediOSを構想するようになった。

「withコロナ時代にも相性の良いサービスに」

Contrea設立に先立ち、川端氏はMediOSの構想を持って経済産業省主催の「ジャパン・ヘルケアビジネスコンテスト」などへ出場。「当初作っていたVRプロダクトと比べて、医師や製薬会社といった医療関係者からの反響がずっと良かった」と話す。コンテスト参加で自信を得た川端氏は、2020年1月にContreaを設立し、MediOSの開発を本格化させた。

がん患者への説明では、医師はおよそ1時間ほど説明に時間をかけるが、それだけの時間をかけても患者に伝わらないことも多いという。このギャップを動画コンテンツを使って解決したいというのがMediOSの発想だ。これは患者の診療への納得度や信頼度を上げると同時に、医師の勤務時間の短縮にもつながると川端氏は言う。

厚生労働省の調査(「平成29年度過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業報告書 (医療に関する調査)」)によれば、医師の時間外労働が発生する理由として、病院・医師が共通して第3位に挙げたのは「患者(家族)への説明対応」で、いずれも50%を超えている。

所定外労働が発生する理由(病院調査結果、複数回答)。医師調査結果でも第3位が51.8%で「患者(家族)への説明対応のため」となっている。

患者にとって納得して、満足のいく治療を受けるためにはインフォームドコンセント(十分な情報を元に医師と患者が合意するプロセス)が不可欠なため、信頼関係を構築するためにも十分な説明は不可欠だが、これまでは、医師の属人的なスキルに依存していたと言える。

だが、臓器の働き、画像から想定されるがんの特徴、今後の検査や治療法、可能性がある合併症や副作用といった土台となる基礎的な知識は、実はどの医師が話しても同じになる部分だ。ここを動画を見てもらうことでショートカットできれば、1から100まで医師が説明せずともよくなる。

一方で患者が抱える病気への不安や悩み、例えば治療費や期間、治療方法など、どのポイントがより気になるかは、患者の生活環境や経済状況などによってそれぞれ異なる。個々の患者に特化した相談に医師が集中できれば、時短を実現しながら、より患者にとって納得や満足のいく診療を行うことが可能になる。

MediOSの利用の流れは以下の通りだ。まず、医師が説明の対象となる臓器の部位と検査・治療方法、術式、再建法、合併症など、患者に説明したい項目を、医師向けのダッシュボード画面から選択して登録し、患者へのメッセージを入力する。すると説明したい内容に沿った動画ができあがる。

患者はできあがった動画を、スマホやタブレットでいつでも、どこでも確認することができる。また、MediOSにはコンテンツに応じた理解度の確認機能も搭載される。費用、治療期間など、患者が事前に知りたいことを登録しておくこともできるので、医師を初めとした医療関係者が次の診療の際、患者の理解度や不安な点に応じた対話を、問診時間を別途取らなくても行うことができる。患者も「何を聞けばいいか分からないので、お任せします」という状態ではなく、丁寧な説明を受けることが可能になる。

MediOSにより実現できるのは、医師と患者との信頼関係構築、医療者の時間短縮・業務効率化だけではないと川端氏は述べている。基礎的な説明部分を対面で行う必要がなく、スマホ、タブレットで見る時間・場所の自由ができることで、診察室を専有する時間を開放することが可能になるというのだ。

「インフォームドコンセントではプライバシーの確保なども重要で、どうしても密閉空間で長時間説明することになる。その時間の一部を“いつでもどこでも”に置き換えることで、診察室の空間を拡張できる。これはwithコロナ時代にも相性の良いサービスとなるはずだ」(川端氏)

収益については、医師1アカウント当たりで利用料金を設定していく予定だと川端氏は話している。

患者の医療体験改善にもつながるプロダクト目指す

問診プログラムなど、医師と患者とのコミュニケーション改善によって医療者の業務効率化を支援するSaaSはこれまでにも、Ubieやメルプといった企業からも提供されている。だが川端氏は「直接の競合は今のところない」と語っている。

「医療情報システムの市場規模は約4700億円と言われているが、そのうちSaaS化されているのは、まだ3%程度。残りの97%が代替可能だ。ライバルは多いが、その中で業務改善だけでなく、動画で患者の医療体験の改善にもつながるプロダクトとなっているのが、私たちの強みだと考えている」(川端氏)

市場への浸透のためには、患者に分かりやすい動画コンテンツの開発は必須となるだろう。川端氏は「医療的に正しいこと、医師が見ても信頼が置けることが重要。このため、著名な先生に監修を依頼しており、コンテンツ製作の仕組みづくりにも今、まさに取り組んでいる」と述べている。

今回の調達資金の使途も、そのコンテンツづくり、システムづくりに充てると川端氏。同時に間もなくクローズドで開始する、病院での実証実験にも投資すると話している。

「直近で来月から、3〜4カ所の病院でテストを開始し、11月にはサービスローンチを予定している。コンテンツについては、1疾患ごとに作成しながら、疾患の種類を増やして拡大していくつもりだ。1年後には3〜5疾患に対応し、10の病院への導入を目指す」(川端氏)

1年半でARR(年間経常収益)1億円達成を目指すという川端氏。「スローペースに見えるかもしれないが、病院に導入してもらうためには信頼関係の構築が大事。初めはゆっくり展開するが、それで高評価を得られるようにして、他院への口コミ紹介で拡大を狙いたい」とのことだ。その後、2024年にはARR10億円を目指すという。

対象となる疾患についても、がんから心疾患や脳疾患、高血圧などの慢性的疾患に広げていくつもりだという。また導入先については大病院からスタートするが、ゆくゆくは中小病院やクリニックにも導入できるようなものを用意していきたいと川端氏は語っていた。

Daybreak Healthが十代向けオンラインメンタルヘルス治療を開始

Y Combinator(Yコンビネーター)が支援するスタートアップのDaybreak Health(デイブレイク・ヘルス)は、訓練を受けた10人のメンタルヘルスの臨床医チームと協力し、サンフランシスコ・ベイエリアの高校の十代の若者にメンタルヘルスサポートを行っている。

Daybreak Healthの3人の共同創業者であるAlex Alvarado(アレックス・アルバラド)氏、Siddarth Cidambi(シダース・シダンビ)氏、Luke Mercado(ルーク・メルカド)氏は、スタートアップを新しく立ち上げると決める前は、ヘルスケア業界のスタートアップで働くか、ヘルスケア業界に関するコンサルティングに数年間従事していた。

弟が12歳の時からうつ病に悩まされているアルバラド氏は、問題は個人的なものだとインタビューで述べた。同氏が電話で、弟が数十年にわたる長い闘病の末に自死を図ろうとしたと聞いたのは、ほんの2年前のことだった。

現代の治療の方法論がいかに破綻しているか、アルバラド氏が気づいたのはその時だった。彼の家族は弟のために一貫したケアを見つけようとしたが、セラピストは高額で近くにおらず、順番待ちは数週間におよび、十代の若者(特に非白人の十代)が受診するのは難しかった。

アルバラド氏の弟だけの問題ではない。同氏は「米国の十代の若者の5人に1人はメンタルヘルスの問題を抱えているか抱えると見込まれている。新型コロナウイルスの流行に対する国の効果のない対応は、問題を悪化させているだけだ」と語る。統計では、米国には何らかのメンタルヘルスの問題を抱える青少年が現在700万人おり、うつ病や不安の割合は上昇(US News記事)している。

Daybreak Healthと協働する10人の臨床医チームは、エビデンスに基づくケアの深い経験がある。アルバラド氏は、チームが相談を受ける患者のほとんどに臨床医が指導する行動療法を受けてほしいと考えている。それほど深刻でないメンタルヘルスの問題を抱える十代の若者向けに、同社が「訓練されたリスナー」と呼ぶ支援チームがある。

アルバラド氏とシダンビ氏は2人ともコンサルティング会社のOliver Wyman(オリバー・ワイマン)で働いていた。メルカド氏とアルバラド氏はヘルスケアスタートアップのJiff(ジフ)で知り合った。Jiffは会社勤めの従業員に福利厚生を提供する企業で、Castlight Health(キャストライト・ヘルス)によって買収された。

真のメンタルヘルスのために、同社はメンタルヘルスのイノベーションに力を入れるスタンフォード大学のBrainstorm Lab(ブレインストームラボ)からNeha Chaudhary(ネハ・チョーダリー)博士を招いた。「実際には彼らが当社の臨床プログラムをゼロから設計する」とアルバラド氏は言う。

画像クレジット:Daybreak Health

同社は現在、ベイエリアの20の学校と小児科グループと協働し、13~19歳の十代の若者の治療を行っているとアルバラド氏は述べた。現在、学校と小児科の両方から同社に患者が紹介されている。ケアの費用は週89ドル(約9500円)の料金か保険のいずれかでカバーされる。

「これは総合的な治療プログラムだ」と同氏。「我々は従来の治療法を改善したと考えている。1対1の治療だけでなく、いつでもカリキュラムを受けることもできるからだ」。「十代の若者にとって、特定の行動を防ぐ介入だけが重要なわけではない」とシダンビ氏は言う。「十代の若者が対処法を身につけ、大人と同じようにメンタルヘルスのプレッシャーに適切に対応できるようになることも大切だ」。

アルバラド氏は「このプログラムは少しストレスを感じている十代や、子供の成績を心配する保護者向けではない」と強調する。十代の若者がプログラムに参加する前に、本人と保護者を交え1時間の面談を行う。同社が治療不要と判断し、断った顧客もいる。「当社の目標は、誰かを治療することだけではない」。

同氏は、現在ベイエリアの提携校の生徒の何人が治療を受けているかについては明らかにせず、学校にはベイエリアの公立と私立の両方が含まれると述べた。「当社と学校との主な接点は、スクールカウンセラーかウェルネスコーディネーターになる」とシダンビ氏。Daybreak Healthは紹介料を支払わないが、サービス宣伝のため学校のカウンセラーにコンタクトする。

十代の若者にオンラインカウンセリングサービスを提供しているのは同社だけではない。TeenCounseling(ティーンカウンセリング)は5000人のセラピストを擁し、週80~100ドル(約8600~1万0700円)でサービスを提供する。

「当社がしていることの素晴らしい点は、臨床プログラムとテクノロジーの融合だ」とアルバラド氏は語る。「当社は常にセラピストを関与させたいと考えている。当社はモバイルアプリも開発している。つまり、アプリを通してコミュニケーションを行い、患者が自分でエクササイズを行えるようにするためだ。だがそれがスタンドアロンアプリになるとは思っていない」。

画像クレジット:Scar1984 / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

ラッパーのスヌープ・ドッグの大麻産業向け投資会社がProperを支援し睡眠産業に参入

米国人のうたた寝は、一部の医療専門家が流行性睡眠と指摘した問題に直面するまで、まったく重要視されず、対策もされてこなかった。だが、ラッパーでもあるSnoop Dogg(スヌープ・ドッグ)のカナビス(大麻)に特化したベンチャー投資企業であるCasa Verde Capital(カーサ・ベルデ・キャピタル)は、そこをなんとかしたいと考えた。

同社は、睡眠指導とサプリを組み合わせた「総合的な」睡眠健康ソリューションの提供を謳うProper(プロパー)に950万ドル(約10億円)を出資した。

Properの計算によれば、米国では成人の3分の1が十分な睡眠が取れていないという。同社の最高経営責任者であるNancy Ramamurthi(ナンシー・ラマムルティ)氏は、新型コロナウイルス(COVID-19)の大流行によって事態は悪化する一方だと話す。

「ProperはCDC(米疾病管理予防センター)が公衆衛生上の危機と特定した問題、つまり睡眠不足に本当の意味で総合的な、個人に合わせたソリューションを提供することで、解決の一助になりたいと考えています」と、Properの創設者でCEOのラマムルティ氏は述べている。「Properは、これまで消費者の手には届かなかった、天然かつ安全で、エビデンスに基づく睡眠サプリの中でも最高のものを、専門家による行動コーチングと組み合わせています。現在は遠隔医療が普及したおかげで、睡眠指導もオンラインでお届けできるようになりました」。

Properの睡眠指導サービスは、臨床心理学者と行動睡眠医学専門医の助言のもとに有資格の健康コーチが提供すると、同社の声明には書かれている。

ラマムルティ氏は、臨床評価が同社の事業の中核だと話す。実際、同社は現在、独自処方の有効性を立証しようと、臨床試験を行っている。だがこれは、必ずしも目指さなくてもよい付加的なステップなのだと彼女はいう。なぜなら、あらゆるサプリの材料は睡眠障害の治療に有効であると臨床研究ですでに証明されているからだ。「しかも、何千年も前から使われてきたものなのです」とラマムルティ氏は話す。

Properは、消費者向け医療ベンチャースタジオのRedesign Health(リデザイン・ヘルス)で起業支援を受けて生まれた企業だ。スムープ・ドッグのCasa Verdeが主導した今回の投資を受けて、セールスとマーケティングを強化し、研究開発もさらに続ける予定でいる。

睡眠補助はカナビスに特化した投資企業には異質の市場のように思えるが、Casa VerdeのパートナーであるKaran Wadhera(カラン・ワドヒラ)氏は、それが同社の高度に戦略的な投資なのだという。

カナビスも「材料になっています。この使用事例は、人々がカナビスに対する否定的な思いを超えるものです」とワダヒラ氏。Properは「現代の睡眠不足の流行に対処することを本来の目的にしています。カンナビジオール(CBD)もカナビスも、従来の製品では不可能だった形で睡眠問題の解決に幅広く、大きな役割を果たします」。

つまり、Properへの投資は、カナビス産業の成熟を狙ったものだといえる。投資家たちはカナビスに含まれるさまざまな化学成分に着目し、健康への幅広い利用法を引き出そうとしている。「私たちは、この事業への考え方を改めつつあります。カナビス然としたカナビス製品である必要はないのです」とワダヒラ氏は話す。

画像クレジット:Proper

今後は、同社のサプリ製品にカナビノイドの応用も試してゆくとラマムルティ氏はいう。「製品開発を続ける中で、私たちが注目するものの1つとしてCBDがあります」とラマムルティ氏。「CBDは、ストレスと不安の低減効果が大変に高い成分の1つです。そして、人々を眠れなくする第一の原因が、ストレスと不安なのです」。

Properの研究は、Mayo Clinic(メイヨー・クリニック)総合健康科ディレクターAdam Perlman(アダム・パールマン)博士、ノースカロライナ州退役軍人医療センター臨床心理士であり有資格睡眠医療専門医でもある Allison Siebern(アリソン・シーバーン)博士などからなる科学諮問委員会の支援を受けている。

米国人の睡眠への理解が低く、軽視されがちなのには理由がある。Properのデータによれば、かかりつけ医のおよそ90パーセントが、睡眠が肉体に与える影響への自信の理解を「乏しい、または中くらい」と評価しており、さらに有資格の睡眠専門家は、米国人4万3000人に対して1人しかいないという。

Properのサービスに登録すると、5種類あるサプリのうちひとつを39ドル99セント(約4300円)で購入できる。サブスクリプションなら10パーセントの割り引きが受けられる。新規登録者は、Properの睡眠コーチとの30分間の無料相談が受けられると同社は話している。

Properの5つの睡眠アプリの中の「Core Sleep(深い眠り)」はGAVA、バレリアンの根の抽出物、ラフマの葉の抽出物、アシュワガンダの根と葉の抽出物で構成されている。「Sleep + Restore(睡眠と回復)」にはメラトニン、「Sleep + Calm(睡眠と沈静)」にはCore Sleepにも含まれているL-テアニン、「Sleep + Clarity(睡眠とすっきり感)」にはブドウ抽出物を濃縮したもの、そして最後の「Sleep + Immunity(睡眠と免疫)」には亜鉛、ビタミンC、B6、Dが添加されている。

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(翻訳:金井哲夫)

IBM Researchが細菌の抗生物質耐性を破る高分子を開発

新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミック以外にも、深刻な健康危機が発声している。抗生物質耐性がその1つで、この厄介なトレンドは上向き傾向であり、治療の困難な「スーパーバグ」の増加が始まろうとしている。IBM Researchは、シンガポールのInstitute of Bioengineering and Nanotechnology(生物工学とナノテクノロジー研究所)と協力して、既存の抗生物質の有効性を大幅に高め、台頭してきているスーパーバグを撃退できる合成高分子のポリマーを開発した。

学術誌「Advanced Science」で発表された研究論文でIBMの研究者たちは、一連の抗生物質と組み合わせることのできるポリマーの作成過程を詳述している。その抗生物質は非耐性菌株の感染症の治療に使われるもので、投与の量は、抗生物質を克服するする能力のない感染症の治療でよく見受けられる程度、あるいはそれより少ないことすらあるほどの量だ。

この高分子は、感染症が抗生物質を使って治療され、まだ完全に排除されていないときに細菌が変容させる酵素に取りつき、効果を発揮する。抗生物質を処方されたとき必ず、すべて服用しなさいといわれるのはそのためだ。細菌が完全に排除されていないときには、リバウンドして、再び治療されたときには治療への抵抗性を身につけている。

IBMのポリマーは基本的に、細菌が抗生物質の効果に対抗するために開発した防護策をショートさせ、抗生物質の効力を取り戻したり、可能性としてはやや改善したりする。

これはまだ、研究室の高度にコントロールされた環境で行われている比較的初期段階の研究であり、実用までには人間の患者による臨床試験を含むさらに多くの開発努力とテストを要するだろう。しかし今回の実験室での結果は、実用性に向けたかなりの有望さを感じさせる。特に、複数の薬品に対する抵抗力がある細菌の感染でも有効性を実証したことは素晴らしい。

画像クレジット: IBM Research

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ねこIoTトイレ「toletta」のトレッタキャッツが動物病院向け連携プログラムを開始

トレッタキャッツ スマートねこトイレ toletta 動物病院

スマートねこトイレ「toletta」(トレッタ)を手掛けるトレッタキャッツは7月17日、全国の動物病院向け連携プログラム「トレッタVets」の開始を発表した。

同プログラムにより、全国に1万件以上ある動物病院からねこ患者へのトレッタ利用を促進し、トレッタのユーザー数拡大を目指す。また、全国の動物病院のカルテデータ(病名・治療内容・検査結果)と、tolettaが測定する尿量・尿回数・体重などのデータを結合し、腎泌尿器疾患に関する大規模なデータプラットフォームを構築する。さらに、腎泌尿器疾患の治療評価アルゴリズムを確立し、ねこがもっと健康で長生きできる社会作りを推進するという。

全国の動物病院向けには、tolettaを利用しているねこの全体データレポートの提供、tolettaのユーザー向けページ・公式サイトなどで各動物病院の紹介、患者にtolettaを紹介した場合紹介料を支払う、ねこの腎泌尿器疾患に関する共同研究への参画などを行う。

申し込みは、動物病院専用ページから行う。参加料は無料。

tolettaは2019年3月のローンチ後、4500頭を超えるねこが利用。トイレデータは400万件に及び、国内最大規模のデータベースとなっているという。

トレッタキャッツ スマートねこトイレ toletta 動物病院

トレッタキャッツによると、tolettaアプリをかかりつけ獣医師に見せながら治療を受けるという事例もあり、動物病院とデータ連携をすることで治療に対する理解が深まり、飼い主の安心感と家庭での正しいケアをうながせるとしている。

獣医師からは、家庭内のねこの様子を知る術がなく、飼い主がねこの体調変化に気づいて来院する頃には、疾患がかなり進行しているケースが多いという声があるという。家庭内データを飼い主と共有することで、早期治療、治療後の経過のモニタリング、飼い主からの信頼を高めることにつなげるとしている。

トレッタキャッツは今後、動物病院や獣医師、他のねこ関連企業とデータを連携し、ねこの幸せに還元されるデータ活用を推し進めるとしている。

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ロボティック外科手術を目指すActiv Surgicalが約16億円調達

ボストン拠点のスタートアップであるActiv Surgical(アクティブ・サージカル)は、ARTIS Venturesがリードしたベンチャー投資ラウンドで1500万ドル(約16億円)を調達した。本ラウンドにはLRVHealth、DNS Capital、GreatPoint Ventures、Tao Capital Partners、Rising Tide VCも参加した。この調達によりActiv Surgicalは5月にマーケット投入したソフトウェアプラットフォームを引き続き開発を続けて性能アップを図る。

Activ SurgicalのActivEdgeプラットフォームは、実際の手術中にリアルタイムでデータを集めるために同社が開発したセンサーを搭載した外科用手術具から収集されるデータを使っている。データはさらに、機械学習やAIベースの視覚化の開発に使われる。これらは術中ミスの発生を防ぎ、最終的に患者の術後を改善するのに役立つ。

同社の主な目的は、サージカルビジョンにテクノロジー的なイノベーションをもたらすことだ。サージカルビジョンはまだ、70年以上前から使用されている蛍光染料のような手法に主に頼っている。Activは外科医が自分の目では見ることができないものについてリアルタイムにビジュアルな知見を提供するためにコンピュータービジョンを活用したいと考えている。そして最終的にはそうしたビジュアル知見を、次世代のコラボレーティブな手術ロボットや、ゆくゆくは完全自動のロボ手術を可能にするために活用するという青写真を描いている。

ActivSightはActivEdgeプラットフォームが提供する同社初のプロダクトとなる。既存の腹腔鏡と関節鏡の手術器具に取り付けることができる、小型で接続している画像用器具だ。同社は現在、このハードウェアに関し今年第4四半期までにFDA(米食品医薬品局)から使用許可を取得することを目指して取り組んでいる。また、米国でのパイロット事業で8つの病院と協業している。

同社はこれまでに3200万ドル(約34億円)を調達した。

画像クレジット: Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

在宅のホルモンテストで女性の閉経時期を予測する遠隔医療スタートアップThe Cusp

The Cusp(ザ・カスプ)は閉経前後の女性に遠隔診療を提供する新たなスタートアップだ。同社はクリニックに足を運んでテストを受ける費用をなくす在宅ホルモンテストを展開する。

カリフォルニアの女性は遠隔コンサルテーションとテストを159ドル(約1万7000円)でオーダーできる。クリニックで同様のテストを受けて分析してもらうとおおよそ500ドル(約5万4000円)かかる。

一般に使用されているホルモンテストと異なり、The Cuspは、鍵を握るホルモンの測定が閉経時期を予測するのに役立つという新たな研究に基づくテストをベースにしている。同社は現在、医療業界がこうした発見を確認するのをサポートするために研究者らと協業している。そしてコンサルテーションと診断へのアクセス改善の組み合わせが、より正確に閉経を予測する能力をかなり高めることになると確信している。

「閉経はかなり軽視されていて、中年期ケアは十分にサービスが提供されていないマーケットだ。我々は、女性が自分の健康を最善なものにできるよう中年期ケアの新たなモデルを提供しようとThe Cuspを立ち上げた」と同社CEOのTaylor Sittler(テイラー・シットラー)氏は述べた。「早期のケアがより健康的な結果につながるため、まずは閉経周辺期ケアにフォーカスする」。

同社によると、テストは閉経の初期サインを経験しているおおむね42〜50歳の女性向けだ。「キャリアを通して、私は女性の健康、閉経、乳がんが交差する分野を専門としてきた。女性のための情報があまりにも少ないことがショッキングで、私はがん経験者向けの閉経症状管理や生殖機能に関するガイドライン策定で国の委員会と作業した」とMindy Goldman(ミンディー・ゴールドマン)博士は述べた

Gynecology Center for Cancer Survivors(がん経験者専門婦人科センター)と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAt-Risk Women Programでディレクターを務めるゴールドマン博士はThe Cuspで医師として働いている。「The Cuspに参加できることをうれしく思う。総合的な診断ツールと、閉経に正面から立ち向かい、複数のアプローチで管理できるようになるパーソナライズされたケアを女性に提供すべく取り組んでいる。そうした複数のアプローチには医療介入、自然療法ソリューション、ホルモン代替セラピーが含まれる」

The Cuspは患者約200人にケアを提供していて、会員は急増している。最近立ち上がったばかりの同社は、CurieMD、Elektra Health、Geneveのようなスタートアップの仲間入りを果たした。これらスタートアップはすべて閉経前後の女性への医療サービス提供を専門としている。

これまでにThe CuspはmHomeBrew、Village Global、そしてKatie Stanton(ケイティ・スタントン)氏やMegan Pai(ミーガン・パイ)氏のような個人投資家から400万ドル(約4億3000万円)を調達している。

Color Genomicsの共同創業者であるシットラー氏は、新しい診断テストとテクノロジーを閉経期にさしかかっている女性に適用することにチャンスを見出している。

The Cuspの専門ケアパッケージは210ドル(約2万3000円)だ。ここには、テストと医師のオンライン診察、無制限のチャット、パーソナライズされた治療計画、サプリメントの割引が含まれる。サービス利用を継続したい場合、月72ドル(約7700円)かかる。

画像クレジット: John Lamb / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

がんを専門とする計算病理学スタートアップのPaigeがシリーズB投資で75億円を調達

Memorial Sloan Kettering Cancer Center(メモリアル・スローン・キャッターリングがんセンター、MSK)から独立し2018年に創設された(未訳記事)スタートアップのPaige(ペイジ)は、AIを使ってがん病理学の理解を深め、高度ながん研究と治療に貢献している。Paigeは米国時間7月13日に、その成長過程の一里塚となるシリーズBラウンドでGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)とHealthcare Venture Partners(ヘスルスケア・ベンチャー・パートナーズ)から2000万ドル(約21億円)を調達し、7000万ドル(約75億円)でクローズした。

PaigeのCEOであるLeo Grady(レオ・グラディ)氏は、この資金はいくつかの分野に使われると話している。

その用途は人材雇用、バイオ医薬品メーカーとのパートナーシップの拡大(契約内容はまだ公開されていない)、MSKのアーカイブにある2500万件の病理診断スライドでトレーニングした自社開発のアルゴリズムを基礎とする臨床研究への投資、そしてPaigeの事業の基本となるAIベースの計算病理学に関連する情報処理となっている。また、英国とヨーロッパへの進出にも使われるという。Paigeは、両地区での臨床利用を可能にするCEマーキング認証を取得している。すでに英国とEUにベータサイトを設けているが、どちらの地区でも完全な商用化には至っていないとグラディ氏は話している。

PaigeはBreyer Capital、MSK、Kenan Turnaciogluといったその他の投資家から9500万ドル(約102億円)以上を調達しているが、評価額は公表していない。しかし、このラウンドの最初の4500万ドル(約48億円)の支払いが発表された2019年12月、様々な情報を総合して我々は評価額をおよそ2億800万ドル(約223億円)と見積もった。その後、同社は2020年4月に500万ドル(約5億4000万円)を受け取っている。最後の2000万ドルを呼び寄せた要因の1つは堅調な事業だとグラディ氏はいう。結果として、資金調達が厳しい現状にも関わらずPaigeはそうした困難に遭わずに済んでいる。

「ゴールドマン・サックスが最初に投資を行ったときの状況(4月の500万ドル)」は「新型コロナウイルスの大打撃を受け、その深刻さに気がつき始めたころでした」とグラディ氏。「経済の中で、物事がPaigeにどう作用するかを彼らは見たかったのです。しかし、その成り行きは勇気づけられるものとなりました」。

たしかに現在は、多くの人の意識が新型コロナウイルスという形で世界中に蔓延した目下の公衆衛生の危機と、それが経済と社会に及ぼすドミノ効果に集中している。そうした中でのPaigeの成長は興味深い。

新型コロナウイルスと、それががんなどその他の疾患に及ぼす影響への私たち理解はまだ初期段階(CIDRAP記事)であり、Paigeの研究はそこには直接関わってはいない。だが同時に、デジタル化したスライドを中心に構築されている同社のプラットフォームは、それ自体が臨床医や、研究所に毎日出勤できなくなった人たちの役に立っている。

同社の共同創設者であるThomas Fuchs(トーマス・フックス)博士は「計算病理学の父」と呼ばれる人物で、MSKのThe Warren Alpert Center for Digital and Computational Pathology(デジタル及び計算病理学のためのウォーレン・アルパート・センター)の計算病理学のディレクターであり、ワイルコーネル医科大学医療科学大学院の機械学習教授でもある。もう1人の共同創設者であるDavid Klimstra(デイビッド・クリムストラ)博士は、MSKの病理学学部長だ。そうしたPaigeの企業向け視覚化システムは、遠隔でのデジタルスライドの閲覧を可能にする。今やどのハードウェアメーカーにもデジタルビューワーはあるが、それも自社のスキャナーにのみ対応する独自仕様で、「高性能には作られてない」とグラディ氏は指摘する。

Paigeのプラットフォームでは、利用者は研究成果だけでなく、実際にスライドをやり取りすることなくオリジナルデータも共有できるのだが、データの「読み出し」用に組み込まれた高性能ソフトウェアを使うことで、臨床医や研究者は他の方法を使うよりも総合的にデータを見ることができる。これは当初、前立腺がんと乳がんのためのものだったが、今はその他のがんにも範囲を広げているとグラディ氏は話す。「私たちはワークフローに情報を追加し、データの信頼性と品質を高めようとしています。最初の段階(プラットフォームとスライド)が次の段階を可能にしました」。

ゴールドマン・サックスの投資は、この大手金融サービス企業の自己資金投資部門から出ている。そしてその一環として、同社の業務執行取締役であるDavid Castelblanco(デビッド・カステルブランコ)氏がPaigeの役員会に加わった。

「私たちはこの会社と、その成長の早さに本当に驚かされました」と彼は声明の中で述べている。「レオ、トーマスそしてPaigeのスタッフのがん治療分野での人工知能と機械学習を駆使した革新的な仕事への支援が増やせることを、とても嬉しく思っています」。

「そもそも私たちがPaigeへの投資を決めたのは、彼らの製品がこの業界に膨大な価値をもたらし、がん治療の未来に大きな影響を与える可能性に気づいたからです」とHealthcare Venture Partnersの専務取締役であるJeffrey C. Lightcap(ジェフリー・C・ライトキャップ)氏はいう。「Paigeがわずかな期間で目覚ましい成長を遂げた後に、その成長をさらに加速させようと私たちは追加投資を行いました」。

画像クレジット:Ed Uthman Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(翻訳:金井哲夫)

大阪大学発スタートアップPGVが1.5億円の調達、小型軽量な脳波センサー・脳波AIモデルを開発

大阪大学 PGV 脳波センサー 脳波AIモデル ニューロマーケティング

大阪大学発のスタートアップ企業PGVは7月14日、第三者割当増資として総額約1.5億円の資金調達を発表した。引受先は大阪大学ベンチャーキャピタル(OUVC)。

2016年9月設立のPGVは、大阪大学産業科学研究所・関谷教授の研究成果を基に「小型で軽量な脳波センサー」を開発し、脳波AIモデル開発・サービス事業に取り組んでいる。同社脳波センサーは、額に貼れるほど小型で装着感を感じさせない形状でありながら医療機器と同程度の高い計測精度を実現できているなど、優れた技術性を有しているという。

また、同社では得られた脳波データから脳波モデルを生成する解析アルゴリズムの開発も進行。様々な状況下での脳波を計測・析を通した多くの脳波モデルのカタログ集積を行い、「PGV=脳波モデルの総合図書館」としての位置づけを目指すという。取得した脳波データを利用したニューロマーケティングビジネスをはじめ、疾患の早期検知、睡眠ステージの判定といったヘルスケア分野への展開など、脳波データを活用した様々な分野でのビジネス展開を進めている。

大阪大学 PGV 脳波センサー 脳波AIモデル ニューロマーケティング
OUVCを無限責任組合員とするOUVC1号投資事業有限責任組合(OUVC1号ファンド)は、PGV対して2016年11月に5000万円、2017年8月に2億円、2020年1月に5000万円の投資を実行しており、今回は4回目の投資実行にあたる。OUVCとしては、PGVが2020年1月に調達した資金を活用し、一定の事業開発が進んだことが確認できたため、追加投資を決定した。

グーグルのFitbit買収はユーザーの健康データを広告に使用しないことへの同意でEUから承認される

Google(グーグル)は、2019年11月にFitbitを21億ドル(約2250億円)で買収するプランを発表した。しかしこの記事を書いている時点では、買収は完了していない。大企業が大企業を買うときは、規制当局の審査も厳しくなるからだ。この種の契約ではEUの規制当局がハードルになることが多いが、今回も同じことがいえるのかもしれない。

ロイターは「近い筋の話」として、グーグルが何らかの譲歩をしなかった場合、同社はEUの独占禁止法違反調査という形の精査に直面する可能性があるとしている。懸念の核心は健康のプライバシーだ。Fitbitなどのウェアラブル企業は、ユーザーの健康に関する情報を大量に収集する。

グーグルは、データと広告に途方もなく投資を行っている企業だ。この買収に批判的な人たちは、Fitbitを買収することで同社はまた新たな鉱脈のようなデータを提供することになると示唆している。そのため今回の買収は、グーグルが広告の販売に健康に関するデータを利用しないという約束にかかっている。

関連記事:GoogleがFitbitを約2300億円で買収

規定は、買収が最初に発表された際にグーグルが交わした約束に沿ったものだ。同社のハードウェア部門のトップであるRick Osterloh(リック・オスターロー)氏は「プライバシーとセキュリティが最優先される。弊社の製品を使用するユーザーは、自分の情報の安全についてグーグルを信用している。私たちはそれがとても大きな責任であることを理解しており、ユーザーの情報を保護し、ユーザーデータのコントロールをユーザーをコントロールし、ユーザーデータに透明性確保するよう努める」と約束している。

今週の報道に対してグーグルは、この買収が競争を激しいものにすると指摘している。Fitbitのシェアはかなり大きいが、同社がスマートウォッで出遅れたためにApple(アップル)やXiaomi、Huaweiなどがこのカテゴリーを支配している。グーグルは2019年1月にFossilからスマートウォッチの技術を大量に手に入れたが、Wear OSによるグーグルの市場参入努力の成果はほとんど上がっていない。

関連記事:グーグルがAndroidウェアラブルの希少恒存種Fossilのスマートウォッチ技術を$40Mで入手

広報担当者は、潜在的な規制への懸念を払拭しようと「弊社はあらゆる機会に、Fitbitの健康とウェルネスのデータをグーグルの広告に利用しないというコミットメントを明らかにしてきたし、データの選択権とコントロールをユーザーに提供する責任も明示してきた」という。

EUの規制当局は7月20日に取引を決定する予定であり、グーグルは7月13日までに譲歩を提示しなければならないと報じられている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

カリフォルニア大学バークレー校が唾液によるPCR検査の試行を開始

カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、同校のInnovative Genomics Institute(イノベーティブ・ジェノミクス・インスティチュート/ IGI)が開発したCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)唾液検査の試行を開始した。

米国内で最初にこの疾病が確認されて以来、IGIではCRSPR研究の先駆者であるJennifer Doudna(ジェニファー・ダウドナ)氏の下で、ウイルス検査と治療方法の開発に励んできた。

同校が試行している新たな唾液ベースの検査は、被験者の感染を調べる検査を実施するために、訓練を受け個人防護具を着用した医療従事者を必要としない。

この方法が鼻腔拭い液方式と同じように有効であることが証明されれば、バークレー校の学生、教職員を8月末の秋学期開始前に検査するための能力を高められると同大学は声明で語った。

Jennifer Doudna, wearing mask, outside kiosk

COVID-19唾液検査の試行に協力している大学院生のAlex Ehrenberg氏と話すJennifer Doudna 氏(UC Berkeley photo by Irene Yi)

「本校では、学生の少なくとも一部が秋学期に安全にキャンパスに戻れることを望んでおり、そのための方法のひとつが無症状者の検査を行うことだ。そうすることでみんなの健康を観察し、ウイルスの感染を防ぐことができる」と、仮設検査場と唾液検査を陣頭指揮するJennifer Doudna氏が声明で語った。

検査は最短5~6分で実施できるとDoudna氏は考えている。同研究は学内にはすでに公開されており、同キャンパスに所属する学生と教職員は施設のウェブ・サイトで、Free Asymptomatic Saliva Testing(無料無症状唾液検査)研究に参加できる。

「鼻腔拭い液検査と異なり、唾液検査はずっと容易であり、試験管の中に唾を吐くだけでよい」とDoudna氏は言った。「検査場を出るまでに5~6分しかかからないと考えているので、手間がかからず、簡単に検査を受けることができる」

この検査は、すでに食品医薬品局(FDA)による家庭内検査の緊急使用許可を得ているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いている。

Doudna氏らが先駆けて遺伝子工学に応用したCURSPR-Casプロテインを使用することで、同研究所は安価で実験室分析が不要で数分間で結果のでる家庭で使える検査方法の開発を進めている。

Innovative Genomics Instituteは、2014年にDoudna氏がカリフォルニア大学のバークレー校とサンフランシスコ校と共同でに、CRISPRベースのゲノム編集を推進するために設立した。

大学の声明によると、同研究所は6月初めに新たなロボティックハンドリングシステムを導入し、検査能力を1日当たり1000件に増加させた。

「パンデミックが起きた時、われわれ自らに問いかけた、『COVID-19による健康危機に対しわれわれは科学者として何をすべきか』、とDoudna氏が声明で言った。「そして目標を検査に絞った。現在われわれは、臨床検査室を設置してバークレー校キャンパス内で無症状唾液検査を行おうとしている。成功したらこの戦略を他の場所へも広げていけることを望んでいる」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Elektra Labsがバイオセンサー評価ツールを無料提供、新型コロナによる医療崩壊防止を目指す

 

米国の新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックが拡大を続ける中、医療関係者、研究者はあらゆるリソースとテクノロジーを使って患者をケアし、疾病の本質を解明して対抗しようと全力を挙げている。医療機器のテクノロジーをモニターし評価するスタートアップが、同社のサービスを医師に無料で提供することにした(Elektra Labsリリース)のもそうした努力の1つだ。

サンフランシスコを本拠とすメディカルテクノロジーのスタートアップであるElektra LabsについてはTechCrunchも何度か報じてきた。ファウンダーは米国食品医薬品安全庁(FDA)の元幹部でハーバードで学びマサチューセッツ総合病院に勤務した経験のある医師だ。Electraの目的は市場に次々に登場している医療用センサーのセキュリティ、正確性、実用性などの評価を提供することにある。

Electraは、新型コロナウイルスの症状をモニターできるとしている医療用デバイスについての同社の評価を臨床医や研究者に対して無料で提供すると発表した。

米国における感染者数は250万人に達し、医療専門家が以前から警告してきた患者数の急増によって医療が崩壊するという最悪のシナリオが現実になりつつある。医療はデジタルテクノロジーを利用した遠隔医療に大きくシフトしているが、これは医療関係者がそれを望んでいるというより、他に方法がないからだ。

マサチューセッツ総合病院の最前線で新型コロナウイルス患者を治療してきたElektra Labsの共同ファウンダーであるSofia Warner(ソフィア・ワーナー)医師は、声明で「遠隔医療が有用なものであるためにはを患者のバイタルサインを確実に把握できるなければならない。患者を測定しているセンサーの信頼性を把握することは医療プロバイダーにとって非常に重要だ」と述べている。

デジタルモニターをはじめとすると各種のリモート医療テクノロジーが重要なのは臨床分野だけではない。新型コロナウイルスの流行が始まり、ボランティアと直接対面して治験をすることが不可能になってから新薬の研究、開発でも極めて重要な役割を担うようになっている。

ハーバードとMIT共同の設置によるレギュラトリーサイエンスセンター(Center for Regulatory Sciences)のAriel Stern(アリエル・スターン)博士は声明で「パンデミック下で大規模かつ多額の費用を要する臨床試験を実施している製薬会社は患者、被験者の安全を確保しながら研究を進めるために急速にリモート医療テクノロジーを採用しつつある。多くの製薬会社が安全で効果的であると同時に治験参加者が自宅で簡単に利用できるデバイスを発見することを急いでいる」と述べた。レギュラトリーサイエンスは日常接する物質や現象についてその効果や安全性を評価し、行政的規制を通じて公衆の健康維持を図る科学だ。

2019年秋にElektra Labsはウェラブル端末を利用したデジタル医療ツールを発表し、インターネットに接続されたセンサーによるバイオメトリクスの正確性、有効性、実用性、プライバシー保護能力などを検証した。また2020年に入ってこうした研究を支えるノウハウや手法をフレームワーク化し、Nature Digital Medicineの論文として公開している。

Electraは Founder Collective Boost VC、Maverick Ventures、Village Global、Arkitekt Venturesなど初期段階のスタートアップへの投資を専門とするベンチャーキャピタルの支援を受けている。またすでに製薬会社や研究機関での採用も相次いでいる。

Elektra LabsのCEOであるAndy Coravos(アンディー・コラヴォス)氏は「テクノロジーの進歩は人々が身をを守る能力よりずっと速く進歩してきた。Elektraの共同ファウンダーとなったのは在宅で人々のケアを簡単かつ安全に行えるようにしたいからだった。新型コロナウイルス危機に際してこれがかつてないほど重要な課題になっている。パンデミック下で患者の治療とヘルスケア全般のイノベーションのために努力している人々に我々のAtlasプラットフォームを無料で提供できることを嬉しく思っている」と述べた。

App Storeにおける利用データを使ってアプリをランクづけするApple(アップル)の手法とは異なり、Elektra Labsによる医療用センサーの評価スコアやランキングは一般公開はされない。

評価を利用できるのはリモートケアを実施する臨床医、リモートで臨床試験を行う研究者、健康モニタリングツールを比較検討している公衆衛生当局者などの専門家のみだという。

医師や研究者が、ビデオによるリモートケアの補完に利用するバイオメトリックセンサーとして患者が自宅で使用するのに安全であり効果的なデバイスであるかどうかを判断できるようにしようというのがElectra Labsの目標だ。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook