TikTokがソニー・ミュージックと新たなライセンス契約を締結、マイケル・ジャクソンも対象に

TikTokは米国時間11月2日朝、Sony Music Entertainment(ソニー・ミュージックエンタテインメント、SME)と新たなライセンス契約を締結したことを発表した(TikTokリリース)。同社によるとこの契約により、TikTokはクリエイターがプラットフォーム上で使用するソニー・ミュージック所属アーティストの楽曲を引き続き提供できるようになる。また、両社はSMEのアーティストのプロモーション活動においても協力することになる。

契約条件は明らかにされていない。しかし、今回の契約拡大により、TikTokのクリエイターコミュニティは、ソニー・ミュージックのカタログに収録されている現在のヒット曲、新作、人気曲、名曲といったサウンドクリップにアクセスできるようになる。

また詳細は明かされていないが、TikTokはソニー・ミュージックと協力して「TikTokユーザーのパーソナライゼーションと創造性の向上」と「ソニー・ミュージックのアーティストや音楽とファンとのエンゲージメントのための新たな機会を促進する」をサポートするとも述べている。

これは、両社がソニー・ミュージックのミュージッククリップをフィーチャーするだけでなく、ハッシュタグキャンペーンやブランディング効果など、より良い音楽の発見やファンとのつながりを可能にするプロモーション活動に取り組む可能性を示している。

報道によると、TikTokはすでに2020年初めにUniversal(ユニバーサル)、ソニー・ミュージック、Warner(ワーナー)との短期ライセンス契約を結んだとされる(Billboard記事)。これにより、各レコード会社はTikTokとの契約の詳細を詰める時間が増え、その間、楽曲をプラットフォームから引き上げる必要がなくなった。

Billboardの報道によると、TikTokはSonyとのこれまでの権利契約に対して「明らかな増額」を支払うことになるという。TikTokは現時点で他の大手レーベルとの同様の拡大契約をまだ発表していない。

TikTokは最終的にレーベルへの支払いを増やさなければならなかったが、独自の交渉力がないわけではない。この動画アプリは、楽曲をチャートに押し上げ、さらには新人アーティストの実績づくりの場としての価値を交渉時にテーブルの上に出すことができる。

Nielsenは2019年に、TikTokほど多くの曲のブレイクに貢献したアプリは他にないと述べた。同社のマーケティング力の高さの例として2020年にオンデマンドで最も聴かれたLil Nas Xの「Old Town Road」やAva Maxの「Sweet But Psycho」とJojiの「Slow Dancing in the Dark」を挙げている。

Billboardは本日、TikTokがソニー・ミュージックのアーティストであるDoja Cat(「Say So」)や24 kGoldn(「Mood」)のヒットを後押しし、同社の新しいタレントを発掘するのに役立ったことにも言及している。例えばコロンビアは、Lil Nas X、Powfu、StaySolidRocky、Jawsh 685、Arizona Zervas、24kGoldnといった人気のTikTokアーティストと契約したとレポートでは述べられている。

一方、ソニー・ミュージックとの新たな契約には、Vampire Weekend、Harry Styles、Michael Jacksonなどのアーティストが含まれているという。

TikTokの持つ力に関連して、Spotifyは米国時間11月2日、アーティストがTikTokに牽引されたトレンドをより有効活用できるようにするための新しいプロモーションマーケティングツールを発表した(未訳記事)。このリリースは、TikTokのバイラルビデオが1977年に発表されたFleetwood Macの名曲「Dreams」を、SpotifyとApple Musicの両方で1位を獲得し、チャートの上位に送り込んだ(TikTokリリース)直後のことだった。

関連記事:今年上半期の米国におけるオンデマンド音楽ストリーミングは史上最多の5000億回

カテゴリー:ネットサービス
タグ:TikTokSony Music Entertainment

画像クレジット:Costfoto / Barcroft Media / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

Appleが簡単動画作成アプリClips 3.0発表、縦位置ビデオサポートでTikTok世代を狙う

Apple(アップル)は米国時間10月28日にビデオ製作アプリClipsの新バージョンを公開した。Clips 3.0では縦型ビデオがサポートされ、TikTokやストーリーなどのサードパーティのSNSアプリへの投稿が容易になった。また横型ビデオやiPhone 12のHDR動画対応など多数の機能が追加された。これ以外にも新しいスタンプやサウンド、ポスターなどが提供されている。

アップルが最初にClipsを発表したのは2017年で、Instagramにビデオを投稿するためのツールを狙ったものだった。そのためアプリは正方形のフォーマットのみサポートしたが、これはその後、時代遅れになっていた。ユーザーは現状、カジュアルなビデオはTikTokをはじめTriller、Dubsmash、Instagram Reelsといった短いビデオ専門のソーシャルネットワークに投稿している。

一方、Instagram、Facebook(フェイスブック)、Snapchat、Pinterest、そして近くTwitterにも登場するはずのストーリーズはもっと長いビデオを中心とし、ユーザーのSNSへの投稿で中心的な位置を占めるようになっている。

アップル自身も縦型ビデオのサポートがClipsに対する要望で最も多かったと認めている

Clips 3.0は正方形フォーマットに加え、16:9と4:3のアスペクト比をサポートする。アプリがiPadで開かれた場合は、デフォルトで横位置が選択される。これは教師が子どもたちを教える際に利用する教育目的の場合、特に便利なはずだ。

iPadのClipsはiPadがMagic Keyboard for iPadのようなケースに入っていても作動し、Bluetoothマウス、トラックパッドもサポートされる。テキスト欄にはApple Pencilで入力できる。

画像クレジット:Apple

新アプリはiPhone 12、iPhone 12 ProのリアカメラのHDRビデオをサポートする。

ClipsのUIもリニューアルされた。横位置、縦位置で録画する場合、新しい録画表示窓は画面の上でフロートする。これは「アプリの反応が遅い」と感じる一部ユーザーの不満に対処したものだろう。

またユーザーは、Clips Projectsなどで各種効果にアクセスするなどが以前より容易になっている。

新しいインターフェースにはTikTokの影響が感じられる。例えば効果を下から上にスワイプすると、カードが全面表示されビデオに追加できるスタンプや見出しテキストを選ぶことができる。この利用できる効果をすべて表示するポップアップ式カードのフォーマットはTikTokとよく似ている。ただしこちらはボタンをタップする方式でジェスチャーではない。

画像クレジット:Apple

今回のアップデートではコンテンツ系のオプションが増えた。例えばSNS向け系スタンプは8種類が追加された(Instagram Stories向けの「音声オン」など)、矢印や図形は6種類、著作権フリーのサントラも24種類追加され利用できるBGMは100種類になった。Clips内に新しいメディアブラウザが設けられ、自分の作った写真やビデオが選択できる。トーグルルでポスターが表示され、カスタマイズ可能なフルスクリーンのタイトルカードが70種類から選べる。

フィルターやセルフィーもアップデートされ、ユーザーが簡単に音声でキャプションをつけられるLive Titles機能も追加された。

プロジェクトの作成が完了した後、ビデオをソーシャルネットワークに投稿するのも簡単になった。共有画面にはiMessageや「デバイスに保存」に加えてInstagram、YouTube、TikTok、Twitter、Snapchatなどの投稿先が並ぶ。

Clipsは着実にユーザーを増やしてきたが、最後のアップデートは半年前で、他のアプリに比べてアップルの注目度が低い印象だった。同社によれば、ユーザーは毎日数百万の単位でClipsのプロジェクトを作っているという。利用が目立つのは米国、英国、中国だ。

またアップルによれば、2020年に入ってClipsの利用は30%も増えたという。これは学校教育がリモート化し、教師がデジタル教材を作成しなければならなくなったことと関係があるだろう。

画像クレジット:Apple

今回、縦位置ビデオをサポートしたことも一例だが、Clipsは非常に大きな潜在的市場を持っていた。

現在、多くのユーザーがストーリーズやTikTokを利用するサードパーティのアプリ(InShot、Prequel、Splice、PicCollage、Canva、VSCO、Funimate、KineMaster、Magisto、CapCutなど)に短いビデオクリップを投稿している。これまでClipsがこの市場利用できなかったのは縦位置ビデオをサポートしていなかったためだ。

新しいClips 3.0は、世界で本日から順次公開される。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleClipsTikTok

画像クレジット:Apple

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

TikTokがコンテンツ削除に関する新しい通知システムを全世界で導入

TikTok(ティックトック)は、コンテンツ削除をより明確にさせる新しい通知システムを世界中で導入したとしている。グローバル展開に先立って数カ月間テスト展開されてきた同システムは、TikTokユーザーに彼らのビデオがポリシー違反で削除された際に通知する。ユーザーは望めば、決定に反論して削除取り消しを求めることもできる。

コンテンツ違反でビデオが削除されたとき、ユーザーはアプリ内で通知を受ける。投稿日と違反した特定のポリシーが、コミュニティガイドラインに移動するリンクとともに案内される。

画像クレジット:TikTok

もしコンテンツが自傷や自殺に関連するものというフラグが立てられれば、TikTokは追加の通知を通じて非営利団体であるbefrienders.orgといった専門的なリソースをユーザーに案内する。しかし自殺ホットラインの電話番号は含まれず、代わりにユーザーやユーザーの友人に「地域の法執行機関」に電話するよう促す。

Facebook(フェイスブック)とInstagram(インスタグラム)は同様の場合をサポートを行う、よりしっかりとしたシステムと提携パートナーを持っている。

画像クレジット:TikTok

これまで、通知なしにビデオが消えることに対して、TikTokユーザーが苦情をいうことはよくあった。こうした話の一部は口コミで広がった。例えば水着の動画が消えたことについてLizzoがTikTokを非難した(BuzzFeed記事)ときなどだ。

多くの人がTikTokを利用するようになるにつれ、削除されるビデオも増えている。2020年上半期にはポリシー違反で1億450万点のビデオを削除した、とTikTokはいう。2019年下半期の4900万点(CNBC記事)から増えている。

新しい通知システムのグローバル展開は、TikTokの最近のヘイトスピーチやヘイトに満ちたイデオロギー取り締まりの拡大に続くものだ。

そうした変更について、同社は欧州コミュニティ向けに米国時間10月21日に説明した。そのアップデートについて一部のメディアはそれが新しいポリシーであるかのように誤って報道した。しかし変更の大半は8月に米国で発表されている(TikTokリリース)。

タイミングにかかわらず、TikTokの強力なポリシー実行は、透明性のある通知が欠如しているために動画削除に関してさらなる混乱を生むかもしれない。

TikTokは、動画削除に関する新たな通知システムが、テストの時と同様に違反の繰り返しを減らすのに役立つだろうと考えているという。また新しい通知システムの結果、テスト期間中にコミュニティガイドラインの閲覧が3倍近くに増え、削除の抗議が14%減った。

「コミュニティに対して常に透明性を確保することは信頼を獲得し、そして維持し続けるための鍵となります」とTikTokは声明文で述べている(TikTokリリース)。「全ユーザーに新しい通知システムを提供するのは喜ばしい限りです。安全でサポーティブなプラットフォームを構築するため、ユーザーコミュニティのポリシーへの理解を支える方法の改善に引き続き取り組んでいきます」。

関連記事:TikTokは2020年上半期に1億400万本の動画を削除、有害コンテンツ制限で他アプリとの連携を提案

カテゴリー:ネットサービス
タグ:TikTok

画像クレジット:Sheldon Cooper/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

インドのインフルエンサー向けサービスプラットフォームCreatorOSを注目スタートアップ幹部が支援

安価なAndroidスマートフォンの出現と世界で最も安いモバイルデータ料金により、ここ数年でインドの数百万人のソーシャルメディアインフルエンサーに数千万人のユーザーを獲得する道を開いた。

インフルエンサーはクリエイターとも呼ばれ、毎日、さまざまな問題を扱ったVlogや意見をシェアし、一部のインフルエンサーには、ニッチで忠実な視聴者に製品を販売するために大手ブランドと提携している者もいる。eコマースの大手Flipkartや、その他の多くの企業が、今ではインフルエンサーと提携している

しかし2020年6月の終わりにインド政府はTikTokを禁止した。インドでも20億あまりのユーザーがいるこの中国のショートビデオアプリの禁止は、クリエイターにとって大きな打撃になった。彼らは他のプラットフォームも利用しているが、それらはTikTokに比べるととても影響力が小さいものだ。

しかし、あるスタートアップが、クリエイターがもっと自分の作品をコントロールできるプラットフォームを構築したと自負している。多くの著名な起業家も同じ意見だ。

米国時間10月9日、Madhavan Malolan(マダヴァン・マロラン)氏はクリエイターが自分のビジネスを構築、管理し、成長させていけるプラットフォームであるCreatorOSを発表した。このプラットフォームの共同創業者であるマロラン氏によると、2020年1月の時点ですでに、ショートビデオ製作者を含むおよそ1000名のクリエイターや教師、コンサルタントが、以前Socionityと呼ばれたこのプラットフォームに参加しているという。マロラン氏は以前、Microsoft(マイクロソフト)など数社で働いていた。

「私たちは、クリエイターがこれからの10年で起業家になると信じている。そこで私たちは、彼らがデジタルビジネスを行うために必要となるツールや人とのつながり、インフラを構築しています。現状、クリエイターの側に欠けているものが多く、より多くの人が発見できるようにバイラル化を目指して動画を制作しています」とマロラン氏はいう。

現在のCreatorOSのメインツールは、クリエイターが自分のアプリを作るためのアプリビルダーだ。CreatorOSでは、クリエイターがそのコンテンツを売り込み、コミュニティを作ることもできる。マロラン氏によると、CreatorOSのアプリビルダーを使えば、自分のアプリをシンプルなドラッグ&ドロップ方式で簡単に作ることができるという。

また10月9日に、同社は高名な投資家のグループから50万ドル(約5300万円)を調達したという。投資に参加したエンジェル投資家はチケット予約のRedBus.inの創業者で元CEOのPhanindra Sama(パニンドラ・サマ)氏、オンライン学習プラットホームのUnacademyの共同創業者でCEOのGaurav Munjal(ガウラヴ・ムンジャル)氏、Flipkart GroupのCEOであるKalyan Krishnamurthy(カリアン・クリシュナムルシー)氏、B2BマーケットプレースUdaanの共同創業者であるSujeet Kumar(スチット・クマール)氏、ソーシャルeコマースMeeshoの共同創業者でCEOのVidit Aatrey(ヴィディット・アトレー)氏、モビリティ企業Bounceの共同創業者でCEOのVivekananda Hallekere(ヴィヴェカナンダ・ハレキレ)氏、そしてXiaomi IndonesiaのゼネラルマネージャーであるAlvin Tse(アルヴィン・ツェ)氏などだ。

マロラン氏は、多くの優れた起業家がCreatorOSに信頼を示したため、まだVC企業と関わる必要はなく、代わりにクリエイターへのサービス提供に全体の焦点を置くことを確信させたと述べている。また彼は、TikTokが禁止され、多くのスタートアップがショートビデオアプリの規模を拡大しようとしている(未訳記事)ことが、CreatorOSにとって計り知れないチャンスになっていると述べている。

同社は、年末までに5000人以上のクリエイターがプラットフォームに参加すると予想している。現在、マロラン氏はクリエイターと協力して、彼らの利益になるような機能をより多く理解し、構築しているいう。

関連記事:インド政府がTikTokなど中国企業の59のアプリを禁止すると発表

カテゴリー:ネットサービス
タグ:CreatorOSTikTokインドインフルエンサーショートビデオ資金調達

画像クレジット:INDRANIL MUKHERJEE / AFP / Getty Images

原文へ

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

パキスタンが「不道徳で卑猥な」ビデオとしてTikTokを禁止に

パキスタンは、不道徳で下品な動画の流通を理由に人気のショートムービーアプリTikTokを禁止した。この動きは、南アジアの国が、TikTokの一部の動画の内容や社会への影響について深刻な懸念を示してから数カ月後のことだ。

同国の通信当局であるパキスタン通信局は10月8日夜、警告と数カ月におよぶ時間にもかかわらず、TikTokが「指示に従わなかったため、国内でのTikTokアプリのブロッキングの指示が出された」と声明で述べた。当局は「国内で多方面からの苦情を受けていた」とのこと。

約7500万人のインターネットユーザーを抱えるパキスタンのあるユーザーがTechCrunchに語ったところによると、TikTokのアプリとウェブサイトにはすでにアクセスできない状態だという。

パキスタン通信局は声明で「TikTokは当局との契約に応じる用意があり、TikTokが違法なコンテンツを緩和するための十分なメカニズムに従うことを条件に決定を見直す」と説明している。

パキスタンの動きは、隣国であるインドがサイバーセキュリティの懸念からTikTok、Bigoと中国企業によって開発されたほかの57本のアプリを禁止した数カ月後に起こった。禁止の前にTikTokは、2億人以上の月間アクティブユーザーを集めているインドを中国以外の最大の市場と考えていた。パキスタン南部のカラチに本社を置く配車サービスのスタートアップBykeaの幹部であるDanish Khalid(ダニッシュ・ハリド)氏は「インドと同様に、パキスタンでもTikTokは絶大な人気を誇っている」と述べた。

TikTokの最大の市場は米国だが、アプリの将来はまだ不透明だ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:パキスタンTikTok

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

TikTok、WeChatをめぐる騒動と、米中間で広がるデジタル格差

この10年で、中国と米国のテック企業のダイナミクスは大きく変わった。かつて中国は米国の有望な市場とみなされていたが、中国の技術革新と投資力が目に見えて高まるにつれ、その立場は逆転した。また、中国共産党のサイバーセキュリティ規制の対象が拡大されると、データプライバシー侵害を懸念する声が高まった。しかし、そんな中でも、両国が互いにアイデアを交換できていた期間は何年もあったように思う。ところが、関税戦争という政治的背景もあり、また最近、TikTokとWeChatに対してトランプ政権の大統領命令が発令されたせいで、そうした良い関係もすっかり損なわれてしまった。

米国商務省は先週、TikTokとWeChatの米国での利用停止を強制する予定だったが、両社に対する命令の執行は延期された。WeChatについては、米国地方裁判所裁判官は利用停止の一時的な保留を命じた。一方、TikTokの所有会社であるByteDance(バイトダンス)は、Oracle(オラクル)との複雑な交渉の最終段階を迎えている。

TikTokとWeChatをめぐる紛糾は、米国の中国テック企業に対する見方が大きく変化したことを明確に示している。TikTokは、中国企業による消費者向けアプリとして初めて米国で大きな地盤を築いただけではなく、米国の大衆文化にも大きな影響を与えた。ほんの10年前、いや5年前でさえ、このような事態になろうとは、ほとんど想像もできなかっただろう。

進出先としての中国

14億人の人口を抱える中国は長い間、中国政府による検閲が強化されていた時期でさえ、多くの海外テック企業から、もうかる市場とみなされてきた。2003年、中国公安部は、一般に「万里のファイアウオール」と呼ばれるGolden Shield Project(金盾)を開始した。目的は、中国のインターネットユーザーがアクセスできる海外のサイトやアプリを制限することだ。万里のファイアウオールは当初、主に反中国共産党コンテンツが掲載された中国語サイトに対するアクセスを制限していたが、やがて、より多くのサービスをブロックするようになった。

2006年1月26日、Google(グーグル)が中国本土進出を果たした翌日のノートパソコンの画面。グーグルは、北京当局によって禁止されているウエブサイトやコンテンツを検閲することに同意した後、新しいサービスを開始した。画像クレジット:AFP PHOTO / Frederic J. BROWN

中国共産党によるオンライン検閲は厳しくなる一方だったが、それでも多くの米国のインターネット企業は中国への進出を熱望していた。当時最も注目されていたのはGoogle(グーグル)だ。グーグルは2000年に、Google.comに中国語のサポートを追加した。

グーグル検索エンジンへは部分的にしかアクセスできず(ファイナンシャル・タイムズ紙の2010年版記事アーカイブによると、この原因は、中国の認可を受けたインターネットサービスプロバイダーによる「広範なフィルタリング」である可能性がある)、2002年には短期間ブロックされたこともあったが、それでもグーグルは、グーグルニュースの簡体字中国語版など、中国のユーザー向けに新しいサービスの提供を続けた。

2005年には、中国にR&D部門を設置する計画を発表した。そして翌年には、Google.cnを正式に立ち上げた。グーグルは、Google.cnを立ち上げるために、政治的にセンシティブなトピックの検索結果を排除することに同意し、物議を醸した。

このように中国政府に対して譲歩の姿勢を見せていたのにもかかわらず、グーグルと中国との関係は悪化し始めた。このことは、他の海外テック企業、とりわけオンラインサービスを提供する会社が中国市場への参入を試みるとどういう結果になるのかを暗示していた。YouTubeへのアクセスについては、ブロックと解除が繰り返されたが、Lhasa(ラサ)のデモに参加したチベット人を容赦なく殴打する場面を撮影したとみられる動画がアップロードされた後、2009年に完全にアクセス禁止となった。同じ年、フェイスブックとツイッターへのアクセスもブロックされた。

2010年1月、グーグルは中国でのネット検索の検閲を中止し、必要なら同国から撤退すると発表した。また、Google.cnでのすべての検索クエリをGoogle.com.hkにリダイレクトする措置も開始した。

ただし、中国でのR&D活動は継続し、セールス部門もそのまま残された(2018年のThe Interceptの調査で、グーグルは、Project Dragonflyというコードネームで中国での検索の検閲を再開したことがわかっている)。グーグル以外の米国テック企業も、たとえ自社のサービスが中国でブロックされても、中国市場への進出を諦めなかった。

フェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグ氏は2010年代の半ばに、数回に渡って中国を訪問した。2015年には、研究開発の最先端である清華大学を訪問している。ザッカーバーグ氏はその前年に同大学の理事会メンバーとなっており、標準中国語で何度か一般講演を行っている。フェイスブックが同社サービスの中国版をリリースするという憶測が飛び交ったが、中国本拠の企業は、当時もその後も、フェイスブックの最も重要な広告収益源であった

さらに、国内企業の競争力強化を目指して策定された中国政府のポリシーが成果を上げ始め、2015年までには、大半の米国テック企業は中国市場に参入するために中国国内のパートナーを見つける必要に迫られることになった。中国が米国の技術イノベーションを求めるという図式は、こうして逆転し始めたのである。

ダイナミクスの変化

Google Playが中国でブロックされると、サードパーティー製Androidアプリストア登場の道が開けた。その1つが、中国インターネット大手Tencent(テンセント)のMy Appだ。

しかし、テンセントで最も影響力のあるアプリは、2011年にリリースされたメッセージアプリWeChatである。WeChatリリースの2年後、テンセントは、TenPayとの統合化によりモバイル決済サービス分野にも進出する。5年も経たないうちに、WeChatは、数億人のユーザーの日常生活に欠かせないアプリとなった。WeChat Payと、その主な競合相手であるAlibaba(アリババ)のAlipayは、中国の決済市場に革命を起こした。シンクタンクCGAPの調査によると、今や、中国の消費者決済の3分の1はキャッシュレス化しているという。

北京発 – 2020年9月19日:中国人の顧客が地元の市場で、モバイル端末上で動作するWeChatのQRコードを使って決済している。画像クレジット:Kevin Frayer / Getty Images

2017年、Wechatは、「ミニプログラム」をリリースした。このミニプログラムにより、開発者はWeChat上で動作する「アプリ内アプリ」を作成できるようになった。Tencentによればミニプログラムはあっという間に軌道に乗り、2年にも満たない短期間で、その数は100万、1日あたりのユーザー数は200万人に達したという。グーグルでさえ、2018年に独自のミニプログラムを密かにリリースした

こうしてWeChatは中国国内では広く普及したが、その存在は世界的にはまだあまり知られていなかった。特に、別のメッセージアプリWhatsAppと比較するとその差は歴然としていた。WeChatの月間アクティブユーザー数は10億人を超えていたが、そのうち海外のユーザー数は推計で1~2億人程度だった。その多くは、WeChatを使って中国本土の家族や仲間と連絡を取る中国人移民たちだ。というのも、WhatsApp、Facebook Messanger、Lineといった他の人気のメッセージアプリはすべて中国ではブロックされているからだ。テンセントは、Tesla(テスラ)、Riot Games(ライアットゲームズ)、Snap(スナップ)など、多くの米国企業に大口の投資を行っており、スナップの創業者Evan Spiegel(エヴァン・シュピーゲル)氏を含むテック起業家たちの間ではインスピレーションの源だと言われていたが、世界的な大ヒットアプリはまだ生み出したことがなかった。

その間、別の企業が競争優位を獲得し、テンセントが成功できなかった分野で成功を収めていった。

2012年にマイクロソフトのベテラン社員Zhang Yiming(チャン・イーミン)氏によって創業されたByteDance(バイトダンス)もやはり、創業当初、中国政府とのゴタゴタに巻き込まれた。同社が最初にリリースしたアプリはNeihan Duanziと呼ばれるソーシャルメディアプラットフォームで、そのユーザー数は2017年に2億人に達したが、翌年、中国国家広播電影電視総局によって不適切なコンテンツがあるとの指摘を受けたあと、利用停止を命じられた。こうした初期の挫折はあったが、バイトダンスはToutiao(中国トップのニュースアグリゲータ)などのアプリをリリースし、成長を続けた。

そして2016年に、同社を最も世に知らしめたアプリをリリースする。このアプリは中国でDouyin(抖音またはドウイン)と呼ばれている。バイトダンスは、海外でショートビデオ共有アプリを広める計画を以前から練っていた。中国のテックニュースサイト36Krのインタビューでチャン氏は次のように答えている。「中国のインターネット人口は世界全体の5分の1にすぎない。世界に進出しなければ、我々は、中国以外の市場に目を付けている同業他社に敗北することになる」。これは、中国を重要な市場とみなしてきた米国のインターネット企業の見方とまったく同じだが、(立場が逆転したという意味で)正反対であるとも言える。

ドウインの国際バージョンであるTikTokは、2017年にリリースされた。その年、バイトダンスはティーンエージャーに人気のリップシンクアプリMusical.lyを買収する。買収金額は8億ドル~10億ドル(約840億円~1050億円)と言われている。バイトダンスはMusical.lyとTikTokを統合して、両アプリの視聴者を一元化した。

2019年に入る頃には、TikTokは米国の10代~20代前半の若者の間で人気アプリとなったが、多くの大人たちは一体どこが良いのか理解に苦しんでいた。しかし、TikTokが一躍、Z世代文化の中心に出てくると、米国政府による監視の対象になり始めた。2019年2月、連邦取引委員会は、子どものプライバシー保護法に違反したとしてTikTokに570万ドル(約6億円)の罰金を科した

その数か月後、米国政府は国の安全保障に関わる問題としてTikTokの調査を開始したと見られている。これが、その後8月に発表された同社に対する大統領命令、バイトダンスと「信頼できるテクノロジーパートナー」であるOracle(オラクル)との不可解な新合意をはじめとする一連の出来事へとつながっていった。

2017年のサイバーセキュリティ法の影響

TikTokが安全保障上の脅威とみなされている国は米国だけではない。インド政府は今年6月、「国家の防衛と安全保障」を脅かすとして、59の中国製モバイルアプリを使用禁止としたが、その中にTikTokも含まれていた。フランスのデータセキュリティ監視機関CNILも、ユーザーデータの処理方法に関してTikTokを調査している

TikTokのデータ収集方法は、ターゲット広告からの収益に依存している他のソーシャルメディアアプリとほぼ同じだと考えているサイバーセキュリティ専門家もいるが、問題の核心は2017年に施行された中国のサイバーセキュリティ法にある。同法では、企業が中国国内で保存したデータについては、中国政府の要求に従う必要があると規定されている。バイトダンスは、米国ユーザーのデータは米国とシンガポールで保存されたものであるとし、中国政府による米国ユーザーのデータへのアクセスを拒否する、と繰り返し主張してきた。

2019年10月に出した声明の中でTikTokは次のように述べている。「当社のデータセンターはすべての中国国外に存在しているため、当社のデータはすべて中国の法律の対象外である。さらに、当社は、堅牢なサイバーセキュリティポリシー、データプライバシー、セキュリティ対策に特化した専任の技術チームも設置している」

同社はまた、同じ声明の中で、香港の抗議デモウイグル人などのイスラム教徒グループに対する中国政府の弾圧に関する動画を含むコンテンツの検閲についても懸念を表明し、「中国政府からコンテンツ削除の要請を受けたことはないし、受けたとしても応じるつもりはまったくない」と断言した。

米国におけるWeChatとTikTokの不確かな未来

しかし、バイトダンスは中国の企業であるため、最終的には中国の法律の規制を受ける。今週始め、バイトダンスは、オラクルとウォルマートにTikTokの全株式の20%を売却した後、残りの80%を保有すると発表した。その後、オラクルの執行副社長Ken Glueck(ケン・グリュック)氏は、オラクルとウォルマートは、TikTok Globalという新しく創設される会社に対して投資すると発表し、さらに、バイトダンスはTikTok Globalに対する所有権をまったく持たない、と付け加えた。

この発言は新たな疑問を生むだけで、最も知りたいことに答えていない。この米国版TikTokはバイトダンスとどのような関係になるのだろうか、また、今後も、大きな懸念事項である中国のサイバーセキュリティ規制の対象になるのだろうか。

バイトダンスがオラクルとウォルマートとの交渉を発表したのと同じ頃、米国の地方裁判所裁判官は、U.S. WeChat Users Alliance(米国WeChatユーザー同盟、米国ユーザーのWeChatへのアクセス保護を求める弁護士グループによって創設された非営利団体)米国政府を相手取って起こした訴訟の一環として、WeChatの全国規模での使用禁止を一時的に延期する決定を下した。Laurel Beeler(ローレル・ビーラー)裁判官は自身の見解として次のように書いている。「政府は、中国の活動は米国の安全保障に対する重大な懸念を提起するものであると明言しているが、すべての米国ユーザーに対してWeChatの使用を事実上禁止することでそうした懸念が軽減されるという証拠はほとんどない」。

同じサイトで、米国WeChatユーザー同盟は、8月6日のWeChatに対する大統領命令は、「米国憲法および行政手続法の多くの条項に違反している」と確信している、と述べている。同ユーザー同盟は、WeChatの使用禁止は、WeChatを使用して家族、友人、仕事仲間とコミュニケーションを図っている「米国の数百万人のユーザーの生活と仕事に重大な支障をきたすものだ」と主張している。

WeChatは厳重に検閲されているものの、ユーザーは、中国政府が神経質になっているトピックに対する検閲をうまく回避する方法を見つけていることが多い。例えば、ユーザーたちは、絵文字やPDF、およびKlingonなどの架空の言語を使って、Ai Fen(アイ・フェン)氏のインタビューを共有している。アイ氏は武漢市中心病院救急科主任の医師で、中国政府が新型コロナウイルスに関する情報を隠ぺいしようとした最中にあって同ウイルスについて警鐘を鳴らし続けた最初の人物の一人だ。

広がる格差

TikTokとWeChatに対する米国政府の措置の背景には、緊迫の度を増す政治情勢がある。Huawei(ファーウェイ)とZTEは2012年、超党派の下院委員会の報告で、米国安全保障の潜在的脅威として最初に名指しで指摘されたが、世界最大の通信機器サプライヤであるファーウェイに対する法的措置は、トランプ政権のもとでエスカレートしていった。具体的には、司法省によるファーウェイの刑事告発や最高財務責任者Meng Wanzhou(モウ・バンシュウ)氏の逮捕および起訴などだ。

米国政府の措置は、国の安全保障という名目で行われたものの、その影響を受けるのは、中国政府や中国の大企業だけではない。中国人留学生の入国ビザ規制が非常に厳しくなるなど、個人にも大きな影響が及ぶ。

同時に、習近平体制の下で万里のファイアウォールによる制限が強化されており、中国のサイバーセキュリティ法がますます強権的になり、市民データに対する当局のより広範なアクセスを許可するようになっている。また、ウイグル人やその他の少数民族の監視に、より洗練された監視テクノロジーが使われるようになり、2017年に強化が始まったVPNサービスの取り締まりにより、中国在住の人たちが万里のファイアウオールを回避するのはますます困難になっている。

そうした社会問題と比較すれば、ビデオ共有アプリの将来など比較的小さな問題と思えるかもしれない。しかし、この問題が、過去10年間の米中関係で最も不安な展開を見せていることは間違いない。

2016年のワシントン・ポスト紙の「中国はイノベーションを起こせないと信じたい米国を愕然とさせるテック業界の真実」と題する記事は、この展開を予見していたかのようだ。この記事で執筆者のEmily Rauhala(エミリー・ラウハラ)氏は「中国のテック業界は中国というパラレルワールドで繁栄している」と書いている。TikTokが米国の文化に与えた大きな影響は、2つのパラレルワールドが結合すると何が起こるのかをうかがわせるものとなった。しかし、地政学的な緊張という背景の中、今回のTikTokとWeChatをめぐる騒ぎによって別のことが明らかになった。それは、ニ大大国の市民によるアイデアと情報の相互交換は、彼らが制御できない状況の中でますます制限されるようになっているという事実だ。

関連記事:トランプ政権のTikTok禁止令が予想どおり遅れる

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:中国 WeChat TikTok

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

トランプ政権のTikTok禁止令が予想どおり遅れる

米国の連邦裁判所は、TikTokの禁止措置は米国時間9月28日の月曜日には予定どおり発効しないと発表した。禁止を遅らせる動きは予想されていたもので、裁判所が禁止の合法性とトランプ政権が主張するようにアプリが国家安全保障にリスクをもたらすかどうかを検討する間、米国居住者はアプリの使用を続けられる。

ドナルド・トランプ米大統領が8月初旬に2つの行政命令に署名してから数週間、政府は、北京に本社を置く親会社のByteDance(バイトダンス)がユーザーデータを中国政府に引き渡すのではないかとの懸念から、人気のショートムービーアプリを閉鎖すると脅してきた。一方、米国だけでも1億人のユーザーを持つTikTokは、この主張を長い間否定してきた。

TikTokは9月18日に米政権に対して最初の訴訟を起こし、米国時間9月24日の木曜日には、9月27日の日曜日の夜に発効する禁止を阻止するために、直前の差止命令を提出した。9月25日金曜日、政府は封印された動議で差止命令を却下するよう裁判所に求めたが、政府はその後、いくつかの修正を加えて公開動議として再提出した。差止命令に関する公聴会は9月27日の日曜日朝に開かれた。公聴会は、裁判官のCarl J. Nichols(カールJ.ニコルズ)が主宰するDC地方裁判所で聞かれている。

9月27日日曜日の判決で裁判所は、正式な意見書は「ちょうど2つの反対当事者に非公開で渡された」とその決定だけを明らかにした。政府の動議に含まれる機密事項のため、最終的な意見書が公表される前に、当事者は9月28日月曜日までに修正を求めることができる。

今回の決定は、米国で最も急成長しているソーシャルアプリの将来をめぐる争いが続く中の最新のエピソードに過ぎない。先週末にByteDanceと米国政府の間で合意された取引により、両者の間の膠着状態は解消されたと思われていたが、買い手であるOracle(オラクル)とByteDanceの間で争われていた詳細を巡って、取引がこじれてしまった。

米政権は8月6日に初めてTikTokに対する措置を開始し、トランプ大統領は執行命令で、アプリが米国民にとって不合理な国家安全保障上のリスクをもたらすと主張した。この命令は、同じ日に発表された同様の命令を反映したもので、中国に拠点を置くTencent(テンセント)が所有する人気のメッセンジャーアプリ「WeChat」にも制限を課した。

先週末、サンフランシスコの連邦判事は、商務省のWeChat禁止令を差し止める命令を下した。TikTokは、WeChat訴訟と同様の主張をしており、自身の訴訟でも同様の結果を期待していた。

2つの訴訟の違いの1つは「原告」だ。WeChatの訴訟では、WeChatのユーザーグループがアプリの使用禁止は言論表現を傷つけると主張して訴訟を起こした。TikTokは政府との戦いを自ら代表している。

NurPhoto / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

TikTokは2020年上半期に1億400万本の動画を削除、有害コンテンツ制限で他アプリとの連携を提案

ByteDance(バイトダンス)が運営するTikTok(ティックトック)の所有権の行方(未訳記事)について、テクノロジーとリテールの巨大企業、投資家、政府当局者らの間で協議が進められる中、TikTokは米国時間9月22日に最新の透明性レポートを公表した(TikTokリリース)。今年度上半期には合計1億450万本を超える動画が削除され、ユーザー情報に関する法的要請は1800件近く、著作権で保護されたコンテンツの削除通知は1万600件に上ったという。

TikTokは、同レポートの公表と同時に、他のソーシャルアプリとの連携を視野に入れた、有害コンテンツに対する新たな取り組みを発表した(TikTokリリース)。これはおそらく、不法動画が膨大な数に達していることを相殺するためだろう。さらに、9月22日に開かれた有害コンテンツに関する英議会委員会にTikTokが出席するため、そのタイミングに合わせたと思われる。

透明性レポートの数字は、この人気アプリの影響に関する重要な観点を明確にしている。米政府は安全保障上の懸念からTikTokのサービスを停止することを考えている。ByteDanceが米政治家たちを納得させるような、中国の経営主導でない新たな企業構造を作り出せれば別だが。

しかし現実には、他のソーシャルメディアアプリと同様、TikTokは他にも対策を講じるべき無視できない問題を抱えている。その問題とは、同アプリのプラットフォーム上で公開、共有された多くの違法・有害コンテンツへの対応だ。人気が拡大し続ける中で(現在のユーザー数は世界中で7億人以上)、この問題もまた拡大し続けるだろう。

中国国外での所有権の問題がどう進展するかに関わらず、こういったことは同社にとって継続的な問題となる。TikTokの今後にとって重要な問題の1つは「アルゴリズムに関わるもの、そしてそのアルゴリズムを取引に含めることが可能かどうか、または含まれるのかどうか」ということであり、同社はアルゴリズムの仕組みに関してオープンにしていく姿勢を示そうとしている。同社は今年の初め、米国にTransparency Centerを設置した(未訳記事)。このセンターでは、同社がコンテンツをどのように監視しているか、専門家が確認し、入念に調べることができるという。

TikTokによると、コミュニティガイドラインまたはサービス使用条件に違反したとして、同社が世界中で削除した合計1億454万3719本の動画は、v上にアップロードされた全動画の1%未満だそうだ。この数から同サービスの規模がうかがえる。

削除された動画の数は過去6カ月の間で倍以上に増えている。これは動画の総数が倍増したことを意味する。

同社が公表した前回の透明性レポートによれば、2019年の下半期、ティックトックは4900万本以上の動画を削除している(正確な理由は分からないが、この前回の透明性レポートは公表までにかなりの時間がかかっており、2020年の7月に報告された(TikTokリリース)。削除された動画が全動画に占める比率は、ここ6か月間とだいたい同じ「1%未満」だ。

TikTokは「全体の96.4%は報告前に削除されており、90.3%は誰にも視聴される前に削除された」としている。これらの動画が自動化システムにより発見されたのか、人間のモデレーターによるのか、またはその両方によるのかは明らかにされていないが、少なくとも一部のマーケットではアルゴリズムをベースとしたモデレーションに切り替えられているようだ。

「新型コロナウイルスの世界的な流行の結果、インドやブラジル、パキスタンなどのマーケットで違反コンテンツを検出し自動で削除するために、我々はテクノロジーにさらに依存するようになった」と同社は述べている。

削除された動画が最も多いカテゴリーは成人のヌードや性的行為に関するもので、30.9%を占める。その次に、未成年の安全性に関するものが22.3%、違法行為に関するものが19.6%と続く。その他のカテゴリーには自殺や自傷行為、暴力的なコンテンツ、ヘイトスピーチ、危険な人物などが挙げられる。同社によると、同一の動画が複数のカテゴリーでカウントされる場合もあるという。

削除された動画の投稿元として最も多かったのはTikTokが禁止されたマーケットだ(まあ当然だろう)。削除された動画が最も多かったのは3768万2924本が削除されたインドだった。一方、米国は削除された動画のうち982万2996本(9.4%)を占めており、2番目に多い。

現在のところ、誤情報や虚偽情報を流すことはTikTokが悪用される最大の方法ではないようだが、それでもかなりの数にのぼる。「約4万1820本の動画(米国で削除された動画の0.5%未満)がティックトックの誤情報・虚偽情報ポリシーに違反している」と同社は言う。

およそ32万1786本の動画(米国で削除されたコンテンツの約3.3%)が同社のヘイトスピーチポリシーに違反していた。

TikTokによると法的要請は増えており、今年上半期には42の国や地域からのユーザー情報の要請が1768件あったという。290件(16.4%)は米国の法執行機関からのもので、その中には126件の出頭命令、90件の捜索令状、6件の裁判所命令が含まれていた。また、15の国や地域の行政機関から、コンテンツの制限または削除の要請を合計135件受けた。

ソーシャルメディア間の連携を提案

英国の議会グループである、文化・メディア・スポーツ省内の委員会の前に姿を見せたのと同じ日、ティックトックは透明性レポートの公表とともに、有害コンテンツへ対応するための連携を発表した。

実際のところ、欧州・中東・アフリカにおける公共政策の最高責任者Theo Bertram(テオ・ベルトラム)氏が呼ばれた今回の審問に大きな実効性はないが、これは、英政府がこのアプリの存在と同国における消費者への影響を意識し始めている証拠だ。

TikTokによると、有害コンテンツへ対応するための連携は、米国事業で暫定的なトップを務めるVanessa Pappas(ヴァネッサ・パパス)氏の提案を基にしたもので、他のソーシャルメディアプラットフォームの9人の取締役に書簡が送られたという。送付先の企業名と回答の有無や内容は明らかにされなかった。TechCrunchは取材を続け、詳細がわかり次第、最新情報を伝える予定だ。

一方、vがその全文を公開した書簡(下記に転載)には、ソーシャルメディアは自分たちのプラットフォームの悪用を抑制するために積極的な防止策を講じており、それが功を奏していると考えていることが、明確に示されている。このような取り組みは今回が初めてではない(未訳記事)。複数の企業、それまで顧客獲得で競合した企業同士が、誤情報などに対処するために共同戦線を張って一体となる今回のような試みは今までにいくつもあった。

特に今回の取り組みは、政治色がなく「自殺など著しく暴力的で生々しい映像を早期に特定して通告するための、業界関係者による協調的アプローチ」を提案するものである。パパス氏によって提案された覚書(MOU)はソーシャルメディアプラットフォーム間で情報を交換し、お互いに別のプラットフォームのコンテンツを通告し合うことを勧めている。同一のコンテンツが複数のプラットフォームで共有される場合が非常に多いことを考えると賢いやり方だ。

有害コンテンツへ対応するために連携を図ろうとする同社の取り組みは、ソーシャルメディア企業が主体的に関わろうと努め、責任を尽くそうとする姿を示している例の1つである。これは、自分たちが規制されないよう政府に働きかけるための重要な方策だ。Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)、YouTube(ユーチューブ)、その他の企業が、自分たちのプラットフォームを介して共有されたコンテンツの悪用や改竄を抑制しようと努力しているのにもかかわらず、いまだ苦境に立たされていることを考えると、どのプラットフォームにとっても、今回の連携の取り組みが最終的な解決策になるとは考えにくい。

以下がパパス氏による覚書の全文となる。

最近、ソーシャルコンテンツプラットフォームが再び、際どい自殺コンテンツの投稿とクロスポスト(同じ内容を複数の場所に投稿すること)という問題に直面しています。こういったコンテンツは私たちすべて、そして当社のチーム、ユーザー、コミュニティに影響を与えてきました。

オリジナルのコンテンツおよび改竄されたコンテンツを削除し、可能な限り他のユーザーに閲覧、共有されないよう注意しながら拡散を抑えるため、皆さんと同様、当社も真剣に取り組んできました。一方で、ユーザーと集団的コミュニティーを守るための私たち一人一人の取り組みが、正式な協調的アプローチを通して、自殺などのひどく暴力的で生々しい映像を早期に特定して通告する業界関係者間の取り組みへの大きな後押しになると信じています。

以上のことから、当社は覚書(MOU)の共同策定を提案したいと考えています。これにより、こうしたコンテンツをお互いが素早く通告できるようになるでしょう。

当社は独自に、最近共有された自殺コンテンツに関係する状況を徹底的に分析しています。しかし、プラットフォーム各社がより迅速に対応して、極めて不愉快で暴力的なコンテンツを抑制するには、そのようなコンテンツの早期特定が有効であることは明らかです。

当社は、特定すべきコンテンツのタイプを明確に定義し、迅速に行動し、MOUに基づいて特定したコンテンツをプラットフォーム間で互いに通告することを可能にする取り決めを、協議に基づいて設けるべきだと考えています。さらに当社は、今まで以上に問題に積極的に取り組み、配慮することを可能にする法的な制約が、さまざまな地域に存在していることを評価しています。

そこで当社は、各地域でTrust and Safety(トラスト・アンド・セイフティ)チームの会議を召集して、このような仕組みについてさらに話し合っていきたいと考えています。この仕組みによりユーザーの安全を高めることができるでしょう。

御社からの前向きなご回答を心待ちにするとともに、ユーザーとより幅広いコミュニティーを守るために協働していけることを願っております。

以上、よろしくお願い申し上げます。

ヴァネッサ・パパス
ティックトック責任者

続報をお楽しみに。

関連記事:TikTokがトランプ大統領に抵抗、禁止命令に対して差止めを申し立て

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:TikTok

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

TikTokがトランプ大統領に抵抗、禁止命令に対して差止めを申し立て

TikTokの親会社、ByteDanceとOracleの間で売却契約が成立したと報道されたものの、トランプ政権の禁止命令に対するTikTokの抵抗は続いている。

今日(9月22日)、TikTokは同社のショートビデオプラットフォームの運営を禁止する商務省の命令に対し連邦裁判所に差し止めを申し立てた。この命令は9月20日に執行されるはずだったが、ByteDanceとOracleの交渉を受けて一週間延長された。また Oracle への売却手続きに時間がかかることが考えられるため、さらに数週間延長されることが予想されている。

しかしTikTokは政府の措置に対してさらに強い抵抗を示している。おそらく禁止命令を受けた別のアプリ、WeChatの例を見てのことだろう。WeChatのユーザーグループはサンフランシスコを管轄する連邦地裁に対し商務省の命令を無効であるとする訴訟を起こし、先週、禁止命令に対する差し止めを勝ち取っている。WeChatの場合、原告は親会社の中国企業、Tencentではなくアメリカ市民のグループだった。訴訟記録によれば、TikTokの場合は同社自身がトランプ大統領とアメリカ政府を相手取って9月18日に「命令は無効である」とする訴訟を起こしている。

今回の差し止め申し立てにおいて同社は「安全保障に関連するとするアメリカ政府の常に揺れ動く要求を満足させるべく、われわれは所有者及び運営体制の変更を含めあらゆる努力を重ねてきた。この努力は今後とも続ける」と述べている。

同社は「差止命令が実行された場合の損害は「著しいものがある…大統領選挙を6週間後に控えて…まだわれわれのアプリをダウンロードしていない何億ものアメリカ市民がこの禁止によってコミュニケーションから排除されることになる」としている。TikTokは先週のWeChatの主張に習って「大統領と商務省は現在の法律によって与えられた権限を逸脱して禁止を強行しようとしている」と主張している。

しかしこの法廷闘争は現在混沌を極めるTikTok問題の一部をなすに過ぎない。昨夜、TechCrunchの同僚、Rita Liao記者が報じたように、中国政府はByteDanceによるOracleへの売却を「強迫によるもの」と非難しており、契約そのもののを認めない可能性が出ている。TikTokの将来は不透明さを増している。

画像:Sheldon Cooper/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

原文へ

滑川海彦@Facebook

中国は米国企業へのTikTok買収を認めず、合意に達しない状況を「ゆすり」と呼ぶ

9月20日とされていたTikTokの売却の期限はとっくに過ぎているが、関係者はまだ取引条件で合意に達していない。TikTokの親会社であるByteDanceと買い手であるOracleとWalmartは、アプリの将来的な所有権について相反するメッセージを出しており(未訳記事)、投資家とユーザーを混乱させている。一方、TikTokの売却に対する中国政府の不服は、日増しに明らかになっている。

OracleとWalmartが「いじめとゆすり」でTikTokを効果的に買収することを可能にする「汚い」「不公平」な取引を中国が承認する理由がないと、9月23日に中国共産党の公式英字新聞であるChina Dailyに掲載された社説は激しく非難している。

この社説では、2020年に10億ドル(約1050億円)の収益が見込まれているTikTokの成功に対して「明らかにワシントンが不安を感じている」と主張し、米国が「国のセキュリティを口実にしてこのショートビデオ共有アプリを禁止させたのだ」という。

この公的メッセージに対してByteDanceの受け取り方は複雑だろう。これまで同社は、中国政府と無縁であることを証明しようとしてきた。西側諸国で同社が自由に活動するための前提条件だ。

中国政府はすでに一連の輸出規則を修正して、TikTokの取引を複雑にしてきており、特定のAI技術を外国に売ることを制限している。ByteDanceも中国の国営メディアも、合意に技術移転は含まれない、と述べている。

トランプ政権は、納得できる条件に達しなければTikTokのダウンロードを禁ずるといっているが、現在すでに米国には1億のユーザーがいる。トランプ政権はTencentのWeChatの閉鎖も計画したが、しかしそれはサンフランシスコの地裁がブロックした

市場調査企業のSensor Towerによると、TikTokの米国におけるインストール数は、App StoreとGoogle Playを合わせて1億9800万、米国でのWeChatのインストールは2014年以来2200万近い。TikTokは米国に巨大なユーザーベースがあるが、WeChatを使っているのは主に中国に家族などがいる中国語を話すコミュニティの人びとだ。中国では欧米のチャットアプリが禁じられていることが多いため、WeChatが主流のメッセンジャーだ。

アプリ禁止の締め切りである9月20日の直前に中国の商務省は、TikTokとWeChatに対する「いじめをやめよ」と米国に呼びかけた(China Daily記事)。そして、止めなければ「中国企業の正統な権利と利益を保護するために対抗措置をとる」と通告している。

対抗策といえば、2019年に米国が通信機器大手のHuawei(ファーウェイ)に対する一連の不利益な措置を発表したとき中国は、「市場のルールに従わず」しかも「中国企業の正統な権利と利益を一血ル敷く損なう」外国企業と個人を対象とした「信頼できない企業リスト」を公表する(未訳記事)と明言したが、そのリストはまだ明らかになっていない(Reuters記事)。

関連記事
マイクロソフトもオラクルもTikTokを買収することはないと中国の国家メディアが報道
トランプ政権指示のWeChat配布禁止を米連邦地裁が拒否、現在もダウンロード・利用可能

カテゴリー:ニュース

タグ:TikTok ByteDance WeChat ドナルド・トランプ 中国

原文へ

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

TikTokのファクトチェック、米国でのIPO、中国の所有権、そして5000億円超の税金

さまざまな噂が渦巻く中、TikTokの中国の親会社であるByteDance(バイトダンス)は9月21日の朝に声明を発表(ByteDanceプレスリリース)し、ここ数週間で世界的に注目を集めている現在進行中の取引を明らかにした。

ByteDanceが引き続きオーナー

中国のByteDanceは、「信頼できるテクノロジーパートナー」であるOracle(オラクル)と「商業パートナー」であるWallmart(ウォルマート)にTikTokの株式の20%を売却した後、残りの80%を保持することを明らかにした。

しかし、私の同僚であるJonathan Shieber(ジョナサン・シーバー)氏が主張したように、この取り決めは多くのオブザーバーの懸念の核心に対処するものではない。「この取引は、米国の消費者とTikTokのアルゴリズムや米国内の世論に影響を与えるために使用される方法について、実際にセキュリティ上の懸念を持っている人々以外のすべての人に利益をもたらす」と主張している。

TikTokの取締役会のメンバーはByteDanceの現在のメンバーだが、ByteDanceの創設者であるZhang Yiming(チャン・イーミン)氏以外は中国人ではない。ウォルマートCEOのDoug McMillon(ダグ・マクミロン)氏は、最近の取締役会メンバーに加わった。

TikTokは米国でのIPOを目指す

TikTokは「コーポレートガバナンスと透明性をさらに強化するために」、米国での新規株式公開(IPO)を模索していることを確認した。動画アプリは明らかにIPOを希望しており、これにより多くの世間の目にさらされることになるが、中国が起源であることに起因する国家安全保障上の脅威への懸念を和らげることができるかもしれない。

注目すべきは、ByteDanceが声明の中で動画アプリを「TikTok Global」と表現している点だ。これは、このアプリが米国とそれ以外の地域に分割されることはないことを示している。法廷文書で明らかにされたように、TikTokは世界中で毎月約7億人のユーザーがいると主張している。そしてそのユーザーのうち1億人は、現在の本社がある米国に住んでいる人々だ。

アルゴリズムは転送していない

以前の報道によれば、ByteDanceはTikTokのアルゴリズムや技術をオラクルに引き渡すことはないとの主張していた。代わりに、米国のデータベース大手であるオラクルは「TikTokの米国ソースコード」のセキュリティチェックを実行する権限を得ることになる。

「ソースコードを公開することは、多国籍企業が直面するデータセキュリティの課題に対する普遍的な解決策です」とByteDanceは述べ、今回の決定を中国にあるマイクロソフトのTransparency Center(トランスペアレンシー・センター、製品に関する透明性をアピールする施設)や、Cisco(シスコ)がドイツのボンに設置した同様の施設と同一視しようとしている。

とはいえ、コードの監視とユーザーデータ管理をオラクルを担うことで、TikTokのブラックボックス化されたコンテンツを中国政府がいじる可能性があることに対する懸念がどのように解消されるのかは、まだ明らかになっていない。

50億ドル(約5200億円)の税金

ByteDanceは、TikTokが今後数年の間に、事業で発生した所得税やその他の税金の合計50億ドル(約5200億円)を米国財務省に支払うことになると見積もっている。にもかかわらず、最終的な数字はTikTokの「実際の業績と米国の税制に左右される」と同社は述べ、税金は「現在進行中の取引とは何の関係もない」と強調している。

教育へのコミットメント

TikTokが米国で50億ドル(約5200億円)の教育基金を設立するとの報道に対してByteDanceは、そのような計画は認識していないが「パートナーや株主」と協力してAIやビデオを使ったオンライン授業を設計するなど、一貫して教育に力を注いできたと述べた。

中国ではByteDanceの教育分野への進出が広く報じられている。英語学習プラットフォーム「Gogokid」(ゴーゴーキッド)のような自社製品以外にも、伝統的な高等教育に挑戦するベンチャー出資の教育機関「Minerva」(未訳記事)など、さまざまな外部プレイヤーに投資している。

画像クレジット:Sheldon Cooper/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

米国政府によるテンセント関連企業排除の次期ターゲットはゲーム会社

米国オンラインゲーム業界の大手企業数社が、中国のマルチビリオンダラー企業であるTencent(テンセント)との関係に関する情報提供を求める書簡を米国政府から受け取った。

米国商務省は、同じ中国企業の人気メッセージング・支払いアプリであるWeChatの新規ダウンロードを禁止する動きを見せている一方で、Epic Games(エピックゲームズ)、Riot Games(ライオットゲームズ)をはじめとする米国のゲーム会社に対して、会社のデータセキュリティー方針およびTencentとの関係を尋ねる書簡を送った(Bloomberg記事)。

Bloombergは本件に詳しい筋の情報として「財務省が代表を務める対米外国投資委員会が、これらの企業が米国顧客の個人情報をどのように扱っているかに関する情報を求めている」と報じた。

Tencentは世界最大のゲーム会社であり、ロサンゼルス拠点のRiot Gamesを傘下にもつほか、米国で最も人気のあるバトルロワイヤルゲームであるFortnite(フォートナイト)の開発元のEpic Gamesの株式の40%を保有するなど、複数の米国ゲーム会社に出資している。

この要求は米国政府がTencentに対して米国ゲーム会社の株式を売却させようとする圧力の前兆とも考えられ、中国製ソーシャルメディア・ネットワークTikTokを排除する同様の動きに続くものだ。

TikTok(テックトック)騒動の中心にあるのは、大人気のソーシャルメディア会社がユーザーデータをどのように扱い、そのデータがTikTokの親会社である中国のBytedance(バイトダンス)にどう悪用されれるのかという点だ。そして米国時間9月18日の発表でWilbur Ross(ウィルバー・ロス)商務長官は「TikTokのソーシャルメディアサービスと同じことがTencentのゲーム会社にも当然あてはまる」と強く主張した。

「本日の行動は、我々の国家安全保障を万全に保ち『中国共産党から米国国民を守るためにはどんなことでもする』というトランプ大統領の姿勢を改めて証明するものだ」とロス氏は声明で語った。そして「大統領の指示に従い、中国による米国市民の個人データの不正な収集と戦うと同時に、国家の価値と民主的ルールに基づく規範を推進し、米国の法律と規制を積極的に施行するべく重要な行動を起こした」と続けた。

テクノロジー企業が世界経済産出量におけるシェアを拡大する中、Facebook(フェイスブック)を始めとするソーシャルメディア企業は中国市場への参入を拒否されている。一部には、米国政府によるTikTokの米国資産売却の強要は、米国企業が中国国内市場で経験したのと同じ制約を中国企業に課そうとするものだと見る向きもある。

セキュリティーの懸念は、ネットワーキング・通信テクノロジー開発のHuawei(ファーウェイ)など、中国のさまざまなテクノロジー企業に対する米国の貿易制限の中心になってきた。

同じ議論をゲーム業界に広げることは、トランプ大統領の在任期間中に続いている米中貿易戦争の新たな火種になりかねない。しかしこれは、兵器システムなどを除き、歴史的にテクノロジー分野の大部分で海外競合他社の参入に門戸を開いてきた市場に壁を築こうとする前例のない試みだ。

Tencentの投資先は300社を超えており、前述のようにRiot Gamesは2011年に株式の93%を買収したあと2015年に完全子会社化した。さらに、企業価値170億ドルのゲームテクノロジーデベロッパーであるEpic Games(CNBC記事)や、Call of Dutyなどの開発元、Activision Blizzard(
アクティビジョン・ブリザード)の大株主でもある。

米国内で事業を展開する海外企業の経済活動を制約するトランプ政権によるあらゆる行動が、この国のテクノロジー産業に意図しない影響を与えかねない。

競争の激しいソーシャルメディア分野からTikTokが消えることで、表面上利益を得ると思われる企業の経営トップでさえ米国政府のアプローチを非難している。

米国時間9月18日、Instagram(インスタグラム)CEOのAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏は政府の発表をTwitterで非難(未訳記事)した。米自由人権協会(ACLU)も直ちに発表を非難した。同協会の国家安全保障プロジェクトのディレクターであるHina Shamsi(ヒナ・シャムシ)氏は声明で、「この命令は米国で2つのソーシャルメディアプラットフォーム上で重要な取引を行う人々の米国憲法修正第1条で保証された権利を侵害している」と語った。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ギャング資本主義と米国の中国イノベーションの盗用、これは正しい道なのか

かつて、米国と中国の経済を見分けるのは「簡単」だった。一方は革新的で、他方はクローンを作っていた。一方は自由市場で、他方は政党とその指導者に賄賂を要求(The New York Times紙)していた。一方は世界のトップの頭脳を引き付ける働きをして、才能のある人たちを受け入れた。他方は、あなたを扇動罪で投獄する前に空港のバックルームに連れて行った(それはどちらもだが)。

これまで、このように比較はいつも簡単にできていて詳細がわからなくても少なくとも方向性は正確だった。

しかし今では、爆発するバッテリーを輸出した国は(The Atlantic記事)は量子コンピューティングを開発しているし、インターネットを開拓した国は空から落ちる飛行機を作っている

TikTokの成功にはさまざまな要因があるが、率直に言ってそれを標的にするには米国の恥さらしでしかない。何千人もの起業家と何百人ものベンチャーキャピタルがシリコンバレーやほかの米国のイノベーションハブに群がり、次の素晴らしいソーシャルアプリを探したり、自分たちで作ったりしている。

しかし、ユーザーの成長と投資家のリターンの法則は偶然にも中国・北京の海淀区(かいでんく)にある。中国のローカルアプリ「抖音」(Douyin)やTikTokのような海外アプリを通じたByteDance(バイトダンス)は、過去10年に消費者に多くのものを還元している(今シーズンのIPOがすべてエンタープライズSaaSであるのには理由があるのだ)。

これは国家の産業政策だけには頼れない勝利と言える。半導体やそのほかの資本集約型産業では、中国政府が数十億ドルのインセンティブを提供して開発を促進できるが、ByteDanceはアプリを構築しているだけで、それを世界中のアプリストアで配信している。Apple Developerアカウントを持つすべての開発者が利用できるのとまったく同じツールを使っている。TikTokのような消費者向けアプリを作って普及させようという「Made in China 2025」(米戦略国際問題研究所レポート)の計画はない、というよりも文字どおり消費者向けの成功のための計画は立てられない。むしろTikTokは、何億人もの人が中毒になるような完成度の高い製品を自ら開発したのだ。

中国がGoogle(グーグル)やAmazon(アマゾン)のような海外の競争相手から市場参入障壁を介して業界を守ったように、米国はいま、TikTokのような海外の競争相手から既存の既存企業を守ろうとしている。共産党が何年も前から要求してきたように、ジョイントベンチャーやローカルクラウドデータの主権を要求しているのだ。

さらにトランプ大統領はByteDanceに50億ドル(約5227億円)の納税を要求(Bloomberg記事)しているようで、若者の愛国教育に資金を提供すると表明している。もちろん大統領はいろいろと注文を付けているが、少なくとも50億ドルの価格は、Oracle(オラクル)のプレスリリースで確認されている(税収が実際に何に使われるのかは推測だが)。最近の香港の抗議行動を(Reuters記事)を長く追っていると、愛国的な若者の教育が2012年のデモのきっかけになったことを覚えているだろう。巡り巡ってくるものは巡り巡ってくると私は思う。

開発経済学者は「キャッチアップ」戦略、つまり中間所得層の問題を後回しにして、欧米との格差を縮めるために各国が選択できる戦術について話すのが好きだ。しかし、いま私たちが必要としているのは、米国の「遅れを取り戻す」戦略を説明してくれる先進国の経済学者だ。なぜなら、私たちはほとんどすべての面で遅れをとっている。

TikTokのここ最近の動向とそれ以前のHuawei(ファーウェイ)の問題が示すように、米国はもはや多くの重要な戦略市場においてテクノロジーの最先端を走っていない。中国本土の企業は、5Gやソーシャルネットワークなど多様な分野で世界的に勝利を収めているが、政府の直接の介入がなければ米国やヨーロッパのハイテク企業はこれらの市場を完全に失っていただろう。たとえ介入があったとしても、まだ失う可能性がある。台湾では、TSMCがIntel(インテル)をすで抜き去り、最先端の半導体製造で1、2年のリードを奪っている。

つまり、最近では中国の歴史や神話を盗み出してまともな映画にすることすらできないのだ。そして、後れを取る戦略は続いている。米国のイノベーションの最大の源泉を破壊しようとしている政権からの移民規制は、新型コロナウイルスの感染蔓延と相まって、留学生の移住者数は米国史上最大の減少につながっている(Axios記事)。

なぜそれが重要なのか?比較的最近のデータによると、米国では電気工学の大学院生の81%が外国人留学生であり、コンピュータサイエンスでは79%が外国人留学生であり、ほとんどの工学・技術分野では、その数は過半数を超えている(Inside Higher Ed記事)。

このような留学生がずっと家にいてくれれば「米国人もなんとか最先端の枠に入るれるだろう」という幻想を信じるのは素晴らしいが、実際のところはどうなのだろうか?イチゴ狩りや給食サービスの労働者に当てはまることは、電気工学を学ぶの大学院生にも当てはまるのだ。しかし、いわゆる 「米国人」 はこうした仕事を望んでいない。これらは大変な仕事であり、報酬面では実入りの少ない仕事であり、米国の労働者や学生が一般的に持っていない粘り強さを必要とする。これらの産業では大量の外国人労働者が従事しているが、それはまさに国内の誰も外国人労働者の役割を引き受けたがらないからだ。

才能があればあるほど、イノベーションも生まれてくる。このような頭脳の源泉が米国のトップ・イノベーション・ハブに宿ることなく、それがどこに行くのだろうと考えているのだろうか。かつて、スタンフォードやマサチューセッツ工科大学(MIT)のコンピュータ・サイエンティストになりたいと思っていた人は、窓際に座って地平線を眺めながら日が沈むのを待っていたわけでないのだ。まして、いまはインターネットの時代であり、彼らはどこにいても、どんなツールやリソースを使ってでも、夢に向かって出発できる環境が整っている。

シードアクセラレーターであるY Combinatorが主催するプログラムの最近の参加者を見ていると、将来の偉大なスタートアップ企業となりそうなグループ、ますます米本土以外の地域からやってくるようになってきていることがわかる。何十人もの賢くて優秀な起業家たちは、米国への移住を考えているわけではなく、むしろ自国の市場が自慢の大国よりも技術革新や技術進歩に対してオープンであることを正しく認識している。フロンティアは米国で閉ざされ、他の場所に移ってしまったのだ。

では、米国、そしてヨーロッパにはいったい何が残っているのだろうか?柔軟性に欠ける企業のトップが、世界最高の技術との競争を避けるために外部の技術革新をブロックするという視野の狭い政策が、経済的な災いのレシピではないのなら、私はそれが何なのか分からない。

しかし、少なくとも米国の若者は愛国心を持っているはずだ。

画像クレジット:Thomas Peter – Pool  / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

トランプ政権指示のWeChat配布禁止を米連邦地裁が拒否、現在もダウンロード・利用可能

数日前、米国商務省は8月にトランプ大統領が署名した執行命令を受けて、米国のユーザーによるTikTokとWeChatのダウンロードを中止することを目的とした、一連の規則を発表した。TikTokは米国時間8月19日、Oracle(オラクル)やWallmart(ウォルマート)との投資・クラウドサービス契約に署名したことで、ダウンロード禁止の実施を少なくとも1週間遅らせたことで、ギリギリのところで猶予を得た。しかし、WeChatは事実上、本日(米国時間8月20日)に、ダウンロードといくつかのサービスの禁止が実行されることになっていた。

いま、中国語圏のコミュニティで広く使われ、中国に拠点を置くTencent(テンセント)が所有するソーシャルアプリの将来をめぐる戦いに新たなしわ寄せが来ている。サンフランシスコの連邦地裁判事は、禁止が米市民の自由な言論権を損なっていると主張するWeChatユーザーの訴訟を受け、全国的な禁止を一時的に停止した。その裁判である「U.S. WeChat Users Alliance v. Trump」は進行を許可されることになる。

米国時間9月19日に発表された短い意見書の中で、米国のLaurel Beeler(ローレル・ビーラー)判事は、政府の訴えは修正第1条の根拠に弱点があること、政府が産業をコントロールするために既存の法律の中で行動する権限があること、禁止が米国の中国語圏コミュニティに与えるであろう損害と比較して全体的にあいまいであることを主張した。

ビーラー判事の見解は以下のとおり。

確かに政府の包括的な国家安全保障上の利益は重要である。しかし、この記録では、政府は中国の活動が国家安全保障上の重大な懸念を引き起こしていることを立証しているが、米国のすべてのユーザーに対するWeChatの効果的な禁止がこれらの懸念に対応しているという証拠はほとんど示されていない。また、原告が指摘しているように、オーストラリアが行ったように政府のデバイスからWeChatを禁止したり、データセキュリティに対処するために他の手段を講じたりするなど、完全な禁止に代わる明白な選択肢がある。

訴訟手続きの可能性と禁止が実施された場合の即時の損害を考慮して、裁判官は商務省のアプリ禁止命令の実施に対する全国的な差止命令を開始した。

商務省はこの展開に対応する機会を得ることになるが、命令を編集するか、裁判所を通じて他の手段を追求するか、あるいは命令を完全に取り消すことを選択するかどうかは、近日中に判明することになるでしょう。

画像クレジット:Drew Angerer / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

オラクルとウォルマートのTikTok事業買収をトランプ大統領が容認、TikTok Globalとして米証券取引所上場へ

「まあ、それは無意味だった」。

セキュリティ上の懸念という見当違いの名目で、米国の自由貿易の概念を低下させ、数十億ドル規模の企業数社を引き連ね、裸の欲のために恥をかかせ、米国政府に利益の一部を要求した後、ここ数週間見てきたTikTokの物語はついに終わったようだ。

米国時間9月19日の夜遅くに発表された一連の発表によると、TikTokの取引は、実際には米国大統領の主要な支持者のクラウドインフラ事業をあと押しするための政治的に有利な取引であったことが示されている。

クラウドインフラサービスにおけるOracle(オラクル)は、AWS、Alphabet(アファベット)、マイクロソフトに次ぐ業界4位だが、上位3社に比べると規模は小さい。そのオラクルが、新会社名「TikTok Global」として米国の証券取引所に上場する前の投資ラウンドで、パートナーの米小売大手Wallmart(ウォルマート)とともにTikTokに20%の株式を取得することになるだろう。

TikTokの声明によると「オラクルはTikTokの「信頼できるテクノロジーパートナー」となり、米国のすべてのユーザーデータのホスティングと、米国の国家安全保障要件が完全に満たされるように関連するコンピュータシステムの安全性を確保する責任を負うことになります」とのこと。「TikTokは現在、商業的なパートナーシップについてもウォルマートと協力している」と続けた。

一方オラクルは、米政府、米国財務省、議会からのTikTokに対する懸念はすべて、同サービスがクラウドプロバイダーとしてオラクルを選択したこととは無関係であることを示した。オラクルは声明の中で「TikTokによるこの技術的な決定は、ビデオ会議サービスのZoomが最近、ビデオ会議の容量の大部分をOracle Public Cloudに移行したことに大きく影響された」と述べている。

CNBCのAlex Sherman(アレックス・シャーマン)記者は所有権構造の内訳を次のようにツイートしている。

TikTok Globalの所有権の件について詳しい人によると、オラクルが12.5%、ウォルマートが7.5%、TikTokの親会社であるByteDanceが残りの80%を取得する。しかし、ByteDanceの所有権の40%は米国のベンチャーキャピタルからの資金調達で、トランプ政権はこの取引を「大多数の米国ドル」として計算している(これらの数字は、もちろんポストIPOの周りに移動する可能性がある)

この取引は、米国の消費者とTikTokのアルゴリズムや米国内の意見に影響を与えるために使用される方法について、実際にセキュリティ上の懸念を持っている人々以外のすべての人に利益をもたらします。

ByteDanceは米国企業の所有権を維持し、オラクルは不振に陥っているビジネスを後押しするために巨大なクラウド顧客を獲得。ウォルマートは物を売るために十代の若者にアクセスできるようになり、米国の顧客データは安全ではなくなった。結局のところ、今は外国人ではなく米国の捕食者の手に渡っているだけだ

もちろん、データのプライバシーとセキュリティは大きな懸念事項だが、TikTokに関しては必ずしもそうではない。さらに、中国政府はすでに米国の顧客に関するあらゆるデータを入手している可能性が高い。

多くのオブザーバーにとってTikTokの本当の懸念は、同社の中国の所有者が、コンテンツの宣伝や抑制のためにアルゴリズムを操作するように中国政府から圧力をかけられる可能性があるということだ。インターネット大手を含む中国の企業は、中国の諜報・クラウドセキュリティ法に従うことが義務付けられており、データに関するすべての政府の命令を完全に遵守しなければならない。

商務省は声明の中で「最近の前向きな動きを踏まえ、Wilbur Ross(ウィルバー・ロス)商務長官はトランプ大統領の指示により、2020年9月20日に発効していたTikTokモバイルアプリケーションに関連した行政命令13942に基づく特定取引の禁止を、2020年9月27日午後11時59分まで延期する」と述べている。つまり、1週間の猶予が与えられたわけだ。

オラクルの共同最高経営責任者(CEO)を務めるSafra Catz(サフラ・キャッツ)氏(画像クレジット:Albin Lohr-Jones/Pool via Bloombergx / Getty Images)

この騒動は何のために起こされたものなのか?これらの悪ふざけの中で最高の投資収益を得るのは、ほぼ間違いなくオラクルの共同最高経営責任者(CEO)を務めるSafra Catz(サフラ・キャッツ)氏のトランプ氏への投資だ。キャッツ氏はトランプ政権への多額の寄付者であるだけでなく、2016年には政権移行委員会にも加わった。ありがたいことに、米国がTikTokを中国のクローン資本主義から救ってくれたことには感謝しよう。そして彼がワシントンDCのクローン資本主義を享受していることを願うばかりだ。

画像クレジット:Albin Lohr-Jones/Pool via Bloombergx / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

トランプ大統領がTikTokめぐるOracle提案の「コンセプト」を承認

ドナルド・トランプ大統領は、人気のショートムービーアプリTikTok(ティクトック)の米国事業に関するOracle(オラクル)案の「コンセプト」を承認した(Bloomberg記事)。

報道によると、トランプ大統領は9月19日、ノースカロライナでの選挙集会に向けてホワイトハウスを出発する際、「このディールを承認した」と語った。「コンセプトとしてこのディールを承認した」と話したとされている。

親会社Bytedance(バイトダンス)からのTikTok米国事業のスピンアウトは、TikTokのデータの取り扱いポリシー、そして米国での人気が国家安全保障上の脅威となっているという理由でトランプ政権が要求したものだ。

TikTokと中国を切り離そうというトランプ大統領の動きは、TikTokユーザーのいたずらによって大成功となるはずだったオクラホマシティでの選挙集会が失敗し、選挙対策責任者だったBrad Parscale(ブラッド・パースケール)氏が解任される事態を招いた。

米国は安全上の脅威となるいくつかの中国テクノロジー企業のオペレーションの縮小を模索してきた。実際、TikTokのスピンアウトを要求した大統領令には、メッセージサービスWeChat(ウィーチャット)の米国事業の停止も含まれた。WeChatは中国最大のテクノロジー企業の1つであるTencent(テンセント)が所有している。そして米政府は通信・ネットワークテクノロジー開発のHuawei(ファーウェイ)もターゲットにしてきた。

財務長官Steven Mnuchin(スティーブン・ムニューシン)氏が今週初めに出した声明によると、TikTokのディールが承認されれば、その一環としてTikTok Globalという新会社が設立される。

新会社はテキサスに置かれ、最大2万5000人を雇用して50億ドル(約5230億円)を米国の教育に提供するとトランプ大統領が語った、とBloombergは報じた。

TikTokの米国事業の大半はいまロサンゼルスで展開されている。

トランプ政権は中国テック企業の米国オペレーションのディスラプトを引き続き進めていて、意を同一にする不可思議な仲間たちがTikTokのディールに反対するために団結している。

米国自由人権協会(ACLU)とFacebook(フェイスブック)傘下のInstagram(インスタグラム)の責任者は9月18日、TikTokとWeChatの禁止に反対する声明を出した。

「この命令は、2つのソーシャルメディアプラットフォーム上でコミュニケーションを取ったり重要な処理を行ったりする能力を制限することで憲法修正第1条に違反している」とACLUの国家安全保障プロジェクトのディレクターHina Shamsi(ヒナ・シャムシ)氏は声明で述べた。

米国テック企業の所有を通じた中国の影響に対する包囲網は、Tencentが支援する米国ゲーム業界トップ企業の多くにも及んでいるとのことだ。

こうした動きは米国のテック企業にとってかなりの悪影響を及ぼすかもしれないとInstgramの責任者Adam Mosseri(アダム・モセリ)氏は9月18日のツイートの中で指摘した。

「米国によるTikTok禁止は、より断片化された国家インターネットの方向に進む大きなステップになりえる。これは国境を越えて事業を展開することで恩恵を受けてきた米国のテック企業にとって悪いことだ」とモセリ氏は書いた。

画像クレジット: Alex Wong / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

WeChatとTikTokのダウンロードが9月20日から不可に、米商務省が発表

米商務省は、TikTok(ティクトック)とWeChat(ウィチャット)の利用禁止に関する詳細を発表した(米商務省プレスリリース)。国家安全保障上の懸念によるこの措置については9月20日までに実施するとの方針を8月に示していた。今回の詳細では、9月20日と11月12日がカギとなる。両アプリ、そしてそのアップデートも9月20日から米国のアプリストアで利用できなくなる。しかしTikTokは11月12日までオペレーションを展開できる。これは11月3日の米大統領選挙以降も利用できるようにするだけでなく、サービス提供を中断することなくOracle(オラクル)やその他のパートナーがTikTokの米国事業を引き継ぐという複雑な交渉を完了させるのに時間を与えることにもなる。

そうしたタイミング、加えて商務省長官Wilbur Ross(ウィルバー・ロス)氏の声明は、この件に関する政治的な意図を如実に表している。

「今回の措置は、トランプ大統領が国家の安全を保障し、米国民を中国共産党の脅威から守るためにあらゆる手段を尽くすことを示している」とロス氏は声明で述べた。「大統領の指示のもと、我々の価値、民主的なルールに基づく規範、米国の法律や規則による積極的な取り締まりを推進する一方で、中国の悪意ある米国市民の個人情報データ収集と戦うために重要な行動を取った」

最初の行動として、Tencent(テンセント)が所有するWeChatと、ByteDance(バイトダンス)が所有するTikTokは9月20日からアプリの配布を停止しなければならない。言い換えると、同日から両アプリはダウンロード全面禁止で、アップデートも不可となる。また「米国内での資金の移動や決済処理を目的とするWeChatモバイルアプリを通じたサービスのいかなる提供」、つまり決済も禁止する。

9月20日以降、WeChatはまた「機能や最適化を可能にするインターネットで展開するサービスの提供」、コンテンツ配信やインターネットトランジット、ピアリングの提供、構成コード、ファンクション、アプリのサービスの提供も禁止され、つまり全面禁止となるようだ。

注意を引くのが、TikTokはオペレーション面で同じような禁止措置を受けないことだ。つまり9月20日までにダウンロードされたTikTokはまだ当分使える。

日付はいくつかの理由で重要だ。まず、大統領選後もしばらくTikTokを利用できる状態にしている。トランプ大統領はこの人気アプリを禁止すると多くの人が言っていた。しかしそうすることで若い有権者の票を失うことになるかもしれない。実際そうなるかはわからないが、再選へ向けた問題となっていたようだ。

2つめに、TikTokのオペレーションを引き継ぐために交渉しているOracleやWalmart(ウォルマート)、その他の企業によるコンソーシアムがサービス提供を中断することなく交渉を完了させられるよう、猶予を与えた。TikTokは米国にユーザー約1億人を抱え、欧州にも同規模のユーザーがいる。

交渉を巡るニュースは日々変化している。完全買収と報じられたかと思えば、OracleはTikTokのデータを管理するがソースコードは含まれないという話になり、はたまた中国と米国の承認を得るためにソースコードもライセンス提供するという話になったりしている。最新のニュースには、上場して新CEOにInstagram(インスタグラム)共同創業者Kevin Systrom(ケビン・シストロム)氏を据えるというアイデアもあった。

皮肉なことに、この最新の動きについて率直に意見を言うテック業界リーダーの1人が、現在のInstagramの責任者Adam Mosseri(アダム・モセリ)氏だ。同氏は他のテック企業にも影響を与える含意について自身の考えをツイートしていた。

アダム・モセリ:この見出しには注意してください、禁止はTikTokの「新規ダウンロード」だけです。

前にも言いましたが、米国のTikTok禁止は、Instagram、Facebook、そしてより広くインターネットにとってかなり悪いことになります。

(もちろん我々はこのところ、アプリと国境を越えて事業展開するための自由をめぐるしっぺ返し戦争の最中にいる。ファイアウォールを備えた多くの国は、国家安全を脅かしていると感じた場合に他国のアプリを禁止することはまったく誤ったことではないとしてきた)。

米商務省の決定はトランプ大統領が8月6日に署名した大統領令に沿ったものだ。大統領令では、国家安全に関する懸念を理由にTikTokとWeChatへのアクセスを阻止する政府の意向をByteDanceとTencentに通達した。

大統領令は、署名されるまでの数週間にわたってTikTok禁止を回避するために展開されていた交渉を促した。協議はまだ続いていて結論は出ていない。米国9月18日現在、Oracle、そしておそらくWalmartもホワイトハウス、財務省、そしてByteDanceと大統領に受け入れられる取引となるよう協議を続けている。中国にもまたTikTok売却を承認する部門がある。

ここ数週間、トランプ政権はアプリや米国のテクノロジーを支えるクラウドインフラにおける海外干渉を排除するための「クリーンネットワーク」という政策を推進してきた。この政策には、特定のアプリの排除、米国ユーザーデータ主権の米国への移管、「クリーン」な設備で構築されたモバイルネットワークインフラ、米国民にとって「クリーン」なコンピューティング環境を整備するためのその他の方策が含まれている。そうした政策は一般的に書かれているが、政権高官の発言からするに明らかに中国をターゲットとしている。

TikTokとWeChatだけが突然排除されることになったアプリではない。インドでは同国で最も人気の決済アプリの1つPaytm(ペイティーエム)が「度重なるポリシー違反」を理由にGoogle Play Storeから排除された。Paytmは何千万もの月間ユーザーを抱える。そして6月下旬にインドは、TikTokを含む中国企業が開発した59のアプリを禁止すると発表した。

テックがグローバル経済の大きな部分を占めるようになり、また国家利益の競合と相まって、テクノロジーの未来をめぐるそうした国家間の戦いは抜き差しならない状態になりつつある。

画像クレジット:Costfoto / Barcroft Media / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

YouTubeがTikTok似のショートビデオ機能「YouTube Shorts」を搭載、まずはインドで提供

TikTok(ティクトック)の米国事業の運命がまだはっきりしない中、YouTube(ユーチューブ)は米国時間9月14日、「YouTube Shorts」というショートビデオの新機能を発表した(YouTubeブログ投稿)。まずインドで展開されるこの機能では、TikTok似のマルチセグメントカメラ、スピードコントロール、タイマー、カウントダウン機能など、新しいクリエイターツールを使って最長15秒の短いビデオをアップロードできる。YouTubeでは、同社が今後も増えるという膨大な音楽ライブラリーにアクセスできるため、ビデオに音楽を取り込むこともできる。

マルチセグメントカメラでは、ユーザーは複数のビデオクリップをつなげて1つのショートクリップにすることができる。スピードコントロールではYouTuberは単に「撮影」のボタンを押すよりもクリエイティブなものを制作できる。

これらのツールはその日の出来事を撮影するTikTokの動画「ではよく使われているもので、 Instagram(インスタグラム)がつい最近TikTok対抗サービスとして立ち上げたReels(リール)でも見られるものだ。

YouTube ShortsはAndroid(アンドロイド)のYouTubeアプリ内で利用でき、今後iOSにも拡大する。

画像クレジット:YouTube

YouTubeは、中国企業が所有するTikTokがすでに禁止されているかなり大きなマーケットのインドでまずYouTube Shortsを提供する。しかし早晩、他のマーケットでも展開する計画だ。ただし、それがいつになるのかYouTubeはタイムラインを示さなかった。

YouTube Shortsの提供にともない、YouTubeはYouTube Shortsを縦置き状態でスワイプできる新たな鑑賞方法も導入する。こちらもTikTokで提供されているのと同様のものだ。YouTubeはすでにショートビデオを閲覧するためのページに手を加えて新たな鑑賞方法でコンテンツを見やすくし、またショートビデオを探しやすくもしている、と話す。

今夏、YouTubeはショートビデオ機能のテストを開始する計画を発表していた(未訳記事)が、詳細については明らかにしておらず、機能の名称すら伏せられていた。当時、YouTubeはiOSとAndroidでの15秒のビデオ撮影がテストに含まれるが、かなり限定されたクリエイターが対象だと話していた。

同社はTechCrunchに、まだ初期段階のこの実験はShortsの一部であると言明している。そしてマルチセグメントカメラをグローバルで実験してきた。しかし本日の発表で新たにわかったのは、音楽やスピードコントロール、タイマー、カウントダウンを使って撮影できるということだ。

加えて、YouTube ShortsはT-Series、Believe Digitalといったパートナーからの数十万もの楽曲を扱っている。YouTube Shortsのカタログのコンテンツを充実させるべく、YouTubeはアーティストやレーベル、出版会社とも協業している。

画像クレジット:YouTube

YouTube Shortsの大規模展開のニュースは、TikTokの米国事業のM&A期限が迫る中でのものだ。Microsoft(マイクロソフト)は、買収者とはならないと発表し、報道ではOracleが有望視されているとのことだが、完全売却ではない。

TikTokが撤退する可能性があることを受け、多くのライバルソーシャルメディアプラットフォームでTikTokユーザーを取り込もうとする動きがすでにみられる。Instagram、Snapchat(スナップチャット)、そしてYouTubeも、TikTokが不安定な状態であることに乗じて自前のショートビデオプロダクトを立ち上げた。TikTokと直接競合するTriller(トリラー)、Dubsmash(ダブズマッシュ)、Byte(バイト)といったサービスも新規の顧客を獲得している。

YouTubeは、数日中に新機能がインドで使えるようになると話している。今後アクセスを拡大し、プロダクトを改善するという目標に向け、YouTube Shortsをテストと位置付けている。

もしYouTube Shortsにアクセスできる人は、「+(プラス)」のアイコン(間もなく展開されるiOSアプリではカメラのアイコンになる)をタップして「video(ビデオ)」を選ぶとビデオ撮影を開始できる。オプションのところに「create a short video(ショートビデオをクリエイトする)」があればアプリ内にShortsカメラがあることになる。しかしインドのAndroidユーザー向けには、「create(クリエイト)」のアイコンは簡単にアクセスできるようナビゲーションバーの下にきているとのことだ。

まだこの機能が利用できない人は、撮影した短いビデオ(60秒以下)のタイトルやキャプションで#Shortsをタグ付けすることでShortsに近い体験ができる。他の縦位置ショートビデオとともに、こうした機能は新しいYouTubeホームページでテストできる。

カテゴリー:ネットサービス

タグ:YouTube TikTok

画像クレジット:Olly Curtis/Future / Getty Images

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

米国事業売却期限が迫るなかTikTokが欧州での月間アクティブユーザー1億人達成と発表

TikTok(ティクトック)は米国事業を売却するかもしれないし、しないかもしれない。中国企業の所有という形態が変わらなければ、米政府は国家安全保障の懸念から米国時間9月20日にTikTokを禁止するとしている。しかし米国の思い通りにいかないのは、TikTokは雑草のように他のマーケットでまだ成長を続けているということだ。同社は米国時間9月14日、欧州での月間アクティブユーザー数が1億人に達したと発表した(TikTokリリース)。同社は欧州では英国、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、スペインでサービスを展開している。

「欧州がTikTokを受け入れてくれたことを光栄に思う」と同社の欧州責任者、Rich Waterworth(リッチ・ウォーターウォース)氏は9月14日のブログ投稿で述べた。同氏はまた、2020年9月初めに立ち上げた「Creator Fund for Europe(欧州のためのクリエイター基金)」に対象となるクリエイターの40%超から申し込みがあったことも明らかにした。同基金は、今後3年間にわたってTikTok向けにビデオコンテンツを制作して収入を得ようとしているプロの「クリエイター」に2億5000万ユーロ(約310億円)を拠出することを約束している。

なかでも注意を引くのは、TikTokの米国におけるユーザーが1億人を達成して1カ月もしないうちに(TikTokリリース)今回のニュースを発表していることだ。

もちろん別の意味でもこのニュースのタイミングは興味深い。

TikTokを所有するByteDance(バイトダンス)にとって欧州での大規模展開はこれまで以上に重要な意味を持つようになっている。最も大きな2つのマーケットにおける将来見通しの平衡を取るという点においては特にそうだ。ByteDanceが厳しい状況に直面しているのは米国でだけではなく、同社にとって2番目に大きなマーケットであるインドでも厳しい逆風にあっている。TikTokはインドで禁止され、苦境から脱するための見込みのある買い手や擁護者は現在のところいないようだ。

米国では目下、3つのオプションがあるようだ。「米政府によって禁止される」か、「TikTokが事業のすべてあるいは一部を他社に売却して今後の収益を放棄する、もしくはこのバイラルビデオマシーンに米国のクリエイターや視聴者を使うのを放棄する」。あるいは「ByteDanceがトランプ政権を相手取って訴訟を起こし、これまで通りまたは多少の修正を加えて事業を継続する」かだ。

この3つの選択肢はそれぞれに痛みをともない、欧州事業の成長やポテンシャルを際立たせることになる。

TikTokはこうした状況にも関わらず「これまで通りの事業」のアプローチを取ってきた。過去数週間、同社は米国や他のマーケットの消費者やマーケッター向けに多くの新機能(未訳記事)を追加した。

ここには、ブランド販促のためにTikTokを利用する広告主の幅や数を広げるためのマーケティングツール拡大も含まれている。ユーザーが他のビデオからコンテンツのサンプルを作り、TikTokのユーザーに「紹介」したりシェアしたりするのに使うStitchのような新機能は、より多くの投稿やバイラルな動画の制作を促す新しい手法だ。

数字もどうなるのか気になるところだ。米国マーケットからのインプットなしにTikTokはどうなるのだろうか。

これまでのところ、米国におけるTikTok人気上昇はTikTokのグローバルでの人気に大きく貢献しているといっていいだろう。TikTokは多数の視聴者を作り出しただけでなく、トップスターたちも生み出した。参考までにFacebook(フェイスブック)や他のソーシャルアプリと比較すると、米国はTikTokにとって広告の数や売上高において最大のマーケットでもある。

それでも、欧州において月間アクティブユーザー数1億人というマイルストーンが達成されたのは注目に値する。この記事執筆前の24時間の間に、さまざまな報道が飛び交った。可能性のある買い手としてOracle(オラクル)が有力という報道があり、中国政府が売却せずに潰すのではないかという別の報道もあった。

米国のユーザー数の発表とかなり近いタイミング(3週間も離れていない)で、欧州のユーザー数も米国と同じ1億人と発表したことは、米国マーケットに結局別れを告げるByteDance流のあいさつなのかもしれない。

関連記事:
TikTok買収はマイクロソフトを押しのけオラクル勝利との報道
マイクロソフトもオラクルもTikTokを買収することはないと中国の国家メディアが報道

カテゴリー:ネットサービス

タグ:TikTok ByteDance SNS

画像クレジット:Lionel Bonaventure / Getty Images

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

マイクロソフトもオラクルもTikTokを買収することはないと中国の国家メディアが報道

週の頭の朝から大騒ぎだ。Microsoft(マイクロソフト)がTikTokの米国事業の買収交渉から降りたという ニュースが出され、Oracle(オラクル)が勝者になるという噂が駆け巡り始めた直後に、中国の国営放送CGTNが、ByteDanceは米国のTikTok事業を、マイクロソフトもしくはオラクルのどちらにも売却しないと情報源を示しつつ報道した(CGTNサイト)。

世界で最も企業価値のあるByteDanceは、TikTokを全世界で普及させた重要技術である「ショートビデオのレコメンデーションアルゴリズム」を開発したことで評価されている。情報源がCGTNに語ったところによれば、ByteDanceはそのソースコードを米国の買い手には一切渡さないだろうということだ。情報源の1つはSouth China Morning Post(南華早報)に対して、ByteDanceは人気のTikTokを支えるソースを販売も譲渡もしないことを決定したと伝えていた(South China Morning Post記事)。

ByteDanceはこれらの噂についてはコメントしないと語っている。

TikTokの運命の時は刻一刻と迫っている。中国政府は当初、ByteDanceと米国政府との交渉に表向きは参加していなかったが、ByteDanceが「8月6日から45日以内(ホワイトハウスサイト)すなわち9月20日までに米国内で買収相手を見つけられなかった場合には、そのサービスを停止せよ」と米国政府が脅した期日が迫るにつれて、その態度も変化したようにみえる。

第1に、中国政府は輸出規則を改正したが、それはByteDanceの人工知能技術の譲渡または販売を阻止する可能性がある。そして、オラクルとの取引が確定したという噂を否定する国家の報告書が存在している。

ロイターの記事によれば、TikTokの米国資産の取得金額は500億ドル(約5兆3000億円)にもなると噂されている。

ByteDanceが注目を集めるようになったのは、ビデオ、ミーム、ニュース記事などのコンテンツなどを提供する同社のアプリが利用するアルゴリズムと密接に関係している。機械学習は、人間によるキュレーションの必要性をなくし、ByteDanceサービスにおいてはソーシャルや興味のグラフさえも不要だ。ユーザーがより多くのコンテンツを消費すればするほど、アプリはユーザーの興味をより正確に予測できるようになる。データ主導のプロセスはすでに文化の違いを超越しており、おそらくこのプロセスがTikTokが中国で初めて西洋を征服したコンシューマー向けアプリとなった理由だろう。

画像クレジット: NOEL CELIS/AFP / Getty Images
原文へ

(翻訳:sako)