The Sandboxがイーサリアム基盤のデジタル不動産オークションによりユニセフ暗号資産ファンドに寄付

The Sandboxがイーサリアム基盤のデジタル不動産オークションによりユニセフ暗号資産ファンドに寄付

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、過去1週間分について重要かつこれはという話題をピックアップしていく。今回は2020年12月13日~12月19日の情報から。

中国・香港拠点のゲーム開発会社「Animoca Brands」(アニモカブランド)は12月18日、ブロックチェーンゲームプラットフォーム「The Sandbox」において、NFT(Non Fungible Token。ノン ファンジブル トークン)にあたるデジタル不動産を販売するチャリティーオークションを開催した

収益は、UNICEF(ユニセフ。国連児童基金)暗号資産ファンド(UNICEF CryptoFund)に寄付され、UNICEF Innovation Fundを介し子どもや若者に影響する可能性があるオープンソース技術・デジタル公共財への資金提供に使用される。

チャリティーオークションは、12月18日午後10時(日本時間)より3日間開催。The SandboxのユーティリティトークンSANDのみの入札に限定されており、最終的に70万SAND相当のデジタル不動産が落札された。落札時点のSAND相場価格で換算すると、落札価格は約3万2373米ドル(334万円相当)になる。

The Sandboxは、ブロックチェーン基盤のメタバース(仮想空間)にあたる、コミュニティ主導型ゲームおよびゲーム作成プラットフォーム。すでに過去に仮想空間内のLANDを販売する複数回のプリセールが行われており、The SandboxのLANDは人気のNFTとなっている。今回のチャリティーオークションでは、Animoca BrandsがNFTマーケットプレイス「OpenSea」(オープンシー)と提携し、12×12(144個)のLANDで構成されたエステート(土地)と呼ばれる区域を出品した。土地はThe Sandboxの中心にあたる人気かつ需要の高いロケーションが出品された。

オープンソース技術とデジタル公共財の開発を支援する、UNICEFの暗号資産ファンドおよびイノベーションファンド

今回のチャリティーオークションの収益はすべて、UNICEFの暗号資産ファンドに寄付され、UNICEF Innovation Fundを介して世界中の子どもや若者に影響する可能性があるオープンソース技術やデジタル公共財への資金提供に使用されるという。

UNICEFは暗号資産ファンドを2019年に設立。この2020年6月などにも新興国のテクノロジー企業に法定通貨と暗号資産による投資を実施しているものの、ブロックチェーン技術を基盤としたNFTを慈善事業に活用するのは今回が初の試みという。

UNICEF フランスのエグゼクティブディレクターSebastien Lyon氏は「UNICEFは暗号資産ファンドを持つ最初の国連機関であり、最先端の技術を活用し、慈善事業に役立てています。Animoca Brandsのようなパートナーと、世界中の子どもたちの生活を向上させる手段として、オープンソースで革新的なソリューションを生み出す暗号資産を利用できることを誇りに思っています」と語っている。

The Sandboxとデジタル不動産「LAND」

The SandboxのユーティリティトークンSANDは、Ethereum(イーサリアム)ブロックチェーン上で発行されたERC-20準拠トークンで、メタバースにて利用できる主要トークンとなる。暗号資産取引所BinanceのIEOプラットフォームBinance Launchpadを通じ、300万ドル(約3億1700万円)相当のSANDが販売され、すでに上場も果たしている。

これらによりThe Sandboxユーザー(コンテンツ制作者)は、アセットを使用しゲームを作ったり、他人の作ったゲームをプレイしたりできる(ゲーム体験)。また、所有する土地(LAND)やキャラクター、アイテムなどデジタルアセットについても、NFTとしてマーケットプレイスにて売買可能(収益化可能)となっている。

LANDは、Ethereum上で発行されたNFT(ERC-721)。The Sandboxにおけるデジタル不動産であり、プレイヤーはその上にエクスペリエンス(デジタルアセット)を構築するために購入できる。発行上限が16万6464LANDと決まっており、すでに多くのLANDがプレセールによって販売済みになっている。

より早くプレセールに参加してLAND所有権を得たユーザーは、The Sandbox内の限られたLANDの中でも人気のロケーションを確保可能。LAND所有者は、The Sandboxでゲームプレイに参加できるほか、自分のLANDにおいて他のプレイヤーに対して独自のゲーム体験を提供できる主催者になれる。さらに、LANDの一部を他のプレイヤーにレンタルをしてSANDを稼ぐことも可能という。

また、メタバースガバナンスに参加できるといった様々な権利を得られるほか、それら権利をNFTマーケットプレイスなどで売買できる。

プレシーズン0のリリース予定を変更、具体的な開始日を2021年1月に発表予定

なお、The Sandboxは現在開発中で年内にローンチ予定だったが、公式ブログにおいてプレシーズン0のリリースを2021年の初めに行うと、予定を変更した。具体的な開始日は、2021年1月に発表するという。

現在、The Sandboxはプラットフォームの一部として3Dボクセル(ブロック)アセットを作成できる「VoxEdit BETA」と、VoxEditで作成されたゲーム内アセットを取引できる分散型マーケットプレイスを公開。メタバース内で3Dゲームを作成できるビジュアルスクリプトツールボックスGame Makerのアルファ版も提供している。

プレシーズン0へのアクセスは、LAND所有者のみの限定公開となる。開始タイミングは事前登録をすることでメール通知を受けることができ、事前登録をしたLAND所有者に対して、順次アクセスを可能にしていくという。

プレシーズン0では15日間のイベントが開催され、プレイヤーは$SAND賞品のほか、NFTを含むその他の限定賞品を獲得できる。

また、ソーシャルハブ、派閥レベル、ギャラリーやGame Makerファンドで制作された「UGCゲーム」40以上が公開され、プラットフォーム制作、戦闘、謎解き、調査、探検、タイムアタック、収集など、ゲーム性を持った体験もプレイ可能という。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Animoca BrandsNFT(Non Fungible Token)オープンソース / Open Source(用語)The Sandboxブロックチェーン(用語)メタバースUNICEFUNICEF Innovation FundUNICEF CryptoFund中国(国・地域)

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.10.25~10.31)

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暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年10月25日~10月31日の情報をまとめた。

トヨタシステムズとディーカレット、デジタル通貨による福利厚生に関する実証実験をトヨタシステムズ社内で実施

トヨタグループのITソリューション企業「トヨタシステムズ」と、暗号資産取引所「DeCurret」運営のディーカレットは10月26日、デジタル通貨に関する実証実験を共同で開始したことを発表した

今回の取り組みは、トヨタシステムズ全社員2500名が参加する大規模なもの。ディーカレットが構築する「ブロックチェーン上でデジタル通貨を発行・管理するプラットフォーム」を活用し、同実証実験用の独自デジタル通貨を発行。トヨタシステムズは、同社社員向けの福利厚生における決済処理や自動化にこのデジタル通貨を利用する。実験では、決済業務の効率化・迅速化におけるデジタル通貨、ブロックチェーンによる決済やそのデータの記録・管理、スマートコントラクトの基本機能による自動実行などの技術検証を行う。

トヨタシステムズは、トヨタ自動車とそのグループを支援するするITソリューションおよびシステム開発の中核企業として、企画・提案から開発・運用まで一貫したトータルサービスを提供。今回は、新たにブロックチェーンやデジタル通貨を活用したソリューション研究のために、技術的な実証実験をディーカレットと共同で実施することにしたという。トヨタシステムズとディーカレット、デジタル通貨による福利厚生に関する実証実験をトヨタシステムズ社内で実施具体的には、同社社員に対して、実証実験専用カタログギフトや福利厚生ポイントへの交換に利用できるデジタル通貨を福利厚生として付与。この交換には、全社員に用意した専用ウォレットから商品・ポイントのウォレットに対して、取引額に応じたデジタル通貨が即座に送付される仕組み・スマートコントラクトを採用しており、その検証とともに有効性を確認する。ブロックチェーンにおけるスケーラビリティの課題や、大規模な実験参加者による業務運用性課題などを検証していく。

実証実験に利用されるデジタル通貨の有効期間は6ヵ月以内。また、実証実験ではデジタル通貨と日本円との交換は行えない。

デジタル通貨発行プラットフォームを提供するディーカレットは、暗号資産取引所の開業を目標に、2018年1月設立。2019年3月に金融庁の認定を受け、4月に暗号資産交換業者として開業した。同社は暗号資産取引所の運営にとどまらず、新しい時代の金融プラットフォームサービスを目指している。

デジタル通貨発行プラットフォームについては、2020年2月よりKDDI、auフィナンシャルホールディングス、ウェブマネー、ディーカレットの4社で、ブロックチェーン上に発行したデジタル通貨の処理を自動化する共同検証の実施を開始している。デジタル通貨の発行から、流通、償却になど業務プロセスの一部と決済処理をスマートコントラクトにより自動化し、検証・実証実験を続けてきた。これらの共同検証は、ディーカレットの「デジタル通貨ビジネスの推進および新たな顧客体験価値の創出」に関する取り組みの一環となる。

カンボジア国立銀行がソラミツと共同開発の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を正式運用開始

カンボジア国立銀行(NBC)ソラミツは、2019年7月よりカンボジア全土でパイロット運用を行ってきた中央銀行デジタル通貨(CBDC)「バコン」の正式運用を発表した。10月28日より、カンボジアのリテール決済および銀行間決済の基幹システムとして運用を開始済み。カンボジア国立銀行がソラミツと共同開発の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を正式運用開始バコンは、カンボジアの法定通貨リエルをトークン化したデジタルリエル(KHR)または米ドル(USD)を使用し、即時および最終的な取引を可能にするCBDC決済システム。NBCが、ソラミツのブロックチェーン技術「Hyperledger Iroha」(ハイパーレジャーいろは)を採用し、ソラミツと共同開発したもの。

テスト運用では、カンボジア最大の商業銀行アクレダを含む9行と決済事業者を接続し、日間数千人程度のユーザー送金や決済を処理してきた。その後、従来の決済システムと連携し、シームレスかつ安全に機能している。2020年第3四半期の時点では、カンボジア全土の18の金融機関がすでにバコンを採用している。

カンボジア国民にとってバコンは、送金手数料不要かつ安全でより速く支払いを行えるデジタル通貨となる。カンボジア国内の電話番号を持ち、スマートフォンアプリを使用できれば、デジタルリエルまたは米ドルのウォレットを保有することで、電話番号の指定またはEMVCo互換QRコードをスキャンし、個人間や法人間での送金や店頭などでの支払いが行える。

ちなみにEMVCoとは、American Express、Discover、JCB、MasterCard、銀聯(UnionPay)、Visaによるカード決済の安全と普及促進を推進する団体で、新しいグローバルなQRコード決済仕様などを定めている。

NBCは、古代クメール帝国の州立寺院「バコン寺院」にちなみ命名したプロジェクトバコンを2016年に発足、CBDCの検討を進めてきた。その目的は、デジタル決済システムによる金融機関の効率改善、負担軽減、自国通貨リエルの使用促進という。

そして何よりも重要なのは、自国内の金融サービスの行き届いていない国民の金融包摂を強化する可能性を探るためだったという。日本のように、国民のほとんどが銀行口座を持つ国はまれであり、そうした国々では銀行口座を必要としない金融システムが必要とされている。

システムの概要

バコンは、NBC運営のバコン・コア、金融機関に割り当てた決済ゲートウェイ、金融機関が個人・企業などに割り当てたウォレットで構成される。金融機関はデスクトップアプリを経由してバコン・コアにアクセスし、個人・企業はiOSアプリまたはAndroidアプリを介してウォレットにアクセスする。カンボジア国立銀行がソラミツと共同開発の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を正式運用開始

バコン・コアは、許可型のコンソーシアム・ブロックチェーンであるソラミツのブロックチェーン技術Hyperledger Irohaを利用しており、複数のノードに格納されている改ざん不可能な時系列チェーンにすべてのトランザクションを記録する。バコン・コアはNBCが管理するノード上の分散台帳に記録されるとともに、同一の分散台帳が特定金融機関と共有され、冗長性と強靭性が保証される。

Hyperledger Irohaは、一部のノードに障害がある場合や信頼できないノードがある場合でも、元帳の安全性を保証する独自のコンセンサスアルゴリズム「YACコンセンサス」を備え、分散台帳全体のトランザクションを検証し、不正のリスク、二重支払いの問題、およびカウンターパーティのリスクを排除する。カンボジア国立銀行がソラミツと共同開発の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を正式運用開始

マクロ経済の観点から、現在のバコンは中立という。デジタルリエルは現金に取って代わるものではなく、利子もない。デジタルリエル・ウォレットは従来の銀行口座に裏打ちされているため、取り付け騒ぎと流動性リスクは抑えられるという。

また、金融機関は従来の金融システムと同様、デューデリジェンス(Due Diligence)を実施し、本人確認(KYC)規制を遵守する。バコンは多要素認証の本人確認システムをサポートしている。基本はスマホのSMS検証を使用して少額決済が可能なバコン口座を開設できるが、高額決済可能なバコン口座の開設には、政府IDを登録し厳格な本人確認を行う必要がある。

ソラミツの「Hyperledger Iroha」

ソラミツは、オープンソースの許可型ブロックチェーンプラットフォームであるHyperledger Irohaのオリジナル開発者であり、中心的開発貢献者。企業や金融機関のデジタル資産管理の支援を目的としたHyperledger Irohaは現在、Linux Foundation運営のクロスインダストリー(異業種連携)共同開発プロジェクト「Hyperledger」の一部となっている。またこのHyperledgerプロジェクトにおいて、Hyperledger Fabricなどに続いてバージョン1.0リリースに到達した4番目のブロックチェーンプロジェクトとなっている。

Hyperledger IrohaはC++で記述されており、高いパフォーマンスと信頼性が必要なユースケースや組み込みシステムに最適とされる。

ソラミツは、Hyperledger Irohaを使用し、デジタル資産、ID、契約を管理するためのモバイルアプリケーションなど、ユーザー向けのサービスを作成している。Hyperledger Irohaを活用することで、より安全で効率的な社会の構築に貢献していくという。Hyperledger Irohaのオリジナル開発者・主要な貢献者として、今後もHyperledger Irohaの技術およびビジネスサポートについても提供していく。

ブロックチェーンゲームプラットフォーム「The Sandbox」がゲームを作成できるツールの完成を発表

中国・香港拠点のゲーム開発会社「Animoca Brands」(アニモカブランド)の子会社TSB Gamingは10月31日、ブロックチェーンゲームプラットフォーム「The Sandbox」でゲームを作成できるツール「Game Maker」の完成を同社ブログにおいて発表した

ブロックチェーンゲームプラットフォーム「The Sandbox」がゲームを作成できるツールの完成を発表The Sandboxは、ブロックチェーンベースの仮想空間(メタバース)にあたる、コミュニティ主導型ゲームおよびゲーム作成プラットフォーム。現在開発中で、2020年後半にローンチ予定だ。TSB Gamingは、その一部として3Dボクセル(ブロック)アセットを作成できる「VoxEdit BETA」と、VoxEditで作成されたゲーム内アセットを取引できる分散型マーケットプレイスを公開しているほか、メタバース内で3Dゲームを作成できるビジュアルスクリプトツールボックスGame Makerのアルファ版を公開していた。

また、The Sandboxは、ユーティリティトークンSANDを利用可能。SANDは、暗号資産Ethereum上で発行されたERC-20準拠トークンで、メタバースにて利用できる主要トークンとなる。暗号資産取引所BinanceのIEOプラットフォームBinance Launchpadを通じ、300万ドル(約3億1700万円)相当のSANDが販売され、すでに上場も果たしている。

これらによりThe Sandboxユーザー(コンテンツ制作者)は、アセットを使用しゲームを作ったり、他人の作ったゲームをプレイしたりできる(ゲーム体験)。また、所有する土地(LAND)やキャラクター、アイテムなどデジタルアセットについても、NFT(Non Fungible Token。ノン ファンジブル トークン)としてマーケットプレイスにて売買可能(収益化可能)となっている。

ブロックチェーンゲームプラットフォーム「The Sandbox」がゲームを作成できるツールの完成を発表Game Makerは、無料で3Dゲーム体験を作ることができるツールという位置付けだ。

Game Makerでは、初めてゲームを作る際にイチからすべて作ることも可能だが、テンプレートとして用意されているアセット組み込み済みLANDも利用できる。ゲーム体験の規模に合わせて、LANDのサイズや湖、砂漠、低地、草原、南極、ジャングルといったテーマの選択が可能だ。

また、ゲームとして重要な要素となるルールや出現するアセットとその希少性、勝利条件など、細かい設定も行える。ゲームには欠かせないNPC(ノンプレイヤーキャラクター)も設定できる。NPCは、味方や単なる住民・農家などゲームに応じたキャラクターを用意できるほか、NPCを利用したクエストの作成や、NPCに設定するセリフによる質問なども可能であり、作り込めば作り込むほど本格的なゲームを制作できるという。NPCは必ずしも友好的なキャラクターとは限らず、敵対するNPCの設置も行える。

ゲームの主人公となる自分のアバターについても、強いあるいは弱いアバター、動きが速いもの、ジャンプ力のあるものなど、様々なパラメターを設定可能。その他にも、ゲームに必要なアイテム集めなど、あらゆる要素が用意されているので、詳しくはブログをチェックしていただきたい。

The Sandboxは、Game Maker以外にも、The Sandbox内で使用できるアセットとして有名キャラクターとの提携についても発表を行っている。10月29日には、世界的に有名なキャラクターである「The Smurfs」(スマーフ)との契約の締結を発表したばかりだ。

ブロックチェーンゲームプラットフォーム「The Sandbox」がゲームを作成できるツールの完成を発表ユーザーはThe Sandbox内のスマーフのLANDにてゲームをプレイできるほか、スマーフをテーマにしたアセットを購入し、独自にゲームが作れるようになるなど、新たなゲームの世界が登場する予定。

The Sandboxは、いずれもSANDトークンを中心にした新しいゲーム体の世界が構築できる、これまでにはないプラットフォームになることは間違いなさそうだ。

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メタバース化するファッションと現実を橋渡しするスニーカーマニアのためのアプリ

ファッションはメタバースへの移行期にある。

さまざまな高級レーベル、音楽そしてゲームは、バーチャルな世界で人目を引こうと躍起だ。それらに依存してきたイベントや娯楽の業界が休止を余儀なくされたパンデミック下では、バーチャルな物事が大衆文化を代表し始めている。

そこでは、これまで金と名声でしか獲得できなかったステータスシンボルの蓄積に必要なものは、富みではなく、想像力と技術力だけという環境が構築されている。

Marc Jacobs(マークジェイコブズ)Sandy Liang(サンディーリアング)Valentino(ヴァレンティノ)といった有名ブランドが任天堂の「あつまれ どうぶつの森」にデザインを提供し、ハイブベイは2020年5月末にゲームの中でファッションショーを開催する。またEpic Games(エピックゲームズ)の「フォートナイト」とSupreme(シュプリーム)などのブランドとコラボ(これはパンデミック前だが)などさまざまな交流を通じて、ファッションは、その関係性を保とうとゲーム文化に足場を築いている。

スタートアップ企業の創設者であり、そしてスポーツウェアの最大手企業の従業員としてその両方の業界で経験を積んだある起業家が、新しいアプリを立ち上げた。それは、現実とバーチャルのファッション世界の橋渡しとなるものだ。

目指しているのは一流ブランドを愛する人たちに、あこがれの製品のバーチャル版を集める場と、ポイントを貯めればそれが実際に買えるチャンスになることだ。さらにゆくゆくは、新しい才能を発掘して次世代のコラボの流れを作ろうと考えるブランドに自分を売り込み、デザイナーとして身を立てるきっかけを作る場をデザイナーの卵に提供する予定だ。

マークジェイコブズ「カブを売る? 私たちはAnimalCrossingFashionArchiveアカウントと提携してマークジェイコブズのお気に入り6点を『あつまれ どうぶつの森』に展示します。私たちのストーリーでコードをダウンロードしてください」

Agletの第1フェーズ

Adidasの元デジタルイノベーション戦略の責任者であったRyan Mullins(ライアン・ムリンズ)氏が開発したAglet(アグレット)という名のこのアプリは、限定エディションのスニーカーのデジタル版をコレクションできる場であり、将来的には、世界的デザイナーのVirgil Ablohs(バージル・アブロー)やKanye Wests(カニエ・ウェスト)を目指す人たちがメタバースのオリジナルスニーカーを作れるデザインツールにもなる。

2020年4月に、TechCrunchがムリンズ氏に話を聞いたときは、彼はドイツで足止めされていた。彼はロサンゼルスへの移住に合わせて会社を立ち上げる予定だったのだが、新型コロナウイルスの感染拡大予防対策のために旅行ができなくなり、世界の国々がロックダウンしてしまったため、計画は大きく変わってしまった。

もともとこのアプリは、スニーカーマニアのための「Pokémon GO」になるはずだった。バーチャルスニーカーの限定版ドロップ(モデル)が街のあちらこちらに現れ、プレイヤーはそこへ行き、そのバーチャルスニーカーをコレクションに加えるというものだ。プレイヤーは、さまざまな場所へ移動することでポイントを得ることができ、ポイントはアプリ内購入や店舗での割り引きに使える。

「みんなの物理的な行動を私たちがバーチャルなお金に変換して、店舗での新製品の購入に使えるようにするというものです」とムリンズ氏。「ブランドは、プレイヤーに課題を出します。自分の街で他の人たちと競い合いながらいくつかの課題をこなし、勝利すると賞品がもらえます」。

Agletは、プレイヤーが遠征の際にどのバーチャルスニーカーを着用したかに基づいてポイントを決める。バーチャルスニーカーは、エアフォース1からYEEZY、さらにはもっと高価なものやレアなものまで、幅広く用意されている。それを履いて「外を歩く」ほどポイントがもらえる。だがしばらくするとスニーカーはすり減り、新しいものと交換しなければならなくなる。つまり、こうしてアプリにハマりやすくなるのが狙いだ。

アプリ内購入に使える通貨は、1ドル(5Aglets、約108円)から80ドル(1000Aglets、約8630円)の間で好きな額を購入できる。プレイヤーは、集めたスニーカーをアプリ内のバーチャル棚に飾ったり、他のプレイヤーと交換したりもできる。

街がロックダウンされ自宅待機が要請されるようになると、ムリンズ氏と開発者たちは、そのゲームを急いで「パンデミックモード」に作り変えた。プレイヤーはマップ上を自由に移動でき、ゲームをシミュレートするというものだ。

「当初はロサンゼルス限定で、そこで人々に競い合ってもらう計画でしたが、完全に諦めました」とムリンズ氏はいう。

このアプリには、Nikeの「SNKRS」のような先例があった。4月のAgletのローンチについて書いたInputの記事によると、SNKRSでは特定の場所にユーザーを集め、さまざまなコラボを通じて限定ドロップを提供するという。

ムリンズ氏が現在Agletで考えている展開は、ゲームとスニーカー文化を糸で縫い合わせるというおもしろい試みだ。ムリンズ氏は拡張現実を利用して新タイプのショッピング体験ができる、ゲームの世界から一歩外に踏み出したものを作ろうとしている。

画像クレジット:Adidas

将来のファッションはメタバースから発掘される

「私が(Adidasで)最も誇りにしている取り組みは、MakerLab(メイカーラボ)というものです」とムリンズ氏はいう。

MakerLabは、Adidasと若い新進気鋭のデザイナーとを結び付け、同社の古典的なシルエットをベースにした限定版をデザインさせた。ムリンズ氏は、このようなコラボを可能にする場が業界の未来を切り拓き、想像を超える魅力をもたらすと考えている。

「実際のところ私は、次なるNikeはスウッシュが反転したNikeだと確信しています」とムリンズ氏。「若者たちがRoblox(ロブロックス)のバーチャル世界で何かをデザインすると、それが現実世界に飛び出してきて、NikeやAdidasが製品化するという現象が起こりつつあります」。

そうした観点に立てば、Agletのアプリはムリンズ氏が追いかける大きな理想のためのトロイの木馬に見える。デザインスタジオを作り、最高のバーチャル・デザインを陳列して、それを現実世界に持ち出すのだ。

ムリンズ氏はそれを「スマートAgletスニーカースタジオ」と呼んでいる。「そこで標準的なスタイルを元にオリジナルのスニーカーをデザインして、それを履いてゲームの中を歩く。プレイヤーにオリジナルのパーカーをデザインできるようにして、私たちがファッションデザインのYouTubeの役割を果たします」

YouTubeを例えに出したのは、そこがメイクアップアーティストから、ソーシャルメディアのストリーミング配信から見いだされたJustin Bieber(ジャスティン・ビーバー)のようなミュージシャンまで、誰もがスターになれる可能性を提供するプラットフォームだからだ。

「私はバーチャルなデザインプラットフォームを作りたいのです。若者がそこで独自のバーチャルファッションブランドを立ち上げ、ゲームの世界で販売する。そこをまず作りたいと思っています」とムリンズ氏は話す。「ビーバーが発掘されるや、YouTubeは彼がインフラ全体にアクセスできるようにしてスターに育て上げました。NikeもAdidasも、同じことをしています。いろいろなところにいる才能あるデザイナーの卵を見つけ出し、そのインフラを提供して、若いうちからプロとして活躍できるよう後押ししているのです」。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

子供も大人も自宅待機の中、バーチャルな世界が主流となる機会は到来しただろうか?

TechCrunchはこれまで、「メタバース」とも呼ばれるバーチャル世界の発展をつぶさに取材してきた。

Robloxなどのプラットフォームや、フォートナイトといったオープンワールド形式のゲームが成長した結果、ゲームのバーチャル世界を友達と一緒に楽しむのが近年で人気を集めつつあるが、若年層以外ではまだ主流の社会活動となってはいない。

TechCrunchのメディアコラムニストであるEric Peckhamは、3週間前に発表した詳細なレポートでソーシャルメディアの新たな時代としてバーチャル世界を位置付けた。8部に分かれたこのシリーズを通じて彼はバーチャル世界の歴史を振り返り、ゲームがすでにソーシャルネットワークと化している理由ソーシャルネットワークがもっとゲームを必要とする理由業界における今後数年間の動向およびゲームを通して社交することがまだ主流になっていない理由バーチャル世界が社会関係を健全にしていく仕組みバーチャル経済の未来この新たな市場で成功を収めつつある企業などを解説した。

たった3週間で、知識経済の大部分が突然バーチャルにすべてをやりとりする状況など、誰が想像できただろうか。そういうことから、私は、新型コロナウイルスが蔓延する中、人気が高まっているバーチャル世界の状況をよりよく把握したいと考えた。私はEricと電話対談し、その内容を公開することにした。

Danny Crichton:タイミングについて話そう。あなたがバーチャル世界に関する全8回の連載記事を書き終えた直後に突如として、この未曽有の現象、新型コロナウイルスの世界的流行が起こり、人類の大半が自宅にこもってオンラインのみでやりとりすることになった。今、バーチャル世界では何が起こっているのだろう。

Eric Peckham:私が一連の記事を執筆したのは、オープンワールド系MMOゲームに対する消費需要の増加と、FacebookやSnapなどの巨大ソーシャルメディアがバーチャル世界やソーシャルゲームを自社プラットフォームへ取り込もうとしている両側面で、すでにマルチバースへの関心が高まっていることに気づいていたからだ。大手企業は、バーチャル世界を将来のヴィジョンとして掲げるだけではなく、実行可能なやり方で計画している。また近年は、人々が長時間過ごすことのできる次世代のバーチャル世界、ユーザの貢献によって形作られる複雑な社会を持つバーチャル世界の構築に焦点を当てたスタートアップへのVC投資も盛んに行われている。

ゲーム業界の創業者や投資家に話を聞くと、ここ数週間で、大人も子供も自宅でのゲーム人口が増加し、利用率が大幅に上昇しているという。

こうした次世代バーチャル世界のほとんどはまだ非公開のベータ版だが、Roblox(ロブロックス)やマインクラフト、フォートナイトといった既に人気のプラットフォームは普段よりもかなり利用されている。自宅に閉じこもっている人々の多くが、ゲームの仮想世界を経由して脱出しているのだ。

あなたがそうした分析のすべてを連載記事に執筆したのはパンデミックの規模を知る前だった。この業界の見通しはどう変わったのだろうか。

日常的に人々がバーチャル世界で交流して社会活動を行うことが主流になるまでのタイムラインが加速すると考えられる。この自宅待機は数週間ではなく数ヶ月間続き、それによって人々の社交や在宅勤務に対する考え方も変わってくるだろう。

これは真に大きな文化的変化だ。コアのゲーミングコミュニティを超えて、より多くの人がバーチャル世界で時間を過ごし、友達とやりとりすることを楽しみ始めている。

インターネットユーザーの中でも、最も若い世代でこの傾向が特に顕著だ。9~12歳の子供の大半がマインクラフやRobloxのユーザーであり、そこで放課後に友達と時間を過ごしている。以前よりも急速に、高い年齢層へもこの傾向が広がるだろう。

史上最大規模で自宅待機が強制されているにも関わらず、VRヘッドセットはほとんど売り切れているという苦情をTwitterで目にしている。VRはバーチャル世界に不可欠な要素なのだろうか。

まあ、VRヘッドセットがなくても、バーチャル世界で他の人と交流して楽しむことはできる。スマートフォン、PC、ゲーム機を使って、今でも無数の人々がそうして楽しんでいる。

ゲームが要求するミッションをこなしながら、他の人々とやりとりできる、長い時間を過ごせるバーチャル世界を構築することが、ゲーミング業界が目指す理想だ。昨年最も人気を集めていたモバイルゲームとPCゲームの分野に、大規模多人数同時参加型オンラインゲーム(MMO)が挙げられる。

ゲームについていえば、一連の記事で特に興味深いと私が感じた点は、ゲーミングはまだそれほど人々へ浸透していないという事実だった。

年間でいえば、20億人以上の人がビデオゲームを楽しでいる。これ自体は、驚異的な市場浸透率だ。しかし、少なくとも私が得た米国のデータによると、毎日ゲームを楽しむ人口の割合は、毎日ソーシャルメディアを利用する人口に比べてずっと低いことがわかっている。

ゲームプレイのミッションを超えて、社会活動を行って互いとやりとりするためのバーチャル世界にゲームが進化するにつれ、スマートフォンで5分間楽しむ時間があれば、バーチャル世界で社会活動やエンターテイメントを選ぶ人々も増えていく。ソーシャルメディアは、生活の中でこうした短い時間を埋めている。現時点でMMOゲームがそうなってないのは、時間がかかり、継続して集中しなければならないというゲームプレイを中心に構築されているからだ。Robloxのように、友達と共に過ごすための系統に属するバーチャル世界は、インスタグラムとより直接的に競合できる。

RegalやAMCなどの映画館チェーンは、ウイルスの流行が終息するまで、すべての映画館を閉鎖すると今週発表した。これはバーチャル世界の企業に影響を与えるのだろうか。

私は、この2つは別々のメディアに属していると考えている。映画館の観客数は長年にわたって減少を続けており、これに対して映画産業は、映画館でプレミアム体験を提供し、チケット価格を上げることで対抗してきた。子供であれば、金曜日の夜に映画館へ行くのと同じ感覚で、あるいはより積極的に、友達と集まって一緒にゲームを楽しむだろう。若い人にとって、映画館はかつてほど文化的に身近な存在ではない。

一種のバーチャル世界、または少なくともバーチャル職場である、在宅ワークの大規模な実験が行われている。バーチャル世界の人気が高まるのは、エンターテイメント分野と、生産性指向のプラットフォームのどちらから始まるのだろう?

エンターテイメント側から始まるだろう。その理由の一部は、ビジネス環境で会議をする人々が、バーチャル世界をあまりプロフェッショナルではないと感じるのと比べて、礼儀作法をそれほど気にされない若い人々がそれを社会活動に使用するからだ。時間をかけて、バーチャル世界が社会活動で一般的になれば、ビジネスについても自然に話し合える場所になるだろう。

オンラインで仕事し、バーチャルでやりとりする人々が増えるにつれ、私たちが直面する大きな課題は、今市場にあるZoom通話やバーチャル会議用に出回っている技術の範囲を超えて、直接人々と触れ合って会話しているような状態へどうやって持っていくかだ。バーチャル世界で歩き回ることができなければ、それは難しいだろう。Zoom通話やその他のブロードキャストソフトで各自がボックスに収まっているだけでは、気さくに小さなグループを形成したり、1対1でやりとりできない。バーチャル世界の技術を基にした、バーチャルビジネス会議がどのように発展していくかを見るのは興味深い。この課題に取り組む企業をいくつか目にしている。

最後の質問になるが、今後大規模な経済不況が予想される。バーチャル世界で収入を得ている人々は、コロナウイルスでどのような変化に見舞われるのだろう。

私のシリーズ記事の最後から2番目では、バーチャル世界をめぐり形成されたバーチャル経済を扱っている。バーチャル世界であればどれでも、商業行為が行われており、人々はすでにゲームやSecond Lifeといった初期のバーチャル世界から実際の収入を得ている。

コロナウイルスの影響で自宅に待機する人々と、今後予想される不況の両方が、オンラインで収入を得るよう人々を後押しするだろう。バーチャル経済がゲーム内に公式に組み込まれた場合や、ゲームをめぐる未認可や非合法に形成されるバーチャル経済(こちらの方が一般的だ)のいずれであれ、その活動は増え続けるだけだ。

ありがとう、Eric。

画像クレジット: Shutterstock

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(翻訳:Dragonfly)

フォートナイトの急成長、テックジャイアントが注目する「メタバース」とはなにか

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するPodcast「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきて、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicでは、次世代ゲームの話や最新テックニュースの解説をしているポッドキャストもやってます。まだ購読されてない方はチェックしてみてください!

はじめに

日本ではそれほど盛り上がってないかもしれないが、グローバル、特に米国では2018年頃からFortnite(フォートナイト)ブームが続いている。FacebookやTwitterなどのSNSの競合もフォートナイトと言われている。他にも、ストリーミング戦争の記事でも少し記載したが、Netflixの代表が株主総会で競合としてフォートナイトを指名するなど他業界でも脅かす存在となっている。実際に若者層からの支持は圧倒的で、親会社であるエピックゲームズは、フォートナイトを次世代SNS、そしてインターネットに続く世界インフラである「メタバース」の構築を狙っている。

今回は、ユーザーのアテンション(注目)を奪い合う戦いになっている今、フォートナイトがなぜこれほど支持されているのか、「メタバース」とはなにか紹介したいと思う。メタバースを知ることによって、Facebookがオキュラスを買収した意図、マイクロソフトが今まで以上にコンシューマーサービスに注力しているかなど理解できるだろう。

フォートナイトとは

フォートナイト(Fortnite)はエピックゲームズが開発・発売しているバトルロワイヤルゲーム。オンライン上で100人と同時にプレイができ、戦った最後に残った1人が勝ちだ。

フォートナイトが初めて発表されたのは、2011年。技術が遅れていたため、実際に公開されたのは6年越しの2017年だった。最初は、今のように基本無料の形ではなく、プレイするのにお金がかかるモデルだった。

すぐに無料でプレイできるモデルに変更したフォートナイトは、最初の1カ月で50万ダウンロードされ、2カ月目に100万ダウンロードを達成した。もともろバトルロワイヤル形式ではなかったフォートナイトは人気ゲーム「PUBG」をコピーし、「フォートナイト バトルロイヤル」を同年に公開。PUBGが人気だったため、フォートナイトもすぐに火がついた。公開初日で100万人、その2週間後には1000万人を達成。

以下の図は、フォートナイトの成長を表している。こう見ると、凄まじいスピードで成長しているのがわかる。

ここ数年の「eSportsブーム」により、リーグ・オブ・レジェンドやDota 2がなどもユーザーを増やしたが、驚異的なスピードでフォートナイトが抜いていった。

20%以上のユーザーが1週間のうち16時間以上プレイをし、35%以上のユーザーがフォートナイトが原因で学校の授業をサボったことがあると言われている。Off Topicのポッドキャスト(#19 Fortniteの大ヒットからみる次世代ゲーム事情)でも話があったが、人気になりすぎてフォートナイト中毒から抜け出すセラピーキャンプに子供を通わせる親もいるほどだ。

すごいのはプレイ時間だけではなく、売上も伸びている。2019年だけでフォートナイト事業は18億ドルの売上を達成。以下の2018年のフォートナイトの1ユーザーあたりの売上でも、Google、Facebook、Twitter、スナップチャットを合計額の約2倍もある。

フォートナイトの影響はそれだけではない。大麻やタバコ、アルコール、エロ、テレビの代理ソリューションとなっている。数年前はゲームばかりしている子供を心配している親が多かったが、実際はよかったのかもしれない?

フォートナイトがこれほどまで人気な理由

なぜこれほど人気なのか?それはフォートナイトが成功するタイミング、機能、そしてユーザーを徹底的に理解していたから。

1. 人気ゲームコンセプトへの参入スピードと柔軟性
PUBGなどバトルロワイヤルモードが増え、多くのゲームユーザーはこのフォートナイトがベースになりつつあった。フォートナイトは、元々異なるゲームだったのに対し、急遽変更できたのは柔軟性が高いゲームエンジンを持っていたから。

2. クロスデバイスと無料化でプレイできないという状況をなくす
フォートナイトが2.5億人ユーザーまで成長できたのは、様々なプラットフォーム(PC、モバイル、コンソール)でのプレイを可能にしたからとも言える。今まではPCやコンソールゲームはデバイスありきで、ソフトを買わなくてはならなかった。そのため友達みんなとプレイすることができなかったが、今は全員スマホ持っているので、プレイすることができないということがないのだ。

エピックゲームズが開発した「Unreal Engine」(後ほど詳しく説明する)のように1つのコードベースでマルチプラットフォームへ配信可能にするのが普通になるだろう。 DauntlessというハンティングゲームもPCとコンソールのクロスプレイを実装したら3週間でユーザー数が4倍に増加。その影響か、リーグ・オブ・レジェンドもようやくモバイル版のリリースも発表された。

3 . 「ゲーム」から「ソーシャル」への進化
フォートナイトの凄みは、ゲームからSNSへと進化していっていること。発売当時のユーザーは、「フォートナイトを一緒にプレイしよう」と言っていた。今は、「”フォートナイトで”集まろう」と場所になっているのだ。今までは放課後、カフェやモールに行っていたのがフォートナイト上でだらだらする若者が増えている。フォートナイトをしながら、友達と話したり、ゴシップ話をするのが普通になってきているのだ。平均使用時間は、1〜1.5時間と言われている。高い数値と言われていたスナップチャットの30分よりも圧倒的に高い。フォートナイトは意図的に「サード・プレイス」として生まれてなく、そこへ進化したことがよりユーザーが好んでいるかもしれない。フォートナイト現象が起きるからこそ、次のSNSプラットフォームはゲームになるのではないかとAndreessen Horowtizなどが予想している。

4. 常にアップデートされる新しいコンテンツ
これまでのゲームは、3〜5年と長期スパンで続編を発売していたが、次世代ゲームは月1ペースで新しいコンテンツやゲームを変化させている。ユーザーフィードバックなどを活用してゲームは進化し続ける。まさにGame-As-A-Serviceになっている。

5. ユーザーが自ら作れるクリエイティブモード
昔からあったが、今だと新しいツールを利用してユーザーが改造・変更する「Mod(モッド)」を作るのがトレンドになっている。PUBGやリーグ・オブ・レジェンドなど有名ゲームもModだった。

フォートナイトのクリエイティブモードでYouTuberのMustard Playsがゲームを公開。フォートナイト内で全く別のストーリーやパズル、障害物コースを作ったミニゲーム。自分のアバターが全く別のゲームの主人公になっている姿を見るのワクワクする。

フォートナイトの野望「メタバース」

メタバース(Metaverse)とは、SF作家のニール・スティーヴンスンによる「スノウ・クラッシュ」の作中で登場するインターネット上の仮想世界のことを指す。「メタ」はギリシャ語で「beyond(超える)」と言う意味から、今の世の中を超える世界、いわゆるインターネット2.0、インターネットの次のインフラとして言われている。オフラインとオンラインがより統合されたものと言われていて、セカンドライフや映画 マトリックス、最近だとレディ・プレイヤー1などがイメージとして言われているが、実際にメタバースというものがどんな形になるかはいまだに誰も理解していない。

ただ明らかなのは大手テック企業のCEOたちは、メタバースを重要視しているということ。フォートナイトの進化、FacebookやGoogleがハードウェアへの参入、MicrosoftやAmazonがクラウドコンピューティングへの投資などはもちろん短期的利益もあると思うが、裏にはメタバースの作成というマクロな目的が各CEOの頭にある。大手テック企業の社長室には似た本やものが置いていることがあるが、最近だと「メタバース」や「アバター」と名付けたニール・スティーヴンスンの『スノウ・クラッシュ』が一番読まれているのではないかと思う。

メタバースとはなにか?

メタバースがなにかと聞かれると回答するのは難しい。マトリックスやレディ・プレイヤー1など、バーチャルリアリティ的なインターネット世界へ繋がるような表現をされることが多い(おそらく違う)。1982年にインターネットが2020年にはどのようになるか想像出来なかったように、次のインフラのイメージ図を出すのは非常に難しい。ただメタバースのコアな機能や特徴を紹介したいと思う。

1. 終わらない
オフラインやインターネットの世界みたいに、「オフボタン」はなく、常にあり続けること。

2. 常にライブで同期されている
今までの人生と同じく予定されたイベントなどは実在するが、メタバース自体が全ての人に取ってリアルタイムで体験できるものとなる。

3. 誰でも参加できるアクセス人数は無制限
誰でもメタバースに参加ができ、一緒にイベントや場所、アクティビティーに参加しながら、個性を表現する場所でもあること。

4. 自社経済を持つこと
個人や企業がメタバース上で物やサービスの開発、売買、投資、保有、そして作った物などについて報酬をもらえる経済ができること。

5. オフラインとオンラインやオープンとクローズドで体験を提供

6. データ、デジタルアセット、コンテンツなどで過去ないレベルの相互運用生が可能に
他のゲームでのスキンが別のゲームでも使えるようになったり、Facebookで共有できるようになるのが重要になる。

7. 様々な人々が作るコンテンツや体験があること
個人、小さいグループや会社がコンテンツや体験を作れて提供できるようになる。

逆にメタバースと勘違いされやすいコンセプトは、

1. バーチャルな世界ではない
AIキャラクターが含まれたり、人間が入っているバーチャルなゲームや世界は何十年前からあるが、これはただゲームの目的として作られている世界。

2. バーチャルなスペース

ゲーム性がなく、ソーシャルで集まり、アバターで自分を表現するセカンドライフなどバーチャルなスペースの多くが初期メタバースとして見られることが多いが、これだけだと「世界」としての機能が足りない。

3. バーチャルリアリティー(VR)
VRは単純にバーチャルな世界やスペースを体験する方法だけである。

4. デジタルやバーチャル経済
これも既に過去に存在しているコンセプト。「World of Warcraft(ワールド オブ ウォークラフト)」上でバーチャルグッズを実際のお金と交換したり、バーチャルタスクを実際のお金で取引するケースもあった。

5. ゲーム
フォートナイトはメタバースの特徴を多く捕らえているが、ゲームだけだとそれは足りてない。

6. ディズニーランドやバーチャルテーマパーク
メタバースではディズニーランドのようにに1社がテーマパークをデザインしないはず。ロングテール向けにユーザー自身や色んな会社が自社のテーマパークの乗り物をいっぱい作れるようにするはず。誰でもインターネット上でウェブサイトを作れるような感じ。

7. 新しいアプリストア
メタバースは今考えているアプリストアより遥かに複雑なインフラになるはず。

8. 新しいUGCプラットフォーム
YouTubeやFacebookのようなユーザー生成コンテンツだけではない。メタバースがまだ想像つかないかもしれないが、過去にBI: Before Internet(インターネット前)とAI: After Internet(インターネット後)の世界で別れたように、メタバースもBM: Before Metaverse(メタバース前)とAM: After Metaverse(メタバース後)に分かれてもおかしくないと思う。

なぜメタバースが大事になっていくのか?

大手テック企業がメタバースの構築をリードしたい理由は明らか。インターネットのトップ企業が次々と世界のトップ企業として名前を挙げられている中、次のインフラでも同じことをしなければいけないと思っている。しかも今度はインターネットを超えてオフラインの世界にも入ってくるため、よりユーザーのアテンションと時間、より大きな市場規模となり得る。

さらにメタバースは地域関係なく、平等にリソースのアロケーションが提供されるため、地方に住んでも都内と同じ仕事や経済に入れるようになる。インターネットの普及でそれを少し見ることが出来たが、メタバースだとそれがさらに加速されるだろう。

メタバースで必要になってくる技術とインフラ

メタバースで必要なのは一つの場所に無制限の同時アクセスが出来る技術。この技術はまだ発展中で、ようやく現実になり始めているのが現状としてある。フォートナイトが2019年に実行したMarshmelloのコンサートも1,100万人が同時アクセスされたと記載があるが、実は100人毎のインスタンス(グループ)が10万個に分けられていただけ。Fortniteも100人のグループに分ける理由は100人と言う数字がゲームプレイが一番楽しいからではなく、単純にそれが現状の同時アクセス数のリミットだから。セカンドライフなども多くの人が一緒にプレイしているように見えるが、実はFortniteと同じようにシャーディングされて、地域別にサーバーを置いたりしている。Facebookも何億人も使っているが、他のユーザーではなくFacebookのサーバーだけとリンクしている。何か情報が必要な時にはFacebookサーバーから取っているだけなので、そこまで負担がない。メタバースはビデオ電話とゲームを組み合わせたサーバー負担になる。現在のビデオ電話でも50人以上入ったらかなり遅くなり、そうするとライブ配信とかが必要になるが、ライブ配信はインタラクティブなコネクションがない。結局メタバースのインフラは現在存在してなく、インターネットがメタバースのような体験に今は耐えられない。

さらに課題として上がってくるのは現在のインターネットはオープンなスタンダードで作られたものの、ほとんどのインターネット上のものはクローズドになっていること。Amazon、Facebook、Googleなどで似たような技術を使っているものの、全体としてスタンダード化されていないため、Facebookで作ったものはAmazonにフィットしなかったりする。似た話をすると、画像フォーマットも現状だとGIF、JPEG、PNG、BMP、TIFF、WEBPと多くフォーマットがあり、各自上手く組み合わないケースもある。メタバースではこの技術、フォーマット、インフラのスタンダード化と言うのは必要になってくるが、そこに全世界が合意するのはかなり時間がかかるだろう。

フォートナイトがなぜメタバースに一番近くにいるのか?

その中でなぜフォートナイトが最もメタバースに近いと思うのか?まず、3年前以上からエピックゲームズのCEOのティム・スウィーニー氏がメタバースについて語っている。

フォートナイトが最もメタバースに近い理由をまとめると、

  1. 人気なツールを作り、それを上手くソーシャル化している
  2. プラットフォームの大きさを使って世界中のIPを掻き寄せている
  3. 自分のアバターが中心にあること
  4. ユーザーが自社コンテンツを作れるクリエイティブモードを提供
  5. 全てを可能にしている技術へ投資をかなりしている

1. ツール → ソーシャル → 初期メタバースの流れを既に作っている

メタバースはSNSと同様で最初から作っても人は入ってこない。Facebookも最初に大学キャンパス内での友達や恋人の見つけ方、そして後々写真共有やメッセージングサービスへ変わってからSNSになった。メタバースを作る会社も同じようにツールから初め、それをソーシャル化して、その後にメタバースへと進化させることが大事。

フォートナイトは最初の2つのステップをクリアしつつある。元々は面白いゲームとして知られていたのが、今ではフォートナイト上で集まっておしゃべりをする。面白いのが、フォートナイトでフォートナイトの話をしていないことだ。ゲームの進化についてもCEOのスウィーニー氏はもちろん認識している。

2. フォートナイトの中心には自分のキャラクターがいる

この良さが出てきたのは、スターウォーズの新作とのコラボ企画だった。以下は、マーケティング戦略に詳しいジャック・アップルビー氏の引用だ。

まず、ゲーム内でしか見れないを予告動画を作った。ここで注目するのはコンテンツがどれだけ見やすいことなどではなく、フォートナイト上で友達と共有し一緒にバーチャルな世界で予告が見られること。

ワンタイムイベントも人気だった。特にライトセーバーの好きな色投票はかなりの数集まった。投票自体は何もゲームにはおそらく影響なかったが、プレイヤーが参加している気分を作るのが大事だった。

ゲームコンテンツとしてはライトセーバーを装置してプレイできるようになった。これがおそらく多くのファン心をくすぐる瞬間だろう。これはディズニーがカルフォルニアに作った新しいスターウォーズのテーマパーク「ギャラクシーズ・エッジ」でユーザーが自分だけのカスタムライトセーバーが作れると同じように、「自分だけの」や「自分のキャラクター」と言う発想が今までゲームではあまりなかった。

実はスナップチャットも同じような施策をBitmojiで行っていた。彼らもBitmojiを起点にFacebookに勝ちに行っている戦略として見ている。SnapがBitmojiを$62.5Mで買収した時はみんなはてなマークを浮かべていたが、最近リリースしたBitmoji TVや去年自分のBitmojiキャラクターをTinderやAnchorなど色んなプラットフォームで出せる試作を取った時に初めてFacebookが出来ない機能を大きく推したと思った。結果としてSnap DAUの7割がBitmojiを使っていて、直近は「Bitmoji TV」をリリースした。

他のアプリにBitmojiキャラクターを導入させることによって、Facebookには出来ない戦略をSnapができて、それの次のステップがこのBitmoji TV。Fortniteと同じく、自分のアバターをメインキャラにしてアニメ番組を制作していて、友達のアバターもストーリーの中で出てくる。

3. 巨大プラットフォームおかげでの色んなIPが集まる場所になったこと

フォートナイトが大きくなったからこそいろいろなIP、ブランド、ストーリーが集まる場所となった。有名なのはMarshmelloのコンサートだが、それ以降も多くのコラボイベントを実施した。先ほど紹介したスターウォーズとのイベントもでも、映画で公開されてなかった音声がフォートナイト上で流れた。それはいかにフォートナイトが浸透しているのを表していることでもあるし、望んでいる他の世界との繋がりなのだ。

アーティストのWeezerもフォートナイト上でWeezer専用の島を作り、その島に入るとWeezerの新作アルバムが聞けるプロモーションをした。

他にも限定タイムモードでNikeのエアジョーダンを履くことができたり、映画「ジョン・ウィック」とのコラボイベントなども実施。

こういったコラボイベントが重要な理由は、フォートナイトにとっての売上やユーザーのリテンション向上だけでなく、メタバースへ進化するためのIPの収集を実現しているから。例えば、マーベルとDCコミックスの絡みが見れる数少ない場所がフォートナイトだ。フォートナイトが提供するDCコミックの都市ゴッサムシティ内でマーベルキャラクターとしてプレイできるのは今まででは昔だとありえなかった。また、コミックのキャラだけではなく、NFLなどスポーツのユニフォームや、様々なスキンを使って色んなIPをかき集めているのがフォートナイトの強みでもある。これはまさにリアルの世界と同様で、今後のメタバースには重要な中性的立場にあること。

これだけのIPの混ざり合うのは過去見たことがない。これができたのは、オーガニックでユーザーが集まり、IPホルダーたちが無視できない大きなプラットフォームになったからこそ。企業がFacebookページを作るのが当たり前になったように人やIP、ブランドがフォートナイト上存在しないといけない日が来ている。The Game Awards 2019でフォートナイトのクリエイティブディレクターのドナルド・マスタード氏は、「目標は、すべてのIPが共存でき、あらゆる経験ができるメタバースを作ること」と述べていた。

これまでのディズニーのような大手コンテンツ企業は、ゲームスタジオが自社IPを作成し、プロモーションするのはかなりお金がかかっていた。最近では、立場が逆転し、ディズニーは無償でフォートナイトとコラボしているとの噂も。これを考えると、今後D2Cなどコンシューマープロダクトはフォートナイト上でローンチするのも面白いかもしれない。

新しい例だとフォートナイトの新しいゲームをデッドプールがリツイートしたり、その動画内にも出演したコラボもやっていた。


IPの重要性も理解しているフォートナイトは、元Zyngaで、Nikeの最高デジタル責任者であり、経営戦略トップのアダム・サスマン氏を採用したのが明らかになった。

4. 自社コンテンツや世界を作れるプラットフォームを作れる初期メタバースのクリエイティブモード

フォートナイトですごいのはプレイヤーにかなりの自由とクリエイター機能を与えていること。自分のスキンやダンスの動きを作れる。元々フォートナイトで有名なGIFなどになったBackpack Kidのダンスの動きが可能になり、さらにヒットした。

この影響かはわからないが、フォートナイトは今年プレイヤーが自分の踊りをSNSで投稿してそのダンスの動きがフォートナイトキャラが使えるようにする企画も作った。今のTikTokとすごく相性が良いことをやるのはさすがのフォートナイトというところだ。

さらにダンスだけではなく、フォートナイトのエンジンやアセットを使ってミニゲームなどを作れるクリエイティブモードを提供している。このクリエイティブモードがまさに初期メタバースのようになっている。プレイヤーが自分のアバターを選んで多くのミニゲームやミニ世界に入り込める扉を選択できるロビーに出てくる。

クリエイティブモードでは色んなゲームや世界が描かれている。かくれんぼのゲームもあったり、スターウォーズのデススターを再現して脱出ゲームを作る人もいる。

その中で完璧に新しいストーリーなどを作っている人もいる。その中でも凄かったのは6つのマップに渡り、6時間から10時間ぐらいのプレイ時間が必要なゲームをYouTuberが作った。


ここで大事なのは自分のアバターでミニゲームをやること。どのゲームでも同じキャラクター、しかもそれが自分のキャラクターが主人公として出ていると、より愛着が出るし、色んな世界を見たくなる。

5. エピックゲームズの技術「Unreal Engine」の強み

エピックゲームズはフォートナイトで実証したのは、他社と比べて圧倒的な相互運用性を持っているゲーム開発をしていること。フォートナイトのポテンシャルの鍵はその相互運用性にあると思われる。

現在フォートナイトはiOS、Android、PlayStation、任天堂、PC、Xboxなどクロスデバイスでプレイが可能になっている。各社別々のアカウント登録、決済方法、ソーシャルグラフなどを持っているクローズドのエコシステムを打ち破いている。クローズドにしたいのは各社体験をコントロールしたいのと、オープンにすると自社のネットワーク効果がなくなるから。ただ、各社は同じゲームで別のデバイスを持っている人たち同士でプレイしたいことは昔からわかっていたこと。

エピックゲームズがこの圧倒的な立場を取れたのは「Unreal Engine」と言うゲーム開発が可能なゲームエンジン。Unityに続き使われているゲームエンジンなので、何千とのゲームがエピックゲームズのツールやソフトウェアを使っているおかげでアセットの共有、体験のインテグレーション、ユーザープロフィールの共有などベーシックな共通インフラを提供している。

さらにエピックゲームズはゲーム開発だけではなく、多様に活用できるように投資を行っている。映画やテレビ、ライブイベントなどでもUnreal Engineを使えるのだ。実際にディズニーの「マンダロリアン」はUnreal Engineで作られている。

マーベル映画の98%がCGで出来ている中、映画のワンシーンを撮影するときにこんな形になってしまう。

Unreal Engineの技術を使うことにより、裏に実際に撮影で使えるバックグランドのCGなどを入れているので、このような形になる。

ただ、複雑なゲームや映画などを作るのは大変でかなりの知識が必要なので、メタバースでは誰でもコンテンツや体験を作れるようになるだろう。それを実現するためにエピックゲームズはTwinmotionという建築ビジュアライゼーションツール企業を2019年4月に買収。

そう考えると、エピックゲームズはUnreal Engineで3つのクリエーションツールを作った。

  1. 通常のコーディングするエンジン(ほとんどのゲームや映画が作られている方法)
  2. 建築家やセミプロがビジュアルを主に活用したTwinmotion技術での制作
  3. プログラミング未経験でも世界を作れるフォートナイトクリエイティブモード

VRやメタバース用のAdobe Photoshopを作ることについてスウィーニー氏は2016年ですでに言及していた。さらにエピックゲームズが提供するオンラインサービスはゲーム開発社がソニー、Microsoft、任天堂、PC、iOS、Androidのクロスプレイを簡単に可能にしたり、エピックゲームズのアカウントシステムや16億人登録されているソーシャルグラフを活用できる仕組みを無料で提供している。

多くの他社、特に大手は手数料を取っていることが多いが、エピックゲームズに限っては「無料の方が価値がある」と気づいている。それは無料にすると自然とゲーム開発社が寄ってくれて、既に大きなソーシャルグラフにユーザーを追加してくれたり、ゲーム同士がコラボしやすくしたり、プレイヤーが一つのゲームから別のゲームや体験へジャンプしやすくしている。さらに、エピックゲームズの一番の優位点はゲームが増えることによってフォートナイトへ依存しなくなる。

大手テック企業たちのメタバース構築計画

エピックゲームズ以外にも大手テック企業はメタバースの構築をしたがっている。今回はFacebook、Microsoft、Amazon、Apple、Unity、Valveなどがどう言う形でメタバースに入り込もうとしているかを説明したい。

1. Facebook
2014年にFacebookがOculusを買収と聞いた時、ゾッとした覚えがある。ちょうど「サロゲート」というSF映画を飛行機で見たばかりで、Facebookが同じようにVRを通して次の世界インフラをコントロールしたいと思っているように感じた。Facebook CEO マーク・ザッカーバーグ氏は明確にメタバースを開発してコントロールしたいとは言い切ってないが、今までの行動を見るとそういう動きにしか見えない。

Oculusを買った理由をザッカーバーグ氏はこう説明している。「戦略的にモバイルの次のメジャーなコンピューティングプラットフォームを開発したい。次にコンピューティングプラットフォームになり得る選択肢は少ないが、Oculusはコンピューティングの将来の長期的な賭けだ」。

Facebookはどの会社よりもメタバースの構築に入り込まないといけない。SNSより超えるメタバースはFacebookのアプリを意味なくする可能性もある。Facebookは今までハードウェアやスマホのOSの開発を行っていたが、ハードウェアはまだニッチな領域でOSはボツになっている。大手テック企業の中で唯一アプリ・サービスレイヤーに止まっているFacebookがメタバースを通して初めてインフラレイヤーに入り込めるチャンスでもある。Facebookの目的はOculusの力を使ってメタバースで次のAndroid/iOS/iPhone、そしてそこをコントロールできればバーチャルグッズの売買でAmazonになること。

Facebookの現段階の優位性は圧倒的なユーザー数、利用時間、そしてどのプラットフォームよりもユーザー生成コンテンツを持っていること。さらに多大なるキャッシュ、優秀なエンジニア、そして多数の議決権を持っていてこのビジョンをやり遂げたい創業者がいること。

ここ数年でOculus意外にもいくつかメタバースのための買収を行っている。直近だと脳によるコンピューター操作に取り組むCTRL-labsの買収や、買収はしなかったが買収交渉したウェアラブルのFitbitやチップメーカーのCirrus Logicと、ハードウェア買収を本格的にやっている。去年末にVRゲームBeat Saberも買収していて、直近ではVRスタジオのSanzaruも買収を発表。

Facebookは今年Horizonと言うまさにレディ・プレイヤー1 、メタバース的な世界をクローズドベータでローンチを発表。今までのソーシャルな機能とFacebookが伸ばしている仕事用コラボレーションツールWorkplaceを混ぜ込む作戦なはず。キャッシュがあるうちに上手く将来のインフラを読み取ってそこに大きく投資をする度胸と感度はFacebookのレベルの会社でしかできない。

ザッカーバーグ氏もそれを理解している。「歴史を見ると次のプラットフォームが来るのは間違えない。それを作って定義づけをできるものが未来を設計してその利益を取れる」。

ただ、Facebookには課題もある。ゲーム開発プラットフォームなど提供していたが、使いにくいと第三者からの意見が多数あったり、Libraのようなコンソーシアムのリーダーとしてはあまり良い実績が無かったりする。さらに一番の課題はユーザーの信頼性がないこと。データ・プライバシー問題が多々あったFacebookは現在かなり悪い印象になっている中、本当にユーザーがFacebookが作ったメタバースに入りたいのか?と言う疑問点はかなりある。

2. Microsoft
MicrosoftはMicrosoft Office、LinkedIn、Azure、Xboxを使ってメタバースへ入り込もうとしている。MicrosoftはAppleとは変わっていて、オープンなOSを提供している。Microsoft Officeがどのブランドのパソコンでも使えるように、メタバースにあっている仕事のサービス・プラットフォームを用意している。さらにFacebookにはかなわないが、LinkedInと言う大きなソーシャルグラフを持っているのと、世界で二番手のクラウドコンピューティングソリューションを提供しているので、インフラの構築はできそう。さらにXbox+、Xbox Live、HoloLens、マインクラフトなどを通してメタバースへの入り口を作っているのはかなりの優位ポイント。

メタバースをもしMicrosoftがリードするとスマホ世代以来にMicrosoftがOS/ハードウェアのリーダーシップポジションを取り戻すことになる。ここ5年ぐらいのMicrosoftを見ると必死にエンタープライズだけではなく、C向けブランドとしてアピールしている。これはメタバースの準備のためでもあると思う。C向けにもヒットしながら、仕事では欠かせないツールを使うとメタバースではMicrosoftが入るのは必然的になってくる。

3. Amazon
Amazonはインフラが変わってもものを買う場所として生き残るのは間違えなさそう。既にTwitchでも売っているので、色んなタイプのインフラ(ブラウザー、アプリ、ゲームエンジン内)で売ることに対して抵抗感はないはず。さらにAmazonは何百万枚のクレジットカード情報を持っていて、中国外では圧倒的なECシェア率、クラウドコンピューティングでもナンバーワン。様々なC向けメディア(動画、音楽、本、オーディオブック、ゲーム配信)を提供、そしてサードパーティーのコマースプラットフォーム(Fulfilled by Amazon、Amazon Channels)を提供している。

Amazonはクラウドコンピューティング用のゲームエンジンを開発を行っているし、ARメガネ、そして家の中のデジタルアシスタントを開発しているのを考えると、かなり前からメタバースを意識している風に見える。

しかもAmazonのCEOであるジェフ・ベゾス氏はこのインフラ設計をどの会社よりも大事にしている。その一つの例として宇宙輸送事業のSpaceXの目的は火星の植民と違って、ベゾス氏は明確にBlue Origin(SpaceXの競合)の目的はAWSなどと似たように、宇宙のインフラを開発することと言っている。彼曰く、「大きなチップ工場を宇宙で作りたい」とまで発言している。

そう考えるとAmazonはどのテック企業よりもオープンなメタバースに賛同するはず。彼らはUXやアカウントのコントロールは望んでいなく、裏の取引やインフラを構築することで儲けようとしている。

4. Google
メタバースはインターネット以上にデータ量が発生する。そういうデータをマネタイズしたい会社はGoogle。現在オンラインとオフラインのインデックスを一番お金かけてうあくやっているのはGoogle。オフラインのGoogle Map用に1万人以上の協力者がいる。中国外では世界一のデジタルソフトウェアとサービス企業である。Googleは世界で一番使われているOSであるAndroidを提供しているし、一番オープンなクラウドコンピューティングプラットフォームも提供している。

さらに過去に失敗したがGoogleはGoogle Glassを通して本格的にウェアブルコンピューティングに入り込もうとして、今では家の中のデジタル化している流れに沿ってGoogle Assistant、Nest、FitBitなどを買収したりしている。

Google/Alphabetは数多くの関係なさそうなプロジェクトを行っているが、それを全て統合するのはメタバースではないかと踏んでいる。Stadiaのエッジコンピューティング、Project Fi、Google Street View、ウェアラブル、バーチャルアシスタントなどは実はメタバースを意識しているのではないかと思う。

5. Apple
Appleはメタバースに対してあまり賛同しないはず。それはメタバースの存在はAppleの大きなコアビジョンと戦略と遠ざかっているから。Appleは全てのデバイスやOSを一つのプラットフォーム、Appleのプラットフォームで統一させて、クローズドなエコシステムを目掛けている。Steve Jobsのその思いから抜けない限り、Appleはメタバースに賛同しないだろう。

6. Unity
エピックゲームズのUnreal Engineより使われていて、約半分のスマホゲームがUnity上で開発されていると言われている。さらにUnreal Engine以上に建築家やデザイナーがUnityを使って3Dオブジェクトのレンダリングやシミュレーションをつくっている。ディズニーのマンダロリアンはUnreal Engineで行ったものの去年でたライオン・キングはUnityで制作された。Unityはさらに大きなデジタル広告ネットワークを運用している。

ただ、Unityがどのような形でメタバースに関わっていくかが今のところ不明確。オンラインストアもなく、ユーザーアカウントもなく、直接C向けサービスを作っていない。Unityは多くのゲーム開発のコアエンジンとして使われているが、ほとんどは割とシンプルなスマホゲームで、メタバース内で開発されるような新しい世界などはあまりUnityに向いてないかもしれない。ただし、Unityが作っているゲーム開発のスタンダード化(フォーマットなど)、簡単に制作が出来ることなどを見ると大手テック企業が買収して上手くUnityのアセットを使うことは想像できる。

これを考えるとFacebookがUnityを買収したかった理由が明らかになる。ザッカーバーグ氏自身がメールで数千億円かけてもUnityの買収、UnityのOSを買うのは必要と書いていた。以下そのメールの一部だ。

数千億円は高く見えるが、次のインターネットインフラの土台の一部と考えるとその投資は小さいもの。Unityの直近時価総額は$3Bと言われているが、どこかが買収してもおかしくないと思う。

7. Valve
日本ではあまり聞かれないかもしれないが、Valve(バルブ)が運用しているPCゲーム、PCソフトウェアおよびストリーミングビデオのダウンロード販売とハードウェアの通信販売、デジタル著作権管理、マルチプレイヤーゲームのサポート、ユーザの交流補助を目的としたプラットフォーム。Valveのゲームストアはユーザー数、タイトル数、売上などを比較しても圧倒的にエピックゲームズより大きい。さらに古くから人気なマルチプレイヤーゲームのCounter-Strike、Team Fortress、Dotaを作った会社でもある。

ValveはさらにVRハードウェアの開発も何年も前から投資していて、Valveのチームはオープンソース技術を好んでいる人たちでもある。ただ、ValveのゲームエンジンであるSourceはあまり使われてないので、そこがメタバースへの道のりに一番ネックになるかもしれない。

a16zから調達した次世代ゲーム「Roblox」

エピックゲームズに一番近しいゲームはマインクラフトとRoblox(ロブロックス)。Robloxはゲーム制作プラットフォームであり、Roblox上で他の人が作ったゲームをプレイできるレゴやマインクラフト的なゲーム。Robloxはかなり面白い立ち位置にいて、著者はGoogleなどが買収するのではないかと思っている(特にGoogleはStadiaを開始したばかりなので)。圧倒的にメディアに取り上げられることはフォートナイトやマインクラフトより少ないが、実際はフォートナイトよりMAUが多く、マインクラフトに追いついている超人気ゲーム。去年の1月時点で月間10億時間プレイされる驚異的ゲーム。

子供に超人気なレゴでも1カ月で4億時間プレイされていることを考えると、レゴの約3倍の数字を誇るRoblox。そしてRobloxのCEOはまだ40倍延びることが可能と感じている。

そんなRoblox CEOが持っているも2023年までの目標がこれだ。以下はRobloxのKeynoteだ。

フォートナイトみたいに自分のキャラクターを作り、そして他のプレイヤーとコミュニケーションが取れる。Robloxで直近で人気なゲームは自分のテーマパークを作れるゲーム、色んな災害から生き残るゲーム、ピザ屋さんで働けるクッキングゲームなど、かなりバラエティー溢れている。

Robloxは13歳以下の子供たちに人気、YouTubeよりRobloxに時間をかけている。

去年のRobloxイベントではCEOは明らかにRobloxはゲーム以上のカテゴリーだと発言し、75%のスタッフがプラットフォームを作ることにフォーカスしているとのこと。Robloxのすごいところは圧倒的にフォートナイトよりクリエイターが存在し、クリエイターありきで育ったゲーム。今現在400万人のクリエイターがいて、5,000万ゲームがRoblox上で開発された。Robloxは2019年でクリエイターに100億円以上払い、Roblox自体は2019年は$435Mの売上を達成。

すごいのがRobloxの影響力。かなりの中学生以下の親はRobloxを知っていて、子供たちがRoblox経由でお小遣いをお願いすることが多いらしい。そこで自分のキャラクターのカスタマイズ、ゲームでのVIPステータス、アイテム購入のために使っているとのこと。さらに、Robloxはゲーム内の動画ストリーミング(ゲーム内映画館)をテストしている。これは本当にメタバースを狙っているとしか見えない。

そして先日、Andreessen Horowitzがリードインベスターとして$150M調達したことを発表。まだRobloxが買収されてないことが少し不思議に感じる。。

 

結論:結局誰がメタバースを作って、誰が勝つの?

最終的にまだメタバースがどのようなものになるかが見えない中、どのプレイヤーが勝つかはわからない。そしてメタバースは一社が勝つのではなく、複数社、複数プラットフォーム、複数の技術が渋々共同で作り上げるものになるだろう。

メタバースのビジョン、技術、そして機能はまだSF映画で出るようなものにしか聞こえなく、実際に10年後でも出来上がっているかはわからない。ただ、技術やメタバースに興味があるプレイヤーが増えていくごとにメタバースへの世界が近づいているのは間違えない。そのメタバースが一つの会社、もしくはオープンではなくクローズドなメタバースを作りたい会社が構築してしまうと、一般ユーザーの人生、データ、コミュニケーション、そして社会に対しての影響力、権力集中が凄いことになってしまう。エピックゲームズのスウィーニー氏が自社でメタバースに関わりたいのも、GoogleやFacebookが保有している力、特にユーザーデータをメタバースで同じことを繰り返したくないから。彼は何があってもユーザーデータを他の会社に共有せず、それを広告で一切使わないと誓っている。

ただ、コンセプトとしては多くのゲーム(フォートナイト、マインクラフト、Roblox、GTAなど)がこの領域に一番近いと言ってもおかしくない。各社ユーザー数も劇的に伸びていて、今はゲーム以上のものへシフトしている。

結局このメタバースも100社はいないかもしれないが、バトル・ロワイヤルであり、誰が生き残るかを楽しみにしている。