今夏、いよいよアウディのセダンとSUVにHolorideのVR技術が搭載

この夏、Audi(アウディ)のセダンとSUVを皮切りに、バーチャルリアリティが量産車に導入されようとしている。

Holoride(ホロライド)は米国時間3月12日、オースティンで開催されたテック・音楽・映画のカンファレンス「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」で、同社のヘッドセットを使ったバーチャルリアリティエンターテインメントシステムが、最新のMIB 3ソフトウェアを搭載したAudiの一部モデルで6月にデビューすると発表した。この発表は、数年前にAudiから独立した同社にとって画期的だ。消費者の注目を集める新しい方法を見つけようと、自動車メーカーの関心が高まっていることを示すものでもある。

Holorideは、後部座席に乗る人の物理的な世界を拡張現実と結びつけ、クルマの動きと連動した乗車体験を実現するシステムだ。このシステムはブランドに依存しないため、他の自動車メーカーもサポートすることができる。

Holorideは、スウェーデンのADASソフトウェア開発企業であるTerranet(テラネット)と提携した。提携により、VRシステムのセンサーとソフトウェアスタックの力で、環境を迅速かつ正確に捉え、解釈することが可能になった。TerranetのVoxelFlowシステムが、クルマから受け取ったデータポイントに基づきVRの動きを計算する。

車載用バーチャルリアリティコンテンツを構築するためのソフトウェアもオープンソース化されており、開発者がコンテンツを作成し、いずれはマネタイズできるようになっている。

今のところ、VRシステムの利用に必要な追加費用はヘッドセットだけだが、自動車メーカーや開発者がサブスクリプションサービスを販売したり、特定の機能に課金することで、クルマの所有者から収益を上げる可能性は無限にある。Allied Market Research(アライドマーケットリサーチ)のレポートによると、世界の自動車用AR・VR市場は2025年までに6億7400万ドル(約789億円)に達すると予測されている。

VRエンターテインメントを量産車に導入することは、ドライバーレスカーが登場した後にクルマの中で利用されるようなコンテンツを開発する最初のステップでもある。ミュンヘンに拠点を置くVR企業のHolorideと、同社の一部を所有するAudiは、自動運転車の技術スタックに早くから着手し、短期的には、人間が運転するクルマからより多くの収益を得たいと考えている。

ドライバーレスカーが普及すれば、誰もが乗るだけになるため、車内コンテンツとエンターテインメントの将来の市場機会は膨大だとHolorideは主張する。

また、一番乗りすることでHolorideが「Elastic Content」と呼ぶ新しいメディアカテゴリーを確立する機会にもなる。ヘッドセットを装着して空飛ぶ円盤や潜水艦を操作している間にも、VRシステムはクルマの動きに適応し、その人のVR体験はクルマの加速、旋回、停止といった動きを取り入れる。

HolorideとAudiによれば、その可能性は無限大だ。クルマに乗っている人は、仮想世界でElrondのブロックチェーンがサポートするNFTを購入・収集できるようになる。位置情報ゲームは、ポケモンGOのように、仮想世界を物理世界の場所やイベントと結びつけることができるだろう。

もちろん、VRでは乗り物酔いが気になるところだ。Holorideは、クルマの動きと同期させることで症状を軽減させるという。

2021年1200万ドル(約14億円)を3000万ドル(約35億円)の評価額で調達したミュンヘンの同社は、2019年のCESでVRシステムのプロトタイプをデビューさせ、ラスベガスモータースピードウェイで記者らをドライブに連れ出した。カラフルな仮想現実の世界は、Disney(ディズニー)などのパートナーとともに作られた。めまいを感じた記者もいれば、いい感じだという記者もいた。

画像クレジット:Holoride

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(文:Jaclyn Trop、翻訳:Nariko Mizoguchi

自動車内のVRエンタHolorideが車内メタバースで使える暗号資産「Ride」をリリース

Audi(アウディ)が支援するスタートアップHoloride(ホロライド)は、クルマのドライバー向けに設計された車載バーチャルリアリティエンタテインメントシステムを開発しており、このほど自社の暗号資産トークン「Ride(ライド)」の販売を開始した。

暗号資産のローンチは、Holorideが開発者のコミュニティによって作られたゲームとエクスペリエンスのXR(Extended Reality、仮想世界と現実世界を融合して新たな体験をつくり出す技術の総称)エコシステムを構築する最新の動きだ。自分が乗っているクルマの動きに連動する仮想世界やゲームの体験を求めるユーザーは、Rideのユーティリティトークンを使って購入を行うことになる。

関連記事:2019年CES最優秀賞を車載VRのHolorideにあげたい…楽しいデモだったから

Holorideは2022年にXRシステムを自家用車に搭載することを目指しているが、どのブランドがいつローンチするかの詳細は不明だ。同社は以前、2022年夏のローンチを予定していたが、それ以降は具体的な時期について明言を避けている。

「ここ数年で、自動車メーカーやコンテンツクリエイターとユーザーをつなぐプロプライエタリな技術スタックを作り上げました」と、HolorideのCEOで共同創業者のNils Wolln(ニルス・ウォルニー)氏はTechCrunchに語った。「ブロックチェーン技術でプラットフォームを強化し、独自のRideトークンをローンチすることは、私たちのエコシステムを活性化し、公正で透明性のある参加を可能にするための論理的な次のステップです」。

Holorideは2021年5月に、Elrond(エルロンド)のブロックチェーンを自社の技術スタックに統合し、NFT(非代替性トークン)を使用して開発者にプラットフォーム上でより多くのコンテンツを作成するよう奨励すると発表した。NFTとRideはともにElrond上に構築されており、Holorideのエコシステムでの取引に利用できる。NFTは一意で複製できないのに対し、Rideの通貨は他の通貨と同様に交換可能となっている。

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「RIDEトークンと引き換えに、ユーザーやコンテンツクリエイターが彼らのエクスペリエンスに基づいて独自のNFTを作り出すことが可能になります」とウォルニー氏は語る。「できあがったNFTはRideを使って売買できます」。

ブロックチェーン、NFT、暗号資産をHolorideプラットフォームに組み込むことは、漠然としたバズワードで注目を集める方法以上のものだ。Holorideは、自動車の座席から、デジタル世界と仮想世界が物理的および拡張された現実と絡み合うメタバースへと、現実を広げる能力に賭けている。

RideがHoloride内のゲームやエンターテインメントの購入にしか使えないとしても、この賭けは報われるかもしれない。2021年12月にRideが正式に上場されれば、最初にElrondの暗号資産EGLDと交換可能になる。EGLDはUSDC(USDコイン)などの他の暗号資産またはフィアット通貨と交換することができ、成長を加速させる可能性がある。

多くのビッグネームがメタバースプロジェクトを発表し始めており、その中には親会社の名前をMeta(メタ)に変更したFacebook(フェイスブック)、Pokémon Go(ポケモンGO)のメーカーであるNiantic(ナイアンティック) 、Amazon(アマゾン)、Roblox(ロブロックス)、Unity Software(ユニティ・ソフトウェア)、Microsoft(マイクロソフト)なども含まれる。一方、このメタバースのビルディングブロックが成熟の兆しを見せ始めるにつれ、Waymo(ウェイモ)、Cruise(クルーズ)、Motional(モーショナル) やLyft(リフト)、WeRide(ウィーライド)といった企業が商用化への道を歩み始めている自動運転配車業界も同様の様相を呈しつつある。

ウォルニー氏はTechCrunchに対し、Holorideを「メタバースのための輸送機関会社」にしたいと語った。Holorideは当初、自家用車をターゲットにしていたが、最終的には自動運転車に統合され、搭乗者に十分なダウンタイムを与えて楽しませることを目指している。

Holorideは2021年11月初め、スウェーデンの電気自動車メーカーNEVS(ナショナル・エレクトリック・ビークル・スウェーデン)と提携して、同社のPONSモビリティシステムに自社の技術を統合することを発表した。PONSは特定用途向けに開発された自動運転車Sango(サンゴ)をフィーチャーした自動運転共有モビリティコンセプトである。Holorideの技術は、ソフトウェア開発会社Terranet(テラネット)のVoxelFlow(ボクセルフロー)技術によって引き続き強化される。VoxelFlowは車両のセンサーを組み合わせて物体の距離、方向、速度を計算し、Holorideのプラットフォームにリアルタイムで通知する。これにより、ゲーム内のユーザーエクスペリエンスは車両の実際の動きにマッチするようになる。

RideはElrondのMaiar Launchpad(マイアール・ローンチパッド)で販売されている(暗号資産ローンチパッドは、新しいプロジェクトのために資金を調達する方法を提供し、投資家に早期に割引価格でトークンを販売する時間を与え、プロジェクトを中心としたコミュニティの構築を助ける)。Holorideは最初に1億3000万個のトークンを循環させ、最大10億個のトークンを供給する。2億個のトークンがすでに0.02ドル(約2.26円)で個人販売されて終了済みで、さらに5000万個が暗号資産のローンチ前に一般に販売されていた。これで同社は総額600万ドル(約6億6800万円)を手にしたことになる。

Holorideのチームは、主にRideトークンの収益をコンテンツ制作に使う計画だが、開発、マーケティング、法務、セキュリティの監査にも資金を配分する。Rideのトークン割り当ては、Holorideが作っているXRのエコシステム全体で25%がフィルターされる。これにはエコシステムのサポーター、重要なパートナーシップ、成長のオポチュニティが含まれている。

「特に、開発者、コンテンツクリエイター、自動車メーカー、モビリティプロバイダー、オペレーショナルサポーター、アドバイザー、アンバサダーなどです」とウォルニー氏は述べている。

トークンの20%は「コミュニティ」に割り当てられる予定で、ベータユーザー、技術監査、コードレビューなど暗号資産コミュニティの初期のコントリビューターのために確保されているとウォルニー氏は話す。Holorideのファン、サポーター、信奉者たちを意味する「一般販売」に充てられるのは5%に留まり、残りは選ばれた金融・戦略投資家、株式投資家、Holorideの財務、およびHolorideチームに分配される。

ウォルニー氏によると、トークン所有者は初期段階で、購入エクスペリエンスやそれに関連する他の仮想アイテムに加えて、エコシステムのガバナンスや、サブスクリプション、アップグレード、特別イベントなどのコミュニティ特典にもトークンを利用できるようになるという。このトークンはまた、ユーザーが電気自動車へのサステナブルな乗車や特定のデータ共有などの特典を得ることができる「乗って遊んで利益を得る」サイクルへのインセンティブとしても使われる。さらに、コンテンツクリエイターや自動車メーカーはパートナーのロイヤリティとしてRideを受け取る可能性があるとウォルニー氏は説明する。

Holorideはローンチからまだ1年ほどしか経っていないが、このようなエコシステムが理にかなったものになるためには、相当なスケールが必要になるだろう。少なくとも、透明性、セキュリティ、相互運用性、参加といったブロックチェーン技術の基本的な原理に、メタバースがどのように依存していくかということの縮図となるかもしれない。ウォルニー氏は、どのようにしてメタバースを構築し、ユーザーが自分たちのアイデンティティを管理したり、価値を創造・獲得したりするのかというムーブメントの中心にHolorideが位置する可能性がある、と楽観的だ。

「今や誰もがメタバース、暗号資産、そしてNFTの世界にいますので、パズルのピースはよりフィットするかもしれません」とウォルニー氏。「ですが、まだ多くのことが未解決であり、最高のものがこれから出てくるでしょう」。

画像クレジット:Holoride

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

アウディが旧モデルの「e-tron」にソフトウェアアップデートを実施、航続距離が最大20km増加

Audi(アウディ)が、電気自動車SUV「e-tron(イートロン)」の2019年および2020年モデルに対して、バッテリーの航続距離を最大20km伸ばすソフトウェアアップデートを実施した。

航続距離の向上は、わずか20kmということで、大したことないと思うかもしれないが、これは自動車メーカーがソフトウェアを使って、旧型の電気自動車を改良できることを示している。今回のケースでは、アウディはソフトウェアを更新することで、既存のバッテリーの使用可能な容量を拡大し、実質的な効率を向上させたということだ。また、同社によれば、このソフトウェア・アップデートによって、フロントの電気モーターの制御も最適化され、バッテリーの熱管理システムの効率も改善するという。

2019年および2020年モデルの「Audi e-tron 55 quattro(アウディ・イートロン55クワトロ)」は、95kWhのバッテリーを搭載しているが、今後はそのうち86kWhを使用できるようになる。これによって一度の満充電で走行可能な航続距離は、現行モデルの最大441km(WLTPサイクル基準)に近づくはずだ。

このソフトウェアアップデートは、2018年9月中旬(モデルイヤー2019年)から2019年11月末(モデルイヤー2020年)の間に製造されたすべての量産モデルのAudi e-tron 55 quattroに無料で提供される。ただし、Wi-Fiにアクセスできる場所であればどこでも無線でソフトウェア・アップデートを起動できるTesla(テスラ)とは異なり、アウディではお近くのサービスセンターを訪れる必要がある。

このソフトウェアアップデートを受けることで、旧モデルのe-tronは、ソフトウェアとハードウェアが改良された2020年および2021年モデルのe-tronやe-tron Sportback(イートロン・スポーツバック)に遅れを取らずに済むようになる。

なぜアウディは最初から、それだけのバッテリー容量を使えるようにしなかったのかと、思う人もいるかも知れない。アウディをはじめとするEVに初めて参入する自動車メーカーは、劣化を避けるために慎重を期して、当初はバッテリーの使用可能容量を制限していたのだ。

テスラに続き、他の自動車メーカーも、機能の追加や改善のために、OTA(Over-the-Air、無線による)ソフトウェア・アップデートを採用し始めている。Volvo(ボルボ)は2月、欧州で電気自動車「XC40 Recharge(XC40リチャージ)」に初のOTAソフトウェア・アップデートを実施。そして10月には、バッテリー管理システムとプレコンディショニング・タイマーの改良により走行距離を伸ばすOTAをリリースした。同社はまた、ドライバーがバッテリーから最大限の航続距離を引き出せるよう支援する「Range Assistant(レンジ・アシスト)」というアプリの提供も開始している。

画像クレジット:Audi

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アウディが最新電動SUV「Q4 e-tron」の米国導入を発表、約493万円から

Audi(アウディ)は、2025年までに30台以上の電気自動車およびプラグインハイブリッド車を市場に投入する計画の一環として、拡大するポートフォリオの中で4番目および5番目の電気自動車となる「Q4 e-tron(Q4イートロン)」および「Q4 Sportback e-tron(Q4スポーツバック・イートロン)」の米国導入を発表した。

2019年のジュネーブ国際モーターショーでコンセプトモデルとして初公開されたQ4 e-tronは、アウディの電動SUVではエントリーモデルにあたり、価格もそれを反映したものとなっている。米国では1095ドル(約12万円)の運送費を含め、4万4995ドル(約493万円)からと設定されている。注目すべきは、電気自動車のQ4が、ガソリンエンジンを搭載する同社のSUV「Q5」よりも、約1000ドル(約11万円)安いことだ(現時点で日本仕様・価格は未発表)。

米国で販売されるQ4 e-tronファミリーには、全部で3車種が用意されている。「Q4 50 e-tron quattro(Q4 50 イートロン・クワトロ)」と「Q4 Sportback 50 quattro(Q4スポーツバック 50 イートロン・クワトロ)」は、2基の非同期モーターを搭載する四輪駆動で、EPA(米国環境保護庁)による推定航続距離(一度の満充電で走行可能な距離)は、どちらも241マイル(約388キロメートル)となっている。

もう1台の「Q4 40 e-tron(Q4 40 イートロン)」は、非同期モーターを1基のみ搭載した後輪駆動車だ。そのEPA推定航続距離はまだ発表されていない。基本的にスペックは以下のようになっている。

画像クレジット:Audi/スクリーンショット

新型Q4は、2021年3月にTechCrunchでも紹介したように、その頑強そうな外観のパッケージにアウディの技術が詰め込まれたクルマになっている。特に、オプションとして用意されるAR対応フロントガラスは注目に値する。

大きめのコンパクトSUVに属するQ4は、オーバーハングが短く、ホイールベースは2764ミリメートル。そのため、外側からはコンパクトに見える。しかし内部には、全長1.83メートルの室内空間があり、大型SUVに匹敵する広さだ。Q4 40 e-tronとQ4 50 e-tronはオールシーズンタイヤを装着した19インチのホイールが標準装備となり、Q4 Sportback 50 quattroはより大径のオールシーズンタイヤ付き20インチホイールを標準で装備する。

重要な点は、Q4 e-tronがアウディの親会社であるVW(フォルクスワーゲン)のモジュラー・エレクトリック・ドライブ(MEB)と呼ばれる車両アーキテクチャを共有していること。この柔軟性の高いモジュラーシステムは、VWが2016年に初めて公開したもので、さまざまなEVモデルを効率的かつ費用対効果の高い方法で作るために開発された。

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画像クレジット:Audi

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

モントレー・カーウィーク開催、未来のEVと高性能ハイブリッド車が注目を集める

現地時間8月15日(日曜日)に閉幕したMonterey Car Week(モントレー・カー・ウィーク)では、ペブルビーチにコンクール・デレガンスが戻ってきた。太平洋を望むペブルビーチ・ゴルフコースで開催され、2021年で70回目を迎えるこのショーでは、黒の1938年式メルセデス・ベンツ540K Autobahnkurierがベストショーの栄冠に輝いた。しかし、2021年目立ったのは、ビンテージカーではなく、EVハイパーカーや高性能ハイブリッド車である。

絵画のように美しいモントレー半島一帯で、自動車レース、展示、パレード、販売を中心としたさまざまな催しが一週間以上も開催されるモントレー・カーウィーク。このペブルビーチのイベントは年を追うごとに華やかになり、2020年は中止となったが、2021年は(新型コロナウイルスの蔓延が懸念されていたにもかかわらず)シャンパンが振る舞われた。

デルタ型変異ウイルスの懸念を受け、2021年8月初めにニューヨークモーターショーの中止が決定した際には、モントレー・カーウィークも中止になるのではないかという憶測が流れた。しかし、秋に向かって先行き不透明なパンデミック禍でもショーを行う必要があることから、カーウィークは事実上のショーとして開催された。

2021年8月15日、ペブルビーチで開催された「2021年ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」で、ベスト・オブ・ショーを受賞した1938年式メルセデス・ベンツ540K Autobahnkurier(画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg)

コンクール・デレガンスまでの数日間、カーメルやモントレーの街は静かで人通りも少なく、走行しているビンテージカーも少ないように感じられた。駐車スペースでは、ランボルギーニやベントレー、フェラーリなどのモダンカーがスタンバイしていた。霧のような雨と低い気温にもかかわらず、ほとんどが屋外で行われたイベントでは、多くのゲストがマスクをつけたり外したりしていた。日曜日になると、大勢の観客がやってきて、コンクールは例年のような賑わいとなった。

メインイベントであるペブルビーチ・コンクール・デレガンスは、かつては戦前のレストアされたビンテージカーを対象としたイベントだったが、世代や嗜好の変化に伴い、会場のゴルフコース上には新車も登場するようになった。来場者の年齢層が若くなったことから、今では高性能なスポーツカーが数多く展示されている。

8月13日(金曜日)の夜に行われたGooding & Company(グッディングアンドカンパニー)のオークションでは、1995年式マクラーレンF1が2000万ドル(約22億円)という記録的な高値で落札された。一方、自動車メーカー各社は、高額なスーパーカーの限定モデルを、メディアやプライベートイベントに参加している上顧客に向けて、慌ただしく発表した。

Lamborghini(ランボルギーニ)のCTOであるMaurizio Reggiani(マウリツィオ・レッジャーニ)氏は「ペブルビーチは要です」と話す。「ペブルビーチのイベントは、車の美しさという側面で、人々が何を好んでいるかを教えてくれます」。

注目すべきは、現地時間8月11日(水曜日)、Audi(アウディ)が未来的なSkysphere conceptを展示したことだ。金曜日にはMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)が、カリフォルニアスタイルの新しいコンバーチブルSLをプレビューしたが、このモデルは9月まで正式には発表されない。Aston Martin(アストンマーティン)は、ペブルビーチのゴルフコースを見下ろす広々としたスタンドで「Valkyrie」と「Valhalla」のモデルを展示したが、モデルを間近で見ることができたのはメディアと十分に吟味された顧客のみだった。

Rimac Automobili(リマックアウトモビリ)とLucid Group(ルシードグループ)の両社は、最も高価なEVパワートレインに投資する余裕のある潜在顧客と接触するためにペブルビーチに登場。Rimacは台座の上に圧倒的なスピードを誇るスポーツカー「Nevera」をデビューさせた。2021年のモントレー・カーウィークは、モダンカーと新しいプレイヤーが、周りの古い車を追い抜いてしまったように見えた。

超高級車に対する1年越しの鬱積した需要の高まりの中で、モントレーやカーメル周辺のレーストラック、道路は、パンデミック禍で購入したすべての車を披露できる最高の舞台だ。オークション価格が高騰し、7桁台(日本円では1億円以上)のスポーツカーが完売する中、ハイパフォーマンスカーへの情熱が衰えていないことが明らかになった。今回、ペブルビーチでお披露目された新車には、高価格、スポーツカーテクノロジーの集結、生産台数が少ないという共通点がある。以下、ハイライトを紹介する。

Aston Martin

画像クレジット:Tamara Warren

ここ数年、何度か延期されていたAston Martin Valkyrie Spiderだが、新CEOのTobias Moers(トビアス・ムアース)氏によってすでに完売したと発表された。Valkyrieは、取り外し可能なルーフパネルを備え、最高速度は時速350kmにも達する。パンデミック中にCEOに就任したムアース氏は、同社の生産方法を大幅に改良している。

ムアース氏は、新しい車載技術を加えることはブランドの将来にとって不可欠であり、それによって前世代のメルセデス・ベンツの技術から脱却できると話す。Astonのブースでは、ハイブリッドパワートレインを搭載したValhalla(2024年モデル)も展示されていた。

Audi Skysphere

「ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング」(カリフォルニア州カーメル)に出展されたEVコンセプトカー「Audi AG Skysphere」(画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg)

自動運転のコンセプトカー「Skysphere」は、ビンテージカーのコンクールというよりも、CES(コンシューマー・エレクトロニクスショー)に出展されているような印象を受けたが、ペブルビーチで発表された車の中で、最も興味深い車として注目を集めていた。Audiによれば、グランドツーリングモードとスポーツモードでホイールベースを変化させられるとのこと。

Bentley Flying Spur Mulliner

Bentley Flying Spur Mulliner(画像クレジット:Bentley)

Bentley Flying Spur Mullinerの豪華なインテリアは、贅沢なレザーで賛辞を集めたが、Bentley(ベントレー)にとって重要な意味を持つのはハイブリッドパワートレインを搭載するというニュースだ。

Bugatti Bolide

2021年の「ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング」でBugatti Bolideの横に立つBugatti Automobiles(ブガッティ・オートモービルズ)のプレジデント、Stephan Winkelmann(ステファン・ヴィンケルマン)氏(画像クレジット:Bugatti)

Bolideはペブルビーチではなく、金曜日にザ・クエイルで開催されたプレスカンファレンスで発表された。超高級自動車メーカーにとって、新型車は大きな意味を持つが、特に最後のガソリン車となるモデルは重要である。Bugattiによれば、Bolideは40台製造され、価格は1台400万ドル(約4億4000万円)。最高速度は時速480kmにもなるという。

Lamborghini Countach LPI 800-4

「ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング」に出展された「Lamborghini SpA Countach」(画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg)

デビュー50周年を記念し、初代モデルをオマージュしてデザインされたCountach。ボンネットの中には2.8秒で時速100kmに達するというハイブリッドパワートレインを搭載した、まったく新しいモデルである。

Acura NSX Type S

Acura NSX Type S(2022年モデル)。(画像クレジット:Acura)

Acura(アキュラ)は、現行最後のスーパーカー「NSX」の最終モデルとして、ハイエンドのハイブリッドバージョンを発表した。350台限定生産を予定し、価格はおよそ17万1000ドル(約1900万円)から。

Rimac Nevera

「ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング」に出展された高級EVスーパーカー「Rimac Nevera」(画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg)

Rimacは、244万ドル(約2億7000万円)のEVスーパーカー「Nevera」を米国でデビューさせ、モントレーにその名を刻んだ。Rimacによると、Neveraはフル充電で最大400マイル(約640km)走行可能で、最高速度は時速258マイル(約410km)とのこと。モントレーでのRimacの華やかな存在感は、かつてはビンテージカーの象徴だったペブルビーチで、競争相手を凌駕する新たなEVプレイヤーが求められていることを示している。

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images

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(文:Tamara Warren、翻訳:Dragonfly)

オール電化のアウディ2022年モデル「e-tron GT」と「RS e-tron GT」は未来ではなく今を見据えるグランドツアラー

ラグジュアリー、テクノロジー、そして豪華さは、しばしば密接に結びついている。億万長者が宇宙を旅する時代において、最新の質の高い一流のガジェットは、未来から来たように見えるものではないかと、多くの人が考えているかもしれない。

Audi(アウディ)の観点からはそれは当てはまらない。2022年モデルのAudi e-tron GTとRS e-tron GTは、2060年から来たもののようには見えない、高貴な雰囲気を持つオール電化のグランドツーリングカーだ。見た目は洗練されたガソリン車のようだが、その外観の下には、一見したところのデザインでは想像できないほどのパワー、技術的なポップさ、そして品格が秘められている。

2022年型Audi e-tron GTとRS e-tron GTは、低めのルーフライン、広いトラック、長いホイールベースを備えている。e-tron GTとRS e-tron GTはどちらもAudi R8と並行して生産されており(ルーフラインはR8よりも低い)、その象徴的なデザインからいくつかのものを拝借しているが、これらの電気グランドツアラーは、まったく独自の、1対の馬力のある車種といえる。

基本概要

Porsche(ポルシェ)のTaycanと同じ800ボルトのアーキテクチャーをベースにしたe-tron GTは、前後輪に動力を供給する永久磁石式同期電動機(PMモーター)により、総出力469HP(オーバーブースト時最大522HP)を生み出している。RS e-tron GTは同じモーターで590HP(オーバーブースト時637HP)を出力し、Audiによると3.1秒で時速60マイル(約96km)に達するという。

どちらのクルマも能力に優れ、信頼性が高く、スピードも速く、山道や長い高速道路のような長距離走行でも停滞しない。多くの電気自動車と同じように、加速はほとんどシームレスだ。

トルクベクタリングシステムを搭載したAudiの電動「quattro」によるAWD(全輪駆動)の効果で、両車とも、車輪がきしみ始めても、安定した走行性と適切な配分を実現する。このシステムでは、急なコーナリングや車線変更、滑りやすい状態での走行時に、スリップした車輪に可変量の動力を送ることができる。

筆者が試乗した車には夏用タイヤが装着されていた。そして、ロサンゼルスのダウンタウンから北東50マイル(約80km)にあるアグアダルシーエアパークの閉鎖されたスラロームコースで、急な車線変更のテストを最後に行った。RS e-tron GTを3回連続でコーンを通過させてシステムの感触を確かめ、そのたびにクルマは安全で、しっかりと接地し、制御されていると感じた。

ステアリング、スピード、航続距離

2022年型Audi RS e-tron GT(画像クレジット:Audi)

e-tron GTとRS e-tron GTには、後輪ステアリングもオプションで付いている。時速30マイル(約48km)以下では、後輪は前輪と反対方向に最大2.8度旋回し、e-tron GTとRS e-tron GTの旋回半径を小さくする。時速30マイル以上では後輪は前輪と同じ方向に旋回する。このシステムはPorsche Taycanのシステムに類似している(回転角度が小さい)。

エアパークの平坦な滑走路では両車両のオーバーブーストを試すことはできなかったが、RS e-tron GTの起動制御を使って0-100mph(0-160km/h)の加速を連続して行ったところ、ジャーナリストの集団の中で2番手につけ、0-60を3.24秒、0-100を7.29秒で記録した。39度の暑さの中、コールドタイヤでのこの数字はかなり印象的だ。滑走路の終わりまでに、速度が時速120マイル(時速193マイル)に近づいているのを確認した。これは電子的に制限された最高時速155マイル(約249km)より32マイル(約51km)短い速度だ(e-tron GTの電子的に制限された最高時速は152マイル[約244km])。その後ブレーキを踏んだ。フル充電されたRS e-tron GTは、連続して3回走行した後、20マイル(約32km)の航続距離を失っただけだった。

RS e-tron GTのEPAによる推定航続距離は232マイル(約373km)であるのに対し、e-tron GTの推定航続距離は239マイル(約384km)である。

充電性能

2022年型Audi e-tron GT(画像クレジット:Audi)

これらのEPAの推定航続距離は、低い位置に搭載されたの93kWhバッテリーパック(両車とも同じ)の成果であり、Audiによると270ボルトの充電器(DC急速充電)では23分で最大80%を充電できるという。

価格は、e-tron GTが9万9000ドル(約1088万円)から、RS e-tron GTが13万9900ドル(約1537万円)からとなっている(いずれも1045ドル[約11万円]のdestination charge[輸送費]を除く)。この価格には1回限りの限定特典が付いている。

AudiはElectrify Americaと提携し、3年間無料で無制限の公共充電サービスを提供する(時間制限がない)。Qmeritを利用した家庭用充電ステーションもある。e-tron GTとRS e-tron GTには、標準のデュアル充電ポートと、240ボルト対応の9.6kW充電システムを装備しており、オーナーはあらゆる場所で充電が可能となる。Electrify Americaは、Dieselgateのスキャンダルを受けて、Audiを所有するVolkswagen Group(フォルクスワーゲングループ)が立ち上げた。

充電器を見つけるには「MMI」と呼ばれるインフォテインメントシステムと、センターコンソールに搭載された10.1インチのタッチスクリーンを利用する。ナビゲーションに進み、プラグと充電器のリストが表示されたアイコンをクリックすると、充電器の一覧が表示される。

筆者はワンデイドライブで充電器を探す機会はなかったが、Audiによると、同社のMyAudiアプリ(スマートフォンとデスクトップで利用可能)とMMIの両方を通じて、EA(Electrify America)の充電器とそのステータス、可用性を簡単に確認できるという。ドライバーは好みの充電レベル(レベル1からDC急速充電器)でソートし、Audiの車載インターフェイスを離れることなく充電器にアクセスできるとAudiは述べている。

ドライバーはEAのアプリやMyAudiアプリを使ってスマートフォンで検索を行い、現在利用可能なワイヤレスのCarPlayや、筆者が運転したe-tron GTやRS e-tron GTでは利用できなかったが、プロダクションモデルに搭載されるワイヤレスのAndroid Auto経由で車に道順を送ることができる。中央のアームレストにあるUSB-Cポートを介してスマートフォンに接続することも可能だ。

筆者はオーナーではないため、MyAudiアプリを使うことはできなかったが(プライバシー確保のために車両のVINをアプリに接続する必要がある)、ドライバーはMyAudiアプリでルートを計画することができ、システムが自動的に途中で充電停止を行い、十分なバッテリーを確保して確実に到着するようにするとAudiは説明している。

完全電動式の高級車にシームレスに移行するために、もう少しサポートを受けたいと考えている高級車購入者に向けて、Audiはe-tron GTとRS e-tron GTを含むEV向けのAudi Careをローンチする。参加ディーラーでは、オーナーは追加で999ドル(約11万円)と税金を支払うことで、ワイパーやブレーキパッドなどの消耗品、サービスアポイントメントのための係員の送迎、モバイルサービス(タイヤ交換、基本的なメンテナンス)の提供を受けることができ、オーナーが必要とすれば年に10回までAudiセンターに無料で行ける。Audiはまた、e-tron GTまたはRS e-tronを購入すると、Silvercar by Audiの7日間の無料レンタルも提供する。

バーチャルコックピットはもちろん優れもの

2022年型Audi e-tron GT(画像クレジット:Audi)

e-tron GTとRS e-tron GTは、e-tron (SUV) とAudi R8の両方の機能を融合させたもので、どちらのGTにもデュアルスクリーンが搭載されており、ドライバーと同乗者に多くの機能を提供する。ドライバーの前にある12.3インチのバーチャルコックピットは、現在の大部分の現代的なAudiに見られるように、高度にカスタマイズ可能だ。マップ・ビューからバッテリーステータスへのアクセスまで、ハンドルからのわずかなインプットで提供される。

このシステムはナビゲーションを簡単にする。ドライバーや同乗者はステアリングの操作ボタンを押すだけで目的地を音声で設定でき、クルマに住所や目的地、都市を伝えることができる。

この音声システムは驚くほど堅牢で、筆者が使ったときにはやや遅れ気味だったものの、自然言語のインプットを認識し、特定の言葉を発するよう話者に促す。ルートをキャンセルして目的地の変更を入力する操作を運転しながら行うか、一時停止するかという2つの選択肢にさらされるような時に使える。自分の意図をシステムに認識させるために、何度も試さなければならなかったことは一度もなかった。

センターコンソールに搭載された10.1インチのインフォテインメントシステムは、ドライブモードの選択から特定のAudiアプリ、ナビゲーションオプション、オプションのマッサージ、ヒートおよびクールシートなど、あらゆるものを提供する。

Audi MMIの中央画面はタッチ式静電容量方式で、ユーザーはアイコンをドラッグ&ドロップして自由にホーム画面をカスタマイズできる。同乗者が望む場合(そして適切な機器を持っていれば)、シートヒーター、クーラー、マッサージをすべてMMIから同時に実行することも可能だ。

豪華さはそれほど必要ない?

2022年型Audi e-tron GT(画像クレジット:Audi)

どちらのGTも10万ドル(約1100万円)程度を提示しており、そのためにもう少し華やかなものを求める買い手もいるかもしれない。

発売年は、高価だが特別なオプションとしてRS e-tron GTのワンイヤーパッケージを提供する。2万350ドル(約224万円)の「カーボンパフォーマンス」パッケージには、カーボンファイバー製のトリム、照明付きドアシル、黒のバッジ、後輪のステアリングの他、21インチの特殊ホイール、赤のセラミックブレーキキャリパー、赤のシートベルト、内側の赤のステッチなどが含まれている。

高級ブランドとしての名声、パワー、そして先進テクノロジーを手に入れたい方に、豪勢なものは一切搭載していない(必ずしも必要ではない)が、高貴な雰囲気を持つ電化されたグランドツアラーとして、2022 Audi e-tron GTとAudi RS e-tron GTは最適といえよう。どちらも現在販売中である。

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タグ:AudiEVレビュー

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

EUがBMWとVWに約1110億円の制裁金、90年代からの排ガスカルテルで

環境問題が本格化した1990年代、ドイツの一部の自動車メーカーは、自社の自動車が温室効果ガス排出の点で確実に貢献し続けられるよう、秘密裏に会合を持っていた。欧州連合(EU)によると、Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)、Audi(アウディ)、Porsche(ポルシェ)、BMW(ビー・エム・ダブリュー)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)の親会社であるDaimler(ダイムラー)の5社が、違法に結託し、新型ディーゼル乗用車の排ガス浄化に関する競争を制限し、よりクリーンな排ガス技術の導入を実質的に遅らせていた。EUは現地時間7月8日、排出ガスカルテルに関与したVWとBMWに対し、10億ドル(約1110億円)の制裁金を科した

「Daimler、BMW、VW、Audi、Porscheの自動車メーカー5社は、EUの排出ガス規制が法的に要求する水準以上の有害排出ガスの削減技術を有していました」と、欧州委員会のMargrethe Vestager(マルグレーテ・べステアー)上級副委員長は声明で述べた。「しかし、彼らは、この技術の可能性を最大限に活用せず、法が要求する水準を超えてクリーンであろうと競うことを避けました。つまり、本日の決定は、合法に行われた技術協力というものが、いかに間違っていたかということに関係しています。私たちは、企業が結託することを容認しません。これはEUの反トラスト規則で違法とされています。欧州が野心的なグリーンディール目標を達成するためには、自動車の汚染管理に関する競争とイノベーションが不可欠です。今回の決定は、この目標を危うくするあらゆる形態のカルテル行為に対して、私たちが躊躇なく行動を起こすことを示しています」と述べた。

すべての当事者が自社の関与を認め、和解に合意した。AudiとPorscheを所有するVWは約5億9500万ドル(約655億円)、BMWは4億4200万ドル(約484億円)を支払わなければならない。Daimlerは約8億6100万ドル(約947億円)を支払うが、同社は内部告発者であるため、罰金を免れた。つまり、Daimlerは無罪放免となる。

BMWの2020年の純利益は46億2000万ドル(約5080億円)、VWの2019年の純利益は約230億ドル(2兆5300億円)、2020年は約122億ドル(1兆3420億円)であり、今回の罰金はある意味、手首を平手打ちされる程度にすぎない。忘れてはならないのは、VWが排ガススキャンダルに巻き込まれたのは今回が初めてではないということだ。

米環境保護庁は2015年、VWがディーゼルエンジンにソフトウェアを意図的に追加して排ガス規制に従っているように見せかけていたが実際には法定量をはるかに超える排ガスを出していたとして、VWに大気浄化法違反の通告を行った。

今回の訴訟でEUが特に注目したのは、ディーゼル車の排気ガスに混ぜて有害汚染物質を中和する溶液「AdBlue(アドブルー)」のタンクの大きさについて、関係企業が合意したことだ。自動車をよりクリーンにする技術を持っているにもかかわらず、競争しないことで合意したのだ。

シュピーゲルがこのカルテルのニュースを最初に報じたのは2017年。各社はグリーンウォッシング(偽善的な環境への配慮)に着手した。同年、関係者全員とFord Motor(フォード・モーター)が手を組み「Ionity(イオニティ)」というEV用の高出力充電ネットワークを構築した。計画では、2020年までに欧州全域で約400カ所の充電ステーションを建設・運営することになっていたが、イオニティは欧州全域で300カ所しか設置できず、さらに2020年は充電料金を500%と大幅に値上げしていたようだ。

今週初めには、VWの大型トラック事業、Traton Group(トレイトン・グループ)、Daimler Truck(ダイムラートラック)、Volvo(ボルボ)グループが、約5億9300万ドル(約652億円)を投資し、欧州各地に電動大型長距離トラック・バス用の公共充電ステーションのネットワークを構築に向け協業することが決まった。

関連記事:ボルボ、ダイムラー、トレイトンが約660億円を投じて全欧的な電気トラックの充電ネットワーク構築

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画像クレジット:European Union

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

北米フォルクスワーゲンの販売業者から330万人分の個人データ流出

Volkswagen(フォルクスワーゲン)によると、北米のある販売業者が顧客データのキャッシュをインターネット上に保護されていない状態のまま放置していたことで、330万人以上の顧客の情報が流出したという。

同社の北米事業本部であるVolkswagen Group of America(フォルクスワーゲン・グループ・オブ・アメリカ)は書簡の中で、フォルクスワーゲンおよびその傘下のAudi(アウディ)の米国とカナダの正規ディーラーが提携している販売業者が、2014年から2019年の間に収集された顧客データを、2019年8月から2021年5月までの2年間にわたり、保護されていない状態のまま放置していたと述べている。

販売やマーケティングのために収集されたというこれらのデータには、氏名、郵便番号、メールアドレス、電話番号など、顧客や購入希望者の個人情報が含まれていた。

さらに約9万人のアウディの顧客および購入希望者においては、ローンやリースの審査に関する情報など、よりセンシティブなデータも流出したという。フォルクスワーゲンの書簡によると、流出した詳細な個人データのほとんどは運転免許証番号などだが「少数の」データには生年月日や社会保障番号も含まれていたとのこと。

フォルクスワーゲンは、データを漏えいさせた販売業者の名前を明らかにしていない。同社の広報担当者は「法執行機関や規制当局を含む適切な当局に通知し、外部のサイバーセキュリティ専門家と当該販売業者とともに状況の判断と対応にあたっています」と、危機管理会社を通して述べている。

運転免許証番号に関するセキュリティ事件は、他にもこの数カ月の間に何度か起きている。保険大手のMetromile(メトロマイル)とGeico(ガイコ)は2021年前半に、運転免許証番号を入手しようとする詐欺行為に見積もりフォームが悪用されたことを認めた。他のいくつかの自動車保険会社も、運転免許証番号の盗難に関わる同様の事件を報告している。これらの犯罪者は他人の名前で不正な失業手当を申請し、現金を得ようとしたのではないかと、Geicoは述べている。

だが、フォルクスワーゲンの書簡には、流出したデータが悪用されたという証拠があるかどうかについては書かれていなかった。

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アウディの全電動クロスオーバーQ4 e-tronはダイナミックARディスプレイを搭載

広くなったコックピットと収容スペースにアップグレードされたカップホルダーとともに、Audi(アウディ)は近日発売の全電動コンパクトクロスオーバー車「Q4 e-tron」に高度な新技術を導入する。そこにはドライバーの実際の視野に正確に反映される反応の速い拡張現実ヘッドアップディスプレイ(HUD)がある。

米国時間3月9日、Audiは同社ラインアップで5番目の電気自動車であるQ4 e-tronのインテリアを公開した。この車は2025年までにEVとプラグインハイブリッドを30車種以上発売するというドイツ自動車メーカーの計画の一部でもある。Q4 e-tronはかなり前から予定されていたモデルでコンセプトが最初に発表されたのは2019年のジュネーブ国際モーターショーだった。

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Q4の生産モデルの外観はまだ隠されているが、サイズはわかっている。大きめのコンパクトSUVに分類される電気自動車で、短いオーバーハングと2.77メートルのホイールベースという組み合わせは少々たくましいルックスであるように感じるが、これによりインテリアは長さ1.8メートルと大型フルサイズクラスSUV並みのスペースを確保している。

基本的な構造は、親会社であるVW(フォルクスワーゲン)のモジュラー電動駆動ツールキットシャシー(MEBプラットフォーム)に基づいている。この柔軟なモジュラーシステムをVWが最初に導入したのは2016年で、さまざまなEVを効率的にコスト効率よく生産するために開発された。さらに、フラットな床のおかげでデザイナーが扱える空間が広くなっている。そのスペースを生かしたデザインによって、センターコンソールにはカップホルダーが2つ、4.4リットルのカバー付き収納コンパートメント、USB-Cソケット2基(オプションで4基)および好みでAudiフォーンボックス(携帯電話をワイヤレス充電し信号を強化する)が配置される。

画像クレジット:Audi

ここでの主役はテクノロジー、中でも最も注目されるのがオプションのAR内蔵フロントガラスだ。このARフロントガラスは、通常のフロントガラスHUDよりも広い視野と正確でダイナミックなアニメーションを実現している。Q4 e-tronは重要な情報を2つのセクションに分けて表示する。1つがステータス、もう1つがARだ。前者はドライバーの約3メートル前方に現れて、速度、道路標識、運転支援システム、およびナビゲーションシンボルを常時表示する。

ARセクションでは、ドライバーには10メートル先に浮かんだシンボルが見える。そこでは車線逸脱警告機能が実際の車線境界線に赤い線を重ねて表示したり、適応クルーズコントロール使用時に前方を走行中のクルマに色つきのストライプを表示したりする。

「ヘッドアップディスプレイは決して新しいものではありません」とAudiはいう。「これは視界を奥に広げることによって、さらに積極的な活用を可能にしただけです」。

ARはナビ情報も表示する。Audiは方向を示す矢印を「drones(ドローン)」と呼んでいるが、おそらく直進している時に矢印が前方に現れては消え、次の行動位置に近づくと再び現れるからだろう。交差点に近づくと、ドローンが方向変更を声で伝え、その後ドライバーを正確な方向へと導く。

画像クレジット:Audi

ソフトウェア面では、Q4 e-tronのAR Creatorと呼ばれる処理ユニットが車の前面カメラ、レーダーセンサー、およびGPSナビゲーションから生データを受け取り、毎秒60フレームでディスプレイシンボルをレンダリングして周囲の環境に適応させて表示する。この、Audiが「picture generation unit(PGU、画像生成ユニット)」(基本的にたくさんの鏡の集まり)と呼ぶ装置の中の特殊なスモークと鏡を経由して表示される映像の品質は、当然ながら現実世界でどれだけこれがうまく働くかを決める重要な要素だ。現在はシミュレーションでしか確認することができないため、Audiがどこまでうまくやっているのかはわからない。広いフレームとダイナミックなシンボルは「現実世界と同じ明瞭さ」で表示されなくてはならない。さもなければドライバーの妨害になり、もし奥行きを正確に表せなければ、ドライバーに不快感を与えることにもなる。

Q4 e-tronは自然言語音声制御も改善され「Hey Audi(ヘイ・アウディ)」という呼びかけで起動できるようになる。さらにハンドルから物理ボタンを排除してタッチ式に変更した。ただし、ハプティック(触覚)フィードバックループによって、ボタンを押しているような感覚を得られる。

同社の2020年の販売台数の約3%、4万7000台が電気自動車のe-tron SUVとe-tron Sportbackだった。高級EVを発売すれば間違いなく増えていく数字だ。

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タグ:Audi拡張現実 / AR電気自動車

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アウディが同社初の電動スポーツセダン「e-tron GT」を発表、欧州では約1270万円から

Audi(アウディ)はドイツ時間2月9日、新型電気自動車「e-tron GT quattro(イートロンGTクワトロ)」と、その高性能バージョンである「RS e-tron GT quattro」を発表した。このドイツの自動車メーカーにとって、両車はその拡大を続けている電気自動車ラインアップにおけるフラッグシップであり、初のSUVやクロスオーバーではないモデルだ。

アウディ e-tron GTとRSは、2018年に発表されたSUV「e-tron」と翌年の「e-tron Sportback(イートロン・スポーツバック)」に続く、(米国市場では)3台目と4台目の電気自動車だ。さらに5番目のモデルとして、もう1つのSUV「Q4 e-tron」の導入が予定されている。これらのe-tronモデルはすべて、2025年までに30台以上の電気自動車とプラグインハイブリッド車を発売するというアウディの計画の一環である。

「このクルマは古典的なGTの、新しい、非常に進歩的な解釈です」と、アウディデザインの責任者であるMarc Lichte(マルク・リヒテ)氏は、9日のプレゼンテーションで語った。「それは、スーパースポーツカーのようなプロポーションと、実際に4人が乗れる使い勝手の良さを併せ持つということです。そして、それはまったく新しいものです」。

画像クレジット:Audi

2021年春に量産が始まり、今夏には米国市場に投入されるe-tron GTは、スポーティなパッケージにパフォーマンスとラグジュアリーが詰め込まれている。ベース車のe-tron GTは、前後に1基ずつ搭載された2つのモーターが合計で350kW(476ps)、オーバーブースト時は390kW(530ps)に相当する出力を発生し、93.4kWhのバッテリーで487km(欧州のWLTP基準)の距離を走行できる。

一方、RS e-tron GTはエントリーレベルのGTと同じフロントモーターを装備するが、後輪側にはより強力なモーターが搭載され、それらの組み合わせによって合計最高出力440kW(598ps)、オーバーブースト時は475kW(646ps)を発揮。その結果、RS e-tron GTはゼロから100km/hまで3.3秒で加速し、最高速度は250km/hに達すると同社は述べている。WLTP基準の航続距離は472kmとなる。

この両車は、Porsche Taycan(ポルシェ・タイカン)と同じ800Vの高電圧システムを採用しており、バッテリー残量5%から80%まで22分30秒で充電できるという。これは業界で最も速い充電速度の1つだ。

e-tron GTは、ポルシェと800Vの充電システムを共有しているだけではない。同じVWグループに属するアウディとポルシェは、e-tron GTとタイカンを共同開発した。この2モデルは、シャシーや「J1」と呼ばれるEV専用プラットフォームも共通だ。

画像クレジット:Audi

e-tron GTの車内には、12.3インチの「Audiバーチャルコックピット」と呼ばれるデジタルインストルメントクラスター(メーターパネル)と、10.1インチのタッチスクリーンが標準装備されており、音楽やナビゲーションのほか、充電ステーションの検索といった電気自動車に特化した機能を、これを使って操作できる。オーナーは追加料金を払ってヘッドアップディスプレイを装備することも可能だ。

レザーフリーのインテリアは多くのリサイクル素材が使われており、「Dinamica」と呼ばれる人工スウェードが標準だが、オプションでナッパレザーも選択できる。

すべてのパフォーマンスとラグジュアリーは価格に反映される。2月中に予約受付が始まる欧州での価格は、e-tron GTが9万9800ユーロ(約1270万円)から、RS e-tron GTは13万8200ユーロ(約1750万円)からとなっている。米国ではe-tron GTのベースグレードが9万9900ドル(約1050万円)で、その上級トリム仕様が10万7100ドル(約1120万円)、RS e-tron GTは13万9900ドル(約1460万円)から。オプションを追加していけばこの価格よりさらに高くなるわけだが、ハイビームの照射を自動で配光するマトリクスLEDヘッドライトは、米国仕様では選ぶことができない。

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タグ:AudiVW電気自動車

画像クレジット:Audi eventVW(スクリーンショット)

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)