倫理条項を初めて資金提供協定に盛り込んだ米国の女性起業家

Keep your head high and give them hell(あわてずに、彼らを痛い目にあわせてやれ)

私の祖母であるOpal Thompson(オーパル・トンプソン)は、屈強な生粋のテキサスっ娘らしく、私にそう書いてよこした。今この言葉は、みんなに見えるように私の前腕に彫ってある。祖母の強烈な存在感と貴重な助言の思い出は、起業家になるまでの私を導く正しい道であり、この業界で懐疑的な人たちと面と向かって渡り合うときに私の背中を後押しして強気にさせてくれるものだった。「いいかい、男たちよりも一生懸命に賢く働いて仕事をやっつけるんだ」と祖母は私に言ってくれた。泥臭く聞こえるかも知れないが、それが今の私を育ててくれた。

去年の10月、恐れを知らない共同創設者Carolyn Rodz(キャロリン・ロズ)と私は、最高に誇りに思う発表を行い「彼らをやっつけて」やった。スモールビジネスの成長を支援する私たちのプラットフォームであるAlice(アリス)はシリーズA投資を決めた。それだけでもニュース価値のある大きな前進だったのだが、その見出しが実によかった。私たちは、資金提供協定に倫理条項を盛り込んだのだ。人種、性別、性的指向に関わる差別が発生したときには法的な対処を求めるというものだ。

Aliceのための資金調達でピッチを行ったとき、キャロリンと私は、そもそも私たちがスモールビジネスの経営者のためにAliceを始めた基本に立ち返った。私たちのプラットフォームは、このコミュニティーに参加する10万人を超える企業経営者たち、とりわけ、女性、退役軍人、有色人種、LGBTQ+コミュニティーの起業家たちの成長の壁を打ち破るために存在している。

私たちの仕事は、ヒントや成功事例の提供であったり、ここでなければ出会えなかったであろう投資機会の紹介であったりするが、いずれにせよスモールビジネスの経営者が仕事を「やっつける」ための手助けをすることだ。私たちには、スモールビジネスの経営者がそのベンチャーの成長に役立てられる確かで包括的なリソースになるという重大な責務がある。私たちは常に、顧客である企業経営者に新しいアプローチを試し、あらゆる側面をビッグに発展させるよう促している。それには、彼らの成長の妨げになる問題への挑戦も含まれる。

私たちの進路を長い間塞いできた問題に、物言わぬ硬直化した差別的で略奪的な有力投資家の姿勢がある。2年前の#MeToo運動によって潮流が変化し、いわゆる「ワインスティーン」条項が見られるようになったが、そのほとんどは、投資を受けた会社幹部への明らかなセクハラの訴えから投資家を守るものだ。

これは、ビジネスのあらゆる階層に説明責任を浸透させる上で正しい方向への重要な一歩ではある。しかし、こんな疑問が残る。

投資家が#MeToo運動の標的である場合はどうなのか?

名声に傷を付けられ、その行為が自身のビジネスに損害を与えてしまう場合に、取締役会のメンバーからベンチャー投資家に至るまで、意志決定を行う主要な人物を守るための法的な影響力が欠如していたことで、Aliceは辛い思いをしてきた。そこで、私たちが苦労して築いてきたAliceの名声を守るため、そして世界中から毎日私たちに助けを求めてくる企業経営者を守るために、キャロリンと私は、私たちの投資家たちとともに、模範を示し、態度を明らかにすることにした。私たちは「ワインスティーン」条項を反転させ、#MeToo案件、つまり人種差別や性に関連する差別が発生したとき、取締役会のいかなるメンバーも投票によって除名できる企業統治メカニズムを使う権限をAliceの取締役会に与えた。簡単に言えば、Aliceとその投資家は、私たちの起業家コミュニティーに不利益をもたらす態度をとる人間には、躊躇なく出口を指し示すことができるというものだ。

この規定を加えることは、私たちの会社を成長させるビジョンには不可欠だった。それは、インターネット上のビジネス・コミュニティーでインクルーシブであるという私たちの中核的な価値観に通じるものだ。また、ベンチャー投資家を探すユーザーには、まだ投資が決定する以前の段階でも、良識ある法的保護とされるべき規定を盛り込む権利があることを知ってもらいたい。私たちはこの条項を誰もが利用できるよう、そして私たちのように弁護料を払わずに済むよう、ここに公開している。

この情報を、必要とするあらゆる人の手にしっかり届けることは、ビジネスを行うすべての人が公正に扱われるようにするという私たちの使命のひとつでもある。私たちと同じように、他の企業の創設者にも資金提供契約へ倫理条項を盛り込ませることには、私たちがそうしたのと同じだけの価値がある。私たちはこれを大きな流れにしなければならない。

私たちの倫理条項は、大きなビジネスコミュニティーと、私たち全員の資金調達方法の改善に努力する私たちにとっても、大変に重要だ。スモールビジネスは、米国全体の就業者の95%近くを雇用し、米国人の半数以上の職業を支えている。

だが、女性、有色人種、LGBTQ+の人たちによる起業が日常化し、「ニューマジョリティー」へと変わろうとしているスモールビジネスの世界に対して、ベンチャー投資家の多様化は遅々として進まない。現在、ベンチャー投資会社で判断を下す人は、いまだに89パーセントが男性で占められおり、女性経営者の企業に彼らが投資する割合は、全体の2パーセントに過ぎない。ラテン系女性がベンチャー投資を受けられる比率は0.5パーセント以下であり、その他のマイノリティー起業家のコミュニティーではさらに低くなる。

これまでに、キャロリン(自身がラテン系)と私は、私たちを排除し続けてきたビジネス界に、自分たちの存在を知らしめる必要があることを学んだ。#MeTooの考え方が産業界でさらに広く受け入れられるようになれば、私たちはAliceを利用する企業や起業家を守り、この社会での影響力を永続化できるようになる。

2020年、私たちはAliceを次なる章に進め、新しい市場への拡大を目指すが、同時に私たちのユニークな起業の話を広めて他のスモールビジネスを勇気づけ、私たちと同じ道が歩めるよう力を貸したい。

ベンチャー投資家のみなさんに告ぐ。ニューマジョリティーの起業家たちがすでにここで身構えている。私たちの倫理条項はスモールビジネスの成功への道の始まりに過ぎない。

祖母のオーパルも誇りに感じてくれるはずだ。

【編集部注】著者のElizabeth Gore(エリザベス・ゴア)は、AI技術に支えられた無料のマルチチャンネルプラットフォームのAliceの共同創設者で社長。資金、ネットワーク、サービスを提供し企業経営者を支援する。

画像クレジット: jaouad.K  / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

10億ドルを調達できるユニコーン企業がなぜ多様性と包括性を持てないのか

2000年代の初めごろ、Hasbroは」「マイリトルポニー」というオモチャのシリーズを復活させた。ポニービルに暮らすカラフルな生き物たちの中でも、私の一番のお気に入りはユニコーンのポニーだった。ユニコーンのポニーは魔法の生き物で、気まぐれで、珍しい存在だ。私はその珍しい部分に自分を重ねていた。

そのとき私は13歳。数学と科学とコンピューター科学の特別強化プログラムに選抜されたばかりだった。このプログラムには100人の生徒が参加していたが、黒人の女の子は私ともう一人だけだった。しかし、私はラッキーだった。「現世」のポニーたちがユニコーンを受け入れたように、白人とアジア人のクラスメイトも、私に温かく接してくれた。

この先、ハイテク業界で働くようになっても、このままであってほしいと私は願った。

ハイテク業界に多様性がないのは、私が13歳のころから変わっていない。それでも、多様性と包括性をもっと強化すると約束するハイテク企業は増えている。

ではなぜ、その約束がポニービルにつながらないのだろう?

さようならポニービル、現実よこんにちは

6年間、数学と科学とコンピューター科学の特訓コースで徹底的に学んできた私は、MITに進学する準備をほとんど整えていた。多変数微積分は? 大丈夫。学校で自分が一等賞でなくても落ち込まない? 大丈夫。クラスメイトから差別を受ける心配は? それはわからない。

こんなことがあった。大学4年生のとき、新しい医療機器を開発するという活動で、私はその他21人の学生と一緒に行動した。そこではチームメイトの評価が自分の成績に影響を与えるため、ちょっと心配だった。黒人女性に対する偏見で評価が低くなってしまうことを、私は恐れていたのだ。私は、知的だが威圧的でない、自信に満ちているが攻撃的でない、親しみやすいが鬱陶しくない自分でいなければならないと、常にプレッシャーを感じていた。

大半は好意的な評価をもらったが、一人ならず二人のチームメイトから「もっと穏やかに」と言われてしまった。私は他の黒人のクラスメイトの話を聞くまで、孤立した気分になり、気落ちしていた。彼らはチームミーティングから外され、もっともつまらない作業を押しつけられていたそうだ。

こんなことがMITで起ころうとは。多様性と包括性を誇るイノベーションの中心地で。人は差別するものだ。学校は差別を容認している。人々は自分に対する差別を許容することを学ぶ。わかりやすい悪循環だ。学校も企業も、これに対抗するようには作られていない。MITを卒業してからの3年間、「少数派」として扱われることにう私はうんざりしていた。今こそユニコーンを探すときだ。

ユニコーン(名詞) uni·corn | ˈyü-nə-ˌkȯrn

体は白い馬に似て、優美な長いたてがみと尾を持ち、額の中心から螺旋模様の長い角が生えた姿で描かれることが多い空想上の動物。多様性と包括性のあるハイテク企業。

虹の道を辿って

ユニコーン探しは楽ではなかった。Googleで検索すると10億ドル以上の評価額のスタートアップ企業がたくさん出てくる。だが、多様性と包括性のある企業はほとんどない。

ニューヨークの業務用IoTスタートアップであるTembooに惹かれたのは、そのためだ。

  • 有色人種の女性がトップにいるハイテク企業である。
  • エンジニアリングチームには男性と女性が同数在籍している。
  • プログラミングの取っつきやすさと民主化に重点を置いた製品を作っている。
  • 従業員は、さまざまな文化的背景を持つ多様な人々である。
  • とりわけ感心したのは、最初の面接に訪れたとき、強くハグしてくれたこと。そこはニューヨークだ。やたらにハグをする習慣はない。

私が会ったすべての人には、それぞれ独特な背景や興味があった。私が面接を受けたすべての企業のなかで、前の会社で黒人従業員のリソースグループを率いる役職を選んだのはなぜかと聞いてくれたのは、Tembooだけだった。その会社の物理的環境も、他のハイテク企業とは違っていた。マンハッタンのトライベッカ地区の中心地に、独立したオフィスが置かれていたのだ。

この会社に入ろうと決めたとき、私は希望に満ちていた。ここなら、本来の私を尊重して正当に評価してくれるだろうと。

マイリトルポニー・ニューヨーク編

勤め始めてから数カ月間は過去の教訓を活かして、同僚に受け入れられるバージョンの自分で過ごさなければいけないと自分に言い聞かせていた。しかし時間が経つと、TambooではありのままのSarahで十分なんだと感じるようになった。

私の縮れ髪は三つ編みにもアフロにもできるけど、ヘアースタイルは自分の知性の評価には関係がない。業務用IoTのカンファレンスに参加したときなどは、多様性の欠如を大っぴらに批判し、同意の喝采を得た。

たしかに、何度か不当に非難されたと感じたことはある。マイナーなリアリティ番組カボチャ味の食品を溺愛する意味がわからないと。

私はユニコーンを見つけた。そしてそれに満足している。今は、ハイテク産業で働くすべての人に、自分のユニコーンを見つけて欲しいと思っている。そこで、他の人たちにバトンを渡す方法を探る準備を開始した。

男だけのニューヨークビルで立ち往生

ハイテク企業が、多様性と包括性を高めようと従っている方針は、どこもたいてい同じだ。

  1. 人材プールを多様化する。
  2. 従業員のリソースグループのコミュニティを作る。
  3. 業績評価を多様性と包括性の目標に結びつける。
  4. 多様性の欠如を注意する。

中規模のハイテク企業の例を紹介しよう。そこは従業員のリソースグループを改善するための準備をしていた。私はそこに講演者として招かれ、前の会社で黒人従業員のリソースグループを統括していたときの教訓を話した。

たとえば、私のチームは「マイクロアグレッション(自覚なき差別)認知週間」を設けた。これには手応えがあった。翌週の幹部会議で、一人のシニアマネージャーが同僚を呼び止め、彼の話に自覚のない差別的な発言がなかったかを尋ねていた。

しかし私たちは、業績に多様性と包括性を結びつけるという目標を、その会社の求人担当者たちに持たせることはできなかった。彼らは重い責任を負いたがらなかったのだ。それどころか私たちに、多様な才能を惹きつける、もっと別のアイデアはないかと聞いてきた。

もう一人の講演者は、彼女が50歳のときに職場でカミングアウトした経験を話していた。Fortune 500に選ばれた企業の上級管理職として18年間勤めた後、彼女は小さなハイテク企業に転職した。職場の雰囲気はまったく違っていた。そこでは人の性的指向をからかうのは無作法とされ、会社ぐるみでニューヨーク市のプライドパレードに特別な車を作って参加したりもしていた。30年間のキャリアで、彼女はようやく、ありのままの自分で安心して働けるようになったという。

講演会は励ましの言葉で幕を閉じたが、問題は残ったままだ。その会社のある従業員は、差別を避けるためにイギリス風のミドルネームで通していると私に話してくれた。彼は、多様性と包括性の推進責任者だ。

角を生やす方法

ステレオタイプ化、ハラスメント、自覚なき差別といった不当な行為が、ハイテク企業から人材が離れる第一の原因になっている。女性、社会的少数者、LGBTQの従業員が差別の攻撃に耐えてる(Kapor Centerの調査による)。

多様性と包括性のあるハイテク企業は、離職率も低く財務実績もいい。マッキンゼーは、企業の多様性を高めようとする姿勢と財務実績との関係を、20142017に調査しているが、性的多様性でトップ4分の1に入る企業は、下から4分の1の企業と比較して、平均を15〜21%上回る収益性を示す傾向があった。民族と文化の多様性のある企業は、収益性が平均よりも33〜35%高い傾向がある。

多様性と包括性のある企業を作るには、まず個人から手を付けることだ。管理職から新人社員に至るまで、全員が継続的に見直しを行い、先入観を捨てて新しい概念を学ぶ必要がある。

個人的な偏見を見直す。差別的な習慣を捨てる。自分とは異なる人を尊重する方法を学ぶ。

企業は、それを許さないという姿勢を示すことで、職場の差別を減らすことができる。Tembooの文化と行動は素晴らしいお手本だ。ユニコーンは魔法の生き物だが、多様性と包括性のあるハイテク企業は現実に存在する。そこでは、従業員たちに「普通」の考え方を再定義するよう求めている。

【編集部注】著者のSarah McMillian氏は、Tembooのセールス主査。母校のMIT、Complex誌、The Roots誌から多様と包括のリーダーとして認められている。またハイテク企業に多様性と包括性をもたせるためのアドバイスも行っている。

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(翻訳:金井哲夫)

多様性が利益を生む、マイノリティー企業を支援する投資家マーロン・ニコルス

マーロン・ニコルス氏、トロイ・カーター氏、トレバー・トーマス氏の3人がCross Culture Venturesを創設してから3年半、ロサンゼルスのスタートアップシーンは大きく前進してきた。当時、ロサンゼルスと隣接するオレンジカウンティの準郊外地区はベンチャー投資の波が巻き起こり始めていて、この地区に投下された資本は、2015年には36億3000万ドル(約4065億4000万円)だったものが、昨年には60億ドル(約6700億円)に増加している。

Cross Cultureは、5000万ドル(約56億円)の資金をひっさげてロサンゼルスに登場して以来、ニコルス氏とそのパートナーたちは3件のイグジットを達成した。同社に詳しい情報筋によれば、ポートフォリオの額面価値は、総計で2089パーセント増えたという。

ニコルス氏と仲間たちは、あらゆる企業のポートフォリオの中から、もっとも多様性が高いスタートアップ創設者の集団を支援することでこれを実現した。

クロスカルチャーへの道

ニューヨーク市の街外れから、急成長中に沸くロサンゼルスのベンチャー投資産業のど真ん中へ、ニコルス氏は真っ直ぐに向かったわけではない(そこが多くのベンチャー投資家と違うところだ)。このCross Culture Venturesの創設者は、大学卒業後、技術畑を自力で歩かなければならなかった。ヨーロッパで仕事の実績を積んだ彼は、ビジネススクールに入り直し、ようやくIntel Capitalに職を得た。

父はジャマイカの鉄道技師だったが、家族でニューヨークに越してきた。母は家政婦として働いていたが、美容師免許を取得し、自分の店を開いた。両親がジャマイカからニューヨークに移って2年後に、ニコルス氏もニューヨークに渡った。それまでは、伯母と祖母と暮らしていた。

Cross Culture Venturesの共同創設者で業務執行社員のマーロン・ニコルス氏

両親と越してきた、ブロンクスの北側に接するニューヨーク州マウントバーノンで育ったニコルス氏は、テクノロジーに強い興味を持っていた。両親からコモドール64を買ってもらって以来、ずっとコンピューターで遊んでいた。

家族で初めての大学生となった彼は、ノースイースタン大学の建築学部で学んでいたが、後に新しく創設された管理情報システム学部に転部した。在学中、彼は生まれて初めてシリコンバレーを訪れている。ノースイースタン大学には、学生に現実のビジネスを体験させるために、ボストンの外の企業へインターンとして送り出すプログラムがあった。ニコルス氏は、カリフォルニア州クパチーノのHewlett Packard(ヒューレット・パッカード)に配属された。

卒業後はシリコンバレーに移り住むつもりだったが、結局、Frictionless Commerceのボストン営業所に就職した。そこでニコルス氏は、その街の多様性の低さによる制限に直面した。「ボストンでは、明らかに人種的な偏見がありました」とニコルス氏は言う。「プロとして生きるうえで、正当に扱ってもらえません」

ロンドン転勤のチャンスが示され、彼は数年間、そこで暮らすことにした。夜はバスケットボールのセミプロ選手としてプレイし、昼間はFrictionless Commerceの社員として働いた。

2006年、同社がSAPに買収されると、ニコルス氏はBlackstone GroupとWarner Mediaに相談を持ちかけた。「どっちも部屋に入ると、(マイノリティーは)私だけでした」と彼は話す。「そのことに嫌気がさし、さらに深く考えるようになりました。教育のこと、就職機会のこと、この職種にはチャンスが広がっていとわかっているのに」。

そこでニコルス氏は、都市部の貧困な若者を大学に入れるための非営利団体を立ち上げた。「私は大学進学適正試験のための予備校に通うことができませんでした」とニコルス氏。「勉強を教えてくれる人などいませんでした」

この活動により、ニューヨーク市立大学を考えていた子どもたちも、カーネル大学やバッサー大学やペンシルベニア大学への進学が視野に入るようになった。

この非営利団体が軌道に乗ると、ニコルス氏は学校に戻った。学費全額免除の奨学金でカーネル大学ビジネススクールに入学したのだ。「その道を進み始めると、自分のような人間はさらに少ないことを知りました」とニコルス氏は振り返る。

大学のベンチャー投資基金の運営に関わっていた彼は、カーネル大学を卒業すると、管理訓練プログラムの一環としてインテルに入社した。インテルでは3つの事業部門に順次転属される予定だったが、インテルキャピタルに配属されたとき、彼はそこに留まりたいと申し出た。そして彼はそこで、過小評価されているマイノリティーや女性に就職機会を与え、その力を必要としている業界に送り込む活動に情熱を傾けることができた。

それは、巨大ハイテク企業(業界の海に浮かぶエリートの島として、性差別、人種差別、縁故主義が長年はびこっていた)の多様性問題が批判にさらされていたころだ。2013年、エンジニアのトレーシー・チョウ氏が従業員の多様性の割合に関するレポートを発表したとき、ニコルス氏はそこに自分がIntel(インテル)で感じたのと同じものを見た。

そのとき新しいユーザーエクスペリエンスを開発する部門にいたニコラス氏は、Intel Capitalのソフトウエアおよびサービスグループの担当責任者リサ・ランバート氏と一緒に、Intelに多様性基金を創設することを提唱した。

「資本を提供する側の責任者が多様性に関われる手段が必要だと、私たちは考えたのです」とニコルス氏は基金創設のきっかけを話した。「多様性は矢面に立たされたかと思うと、どこかへ消えて、また矢面に立たされる。ベンチャー投資家の視点から貢献できるものがあるはずなんです」。

多様性基金の投資先企業は簡単に見つかったが、それらの企業は、次のラウンドでの追加資金調達に苦労したとニコルス氏は言う。「一部の企業は、資金を受け取った後、世界有数の最大手機関投資会社から資金を調達した一流企業だと見られることで、困ったことになっていました」とニコルス氏は話す。

こうした企業は、幅広い顧客基盤勢のために、グローバルな問題の解決に取り組んでいるにも関わらず、入手した資金が「多様性」のためと限定されてしまうと、将来の成功が妨げられる。そこが問題だとニコルス氏は感じた。

「そこで、わかったよ、じゃあその将来の資金調達を難しくしてるレッテルを貼るのはやめよう、ということにしました」とニコルス氏。「その代わり、私はグローバルな視点から文化をよく見て、新しい傾向を見極めようとしました。もしそれに成功したら、その傾向を把握できたなら、多様性の高い起業家を選ぶことができて、99パーセントまで問題を解決できます」。

資金調達の年間の傾向(ロサンゼルス/オレンジカウンティ) ロサンゼルスとオレンジカウンティでの通年の調達額は増加しているが、取り引き件数は減少している。 2000年以来最も活発だった2017年(432件)からロサンゼルスとオレンジカウンティの取り引き数は419件に減少。 2018年は2000年以来、ロサンゼルスとオレンジカウンティでの投資最高額(60億ドル)を記録。 グレーの棒は投資額(10億ドル単位)、赤い線は取り引き件数 (グラフ提供:PWC Moneytree/CB Insights

クロスカルチャーとロサンゼルスの好機

ニコルス氏がCross Culture Venturesの設立準備を整えたころ、Intelの基金には別の問題が持ち上がっていた。多様性の重点は、企業の性差別の対応に置かれ、ニコルス氏が対処すべきと考えていたその他の排他的問題、つまり人種と民族の差別は軽視されていたのだ。

さらに、起業家の多くは、Intelの要求には当てはまらない数十億ドル規模の大企業の問題解決に取り組んでいた。Intelは、同じ戦略的ビジョンを持つ企業を支援するはずだった。そのため、たとえばアフリカ系アメリカ人コミュニティの消費者をターゲットにした美容製品への投資を奨励するのは、とても難しかった。

そこでニコルス氏は、ベンチャー投資家を養成するカウフマン・フェローズ・プログラムに参加し、数人のアンカー投資家(フレアーダ・カパー・クレイン氏など)の協力を得て、独立しようと考えた。クレインはニコルス氏に、Intelの基金に出資してくれそうな投資家としてAtom Factoryのトロイ・カーター氏を紹介した。

「私はロサンゼルスに飛び、トロイに会いました。私たちは2時間ほど話し、意気投合しました。しかし、ミーティングの最後に彼はこう言いました。会えてよかった。でもあなたの基金に出資する気はないと」。

最初に断られてから2週間後、ニコルス氏はもう一度カーター氏に会いに行った。今度は出資の話ではなく、手を組もうという提案のためだ。そしてカーター氏を共同創設者として役員に迎え入れ、2人は、翌年中には最初の投資ができるよう、投資会社の基礎固めを開始した。

2015年9月23日、サンフランシスコのピア70で開かれたTechCrunch Disrupt SF 2015に登壇したAtom Factorのトロイ・カーター氏(写真:Steve Jennings/Getty Images for TechCrunch)

Cross Cultureは、企業創設者の72パーセントを白人女性と有色人種の男女が占めるポートフォリオを作り上げた。そして、Blavity、PlayVS、Mayvenn、WonderSchoolといった複数のアフリカ系米国人の創設による企業を支援し、AラウンドまたはBラウンドの多額の投資を行う初めての投資会社となった。

Gimletは、クロスカルチャーが投資し、投資後の企業価値が3600万ドル(約40億3000万円)となったポッドキャスト企業だが、およそ2億3000万ドル(約257億円)でSpotifyに売却された。別のイグジットには、Nordstormに売却されたMessage Yes、昨年2月にFairに買収されたSkurtなどがある。

ニコルス氏は、オンデマンド輸送サービスのAirspace Technologies、全米の高校にEスポーツを広めるPlayVS、レンタカーの革命を目指す新しい形の交通企業Fairといった企業の急成長を先導してきた。これらの企業は、どれもここ数カ月で飛躍的に価値を高めている。

Cross Cultureのポートフォリオに詳しい人間によれば、レンタカーのFairは、Skurtの買収によってCross Cultureが投資機会を得た後、ソフトバンクから3億8500万ドル(約432億円)の追加資金を獲得し、その評価額は150パーセント上昇、Airspaceの評価額はScale Venture PartnersからのシリーズB投資2000万ドル(約22億4000万円)を獲得して8カ月以内に733パーセント上昇(1億ドルを超える)、PlayVSの評価額の上昇率はCross Cultureの投資から半年後に329パーセントに達したという。

MayvennのCEOディシャン・イミラ氏は、先日、アフリカ系米国人向けのヘアーエクステや美容製品を販売する会社に2300万ドル(約25億7500万円)の投資を受けた。Cross CultureがシリーズAの一部として行った1000万ドル(約11億2000万円)の投資を上回っている。

MayvennはCross Cultureの最初の投資先だ。これはニコルス氏がベンチャーの世界に築き上げてきた、息の長い関係を示している。

「カーク・コリンズは、資金調達のために、私と一緒にピッチを行う4、5人の人材を集めました。マーロンはその中の一人です。私とマーロンとずっと議論していました」とイミラ氏はニコルス氏との最初のミーティングを振り返って言った。「私たちは30分間議論して、何も結論が得られなかったのですが、関係は続けました。彼はいつも助言をくれて、あちらこちらで支援してくれます。彼はずっと私たちのことを気に掛けていました。そして、私たちのシリーズAが完了する前に、彼はCross Cultureを立ち上げました。私は『ヨー、みんなも入れよ』と言いました」

顧客との新たな関係と新規資金2300万ドルでMayveenはヘアケア事業をエクステンド(本文は英語)


しかし、その間もベンチャー企業の不当な評価の問題は改善されず、残りのベンチャー投資業界は足並みを揃えることができずにいた。RateMyInvestorDiversity VCのデータによれば、ベンチャー投資が受けられたスタートアップのうち、アフリカ系米国人が代表を務める企業はわずか1パーセント。ラテン系が代表の企業はたったの1.8パーセントだ。

ニコルス氏は、それぞれの街に着目し、これまで大物ベンチャー投資企業や実力者から歴史的に無視されてきたエコシステムに投資することで、この傾向を逆転させられると考えた。

「私たちはパロアルトと、ここカルバーシティにオフィスを開いていました」とニコルス氏は振り返る。「最初の2年間は、私が隔週でここへ出社し、トロイも隔週でやって来ました。(しかし)ここへ来る途中に、初めて見る何かが起きていることを感じたのです。ベイエリアと異なり、人口比率の違いから生まれる何かを、私は認識しました」

Dollar Shave Club、Snap、Oculusのイグジットで勢いがついた投資資金がこのエコシステムに流れ込み、ベイエリア南部で成功できる実力を証明した多様な企業創設者の集団を支え始めたのだ。

「このところ、シリコンバレーで生まれるものは、シリコンバレーの人々が使うことが想定されていて、ブロンクスやクイーンズやバルチモアに暮らす人々のためのものではありません」とニコルス氏は言う。「今こそ、ここにいるべき時です。将来性のある企業に投資しようとするなら、世界が向かっている先に行くべきです。実際のところ、そこは黒人や有色人種の世界です」

マイノリティー創設者マイノリティーの企業創設者は過小評価されている私たちは名前の分析、写真の分析、サードパーティーの人口統計収集企業を取り混ぜて利用し、創設者の出身民族を割り出した。我々が収集したデータでは、ベンチャー投資を受けた創設者の3/4以上が白人だった。残りの1/3は、ほとんどがアジア出身の創設者が分け合っている。

国勢調査も、ニコルス氏の評価を裏付けしている。2044年までに、アメリカの人口の大半をマイノリティーが占めるようになり、次世代の消費者はすでにその傾向を見せている。マイケル・ファンが創設したIpsyは、マイノリティーの創設者によって10億ドル規模の美容関連企業だ。もうひとつ、メイクアップアーティスト、パット・マグラスが創設した10億ドル規模の化粧品ブランドPat McGrath Labsは、Eurazeo Brandsから600万ドル(約40億3000万円)を調達している。

Cross Cultureも、ロサンゼルスに腰を落ち着けて、そうした企業が現れるのを待っているわけではない。ニコラスは、機会があれば会社ぐるみで地方を旅している。マイアミでは1カ月かけて起業家たちに会い、デトロイトとアトランタではCulture and Codeというイベントを連続的に開催し、それぞれの街のスタートアップの露出度を高めている。ニコラスは、それは地方のコミュニティの起業家と投資家に出会うための期間限定の場とだと説明している。

Cross Cultureにとれば、伝統的なテクノロジーの都であるシリコンバレーから遠く離れた地方都市を巡るという決断は、単純に同社の幅広いビジョンの延長線上にあるものだ。

「ベンチャー投資家の中で、黒人とラテン系はわずか2パーセントです。黒人女性は0.002パーセントです。そんなこともあって、私のような姿をした若い連中は、ベンチャー投資というものを知らないのです」とニコルス氏は話す。「これは、この国の人口の大きな部分を占める人たちが、今の人口動態をどう思い、彼らに何ができるのか、そしてこれはとても悲しい現状であるということを気付かせるものでした」

現在、ほぼ展開を終えたCross Cultureは、将来のための決断を行う時期になっている。同社は、新たに5000万ドルから1億ドルを調達しに行くか、またはより大規模な投資手段を手に入れる可能性もある。

今のところ、Cross Cultureが支援している34社のの平均投資規模は、およそ25万ドル(約2800万円)となっている。

ニコルス氏にとって、これらの企業の成功は必須条件だ。利益や自らの理論の実証のためだけではない。その経歴にこだわらず、優れた創設者たちを支援する投資の本来の意義のために幅広い努力を重ねている他の投資会社にとって、失敗が何を意味するかを知っているからだ。ニコルス氏は、ベンチャー業界にとって、経済にとって、そしてより広い社会にとって、それが重要であると信じている。

「失敗は決して許されません」とニコルス氏。「勝利あるのみです」

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(翻訳:金井哲夫)

極右ソーシャルネットワークGab、GoDaddyにドメイン登録を抹消されサービス停止

10月27日のピッツバーグ礼拝堂銃撃事件の容疑者がユダヤ人差別投稿に使っていた極右ソーシャルネットワークGabは、ドメインレジストラのGoDaddyから、24時間以内に新しいドメイン登録機関を探すよう警告を受けた後、サービスを停止した。GoDaddyの決定は、PayPal、Medium、Stripe、Joyentらが週末にかけてGabのアカウントを停止したことを受けたものだ。

Bowers容疑者はピッツバーグのシナゴーグTree of Life銃撃事件に関連する11名の殺人容疑および複数の憎悪犯罪で告発され、死刑宣告される可能性がある。名誉毀損防止組合はこの事件を、米国ユダヤ人社会に対する史上最悪の事件だとしている。

Bowersは自分のGab プロフィールに「ユダヤ人はサタンの子供たち」と書き、ユダヤ人差別投稿やその他のヘイトスピーチを繰り返した。銃撃のわずか前にBowersは、「HIAS[ユダヤ人難民支援団体]はわれわれの国民を殺す侵略者を連れて来たがっている。同胞が虐殺されるのを黙認することはできない。世間がどう言おうとも俺はやる」と 書いていた疑いがある

GoDaddy広報はメールによる声明で、Gabはドメイン登録機関の暴力的コンテンツに関する規約に反したため退去を命じられたと語った。

「Gab.comに対して、当社の利用規約に違反したため24時間以内に他の登録機関を見つけるよう警告した。週末に受け取った複数の苦情に基づいてGoDaddyが調査したところ、暴力を宣伝、促進する多数のコンテンツを同サイト上で発見した」

現在Gabは「攻撃を受けている。アプリストア、ホスティングサービス、および複数の支払い処理サービスがシステム的に無効化されている」旨を主張するメッセージを表示している。

Gabがオンラインサービスプロバイダーの規約に抵触したのはこれが初めてではない。昨年Gabはコンテンツ違反でApple App StoreとGoogle Playから削除された。今年8月Microsoftは、2件のユダヤ人差別投稿を削除しなければAzure ウェブサービスから排除すると警告した(投稿は削除されMicrosoftはGabへのサービスを継続した)。

Joyentにサービスを停止されたGabは自身のTwitterアカウントを通じて「数週間閉鎖する可能性が高い」と言ったが、その後「近いうちに復活する」とツイートした。

GoDaddyは昨年にも、バージニア州シャーロットビルで右翼団体の “Unite the Right”集会に抗議中殺害されたヘザー・ヘイヤー氏に関するわいせつな記事を掲載したとして、2017年8月に白人至上主義サイトDaily Stormerへのドメインサービス提供を停止した。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

MITのコンピューター科学研究所が性差別をテーマとする社会科学ゲームを作った

週末を、何かおもしろくて、勉強にもなって、本物の仕事をしてるみたいなもので過ごしたいなら、Chimeria:Grayscaleはどうだろう。このゲームでは、あなたが人事課(部)の人になって、社内のいろんな問題にメールで対処していく。いや、こんな説明をすると、つまんねぇとしか思えないかもしれないけど、でもそれだけではないんだ。

このゲームを作ったMITのコンピュータ科学・人工知能研究所のD. Fox Harrellが、インタビューで説明しているように、ゲームの目的は性差別という問題の微妙な側面について知ることだ。

このゲームでは、ほかの社員たちからのあなた宛のメッセージに、Fiske and Glickの社会科学モデルにあるような、さまざまなタイプの性差別の証拠が隠れている。

とくにFiske and Glickの性差別モデルを選んだのは、それが両面的性差別という問題を扱っているからだ。そんな性差別は、セクハラや性による差別など露骨で敵対的な性差別と、本当は抑圧的なんだけど善意ぶった性差別の、両方を含んでいる(だから‘両面的’という)。たとえば、彼女は自分では直せない、と勝手に想定して女性のコンピューターを直してやるようなのを、Fiskeらは“保護のふりをした父親的干渉” (protective paternalism)と呼んでいる”。

人事部(課)に初めて配属されたあなたのところに、いろんな問題が送られてくる。アドベンチャーゲームの方針選択画面のように、あなたは対応を選ぶが、それは実は、その問題の機微をよく理解してない者の対応かもしれない。

これはStanに関する注記(Note)があるから、やさしい問題だろう。みんながStanという人物を知っているのだ。

[係長のStanley Rose(Stan)が、シャイな彼女の電話番号をきみから聞いてくれ、とメールで言っている。それに対してこの図では、「それは適切でない」と答えている。Noteによると、Stanはとても気持ち悪い人物だ。]

ゲーム終了時の達成感はない。ひとつのゲームが10分から15分ぐらいだが、最後に、あなたは性差別をしていない、という認定証はもらえない。でも、いろんな状況にどう対応するかで違う結果になるから、何度もプレイしたくなるだろう。

これは社内でよくある衝突や緊張に対して、おもしろい見方を教えてくれる。短くて初歩的なものばかりだが、それらに対する社員や会社からのさまざまな対応も知ることができる。そして少なくともこのゲームは、人事の仕事も人間の仕事だ、と教えてくれる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Uber取締役、懲りずに女性差別発言――アップデート:ボンダーマンは辞任

Uberの取締役会にまだ一人、女性差別の意味がわかっていないメンバーがいた。今朝、Uberでは女性差別等の問題を根絶するための改革をテーマに全社ミーティングが行われた。Yahoo Financeで公開された録音によると、取締役の一人、デビッド・ボンダーマン(David Bonderman)は取締役会にさらに女性を加えることは「おしゃべりが増えるだけだと」と述べた。実際そう述べたのだから驚く。

録音によれば、取締役のアリアナ・ハフィントンは6:40頃に取締役会に女性を加えるメリットについて話している。

ハフィントン:現在取締役会に女性が一人しかいない〔ハフィントン自身〕が、近く二人目の女性が加わることを示すデータが多数あります。

ボンダーマン:実際は〔そうなれば〕おしゃべりが増えるということを示すデータだな。

ボンダーマンはUberのイメージを危機に陥れたこれだけの騒動にもかかわらず、なにも学ばなかったらしい。ハフィントンは「デビッド、デビッド。心配することないでしょう。あなたはしゃべることがたくさんありそうだから」とたしなめた。

そもそもボンダーマンは口を挟むべきではなかった。

ボンダーマンはこの発言を謝罪したという。New York Timesの記者、Mike Isaacによれば、メッセージは 「取締役会に対して、今日のミーティングにおいて同僚〔ハフィントン〕に尊敬を欠いた発言を行ったことを謝罪する。同時にUberの社員に不快の念を与えたことを謝罪する。深く反省している」というものだ。

ハフィントンはCEO、トラビス・カラニックの休職についても触れ、「最近不幸な出来事が重なったため」と説明した。ハフィントンは「〔カラニックは〕金曜日に母の葬儀を行った。またこの数ヶ月、Uberは〔深刻な出来事〕を経験してきた」と述べた。

Uberの取締役会」は日曜日に Covington & Burling法律事務所とエリック・ホルダー元司法長官のチームが作成した10箇条の勧告をすべて受け入れ、実施することを満場一致で決めている。しかしボンダーマンの発言を見れば、改革の実施は長い道のりになりそうだ。

アップデート: ボンダーマンは女性差別発言の責任を取って辞任した。

ハフィントンは「Uberは根本的な変革の時期を迎えており、デビッドの辞任はUberにとって適切な選択だった」と述べた。

画像: REUTERS/Shu Zhang

〔日本版〕デビッド・ボンダーマンはTPGキャピタルの創立パートナーでUberの社外取締役を務めていた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Uber取締役会、トラビス・カラニックの休職を検討――後任はガレット・キャンプか?

報道によれば、今日(米国時間6/11)、Uberはロサンゼルスで取締役会を開く。この8年のUberの歴史でも、もっとも重要な討議となる模様だ。

New York Timesの記事によると、最大の議題は、窮地に経つCEO、トラビス・カラニックを休職させるべきかだ。この問題に対する取締役会の態度は数ヶ月前に開始された元司法長官、エリック・ホルダーによる調査の結果に大きく左右されることになるという。

エリック・ホルダーの雇用者は有力法律事務所、Covington and Burlingで、調査の費用はUberが負担している。ホルダーのチームはここ数ヶ月で数百人のUber社員に面接し、同社の企業文化を明らかにしようと努めてきた。この調査は元Uberのエンジニアであった女性、スーザン・ファウラー・リゲッティが同社を批判した記事が大きな反響を呼び起こしたことがきっかけだ。ファウラーが執筆した記事はUber社内には性的差別とセクハラが蔓延していると厳しく指摘していた。

Recodeによれば、この問題を担当する取締役会小委員会はすでにホルダーの調査結果を読んでいる。メンバーはメディアの有力者、アリアナ・ハフィントンとビル・ガーリー、デビッド・ボーダーマンの3名で、ホルダーの調査の詳細は火曜日に社内に発表されるという。Recodeの情報源によると「大きなトラブルが連なる光景」が描写されているそうだ。

われわれはUberにコメントを求めているがまだ回答がない。しかし Wall Street Journalによれば、UberのCBO(最高ビジネス責任者)のエミール・マイケル(Emil Michael)は明日朝、辞任を発表するものと観測されている

マイケルは2014年後半以来、さまざまな批判を浴びてきた。Buzzfeedの記事によれば、ジャーナリストも出席しているディナーでマイケルはUberに批判的な相手のスキャンダルのタネを探すために調査会社を雇う件について真剣に話したという。この批判者には、シリコンバレーの著名なジャーナリスト、サラ・レイシー(Sarah Lacy)も含まれていた。

カラニックはTwitterでマイケルを厳しく批判したが、解任することはなかった。マイケルは ホルダーらのチームと並行して実施された別の調査(有力法律事務所、Perkins Coieによるもの)でも解任を免れた。Perkins Coieの調査はここ数ヶ月、人事部門に社員から提起された200件以上のいじめ、セクハラ、性差別などに関する苦情を調査していた。その結果20人の社員が解雇されている

Michaelが辞任することに対する取締役会の判断まだ明らかでない。しかしUberが次々に引き起こしてきた重大なミスや誤った行動の連鎖を考えれば取締役会がこれでが調査を打ち切ることになるかは考えにくい。

たとえば3月のNew York Timesの記事によれば、Uberは何年も前から法的紛争が起きている市場で規制当局を欺くためにプログラムを持っていたという。

先週はUberの幹部、エリック・アレクサンダー(Eric Alexander)が2014年にインドで女性乗客がUberのドライバーにレイプされたという事件で、被害者の医学的記録を不当に入手したことが明らかとなり解雇されている(被害者はUberを訴え、その後和解)。

またカラニックが2013年に社員向けに送った「社内での性的関係についてのガイドライン」も 先週公開されて批判された。

Uberとカラニックをめぐるこうしたネガティブなニュースはキリがないようだ。Uberは 長年に渡って敵対者の数を増やしてきた。Uberがこれ以上の泥沼にはまり込まないよう、抜本的な改革が必要だとする声は強い。

とはいえ、カラニックが永久にUberを離れるということは考えにくい。カラニックの同社に対する影響力はきわめて大きい。New York Timesも報じているが、カラニックは特別議決権株式により圧倒的な議決権を保有している。共同ファウンダーのガレット・キャンプ(Garrett Camp)、長年の腹心であるライアン・グレイブズ(Ryan Graves)も同様だ。両者とも取締役会のメンバーだ。しかしグレイブズは以前は同社の事業責任者であり、したがって人事管理部門もその責任範囲に含まれていた。

その他のUberの取締役にはガーリー、ハフィントン、ボーダーマンが含まれる。

New York Timesによれば定款上あと4人の取締役が任命可能だが、現在は空席だという。

人事管理部門の責任者としてUberの問題ある企業文化の形成に部分的にせよ責任があると考えられているため、グレイブズがカラニックの代理を務めることは考えにくい。

仮にカラニックが一時的にせよUberを離れることになれば、キャンプが後任となることは比較的容易だろう。もともとUberという共有経済の仕組を考え出したのはキャンプだった。またキャンプはスタートアップとベンチャー投資の世界で高い尊敬を受けている。キャンプはスタートアップ・アクセラレータのExpaを運営しており、StumbleUpon,の共同ファウンダーでもある(キャンプは同社を売却した後、再買収した)。キャンプの財産の主要な部分はUberの持ち分で、現在600億ドルから700億ドル程度の価値があるものとみられている。

キャンプにコメントを求めているがまだ回答がない(おそらくはロサンゼルスでの取締役会に出席しているのだろう)。いずれにせよカラニックの後任となればキャンプだろうとわれわれは考えている。

ともあれUberは大きな改革に直面している。さらに情報が得られ次第フォローしていく。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Uber、セクハラで20人を解雇――差別、いじめは構造的問題の可能性

配車サービスの大手Uberがセクシャル・ハラスメントの調査に関連して社員20人を解雇したことをTechCrunchは確認した。今年に入ってセクハラ問題によって揺れているUberは、215人の社員について調査を行った結果、20人について各種の差別、いじめ、その他のハラスメント行為があったと認定した。

最初にBloombergが報じ、続いてUber自身も確認したところによれば、 215件の問題について調査した結果、100人ついては措置の必要を認めなかったが、57人については調査が続行され、31人に対してはカウンセリングや研修などが義務付けられ、7人は文書による戒告を受けた。

Uberはこの問題に関し、大手法律事務所、Perkins Coie LLPに12000人の社員に関して調査を依頼していた。、UberはPerkins Coieからの報告を受けて全社員ミーティングを行って詳細を議論した。セクシャル・ハラスメントおよびハラスメント一般を対象とするこの調査はUberの元エンジニア、Susan FowlerによるUberを厳しく批判する公開状をきっかけに開始された。FowlerはUberに勤務していた期間に管理職層からセクハラと女性差別を受けたと述べていた。

Arianna(Huffington)とLiane(Hornsby)は構造的なセクハラはなかった、Susanの場合だけだと主張。しかし外部の法律事務所は215件のセクハラがあったことを認定。 — Susan J. Fowler

元司法長官のEric Holderも別途調査を行い、Uberの取締役会に勧告を行っている。

調査内容が公表されるのは来週になるということだが、Uberには企業文化に関して構造的な問題があったことが明らかだ。いずれにせよ、セクハラは構造的な問題だったと見るしかないだろう。これは同社のトップが以前発表していた見解とはまったく異なる。Uberの取締役、アリアナ・ハフィントンはセクハラ調査のための小委員会の委員長を務めたが、去る3月、CNNのインタビューに答えて、「セクハラに関して構造的な問題はなかった」と述べていた。

「たしかに『腐ったリンゴ』が何個かあった。しかしこれは構造的な問題ではない」というのがハフィントンの発言だった。

Uberは管理職の資質に大きな問題があり、これが同社の多数の失敗や近視眼的企業文化の原因だと批判されてきた。実際1万2000人の社員のうち3000人が管理職だが、その多くはUber以前にまったく管理職の経験がないという。

しかしUberも急きょ態度を変えようとしているようだ。昨日、UberはHarvard Business Schoolの教授、Francis Freiを差別問題を担当する上級副社長に任命した。Freiは性差別問題に関してアメリカを代表する学究であり ベストセラーの著者でもある。また女性でありアフリカ系であることでAppleの幹部の中でも目立っていたBozoma St. JohnもUberに加わった。ただ社内で果たす役割についてはまだ情報がない。

画像: Jaap Arriens/NurPhoto/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Hillary Clintonがあらゆる差別の撤回に向けてシリコンバレーの能力をおだてる

サンフランシスコで行われたPBWC(Professional BusinessWomen of California)のカンファレンスでHillary Clintonがシリコンバレーに、ダイバーシティ(diversity)とインクルージョン(inclusion)をもっと活発に、と訴えた*。その重要な鍵のひとつが、有給育児休暇の普及だ、とも言った。Clintonは、インクルージョンがうまくいってない企業の例としてセクハラ・スキャンダルのUberを挙げ、男女の給与差を廃したSalesForceを賞揚した。〔*: diversity, 多様性、主に性や人種による差別・排他性の廃止; inclusion, 統合化、主に障害、年齢、犯罪歴など人生の‘履歴’による差別の廃止。 〕

“未来志向を誇る企業でステレオタイプや偏見が蔓延しているのはひどい皮肉だ”、とClintonは述べた。“Uberのセクハラの例にように、そのことを社会に公言して一部の女性が直接的な敵意にさらされることもある”。

Clintonが挙げたのは、先月、Uberの元ソフトウェアエンジニアSusan Fowler Rigettiが会社で受けたセクハラについて書いたブログ記事が口コミで広まった結果、同社としては初めてのダイバーシティ報告書を作成公表せざるを得なくなった件だ。

“それは一時的な流行語や、‘やってます’にチェックを入れればすむ問題ではない”、とClintonは言う。“問題を解決するために重要なのは、企業におけるフェミニズムの尊重などではなく、至るところで具体的に女性の生活が改善されていくことだ”。

Clintonは、SalesforceとGapを、同一賃金や有給の育児/介護休暇を具体的に実践している企業の例として賞揚した。

“シリコンバレーが持つ優れたツールやクリエティビティをもってすれば、暗黙の偏見のような捉えにくい問題にも挑戦して、みなさんが選んだ議員たちを動かしていくこともできるはずだ”、と彼女は付言した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Aibnb、人種差別主義のホストを追放

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AirbnbのCEOであるBrian Cheskyは、自社プラットフォームで人種差別や他の差別を認めないと伝えた。ノースカロライナのAirbnbのホストが黒人ゲストの予約をキャンセルし、彼女に人種差別的な言葉を何度も送った出来事を受けての発表だった。CheskyはこのAirbnbのホストを永久にプラットフォームから追放したと伝えた。

「ノースカロライナで起きたこの不穏な出来事は許されるものではありません」とCheskyは今日のツイートで発信した。「Airbnbは人種差別や他の差別を許しません。私たちはこのホストを永久に追放しました」。

Cheskyが言及するこの出来事は本当に不愉快だ。ホストは、黒人の予約をキャンセルする理由としてあからさまに彼女の人種をあげた。ホストの物件に宿泊を許可しない理由を伝えるのに、黒人を侮辱する言葉を複数回使用した。いつもだったら記事にホストの言葉を引用するところだが、そのような人種差別的なゴミをここには載せないことにした。

また他にも黒人がAirbnbで予約を拒否され、白人である友人が予約依頼を出すと許可されるといった体験をした複数の人がその詳細を語っている。そのような話は@#AirbnbWhileBlackから読むことができる。また、ハーバードの研究者の調査では、Airbnbホストによる差別が横行していると示す

Airbnbには確かに追放しなければならない人種差別主義なホストがいる。今回のホスト追放がその最初の1件となった。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter