昨年ユニコーン企業の仲間入りを果たしたスマートニュース(SmartNews)は、時間をかけてローカルニュース機能を拡充してきた。米国大統領選挙を控えローカルニュースの重要性とその課題がはっきりと示される中、スマートニュースにとって新規ユーザー獲得の絶好の機会が到来している。
2019年の初め、スマートニュースのローカルパートナーは40社だった。同社は昨年、米国の人口の大半にサービスを提供することを目指してその数を6000都市のパブリッシャーへと拡大してきた。また、現在アプリには選挙ニュースのセクションが設けられ、選挙速報と各候補者に注目したセクションがライブでアップデートされている。
ローカルメディアにとっては、スマートニュースや競合するFlipboardなどのアプリが独自のローカルニュース機能を提供し始めたことで、トラフィックと収益に関して検索から流入に対する依存度が低くなっている。昨年発表されたPew Research(ピュー・リサーチ)の調査によると、米国の成人の多くがジャーナリストは地元コミュニティと関わりを持つことが大切だと考える一方で、ローカルニュースを有料で購入したと回答した人はわずか14%に留まり、多くの回答者はその主な理由として無料コンテンツが利用可能であることを挙げていた。
スマートニュースのメインナビゲーションメニューでは、ローカルニュースと選挙ニュースはいずれもタブで表示されている。ユーザーの場所に応じてパーソナライズされたヘッドラインを表示する「ローカルニュース」タブは、同社によるとデフォルトの「トップニュース」タブと同等のエンゲージメントをパブリッシャーにもたらしている。
8年前に日本で創業し現在トップクラスのニュースアプリであるスマートニュースは、2014年に米国版のサービス提供を開始した。アプリに追加されるパブリッシャーは、元ジャーナリストを含むアプリのコンテンツチームが選別しているが、ユーザーに表示される記事は機械学習によって決められている。過去数年間で米国の政治やメディアを取り巻く環境が大いに両極化したことから、ソーシャルメディアのアルゴリズムによって強化された「フィルターバブル」から読者が抜け出せるように、スマートニュースは発見ツールに注力してきた。
例えば、昨年同社は「あらゆる立場からのニュース」(News From All Sides)と呼ばれるサービスの提供を開始した。これは政治に関連する公開記事から、同じトピックについてのヘッドラインを表示するものだ。
「選挙ニュース」タブで、このスライダーは大統領選挙の各候補者に関するニュースに適用されている。最初にサービス提供を開始したとき、このスライダーには5つのセクションがあったが、3つに減らしてシンプルにした。ニュースソースをどう分類するかに焦点を合わせるよりも、人々にもっと多くのニュースソースを探索してもらえることを目指したのだと、プロダクト担当シニアヴァイスプレジデントのJeannie Yang(ジーニー・ヤン)氏は言う。
同氏はTechCrunchに「私たちが行った改善のひとつは、必ずしも何かを『正しく』することではなく、人々がスペクトルを探索できるように、そして実際にそれを理解できて、囲い込まれていると感じずにすむようにすることなのです」と語った。
ローカルニュース機能と選挙ニュース機能を運営する傍ら、ヤン氏をはじめグローバルな成長の牽引役であるFabian-Pierre Nicolas(ファビアン-ピエール・ニコラ)氏、エンジニアリング、プロダクト、データ、マーケティングの各チームからスマートニュースの50名以上のメンバーがミネソタ州とアイオワ州を視察した。直近ではネバダ州とカリフォルニア州を回り、旅程はミシガン州とフロリダ州へと続く。こうした「リスニングツアー」はスマートニュースの鈴木健氏と他の共同創設者が2016年にアプリの潜在ユーザーとの関係を確立するために行った、米国視察旅行に端を発するものだ。
「当社の主要な(米国)オフィスは、パロアルト、サンフランシスコ、ニューヨークにあるので、私たちが自らの立ち位置から抜け出すために視察旅行を行っています。人々がニュースとアプリにつながるやり方への共感力を高めるためでもあります」とニコラ氏は言う。チームはCraigslistでアンケートを募り、カフェや協会に出かけて、政治やコミュニティでの選挙ニュースやローカルニュースの入手方法など、さまざまな事柄について人々に尋ねた。
話をした人々の多くが、ニュースのほとんどをテレビかラジオから得ていた。オンラインで閲覧する場合はスマートフォンではなく、デスクトップパソコンを使用することが多い。スマートフォンの場合はコストが高かったりデータプランの制限があるためだ。多くの記事が大手メディアによって配信されているため、信頼できるローカルニュースソースを探すのに特に問題があると答える人が多かった。たとえば、記事で彼らのコミュニティが注目されることはもうないかもしれないし、ニュースを見るにはたくさんのスポンサー付きコンテンツやオピニオン記事をかきわけなければならない。
自分たちのプラットフォームでニュースソースの品質を確かなものにするために、スマートニュースのコンテンツチームはまず公開記事をふるいにかけてから、McClatchyのようなローカルニュースのパブリッシャーと提携する。「ローカルニュース」タブでユーザーが見るコンテンツはユーザーの場所に基づいている。アプリはまず近隣地域のニュースを優先して表示し、次により大きな行政区のニュースを表示する。
例えば、読者が大都市に居住していれば、スマートニュースはそこで発行されている新聞のヘッドラインを表示する。もっと人口の少ない地域に居住している場合は、その郡で発行されている新聞の記事を表示する。将来、この「ローカルニュース」タブには他のソース、たとえば地元のお買い得情報、犯罪や事故の情報、市議会の議題なども含まれるかもしれない。
スマートニュースは候補者同士のディベートの合間にコマーシャルを流すなどのマーケティングキャンペーンを行い、選挙シーズンをうまく生かして読者を増やしている。アプリが目指すのは、そのような読者を長期ユーザーに転換させ、人々がスマートフォンで最初に開くニュースアプリになることだ。
こうすることで収益化の対象となるインバウンドトラフィックについて、新たなソースを選択肢としてローカルニュースのパブリッシャーに提供することができる。「それがいっそう健全なメディアエコシステムの形成につながることを願っている」とニコラ氏は語った。
画像クレジット: TriggerPhoto / Getty Images
[原文へ]
(翻訳:Dragonfly)