Intelがイスラエルの交通アプリMoovitを約960億円で買収、自動運転部門を強化

イスラエルでは、スマート輸送の世界でいくつかの大きなM&Aが進んでいる。TechCrunchが入手した複数のレポートや情報筋によると、チップ大手のIntel(インテル)は、AIとビッグデータによる交通状況の分析に基づき世界約8億人におすすめの経路情報を提供するスタートアップのMoovit(ムービット)を買収する最終段階だという。買収契約は近く、10億ドル(約1070億円)程度の買収価格で完了する見込みだ。

(編集部注:インテルはその後に約9億ドル、約960億円でMoovitを買収したと発表)

Moovitの創業者兼CEOであるNir Erez(ニル・エレズ)とインテルの広報担当者に連絡しコメントを求めた。詳細は入手次第更新する。現時点では、Moovitの広報担当者はレポートの内容やTechCrunchが直接入手した情報を否定していない。

「現時点ではコメントはないが、何か変更があった場合は必ず知らせる」とMoovitの広報担当者は述べた。

Moovitは以前Intel Capitalから戦略的投資を受けている。情報筋によるとMoovitは、Mobileye(モービルアイ)を核とするインテルのイスラエルの自動車ハブの一部になるようだ。Mobileyeはインテルが2017年に153億ドル(約1兆6300億円)で買収した自動運転の会社だ。

Moovitがハブで果たす役割はまだはっきりしない。基本的に、自動運転車を導入する上で最も困難な点の1つは、信頼できるリアルタイムの交通情報データ取り込みとインテリジェントルーティング(最適な経路の選択)の実行だ。これはMoovitのコアビジネスだ。

実際、Moovitは既にMobileyeやインテルと協力している。インテルは、Moovitの最後のラウンドとなった2018年のシリーズDで5000万ドル(約53億円)の調達をリードした。その一環として、インテルの上級副社長でMobileyeのCEO兼CTOのAmnon Shashua(アムノン・シャシュア)教授がオブザーバーとしてMoovitの取締役会に加わった。シリーズDに参加したインテル以外の投資家にはNGP Capital、BMW、Sound Ventures、Gemini Israelといったそうそうたる名前が並んでいる。

人材を獲得し、それをインテルのより大きな戦略に統合することが買収の主な動機のようだ。従業員はリテンションパッケージの一部として最終的な買収金額の約10%を受け取る。詳細はイスラエルのヘブライ語の新聞The Markerによって報じられ、Wadi VenturesのアナリストであるDavid Bedussa(デイビッド・ベデュッサ)氏がTechCrunchに報告した。

最後の資金調達ラウンド時点で、Moovitには5億ドル(約530億円)以上のバリュエーションがついていたが、その後2年間で大きく成長した。

同社は都市内の最適な移動経路を教えてくれる人気のスタンドアロンアプリを開発している。Uber(ウーバー)のようなアプリとも統合し、Uberタクシー、自転車、公共交通機関、徒歩などの異なる移動手段を組み合わせるマルチモーダルルートを提供する。

Moovitは2018年にiOSAndroidウェブアプリが世界80カ国2000都市で1億2000万人のユーザーが利用したと発表した。2020年現在は102カ国、3100都市、45言語、8億人を超えている。

輸送面では、現在世界中の多くの人々が、世界的なパンデミックとなった新型コロナウイルスの感染拡大を遅らせるため、移動を控えるよう求められている。この公衆衛生危機の結果として世界経済は大きな下落局面にある。どちらも自動車業界に直接的な影響を及ぼしている。新型コロナの感染拡大を封じ込めるだけでなく、購買需要の著しい減退に対応するため、生産活動のスローダウンと次世代戦略の変更を余儀なくされている。

技術面では規模の大小を問わずあらゆる企業が、できるだけ最適化された方法でテクノロジーを活用し、物事を前に進める役に立つよう取り組んできた。特にこれは輸送関連のスタートアップの世界でも起こっていることだ。

移動の抑制によりユーザーによるMoovitアプリの利用量が大幅に縮小するなか、同社は一連の新型コロナ関連サービスを開始した。これは、今なお仕事を続け、移動を必要とする人々へのサービスだ。

サービスには、トランジットデータマネージャー(通常のB2B製品と異なり無料で提供されている)が含まれている。これは最新のトランジットデータ(経路情報)と交通量データの両方を受信し、短時間で大量の処理を迅速に行い、ユーザーは最新の情報に基づき最適なルートを選択できる。

また、Moovitアプリのユーザーがアラートを受け取れるリアルタイムサービスも開始した。さらに「緊急モビライゼーションオンデマンド」サービスも開始した。これにより、交通サービスのマネージャーはバスをより迅速にルートに再配置して、公共交通機関を利用しているエッセンシャルワーカーにより良いサービスを提供できる。

Moovitがさらなる資金調達を狙っていたのか、他の多くのスタートアップと同様に資金調達に不安を感じていたのか、あるいは買収提案の内容が良すぎて断れなかったのか、そもそも買収の話は新型コロナ前からあったのか、いずれも定かではない。Moovitのビジネスの規模と範囲を考えると、当面は進める価値があるビジネスのように見える。

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(以下、続報の要約)

インテルは5月4日、Moovitを約9億ドル(約960億円)で買収したと発表した。ただし、既に保有する持分の価値増加分を差し引くと、買収で支払う金額は8億4000万ドル(約896億円)となるという。

MoovitのテクノロジーはMobileyeの「Mobility as a Service(MaaS)」の拡大・強化に利用する。Mobileyeのドライバーアシスタンステクノロジーは現在約6000万台の自動車に搭載されている。「ロボタクシー」などの自動運転サービスはまだ初期段階にあるが成長の見込みは大きい。インテルはロボタクシーだけで2030年までに1600億ドル(約17兆1000億円)の市場規模になると考えている。

「インテルの目的は地球上のすべての人の生活を豊かにする世界に変えるテクノロジーを生み出すことであり、我々のMobileyeチームはその目的に向かって毎日前進している」とインテルのCEOであるBob Swan(ボブ・スワン)氏は述べた。「MobileyeのADAS(先進運転支援システム)テクノロジーは数百万台の自動車の走行安全性を既に改善しつつある。Moovitはフルスタックモビリティープロバイダーとして移動手段に真の革命をもたらす。混雑を緩和し、人命を救う」。

今回の買収が興味深い点は、インテルが自動運転事業への関与を深めていることを裏付けるだけでなく、新型コロナの影響による世界的な景気後退の中で自動車会社や自動運転車の試みが延期・中止されるこの時期に行われたことだ。Ford(フォード)は自動運転サービスを2022年まで延期すると発表し、Waymo(ウェイモ)とVoyage(ボヤージュ)はいずれもサービスを中止している。

「経済は逆風下にあり、自動車の研究開発に取り組む企業は計画を減速・縮小するかもしれないが、我々はドライバーレスMaaSのビジョンをいち早く実現するのに必要な価値ある資産を獲得する機会だと捉えている」とシャシュア氏はブログ投稿で説明した。

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(翻訳:Mizoguchi

精密農業スタートアップのTaranis、農業監視テクノロジーで2000万ドル調達

Taranisは、空中監視とディープラーニングを使って農作物の問題を見つけ出す農業技術(AgTech)のスタートアップだ。本日(米国時間11/6)同社は2000万ドルのシリーズBラウンドをViola Venturesのリードで完了した。既存投資家のNutrien(世界最大級の農薬メーカー)、Wilbur-Ellisのベンチャーキャピタル部門Cavallo Ventures、およびSumitomo Corporation Europeも参加した。

テルアビブ拠点のTaranisは、現在同社の空撮テクノロジーは、高速ドローンまたは有人飛行機に搭載されてアルゼンチン、ブラジル、ウクライナ、よび米国で使用されていると語った。このラウンドで調達した資金を使ってオーストラリアをはじめとする他の国々にも進出する計画だ。

この会社は2015年、Ofir Schlam、Asaf Horvitz、Eli Bukchin、Ayal Karmiの4人によって食料生産を増加するために設立された。Taranisのソフトウェアがターゲットにしているのは、トウモロコシ、綿花、大麦、大豆、サトウキビ、ジャガイモなどの大規模生産作物だ。害虫被害、栄養不足、病害などの問題原因を突き止め、農業従事者に(例えば)虫が作物を食べているところの詳細を写した高解像度の拡大画像を提供する。

Viola VenturesのパートナーZvika Orronはプレスリリースで、「デジタル農業産業を分析した結果、Taranisをこの分野で最初の投資先に選んだことを誇りに思っている。Taranisは農業デジタル化のリーダーになるために必要な要素をすべて兼ね備えている。広範囲な精密農業ソリューション、市場のスケールに対応し、市場進出するために必要な第一線業界パートナー、およびそれを実現させる情熱的なチームが揃っている」

従来の農作物監視は労働集約型であり、センサーを使って土壌品質や施肥量、害虫などの問題を追跡する場合であっても、必ずしも正確ではなかった。コンピュータービジョンとAI技術を使ってこのプロセス(「精密農業」と呼ばれる成長分野)を効率化しようとしている他のVC支援スタートアップには、これもテルアビブ拠点のProsperaArableCeres Imagingらがいる。

農業の巨人らも精密農業スタートアップを買いに動き始めている。たとえば、過去12ヶ月間に、DeereがBlue Riverの買収に合意し、ブラジルのスタートアップStriderがSyngentaに買われた

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

このFlyTrexのドローンはビールを運ぶ

商品がドローンで届けられる未来はそう遠くない。

Amazonを始めとする巨人たちがドローン配達に取り組む中、規制のハードルを越えることができれば、ライバルたちも市場に参入するだろう。

そこでFlyTrexの登場だ。

本誌はテルアビブにある同社を訪問した。企業が自社製品をドローンで配達するために必要なハードウェアからソフトウェアまで提供するオールインワンの会社だ。

FlyTrex Muleは、小型冷蔵庫くらいの大きさのオクトコプター(8軸ドローン)で、最大2.7 kgの荷物を積載できる。これはChipotleのブリトー4本分に相当する。時速約72 kmで約22 kmを飛ぶことができる。

つまり、SeamlessやPostmatesに食料品を配達してもらうやり方は今後数年で全く違う体験になる。食料品だけではない。CEO・共同ファウンダーのYariv Bashは、Amazonが配達する荷物の大部分(80%以上)は2.7 kg以下だと言っている。

できるだけ効率を高めるために、FlyTrexはドローンを着陸させず、ケーブルに結び付けたバッグに入れて商品を届ける。目的地 ―― FlyTrexの配達先は個人の住宅 ―― に着くと、ドローンはケーブルを使って荷物を降ろす。荷物は自動的にケーブルから外れる。

ドローンが去った後にはビールの4本パックが残される(私の場合)。

FlyTrexは離陸と距離ベースで企業から料金を取る。企業はFlyTrex APIを通じてドローンによる配達を管理できる。

FlyTrexはプロジェクトの詳細を公表していないが、来年のうちに未発表の「都市環境」で荷物の配達を始めるべく、郵便事業者と交渉を進めている。

私たちは、未来を生きている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

B-Shoesは、高齢者の転倒を未然に防ぐ靴

米国では毎秒ひとり以上の高齢者が転倒して、年間2万7000人以上が亡くなっていると、CDC[疾病対策センター]は報告している。

しかし、イスラエルの都市ハイファのある企業が、転ぶことそのものを防ぐ方法に取り組んでいる。

B-Shoe Technologiesがプロトタイプを開発中の靴は、一歩踏み出すごとにバランスの乱れを検知して、ミニランニングマシンのようなシステムを使って自動的にバランスを取り戻す。

この靴は、圧力センサー、マイクロプロセッサー、移動検知器にソフトウェアを組み合わせて、履いている人が滑ったことを検知するとローラーを前後に動かして転倒を未然に防ぐ。

B-Shoe Technologiesは、現プロトタイプはごく初期段階にあり、デザインの無駄を省いて2年以内に量産する計画だと話している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

スマートな銃ロック、Zore XがIndiegogoで2.5万ドルを集める

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鍵のかかっていない銃はいくつもの命を奪いかねない。事実、The Traceによると、2015年には幼児が週に平均1人を射ち、その多くが自分を傷つけあるいは死に至らしめている。彼らが銃を手にすることができたからだ。

Zoreは、他の多くの製品と同じくこの問題に挑もうとしている。

Zoreはイスラエルのエルサレムに拠点を置くスタートアップで、スマートな「ガンロック」を作った。スマートフォンアプリとつなぐことによって、Zore Xは銃を離れたところからアンロックできる他、Bluetoothの範囲内で銃の移動も監視できる。

しかし、多くの人は緊急時に銃をアンロックするためにスマホをいじりたいとは思わない。ロックされたままの銃は、攻撃者を前にして役に立たない。

だからZoreは、Zoreロックそのものに暗証ダイアルをつけた。ロッカーの鍵に似たもので、ダイアルを左右に何回か回して暗証番号を入力する。比較的長い番号であっても数秒のうちにロックを解除できる。

Zoreは、少し練習すれば、後ろ手や暗闇の中でもZoreのロックを解除できるとさえ言っている。

銃のロックは、Zore自身の物理的ロックボタンを使ってのみ可能だ。

上記のアンロック手順を学習するために、ZoreはZoreトレーナーというアプリを提供しており、テストしたユーザーはすばやく銃をアンロックできることに驚いている。

同社は、自宅に置いた銃をもっと遠くからスマホアプリで監視できる、Zore Bridgeも販売している。Bluetoothを利用して、メインアプリと同様に銃の動きを監視して、誰かが移動しようとすると通知する。

さらに保護機能を高めたいユーザーのために、Wi-FiベースのZore WatchDogもあり、こちらは銃とロックを世界中から監視できる。

銃をより安全にしようとするテクノロジーベースの製品は、これまでに数多く見てきており、最近のCES ハードウェアバトルに登場したIdentilockもその一つだ。

Zoreは同製品を6月にIndiegogoで公開し、支援者から25万ドル近くを集め、会社の目標額10万ドルをすでに大きく上回っている。

7月4日の独立記念日にはディスカウント特典がある。Zore X 2台とZore Bridge 1台に、WatchDogがついて209ドルだ。

ZoreのIndiegogoプロジェクトはこちら

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ParaZero SafeAirはドローンを軟着陸させるパラシュート―完全自動でバッテリー切れにも対応

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ドローンは高価なガジェットだが、残念ながらいずれ必ず墜落する。イスラエルのスタートアップ、ParaZeroはこの問題に解決策を提案している。パラシュートだ。 ParaZeroのSafeAirはドローンのトップに取り付けるカプセルで、射出式パラシュートを内蔵している。作動は1秒以内で、非常に低い高度でもドローンを安全に着陸させることができるという。

ParaZeroではこのパラシュートはユーザーからのコマンドなしに自動的に作動するとしている。つまりドローンがビルの向こう側に回りこんで見えなくなったとたんにバッテリーが切れるというような状況でも自動的にパラシュートが開くわけだ。

SafeAirはエアバッグのドローン版といえるだろう。当面ターゲットとするユーザーはホビーイストで、市場に最初に出るSafeAirは3DR Solo用だ。ParaZeroはこれまでもDJIと協力してきた。将来はホビー市場だけでなく、プロ市場にも対応させたいという。

ParaZeroは 2012年に航空安全の専門家チームによって創立された。 ParaZeroのCEO、Eden AttiasはTechCrunchの取材に対して「われわれはホビー向け小型ドローンから数百キロもある商用大型ドローンまですべてに対応させていく」と語った。ParaZeroでは世界初の実用的有人マルチコプターMartin Jetpackのパラシュートも手がけている。

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Attiasはドローンの将来についてこう語った。「将来、われわれの生活にドローンが大きな役割を果たすようになることは明らかだ。空中撮影、宅配、ホビーなどあらゆる応用が考えられる。そうなればドローンの機能として自身を墜落の衝撃から守ると同時に地上の人々や施設にダメージを与えないような安全性を組み込むことが最優先となる。SafeAirは自動車のエアバッグ同様確実に作動する信頼性の高さからしても、この用途にもっとも適したソリューションだと信ずる。われわれのシステムはバッテリー切れなどドローンの飛行継続に致命的な支障が生じた場合、完全自動で作動する。さらに重要な点だが、作動が高速であり、広範囲に安全を保障する」。

ParaZeroでは3ヶ月前から業務拡大のための資金を募集中だ。 ともあれ、重く、高価なドローンを飛ばすユーザーはクラッシュの際の自他の安全を確保するためのなんらかのシステムを必要としているこは間違いない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

医療機器からペットの健康まで―イスラエルのヘルス・テクノロジーに世界の多国籍企業の関心が集中

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イスラエルの数多くの小さなヘルス関連スタートアップが集める世界の大企業の関心は恐ろしいほどだ。スイスやアメリカ生まれの多国籍製薬会社や医療企業はイスラエルのハイテク・ブームから利益を得ようと試みている。イスラエルのヘルス・テクノロジー自体、世界的な医療テクノロジーのイノベーションの需要に牽引されている。その結果、イスラエルは投資家の注意を強く引き付けるようになっている。

Israel Advanced Technology Industries〔イスラエルの高度テクノロジー産業〕の2015年の報告によれば、同国のライフ・サイエンス企業は2014年に14億ドル以上の資金をNASDAQで集めている。

つまり、2014年に行われたバイオテク関連の上場73件のうち、約1割、7件はイスラエル企業だった。さらにこの報告に引用されているVenture Capital(IVC) Research Centerによれば、 8億100万ドルの資金がイスラエルの167社のライフ・サイエンス関連企業に投資された。これは前年に比べて55%の増加だ。

多国籍企業の一部はイスラエルでスタートアップの買収に力を入れているが、同時にAbbott Labs、Philips、 Carestream Johnson & Johnson他の有力企業は現地にR&Dセンターを開設している。

特にこの数ヶ月、わが国のヘルス関連スタートアップへの関心が高まる傾向が見てとれる。

この10月だけでも、この記事のタイトルを裏付けるような動きがあった。たとえば、今月初旬Boston Scientific Corporation (NYSE: BSX) はある種の心臓弁膜症に対して人工心臓弁を提供するイスラエルのスタートアップ、MValve Technologies Ltd.に対する追加投資を完了したことを発表した。.

もう一つ大きな動きとしては、スイスの巨大製薬会社、Novartis (NOVN: VTX)が、イスラエルの幹細胞治療研究企業、Gamida Cellに最大1500万ドルの投資をすると発表したことが挙げられる。2014年にNovartisはGamida Cellに3500万ドルを投じて15%の株式を取得している。Novartisの投資は最大で6億ドルに達する可能性がある。

Cukierman & Co. Life Sciencesの社長、Dr. Laurent Choppeは次のように証言する。

こうした〔投資などの〕動きは、イスラエルの現地で起きているイノベーションのトレンドをはっきりと証明するものだ。現在、わが国のスタートアップに対して外国企業は最初期から投資を行っている。過去には外国からの投資はもっと後の段階で行われるのが普通だった。たとえば、Novartisの2回目の投資がこのことをよく示している。イスラエルのバイオテクはすでに世界的なブランドとなったといえるだろう。さらに、イスラエルの国家最高技術責任者(Israel’s Chief Scientist)もスタートアップの発展に多大な貢献をしてきた。 今やわれわれは過去の努力の成果を刈り取る時期に至っている。

イスラエルのテクノロジーR&Dのレベルの高さは世界の注目を集めている

去る9月には、 Johns Hopkins大学テクノロジー・ベンチャーズがイスラエルのヘルスITのインキュベーター、 Luminoxとの間で段階的契約に調印した。また同月、アメリカの医療機器メーカー、 ZOLL Medical Corpはうっ血性心臓障害を早期に発見するテクノロジーを開発しているイスラエルのスタートアップ Kyma Medical Technologies Ltdを買収した。9月初旬にはワシントンDCに本拠を置くアメリカのべんチャーキャピタル、 eHealthVenturesが脳障害を治療するテクノロジーを研究しているテルアビブのスタートアップ、 Intenduに投資したと発表した。

Choppe博士によれば、さまざまな多国籍企業がイスラエルに大きな組織を置き、有望なスタートアップに目を配って必要なら即座に投資ができる態勢を整えているという。

大企業傘下のベンチャーキャピタルがイスラエルを訪問する頻度が増えている。この点は過去からはっきり変わった点だ。こうした大企業本体はイスラエルでずっと前から商業的に運営されているが、最近はイスラエルにおける初期のスタートアップのモニタに力が入れられている。

イスラエルのライフ・サイエンス系産業は多様だが、中でも医療機器の分野は抜きん出ている。 Israel Advanced Technology
Industriesの調査によると、全ライフ・サイエンス産業の53%、725社が医療デバイスを扱っており、バイオテク・製薬が2位を占め、23%、317社、ヘルスケアITが20%などとなっている。

こうした大きな分野の確立にともない、消費者とこのようなテクノロジーを結びつける下位分野の起業も活発になっている。.

9月にテルアビブに本拠を置く Archimedicxがオンライン医療検索エンジンを世界に公開した。この検索エンジンを利用すると、特定の疾病、症状をもつ患者はそれに対応した専門医療施設を容易に発見できるという。この検索エンジンは現在世界の主要な300病院を症状や疾患の種類に応じてランクづけしている。「われわれのアルゴリズムは世界の主要病院を特定の疾患は必要とされる特殊な処置ごとにランキングできる。対象となる病院がわれわれと提携していなくてもランキングは可能だ」とArchimedicxのCMO〔最高医療責任者〕のGuy
Klajmanは言う。

2015年初頭に起業したテルアビブのスタートアップ、 Somatixは、人間の手の動きをモニタし、喫煙のような独特の動作を検出して健康に有害な行動を防止するのに役立つフィルタリング・アルゴリズムを開発した。

イスラエルのスタートアップはこうした人間の医療に関して努力を払っているだけでなく、一部はペットの健康という多少競争相手の少ない分野にも進出している。たとえば、 PetPaceはペット用の首輪で、無線で健康情報その他ペットの行動をモニタする。.

人間からペットまで、イスラエルのスタートアップはヘルス分野、メディカル分野まで幅広い。このエコシステムは患者から医療機関、ヘルスケア提供者、デバイス・メーカー、ヘルス・ソフトウェア・ベンダー、R&D組織のすべてをカバーしている。

このイスラエルのイノベーションのレベルの高さはすぐに世界的多国籍企業の注目するところとなった。現在のトレンドが継続するなら、 2015年はイスラエルのヘルス・テクノロジー産業にとってまたも記録破りの年となるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


【以上】

アマチュアが高度なビデオ作品を作れるオンラインビデオエディタShowboxは、無限に豊富なフォーマットが売り物

showbox

Showboxの目標は、プロでないビデオ作者がいちばんよく使う、オンラインのビデオエディタになることだ。このテルアビブのスタートアップはこのほど800万ドルのシリーズAを完了したが、お金は主に製品開発と機能の増強に投じられる。

投資家のCharles Petruccelliは元American Express Global Business Travelの社長、Brad WechslerはIMAXの会長、Giora KaplanはWixの協同ファウンダでCTO、そしてKarl PetersonはTPG Capitalのシニアパートナーだ。

Ciscoの調査によると、2018年には消費者トラフィックの80%がビデオになる。今年はすでに昨年より64%増だ。今やYouTubeだけでなくFacebookTwitterも自動再生ビデオを導入しているから、なにしろオンラインビジネスにとってビデオはますます欠かせない要素だ。

ただしShowboxのファウンダTomer AfekとEffie Atadは、アマチュア用とプロのスタジオ用とではエディティングツールの落差が大きい、と感じている。

“企業はますますビデオに大金をつぎ込んでいるが、でも彼らは、製作コストが高すぎて、気楽にいろんなことをトライできない、と泣いている”、とAfekは語る。

 

フリーミアムのShowboxは今非公開ベータで、試用希望者が5万人あまり待機している。同社は上記の落差を解消するために、多様なフォーマットを提供しようとしている(トップファイブリスト形式、チュートリアル形式、など)。ユーザは自分の生映像をそこに放り込み、エディティングツールを使って微調整を行う。また、タイトルのカードやエンディングもつけ、自動生成のバックグラウンド、あるいはGetty ImagesやReuters、Dori Mediaなどが提供している無料の映像も利用する。

同サイトは、ほかのオンラインプラットホームに比べて映像の制作がずっと高速だそうだ。ビデオをShowboxの上でホストして、ほかのサイトに埋め込むことも可能。

オンラインのビデオエディタはコンペティタが多く、代表的なサイトとしてYouTube EditorWeVideoMagistoなどがある。しかしAfekによると、“今市場に存在するソリューションは、ビデオ製作過程のごく一部の要素しか扱わない不完全なものや、高すぎたり、あるいは経験豊富なプロにしか使えないものばかりだ”、という。

Showboxはまず、ビデオ製作過程のあらゆる部分をカバーする。PCやモバイルで撮ったものをフォーマットし、ビデオの埋め込みができるようにし、ほかのサイトにアップロードできるようにもする。どれもこれもShowbox的なビデオ(Showboxでエディットしたな、と分かるようなビデオ)にならないか、という心配に対しては、豊富なテンプレートや、ジャンル別のフォーマット、そしてサードパーティ提供のコンテンツにより、ビデオ作品の他との完全な差別化が可能だ、と彼らは主張する。

Afekはこう述べる: “仮に同じフォーマットを選んだとしても、二つの作品が同じに見えることはない。うちのプラットホームはモジュール構造なので、無限に多くのフォーマットを作れる。複数のジャンルがあり、それぞれに多様なフォーマットがあることによって、個人や企業のユーザは独自のブランド色を持った、個性的なビデオを作っていける。コンテンツをフォーマッティング用のツールボックスに放り込めば、ほぼ自動的に作品が完成するから、プロがやるようなポストプロダクションの処理もほとんど必要ない”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a.
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イスラエルは日本のスタートアップ企業にとって世界へのゲートウェイになるか?

これまで何度かTechCrunch Japanで報じているが、サムライインキュベートの創業者でCEOの榊原健太郎氏が、イスラエルと日本をブリッジするまた別の枠組みを作って動き出したようだ。

サムライが今日発表したのは、現地テルアビブのアクセラレーター「StartupEast」への投資と協業だ。まず6月に東京でイベントを行い、イスラエルを始めとする各国のスタートアップ関係者を日本へ紹介する。そして「Startup adVenture Bootcamp」と呼ぶ、3週間をテルアビブで過ごすアクセラレータープログラムの日本のスタートアップからの受け付けを開始する。3週間のプログラムには、ワークショップやネットワーキングイベントを通じた現地スタートアップ界の成功者との交流や、担当分野ごとのメンターによる英語圏でのテストマーケティング、投資家の前でのピッチを行うデモデイなどが含まれているそうだ。ちなみに、これは公式発表としては第1号のイスラエル投資案件だが、榊原氏によれば未公表の投資案件はすでに10社以上になっているそうだ。

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なんでイスラエルなのか? なにをやってるのか?

日本から見るとイスラエルは距離的にも心理的にも遠い。飛行機だと韓国経由でテルアビブまで15時間、いつもドンパチやっていて、人気のダウンロードアプリナンバーワンは「ミサイル警報アプリ」というような土地柄だ。ヨーロッパの一部のようでもあり、アジアの一部でもあるとイスラエル人はいうが、それは日本で言えば三重県のような感じではないのか。「近畿じゃねぇ。中部でもねぇ」と言われる三重県民には申し訳ないが、つまりイスラエルもアジアと文化的近縁性が薄いように思う。

なのだけど、イスラエルこそ、日本のスタートアップ企業にとって、世界へ繋がるゲートウェイになれるのだ、と、榊原氏が投資とパートナーシップを決めたStartupEastの創業者でパートナーを務めるアモス・アブナー氏(Amos Avner)はSkypeインタビューでTechCrunch Japanに、そう語った。

startupeast01「日本企業がアメリカに直接行ってビジネスをやってもいいのですが、たぶんすごく難しい。例えば、日本の大手通信キャリアのCEOがシリコンバレーに行っても、面会を断られることがあったと言います。人的ネットワークを使った正しい紹介がないと入っていくのが難しいのです」(アブナー氏)

ここだけ聞くと、なぜか間に入ってきて紹介料を取るいかがわしい「紹介ビジネス」っぽくも聞こえるが、この言葉の裏には、これまでイスラエルが培ってきた米国をハブとする世界とのビジネスネットワークへの自信があるようだ。

「イスラエルは人口800万人の小さな国ですが、オープンな社会です。国内市場が小さいので輸出に頼らざるを得ません。だからイスラエルでは英語教育は小さなときからやっていて、みんなバイリンガルだし、それが成功への鍵だと理解しています。日本同様にアメリカから大きな影響を受けています。アメリカはグローバリゼーションの中心ですしね。テルアビブは西洋化していて、街を歩けば目につくブランドも物品もアメリカから入ってきています。イスラエル人はアメリカへ旅行もするし、仕事という意味でも移住者が多いんです。シリコンバレーだけでも5万人のイスラエル人が働いていてます」

総人口800万のうち5万人がシリコンバレーで働いているというのは、かなりの割合だ。これを日本の人口1億2000万人にして考えると、約75万人の日本人がシリコンバレーにいておかしくないという計算になるけど、もちろんシリコンバレーに日本人はそんなにいない。

アブナー氏によれば、西洋文化との親和性の高さとオープンさを生かして、アジアでいえばシンガポール的なハブになることを目指しているようだ。

「例えばスリランカは、ずっと内戦状態でしたが、一方でリゾートでも有名で、観光業で国家イメージを作るのに成功しています。イスラエルもビジネスやスタートアップのハブとして確立していきたいんです。すでにヨーロッパやアメリカ方面へのコネクションはできていますが、アジアは、まだこれからです。これは別にイスラエルが良い国だからおいでよって話じゃないんです。イスラエルはアジアの一部で、中国や韓国、日本にとって自然な、世界に通じるゲートウェイ、足がかりとなれるという話です」

StartupEastは2013年創業の、イスラエルとアジアを結ぶという、ちょっと特異な立ち位置のアクセラレーターだ。これまでイスラエルはもちろん、韓国やシンガポールのスタートアップ企業を合計15社ほど「Startup adVenture Bootcamp」という3週間のアクセラレータープログラムに受け入れてきた。現在も次の7社が決定しているという。アジア圏の起業家にとってはイスラエルと、その向こう側への世界へのハブという位置付けだが、逆方向のベクトルとして、アジア圏へ進出したいイスラエルを始めとするスタートアップ企業へのマーケティング支援や提携提案なども行うという。StartupEastは6月に、4社のイスラエル企業と1社のシンガポール企業を引き連れて東京で初めてのイベントを行うそうだ。サムライインキュベートがStartupEastと提携した背景には、イスラエル発のスタートアップ企業のアジア進出をゲートウェイでごっそり押さえたいということがあるようだ。この辺は先行者メリットがありそうだし、アブナー氏も先駆者としての榊原氏を高く評価している。「なぜサムライと組んだかといえば、それは彼らが先駆者であり起業家で、自分たちと同じマインドセットを持っていると思ったからです。テルアビブで日本人や日本企業のプレゼンスがないわけではありません。楽天の人たちはいたし、ソニーも来てるし、医療関係でインキュベーターを買収したりというのがありました。でも、今回のような取り組みではオレがやるぞ、という人物が必要です。ケン(榊原氏)は大きなリスクを取ってきたし、ユニークな存在です」。

StartupEastは、シンガポール、韓国には提携パートナーがいて、今回日本を追加。今後は中国でもローカルの提携パートナーを探すのだという。

スタートアップハブとして実績を伸ばすテルアビブ

イスラエルといえば、シリコンバレーやロンドンと並んでスタートアップ先進地域として名を馳せている。

例えば、Economistがまとめた各種データによれば、1人当たりのベンチャーキャピタル投資額ではダントツの世界1で170ドル。2位のアメリカに対しても75ドルと2倍以上の差を付けている。PwCがまとめたレポート(PDF)でも、イスラエルのスタートアップ企業のM&AとIPOによるエグジットの総額は2012年が56億ドル、2013年が76億ドル、2014年が149億ドルと年々急速に伸びている様子が分かる。バイアウトによる早すぎるエグジットの多さが逆に懸念されていたようだが、2014年にはIPO件数が18件と前年の3件から大幅に増加している。TechCrunchも頻繁に伝えているが、イスラエル発のスタートアップとしては、Googleが10億ドル以上で買収したWazeや、Appleが3億ドル以上で買収したPrimeSense楽天が9億ドルで買収したViberなどが思い浮かぶ。最近だとDropboxがオフィス統合のために買収したCloudOnというのもイスラエルだ。

これまで買収する側としては、アメリカのテックジャイアントが多かったが、イスラエルのスタートアップに注目するのは、もはやアメリカだけではなく、中国からもどっと資金が流れこんでいるようだ。たとえば、2015年1月にはイスラエルのVCであるSingulariteamがTencentやRenrenから1億ドル以上の資金を集めてファンドを組成したり、同様にイスラエルVCのCarmel VenturesがBaiduなどから2億ドル近くの資金を集めて4号ファンドを組成したというニュースもあった。TechCrunchではイスラエルがエグジット大国となりつつあって、中国企業がイスラエルのスタートアップに接近していると伝えしている。

テルアビブで生まれ育ったというアブナー氏によれば、韓国や中国からイスラエルへは良く人が来ていて、LGエレクトロニクスあたりがイスラエルのスタートアップを買収する例も出ているそうだ。一方、サムライの榊原氏が帰国時に日本企業をまわった印象では、「上場企業の製造メーカーやIT企業の社長と話をしても、皆さんイスラエルのことをご存じない」という状況という。そういう意味でも日本とイスラエルを繋ぐことには、人的交流による情報流通という役割もありそうだ。

StartupEastでは、すでにイスラエル=アジアの人的ネットワークによって、協業の事例が出てきているが、アブナー氏は「今後3、4年でもっと日本とイスラエルのジョイント・ベンチャーが出てくるのでは」と話している。