SpaceXが有人宇宙船「Crew Dragon」の新規製造を終了、今後は製造済み機体の再利用に注力

SpaceX(スペースX)は、国際宇宙ステーション(ISS)に宇宙飛行士を送迎する宇宙船「Crew Dragon(クルー・ドラゴン)」の新規製造を終了し、代わりにすでに製造済みの4機を再利用することに注力すると、Reuters(ロイター)が米国時間3月28日に報じた

SpaceXでは、改修用にCrew Dragonのコンポーネントの製造を継続する予定であり、必要があればこの宇宙飛行士カプセルをさらに製造することも可能であると、SpaceXのGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)社長は、ロイターに語った。

Crew DragonはSpaceX初の有人宇宙船で、ISSへの物資輸送サービスに使用されているDragon(ドラゴン)貨物カプセルの設計を流用している。Crew Dragonは2020年のデビュー以来、5つのミッションで人間を宇宙に連れて行った。その中には、億万長者のJared Isaacman(ジャレッド・アイザックマン)氏が出資した初の民間人のみによる有人飛行ミッション「Inspiration4(インスピレーション4)」も含まれる。

また、Crew Dragonは、NASAがISSとの間で宇宙飛行士を往復させるために使用する唯一の再利用可能な乗り物でもある。SpaceXは2014年に同機関と「Commercial Crew Transportation Capability(CCtCap、商業乗員輸送能力)」契約を締結し、6つのミッションを受注していたが、2022年2月にはNASAがSpaceXにCrew Dragonを使う3つのミッションを追加発注している。SpaceXは合計9回のミッションで総額約35億ドル(約4300億円)を手にすることになる。

現在、ISSへの有人宇宙飛行はSpaceXの独占状態にある。Boeing(ボーイング)もNASAからCCtCap契約を獲得しているが、同社の提案する有人宇宙船「Starliner(スターライナー)」は技術的な遅延に悩まされ、テスト飛行さえ中止されている。

SpaceXは、Crew Dragonの生産を終了する一方で、超重量級の次世代ロケットシステム「Starship(スターシップ)」の開発に引き続き力を注いでいく。SpaceXのElon Musk(イーロン・マスク)CEOはTwitter(ツイッター)で、この新型宇宙船の最初の軌道飛行試験を5月に実施することを目指していると語ったが、同社はその前に米連邦航空局から重要な規制上の承認が得られるのを待っているところだ。

画像クレジット:SpaceX

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SpaceXとノースロップ・グラマンが2026年までISSへの商業補給サービスを行うことに

NASAがSpaceX(スペースX)に新たな注文を出した。

同局は米国時間3月23日、商業補給サービス2(CRS-2)契約に基づく補給ミッション6件を、SpaceXに追加発注したと発表した。

NASAは、ISS(国際宇宙ステーション)への補給サービスを請け負うもう1つの主要プロバイダーで、航空宇宙産業の主要企業であるNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)にも、さらに6つのミッションを発注している。

NASAは2016年、SpaceXとノースロップの両社に、2024年までの商業補給契約を付与した。3番目に選ばれたサプライヤーはSierra Nevada Corporation(シエラ・ネヴァダ・コーポレーション)だ。CRS-2では、各サプライヤーに最低6回のミッションを保証し、さらにNASAが必要に応じて追加ミッションを発注するオプションが設けられている。3社が獲得した契約の潜在的最大値はそれぞれ140億ドル(約1兆7000億円)だが、NASAが支払う最終的な金額は発注数によって異なると、同局は述べていた。

今回の受注によって、CRS-2のミッションは、ノースロップが14ミッション、SpaceXが15ミッション、シエラ・ネヴァダが3ミッションとなり、合計32ミッションとなった。

現在までに、SpaceXはこのようなフライトにかなり慣れている。同社は以前のCRS契約であるCRS-1で、20の補給ミッションを完了させた。NASAの監察官によると、これらのミッションのためにSpaceXに支払われた総額は30億4000万ドル(約3700億円)で、1ミッションあたり約1億5200万ドル(約185億円)になるという。

SpaceXは、同社の「Dragon(ドラゴン)」宇宙貨物船と「Falcon 9(ファルコン9)」ロケットを使ってISSに物資を届けており、2012年にISSへの最初の補給ミッションを実施して以来、これを続けている。地球を出発した後、Dragon貨物船はISSとランデブーし、自律的にステーションにドッキングする。

SpaceXは、貨物船のDragonをベースにした有人宇宙船「Crew Dragon(クルー・ドラゴン)」を使って、ISSへの商業乗員輸送サービスも提供している。

画像クレジット:SpaceX

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NASAがSpaceXと並んで有人月着陸船を開発する第2の企業を募集

NASAは、企業に月着陸船を送り込む新たなチャンスを与える計画を発表した。SpaceXがBlue Origin、Boeing(ボーイング)らのライバルを破ってから1年近く後のことだ。

新しい計画の下、NASAは着陸システムの2度目の競争入札を、SpaceXを除く全米国企業に開放する。第2の着陸船の打ち上げは2026年または2027年を目標にしている。Sustaining Lunar Development(持続的月開発)契約と呼ばれるこの2回目の競争の勝者は、SpaceXとともに「月面に立つ宇宙飛行士のための将来の繰り返し可能な月輸送サービスへの道を開く」とNASAは言っている。

これは競争参加者にとって良いニュースであるだけではない。同局はさらに、既存のSpaceXとの契約を拡大し、もう1機の着陸船を製作する計画も発表した。2020年代後半に、無人および友人のデモンストレーション飛行ミッションを実施する。

NASAの3月23日の発表は、アポロ計画以来初めて人類を月に送り出す同局による一連のミッションであるArtemis(アルテミス)プログラムの大がかりな拡張だ。

これは、大きな方向転換でもある。NASAは2021年4月にSpaceXと28億9000万ドル(約3500億円)の単独契約を結んだ後、民間産業、議会の両方から集中砲火を浴び、Blue Originが連邦裁判所でNASAを訴えるところまできている(これは、Blue Originと防衛契約業者のDynetics[ダイネティクス]が、政府説明責任局とともに、異議を唱え、後に棄却されたあとのことだ)。しかし今回、NASAのBill Nelson(ビル・ネルソン)長官は、同局が重視するのは競争を育てることだけだと発言した。

「NASAそして議会も、競争はより優れたより信頼性の高い結果と全員にとっての利益を生むと考えています」と同氏は述べた。「それはNASAの利益であり、米国民の利益です。これは間違いなく、競争が生み出す利益です」。

同局は3月末に暫定提案依頼を公開する、と月着陸プログラム責任者のLisa Watson-Morgan(リサ・ワトソン=モーガン)氏が23日に記者団に語った。これには今春末の最終提案依頼が続き、SpaceXを除くすべての米国企業に参加資格がある。

これまでNASAは、費用がいくらになるのかについて、固定金額契約になること以外は口をつぐんでいる。これは重要であり、なぜなら同局は2021年の月着陸システムの契約に1社のみを選んだ理由の1つは予算の制約のためだとしているからだ。契約金額の詳細は、来週バイデン大統領が会計2023年度予算を発表したあと明らかにされる、とネルソン長官は付け加えた。

「私たちは議会およびバイデン政権両方の支持を得られることを期待しています」と同氏は語った。

更新:Blue Originの広報担当者はTechCrunchに次のように語った「Blue Originは競争に参加する準備が整っており、今後もArtemis計画の成功に全力を注いでいきます。当社はNASAと協力して、できるだけ早い月への帰還という米国の目標を達成するために努力していきます」。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceX、Starlinkのハードウェアとサービス料金を全面的に値上げ

SpaceX(スペースエックス)は、Starlink(スターリンク)のハードウェアキット自体の価格とサービス月額料金を含め、値上げを実施する。キットの価格はすでに予約している場合でも上昇するが、新規注文ではさらに跳ね上がる。

Starlinkのハードウェアは、予約に対して50ドル(約6000円)追加され、価格は499ドル(約6万円)から549ドル(約6万6000円)になる。まだ予約していない人はStarlink受信アンテナ、モデム、ルーターを含むキットに599ドル(約7万2000円)払うことになる。サービス月額料金は99ドル(約1万2000円)から110ドル(約1万3000円)へと11ドル(約1300円)アップする。ここに記載している価格はすべて米国の料金だが、その他の地域でも値上げされる。

SpaceXは、新しい料金体系の背景にはインフレがあるとしている。「この価格調整の唯一の目的は、インフレ率上昇に対応することです」と既存顧客に送った電子メールには書かれている。同社はまた、サービスを利用して1年未満の顧客がハードウェアの返品をともなう解約をした場合、200ドル(約2万4000円)返金し、30日以内であれば全額返金するとしている。

電子メールでは、Starlinkが打ち上げ以来、軌道上衛星の数を3倍に、接続を中継する地上局の数を4倍に増やすなど、インフラを大幅に拡張したことも指摘されている。

経済状況の変化で製品の予約に対しても価格を引き上げる企業はSpaceXが初めてではない。Rivian(リビアン)は2022年3月初めに予約者向けに価格を戻す前に、電気自動車R1TとR1Sの大幅な値上げを発表した。

画像クレジット:Starlink

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

スペースXが「米国のほうき」でさらに48基のスターリンク衛星を打ち上げ

SpaceX(スペースX)のStarlink(スターリンク)ミッションがまた1つ、高く高く遠くへ飛んでいった。米国太平洋標準時3月9日の午前5時45分、フロリダ州ケープカナベラルの宇宙軍施設第40発射施設からFalcon 9(ファルコン9)ロケットが打ち上げられ、地球を周回してインターネットを提供しているSpaceXの2000基に及ぶ衛星群に、新たに48基の衛星が追加された。

今回の打ち上げはブースターにとって4回目で、ミッション開始から数分後に大西洋に浮かぶ無人のドローン船「A Shortfall of Gravitas(厳粛さが足りない)」に着陸した。

2022年に入ってから7つのStarlinkミッションに加え、他の3つのミッションも打ち上げているSpaceXにとって、今回の飛行は目新しいものではなかったが、打ち上げのシークエンスにおいて、おもしろい一節が含まれていた。

「米国のほうきを飛ばし、自由の音を聞く時が来ました」と、SpaceXの打ち上げディレクターは打ち上げの「ゴー」を出す前に呼びかけた。

このコメントは、ロシアの国営宇宙機関Roscosmos(ロスコスモス)を率いるDmitry Rogozin(ドミトリー・ロゴージン)氏が先週、両国間の緊張が高まる状況を受けて、米国へのロシアのロケットエンジンの販売を禁止した後に述べた嫌味にちなんでいる。同氏は国営放送で「何か他のもの、自分たちのほうきにでも乗せて飛ばせばいい」と語っていた。

Falcon 9はSpaceXが開発したMerlinエンジンを搭載しているが、米国の他のロケット(United Launch AlliancesのAtlas VとNorthrop GrummanのAntares)はロシアのエンジンを搭載している。ULAは今後の打ち上げに十分なエンジンの在庫があると発表しているが、Northrop Grummanは、禁輸措置が同社のミッションにどのような影響を与えるかについて声明を出していない。

いずれにせよ、米国のロケット打ち上げの大半を占めるのはSpaceXであり、9日の打ち上げが示したように、同社のほうきも好調だ。

SpaceXの次の打ち上げは、Starlinkのミッションではなく、有人ミッションだ。3月30日に打ち上げられる予定のAxiom-1ミッションは、国際宇宙ステーション(ISS)への初の民間飛行となる。SpaceXは、すでにNASAのクルーを4人ISSに送り込み、民間人だけのクルーがCrew Dragonカプセルで数日間地球を周回したInspiration 4ミッションも行っており、有人ミッションの分野ではかなりの経験を積んでいるといえる。

画像クレジット:SpaceX / Flickr under a CC BY-NC 2.0 license.

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(文:Stefanie Waldek、翻訳:Den Nakano)

スペースXがさらに47基のスターリンク衛星打ち上げに成功

SpaceX(スペースX)は2022年に、過去のどの年よりも多くのロケットを打ち上げることを目指している。米国時間3月3日にStarlink(スターリンク)の打ち上げを成功させたことは、その目標達成に向けて順調に進んでいることを示している。

今回のStarlink 4-9ミッションは、米国東部標準時の午前9時25分にフロリダ州にあるケネディ宇宙センターの39A発射施設から打ち上げられた。これは、同社が2022年打ち上げを予定している52回のミッションのうち、9回目にあたる。この1週間に1回という驚異的なペースは、SpaceXのElon Musk(イーロン・マスク)CEOが力を入れている「迅速な再利用性」によるものだ。

今回のミッションでは「B1060」とナンバリングされたFalcon 9(ファルコン9)ブースター(1段目ロケット)が使われた。B1060は打ち上げから約9分後に、大西洋に浮かぶ「Just Read the Instructions(説明書を読め)」と名付けられた無人のドローン船に着地した。今回の打ち上げと着陸の成功により、B1060は2020年6月の初打ち上げ以来、SpaceXのロケット再利用回数で最多タイとなる11回の飛行を完了した。

B1060は今回、47基のStarlink衛星を軌道に乗せ、地球を周回している他の2000基を超える第一世代衛星群に加えることに成功した。これらの衛星コンステレーションは、地球の遠隔地にも高速・低遅延のインターネット接続サービスを提供することを目的としている。Starlinkの衛星は、現時点で1万2000基まで拡張することが承認されているが、SpaceXはさらに3万基の打ち上げを申請している。

4-9ミッションは、SpaceXによる2022年6回目のStarlinkの打ち上げだが、そのすべてのミッションが完全に成功したわけではない。2月3日の打ち上げでは、49基のStarlink衛星が打ち上げられたが、そのうち38基が地磁気嵐のために目的の軌道に到達できず、地球の大気圏に再突入した際に燃え尽きてしまった。SpaceXでは、この問題は大きな後退ではないと主張している。

同社は2月22日、Starlinkの持続可能性と安全性について発表した声明の中で「当社には1週間に最大45基の衛星を製造する能力があり、1カ月で最大240基の衛星を打ち上げています」と述べている。

というわけで、SpaceXによる次のStarlinkの打ち上げは、3月8日にケープカナベラル宇宙軍基地の第40発射施設でから予定されている。

画像クレジット:SpaceX / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Stefanie Waldek、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NASAがSpaceXの商業乗員輸送契約を延長、3ミッション追加で約1036億円

NASAは米国時間3月1日、国際宇宙ステーション(ISS)への乗員輸送サービスを、SpaceX(スペースエックス)にCrew-7、Crew-8、Crew-9ミッションとして正式に追加発注したことを発表した。これによって、SpaceXが受注した商業乗員輸送能力(CCtCap)契約の総額は34億9000万2904ドル(約4018億円)となる。

当初の26億ドル(約3000億円)の契約は、Space Shuttle(スペースシャトル)の退役に伴い2011年に終了した米国の乗員輸送能力を開発するために、2014年にSpaceXが獲得したものだ。この民間宇宙航空会社は、2020年以降、Crew Dragon(クルードラゴン)宇宙船とFalcon 9(ファルコン9)ロケットで、ISSへ向けてCrew-1からCrew-3(+有人試験飛行1回)まで、3回の乗員輸送ミッションを行い、打ち上げを成功させている。

修正前の契約では、SpaceXは2022年にCrew-4とCrew-5、2023年にCrew-6と、さらに3つのISSへの飛行ミッションを受注していた。NASAの声明によると、今回の延長契約は「固定価格、無期限納入/無期限数量」であるとのこと。SpaceXの契約期間は2028年3月31日までとなり、成長中の打ち上げ・宇宙事業会社にとってはうれしい定期収入となった。

NASAの宇宙オペレーション本部副長官を務めるKathy Lueders(キャシー・リーダース)氏は、2021年12月に発表されたSpaceXの契約修正を意向する通知の中で「宇宙ステーションにおける米国の存在感を維持するために必要になったときにすぐに準備が整うように、ステーションへの追加フライトの確保を今すぐ始めておくことが重要です」と述べている。「米国の有人打ち上げ能力は、私たちが軌道上における安全な運用を継続し、地球低軌道で経済を構築するために不可欠です」。

NASAはこの通知の中で、SpaceXが現在ISSに乗員を輸送するために認定されている唯一の米国企業であることを認めた。Boeing(ボーイング)も、2014年にNASAから6回のミッションで総額42億ドル(約4800億円)のCCtCap契約企業として選定されたが、同社のStarliner(スターライナー)宇宙船はまだ人を乗せずに行う無人の試験段階だ。2022年5月に予定されている次のテスト飛行では、Atlas V(アトラスV)ロケットで打ち上げられ、ISSとランデブーする計画になっている。

最終的にNASAは、SpaceXとボーイングの商業乗員輸送プログラムを連携させ、ISSに宇宙飛行士を送り込むことを考えている。スペースシャトルの退役からSpaceXの商業乗員輸送プログラム認定までの間、NASAはステーションへの乗員輸送をロシアの国営宇宙機関であるRoscosmos(ロスコスモス)だけに依存してきた。NASAの監察総監室(OIG)による2019年の報告書によると、NASAは2006年から2020年の間に、RoscosmosのSoyuz(ソユーズ)打ち上げシステムに、1席あたり平均5540万ドル(約63億8000万円)を支払っている。このコストは年々上昇し、2020年には1席あたり8600万ドル(約99億円)になっていたという。同じOIGの報告書では、SpaceXの1席あたりの平均コストは5500万ドル(約63億3000万円)、ボーイングでは9000万ドル(103億6000万円)になると推定されている。

画像クレジット:NASA

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(文:Stefanie Waldek、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

イーロン・マスク氏率いるスペースX、ウクライナの要請に応じスターリンク通信と端末提供―ただし有効性に疑問の声も

イーロン・マスク氏率いるスペースX、ウクライナの要請に応じスターリンク通信と端末提供―ただし有効性に疑問の声も

ロシア軍が侵攻してその動向が世界に注目されているウクライナ情勢に絡んで、イーロン・マスク氏はSpaceXの衛星インターネットサービスStarlinkをウクライナに導入したことを明らかにしました。マスク氏いわく「すでにウクライナでStarlinkサービスは有効になっている」「さらに多くの端末を送る用意がある」とのこと。

ウクライナではロシアによるサイバー攻撃でインターネット環境が利用できなくなるとの観測が出ており、ウクライナ副首相兼デジタル担当相のムィハーイロ・フョードロフ氏はTwitterでマスク氏にStarlinkによる支援を呼びかけていました。

実際にすでにStarlinkはウクライナで利用可能になっており、この動きに対して、熱狂的なマスクファンなど一部の人々は反射的にSNSで称賛しているようすです。しかしその一方、専門家らからは、Starlinkの有効性について疑問の声もあがっています。

The VergeはStarlinkをレビューした際、安定した通信を得るにはヒマワリのようにアンテナを衛星の方に向け、さらに間に遮蔽物がないようにしなければならず「誇大に宣伝されたミリ波5Gと同様」に建物はおろか電柱や立木ですら、簡単に信号を遮断してしまうと報告していました。つまり、人々がインターネット環境を利用したいであろう都市部は、遮蔽物がそこかしこにあり、衛星インターネットが効果を発揮するのは難しいだろうということです。

また「さらに多くの端末を」とは言っても、それをどうやってキエフなど都心に持ち込むのかが問題です。ウクライナの主要な都市にはロシア軍が集結しており、持ち込む途中で奪われ、逆に利用される可能性も否定できません。

インターネットの通信状況を監視するサイバーセキュリティ企業NetBlocksは、ウクライナのバックボーンプロバイダーGigaTransの通信状況をTwitterで報告し、一時的にそのトラフィックが20%程度にまで落ち込んだと伝えました。しかしその直後には通常レベルまで復旧したことも報じているため、少なくともウクライナ国内ではまだインターネット通信は生きており、大規模な停電なども発生していない模様です。

もちろんStarlinkのサポートも、ないよりはあるに越したことはありません(トンガでもStarlinkが離島で開通したと報じられています。ただ海底ケーブルもすでに復旧していますが)。いずれにしても、ウクライナの人々が家族や大切な人々と連絡を取り合うのが困難になるかわからない状況に変わりはなさそうです。

(Source:Elon Musk(Twitter)Engadget日本版より転載)

画像クレジット:ANIRUDH on Unsplash

スペースX、初の商業宇宙遊泳を年内に計画

SpaceX(スペースX)は、初の民間人のみによる宇宙飛行を開始するだけでなく、近い将来、本格的な民間宇宙プログラムの本拠地となる見込みだ。The Washington Postによると、Shift4(シフト4ペイメンツ)の創業者でInspiration4ミッションのリーダーを務めたJared Isaacman(ジャレッド・アイザックマン)氏は、SpaceXによる「最大3回」の有人飛行を含むPolaris Program(ポラリスプログラム)の構想を発表した。最初のフライトである「Polaris Dawn(ポラリスの夜明け)」は2022年の第4四半期に予定されており、初の商業宇宙遊泳が含まれるはずだ。この取り組みは理想的には、人間が乗った最初のStarship(スターシップ)の飛行で終わる。月旅行を期待していた方たちには申し訳ない。

Polaris Dawnチームは、史上最高の地球周回軌道を目指し、健康研究を行い、レーザーを使ったStarlink(スターリンク)通信のテストも実施する予定だ。アイザックマン氏はミッションコマンダーとして復帰し、Inspiration4のミッションディレクターで空軍経験者のScott Poteet(スコット・ポティート)氏がパイロットを務める。また、SpaceXのリードオペレーションエンジニアであるAnna Menon(アナ・メノン)氏とSarah Gillis(サラ・ギリス)氏の2名も搭乗する。メノン氏の役割は、昨今の民間宇宙飛行へのシフトを象徴している。彼女の夫であるAnil Menon(アニル・メノン)米空軍中佐はNASAの宇宙飛行士に選ばれているが、彼女はその配偶者よりも先に宇宙に到達する可能性が高いのだ。

このプログラムの実現は、SpaceXとパートナー企業がいくつかの問題を解決することにかかっている。SpaceXは宇宙遊泳に必要な宇宙服を開発中であり、アイザックマン氏のグループはクルーのうち何人が宇宙船の外に出るかをまだ決めていない。また、Starshipには不確定要素もある。十分なテストが行われ、多くの進歩を遂げているが、この次世代ロケットシステムの開発は必ずしも計画通りには進んでいない。Polaris Programは、比較的緩やかなスケジュールで、場合によってはいくつかの挫折を経験することになるだろう。

それにしても、これは民間宇宙飛行の常態化を意味する。Polaris Programは、億万長者が率いる民間宇宙飛行の最近の「慣習」を引き継ぐものだが(アイザックマン氏も例外ではない)、宇宙遊泳や新しい宇宙船のテストなど、これまで政府の宇宙飛行士だけが行っていたことが商業化されることも見込まれる(SpaceXのDemo-2は、NASAの宇宙飛行士が操縦した)。近い将来、民間宇宙飛行士が他の役割を果たすようになっても不思議ではない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Jon Fingas(ジョン・フィンガス)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Polaris Program / John Kraus

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(文:Jon Fingas、翻訳:Aya Nakazato)

イーロン・マスク氏のSpaceX Starshipイベントで残る大型ロケットをめぐる多くの疑問

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、テキサス州ボカチカにあるStarship(スターシップ)開発現場から、同社の次世代打ち上げ宇宙船Starshipの進捗と計画について最新情報を提供した。StarshipとSuper Heavyブースターを組み合わせた高さ約400フィート(約121メートル)の打ち上げ機について、これまで印象的な説明があった。しかし今回、同氏がStarshipについて語ったことの多くは目新しいものではなかった。飛行試験と開発の次のステップに関してプロジェクトが置かれている実際の状況について同氏が共有できたことは、新しいコンセプトビデオに描かれた、空想上の惑星に向かうというビジョンに現状からどうやってたどり着くのかという疑問をいくつか投げかけた。

「ノアの方舟」の正当化

マスク氏は、人類を火星やその先に恒久的に到達させるというミッション実存の正当性に繰り返し言及してきたが、今回のアップデートでは、その目標に、地球の幅広い種の保存を中心とする補足を加えた。同氏はノアの方舟に触れなかったが、以下の通り、この類推は外れていない。

人類だけでなく、地球上のすべての生命を本当に大切に思う人たちにとって、長期的には、私たちが複数の惑星を持つ種になり、最終的には太陽系を越えて生命をもたらすことが非常に重要です。私たちは生命の管理人であり、生命の後見人です。私たちが愛する生物たちは宇宙船を作ることができませんが、私たちは彼らを連れて行くことができるのです。それは、環境を大切にする人、地球上のすべての生き物を大切にする人にとって、とても重要なことだと思います。

SpaceX(スペースエックス)のCEOであるマスク氏は、究極的にはこのプロジェクトの正当化を軽視し、第2の理由であるインスピレーションをより重要視している。同氏は以前、SpaceXの野心について語った際に、Starshipと文明の多惑星化は、人々を「未来について興奮」させることができるものの1つだと述べた。これは、マスク氏とSpaceXが地球上の問題解決に費やした方がよいはずの膨大な資金をプロジェクトに注いでいるという批判に対する長い回答の一部だった。批判に対して同氏は「リソースの99%超は地球上の問題解決に向けられるべき」ということに同意し、それはすでに行われていると述べた。

Starshipの打ち上げプロセスと迅速な再利用性

SpaceXは、これまでもStarshipの打ち上げプロセスについて語り、コンセプトアニメーションも公開してきたが、今回のアップデートでは、同社がイメージする最新のバージョンを映し出した。上に掲載した短い映像は、現在ボカチカに設置されている実際の打ち上げ施設をより忠実に再現しているが、タワーにブレードランナーの雰囲気を漂わせるビジュアルが施されている。

このアニメーションでは、2つのStarship宇宙船が軌道上でドッキングする様子も描かれている。これは、SpaceXが以前にモデル化したものではないが、火星への旅のために宇宙で燃料を補給する方法について同社は議論してきた。マスク氏は、ドッキングプロセスの詳細について同社がまだ解決しなければならないことだとしながらも、実際には「自分自身とドッキングするよりも宇宙ステーションとドッキングする方がずっと難しい」はずだと語り、SpaceXの宇宙船が常に宇宙ステーションとドッキングしていることに言及した。

打ち上げ場所と必要なクリアランス

もう1つの話題は、これまで共有された情報との相違が明確になった、Starshipの打ち上げ施設についてだ。マスク氏によると、打ち上げ場所の周辺には比較的人口の少ない広大なエリアが必要で、さらに人々をすばやく避難させることができること、打ち上げ傾斜角や宇宙船が宇宙に入る際の適切な位置取りが必要なことから、Starshipの打ち上げには2つのオプションしかないという。イベントが行われたテキサス州のStarship開発施設と、フロリダ州のケープカナベラルだ。

テキサスでの打ち上げのための米連邦航空局(FAA)による現場審査がどういう状況なのか、マスク氏は実際には把握していなかったが、3月中には承認が得られると予想しているという。とはいえ、ケープカナベラルには予備のためのStarshipの建設現場と発射台があり、テキサスで環境審査とFAAの審査が通らなければ、ケープカナベラルが第一の場所になる可能性もある。SpaceXが最初からフロリダのスペースコースト(ケネディ宇宙センターとケープカナベラル基地周辺)に決めてStarshipを打ち上げようとしなかった理由の1つは、そこではすでに多くのロケット打ち上げが行われており、既存のオペレーションを中断させたくなかったからだと、マスク氏は述べた。

質疑応答のセッションでマスク氏は、最終的にはSpaceXが古い石油プラットフォームを使って現在開発しているような、海上に浮かぶ宇宙港が「おそらく」いくつもできると考えている、と繰り返した。これは、ロケット発射が「かなりうるさい」こと、また混乱を最小限に抑えるために少なくとも「主要都市から20~30マイル(約32〜48キロメートル)」離れたところで発射を行わなければならないことに対処するためだ。このことは、地球を拠点としたポイント・ツー・ポイントの移動にとって重要なことだと同氏は話した。

軌道到達のタイムラインは不明

Starshipに関して次に期待されているのは、何といっても最初の軌道上テスト飛行だ。プロトタイプはすでに(Super Heavy除く)民間旅客機が飛行する高度まで飛んでいるが、地球の大気圏を超えたものはまだない。過去の発言でマスク氏はいつも楽観的なスケジュールを示してきた。例えば2019年9月の最初のStarship情報アップデートで同氏は、6カ月以内に軌道に到達し、2020年中には人を乗せることもできると予想していた。

明白だが、それは実現しなかった。

その代わり、タイムラインは2021年末から2022年1月に、そして現在は3月になる可能性もあるなど絶えず変化しており、マスク氏は実際に軌道テストに成功するいう点に関して「2022年中に軌道に到達すると強く確信している」とだけ発言している。

Starshipアップデートのプレゼンテーションの全容は、下の動画で閲覧できる。

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

スペースX、スターリンク衛星コンステレーションによるサービスをインターネット断絶のトンガに提供すべく活動中

SpaceXがStarlink衛星コンステレーションによるサービスをインターネット断絶のトンガに提供すべく活動中

New Zealand Defense Force via Getty Images

SpaceXは、1月15日に発生した大規模噴火で甚大な被害を受けたトンガのインターネット環境回復のために、Starlinkの衛星コンステレーションによるブロードバンドサービスを提供すべく協力していると報じられています。

現在、SpaceXはフィジーに衛星インターネット通信局を設置している最中で、ここを中継点としてトンガへインターネット回線を延伸させようとしているとのこと。インターネットが通じたとしてトンガの人々がどのようなサービスを期待すれば良いかはよくわかりませんが、現在世界25か国でパブリックベータサービスを提供しているStarlinkサービスにとって、トンガやフィジーへの接続は、回線敷設の手間が大きく省ける衛星ブロードバンドの利点を広く宣伝する良い機会になると考えられます。

噴火で途切れた海底インターネットケーブルの復旧にはまだ数週間ほどかかるとされており、トンガ政府にそれまで通信環境の回復を待てない事情があるのであれば、SpaceXにさらなる支援を求めることもありそうです。また海底ケーブル復旧後も今回の災害のような不測の事態に備えるためのバックアップとして、衛星インターネット環境はトンガのような絶海の島国でこそ求められるインフラとも言えそうです。

ただし、トンガは1月下旬に契約の解釈のもつれからサービスを提供していなかった衛星通信企業Kacific Broadband Satellitesに対して通信開通の許可を出しており、SpaceXがそこへ割り込む格好になることであらぬ競争が発生することになる可能性もないわけではありません。

(Source:Wall Street JournalEngadget日本版より転載)

スペースX、スターリンク衛星コンステレーションによるサービスをインターネット断絶のトンガに提供すべく活動中

SpaceXがStarlink衛星コンステレーションによるサービスをインターネット断絶のトンガに提供すべく活動中

New Zealand Defense Force via Getty Images

SpaceXは、1月15日に発生した大規模噴火で甚大な被害を受けたトンガのインターネット環境回復のために、Starlinkの衛星コンステレーションによるブロードバンドサービスを提供すべく協力していると報じられています。

現在、SpaceXはフィジーに衛星インターネット通信局を設置している最中で、ここを中継点としてトンガへインターネット回線を延伸させようとしているとのこと。インターネットが通じたとしてトンガの人々がどのようなサービスを期待すれば良いかはよくわかりませんが、現在世界25か国でパブリックベータサービスを提供しているStarlinkサービスにとって、トンガやフィジーへの接続は、回線敷設の手間が大きく省ける衛星ブロードバンドの利点を広く宣伝する良い機会になると考えられます。

噴火で途切れた海底インターネットケーブルの復旧にはまだ数週間ほどかかるとされており、トンガ政府にそれまで通信環境の回復を待てない事情があるのであれば、SpaceXにさらなる支援を求めることもありそうです。また海底ケーブル復旧後も今回の災害のような不測の事態に備えるためのバックアップとして、衛星インターネット環境はトンガのような絶海の島国でこそ求められるインフラとも言えそうです。

ただし、トンガは1月下旬に契約の解釈のもつれからサービスを提供していなかった衛星通信企業Kacific Broadband Satellitesに対して通信開通の許可を出しており、SpaceXがそこへ割り込む格好になることであらぬ競争が発生することになる可能性もないわけではありません。

(Source:Wall Street JournalEngadget日本版より転載)

スペースX、地磁気嵐でスターリンク衛星40基を失う

SpaceX(スペースX)のFalcon 9ロケットで米国時間2月3日に大気圏外に運ばれたインターネット衛星Starlink(スターリンク)のほぼすべてが、目的の軌道に達しない。SpaceXは、打ち上げの翌日に発生した地磁気嵐により衛星に深刻な影響があり、最大で40基が地球の大気圏に再突入するか、すでに突入していることを明らかにした。米地質調査所は、地磁気嵐を、一般的に太陽風の強いうねりによって引き起こされる「急激に磁場が変動する」期間と説明している

こうした嵐は、電子機器や軌道上の人工衛星にダメージを与える可能性がある。今回のケースでは、大気が暖み、大気抵抗(衛星の動きに対する摩擦)がこれまでの打ち上げに比べて最大で50%増えた。SpaceXの説明によると、Starlinkチームは、新たに配備された衛星を救おうと、抵抗を最小限に抑えるためにセーフモード(紙のように飛ぶよう動きを調整するモード)にした。しかし、抵抗が増し、セーフモードを終了できなくなった。

軌道から外れた衛星は衝突の危険はなく、大気圏に再突入する際に完全に燃え尽き、軌道上のデブリも発生しない、とSpaceXは説明している。また、衛星の部品が地上に落下することもない見込みだ。「この特殊な状況は、Starlinkのチームが、軌道上のデブリ軽減の最先端を行くシステムを確実なものにするために、多大な努力を払ってきたことを示しています」と同社は発表文に書いている。

SpaceXは2022年1月時点で、第1世代のStarlink衛星を2000基以上打ち上げている。Starlink衛星をペイロードとする打ち上げは、同社にとって日常的なものとなっていて、世界をカバーするインターネット提供を目的とした最大3万個の衛星からなる第2のコンステレーション形成が承認されれば、さらに頻繁に行われるようになるはずだ。

Starlinkは遠隔地にいる人々にもインターネット接続を提供することができるが、天文学者たちは、巨大なコンステレーションは都市の光害よりも研究にとって深刻な脅威になっているという。実際、国際天文学連合は「衛星コンステレーションの干渉から暗くて静かな空を守るためのセンター」を設立したばかりだ。望遠鏡が衛星コンステレーションによって反射された光を拾い、宇宙の観測を困難にすることが大きな問題であるため、センターは観測所が実行できるソフトウェアや技術的な緩和策に焦点を当てることにしている。SpaceXは2020年にStarlink衛星に「サンシェード」を追加し、明るさを抑えている。Sky & Telescopeによると、現在は確かに暗く見えるが、望遠鏡ではまだ見えるという。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のMariella MoonはEngadgetの共同編集者。

画像クレジット:Starlink

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(文:Mariella Moon、翻訳:Nariko Mizoguchi

SpaceXが月額約5.7万円の「プレミアム」Starlinkプランを発表、最大500Mbpsの速度を実現

SpaceX(スペースX)は、同社の衛星インターネットサービスStarlink(スターリンク)において、より高いパフォーマンスと目を疑うような価格の新サービスプランを発表したとThe Vergeが報じた。「Starlink Premium(スターリンクプレミアム)」と名づけられたこのサービスは、150〜500Mbpsの速度を20〜40msの遅延で提供するとのこと。従来の50〜250Mbpsから速度はアップし、同じ遅延ということになる。アップロード速度も、標準プランの10〜20Mbpsから、プレミアムでは20〜40Mbpsに向上している。

だが約2倍のパフォーマンスアップのためには、5倍の料金を支払わなければならない。標準プランの月額99ドル(約1万1300円)に対し、Starlink Premiumプランは月額500ドル(約5万7200円)となる。また、アンテナなどのハードウェアには、標準プランの499ドル(約5万7100円)に対し、2500ドル(約28万6000円)が必要となり、Premiumアンテナの予約には500ドル(約5万7200円)の保証金が必要となる。

SpaceXによると、この新サービスは「極端な気象条件」でもより確実に機能し、顧客は優先的に24時間年中無休のサポートを受けることができるという。このサービスは、多くの遠隔地で利用できる高速インターネットの唯一の選択肢となる可能性が高く、そうした環境で優れた耐候性は重宝されるだろう。

SpaceXは、2021年10月にStarlinkのベータ版を発表し、同年11月には、オリジナルの円形衛星アンテナよりもはるかに小さく薄い長方形の新しい衛星アンテナを発表した。新しいPremiumアンテナはそれよりも大きく「ネットワークの使用量がピークに達したときでも、重要な業務のための帯域幅を確保するのに役立つ」とSpaceXは述べている。

Starlinkは、1月中旬時点で2000基以上の衛星を打ち上げており、約1500基が運用軌道に乗っている。現行システムでは、現在の約3倍となる最大4408基の衛星運用が認められている。Premiumプランは2022年第2四半期に納入開始を予定しており、現在注文受付中だ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Starlink

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(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

SpaceXの元エンジニアがクリーンな自律走行型の電気鉄道車両を開発中

SpaceX(スペースエックス)の元エンジニア3人が設立したParallel Systems(パラレル・システムズ)は、バッテリーで駆動する型鉄道車両を開発する会社だ。同社は米国時間1月19日に4955万ドル(約56億円)のシリーズAでステルスモードから脱却した。360万ドル(約4億円)のシードラウンドを含め、これまでに5315万ドル(約60億円)を調達した同社は、既存の鉄道インフラを活用した、より効率的で脱炭素の貨物ネットワークの構築に取り組んでいる。

共同創業者でCEOのMatt Soule(マット・ソウル)氏によると、今回の資金はParallel Systemの第2世代車両の開発と、同社の車両を実際の運用に組み込む方法を考案するための高度なテストプログラムの立ち上げに充てられる予定だ。

同社は、Anthos Capitalがリードし、Congruent Ventures、Riot Ventures、Embark Venturesなどが参加した今回のラウンドで得た資金を、約60人のエンジニアの雇用に充てるつもりだ。そうしたエンジニアの多くはソフトウェアを担当するとソウル氏は話す。

同社の鉄道車両アーキテクチャは、貨物の二酸化炭素排出、トラック輸送のサプライチェーン上の制約、鉄道貨物の限界といったいくつかの問題の解決を目指している。米国では、鉄道網が全貨物輸送の28%を占めているが、そのほとんどはバルク輸送であり、すなわち石炭や木材などの天然資源を輸送する大型列車だ。鉄道貨物輸送のごく一部はインターモーダル輸送と呼ばれ、基本的に船やトラックなどさまざまな輸送手段間で鋼鉄コンテナを移動させる。

「鉄道は、インターモーダル輸送に関しては成長するチャンスが多く、当社はこの分野に重点を置いています。というのも、競争とイノベーションの余地があると考えている分野だからです」とソウル氏はTechCrunchに語った。

Parallelが特許出願中の車両構造は、標準的な輸送用コンテナを1段または2段積みにして輸送することができる個別動力の鉄道車両を含む。この鉄道車両は合流して「小隊」を組んだり、途中で複数の目的地に分かれたりすることができる。つまり、サービスを経済的なものにするために大量の貨物を積載する必要はない。しかし、米国でほとんどの貨物輸送を担っているトラックよりもはるかに多くの重量を運ぶことができる、とソウル氏は話す。

「貨物列車のユニットエコノミクス(ユニット単位での経済性)がトラックと競争できるようになるには、非常に長い列車が必要で、機関車と乗務員のコストをその長い列車1本で償却することになります」とソウル氏は語る。「問題は、その長い列車をどこに停めたらいいのかということであり、答えは『あまりない』です」。

貨物輸送を長い列車に頼るということは、eコマース分野の需要増に対して頻繁に処理するのは難しい、ということだ。なぜなら、そうした長い列車は常に都市部や港にアクセスできるとは限らない。その物理的な大きさに対応するために、特別に作られた大きなターミナルが必要なのです、とソウル氏は指摘した。

「当社のユニットエコノミクスは、それほど大きな列車には依存しません」とソウル氏はいう。「荷揚げと荷積みのために1日中待機するのではなく、小隊で動くことができます。1〜2時間で出発し、他の小隊のためにスペースを空けることができます。そのため、港湾や内陸部の港湾シャトルシステムを構築することで、海に面した港から内陸部の港にコンテナを移動させることができます。内陸部の港はトラックにとってアクセスしやすい場所であり、倉庫保管場所にも近いのです」。

自律性に関して言えば、鉄道の閉じたネットワークは、レールへのアクセスが制限され、交通が集中制御されているため、自律走行技術を安全かつ早期に商業化するための理想的な運用設計領域だとParallelは見ている。ただ、同社の長期的なビジョンは有望と思われるものの、同社はまだ全国ネットワークでのテストを行っていないことに注意が必要だ。同社は、全国ネットワークから隔離されたロサンゼルスの小さな鉄道でプロトタイプ車両をテストしてきた。

米国の鉄道はオーナー制で私有化されていて、これによりParallelが車両や車両を動かす自律システムを大規模にテストすることは難しい。同社は、民間の鉄道会社を顧客に据えており、鉄道会社が日常的にサービスを運営するためのツールを販売またはリースする一方、技術の提供や統合という点でサポートする役割を提供したいと考えている。従来型鉄道のパートナーを得るまでは、同社の技術が実際の運用に対応できるかどうかを確認することはできない。

Parallelが手がけている技術の市場投入は数年先になるかもしれない、とソウル氏は話すが、世界中の荷主はより速い輸送だけでなく、よりクリーンな輸送も求めており、この分野の市場を手に入れるチャンスはある。

同社の小隊技術は、自律走行型鉄道車両が互いに押し合って荷重を分散させるのが特徴で、この技術によりParallelの車両がセミトラックと比較してわずか25%のエネルギーしか使わないようになると同社は予測している。

「貨物の脱炭素化を加速させること。これが当社の取り組みの根本的な狙いです。しかし、我々が目にしている問題は、鉄道の事業規模がサービスを提供できる市場に限定されていることです」とソウル氏は話す。「なので我々は、エネルギー効率を高めると同時に、運用面や経済面の障壁を取り払おうとしているのです。さらに、パワートレインを電動化することで、脱炭素化の効果をさらに加速させることができます。というのも送電網そのものはクリーンではないからです。当社が開発しているものとディーゼルトラックの比較において、米国の送電網の平均的なCO2含有量を見ると、当社の技術を使えば、現在のディーゼルトラックより貨物輸送1マイル(約1.6km)あたりにかかるCO2を90%削減することができます」。

画像クレジット:Parallel Systems

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

国際宇宙ステーションで高校や学習塾が科学実験、SpaceXのFalcon 9でJAMSS実験装置Kirara 3号機を本日打ち上げ

国際宇宙ステーションで高校や学習塾が科学実験、SpaceXのFalcon 9・ドラゴン補給船でJAMSS実験装置Kirara 3号機打ち上げ

国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」の運用・利用支援などを行う有人宇宙システム(JAMSS。ジャムス)は米国時間12月21日、SpaceXのドラゴン補給船に宇宙工場モデル「Kirara」3号機を搭載しFalcon 9ロケットで打ち上げる(CRS-24・SpX-24ミッション。記事掲載時点では打ち上げ成功)。Kiraraは主に、創薬分野で利用される高品質タンパク質結晶生成を宇宙で行うサービスのための実験装置として、複数の企業や団体からの宇宙実験を請け負っているのだが、今回新たに「Kiraraシェアサービス」を開始し、初めての試みとして、日本国内の学校や学習塾から募った宇宙教育ミッションも行うことになっている。

今回の打ち上げに参加する団体は、東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部、欧州コンフォーカルサイエンス、静岡大学電子工学研究所、米国のBayer、ハンガリーのInnoStudio、フランスのInstitut Laue-Langevin、スペインのCSISとIACT、そして教育関連では、茨進、日本旅行(ミライ塾)、柳川高等学校、東京都立小石川中等教育学校、みどりの学園義務教育学校、Nikkei宇宙プロジェクト。

なかでも、市進教育グループの茨進では、JAMSSと共同でISSでの宇宙実験教育を実施する予定となっており、その材料の準備を子どもたちが行った。柳商学園柳川高等高校は、高校主催による宇宙でのタンパク質結晶生成実験を行う。みどりの学園義務教育学校は、持続可能な社会の実現に向けて学んだ成果であるデータやメッセージをSDカードに納めて宇宙に打ち上げる。

Kirara 3号機を載せたSpaceXのFalcon 9は、米国時間12月21日にケネディー宇宙センターから打ち上げられ、翌22日午前4時半ごろ(米国東部標準時間)にISSにドッキングする予定。

【Max Q】SpaceXが初めて1日に2回Falcon 9を打ち上げ

TechCrunchは、Space 2021イベントを終えたばかりが、宇宙ビジネスに限っては、年末だからといってニュースのペースが落ちることはない。

SpaceXがロケット再利用の新記録を達成、初の1日に2回の打ち上げ

SpaceX(スペースエックス)は、同社のStarlink(スターリンク)衛星の新たな一群を、ヴァンデンバーグ空軍基地の発射施設から米国時間12月18日に打ち上げ、続いてその日の夜遅くにトルコの通信衛星をフロリダ州ケープカナベラルから打ち上げた。これはSpaceXが1日に2回の打ち上げを行った初めての事例だ。また、このStarlinkミッションでは打ち上げロケットのFalcon 9を11回にわたって発射・回収し、SpaceXの打ち上げシステム再利用記録を更新した。

それだけでも十分目覚ましいが、現在SpaceXは、同社の商業再補給サービス(CRS)ミッションの一環として国際宇宙ステーション(ISS)に補給品と実験材料を届けることになっている。予定では米国時間12月21日午前にケープカナベラルから飛び立つ。

画像クレジット:SpaceX

2021年を宇宙投資家の目で振り返る

上に書いたように、我々はTC Sessions:Space 2021イベントを終えたところだが、その中でもスタートアップコミュニティにとって特に興味深かったに違いない話題が、宇宙分野に関心のあるアーリーステージ投資家のパネルとTechCrunchが行ったディスカッションだろう。たとえばSpace Capital(スペース・キャピタル)のファウンダーであるChad Anderson(チャド・アンダーソン)氏は、長年スタートアップに早期投資する中で、宇宙産業が著しく進化してきたことについて語り、現在業界で起きている大きな転換に言及した。Assembly Ventures(アセンブリー・ベンチャーズ)のJessica Robinson(ジェシカ・ロビンソン)氏は、スペーステック(宇宙技術)が他のあらゆる分野に影響を与えその逆も起きていることについて話した。

ディスカッションはTC+サブスクライバー専用サイトでその他の会話とともに公開されている。

画像クレジット:Axiom Space

その他のニュース

Voyager Space(ボイジャー・スペース)はBlue Origin(ブルー・オリジン)のグローバル販売担当VPを新たな最高収益責任者(CRO)として雇った。Clay Mowry(クレイ・モーリー)氏はBlue Originチームのかなり有力なメンバーであり、その以前はArianespace(アリアンスペース)の会長兼社長を務めていた。

NASA(米国航空宇宙局)と各国の提携機関は、民間有人宇宙飛行計画、Axiom(アクシオム)Mission 1の国際宇宙ステーションへの飛行を承認し、2022年2月28日に実施されることが決まった。

ジョージア州カムデン郡のSpaceport Camden(スペースポート・カムデン)は、FAAから正式な打ち上げ許可を受けた。運用に入るまでにはまだいくつかハードルが残っているが、民間打ち上げ会社の新たな打ち上げ場所の選択肢としての役割が期待される。

Rocket Lab(ロケットラボ)は太陽電池、ソーラーパネルその他の宇宙拠点インフラの構成要素のメーカー、SolAero Holdings(ソロエアロ・ホールディングス)を買収する。TechCrunchは先にRocket LabのPeter Beck(ピーター・ベック)氏と、同社の最近の買収ラッシュについて話した(要サブスクリプション)。

The U.S. Space Force(米国宇宙軍)が2歳に!よちよち歩きの武官組織になった。

NASAはJames Web(ジェームズ・ウェッブ)宇宙望遠鏡を米国時間12月24日に打ち上げる予定で、目標打ち上げ時刻は東海岸標準時午前7時20分(日本時間12月24日午後9時20分)だ。フランス領ギアナ、クールーにある宇宙センターから発射され、Arianespaceのロケット、Ariane 5をESA(欧州宇宙機関)との提携で搭載する。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nob Takahashi / facebook

元SpaceXエンジニアたちのFirst Resonanceは製造OSをハードウェアメーカーに提供

First Resonance(ファースト・レゾナンス)は、ハードウェア製造のためのソフトウェアを作っている企業だ。同社のIon(イオン)プラットフォームは、製造ライン、サプライチェーン、エンジニアリング、デザインなどを管理しなければならない人々に、オールインワンの選択手段を提供する。今回、新たに1400万ドル(約15億9000万円)の資金を調達したことで、同社はその営業力を拡大し、世界のハードウェアメーカーに全面攻勢を仕かけることを目指している。

First Resonanceは、元SpaceX(スペースX)のエンジニアたちによって設立された。彼らは、SpaceXで開発に携わったプロセスが、ドローンや玩具、そして……他のロケットを作っている人々の役に立つと感じたからだ。

2020年夏に我々が初めて取材したとき、同社はまだ始まったばかりだった。今では勢いのある会社となり、より多くの大規模な顧客をターゲットとしながら、その勢いを維持したいと考えている。

「2020年、First Resonanceは最初の顧客を獲得したばかりでした。その年は、メーカーやハードウェアを製造している人たちが、自宅で仕事をしている人たちと工場をつなぐ手段や、複数の種類の工場をつなぐ手段を必要としていた時期でした。ちょうど私たちがこの会社で作っている製品が、それにぴったりはまったのです」と、共同創業者兼CEOのKaran Talati(カラン・タラティ)氏は語る。

2020年末には15社の顧客を獲得し、現在はその2倍の顧客に利用されているIonプラットフォームは、本格的にハードウェアを製造している人々にとって、価値があることを示している。その顧客には、電動垂直離着陸機をてがけるJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)、自動操縦貨物飛行機運行を目指すReliable Robotics(リライアブル・ロボティクス)、小型静止通信衛星企業のAstranis(アストラニス)などがいる。

「このような洗練された製品の製造方法を管理するだけでなく、部分組み立ての複雑さやそれにともなう高度な複数段階におよぶBOM(部品構成表)を管理することの複雑さ。【略】Ionが行っているのは、これらの企業がその複雑さを定義し、理解して、設計や製造プロセスを迅速かつ反復的に調整できるような粒度で支援することです」と、タラティ氏は述べている。

画像クレジット:First Resonance

その鍵となるのが、部品やプロセスの自動化された強力なトラッキングだ。同社のチームは、かつてSpaceXでロケットの再利用可能性に取り組んでいた際に、これを得意とした。

「SpaceXが他の企業と比べて決定的に違う点は、所定のロケットにどのシリアルナンバー、どのロットナンバーが付いているかを徹底的に把握していることです。どの部品が特定の条件にあてはまるか、あるいはエラーが出る可能性が高いかということが、わかっているのです」と、タラティ氏は説明する。「これこそが、私たちの顧客が直面している課題なのです。自動車メーカーは、すべての車両をリコールする必要があるため、何十億ドル(数千億円)もの費用がかかります。しかし、Tesla(テスラ)は最近、わずか3000台のModel Y(モデルY)をリコールしました。それはテスラが、そのレベルの粒度を持っているからです」。

初期の顧客は、この機能が非常に価値のあるものであることを理解し、より多くの要望を寄せている。部品の購入から納品、取り付け、サービスまでをトラッキングすることで、テスラのようなコスト削減の機会が生まれるだけでなく、洞察を掘り出すことができるデータベースも構築できる。

企業はずっと以前からこのような管理を行ってきたが、一般的には、レガシーなものから最先端のものまで、互いに連携していない5〜6種類のシステムを使用している。例えば、デザイン作業はライブのARコラボレーションセッションで行われ、クラウドに保存されて、最新の生産性スイートを介して配信されるが、それが工場や部品のワークフローに行くと、90年代から進化しておらず、そこですべてが滞ってしまう。それは決して優れた仕組みとは言えず、新型コロナウイルスが流行した2020年と2021年のプレッシャーによって、限界を超えてしまった企業もあるだろう。

「一般的なトラッキングツール、電子メールのテンプレート、スプレッドシート、断絶されたプロセスなどで乱雑な状態です。このような長く使っていた古いシステムから離れ、デジタルトランスフォーメーションを検討している顧客がますます増えています」と、タラティ氏は語る。

共同設立者でCOOのNeal Sarraf(ニール・サラフ)氏(左)とCEOのKaran Talati(カラン・タラティ)氏(右)(画像クレジット:First Resonance)

自社で新しいスタックを構築できるような大規模で資金力のある企業でさえ、Ionを利用することを選択していると、タラティ氏はいう。これは、1年と数千万ドル(数十億円)をかけて独自のスタックを設計するのではなく、市場で通用するプロセスの追加を選択して成功した他の企業を見習うためだという。

今回の1400万ドルを調達したシリーズAラウンドは、Craft Ventures(クラフト・ベンチャーズ)が主導し、Blue Bear Capital(ブルー・ベア・キャピタル)、Fika Ventures(フィカ・ベンチャーズ)、Stage VP(ステージVP)、Wavemaker(ウェーブ・メーカー)が参加した。この資金は、会社の規模拡大と改善、特に「市場参入チーム」の強化に充てられる予定だ。しかし、その製品も進化している。開発チームは、変化があったときに数秒で実行可能な洞察が得られるようにするため、より多くのデータソースをインテリジェンスストリームに統合することに取り組んでいる。また、SDKを拡張して、より多くの工場やハードウェアの種類に対応することも視野に入れている。

「当社の顧客は、柔軟でデータ駆動型のアプローチを非常に重視しており、Ionはまさにその要求に適っているのです」と、タラティ氏は述べている。

画像クレジット:Teera Konakan / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SpaceX、ブラックホールを観測するNASAのX線偏光望遠鏡を打ち上げ

SpaceX(スペースX)のFalcon 9ロケットが、NASAのX線偏光観測衛星「Imaging X-ray Polarimetry Explorer(IXPE)」を搭載して飛び立った。2017年に最初に発表されたIXPEは、ブラックホールや中性子星などの宇宙線源から飛来するX線偏光を測定できる初めての衛星だ。

冷蔵庫サイズのこの衛星には、光の方向、到達時間、エネルギー、偏光を追跡・測定できる3つのX線偏光望遠鏡が搭載されている。それらすべての望遠鏡からのデータを組み合わせることで、NASAはX線を放出する謎の天体がどのように機能しているのかをより深く知ることができる画像を形成することが可能になる。例えば、超新星残骸の中心で中性子星が高速回転している「Crab Nebula(かに星雲)」の構造をより詳しく知ることができるのではないかと期待されている。

ブラックホールを観測することで、人類がまだほとんど知らない宇宙の領域について、IXPEは科学者の知見を深めることができる。ブラックホールがなぜ回転しているのか、どのように宇宙の物質を飲み込んでいるのかなどの手がかりを得られるかもしれないとともに、新たな発見につながる可能性もある。今回のミッションの主任研究員であるMartin Weisskopf(マーティン・ワイスコフ)博士は、ブリーフィングで次のように述べている。「IXPEは、宇宙がどのように機能しているかについての現在の理論を検証し、磨きをかけるのに役立ちます。また、これらのエキゾチックな天体について、これまでの仮説よりもエキサイティングな理論を発見できるかもしれません」。

SpaceXは今回の打ち上げに、前回のミッションで使用したFalcon 9ロケットを使用した。順調にいけば、ロケットの第1段はIXPEを宇宙に運んだ後、同社のドローン船「Just Read the Instructions(つべこべ言わず説明書を読め)」に着陸する。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Mariella Moon(マリエラ・ムーン)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:NASA

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(文:Mariella Moon、翻訳:Aya Nakazato)

宇宙商社Space BDが10.4億円調達、SpaceX「Falcon9」ロケット衛星打上げ枠の利用権確保など宇宙輸送手段拡大

宇宙商社Space BDが10.4億円調達、SpaceX「Falcon9」ロケット衛星打上げ枠の利用権確保など宇宙輸送手段拡大

宇宙産業における総合的なサービスを展開する「宇宙商社」Space BDは12月1日、第三者割当増資による総額10億4000万円の資金調達完了を発表した。引受先は、既存株主であるインキュベイトファンド、アニヴェルセルHOLDINGS、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、これに新規株主として、シンガポール政府系投資会社Temasek Holdings傘下のPavilion Capital PTE. LTD.が加わっている。融資も含めた累計調達金額は、18億9000万円となった。

2017年設立のSpace BDは、JAXAの初の民間開放案件「国際宇宙ステーション『きぼう』日本実験棟からの衛星放出事業」に採択されたことを機に、船外プラットフォーム利用事業、微小重力環境を活用するライフサイエンス事業、H-ⅡA/H3ロケット相乗り打上げ事業と、JAXAとのパートナーシップを軸にした事業を進めてきた。現在は、衛星打上げ事業のほか、宇宙をテーマとした地域産業振興、教育および人材育成事業、技術プロジェクトマネージメントなどを展開している。

今回調達した資金で、Space BDは「国内外の多様な打上げ手段の確保による衛星打上げサービスの拡大」と、人材採用と組織力の強化を行うとしている。特に打ち上げ手段に関しては、2021年11月にSpaceXのFalcon9ロケットの利用権を確保するなど、調達の幅を広げている。

「プロジェクトごとに異なる課題・目的に対し、ゼロからの事業立案・実行と技術的な支援をワンストップで提供することで、当社の設立理念である『宇宙を日本発で世界を代表する産業にする』に向けて邁進してまいります」とSpace BDは話している。