IVS LAUNCHPAD SaaSの優勝者はカミナシ、創業4年目で事業をピボット

毎年、年2回程度開催されるInfinity Ventures Summit(インフィニティベンチャーズサミット、IVS)は、投資家やVC、スタートアップ企業を一堂に会するイベントだ。今年はコロナ禍で夏のイベントはオンライン主体のIVS 2020 SUMMERとして実施。冬のイベントは。セッションやパネルディスカッションを中止し、目玉のピッチコンテストであるLAUNCH PADとネットワーキングに絞り込んだ内容となった。12月18日に、SaaSに絞ったピッチコンテストLAUNCH PAD SaaSで優勝者が決定した。

LAUNCHPADは、 スタートアップの登竜門としてたピッチイベント。 厳選な選考を経て選ばれた決勝進出者は投資家・VC・大手企業など審査員の前でプレゼンテーションして順位を競う。今回は14社が最終選考の決勝ラウンドに進んだ。

優勝(1st Place)を勝ち取ったのは、手書き情報を効率化するための現場管理アプリSaaSを開発・提供するカミナシ。同社は2016年設立のスタートアップで、食品バーティカルSaaS事業からピボットして2020年6月にカミナシを作り上げた。

以下、2位はJunify Corporation、3位はTsunagu.AI、4位はSpiderLabs、5位はアスキャストが受賞した。

Junify Corporation

社内情報システム「Junify」を開発・運営。iOSやAndroid 上で動作するアプリで個人の認証情報を詰め込み、勤務中の状況を確認するセンサーの役割を果たす。独自のQR コードを用いたログインにより、スマートフォンでPC上でのセッション管理可能。重要な機密情報に触れる場所を、ジオフォフェンスを利用しGて、その業務を許可する人単位に指定することにより仮想的なオフィスのように指定することもできる。ユーザー名とパスワードを用いた VPN 経由のアクセスなどの手法よりも、高レベルのセキュリティを実現できるという。

Qasee

会社の効率化、組織改善を実現する「Qasee」を開発・運営。 各社員のPCでの作業を可視化することで、社員1人ひとりの意識と行動改革を促し、組織の問題点課題点を浮き彫りにすること可能とのこと。具体的には、経費や残業時間の削減、管理職の負担軽減、従業員のやる気向上などに支援する。

カミナシ

現場の業務フローをデジタル化するノーコードツール「カミナシ」を開発・運営。手書き情報のデータ化、目視チェック・承認、Excelへの転記・集計、メールでの報告・検索などを自動化できる。

関連記事:現場作業員の業務をiPadで効率化する「カミナシ」が正式ローンチ、入力内容を自動でExcel転記

NIMARU TECHNOLOGY

自由に話しかけられるバーチャル空間「oVice」を開発・運営。メンバーに近づけば声が大きく聞こえ、遠ざかれば小さくなっていくのが特徴。バーチャル空間でアバターを動かすだけで、現実のように自由自在に会話ができるのが特徴だ。話したい時に、話したい人に近づくだけで会話がスタートするため、新しい部屋やグループを作成する必要がない。

オンリーストーリー

決裁者のマッチング支援SaaS「ONLY STORY」を開発・運営。従業員数など、さまざまな条件で2000社以上の企業・経営者を検索できるほか、経営者の過去・現在・未来のSTORYを記事で読める。

関連記事:経営者マッチングプラットフォーム運営のオンリーストーリーが約3.45億円を調達

Tsunagu.AI

フロントエンド開発を自動化「FRONT-END.AI」を開発 。ウェブエンジニア向けローコードサービスで、ディープラーニングを始めとした、複数の機械学習モデルを独自に結合し学習をさせることで、デザインを理解できるよう開発されている。既存のワークフローのまま導入できるのが特徴だ。デザイナーが既存のフローで作成したデザインカンプを基にAIが初期コーディングを行うことで、初期コーディング時間を50%以上削減可能とのこと。

関連記事:ウェブエンジニア向けローコードサービスのTsunagu.AIがプレシリーズAで1億円を資金調達

アスキャスト

インテリアコーディネートを効率化するコーディネート用SaaS「Amour」を開発・運営。デザイナー・建築士向けインテリア提案ツールで、家具の選定・発注の時間が40%削減できるという。顧客の要望ヒアリングから商品選定、プレゼンボードや商品リストの作成まで、インテリア提案における全業務に対応。

SpiderLabs

アドフラウド(詐欺的な不正行為)対策ツール「Spider AF」を開発・運営。AIの精度の高いスコアリングを特徴としており、独自のAIがアドフラウドを検知してスコアリング可能。ダッシュボードを利用することで、Excel作業をより簡単に効率よく作業できる。

conect.plus

IoTアプリケーションSaaS「conect+」を開発・提供。情報可視化/IoTのデータデザインに特化したアプリケーション作成サービス。IoTアプリが作成できるエントリーサービスの「ct+ Lite」、
より高度なIoTデータデザインサービスを実現する「ct+ Studio」がある。

セルン

デジタルオンデマンド・サプライチェーン・プラットフォーム「BOOKSTORES.jp」を開発・運営。在庫を持たずに誰でもPOD書店をオープンできる。ECサイト開設、1冊から印刷・製本用、ECサイトでの受注・決済から発送まで一括して提供する。

STANDS

顧客のライフタイムバリュー最大化する「Onboarding」を開発・運営。オンボーディングの自動化、退会防止、アップセル施策を顧客に合わせて自動化、カスタマーサクセスの効率化などが可能。サイト内にJavascriptタグを設置するか、ブラウザの拡張機能を追加するだけで導入できる。

トルビズオン

上空シェアリングサービス「sora:share」を運営。土地所有者とドローンユーザーをつなぎ、空撮や練習するための空をシェアできる。ドローンユーザーは、今まで飛ばせなかった空を利用可能できる一方で、不動産所有者は自分の土地を登録すれば、その上空をドローンユーザに貸し出して新たな資産として運用できる。なお、民法207条「土地の所有権はその上下に及ぶ」とあり、一般的には上空300mまでは不動産所有者に権利が及ぶと解釈されている。

テレワーク・テクノロジーズ

テレワークのためのワークスペースシェアリング「テレスペ」を運営。LINEでテレスペを友達追加するだけで、リアルタイムにワークスペースの空席が地図上に表示され、予約なしでいきなり店舗へ行き、画面を提示することで利用できるのが特徴。

SOUSEI Technology

スマホで家の管理を実現する「マイホームアプリknot」を開発・提供。書類や取扱説明書、住宅会社などマイホームの情報をひとまとめにできる。担当者とチャットでやり取りできるほか、工事やメンテナンスなど自宅の記録をスマホアプリいつでも確認できるのが特徴だ。

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IVS LaunchPad準優勝の「DeepLiquid」をJFEエンジニアリングが完全子会社化

水質判定AI「DeepLiquid」を開発・提供するAnyTechは10月11日、プラント大手のJFEエンジニアリング(JFEE)と株式譲渡契約を締結し、JFEEの完全子会社となったことを明らかにした。

AnyTechは2015年6月創業の「AI×流体力学」スタートアップ。彼らが提供するDeepLiquidは、流体力学の知見を生かして独自開発した水質判定AIだ。監視カメラとAIを活用した動画解析により、水質の異常検知を即時に可能とする技術で、これまでのセンサーや人による水質監視と比較して、異常発見までの時間を短縮し、コストダウンするだけでなく、監視精度を高め、水質異常による設備の操業停止や水質汚染の拡散などのトラブルを減少することができる。

DeepLiquidは、今年7月に神戸で開催されたInfinity Ventures Summit(IVS) 2019 Summer KOBEのLaunchPadで準優勝を獲得。既に水処理施設やバイオ医薬品・化粧品・飲料製造工場、自動車関連企業といったさまざまな業種の企業に提供され、高評価を得ているという。

AnyTechでは株式譲渡により「JFEEの保有する水処理・ゴミ処理・製鉄・エネルギー領域をはじめとする各種プラントのアセットやデータを活用し、DeepLiquidのさらなる事業拡大や新規事業の創出を目指す」としている。

また、JFEE代表取締役社長の大下元氏は「この度の取組みにより、当社既存事業領域の幅広いアセットとAnyTechの革新的なAI開発技術を存分に生かし、全く新しい価値の創造が可能になると確信しています。 当社は、今後も積極的に、革新的な技術を有するスタートアップ企業やベンチャー企業への支援、協業を進めてまいります」とコメントを寄せている。

海外の目に映る日本のスタートアップエコシステム

左から、Antti Sonninen氏、Marvin Liao氏、Oranuch Lerdsuwankij氏、Casey Lau氏、Jerry Yang氏

2018年12月に金沢で開催されたテクノロジー・スタートアップの祭典Infinity Ventures Summitでは数多くの興味深いセッションが開催されたが、個人的に特に印象に残っているのは「Startup Ecosystems Around the World」と題され4人の海外ゲストが登壇したセッションだ。

Slush Tokyo Co-FounderのAntti Sonninen氏がモデレーターを務めた同セッションには、StartupsHK Co-FounderのCasey Lau氏、500 Startups PartnerのMarvin Liao氏、Techsauce Co-FounderのOranuch Lerdsuwankij氏、そしてHardware Club General PartnerのJerry Yang氏が登壇。1時間にもおよんだ同セッションでは、日本にもよく訪れるという上記4名から日本のスタートアップエコシステムに関しても少しだけ言及があったので紹介しておきたい。

500 StartupsのLiao氏は日本のスタートアップシーンを「ガラパゴス現象」という言葉を用いて説明した。「この国には独自の文化やインフラに基づき、日本でのみ生存しているスタートアップが存在していている。この国で成功したとしても他の国ではなかなか難しい。それは逆も同じだ。国際的で巨大なスタートアップやプラットフォームでも日本市場参入にはとても苦労する」(Liao氏)

以前に取材したY Combinator出身のTemplarbitも文化の違いなどからなる日本市場参入の難しさを説いていた。TemplarbitのCEO、Bjoern Zinssmeister氏は競争意識が強いアメリカと比べ日本では人間関係が重要で“推薦”が必要となってくるため、それが原因で多くの米国企業がこの国で苦戦するのでは、と話していた。

一方で日本に来る際には多くのアーリーステージのスタートアップや起業家に会うようにしているというYang氏は日本人の過労気味なワークスタイルを気に掛けているようだった。

Yang氏いわく「シリコンバレーのレイトステージのスタートアップでは残業をしている人たちはさほどいない。彼らは8時か9時ころには自宅で仕事しているか休んでいる。だが日本で出会った起業家たちはハードワークや長時間労働を尊重する傾向にある」という。

「“どれくらい”やるかではなく“どのように”やるかが重要だ。そういった意味ではアメリカなど海外のスタートアップ創始者たちのほうが、この国で出会った起業家たちよりもある意味で敏腕だと言えるのでは」(Yang氏)

Yang氏の言うことも一理あるが、いわゆる「持ち帰りサービス残業」により「定時あがり」が可能となっているという指摘もある、と一言加えておこう。

そのYang氏の発言に対し日本のスタートアップの肩を持ったのはLiao氏だった。Liao氏は日本の「エコシステムがまだまだ未熟」であることが根本的な原因なのでは、と述べた。

「アメリカやヨーロッパのエコシステムは長きに渡り存在し、多くの企業が成功を成し遂げてきた。それによって、次世代を見てみると、アーリーエンプロイーたちはまだハングリー精神が絶えないうちに会社をスケールさせるノウハウを学べている」(Liao氏)

ではその状況をどのように打破していくのか。どのように日本のスタートアップエコシステムを成熟させていくのかーーStartupsHKのLau氏はネットワーキングで海外からのアドバイスに耳を傾けることも重要なのでは、と説明。そして日本ではSlush Tokyoを始めとする大きな国際的テックカンファレンスが開催されており、日本と海外を繋げる重要な架け橋となっていると話した。

「香港でも最初は(そのようなイベントが)必要不可欠だった。「誰かが手を取ってくれて、スタートアップエコシステムを生成してくれるのではない」(Lau氏)だからこそ、カンファレンスなどで多くの人とネットワーキングし情報を共有することが重要だ、と同氏は言う。また、同氏は日本のスタートアップの情報を配信し、取材で各地を巡っているThe BridgeのMasaru Ikeda氏を賞賛し、会場は拍手に包まれた。

だが一方で、Lau氏は日本人起業家の英語力など言語力や社交性に関しては懸念を抱いているようだった。「唯一の不安材料はコミュニケーションレベル。タイやインドネシアでは誰もが社交的で、かつ英会話はごく一般的だ」(Lau氏)

タイで開催されているテックカンファレンス、Techsauceにはどれくらいの日本人が参加しているのだろうか。来客者数は1万人以上と説明されているが、Techsauce Co-FounderのLerdsuwankij氏いわく日本人の来場者は50人にも満たなかったという。

だがLerdsuwankij氏は代表取締役の長谷川潤氏がタイで創業したFinTechスタートアップOmiseを話題にあげ、タイは日本の起業家にとって優れた環境だと説明した。バンコクには日本人運営のコワーキングスペースMonstar Hubなどもあり、良好な日本人コミュニティーが存在しているのだという。だが成功には「文化の理解」と「プロダクトのローカル化」の徹底が不可欠だと同氏は話していた。

もし日本人VCや起業家が登壇していたらどのような議論が交わされていたのか気になるところだが、以上がIVSセッションにおける海外からの4名のエキスパートたちによる日本のスタートアップシーンに関する言及の一部だ。

IVS Launch Padの優勝はエアロネクスト

12月18日、19日の2日間、石川・金沢にある石川県立音楽堂で開催されたInfinity Ventures Summit 2018 Winter Kanazawa。2日目の朝にはスタートアップ企業14社によるピッチイベント「Launch Pad」が行われた。各社の持ち時間は6分、Q&Aはなしというスタイルだ。

2時間以上にもおよぶ熱戦を勝ち抜いて優勝したのはエアロネクスト。同社は10月に開催されたB Dash CampのPITCH ARENAに続いての入賞となった。2位はバーチャルキャスト、3位はRevComm、4位はRF Locus、5位はPLIMES。

■審査員

  • 慶應イノベーション・イニシアティブ代表取締役社長 山岸広太郎氏
  • KLab代表取締役会長兼社長CEO 真田哲弥氏
  • 大和証券 専務取締役 企業公開担当 丸尾浩一氏
  • YJキャピタル代表取締役/CEO 堀 新一郎氏
  • ディー・エヌ・エー 川田尚吾氏
  • Skyland Ventures代表パートナー&CEO 木下慶彦氏
  • フリークアウト・ホールディングス 本田謙氏
  • ITC Holding EVP & Director of International Business Development Corina Birta氏
  • e.ventures Partner Brendan Wales氏
  • AppWorks Partner Joseph Chan氏
  • ウォンテッドリー代表取締役CEO 仲 暁子氏
  • Drone Fund投資家 Drone Fund General Partner投資家 千葉功太郎氏
  • クラウドワークス 吉田浩一郎氏、gumi代表取締役会長 國光宏尚氏

gemfuture

傷つかない恋AIを。 恋愛ナビゲーションサービス「AILL(エイル)」

コミュニケーションをAIがナビゲートとする世界唯一のマッチングサービス。AIが出会いから相手の気持ちの変化、自分の行動による結果などをリアルタイムで分析。事前にライフプランを共有でき、最適な異性を1〜5人を紹介してくれる。デートを誘うまでの会話についてもAIのチャットアシストがあり、効率よくコミュニケーションが取れる。5年後の年間売り上げ目標は50億円。仕事と愛を両立できる社会を目指す。

RevComm

電話営業を、人工知能で可視化する「MiiTel(ミーテル)」

電話営業を人工知能で可視化するサービス。顧客と担当者が何を喋っているかわからないというブラックボックス問題を解消する。数を打てば当たるという従来の電話営業の生産性を高くすることが目的。会話はすべて録音・解析され、ダッシュボードで一元管理。これにより沈黙の回数などがわかり、オペレーターと顧客のスピードがマッチしているかも判断できる。MiiTelwo導入するとPLのP(Profit)が上がりL(Loss)が下がる。将来的には自動でアポを取るAIなどの開発を目指す。

Hubble

法務ドキュメントのバージョン管理システム「Hubble(ハブル)」

法務ドキュメントのバージョン管理システム。Wordをベースにした従来の契約書の作成や締結までワークフローでは、メールで何度もやり取りが必要で、やり取りが多いほど煩雑になる。現在もうまく管理する方法が確立されていない。Hubbleでは、ドキュメントのバージョンと修正履歴を自動で管理できるほか、過去の交渉過程や検討したリスクも後から確認でき、蓄積したナレッジも共有可能。コメント機能も備わっており、迅速な意思決定が可能になるそうだ。Hubbleをビジネス版Githubとして位置付けリーガルの世界を変えたいとのこと。

GVA TECH

AI契約サービス「AI-CON (アイコン)」

コストの問題で弁護士に頼めない、法的理解がない、時間がないといった課題解決のために作られたのがAI-CON。現役の弁護士が立ち上げたAI契約書レビューサービスで、AIとクラウドを活用して契約書のレビューを行う。サービスにログインし、WordファイルやPDFファイルをアップロードすれば、1営業日以内に条文ごとのリスク評価や修正案などが提示される。GVA TECHは、TechCrunch Tokyo 2018のスタートアップバトルファイナリストの1社だ。

Zenport

貿易業務のコラボレーションツール「 Zenport(ゼンポート)」

煩雑な貿易業務の効率化をサポートするクラウドサービス。貨物のトラッキングや受発注・在庫管理、データ分析、貿易書類の管理などの機能を提供している。同サービスが効率化する分野は大きく分けて書類管理と輸送管理。書類管理については、10枚ほどの書類のやり取りが必要な従来の流れをダッシュボード画面で一元管理することで、それぞれの関係者が必要な情報をすぐに見られるのが特徴。今後、国際貿易のプラットフォーム、国境のない経済を目指す

RF Locus

高精度RFIDタグ位置測定システム「P3 Finder(P3ファインダー)」]

RAIN RFID(UHF帯RFID)タグが貼付された物品を高速・高精度にサーチするためのソフトウェア開発キット「P3 Finder(Phase based 3D RAIN RFID tags Finder SDK)」を共同開発。10メートル以上の読み取り可能なRAIN RFIDタグ位置をユーザーに正確に示すことで、紛失物、サイズ・色違い品、消費期限間近品などを早期に発見できるのが特徴。RFIDリーダ制御の詳細な知識不要で、数行のSwift言語を記載することでアプリケーションに組み込める。

エアロネクスト

4D Gravity®搭載 次世代ドローン「Next(ネクスト)」

機体のフレーム設計を基本から見直して機動性の向上と特徴的な飛行姿勢を実現した、4D Gravity技術を搭載したドローンを開発。産業用途にも応用できるという。具体的には、ドローンの飛行部(プロペラ、モーター、アーム)、搭載部(カメラ、積載物)を物理的に切り離し、機体を貫通するジンバルを1本通すことで、機体バランスの安定を図っており、従来のドローンとは異なり軸がぶれない飛行を可能にする。エアロネクストは、TechCrunch Tokyo 2018のスタートアップバトルファイナリストの1社だ。

マッシュルーム

世界で唯一のネットワーク・電源敷設不要なスマート宅配ボックス「VOX(ヴォックス)」

宅配クライシス、再配達問題を解決する箱のスマート化を目指すスタートアップ。スマホを利用して解錠が可能な宅配ボックスを開発。配達ドライバーが宅配ボックスに荷物を入れると、ユーザーのスマホアプリでその通知を受け取れる。受け取りの記録が宅配事業者に送信されるため、受取確認の捺印書類などが不要になる。ネットスーパーやフードデリバリーの受け取りなども可能。目指すのは「時間消費の束縛から解放」。

モノオク

モノ置きのシェアサービス「monooQ(モノオク)」

個人間で荷物を預けることのできるシェアリングエコノミー型のサービス。例えるなら物置き版のAirbnb。登録できるのは部屋の一角にある押し入れやクローゼット、使っていない倉庫や空き部屋を始めとした個人が保有しているスペース。ホストと呼ばれる荷物の預かり手となるユーザーは、これらの空きスペースを活用して荷物を預かることで収益を上げることができる。小さなスペースをかき集め、テクノロジーと組み合わせることで新たな価値を生み出したいとのこと。

Review

企業を発展させるビジネスマップ「macci(マッチ)」

ネット検索ではなかなか見つからない街の情報を写真付きで閲覧できるサービス。主に不動産会社や求人広告会社が必要とする、直近3カ月以内の空地、更地、駐車場、新築物件、求人広告などの情報を提供する。調査専用のiPhoneアプリを自社開発し、スピーディに信頼度の高い情報を収集。調査撮影した画像情報を社内スタッフが手作業にて入力しているとのこと。圧倒的な低コストで町のタイムリーな情報をデータベース化。アプリを一般公開することで主要都市から全国展開を目指す。

Velodash

「Velodash(ベロダッシュ)」

サイクリングイベントプラットフォーム。これまではサイクリング関連のイベント情報がさまざまなソーシャルプラットフォームに散乱していたほかマッププラニングツールも数多くあり煩雑だったが、Velodashには必要な機能がすべて備わっているという。チーム同士の位置の把握やチャットも可能。

Eco-Pork

カイゼンをデータから。養豚管理システム「Porker(ポーカー)」

農家の改善を支援し、最適な養豚経営を実現させるシステム。データ分析や業界標準から業務のあるべき姿を設定・共有することで、組織での継続的な経営改善を狙う。豚肉の生産性をデータを活用し生産性の改善を可能に。農家が抱える生産コストだけでなく持続可能性を脅かす社会的コストも最小化し、「みんな安心して食べられる環境」を目指す。Eco-Porkは、TechCrunch Tokyo 2018のスタートアップバトルファイナリストの1社だ。

PLIMES

人工知能が嚥下を測る「GOKURI(ゴクリ)」

人工知能が嚥下を測るウェアラブルデバイス「GOKURI」を開発。このデバイスは、筑波大学および筑波大学附属病院における研究成果である、頸部装着型嚥下モニター(特許第5952536号)と情報システムがベースになっている。首に装着したセンサで嚥下音や姿勢を計測し、AI技術とクラウドデータベースが解析し、正しく嚥下できたかどうか、嚥下能力がどの程度なのか定量化するという。日本人の死因の1つである肺炎、その肺炎の7割が誤嚥によるもの。GOKURIを使えば97.3%の制度で嚥下を探知できるという。

バーチャルキャスト

脳汁ドバドバ!次世代コミュニケーションを生み出すVRプラットフォーム「Virtual Cast(バーチャルキャスト)」

ちょっと間違えた未来を作る。ミッションは脳汁の最大化。現実より楽しい仮想現実を提供する。開発者は「本物の美少女になりたい」というその一心でこのサービスを作った。日本の次は中国進出を目指す。後半はバーチャル空間でのプレゼンとなり、来場者を沸かせた。

VRチャットサービスの「cluster.」が優勝——IVSのピッチコンテストLaunch Pad

6月5日〜7日にかけて兵庫県で開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2017 Spring Kobe」。7日の朝には同イベントで恒例となっているピッチコンテスト「Launch Pad」が開催された。1社6分間のプレゼンテーションに審査を通過した14社のスタートアップが挑戦した。1位となったのはVRチャットサービスの「cluster.」だった。2位はネイルプリントサービスの「INAIL」、3位のWiFi接続サービス「タウンWiFi」、4位ビザ申請サービス「one visa」、5位飲み会マッチングサービス「LION Project」だった。登壇企業のサービスは以下の通り。

Popshoot:「よろペイ

お金の立て替えや貸し借りについての「メモ」を記録していく機能を軸にした個人間決済アプリ。ユニークなURLを発行し、貸し借りの相手がそのURLにアクセスすることでクレジットカード決済ができる。今後は店舗での支払い機能などを導入したり、独自のローンを提供することも検討する。詳細はこちら

タウンWiFi:「タウンWiFi

公衆WiFiの接続サービス。事前にWiFiサービスを選択すれば、接続可能なエリアに入るだけで自動的に対象のWiFiに接続できる。世界6カ国・200万スポットをカバーしており、累計200万ダウンロード、100万MAU(月間アクセスユーザー)。8月にはアジア、10月にはヨーロッパに展開する。今後は有料WiFiのアクセス権利販売、接続情報に合わせたプッシュ広告サービスでマネタイズを進める。

アスツール:「Smooz

ブラウザアプリ。レンダリングエンジンは標準のWebkitだが、高度なタブ操作や、履歴を元にレコメンデーションを行う検索、独自のソーシャルブックマークといった機能を提供することで、標準ブラウザであるSafari以上の体験を提供する。1人あたりのエンゲージメントは1日80ページ、起動回数5.6回。マネタイズは検索画面でのネイティブ広告、プレミアム機能の月額課金を準備中。現在日本、iOSのみで提供しているが、8月からAndroid版、海外対応を進める。詳細はこちら

ookami:「PLAYER!

スポーツエンタテインメント体験アプリ。スポーツの試合情報をリアルタイムに掲載。また観戦中の感想を投稿し、ほかのユーザーでコミュニケーションを取ることができる。試合の情報などはプッシュ通知を行うことで、試合の観戦を忘れるのを防ぐ。ビジネスモデルは広告に加えて、スポーツ動画の提供などを準備中。今後は観戦の熱量をアイコンで投稿できる「歓声エンジン」を導入する予定だ。詳細はこちら

クラスター:「cluser.

「引きこもりを加速する」を掲げるVRチャットサービス。数千人の同時接続が可能で、チケッティングサービスなども備える。VRデバイス(HTC Vive、Oculus Lift)だけではなく、PCでのアクセスも可能。また今後はスマートフォンでのアクセスも可能になる予定だ。5月31日に正式版をリリース。開発者の加藤直人氏は、同大大学院を中退後3年間“引きこもり”を体験していた。エイベックスなどと提携しており、今後はVR×ライブのイベントを展開していく予定だという。詳細はこちら

HoloEyes:「HoloEyes

CTスキャン、MRIの画像データ(匿名化)を元にVRデータを作成、VR、MRデバイスなどで操作して、さまざまな角度から閲覧したり、手術のミーティングなどに利用できる。すでにNTT東日本関東病院と東京都立墨東病院でも実証実験を実施している。年間50件まで100万円で提供中。データは症例の論文発表にも利用許諾している、今後はそのデータ閲覧サービスも準備しているという。
BIT:「INAIL」

自動ネイルプリントサービス。通常ネイリストが手書きでネイルを行う場合、2時間、8000円程度のコストがかかるが、このスピードとコスト削減を実現する。操作はタッチパネル。デザインを選択すれば、1本15秒程度(ネイリストなら15分程度)で高精細なネイルを実施できる。ハードウェアは独自開発。爪の形状を認識し、インクジェットプリンタと同じ仕組みでプリントを行う。マネタイズはハードの初期導入、データの月額課金、インクカートリッジの販売。今後ハードウェアの小型化、低価格化を進める。今後は海外展開も視野に入れる。

ネイン:「APlay PULSE

スマートフォンに届く通知を、音声で聞くことができるBluetoothイヤフォン。音楽や通話で利用するだけでなく、メールや天気予報、Twitterの投稿までを音声で確認できる。またボタンを押しながら放すことで、音声での入力を実現する。あらかじめ利用したいアプリを選択すれば、あとはそのアプリの通知が音声プッシュされる。現在Kickstarterでクラウドファンディングを展開中。今後はデバイスの9軸センサーをもとにした、音声によるナビゲーションサービスも提供することを検討する。

Cansell:「Cansell

「キャンセル不可」で提供されている宿泊予約の権利を売買できるサービス。出品された予約は審査をを実施し、予約の実在確認、予約金額の正当性確認、名義変更可否の確認を行うことで安全性を高めている。2016年9月にベータ版をローンチ。ビジネスは売買成立時の手数料15%。今後は旅行に限らず、さまざまな領域でのキャンセル、途中解約などの領域に参入。「権利の二次流通」を実現するとしている。詳細はこちら

Matcher:「Matcher

採用手段としてのOB訪問のメリット最大化をうたう。自社の社員と、「○○についてやってみませんか」といったプラン、会う場所をサイト上に登録。あとは学生ユーザーからの問い合わせを待つだけ。サービス開始から15カ月、学生ユーザー数は1万人。2000社が登録。リクルートでは新卒30人の採用に寄与したという。今後は学生のデータを閲覧してスカウトを行う機能を提供。スカウト機能は現在40社のスタートアップが利用するという。

Scouty:「Scouty

競争の激しいエンジニア採用。その転職潜在層にアプローチするスカウトサービス。SNSやGithubをはじめとしたネット上のオープンデータを取得人工知能で予測退職度を判断し、公開メールアドレスを通じてスカウトを行う。スキルやキーワードをもとに、80万人の人材からオススメの10人をピックアップする。5月にオープンベータ版をローンチ。すでに複数のテック企業に導入実績がある。ビジネスは月額10万円と採用時に年収の10%を課金する。詳細はこちら

Residence:「one visa

企業が採用する外国人の在留資格の申請・管理サービス。外国人雇用企業は前年度比13%(年間2万社)、その雇用のためのビザ取得は平均18種類の書類、申請の待ち時間は約4時間、行政書士の代理申請で10万円と非常に高額。これを解決するのがone visa。社員のビザ取得に向けて、人事が社員を招待し、必要な情報を入力すれば、書類を自動作成する。また代理申請もサービス上から可能だ。6月5日よりオープン版を後悔。月額費用と都度課金でサービスを提供する。今後は世界のビザ取得の支援サービスも準備中だ。詳細はこちら

ディライテッド:「RECEPUTIONIST

iPadを活用した無人受付システム。受付にiPadを設置、あらかじめ発行しておいたコードを入力することで(事前登録していない場合は担当者を検索も可能)、担当者を呼び出し可能だ。呼び出しにはSlack等を利用するため、電話や特別なシステムを導入する必要はない。10人以下の利用は無料。それ以上は登録者数に応じて従量課金。今後は遅延等を伝えるメッセージ送信機能なども提供するほか、スケジューラー、労務管理システム、名刺管理ツール等との連携も進める。詳細はこちら

ハイパーエイト:「LION Project

「キャバクラ版Uber」をうたうサービス。暇な女性と飲みたい男性をマッチングするCtoCサービス。男性側が時間やエリア、人数を選択してリクエスト。10分以内に条件に合うメンバーが集まれば飲み会の開催となる。過去実績では、深夜2時以降を除きマッチング確度95%だという。料金は60分5000円、延長は30分2500円。女性は対面面接(合格率20%)、男性との相互評価を実施し、点数が一定値以下になると男女とも利用できない。飲み会の手数料25%でマネタイズする。

MR、ドローン、音声デバイス、ビットコイン——テック業界経営者が予測する10年後のトレンド

左からスマートニュース代表取締役会長 共同CEOの鈴木健氏、ディー・エヌ・エー執行役員の原田明典氏、投資家/The Ryokan Tokyo代表取締役CEOの千葉功太郎氏、アイ・マーキュリーキャピタル代表取締役社長の新和博氏、グリー代表取締役会長兼社長の田中良和氏、gumi代表取締役社長の國光宏尚氏

この10年のテック業界を振り返れば、最も大きな変化というのは「ガラケー(フィーチャーフォン)」から「スマホ(スマートフォン)」への変化だった。では今後10年はどんな変化が訪れるのか?——6月5日〜7日にかけて兵庫県神戸市で開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2017 Spring Kobe」。10周年となる本イベント、6日最初のセッション「業界トレンドの歴史と未来。これまでの10年、これからの10年」では、経営者、投資家らが今後10年のトレンドについて語り合った。

登壇者はgumi代表取締役社長の國光宏尚氏、アイ・マーキュリーキャピタル代表取締役社長の新和博氏、グリー代表取締役会長兼社長の田中良和氏、投資家/The Ryokan Tokyo代表取締役CEOの千葉功太郎氏、ディー・エヌ・エー執行役員の原田明典氏の4人。モデレーターはスマートニュース代表取締役会長 共同CEOの鈴木健氏が務めた。

経営者、投資家が振り返る「過去10年で最も衝撃だったニュース」

セッション冒頭、登壇者は自己紹介とあわせて、この10年でもっとも印象に残った、衝撃だったニュースについて語った。

原田氏が挙げるのは「アプリ回帰」というキーワード。NTTドコモからミクシィを経てDeNAで投資を担当する原田氏。かつてガラケーで流行しなかった「アプリ」が、スマホになって流行したと振り返る。「(流行の)ポイントはタッチパネル(での操作感)。過去の(ガラケーでアプリが流行らなかったという)トレンドを踏襲し過ぎて当てはめていけない」(原田氏)。続けて千葉氏は、2016年11月の「i-mode端末最終出荷」、2015年3月の「トイドローンとの出会い」を挙げる。端末最終出荷時点でも1700万人がいまだ利用していた日本独自の巨大プラットフォームの終焉、そして自身の新しい活動にも通じるドローンとの出会いこそが衝撃だったという。

原田氏と同じくNTTグループ系の出身である新氏も、ガラケーからスマホの変化が衝撃だったと語った。「いち従業員ながらも、通信キャリアが天下を取っていたつもりでいた。だがあれよあれよとスマホがやってきた。キャリアがトップだったところから、外来のハードウェアメーカーやOSがトップに移り変わったことが衝撃」と語る。グリーの田中氏は「10年前に1億円買っていれば…」と悔いつつ、「ビットコイン」の衝撃を語る。最初のビットコイン(ブロック)が登場したのは2009年、2010年頃でも1ビットコインは5円程度だったが、今では30万円前後となっている。こういったプラットフォーム(というか仮想通貨)の登場自体が非常に衝撃の大きいモノだったとした。

國光氏は2000年代後半に起こったソーシャルゲームの勃興について振り返った。当時はグリー、DeNA、ミクシィといったプラットフォーマーがしのぎを削りあい、ゲーム開発会社が資金を調達し、成長していったが、そういった経済活動自体が「日本のスタートアップの足腰を強くした」と語った。大企業や他業種からの参入者も増え、エンジニアのより一層高まったのもこの時期だろう。

セッションの様子。図はIVSで取り上げたトレンドを年代別にマッピングしたものだという

10年後、流行するデバイスは?

冒頭に書いた通り、ハードウェアで言えばガラケーからスマホ、その上によるプラットフォームの変化こそが、この10年の変化そのものと言っても過言ではない。では今後10年でどんなことが起こるのだろうか。

國光氏は、スマートフォン、ソーシャルウェブ、クラウドの掛け算で実現するプロダクトについて、「(この10年で)おいしいところが出尽くした」とした上で、最後に残っている領域として「モバイル動画」を挙げる。中国ではライブ動画での個人の活動やECが活発化している。これと同じような流れが日本でも来ると語る。

一方デバイスについては、MR(Mixed Reality)技術を取り込んだ先進的なメガネ型デバイスなどが1年以内にも登場するのではないかと予測する。「これからは、『MR、IoT、クラウドファースト』という企業が(マーケットを)塗り替えていく。わざわざスマホを見るより、目とインターネットが繋がった方が便利なのは自然な流れ。直近のGoogleやFacebookの発表を見ていると、思った以上に早く来るのでは」(國光氏)。MRデバイスについては、MicrosoftのHoloLensをはじめとして、特許を囲わずに各メーカーで作っていくという流れがあると説明。将来的にはAppleもAirPodsならぬ「AirGlass」などをリリースすれば一気にトレンドがやってくると予測する。

これに対して原田氏は、「ボイスインターネット」、つまり音声対応デバイスの時代やってくると語る。原田氏は「コンピューターが小型化する」という流れがあると勘違いしていたと振り返る。PCからスマホ、スマホから時計(スマートウォッチ)という変化が重要というのは間違い。一方で、スマートフォンの方がPCよりも機能が制限されるが、リテラシーの低い人でも使いこなしやすかった。同じように、リテラシーの低い層にどう刺さるデバイスであるかこそが重要だという。そういう観点で、次のトレンドは音声認識デバイスが作るのではないかとした。

先日ドローン特化の投資ファンドを立ち上げたばかりの千葉氏はデバイスとして「ドローン」を挙げた。ファンドの詳細はインタビュー記事を読んで欲しいが、ドローンが自動運転することで、BtoB領域のビジネスを変化させるのではないかと語った。

新氏は、劇的なデバイスの進化が起こるのではなく、10年後も現在のスマートフォンの延長線上にあるデバイスが主流ではないかと予測する。「10年前と今では、通信速度は100倍になり、ユーザーは音楽からゲームや動画を楽しむようになってきた。メールはメッセンジャーにかわり、リアルタイミング性が求められている。だが(ハードの進化については)保守的に考えていて、今より少し大きくなって、全天球カメラが付き、VR体験ができる程度のものになるのではないか」(新氏)

田中氏はこの10年で最も興味あるのは「AI」だと語る。先日のAlpha Goがトップ棋士らに勝利したというニュースを例に挙げ、「一番囲碁の強い人がAIに負けて、プロがその棋譜を読んだら『さっぱり分からない』となった。今まで僕らは『人間は(歴史を通じて)最適化されている』と言っていたが、それが違うらしいと暴露されてしまった。そうなると土台おかしいことがこれから発見されていくのではないか」と予測する。

ではスタートアップがAIの領域にチャレンジするにはどうしたらいいのか? 國光氏はGoogleやFacebookなどが提供するクラウドベースのAIを活用したプロダクトに注目しているとした。すでに画像認識や動画認識、テキスト解析、音声認識といった領域については、Googleをはじめとした企業がAIの公開を進めているところだ。これを使ってチャレンジできるビジネスがないかと問いかける。

ビットコインはナショナルカレンシーの代替となるか

ここで鈴木氏は、登壇者にFinTech領域の変化について聞いた。登壇者は連日話題を集めているビットコインやブロックチェーンをどう考えるのか。

千葉氏は「苦手な領域」としつつも、先日ビットコインが暴落したことに触れ、「(信用取引などで必要な)追証が必要ないこと」に驚いたとした上で、国家を脅かす可能性にもなりえると語った。原田氏も、ナショナルカレンシー(国が発行する通貨)の信用低下に伴う代替通貨の必要性はあるが、それをビットコインが担うかどうか分からないと語る。

田中氏は、ビットコイン隆盛の背景に、中国ではクロスボーダーの総員が難しいために、その代替手段として利用されているという事例を紹介。「これは技術ではない。世界の動きを分かっていないといけない」と語った。これに対して、通貨の研究も行っていた鈴木氏は、「結局国家は強い。揺り戻しが来るのではないか」としつつも成長の可能性を示した。

新しいチャレンジはいまだに「ヒリヒリする」——挑戦を続ける経営者の覚悟と苦悩

左からプロノバ代表取締役社長の岡島悦子氏、エウレカ代表取締役CEOの赤坂優氏、SSTJ INVESTMENT CEOの木村新司氏、セプテーニ・ホールディングス代表取締役社長の佐藤光紀氏

左からプロノバ代表取締役社長の岡島悦子氏、エウレカ代表取締役CEOの赤坂優氏、SSTJ INVESTMENT CEOの木村新司氏、セプテーニ・ホールディングス代表取締役社長の佐藤光紀氏

スタートアップの起業家が事業を育て、大きな組織を動かす経営者となったとき、果たしてどんなことが求められるのか? 5月26日〜27日にかけて宮崎県で開催された招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2016 Spring Miyazaki」の2日目のセッション「プロの経営者に求められるもの」には、エウレカ代表取締役CEOの赤坂優氏、SSTJ INVESTMENT CEOの木村新司氏、セプテーニ・ホールディングス代表取締役社長の佐藤光紀氏が登壇。プロノバ代表取締役社長の岡島悦子氏がモデレーターを務める中、それぞれの経営論、そしてチャレンジを続けることの苦悩を語った。

サービスへの「愛」だけではなく、「組織」として成り立つことが重要

エウレカと言えば、ちょうど1年前の2015年5月に米IACグループのThe Match Groupが買収したことで話題になった。岡島氏は赤坂氏にエウレカの歩みと、どこでIACグループ入りをしたのかと改めて尋ねた。

「通常の会社は一発大きいサービスを開発して、外部から資金を調達するもの。僕らは受託などをやって底力を付けてから、(インキュベーションプログラムの)KDDI ∞ laboに参加して自社サービスを作った」——同社は外部から資金調達をせず(厳密には経営共創基盤がごく一部の株式を取得していた)、自社サービス開発するための土壌を作ってきたのだという。

そんな同社が買収を受け入れる際に重視したのは、“会社のカルチャーを変えない”ということだった。「これまでに4つほどのサービスやってきたが、『サービス愛』で成立しているのではなく、『組織』として成立している」(赤坂氏)。つまりエウレカは、1つのサービスを愛しているメンバーが集まった訳ではなく、さまざまなサービスを作ってきた経験のある組織自体が強みなのだということだ。買収の際にはその組織、カルチャーを変えないということが受け入れられたことで、買収の話は進んでいった。

だが当然ながら親会社から数字に対するコミットメントは強く求められる。「何やってもいいけど結果を達成せい、ということ」(赤坂氏)。しかし必要なM&Aは進める、KPIを達成できる見込みがあればマーケティング予算を捻出するといった投資には積極的だという。また本社とのコミュニケーション頻度は非常に多い。週1回の電話会議に加え、3カ月に1回のペースでアジア担当のCOOやCFOが来日。密なコミュニケーションを取っている。「買収からちょうど1年。まだ信頼されていないので、短期業績へのコミットの色が強いと思っている」(赤坂氏)

岡島氏は赤坂氏に買収後の「経営者としての役割」が変化したかと尋ねる。「(IACグループによる)M&Aが終わったからといって変わるわけではない」と答える赤坂氏。だが会社が100人を超える規模に成長したことを契機にして、組織化されたマネジメントが求められるようになってきたという。権限委譲も進めているところだ。

“大学院のお兄ちゃん”はIPOを通じて経営者として成長

シリウステクノロジーズ取締役を経てアトランティスを創業。その後グリーに同社を売却し、エンジェル投資家としてニュースアプリ「グノシー」を開発するGunosyに投資(2013年11月には代表取締役となるも2014年8月には退任)した木村氏。岡島氏は同氏にGunosyとの出会いについて尋ねる。

「グノシーがリリースされた日、Facebook上にその情報が流れてきた。『これは(他のサービスと)ちょっと違う』と思ったので知人に紹介してもらい、(メンバーと)会いましょうとなった」(木村氏)。当時大学院生3人で開発していたグノシーだが、法人設立時点でユーザー数が2万人、デイリーのアクティブレートが50%という状況。この数字を見て、事業化する価値があると判断したという。

その後木村氏は同社の経営に参画することになるが、その理由について次のように語る。「ニュースだと競合はヤフー。そうすると、戦うためにサービスを変えないといけないし、会社としての体裁を整えていかないと、お金でも文化でも負けてしまう可能性がある。それならば自分が入っていかないといけないと思った」(木村氏)。また木村氏は、グリーの急拡大を“中の人”として見ていた経験がある。そこで学んだマネジメントや仕組み作りに、自らチャレンジしたいという思いもあったという。

「やっぱり(創業メンバーは)大学院の3人。ニュースという大きなポテンシャルのあるサービスに、学生も、CFOも、営業できる人も呼び込まないといけなかったので、エンジニアサイドは福島(創業者であり、代表取締役の福島良典氏)らに任せて、それ以外は僕が連れてくるという話で折り合った」(木村氏)

その後木村氏はグノシーの代表を退く。その発表は当時さまざまな憶測を呼んだが、木村氏は「事業の解像度が深掘りできて、行動規範もできたことで、(自身が)抜けても伸びつつある状況だった」と振り返る。岡島氏が再び経営メンバーに戻る気持ちがないのかを尋ねると、「以前は戻る気持ちが少しあった」とした上で、「経営陣と話して、自分たちで持っている(目標の)数字が僕と同じだったので、戻る必要はないと思っている」とした。木村氏は福島氏について「最初は大学院のお兄ちゃんだったが、IPOを経験して、一番成長した」と評価する。

「自動的に伸びていく組織」こそ美しい経営

創業間もなく、サブ・アンド・リミナルという社名でダイレクトメールの発送代行などを手がけていたのがセプテーニ。そこに社員として入社し、ネット広告事業を立ち上げて現在の同社の基盤を作ったのが佐藤氏。同氏はIPOを通じて経営者としての意識が大きく変化したと語る。

「数えてみたら四半期決算をもう60数回発表していて、それで学んだことはたくさんある。当時は現コロプラの長谷部さん(コロプラ取締役CSOの長谷部潤氏。以前は大和証券のアナリストだった)にアナリストとして詰められ、逆に市場のことを教わったりもした。『経営』とは何か? となっていたことが鮮明になってきた」(佐藤氏)

佐藤氏は、売上高100億円程度の頃まで組織を階層化せず、「力で引っ張る」という経営手法が成果に繋がっていたと振り返る。だがある時期を境に、「オートマティカル(自動的に)に伸びていく組織」を作ることこそが正しい経営ではないかと考えようになったという。「『ハイパフォーマーがめちゃくちゃ働いてすごい成果を出す』というのを『普通の人を普通以上にして成果を出す』に。そうなるよう、自分のリソースを作る方が会社にとっての価値になるのではないか」(佐藤氏)

そうやって組織の仕組み化を進めていった佐藤氏だが、現在、自身のリソースの半分を新規ビジネスであるモバイルマンガ事業「GANMA!」に費やしているという。

「権限委譲で生まれた成長のカーブはとても連続的。良くも悪くも成長しやすく、売上や利益が見える。だが非連続な成長のためには物足りなさが出てきた。非連続な成長のためには、行動を変えないといけないのではないかと思った」

「マネジメントの仕事は経営陣の成熟を感じていたので他(の経営メンバー)でもできる。逆に自分は1つのプロダクトにこだわり抜いて、サービスのエコチェーンを作る。自分の中にあるイメージは、別の人には作れない」(佐藤氏)

新しいチャレンジは「ヒリヒリしている」

他部署の事業担当社と横並びで、自ら新規事業に取り組む佐藤氏。その挑戦について、「結構ヒリヒリしている」と心境を吐露する。

「なまじトラクションがあると、2回目を外すのが格好悪いじゃないですか。それでも自分がしたことがないことに挑戦する。キツい状況に身を置いた方が成長率が上がるので、過去の実績をアンラーン(脱学習)して、一度ゼロに戻した」(佐藤氏)

佐藤氏の発言をうなずきながら聞いていた木村氏も、続けて自身の思いを語る。「やはりすごく怖い。Gunosyもそうだ。アトランティスがうまくいって、(次のチャレンジに)失敗したら恥ずかしいな、と思うんです。だから寝ないんですよ。寝てる間も考えているだけ。とにかく成功に持っていく」

「それだけ怖いのだから、価値あるものだけをやる。また企業として大きくなるためには市場もあるが、会社のバリュー(になるか?)、社会の役に立つモノであるか? ということがある。恐怖よりリターンがあるかというのが自分の中の(チャレンジするかどうかの)物差し。だからあえて外に『やります』と言っている。でないと逃げてしまうので。でもやっぱり怖いですよ」(木村氏)。

これに対して赤坂氏は「自分にプレッシャーかけられるのは才能だ」と語った。通常であれば逃げてしまいたいものにチャレンジするからこそ、その先に進めるのだと。

起業家から経営者へ、非連続な成長を生み出すには

木村氏はエンジェル投資家としての現在20社ほどのスタートアップに出資しているという。投資先の若き起業家に対してはどのようなコミュニケーションを取るのか。

「基本的に戦略には口に出さない。口を出すと投資先は『何でこんなことを言うのか』と思うし、現場のことは現場の方が知っているからだ」(木村氏)。だがその一方で、どのレベルで事業理解が必要なのか、ビジョンや行動規範はどうやって定めるか、会議の進め方に予算作り、評価制度の設計まで、組織をどう「仕組み」にしていくかについては徹底して伝えているのだという。

組織が100人を超えたばかりのエウレカ。冒頭で権限委譲を行うフェーズだと語っていた赤坂氏も、「細かい施策は現場の方がプロフェッショナル」だと同意。会議などでも可能な限り発言を控えるなどしているのだという。「意思決定をさせることの訓練。ケツを持たないと人は成長しない。僕も事業を作ってる中で、10個のうち1個が当たったようなもの」(赤坂氏)

また、自身が新しいチャレンジを行う必要性については、次のように語った。「そうやって(権限委譲で)できる組織は、連続的な成長しかない。非連続な成長のためには圧倒的なチャレンジをしないと。あと0を1個増やす(売り上げの桁を1つ上げる)には何をするか。以前に木村さんは、それを『たがを外す』と言っていた」(赤坂氏)

また、木村氏とは以前から親交があるという赤坂氏は、木村氏から教わったこととして、「事業」「経営」「投資」という3つのステージを経験することがプロの経営者に求められると語った。木村氏もこう続ける。「非連続な成長というのは、事業もあるし、投資もできないといけない。さらに投資先のバリューアップもしないといけない。そういうことを突き詰めていかないと」(木村氏)

佐藤氏はさらに、新しいチャレンジのためには経験を武器にしつつも、初心を忘れないようにと続けた。「僕は41歳で、会社経営としては(登山に例えて)やっと一合目。それは一緒に登る強い仲間ができて、装備についても何が必要か分かって、複数のルートが見えている状態。それを登っているのが今。デイワン(1日目の気持ち)で居続けることが一番大変で、価値が高い。フレッシュで居続けたい」(佐藤氏)

IVS 2015 Fallのローンチパッドで優勝したのは農作業向けサービスの「AgriBus-NAVI」

LaunchPadの入賞者ら

12月7日から10日まで京都で開催されている招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2015 Fall Kyoto」。3日目となる12月9日の朝には、同イベント恒例のプレゼンバトル「Launch Pad」が開催された。

登壇した12社のスタートアップの中で見事優勝を勝ち取ったのは農業スタートアップの農業情報設計社。「AgriBus-NAVI」というAndroidタブレットを使ったトラクターによる農薬散布のためのソリューションで、もともと農林水産省で研究していた専門家による既存市場への切り込みという点で審査員からの評価が高かった。1位以下は、縫製マッチングプラットフォーム「nutte」(2位)、クラウド上で契約書類が作成できる「クラウドサイン(弁護士ドットコム)」(3位)、「乗ってみたい」に出会えるカーシェアアプリ「Anyca」(4位)、モバイルアプリの課題発見と解決ができる「Repro」(5位)となった。

以下、登壇企業についてご紹介する。

wizpra NPS(wizpra)

「wizpra NPS」は顧客体験を向上させるサービス業向けクラウドサービス。多数の導入実績やNPS(ネット・プロモーター・スコア)活用事例をもとに、NPSの最適な活用方法からアクション提案までを行う。

NPSとはもともとベイン&カンパニーが開発した顧客満足度の指標。現在アップルやリッツカールトンをはじめとして大手企業も導入している。

サービスは月額20万円。リリース1年弱でインテリジェンス、西武鉄道、読売新聞、ピザーラなど約100社への導入実績がある。創業者である今西良光氏はユニクロでマネジメント職を務めた後に起業した。wizpraの製品を導入したある転職エージェントでは、採用決定率が37%向上したという実績もある。

チェーン店など複数店舗の接客改善のために利用する場合、多店舗で効果が上がった施策をレコメンドするといったこともできる。これによってベテラン店長でなくても、接客の改善施策を回すことができるという。またリアルタイムでの問題解決にも効果があるという。例えばトイレットペーパーが切れた、レジが混んでる、看板が倒れたといった事象のアラートを上げることも可能。

クラウドサイン(弁護士ドットコム)

日本初となるウェブ完結型のクラウド契約サービス。融資の際など、1案件で100件の契約を結ぶこともあるのだという。契約に際してはそれらを全て印刷し、ホチキス止めして製本テープを貼り、署名と押印をして…これで初めて契約が成立する。しかし、契約成立までに2週間近い時間と印紙代や郵送代といったコストがかかる。また契約資料への印鑑は習慣であり、法的にはなくてもよいそうだ。これをクラウドに持っていくことで、より簡単に契約を結べる社会にすることがサービスの目的だ。

クラウドサインで契約書をクラウドに移行することのメリットは2つある。1つは、契約成立までのスピードが短縮することだ。契約書をクラウド上で送付し、パソコンやスマートフォンからでも、押印まで1分もかからない。もう1つは、大幅にコスト削減が実現できることだ。印紙代、郵送費を削減し、保管スペースも確保する必要はない。クラウドサインはローンチから7週間で上場企業含めて658社が利用しているという。この契約書の関連市場は市場は4450億円になる。

世界展開を視野に入れ、ベンチマークにしているのはアドビ・システムズだという。弁護士ドットコムの弁護士9000人、税理士ドットコムに登録している税理士2000人のネットワークがあることが強みだという。今後、指紋認証によるセキュリティー強化、必要項目を入力するだけで契約書が作成できる契約書の自動作成エンジン、そして国際取引にも対応できるマルチ翻訳機能を導入する予定だ。

Repro(Repro)

アナリティクスツールを使うと、ユーザーがどこで離脱したのかは分かる。だが「なぜ離脱したのか」までは分からない。一方でプッシュ通知に代表されるマーケティングツールは、ターゲットの絞り込みが難しいという現状がある。これを解決するのがReproだ。

ユーザーの導線を設定することで、たとえばECサイトでは「カートへ入れたが購入に至らなかった」といったユーザーをドリルダウンで抽出するできるほか、「決済にたどり着くまでになにをやっているか」といった経緯も動画で見ることができる。ユーザーの画面遷移を再現することで、離脱要因を理解し、改善に繋げられるというわけだ。

またユーザーの定着率を図るリテンション分析なども可能。例えばダウンロードから7日後の定着率を上げるためには、7日目にユーザーに対してアクション(カスタマイズしたメッセージのプッシュなど)をとるということができる。

現在17カ国にユーザーがいる。フリーミアム形式で、課金割合は5.6%。1.8兆円のモバイルマーケティング市場を狙っている。2016年夏には米国に進出することを目指す。

LiveConnect(Z-Works)

Z-WorksはIoTプラットフォーム「Life Engine」のクラウドサーバーを開発、運用するスタートアップ。このプラットフォームを使い、「頑張らない介護」を支援するのが自宅見守りサービスの「LiveConnect」だ。

要介護者が危険と判断したタイミングでスマホにアラートを通知するほか、温度やモーション、明るさなどの情報を取得、さらに施錠センサーでドアの開閉を取るといったセンサーデータの閲覧が可能。湿度や温度をもとに、ダニやカビ、風邪への注意といった環境ワーニングも表示できる。

さらに、事前にシナリオを登録していれば、カギの締め忘れの通知などを送ることができる。クラウドファンディングサービス「kibidango」にてプロジェクトを掲載。当初予定の2倍以上の額(200万円超)を集めることに成功した。

夜から朝まで空回りするドアノブなど、現在1万人以上いるとも言われる徘徊者の防止になども役立つデバイスも提供する。また家族等が自宅で死亡した際には現場検証が大変になる。このシステムを使ってログを貯めることで、確実に「介護をしていた」ことを証明するといった使い方もできる。

AgriBus-NAVI(農業情報設計社)

世界中の農業機械の運転をアシストするトラクター運転支援アプリ。

例えば農薬散布など、農作業には作業の跡が残らないモノも多い。だがまっすぐ等間隔に農薬を散布するというのは、収益に直結する重要な作業…とは言っても重ならないよう、隙間なく散布するのは難しい。

これを解決すべく10年ほど前からはGPSガイダンスシステムが出てきた。しかし専用端末で価格は50〜60万円、ちょっとオプションつけるとすぐ100万円になってしまうため、国内トラクター200万台のうち5000台しか普及してないのが現状。これを同社は専用GPSとAndroidタブレットで実現する。

来月からは月額500円のサブスクリプションサービスを提供する。正式版は2月リリース予定。利用者数は1万7000以上、すでにシェアは世界1位。9割以上が海外からの引き合いで、「プアマンズGPSだ」と評する超えもあるという。

創業者の濱田安之氏は14年前、農林水産省に研究者として勤めていた。そこで研究していたロボットトラクターの技術が同社のプロダクトのベースになっている。今後は自動操舵オプションをリリースするほか、複数トラクターの同時操作機能なども提供予定だ。

Anyca(ディー・エヌ・エー)

国内の自家用車は6000万台もあるが、平均稼働率は3%だという。それに加え、都心の駐車場は高額で年間50万円がかかることも良くあることだ。一方、車を借りたくても連休は予約が取れないこともある。

Anycaはそのような問題を解決するカーシェアリングサービスだ。Anycaは、体験を軸に車を探せるという。例えば、デートに行くのか、友だちとアウトドアに行くのかというシチュエーションで探すことができる。もちろんマップからも検索可能だ。

乗りたい車を見つけたら、車のシェア条件、空き状況、注意事項を確認し、日時を選択すると自動で料金が表示される。Anycaでは一日単位で自動者保険も提供している。また、自動車のオーナーのプロフィールや他のユーザーからの評価を見ることができるので安心感につながるという。クルマの受け渡しでは、電話やメッセージ、写真やGPS情報などを送れるなど、より受け渡しが簡単にできる工夫をしているという。カーシェアリングが終わった後には、オーナーとユーザーが相互にレビューを行う仕組みだ。

プラットフォーム手数料は10%で、9月9日にサービスをリリースしてから3カ月で1500回シェアが行われたそうだ。月1回以上貸しているオーナーの場合、月に平均2.5万円維持費の軽減になっているという。カーシェアリングのコミュニティーもサービスの付加価値になっているという。「おみやげありがとう」「今度飲みに行きましょう」といったコミュニケーションが発生し、それも価値になり始めているそうだ。来春には「クルマ版のAkerun」とも言えるスマートロックを発表する予定だという。ODB2にアタッチして、Bluetoothで連携する。そうすると車をアンロックできるのだそうだ。

おくすり宅配(ミナカラ)

自宅に薬がやってくるサービスが「おくすり宅配」だ。夜間・休日に病院が開いていなくて、治療をがまんしている、いわば医療難民になっている人は少なくないのではないだろうか。

同サービスは、自宅やオフィスで待っているだけで医薬品を届けてくれるサービス。処方箋があれば、処方薬の提供を受けられる(アプリ上で写真撮影すればよい)ほか、処方箋がなくても、症状から市販薬を薬剤師がピックアップして届けてくれる。

アプリ上で届け先を入力すれば、最短30分で届く。現在はバイクで宅配のテストを提供している。現在は朝9時から夜24時まで、山手線内の中央線より下のエリアでテスト中だ。売上単価は平均5000円。これは原価や薬剤師の人件費をぬいても500円以上の利益になる。現在8万人、再来年には10万人にもなるという薬剤師。だが資格があるのに働いていないという人も少なくない。スポットで働ける人たちをネットワーク化することも検討している。

Popcorn(Coubic)

サロンやマッサージの当日・事前予約サービス。

クレジットカードによる事前決済で店舗側のキャンセルリスクを防ぐことができる。Popcorn限定のサービスメニューも用意。当日予約限定で割安のメニューもある。予約が埋まっている場合は、空きが出るとプッシュ通知が送られる「あいたら教えて」機能も用意。

サービスは成果報酬モデル。ポップコーン経由だけでなく、予約システム「Coubic」の顧客管理のダッシュボードを通じて、誕生日メールを送ったり、プッシュ通知したりもできる。予約数はここ2〜3カ月で30〜40%増のペースで伸びている。

対象エリアは関東を中心に550以上のオーナー。福岡でもテスト的に展開。
海外へのエリア展開も視野に入れている。

Spectee(Spectee)

「パリのテロ情報をどこで知りましたか?」とSpecteeは問う。日本テレビの人も、Specteeで事件を知り、驚いたという声があったという。私たちは目の前で起きていることを撮影して、リアルタイムで配信することができるようになった。これは新しい報道のカタチだ。しかし、既存のメディアは、何かが起きてから報道するまで通常90分ほど時間がかかるという。つまり、ソーシャルメディア上に写真も動画があるにも関わらず、報道があるまでは空白状態になっている。このとき、ほとんどの人はネット検索をしているという。報道関係者もネットを検索しているが、正しい情報を探すのには課題がある。「パリ テロ」で検索しても、正しい情報ばかりではないし、多数の異なるSNSを検索するのは不可能だ。

SpecteeはAIエンジンで365日24時間、様々なソーシャルメディアを解析し、映像を配信している。Specteeは事件発生からユーザーに情報が届くまでの空白を埋めるための映像配信プラットフォームを目指すという。Specteeのプッシュ通知後のアプリ起動率は96%だそうだ。これは一般的アプリの30〜40%より遥かに高いという。

Specteeは報道の現場にも彼らのサービスを訴求する予定だ。例えば、NHKは4人体制で24時間ソーシャルメディアを監視しているという。彼らにSpecteeのダッシュボードを提供する。ダッシュボードから現場の映像をリアルタイムで見ることができ、映像をソートしたり、再生したりすることもできる。地図で場所を指定して検索することも可能だ。すでにテレビ局を含む2社に提供が決まっていて、東京キー局でテスト配信を開始する予定だという。報道分野は5000億円規模だそうだ。

FITTY(スカラインターナショナル)

下着のオンラインフィッティングサービス。

実は8割の女性がフィッティングした上でブラジャーを買いたいと考えているそうだが、その半数は「フィッティングしたいが、できていない」のだという。また7割の女性が、ブラジャーのサイズ選びを間違っているのだそう。

面倒なフィッティングを、24時間誰にも見られず、専門家からアドバイスを受けられる。というのがFITTYだ。店舗などでは通常、15分かけてサイズなどのデータを集めて、20〜50点からレコメンドするが、フィッティーではたった4問(サイズ、体型、バストのカタチ、悩み)の測定、30秒で診断するのだとか。取り扱いアイテムは約500点。専門家にチャットで無料相談する機能も用意。

FITTYはまた、フィット感(伸縮性、ワイヤー、安定感、パッドの厚さなど6項目)を数値化したことも特徴なのだとか。過去データーがあるので、将来的には服を脱がずに店舗フィッティングもできるようになる世界を期待する。

・Partee(g&h)

写真やデザインをTシャツやiPhoneケースにできるサービス。デザインを投稿し、別のユーザーが利用した際には報酬を得ることもできる。ミュージシャンが写真をファンと共有してiPhoneケースにする、友だちの写真を使うといったことができる。企業やブランドのオフィシャル利用も可能だ。

作成できるのはTシャツ、クッション、キャンバスアート、トートバッグ、フェイスタオル、パーカーなど10品目。写真のサイズ・位置、色をアプリ上で調整して、サイズや数量を指定して購入できる。工場と提携しており、1点から発注し、最短3日で届くのだという。

monomy(モノミー)

8歳でもアクセサリーブランドが持てるのがmonomyだ。monomyのスマホアプリからブランドを開設し、ユーザーは自分でデザインしたアクセサリーを販売することができる。デザインは、スマホアプリから気に入ったアクセサリーパーツを組み合わせて制作する。パーツは3000種類以上から組み合わせることが可能で、その組み合わせにはゲームエンジンを使った物理演算を活用しているという。

他のユーザーが気に入った作品を購入すると、アクセサリーに必要なパーツが運営側に届いて、職人が作るという流れだ。monomyはアクセサリーの製造、決済、梱包、配送を担うため、ユーザーが製造販売のための手間やリスクを負うことはない。さらに、monomyは36の工場と提携しているという。「ユーザー、職人、パーツ製造業者の誰もリスクがない」という。

プレリリースから2ヶ月で、monomyに登録しているブランド数は1500以上になり、掲載作品数も4233点になったという。150人以上のインフルエンサーがいて、ユーザーの中には440作品以上を提供している人気ユーザーもいるそうだ。他のプラットフォームと比較すると、手作り作品のマーケットプレイスのminnneの利益率は10%だが、monomyの利益率は50%になるという。monomyは「誰でも売れる」コマースを目指すという。

LaFabric(ライフスタイルデザイン)

カスタムオーダーのファッションサービス「LaFabric」はオーダーメード並の品質のスーツが量販店の手頃価格の2〜5万円のレンジでオーダーできるサービス。ライフスタイルデザイン創業者の森雄一郎氏は地元岡山で繊維産業に従事していた親類の仕事が海外に流出するのに心を痛めたことが起業の背景にあるという。アパレル業界に入って気付いたのは、中間業者が多く存在してい現場の工場が儲からないこと。そこで仕組みを変えて現場の職人に活躍できる場を提供するようにした。

LaFabricのサービスでは、イタリアのカノニコなど名門の生地メーカーを含むアイテムなどから自由にに選び、ボタンやポケット、裏地など選ぶ。体型のサイズは15箇所をカスタマイズできる。このデータはクラウド上に保存されるので、2度目以降のオーダーは非常に簡単だという。採寸については、出張採寸サービスもパートナー企業と協業することで提供している。サービスリリース3カ月の実績としては、利用者の3人に1人がリピーターになるほど、という。

これまではオーダーメードスーツのみで展開してきたLaFabricだが、最近オーダーコートもリリース。ジーンズなどほかのファッションアイテムも提供していく。また詳細なサイズデータを保有することから、今後はヘルスケア分野への応用も考えられるという。

nutte(ステイト・オブ・マインド)
ファッションアイテムを1点から作れる縫製のマッチングプラットフォーム。

アパレルの展示やステージ衣装のための職人は数万人いるが、基本的には自宅で仕事しており、下請けの存在。そのため課題になるのは大きな案件が個人だと受けられないということ。nutteは縫製職人の見える化を実現する。

プロ職人のネットワークだけではなく、家庭用ミシンを使うのセミプロのネットワークも持っているのが特徴。2月のサービスリリースからこれまで1800事業者が登録。売上は前月の4倍になっており、「発注がガンガン入ってる」(代表の伊藤悠平氏)状態。国内縫製市場は3000億円。

空撮動画だけじゃない、ドローンが開く来年の国内関連ビジネスとは?

「この1年でビジネスになるドローンビジネスは何か? 法律的課題は?」。こうした問いかけに対して日本でドローン関連ビジネスに詳しい専門家がディスカッションをするセッションが、インフィニティ・ベンチャーズ・サミット 2015 Fall Kyoto(IVS)で行われた。

IVSはネット業界の経営者が集まる招待制イベントで、年に2回行われている。今回は12月7日、8日、9日の予定で京都で開幕した。

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会場では実際に複数のドローンを操縦して空撮の様子もデモ

美しい空撮動画と6機種のデモ

初日午後に行われたセッション「IoT、ドローンの未来」には多くの聴衆が集まった。モデレーターを務めたのは「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」「プロ野球PRIDE」などのゲームで知られるコロプラ取締役副社長、千葉功太郎氏だ。

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コロプラ取締役副社長 千葉功太郎氏

ネット業界で千葉氏といえば、2015年3月にドローンに目覚めてからは趣味といえるレベルを超えてドローンを飛ばしまくっていることで知られている。前置きでも「今日は本業とは全然関係のない話で来ました」と千葉氏。といいながら、今や「慶應義塾大学SFCドローンコンソーシアム上席研究員」という肩書きも持っているそう。千葉氏はセッション会場となったホテルのボールルームで代表的なドローン6機種を次々と飛ばしながら現在市場で入手可能なドローンの特徴を紹介した。

千葉氏によれば、120グラムくらいの小さなドローンは姿勢制御などを自分で行う必要があるほか、200グラム以上が規制の対象であることもあって「練習に向いている」。一方、ある程度のサイズを超えたドローンだと気圧センサーやビジュアルポジショニング、GPSなどを使った自律姿勢制御をするために操縦自体はやりやすいという。屋外での遠隔操作飛行にも向いていて、例えばParrotのBebopならiPhone利用時に200m、専用リモコンだと2kmくらいが操作可能範囲という。

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中国発スタートアップで世界のドローン市場で70%という大きなシェアを持つDJIの「Inspire 1」だと、遠隔操縦だけでなく、カメラの制御を別の人が担当する「2オペレーター撮影」が可能といい、かなり本格的な空撮動画の制作が可能だそうだ。

日本でも急ピッチで進む法整備

セッションに登壇したDJI JAPAN代表取締役の呉韜氏によれば、日本のドローン市場、関連ビジネスの立ち上がりは遅れている。DJIは2007年に創業していて、当初は日本と米国が2大市場だったが、スマホが登場して空撮写真や動画をシェアするといった用途で米国が先行したのに対して、「日本はB2Bの利用が進んでいる。飛ばす場所がないので一般ユーザーの利用が遅れているのではないか」(呉氏)という。DJIはグローバルに市場を持っているが、日本が占める割合は5%に過ぎないという。

一方で、ちょうどいま日本では官民によるドローン関連の環境整備協議会が霞が関でスタートしたことや、この12月11日にも改正航空法が施行されて法整備が本格化することもあって、急ピッチでドローン関連ビジネスが立ち上がろうとしていると話す。

改正航空法で市街地の飛行は不可能になるほか、目視外飛行も禁止となるが、逆にこうした法整備によって「飛ばしやすくなる」。そう話すのは、すでにドローンのよる空撮ビジネスやコンサルなどを手掛けるORSO代表取締役社長の坂本義親氏だ。ORSOはこれまで全国80箇所で100台以上保有するドローンを使って1700フライトをしてきた実績があるといい、独自にテスト項目や安全確認項目を策定するなどリスク管理やマニュアル整備を進めてきた。「これまで通報されたりすることもあった。今後は届け出をした上で土地の所有権のある人に連絡し、安全飛行マニュアルにそってやっていく」ことで、すでにある空撮ビジネスの置き換えなどは特に問題がないだろうという。ORSOは安全管理や操縦テクニックなどを教程として提供していくこともビジネスにしていくそうだ。

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ORSO代表取締役社長 坂本義親氏

カメラで生育状況を把握して、ドローンで農薬散布

空撮ビジネスの代替というのは自明だし、趣味としてのドローンでも空撮が注目されてきた。では、それ以外の用途にはどういう可能性があるのだろうか?

DIJ JAPANの呉氏は、「ケータイは人間の時間軸を埋めた。ドローンは3次元の空間を埋める道具になっていく」といい、例えば「来年は農業方面で発達する」と話す。すでに無人機による農薬散布などは日本でも市場があるが、既存システムが機体だけで2000万円もするのに対して、ドローンなら100万円程度で機体が入手できる。農薬以外にも種の散布もあるし、農地の状態や農作物の生育状況をスペクトラルカメラを使った空撮によって把握して、どこに農薬を重点散布すべきなどといったことを、ドローンの自律操縦と機械学習の組み合わせで無人化していくことが、早ければ来年にもできるようになってくるだろうという。もともと先物取引での価格付けなどは衛星を使った映像解析が使われていたこともあって、すでにアメリカではドローンで生育状況を把握するという試みが始まっているそうだ。

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DJI JAPAN代表取締役 呉韜氏

このほかにも呉氏は、フィールド・スポーツでのフォームチェック用途として、日本のラグビーチームがInspire 1を利用していることや、災害時の救済ツールとしての応用があり得ることなどを紹介した。

もしもドローンにSIMカードが搭載されたら?

パネルディスカッションに参加したソラコムの玉川憲氏は、「もしドローンにSIMカードを搭載したら?」という議論を展開した。ソラコムはTechCrunch Japanでも何度かお伝えしているようにクラウド制御可能なSIMカードを提供している。

今のところSIMカードを搭載できるのは基地局のみで、空中に飛ばす飛行物体へのSIMカード搭載は法的にはNG。ただ、もしもドローンが広域のワイヤレスネットワークに繋がったら、というのは興味深い視点だ。玉川氏は100歳になる祖母が「高野山に行きたい」というのぞみを叶えてあげたいといい、ネットワークカメラをドローンに搭載して遠隔地のスマホから操作する、あるいはVRカメラを使って仮想体験するようなことが可能なのではないかと話した。

「いまのドローンは操縦者がいて2kmの範囲でしか動かせません。でもモバイル通信にはハンドオーバーという仕組みがあって、基地局から基地局へ移っていける。そうなると問題はバッテリーだけになる」。

完全自律制御と遠隔制御の両方が使えるようになったとき、ドローンを使った新しいビジネスが生まれてくるのではないかという指摘だ。ちなみに、DJI呉氏によると、ドローンのバッテリー持続時間は一般に30分程度。ガソリンを使うと1〜3時間程度なのだそうだ。

ドローンは完全無人化するのか? 群制御の応用は?

パネルセッションの終盤にモデレーターの千葉氏から興味深い論点が2つ出た。1つは、今後ドローンは完全自律制御となって操縦者がいなくなっていくのかという点。もう1つは、複数のドローンが昆虫の群れのようにグループとして行動する「群制御」にはどういう未来があるのか、という点だ。3年後や5年後にはどうなっているのだろうか。

DJIの呉氏は、そもそも障害物がない空であれば、クルマの自動運転よりも簡単だと指摘する。「クルマは2次元で逃げ道がありません。でも3次元だとやりやすいので自律飛行は今でも可能です。例えば向こうの島まで荷物を運ぼうというのは、今でもできる。でも、密集地での飛行はまだ先の話。街なか荷物配達をやるのは簡単じゃない」。

ドローンのリスク管理アセスメントなども手掛けるORSOの坂本氏は「人間も自動も両方あったほうがいい。いかなる場合でも人間がいるというように冗長化しておいたほうがいい」と話す。ドローン市場立ち上がりのカギは、安全と安心の確保というのは登壇者の一致した見解のようだった。

複数のドローンが、まるでリーダーの統率に従うかのようにフォーメーションを組んで飛行するような「群制御」の動画はTechCrunchの読者なら1度は見たことがあるだろう。この群制御にはどんな可能性があるのか?

呉氏は2つの使い方があるという。1つはドローン同士が助け合うこと。1台のドローンだと積載重量やぶら下げられる荷物の重量が決まっているが、複数のドローンを協調させることでより重たいものでも運べるという。もう1つの利用は「認識しあう」という方向性。呉氏は10年後にはドローンがビュンビュン周囲を飛び交っていて、それを現在の子どもたちが全く不思議に思わないようなインフラとなっているだろうとした上で、互いに衝突しないような制御をしているのではないかと話す。

「道路があるクルマより、ドローンは制御がしやすい。ドローンが飛びまくっている世の中になる。アメリカはすでに動き始めています。もしかすると人間が乗れるドローンが出てくるかもしれない。ただ、クルマも、車検や保険、免許など社会インフラの整備が必要で普及に時間がかった。ドローンも技術的には時間はかからないが、インフラ整備には10年ぐらい時間がかかると思う」(呉氏)

玉川氏は別の例として、ソラコムの利用顧客であるセーフキャストという放射線量を計測するプロジェクトを応用例として可能性があるのではないかと紹介する。セーフキャストは、ガイガーカウンターをばらまいて放射線マップを作る活動をしているが、原子力発電所で事故が起こった際に、多数のドローンを飛ばして近隣のマップをいち早く作るようなことが民間レベルでもできるのではないか、という。「群制御で大量に飛んでいって、たとえ何台か落ちたとしても情報を取れるようになる」。災害時の映像を異なるアングルからリアルタイムで取得するような応用例については、DJI呉氏は3年以内に実現することだと指摘した。

もともとゲームなどエンタメコンテンツでビジネスをしてきたORSOの坂本氏は、「人々の生活を豊かにしてくれるドローンの未来とは?」との問いに対して次のように話した。「ルンバが部屋の端っこで引っかかる。それをドローンが助けたら楽しいと思うんですよ。エンタメな人間なので、そういう発想をします。部屋の中で、常に周囲にいて写真を撮っているようなドローンはいいですよね。私は絶対にドローンに名前を付けると思いますね」

ユーグレナ出雲氏が語った「合コンメソッド」の意味と、起業家に必要な「アンカー」

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ネット企業の経営者や起業家が集う国内イベント、インフィニティ・ベンチャーズ・サミット 2015 Spring Miyazaki」(IVS)が宮崎で2日間の予定で開催中だ。初日6月11日の対談セッションのトップバッターで、イベントパンフレットの表紙ともなったのは、バイオベンチャーのユーグレナの共同創業者で代表取締役社長の出雲充氏だ。テック系企業からの参加者が多いイベントの中でのバイオ関連ということで、少し異色の登壇だったが、起業家が持つべきマインドセットやモチベーション維持の方法など、TechCrunch Japanをご覧の多くの起業家やその予備軍に参考になる話と思うのでお伝えしたい。

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ユーグレナという企業については4月に発表した研究開発型ベンチャー支援のファンド設立のニュースでお伝えしているが、社名ともなっている微生物の「ミドリムシ」(学名:ユーグレナ)の大量培養に成功して業績を伸ばしているバイオ系ベンチャー企業だ。2012年に東証マザーズに上場し、2014年12月には東証一部に市場変更となっている。

ミドリムシというのは光合成を行う藻類。出雲氏の言葉でいえば「ワカメなんです」ということで、いわゆる「虫」ではない。動物と植物の両方の性質を兼ね備え、59種の必須アミノ酸を作り出すことができる稀有な生物だ。このミドリムシには食糧問題(栄養失調)や環境・エネルギー問題を解決するポテンシャルがある。バイオ燃料として、とうもろこしを使うようなものもあるが、これは世代的にはもう古くて、今後の新世代のバイオ燃料としての必須要件は、農作物と競合せず、地球上で最も重要な資源である農地を使わないことという。ミドリムシはそういう次世代バイオ燃料で、すでに一部は、いすゞ自動車と共同で都内でバスを走らせているそうだ。

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2年間、営業で500社に断られ続けて学んだこと

ユーグレナは研究開発型ベンチャーとしてスタートして、まだ屋外培養が可能かどうか分からない中、2005年に創業している。長年に渡る研究開発をもってしても誰も果たせなかったミドリムシの大量培養という科学上のブレークスルーを創業後に達成し、いよいよ営業だというときに、2年間で500社に断られるという経験を出雲氏はしている。

IVSの対談セッションでホスト役を務めたInfinity Venture Partnersの小林雅氏が立ち上げ初期の苦労と、モチベーション維持の方法を聞くと、出雲氏は500社を回った体験から学んだことを次のように話した。

「営業を始めて丸2年、2007年12月の段階で営業が取れた件数はゼロでした。100社に説明すれば、そのうち1社は買ってくれるだろうというのが計画だったので、5社くらいは買ってもらえると思っていたんですね。でもゼロだった」

500社に営業してダメだったときに取れる手段としては、501社目に営業に行くこと。ユーグレナの場合は、「501社目が拾ってくれた。その会社が伊藤忠商事だった。伊藤忠商事が売ると、これがめちゃくちゃ売れるんですよ。ユーグレナのほかに培養できる会社はありませんよ、と伊藤忠が言うと売れる。これまで話を聞いてくれなかった大企業が話を聞いてくれたんですね」(出雲氏)。

2015-06-11 13.09.11ここから出雲氏が引き出す教訓はいくつかある。

1つは、知人に「学生時代に合コンを企画したことがないからダメなんだ」と指摘されて気付いたこと。良い合コンをするには良い人に来てもらわないといけない。参加する女性は、イケてる男が来るかどうかを心配するもの。それは男性側も同じで、いい女性が来るかどうかを気にかける。だから、もうあの人もこの人も来ると言ってくれてますよ、ということを、まだ全員が迷っている段階で女性にも男性にも同時に言うことが大事だという話だ。

ユーグレナには、まだ採用実績がないんですよね、と言って断られるケースが圧倒的に多かったのに、いざ伊藤忠が担ぎ始めると売れた。それは伊藤忠ブランドもあったのだろうとはいえ、最初の1社の「イエス」さえあれば売れるだけの商品力があったということで、足りなかったのは合コンメソッドだったのかもしれないということだ。

出雲氏は続けて「ベンチャーの投資も同じでしょ?」と会場に語りかけた。つまり、投資家が投資するかどうか逡巡しているときに、もうすでに別のVCにリードインベスターとして投資する約束をしてもらってるのだと別の投資家に言う、ということだ。構図としては全く合コンと同じだ。

さすがに投資家サイドのIVPの小林氏は、合コンメソッドについて「ときどきやります」と苦笑いしつつも、免責事項として小さな字で「未確定事項であり将来変わる可能性がある」と書きますけどねと、すかさずフォロー。すると出雲氏は、そんな自明な但し書きが駆け出しのスタートアップに必要なのだろうか、と、ちょっと挑戦的な問いかけをした。そんなことことよりも、起業家が気にするべきことは勇気と覚悟ではないか、という。

出雲氏は18歳で見たバングラデシュの食糧危機(栄養失調)の問題を解決するという志をもって起業していて、そこがぶれたことはない。逆に、動機がよこしまで、自己満足や自己実現のためだけに他人を利用しようというやり方だと上手く行くわけがないとも釘を指す。

「お金持ちになりたいとか有名になりたいって気持ちは、絶対に回りから見れば分かります。絶対に分かるんです。すると、なんでオレがお前が金持ちになるのを手伝わなきゃいけないのって思わて、誰も応援してくれない」

何がしたいかという思いと、口で説明することが一致していることが何よりも大切で、そこに勇気と覚悟があれば土壇場で投資家の気持ちが変わることがあるのではないか、と出雲氏はいう。

500回の営業をメンタルで支えたのは1枚のTシャツ

自ら500社に営業して回った経験から分かったことは、実際に500社に回る人はほとんどいないということだという。

創業期を経て注目ベンチャーとなった出雲氏の元に、ある若い起業家が相談しに来たときにも同じことを感じたという。その起業家はどこのVCからも出資を断られた、と肩を落としていたという。どこもかしこも、というので具体的に名前で挙げてみろというと、断られたのは全部で11社。「バイネームで言ってもらったら11でした。でも、日本のVCって11社だけじゃないですよね?」。どうして12社目や13社目にも行かずに「どこもかしこも」と言えるのか、と。「皆さんビックリするぐらい営業に行かないですよね。1000回実験して1000回失敗する人もいない。1000回やるだけですよ。ホントにできますよというんですが、やる人はいない。そういうマインドセットを持っている人がいないというのは最大の学びでした」

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「こういう話をすると、皆さん意志の強さ、弱さって言います。でも、意志ってスカラーじゃなくて、ベクトルみたいに向きなんですよ。向きを自動的に思い出す仕組みがあれば、誰だってできることなんです。意志ってベクトルみたいなもの」

断られ続けていると、「人間なので、ミドリムシって芋虫じゃないんですかとか毛虫ですかって言って今日も断られるのかな、嫌だなって思う日もあります」。そういうとき、今日もう1社だけ行ってみようと意志のベクトルを立て直すのに「アンカー」が役立ったという。アンカーとは、なぜ起業して、何をやろうと思ったのかという初心を思い出せるシンボルのような存在で、出雲氏にとっては1枚のTシャツだという。

出雲氏にとって、グラミン銀行を作ってノーベル平和賞をとったムハマド・ユヌス氏はメンターの1人で、Tシャツはユヌス氏との約束を象徴している。ユヌス氏の業績は途上国の貧困層を対象にした低金利で無担保の融資だが、75歳になった今も貧困撲滅のために1年のうち250日は講演をして飛び回っているという。そのユヌス氏が「かつて栄養失調というものが地球上にはありました」ということを展示する「貧困博物館」をいつか作るのだ、そのときが貧困問題が本当に過去になるときなのだという話をしたとき、面会した出雲氏はその博物館のフロアの1つを、栄養失調を解決したミドリムシの展示にしたい、自分たちがやりたいと、その場で申し出たという。

その時に買ったTシャツを衣装棚に置いておくことで、朝起きても、夜寝るときにも、ユヌス氏との会話と初心を思い出すのだという。「あのとき調子よく貧困博物館をやるって言ったのに……。それで明日もう1日やってみようという気持ちになる」。起業家にとってアンカーは賞状でもハンカチでもなんでもいい、という。ただし、それをメンターと呼べる人から受け取ることが不可欠だという。それはメンターとの約束のように機能するのだ、と。

「意志のベクトル」は起業家個人のメンタルの話だが、対談セッションの質疑では、会社のベクトルについての話も出た。ある教育関連スタートアップを創業した起業家から出た質問は、ビジョンが変わっていなくても「プチピボット」と呼ぶ事業領域の取捨選択をしたときに社員がついて来れなくなることがある、ビジョンや会社の方向性をまとめるということをユーグレナではどうしているのか、という問いかけだった。

営利組織である以上、売上を立てる必要がある。スタートアップであれば、10%成長ではなく、求められるのは10倍、100倍の成長だ。ビジョンに沿った事業を行っていても10%成長の小さな黒字であると捨てる判断をすることもあるし、逆に違う成長カーブへの移行を目指して、全く違う事業領域にチャレンジするような試行錯誤も出てくる。このとき、「うちの会社はこんなことをやる会社なのか? これがわれわれがやるべきことなのか?」と疑問に思う幹部や社員が出てくるという問題だ。社長は外部に出てさまざまな人に会って刺激を受ける結果、社長と社員とで市場や競争環境についての認識に乖離が出る。

ユーグレナの出雲氏は「私も答えを探している」と前置きして、2つの選択肢があるとした。

1つは、会社のステージが変わったと考えてチームメンバーを効率的にシャッフルする方法。これはユーグレナではやっていないという。

もう1つは、経営幹部の間で適切なロールを設定して互いの判断を尊重する方法。ユーグレナだと共同創業者で研究者の鈴木健吾氏が、何らかの研究上の判断をしたときには、出雲氏は自分がどれほどいいアイデアだと思っても鈴木氏に従うという。「鈴木が、これは100年研究してもできるかどうか分からないと言ったら諦める。営業の福本が、これは売れないといったら諦める。どんなにアイデアに未練があっても、鈴木や福本といちど徹底的に議論をやりあったことであれば、それは蒸し返さない。そこを守っていれば方向性についてはうまく行くんじゃないかと思う」。

優勝は経沢香保子氏のベビーシッターアプリ「キッズライン」――IVSのプレゼンバトル

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6月11日、12日と宮崎で開催中の招待制イベント「インフィニティ・ベンチャーズ・サミット 2015 Spring Miyazaki」(IVS)で、スタートアップ起業のピッチコンテスト「Launch Pad」が行われた。今回は13社がサービスやアプリでプレゼンしたので、13社のサービス・アプリについて紹介しよう。優勝したのはベビーシッターと利用者をマッチするモバイルアプリ「キッズライン」だった。

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・株式会社カラーズ 日本にベビーシッターの文化を「KIDSLINE(キッズライン)」

今回優勝したのは女性起業家の経沢香保子氏が取り組む、ベビーシッターと利用者のマッチングアプリ「キッズライン」。入会金5万円、1年の年会費、1時間辺り2000円といった、従来の高額なベビーシッターサービスに対して、モバイルで徹底的に合理化し、初期費用なしの1時間1000円から利用できるサービス。クレジットカード登録で24時間利用できる。ベビーシッターへの支払いや、カラーズの20%の取り分を含めても、まだ従来型サービスの1/3の価格を実現できたという。価格が安くなったことから、潜在利用層にリーチできているといい、現在は毎月150%で利用が増えている状況という。多くのシェアリング系サービス同様に、利用者、サービス提供者側のプロフィールや相互評価の透明化や、ソーシャルグラフ上の友人らのコメントなども表示。これまで密室で行われていたものを可視化しているのもポイントという。経沢氏は3人の子の母という立場から、子育てが女性の社会参画への大きな障害になっていることを指摘し、ベビーシッターという文化を日本にも広めたいと語った。

・CART!VATOR 世界最小の空飛ぶクルマ「SkyDrive

CART!VATORは「SkyDrive」と名づけた空飛ぶクルマを作っているスタートアップだ。というと、ぶっ飛んでるようにも思えるが、実はすでにスロバキアやアメリカなどに空飛ぶ自動車を作っているスタートアップ自体はあるそうだ。ただ問題は2つあり、1つは滑走路が必要なこと、もう1つは操縦が飛行機なみに難しいこと。そこでSkyDriveはマルチコプター方式を採用してセグウェイのような体重移動による容易な操縦を可能にするという。パイロットライセンスは不要。接地面は3輪で、時速100km/h、量産価格500万円以下を目指す。1人乗りの小型ビークルという感じで、災害時の土砂崩れを飛び越えるとか川面を飛行するといったこともできるだろうという。現在は160kgの小型試作機で浮上実験が成功している。チームは「愛知県にある自動車会社」に勤務するエンジニア仲間が中心となって取り組んでいる。2020年までに量産体制を作るために10億円の資金調達を目指すという。

・セーフィー株式会社 カメラとスマホのホームセキュリティ「Safie

Safieはネットワークカメラ。外出先や遠隔地からカメラ映像を見ることができる。従来のホームセキュリティーカメラが高額の割に画素数が低く、回線がISDNであるなど旧態依然としていることから起業。ソフトウェアにのみ特化して、現在はカメラメーカーと協業を始めていて、QBIC社のELMOはすでに1000台以上が売れてるという。本体価格は1万9800円で録画・アラート機能利用は月額980円。これは従来製品の価格に比べると1/6程度で、画角や画質も従来製品よりも良いという。業務利用での引き合いも多いといい、オリックスと一緒に1台あたり月額3000円のリースモデルも準備中だとか。

・Orange株式会社 あなたの旅の専属ガイドアプリ「TRIPAN(トリパン)

TRIPANは専属の海外旅行ガイドとスマホ上でチャットができるサービス。旅先を設定してリストされる一覧から現地ガイドを選び、レストラン情報やアクティビティ、治安情報などの質問ができる。ガイドとは旅行前からでも可能。返答は原則10分以内。利用価格は1日1500円で現在は2日目以降は1000円になるキャンペーン中。10カ国に対応している。ガイド候補は海外添乗員や長期滞在者などで120万人以上いる。2015年12月までに3000名のガイド登録数を目指している。当初はアドバイスのみだが、アクティビティ、交通手段、レストランなどをガイドが代行予約するようなサービスも検討しているほか、1つだけ質問したいというニーズに応える機能のリリースも予定しているという。

・株式会社セフリ 登山・アウトドアアプリ「YAMAP & YAMAP Gears

ケータイの電波が届かない登山ルートなどでもGPSと事前ダウンロードした地図により自分の位置が分かるアプリ。登山やスキー、釣りなどアウトドア愛好家向け。YAMAPはもともと山での遭難や道迷いを解決するために作られたアプリだが、今回はYAMAP Gearsという「価格コムのアウトドア版」というアプリをリリース。YAMAPはすでに30万ダウンロード、写真投稿数が100万となっているなど登山愛好家の間で利用が広まっている。YAMAPでは登山後にルートや写真、感想などをシェアできる仕組みのほか自分の道具を登録する機能がある。本当のアウトドアグッズの利用者が持つ信頼性と、バーチカルのECを結びつけるというのが狙い。今後はC2Cやアウトドア保険の販売などにも事業の幅を広げて行くという。

・株式会社3.0 今夜なにする?を解決するアプリ「LIVE3

LIVE3は今日、明日、明後日など直近の売れ残りチケットが買えるサービス。音楽、スポーツ、お笑い、クラブ、フェス、アートなど多様なイベントを取り扱う。「今夜なにしよう」を解決するアプリといい、コアなファンが特定イベントのチケットを探すというよりも、潜在的なファン層を掘り起こすサービスという。イベント市場は近年成長していて、全国で毎日12万人、関東だけでも5万人がイベントに参加している。一方、チケット売り切れイベントは全体の2%。これは時間軸で見つける手段がないからという。LIVE3ではキュレーションやディスカウントチケット販売も行っている。今後はイベント後に近隣店舗へ誘導するクーポンなど周辺事業との提携も勧めるという。

・株式会社スマイループス 転職相談アプリ「ジョブクル

ジョブクルはチャットで転職相談ができるアプリ。経歴や勤務地、希望条件、会社の好みなどを入れると、転職エージェントを最大10人までマッチしてくれる。モバイルに最適化したUXで条件入力が容易なことと、漠然とした質問から転職活動が開始できるのが特徴。エージェント側から候補者の一覧から候補者を絞り込んでメッセージを送ることができる。転職成功時にジョブクルが25%の手数料を得る。ジョブクルによれば、過去1年間で転職を希望しながら転職していないのは519万人、全体の2/3にのぼるといい、初動アクションのハードルを下げることで潜在転職希望層の流動化を狙う。

・株式会社ZUU 世界一シンプルな資産運用ツール「ZUU Signals

資産運用ツール「ZUU Signals」は、独自のアルゴリズムで株の「買い・売り」の判断を補助する情報を信号機のように「赤、黄、青」で示す。最近、NISAブームなどで証券口座開設は増えているものの、30代、40代の70%は投資未経験。投資を始めても離脱率も高く、ネットリテラシーが高い層でも入ってきていないそう。日本の個人資産1700兆円のうち資産運用されているのは16%。アメリカの50%まで引き上げることができれば伸びしろは580兆円とZUUは試算する。そこでモバイルで分かりやすく情報を整理するのがZUU Signals。重要なニュースのキュレーションもしていて、特定銘柄をクリックすると株価チャートと、赤黄青のシグナル、ニュース、ユーザーコメントが一覧できる。ZUUは250万MAU、1000万PVの金融メディア「ZUU online」も持っている。現在は分かりやすさを優先して国内株式のみでZUU Signalsをスタートしたが、信託などほかの金融商品へも拡大する。

ウェルスナビ株式会社 世界標準の資産運用とリスク管理をあなたの手に

ウェルネスナビは世界の機関投資家と同じレベルの資産運用を個人にも、というコンセプトで創業。世界の機関投資家は全世界の全資産を比較検討してリスク管理徹底することでリターンを最大化している。同様に、個人ユーザーであっても年齢や年収、資産額を入力すると、35カ国9000銘柄への分散投資のポートフォリオを作ってくれる。リスクとリターンのシミュレーションを可視化して、分かりやすく表示する。欧米のプライベートバンク並みの資産1%という低い手数料設定とする。従来、金融理論を背景にした分散投資は巨額の資金を運用する機関投資家のみが可能だったが、それを個人にも解放する金融インフラの構築がウェルネスナビのミッションで、これは、かつて安全な旅行や手紙が王族や貴族、大商人の特権だったが、現代では誰もできるものになったのに似ているのだという。

・株式会社UNCOVERTRUTH ネイティブアプリUI解析ツール「USERDIVE for Apps

USERDIVE for Appsは、これまで提供してきたWebサイト向け解析ツールのネイティブアプリ版という位置付け。20KBのSDKをダウンロードして組み込むと、アプリ上の動線をどうユーザーが遷移したかを視覚化したり、ヒートマップ、「読了率」に相当する画面ごとの滞在時間を見ることもできる。実際にユーザーがアプリをどう使っているかを動画で見る機能もある。フィルター設定で「100万円以上買っているユーザー」といった絞り込みもでき、ターゲットユーザー向けのUI改変に利用できるという。さらに今回、新機能として「ロケーション・ヒートマップ」を発表。地図上にユーザーのアプリ上でのアクティブ率をヒートマップのように示す機能で、例えば地域店舗のクーポンをユーザーが使った場所などを知ることができるようになるという。USERDIVEではいま、バルセロナやマレーシアに拠点を開設して、世界展開に力を入れているそうだ。

・株式会社wacul 人工知能を使ったWeb分析サービス「AIアナリスト

waculの「AIアナリスト」はGoogle Analyticsのデータから、Webサイト改善のアドバイスを提示するサービス。これまで同社はWeb改善のコンサルティングをやってきていたが、案件数に対してコンサルが足りないことから、ノウハウやナレッジを人工知能で実装。例えば、ある商品ページに対して検索流入の比率が高すぎる場合、サイト上の導線の弱さが背後にあることが想定される。そうした場合、AIアナリストだと「xyzのページをもっと見せましょう。15.7CVの増加が見込めます」といったアドバイスになる。改善点は網羅的、伸びしろがあるポイントを指摘する。人間のコンサルで30万円から100万円でやっていたことを人工知能で3万円で提供する。より広いユーザー層に使ってもらうことで人工知能の学習データを集めたい、という。waculでは2年間で人間のコンサルが担当したのは100サイトで指摘したのが600課題であるのに対して、AIアナリストはリリース1カ月で400サイト、3000課題という。

・株式会社COMPASS 人工知能型適正教材「TreasureBox」

コンパスの「TresureBox」は人工知能型適応教材。タブレットを使った算数の4000問を超える問題を子どもたちが手書き入力で解く。生徒が間違えた時に、何がわかっていないかを人工知能が把握し、もっとも適切な問題を出し続けることができるのだという。COMPASSはもともと塾を経営していたが、現在では塾の先生の役割が変化して、ダッシュボードで生徒たちの進捗や集中度をモニターし、問題があったときに対応するファシリレーターとなっているという。集中度が下がった生徒がいると「休ませてあげてください」というプッシュ通知で先生に出す。これまで塾のフランチャイズとしては、くもんなど大手があるが、初期費用は開設まで費用がかかるという問題があった。TreasureBoxのような仕組みがあれば、塾開設のハードルが下がる。COMPASSでは2019年までにくもんを超えるとしている。

・株式会社キッズカラー 保育や遊びを楽しく記録するみんなの図鑑アプリ「ほいくずかん!

「ほいくずかん!」は、保育士のための子どもの作品カタログサービス。もともとキッズカラーは、遊び版クックパッドともいえる「ほいくる」を運営している。子ども向けの遊びを保育士同士が教えあうサイトで、遊びの引き出しの共有している。すでに全国の保育士の3分の1が使っているという。ほいくずかん!は、遊びでできた子どもの作品を登録できる新アプリ。子どもの年齢や材料を登録し、時系列やカテゴリごとに写真を表示できる。これまでこうした写真は保存や管理がバラバラで、各保育園で埋もれていたのだという。

ヤフーがIoT領域に参入――2015年春に”IoT向けのBaaS”を提供

ヤフーがIoT領域の新サービスを提供する。京都で開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2014 fall Kyoto」の中で、ヤフー イノベーションサービスユニット ユニットマネージャーの松本龍祐氏が明らかにした。

Yahoo! IoTプロジェクト(仮)」と呼ぶ新サービスは2015年春にリリースの予定。IoTのハードウェアそのものではなく、SDKやデータベース、解析、IDといったバックグラウンド環境をサービスとして提供するというものだ。

発表後、松本氏は「例えばイケてる時計型のプロダクトを作ったとして、(機能面では)単体での価値は1〜2割だったりする。でも本当に重要なのはバックエンド。しかしユーザーから見てみれば時計というプロダクトそのものに大きな価値を感じることが多い。そうであれば、IoTのバックエンドをBaaS(Backend as a Service:ユーザーの登録や管理、データ保管といったバックエンド環境をサービスとして提供すること)のように提供できればプロダクトの開発に集中できると思う。クラウドが出てネットサービスの開発が手軽になったのと同じような環境を提供したい」とサービスについて語ってくれた。

松本氏はまた、IFTTT(さまざまなウェブサービスを連携して利用できるようにするサービス)を例に挙げ、バックグラウンドで複数のサービスが連携できる仕組みも提供していくとも語った。「パーツとしてヤフーのサービスを使ってもらってもいいし、他社のサービスと連携してもいい。全くコードを書けないと簡単な事しかできないが、ライブラリも用意して手軽に利用できるようにしたい」(松本氏)。イベントでは、ネットに連携する目覚まし時計とYahoo!天気、Pepperを連携させて、「Yahoo!天気でその日の天気をチェックして、雨ならば予定より30分早く目覚ましを鳴らす。目覚ましで起きなければPepperが起きるように呼びかける」というデモを披露した。

このサービスは当面無料で提供していく予定。ではどうやってマネタイズするのかと尋ねたところ「ヤフーはビッグデータカンパニー。そのデータを生かせればいい。例えばYahoo! IDを使っているユーザーが増えることはメリットになる。ウェラブルデバイスのデータを取れれば広告の制度を高めることだってできる」(松本氏)とのこと。

また、このサービスを利用する開発者に対しては、ヤフーグループとして販売やマーケティング面でも支援をしたいと語る。「例えばY! Mobileの店頭での販売、Yahoo! ショッピングでの販売なども検討できる」(松本氏)。松本氏は現在ヤフーグループのコーポレートベンチャーキャピタルであるYJキャピタルのパートナーも務めているため、YJキャピタルでIoT分野のスタートアップに投資し、このサービスを導入したいと語っていた。「ヤフーはPCの戦いで勝ったが、スマホでは圧倒的なナンバーワンではない状況。IoTでまた圧倒的なナンバーワンを取っていく」(松本氏)

余談だが、ヤフー執行役員の田中祐介氏もこのタイミングでYJキャピタルのパートナーに就任している。田中氏いわく、同氏や松本氏など起業経験を持つヤフーの役職者がYJキャピタルのパートナーとして活動していくことになったそうだ。またヤフー執行役員でYJキャピタル代表取締役小澤隆生氏によると、YJキャピタルは現在200億円規模のファンドを準備しているそうだ。


Infinity Ventures Summitのプレゼンバトル、登壇13社を紹介

京都にて12月3日から4日にかけて開催中の招待制イベント「インフィニティ・ベンチャーズ・サミット 2014 Fall Kyoto(IVS)。同イベント2日目の朝8時45分からは、毎回恒例となっているプレゼンバトル「Launch Pad」が開催中だ。

これまでクラウドワークス、スマートエデュケーション、freee、WHILLなどが優勝してきたLaunch Padだが、今回登壇するのは以下の13社。なお、Ustreamおよびスクーでもその様子は生中継される予定だ。

baton「マッチ

「高校生向け対戦型問題集」をうたうこのサービスは、大学入試問題集に出てくるような問題を対戦型のクイズとして楽しむことができる。

ザワット「スマオク

スマホアプリで利用できるオークションサービス。これまで24時間以内の入札に対応していたが、アプリをアップデートし、入札時間5分限定の「フラッシュオークション」にリニューアルしている。

ギャラクシーエージェンシー「akippa(あきっぱ)

駐車場などの空きスペース、空き時間がある人と駐車したい人をマッチングするパーキングシェアサービス。プレゼンでは、人に車を貸して、空きスペースを探してもらう「akippa+」も発表された。

落し物ドットコム「MAMORIO

Bluetooth LEを使った追跡用タグ。スマホと一定の距離が開くとアラートが鳴って置き忘れを未然に防ぐ。バッテリー交換なしで1年利用が可能。自転車が盗難にあった場合などに利用できる機能として、ユーザーが相互にタグをトラッキングする「クラウドトラッキング」を備える。

ビズグラウンド「Bizer(バイザー)

弁護士や会計士などさまざまな士業への相談サービスを提供していたBizer。今後はバックオフィス業務をサポートするクラウドサービスを提供していく。

Socket「flipdesk

スマートフォンECサイト向けの販促・接客ツール。ユーザー属性をリアルタイムに解析して、ダイレクトメッセージの送信やクーポンの発行ができる。年商100億円規模の起業でCVR5.6bai ,客単価15%アップという実績がある。

プレイド「KARTE

こちらもECサイト向け(flipdeskとは異なりPCにも対応する)の販促・接客ツールだ。ECサイトへの来客をリアルタイムに解析。ユーザーに合わせて商品のレコメンドやクーポン発行などができる。現在はクローズドベータ版として25社に限定して提供中。

オープンロジ「オープンロジ

CtoCコマースや小中規模ECサイトなどをターゲットにした物流アウトソーシングサービス。通常大規模ECサイトでないと利用しにくい物流サービスだが、同社があらかじめ物流業者と契約することで、少ない商品でも定額(サイズによる)、かつすぐに利用できるようになる。

フクロウラボ「Circuit(サーキット)

スマートフォンウェブからアプリにスムーズに遷移するための「ディープリンク」。その設定を容易できるグロースツール。シームレスなアプリ間移動を実現する。

ミニマル・テクノロジーズ「WOVN.io(ウォーブン・ドット・アイオー)

ウェブサイトに1行のスクリプトを足すだけで、ウェブサイトの多言語化を実現するサービス。翻訳は機械翻訳、人力翻訳に対応。リリース4ヶ月で登録ドメイン数は3000件、6万ページ。海外ユーザーが6割となっている。

セカイラボ・ピーティイー・リミテッド「セカイラボ

世界中のエンジニアチームに仕事を発注できるサービス。中国やベトナムなどのエンジニアチームに対して、日本語で大規模な開発を依頼できる。

YOYO Holdings Pte. Ltd.「PopSlide

新興国向けモバイルインターネット無料化サービス。スマホのロック画面に広告を表示し、それにスライドしてアクセスしたり、動画を閲覧したりすることでポイントを提供する。ポイントはロード(プリペイドの通信料金)と交換できる。

ファームノート「Farmnote(ファームノート)

酪農・肉牛向けのスマートフォンアプリ。タブレットやスマホを使って、リアルタイムに個体管理が可能。

以上が登壇する13社となる。11月に開催したTechCrunch Tokyo 2014の「スタートアップバトル」でも登壇してくれた企業がいくつかあるが、Launch Padは来場者、審査員とも経営者が中心のイベント。またプレゼンの内容も変わってくるかもしれない。個人的に応援しているスタートアップもあるのだけれど、ひとまずは各社のプレゼンを楽しみにしたい。


「日本でうまく行ったことは、ぜんぶ外れた」、ネット企業海外進出の成功と挫折

12月3日〜4日に京都にて開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2014 Fall Kyoto(IVS)」。1つ目のセッションは「グローバルで活躍するプロフェッショナルの条件」がテーマ。インフィニティ・ベンチャーズ共同代表パートナーの小林雅氏がモデレーターを務める中、indeed,Inc. CEO&Presidentの出木場久征氏、グリー取締役 執行役員常務 事業統括本部長 青柳直樹氏、PARTY Creative Director/Founder 川村真司氏がそれぞれの海外進出の状況について語った。

日本でうまく行ったことはことごとく外れた

グリー取締役 執行役員常務 事業統括本部長 青柳直樹氏

小林氏がまず3人に尋ねたのは海外進出での苦労話。青柳氏は「まず、日本でうまくいったから米国でもワークすると思ったことは、ことごとく外れた」と振り返る。ソーシャルゲームが好調だったグリー。だが同社が日本で手がけてきたゲームやそのマーケティングノウハウといった成功の体験やパターンというのがほとんど通用しなかったという。同社が米国進出した2011年といえばグリーが強かったブラウザゲームからスマートフォンにプラットフォームが変わる過渡期。さらにはビザの取得や人材採用などのさまざまな課題があり、ビジネスの違いを学ぶまで1、2年かかったそうだ。

indeed,Inc. CEO&Presidentの出木場久征氏

出木場氏はリクルートの出身で現在は同社が買収したindeedのCEOを務めている。当初indeedのファウンダー2人に出会ったのが「まるで恋だった」と、振り返る。そこで、本来(買収元である)リクルートという会社を紹介するというよりも、自身がどんなことをやってきたか、またどんなことをやりたいか。さらにファウンダーらが何をやりたいのかを話したのだそうだ。

そういった会話からはじめた結果、(ロックアップの外れる)買収後2年でファウンダーも従業員もやめることなく共に働いている状況なのだという。「『お前はどんなマジックを使ったんだ』なんて周囲に聞かれる」(出木場氏)

事業面だけでなく、そんな人材面での成功もあった一方で苦労したのは英語。出木場氏は、本人曰く「『オマエコレタベルカ』というレベル」の英語だったのだそうだ。そこで英語のレベルを上げるための勉強をするのではなく、現状の英語でどう経営できるかを考えるようになったそうだ。「『お前とはこの数字でこれをやって』と任せた(コミットメントを求めた)」(出木場氏)。

出木場氏は米国は日本以上にレポートラインを重視するとも語ったが、青柳氏もこれに同意し、さらに「部下とのワンオンワンでの会話や、『握り』が重要」と語る。ただ一方で青柳氏は、日本的なマネジメントにもチャレンジしたそうだ。買収先の会社では、約200人の社員全員との個別面談をしたこともあるという。「半年かかった。最初は非効率だとも言われたが、それによって徐々に見方が増えて、『いろいろ教えてやるよ』という人が出てきた」(青柳氏)。そして何より、成果が出ることで会社の状況が変わったそうだ。「成果が出ると(社員は)ついてくる。逆に出ないということ聞いてくれない。成果が出てからの2年は比較的楽だった」(青柳)

PARTY Creative Director/Founder 川村真司氏

川村氏のPARTYはニューヨークと日本に少数精鋭のチームを置いているが、「みんなで決めていく」ということを重視しているそうだ。特にニューヨークの拠点は設立して1年未満。マネージングパートナーといった立場でなくとも、ある程度の判断に参加してもらい「オーナーシップを作り、DNAを育てているところ」(川村氏)だそうだ。ただ川村氏本人はデザイナーであり、マネジメントに向いていないのでビジネスディレクターが必要だという意識があるとした。

リーガル、HR、バックオフィスの重要性

ここで小林氏が「仁義やリーガルといった点で何か問題があったのか」と尋ねる。

出木場氏と青柳氏は、パテントトロール(特許やライセンスを持ち、権利を侵害する企業から賠償金やライセンス料を得ようとする企業の蔑称)について触れた。出木場氏曰く「ハイパーリンクをクリックすればウェブサイトが遷移する」というレベルのパテントを持った会社を法律事務所が買収し、訴訟を起こすというようなケースが有るという。

実際に両氏も裁判を経験し、ほぼ勝ってきたという状況だそうだが、この経験を踏まえて、「うまく行ったのはHR(人材)とリーガル、バックオフィスを雇えるようになってから。それらのバイスプレジデントが揃って、やっと組織と数字に集中できるようになった」(青柳氏)そうだ。indeedについても、「7月にHRのヘッドを雇えた。CxOを採用するには、CEOが口説かないといけない。そうなるとカタコトのCEOだとめちゃくちゃ不安になるじゃないですか。それがやっとちゃんと出来るようになってきた」(出木場氏)と語る。

ピカピカ人材を獲得するコツは?

ここで会場とのQ&Aとなったが、その一部を紹介する。会場からの質問は「ピカピカの人材を採用するコツは」というもの。これに関して青柳氏は、進出した地域にコミットしていると伝えることだという。

社員数人でサンフランシスコに拠点を立ち上げたグリー。青柳氏は採用の際に「今サンフランシスコに住んでいる。成功するまで帰らないし、失敗したらクビだろう」と語って、自身が現地で「ハシゴをはずさない」ということをアピールしたそうだ。また後任となった現地のマネージャーについても出会ってから1年半かけて関係を構築したこと、周囲から「グリーに行くことがいいオポチュニティになる」と思ってもらうようにするということも重要と語った。出木場氏もローカルへのコミット、またミッションの共有なども重要だと語る。

川村氏も創業者が現地にコミットしていることは大事だとしながら、PARTYはクリエイティブエージェンシーという特殊性もあって「面白いものを作れているかどうかしか評価されない」と語った。クリエイティブ系の人材は自らが作ったものを見てPARTYに来るので、何よりもアウトプットが大事だとした。

青柳氏の折り返し地点は「2年前のサンクスギビング」

最後に小林氏は3人に世界に出る人たちへのメッセージを求めた。川村氏は「とりあえず出てから考えよう」と語る。目的があって、ノウハウも持っているからなんでやらないのかとなる。失敗したら失敗したで日本があるのだから、何よりまず飛び込んでみるべきだという。

青柳氏は、ちょうど2年前に米国で事業をいくつかやめて、社員にも辞めてもらうことになった時期を振り返る。その時期はサンクスギビングということもあり、街で先週まで社員だった人間が家族と歩いていた時に表現できない気持ちになったという。「そこが折り返し地点。そこから絶対成功してやろうとなった。最初は『まず行ってみる』ということで良かったが、買収では300億円くらい使って、社員を雇っている。そんな責任をもって今がある」。そう青柳氏は語った。

そして新ためて世界に出る意味について「マーケットは凄く大きい。こんな僕でも出来ましたというのがメッセージだ。日本の調達環境は良い、バブルとも言われるがこれをどう使うか。ここで出たアドバンテージ、キャピタルを是非グローバルに使ってもらいたい。いちボランティアとしてアドバイス、サポートしたい」(青柳氏)

出木場氏は「心意気というのは世界共通言語。『これがしたいんだ!』というのは分かり合える。『日本の良い物を世界に出す』という考え方もあるが、やっぱりネットビジネスやってるなら世界で勝負することはこの先10年考えると避けて通れない。だからやるなら早くやった方がいい」と語った。


ユーザーの声を疑え!イケてるスタートアップがプロダクト開発で重視する3つの法則

freee代表取締役の佐々木大輔氏

イケてるプロダクトを作るために「ユーザーの声」を金科玉条のごとく扱うことは、時として問題の本質を見失ってしまうかもしれない――。こう指摘するのは、クラウド会計ソフト「freee」を運営するfreee代表取締役の佐々木大輔氏。札幌で開催中の「Infinity Ventures Summit 2014 Spring(IVS)」で23日に行われた、「プロダクト・イノベーション」をテーマにしたセッションの一コマだ。

freeeは、簿記の知識がなくても会計処理を可能にするクラウド型会計ソフト。銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、記帳を自動化することで、面倒な手入力の手間を省いてくれる。5月19日には給与計算機能をリリースし、7万事業者が導入するまでに成長したfreeeだが、創業前、ユーザーに要望をヒアリングした結果をそのまま反映していたら、今のプロダクトは生まれなかったかもしれない。

「ユーザーのフィードバックの多くは『会計ソフトの入力を早くしたい』という声だったが、問題の本質は『入力しなければならないこと』。入力をなくすことが問題解決につながるはずだと、プロダクトをローンチするまでに何度もメンバーと議論した」。こうした体験を経て佐々木氏は、優れたプロダクトを生み出すにあたっては、次の3つの法則を大事にするようになったのだという。

1)本質的な価値があるか
2)まず手を動かす
3)柱(ゴール)を建てて、やらないことを決める

1)は前述の通り、ユーザーの求めるものが本質的な価値を生み出すかどうかを精査しなければならないということだ。

2)に関しては、アウトプットする前に議論をしていると、「うまくいかない理由」ばかり出てきてネガティブになりやすいが、いっそのことローンチしてから出てきた課題を解決すべきだと、佐々木氏は語る。「ローンチは仮説検証プロセスの一部。そうすれば『これを削らないとね』ということが見えたり、場合によってはピボット(方向転換)もできる」。

3)については、会計ソフトのようにユーザーから求められる機能が多い場合は、優先順位付けが欠かせないという。例えば、確定申告の需要に応えるために、1月までに機能強化を図ることを「柱」とする。逆に言えば、確定申告に結びつかない機能は、どれほどユーザーから要求されても実装を遅らせるというわけだ。


Kickstarterのようにプロジェクト調達が楽? 「3年前までそう思ってました」Cerevo岩佐氏

すでに別に記事にしているとおり、札幌で開催中のInfinity Ventures Summit 2014 Sprintのパネルディスカッションで、ハードウェアスタートアップの現場にいる4人のパネラーが、日本でハードウェアスタートアップをやる理由について議論した。

このパネルの最中、聴衆でありながら積極的に議論をしていた家電スタートアップのCerevo代表の岩佐琢磨氏が、ハードウェアスタートアップのファイナンスについて「プロジェクト単位か、会社単位か?」という点について興味深い持論を展開していた。

Cerevoは経営体制の変更と社員を約4倍にするということを昨日発表したばかりだが、takram desigin engineering代表の田川欣哉氏が「プロジェクト単位のファイナンスのほうが楽ですよね?」と水を向けると、岩佐氏はこう切り返した。

「3年前まで、そう思っていました。最初のファイナンスはシードも入れて1.2ミリオン(約1.2億円) 。そのときはワンプロダクトで、これが売れなきゃ終わりっていう感じだった」

2008年頃、ハードウェアスタートアップはプロダクトに投資するということはあっても、会社としての投資を受けるということは日本では難しかったと振り返る。そうしたこともあって、当初はプロダクトで投資を受けるプロダクト・ファイナンスだったが、今では「コーポレートファイナンスでいいと思っている」という。

Cerevoは、単体でUtream生放送をする「Live Shell Pro」やタブレットでライブ配信の映像スイッチをする「LiveWedge」など、市場自体はニッチだが、グローバルで見れば十分な規模となるような「グローバル・ニッチ」でやっていける手応えをここ2年ほど感じてるという。

「昨日、韓国の映像系イベントに行っていたんですが、ぼくらのファンが会場でCerevo製品を売ってくれたりしているんですね。あれ? オレたち卸してないよって」

Cerevoの個別製品というようりも、そのブランドにファンが付いているという。かつて「ソニーだったらワクワクするものを作ってくれるはず」というイメージがあったように、再び30年でグルっと回って、コーポレート単位のブランドで戦うのが有利ではないかという論点だ。最近、Kickstarterがプロジェクト・ファイナンスの典型として多くの華々しい成功が出てきているように見えるが、岩佐氏によれば、実際にはKickstarterから出てくるスタートアップの多くがブランドやコーポレートとして離陸していくところで苦労しているのだそうだ。

この岩佐氏のコメントに対して、「ひとりメーカー」のBsize代表取締役社長の八木啓太氏は、「ほかの産業だと、音楽にしても、ファッションにしても、ブランドを応援して、好きになって、そのコミュニティーの住人になりたいっていうのが大きい。ユーザーにコミットできるかというのが大事だと思っている。ハードウェアも同じ。繰り返せるかが重要と思っている」と応じた。Bsizeはたった一人の家電ベンチャーとして、最初はデザイン性に優れたLED照明をリリースしたが、その後も、木材を使っていて部屋に溶け込むワイレス充電器「REST」を2つ目のプロダクトとして発売。現在は、ソニーやパナソニックの技術者も入り、3つ目のプロダクトを準備しているという。「これまで家電は大きな投資をして、それを回収するビジネス。今は小ロットでスモールスタートできるようになったことが大きい」。

今後、Cerevoは人員を4倍に拡大してウェアラブルデバイスも開発すると発表したばかりだが、現在主力の映像系プロシューマ向け製品だけでなく、多様な製品ジャンルについて「グローバル・ニッチ」の開拓を進めていくことになりそうだ。


■随時更新■スタートアップのプレゼンバトル「Launch Pad」、14社が火花を散らす

5月22日から23日まで北海道・札幌で開催されている招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2014 Spring」。2日目となる5月23日の朝には、同イベント恒例のプレゼンバトル「Launch Pad」が開催される。すでに登壇者は公開されているので各社を紹介していく。プレゼンに合わせて内容は随時アップデートしていく予定だ。

WHILL Inc
次世代パーソナルモビリティ「WHILL」
既存の車いすの「かっこ悪い」という心理的な問題、坂道や路面状態により行動できないという物理的な問題を解決するべく作られた次世代パーソナルモビリティ。第1弾モデル「WHILL type-A」は現在予約発売を受け付けている。

WHILL代表取締役の杉江理氏によれば、カリフォルニアで50台を限定販売した後、3カ月で70台の予約、100以上のディストリビューターを獲得している。今後は台湾で製造することで、現在約95万円のモデルが約60万円程度にコストダウンできる見込みだという。今夏には日本で販売する。

https://whill.jp/ja/

RINN
留守番中のペットの食事をサポート 自動給餌器「PETLY」他
インテリアとしての美しさを兼ね備えた自動給餌器。最大1kg相当のえさを1日4回まで給仕できる。発売は2014年夏を予定しており、現在サイト上で予約を受付中だ。

RINNは、インテリア性の高いペット向け自動給餌器「PETLY」を2014年7月28日発売予定だが、今回のLaunchPadでは2つの新製品と、これらを組み合わせた同社の狙いを説明した。ペットフードやペット用品、動物病院を含むペット関連市場は約1兆4233億円。このうちRINNが目を付けたのは自動給餌器。いま市場で手に入る給餌器には、餌づまりや、清掃がしづらい、複数ボタンがあることで操作が難しいなどの問題があるという。これをPETLYでは、ダイヤルを回すだけの直感的なUI、餌の残量をLEDで伝えるなどで解決。

自動給餌器「PETLY」に加えて、ペットの首に巻きつけるウェアラブルデバイス「COLOR」とコミュニケーションプラットフォーム「DOOR」を発表した。COLORは、愛犬の健康管理ができるウェアラブルデバイスで、首輪として3つの情報が取れる。「歩数、移動距離」、「起床時間、就寝時間」、そして「位置情報」だ。GPSで迷子を防ぎ、活動状況をモニターできるという。さらに、スマフォアプリとして「DOOR」を提供することで、最終的にはペットと飼い主のコミュニケーションプラットフォーム作りを目指す。「3つを組み合わせて、これまでにない体験を生み出したい」。これによってペットビジネスに横断的にアクセス可能になるという。

http://petly.jp/

ライフスタイルアクセント
日本初のファクトリーブランド直販サービス「ファクトリエ」
日本初のファクトリーブランド専門の通販サイト。世界ブランドを手掛ける国内の工場と提携して商品を製造。中間マージンを省くことで、品質やデザインにこだわりながらも、安価に商品を提供する。

現在扱っている商品はシャツやデニムパンツなど13カテゴリー、100アイテム。提携する国内の工場でどんな職人が作っているかがわかる商品が人気なのだという。ファクトリエを運営するライフスタイルアクセントはこれまで、国内の211工場を訪問し、世界のトップブランドを手がける13工場と提携している。

http://factelier.com/

ベントー・ドット・ジェーピー
毎日のランチをボタンひとつで20分以内にお届け! 「bento.jp」
iPhoneアプリでオーダーを受付した後、20分以内に指定の場所までお弁当を届けてくれるサービス。開始に注文が殺到したため、現在配送エリアを渋谷に限定し、料金を期間限定で500円に値下げしてサービスを展開中だ。

http://bento.jp/

FiNC
あなたに合ったダイエットを専門家がサポート!オンラインダイエット家庭教師「REPUL」
遺伝子検査、血液検査、生活習慣や食習慣のデータをもとに、スマートフォンアプリを通じて人それぞれに最適なダイエット方法をアドバイスする。価格は30日間の「ライトプラン」で2万9800円からとなっている

https://repul.jp/

ジーンクエスト
日本初一般消費者向けゲノム解析サービス「ジーンクエスト」
日本初の個人向け遺伝子解析サービス。米国では2006年創業の23andMeが有名で法整備の議論も進んでいる分野。価格は4万9800円。届いたキットを返送するだけで生活習慣病など疾患リスクや体質など約200項目についての遺伝子を調べてくれる。

https://genequest.jp/

FROSK
スマホアプリの品質改善ツール「SmartBeat」
スマフォアプリ向けのエラー検知・解析ツール。SDKとして提供され、リアルタイムでクラッシュ情報を把握できる。クラッシュ発生までの画面キャプチャも最大3枚取得できるほか、一定回数以上のエラーが発生した場合のメール通知も。UnityとCocos2d-xにも対応。

http://smrtbeat.com/

トランスリミット
己の頭脳を武器に世界中のプレイヤーと戦え!対戦型脳トレ「BrainWars」
リアルタイム対戦型「脳トレ」。非言語依存で世界中のプレイヤーと四則演算やパターン認識、正しい記号を選択するといった反射神経を使うミニゲームでスコアを競う。ゲームは10種類以上だが、1回のプレーは数分と手軽。成績が上がるとランクに応じたバッジがもらえる。

http://translimit.co.jp/services/brainwars.html

Emaki
みんなのカメラを自分のカメラに「Emaki」
撮影した瞬間に共有アルバムに写真が保存されるアルバムアプリ。共有アルバムを事前に作っておくことで旅行や結婚式などの写真をグループ全員で同期できるため、後から共有するという手間がない。カメラの種類は問わず、写真はクラウドにもバックアップされる。

https://play.google.com/store/apps/details?id=me.emaki

ラクーン
クラウド受発注ツール「COREC(コレック)」
企業間の受発注を管理できるクラウド受発注サービス。現状、多くの企業が受発注にファクスや電話、対面などアナログな手段を用いている。CORECは商品やサービスの受注用フォーム、発注用フォームを用意してもらいチャンネルを一元化することで受発注の処理コスト削減、効率化を目指す。

https://corec.jp/

リクルートライフスタイル
つながりのハブとなる無料POSレジアプリ「AirREGI(Airレジ)」
スマートフォンやタブレットで小売店や飲食店のレジ業務が行える無料のPOSレジアプリ。モバイル決済サービス「Square」と連携し、クレジットカード決済も導入できるようになった。運営はリクルートライフスタイル。

http://airregi.jp/

スペースマーケット
世界中のユニークなスペースをネットで1時間単位で簡単に貸し借り「スペースマーケット」
企業の持つ遊休スペースが1時間単位で貸し借り可能なマーケットプレイス。遊休スペースは貸し会議室やオフィススペースにとどまらず、結婚式場から、古民家、映画館、お寺、球場、お化け屋敷などユニークな施設もある。

https://spacemarket.jp/

イタンジ
1人で内見してお得に部屋選びができる。仲介要らずの内見サービス「セルフ内見」
不動産会社と対面せずに不動産内見ができるサービス。ユーザーは内見したい物件を選び、申込みフォームから希望時間と身分証明書を送付する。その後、貸主・管理会社から日程調整の連絡・内見方法の案内を受けたうえで内見できる。

http://heyazine.com/

ietty
待ってるだけであなたにピッタリなお部屋がやってくる「お部屋探されサイトietty」
賃貸物件探しにおける“借り手”と“営業マン”をマッチングするサービス。サイト上で住みたい物件の条件を登録しておくと、ぴったりの部屋を教えてくれるため、能動的に情報を探す手間を削減できる。

https://ietty.me/


CtoCサービスが成長する”カギ”は何か? Baixing、メルカリ、Stores、ジモティーが語る

冒頭の画像を見てほしい。この写真は何か?これは米国のクラシファイドサービス(「売ります」「買います」をはじめとした個人広告を掲載するサービス)「craigslist」の1ページである。craigslistでは様々な分野の個人広告が掲載されているが、その1つ1つが、実は今、スタータップが提供する特化型のCtoCサービスに置き換えられつつある、ということを示している。

北海道・札幌で5月22日から23日にかけて開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2014 Spring(IVS)」の第3セッションAでは、そんなCtoCサービスの事業者4社——Baixing.com CEOのJianshuo Wang氏、ジモティー 代表取締役社長の加藤貴博氏、メルカリ 代表取締役社長の山田 進太郎氏、ブラケット 代表取締役の光本勇介氏が登壇。インフィニティ・ベンチャーズLLP 共同代表パートナーの田中章雄氏がモデレーターを務める中で、それぞれのビジネスについて語った。セッションの前半は各社のサービスが紹介されたが、ここではセッションの後半のディスカッションについて紹介していきたい。

CtoCサービスはどうやって集客するのか

メルカリが手がけるのは、スマートフォン向けフリマサービス「メルカリ」だ。先日14.5億円の資金を調達し、現在テレビCMも開始している。山田氏は、CMでユーザーが増加したこと自体は否定しないが(CM効果について他社の事例を挙げると、先日調達を終えたアカツキなどは、2週間のテレビCMで70万ユーザーが増加したという話だった)、「プロダクトこそが非常に重要」と断言した。当然と言えば当然かもしれないが、やはりプロダクトが命となる。メルカリではスマートフォンに特化し、素早く手軽な操作で出品、購入できるフリマサービスを目指しているという。誰もが迷わず操作できるプロダクトを作ることこそが重要だと語る。

オンラインショップ構築サービス「STORES.jp」を提供するブラケットの光本氏は、「まだ自分たちでも答えが見つけられていない」と語る。STORES.jpの出展数は10万店舗。単純に店舗数だけを比較すれば4万店舗超の楽天を超えている数字だ。しかし店舗の性質も違うし、SEOやリスティング広告などを含めて、コストをかけたマーケティングを展開している。なので同じことをしてもどこまで成果が出るかというと難しい。そのためStores.jpでは、店頭販売できるパッケージ商品を作るということから、さまざまな集客の施策を作っているそうだ。

craigslistのようなクラシファイドサービス「ジモティー」を展開するジモティーの加藤氏は、そもそも「クラシファイド」という言葉自体が日本で一般的ではないため、言葉としては「(売ります買いますを投稿できる)掲示板」としてアピールしていった方がユーザーとの親和性が高いと判断したという(ちなみにジモティーのユーザーは40代以上が62%となっており、ITリテラシーも比較的低いそうだ)。サービス開始当初は,「社員の友人に声をかけてサービスを紹介する」といった人海戦術で集客を始めた時もティーだが、結局重要なのは「リピーターをどれだけ作るか」ということだと思い、ユーザーがどうやって成功体験を得られるかに注力しているそうだ。

中国でクラシファイドサービス「Baixing.com」を展開するWang氏も、口コミの重要性を語る。広告経由のサイト流入は実は全体の5%程度で、ほとんどはオーガニックなサイト流入なのだという。ちなみにBaixing.comで最も人気のある商品は中古車で、実に中国で流通する中古車の30%が同サービスを通じてやりとりされているそうだが、中国の中古車市場では安価な部類に入る1万ドル以下のものを取り扱っているそうだ。こういった商品は安価すぎて中古車ディーラーだと扱いたがらないそうだ。

リリース時期、ユーザーヒアリング、機能——カギになる施策は?

セッション後半、会場から「どういった施策が成功のカギになったのか」という質問が4社に投げられた。

アプリを4月に提供したメルカリ。先行するサービスとしては、女性に特化したFabricのフリマアプリ「Fril」などもあったが、「競合も出てきたが、タイミング的にも早く動けたことがよかった」(山田氏)と語る。

ユーザーインタビューの重要性を語るのは加藤氏だ。「社内の意見とユーザーの声は実は合っていなかったりする。例えばサービスのリッチ化は、実はユーザーのニーズと乖離していることもある」(加藤氏)。この話はなにもCtoC領域に限ったことではないだろう。

光本氏は、1つに絞れないとしながら、これまでの常識を超えるようなサービスの付加がポイントだったと語る。Stores.jpでは、ユーザーが複数店舗で商品を購入する場合でも、一括での決済ができるようにしたし、商品撮影や倉庫利用も基本無料で提供を開始した。こういった施策も、集客のフックになっているそうだ。

「シンプル」こそが大事だとするはWang氏だ。加藤氏の話にも近いが、サービスが複雑になりそうなとこには、まず原点に戻ってシンプルにするのだという。Baixing.com自体も、ユーザーに4つのテンプレートを作るだけで個人広告を出せる仕組みを導入しているのだという。


ヤフーが大赤字でも「2時間配送」にこだわる理由


ネットショッピングで翌日配送や当日配送といった「短時間配送」は当たり前。もっと早く欲しいというニーズを満たすためにヤフーが5月8日に試験的に始めたのが、注文後2時間以内に商品を届けるYahoo!ショッピングの「すぐつく」だ(関連記事はこちら)。アメリカだけでなく日本でもにわかに注目が集まる「数時間配送」だが、なぜヤフーはこのジャンルに参入したのか。札幌で開催中のInfinity Ventures Summit2014 Sprint(IVS)でヤフー執行役員の小澤隆生氏がその狙いを語った。

すぐつくは、巨大な物流拠点から配送する従来型の物流ではなく、近隣にある実店舗から利用者に直接商品を届けることで「2時間配送」を実現する。実証実験では東京・豊洲のスーパーマーケットなど3店舗と提携している。この動きには、ブロガーのやまもといちろう氏が「戸別配送を手がけたチェーン店は死屍累々」などと指摘。この点について小澤氏は「はっきりイイましょう。大赤字です」と言い放った上で、すぐつくを始めた理由を次のように話した。

なぜやっているかというと、やっぱり商流の中に1枚入るのが重要なんですよ。どこの誰が何をいくらで買ったかがわかれば、広告配信に使える。地元のスーパーはチラシを打っているけれど、その間に僕らが入る。そうすると、チラシのビジネスが取れるかもしれない。プラットフォームになるには、いかに砂時計の真ん中を作り出して取るか。購入の直前、家までのラストワンマイルをいかに取るか。

これは喋りたくなかったなあ……と反省気味の小澤氏だったが、話は止まらずさらに続いた。

どんなに赤字でもこの情報が欲しい。どこの誰が何をいくらで買っているかがわかれば、ヤフーとしては広告配信に使えるデータになる。こうした情報は今までスーパーマーケットしか取れていなかったのですが、すぐつくはリアルの購入に完全に食い込んでいるんですよ。そういうことをやろうとしているのは、言うつもりがなかったんえすけどねえ。ECで考えると、ヤフーや楽天は販売店が自由に使えるプラットフォームになりがち。でも私としては、楽天と同じ戦いをしても難しいし、つまらないので、砂時計の真ん中をギュッと掴む。


日本にハードウェアスタートアップの芽はあるか? IVSで当事者たちが議論

テク業界にいるとIoTという言葉を聞かない日がないぐらい、ハードウェアのスタートアップに注目が集まっている。日本にもいくつも登場してきているが、果たして日本はハードウェアプロダクトで起業するのに向いているのだろうか? 輝かしかった電機系製造メーカー時代が不調をきたして長いが、次世代のハードウェア企業が出てくる土壌はあるのだろうか?

今日札幌で始まったInfinity Ventures Summit 2014 Sprintのパネルディスカッションの中盤、モデレーターを務めたITジャーナリスト林信行氏が発した問いかけに、ハードウェアスタートアップの現場にいる4人のパネラーが回答した。

まず最初にこの問いに答えたのは、優しい明かりと独特のミニマルなフォルムを持つLED照明「STORKE」で2011年に起業し、「ひとりメーカー」で知られるBsize代表取締役社長の八木啓太氏。

「日本にハードウェアスタートアップの芽はいっぱいあると思います。何年か前まで日本の製造業は世間を席巻していましたよね。その企業群の下には工場がいっぱいあった。町工場がいい技術を持っています。彼らはまだデジタル化されていなくて、ネットとも繋がっていないという問題があります。だけど、Bsizeは、町工場とコラボしながら高度な製品を提供できていると思う。日本は町工場が優れていて、ハードウェアスタートアップをアクセラレートすることができる」

「ネットと繋がっていない」と八木氏が指摘するのは、たとえば起業時の次のような経験のこと。元々八木氏は富士フィルムで医療機器の設計や開発を行っていた。レントゲンや、胎児の超音波エコー検査機などを担当していた。そんなとき、ある商社の担当者がLEDを紹介してくれた。手術灯にどうですか、と。このLEDモジュールを富士フィルムは不採用とした。八木氏は、自宅でプロトタイプを作ってみて、「これはいいな、量産すれば売れる。1年間、1000万円あればできる」と、会社を辞めて全財産をはたいて作り始めた。こういうLEDモジュールはネットで検索しても出てこない。その後、町工場の協力を得てプロトタイピングを進めたが、どこの町工場が良い加工技術を持っているかということについても、詳しいヒトに聞くしかないのが現状という。一方、Bsize創業時はハードウェアスタートアップ一般に吹く追い風を背景としている。「電子基板も電灯自体も設計は無料のCADソフトを使っている。いまはデータを送れば基盤にして送り返してくれるサービスもある。3Dプリンタもあり、完全に家内制手工業で最初は作った」。2014年現在はソニーやパナソニックの技術者を採用しているが、「ひとりメーカー」と呼ばれるように、今の時代は個人で家電スタートアップをすることもできるのだと改めて指摘した。

日本にハードウェアスタートアップの芽はあるか? 次にこの問いに答えたのは、ユカイ工学代表の青木俊介氏だ。ユカイ工学は、実は多くのスタートアップ企業のプロトタイピングを請け負うなど、関係者の間では裏方としても知られる。たとえば、テレパシー・ワンの最初のモックアップや、スマフォでロック・解除ができる南京錠の「loocks」(ルークス)などは、ユカイ工学が請け負ったそうだ。大企業とのコラボも多くこなすユカイ工学の青木氏は、実は創業時に本社を置く場所を日本を選んだ理由を次のように話す。

「今の会社を作る前には中国に住んでいました。中国で会社を作ることもできたんですが、そうしなかった。日本社会には凄くいい製品がたくさんある。住んでる人が、いい暮らしをしている。そういうところでこそ、いちばん良い物って生まれるはず。大量生産するだけなら、中国にいたほうが有利かもしれません。でもプロダクトって、みんながいいなって思うような、ライフスタイルと結び付いているので、(今の中国からは)良い物って生まれないと思う。米国西海岸って、まさにそうなんだと思うんですね。夏休み中サーフィンをしている人がいる場所だから、GoProが生まれてくる」

パネルディスカッションの聴衆側にいたハードウェアスタートアップのCerevo代表取締役の岩佐琢磨氏が、会場から同様の意見を投げ入れた。

「豊かな国で作るべきというのはぼくも言ってます。世界でいちばん巨大家電メーカーが多い国は、どこですか? 韓国にはサムスンがあるかもしれないけど、それだけ。家電業界に従事してる人の数がいちばん多いのはどこか? それは日本です。(製品は)人が作るもの。優秀な人がいる国が強いと思うんですよね。先ほどネットで検索しても出てこないって言ってましたけど、確かにそう。出てこない。結局、人の中にノウハウが眠っている。そういう人の数がいちばん多い国って日本ですよ。いまCerevoの売上は、すでに半分が海外だけど、本社を国外に動かす気はないですね」

ロボットの向けの汎用の制御ソフトウェアを開発するスタートアップ、V-Sido代表の吉崎航氏は、ちょっと違うアングルからの回答を持っていた。

「(新しい技術は)ちゃんと使ってる姿が想像できるのが重要だと思ってる。スマフォって使うのがイメージしづらい。最後までガラケー使ってた人たちってそういう人たちだったわけですよね。使ってみたら、何だ案外使えるじゃんと。じゃあ、ロボットがいる生活に馴染む、そういう生活が思い描けるのはっていうと日本人。世界で最もロボットアニメを見ている国民」

V-Sidoはマウスや身振りで人型を動かせるロボットのための「ロボット用のOS」。ロボットは物理的実装ごとに重心やアームの自由度が違うが、V-Sidoを間に入れると、種類の違いを超えて動作を直接的にロボットに伝えて操ることができる。「人間の動きを見ているので、人間が動かしているように見えるけど、実際は人間の動きに合わせてロボットが動いてあげている。大小のロボットが同じバイナリで動く」(吉崎氏)という。V-Sidoで動くロボットの動画が会場に流れると聴衆から歓声が湧いた。

吉崎氏は「ロボットの開発競争が始まった」という。愛知万博を始め、日本国内では過去に何度か(あるいは何度も?)ロボットブームがあって、そのたびにブームは去った。しかし「今回はホンモノ」という。GoogleがAndroidの次にやろうとしていることの1つがロボットで、一挙に7社の買収が話題になることもあったように、世界中が「そろそろ作ってみるか」という状況にあるからだ。その吉崎氏が目指すのは「用途を狭めない、全ての分野でロボットが活躍できる下地を作ること」。今だと、すでに工事現場のショベルカーのような重機をヒューマノイドロボットで操作するという検証を始めていたりするそうだ。人型だから応用範囲は広い。ひょっとすると自分の分野でも活躍するロボットがあるのではないかと想像できる国民が全国にいるのが日本、ということだろう。

ロボットの開発はまだ売れる段階にない。これはロボット開発の課題が人間を作るのに近いからで、ソフトウェアも力学もネットワークも人工知能もと多岐にわたる専門知識が必要になるが、そういうものを全て併せ持つ企業はまだ存在しないからだという。一方、V-SidoはPCにおける汎用OSのようなものを作ることで、誰もが全ての開発をする必要がない世界を作るという。

ハードウェアのプロトタイプやテクノロジーを使った空間演出などデザイン面から企業とのコラボやコンサルティングを多く手がけるtakram desigin engineering代表の田川欣哉氏も、創業時の会社設立の地として、明示的に東京を選択したという。

「どこで会社やるか悩んで、シリコンバレーじゃなく東京にした。それはハードウェアから離れたくなかったから。インテグレーションをやるのは東京がいいな、と。日本人の特性として、いろんな物事をすりあわせて作るって好きというのがありますよね。ハードウェアを作れる国に日帰りで行けるっていうことも含めて東京が良かった」

田川氏は、ネットやソフトウェアが必ずしも得意でない上の世代の製造業の人々ときちんとコミュニケーションする新しい世代が出てきてムードが変わってくると、アメリカとはニュアンスの違うものが出てくるのではないか、という。