オックスフォード大学の新型コロナワクチンも効果を確認、安価で管理が容易なタイプ

製薬会社AstraZeneca(アストラゼネカ)と提携して開発しているオックスフォード大学の新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンは、フェーズ3治験の予備結果で70.4%の効果が確認された。この数字には、2種の投与方法で得られたデータを含んでいる。1つのグループには2回分を投与し、効果は62%だった。もう1つのグループには半分の量を投与してから間を空けて1回分を追加投与し、効果は90%だった。

オックスフォード大学の治験結果は、Pfizer (ファイザー)やModerna(モデルナ)のもののように目を惹く高い効果ではないかもしれない。しかし、いくつかの理由で最も有望な要素を含んでいる。まず、2回に分けて投与する手法の効果が今後の結果や分析でも認められれば、オックスフォード大学のワクチンは使う量を抑えつつ、高い効果を得ることができることを意味する(効果がさほどなければフルに2回分の量を使用する理由はない)。

2つめに、オックスフォード大学のワクチンは通常の冷蔵庫の温度(摂氏1.6〜7.2度)で保存・輸送することができる。この点に関し、PfizerとModernaのワクチン候補はかなりの低温で管理される必要がある。通常の冷蔵庫温度での管理が可能なことは、輸送する際やクリニック・病院などで管理する際に特別な設備が必要ないということになる。

オックスフォード大学のワクチンは、mRNAをベースとしたModernaやPfizerのワクチンとは異なるアプローチを取っている。mRNAベースの手法は、ウイルスを体内に入れることなくウイルスをブロックする作用のあるタンパク質を作るための設計図を提供するのにメッセンジャーRNAを使うというもので、人体への使用に関してはどちらかというと未知の技術だ。一方、オックスフォード大学が開発しているワクチン候補は、アデノウイルスワクチンだ。何十年もの間使われてすでに確立された技術であり、遺伝子を操作して通常の風邪のウイルスを弱体化させたものを注入し、人の自然免疫反応を引き起こす。

最後に、オックスフォード大学のワクチンは安い。これは部分的にはすでに試験・テストされたテクノロジーを使うためだ。確立されたサプライチェーンもあり、輸送・保管がしやすいというのも貢献している。

オックスフォード大学のフェーズ3のワクチン治験には2万4000人が参加し、2020年末までに6万人に増える見込みだ。安全性に関するデータではこれでまでのところリスクは特に見られなかった。暫定分析では131人のコロナ感染が認められたが、ワクチンを接種した人で重症化したり入院が必要になったりしたケースはなかった。

これは、はっきりと効果が認められる新型コロナワクチンのサプライチェーンの幅を広げる、有望なワクチンという素晴らしいニュースだ。可能な限り早く多くの人に接種できるという点において、複数の有効なワクチンを持つというだけでなく、複数の異なるタイプの効果的なワクチンを持つ方がはるかにいい。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:オックスフォード大学新型コロナウイルスCOVID-19ワクチン

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(翻訳:Mizoguchi

ファイザーとBioNTechが新型コロナワクチン候補の緊急使用承認を申請

米国時間11月20日、有力な新型コロナウイルスワクチン候補の1つを製造している2つの企業が、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)に予防治療の緊急使用承認(EUA)を申請した。今週初め、国際共同第3相臨床試験データにおいてワクチンが95%の有効性を示したことを明らかにしたPfizer(ファイザー)とBioNTechは、米国だけでなくオーストラリア、カナダ、ヨーロッパ、日本、英国でも緊急承認申請を行っており、2020年12月末までに「高リスク集団」でのワクチン使用を開始するための道を開く可能性があると述べている。

FDAのEUAプログラムは、現在のパンデミックのような軽減事由が満たされている場合、治療薬会社が早期承認を求めることができる。情報のサポートと安全性データの提供が必要とされるが、一般的に新薬や治療法が実際に広く投与できるようになる前に行われる完全な、正式な、より永続的な承認プロセスと比べて、優先的に審査が行われる。

ファイザーとBioNTechのワクチン候補は本質的に、SARS-CoV-19(新型コロナウイルス感染症の原因となるウイルス)が細胞に付着する能力をブロックする特定のタンパク質を産生する方法の指示を、人体に与えるというmRNAベースのワクチンだ。このワクチンは最近、第3相臨床試験が行われており、これまでに4万3661人が参加している。両社は参加者の中から確認された170例のデータ、8000人の参加者から積極的に募集した安全性情報、受動的に収集した3万8000人の補足データなど、FDAにEUAを申請するための裏付けとなる情報を提出している。

このワクチンやその他の後期開発段階にあるワクチンは、世界的に生産の準備が進められており、EUAは第一線で働く医療従事者を含む高リスク者へのアクセスを許可する可能性があるが、広範なワクチン接種プログラムの開始はおそらく来年以降、2021年後半になると思われるということは、記しておく必要があるだろう。

カテゴリー:バイオテック
タグ:PfizerBioNTech新型コロナウイルスCOVID-19ワクチン

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(翻訳:TechCrunch Japan)

空気循環とUV-C光を組み合わせて新型感染リスク低減に役立つ家庭用装置「Nanowave Air」

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の原因となるウイルスが、エアロゾル(長時間空中を漂う可能性のある小さな粒子)を介して運ばれることは知られている。今では世界中の研究者およびエンジニアが、リスクの高い場所での空気循環を促し、空気中にあるかもしれない活性ウイルスを殺すことに注意を向けている。そのような努力の成果の1つがNanowave Air(ナノウェーブ・エア)だ、このデバイスは、ピッツバーグに拠点を置くDynamics(ダイナミクス)によって開発された(NEXT Pittsburg記事)もので、UV-C光を安全に封じ込めた方法で利用して、換気の悪い場所でのウィルスを不活化する。

Nanowave Airは、一般家庭にある空気清浄機と基本的には同じ原理で動作する。ファンを使って空気を取り込み、それを部屋に戻す前にフィルターを通すのだ。一般的なものとの違いは、この製品のフィルターが実際に紫外線、特にUV-C光で照射されているということだ。UV-C光は、新型コロナウイルス感染症を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスを殺すために有効であることが証明されている。

UV-C光は、私たちが普通は日光からかなりの量を受けている一般的なUV-A光とは異なる。また、UV-C光への直接暴露は人間にとって有害だ。これまで室内のウイルスを表面殺菌するために使用されてきたが、殺菌中は部屋を利用することができず、一般的に使用されている部屋は当時は占有できず、使用が終わって人がまた入ってきた後は効果は持続しない。

Nanowave Airは、カーネギーメロン大学のスピンアウトであるDynamicsによって開発された。すでに大規模な産業用途のためにUV-C光源に取り組んでいたDynamicsのCEOが、その技術を新型コロナ危機への対処に適用できるのではと考えたのだ。このことがポータブルなNanowave Airの開発につながった。それはおよそ趣味用の望遠鏡サイズで、内部にUV-Cライトを内蔵している。そしてファンを使って空気を高速に吸い込みあらゆる活性ウィルスを不活化することができる。また動作中でも同じ室内に人間が居続けることもできる。

Nanowave Airは現在、3450ドル(約35万8000円)の小売価格で販売されている。これは、プライマリ・ケア施設、歯科医院、その他の共有スペースでの使用が意図されている。これは現在、ソーシャルディスタンスガイドラインや室内暴露に関するガイドラインがある中で、複数の人間が同じ場所を共有せざるを得ないような場所での使用ということだ。同社は、ピッツバーグ大学ワクチン研究センターを含む米国全土の多くの研究室で、その技術をテストしてきたが、現在は新型コロナ陽性の個人が住む一部の家庭で、まだ病気に罹患していない他の家族への暴露の可能性を減らすために利用されていることを公表した。

今週は、新型コロナウイルス用のワクチン開発に関する、2つの大きな肯定的ニュースを目にした。しかしそれが長期的には上手く働いて、供給も迅速に増えて行くとしても、世界的に新型コロナウイルス感染症を食い止める努力の一環として、ワクチンを受けていない人たちの間での感染を避けるために多くの防御手段を講じる必要がある。空中を浮遊するウイルスを管理することは、もちろん重要な対策であり、Nanowave Airのようなソリューションは、そうした努力の促進に役立つ。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Dynamics新型コロナウイルスCOVID-19

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(翻訳:sako)

ファイザーの新型コロナワクチンの予防効果は95%と判明、緊急使用許可申請へ

製薬会社Pfizer(ファイザー)は新型コロナウイルス感染症ワクチンのフェーズ3臨床試験データに関する最新の分析を明らかにした。それによると、4万4000人が参加した治験を分析した最終結果でワクチンの効果は95%だった。同社が米国時間11月9日に発表した初期データよりも高い有効性だ。初期データではフェーズ3治験データの暫定分析に基づく予防効果は90%と発表していた。

今回の発表は、Moderna(モデルナ)が開発するワクチンのフェーズ3臨床試験の分析に続くもので、Modernaは94.5%の有効性が認められたと発表していた。Pfizerとパートナー企業BioNTech(ビオンテック)のワクチンはmRNAをベースとした手法だ。Modernaのものと似ていて、2つのワクチン候補の効果はほぼ同程度のようだ。対象が限られ、今後科学者によってレビューが行われることになるが、少なくとも今のところはそうだ。

最終分析のPfizerのデータは、治験参加者4万4000人のうち170人で新型コロナ感染が確認されたことを示している。170人のうち162人はプラセボ(偽薬)が投与されたグループで、残る8人のみが実際にワクチン候補を投与された。同社はまた、重症となった10人のうち9人がプラセボグループで、新型コロナ感染を防げない稀なケースでもワクチンが重症化を防ぐのに役立つと考えられる、とも報告した。

今回の発表はPfizerが米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可(EUA)を認められるのに役立つはずだ。EUAが承認されれば、本来のプロセスで最終的な承認が下りる前に緊急手段としてワクチンを供給できる。今週初めに同社は、治験参加者の2カ月分のフォローアップデータをすでに集めたと明らかにした。フォローアップデータは承認に必要なもので、同社は「数日以内」にEUA申請する意向を示していた。同社は年内にワクチン製造を開始し、2021年末までに最大13億回分のワクチンを製造する計画だ。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:PfizerBioNTech新型コロナウイルスワクチン

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(翻訳:Mizoguchi

ソフトバンク孫正義氏「手元キャッシュ8.3兆円、楽観的だが短期的には突発事態も予測」

日本のテクノロジーコングロマリット、SoftBank(ソフトバンク)の創業者で会長、CEO(最高経営責任者)の孫正義氏は、この1、2年大波乱を経験した。しかし今回のDealBookでのインタビュー(The New York Times記事)で孫氏は「自分が復帰してからグループは黒字になった」という点を強く主張した。

米国時間11月17日、バーチャル開催されたDealBookカンファレンスが配信され、孫正義氏は東京から参加してTikTokの今後を含め、幅広い話題について語った。ソフトバンクはTikTokの親会社、ByteDanceの大口投資家であるため当然見通しは楽観的だ。一方、ソフトバンクが投資失敗で数十億ドル(数千億円)を失ったWeWorkの追放された共同ファウンダーであるAdam Newman(アダム・ニューマン)氏については「いつか彼は大成功するだろうと強く信じています」と述べている。一方、孫氏が大規模な資産売却を実行したことにより、ソフトバンクには「手持ちキャッシュが800億ドル(約8兆3200億円)ある」として臨機に大型投資する能力に不安がないことを強調している。

孫氏の発言をリアルタイムで見なかった読者も多いと思うので、ハイライトを紹介したい。孫氏は「楽観的だが短期的には悲観的事態も予測」しているらしい。

新型コロナウイルスパンデミックの影響

孫氏は去る2020年3月、新型コロナウイルス(COVID-19)に対する見解をツイートした後、日本の医療専門家からパニックを引き起こそうとしたと強く批判されたと語った。

その後ソフトバンクは、日本最大級の民間検査施設の運営をスタートした。日本は人口1億2650万人で、現在1日あたり約1300件の新規感染が確認されている(米国は人口3億2800万人に対して、1日あたり16万6000以上の新規感染)。

パンデミックとの戦いで日本がこれまで成功を収めている点について孫氏は「人々は自発的にマスクを着用しています。みんなマスクの重要性を強く意識している」と述べ市民を称賛した。しかしワクチンの大量生産と接種が実現には、時間がかかる。孫氏は「この2、3カ月であらゆる災害」が発生し得ると警告した。「大手企業が突然破綻してドミノ現象を引き起こす」可能性があるという。つまり2008年にリーマン・ブラザーズが突如倒産し、金融業界全体に激震が走ったのと似たような事態だ。

孫氏は「現在のような状況ではどんなことが起きるかわからない。ワクチン開発が進んでいるというのは良いニュースですが、まだ最悪のシナリオに備える必要があると考えています。いま私たちの手元には800億ドルのキャッシュがあります。この種の危機では万一の場合に備えたキャッシュの用意が非常に重要になると思います」と述べた。

巨額キャッシュの使いみち

インタビューを行ったAndrew Ross Sorkin(アンドルー・ロス・ソーキン)氏は、孫氏はElliott Managementについては特に言及しなかったと述べた。このヘッジファンドはソフトバンクグループの第2の大株主であり、同ファンドが孫氏に大規模な資産売却と株価テコ入れのための自社株買いを行うよう圧力をかけたと報道されている

孫氏は、低迷したソフトバンク株を買い戻したのは自分で決めたことだと述べた。3月に株価が暴落したとき同氏は「時価総額が70%、いや75%も下がった。あ、これは最高のタイミングだと思って買い戻しを決断した」という。つまり以前の4分の1の価格で自社株を購入できたわけだ。「これは絶対に買いだ」と思ったという。

資産売却で得たキャッシュの使いみちについて、孫氏は「パンデミックのために業績が悪化している既存のポートフォリオ企業に資金を供給するためなのか、それとも株価が暴落した他の企業の株を割安に買えると期待したのか」という質問にも答えた。

当然のことながら孫氏は資金の使いみちとしてポートフォリ企業を挙げ、「こうしたトップ企業にすかさず投資することにはとても積極的です」と述べた。こうした追加資金によってユニコーンの株価は大きく改善したという。

WeWorkへの投資失敗の教訓

ソーキン氏はユニコーンでは、WeWorkの件について触れた。WeWorkは、ソフトバンクが少なくとも185億ドル(約1兆9240億円円)を投資したことで有名だが、孫氏は同社の事業不振で数十億ドルの損失を被った(The Japan Times記事)ことを認めた。

ソーキン氏は、WeWork事件からソフトバンクはどういう教訓を得たのかと尋ねた。孫氏はインタビューの後半で「間違った決定をしたと認めることが、失敗から教訓を得る方法です」と述べたものの、WeWorkに関しては必ずしもソフトバンク側の失敗だとは考えていないらしく、共同ファウンダーで1年前に会社を追われた元CEO、アダム・ニューマン氏に問題があったことを示唆した。

「これは、アダム・ニューマン氏が自分の間違いから教訓を汲み取っているところだと思います。ニューマン氏は非常に優秀な人間なので、いくつかの判断ミスをしたことを認めていると思います。彼は頭が良くアグレッシブで、多くの才能を持ち、自分のビジョンを売り込む高い能力がある。リーダーとして素晴らしいタイプだと思います。しかしニューマン氏がいくつかの間違いを犯したことも確かです。間違いを犯さない人間はいません」と孫氏は述べた。

「私(孫)にも間違った意思決定の責任の一部があります。いまでもニューマン氏が好きですし、尊敬しています。ニューマン氏はやがて復活して、素晴らしいことをしれくれるはずだと確信しています。いつか大成功を収めるでしょう。WeWork時代のあれこれから多くの教訓を学んだと思います」と孫氏は付け加えた。

米国政府とTikTokの米国事業

TikTok事業の成否にも孫氏は重大な関係がある。TikTokの親会社であるBytedanceの30億ドル(約3120億円)の資金調達ラウンドをリードしたのは約2年前だった。当時780億ドル(約8兆1100億円)の価値があったが、最近の報道によれば、未公開企業でありながら1800億ドルと(約18兆7200億円)いう途方もない会社評価額で新ラウンド(Reuters記事)を実施中だという(このアグレッシブさは極めてソフトバンク的スタイルの投資だ。ソフトバンクが次のラウンドを以前の評価額の2倍以上でリードできるかどうかは興味あるところ)。

この秋、TikTokの米国事業を売却するようBytedanceに強い圧力がかかりOracle、Walmartが共同で値付けした点についても触れ、「大勢が楽しんでいるサービスが、ありもしないことに対する懸念から政治的に中断されるなら残念なこと」と述べた。

実際、孫氏は親会社Bytedanceのトップと話し合った結果として、「TikTokは米国であれインド、日本、ヨーロッパであれ事業を展開している国々の国家安全保障やユーザーのプライバシーを損なう意図はまったくありません」と保証した。またTikTokに対する疑念が続く地域には、「国内にサーバーを設置するなど国家安全保障の保護について安心できるような解決策はあります。技術的な解決策は常にあるのです」と述べた。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:孫正義ソフトバンクWeWorkTikTokByteDanceCOVID-19新型コロナウイルス

画像クレジット:Alessandro Di Ciommo/NurPhoto / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Googleが感染症の数理モデルとAIを組み合わせた都道府県別の新型コロナ感染予測を公開、慶応大監修

Googleが都道府県別の新型コロナ感染予測(日本版)を公開、慶應義塾大学監修

Google(グーグル)は11月17日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染予測(日本版)を公開した。感染症の数理モデルとAIを組み合わせることで、対象期間である将来28日間に予測される死亡者数、感染確認者数、入院・療養等患者数などを都道府県別に表示する。全国の予測値は都道府県の予測値を足し合わせている。

これらの情報はダッシュボードで閲覧できるほか、Google Cloudのデータ分析用ツールBigQueryや、CSVファイルとして利用可能。利用の際はユーザーガイドを必ず参照するよう呼びかけており、予測データをダウンロードまたは使用するには、Googleの利用規約に同意する必要がある。

日本版モデルの開発にあたっては、使用データの包括性、予測結果と国内感染状況との整合性、さらに、モデルの設計および予測データの検証において慶應義塾大学 医療政策・管理学教室 教授 宮田裕章氏および研究室が監修した。

またこのモデルは、医療機関や公的機関をはじめとするCOVID-19の影響を受ける組織が、今後に向けてより適切な対処を検討・準備する上で参考情報のひとつとして利用されることを目的に公開している。例えば感染者数の予測値をデータポイントのひとつとして参照することで、医療機関における医療資材やスタッフ、スケジュールなどのリソースプラニングや、検査実施計画の立案、感染拡大の兆候が見られる地域の早期発見などに活用できるという。

Google Cloudは2020年8月、Harvard Global Health Institute(ハーバード グローバル ヘルス研究所)と協力し、予測モデル(COVID-19 Public Forecasts )を米国で公開。同サービスは予測開始日から将来 14日間における米国内のCOVID-19陽性者数や死亡者数などの予測を提供するもので、日本のデータでトレーニングし十分な精度検証ができたことから、今回日本版の提供を開始したという。日本での提供は米国についで2ヵ国目となる(現在、米国と日本で提供中)。

米国で提供しているCOVID-19 Public Forecastsは、AIと膨大な疫学的データを組み合わせ、さらに、時系列の予測を扱う斬新な機械学習のアプローチを採用することで実現。米国向け初期モデルは今年8月に初公開され、現在も無償で予測情報を提供している。この情報はジョンズ ホプキンス大学、Descartes Lab、米国国勢調査局などの一般公開データを基にしており、Harvard Global Health Instituteの監修のもとで更新を続けている。

今回の日本版では、新たに95%予測区間やデータセットの追加に加え、予測対象期間を拡張した他、モデルの強化による予測精度の改善を行った。

米国版モデルを日本に対応させるにあたって行った調整

まず、感染の態様や広がり方(ダイナミクス)の基本条件は、米国版モデルでも日本版モデルでも同じ(例えば、感染は離れた場所よりも近隣の地域で広がりやすい)といった前提のもとに開発。その上で、日本版モデルでは、日本のデータセットのみを利用してトレーニングを行っており、使用したデータには厚生労働省が発表している新型コロナウイルス感染症陽性者数および死亡者数などのオープンデータ、Googleが特定の場所(食料品店、公園など)を訪れた人の数の変化を地域別にまとめた「コミュニティ モビリティ レポート」、平成27年国勢調査結果などが含まれている。

これら陽性者数や入院・療養等患者数、死亡者数、また人々の移動状況について国内のデータを使用しているため、予測結果には国内の感染状況やそれに対する人々の反応、さらに生活環境といった日本独自の状況が反映されているとしている。

予測モデルの精度検証では、特定の日付までのデータでトレーニングを行った後、その先28日間の予測データを出力させ、実測値と予測値を比較した。例えば10月1日までのデータでトレーニングを行った場合は、10月2日から30日までの予測値を出力させ、そのデータを同期間の実測値と比較している。検証の結果、一般的な疫学的コンパートメント モデルや検証用の米国データで十分な精度を示した簡易版モデルと比較して、この予測モデルの精度が優れていることを確認した。さらに28日間の予測以外の各種指標についても米国向けモデルと変わらない精度であることを確認した。

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カテゴリー: 人工知能・AI
タグ: オープンデータGoogle / グーグル(企業)慶應義塾大学(組織)COVID-19(用語)新型コロナウイルス(用語)日本(国・地域)

Modernaの新型コロナワクチン、治験で94.5%の有効性確認

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの有効性についてのPfizer(ファイザー)の発表に続き、Moderna(モデルナ)も米国11月16日にフェーズ3治験で得られた良好な結果を明らかにした。同社はワクチン候補が初期暫定データ分析で94.5%の有効性を示した(Modenaリリース)としている。治験参加者95人の新型コロナ感染が認められ、うち90人は偽薬を投与されていて5人のみが同社のmRNAベースのワクチンを接種していた。そして重症になったのは11人で、ここにはワクチン候補を投与された人は含まれなかった。

今回の発表も、2021年のどこかでまとまった量のワクチンを実用化できる可能性があるという有望なものとなった。上記の通り、今回の発表は暫定分析結果ではあるが、米国立衛生研究所が指名した治験を監督する安全委員会によるデータだ。同研究所はModernaとは関連のない独立した機関であるため、最終的な分析に期待をかけられる信頼できる結果だ。

Modernaは今後数週間内に判明する結果を元に、ワクチン候補の緊急使用許可を申請すると話している。最終的な承認の前に緊急状況で使用できるよう、米食品医薬品局(FDA)からの使用許可取得を目指す。緊急使用許可は、フェーズ3の治験参加者グループ(計3万人が参加)で感染者151人が確認されたデータと、感染後平均2カ月のフォローアップのデータに基づいて下りる見込みだ。

最終的な全データは独立したレビューのために専門団体に提出されることになる。これは最終ワクチン治験と承認のプロセスでは標準的なものだ。

Modernaのもの、そしてPfizerBioNTechとの提携で開発したものはともにmRNAベースのワクチンだ。このタイプは人に使用するのは初めてで、接種を受けた人の細胞に免疫反応を起こすよう指示するメッセンジャーRNAを活用しているという点で従来のワクチンとは異なる。従来のワクチンでは、抗体を作り出すためにかなり少量のウイルスを使って免疫反応を起こすが、mRNAベースのワクチンでは実際に人体をウイルスにさらすことはない。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:Moderna新型コロナウイルスワクチン

画像クレジット:David L. Ryan/The Boston Globe / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Modernaの新型コロナワクチン、治験で94.5%の有効性確認

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの有効性についてのPfizer(ファイザー)の発表に続き、Moderna(モデルナ)も米国11月16日にフェーズ3治験で得られた良好な結果を明らかにした。同社はワクチン候補が初期暫定データ分析で94.5%の有効性を示した(Modenaリリース)としている。治験参加者95人の新型コロナ感染が認められ、うち90人は偽薬を投与されていて5人のみが同社のmRNAベースのワクチンを接種していた。そして重症になったのは11人で、ここにはワクチン候補を投与された人は含まれなかった。

今回の発表も、2021年のどこかでまとまった量のワクチンを実用化できる可能性があるという有望なものとなった。上記の通り、今回の発表は暫定分析結果ではあるが、米国立衛生研究所が指名した治験を監督する安全委員会によるデータだ。同研究所はModernaとは関連のない独立した機関であるため、最終的な分析に期待をかけられる信頼できる結果だ。

Modernaは今後数週間内に判明する結果を元に、ワクチン候補の緊急使用許可を申請すると話している。最終的な承認の前に緊急状況で使用できるよう、米食品医薬品局(FDA)からの使用許可取得を目指す。緊急使用許可は、フェーズ3の治験参加者グループ(計3万人が参加)で感染者151人が確認されたデータと、感染後平均2カ月のフォローアップのデータに基づいて下りる見込みだ。

最終的な全データは独立したレビューのために専門団体に提出されることになる。これは最終ワクチン治験と承認のプロセスでは標準的なものだ。

Modernaのもの、そしてPfizerBioNTechとの提携で開発したものはともにmRNAベースのワクチンだ。このタイプは人に使用するのは初めてで、接種を受けた人の細胞に免疫反応を起こすよう指示するメッセンジャーRNAを活用しているという点で従来のワクチンとは異なる。従来のワクチンでは、抗体を作り出すためにかなり少量のウイルスを使って免疫反応を起こすが、mRNAベースのワクチンでは実際に人体をウイルスにさらすことはない。

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タグ:Moderna新型コロナウイルスワクチン

画像クレジット:David L. Ryan/The Boston Globe / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

ニュースアプリNewsDigestが居住地域の新型コロナ新規感染者数・事例を確認できる「第三波アラート」提供

ニュースアプリNewsDigestが居住地域の新型コロナ新規感染者数を確認できる「第三波アラート」提供

報道ベンチャーのJX通信社は11月12日、同社速報ニュースアプリ「NewsDigest」上において、「新型コロナ感染事例マップ」を強化し、ユーザー居住地域の新規感染者数・感染事例をプッシュ通知で確認できる「第三波アラート」の提供を開始した。

同機能は、NewsDigestアプリAndroid版iOS版)内下部の「コロナ・防災」タブにおいて、無料で利用可能。「新型コロナ感染事例マップ」ならびに「第三波アラート」で利用できる機能は下記の通り。

  • 居住地や勤務先の地域を、都道府県ならびに市町村で登録
  • 新型コロナ感染事例マップでは、登録した都道府県の、直近1週間の感染者の増加数、人口10万人あたり新規感染者数などをリアルタイムに確認可能
  • 登録した都道府県における当日の最新の感染者数や、クラスター発生などの速報をプッシュ通知で受け取れる(第三波アラート)

ニュース速報アプリNewsDigestでは、2020年4月より「新型コロナウイルス感染事例マップ」を提供。自治体や企業による正式な発表情報(一次情報)を基に、感染事例・消毒の状況などをめぐる最新・正確な情報提供を目指している。

提供意図

  • 一般市民が自ら感染リスクを確認できる手段の提供
  • 感染事例をめぐるデマ・風評被害の防止
  • 個人情報を送信せずに接触リスクを確認できるアプリの提

NewsDigest新型コロナ感染事例マップでできること

  • 約1万超の箇所・のべ2万5000人超(11月12日時点)の感染事例に関連する場所の情報をピンポイントに網羅
  • 消毒されている場合は、その旨も明記
  • 情報の日付をもとに、その前後にユーザー自身がその場所に立ち寄っていないかを自らチェック可能
  • GPS位置情報で、ユーザーが今いる場所の近隣の感染事例を確認可能。ユーザーの移動履歴などが保存されない、プライバシーに配慮した仕組み
  • GPSによる位置情報機能は、NewsDigestのアプリ上で位置情報の使用を許可しているユーザーのみ利用可能。アプリがユーザーの許可なく位置情報を取得・使用することはない

JX通信社は、報道分野に特化したテックベンチャー。
国内の大半の報道機関のほか官公庁、インフラ企業などにSNS発の緊急情報を配信する「FASTALERT」(ファストアラート)、一般消費者向けの速報ニュースアプリ「NewsDigest」、自動電話情勢調査などのサービスを提供している。

新型コロナウイルス感染症をめぐっては、国内でいち早く2月16日より、国内感染状況の統計をまとめた「新型コロナウイルス感染状況マップ」を公開。累計1000万人以上のユーザーが利用しているという。また、LINE、Yahoo!、SmartNewsといった国内主要プラットフォーム各社にも最新の新型コロナウイルス関連統計データの提供を行っている。

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カテゴリー: ソフトウェア
タグ: COVID-19(用語)JX通信社新型コロナウイルス(用語)日本

ファイザーの新型コロナワクチンの効果は90%、年末までに大規模な接種開始か

Pfizer(ファイザー)とBioNTech(ビオンテック)は米国時間11月9日、開発中の新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンについて、フェーズ3治験の参加者で90%の予防効果があったと発表した(BioNTechリリース)。これは治験の結果をチェックするための外部独立委員会が分析したデータに基づいており、最終的な検証結果ではなく治験の初期結果を反映したものだ。しかしワクチンの実用化に向けた大きなニュースだ。

PfizerとBioNTechのワクチン候補はmRNAベースのもので、開発のスピードと潜在的有効性において優れていることから、多くの企業が新型コロナワクチン開発で比較的新しい技術だ。今回の結果は、新型コロナ陽性が確認された治験参加者94人のデータに基づいており、これは企業とFDA(米食品医薬品局)が合意している、正式な科学的評価のための陽性者62人という最低しきい値をクリアしている。

フェーズ3の治験は4万3358人を対象に行われた。Pfizerは感染予防率に加えて「安全に関する深刻な懸念は確認されていない」としている。初期データに基づくと、ワクチン接種を受けた人は最初の接種から28日後に抗体が確認された。このワクチンは2回接種する。

今後さらなる安全テストがあり、また研究も続けられるが、2カ月分の安全データ(FDAが緊急使用許可のために求めているもの)を11月第3週に提出できると両社は見込んでいる。治験参加者はまた、長期的な効果を監視するため、2回目のワクチン接種後2年間モニターされる。Pfizerは年末までに接種5000万回分、2021年に13億回分のワクチンが製造できると考えている。

今回の治験のフルデータは他の研究者や科学誌のレビューを受ける必要があるが、これは明らかに新型コロナワクチン開発においてこれまでで最も有望で良いニュースだ。すべてが順調にいけば、ワクチンの大規模な接種が2020年末までに始まることになるかもしれない。

カテゴリー:バイオテック
タグ:PfizerBioNTech新型コロナウイルスワクチン

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(翻訳:Mizoguchi

Juganuが新型コロナウイルスを不活性化する紫外線照射システムを市販

ベンチャーキャピタルが出資するイスラエルのスタートアップJuganuは新型コロナウイルスの除菌に効果のある特定波長の紫外線を用いた照明システムを市販について発表した。同社によれば、新しいテクノロジーは物体の表面を除菌するだけでなく建物内の空間の感染物質を不活性化させ、新型コロナによるパンデミックの拡大防止に効果が期待できる。

同社のJ.Protectはイスラエルのバルリアン大学医学部のMeital Gal-Tanamy(マイテル・ガルタナミ)博士の臨床的研究によって効果があることが示されているという。ただしガルタナミ博士の研究は主としてC型肝炎ウイルスに対するもので、このウイルスは新型コロナのように空気中に浮遊する微粒子を通じて感染するものではない。

Juganuによれば、このプロダクトは米国の48州でEPA(環境保護局)に登録されており、Comcast、 Qualcomm、NCR Corp.の各社がこの環境除菌システムを全米で販売する。

この照明システムはA波長、C波長の2種類の紫外線を用いて物質表面の病原体を破壊し、あるいは不活性化して感染力を失わせるという。

人間が空間内にいる場合システムは8時間の照射でウイルスを不活性化するUV-A紫外線を用いる。空間内に人間が存在しない場合、強力な殺菌力があるUV-Cを照射する。UV-Cは1時間以内にウイルスを不活性化するが人体に危険を及ぼす可能性がある。

Jaganuでは物質表面の除菌に対しては実験を行なっているが空間除菌に関してはまだ実施していない。新型コロナウイルスの感染の主な経路は空間に浮遊するエアロゾル中の微粒子に含まれるウイルスだ。

JuganuのCEOであるEran Ben-Shmuel(エラン・ベンシュムエル)氏はインタビューに対し「この製品はFDA(食品医薬品局)の新型コロナウイルスに関する特例およびEPAから48州での販売をを認められています」と答えている。

ベンシュムエル氏は「Jaganuの紫外線照射テクノロジーはすでにイスラエルとインドで予約販売されています。また現在、米国でシステム設置の準備を進めています」と述べた。

JuganuはこれまでにComcast Ventures、Viola Growth、Amdocs、OurCrowdから総額で5300万ドル(約55億5000万円)のベンチャー資金の調達に成功している。プロダクトはイスラエル、ブラジル、メキシコ、米国をはじめとして世界の自治体や企業に販売されている。

パンデミックによって経済活動が強い打撃を受けた地域ではJaganuの紫外線照射システムのような企業活動の再開を助ける分野が極めて有望なビジネスとなっている。

ベンシュムエル氏は声明で「スマート紫外線システムは物理的環境の安全性を高めるシステムとして最大の機会をもたらす分野です。紫外線システムによって、有害な病原体を不活性化して安全をもたらすだけでなく、日の出から日没までの紫外線をシミュレーションすることによって人々の健康を増進させることも目標としています」と述べた。

【Japan編集部追記】「人体に安全な短波長紫外線によって新型コロナウイルスを不活性化できることを確認した」という研究が広島大学から発表されている。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Juganu新型コロナウイルス

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(翻訳滑川海彦@Facebook

Facebookの第3四半期はパンデミックの追い風で広告収入アップ、ただし北米のユーザー数は微減

Facebook(フェイスブック)は米国時間10月30日、第3四半期の決算を発表した。今期の収入は215億ドル(約2兆2500億円)、収入は8億ドル(約837億円)一株当たり利益は2.71ドル(約283.62円)だった。

アナリストの予測は収入が198億2000万ドル(約2兆700万円)、1株当たり利益が1.91ドル(約199.89円)とずっと低いものだった。またフェイスブックは2020年9月の1日あたりアクティブユーザー数が18億2000万人と発表した。これは対前年同期比12%のアップだ。月間アクティブユーザー数は27億4000万人でこれも前年比12%アップしている。いずれも市場の予測を上回る数値(CNBC記事)だった 。

注目すべき点として、フェイスブックのユーザー数が今年、2020年に急増したことが挙げられる。対前年比で32%のアップとなった時期があった。これは22%の収入アップを上回るペースだった。同社の支出アップは28%でいつもどおり収入のアップを上回っている。

四半期決算の発表はフェイスブックの株価にはほとんど影響を与えなかった。本稿の執筆時点で株価は0.4%程度のアップに止まっている。

同社は2020年第4四半期や2021年の業績見通しについて具体的な数字を明らかにしなかったが、「2020年の第4四半期の広告収入は、第3四半期を上回るだろう」と述べている。また広告以外の収入についても新しいVRヘッドセットであるOculus Quest 2の販売が好調であるため貢献が期待できるとしている。

フェイスブックは2021年について「不確定な要素が極めて多い」ことを認めた。これはヨーロッパにおけるデータ保護や域外とのデータのやりとりに関する規制の強化(未訳記事)がフェイスブックに大きな問題を提起する可能性を認めたものだ。同社はこうした動きを「注意深く観察する」としている。

アナリストの2020年第4四半期の業績予測は、収入が242億5000万ドル(約2兆5400億円)、1株当たり利益が2.67ドル(約279.43円)だ。2021年通年に関しては収入が1000億ドル(約10兆4700億円)一株当たり利益が10.26ドル(約1073.76円)などとと予測している。

広告業界は、Snapの広告収入が大きくアップしたことでフェイスブックについてもこうした数字を予期していた。フェイスブックは「パンデミックにより商品購入が対面方式から通販に大きくシフトしたため、企業のオンラインへの広告支出が増加した」と分析している。しかしTwitter(ツイッター)の広告収入は対前年比で8%増加しただけだった。広告収入の動きは、企業によってばらつきが大きいことが改めて確認された。

ともあれフェイスブックにとってはパンデミックが思わぬ追い風となった。全体として同社の2020年の業績は満足すべきものだったようだ。

しかしフェイスブックのユーザー数は、米国とカナダで第2四半期の1億9800万人から今四半期の1億9600人へとわずかながら減少している(Engadget記事)。これは2020年に入って新型コロナウイルス感染症によるロックダウンで人々が外出できなくなり、ユーザー数が異常な伸びを見せた揺り返しだ。むしろ正常化といった方がいいかもしれない。

フェイスブック自身、この傾向が第3四半期および以降にも続くことを予想し「2020年の第4四半期にもこのトレンドは継続し、米国とカナダにおけるユーザー数は第3四半期と比較してDAU、MAUともにフラットないしわずかな減少となるだろう」と述べている。

関連記事:SnapchatのSnapが予想を大幅に上回る収益で第3四半期後、株価急騰

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebook新型コロナウイルス決算発表

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

フランスが新型コロナ接触者追跡アプリをリブランディングしてダウンロード促進を狙う

これからは、StopCovid(ストップコビッド)とは呼ばないで欲しい。フランスの接触者追跡アプリがアップデートされ、いまではTousAntiCovid(トゥザンチコビッド)と呼ばれるようになった。「みんなで新型コロナウイルス(COVID-19)に対抗」という意味だ。フランス政府は、もはや接触者追跡アプリではない方向へ――少なくとも単なる接触者追跡アプリではない方向へ方針転換を行おうとしている。

現時点でのTousAntiCovidは、単なるリブランディング以上の方向転換のようにみえる。新しい名前になり、ユーザーインターフェイスにはいくつかの変更点がある。とはいえ、アプリのコア機能は変わらない。

StopCovidは成功していなかった。まず第一に、接触者追跡アプリが新型コロナウイルス感染症陽性と診断された人と対話した人に警告するための有用なツールであるかが、まだ不明だということだ。第二にそれを使おうと思っても、アプリ自身がまったく使われていないのだ。

フランス政府は、ローンチの3週間後である2020年6月には、StopCovidのアップデートを行った(未訳記事)。180万人がアプリをダウンロードしたものの、StopCovidは14回の通知しか送っていない。

それから4カ月後、StopCovid / TousantiCovidは280万人近くによってダウンロードされ、アクティベートされた。しかし、アプリ内で陽性であると宣言した人の数は1万3651人にとどまり、送られた通知は823回である。もしあるユーザーが陽性と判定されても、多くの場合には、誰もその通知を受けとることはない。

そこで、今回のアップデートが行われた。これまでアプリを使用していた場合には、ソフトウェアアップデートによりTousAnticovidを受け取ることになる、フランス政府は、iOSのApp StoreAndroidのPlay Storeの両方にこのアプリを登録している。初めてアプリを起動すると、通知のアクティブ化やBluetooth(ブルートゥース)のアクティブ化などの、接触者追跡に焦点を充てた登録手続きを行うことになる。

フランスはROBERT(未訳記事)という名前の独自の接触者追跡プロトコルを使用している。研究者や民間企業で構成されるあるグループが、集中型アーキテクチャに取り組んできた。サーバがユーザーにパーマネントID(仮名)を割り当てて、そのパーマネントIDから派生させた一時的IDのリストをスマートフォンに送信する。

ほとんどの接触者追跡アプリと同様に、アプリユーザーが数分以上対話した他のアプリユーザーの包括的なリストを作成するために、TousAnticovidはBluetooth Low Energy(ブルートゥース・ロー・エナジー)を利用している。アプリを使用しているときに、アプリは周囲の他のアプリユーザーの一時的IDを収集する。

アプリを使用していて陽性と診断された場合は、検査機関がQRコードまたは文字と数字の文字列を渡す。アプリを開き、そのコードを入力することで、過去2週間間にやり取りしたユーザーの一時的IDのリストを共有することができる。

サーバーのバックエンドは、これらの一時IDを、すべて新型コロナウイルスにさらされた可能性のある人たちとしてフラグを立てる。サーバー上で再び各ユーザーは、リスクスコアに関連づけられる。そのスコアが特定のしきい値を超えると、ユーザーは通知を受け取る。それを受けがアプリが、ユーザーが検査を受け、公式の指示に従うことをすすめてくる。

しかし、アプリには新しいものが何点か追加されている。フランスにおける、パンデミック関係の最新のデータ(過去24時間の新しい感染者数、集中治療室に入っている人数など)にアクセスできるようになった。ニュースフィードにも新しい項目がある。現時点で、フランス国内でできること、できないことを要約している。

また、いくつかの有用なリソースへの新しいリンクが含まれている。検査を受けることができる場所を示すサービスや、外出禁止令発令中の免除証明書へのリンクだ。これらのリンクをタップすると、ブラウザが起動され公式ウェブサイトが開かれる。

フランス政府がTousAntiCovidをより魅力的なものにするために、繰り返しどのような取り組みを行い、アプリがどのように進化しているのかを見てみることにしよう。TousAntiCovidがスマートフォン上での中央情報ハブになることができれば、より多くのダウンロードを誘うことができるだろう。

関連記事:フランス人研究者ら、接触者追跡に関してプライバシー保護を求める書簡に署名

カテゴリー:ヘルステック
タグ:フランス新型コロナウイルス

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(翻訳:sako)

UCバークレー校のダウドナ教授がノーベル化学賞を受賞、CRISPR遺伝子編集が新型コロナなど感染拡大抑止に貢献

米国カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)のJennifer Doudna(ジェニファー・ダウドナ)教授が、CRISPRテクノロジーの共同開発者であるEmmanuelle Charpentier(エマニュエル・シャルパンティエ)教授とともにノーベル化学賞を受賞した。 TechCrunchは9月に開催したTechCrunch Disrupt 2020で、ダウドナ教授にCRISPRテクノロジーと新型コロナウイルス対策への応用について詳しく話を聞く機会があった。またダウドナ教授はこのテクノロジーが医学全般、ことに将来のパンデミック対策として役立つ可能性についても強調した。

ダウドナ教授は以下のように説明している。

CRISPRテクノロジーで最も興味あるのは、現在の新型コロナウイルスだけでなく、将来現れるかもしれない別のウイルスも容易に検出ターゲットとすることができる点です。

私たちはすでに新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスを同時に検出できるようにする戦略で研究を進めています。 これ自身重要な意味を持つのは明らかですが、CRISPRはプログラムを書き換えて別のウイルスをターゲットとするよう素早くピボットすることができます。

これは多くの人が留意しなければならない点だと思いますが、ウイルス性のパンデミックがまったく消え去るということはありません。現在の新型コロナウィルスは将来のパンデミックに対する警告と考えるべきでしょう。私たちは将来の新たなウイルスによる攻撃に対する防衛体制を科学的に整えておくことが必要です。

最近の応用について考えると、CRISPRは新型コロナウイルスの検査体制を飛躍的に拡充できる可能性がある。このテクノロジーはスピードや信頼性を含め、検査の本質を根本的に変えるかもしれない。第一線で活動する医療専門家、医療機関の能力を大きく拡大するだけでなく、パンデミックへの対処体制にも革命をもたらす可能性がある。

ダウドナ教授は以下のようにも述べている。

私の経験からいって今年中にCRISPRを応用した新型コロナウイルスの検査方法が提供できると思います。当初、このテストには病院等の検査室で行われるでしょうが、医療の第一線におけるCRISPRの検査を実現すべく、カリフォルニア大学バークレー校のInnovative Genomics Institute、サンフランシスコ校のGladstone医療センターなどと共同して開発を続けています。 これは病院だけでなく介護施設や寮などあらゆる場所で検査に利用できる小型のデバイスとなるはずです。唾液や綿棒で拭ったサンプルを使った迅速なテストができるようにしたいと考えています。

ダウドナ教授へのインタビューの詳しい記事はこちら。教授はCRISPRについて感染蔓延に対する応用面だけでなく。開発の背景や意義について詳しく解説している。

カテゴリー:バイオテック
タグ:新型コロナウィルス、COVVID-19、ノーベル賞、CRISPR

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

新型コロナ研究データを集めた「COVID-19データポータルJAPAN」が公開、国立情報学研究所と国立遺伝学研究所が管理

国内外に散在する新型コロナウイルスに関する研究データを集約した「COVID-19 データポータルJAPAN」が公開された。大学共同利用機関法人・情報・システム研究機構(ROIS)に属する、国立情報学研究所(NII)のオープンサイエンス基盤研究センター(RCOS)、国立遺伝学研究所(NIG)の生命情報・DDBJセンターが管理するサイトで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する研究データへ研究者が迅速にアクセスできるように、各種オープンデータを参照できるようになっている。

このサイトでは、遺伝子配列やタンパク質、疾患などの生命科学系の研究データだけでなく、画像や文献、データ投稿のツールも含めたリソースを、分野横断的にチェックできるのが特徴だ。研究者がこの基盤を活用して研究データを発見し、創出したデータをさらにオープンに共有していくことことで、コロナ禍の解決を目指すのがこのサイトの狙いだ。

国立の研究機関のほか、京都大学や大阪大学、いま人選で話題の日本学術会議から提供された情報も参照できる。海外のデータとしては、米国国立衛生研究所、米国、英国、スイスの研究データを集めたUniProt Consortium、世界中の信頼できる情報源からのライフサイエンスの出版物や世界的なコレクションへのアクセスを可能にするオープンサイエンスプラットフォームであるEurope PMCなどの情報も含まれる。

本ポータルサイトは、すでに欧州で公開されている「COVID-19 Data Portal」の枠組みに賛同するかたちでスタート。日本の新型コロナウイルスの研究推進と、データ共有の円滑化に貢献する基盤として、今後も国内の多数の機関の協力を受けて情報を更新していくという。

COVID-19 データポータルJAPANから参照できる情報は以下のとおり(2020年10月5日10時時点)。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:新型コロナウイルスCOVID-19

ベルリン拠点のオンライン語学学習のBabbelはサブスク加入者1000万人達成と発表

ドイツ・ベルリンを本拠とするオンライン外国語学習サービスのBabbelは現地時間9月21日、サブスクリプションの登録者が1000万人になったと発表した。語学学習サービスの有料ユーザー数としては驚くべき数字だ。 Babbelは無料プランを提供していないのでなおさらだ。1000万人達成への道のりは新型コロナウイルスの感染拡大が加速した面もあるが、それ以前から登録者の伸びは著しいものがあった。大きな要因の1つは米国における積極的な拡大策だろう。ここではBabbelのサブスクリプション数も売り上げも対前年比で3倍になっている。

実はパンデミックかでさらに成長が続いたことはBabbelにとっても驚きだったという。外国語を学ぼうという動機は。、少なくとも米国の場合は夏休みなどを利用して外国旅行を計画することが大きな割合を占めていたからだ。

米国BabbelでCEOを務めるJulie Hansen(ジュリー・ハンセン)氏は私の取材に対して 「私たちは米国では外国語を学ぼうとする大きな動機は外国旅行であることが多かったのに気づいていました。外国旅行でその国の言葉を学習しておきたいのは納得できる理由です。事実、昨年は米国からヨーロッパへの旅行者数が新記録を作りました。しかし、今回の新型コロナウイルスの感染蔓延そのものについてはもちろんだが、Babbelのビジネスに与える悪影響についても心配しました」と述べた。

しかし多少の遅れはあったものの、米国を含む世界の各地で新型コロナウイルスによるロックダウンが実施された後、Babbelのサブスクリプション数は増え始めた。ロックダウンの期間を自己改善に利用することにした人々が多かったようだ。Babbleでは、高校生、大学生向けに無料の語学コースを開設して大人気となった。ハンセン氏によれば、この試みだけで「数十万のダウンロードがあった」という。この影響もあって同社のユーザーベースは年齢がやや若い層に振れた。なおハンセン氏は、ソーシャルメディア、特にTikTokでの広告も大きかったと考えている。

BabbelのCEOであるArne Schepker(アルネ・シェプカー)氏は「各国におけるサブスクリプション数のグラフを描けば 学校が閉鎖された日、ロックダウンがが実施された日、それにもしかするとNetflixで新しいドラマのシリーズが始まった日などをそれぞれ指摘できます(未訳記事)。そうした出来事からわずかに遅れてサブスクリプション数が増加しているのがわかります」と述べていた。

Babbelにとって今後の課題の1つはB2B分野だ。ここではBabbelもライバルは明瞭な減速を経験している。しかしハンセン氏が「新型コロナウイルスの感染蔓延に対応して社員研修のデジタル化を一層強化している企業もある」と述べているとおり、現実の教室におけるプログラムをBabbleのようなオンラインサービスに置き換えている会社も多い。市場全体として成長は減速しているものの、 BabbelはB2B分野の売上を対前年比で2倍に伸ばしている。またベルリンを本拠とするフードデリバリーのスタートアップであるDelivery Heroをユーザーに増やしている。

 Babbelは新型コロナウイルスの感染蔓延以前、2018年にLingoVenturaを買収したのを手始めとして旅行会話の分野に大型投資をしていた。シェプカー氏も「今のところ誰も外国旅行には出かけられずにいるためビジネスは低調だ」と認めている。しかし同社は近い将来この分野も回復するものと信じている。

Babbelでは近くハンセン氏が「別の学習メソッド」と呼ぶサービスをスタートさせる。ただし「学習者がいる場所に対応して多様な学習体験を提供する」という以外に具体的な内容はまだ明らかにされていない。

画像: Babbel

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

「遺伝子編集技術CRISPRは新型コロナ治療に欠かせない」とダウドナ教授は語る

最新の遺伝子編集技術、CRISPRの共同開発者であるJennifer Doudna(ジェニファー・ダウドナ)教授がDisrupt 2020に登場し「(CRISPRは)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以降のパンデミックに対する戦いで最も有効なツールの1つになる」と述べた。CRISPRはコンピューターソフトウェアと同様、目的に応じて柔軟にプログラムの組み替えが可能であり、やがて無数の治療法と検査法に応用されるだろうという。

ダウドナ教授はバーチャルカンファレンスにおけるインタビューで「CRISPRはすでにいくつかの分野で確実な成果を上げている」として明るい見通しを述べた。

「このテクノロジーが独特な存在である理由の1つは極めて柔軟性が高く、遺伝子編集において多様な目的のために利用できる万能ツールだという点だ。またウイルスを構成する要素を、的確に検知をするためにも利用できる。CRISPRはワクチンを作るために必須のものとなる」という。

これらの可能性は、CRISPRの本質による。このテクノロジーは、ウイルス中の特定の遺伝子配列ないし構造を極めて精密に探し出して操作することができる。特徴的な配列を発見し、切断することによってウイルスを不活性化できるのと同時に、ごく微量の検体からウイルスを発見するために用いることができる。

「これは、バクテリアがウイルスを探知する方法を利用するテクノロジーだ。我々はこのメカニズムをパンデミックの原因となるウイルスの検知に役立てることができる」という。

ダウドナ教授によれば、CRISPRの利点は3つある。第1は特定の遺伝子配列の検知だ。現在のウイルス検査の手法は、酵素とタンパク質の反応を利用している。しかしこの手法は間接的な証拠に過ぎず、特定のウイルスの存在を直接示すものではない。そのため信頼性とスピードは著しく制限される。ウイルスが細胞に侵入していても、特定の酵素と反応するようなタンパク質を生成し始めるまで検知できない。これに対してCRISPRはそのウイルスに特有な遺伝子配列そのものを検知するため、はるかに確実な発見ができる。「ウイルスの検知を、従来よりスピーディーかつ確実に行うことができる。ウイルスの存在を示す証拠が直接的であり、ウイルスの濃度との相関度も高いからだ」という。

第2にCRISPRタンパク質を利用したシークエンシングは、検索対象とするターゲットを容易に変更できる。「我々はCRISPRシステムのプログラムを簡単に書き換えることができる。新型コロナウイルスが突然変異しても、変異しない部分を検知の対象にすることができる。我々はすでにインフルエンザと新型コロナのウイルスを同時に検知する実験を進めている。これ自身もちろん非常に重要なテクノロジーだが、同時に将来現れるかもしれない別のウイルスに対しても簡単にピボットして検出ターゲットとすることができるはずだ。

 

上は非常に長いGIF画像。CRISPR CAS-9タンパク質がウイルスのDNAを探索し、特定の場所を発見して切断する様子を示している。(画像クレジット:UC Berkeley)

「今後もウイルス性パンデミックが、完全になくなることはないだろう。今回のパンデミックはいわば警告だと思う。次の新しいウイルスによる攻撃に対処する科学的な体制を整えておくことが重要だ」。

第3のメリットは、CRISPRベースの薬剤は製造にあたって用意すべき素材が、他のテクノロジーの場合よりもはるかに容易に入手できることだ。ワクチンにせよ、治療薬にせよ、多くの人々に迅速に供給するするためにはこの点が極めて重要になる。

CRISPRの実用化にあたって壁は、理論的なものではなく実際的なものだ。現在はまだ研究室における実験段階であり、人間の現実の疾病予防や治療に用いるためには、まだ長い審査過程が残っている。一部では人間に対する治験が始まっているし、新型コロナウイルス関連で審査がファーストトラックに載せられたものも多い。しかしコストの問題を別としても、まったく新しいテクノロジーであるだけに、実際に治療に利用できるようになるまでにはまだ時間がかかる見込みだ。

「これらの点が、バイオテクノロジーの進歩にあたって最も重要な課題になる。CRISPRを経済的な価格で、できるだけ多数の人々に提供できるようにすることが必要だ。将来、CRISPRが標準的な医療となって症例の少ない遺伝的疾病の治療ができるようになることを期待している。そのためには本格的な研究開発が必須となる」。

このテクノロジーを進歩させる最も有望な方向は、CRISPR Cas-Φ(ファイ)だ。基本的な仕組みは同様だが、Cas-Φの酵素は、はるかにコンパクトだ。もともとCas-Φはバクテリアなどの単細胞生物がウイルスやプラスミドから自己を防衛するためのメカニズムだからだという。「バクテリアが、独自のCRISPRを持ち歩いているとは誰も想像していなかった。しかし(我々が発見したところによれば)それは事実だ。興味深いのは、オリジナルのCRISPRよりはるかにサイズが小さいタンパク質である点だ。巨大タンパク質はターゲット細胞に導入することが難しい。CRISPR Cas-Φを利用して、コンパクトで効率が高い遺伝子編集ツールを作成できる可能性がある」。

ダウドナ教授のチームはCRISPRだけでなくCRISPR Cas-Φの共同発見者の1つであり、応用の可能性についてさらに詳しく説明してくれた。下にDisrupt 2020におけるインタビュー全体をエンベッドしておいたのでぜひご覧いただきたい。

カテゴリー:バイオテック

タグ:Disrupt 2020 CRISPR DNA COVID-19 新型コロナウイルス

画像クレジット:Alexander Heinl/picture alliance / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

欧州が国境を越えた新型コロナ陽性者接触アラートアプリの相互運用性テストを開始

欧州委員会は、各国の新型コロナウイルス陽性者接触通知アプリを、国境を越えて相互運用させるために必要なバックエンドインフラのテストを開始ことを明らかにした。

具体的には、チェコ、デンマーク、ドイツ、アイルランド、イタリア、ラトビアの公式アプリのバックエンドサーバーと、新たに設立されたゲートウェイサーバーとの間のテストランを開始した。なおゲートウェイサーバーは、T-SystemsとSAPが開発・構築中で、ルクセンブルグにある欧州委員会のデータセンターで運用される予定(欧州委員会プレスリリース)だ。

このサービスは10月に稼働を開始する予定で、互換性のあるアプリを開発して国民に配布してるEU加盟国は、リストアップされた国のそれぞれの国に旅行する際に、アプリの追跡機能を他国でも利用できるようになる。

相互運用性のガイドラインは、5月に各国の新型コロナウイルスの追跡アプリについて合意したもの(未訳記事)だ。欧州委員会によると、ゲートウェイサービスは最低限のデータのみを交換するという。同委員会は「交換される情報は、匿名化・暗号化され、感染を追跡するために必要な期間だけ保存されます。個人を特定することはできません」と付け加えている。

現時点でゲートウェイサービスと互換性があるのは、分散型の新型コロナウイルス追跡アプリのみだ。また、欧州委員会は、異なるアーキテクチャを持つ追跡アプリに相互運用性を拡張する方法を見つけるために、いくつかの加盟国で行われている作業を支援していると述べているが、それがプライバシーへのリスクなしにどの程度実行可能なものになるかはいまのところ明らかではない。

各国の新型コロナウイルス追跡アプリの相互運用の主な利点は、EU圏の居住者が複数の追跡アプリをインストールする必要がないことだ。ただし、互換性のあるアーキテクチャのアプリを配布している別の国に旅行する場合に限られる。

アプリのアーキテクチャが異なることに加え、EU加盟国の中にはまだ国内アプリ開発・配布していない国もある。つまり当面の間、国境を越えた追跡には限界があり、国外旅行に関連する新型コロナウイルスの感染経路を完全には追跡できないという課題は残る。

画像クレジット:Joao Paulo Burini / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Carbon HealthとColorの創業者はコロナ禍に米国医療を最先端にする力を見出す

新型コロナウイルスによるパンデミックは、米国における医療の2つの相反する現実を露呈させた。1つは、高額で複雑な治療を得意とする医療システムと、地域レベルでの十分なアクセスを提供できない医療システムだ。

公衆衛生インフラへのアクセスの欠如は、米国にとって最大の課題かもしれない。しかしながらこの現実は、ヘルスケアスタートアップにとってのチャンスも生み出している、とCarbon HealthとColorの創業者たちは、米国時間9月14日から始まったTechCrunch Disrupt 2020で語った。

Colorの創業者でCEOのOthman Laraki(オスマン・ララキ)氏はDisruptのTech, test and treat: Healthcare startups in the COVID-19 era(テクノロジーと検査と処置:COVID-19の時代のヘルスケアスタートアップ)で「ヘルスケアを誰にでも利用しやすくすることを考えると、費用に注目しがちであり、それは間違いなく大きな問題だ。しかしヘルスケアを利用しやすくするためには、ヘルスケアをそれが生活の一部となっている人たちへ実際に届けることです。恵まれない人びとのコミュニティなどでは、費用よりもアクセス性の方が大きな問題であるケースが多くあります」。

関連記事:Carbon Healthが簡易の新型コロナ検査クリニックを全米で100カ所立ち上げ

プライマリケアのスタートアップであるCarbon HealthとColorは、すでにこの問題に取り組んでいる。Carbon Healthの場合は、質の高いプライマリケアを地域レベルで実現する同社のビジネスモデルが、それにより新型コロナイルス流行に対して早い段階での洞察を与えた。

Carbon Healthには現在、25のプライマリケアの拠点が25あり、共同創業者でCEOのEren Bali(
エレン・バリ)氏は早ければ2020年2月に、中国の武漢からCOVID-19に似た症例の患者が直接クリニックに訪れるようになったという。

Carbon Healthの技術プラットフォームは、患者が訪れる前に問診し、それにより重要なデータを収集して、事前に患者の症状や問題を評価する。このような早期の洞察により、Carbon Healthに2つの選択肢が残されていた。閉鎖して新型コロナの嵐が過ぎ去るのを待つか、その嵐に飛び込むかという選択肢だ。バリ氏によると、Carbon Healthは後者を選んだ。

ララキ氏とバリ氏のTechCrunch Disruptにおける9月14日のコメントは、両社のビジネスモデルと成長の過程をよく表現している。新型コロナウイルスはただ、そのスピードを速めただけだ。

今週初めにCarbon Healthは、ポップアップ方式のクリニックを新たに立ち上げた。クリニックは現在、ブルックリンとマンハッタン、ロサンゼルス、サンフランシスコそしてシアトルにある。今後数週間でデトロイトなどにも開設され、最終的には1カ月に10万人の患者に対応できる100カ所の新型コロナウイルス検査施設を新たに立ち上げる。サンフランシスコのクリニックでは、ColorがCarbon Healthと提携している。

関連記事:Colorが新型コロナ大量検査テクノロジーをオープンソース化、自社ラボも稼働へ

一方、パンデミックが全米を吹き荒れる中でColorは、新型コロナウイルス検査をめぐる物流やとサプライチェーンの制約を緩和するためのプラットフォームを構築した。ベイエリアで大規模な自動化された検査ラボを運営する同社は、同地区での検査の75%を処理している。

今日でも、このようなハイパーローカルレベルの医療には限界がある。例えば手術が必要な人は病院へ行かなければならないが、そこまで数時間かかることもある。

「手術まで『エッジ』で行えるようになるのは、そう簡単なことではありません。しかし現在起きていること、そして今後10年間で起きるであろうことは、真の意味でのエッジ分散型の医療を実現につながるものなのではないでしょうか」とララキ氏は手術を例に説明する。

このアイデアは、テクノロジーによってヘルスケアが費用対効果の高いモデルでコミュニティに取り込まれることが可能になり、よりアクセスしやすくなるというものだ。「現在の米国ではまだ存在していないが、実際にアイデアは実現され初めていると考えています。根本的にはテクノロジーの問題だと思います」とララキ氏は付け加えた。

カテゴリー:ヘルステック

タグ:COVID-19 Carbon Health Color

画像クレジット: Carbon Health

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Carbon Healthが簡易の新型コロナ検査クリニックを全米で100カ所立ち上げ

プライマリケアヘルステックのスタートアップCarbon Health(カーボン・ヘルス)が「オムニチャネル」のヘルスケアアプローチに新たな要素を加えた。すでにサンフランシスコ、LA、シアトル、ブルックリン、マンハッタンで展開し、そして間もなくデトロイトでも立ち上げる新しいポップアップのクリニックというモデルだ。今後数週間か数カ月以内に米国内の他の主要都市でも展開し、最終的には新型コロナウイルス検査サイトが新たに100カ所設置される。これにより、1カ月あたり10万人を検査する能力が加わることになる。

これまでのところ、Carbon Healthはベイエリアにある既存の施設でのCOVID-19対応に注力し、またゲノミクスのスタートアップColor(カラー)、そして自治体とのコラボレーションを通じてサンフランシスコ州とその周辺でポップアップの検査サイトを展開してきた。そしていま、Carbon HealthのCEOで共同創業者Even Bali(イーブン・バリ)氏は、これまでに学んだことを全米レベルで展開するときがきたと考えている、と筆者とのインタビューで語った。フレキシブルで素早い検査サイトの展開だ。実際、同社はこの目標に向けて3月から取り組みを始めていたとのことだ。

「当社は2月に新型コロナに対応し始めた。文字通り中国・武漢からの患者が当社のクリニックに来ていたからだ」とバリ氏は話した。「すぐにパンデミックになると思った。部分的には政府の対応の失敗のために、自分たちができるだろうと思われること全てをやろうと決めた」

それはCarbonが事業を展開する地元でできそうなことから始まった。しかし、バリ氏とチームは早い段階で、より広範に取り組みを展開する必要があると認識した。実行にあたっては、Carbonは初期の体験を活かすことができた。

「当社はオンサイトで検査を行い、高齢者ホームを訪問し、企業の再開にも協力した」とバリ氏は話した。「現時点で当社はこれまでに20万回超の新型コロナ検査を独自に行ったと思う。Carbon Healthが部分的に協力したサンフランシスコの取り組みも含めれば、ベイエリアの検査の半分以上を当社が行ったはずだ。なので、当社はすでに可能な限りスケール展開しているが、あるとき物理的に場所の限界に近づいていた。そして3月にポップアップでよりモバイルなクリニックを多く展開するアイデアを思いついた」

ブルックリンにあるCarbon Healthの新型コロナ検査ポップアップクリニックの内部

これを実現しようと、Carbon Healthは十分に検査サービスが提供されていなかったコミュニティに対応するために町から町へと移動できるモバイルトレイラーの活用も始めた。それが今回のモデルのプロトタイプのようなものになった。マンション建設地で現場監督のオフィスとして使われているもののような建設用トレイラーを一新し、医療関係者が新型コロナ検査を行うのに必要な設備や用品を備えた。それはかなり一時的なソリューションであり、Carbon Healthはより目的に適し、素早く展開するのに役立つ大量製造が可能なカスタムデザインでメーカーと協業している。

Carbon Healthは、駐車場のスポットをフードサービスや物流拠点といった事業場所に変える、SoftBank(ソフトバンク)が支援するスタートアップReef Technologies(リーフ・テクノロジーズ)と提携している。そして同社が今回取り組むのはCarbonのクリニックだ。これは地元当局の許可や不動産の規制といった複雑なものをクリアするのに大いに役立つ、とバリ氏は話した。つまり、Carbon Healthのポップアップクリニックは、従来の永久設置型のクリニックを開所するときに時間がかかるプロセスを回避できることを意味する。

このモデルを活用する1つのアドバンテージがコストだ。多くの人が従来型のクリニックに比べれば高価ではないと思うかもしれないが、それほどコストがかからないというわけではない。少なくともカスタム製造され、ボリューム生産による経済性が得られるまではそうだ。しかしスピードは大きな利点だ。こうした特殊な状況でCarbon Healthが先を考えるのに役立っている。パンデミック後、あるいは新型コロナワクチンを接種するようになったときに、こうしたポップアップクリニックはどのように使われるのか、といったことだ。バリ氏は「かなりの数が必要とされる承認を受けたワクチンは、検査よりも体制が整わなければ管理が必要になる」と指摘した。

ブルックリンにあるCarbon Healthの新型コロナウイルス検査のポップアップクリニックの外観

一方で、新型コロナ以外の診療の需要は依然としてあり、Carbon Healthのポップアップモデルは従来のプライマリケアと遠隔診療のギャップを埋めることができるかもしれない。

「遠隔診療がいいソリューションとなっていない場合、ビデオによる医師の診察はほぼ満足するものだが、診断のためのテストをする必要があるということが問題だ。管理が必要かもしれないし、医師の指示のもとに看護師ができる本当にシンプルな身体検査を必要としているかもしれない。なので、こうした場合を考えると、あらゆる受診の90%はビデオでの医師の診察と、現場の看護師で対応できる」

新型コロナのテストは全米において急がれる重要なものであり、新型コロナワクチンの展開ができるだけ早くそれに置き換わることを願う。しかしパンデミックが収まった後でも、ヘルスケアは大きく変わる。Carbon Healthのモデルはケアをあらゆるところで展開するという需要に対応する、より永久的で実行可能な方法になりえる。

>画像クレジット:Carbon Health

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(翻訳:Mizoguchi