AmazonのEcho Show の目玉機能はビデオ通話だ。複数のデバイスを購入すれば、それらを使って互いに呼び出すことができる。そして、幼い子供たちや祖父母たちがすぐに使い始めることができるくらい、簡単なものに違いない。
そんな話どこかで聞き覚えがあるなと思ったのなら、それはAmazonがNucleusという名前のスタートアップに投資していて、そしてそのコピープロダクトを作ったからだ。今日はその若いスタートアップにとって苦難の幕開けだ。
Nucleusはこの種のデバイスに潜在的な市場があるかどうかを判断するために、長い時間を費やしてきた。それはディスプレイ、カメラ、スピーカー、マイクを備えた極めてシンプルな製品を生み出した。誰かの名前をタップすれば、その人が呼び出される。
もし相手がNucleusデバイスを持っている場合には、そのデバイスに呼び出しがかかる。移動中の場合には、モバイルアプリを使用してNucleus通話を受信することもできる。そして、NucleusはAmazonのAlexaを統合していて、Amazon Echoを使って行なうような質問をすることが可能だ。
何年もかけた仕事の結果として、同社はそのデバイス を発売したのだ。そのデバイスはAmazon や他のウェブサイトで購入することができる。
ビデオコールはそれほど革新的ではないと思うかもしれないし、Echo Showが同じことをするのも純粋に偶然だと思うかもしれない。ただ一つの問題は、AmazonがNucleusの主要な投資家であることなのだ。昨年、NucleusはAmazonのAlexa Fund から、シリーズAの資金調達ラウンドで560万ドルを調達している 。
これがNucleusのデモビデオだ:
VIDEO
そしてAmazonの紹介ビデオはこのようなものだ:
VIDEO
これらはとても似通っているので、同じチームが両方のデバイスをデザインしたのだろうと思うかもしれない。しかしNucleusの代理人は、チームはEcho Showに全く関与していないと明言した。
同社の声明は以下の通り:
Nucleusは2014年からAmazonと緊密に協力してきました。そして昨年の9月には、NucleusはAlexa Fundに主導されたシリーズAラウンドによる資金調達を発表しました。しかし、ここでの大きな疑問は「Amazonなどの大企業と提携することについて、小売業者や開発者は注意すべきなのだろうか」ということです。Amazonが取っている方向性は、Alexaのエコシステムと全体的イノベーションを一歩後退させるものです。しかし、もっと重要なことは、多くの異なる一見無関係な産業にも、広い影響が及ぶだろうということです。家庭の全ての部屋にショッピングカートが置かれたAmazonの他の小売業者たちへの影響を想像してみてください。しかし私たちにはAmazonを牽制できる、チームとテクノロジー、そして計画と戦略があります。そして今回のことは、私たちの価値を共有し、顧客を第一に考える意志のある、力強いパートナーを得るための良い機会なのです。
ハイテク企業がより小さな企業からコピーするのは、これが初めてのことではない。すべての主要なハイテク企業が、それを過去におこなっている。しかし、だからといって、それが納得できるというものでもない。
Nucleusのストーリーから引き出せる、いくつかの重要な教訓がある。まず、AmazonはNucleusを買収するべきだったということ。若いイノベーティブなスタートアップに数千万ドルを費やしたからといって、Amazonの銀行口座が干上がる懸念はない。
第2に、ネットワークの影響は強力だろうということ。AmazonはNucleusよりもはるかに有名なブランドで、普及効果も高い。クリスマスまでには、多くの人びとがEcho Showについて知ることになるだろう。Nucleusのデバイスが、同じように有名になるとは思えない。
結局は、プラットフォームが勝つ。Echoが普及しているのは、Amazon自身のエコシステム並びにサードパーティ企業たちと緊密に統合されていることが主な理由なのだ。Alexaを開放することで、Amazonは数十にも及ぶスマートホーム業者や音楽ストリーミングパートナーを引きつけることに成功できた。これにより、Echoはさまざまなユースケースを持つ汎用デバイスへと成長した。
そして、このことが最後の教訓につながる。サードパーティのプラットフォームにあまり依存してしまうようなスタートアップを、構築してはいけないということだ。もしEcho Showの前に、Nucleusデバイスが大成功を収めていた場合には、AmazonはAlexa APIへのアクセスを遮断した可能性もある。その場合、Nucleusはシンプルなインターホンになってただろう。おそらく、AmazonはNucleusに静かな余生を送らせただろう。
明るい側面としては、Nucleusが確かに何らかの可能性のあるものに取り組んでいたということを、Amazonがその行動で認めたということだ。大規模なテクノロジーの巨人があなたのマーケットに入ってくるときには、あなたの製品のようなもののための余地があることを意味する。Walmartはこの機会を利用してNucleusを買収し、すぐにでもAmazonと競争することができるかもしれない。あるいは、GoogleはそのNest製品ラインの中に、似たようなものを構築したいと考えるかもしれない。
[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)