ソフトバンクも巨額出資する3400億円企業、Flexport創業物語

「このビジネスを始めて1年になるまで『貨物フォワーダー』という言葉の意味を知らなかったんですよ」。物流スタートアップのFlexportが直近で32億ドル(約3420億円)の評価を受けたことを考えると、2016年にCEO兼創業者のRyan Petersen(ライアン・ピーターセン)氏に初めてインタビューしたときのこの言葉に、今となってはいっそう驚きを禁じ得ない。

しかし、そこに同氏がテック産業で最も才能のある、エキサイティングな経営者の1人である理由が透けて見える。何といっても、彼は学ぶ。謙虚に。休むことなく。果たす役割が大きくなると、それに必要なことは何でも学ぶ。

まさに今なら、旅客機の座席に人が座っているように箱をシートベルトで固定すると医療用マスク115万枚を搭載できることを学ぶ、という意味だ。Flexportはこれまでに個人用防護具約6200万個を輸送している。そのうち1000万個以上が同社のFlexport .orgの働きにより資金提供されたものだ。 一方でピーターセン氏とFlexportはFrontline Responders Fund(最前線対応者支援ファンド、FRF)の設立に協力し、同ファンドは新型コロナウイルス(COVID-19)対策支援のために700万ドル(約7億5000万円)の資金調達を行った。

Flexportが輸送する300万個のウイルス防護具

Flexport.orgは300万個の個人防護具を梱包して空の旅客機に積み付け、最前線で対応する人々に向けて送り出した。

「彼は私が知る中で最も印象的な創業者の1人ですよ」と語るのは、FRFを率いる仲間でScienceの共同創業者のPeter Pham(ピーター・ファム)氏。「ライアンは本当に私欲なく、ただ問題を解決したいと思っているのです」。

これを踏まえて、TechCrunchがこれまで4年間にわたり行った6回のインタビューから、13億ドル(約1390億円)の調達と数億の収益を達成してきたピーターセン氏の歩みを振り返る。

面倒なことを無視しない

ピーターセン氏はほどなく、「貨物のフォワーディング」が出荷と引き渡しの諸々を調整し、そこにある商品のパレットやコンテナを、トラックや船、飛行機を使って地球の反対側にいる販売業者へと届けることだと知った。それまでに、Flexportは2014年のY Combinatorに参加し、1兆ドル産業の貨物業界に参入する準備をしていた。

Flexport創業者のRyan ピーターセン氏

Flexport創業者のライアン・ピーターセン氏。

「問題の規模が大きすぎて、解決できると思えなかった」と同氏は振り返る。「どうやって世界貿易を修正すればいいんだろう? だいぶ経ってから、とにかくやってみよう。壊れっぱなしというわけにはいかないだろう、と思うようになったのです」どうしてか、当時の貨物フォワーディングの世界というのは、ファックスの記録と紙の積荷目録だらけで、Excelファイルか電子メールを受け取れればその顧客は運が良いほうだった。

貨物フォワーディングは多くの起業家の悩みの種であったが、誰もこのことに取り組もうとしなかった。困難が大きすぎて克服できないことから、YCの共同クリエイターのPaul Graham(
ポール・グラハム)氏が名づけた「schlep blindness」(面倒な仕事を無視すること)を引き起こしているようだった。

「面倒な仕事を無視することとは、あまりにも大変すぎるので脳がそのことを考えないようになってしまう、ということです。私たちの脳には必要な機能だと思います。そうでなかったら、座って死について一日中逡巡して、何もできなかったということになるでしょう」とピーターセン氏はいう。「Stripeが現れるより前にインターネットで何かを販売したことがある人なら、恐ろしく面倒な決済の手続きをしたことがあると思います。インターネット起業家なら100%その問題を経験していて、それぞれの方法ででやってきたと思います」。100年前からあって今なお現役の貨物輸送手続きと、山のような規制当局の頭文字語。参入したい人なんているのだろうか。

「Ryanは私が呼ぶところの『徹甲弾』ですよ。他の人が諦めるような障壁を乗り越え続ける創業者です」とグラハム氏は言う。同氏はFlexport.orgの新型コロナウイルス対策支援に100万ドル(約1億1000万円)を寄付している。「彼は意思が固いというだけじゃない。他の人に見えないものが、彼には見えるんです。貨物ビジネスは巨大でありながらものすごく前近代的で、けれど何千人もスタートアップ起業家がいて、誰がそのことに気づいたでしょうね」。

Flexportイメージ画像

ピーターセン氏が腹を立てていたのは、顧客の貨物が最適とは言いがたいルートで輸送されているのに、そのことが価格やスケジュールにどれほど影響しているかを顧客に知られたくないと、大手貨物フォワーダーが考えていたことだった。「全体がどう機能しているかを私自身が理解できないことで、彼らはお金を儲けていたわけです。それで、当時は、この分野にまだ疎い起業家にありがちなことなのだろうと思っていたのですが、実は大企業でさえこのことに苦労していることがわかったのです。貨物利用運送事業者に利用されてしまうのではないかと恐れていたのです」。

ところが、ピーターセン氏はそれほど世間知らずではなかった。実のところ、それまでずっと貨物ビジネスと関わりがあったのだ。

ソーダの売買からスタートアップの創設へ

「母はたぶんそうとは知らずに、私たちを起業家として育てたのだと思います」とピーターセン氏は振り返る。同氏と兄のデビッドの母親は生化学者であり、食品安全ビジネスを手がけていた。父親はその会社のプログラミングを担当していた。「子供の頃の会話といえば、ソフトウェアを活用し、どうやって政府規制をもっとアクセシブルにするか、ということばかりでした」。Flexportが最終的に、米国の43もの貿易規制当局を突破したのも、同社のCEOにしてみれば自然な成り行きだった。

Ryan ピーターセン氏、2015年撮影

Ryan ピーターセン氏、2015年撮影

ピーターセン氏が発散している行動的なエネルギーからは、いつも次の難題を待ち望んでいるような印象を受ける。「その頃は、何もかも飽き飽きしていて」それで、母親の職場に連れて行かれた。「母は私にオフィスに買い置きするソーダを納品させて、報酬を払ってくれたんです。Safeway(セイフウェイ)まで父の車に乗せてもらい、ソーダを1ケース4ドルで買って、9ドルで会社に販売しました」。同氏は笑いながら、ふと考えて「それって、子供のお小遣いを非課税にする方法だったかもしれませんよね」と語った。

ほどなく、ピーターセン氏はもっと大きな商品をもっと遠くへ輸送するようになった。中国でスクーターを買い付け、米国内でオンライン販売した。2005年までピーターセン氏は、サプライチェーンに近い場所にいるため中国で暮らしていた。その翌年、同氏は兄とMichael Klanko(マイケル・クランコ)氏と共同でImportGeniusを創業した。そこで彼らが気づいたのは、紙の積荷目録には膨大な量の価値ある情報が詰まっているということだった。そこで、輸入者と輸出者が競合会社の動向をチェックできるよう、スキャンしたデータを販売し始めた。

ピーターセン氏が初めてスポットライトを浴びたのは、2008年に偶然Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)に出会ったときだった。ImportGeniusは、Apple(アップル)が大量の「電子コンピュータ」を出荷しようとしていたことを掴んだ。これは同社で初めての出荷分類品目だ。 「iPhone 3Gの発売を、公開積荷目録データからスクープしたのです。スティーブ・ジョブズが米国税局に連絡し、国税局から私に連絡が来ました」と2016年のインタビューで語った。

ImportGeniusは結局頭打ちになったが、ピーターセン氏はここで知識を蓄え、後に自らの「面倒な仕事」を突き止め、それを無視することなく打ち砕くことを学んだ。 「最大の難問が本丸から私をじっと見ているようでした。世界貿易は難しすぎて、管理できるソフトウェアがありませんでした」と同氏は振り返る。「その頃、この業界では中小企業向けのソフトウェアが不足しているだろうと予想していました。しかしその後分かったのは、この業界には本当にまったくそのソフトウェアがないということでした」。

最初はImportGeniusの社内で後のFlexportを立ち上げたかったが、既存の投資家にリスクを取るよう説得するのは困難だった。何か別のことを始めるのは怖いが、エキサイティングでもある。「兄は私の親友で、最良のアドバイザーでもあります」とピーターセン氏は言う。お互いに嬉々として競争している2人 — ライアンのTwitterハンドルは「@TypesFast」だ。一方のデビッドは「@TypesFaster」である。

それで、Davidがまず動いた。後に2300万ドル(24億5000万円)を調達するBuildZoomを創業し、工事業者手配の兵站を固めた(このパターン、お気づきでしょうか)。その後2013年にライアンが退社する。「自分の城を出て自分を試したいと……1人で陣頭指揮を執れることを証明したいと望む自分がいたと思います。本当にすごく大きな挑戦でした。その日が来て、初めて味わうような解放感があって、すばらしい気分でした」。

「笑いのタネ」が10億ドルを調達

規制当局の認可をすべて受け、Flexportの商品の基盤を構築するのに数年かかった。Founders Fundからの早期の資本で、ピーターセン氏は待望の貨物ソフトウェアを構築した。それでも「大企業の経営者からは笑いのタネに。私たちのことを(映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の)Emett Brown(エメット・ブラウン)博士と次元転移装置に例えた人がいて。でもその人は、博士はタイムマシンを発明して、それは実際に動いたということを忘れていたのだと思います」。

2016年までに、Flexportは64カ国で700社のクライアントにサービスを提供した。僕が以前書いた記事のなかで、「Flexportはイノベーションを寄せ付けない退屈な巨大産業に立ち向かう、最もセクシーでない1兆ドル産業のスタートアップ」とFlexportのことを表現したことがある。それからコンシューマー向けスタートアップが飽和状態になり、投資家はこれまで触れられなかった市場で進化しているテクノロジーに目を向けるようになった。2017年の資金調達後、企業価値9億1000万ドル(971億2000万円)と算定されたFlexportは、DSTが主導する1億1000万ドル(117億4000万円)の資金調達ラウンドを実施し、シリコンバレーの目に留まり始めた。

Flexportのダッシュボード画面

Flexboardプラットフォームのダッシュボードは、地図、通知、タスク一覧、そしてFlexportの顧客がサプライヤー工場との間で使えるチャットを提供している。

幸運なことに、Flexportが1800社の顧客と取引し月間7000件の貨物を取り扱うようになっても、まだ貨物業界の巨人たちは笑って見ていた。「スタートアップのライバルは気にしていません。大手が私たちのことをジョークだと思わなくなったら心配です」と同年ピーターセン氏は語っていた。ほどなく、創業25年の中国の民間物流大手S.F. ExpressがFlexportと業務提携し、2018年の追加の1億ドル(106億7000万円)のラウンドにつながった。一方で、Flexportは老舗のライバルたちのようになろうと努力していた。 当時ピーターセン氏は「スタートアップという言葉を外したいと考えていました。(当社のお客様は)成長を助けてくれる企業を求めているのであって、地に足のつかないスタートアップは求めていませんでした」と話していた

その点、ピーターセン氏は貨物ビジネスか魅力的かどうかは気にしていなかった。「セクシーとも、セクシーでないとも考えたことがありませんでした。世界経済のバックステージパスだと考えていただけです」と後に同氏はそう説明した。それでも、サウジアラビアを後ろ盾とするソフトバンクのVision Fundには魅力的に映った。その頃Flexportは、販売業者が数カ月後に販売予定の商品の決済を完結できる貨物ファイナンス機能を追加していた。自社で航空機をチャーターし、自社の倉庫を運用するようになった。その倉庫では、入庫するすべての貨物のサイズをスキャンしてその先の輸送を最適化できる次世代ロジスティクスの実証実験を行った。

Ryan ピーターセン氏

それまでに、Flexportには数多くのイグジットの選択肢があった。しかし、ピーターセン氏は運転を楽しんでいたのだ。「ただおもしろいのです。目的があれば興味深いことに引き込まれる。ビジネスを売却してしまえば、ただのどこにでもいるお金持ちです。ビジネスを売却したいとはまったく思いません」。幸いにも、貨物フォワーディングでの利益拡大の見通しから、ソフトバンクは2019年前半、Flexportに仰天の10億ドル(約1067億円)を投資することに同意し、資金調達後の企業価値は32億ドル(約3415億円)になった。

「当社の役員会でも物議を醸しました。これは大きな希薄化だと考えられていました。しかし、これからやってくる上がり下がりの波で、サイクルを乗り切るのにキャッシュが必要だと説得しました。私の考えでは、世界は不確実なものです。あらゆる出来事に準備ができていなければならない」とピーターセン氏はいう。嵐を乗り切れさえすれば「やがて将来勝利するということです」。

この戦略はほどなく当たった。国内で新型コロナウイルスの感染が拡大したために中国との貿易が事実上停止し、Flexportの取り扱いコンテナ数は激減したが、他の後発スタートアップ企業のように大規模な解雇をせずに済んだ。2月4日に、先を見越して減速が予測される採用部門を中心に従業員の3%にあたる約50人を削減した。「社員を落胆させるのは本当に辛いこと」とピーターセン氏は打ち明ける。

Flexportのチャーター機

Flexportはここ数年自社のチャーター便を運用して輸送している。

不況時代のCEOとして舵をとること、そして思いやりを持って人員を削減することが、ピーターセン氏の新しい目標になった。「そのことに私が個人的な責任を負っているということを、社員に知って欲しかったのです。ここには透過性があることを」と同氏は語る。事態の深刻さに、その声に力がこもる。「社員は不安を感じるとリーダーに目を向ける。そのときリーダーが不安を感じていないと分かると、いっそう不安が増すのです。でも、社員が不安を感じていて、『ああ、リーダーもやっぱり不安なのかな?』と思えば、その時は大丈夫。彼らもきちんと行動してくれます」。

新型コロナウイルスの国内感染拡大前に素早い決断力で行動したことで、Flexportの推進力は強く、滑走路は開かれた。ピーターセン氏は、不況でも好況期と同じように同社を導けるだけのちからを証明しつつある。

Flexportのマネジメント術

「この18カ月ほどで得た最大の学びは、全部はできないということです。やりたいことは何でもできるけれど、全部はできないのです」とピーターセン氏は説明する。「良いアイデアが浮かんで『やろう!』というでしょう。するとすぐ手を広げすぎになってしまう。物事に『ノー』という、何らかのトップダウン的な規律が必要なのです。創業後の数年間、私たちにはそれが欠けていました」と彼は苦笑いしながら話した。

規律の探求によって同氏は、顧客ニーズと企業文化維持の優先度付けのための、2つの重要なフレームワークを開発し、今はそれに従っている。Flexportは従業員1800人、14拠点、6つの倉庫、そしてSonos、Kleen Kanteen、Timbuk2など1万社の顧客を獲得するまでに成長したのだから、それらのフレームワークは決定的に重要だ。

ホワイトボードで自身のマネジメントフレームワークを説明するRyan ピーターセン氏

ホワイトボードで自身のマネジメントフレームワークを説明するライアン・ピーターセン氏。

最初のフレームワークは、ピーターセン氏のメンターである米国ビジネス界の大御所であるCharlie Munger(チャーリー・マンガー)氏からヒントを得たものだ。ビジネスが成功するために満足させなければならない6種類のステークホルダー、または「お客様」を明らかにする。ピーターセン氏が述べるにはこうだ。

  1. 顧客:お金を払ってくれる人たち。Flexportにとっては、輸入者と輸出者の両方だ。
  2. ベンダー:自分が支払う相手。Flexportの場合、航空機、船舶、トラックの所有者。
  3. 従業員:彼らの待遇を必ず良くすること。Win-Winな関係でなければならない。
  4. 投資家:自分の投資のリターンを得る資格がある人たち。リスクを取っているから。
  5. 規制当局:誰に免許を与えるかを決める人たち。Flexportにとっては、輸入製品に関係するもので、米国内だけでも43の規制当局がある。
  6. コミュニティ:事業を行っている場所。いつかこれは、グローバル社会になるかもしれない。

Charlie Munger氏、Ryan ピーターセン氏が提唱する「6種類の満足」

「すべての項目でBグレード以上、できればAを取れなければ、長期に持続可能ではありません」とピーターセン氏は説明する。そこで働くべきか、投資すべきか、取引すべきか、または自分で導いて向上させられるか、会社を評価するときに誰でも使えるスマートレンズだ。

Airbnbを例に取ってみよう。顧客は概してこのホテルの代わりのサービスを好んでいるし、従業員の採用も継続的に有効にできている。そして、投資家は数十億ドルのオファーを提示し、同社が新型コロナウイルスの災禍を生き延びるよう資金を注入している。ただし、ベンダーであるホストとその近隣住民は問題のあるゲストに手を焼いていて、コミュニティと規制当局は住宅供給に与える影響を巡ってこのスタートアップと衝突している。この「6種類の満足」で、Airbnbが何をもっと頑張らないといけないかが分かるだろう。

2つめのフレームワークは、ピーターセン氏が自ら開発したもので、事業の拡大期に会社のコアバリューを確実に維持する方法に関するものである。6種類の文化的な問いが与えられる。

  1. Why:なぜ自分は存在するのか。自分の目的、ミッション、ビジョン、影響力は?
  2. Who:誰を雇用していて、どのような価値観と行動を求めているか。
  3. What:自分は何に焦点を合わせているか、成功の尺度にどのような指標を使っているか
  4. How:どうやって意思決定していて、どのようにして改善のためのフィードバックループを短くしているか。
  5. When:いつまでにやり終えて、商品はいつ出荷しなければならないのか。
  6. Where:自分のチームはどこに帰属意識を持っていて、自分はどうすればもっと多様性を受け入れられるのか。

ピーターセン氏はこれらの理念を医学的な状況への対処になぞらえる。リーダーが早くからチームの文化にそれらを組み込んでおけば、あとで直そうとするよりもずっと簡単だ。「どの会社でも、これらを正しくできれば、競争に勝てる」と同氏は考えている。

これらを実践するために、ピーターセン氏は身近な人たちでチームを編成した。チームは「当社のOKR(目標と主な結果)は明確か、きちんと文書化され、多様性を受け入れた会議をしているか、社員が自ら責任をもって業務しているかを確認すること、それだけです」。この方法はアマゾンの企業スタイルに大きく影響を受けている。ピーターセン氏は2019年に「英語には官僚制を意味するポジティブな言葉がないですよね」と語っていた。

プロセスを真面目に捉えるCEOは従業員にも好評だ。「ライアンの元で働いたおかげで、この10年でキャリアが大きく前進しました。彼は人に能力を最大に発揮させるような、不思議な力を持っているのです」と語るのは、Flexportの元商品担当副社長を長年勤め、後にPlacementを創設したSean Linehan(ショーン・リネハン)氏である。「ライアンは、オペレーション集約型のテックビジネスの戦略を作り上げているのです。グローバルロジスティクスの巨大企業を一から作るのは、頭がおかしくなるほど複雑な仕事です。でもライアンは複雑さの中で成長しています。ほとんどの起業家がだめになってしまう状況で、彼は本領を発揮するのです」。

現在直面している経済的な向かい風の中でFlexportが上場を目指すならば、ピーターセン氏にはこの推進力が必要だろう。ご想像どおり、同氏はそのことについても学んでいるところだ。「年次報告書を読むのが好きなのです。趣味みたいなものです、特に競合会社の報告書が」とピーターセン氏は言う。「上場したいです。ただし、利益を出せるようになってからです。ウォールストリートの気まぐれに流されたくありません。上場していて損を出して、そのとき自社の株がウォールストリートに嫌われたら、死のサイクルに入ってしまいます」

他をしのぐ会社のCEOであることで、新しいメンターへの扉も開かれた。エグゼクティブコーチのMatt Messari(マット・メッサリ)氏と、マイクロソフトのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏である。ピーターセン氏はナデラ氏に「学びと成長を測定可能にする方法はないか」と相談した。レドモンドの実力者の答えは「すべてを測定しなくてもよい」だった。ピーターセン氏はメモを取った。自分が正しいと思うことをすればいい時もある。

戦時CEO

真心を持って率いてきたFlexportは、新型コロナウイルス対策支援に大規模に参加することに舵を切った。「私たちはただ温かい毛布にくるまってベッドで寝ているためにここにいるのではない。世界のために何かするときがやってきた」とピーターセン氏はツイートした。

Flexportの対応は2020年1月に始まり、週に数回ブログに記事を投稿して、新型コロナウイルスが世界貿易に与える影響、支援組織がサプライチェーンの問題に対処する方法、そして政府や企業が支援する方法を明らかにした。そして、Frontline Responders Fundを立ち上げ、Flexport.orgへの寄付をすべてこのチャリティーに回し、必要ならばいつでも貨物フォワーディング費用の大幅割引を提供して個人防護具の入手を支援した。

Frontline Responders Fundの立ち上げ

Flexport.orgがFrontline Responders Fundを立ち上げ。

「今回受け取った寄付は100%、最前線の人々にできるだけ速くマスクを輸送することに直接費やされます。お受けした寄付は1セントでも無駄にしないことをお約束します」とピーターセン氏はツイートした。自分のビジネスもまた世界貿易と需要の混乱における自身の問題に直面している中で、同氏はすべての時間をFlexport.orgの運営とFRFの支援を行うことにした。Arnold Schwarzenegge(アーノルド・シュワルツェネッガー)氏やEdward Norton(エドワード・ノートン)氏のようなセレブの支援もあって、700万ドル(約7億5000千万円)以上の資金を調達した。FRFはこれまでにマスク690万枚、 ガウン24万着、人工呼吸器1000台、手袋15万5000枚、そして社会的に弱い立場の人々の食事25万食を届けている。

ピーターセン氏は多くのリーダーに声をかけ人道支援を説いて回ることに躊躇がない。救援活動を妨げている主なボトルネックの広範なガイドを記している。「慈善活動家たちもステップアップして、個人防護具を受注したものの、代金を前払いで受け取らないと仕入れの資金がないという組織に対し、資金提供するべきです。パンデミックが落ち着いたらお金は戻ってくるのだから、今できる慈善活動で最も効果の高い方法のひとつです」。

同氏の意欲が従業員たちの心を動かし、彼らも腕まくりを始めた。「危機の中で、リーダーたちは彼らが体現する価値観を如実に示しています」とFlexport.orgの責任者Susy Schöneberg(スージー・シェーネベルク)氏は語る。「新型コロナウイルスの大流行後、ライアンは民間企業と非営利団体の顧客を支援するために、すぐに多くのリソースを提供してくれました。ここ数週間、私の1日は彼との会話に始まり、彼との会話で終わるという状況でした。時刻が何時だろうが構わずにです」。

Ryan ピーターセン氏

ピーターセン氏の立場を利用することに加え、同氏には利益を得るために危機を利用しようとしている人を見抜く特別な視力がある。「どの病院システムまたは最前線緊急事態対応者に提供するかを明らかにされないお客様からのご依頼の場合、Flexportは個人防護具を輸送いたしません。このことは即時有効とします」とピーターセン氏はつづった。「個人防護具は世界的に不足しています。簡単にお金を稼ぎたい起業家に戦争で儲けさせるような行為は、非道徳的です」。

連邦政府レベルの適切な危機管理の欠如により、ピーターセン氏は対新型コロナウイルス戦線の事実上の総司令官になった。「問題の規模が甚大であること、そして先に説明した市場の失敗の複雑さを考えれば、米国政府がみずからこの問題を解決できるとは思いません。それでも、障壁を取り払い、民間セクターの対応を調整するようなリーダーシップは発揮できるし、そうしなければなりません」それまで、ピーターセン氏は全速力で今すぐ必要な戦時CEOになることを学んでいることろだ。

ピーターセン氏は故Kobe Bryant(コービー・ブライアント)氏の言葉を借りて「自分のゴールがわかっているとき、世界は全部図書館になる」と締めくくった。

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関連記事:1億1000万ドルを調達して貨物輸送帝国を夢見るFlexportの壮大な計画

Category:ネットサービス

Tags:Flexport Softbank Vision Fund 物流

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(翻訳:Dragonfly)

S&PがSoftBankの長期債見通しを「弱含み」に、債権格付はBB+を維持

日本の巨大通信事業グループSoftBankにはこの数週間に多数の悪材料に見舞われている。Wall Street Journalの調査報道によれば、Vision Fundのトップは、企業スパイ会社を使って同業他社を妨害していたという。世界最大級の「もの言う株主」のヘッジファンドであるElliott Managementは、SoftBankに投資して貸借対照表と取締役会の透明性を高めて株価を上昇させることを求めている。

さらに弱り目に追い打ちをかけるニュースがあった。

S&P Global Ratingsはグループの債務見通しを「安定」から「ネガティブ」(弱含み)に格下げした。同時に長期債権発行体格付けは従来どおりBB+であることを確認した。BB+は一般に投機的ないし投資に適さないグレードと見なされている。

S&Pはこの発表で、特にSoftBankの自社株買について懸念を抱いていると述べた。公開市場で投資家から株式を買い取るためには多額のキャッシュが必要なため、現金流動性が低下するだろうという。先週発表されこのプログラムは48億ドル(約5141億円)の自社株買いで、「財務の健全性と信用格付けを優先する財務方針を守る意図に疑問(を生じさせた)」としている。

同僚のArman Tabatabai(アルマン・タバタバイ)と私は、TechCrunch Extra(有料)で2018年末にSoftBankの強迫観念的借り入れ行動の背景を探ったが、この分析は市場が右肩上がりで新型コロナウイルスもまだ流行していない時期のものだった。

しかし現状では、SoftBankの巨額債務は最近の経済に関する記憶の中で最大級の惨事に向かいかねない。

SoftBankの債務よる業容拡張は、SprintとT-Mobileという通信事業者の合併プロジェクトでことに目立った。これは最近米司法省の反トラスト局によって承認されたが、Vision Fundの投資を含めて数百億ドル(数兆円)の借り入れを必要とした。Financial Timesが2017年に報じたところではVision Fundは約款の規定により、投資家への利益還元は最低限のものだ

投資家はVision Fundから投資の見返りとして「優先ユニット」を提供される。これにより、12年のファンドのライフサイクルを通じ、毎年7%のリターンが保証されるクーポンを受け取ることができる。

ここ数日の株価の壊滅的な下落を考えると、大型の新規上場が起きる可能性はほとんどない。するとVision Fundの流動性はどうなるのか? また経済全般の悪化を考えると、合併したSprintとT-Mobileは巨大な債務負担をどうやって返済するのか?

SoftBankの強みは、誰にとっても必須なサービスを提供していることだ。 これが、長期債権発行体としての格付けがダウンしなかった大きな理由だろう。誰もがモバイルネットワークを必要としている。しかしながら債務がますます積み上がり、新型コロナウイルスによって経済に混乱がもたらされる中、Vision Fundの将来はさらに見えにくくなっている。

画像:Alessandro Di Ciommo/NurPhoto (opens in a new window)/ Getty Images

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滑川海彦@Facebook

資金調達が進まぬソフトバンクの第二ビジョンファンドの未来が見えない

複数のテクノロジー企業の複合体であるSoftBank(ソフトバンク)は、1000億ドル(約11兆円)のVision Fund(ビジョンファンド)でベンチャーキャピタル産業を変えた。しかしThe Wall Street Journalは、同社がそのパフォーマンスとテクノロジーに対する革命的な投資のアプローチを継続できないかもしれない、と危惧した記事を掲載している。

その記事によると、SoftBankは次のVision Fundで設定した目標である1080億ドル(約11兆8500億円)の半分しか調達できないのではないか、しかもその多くは日本企業それ自体から出るという。

大きな支援者であるサウジアラビアの政府系投資ファンドやアブダビのMubadala Investment Co.などは、Vision Fund IIを立ち上げようというソフトバンクの試みに尻込みしている。彼らは、それまでの投資から得られた利益を第2ファンドの原資とすべきだ、と主張している。なおサウジの政府系投資ファンドは、ジャーナリストを暗殺したとされる政権の財政安定を支えている。

その利益は、およそ100億ドル(約1兆1000億円)と言われている。

Vision Fundは鳴り物入りで派手に立ち上がり、少なからぬ投資家たちからの羨望と批判のつぶやきも受けたが、アナリストやメディアは、ソフトバンクの創業者で謎の人物である孫正義氏が調達できた資本の大きさに驚いた。しかし、Vision Fundは創業時の華々しい盛り上がりにふさわしい成果を得られていない。

コワーキング企業WeWorkへの悲惨な投資も、問題の1つだ。ソフトバンクは同社への44億ドル(約4800億円)の投資のうちほぼ35億ドル(約3800億円)を償却した。

しかし、WeWorkの災難はソフトバンクにとって氷山の一角かもしれない。同社は他のポートフォリ企業に対しても、その資本コミットメントを大幅に削減している。それらの企業は最近スタッフを減らし、そのほかの支出も減らして、テクノロジー業界全体に業界の低迷を憂える不安が広がった。

スタッフの削減は、ビジョンファンドの運営母体にも及んでいる。今週初めに同社は、最高位の管理職の1人Michael Ronen(マイケル・ローネン)氏を失った。彼はそれまでGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)にいてParkJockey、Nuro、GM Cruiseなどの企業へのソフトバンクによる投資の中心人物だった。

いなくなった大物は、ローネン氏だけではない。過去5カ月内に、同社の人事のトップMichelle Horn(ミシェル・ホーン)氏と、同じくアメリカのマネージングディレクターだったDavid Thevenon(デビッド・セブノン)氏が、やはり同社を去った。

関連記事: As a top manager leaves amid fundraising woes, SoftBank’s vision looks dimmer — and schadenfreude abounds…人材が去り続けるソフトバンクのビジョンファンドの未来が暗雲で人の不幸は蜜の味が広がる(未訳)

画像クレジット: Tomohiro Ohsumi/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ソフトバンクの改革を求めてエリオット・マネジメントが同社株約2800億円取得

アクティビスト投資会社であるエリオット・マネジメントは着々とその株式を買い集め、取得金額は25億ドル(約2800億円)に達した。ニュースの見出しを踊らせてきた日本のテクノロジーコングロマリットであるソフトバンクは、一連の失策によって株価が低迷していた。

The Wall Street Journalの第一報によるとSlack(スラック)やUber(ウーバー)、また今や悪名高いコワーキングスペースのWeWork(ウィーワーク)に数十億ドル(数千億円)を賭けたことで名を馳せたソフトバンクは、エリオットの金融投資部門をひきつける目標を提示したという。

2019年11月、ソフトバンクグループは、かつて非公開市場で470億ドル(約5兆2000億円)と評価されたWeWorkの救済による影響もあり、65億ドル(約7100億円)の損失を計上した。

損失計上で株価は急落したが、数々のトラブルにもかかわらず、ソフトバンクは依然として非常に安定したポートフォリオを保有している。そのソフトバンクの資産には、エリオット・マネジメントの340億ドル(約3兆7300億円)もの運用資産の一部を切り出してソフトバンクに少数株主として投資するに値する魅力があると同社は考えた。

「エリオットによるソフトバンクグループへの多額の投資は、市場がソフトバンクの資産ポートフォリオを大幅に過小評価しているという我々の強い信念を反映している」とエリオットの広報担当者はメールで述べた。「エリオットはソフトバンクの幹部と直接対話しており、ソフトバンクの本質的価値に対するディスカウントを大幅かつ持続的に減らすべく建設的に取り組んでいる」

ソフトバンクは、1000億ドル(約11兆円)という巨額のビジョンファンドでテクノロジー投資の世界に波風を起こしてきた。このファンドは多額のキャッシュを必要とするテクノロジースタートアップに出資する目的で設立されたが、さまざまな業界を変革する可能性がある。

同社の大胆な投資戦略の資金は、Saudi Arabian Public Investment Fund(サウジアラビア・パブリック・インベストメント・ファンド、投資担当者はジャーナリストの暗殺を命じた上層部とつながりがある)のような政府系ファンドやApple(アップル)、Microsoft(マイクロソフト)などの企業と協力して調達された。

リミテッドパートナーと自身の現金により、ソフトバンクはさまざまな業界の企業の株式を大量に取得してきた。ただ、その規模を維持し、正当化するのが難しくなってきている。

2019年、ソフトバンクのポートフォリオ企業のいくつかがトラブルに直面した。エリオットがソフトバンクの上層部に変革をもたらすとしても、ポートフォリオのパフォーマンスに影響を与えるかどうかは何とも言えない。

実際、ソフトバンクの創業者である孫正義氏が22%の株式を保有していることを考えると、エリオットが開始または主張する活動には限界があるかもしれない。

ソフトバンクのポートフォリオには優れた企業があり、公開市場の投資家はエリオット・マネジメントによる投資の開示を受けてソフトバンクの株式を買いに走っている。

ただし、2018年にベンチャー市場に流入した資金の洪水は絶頂に達したようであり、ソフトバンクや同社の新規投資家はずぶぬれになってしまう可能性がある。

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(翻訳:Mizoguchi

配車サービスのGrabがソフトバンク・ビジョン・ファンドから1630億円超を調達

シンガポールを拠点とするGrab Holdings(グラブ・ホールディングス)は3月6日、ソフトバンク・ビジョン・ファンドから14.6億ドル(約1634億円)の調達を発表した。GrabのシリーズHの資金調達ラウンドの合計調達額は45億ドル(約5035億円)を超える。

同ラウンドのそのほかの出資企業は、トヨタ自動車、オッペンハイマーファンズ、現代自動車グループ、ブッキング・ホールディングス、マイクロソフト、平安保険、ヤマハ発動機など。トヨタは2018年6月にトヨタ本体から10億ドル(約1110億円)を出資したほか、2017年には次世代技術基金(Next Technology Fund)を通じて資金を投入している。

Grabは、東南アジアでUberやLyftのようなオンデマンドの配車サービスを運営している、2012年設立のスタートアップ。自家用車向けにGrabCar、オートバイ向けにGrabBikeの配車サービスを提供するほか、相乗りサービスのGrabHitch、配送サービスのGrabExpressも手がける。決済サービスとしてGrabPayも提供している。2018年3月には、Uberの東南アジア事業を買収するなど勢いが止まらない。

同社は調達した資金で、アクセスや利便性の向上を目指してサービスを拡充。東南アジアにおいて掲げた「スーパーアプリ」のビジョンを推進している。具体的には、金融サービスやフードデリバリー、配送サービス、コンテンツ、デジタルペイメントなどの事業領域の拡充を続けている。今回調達した資金については主に、Grabが2輪車市場の60%、4輪車市場の70%の市場シェアを占めるインドネシアに投下する予定だ。

さらにオープンな「GrabPlatform」を基盤として、オンデマンド・ビデオサービス、デジタルヘルスケア、保険サービス、オンライン予約サービスなども始める。それぞれ、ストリーミングプラットフォームを手がけるシンガポールのHOOQ、総合健康プラットフォームを提供する中国・平安好医生、保険のIT化に取り組む中国・衆安国際、おなじみ「ブッキングドットコム」のブッキング・ホールディングスと連携する。

東南アジアを席巻し、ケタ違いの資金調達を連発しているGrab。配車サービスに留まらず、ここ数年でフードデリバリーやモバイル決済にも進出するなど、猛スピードで事業を拡大している。東南アジアの次はどこに焦点を定めるのだろうか。

インドネシアの電子商取引リーダーTokopediaが、AlibabaとSoftBankのVision Fundから11億ドルを調達

創立9年のC2Cマーケットプレイスの現在の評価額は70億ドル

インドネシアを拠点とする電子商取引会社Tokopediaは、SoftBankメガファンドとAlibabaが主導した11億ドルのシリーズGラウンドでの調達を行ったあと、Vision Fundに参加した最新のスタートアップ企業だ。

SoftBankとAlibabaは既存の投資家である。Alibabaは昨年11億ドルのラウンドを主導したが、一方SoftBankは最近保有していたTokopediaの株式をVision Fundへ移管した。後者の内容は、基本的に10月に合意された内容に従ったものだと、TechCrunchは理解している。

Tokopediaは評価額につはコメントしていないが、TechCrunchはある筋から、今回の取引では評価額は70億ドルとされているという情報を得ている。SoftBank Ventures Koreaとその他の投資家たち、例えばSequoia Indiaもこの投資に参加した。現時点までに投資家たちから24億ドルが調達されている。

今回の取引が行われたのは、韓国の有力電子商取引企業であるCoupangに、SoftBankが20億ドルの投資を行った数週間後である。Tokopediaと同様にCoupangも、SoftBankが保有する株式がVision Fundに移管されるまでは、SoftBankには投資家として向き合っていた。

9年前に創業したTokopediaは、中国で大成功を収めたAlibabaの電子商取引市場であるTaobaoとしばしば比較される。Tokopediaの取引業者は最近400万社に達した。TokopediaはGMV(取扱総額)が4倍になったとしているが、具体的な数字は発表していない。物流は、約1万7000の島々に広がるインドネシアの大きな問題である。しかし同社は現在国土の93%をカバーしていて、しかも顧客の四分の一は同日配送の対象になっているのだという。同社が物流調整がより困難な、マーケットプレイスを運営していることも注目に値する。

同社は、今回得た新しい資本金を利用して、より多くの中小企業や独立系小売業者がそのプラットフォームに乗ることを可能にする技術を開発する予定である。また消費者側では、中核となる電子商取引だけでなく、金融サービスやプロダクトの開発も行っていて、顧客を強くプラットフォームに引きつけようとしている。

インドネシアのスーパーアプリ

この新ラウンドにもかかわらず、CEOで共同創業者であるWilliam Tanuwijayaは、TechCrunchに対してインドネシアの外へ拡大する計画はないと語った。インドネシアは東南アジア最大の経済圏であり、2億6000万人以上の人口は世界で4番目に多い。

「現時点でインドネシアの外に拡大する計画はありません。インドネシアの市場を構成する、私たちの美しい1万7000以上の群島の隅々にまで手を伸ばせるように努力するつもりです」と、Tanuwijayaは質問に対して電子メールで回答した(Tokopediaは電話でのインタビュー要請は拒否した)。

Tokopediaの共同創業者兼CEOのWilliam Tanuwijayaは、2018年1月26日(金)、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)閉会式のパネルディスカッションで、身振り手振りを交えながら語った。世界的リーダーたち、影響力のあるエグゼクティブ、銀行家、そして政策立案者たちが、1月23日から26日までダボスで開催された、第48回世界経済フォーラムの年次総会に出席した。写真:Jason Alden/Bloomberg

そのインドネシア国内だけに注力するアプローチは、現在東南アジア全域に急速に拡大している、インドネシア拠点の配車企業Go-Jekのアプローチとは対照的だ。Go-Jekは既にベトナム、シンガポール、タイに進出し、2019年にもさらに計画を進めていることは間違いない。

だがGo-JekとTokopediaは、いずれも中心となっていたビジネスから拡大しているという点は類似している。

Go-Jekは、オンデマンドサービス、支払いサービスなどに取り組んでいる。最近、Tokopediaはモバイルチャージやファイナンシャルサービスを含む支払いサービスへ参入した。そしてTanuwijayaは「スーパーアプリ」になる戦略を続けていくつもりであることをほのめかした。

「私たちはサービスを深化させて、朝の目覚めの瞬間から夜眠りにつくまで、そして生まれた瞬間から年老いるまで、インドネシアの人びとによりよいサービスを提供します。私たちは、沢山の企業にオンラインとオフラインのパワーを提供するために、物流、フルフィルメント、支払い、そして金融サービスの分野のIaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)に投資をし技術開発を行います」とTanuwijayaは付け加えた。

Vision Fund論争

しかし、Vision Fundには論争が巻き起こっている。

最近出されたCIAの報告書は、サウジアラビアのモハメド・ビン・サルマン皇太子がジャーナリストであるジャマル・カショギの殺害を命じたと結論付けた。皇太子はサウジアラビアの政府系ファンドであるPIF(Public Investment Fund)を管理している。これは450億ドルという資金をVision Fundを通して投資している巨大な投資機構である。

SoftBank会長の孫正義は、この殺人を「非人道的行為」として非難したが、アナリスト向けのプレゼンテーションでは、SoftBankは資本を運用しVisionFundを続けていく「責任」を、サウジアラビアに対して負っていると付け加えた。

Tanuwijayaは私たちに対する電子メールで、最悪のケースでTokopediaが何をできる(する)のかははっきりしないものの、「私たちはこの出来事に深く関心を持ち、SoftBankと共に、全ての真相が明らかになるまで状況を注意深く見守りたい」と語った。

サウジアラビアとの関係がVision Fundの創業者たちのための資金を穢(けが)しているのではないかという沢山の議論がありながらもトランプ政権が現状の体制維持に焦点を当ててサウジアラビアを主要な同盟国として扱おうとしているように見えることを考えれば、事態は流動的なままである。

孫自身は、現在Vision Fundからの投資を拒んだスタートアップの事例は聞いていないが、将来的には「影響があるかもしれない」ことを認めた。

この投資に対する反発を予想しているか否かという私たちの質問に、Tanuwijayaは直接触れることはなかった。Vision Fundが最近行ったCoupangへの投資は、ネガティブな反応を巻き起こしているようには見えない。

また間違いなく東南アジアで最も有名な電子商取引サービスであるLazadaを、Alibabaが所有していることも、別の疑問を投げかける。

Tokopediaとは異なり、Lazadaは東南アジアで6つの市場をカバーしている。小売ブランドに重点を置いており、AlibabaのTaobaoサービスと密接な関係を保っているために、業者たちにその地区へ向けたチャネルを提供している。今年初めにTechCrunchにタレコミをした筋によれば、Tokopediaの経営陣はもともとはAlibabaのライバルのTencentからの資金調達に熱心だったが、SoftBankからの介入により、Alibabaを相手にすることが強制された。

Tanuwijayaは、そつなくその競合関係と亀裂を軽いものと述べ、ビジネスに影響はないと主張した。

「Tokopediaは、多様な資本で構成される独立企業です」と彼は電子メールで答えた。「会社の過半数を保有する単独の株主はいません。私たちは、株主のポートフォリオ企業と緊密に協力して、シナジー効果を活用しています」。

「たとえば、TokopediaはGrab(SoftBankのポートフォリオ)とGo-Jek(Sequoiaのポートフォリオ)の両社と緊密に協力しています。Lazadaは私たちとは異なるビジネスモデルを持っていると考えています。Lazadaは小売とマーケットプレイスモデルのハイブリッドですが、Tokopediaは純粋なマーケットプレイスなのです。Lazadaは地域プレーヤーですが、私たちはインドネシアの全国プレイヤーです」と彼は付け加えた。

Tokopediaは、中国で大成功しているAlibabaのTaobaoマーケットプレイスと、多くの類似点を持っている。

「これ以上わくわくできることはありませんよ?」

約10年前、Tokopediaはインドネシアに登場した最初のスタートアップの1つだった。Tanuwijayaと仲間の創業者Leontinus Alpha Edisonが、VCを口説き落として資金を調達するまでに、何十回ものプレゼンテーションを繰り返しては拒絶されたことは良く知られている。

Vision Fund入に際して「実績あるチャンピオン」と孫が形容した現在の状況に比べれば、とても大きな変化を経験してきたのだ。そしてそこにはファイナンシャル製品へと拡大したビジネスそのものは含まれていないのだ。しかしそれは、どんな創業者でもいつでも手に入れることができる、というものではない。多くの人たちは、その「最良の」日々は急速に成長していた初期段階や全員の気持ちがひとつになって力を注げていたときであることを認めるだろう。実際、インドネシアを拠点とするユニコーンであるTravelokaは、最近CTOを意欲の燃え尽きによって失っている

Tanuwijaya、Edison、および同僚の経営幹部たちに同じことが起き得るだろうか?

Tanuwijayaは彼のビジネスの旅を、近付いて来る山に喩えている。

「Leonと私は10年目に入ることにとても興奮しています。最初にTokopediaを始めたとき、それは私たちの立っている場所から、とても遠くにある山の頂上を見るようなものでした。私たちはいつかその山の頂上に登るのだということと、自分たち自身に誓ったのです」と彼はTechCrunchに語った。

「その山の頂上が私たちの会社のミッションなのです。つまり技術を通して商売が誰の手にも届くようにするということです。いま私たちは山の麓(ふもと)に到着したところです。ついに山に触れることができて、登り始めることができるのです。今回の追加投資で、私たちはミッションをより速く勧めるための手段と資源を手にすることになります。燃え尽きて家に帰るのか、あるいは山に登るべきかどうかを考えるべきかって?「これ以上わくわくできることはありませんよ?」と彼は付け加えた。

確かにTokopediaは、それ自身が1つの山になっている。このスタートアップは、GrabとGo-Jek(それぞれの評価額は110億ドルならびに(伝えられるところでは)90億ドル)に続いて、3番目に高く評価されている未公開テクノロジー企業だ。そしてその夢のある話は、インドネシア周辺の未来の創業者たちを触発し、スタートアップの道を辿らせることだろう。なおVision FundとPIFのコネクションにこの先何が起きるのかは、それほどはっきりとはしていない。

画像クレジット: Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:sako)

ソフトバンクの孫正義氏はサウジアラビアとの関係をどう説明するのか? まもなく判明

10月を通じて、SoftBankはサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)との良好な関係を見直す必要に迫られている。皇太子は権力の座につくとともに多額の資金を提供していたが、ジャーナリストのジャマル・カショギ氏の陰惨な殺人と死体遺棄が明るみに出るにつれ急速に負の側面が見えてきた(MBSはサウジアラビアを導いて数多くの恐怖をもたらしてきたが、バージニア州在住のWashington PostコラムニストでMBSを批判してきたカショギ氏の残酷な終末は、イエメンで数万人の子供たちが殺された事件と異なり、欧米の注目を集めることとなった)

もちろんSoftBankにとってMBSとの決別は容易な決断ではない。CEOの孫正義氏は、 今年5月に完了した1000億ドルのVision FundはMBSに支えられていると語った。事実、孫氏によるとMBSはサウジの公共投資ファンド450億ドルの提供を45分間で決定し、さらに第2のVision Fund設立のために別途450億ドルをSoftBankに出資する意志を最近表明している。

これは断るにはかなり大きな金額だ。しかし、SoftBankにとってMBSと仕事をすることの是非を再考することは理にかなった行動といえる。Financial Timesによると、SoftBank COOのMarcelo Claureは先月、SoftBankが新たなVision Fundを立ち上げるかどうか「決定していない」ことを公表した。

そして時間が過ぎた。世間の怒りの矛先は別の方に向けられつつある。そして先週の終わり、SoftBankの準備は整ったようで、一時停止ボタンから指を離し大きな契約が2件交わされた。ロボット調理のスタートアップZumeに3.75億ドルを投資し(後日さらに3.75億ドルを投資する計画が報じられた)、金曜日(米国時間11/2)にはインターネットにつながる窓ガラスに使われるガラスのメーカーであるView11億ドル投資することを発表した。

両社の経営陣とも、SoftBankと提携する方が別の資金調達源を探すより得るものが大きいと考えたようだ。

問題は、SoftBank自身が、会社の将来を計画する上で同じ決断を下すのかどうかだ。それがもうすぐ明らかになりそうだ。Financial Timesが報じているように、孫氏はSoftBankの第2四半期決算を明日報告する予定であり、そこではMBSが支配する主権国家資産ファンドであるPublic Investment FundとSoftbankのつながりに関する長い質問リストを提示されることは間違いない。

少なくとも役に立つ答えがいくつか出てくるだろう。これまで孫氏はカショギ事件について何も語ってこなかった。また、孫氏は2週間前にサウジアラビアのリヤドで行われたMBSの投資カンファレンスに姿を見せなかったものの、イベント前に皇太子と個人的に会っていた。本誌の情報源によると、その会合はカショギ事件に対する彼の懸念を個人的に伝えるためだったということだが、つながりを断ち切る話しは出なかったという印象を受けた。

その予想が正しいかどうかはすぐに分かるだろう。いずれにせよ、SoftBankとMBSとの関係がすぐに忘れられることはなさそうだ。Financial Timesの記事にある通り、SoftBank株はカショギ氏が10月初めにトルコのサウジ領事館に足を踏み入れて出てこなかった運命の日から26%下落している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

カショーギ事件はシリコンバレーの一つの時代の終焉か――SoftBank新ファンドの行方も不透明

事件の進展の速さは驚くばかりだ。きっかり1週間前、われわれはWashington Postのコラムニストがトルコで失踪した事件でサウジアラビアの資金が汚染されたのではないかと疑う記事を掲載した。しかしジャマル・カショーギがイスタンブールのサウジ領事館で消息を絶ったことに関して、シリコンバレーの取材先はほぼ全員が実名でコメントすることを拒否した。

いくつかのソースからオフレコで聞いたところでは、サウジの資金に利害関係をもつ人々は同国と、特にムハマド・ビン・サルマン皇太子との関係の安定を望んでおり、ことを荒立てたがっていないということだった。曰く、確実は証拠はない、成り行きを見守っている。シリコンバレーに投資しながら一方で自国民を拷問するような体制だと思うならナイーブすぎる。資金の出処が清浄であることを望んでチャンスを逃すくらいならサウジの資金を入れて会社を成長させることを選ぶ、等々だ。

たしかにシリコンバレーの企業はこれまでも多くのスキャンダルを乗り切ってきた。多くの人々を憤慨させるような事件が起きても、すぐ同種の事件が起きて前の失敗は忘れられるのが通例だった。1週間前にはトルコのサウジ領事館でサウジ国民のジャーナリストが消えた件もマスコミはすぐに忘れるだろうと思われていた。

しかしカショーギ事件は忘れられるどこころかその反対の道をたどった。事件はあまりにグロテクスであることが伝えられ、これを無視していることは誰にもできなくなった。トルコ政府高官は今朝、New York Timesに対して殺害現場における録音の内容を明らかにした。それによればカショーギは領事館に入るやいなやサウジの情報機関員に拘束され、拷問された。機関員はカショーギを殴打し、指を切り落とした。その後、首をはね、遺体を切断した。このトルコ政府高官によれば、遺体切断のために法医学専門の医師が同行しており、機関員たちはこの作業の間ヘッドフォンで音楽を聞いていたという。

それでもまだトランプ大統領はシリコンバレーにMBSとして知られているサルマン皇太子を「非難は不当だ」と擁護した。一方、何十億ドルものサウジ資金をテクノロジーその他の企業に流してきた日本の巨大コングロマリット、Softbankは考え直し始めた。Financial Timesによれば、SoftbankのCOO、マルセロ・クラウレはこの問題に関連して初めて口を開き、SoftBankのVision Fund 2号について「何も決まっていない」と述べた。SoftBankは930億ドルの2号ファンドを立ち上げる予定で、サルマン皇太子と関連企業がその半額程度を出資する計画だった。

クラウレは「どいうことになるのか、事件の展開を注視している」と付け加えた。

Softbankにせよ他のサウジ資金の受け手にせよ、事件の展開には驚く他なかっただろう。2週間前にはシリコンバレーでは誰一人名前すら知らなかったコラムニストの失踪が長く続いたシリコンバレーのサウジブームの終焉をもたらすかもしれない。

こういえばあり得ないことのように聞こえるだろうが、そうではない。実は最近数年間シリコンバレーに流れこんでいた資金のきわめて大きな部分がサウジアラビアからのものだった。この資金によりスタートアップのファウンダーも投資家も潤沢な見返りを得ていた。実際、オフレコで聞いたところによれば、シリコンバレーのすれからしのビジネスピープルはサルマン皇太子の魅力に惹きつけられたわけではなく別の思惑からサウジ資金を歓迎していたのだという。つまりこの仕組みであればテクノロジー・ブームの反動が来て市場が崩壊しても、損をするのはサウジだというのだ。

一方でサウジ資金は無数のスタートアップに無数の資金調達ラウンドのチャンスを与えてきた。またラウンドの規模も年々増大していた。ベンチャーキャピタリストが扱う金額も巨大になっていた。これによりベンチャーキャピタルから出資を受ける企業が株式を上場するまでの期間も伸びた。簡単にいえば、サウジ資金はベンチャー・エコシステム全体を根本的に変えた。

こうした巨額の資金の出どころが消えれば――そして、そうなる可能性が高いが――スタートアップは別の金主を探さねばならない。上場して市場から資金を募る企業もあるだろうが、資金調達に失敗して消えていく企業もあるだろう。

この事件は一つの時代の終わりを意味する可能性がある。一人の男が結婚許可証を求めて領事館に入ったのがすべての始まりだったことを考えると皮肉という他ない。

画像:Bloomberg / Getty Images

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滑川海彦@Facebook Google+

SoftBankの投資戦略を検討する――WeWorkへの5億ドルもテーマの一つに過ぎない

〔この記事はJason Rowleyの執筆〕

今週、WeWorkは中国における子会社、WeWork ChinaがSoftBankTemasek Holdings他から5億ドルの追加投資を得たことを発表した。これにより中国法人の価値は1年前の10億ドル(投資後会社評価額)から50億ドルにアップした。WeWork Chinaは前回の投資ラウンドをほぼ1年前、2017年の7月に発表している

SoftBankが同一会社に複数回投資することはめったにない。この記事の執筆時点で、Crunchbaseのデータによれば、SoftBank自身は144社に175回の投資を行っている。このうち、2回以上SoftBankから投資を受けた会社は23社だ。 このうちWeWorkは、中国法人も加えて、合計4回の投資を受けており、SoftBankの投資として最多となっている。

こうした実績から判断すると、SoftBankの戦略は各ビジネス分野におけるトップ企業に投資することのようだ。株式の持ち分として会社評価額の何パーセントにあたるのか外部から判断しにくい場合もあるが、SoftBankからの投資は各企業における最大の投資であることが多い。

たとえばWeWorkの場合を見てみよう。WeWork本体と現地法人、WeWork China、WeWork Indiaなどを含め、SoftBankの投資は単独出資であるか、投資ラウンドをリードしているかだ。また投資シンジケートの一員である場合もその中で最大級の金額を出資している。

特に市場拡大のチャンスが大きい分野の場合、SoftBankはその地域でリーダーの会社に投資することが多い。 なるほど世界征服というのは難しい企てだが、SoftBankは非常に巨大なので、ある事業分野について各地域のトップ企業の相当部分を所有することができる。結果としてSoftBankがその分野の世界のシェアのトップを握るチャンスが生まれる。

これは大胆な戦略だ。リスクも大きいし、巨額の資金を必要とする。しかしSoftBankは多くの急成長市場で最大の金額をコミットする投資家となっている。

不動産は投資テーマの一つに過ぎない

WeWorkはSoftBankの不動産投資の一例だが、下に掲げた表に同社の不動産、建設関係の投資の代表的なものをまとめてある。 順位はSoftBank(単独の場合、シンジケートの一員の場合双方を含む)の投資額だ。また関与したラウンド中に占めるSoftBankの投資額の比率も掲げておいた。

しかし、成長中の大型市場で成功を収めているトップ・スタートアップに巨額の投資を行うというSoftBankの戦略は不動産分野に限られない。オンライン・コマース、ロジスティクス、保険、ヘルスケア、そして大きな注目を集めたところではライドシェアとオンデマンド交通機関にもSoftBankは大型投資を行っている。

また人工知能スタートアップ分野で大きなポートフォリオを持っていることも見逃せない。SoftBankはNvidiaImprobableBrain CorporationPentuumなどに投資している。またMapboxCruise Automationに投資していることはSoftBank自身の自動運転車プロジェクト、SB Driveにも有利だろう。

SoftBankは古いものもすべてリニューアルしていく戦略の一例だ。 1990年代後半、SoftBankとファウンダーの孫正義はすでにテクノロジー分野で最大の投資家の一人だった。当時も現在同様、孫正義はSoftBankのポートフォリオをいわばバーチャル・シリコンバレー化しようとしていた。つまり投資先企業同士が協力することによってビジネス上のシナジー生むプラットフォームの構築だ。投資テーマを絞り込むSoftBankの戦略を見ると、今日、こうした大胆で愛他的な構想が実現する可能性は十分にある。しかし孫正義はテクノロジー投資の第1ラウンドではドットコム・バブルの崩壊で多額の損失を被ったことが知られている。第2ラウンドでSoftBankが成功するかどうかは今後に待たねばならないだろう。

画像:Ufuk ZIVANA / Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Softbank、Auto1に4.6億ユーロ投資と発表――オンライン自動車販売プラットフォームをドイツから世界へ拡大

SoftbankのVision Fundがまた新たな大型投資を実行した。日本のITコングロマリット傘下の投資ファンドはベルリンを本拠とするオンライン自動車ディーラーのAuto1に4億6000万ユーロ(5.6億ドル)を出資することに合意した。

今日(米国時間1/15)、中古自動車の流通プラットフォームを運営するAuto1はこの投資を確認するプレスリリースを発表し、この投資により会社評価額は29億ユーロ(36億ドル)となったと述べた。またSoftBankの投資の半額は新株の発行によると付け加えた。

FTの記事によれば、Softbankは今回の投資により、Auto1の20%を所有することになる。ただしAuto1の広報担当者は会社所有権の具体的内容を明らかにすることは避けた。

SoftBankのAkshay Nahetaは投資の一環としてAuto1 Groupの取締役に就任する。

NahetaはSoftBankの投資について声明を発表し、「年間3000億ドル以上の価値がある自動車の流通市場はこれまで細かいセグメントに分断されていたが、Auto1 Groupはここに効率的かつ透明性が高いオンライン・システムを構築し、データ・プラットフォームを急速に発達させてきた。SoftBank Vision Fundの投資とわれわれのマーケットプレイス・ビジネスの運営に関する専門的能力はAuto1が世界的な存在となることを助けるはずだ」と説明した。【略】

Auto1は2012年に創立され、現在では30カ国以上をカバーしている。Auto1によれば、同社は 3万5000以上の自動車ディーラーをパートナーとしており、月に4万台以上を販売している。Auto1が提供するアナリティクスとロジスティクスが需要と供給を分析し、マッチングすることにより中古車に対する適正な価格づけが可能になるという。

Crunchbaseによれば、Auto1はSoftbankの投資以前に、 5億2000万ドル前後の資金を調達している。直近の資金調達は昨年5月に実行された3億6000万ユーロのシリーズEラウンドだが、これは株式発行と借り入れを組み合わせたものとなっている。Auto1は、この資金は同社の活動をヨーロッパ全域に拡大するために用いられると発表した。

Softbankの自動車関連投資はこれが初めてではない。昨年暮にVision Fundはライドシェアリングの大手、Uberに巨額の投資を実施している。

Softbankの孫正義CEOは、昨年、ファンドの背後のビジョンを説明し、人類は30年以内にスーパー知性を持った人口知能の開発に成功すると確信していると述べ、これが大型投資を急ぐ理由だとした。孫CEOは2017年にファンドのパートナーに向けたスピーチで100本脚のムカデ型ロボットに言及したが、ファンドの初期の投資はそれよりずっと実務的なものが多かった。

画像: Tomohiro Ohsumi/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SoftBank Vison Fund、不動産仲介のCompassに4.5億ドル――ポストマネーの企業評価22億ドルに

鉄は熱いうちに打てといわれるが、Fidelityがリードしたラウンドで先月1億ドルを調達した不動産仲介のスタートアップ、Compassはさらに巨額の投資を受け入れた。今回SoftBank Vision Fundが4億5000万ドルを投資するのに加えて5000万ドルの発行済の株式買い上げが予定されている。調達された資金は不動産の売買・賃貸のプラットームを世界に拡大するために利用される。

ニューヨークに本拠を置くCompassの資金調達総額は7億7500万ドル、ポストマネー〔投資後評価額〕で22億ドルとなる。わずか数週間前の企業評価額は18億ドルだった。

今回の巨額のラウンドは前回のラウンドと時期的にほぼ重なっている。共同ファウンダーのAllonが日本でSoftBankとの契約をまとめた日にFidelityは1億ドルの投資を発表した。

Compasshsがオンライン不動産仲介に地歩を築いたのは2012年にさかのぼる。当時はUrban Compassという社名だったが、800万ドル資金を支援者から調達するこtに成功し、最大のシードラウンドだとして話題になった。もっともすべては比較の問題で、現在の状況からすると800万ドルは小銭とも見える。

Compaqssは現在アメリカの11都市で運営されている(1億ドルの資金はこの運営のためと発表された)が、共同ファウンダー、会長のOri AllonはインタビューでSoftBankから投資で目標をさらに拡大し、世界的な規模への展開をめざすと語っている。【略】

Compassがこれほど大型の投資を引き寄せる理由のいくぶんかは共同ファウンダーの経歴にある。Allonはエンジニアであり、起業家としてはスタートアップをGoogle、Twitterに売却しており、それぞれの検索ビジネスの重要な基盤となっている。共同ファウンダー、CEOのRobert Reffkinは元ゴールドマン・サックスの金融専門家で、その経歴も申し分ない。

同時にCompassのテクノロジーそのものものも投資家の強い関心をひいたはずだ。Compassは当初、ローカルビジネス情報の革新を目指していたが、ここである要素をローカルビジネスのカギとして重視した。つまりユーザーの実際のロケーションだ。このプラットフォームが提供する近隣ビジネスのデータベースはわかりやすく、事前に十分な審査を受けていてCompassのユーザーが信頼することができた。

不動産仲介にシフトしたCompassが現在ターゲットとするのは高級な物件と顧客だ。 ハイエンドの物件の取引はマージンが大きいし、不動産の購入を考えている高所得者からの着実な需要がある(Allonは「将来もハイエンドだけに絞っていくつもりはないが、当面はこの市場に集中する」とインタビューで語っている)。

家屋の購入・賃貸希望者と物件所有者を仲介するサービスとしてCompassは決して最初の会社ではない。この分野にはZillow、Trulia、Redfin、Homes.com、Rent. comなどの有力サービスを始めとしてきわめて多数の会社が存在する。しかしCompassは、たとえていうなら、多数の既存のスマートフォンンの中に誕生したiPhoneのような存在となる可能性がある。後知恵かもしれないが、iPhoneはユーザー体験を慎重にコントロールし、ユーザーをしっかり見極めることによって既存のスマートフォンが目指しながら実現できなかった高いクオリティーのサービスを実現できたのではないだろうか。

また巨額の投資はCompassの驚くべき成長に見合ったものだ。不動産業者の数―Compassはユーザー向けと不動産業者向けの二つ面でビジネスをしている―という重要な要素を2年間で5倍に増やすという結果を出している。これが手持ち物件数を飛躍的に増大させ、顧客の多様な需要に応えられるようになるという循環を生んでいる。同社は今年、1万6000件の成約(取扱高140億ドル)、売上にして3億5000万ドルを達成することが確実と見られている。

SoftBankのVision Fundaid上級投資専門家、Justin Wilsonは「「不動産というのはきわめて大きいビジネス部門でありながら、これまでテクノロジーが関与する度合いが比較的低かった。そのため非効率と断片化が著しかった。Compass従来と異なるエンド・ツー・エンドのテクノロジー・プラットフォームを構築し、多様なデータを集約し、顧客の当初の物件の検索を始めとして、顧客と不動産業者の双方を取引のあらゆる段階で支援する。保有するユニークなデータとテクノロジーによるディスラプトにより大きく成長し、Compassは数兆ドルにも上る不動産業においてユニークな地位を築いていくはずだ」と声明で述べている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ソフトバンク、コワーキングスペースのWeWorkに44億ドルを投資

コワーキングスペース運営のスタートアップ、WeWorkは、Softbank GroupおよびSoftBank Vision Fundから44億ドルの巨額投資を受けることを、つい先ほど発表した

WeWorkはわずかひと月足らず前、中国でのWeWork独立事業のために5億ドルの資金調達を発表したばかりであり、SoftBankはそこにも参加している。さらにWeWorkは、SoftBankとのジョイントベンチャーを通じて日本への進出も決まっている ―― 今回の資金提供は、コワーキング会社と日本の巨人とのすでに強固な関係をさらに深めるものになる。

提供資金の内訳は、WeWork本体への30億ドル(直接投資および既存株式の購入による)、およびWeWorkがアジア進出に伴い設立したWeWork China、WeWork Japan、およびWeWork Pacific、3社への14億ドルからなる(14億ドルにはSoftBankが以前発表したWeWork Chinaへの投資も含まれる)。

「[SoftBank CEOの]孫正義氏はビジョンのあるビジネスリーダーであり、われわれのミッションと目的に対してこうした強力な支持を得たことを光栄に思う」とWeWorkの共同ファウンダー・CEO、Adam Neumann(上の写真)が発表の中で語った。「SoftBankとVision Fundから受けるこの支援を活かし、快適な労働、生活環境を当社が提供することによって、これまで以上に多くのクリエーターにチャンスを与えられるだろう」。

現在WeWorkは、16か国160地域にわたり15万人以上のメンバーを擁している。今回の投資にともない、SoftBank GroupのRonald D. FisherとMark Schwartzの2名が取締役としてWeWorkに参加する。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook