ペット向けの遠隔医療プラットフォーム「Dutch」が事業拡大に向けて約23億円調達

バーチャル獣医サービスを提供するプラットフォームDutchが、Forerunner VenturesとEclipse VenturesがリードするシリーズAの投資ラウンドで2000万ドル(約23億円)を調達した。サンフランシスコの同社のこの最新のラウンドは、立ち上げから7カ月後であり、調達総額は2500万ドル(約29億円)になる。Dutchは専門の獣医師を起用して、ペットとその家族にデジタルのヘルスプラットフォームを提供し、誰にとっても利用しやすいペットケアを目指している。

このプラットフォームは2021年7月に、創業者でCEOのJoe Spector(ジョー・スペクター)氏の個人的な体験がヒントになって創業された。スペクター氏がTechCrunchに語ったところによると、彼の兄が飼っていた病気かもしれない犬が放置されているのを見て、もっと簡単に治療を受けることができる現代的な動物病院が必要だと感じた。彼によると、ペットの症状が見てわかるほど重くなってから医療の必要性を意識する飼い主が多く、そんなときでも1回の受診と1回の治療費で済ませようとすることが多いが、これからの飼い主は、そんなことをすべきでない。

「何千万人もの米国人の1人として、妻と私は子犬の世話を引き受けた。ロックダウンの間、自分たちや子どものためにはテレメディスン(遠隔医療)を利用しましたが、私たちの新しい子犬に医療が必要になれば獣医の元まで連れて行く必要があります。それにはお金だけでなく、時間もかかります。人間は、赤ちゃんでさえ医師とオンラインでチャットして処方箋をもらえるのに、ペットはそれができない。日常的でよくある軽い病気なら、もっと現代的で利用しやすい、そしてクオリティが高くて信頼できる獣医さんへのニーズがあるのだと気がつきました」。

Dutchはサービス開始以来、100名の獣医師と2万5000匹以上のペットにサービスを提供している。このプラットフォームを利用するには、ペットの飼い主にいくつかの情報を提供してもらい、その後、ビデオ通話の時間を設定することができる。初回訪問を終えたら、プラットフォームを通じていつでも獣医師と再接続することができる。Dutchの獣医師チームは、かゆみ、震えや震え、脱毛、1人でいることへの恐怖、食事や栄養、新しい場所や人への恐怖、皮膚の赤みや炎症、嘔吐など、数多くの問題を解決することができる。

画像クレジット:Dutch

新たな資金の用途としてスペクター氏が考えているのは、同社の知財保護の確立、そしてペットたちの医療履歴をデータベースに保存して飼い主が閲覧したり、ペットのデータや処方を共有できるようにしたいという。また、獣医だけでなく薬剤師のネットワークを大きくして、同日または翌日配達を可能にすること。さらにまた、多様な人材の協力を求めて顧客獲得ツールを作り、同時に、現在の獣医ネットワークをもっと拡張したいとのことだ。

将来的には、会員特典を充実させるとともに、ペットの状態に合わせて顧客がコミュニケーション方法を選べるようにする予定だと、スペクター氏はいう。

「私たちにとっての究極の目標は、ペットの健康を消費者の手に委ねることです」と、スペクター氏はいう。「消費者を中心に考え、できるだけ多くのサービスを消費者の手元で、消費者の時間に合わせて提供することに力を注ぎたいと思います。商品提供や価格の透明性を高め、高い価値とカスタマイズ性を実現したい」。

DutchのシリーズA投資は、昨年発表されたJimmy Fallon(ジミー・ファロン)氏の支援による500万ドル(約5億7000万円)のシードラウンドに続くものだ。このシードラウンドはForerunner Venturesが主導し、Bling CapitalとTrust Venturesが参加している。

画像クレジット:Dutch

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

AIを活用した製薬会社向け商業インサイトプラットフォームのODAIAが約16億円を調達

トロントに拠点を置く、AIを活用した製薬会社向け商業インサイトプラットフォームのODAIA(オダイア)は、Flint Capital(フリント・キャピタル)が主導するシリーズA資金調達で1380万ドル(約16億円)を調達した。このプラットフォームは、データ分析、プロセスマイニング、AIを組み合わせ、製薬およびライフサイエンスの商業チームに予測分析を提供するものだ。この資金調達ラウンドは、同社が過去1年間でチームの規模を倍増させたことを受けて行われた。

このスタートアップは、製薬会社のコマーシャルチームが彼らの処方者について何を知る必要があるか判断するのを手助けし、最適なチャネルを通じて正しいメッセージを伝え、最終的には、治療薬を必要とする患者に届けることができるようにすることを目的としている。同社は、プロセスマイニング、カスタマージャーニーマッピング、AIの分野における長年の研究開発の後、2018年にトロント大学で設立された。

「初期の研究作業のいくつかは、ペイシェントジャーニーを分析し、AIと機械学習を使ってそれらのジャーニーを最適化することを中心としていました」とODAIA共同創設者兼CEOのPhilip Poulidis(フィリップ・プーリディス)氏は、電子メールでTechCrunchに語った。「それは、処方者の取引、匿名化された患者の医療請求データ、人口統計学的および社会経済学的データ、匿名化されたラボデータなど、多くの異なるが関連するデータソースの分析を含むために、時間をかけて進化しました。MAPTUALは、上記のデータセットを分析し、予測的洞察を提供するSaaSプラットフォームで、標的治療薬の理想的な候補となる患者を治療している医師の優先順位付けと動的なセグメント化を行うもので、こうした研究・技術開発の積み重ねが、MAPTUALの誕生につながったのです」と述べる。

米国時間2月10日に発表された資金調達ラウンドには、Innospark Ventures(イノスパーク・ベンチャーズ)、Alumni Ventures(アルミナイ・ベンチャーズ)、Graphite Ventures(グラファイト・ベンチャーズ)の他、BDC Capital(BDCキャピタル)、MaRS IAF(マーズIAF)、StandUp Ventures(スタンドアップ・ベンチャーズ)、Panache Ventures(パナッシュ・ベンチャーズ)などODAIAの現在の投資家が参加している。同社によると、新たな資金調達は、プラットフォームの機能強化や、市場拡大をサポートするための営業、マーケティング、カスタマーサクセスチームの拡充に充てられるという。

画像クレジット:ODAIA

プーリディス氏は「今回の資金調達により、製品およびソフトウェアエンジニアリングチームの拡大、商業チームの拡大、プラットフォーム統合パートナーシップの拡大により、製品ロードマップの開発を加速させます」と述べている。

同社は、パンデミックによって顧客向け医薬品ビジネスが変化し、現在はDXが主な優先事項であると述べている。将来についてプーリディス氏は、同スタートアップの目標は、ライフサイエンスデータの多変量データ解析と予測的洞察を1つのプラットフォームで提供することであると述べている。このプラットフォームには、ライフサイエンス企業が処方者とペイシェント・ジャーニーをよりよく理解し、データとAIを活用してリアルタイムに対応できるような機能と能力が含まれると概説した。

同社のシリーズAラウンドは、2019年に発表された160万ドル(約1億8600万円)のシード投資に続くものだ。このラウンドは、Panache VenturesとStandUp Venturesが共同主導し、BDC CapitalのWomen in Technology Venture Fund(ウーマン・イン・テクノロジー・ベンチャー・ファンド)、Inovia Capital(イノヴィア・キャピタル)、MaRS IAFが参加した。この投資家グループは、Toronto Innovation Acceleration Partners(トロント・イノベーション・アクセレーション・パートナー)、トロント大学のUTEST(ユーテスト)、N49P、Ontario Centres of Excellence(オンタリオ・センター・オブ・エクセレンス、OCE)、Autonomic.ai(オートノミック・ドット・エーアイ、Fordが買収)の共同創業者であるAmar Varma(アマール・ヴァルマ)氏などのプレシード投資家に参加した。

画像クレジット:ODAIA

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(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

AI問診・病名予測アプリのUbieが新型コロナ第6波を受け全国の病院・クリニックへ「ホームページAI相談窓口」を無償提供

AI問診・病名予測アプリ開発のUbieが新型コロナ第6波を受け全国の病院・クリニックへ「ホームページAI相談窓口」を無償提供

Ubieは1月25日、全国の病院・クリニックを対象に「ホームページAI相談窓口」の無償提供を開始したと発表した。来院前に各医療機関のウェブサイト上でAIを使用した事前問診が行えるサービスで、患者の症状に応じた適切な案内と問診時間削減による院内感染リスクの低減を実現する。導入・設置にかかる費用は無料。医療機関向けの問い合わせ先は、「【緊急提供】第6波を受け、全国の病院・クリニックへ「ホームページAI相談窓口」の無償提供を開始_医療機関さま向けお問い合わせフォーム」となっている。

ホームページAI相談窓口では、各医療機関のウェブサイト上において、患者が症状に応じた20問程度の質問に回答し、問診結果を受診前に医療機関へ送信できる。医療機関側は、医師語に翻訳された問診結果を受け取ることで、事前に患者の症状を把握可能。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関連症状がある場合は、「導線や診療時間を振り分ける」「発熱外来に対応している他医療機関を案内する」など適切な対応を取れる。また、受付での問診時間の短縮により、院内感染リスクの低減にもつながるとしている。AI問診・病名予測アプリ開発のUbieが新型コロナ第6波を受け全国の病院・クリニックへ「ホームページAI相談窓口」を無償提供

年始からコロナ禍の再拡大による第6波が全国に到来しており、より感染力の強いオミクロン株により病院・クリニックでは、来院患者がこれまでにない速さで急増している。また、新型コロナ関連症状患者の1次対応や振り分けを行う各自治体の保健所のリソースもひっぱくし、医療崩壊の危機を迎えている状態にある。

Ubieは、いまだ感染のピークが見えない状況でこの危機を乗り越えるためには、病院・クリニックがより多くの患者を受け入れられる体制の構築と従業員・患者の院内感染防止が必要不可欠と指摘。今回の第6波における医療現場の状況を踏まえ、持続可能な医療体制の構築のため、一部医療機関で試験的に導入していた「ホームページAI相談窓口」の正式リリースおよび無償提供開始を決定した。

Ubieは、「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに掲げ、医師とエンジニアが2017年5月に創業したヘルステック領域のスタートアップ。生活者の適切な医療へのかかり方をサポートするウェブ医療情報提供サービス「ユビーAI受診相談」、紙の問診票のかわりにタブレットやスマートフォンを活用した「ユビーAI問診」を提供している。ユビーAI受診相談は月間300万人以上(2021年9月現在)が利用し、ユビーAI問診は全国47都道府県・500以上(2022年1月現在)の医療機関が導入しているという。

患者は、ユビーAI受診相談を利用することで、気になる症状から関連する病名と適切な受診先をいつでもどこでも調べることができる。またユビーAI問診では、AIを活用したスムーズかつ詳細な事前問診を実現することで、医療現場の業務効率化や患者の滞在時間削減に寄与する新しい医療体験を生み出している。

車いすユーザーや運動障害を持つ人々の自立歩行を支援する外骨格ロボットメーカー「Wandercraft」

Wandercraft(ワンダークラフト)は2012年、車いすユーザーのモビリティを向上させることを目指して設立された。同社のソリューションは、ロボットエクソスケルトン(外骨格)によってもたらされ、着用者にロボットの助けを借りて歩く能力を提供できる。2019年、パリに拠点をおく同社は、12の自由度を持ち、歩行アルゴリズムに依存してユーザーの足取りを決定する自己バランス外骨格「Atalante」を発表した。

米国時間1月19日、同社は、これまでに調達した3050万ドル(約34億8000万円)の倍以上となる4500万ドル(約51億3500万円)のシリーズCをクローズしたと発表した。今回のラウンドは、既存の投資家であるBpifranceに加え、米国を拠点とするQuadrant Managementが主導した。特にQuadrantの参加は、WandercraftがAtalanteを欧州だけでなく、米国にも展開することになるという点で注目される。

同社のMatthieu Masselin(マチュー・マセリン)CEOは、リリースの中で次のように述べている。「当社の開発プログラムを進めるために、米国と欧州から世界トップクラスの投資家を引きつけることができ、非常に興奮しています。患者、医療関係者、ディープテックコミュニティの支援を得て、Wandercraftのチームは、リハビリケアを向上させる独自の技術を生み出しました。近い将来、車いすに乗っている人々が自立性を取り戻し、日々の健康を向上させることを可能にするでしょう」。

米国には、ReWalk Robotics、Ekso、SuitX、Sarcosなど、名の知れた外骨格企業で市場が混雑しており、これらの企業はこれまでに多額の資金を調達し、注目度の高いパートナーシップを発表している。しかし、Wandercraftが他と異なる点のひとつは、競合他社の多くが力仕事をする労働者や軍事用途を対象としているのに対し、ユーザーのモビリティーを重視していることだ。

この場合それは、病院やその他の医療機関との提携の可能性を意味する。

画像クレジット:Wandercraft

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

HoloeyesとDental Prediction、5GネットワークとVR空間を利用した国際間遠隔医療カンファレンスの実証実験

Holoeyes、5GネットワークとVR空間を利用した国際間遠隔医療カンファレンスの実証実験を実施

医療用画像処理ソフトウェアなどを提供するHoloeyes(ホロアイズ)と歯科医療スタートアップDental Prediction(デンタル・プレディクション)は1月17日、Holoeyesが提供する医療用画像表示サービス(非医療機器)「Holoeyes XR」とオンライン遠隔共有カンファレンスサービス「Holoeyes VS」を活用し、日本とシンガポールの医師が参加する国際間遠隔カンファレンスの実証実験を実施した。5Gネットワークを活用したVR空間での国際間遠隔医療カンファレンスは、世界初の試みとなる。

この実証実験では、シンガポールの大手通信会社Singtel(シングテル)の実験施設「5G Garage」とNTTドコモの「ドコモ5GオープンラボYotsuya」を利用し、NTT DOCOMO ASIAの現地サポートを受けて、日本とシンガポールを5Gでつなぎ、遠隔カンファレンスを2回行った。

1回目は、HoloeyesのCOO兼CMOである帝京大学冲永総合研究所教授の杉本真樹氏による、シンガポールの消化器外科医2名に対する肝臓の腫瘍切除の模擬カンファレンス。もう1回は、Dental Predictionの歯科医、宇野澤元春氏とニューヨーク大学歯学部准教授の岡崎勝至氏が、シンガポールの日本人歯科医師に対するインプラント治療や歯内療法、歯科器具に関する説明を、歯列の3DモデルをVR空間で操作しながら行うというものだった。HoloeyesとDental Prediction、5GネットワークとVR空間を利用した国際間遠隔医療カンファレンスの実証実験

この実験について、シンガポールの消化器外科医の1人によると、ストレスなくカンファレンスの体験ができたという。「患者への説明、若い外科医の教育、手術計画など意志決定のためのツールとして使用できる」と話している。

Magic Leapがヘルスケア関連企業に新型ARヘッドセットへの早期アクセスを提供、2022年半ばの発売に先駆け

Magic Leap(マジックリープ)は、2022年後半に予定されている企業向けのリリースに先駆けて、ヘルスケアスタートアップ4社に第2世代ARヘッドセットへの早期アクセスを提供した。この早期アクセスプログラム企業の1つであるSentiARは、医師が患者の手術中に心臓の3Dモデルを見ることができるソフトウェアを提供している。また、Brainlabは、同社のMixed Reality ViewerソフトウェアをMagic Leap 2で利用できるようにしたいと考えている。

Magic Leapが最新のウェアラブルをデジタルヘルスケアのスタートアップに最初に提供しているのは驚くことではない。2021年4月の時点で、Peggy Johnson(ペギー・ジョンソン)CEOのはそう示唆していた。「拡張現実(AR)は、少なくとも短期的には、他のどの業界よりもヘルスケアを変革する可能性があります」と同氏は当時述べ、発売時には企業顧客に焦点を当てるとしていた。

Magic Leapは、シリコンバレーで最も注目されているスタートアップの1つとして登場して以来、苦境を強いられてきたことで有名だ。2019年には、2300ドル(約26万円)のヘッドセット「Magic Leap One Creator Edition」が発売されてから半年間で6千台しか売れなかったことが報じられた。その後、3億5000万ドル(約401億2000万円)の投資によって新たな命を吹き込まれるまでの数カ月間、従業員の解雇を繰り返していた。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Igor Bonifacic(イゴール・ボニファシッチ)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Bram Van Oost / EyeEm / Getty Images

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Aya Nakazato)

フランス、ドイツ、イタリアの30万人もの医師や医療従事者に使用されている仏Doctolibのツール群

フランスのスタートアップ企業であるDoctolib(ドクトリブ)が、(仮想)記者会見を開き、いくつかの指標を発表して最近の製品ローンチを振り返り、今後の投資についてヒントを示した。Doctolibは、医師のための予約プラットフォームとして始まり、医師や医療従事者一般のための他のサービスにも拡大している。

医療従事者は、SaaSとして提供されるDoctolibのツールを月額利用料を支払って利用し、それを患者に使用する。その事業は順調で、現在、開業医、歯科医、薬局、心理士など、30万人の医療従事者が毎月Doctolibへの支払いを行っている。サブスクリプションは月額129ユーロ(約1万7000円)から開始するが、このことによりスタートアップは毎月数千万ユーロ(数十億円)の収益を上げている。

プラットフォームがフランス国内で臨界点に達したことによって、2021年は同社にとって極めて重要な年となった。例えばフランスで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防接種を受けようと思ったときには、多くの人がDoctolibのサイトを訪れて、最寄りの予防接種センターや薬局、空き枠のある医師を探している。ワクチン接種施設は他のプラットフォームを使って情報を提供することも可能だが、実際にはほとんどの施設がDoctolibを使って予約を処理している。

Doctolibは現在、フランス、ドイツ、イタリアで展開している。現在もフランスは同社の主要市場だ。これまでに6000万人がDoctolibを利用していて、その多くが予約のためにサービスを利用している。2022年には、さらに10万人の医療従事者と協働することになると、同社は予測している。

製品群の開発

非常に多くの医師と商業的な関係を築いたことで、Doctolibは新しい製品をリリースしたり、一連のサービスを構築することができる。多くの点で、DoctolibはSalesforce(セールスフォース)の戦略を踏襲している。他の商品の踏み台として機能する、非常に集客性の高いメイン商品を持っているという点だ。

数年前には、遠隔医療機能を付加したリモートアポイントメント機能をローンチした。もう少し利用料金を支払うことを選択した医師は、ビデオ通話を行ったり、Doctolibの支払いシステムをリモートアポイントメントに使ったりすることができるようになる。

2021年、DoctolibはDoctolib Médecin(ドクトリブ・メディサン)を発表した。これは管理業務を行うバックオフィスツールだ。例えば患者ごとに書類を一元管理したり、患者の履歴を見たり、メモを取ったり、請求書を発行したりすることが可能になる。

Doctolibのフランス担当責任者のArthur Thirion(アーサー・ティリオン)氏はこう語る「私たちはこれに3年前から取り組んでいます。既存のものと比較して、ゼロから始めようと考えました。現在は、2000人強の医師に使われています」。

もちろん、医師としての仕事を管理してくれる製品はこれが初めてではない。しかし、これはDoctolibの他のエコシステムとうまく統合されている。

同様に、Doctolibは、Doctolib Team(ドクトリブ・チーム)という新しいサービスで、プラットフォームのネットワーク効果を高めたいと考えている。今回同社は、新たな収益源を作るのではなく、Doctolibを必須のものにしたいと考えている。

Doctolib Teamは、専門家を見つけてチャットができるインスタントメッセージングサービスだ。また、患者に関する書類を安全に送ることもできる。

すでにDoctolibを使用している医療関係者にとって、ありがたい機能と言えるだろう。まだDoctolibを使用していない医療従事者の場合は、無料のDoctolib Teamアカウントを作成して使い始めることができる、おそらく将来的にはDoctolibの他の製品をサブスクライブすることもあるだろう。

画像クレジット:Doctolib

高レベル監視下での運用

Doctolibは、機密性の高い医療データを扱うため、一般的なスタートアップ企業とは異なる。これまで、同社のデータ管理やデザインの決定について多くの報道がなされてきた。

そして同社は、他のスタートアップ企業と同じようには行動できないことをよく理解している。例えばこのスタートアップはユニコーンの状態になったものの、それ以降は資金調達の詳細を公開しなくなった。みんなの健康を増進しようとするときには、あまりお金の話はしたくないものだ。

共同創業者でCEOのStanislas Niox-Chateau(スタニスラス・ニオックス=シャトー)氏はいう「過去数年間、資金調達に関する発信をやめていました。毎四半期、毎年度、投資家のみなさまは我々の長期プロジェクトに基づいて、投資したり、再投資したりなさいます」。

現在Doctolibは、ミッション駆動の会社になりたいと考えている。ミッション駆動とは、一定のルールを遵守した場合に得られる特別なステータスだ。そして、スタニスラス・ニオックス=シャトー氏は、自らの会社を社会を改善する会社として位置づけるために、複数の論点を見出している。

例えばDoctolibのビジネスモデルは非常に明確で、医療従事者からのサブスクリプションのみで成り立っているという。同社は患者データを収益化していない。

同氏によれば、このプラットフォームは広く利用されていて、デジタルデバイドも引き起こしていないという。例えば多くのユーザーは大都市に住んでいないし、高齢者でも簡単に使えるようになっているという。

しかし、だからといって、同社は立ち止まるつもりはない。2022年には野心的な拡張計画が控えている。Doctolibは、2300人の従業員から3000人の従業員へとチームを拡大する予定だ。そして、フランス時間1月10日以降、全従業員がDoctolibの株主になる。全員が少なくとも2万ユーロ(約261万3000円)相当の株式交付を受ける。

2022年には、フランス、ドイツ、イタリアにおける製品の改良とプラットフォームの拡大のために、3億ユーロ(約392億円)の投資を計画しているが、これは主に新規雇用と新オフィスに使われる。2022年には新しい市場の立ち上げは予定されていないが、それはもっと先になるのだろう。

画像クレジット:Doctolib

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(文:Romain Dillet、翻訳:sako)

医療情報提供サービス「ユビーAI受信相談」、新型コロナ関連症状に対応可能な都内約2000件の発熱外来が検索可能に

医療情報提供サービス「ユビーAI受信相談」、新型コロナ関連症状に対応可能な都内約2000件の発熱外来が検索可能に

「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションとするヘルステック領域スタートアップUbie(ユビー)は12月8日、気になる症状から参考病名と適切な受診先が調べられるサービス「ユビーAI受診相談」で、発熱外来のある東京都内約2000件の医療機関を検索できる機能の提供を開始した。

東京都に住む人が、新型コロナウイルス感染症関連の症状に対応する、いわゆる「発熱外来」にかかるには、都の発熱相談センターに電話をして対応可能な医療機関を調べてもらう必要がある。しかし感染が急拡大した第5波においては、電話がなかなかつながらない状態が続いてしまった。そこで都では、2021年9月から、発熱外来のある医療機関をホームページで公開。これを受けて、Ubieと東京都医師会は、「ユビーAI受診相談」で、より便利に都内の発熱外来が調べられる「発熱外来検索機能」を提供することにした。

ユビーAI受診相談では、体調に関する20問ほどの質問に回答すると、その症状に関連する参考病名と、それを診てくれる近くの医療機関が示される。発熱外来検索機能では、地域は東京都内に限定されるものの、「熱がある」「喉が痛い」「咳が出る」「味覚がおかしい」といった新型コロナウイルス感染症に関連する症状を回答すると、発熱外来のある最寄りの医療機関が示される。

このサービスは、東京都が公表した発熱外来医療機関のデータを活用したもの。ユビー受診相談の新機能とすることで検索性を高めている。新型コロナウイルス感染症関連症状のある人が、最寄りの発熱外来を速やかに受診できるようにして、「重症化と感染拡大の防止につなげること」を目指すとUbieは話している。

患者の治療に専念できるようになる、AI診断可視化プラットフォームLifeVoxelが約5.7億円のシード資金を調達

サンディエゴのスタートアップLifeVoxel(ライフボクセル)は、より迅速で正確な予後のためのAI診断可視化プラットフォームのデータインテリジェンスを強化するため、シードラウンドで500万ドル(約5億7000万円)を調達した。

Prescientという名称のプラットフォームは、診断、ワークフロー管理、トリアージに使用され、医師や病院はソフトウェアやハードウェア技術の管理でストレスを受けることなく、患者の治療に専念することができる。

Software-as-a-Service (SaaS) プラットフォームは、放射線科、循環器科、整形外科などのさまざまな医療分野で、医療施設が遠隔診断に使用する。Prescientには診断用の画像が保存されており、医師は携帯電話を含むあらゆるデバイスから必要に応じて画像を解析することができる。また、診断結果の注釈やレポートを作成する機能もある。

LifeVoxelの創業者でチーフアーキテクトのKovey Kovalan(コベイ・コバラン)氏は「今回のラウンドで確保した資金は、診断の効率と精度の向上のために、類似性や異常性、予測診断を識別できるデータインテリジェンスを提供できるよう、深層学習AIモデルや機械学習アルゴリズムの構築に役立てる予定です」と話す。

「つまり、当社が成長を続けることで、医療関係者が患者のどこが悪いのかをこれまでよりも迅速に把握できるようにし、より早く治療に取り掛かることができるようになるのです」とコバラン氏は述べた。

今回のラウンドには、医療や放射線の専門家、医療技術に関心のある富裕層など、さまざまな投資家が参加した。

マレーシアで生まれ育ったコバラン氏は、オハイオ州立大学でコンピュータサイエンスを学び、卒業後は人工知能を専門とするようになった。その後、研究のため、そして好奇心から、GPUを使った人工知能を医療画像の分類に応用し、その結果「インターネット上で医療画像のゼロレイテンシーのインタラクティビティを可能にする」プラットフォームの開発につながった。

このプラットフォームは、ソフトウェアを使用する病院のテクノロジーコストを約50%削減するように設計されていて、施設のニーズに応じて拡張または縮小することができる。また、医師が世界中のどこからでも患者やそのデータにアクセスできるようになり、よりスピーディーな治療が可能になる。

コバラン氏は、このプラットフォームを利用して、画像がオンプレミスで管理されているために共同作業がしづらいという医療画像の現状を変え、人工知能を活用したものにしたいと考えている。LifeVoxelはこの技術を使って、インテリジェントな可視化による診断結果の向上を目指している。

「専門家が不足している地方の人々は、どんなデバイスでも放射線技師のワークステーションにすることができるこのプラットフォームによって、都市部と同じように画像検査のレビューで専門医のネットワークにアクセスできます。最近ではパンデミックの間に、これまでにないインタラクティブな3D VRテレプレゼンスを実現するために、数千マイル離れた遠隔地のプロクターと手術室内の外科医との間でこのような技術が展開されました」。

新型コロナパンデミックをきっかけに、より多くの医療機関がリモートや遠隔医療の機能を拡大している中で、LifeVoxelの技術はタイムリーなものだ。加えて、従来のクラウドベースのシステムから脱却し、患者の予後を向上させるためにAI技術を採用する病院が増えている。

LifeVoxelの共同創業者で社長兼CEOのSekhar Puli(シェーカル・プーリー)氏は「医療用画像処理および放射線科には、従来のシステムの不備を補うダイナミックなソリューションが必要です」と話す。

「今回の資金調達により、世界中の医療用画像アプリケーションの事実上のプラットフォームになるというビジョンを加速させるだけでなく、ヘルスケアの未来のために、遠隔医療イメージングや高度な技術ベースのAIソリューションを大きく前進させることができるでしょう」。

画像クレジット:phuttaphat tipsana / Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Nariko Mizoguchi

BNPLの成功を高騰する医療費に、金利なしの「先に治療・後払い」フィンテックPayZen

米国でヘルスケアのコストは増加の一途をたどっており、患者が自己負担しなければならない割合もそれにともない増加している。2019年のギャラップ調査によると、米国の3世帯に1世帯近くが、費用を理由に治療を遅らせたことがあるという。

ヘルスケアフィンテックのスタートアップであるPayZen(ペイゼン)は、AIを活用して患者の医療費債務を引き受け、患者が治療を受けて長期的に分割払いできるようにするソリューションを展開するため、シリーズAラウンドで1500万ドル(約17億1000万円)を調達した。

今回のラウンドはSignalFireがリードし、新規でLink Ventures7WireVentures、さらに既存投資家のViola VenturesとPicus Capitalが参加した。同社は、2021年初頭にシード資金として500万ドル(約5億7000万円)を調達しており、今回のシリーズAにより累計資金調達額は2000万ドル(約22億8000万円)に達した。

PayZenの「先に治療・後払い」ソリューションはすべての患者が利用でき、患者は手数料や金利なしで、治療費を時間をかけ分割払いすることができる。このプラットフォームの基盤となる人工知能(AI)技術により、病院は患者のデータを活用して、管理コストを抑えながら各患者に特化した支払いプランを決定することができる。

PayZenは、2019年にフィンテックのベテランであるAriel Rosenthal(アリエル・ローゼンタール)氏、およびItzik Cohen(イッツィク・コーエン)氏、Tobias Mezge(トビアス・メズガー)氏の3人によって設立された。現在PayZenのCEOを務めるコーエン氏は、消費者債務のフィンテック、Beyond FinanceでCEOを務めていた。

コーエン氏は、TechCrunchのインタビューで、患者の自己負担額は過去10年間で2倍になったが、今後10年間でさらに2倍になると予測されると語った。

「(創業チームは)フィンテック業界出身だったため、例えば、『先買い・後払い(BNPL)』を導入したeコマースでは、イノベーションと信用の拡大を受け、人々がより高額な商品を購入できるようになったのを見てきました。そこで、患者からの請求業務をますます多く担うようになっている医療機関も、苦労しているのではないかと考えました。それでは彼らも悪い状況に追いやられてしまいます」とコーエン氏はいう。

PayZenのプランを利用する患者には金利がかからないため、医療機関はこれらのコストを自分たちの帳簿に残すことができる。コーエン氏は、患者とその経済状況に合ったプランを優先的に提供することで、査定プロセスを逆転させ、支払いの遵守率を高めたと述べている。

フィラデルフィアを拠点とするGeisinger Hospital(ガイジンガー病院)では、PayZenの導入後、支払いの回収率が23%向上したという。コーエン氏は、米国のほとんどの主要な医療機関の平均営業利益率は1%と非常に低く、業界は人材不足に悩まされていると付け加えた。

「市場の状況が少しでも変化すれば、率直に言って、彼らは損失を被ることになるでしょう。彼らは今、この時間を利用して最適化を図り、多くのプロセスを自動化する技術に投資しています」とコーエン氏は語った。

設立からまだ1年も経っていないこのスタートアップは、2022年1月に大幅な製品の拡張を発表する予定だ。

ニーズの増加に対応するため、PayZenは現在35人のチームを2022年末までに約100人の従業員に成長させる予定だという。

画像クレジット:PayZen

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Aya Nakazato)

専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUとNTT西日本が遠隔医療のエッジコンピューティング活用に関し共同実験

専門医による遠隔集中治療ソリューションを提供するT-ICU西日本電信電話(NTT西日本)は11月18日、「遠隔医療におけるエッジコンピューティング技術を活用した情報処理の実現方式」に関して共同実験を開始したと発表した。同実験の成果を生かし、ウィズコロナ・アフターコロナ時代を見据えたリモートワールド(分散型社会)を実現し、地域医療の人材不足といった社会課題の解決を目指す。実験期間は2021年11月~2022年2月(予定)。

共同実験では、実証実験に協力している病院からNTT西日本の閉域ネットワークを介して、サーバーが設置されているエッジコンピューティング拠点まで映像を転送する。T-ICUの技術でその情報処理を行い、モニタリングセンターからの医師・看護師などによる遠隔モニタリングを実現する。

共同実験では、遠隔モニタリングに用いる高品質な映像が病院からNTT西日本の閉域ネットワークへ転送できること、容体悪化の兆候に関してAIによる推論ができることを評価するとともに、エッジコンピューティング技術に必要とされる要件についても評価する。こうした取り組みを通じ、医療情報を電子的に管理する上で準拠すべきガイドラインを念頭に、今後遠隔医療を提供する際に必要となる要件や技術課題を把握することを目指す。

・T-ICU:遠隔ICU技術の提供、遠隔モニタリングに必要な情報処理技術の検討
・NTT西日本:エッジコンピューティング技術の提供、クラウド化にかかる要件の検討

同実証実験では基本的な動作確認と要件確認を行い、得られた知見を活かして新たな遠隔ICUサービスの実現について継続して検討する。T-ICUとNTT西日本は、同サービスにより、地域の人材不足など社会課題の解決を目指す。

2016年創業のT-ICUは、「Anywhere, we care. すべての病院に集中治療医を」をミッションに、遠隔ICUにおけるサポートサービスを実施。集中治療医・集中ケア認定看護師のチームを擁し、病院向けに専門性の高いサポートを提供している。

T-ICUは、遠隔相談システム「リリーヴ」を契約している病院からの相談に対応する一方で、院内での遠隔モニタリング支援するシステム「クロスバイ」を提供し、導入病院内での効率的な医療提供に貢献してきた。

リリーヴは、命に関わる重症患者診療を担う医療スタッフの不安に寄り添い、呼吸・循環管理、鎮静・鎮痛、感染症治療などの全身管理を最新の知見と豊富な経験で支援する遠隔相談システム。全国的に専門家が不足する重症患者診療の現場を、集中治療医・集中ケア認定看護師で構成されたメディカルチームが24時間365日サポートする。専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUとNTT西日本が遠隔医療におけるエッジコンピューティング活用に関する共同実験

クロスバイは、ベッドサイドに配置した高性能カメラを利用した遠隔モニタリングシステム。患者の表情や顔色、呼吸様式の観察といった患者観察が可能。また、人工呼吸器を含む各種医療機器と接続することで、多面的な患者情報を院内の離れた場所に届けられる。新型コロナウイルス感染症患者受け入れ病院での医療の提供、また医療従事者への感染防止策としても導入されているという。専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUとNTT西日本が遠隔医療におけるエッジコンピューティング活用に関する共同実験

クロスバイ導入施設においては、重症患者への看護人員が不足する中、医療従事者によるモニタリングが常時実施されており現場の大きな負担となっているという。このような中、医療現場からT-ICUに対し、重症患者管理を専門とする集中治療医が不在となる夜間などの時間帯において、T-ICUが遠隔でモニタリングのうえ重症度に応じたアドバイスを提供してもらいたいという要望があるそうだ。ただ、この要望の実現には、モニタリングの際に発生するデータを低遅延かつセキュアに処理することが必要不可欠としている。

医療業界のデジタルインフラ構築に取り組むフランスのLifenが約66.2億円調達

フランスのスタートアップであるLifen(ライフェン)は、5800万ドル(約66億2600万円)の資金調達を行った。このスタートアップは、医療レポートを皮切りに、ヘルスケア業界のデジタルインフラに取り組んでいる。実際、600の医療施設が医療文書の送受信にこの製品を使用している。

また、各顧客は、毎月24万人の医師に送られる200万件の医療文書をLifenがまかなうため、Lifenを集中して使用している。患者はLifenから直接文書を受け取ることもできる。

Creadev(クリーデブ)Lauxera Capital Partners(ラクセラ・キャピタル・パートナーズ)は、米国時間11月15日のシリーズCラウンドを主導した。既存の投資家であるSerena(セレナ)Partech(パーテック)は今回の資金調達ラウンドに再び参加した。

Lifenは、アップグレードの機会を見据えて、ヘルスケア業界の通信方法から手を付けた。医療業界の多くの関係者は、医療文書の送付に昔ながらの物理的な手紙に頼っていた。病院では、データのプライバシー保護のため、電子メールに切り替えることができず、困っていた。

同スタートアップは、医療記録用に設計された複数の電子メッセージングプロトコルと連動するドキュメントプラットフォームを構築した。これにより、ペーパーレス化やレポートの自動送信が格段に容易になる。

また、Lifenは、ドキュメント製品の上に機械学習を追加した。同社は、重要な情報を自動的に検出し、ドキュメントを構造化されたデータに変えようとしている。例えば、同社は患者の名前や送信者の情報を自動的に識別しようと試みている。

そして今、同社は通信方法にとどまらず、ヘルスケア業界向けに本格的なデジタルプラットフォームを提供したいと考えている。医療機関は、Lifenを利用して他のe-ヘルス・アプリを使い始めることができる。

Lifenには独自のアプリストアがあり、Lifenのユーザー管理システムと連携するすべてのアプリを参照し、Lifenと接続することができる。この戦略は、Salesforce(セールスフォース)にとって特に効果的だった。

今回の資金調達により、同社は今後1年半の間に200人以上の従業員を雇用する予定だ。2025年までに、このスタートアップは1500の病院、200のe-ヘルスソリューションと連携したいと考えている。

画像クレジット:Lifen

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(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)

病気概要など医師の定型説明箇所を動画で効率化するインフォームド・コンセント支援クラウドのコントレアが1.4億円調達

病気概要など医師の定型説明箇所を動画で効率化するインフォームド・コンセント支援クラウドのコントレアが1.4億円調達動画を活用したインフォームド・コンセント支援システム「MediOS」(メディオス)を提供するコントレア(Contrea)は11月16日、プレシリーズAラウンドにおいて、J-KISS型新株予約権発行による総額1億4000万円の資金調達を完了したと発表した。引受先はCoral Capital、千葉道場ファンド、個人投資家。調達した資金は、システムおよび動画コンテンツの開発強化、営業・マーケティング体制の強化にあて、2024年の医師の働き方改革に向けた医療現場のDXを推進する。

インフォームド・コンセント(医療従事者が患者に診療目的・内容を説明し患者の同意を得ること)の内容には、病気の概要や治療方法、合併症など前提となる知識を伝える「講義」の部分と、患者の気持ちのサポートや意思決定の支援、質疑応答などの「対話」の部分にわけられるという。

医師はどちらも口頭で説明するものの、医療知識を有さない患者への説明では多くの時間を要するため、がんなどの場合では1時間以上かかることも少なくないそうだ。その結果、厚生労働省の調査では医師の時間外労働の発生原因の第3番目に「患者への説明対応」が挙がるなど、全国的な課題として顕在化している。

一方、患者側は時間をかけて説明を受けても、「講義」の部分は専門性が特に高く一度で理解することは容易ではない。「対話」の部分にたどり着く頃には頭が「パンク」していることがあり、その場では質問が浮かばずに帰宅してから聞きたいことが出てくることもある。コントレアは、インフォームド・コンセントにおいて、医師・患者の双方に課題があると指摘する。

同社のMediOSは、「講義」ではなく、患者との「対話」に注力できるようにするための、医師・患者間のコミュニケーション支援システムという。病気の概要や治療方法・合併症などの「講義」に該当する部分は患者個別性が少なく、医師にとっては標準的で繰り返しの説明となるため、MediOSが「講義」部分をアニメーションを用いた動画でサポートする。

病気概要など医師の定型説明箇所を動画で効率化するインフォームド・コンセント支援クラウドのコントレアが1.4億円調達

医師は、患者の病状や治療法に応じて動画を組み合わせることで、患者ごとにカスタムされた動画を発行できる。また患者側は、医師から発行された動画を自分の都合のいい場所・時間に何度でも繰り返し視聴可能だ。さらに、システム内において事前に質問を登録できるため、医師への質問や疑問点の伝え忘れを防止できる。患者の自宅や病院内の待ち時間などでMediOSを利用することで、診察室を拡張可能としている。

患者の理解度が高まった状態で医師との対面の説明にのぞむことで、医師の「講義」の効率化、またより本質的な「対話」に注力できるようになり、信頼関係の強化にもつながるという。コントレアは、これまで人力に頼っていた領域にデジタルのエッセンスを加えることで、医療現場の効率化と患者エンゲージメント向上を両立できるプロダクトを目指しているとした。

MediOSは2021年1月にβ版をローンチし、大学病院を始めとした200~700床の病院で導入済みという。導入効果として医師の説明時間が患者1人あたり33%短縮された。また、高齢者が多い中にあっても7割以上の患者が自力で動画視聴を完了し、理解度も4.6点(5段階中)を取得するなど、医師および患者の双方に効果が出ているそうだ。

認知機能障害検出のソフトウェアを開発するBrainCheckが約11億円調達

世界的に高齢化が進むのにともない、脳の健康に関する研究が進んでいて、スタートアップがテクノロジーを活用して認知障害を軽減する方法を模索している。

ヒューストンとオースティンを拠点とするBrainCheck(ブレインチェック)は、認知障害の検知とケアを専門とする医師をサポートする認知ヘルスケアソフトウェアの開発を手がけている。同社はアルツハイマー病や関連する認知症に対する新しいデジタル治療法の研究開発と市場開拓のために、シリーズBで1000万ドル(約11億円)を調達した。

このラウンドは、Next Coast VenturesとS3 Venturesがリードし、Nueterra Capital、Tensility Ventures、True Wealth Venturesが参加した。さらに、UPMC EnterprisesとSelectQuoteが戦略的投資家として加わった。今回の資金調達により、2016年の300万ドル(約3億4000万円)のシードラウンド、2019年の800万ドル(約9億1000万円)のシリーズAを含め、BrainCheckがこれまでに調達した資金総額はおよそ2100万ドル(約23億9000万円)となる。

BrainCheckの技術は、患者と米国内の約1万2000人という限られた数の神経内科医との橋渡しをする。対面または遠隔(スマートフォン、タブレット、コンピューターを介して)で行う10〜15分のテストを通じて、認知機能障害を早期かつ正確に検出することができる。

検査結果に基づき、患者にはCognitive Quotient(CQ)スコアが割り当てられ、これをもとに数分以内にパーソナライズされた認知機能ケアプランが作成される。現在、400以上の神経科、プライマリーケア、老年医学の診療所がこの技術を使用していて、マウントサイナイの臨床医も新型コロナウイルス感染症による認知障害の追跡と管理に活用している。

BrainCheckの共同創業者でCEOのYael Katz(ヤエル・カッツ)博士は、パンデミックがヘルスケアのエコシステム全体のすべてを変えた、とTechCrunchに電子メールで語った。

同社は、シリーズAの2年後に新たな資金調達を行うことを常に考えていたが、世界的な大流行がその方針にどのような影響を与えるかを見極めるために一旦停止したとカッツ氏は話した。しかし、新型コロナが人々の医療に対する認識に光を当て、リモートケアに慣れてきたことで、継続する機会を見出した。

今回の資金調達により、同社はチームの拡大と研究開発への投資を継続することができる。同社はすでに、患者との関係を深めるためのいくつかの新しい取り組みを行っており、これらは間もなく市場に投入される予定だと同氏は付け加えた。

BrainCheckは2020年、前年比で3倍という収益増を達成したが、カッツ氏は2022年も同様の成長を見込んでいる。今回のシリーズBでは、2年前と同じように成長させることを目標としている。

「リモートワークへの移行やメンタルヘルスの重要性の高まり、予防医学への投資、高齢化社会への対応など、これらすべての要因が重なって、私たちが行っていることが重要であり、今後も重要であり続けることが証明されました。医師がBrainCheckのようなツールに投資して患者の治療の質を向上させることが、かつてなく重要になっています」と述べた。

画像クレジット:Jorg Greuel / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

AIを使った超音波分析の拡大を目指すイスラエルのヘルステックDiAが約15億円調達

独自の光超音波3Dイメージング技術を手がけるLuxonusが約4.3億円調達、2022年に医療機器の開発・生産および薬事申請準備

イスラエルに拠点を置くAIヘルステック企業DiA Imaging Analysisは、深層学習と機械学習を利用して超音波スキャンの分析を自動化している。同社はこのほど、シリーズBのラウンドで1400万ドル(約15億3700万円)を調達した。

DiAの前回の資金調達から3年後に行われた今回の投資ラウンドには、新たにAlchimia Ventures、Downing Ventures、ICON Fund、Philips、XTX Venturesが参加し、既存投資家としてCE Ventures、Connecticut Innovations、Defta Partners、Mindset Ventures、Shmuel Cabilly(シュムール・カビリー)博士らが名を連ねている。同社のこれまでの総調達額は2500万ドル(約27億4500万円)に達している。

今回の資金調達により、DiAはプロダクト範囲の拡大を継続し、超音波ベンダー、PACS / ヘルスケアIT企業、リセラー、ディストリビューターとのパートナーシップの新規構築や拡充を進めるとともに、3つの地域市場でのプレゼンスを強化していく。

このヘルステック企業は、AIを利用したサポートソフトウェアを臨床医や医療従事者に販売し、超音波画像のキャプチャと分析を支援している。このプロセスを手動で行うには、人間の専門家がスキャンデータを視覚的に解釈する必要がある。DiAは、同社のAI技術を「今日行われている手動および視覚による推定プロセスから主観性を取り除く」ものだと強調している。

同社は、超音波画像を評価するAIを訓練して、重要な細部の特定や異常の検出を自動的に行えるようにしており、心臓にフォーカスしたものを含む、超音波分析に関連する各種の臨床要件を対象とした広範なプロダクトを提供している。心臓関連のプロダクトには、駆出率、右心室のサイズと機能などのアスペクトの測定と分析の他、冠動脈疾患の検出支援などを行うソフトウェアがある。

また、超音波データを利用して膀胱容積の測定を自動化するプロダクトもある。

DiAによると、同社のAIソフトウェアは、人間の目が境界を検出して動きを認識する方法を模倣しており「主観的」な人間の分析を超える進歩につながるもので、スピードと効率の向上も実現するという。

「当社のソフトウェアツールは、正しい画像の取得と超音波データの解釈の両方を必要とする臨床医を支援するツールです」とCEOで共同創業者のHila Goldman-Aslan(ハイラ・ゴールドマンアスラン)氏は語る。

DiAのAIベースの分析は、現在北米や欧州を含む約20の市場で利用されている(中国ではパートナーが自社のデバイスの一部として同社のソフトウェアの使用の承認を取得したと同社は述べている)。DiAは、チャネルパートナー(GE、Philips、コニカミノルタなど)と協力して市場開拓戦略を展開しており、チャネルパートナーは自社の超音波システムやPACSシステムに追加する形で同社のソフトウェアを提供している。

ゴールドマンアスラン氏によると、現段階で3000を超えるエンドユーザーが同社のソフトウェアへのアクセスを有している。

「当社の技術はベンダーニュートラルであり、クロスプラットフォームであることから、あらゆる超音波デバイスやヘルスケアITシステム上で動作します。そのため、デバイス企業およびヘルスケアIT / PACS企業の両方と10社以上のパートナーシップを結んでいます。当該分野には、このような機能、商業的牽引力、これほど多くのFDA・CE対応のAIベースソリューションを持つスタートアップは他にありません」と同氏は述べ、さらに次のように続けた。「現在までに、心臓や腹部領域のための7つのFDA・CE承認ソリューションがあり、さらに多くのソリューションが準備されています」。

AIのパフォーマンスは、当然ながら訓練されたデータセットと同等である。そして、ヘルスケア分野での有効性は特に重大な要素である。トレーニングデータに偏りがあると、トレーニングデータにあまり反映されていない患者群で疾患リスクを誤診したり過大評価したりする、欠陥のあるモデルにつながる可能性がある。

AIが超音波画像の重要な細部を突き止めるためにどのような訓練を受けているのかと聞かれて、ゴールドマンアスラン氏はTechCrunchに次のように答えている。「私たちは多くの医療施設を通じて何十万もの超音波画像にアクセスできますので、自動化された領域から別の領域にすばやく移動する能力があります」。

「各種のデバイスからのデータに加えて、異なる病理を持つ多様な集団データも収集しています」と同氏は付け加えた。

「『Garbage in Garbage out(ゴミからはゴミしか生まれない)』という言葉があります。重要なのは、ゴミを持ち込まないことです」と同氏はいう。「当社のデータセットは、数人の医師と技術者によってタグ付けされ、分類されています。それぞれが長年の経験を持つ専門家です」。

「また、誤って取り込まれた画像を拒否する強力な拒否システムもあります。このようにして、データがどのように取得されたかに関する主観的な問題を克服しています」。

注目すべき点は、DiAが取得したFDAの認可が市販前通知(510(k))のクラスII承認であることだ。ゴールドマンアスラン氏は、自社プロダクトの市販前承認(PMA)をFDAに申請していない(また申請する意思もない)ことを認めている。

510(k)ルートは、多様な種類の医療機器を米国市場に投入する承認を得るための手段として広く利用されている。しかし、それは軽薄な体制として批判されており、より厳格なPMAプロセスと同じレベルの精査を必要としないことは確かである。

より大きなポイントは、急速に発展しているAI技術の規制は、それらがどのように適用されているかという点で遅れをとっている傾向があるということだ。巨大な展望が確実に開かれているヘルスケア分野への進出が増えている一方、まことしやかなマーケティングの基準を満たすことに失敗した場合の深刻なリスクもある。つまり、デバイスメーカーが見込んだ展望と、そのツールが実際にどれだけの規制監督下に置かれているかということの間には、依然としてギャップのようなものが存在している。

例えば、欧州連合(EU)では、デバイスの健康、安全性、環境に関するいくつかの基準を定めているCE制度において、一部の医療デバイスはCE制度の下での適合性についての独立した評価が必要になるが、実際にはそれらが主張する基準を満たしているという独立した検証が行われることなく、単にメーカーが適合性の宣言を求められるだけの場合もある。しかし、AIのような新しい技術の安全性を規制する厳格な制度とは考えられていない。

そこでEUは、来るべきAI規制法案(Artificial Intelligence Act:AIA)の下で「高リスク」と見なされたAIのアプリケーションに特化して、適合性評価の層を追加することに取り組んでいる。

DiAのAIベースの超音波解析のようなヘルスケアのユースケースは、ほぼ確実にその分類に該当するため、AIAの下でいくつかの追加的な規制要件に直面することになる。しかし現時点では、この提案はEUの共同立法者によって議論されているところであり、AIのリスクの高いアプリケーションのための専用の規制制度は、この地域では何年も効力を発揮していない状態にある。

画像クレジット:DiA Imaging Analysis

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)