新型コロナに対抗する投資家たち、ポルトガル投資家にインタビュー(前編)

私は約4年前、リスボンのテクノロジー情勢について深く掘り下げた。今回、リスボンとポルトガルの現在の状況をもう一度、簡単に見てみよう。

Indico Capital Partners(インディコ・キャピタル・パートナーズ)の創業者兼マネージングゼネラルパートナーであるStephan Morais(ステファン・モライス)氏が明確に説明したように、ポルトガルは競争力のあるコストで非常に質の高いエンジニアリング人材を提供し、英語力のレベルがたいへん高く(スペイン、フランス、イタリアと比較して)、そして製品を最初からグローバルにリリースすることを好む。ポルトガルの創業者たちは非常に有能であり、その大半が修士号以上の学位を取得している。

ただし、ポルトガルのテック業界のエコシステムはまだ「初期段階」にある。エンジェル投資家を獲得した創業者はほとんどおらず、最近までイグジットの成功事例がわずかな数しかなく、営業やマーケティングの分野で利用できる人材も限られている。とはいえ、以下に示すように、まだまだかなりの成長が見込まれており、新型コロナウイルス感染症の時代にリスボン、そしてポルトガル全体は、才能あるデジタルノマドたちを惹きつける場所へと変化を遂げつつある。

Startup Portugal Ecosystem(スタートアップ・ポルトガル・エコシステム)のレポートによると、ポルトガルには大規模な一般消費者市場がないため、同国のスタートアップ企業は消費者向けアプリケーションよりもエンタープライズやSaaSの方に偏る傾向がある。国内の資金源と海外の資金源の格差は縮まりつつあるが、アーリーステージ向けの資金調達にはまだ格差がある。政府の統計によると、2019年は投資額が2億8500万ユーロ(約359億円)で、レイターステージ企業の上位25社が調達したのは合計1億1780万ユーロ(約148億3500万円)だった。

国内のベンチャーキャピタル(VC)には、Portugal Ventures(ポルトガル・ベンチャーズ)、Indico Capital(インディコ・キャピタル)、Faber Ventures(ファーベル・ベンチャーズ)、Armilar Venture Partners(アーミラリー・ベンチャー・パートナーズ)、Bynd Capital(バインド・キャピタル)、Semapa Next(セマパ・ネクスト)、Bright Pixel(ブライト・ピクセル)、EDP Ventures(EDPベンチャーズ)、Shilling Capital Partners(シリング・キャピタル・パートナーズ)が含まれる。Mustard Seed(マスタード・シード)はVCだが、インパクトファンドとして設立され、テクノロジーを利用して国内の社会的・環境的課題に取り組んでいるスタートアップ企業にのみ投資している。

ポルトガルにはいくつかの変化が起こっている。とりわけ、ブレグジットにより多くのイギリス難民がポルトガルに移住してきていることが挙げられる(ヨーロッパの他のあちこちにも移住しているが、リスボンにはビーチとスタートアップに優しい税制がある)。非EU加盟国出身の居住者はゴールデンビザ、テック起業家はスタートアップビザを取得できる。一方、ポルトガルのスタートアップ企業は海外からの資金調達を始めており、ポルトガルという自国の型にとらわれず、外に飛び出している。

国内のVCの投資額は2016年から2018年にかけて大幅に不足したが、2019年から2020年には大きく改善されている。また、K Fund(ケイ・ファンド)、Kibo(キボ)、Conexo Ventures(コネクソ・ベンチャーズ)などの隣国スペインのVCを含む海外のVCは、ここで説明しているように、ポルトガルのエコシステムに関心を持っている。

Farfetch(ファーフェッチ)、Talkdesk(トークデスク)、Outsystems(アウトシステムズ)、Feedzai(フィードザイ)、DefinedCrowd(ディファインド・クラウド)などの近年の成功により、海外の投資家たちはポルトガルに関心を向け始めている。投資家のPedro Almeida(ペドロ・アルメイダ)氏によると、2020年、外国人投資家が参加したベンチャーラウンドは全体の40%未満だったが、シードラウンドやプレシードラウンドの30%以上を外国人投資家が占めているという。

これは、スタートアップ企業の成長に伴い、外国人投資家が上位投資家になるケースが増えていることを示している。また、コーポレートVCの動きもこの期間、以前より活発化し、本格的になった。

テック業界のエコシステムを活気づけるための政府の主な取り組みには、「Startup Portugal(スタートアップ・ポルトガル)」や、50:50のマッチファンディングを主導し、3~4年以内でコールオプションを低価格(3~4%のIRR)で提供する「200M」、また、70:30のマッチファンディングを主導し、3~4年以内でコールオプションをこちらも低価格で提供するソーシャルイノベーションファンド「FIS」などが挙げられる。

さらに「Portugal Tech(ポルトガル・テック)」は、IFD(開発銀行)が所有し、欧州投資基金が専門的に管理する、史上初の正式な市場ルール、ファンドオブファンズ戦略である。

ポルトガルのエコシステムから生まれたユニコーン企業には、アウトシステムズやトークデスク(本社をサンフランシスコに移転)がある。また、ファーフェッチも創業者がポルトガル人で同国の生まれの企業といえるが、一般的にはロンドンのスタートアップ企業として知られている。より大きく成長しようとしている注目のスタートアップ企業には、フィードザイ、Codacy(コーダシー)、BIZAY(ビザイ)、Aptoide(アプトイド)、Unbabel(アンバベル)、Uniplaces(ユニプレイシーズ)などがある。

有望な「新入り」には、Rows(ロウズ)、Didimo(ディディモ)、Tonic App(トニック・アプ)、SWORD Health(スウォード・ヘルス)、Barkyn(バーキン)、Utrust(ユートラスト)、Sensei(センセイ)、Vawlt(バウルト)、Lovys(ロヴィス)、StudentFinance(スチューデント・ファイナンス)、Nutrium(ニュートリアム)、Reatia(リーティア)、LegalVision(リーガル・ビジョン)、Kitch(キッチュ)、Rnters(レンターズ)、kencko(ケンコ)、 YData(ワイデータ)などが挙げられる。

主な企業育成組織や起業支援組織には、Beta-i(ベータアイ)、Bright Pixel(ブライト・ピクセル)、BGI(Building Global Innovators:ビルディング・グローバル・イノベーターズ)、Tec Labs(テック・ラブズ)、Startup Lisboa(スタートアップ・リズボア)、Fábrica de Startups(ファブリカ・ド・スタートアップス)、Techstars Lisbon(テックスターズ・リスボン:2年間運営されていたが現在休止中)、Demium(デミアム)、EDP Starter(EDPスターター)、Maze X(メイズ・エックス)、Blue Bio Value(ブルー・バイオ・バリュー)、Indico Pre-Seed Program(インディコ・プレシード・プログラム)などがある。

コワーキングスペース(リスボンのみ)は、LACS(ラックス)、Fintech House(フィンテック・ハウス)、Cowork Central(コワーク・セントラル)、Second Home(セカンド・ホーム)、スタートアップ・リズボア、SITIO(シティオ)、Impact Hub(インパクト・ハブ)、NOW_Beato(ナウベアート)などだ。さらに、巨大な「キャンパス」スタイルのFactor Lisbon(ファクター・リスボン)がある。ファクター・リスボンは、新型コロナウイルス感染症への対策を考慮したスペースにするため、立ち上げ前に計画をうまく再調整した。

リスボン、そしてより広く言えば、ポルトガルは、ますます急速に変化するエコシステムとして、ヨーロッパや世界の舞台で台頭しつつある。このエコシステムには、EU加盟の継続、国際的な視野、温かく迎え入れる文化、そして意欲的な労働倫理という長所がある。

我々は、ポルトガルを拠点とするVCに話を聞いた。前編では以下の投資家からの回答を掲載する。

インディコ・キャピタル・パートナーズの共同経営者、クリスティーナ・フォンセカ氏

TC:概して、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

サプライチェーンのデジタル化とAI技術を活用した意思決定プロセスです。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか

蜂の巣のデジタル化、つまり蜂蜜の生産と受粉産業をデジタル化するという案件です。

TC:特定の業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。今、見過ごされているチャンスは何かありますか。

IoTとAIではついに5Gを利用できるようになります。今こそ投資すべきときです。

TC:次の投資を判断する際に、通常検討することは何ですか。

投資前に創業者の性格を詳しく分析します。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資するのに慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

デジタルヘルス、フィンテック全般、eコマースです。

TC:概して、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

ポルトガルがほとんどで、スペインが少しです。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

B2B、SaaS、マーケットプレイスです(参入障壁を築くためにこれらを組み合わせることもある)。 バーキン、ニュートリアム、アンバベル、Zenklub(ゼンクラブ)、ケンコ、Consentio(コンセンティオ)に注目してください。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ここには、安定したビジネス環境があります。それから、エンジニアリングに優れ、グローバルな成長が見込めます。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

確かに、そうした創業者がポルトガルやスペインでは数年前からすでに現れ始めていますし、これからもさらに増えるでしょう。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはどこですか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

プラス面としては、ありとあらゆるニーズを満たすためにオンラインに移行する消費者がさらに増えていきます。マイナス面としては、中小企業を顧客とするスタートアップは、旅行、プロップテック、フィンテック(銀行の反発のため)と同様に影響を受け続けることでしょう。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。御社が投資するスタートアップ創業者の最大の悩みは何ですか。今、御社が投資するスタートアップにアドバイスをお願いします。

資金が何よりも重要です。資金を使い果たさないようにし、コスト削減、資金調達、プラスのマージン、バーンレートをゼロにするといったことに優先的に取り組んでください。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

確実に回復の兆しがあります。消費者によるオンラインショッピングとオンラインでのコミュニケーションの増加は、当社の投資先企業の半数近くに直接利益をもたらしています。

この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

子どもの在宅学習期間が終わったことです。

アーミラリー・ベンチャー・パートナーズの共同経営者、ペドロ・リベイロ・サントス氏

TC:概して、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

当社は以前からディープテックに投資し、10年以上にわたってローコードやノーコードの進展を支持してきました。アウトシステムズへの初期投資の実施などはそうした支持の表れです。さまざまなディープテックが現実に実装されていること、さらにdashdash(ダッシュダッシュ)やAirtable(エアテーブル)などの製品が「市民開発者」も利用できるようさらに発展していることを目にするのは、本当にワクワクします。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

当社の最新の投資先はディディモという若い会社です。ディディモは非常にエキサイティングな技術を持った会社で、あらゆる携帯端末で撮影した写真から、忠実度が高く、完全にアニメーション化できる人間のアバターを数秒で自動作成します。こうしたアバターを作成するのに従来のプロセスでは、細かな技術の結集、数時間に及ぶコンピューター・グラフィックス・アーティストによる作業、そして計算処理が必要です。ディディモの技術の応用分野はかなり幅広く、直接恩恵を受けるのは、ゲームやエンターテイメント、小売りといった分野です。

TC:特定の業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。今、見過ごされているチャンスは何かありますか。

瞬間移動です。(笑)
もう少し真面目な話をすると、多くのT&H(旅行・ホスピタリティ)のスタートアップが新型コロナウイルス感染症の影響に耐えている一方で、コロナ禍によってこれまでの習慣が劇的かつ長期的に変化することで(例として出張など)、新たなチャンスが開ける可能性があります。

TC:次の投資を判断する際に、通常検討することは何ですか。

月並みですが、テクノロジーと知的財産を保護できる強力な枠組みがあることです。幅広い市場適用性も重要ですね。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資するのに慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

投資しておくべきだったと思う市場は明らかにいくつかありますが、参入障壁が低いまたは技術を保護する枠組みがない製品やサービスの場合、概して初期段階での投資には慎重です(もちろん、そうした製品やサービスも時間が経つにつれて規模そのものや企業同士のつながりが明らかになってくると、参入障壁が格段に高くなります)。

TC:概して、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

初期のころ(20年前)からグローバルに投資を行ってきましたが、地域のエコシステムから始まって地元のエコシステム(ヨーロッパ、南ヨーロッパ、ポルトガル)が本格的に発展し始めたことで、より身近なところで投資を行っています。当社の現在のフラッグシップファンドVでは、ポルトガル(リスボンだけでなく)に限定した配分が50%以上あり、また現在、ポルトガルに100%特化した小規模なファンドを保有しています。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

私は、とりわけポルトガルおいて、資本が少ないものの技術力は高い企業、資金力ではなく独自の技術によって迅速に事業を拡大する企業、すなわち、ディープテックのB2Bソフトウェア企業が成功できる態勢が整っていると、個人的な思い入れを別にしても、強く信じています。ソフトウェアエンジニアリング、開発者ツール、DevOps(デブオプス)、ローコードツール、SWベースのインフラストラクチャ、それから強固なAI製品が思い浮かびます。ポルトガルはまだスタートアップ→成功→イグジット→流動性→再投資の流れを確固としたものにする必要があるため、そうした流れを順当にたどってきた企業、アウトシステムズ(当社の投資先に含まれる)、フィードザイ(当社の投資先に含まれる)、トークデスク(当社の投資先には含まれない)に最も期待しています。また、ディファインド・クラウド(当社の投資先には含まれない)、スウォード・ヘルス(当社の投資先には含まれない)、コーダシー(当社の投資先に含まれる)、ダッシュダッシュ(当社の投資先に含まれる)、ディディモ(当社の投資先には含まれない)などは、私が不当にも投資対象から除外していると自覚のある企業の中において、先に挙げた企業よりは成熟度が低いものの、非常に高い可能性を秘めており、こちらにもとても期待しています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ポルトガルには次のような特徴があります。
• ヨーロッパのほとんどの国と比べて、比較的低コストで大きな才能(特に技術面)を持つ人材が得られる。
• 人々が住みたいと思える場所である(安全性、気候、ポルトガル人の親しみやすさ、インフラ、言葉・・・挙げればきりがない)。
• これまでずっと資本が不足している(最近大幅に改善したが、ヨーロッパの基準では今も比較的不足している)が、現地ではとても有意義な経験ができる。
• 設立される企業にはグローバルな発想(ポルトガルはあくまでも適当なパイロット市場ととらえている)と資本効率の発想(少しの資本で多くの利益を生み出すこと目指している)がある。
• 1人頭、GDP、現地資本、またはその他の一般的な指標あたりの優良企業の比率(たとえば、ユニコーン企業の数や価値、またはその他の指標で測定)は、ほとんどのヨーロッパ諸国をはるかに上回っている(ルーマニアだけは別だと認めるが)。
ポルトガルでは資本が不足しているため、上記のメリットすべてに惹かれた外国人投資家たち向けに、投資の機会が大きく広がっています。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

必ずしもそうとは言えません。 多くの創業者がすでにリスボンやポルトの外から集まっており、これらの都市を中心に活動しています。
新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。御社が投資するスタートアップ創業者の最大の悩みは何ですか。今、御社が投資するスタートアップにアドバイスをお願いします。

最初の4~6週間は不透明でしたが、投資戦略に変更はありません。 創業者の最大の懸念は顧客の購買決定の遅れや凍結した予算などにあります。 今が踏ん張りどころです。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい。多くの場合(旅行やホスピタリティなどの最も深刻な打撃を受けた分野を除いて)、ビジネスが通常に戻っている兆しがあります。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

2020年の計画を大幅に中止してきた多くの企業が、当初予想したほど状況が悪くはならないだろうと認識し始めています。

オリシポ・ウェイの共同経営者、トーシャ氏

TC:概して、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

スタートアップや大きな企業へと発展していく可能性を持ち、収益性の確保を目指している企業を探しているときです。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Reatia.com(リエイシア・ドットコム)とHunterBoards.com(ハンターボーズ・ドットコム)です。

TC:特定の業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。今、見過ごされているチャンスは何かありますか。

従来から、VCが投資するのに十分な規模ではない、小さなニッチ市場です。

TC:次の投資を判断する際に、通常検討することは何ですか。

創業者に情熱があり、生涯働きたいと思えるようなビジネス作りを考えているかどうかという点です。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資するのに慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

マーケットプレイスや暗号化技術です。

TC:概して、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

100%地元ポルトガルのエコシステムのみです。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

観光、リロケーションです。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

優れた創業者たちや、サービスを低コストで提供できる、優れたチームが存在します。ここの企業は最初から国際市場に焦点を合わせてきました。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

はい。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはどこですか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

観光、飲食店、小売りです。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい。 宅配またはリモートワークに関連するすべてにおいて、そう言えます。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

パンデミックが今後2~5年間続くということが一般に認識されたことです。 これが短期的な問題ではないということです。

ポルトガル・ベンチャーズの投資マネージャー、アダム・オリベイラ氏

TC:概して、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

現時点では、eコマース、クラウド、リモートワークのソリューションに期待しています。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

バーキンです。同社はペットに必要なあらゆる製品とサービスを、オンラインとオフラインどちらでも、サブスクリプションプランで提供しています。さまざまな商品の中からカスタマイズされたフード(バーキンの自社ブランド)と、専属の獣医を利用できるシステムをセットにして提供し、1つのサービスでドッグオーナーの日常的なニーズ2つを解決しています。

TC:特定の業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。今、見過ごされているチャンスは何かありますか。

ソフトウェアを使って、ビデオ通話中にアイコンタクトを保つことを可能にしてくれるスタートアップがあれば最高なのですが、これはどちらかというとDIYプロジェクトでしょうね。(笑)

TC:次の投資を判断する際に、通常検討することは何ですか。

大まかに言うとですか。 投資収益率が優れているかどうかです。笑っているけど真面目です。シードやアーリーステージ投資家として、私たちは当然のことながらイグジットを成功させることを目指していますが、スタートアップの初期の課題をすべて支援し、さらなる成長と拡大のために新たな資金調達ラウンドを確保することにも重点を置いています。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資するのに慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

今の時点で、今後発展していく可能性がごくわずかしかないすべての分野において、たとえ市場が大きくても、資金調達はこれまで以上に難しくなるでしょう。 現在のプロセスを「少しずつ」改善しているだけのスタートアップは、新興勢力でもなく、これまでにない破壊的イノベーションを実現しているわけでもなければ、成功の確率は非常に低くなります。

TC:概して、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

ポルトガル・ベンチャーズが投資する先はポルトガルのみです。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

投資先企業のうち特に期待している企業は2つあります。

バーキン(創業者:アンドレ・ジョルドン氏)は、パンデミックの間に500万ユーロ(約6億3000万円)のラウンドを終了し、すでにポルトガルの他に2つの国際市場(イタリアとスペイン)に参加しています。

ディファインド・クラウド(創業者:ダニエラ・ブラガ氏)もパンデミック時に5億500万ドル(約524億円)の資金調達ラウンドを確保しています。

不思議なことに、両創業者は、アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー対象のJoão Vasconcelos(ジョアン・ヴァスコンセロス)賞を、2019年にはダニエラ、2020年にはアンドレと、同賞の設立後、最初の2年で受賞しています。ポルトガル・ベンチャーズの投資先が2年連続受賞しているということです(笑)

他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

私の考え、そして一般論として、他の投資家がリスボンだけでなくポルトガルに目を向ける主な要因は次の通りです。

  • 成熟したローカル市場
  • ビジネスモデルの検証を低コストで行うことが可能
  • 起業家にとって重要な拠点(リスボン、ポルト、ブラガ、コインブラ)
  • 低コストな人材の入手しやすさと生活費の安さ
  • 高い資本効率を持ちながらも、販売・マーケティング分野などで国際的な人材のニーズがある
  • 比較的低い評価
  • 成熟するエコシステム
  • 買い手市場で、つまり供給が需要を上回り、交渉において買い手が売り手よりも有利である
  • イノベーションに対する公的インセンティブ
  • 長期的に支給され、価値が減らない州や地域の補助金、R&D減税、あるいは「200M」のようなマッチングファンドも利用して、株式投資を活用できる
  • 多くのスタートアップが早い成長を見せ、高いマルチプルを達成している
  • これは真のエコシステムの形成に貢献しており、エコシステムでは企業同士のつながりの効果がより具体的に現れ始めている。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

ポルトガルとリスボンのハブの場合、それとはまったく逆になると思います。 というのも私は、リスボン(とポルトガル)へのデジタルノマドの流入を予想しており、基本的には先ほど述べたいくつかの理由と、気候がその要因です。気候のことを忘れてはいけません(笑)国が提供する質の高い生活に加え、それ以外のことも、このデジタルノマドたちの流入に寄与することになると思います。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはどこですか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

マイナス面に目を向けると、現在のパンデミックの状況下で、観光関連のベンチャー企業は確実に弱体化しているように見ます。これは現在の状況下の制約を考えると容易に理解できることです。 プラス面に目を向けると、eコマース、それにオンデマンドサービスが今特に盛り上がっています。要するに、オフラインからオンラインの世界への移行を可能にするトレンドに乗ることができれば、すべてのビジネスは、願わくば未開拓の市場で、絶好のチャンスをつかめるのです。

TC:新型コロナウイルスは投資戦略にどのような影響を与えましたか。御社が投資するスタートアップ創業者の最大の悩みは何ですか。今、御社が投資するスタートアップにアドバイスをお願いします。

私たちは今も絶好の機会と有望なベンチャーを探していて、投資戦略は変わっていません。 2020年の第1四半期と第2四半期は、すべての投資先企業を調査し、パンデミック下で企業がどのような影響を受けているかを判断する必要がありました。それは家族を第一に守るようなものです。そして、このパンデミックによって生じた、不確実な時代において企業が事業を継続できるよう、追加の資金援助を決定する必要がありました。

こうしたことがあったため、私たちが検討していた新たな投資は保留にしました。 しかし、2020年の第3四半期以降、パンデミック以前と同様の事業を再開し、ディールソーシング(投資先の発掘)の他、新たなスタートアップ企業への投資も行っています。投資先企業の創業者たちが抱える最大の懸念は、新型コロナウイルス感染症が事業活動全般に与える影響と、これからの時代の不確実性を考慮して、可能な限り最大のランウェイを確保することでした。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

先ほど述べたのように、パンデミックの状況から恩恵を受ける企業もあれば、そうでない企業もあります。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

パンデミックの中で、私は初めて完全リモートで取引をまとめました。取引相手はバーキンです。まだCEO(アンドレ・ジョルドン氏)には直接会ったことがなく、それどころかチームの誰にも会ったことがありません(会えるのを楽しみにしています!)。また、TNWカンファレンス2020(完全リモート)に参加し、イベリア半島での事業拡張と発展の話題をテーマに講演しました。どちらの「瞬間 」も、物事が実際にどのように変化しているのか、そして、現在のような生活様式、ビジネスの作り方、知識の共有の仕方は、物事を遅くするのではなく、そのスピードを上げるのではないか、そして、そういったことをどれだけ効率的にできるのか、という点を考えるきっかけになりました。違う意見もあると思いますが、少なくとも私はそう考えています。

ファーベルの共同経営者、アレクサンドル・バルボサ氏

TC:概して、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

ファーベルは、新興テクノロジーで世界を変革するチームに投資しており、データ中心のスタートアップ企業がデジタルトランスフォーメーションを加速させ、さまざまな業界でイノベーションを推し進めていると考えています。

私たちは、DataOps(データオプス)、MLOps(エムエルオプス)などのAIエンジニアリングに関連した次世代ソリューション、NLP(神経言語プログラミング)、説明可能なAI、データ管理、データプライバシー、サイバーセキュリティなど、エンタープライズの世界でレジリエンス、インテリジェンス、俊敏性、自動化を実現するテクノロジーに期待しています。さらに、独自のデータと革新的なヒューマンマシンインターフェイス(ニューロテクノロジーなど)を使用し、さまざまな業界(デジタルヘルスなど)で精密さやパーソナライゼーションを実現することにも価値があると思っています。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

過去数か月の間に、AIやデータに焦点を当てた新たなファンドで、新規投資4件を完了しました。その内訳は、デジタル理学療法の未来を築いているスウォード・ヘルスへの投資1件と、データオプスや合成データ、ニューロテクノロジー、説明可能なAIに関連した投資3件(詳細はまもなく発表予定)です。

TC:特定の業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。今、見過ごされているチャンスは何かありますか。

企業のIT予算は、データ中心のスタートアップと協力してデジタル移行を加速させるために割り当てられる割合が増えているため、次世代のスタートアップが複数の業界でテックスタックに挑戦し、変革を実現できる大きなチャンスがまだ存在します。起業家精神は、新しいビジネスモデル、技術革新、ポジティブな影響を調和させて持続可能な未来を実現するうえで大きな推進力になると、私たちは考えています。デジタルヘルスに見られるように、地球科学や天然資源管理にAIやML、ロボティクスを革新的な方法で応用することで、気候変動などの差し迫った社会的課題に取り組むことを使命とするスタートアップの数が、これから増えていくことを期待しています。

TC:次の投資を判断する際に、通常検討することは何ですか。

私たちは通常、主に南ヨーロッパからスタートし、グローバルな展開を目指すアーリーステージ(プレシード、シード)のB2Bデータ駆動型スタートアップに、他の投資家に先駆けて現地で投資を行っています。

高度に専門化された技術チームを探しています。そうした技術チームに求めているのは、業界を変革することを使命とし、オープンなマインド、限りない好奇心、そして大きなチャンスをつかみ、世界中でシェア獲得するという飽くなき野心を持って、多様でありながらバランスの取れた、インクルーシブな文化を構築することを目指しているチームであることです。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資するのに慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

私たちがB2Bに注力している中で感じるのは、差別化要因のないSaaS製品を立ち上げたり、ストレスの多い業界に過度にさらされたりしているスタートアップは、優先課題を再考する必要があるということです。

TC:概して、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

当社の、ステージ/専門技術にフォーカスしたアプローチと付加価値アプローチは、イベリア半島における課題を解消するものです。さらに、南ヨーロッパ発のデータ駆動型の成功企業(一般的には米国に事業を拡張する)が最盛期を迎えようとする中、私たちは今、投資家として有利な状況にあると確信しています。そうした中で、イベリア発の企業に資本の大半を投資することで世界中に指標を示し、ヨーロッパ全域の有望なチームに選択的に共同投資を行う予定です。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

南ヨーロッパで生まれ、大きな価値を生み出している革新的スタートアップの中には、「インテリジェントエンタープライズ」の分野で活躍している企業や、金融サービス、サイバーセキュリティ、ヘルスケア、製造業、農業食品、小売業などの分野でデジタルイノベーションを推進している企業があると思います。

私たちは、アンバベル、コーダシー、Seedrs(シードルズ)、EnjoyHQ(エンジョイHQ)のような企業に地元の投資家として最初に参加してきました。これらの企業は、ポルトガルから会社を立ち上げ、事業を急速に拡大し、それぞれの業界や市場分野に分散して、イノベーターとして広く認知されました(ファーベルが現れる前に設立されたフィードザイのように)。私たちは、そうした企業の成功と、そうした企業に私たちの理念が強く反映されていることに、当然ながら興奮しています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

イベリアは、成功を収めたスタートアップを過去10年間で数多く輩出しているため、起業の出発点として確固たる実績を持っています。イベリアという地域は、ヨーロッパ中の人材を惹きつけ続けています。そうした人材は、地元の人材とコラボレーションして新しいベンチャーを立ち上げ、地元のエコシステムとリソースの成熟度と専門性の高まりを活用しています。さらに、地元で起業し、米国に事業を拡大するという明確なマインドセットをポルトガルの創業者たちから受け継いでいます。

ポルトガルとスペインは、国際的なVCとの共同投資を伝統的に行ってきたプレシリーズAの投資家から投資を受けてきました。レイターステージキャピタル、グロースキャピタル(地元および国際)の層が厚くなってきており、現在ではより多くの機関投資家が次々にこの資産クラスへ投資しています。

グローバルな規模で業界に挑戦し、その業界のリーダーになる革新的な企業を南ヨーロッパが今後も数多く輩出し、この地域がヨーロッパのベンチャーにとって、チャンスをつかめる新たな場所であることが証明されるであろうと、私たちは確信しています。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

ポルトガルのエコシステムはそうした状況に急速に順応してきていて、分散型チームからスタートする、新しい企業が増えていくと予想されます。そういった企業は市場に存在する制約に対処できる態勢が整っていて、概して回復力があります。

これにより主要都市以外で起業する創業者にとっての障壁が低くなることを期待しています。同時に、地域の主要なハブは今後も、新しい企業の支えになる強力なリソースの数々を提供していくであろうと考えています。つまり、リモートワークや新しい仕事形態の推進要因は大都市にとって不利益なものではなく、資本や人材へのアクセスを促進し、地域のディールフローを拡大させるものだと考えているのです。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはどこですか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

このパンデミックの影響を受けやすい業界(旅行やホスピタリティなど)もありますが、当社の投資戦略は、エンタープライズ向けのデジタルトランスフォーメーションにAI、ML、データサイエンスを応用しているデータ中心のスタートアップに焦点を当てています。

ビジネス継続性や俊敏性、パフォーマンスへの新型コロナウイルス感染症の当面の影響により、データ駆動型のB2Bスタートアップにとってはエンタープライズを対象にビジネスを展開するうえでの視野が広がっています。企業は「ニューノーマル」をリードすることによって、それぞれの業界においてイノベーションを応用もしくは推進することが可能になるでしょう。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。御社が投資するスタートアップ創業者の最大の悩みは何ですか。今、御社が投資するスタートアップにアドバイスをお願いします。

私たちの投資戦略は変わっていません。むしろ、私たちの信念が正しいということ、企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させるデータスタック全体において、革新的なソリューションで業界に挑むチームや企業に焦点を当てていることが正しいということを、このような時代が証明してくれています。

投資先企業の当面の優先事項は、当社および共同投資家と協力することで、堅固なランウェイを確保し、影響を受けにくい業界や長い販売サイクルにフォーカスするために市場進出戦略を迅速に調整することでした。また全般的には、優先順位の見直しと今後の不確実な時期に備えた計画や準備を行うことでした。幸いなことに、今年は投資先企業の大部分が成長して、全体のバランスは現在プラスになっています。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい。これまでのところ、投資先企業すべてが当初の予想を上回るパフォーマンスでこの課題に適応し、それを克服しており(前年同期比で大幅に成長している企業もある)、B2B、クラウド、データ中心のスタートアップは、他分野のスタートアップより回復力があり、需要が高いことを証明しています。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

これまでの不況時と同様、困難をチャンスに変え、ベンチャーを立ち上げて現状に挑戦し、より良い未来を築いていく気概に満ちた新世代の起業家たちの大胆さと決意を目の当たりにすると、いつも元気づけられますし、励みになります。

このような時代にもかかわらず、ここ数か月の間、私たちは幸いにも、使命感を持った創業者や投資家がますます増えていることや、活気ある技術系大学や研究機関の勢いを通して、長期的な展望を描くことができました。

このパンデミックに適応し、それを克服するために、決意をもって団結して行動していけば、起業の気運は、未来への希望を与えられるほどの強さを持つことになると信じています。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:インタビュー

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

XTech Venturesがファンド総額最大100億円の「XTech2号投資事業有限責任組合」を組成

XTech Venturesがファンド総額最大100億円の「XTech2号投資事業有限責任組合」を組成

ベンチャーキャピタルのXTech Ventures(XTV)は2月22日、2本目となるXTech2号投資事業有限責任組合(2号ファンド)の組成を発表した。1stクローズ時点で53億円を集めており、ファンド総額最大100億円規模を想定し今後もファンドLP(有限責任組合員)の募集を行う。1号ファンドと合わせた累計での運用総額は100億円以上となった。運用金額と投資件数の増加に伴い、メンバーの拡充による投資体制の強化を図るという。

XTech Venturesがファンド総額最大100億円の「XTech2号投資事業有限責任組合」を組成

XTech Venturesは、IT業界での経営経験と投資経験を兼ね備えた共同創業者の手嶋浩己氏、西條晋一氏を中心に2018年に設立。「テクノロジーの力を信じ、投資活動を通じて、起業家と共により良い未来を創造する」をビジョンに掲げ、ミドル層を中心とした起業を促し、良質なスタートアップを数多く生み出すことで、起業家と共により良い未来を創造する世界を目指している。

また同社は、2018年6月に組成したXTech1号ファンドのインフォグラフィックスを公開した。

XTech Venturesがファンド総額最大100億円の「XTech2号投資事業有限責任組合」を組成

XTech Venturesがファンド総額最大100億円の「XTech2号投資事業有限責任組合」を組成

XTech Venturesがファンド総額最大100億円の「XTech2号投資事業有限責任組合」を組成

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:XTech / クロステック(企業)VC / ベンチャーキャピタル(用語)日本(国・地域)

データは米国の不公平なヘルスケア問題を解決できるだろうか?

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

データはヘルスケアの問題を解決できるだろうか?

それだけでは無理だ。だが適切な使い手に適切なデータを手渡せば、おそらくかなり大きな前進を期待できるだろう。そしてそれこそが今回お話しするスタートアップの目的だ。

今回The Exchangeは、Truveta(トゥルベタ)社のCEOとCMOであるTerry Myerson(テリー ・ マイヤーソン)氏とLisa Gurry(リサ ・ ガリー)氏から話を聞いた。Truvetaは、ヘルスケア提供者から大量のデータを収集し、匿名化して集計し、それを第三者が研究のために利用できるようにすることを目指す若い企業だ【訳者注:米国英語の「ヘルスケア」は病院 / 医療を含む健康管理全般を意味する】。

これは大変な仕事だが、Truvetaを支えるチームは、大きなプロジェクトを遂行した経験を持っている。マイヤーソン氏は、Microsoft(マイクロソフト)時代にはトップの直下で、Windows(ウインドウズ)のようなよく知られたプロダクトを統括していたことで有名だ。またガリー氏はかつてMicrosoft内のリーダーの1人であり、直近ではMicrosoft Store(マイクロソフト・ストア)製品の戦略を担当していた。

その2人が、今はヘルステックデータの会社にいる。どうしてそうなったのだろう?Microsoftを退社した後、マイヤーソン氏はシアトルのベンチャーキャピタルであるMadrona(マドロナ)や、プライベートエクイティを得意とすろ巨大な投資グループのCarlyle Group(カーライル・グループ)で働いていた。その数年後、マイヤーソン氏のMicrosoft時代の元同僚数名が、ヘルスケア大手のProvidence(プロビデンス)に勤務していた。彼らは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が最初に米国をロックダウンしたときに、マイヤーソン氏に連絡してきた。マイヤーソン氏は、数回の通話に参加することには同意したが、家に閉じこもっていたため、チームに正式には参加しなかった。

その間、彼はProvidenceがTruvetaとなるアイデアについての白書をまとめたことを知った。それはヘルスケア提供者から十分な数と多様性のあるデータを収集することで、それを活用したあらゆる種類の研究が可能になるというものだった。マイヤーソン氏はそのコンセプトに強く惹かれ、後に会社を設立することとなった。そして、彼は創業を手伝ってもらうために、ガリー氏を含む元同僚たちを呼び寄せた。

Truvetaは現在約50人の従業員を抱えているが、2021年中に100人程度までその規模を拡大する予定だとマイヤーソン氏はいう。

読者の頭の中には疑問が溢れていると思う。Truvetaの事業はまだ早い段階だが、同社は米国時間2月11日に、そのデータ目標を達成するために、14のヘルスケア提供者と契約したことを発表した。それらの提携企業は同社に対する投資家でもある(マイヤーソン氏自身も資本を投入している)。

私は同社の事業計画に興味を惹かれた。マイヤーソン氏によれば、Truvetaはデータにアクセスしたいのが誰かによって異なる料金を請求するとのことだ。ご想像のとおり、営利団体は独立した個人研究者とは異なる対価を支払うことになる。

Truvetaの次の課題は、より多くのデータを取得し、内部のデータスキーマを整理し、研究者からのフィードバックを収集して、商業的なアクセスへつなげることだ。

米国のヘルスケアは不公平だ。これはTruvetaの2人の幹部が私たちとの通話中に繰り返し強調したことだが、それゆえに同社にはそれを改善し、人種差別や性差別を減らすための大きな市場が与えられる。

マイアーソン氏とガリー氏と彼らのスタートアップの話をするのは少し妙な感じがした。過去には彼らとMicrosoftの最大のプラットフォームのいくつかについて対談をしたことがあるからだ。彼らがTruvetaをどのくらいの速さで、すばらしいアイデアの段階から、成功した商業的な会社に変えられるのか、そして、どれだけ大きく育てることができるかを見守っていこう。

マーケットノート

ここ数日、手を伸ばせなかったことがたくさんあった。たとえばAdyen(アディエン)の利益について。この欧州発の決済プラットフォームは、下半期の売上を3億7940万ユーロ(約484億3800万円)と報告したが、これは前年同期比28%増である。そこから2億3680万ユーロ(約302億3000万円)のEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益)を報告している。フィンテックは儲からないと言ったのは一体誰だったろう?(もしStripe(ストライプ)の評価額や今後の株式公開が気になるのならAdyenのこの報告は必読だ)。

そして、私たちの指からこぼれ落ちたラウンドもあった。最近730万ドル(約9億3200万円)のシリーズA調達を行ったCloudTalk(クラウドトーク)がその例の1つだ。このスロバキア発のスタートアップは2019年に160万ドル(約2億400万円)のシードラウンドを行っている。このスタートアップは、その名が示すとおり、コールセンター向けにクラウド電話サービスを提供している。

リモートワークの世界的な成長のおかげで、私たちは、おそらく2020年がCloudTalkにとって良い年になったのではないかと考えていた。そのとおりだった。メールの中でCloudTalkは「Zoomのような成長は達していない」が、2020年における同社のサービスへの需要は「期待を上回るものだった」と述べている。最新のラウンドをそれが説明している。

The Exchangeはまた、私を含むソフトウェアオタクの間で急速に関心の高まっているトピックのサブスクリプション価格づけと利用量に基づく価格づけの対比について、同社が何らかの見解を持っているかどうかにも興味を持っていた(来週はAppianやFastlyなどからのコメントを交えてさらに個の話題をとりあげる)。同社によれば、CloudTalkは「基本料金に加えて利用量にも課金する」ということなので、価格設定の観点からは同社はハイブリッド企業である。CloudTalkは、その価格設定に関して「お客さまは、事前にいくら支払えば良いかを知りたいと考えますので、このやり方は双方にとってバランスが取れているやり方です」という。

心に留めておきたいスタートアップだ。外国人が自由に金融システムにアクセスできるようにすることに焦点を当てた、世界を相手にしたネオバンクのZolve(ゾルブ)も同様に心に留めておきたい。私は記事を書けなかったが、TechCrunchではカバーされている。詳しくはこちらから

関連記事:母国の信用履歴利用を可能にする銀行取引プラットフォームZolveが15.8億円調達

さて、ここ数日仕事中にテレビを見る時間がなかった人のために、Robinhood(ロビンフッド)の話をしておこう。それは議会公聴会に出席する羽目になったが、フィンテック巨人である同社のビジネスモデルに関するいくつかの論点を除けば、ほとんど退屈な内容だった

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先週は込み合うニッチなスタートアップ界にとっては、忙しい1週間となった。OKRのスタートアップにはさらに多くの資金が流れ込んだ、このことから、私たちの念頭には、将来的にVCたちが関連企業にも資本を投入するのではないかという問いが浮かぶこととなった。Public(パブリック)も数億ドル(数百億円)を調達した。予想通りだ。そしてローコードサービスのOutSystems(アウトシステムズ)は、1億5000万ドル(約191億5000万円)を調達した。いや、とんでもない1週間だった。

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その他のことなど

いくつかのデータを残しておこう。まず第一に、Clubhouse(クラブハウス)のメトリクスがようやく製品にまつわる誇大広告と一致し始めているということだ。人びとが人々は大挙して押し寄せ、その総ダウンロード数を1000万以上に押し上げている。

そして、私が見逃したニュースの中では、Substack(サブスタック)の登録者数が50万人を突破していた。すばらしい!

そして最後に。先週はシカゴを拠点とするKin(キン)という名の保険テックのスタートアップが、「総被保険者資産総額」100億ドル(約1兆531億円)を突破した。The Exchangeは同社にその経営状況を問い合わせた。結局のところ、50セントで1ドルを売れば、保険料のボリュームを増やすことは難しくはないということだ。

同社のRuth Awad(ルース・アワド)氏は、私たちの問い合わせに対して、同社の「損失率は53%、粗利率は32%」だと回答している。悪くない。保険テックが実験的なものから社会的成功を収めるまでにどれほどのスピードで進んできたのかを考えると、Kinは今後も注目したい企業だ。

最後に、週末には地元のヘビメタバンドの応援をお忘れなく(1234)。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:ヘルスケアThe TechCrunch Exchange

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

米国全土でVCの動きは活発になっているが

著者のMonique Villa(モニーク・ヴィラ)氏は、米国とカナダのスタートアップに投資するアーリーステージVCファンドMucker Capitalの投資家。彼女はまた、南東部で会社を設立することにコミットしている創業者、投資家、エコシステムパートナーのコミュニティであるBuild In SEの共同設立者でもある。

ーーー

この5年で、シリコンバレー以外の土地におけるベンチャーキャピタル投資の波が勢いをつけている。Twitter(ツイッター)のツイートだけで資本の流れを測ってみても、大変動が起こり、アイスホッケーの試合で使用されるTシャツキャノンで小切手が大放出されていると推測できる。

その一方でベンチャーキャピタルは「シリコンバレー以外の市場に目を向けている」という言葉で創業者達に近づくだろう。

2011年にMucker(マッカー)を創業したとき、高成長を遂げる企業はどこにいても成長できるということを証明すべく、共同創業者達はシリコンバレーからロサンゼルスに移動した。Muckerの過去10年のポートフォリオがまさしくこの物語を証明している。Muckerではロサンゼルス、オースティン、ナッシュビルにオフィスを設け、北米全域で投資を行っているが、米国全土とカナダで投資するという10年以上前のアイデアの受け入れが近年著しく増していると感じている。

最近では、ここナッシュビルや南東部における取引の流れに興味を示す、サンフランシスコやニューヨークなどを基盤にしたベンチャーキャピタルから連絡を受けることが多くなっている。

実際には、同じベンチャーキャピタルによって書かれる小切手が、対外の誇大広告と既存の市場機会の両方と一致する前に時間のズレがある。マーケティング目的とFOMO(取り残されることへの恐れ)のために広がったベンチャーキャピタルの地理的な焦点は、本当の物語を十分にキャプチャーしていない。

要約すると、シリコンバレー以外での機会とは、米国全体での機会を指している。

米国には機会があり、私たちには投資する価値があるのでは?

「私たち」は含みを持たせた表現だ。私はベンチャーキャピタリストとして、そしてバイレイシャルの移民一世の娘としてこの記事を書いている。両親はほとんどの人の標準に比べると貧しい環境で育っている。一方の家系はメキシコ革命の最中にメキシコから米国に移民した。もう一方の家系は、オクラホマの田舎出身だ。私が南東部で毎日毎日出会う創業者達はみな同じようなストーリーを持っている。

私のストーリーは平均的な米国人のそれだが、人々が「イノベーションエコノミー」として認識するものからは何光年も離れていると感じる。この10年間、ベンチャーキャピタルで多くの人と出会ったが、その両親や祖父母は、うちの家族とは決して関係しないであろう良い家柄の出身だった。しかし私たちはここにいる。ここは米国なのだ。

シリコンバレーの起源と国際的なスターダムへの上昇は、イノベーターが中心になって行われ、何十年も経つにつれ、より多くのイノベーターと資本を引きつけた。「広大で多様な州と人々が集まる米国」という重要な要素は間違いなく途中で欠落した。ベンチャーキャピタルの資金の流れに関する年次報告がこの矛盾を裏づけており、資金の大半はシリコンバレーとその周辺に拠点を置く企業に注ぎ込まれいる。

2019年6月の米国地域別ベンチャーキャピタル取引(画像クレジット:PitchBook/NVCA Venture Monitor)

私たちは今、米国の未来を支える製品やサービスにベンチャーキャピタルの資本が流入される「機会を与えてくれる土地」として、米国が正しく改変できる年代の入口に立っている。そして、そうしたイノベーションの舵取りをするのは、市場機会の最も近くにいて、顧客と顧客に最善のサービスを提供するという特別な意味合いにおいて完全に一致協力している人々だ。

新型コロナ後の世界では、顧客はサプライチェーンや職場の文化、株主所有権にかつてない透明性を求めている。顧客はブランドに関する情報をいつでも好きな時に手に入れ、一生懸命働いて得たお金をどこに落とすか精査できるようになった。つまり、顧客は自身の存在をはっきり認識してもらえることを好み、このことに気づいた創業者達がこの新しい環境で成功するようになる。

お金に続け

顧客はどこに住んでいるのか?ヒントをあげよう。多くはシリコンバレーにはいない。

テネシー州ナッシュビル周辺の人口(画像クレジット:Nashville 2018 Regional Economic Development Guide

私は2018年にBuild In SE(ビルドインSE)の創業を発表したとき、ナッシュビルにおけるアンフェアアドバンテージに関する記事を書いたBuild In SEは南東部で起業することを選んだ創業者をサポートするためのコミュニティで私は共同創業者だ。ナッシュビルは米国の人口の半分以上が半径650マイル(約1050km)内に住み、米国市場の75%に2時間のフライトで行き来できる範囲内に位置している。

背格好もサイズもさまざまな顧客がいて、創業者たちはこうした市場で必要不可欠な仕事をする。顧客と同じように平凡だが必要な仕事をし、アンフェアアドバンテージを得る。こうした創業者は歴史的に、必要に駆られて自力で起業している。初期段階の高リスクの資本へのアクセスが乏しく、街や州、業界によって大きく異なるためだ。

こうした創業者はMailchimp(メールチンプ)、Calendly(カレンドリー)、 Lynda.com(リンダドットコム)、シリーズAで6億ドル(約630億円)の投資前価値を誇ったGoFundMe(ゴーファンドミー)など、テクノロジーやイノベーションエコノミーでお馴染みの企業を設立してきた。そしてこれらすべての企業にはもう1つ共通点がある。それは「シリコンバレー以外」の地で創業したという点だ。

強力な磁石となる才能あふれる人材

もう1つのマクロトレンドは、サンフランシスコやニューヨークといった従来の都会の拠点以外に才能ある人材が分散され始めていることだ。起業家、技術者、経営者は、生活の質がより重要に感じる時代の中でライフスタイルを求めている。ナッシュビル、オースティン、アトランタ、デンバー、ダラム、マイアミなどの都市へ引っ越すことで、高齢の家族の側に暮らすことや手頃な養育費、アウトドアアクティビティなどが実現する。

このようなシンプルな喜びは、海岸沿いの都市で「夢を追いかけ」、お金(時にはより良い天候)を求めて引っ越す場合のトレードオフだった。才能ある人材が徐々に不足し貴重になると、一夜にしてプライベートマーケットの資本が潤沢になったように思える。振り子が揺れ、2つの磁石の弱い方に資本が傾いたのだ。才能ある人材は「通勤時間はどのくらいがよいか」や「家族や自分にどのくらいの時間を割きたいか」といった質問を自問し始め、ウォールストリートの人々はマンハッタン島からコーヒーショップやドッグランのある公園の方へと移動し始めた。

2020年はこの乾いた丘に火をつけるマッチ棒のようなものだった。窮屈な部屋に閉じ込められ、新しい生活に投資できるリソースを持った(または他に失うものがない)人々は、荷物をまとめ新天地へと移動したのだ。

私が2017年に長年住んでいたロサンゼルスからナッシュビルに引っ越したときに感じたように、コミュニティやつながりという新たな気持ちが芽生える場合もある。ロサンゼルスにいたころは、その無常な街の性質のせいで近所とのつながりがほとんどなかったが、ナッシュビルでは自分よりも大きな何かの一員になれたと感じている。

機会はどこにでも溢れている

ナッシュビルやアトランタ、リサーチトライアングル、シンシナティ、トロントといった市場で私の知っている創業者達が示したフラストレーションの1つは「利用できる資本はもっとあると聞くが、それはどこにあるのか」だ。創業者達は投資家と会えても時期尚早だ、資金不足だ、または多すぎる、「十分に大きな市場」を目指せていないなどといわれてしまうのだ。

ときにはそれが本当の場合もあるが、シリコンバレーの起業家のような見た目や話し方、振る舞い方をしない創業者に対して投資家が明らかに批判的な反応を見せているケースも多い。

さまざまなスキルを持ちパターンマッチングするベンチャーキャピタルと全国のスタートアップCEOの間の理解のギャップを埋めるには、これからの10年で多大な労力が必要になる。隣人と分かち合い、子供を同じ学校に通わせ、地元の安食堂に馴染み親しみ、相互信頼を得るというようなことが非常に重要になってくるが、これははじめの一歩に過ぎない。実際には「米国」の定義そのものに沿って、よりいっそうの一致協力や苦難を要することだろう。

次の10年でこの機会をものにするのは投資家次第で、それはまさに私たちの仕事だ。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:アメリカ

画像クレジット:Alexi Rosenfeld / Getty Images

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(文:ゲストライター、翻訳:Dragonfly)

新しいムーブメントが巻き起こる中、マイアミを目指すスタートアップが急増

マイアミは長い間、寒さを嫌う人々や政治や経済が混乱状態にある南米諸国の人々の避難場所だった。しかし、2020年には、サンフランシスコやニューヨークからの投資家や創設者、テック関連従事者たちが大勢移り住んだ。これには、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行も一部後押しとなった。さらにそうした移住者たちは、新規移住者を歓迎する方策の市政府、低い税率、快適な気候、より手頃な価格の住宅供給、活動的なライフスタイル、そして会社の繁栄に役立つ多様性といった利点のある移転先を探していたのである。

TechCrunchの見解では、投資家たちは強気のマイアミ推しだ。マイアミ在住の8人の投資家へのアンケートでは、マイアミが長所とチャンスに溢れた、成長が期待できるマーケットであると強調されている。

最近の注目すべき事柄は、SoftBank(ソフトバンク)のCEOで、長きに渡るマイアミ推進者のMarcelo Claure(マルセロ・クラウレ)氏が、マイアミ拠点、またはマイアミへ拠点移転予定のスタートアップを支援する1億ドル(約105億3555万円)のファンドを設立すると発表したことだ。

関連記事:ソフトバンクがマイアミ拠点のスタートアップ向けに104.7億円のファンドを設立

「マイアミはスタートアップの新しい中心地となるべく、増え続けるニーズに応え、急速に発展しています。マイアミは魅力的な投資市場であり、注目を浴びつつある『エルダーテック(高齢者を対象にしたテック)』からバイオテックに至るまで、移民やマイノリティなどさまざまな人たちの事業欲を高め、起業するための唯一無二の機会を提供しています」と、クラウレ氏はファンド設立の発表直前にTechCruchに語った

クラウレ氏はマイアミがテックの聖地となり得る可能性に早いうちから気づいていた。同氏は1997年にグローバルワイヤレス企業のBrightstar(ブライトスター)を創設した。そして2013年にはSoftBank(ソフトバンク)が同社の過半数の株式を12億6000万ドル(約1327億4793万円)で買い取った。クラウレ氏の弟のMartin(マーティン)氏もまたテック起業家で、現在、マイアミを拠点としたスペイン語再教育のスタートアップ、Aprende Institute(アプレンデ・インスティチュート)の創設者兼CEOを務めている。

マイアミとクラウレ氏はこれまで円満な関係を築いてきた。そのため、クラウレ氏とソフトバンクが、この地へ情熱的なほどに傾倒していたとしても何ら不思議はない。

「ソフトバンクは、フィンテックからアグリテック、教育分野に至るまで、さまざまな分野のテクノロジー企業へ投資しています」と、クラウレ氏はいう。「ソフトバンクはこれらの分野のデジタルトランスフォーメーションを担う起業家や会社に投資しています。2020年以来、私たちはそうした起業家たちが拠点を置く都市について、その勢力図に大きな変化が起きていることを認識しています。起業家が多く集まる地域は、長い間シリコンバレーとニューヨーク市が二強でした。しかし、今では、ダラスのオースティン、そしてもちろんマイアミにも起業家が多く集まってきています。これは市長のSuarez(スアレス)氏のたゆまぬ努力によるところが大きく、マイアミはイノベーションとテック産業の最前線に立っています」。

「マイアミで突如台頭する多くのビジネスが、自然と当社の求める投資対象と合致するんです」とクラウレ氏は続ける。「Latam Fund(レータム・ファンド)を通して、私たちはラテンアメリカ地域を重視する会社に投資しています。VCコミュニティ内に長い間くすぶっている多様性とインクルージョンの問題に本気で取り組むため、黒人やラテン民族、アメリカ先住民の起業家に焦点を当て、1億ドル(約105億3555万円)のOpportunity Fund(オポチュニティ・ファンド)を立ち上げました。これまでのところ、700社以上を査定し、マイアミで台頭しているヘルスケア、SaaS(サース)、フィンテック、ゲームなど多岐に渡る分野で約20件の投資を行い、合計2000万ドル(約21億711万円)を投入しています」。

2020

Crunchbase(クランチベース)のデータによれば、2020年のマイアミ地区への投資は約19億ドル(約2001億7545万円)で、2010年の約8950万ドル(約94億2932万円)と比べると21倍にもなる。2020年は突出した取引がいくつかあった良い年だった。REEF Technology(リーフ・テクノロジー)は7億ドル(約737億4885万円)、ShipMonk(シップモンク)は2億9000万ドル(約305億5310万円)、さらにMagic Leap(マジック・リープ)が3億5000万ドル(約368億7443万円)の資金調達に成功した。だが、それでも2019年に南フロリダ州を拠点とするスタートアップへ投資された記録的金額、23億9000万ドル(約2501億8520万円)にはおよばなかった。2010年にはわずか12社のマイアミを拠点とする企業が地元以外からの外部ファンドを得た。2020年にその数は70社に跳ね上がり、これはこの地域におけるテック関連事業の順調な増加を意味する。

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新型コロナウイルス感染症の世界的大流行とリモートワークがマイアミへの移住希望者の心を揺さぶる中、シリコンバレーからマイアミへの拠点移動を勧めるツイートに対するFrancis Suarez(フランシス・スアレス)マイアミ市長の非公式なコメントがその流れに拍車をかけた。「何かお手伝いできることがありますか?」という同氏のこのメッセージは世界中を駆け巡り、マイアミのテックライフについて尋ねる返信が相次いだ。

1万1000人のメンバーを誇るフロリダ州最大級の非営利テック団体Refresh Miami(リフレッシュ・マイアミ)は、「マイアミの教育機関」や「人気のあるコワークスペース」についてなど、新しい地域へ移り住む際に出てくる質問に答えるべく「マイアミへの移住ガイド」をまとめた。

新しい居住者の中には、まず、この地の水が合うかどうかを仮住まいを移動しながら試している人もいるが、大半はすでに住居を購入し、仕事場を構え、彼らの次のスタートアップのために人材の獲得へ動いている。また、人材探しを行いながら、ここでの友人作りも忘れてはいない。

最近のマイアミを語る際に、Keith Rabois(キース・ラボイス)氏の存在は欠かせない。サンフランシスコから派手な脱出劇を行った、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)の共同出資者で、PayPal(ペイパル)の元幹部の1人だ。ラボイス氏は、2900万ドル(約30億5531万円)のマイアミビーチにある豪邸(維持管理にスキューバダイバーを必要とするほど大きな海水水族館つき)購入というド派手な演出で、マイアミでも注目を集めた。同氏はマイアミに移住して以来、最も発言力のある、熱心なリクルーターの1人に数えられ、マイアミのテックの未来のために活動している。マイアミ拠点の会社を設立し、公にはまだ何の会社かは発表していないものの、人材獲得に動いていることを遠回しにTwitter(ツイッター)で伝えている。

他の有名どころを挙げるとすれば、金融業界の巨人Blackstone(ブラックストーン)が近日マイアミに新しいオフィスを構え、テック業種で215人を募集していると発表した。すでに何人かの才能溢れる地元リソースを採用したようだ。そして、もちろん、シリコンバレーの世界的なイノベーションプラットフォームであり、先週マイアミのダウンタウンへオフィスを開けることを発表した、Plug and Play(プラグ・アンド・プレイ)は外せない。それ以外にも、最近移転してきたベンチャーキャピタルたちは、周囲に先駆けてチャンスを掴むという、ベンチャーキャピタルの強みを発揮している。そうした先駆者には、Shutterstock(シャッターストック)のJon Oringer(ジョン・オリンジャー)氏、Blumberg Capital(ブルームバーグ・キャピタル)のDavid Blumberg(デイビッド・ブルームバーグ)氏、Andreessen Horowitz(アンドレッセン・ホロウィッツ)のChris Dixon(クリス・ディクソン)氏、Alpaca(アルパカ、投資先企業にClassPass)やClassWallet(クラスウォレット)を含む)のDavid Goldberg(デイビッド・ゴールドバーグ)氏、FFNYのMaya Baratz Jordan(マヤ・バラッツ・ジョーダン)氏、Gilt(ギルト)ならびにGlamsquad(グラムスクオッド)の共同創設者として知られるAlexandra Wilkis Wilson(アレキサンドラ・ウィルキス・ウィルソン)氏、Facebook(フェイスブック)で活躍後、4年前にマイアミに拠点を移しThe Venture City(ザ・ベンチャー・シティ)を立ち上げたLaura González-Estéfani(ローラ・ゴンザレス・エステファニ)氏などが挙げられる。なお、ザ・ベンチャー・シティはマイアミ本社でアクセラレーターおよびベンチャーファンドとしてサービスを提供するほか、サンフランシスコとマドリッドにもオフィスを構えている。

なぜ、マイアミ?

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行は多くの人にとって、人生に何を求めているのか改めて考えるきっかけとなった。私たちは、今の仕事、法外な値段の狭小住宅、さらに脆弱な行政機能に満足していてよいのだろうか。

マイアミは国際的で、多様性があり、ビジネスでは主に英語とスペイン語が話される多言語な場所だ。多くの人がこの街に魅力を感じているのは、都会的なスタイルがあり、毎年12月に行われるArt Basel Miami Beach(アート・ベーゼル・マイアミ・ビーチ)を筆頭に、洗練されたアートや文化という側面を持っているからだ。また、ニューヨークやロンドンのほとんどの有名レストランがマイアミに出店していて、そのマイアミ店の場合は通常広いアウトドアの席も用意されているのだ。著名なZaha Hadid(ザハ・ハディド)氏の手によるビル群、Arquitectonica(アーキテクトニカ)、Raymond Jungles(レイモンド・ジャングルズ)による庭園など、建築の魅力も引けを取らない。ブロードウェイの大人気演目「Hamilton(ハミルトン)」のチケットが、あまりの人気にニューヨークやロンドンで2倍の値段で売り出されていた時、マイアミのAdrienne Arsht Center(エイドリアン・アルシュト・センター)ではわずかな料金で同演目を観ることができた。私の知人の中には2回も観劇した人もいる。

多くの人はマイアミや他の海沿いの街は、海が最高だという。そして、オーダーメイドのメガヨットを所有していないからといって、日焼けを諦めなくても大丈夫だ。マイアミに拠点を置くスタートアップBoatsetter(ボートセッター)では、他の人のボートをレンタルできるので、ぜひ同社のサービスを利用してみてほしい。Biscayne Bay(ビスケーン湾)で物思いにふけりながらパドルを漕ぐ方がお好みなら、PADL(パドル)もお勧めである。このスタートアップは、パドルボートを普及させることを目的に最近マイアミに設立された。

マイアミはいつも楽しく、駆け引きに満ちているところだ。マイアミのテック業界における初期の起業家の1人で、事業売却に成功したManny Medina(マニー・メディナ)氏(同氏は2012年にデータセンター事業TerremarkをVerizonへ約1474億9770万円で売却した)は2013年、毎年開催のテック会議、eMerge Americas(イーマージ・アメリカズ)を始めた。この会議を通してマイアミは、北米と南米アメリカを繋げるテックの中心地としての地位を密かに確立してきた。2019年までに40カ国、400社から1万6000人以上の参加者が集まった。マイアミには町の中心部まで15分以内の場所に、世界的な規模の空港がある。この戦略的な地理配置や、空港への便利なアクセスは、他のほとんどの都市にない強みである。それでも疑問は残る。マイアミは新たなテックの中枢となり得るのか。

マイアミは、テックの中枢となるべく確かに正しい道を歩んでいる。マイアミの未来について強気な見通しを立てている投資家もいるが、まだ結論づけるには早すぎると慎重な投資家もいる。

マイアミで今、注目を集めているのはヘルスケア、プロップテック(不動産テック)、フィンテック、エルダーテック(高齢者を対象にしたテック)、物流などだ。注目に値する売却劇(イグジット)を紹介しよう。Chewyの買収(チューウィ、2017年に同社の約3529億4093万円の巨額買収額はeコマース市場の売却記録を塗り替えた)、資金調達に長けたYellowPepper(イエローペッパー)のVisa(ビザ)による買収(取引条件は未公開)、そして2020年の極めつけとして、2億ドル(約210億7110万円)のAscyrus Medical(アスサイラス・メディカル)と3200万ドル(約33億7138万円)のCareCloud(ケアクラウド)の買収がある。

今後買収される可能性のある企業にはNearpod(ニアポッド)、マジック・リープ、Ultimate Software(アルティメット・ソフトウェア)、シップモンク、CarePredict(ケアプレディクト)、MDLIVE(エムディーライブ)、 Papa(パパ)、Caribu(カリブ)、Brave Health(ブレイブ・ヘルス)、REEF(リーフ)などがある。さらにニューカマーにはUpsideHōm(アップサイドホーム)、HealthSnap(ヘルススナップ)、Domaselo(ドマセロ)、Secberus(セクべラス)、Marco Financial(マルコ・フィナンシャル)、Birdie(バーディー)、Kiddie Kredit(キディ・クレディット)、ConciergePad(コンシェルジュパッド)、そしてSustalytics(サスタリティックス)などが控えている。

マイアミは昔から、うなるほど金がある裕福な都市として知られてきた。しかし、これまで、その金は不動産のような、より安全で馴染み深い投資先に投入されてきた。思いつきで10万ドル(約1050万円)ものお金を投資して、それをどうでもいいことだと思うような投資家は現在でも滅多にいない。マイアミ地元の投資家の多くは投資先の選択に慎重で、取引に長けた、他の地域の投資家が投資したラウンドに追随して投資することを好む。そのため、地元の起業家たちは投資元を求めて、国中を駆け回らなくてはいけないといつも愚痴をこぼしていた。だが、今は、ベンチャーキャピタルから多くの資金がこの街に流れ込んできている。これまでよりも資金調達が容易になるに違いない。

マイアミの稀有な価値は、マイアミの人々と、その人々が持つ気質にある。マイアミには、物事を築きあげて成長させ、他者を受け入れるようとする気質を持った人たちがいるのである。「コミュティには歓迎ムードがあり、移住者のために喜んで時間を割いて対応してくれます。こんなにすばらしい歓待を私は今まで経験したことがありません」と、Quixotic Ventures(キクソティック・ベンチャーズ)のMark Kingdon(マーク・キングドン)氏はいう。ここ数年、新規移住者の歓迎を推進してきた団体組織には、Knight Foundation(ナイト・ファンデーション)、 Endeavor(エンドーヴァー)、Miami Angels(マイアミ・エンジェルズ、エンジェル投資を行うフロリダ最大のコレクティブ・インベストメント・ファンド)、リフレッシュ・マイアミ(スタートアップへ情報やイベントを提供し、コミュニティ作りを行う団体)、Venture Cafe(ベンチャーカフェ。週1回開催のイノベーター向け教育プログラム)、500 Startups(ファイブ・ハンドレッド・スタートアップス)やThe Venture City(ザ・ベンチャー・シティ)などがある。

マイアミでは、スペイン起源のコーヒー文化が残るように、この地の多様性は文化に深く浸透している。地元のテックコミュニティはこれまでどおり、今後もマイアミのテック業界の最前線で、多様性、インクルージョン、男女平等を守り抜いていく決意をしている。最近のMiami Tech Manifest(マイアミ・テック宣言)は地元コミュニティのメンバーが草案した。この宣言は、マイアミのテック業界が世界に対して、物事に向き合う自分たちの姿勢を示したものである。女性が世界を動かすにはまだ至っていない(議論の余地があるものの)。しかし、少なくともマイアミのテック業界では女性が大きな原動力となっており、マイアミに多くの人材を呼び込んでいる。

マイアミのテック業界はまだ世界へ飛び立とうとしている時期にあり、地元の企業や新興企業がこれまでの主要なテックハブの間違いや失敗から学び、別のやり方で発展していく余地がある。多くの人にとって夢とは、現在同地のテックコミュニティが目標と掲げ、築きあげようとしている「すべての人のためのマイアミ」を維持しながら、同時にサンフランシスコやニューヨーク市のような経済的な繁栄を享受することだ。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:マイアミ

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Dragonfly)

脱炭素で注目が集まるエネルギー貯蔵スタートアップをVolta Energy Technologiesが支援

エネルギーおよびエネルギー貯蔵素材の最大手数社の支援で、エネルギー系企業への投資とアドバイザリーサービスを提供するVolta Energy Technologies(ボルタ・エナジー・テクノロジーズ)は、1億5000万ドル(約158億5000万円)を目標とした投資ファンドをおよそ9000万ドル(約95億円)でクローズしたことが、同グループの計画に詳しい人たちの話でわかった。

このベンチャー投資ビークルは、これでEquinor(エクイノール)、Albermarle(アルベマール)、Epsilon(イプシロン)、Hanon Systems(ハンソン・システムズ)の4社からすでに約束されている1億8000万ドル(約190億1000万円)のコミットメントを補うこととなった。しかもそれは、これまでになくエネルギー貯蔵技術への関心が高まった時期とうまく重なった。

内燃機関と炭化水素燃料からの移行が本格的に始まると、各企業は、大量の電気自動車(EV)と、いまだ開発段階にある再生可能エネルギーの大量貯蔵に欠かせないコスト削減とバッテリー技術の性能向上を、こぞって追求するようになった。

「資本市場は、脱炭素に巨大な投資機会を見込んでいました」と話すのは、Voltaの創設者で最高責任者のJeff Chamberlain(ジェフ・チェンバレン)氏。

同社は、2012年、オバマ政権下の米エネルギー省トップとチェンバレン氏が話し合いを始めたときに出たアイデアから誕生した。それは、チェンバレン氏がアルゴンヌ国立研究所在籍中に米国政府のバッテリー研究コンソーシアムに参加し、米国屈指の研究所となるJCESR(エネルギー貯蔵研究共同センター)の開設を率いた際の経験が、Volta Energyへと進化した。そこでチェンバレン氏は、民間セクターの投資パートナーに向けて、国立研究所の最先端の研究を活用して民間企業が最高のテクノロジーを生み出すと売り込んだ。

チェンバレン氏によれば、官民双方の研究機関からのVoltaへの支援は強力なかたちで続いたという。トランプ政権下においてさえ、Voltaの主導力はますます力を増し、化学、電気、石油ガス、そして産業熱利用の各業界の大手企業から1億8000万ドルという長期投資につながるファンドへの出資を引き出すことができたと、同氏は話す。

同社の計画に詳しい人たちの話では、1億5000万ドルを目標とし、2億2500万ドル(約237億7000万円)を上限とするこの新規投資ファンドは、現在の投資ビークルを補い、バッテリー業界に大きな資金の流れを作ることで同社の火力をさらに高めるという。

チェンバレン氏は制限があることを理由に、この投資の具体的な内容や条件の説明は避けたが、同社にはバッテリーとエネルギー貯蔵に関連する技術に投資すること、そして「電気自動車の普及と太陽光発電や風力発電の普及を可能にする」と語った。

最初のクリーンテックブームの際に、Voltaの頭脳を支える人たちは、大量の善意の資金がお粗末なアイデアに注ぎ込まれ、商業的成功を見ることなく消えていった様子を目の当たりにしたとチェンバレン氏はいう。Voltaは、エネルギー貯蔵分野で研究者たちが取り組んでいる本物の投資機会に関する教育を投資家たちに施し、そうした企業に資金を投入することを目的に創設された。

「投資家たちがゴミ焼却炉に資金を投げ込んでいると、私たちは感じていました。それが脱炭素へ悪影響を及ぼしかねないとも気づいていました」とチェンバレン氏。「私たちの全体的な目的は、膨大な個人資産の投資先をを各人に指南し、燃え続けるゴミ焼却炉への資金投入を止めさせることにありました」。

このミッションは、バッテリー市場にさらに多くの資金が流入するようになって、さらに重要性を増してきたとチェンバレン氏はいう。

EV業界でのNikola(ニコラ)のPOに端を発したSPAC騒動は、QuantumScape(クアンタムスケープ)のバッテリー関連SPACへ繋がり、その他もろもろのEV関連のOPを招き、やがてはあらゆる方面で、EV充電およびバッテリー関連企業への投資額が吊り上げられた。

チェンバレン氏はVoltaのミッションを、バッテリーと電力管理のサプライチェーン全般にわたる市場への参入を待つ、もっとも優れた新生の技術に資金提供し、生産を確実に軌道にのせ、伸び続ける需要を満たす準備の手助けをすることだと考えている。

「エネルギー貯蔵エコシステムと、その底流にある技術的な課題を深く理解していない投資家は、明らかに不利な立場にあります」と、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の元幹部であり、Voltaの初期の投資家でもあるRandy Rochman(ランディー・ロックマン)氏は声明の中で述べている。「Voltaの知識がなければエネルギー貯蔵の世界では何も起こり得ないと、私は非常に明確に理解しました。エネルギー貯蔵への投資機会を特定し落とし穴を避ける上で、彼らに勝るチームはありません」。

Voltaからの新しい資金は、すでにいくつもの新しいエネルギー貯蔵法と実現技術の支援に向けられている。そこには以下の企業が含まれる。急速充電が求められる場所に適応する、プルシアンブルーを応用した高出力で火災の危険性がないナトリウムイオンバッテリーを開発するNatron(ネイトロン)、使われていない電灯線を利用して電力を分配することで、再生可能電力の統合を最適化し、電力網でのエネルギー貯蔵を可能にするハードウェアを開発するSmart Wires(スマート・ワイヤーズ)、移動体と電力網の両方に使える全固体リチウムバッテリーを製造するIonic Materials(アイオニック・マテリアルズ)。同社のプラットフォーム技術も、5Gモバイルや充電可能なアルカリ電池といった他の成長市場にも革新をもたらす可能性がある。

関連記事:EVが制度面で追い風を受ける中、バッテリー会社が最新のSPACターゲットに

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Volta Energy Technologiesエネルギー貯蔵再生可能エネルギー資金調達電気自動車

画像クレジット:NeedPix under a Public domain license.

原文へ](文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

新型コロナに対抗する投資家たち、ルーマニアの投資家へインタビュー(後編)

記録的な資金調達額と3つのユニコーンの出現で、2021年に向けルーマニアの見通しは極めて明るいと地元の投資家たちは考えている。TechCrunchは最近、8人のルーマニアの投資家に話を聞き、同国が技術系人材プール、ブロードバンドアクセス、安い生活費などによって、業界を超えたリモート優先型グローバル企業の時代に向けて着々と準備を整えていることを認識した。

長い実績のあるルーマニアのコンファレンスHow To Webが発表した最新レポートによると、2020年のルーマニアの活況を示す例として、58のスタートアップが合計3039万ユーロ(約38億5700万円)の資金を調達したという事実がある。この数字はまた、投資総額が前年比6%増、投資件数が同51%増という伸びを見せたことを示している。そして、この伸びの原動力となったのは、初めて資金調達を行う企業の急増だった。

主要産業は、サイバーセキュリティ、企業向けソフトウェア、フィンテックなどであり、ある投資家によれば、多くは「該当分野に関する深い専門知識を持つ超マニアックなチーム」だという。また、別の投資会社は、「当社はルーマニア人の創業者たちに注目している」と語る。しかし、近年は海外移住者が急増しているため、「彼らは世界中どこにでも居を構え起業できる」。

後編では、以下の投資家へのインタビューと回答を掲載する(前編はこちらから)。

Dan Mihaescu(ダン・ミハエスキュ)氏、GapMinder Ventures(ギャップマインダー・ベンチャーズ)創業パートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

フィンテックのML / オートメーション / AIによって実現されたB2Bプラットフォーム、SaaSエンタープライズソフトウェア、サイバーセキュリティ、ヘルスケアIT、少量コード開発環境、対話型テクノロジー、ロジスティクスオートメーション

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

最新の投資は、2021年1月12日に発表したDruidAI(ドゥルイドエーアイ)ですね。当社が250万ドル(約2億6300万円)のラウンドをリードしました。

2020年のその他のエキサイティングな新規または追加投資案件は、TypingDNA(タイピングディーエヌエー)、Fintech OS(フィンテック・オーエス)、DeepStash(ディープスタッシュ)、Soleadify(ソリーディファイ)、Machinations(マシネーションズ)、Innoship(イノシップ)、Frisbo)(フリスボ)、Cartloop(カートループ)、XVision(エックスビジョン)です。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

  • ステージ:シードまたはシリーズA
  • テクノロジー:MLまたはAIによって支援されたオートメーションまたは会話形テクノロジー
  • チーム:国際的拡大の実績が豊富
  • 製品:国際的拡張可能なB2B(主としてB2Bプラットフォームが対象)

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

中東欧で生まれた米国型B2Cモデルは、最初は小規模なローカル市場に限定されますが、その後極めて活発な環境へと進化していきます。具体例として、ルーマニアの共有型経済企業があります。ユニットエコノミクスは、VC投資家としては単純に魅力に欠けていました。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

70%以上

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

当社が繁栄し続けると考えているモデル:オートメーション / 対話形式テクノロジー(ML / AIを使用)によって実現されたB2Bプラットフォームは、国際化という点でB2Cモデルよりも高い可能性を秘めています。

上記でいくつか言及した高い可能性を持ついくつかの分野。

GapMinderのポートフォリオに含まれるエキサイティングな企業:FintechOS、TypingDNA、DeepStash、DruidAI、Soleadify、Machinations、Innoship、Frisbo、Cartloop、SmartDreamers(スマートドリーマーズ)、XVisionなど

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ルーマニア(ブカレスト、クルージュ、ティミショアラ、ブラショブ、オラデア、ヤシなどの都市)は、チャンスに溢れた市場です。優れたチーム、国際的な視点を持つスタートアップが生まれており、オートメーション向けの優れた環境があり、機械学習対応プロジェクトも動いています。
投資環境エコシステムは、プレシードラウンドからシリーズAまで、成熟度を増していますが、まだ過密状態にはなっていません。

全体として、米国およびルーマニア以外の欧州諸国のシリーズBおよび後期シリーズAの投資家にとって可能性のある環境だと思います。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

ハブには、教育プール、新製品をテストするための潜在的な顧客(B2Bまたは洗練度の高いB2C)、スタートアップの初期段階で重要なプレシードラウンドに参加する可能性のある投資家が集中しています。

より高度なスタートアップの場合は、ハイパーグロースが重要になります。そのために必要な、成長して国際化に対応する能力が、特定のハブの存在によって強化されます。言い換えると、ハブでは投資環境に必要なさまざまな複雑な要素がまとめて提供されています。ですから、ルーマニアでは、ハブの役割が弱まることはないと思います。

欧州や米国では、メインのハブが過密状態になっている、あるいは、チームにとって経費が高すぎる、といった点が議論されることがありますが、フェーズの進んだスタートアップがビジネスを拡大するチャンスを提供しているという意味で、ハブの存在は重要です。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

国内外のユーザーの行動がロボットを必要とする方向へと移行しており、結果として次のようなニーズが高まると思います。

  • 人間のような感覚を持ち(自然言語を含め)会話的なやり取りができるツール
  • リモートの共同作業が可能でコーディング量が少ない開発ツール
  • 一刻も早くデジタルでのやり取りへの移行が求められる企業(小規模から大規模まで)が抱える全般的なニーズ

2020年には多くの消費者と企業が最優先事項に注力せざるを得なかったため、「あったら良い程度の」サービスや製品は二の次になっています。VCは、一部の一見面白そうなまがい物テックはいうまでもなく、ハイテク企業とテック対応企業をより明確に区別するようになりました。この変化によって多くの分野が影響を受けており、この傾向は定着すると思います。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

先ほど説明した当社の戦略は、緊急度を増している企業のデジタル化の動きによって恩恵を受けている企業に注目したものです。2020年の当社のポートフォリオ企業の大半が2~3倍の成長を実現しています。

当社のポートフォリオ企業に対するアドバイスは以下に示すシンプルなものです。

  1. 資金がすべてだ。最低18カ月間のランウェイを確保すること。資金調達の機会があれば、真剣に検討すること。
  2. 顧客は最も重要なパートナー。顧客の声を聴くこと。
  3. チームは最も重要な資産。常に密接な連絡を取り、大胆な決断を行ったときにも面倒を見ること。
  4. すばやく行動すること。

もちろん上記以外にも、各チームと具体的に話し合いました。率直に言えば、2020年末にはあらゆる状況が回復しましたが、2020年前半は、当社ポートフォリオの創業者たちも厳しい状況に置かれました。一部の業界では意思決定の凍結に関して疑念が起こり、国際市場の実現で出張が必要になるときは常にストレスにさらされ、大企業内でもチーム間の連携が必要になりました。振り返ってみると、これは正常な状態だったと思います。厳しい状況でも優れた能力を実証してくれた、こうしたすばらしいチームとスタートアップを支援できることを嬉しく思います。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい。2020年の下半期、とりわけ第4四半期にはすでに回復の兆しを感じていました。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

この6週間で新型コロナウイルスのワクチン接種が本格的に始まったことは、個人、社会、そして純粋にビジネス的な視点からも、間違いないく、非常に重要でポジティブな兆候です。GapMinderのチームは楽観的に構えています。

Alexandru Popescu(アレクサンドル・ポペスキュ)氏、Cleverage Venture Capital(クレバレッジ・インベストメント・キャピタル)マネージングパートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

ヘルステック

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Oncochain

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスは何かありますか。次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

チーム、アイデア、トラクション

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

50%

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

Sanopass(サノパス)、Oncochain(オンコチェーン)(この2社は当社ポートフォリオに含まれる)。フィンテック分野、特にFintech OS(フィンテック・オーエス)のTeodeor Blidarus(テオドア・ブリダルス)氏、Sergiu Negut(セルギウ・ネグー)氏。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

極めてダイナミックだが初期段階

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

そうは思いません。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

遠隔医療 – チャンスがある、歯科医療 – 対応に苦慮している

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

新型コロナウイルスによる影響はありません。最大の懸念事項は、チームの成熟度と新しいアイデアを迅速に吸収するマーケットの能力です。投資先には、「ノウハウを見つけてできる限り早く成長するよう努力するように」とアドバイスします。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

明らかな「回復の兆し」が見えます。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

当社投資先の1社の評価額がわずか数カ月後に急騰したこと

Theodor Genoiu(セオドア・ジェノイウ)氏、Roca X(ロケックス)アソシエイト

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

教育テック、エネルギー、ディープテック

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

eコマースマーケットプレイス、一部のサービス領域、モビリティ

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

当社の運用資産の40%をルーマニアに分配することを目指しています。

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

見通しがポジティブな業界 – エデュテック、メディテック、フィンテック、ロジスティクス
エキサイティングな企業 – Fintech OS(フィンテック・オーエス)、Medicai(メディケイ)、Kinderpedia(キンダーペディア)、iFactor(アイファクター)など
見通しがネガティブな業界 – マーケットプレイス、ディープテック、ゲーミング(人材ではなく資金調達面で)、広告

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

大規模な技術系人材プールはあるものの、真の企業家教育、経験、メンタリティーを必要としている成長中のエコシステムです。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

どちらともいえません。より確立されたエコシステムでは、主要都市以外の場所から創業者が押し寄せてくるかもしれませんし、リモートワークが始まったことがスタートアップにとって大きな追い風になるでしょう。ただし、有能な技術系の人材を雇用するのはますます難しくなるでしょう。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社の投資戦略は変わりません。当社のポートフォリオに含まれる創業者たちによくある懸念事項は、新しい創業者パートナーを惹き付けること、一部のターゲット市場で将来を予測できないこと、特定の分野で人材を雇用するのが難しいことです。ケースバイケースですからすべてのスタートアップに対する全般的なアドバイスというものはありません。方針を転換するようアドバイスすることもありますし、大規模な顧客ベースに対してコンバージョン率を上げる努力をするように促すこともあります。あるいは、別の場所で起業するように助言することもあります。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい、そう思います。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

新しいテクノロジーを採用するオープンな姿勢と、教育などのよく知られた保守的な業界で新しい試みが行われていることです。

Matei Dumitrescu(マテイ・ドミトリスク)氏、Impact Capital(インパクト・キャピタル)創業パートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

インパクト、ヘルスケア、エネルギー

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Factor(アイファクター)、Ringhel(リンゲル)、Sanopass(サノパス)

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスは何かありますか。

はい、インパクトスタートアップを見てみたいと思います。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

インパクト、イノベーション、スケーラビリティ

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

マーケティングコミュニケーション、eコミュニケーション、マーケットプレイス

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

ほぼ100%、グローバルな視野を持つ地元のスタートアップに投資しています。

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

テック企業とeヘルスケアです。Medicaiとその創業者Mircea Popa(ミルセア・ポパ)氏には大きな可能性があると思います。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ブカレストは好景気でマーケットは拡大しています。VCも成長しており、新しいイニシアチブの数も急増しています。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

そうは思いませんが、リモートワークは可能だと思います。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

当社はe教育とeヘルスケアの分野に投資する機会がありました。ただし、共有型経済は問題に直面していました。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社のスタートアップはすでに敏捷性が高く、リモートワークに対応しており、デジタルチャネルを介してデジタル製品またはサービスを販売していました。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい、そう思います。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

そのような瞬間はありませんでした。

TC:TechCrunchの読者のみなさんに何か伝えたいことはありますか。

当社はインパクト投資を行っています。インパクトは価値をもたらすからです。人々は価値に対して代価を支払っているのです。

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画像クレジット:frankpeters / Getty Images under a license.

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

新型コロナに対抗する投資家たち、ルーマニアの投資家へインタビュー(前編)

記録的な資金調達額と3つのユニコーンの出現で、2021年に向けルーマニアの見通しは極めて明るいと地元の投資家たちは考えている。TechCrunchは最近、8人のルーマニアの投資家に話を聞き、同国が技術系人材プール、ブロードバンドアクセス、安い生活費などによって、業界を超えたリモート優先型グローバル企業の時代に向けて着々と準備を整えていることを認識した。

長い実績のあるルーマニアのコンファレンスHow To Webが発表した最新レポートによると、2020年のルーマニアの活況を示す例として、58のスタートアップが合計3039万ユーロ(約38億5700万円)の資金を調達したという事実がある。この数字はまた、投資総額が前年比6%増、投資件数が同51%増という伸びを見せたことを示している。そして、この伸びの原動力となったのは、初めて資金調達を行う企業の急増だった。

主要産業は、サイバーセキュリティ、企業向けソフトウェア、フィンテックなどであり、ある投資家によれば、多くは「該当分野に関する深い専門知識を持つ超マニアックなチーム」だという。また、別の投資会社は、「当社はルーマニア人の創業者たちに注目している」と語る。しかし、近年は海外移住者が急増しているため、「彼らは世界中どこにでも居を構え起業できる」。

前編では、以下の投資家へのインタビューと回答を掲載する。

Cristian Negrutiu(クリスチャン・ネグルチウ)氏、Sparking Capital(スパーキング・キャピタル)創業パートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

ルーマニアのエコシステムは初期段階にあると考えていますので、当社のファンドは業界を選びません。個人的には、サプライチェーン、モビリティ、不動産テック、循環 / 共有型経済などの業界に興味があります。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

一番最近では、デジタルフィットネス業界のスタートアップに投資しました。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスは何かありますか。

サプライチェーン関連のソリューションを提供するスタートアップが増えてほしいと思いますね。この業界はパラダイム・シフトが必要だと確信していますから。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

(1)どの市場が対象か、(2)製品は優れているか、(3)チームは優秀か、(4)当社との相性はどうか、といったことを検討します。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

マーケティング分野とファイナンス分野は参入が難しいと思いますし、競争するには従来とはまったく異なる何かが必要だと思います。製品とサービスに関しては、マーケットプレイスは、競争力をつけるために進化する必要があります。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

当社はルーマニアへの投資に集中しています。

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

ルーマニアのエコシステムはまだ初期段階ですが、急速に成長しています。また、将来の見通しも明るいと思います。当社の投資先も含め、ルーマニアのユニコーン企業が今後増えると確信しています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

先ほどお答えしたとおり、ルーマニアの投資環境はまだ初期段階ですが、チャンスに溢れており、急速に成長しています。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

ルーマニアではそうはならないと思います。エコシステムは、まだブカレスト、クルージュ、ヤシなどの限られた都市とそれらの都市内のハブを基盤としています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

従来のHoReCa(ホテル / レストラン / カフェ)ビジネスと全体のトレンドはさておき、コロナ禍の影響はあまり受けていないと思います。実際、不動産テックなどの特定の業界でデジタル化を促進するスタートアップはすべて、コロナ禍の中で成長しています。

TC:御社の投資戦略は新型コロナウイルス感染症の影響をどの程度受けましたか。

当社はできるかぎり通常どおりに行動し、安定したビジネスフローを維持しようと努めています。創業者には、自社のチームと顧客のケアに注力し、現金の扱いには気をつけるように、とアドバイスしています。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい。先ほどお話ししたとおりです。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

常に前向きに考え、必要以上にパンデミックを恐れないようにしています。パンデミックはいずれ収束します。

Cristian Munteanu(クリスチャン・ムンテアヌ)氏、Early Game Ventures(アーリー・ゲーム・ベンチャーズ)、マネージングパートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

当社の投資対象の地理的範囲が限定されていることを考えると(当社の投資範囲はルーマニア国内のみ)、包括的なアプローチで、多くの業界とトレンドを投資対象として検討する必要があります。一例として、当社は今、広く採用されるようになったテクノロジーを特定分野に適用しているスタートアップに注目しています。たとえばコンピュータビジョンを特定の作物に適用するアグリテックや店舗内の顧客の行動に適用するマーテック、(ウェアラブルデバイスを介して収集した)生体情報を個人ではなくグループの相互作用に適用するアイデア、超軽量ブロックチェーン台帳をインテリジェントビルに適用するアイデア、などです。また、別の投資観点から見た場合、「イノベーションのインフラ」とでもいうべき分野にも注目しています。たとえばAPIを構築するスタートアップなどがこれに該当します。ルーマニアでは、API化がまだ十分に進んでいない状態ですから。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

当社は最近、ソフトウェアライセンスの管理方法を効率化する法人向けのサービスを構築しているスタートアップとの条件規定書に署名しました。このスタートアップは超マニアックな人材と、その分野の深い専門知識を備えており、顧客に多大な価値をもたらしています。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスは何かありますか。

ゲーム内決済の簡略化(決済とゲーミングの交差部分に構築)を実現するスタートアップ、灌漑サービス(アグリテック)に取り組むスタートアップ、エネルギー分野のNASDAQを構築するようなスタートアップが登場するのを期待しています。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

優れた能力と勇気の両方を兼ね備えた創業者を探しています。そのような人たちは大きな問題にも敢然と立ち向かい、解決策を見出す可能性を秘めています。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

駐車スペースを探すアプリを構築するスタートアップ、誰も必要としないマーケットプレイス、マーケティング用の市販テクノロジー、CRMとERPなどは、多過ぎて飽和状態ですね。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

当社はルーマニア国内のみに投資しており、地元のエコシステムに100%傾注しています。

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

ルーマニアは自然に恵まれているため、アグリテックには大きなチャンスがあると思います。ただ、この分野はまだ十分なサービスが提供されていません。他にも、サイバーセキュリティ、エンタープライズソフトウェア、フィンテックは本当によく見かけます。当社のポートフォリオに含まれる20のスタートアップの中では、サイバーセキュリティのスキルでマネージドサービスプロバイダーを実現しているCODA、合成培地テクノロジー用のハブを構築するHumans、相互に対話する農業機器を製造するMechine、陳列棚からデータを収集して分析するTokinomo(店舗内マーケティング)、3クリックで誰でも簡単にサーバーをセットアップできる次世代クラウドテックを構築しているBunnyShellなどがあります。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ルーマニアのスタートアップエコシステムはまだ揺籃期であり、国内初のVCファンドがEuropean Investment Fund(欧州投資基金)の支援を受けて3年前に設立されたばかりです。それでも、ルーマニア国内に3社のユニコーンが出現しており、他にも多数の有望なスタートアップがあります。豊富な技術系人材プール、広く普及したブロードバンドアクセス、安いビジネス運営費と生活費などの好条件が揃っているため、ルーマニアは目が話せない市場となっています。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

大都市の創業者たちは大都市に残ると思います。スタートアップを立ち上げて運営するのは、リモートのビーチでラップトップを開いてコードを書くのとはわけが違いますから。製品が市場に適合しているかどうかを懸命に調査する際、創業者は、商談、パートナー訪問、契約書の署名、イベント出席、同業者との会合、調査の実施、プロトタイプの作成など、Zoomでは充分に実行できないことを山ほど実行する必要あります。ルーマニアのテック業界とスタートアップ群は、他国同様、パンデミックで大打撃を受けました。そしてやはり他国同様、生き残り、適応して、2020年3月以前の通常の運営にほぼ戻っています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

残念ながら、都市のモバイルアプリはパンデミックによる制約に苦しんでいます。レストラン、ホテル、従来型イベントに関連するビジネスもすべて大きな影響を受けています。当社はこれらの分野のスタートアップに投資して、パンデミックによる最悪の時期を乗り切れるよう、あらゆる支援を行っています。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

2020年、当社のファンドは、前年比で投資件数は20%減、総投資額で40%減となりました。ですから新型コロナウイルスの影響は甚大です。ですが、ファンドのパフォーマンスで見ると、2020年は良い年だったといえます。当社のポートフォリオの中にも、外部の投資家が参加した新しい投資ラウンドで資金を調達し、評価額の上昇と高い利益率を達成した企業があります。2020年の上半期は被害対策とポートフォリオ企業の支援に終始しましたが、年末に向けて状況の変化が見られ、第4四半期には新しい投資活動も(2019の同四半期を上回るペースで)活発に行われました。VCの支援を受けたスタートアップの場合は、厳しい情勢の中でも資金を調達できる投資家がいるため、必要に応じて支援や追加資金の恩恵を受けることができました。ただし、その他のスタートアップにとっては、はるかに難しい状況だったようです。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

パンデミックが始まったとき最初に気づいたことはおそらく、生産性がピークに達したという事実です。自宅待機が強制された数カ月の間、プロトタイプの制作に取り組んでいた初期段階のスタートアップは作業時間が増え、加速度的に成長しました。人材の定着率も高く、社員は集中して、会社を成功させようという前向きな姿勢と団結する意識があったように思います。実際、スーパーマーケットでTokinomoのロボットが人間の宣伝担当者を置き換えるなど、一部のスタートアップは即座に売上増を記録しました。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

2020年で最も記憶に残っているのは、友人とギリシャの島々をめぐるヨットセーリングを楽しんだことです。あれで充電できて、年末まで仕事をする活力が得られました。そのあとの嬉しい出来事は、12月に、シリーズA投資で当社のファンドのパフォーマンスが向上したことです。

Andrei Pitis(アンドレイ・ピティス)氏、Simple Capital(シンプル・キャピタル)、創業パートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

先進的な知的財産を創造している、ルーマニア人や東欧の創業者が起業したスタートアップに投資するとき

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Uniapply.com

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

創業者に強い熱意と当該分野の深い理解があり、革新的な知的財産を用いてグローバルにディスラプト(創造的破壊)を起こそうとしているかどうかを見ます。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

あまりに多くの人達が、これといった差別化要因もなくプラットフォームを立ち上げるのがどれほど難しいことが理解していないように思います。他のデジタルマーケティングプラットフォームを介して顧客を獲得するのは、そうしたプラットフォームを立ち上げるための、商慣行を逸脱した優位性でもないかぎり、大きな費用がかかります。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

当社はルーマニアの創業者を中心に投資していますが、ルーマニアの創業者も今や世界中どこにでも居を構え、そこで起業できます。ですからルーマニア人創業者によって起業された米国拠点の企業にも多数投資しています。

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

ルーマニアは、サイバーセキュリティ、エンタープライズ向けソフトウェア、およびAIベースのエンジンで勝ち残るのに大変良い位置にいると思います。当社のポートフォリオに含まれるpentest-tools.com(ペンテスト・ドットコム)、deepstash.com(ディープスタッシュ・ドットコム)、uniapply.com(ユニアプライ・ドットコム)には本当にワクワクします。また当社のポートフォリオには含まれていませんが、Fintech OS(フィンテック・オーエス)やTypingDNA(タイピングディーエヌエー)にも期待が持てます。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ブカレストは、グローバル展開へのチャンスに恵まれた、繁栄しているエコシステムです。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

実際、ルーマニアの比較的小さな都市出身の創業者が急増しています。当社は、ルーマニア全体でビジネスを展開しているInnovation Labsプレアクセラレータの創業パートナーでもあり、創業者になることに興味を持つ学生がルーマニア全体で増えていることを実感しています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

モビリティソリューションは影響を受けています。地域の企業はLime(ライム)のような大手企業に敗北しています。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

パンデミックのせいで多くの投資が延期されましたが、年末に向けてこれらの投資ラウンドを完了させました。創業者にとって最大の懸念は、スタートアップとして技術系の人材を惹き付ける力が低下していることです。問題は、技術系の人材は今や世界中どこでも仕事が見つかるため、給与が高騰している点です。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい、そう思います。そうした企業の中には、自宅待機で時間的余裕のできた人たちから生まれた需要の恩恵を受けている企業もあります。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

ワクチンが導入され、ルーマニア国内でワクチンの接種が進んだことですね。極めて迅速な対応でもありませんが、どうしようもなく遅い対応でもありませんでした。ワクチン接種の予約用オンラインプラットフォームも稼働しており、皆が使っています。

Bogdan Axinia(ボグダン・アクシニア)氏、eMAG Ventures(eMAGベンチャーズ)マネージングパートナー

通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

パンデミックによって思いがけず伸びた健康分野と福祉分野は、間もなく変革と成長の時期に入ると思います。すぐに使えるソフトウェアとハードウェアの開発が急速に進んでおり、顧客と規制当局のオープン化も並行して進められています。

最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

食品配達サービスです。この分野はまだ黎明期ですが、食品、半調理済み食品、日用品、食料雑貨など、消費者向けサービスとビジネスの成長という点で大きな可能性を秘めています。

特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスは何かありますか。

B2CおよびB2B2Cのフィンテック分野は比較的多数のスタートアップが起業していますが、まだ成長の余地があります。

御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

ブカレストとルーマニア国内全般に言えることですが、科学技術分野の人材プールという点で大きな可能性がありますし、地域およびグローバルに展開していく拠点としてすばらしい場所だと思います。

他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

投資先としてはすばらしい都市だと思います。インフラ(インターネットの費用と速度、ハブの数)も整備されており、人材プールも豊富で、投資案件数も過去3年間増え続けています。

パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

大都市以外でも起業は増えると思いますが、他の地域から創業者が押し寄せてくるということはないと思います。それは、エコシステムとしては良いことだと思います。

御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

旅行業界は変化への対応に苦慮すると同時に、新しいスタートアップにとって大きな可能性を秘めています。パンデミックの反動で旅行需要が高まる時期があるでしょうが、そのときは従来とは異なるものが求められるでしょう。同時に出張旅行も従来と同じというわけにはいかなくなり、新しい習慣と行動が生まれることになるでしょう。

新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

成長のチャンスはあると考えていますし、投資案件に割り当てる投資額も増えています。スタートアップ各社には調達額を増やして早く成長するようにアドバイスしています。

この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

世界中でワクチン接種が開始され、結果が出始めていることです。

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新型コロナに対抗する投資家たち、アイルランドの投資家へインタビュー(前編)
新型コロナに対抗する投資家たち、アイルランドの投資家へインタビュー(後編)

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:インタビュールーマニアヨーロッパ

画像クレジット:frankpeters / Getty Images under a license.

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

新型コロナに対抗する投資家たち、アイルランドの投資家へインタビュー(後編)

アイルランドのテクノロジーシーンは過去10年で急速に発展し、ベンチャーキャピタルシーンもそれとともに成長してきた。この国の優遇税制と人材プールが、多数のスタートアップ企業とテック界の巨大企業を引き寄せたのだ。

Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、Slack(スラック)、Microsoft(マイクロソフト)、Dropbox(ドロップボックス)はいずれもダブリンに欧州本部を置いている。EUに唯一残った英語使用国としてハブの役割を果たすアイルランドは、これまでになく多様な創業者を惹きつけており、さらに一度は海外に出たテクノロジー企業も、アイルランドのエコシステムの成熟とともにその創設の地へと戻るようになっている。

私たちは現地のベンチャーキャピタル5社に対して、今年アイルランドでの雇用、投資、会社設立を検討しているTechCrunch読者に伝えたいと思う知見について尋ねてみた。

アイルランドのベンチャーキャピタルは、自国から遠く離れた地域に積極的に投資することはない。しかし、アイルランドには優れた投資の機会がたくさんある。国内市場が小さく、アイルランドのスタートアップには立ち上げ時からインターナショナルな考え方が求められることから、現在も質の高いシードが存在している。Sequoia(セコイア)など米国の一流ベンチャーキャピタルもアイルランド企業に投資しており、プレシード段階で投資する場合さえある。

投資戦略の多くにとって、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響は限定的であり、影響といえば対面でのやり取りがZoom(ズーム)通話に切り替わったことぐらいだ。ただし、地元の労働市場における競争の激しさを考えると、雇用の面では難易度が上がったといえるだろう。それでも、トップレベルのエンジニアリング人材を米国より安く採用できるため、起業家が優れた企業を立ち上げるうえで余計な手間は少なくて済む。

ーーー

後編では以下の投資家の話を紹介しよう。(前編はこちらで読める)

ミシェル・ダーバン氏、リシンクエデュケーションマネジメント社パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

私は教育テクノロジーへの投資を専門にしています。教室向けに特化したズーム代替製品、テクノロジーを活用した職業訓練プログラム、分散型の勤務環境での企業向け学習ソリューションに興味があります。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

中南米で提供されているオンラインのスキルトレーニングプラットフォーム、Crehana(クレハナ)です。

TC:業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。現在まだ見過ごされているチャンスはありますか。

  • 解雇された労働者向けのスキルアップ・スキル習得プログラム。
  • 短期間で安価なトレーニングプログラムと、中程度のスキルが必要な職業向けの資格取得サポート。
  • 高校生が大学・就職に向けて準備するのを助けるソフトウェア。
  • 新型コロナウイルス感染症の影響で失われた学習機会を取り戻すのに役立つ、効果的な救済プログラム。

TC:次の投資先を判断する際、通常どのようなことを検討しますか。

プロダクトマーケットフィットの特異な兆候、有効性の証拠、ビジネスモデルが持つインパクトについて検討します。またチームに、問題を独自の観点で理解し、その理解に基づいて行動する能力があるかどうかも見極めるようにしています。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

  • 幼稚園から高校までの教育を補完するアプリ、ゲーム、コンテンツ。
  • テクノロジーブートキャンプ。
  • 企業の学習管理システム。
  • 他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。
  • 80%が米国内、20%が米国外です。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。

有望だと思う創業者は誰ですか。アイルランドには従来から非常に強力なeラーニング/教育テクノロジーのスタートアップセクターがありました。今後が楽しみな成長企業にはLearnIpon(ラーンアイポン)、Learnosity(ラーノジティ)、Alison(アリソン)、TouchPress(タッチプレス)などがあります。アーリーステージの企業にはAvail Support(アヴェイルサポート)、Zhrum(ズラム)、Robotify(ロボティファイ)などがあります。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ダブリンは実に活気のあるスタートアップエコシステムです。若い人が多く、起業家精神を奨励するための政府からの支援が多数あります。多国籍企業や既存のスタートアップから、優秀で経験豊富な人材プールが生まれています。英語が話され、米国やヨーロッパの他の地域にもアクセスしやすいです。

TC:パンデミックや先行きの不安、そしてリモートワークの普及から、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、スタートアップハブの人手が不足する可能性があると思いますか。

私は最近、10年間過ごしたニューヨークからダブリンに引っ越しました。パンデミックの間に、ニューヨークやサンフランシスコといった都市では人口の大規模な流出がありました。居住するうえでの経済的負担やスペースの制約といった犠牲は、長期間在宅勤務が続き、ほとんどの施設が閉鎖されている時にはまったく意味を持たないのです。ダブリンも物価の高い場所なので、規模はそれほど大きくないと思いますが、脱出する動きも見られるでしょう。

TC:投資先のうち、新型コロナウイルス感染症による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮する業界セグメントはどれだと予想していますか。また、そのような変化の影響を他より強く受ける業界セグメントはどれだと思いますか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

新型コロナウイルス感染症の影響により、幼稚園から高校、高等教育から企業における従業員の教育に至るまで、あらゆる年齢層で教育テクノロジーの採用が大幅に加速しています。これはすでに長年存在していたトレンドでしたが、これまでの導入ペースはかなり遅かったのです。テクノロジーを利用した学習体験への依存が長期化し、将来的にもこの状態に戻る必要が潜在することを考えると、教育と学習の方法への影響は恒久的なものになると思います。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

私たちの投資戦略は新型コロナウイルス感染症の影響を受けていません。当社の投資先のセクターについては、チャンスが広がり、関心も高まっていると思います。創業者にとっての最大の懸念は、販売ファネルの先行きが予測しにくいこと、消費者による購入の決定に遅れが発生する可能性、およびその結果生じるキャッシュフローへの影響です。コロナ禍が実際には有利に働いた企業にとっても、先行きを予測するのが非常に難しくなっており、創業者にとって大きなストレスとなっています。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

はい。上述のとおりです。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

米国の大統領選挙でバイデン氏が当選したこと、そして教育長官と内閣について同氏が検討している人選です。

ウィル・プレンダガスト氏、フロントラインベンチャーズ社パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

フロントラインではオポチュニスティックな投資アプローチを採用し、B2B分野内でさまざまなトレンドを受け入れています。全体として、以下のような点に取り組む創業者を支援することを楽しみにしています。

ソフトウェア・製品開発スタックの複雑さ:ますます多くのビジネスがソフトウェアビジネスになり、ソフトウェア製品がいっそう複雑になるのに合わせて、その複雑さを抽象化し、ソフトウェア製品同士をつなぐツールのレイヤーが出現するでしょう。APIを重視する企業が増えるにつれて、他のソフトウェアを使用するソフトウェアの出現が促進されるため、ソフトウェアビジネスは今後10年間、エキサイティングな分野になるでしょう。

埋め込み型金融:金融機関以外の企業が自社のカスタマーベースを活用して金融商品を提供できるよう支援するフィンテックに期待しています。埋め込み型金融を実現するうえで、オープンバンキングが大きな役割を果たします。

プロセスの増強(プロセスの自動化ではない):現在、さまざまなセクターにおいていくつかの重要スキルにギャップが生じており、企業がそうしたスキルギャップを解消できるようサポートするソフトウェアが登場しています。これらのソフトウェア製品は、高度なスキルを持つ労働者が生産性を最大限に発揮するのに役立ちます。

現在の環境においては、新型コロナウイルス感染症によって発生した以下の重要トレンドを広くターゲットにしたスタートアップにもたいへん興味があります。

  • 効率を高め、患者のリモート診察を実施したいと考えている病院やクリニック。
  • 金融犯罪の増加を警戒している銀行。
  • 人事チームや財務チーム向けの、リモート従業員管理ツール。
  • 中小企業の清算に伴う債権回収の自動化。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

最近、金融犯罪のムーディーズになることを目指しているドイツ企業に出資しました。
2008年以降、大手銀行は地方のリテール銀行との取引に消極的になりました。そうした銀行は不当にも、ポートフォリオの中で「リスクが高すぎる」と見なされていたのです。このドイツ企業は、業界に根本的な変化をもたらし、従来の項目チェックによるコンプライアンスから、データ主導のリスク判定方法へと業界を移行させることを目指しています。銀行間の公平性と透明性を高められるのは楽しみです。必ずや大きな価値が消費者に還元されるでしょう。

TC:業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。現在まだ見過ごされているチャンスはありますか。

現在B2B決済はルネサンスを迎えていて、Bill.com(ビルドットコム)のような企業が公開市場を支配しています。製品スタックの中にフィンテックが入り込む側面が増えるにつれて、決済は市場の勝者を決めるうえで取っ掛かりでしかなくなっています。大企業と中小企業の両方は、企業金融の根本にある問題の解決がビジネスチャンスであることを依然として大いに見落としています。

また、中小企業と大企業レベルで、CFOの負担軽減に取り組む企業が増えてほしいと思っています。リアルタイムの給与計算から財務、従業員の年金管理に至るまで、CFOの作業の多くは手作業で、時間がかかるのです。

これまでもCFOの特定の負担を大きく軽減する企業(グローバルな給与自動化プラットフォームであるPayslip(ペイスリップ)など)をサポートしてきましたが、この領域にはまだエンドツーエンドの自動化の余地があると感じます。

TC:次の投資先を判断する際、通常どのようなことを検討しますか。

大志を抱いて初めて起業する創業者であれ、ビジネスを軌道に乗せることの難しさを知るベテラン創業者であれ、私たちが探しているのは、強い意志を持った同志を求めている挑戦者です。投資する時はいつでも、創業者の自己認識を何よりも重視しており、それが優れたチームを構築し、ビジネスを世界に拡大するための鍵だと考えます。熱意に経験は不要です。私たち自身にもテクノロジーについての深い知識があるので、ヨーロッパ全土において、テクノロジー、コンピューターサイエンス、エンジニアリングの分野のパイオニアに投資したいと思っています。そして投資先の企業には、大西洋両岸で事業を構築し、拡大してきた私たち自身の経験を共有し、創業者がビジネスを軌道に乗せ、世界に羽ばたけるよう支援します。

新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

新型コロナウイルス感染症によって発生した現在の状況に特化して構築された製品は、18か月後に今とまったく異なる環境に置かれる可能性があります。現在の状況よく観察し、今後数年間でそうした状況がどのような影響を及ぼすかについて確かな意見を持つ創業者と関わっていけたらと思っています。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

私たちは大西洋両岸の創業者のうち、グローバルな展開を目指している創業者をサポートしています。Frontline Seed(フロントラインシード)はヨーロッパ全体のアーリーステージ企業を対象としたファンドであり、ヨーロッパ各地に投資しています。Frontline X(フロントラインエックス)は、成長段階にある企業に対して迅速かつスムーズに米国と欧州に拡大していけるよう支援するファンドです。
フロントラインを設立したばかりの頃、私たちの投資先の大部分はアイルランドでした。2012年以来私たちは対象範囲を拡大し、過去数年間はヨーロッパ全体をかなり広くカバーするようになっており、現在アイルランド、英国、ドイツ、オランダ、南ヨーロッパに投資しています。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

Amazon(アマゾン)、フェイスブック、グーグル、Zendesk(ゼンデスク)、Hubspot(ハブスポット)といった(他にも多数ある)米国のテクノロジー企業が、アイルランドに足がかりとなる拠点を持っています。

ほとんどの場合、トップクラスのエンジニアリング人材を米国より安価に調達でき、好循環が生じます。つまり、企業は優れたエンジニアのスキルを高め、エンジニアは優れた企業を作り上げるのです。

結果として、アイルランドではスタートアップの開発者向けツールが盛り上がっています。一例がTines.io(ティネス.イオ)です。Accel-and-Index(アクセル・アンド・インデックス)が支援しているこの会社は、ダブリンにある世界的に有名なセキュリティチームによって設立されました。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

アイルランドには知られざる優れた企業がたくさんあり、私たちもそういした企業に投資してその恩恵にあずかっています。しかし、ティネス.イオ、Intercom(インターコム)、Stripe(ストライプ)などのよく知られた企業もあり、そうした企業は投資家の関心を集めています。

すでに、セコイアのような米国のトップレベルのベンチャーキャピタルが、まだプレシードステージにあるアイルランド企業にも投資するようになっています。当社の投資先にも含まれているエバーバルトはその一例です。

TC:パンデミックや先行きの不安、そしてリモートワークの普及から、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、スタートアップハブの人手が不足する可能性があると思いますか。

グローバルファンドである当社において重要な理念の1つは、優れた企業と卓越した創業者は、世界のどの場所からも現れる可能性がある、ということです。新型コロナウイルス感染症により、従来の「テクノロジーハブ」モデルが大きく崩れました。あらゆる段階の創業者が、企業はリモートの世界でもやっていけるというだけでなく、成功も可能であることを認識するようになっていると思います。

とはいえ、地理的要素もまだまだ重要だと考えています。例えば、成長段階にある米国のB2B SaaSビジネスがヨーロッパに進出する場合、法人の重要性はこれまでと変わりませんから、アフターコロナの世界でも拠点をどこに置くかが重要になるでしょう。

TC:投資先のうち、新型コロナウイルス感染症による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮する業界セグメントはどれだと予想していますか。また、そのような変化の影響を他より強く受ける業界セグメントはどれだと思いますか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

小売店の閉店は、eコマースが驚異的に成長していることの表れです。大小さまざまな企業が、バックエンドとフロントエンドを強化し、サプライチェーンの可視性を高めてカスタマーサービスを向上させようとしています。

オンライン決済は、金融犯罪の増加にもつながります。銀行は不正行為を検出できるツールを必要としています。

消費が低迷すると、人事部門が給与の流動性を高めて従業員の年金積立を助け、経済状況を改善する必要が出てきます。

これらは影響のごく一部にすぎません。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

新型コロナウイルス感染症によって当社の投資戦略が変わることはありませんでしたが、ビジネスの運営と構築の方法には永続的な影響があるでしょう。パンデミックによって、「製品やビジネスモデルについて、アフターコロナの世界における成功の可能性を見定める」という新たな観点が生まれました。
現在、創業者たちが最も気にかけているのは、エンゲージメント(企業文化の維持)と人材(チームの拡張、上級管理職の採用)です。

状況は会社ごとに違うので十把ひとからげな言い方は控えたいと思いますが、創業者たちにとって今時間を取ってすべきなのは、どのような働き方が会社にとって最善かを考え、従業員の意見によく耳を傾けることだ、というアドバイスはできます。事業の拡大を続けながら、企業文化としてインクルージョンとエンゲージメントを維持し、高めていく方法を考える必要があります。

また、可能なうちにバランスシートを改善しておくようにしましょう。信じがたいかもしれませんが、前四半期のヨーロッパでのベンチャーキャピタルによる出資額は過去最高を記録しました。資金を調達して、ランウェイをできるだけ長く確保しておきましょう。今後12か月間に何が起こるか、実際のところ誰にもわからないのです。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

当社の投資先では、3社の回復の兆しが際立っています。

ワークヴィヴォはデジタルを利用して企業文化とコミュニケーションを高めるためのサービスを提供しています。同社は大手顧客からの需要に対応するため、このパンデミックのさなかに、米国の投資会社Tiger Global(タイガーグローバル)からシリーズAの資金調達に成功しました。

Qualio(クオリオ)も当社の投資先に含まれ、ライフサイエンス企業や製薬企業向けの品質管理ソフトウェアを販売しています。同社は第2四半期において目標をはるかに上回り、シリーズAで1100万ドル(約11億6000万円)を調達しました。

Signal AI(シグナルエーアイ):メディアのモニタリングは、騒然とした時代の広報・コミュニケーション担当者にとって魅力的なアプローチです。同社は最近、Deloitte(デロイト)をパートナーとして、新型コロナウイルス感染症がサプライチェーン、ビジネス、社会、旅行に対してどのような影響を与えてきたのか、また今後はどのような影響があるのかを調査し、レポートを作成しました。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

当社の投資先に含まれる企業が、従業員の健康、福祉、安全を非常に重視していること、そして会社の活力を保つために懸命に努力していることです。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:インタビュー

[原文へ]

(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

THE SEEDが上場企業経営経験者が「インターン」のメンターとして参画するプログラムをClubhouseで開始

THE SEEDが上場企業経営経験者が「インターン」メンターとして参画するプログラムをClubhouseで開始

「若い才能が活躍する入り口となる」ことを目指すシードVCの「THE SEED」は2月18日、上場企業経営の実績を持つエグゼクティブが「インターン」のメンターとして参画するプログラム「#THESEEDハウス」を開始したと発表した。Clubhouseにおいて、毎週月・水・金11時から30分間開催している。

THE SEEDは、次世代を担う才能が集う場をオンラインで設けるために、「#THESEEDハウス」を開始したという。オープンなチャネルとして開催し、質問や話が気軽にできる場としていくそうだ。

#THESEEDハウスには、上場企業の経営実績や士業としての実績を持つ方が「インターン」のメンターとして参画。フラッと立ち寄って、「VCやエンジェル投資家との投資面談」「同世代起業家との接点」「創業者探し」「メンター発見」などが起こる機会を提供していくとしている。

THE SEEDが上場企業経営経験者が「インターン」メンターとして参画するプログラムをClubhouseで開始

  • 須田仁之氏(弁護士ドットコム、グッドパッチ監査役。毎回参加予定)
  • 中林紀彦氏(ヤマトホールディングス執行役員)
  • 西尾公伸氏(第二東京弁護士会)
  • 原田明典氏(DeNA 常務執行役員)

THE SEEDは、廣澤太紀氏が前職East Venturesから独立し、シードラウンド向けとして2018年に立ち上げたファンド。若い才能が活躍する入り口となり、大きな挑戦の後押しをするとしている。1000万円前後の出資を行い、その後シリーズAで資金調達を達成するための支援として、同世代起業家のネットワーク提供や、ベンチャーキャピタル・エンジェル投資家の紹介などを行っている。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Clubhouse(製品・サービス)THE SEEDVC / ベンチャーキャピタル(用語)日本(国・地域)

新型コロナに対抗する投資家たち、アイルランドの投資家へインタビュー(前編)

アイルランドのテクノロジーシーンは過去10年で急速に発展し、ベンチャーキャピタルシーンもそれとともに成長してきた。この国の優遇税制と人材プールが、多数のスタートアップ企業とテック界の巨大企業を引き寄せたのだ。

Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、Slack(スラック)、Microsoft(マイクロソフト)、Dropbox(ドロップボックス)はいずれもダブリンに欧州本部を置いている。EUに唯一残った英語使用国としてハブの役割を果たすアイルランドは、これまでになく多様な創業者を惹きつけており、さらに一度は海外に出たテクノロジー企業も、アイルランドのエコシステムの成熟とともにその創設の地へと戻るようになっている。

私たちは現地のベンチャーキャピタル5社に対して、今年アイルランドでの雇用、投資、会社設立を検討しているTechCrunch読者に伝えたいと思う知見について尋ねてみた。

アイルランドのベンチャーキャピタルは、自国から遠く離れた地域に積極的に投資することはない。しかし、アイルランドには優れた投資の機会がたくさんある。国内市場が小さく、アイルランドのスタートアップには立ち上げ時からインターナショナルな考え方が求められることから、現在も質の高いシードが存在している。Sequoia(セコイア)など米国の一流ベンチャーキャピタルもアイルランド企業に投資しており、プレシード段階で投資する場合さえある。

投資戦略の多くにとって、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響は限定的であり、影響といえば対面でのやり取りがZoom(ズーム)通話に切り替わったことぐらいだ。ただし、地元の労働市場における競争の激しさを考えると、雇用の面では難易度が上がったといえるだろう。それでも、トップレベルのエンジニアリング人材を米国より安く採用できるため、起業家が優れた企業を立ち上げるうえで余計な手間は少なくて済む。

ーーー

前編では以下の投資家の話を紹介しよう。

アンドルー・オニール氏、アクトベンチャーキャピタル社プリンシパル

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

セキュリティ分野とエンタープライズ向けソフトウェアの分野には、質の高いシード企業に投資するチャンスがあります。そうしたシード企業は、開発者ファーストでボトムアップ型の市場進出戦略を持っており、非常に楽しみです。セキュリティの「シフトレフト」はよく知れ渡っている考え方とはいえ、開発者が設計段階においてセキュリティについて熟考し、セキュリティを実装するという文化はまだ芽生えたばかりなので、この先が非常に楽しみです。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

B2BのSaaSデザインツールで、Figma(フィグマ)、Sketch(スケッチ)、Invision App(インビジョンアプリ)などの方面になります。この分野には、興味深いエンジェル投資家たちが投資しています。まだ取引がまとまったばかりで、公式には発表されていませんし、広告会社にもまだ話していないんですが、皆さんにはそっとお知らせしますね。

TC:業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。現在まだ見過ごされているチャンスはありますか。

アイルランドの国内市場は非常に小さいので、英国のようなレベルの優れたB2Cはまだ出現していません。コンシューマー分野に特化し、コンシューマーテックで2回、3回起業する人はあまりいません。それでも、コンシューマー分野にはもちろんまだ大きなチャンスがあると思いますし、Buymie(バイミー)のような企業はアイルランドのコンシューマー分野での成功が可能なことを証明しています。

TC:次の投資先を判断する際、通常どのようなことを検討しますか。

どの投資でも同じです。その会社は課題を本当に理解しているか、製品に強い思い入れがあるか、事業を続けていくために必要な忍耐力や気力を持っているか、そして最後に、その会社には新たなカテゴリを生み出すポテンシャルがあるか、といった点です。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

競争がないところに、市場はありません。ただ、リモートワーク支援、生産性向上ツール、企業文化の指標に関連した人事関連テクノロジーなどには大量のスタートアップが存在しています。もちろん、働き方の未来に変化の波が起きているところなので、先のことはまだ誰にもわかりませんし、この先新しいカテゴリの勝者も出てくるでしょう。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

アイルランドを非常に重視しているので、50%を超えます。欧州ではシリーズAとBにも投資しますが、シードへの投資はアイルランドだけにしています。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

エンタープライズ向けソフトウェアのスタートアップは、これまでもアイルランド国内で成功を収めやすい位置にありました。20年以上に及ぶアイルランドへの海外直接投資の後押しで大規模な多国籍企業が進出し、そこから出現する優れた人材という2次的効果によって、その傾向がさらに増しています。アクトからは120社以上に投資していますが、その半数以上がエンタープライズ向けソフトウェアの企業です。楽しみなこととして、私たちのポートフォリオにも(つまりアイルランドにも)、Provizio(プロヴィズィオ)のBarry Lunn(バリー・ラン)氏やServisBOT(サービスボット)のCathal McGloin(キャサール・マクグロイン)氏のような、起業を複数回手掛ける人が増えてきています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか

最近のアイルランドのデータを見ると、過去4年間で年間の投資額は4億100万ユーロ(約500億円)から8億6000万ユーロ(約1080億円)と115%増加しています。市場規模が2倍になり、可能性のあるシード企業も出てきていますから、今後が非常に楽しみです。

TC:パンデミックや先行きの不安、そしてリモートワークの普及から、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、スタートアップハブの人手が不足する可能性があると思いますか。

個人的には、Cork(コーク)やLimerick(リムリック)といった南部、さらに西部のGalway(ゴールウェイ)などからもすばらしいスタートアップがさらに出現するのを期待していますが、パンデミックや在宅勤務のためにスタートアップハブの人手が大幅に減るとは予想していません。

TC:投資先のうち、新型コロナウイルス感染症による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮する業界セグメントはどれだと予想していますか。また、そのような変化の影響を他より強く受ける業界セグメントはどれだと思いますか。

人々がビジネスのやり方を再考し、状況に適応させていかざるを得なくなっている現在、今後どれほどの出張が可能かというのが、現在大きな疑問となっているのは明らかです。業界のこの変化だけでも、長期的には勝者と敗者が大きく分かれる要因となるでしょう。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

私たちが投資時に検討する長期的な時間枠を考えると、影響はそれほど大きくはありません。消費者の行動の変化、eコマースの採用加速、デジタルトランスフォーメーションなどに関するもっと大きな問題を検討する必要があるのももちろんです。私たちからのアドバイスは必ずそれぞれのスタートアップに合わせたものですし、求められた場合にしか提供しません。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

はい。私たちの投資先企業は新型コロナウイルス感染症の影響の中でも非常にタフであることを示しています。SilverCloud Health(シルバークラウドヘルス)、Toothpic(トゥースピック)、バイミーなどの企業は、今のパンデミック環境のために強い追い風を経験しています。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

個人的には、優れた才能や深い専門知識を持つ、シード段階の創業者の存在です。そして、そうした創業者がこれまでに複数の会社を起こしていることです。彼らはこれまで以上に大きな成功を収めるために今回の起業では何をしたいのか、何をする必要があるのかがはっきりわかっているため、きっと以前よりずっと早く結果を出せると思います。

イサベル・オキーフ氏、シュアバレーベンチャーズ社プリンシパル

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

AIや機械学習、サイバーセキュリティ、没入型テクノロジー、ゲームインフラストラクチャです。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか

Getvisbility(ゲットビズビリティ)とVolograms(ヴォログラムズ)への投資です。

TC:特定の業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。今、見過ごされているチャンスは何かありますか。次の投資先を判断する際、通常どのようなことを検討しますか。

テクノロジーを使用して揺るがぬ地位を築きつつある企業や、新しい市場を創造する企業です。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

ライドシェアリング、オンデマンド配信、決済、チャレンジャーバンクです。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

他のスタートアップハブと比較した場合、地元のエコシステムへの投資額は50%を超えます。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

これから成長が続く業界には、金融サービス、不動産・建設、製薬、製造業、巨大テックがあります。VividQ(ヴィヴィッドキュー)、Admix(アドミックス)、バイミー、Nova Leah(ノヴァリア)、WarDucks(ウォーダックス)といった当社の投資先に含まれる企業にとても期待しています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ダブリンとアイルランドでは、活気のあるテクノロジーのエコシステムが成長を続けており、投資の大きなチャンスが多数存在しています。

TC:パンデミックや先行きの不安、そしてリモートワークの普及から、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、スタートアップハブの人手が不足する可能性があると思いますか。

そういうことが起こるだろう、という点には同意します。ただ、ワクチンが完成すれば、都市が復権し、当然人々は都市生活に再び魅力を感じるようになるでしょう。

TC:投資先のうち、新型コロナウイルス感染症による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮する業界セグメントはどれだと予想していますか。また、そのような変化の影響を他より強く受ける業界セグメントはどれだと思いますか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

一部の投資先セグメントでは、新型コロナウイルス感染症の影響が見られますが、それは限られたものです。リモートワーク、eコマース、オンデマンド型の食品配達、サイバーセキュリティ、ゲーム、各種没入型テクノロジーといった、今後の働き方に関連した事業を展開する会社にはチャンスがあります。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

多くのプロセスがズーム経由に変わったのに慣れる必要があったことを除けば、新型コロナウイルス感染症による投資戦略への影響はあまりありません。これまでの投資先も比較的影響の少ない分野が多かったので、特定のセクターや業界から引き上げることもしていません。当社の投資先の創業者たちが最も心配しているのは、次の資金調達ラウンド、主要マイルストーンの達成状況、再現可能な市場戦略の達成、優れた人材の採用といったことです。

現状、投資先のスタートアップへのアドバイスとしては、バーンレートを注意深くモニタリングし、資金調達に乗り出す場合は、当初の予想より最低2か月長くかかる可能性を認識しておくことです。また、売上が伸び悩む時期にも、製品や技術の開発を続けておけば、そうした時期から抜けた時には自社の製品や技術も市場で有利な立場に立つことができ、売上もそれに続いて増えるでしょう。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

はい、オンデマンド型の食品配達企業であるバイミーでは、パンデミックによってサービスに対する需要が急増しており、その勢いに「回復の兆し」が見られます。サイバーセキュリティ企業であるゲットビズビリティについても、金融サービス、製薬、国防関連といった業界の企業からの関心が急激に高まっています。そうした企業は、自宅勤務やサイバー攻撃のリスクが高い場所からの勤務に対応できるよう自社の体制を整えようとしています。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

ワクチン接種が当初の予想より早まり、来年には元の生活に戻れるかもしれない、という最近の発表は、誰もが待ち望んでいたものだったと思います。

ニコラ・マクラファティ氏、ドレイパーエスプリ社パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

働き方の未来、エンタープライズ向け機械学習アプリケーションのコンシューマー化です。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

コネクテッドホーム向けのカスタマーケアを自動化する、Sweepr(スウィーパー)です。

TC:業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。現在まだ見過ごされているチャンスはありますか。

真のAI、デジタルヘルスです。

TC:次の投資先を判断する際、通常どのようなことを検討しますか。

その会社に世界展開への意気込みがあるかどうかを検討します。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

Eスクーターですね。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

約20%です。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

ソフトウェアアプリケーション、AI、機械学習、ライフサイエンス。注目の企業はWorkVivo(ワークヴィヴォ)、Manna Aero(マンナエアロ)、Open(オープン)、スウィーパー、Roomex(ルーメックス)、Evervault(エバーバルト)です。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

残念ながら、シード段階のスタートアップに対する地元のプレーヤーからのサポートは著しく不足しています。労働市場ではテクノロジー業界の大手多国籍企業との競争になるので、雇用が難しくなる場合があるでしょう。しかし、創業精神の強いカルチャー、企業当初からグローバルな考え方ができること、および非常に豊富な技術者たち(アイルランドの各大学が供給源)は強みです。また、アイルランドに拠点を置こうと計画するヨーロッパの起業家もいますし、ブレグジットによってさらに多くの起業家がこの地に集まることになるでしょう。

TC:パンデミックや先行きの不安、そしてリモートワークの普及から、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、スタートアップハブの人手が不足する可能性があると思いますか。

おそらくスタートアップ経済はもう少し国内に分散するようになると思いますが、これは前向きな変化です。ダブリン、コーク、ゴールウェイなどの都市は引き続き強力なハブとなるでしょう。

TC:投資先のうち、新型コロナウイルス感染症による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮する業界セグメントはどれだと予想していますか。また、そのような変化の影響を他より強く受ける業界セグメントはどれだと思いますか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

トラベル関連のテック企業には非常に厳しい状況でしたが、優れた企業が生き残り、旅行が再び可能になった時には新型コロナウイルス感染症の反動でかなりの勝ち組が出現するでしょう。また、デジタルインフラストラクチャとコストカットに配分される予算が劇的に増えており、さらに生産性が主要な検討事項となれば、エンタープライズ向けSaaSの導入や自動化を促進する企業にとって、大きなチャンスが訪れるでしょう。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

戦略はほとんどそのままに、企業をサポートするためにさらに準備金が使われるでしょう。直接影響を受けたビジネス(旅行など)の場合、懸念事項はパンデミックからの回復を見極められるかどうかということと、回復のタイミングですが、いずれも創業者がコントロールできることではありません。不確実な時代において他に懸念されるのは、資金のランウェイ(手元の資金が枯渇するまでの期間)です。今後の資金調達において、自社の業績に対して市場からどのような評価が下されるかは予測できないためです。大企業では、営業モデルをどのようにリモートワーク体制に適応させるかがポイントです。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

確実に見えてきています。テクノロジービジネスの多くは非常に順応性が高く、顧客のニーズの変化に対応してきました。第2四半期には大きな変化が見られなかったものの、第3四半期は多くの企業が順調に回復し、力強い成長へと転じています。初期の動揺はすでに終息しています。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

ワクチンについての発表です!パンデミックからの回復への道が見えてきました。

後編にすすむ

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タグ:インタビュー

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

日本のUncovered Fundがアフリカのアーリーステージ企業向けに15億円超のファンドを設立

アフリカのアーリーステージのスタートアップをターゲットにしたVC「Uncovered Fund(アンカバードファンド)」は2月16日、1500万ドル(約15億9000万円)のファンドを立ち上げたことを発表した。新ファンドは6月末にクローズする予定だという。2019年に寺久保拓摩氏が設立した東京を拠点とする同社は、アフリカのスタートアップのシードおよびシリーズAステージを対象に、5万ドル(約530万円)から50万ドル(約5300万円)の投資を実施する。

寺久保氏はUncovered Fundの前は、Leapfrog VenturesのCEOを務めていた。日本のスタートアップインキュベーターであるサムライインキュベートと共に、アフリカのアーリーステージのスタートアップに特化したファンドSamurai Incubate Fundを立ち上げた実績がある。在任中はケニア、ウガンダ、ルワンダ、南アフリカ、ガーナ、ナイジェリアのスタートアップを対象に450万ドル(約4億8000万円)以上の資金調達を行った。また、Uncovered Fundと同様の投資レベル(5万ドルから50万ドル)で10社以上のスタートアップに資金を提供した。

寺久保氏は、なぜSamurai Incubate Fundを去ったのかはコメントしていない。しかし、同氏によると、Uncovered Fundの投資手法は、資金を提供するだけではないという点で、前職の会社とは異なるという。

「散らばった一発勝負の少額投資を行うのではなく、フォローアップ投資を含めた長期的な成長支援を行います。また、投資だけでなく、日本企業の莫大な資産を掛け合わせて事業を成長させ、技術的なサポートや融資も行っていきます」と同氏。

これらの企業が誰であるかについては、寺久保氏はまだ名前を公表していないが、今後数ヶ月のうちに公表したいと述べた。

Uncovered Fundは、ケニア、ナイジェリア、南アフリカを中心に、リテール、フィンテック、ヘルステック、ロジスティクス、MaaS、アグリテック、スマートシティなどの分野で活躍するスタートアップに注力する。ゼネラル・パートナーは、「これらは人々が生活する上での基本的な行動であり、できるだけ早く利便性を向上させることが重要だと考えている」ため、これらのセクターに投資を行うと述べている。

同社は、これらのセクターや市場にまたがるスタートアップ5社へ既に出資していることも明らかにした。その中には、ケニアのeコマース・プラットフォームSky Garden、米国を拠点とし、アフリカに特化したヘルステック・スタートアップのRxAll、フランス語圏アフリカのモビリティ・スタートアップGozem、ケニアのフィンテック企業LipaLater、YCの支援を受けたナイジェリアのデジタル貨物輸送スタートアップSEND Technologiesが含まれている。

これらの企業の中には他の国でビジネスを展開している企業もある。寺久保氏によると、同社は他のアフリカ諸国のスタートアップにも資金提供を検討するという。

「我々は、複数の国にまたがって事業を拡大するアフリカのスタートアップを探しています。ですから、スケールできるビジネスであれば、どの国のスタートアップでも歓迎します」。

Uncovered Fundは、Future HubKepple Africa、そして最近立ち上げられたSherpa VenturesなどのアジアのアーリーステージVCの仲間入りをすることになる。これらの過去4年間にローンチされたファンドは、合わせて50社以上のアフリカのスタートアップに資金を提供している。寺久保氏は、今年は15社のスタートアップを支援し、アフリカの創業者とアジアの投資家との相乗効果をさらに高めることで、この数を増やしたいと考えているという。

「我々はアフリカからアジア市場までの共同開発を視野に入れており、それが将来の大きなビジョンとなっています」と同氏はいう。「VCとして、また起業家として、アフリカの起業家のみなさんと一緒にその未来を創っていくチャレンジを楽しみにしています」。

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タグ:アフリカ

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nakazato)

テキサス州伝統の重工業のデジタル化を目指すIronspring Venturesが新たなファンドを構築

湾岸に並ぶ石油精製工場から州西部の油田に至るまで、重工業はつねに、テキサス州の経済の大きな部分だった。

しかし今や、ベンチャーキャピタルたちがカリフォルニアからの大量脱出の一環として同州に移動するに伴い、新たなファンドがテキサスの工業の過去とハイテクの未来を結びつけようとしている。

そのファンドの一つであるIronspring Venturesが、資金調達努力の開始から2年近く経った今、その最初のファンド構築努力を総額6100万ドルで完了した。

同社の主なパートナーは、スタートアップへの初期的投資を専門とするHolt Venturesの共同創業者であるAdam Bridgman氏とPeter J. Holt氏、そしてG.E. VenturesとPritzker Groupの元投資家であるTy Findley氏らで、Bridgman氏によると、彼らの協力の成果であるIronspring Venturesのベンチャーは、「レガシーな重工業の全域におけるデジタルの採用を加速すること」をミッションとする。

Ironspringのチームの各メンバーは、工業技術と関わってきた長い履歴があり、テキサスの経済に深く根を張っている。マネージングパートナーのFindley氏は「テキサス東部の何もないへき地で育った」が、家族はテキサスとルイジアナの州境一帯に複数の企業を作った起業家家族だった。

Bridgman氏は曰く、「その後、もう一人の共同創業者でマネージングパートナーであるPeter Holt氏と一緒になった。そしてそれがまさに、デジタル革命の初期段階にあるレガシーな業界に投資するという、広漠としたミッションを追う第一歩だった。そんな業界の文化をよく知っていて稀な経験を持つTy Findley氏との出会いが、幸運だった。しばらくは共同で資金調達を続け、お互いをよく知ることに努めた。われわれが力を合わせてファンドを立ち上げ、構築していった12月までの最後の1年半は、素敵な旅路だった。

3人にとって最初の投資は、リモートワーカーに情報とサービスを提供するAugmentirだった。Findley氏は曰く、「われわれにとっては、何もかもが『工業のデジタル化』という言葉に行き着く。しかし、この国のGDPの大半が製造業であることを知らない人が多いから、彼らとのギャップは大きい」。

目下Ironspringは4つのポートフォリオ企業に投資している:

 ・Mercadoはインポートの工程を改善するサービスを開発している。
 ・Icon Buildは建設業のための3Dプリントツールと技術を開発している。
 ・FastRadiusはプロトタイピングと工業デザインのためのデザインツールとサービスを提供している。
 ・GoContractorは安全性とコンプライアンスの管理サービスだ。

パートナーたちによると、同社の投資サイズは一件が100万ドルから400万ドルぐらいで、平均すると約250万ドルだ。つまり今は、「プレシード」クラスの案件を追っている、ということだ。

そして今同社が求めているのは、多様な工業製品に関して製品の設計から、製造、そしてサービスの提供までの過程をDXする(デジタル変換する)ような、総合的なテクノロジーだ。

Bridgman氏は、「われわれ自身もそういうテーマを軸にまとまって行きたい」、と言っている。

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hiroshi Iwatani)

画像クレジット: chain45154/Getty Images

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

元Twitter幹部が起ち上げた投資会社01 Advisorsが2つ目のファンドを約342.4億円でクローズ

かつてTwitter(ツイッター)のCEO(最高経営責任者)だったDick Costolo(ディック・コストロ)氏とCOO(最高執行責任者)を務めていたAdam Bain(アダム・ベイン)氏が、自身の投資会社である01 Advisors(01アドバイザーズ)のデビューファンドで1億3500万ドル(約142億5000万円)を確保したと発表してからわずか1年半後、2つ目のベンチャーファンドを静かにクローズさせた。

SEC(米国証券取引委員会)に提出された書類によると、同社は先週末に81人の投資家から3億2500万ドル(約342億4000万円)の資金提供を受け、2つ目のファンドを完了させたとのこと。

我々は01 Advisorsに連絡を取っており、近日中に詳細をお伝えしたいと考えているが、その戦略は消費者向けと企業向けの両方の分野で、より集中的に投資を行うことが中心となっているようだ。アーリーステージのスタートアップにも、レイトステージのスタートアップにも彼らは小切手を切っている。

これらの資金を受けた企業には以下のような会社が含まれている。

児童書ブッククラブ購読サービスのLiterati(リタラティ):1月にFelicis Ventures(フェリシス・ベンチャーズ)が主導して4000万ドル(42億2000万円)のシリーズB資金調達を行った。

グローバル決済用の自動化ソフトウェアを開発するTipalti(ティパルティ):10年前にイスラエルで創業。10月に20億ドル(約2110億円)の評価額で1億5000万ドル(約158億円)のシリーズE資金調達を行った(01 Advisorsは追加投資家として参加)。

決済ソフトウェアを手がけるSpotOn Transact(スポットオン・トランザクト):2020年01 Advisorsが主導して5000万ドル(約52億7000万円)のシリーズB資金調達を行った。そのわずか半年後に6000万ドル(約63億3000万円)のシリーズCラウンドを調達したことは注目に値する。このラウンドはDST Global(DSTグローバル)が主導し、01 Advisorsなどが参加した。

関連記事:NBAスターやノーベル受賞者がキュレーターのブッククラブ、Literatiが約41.7億円を調達

実際、同社の投資の多くは、新型コロナウイルス流行の中で勢いを増している。サンフランシスコを拠点とするメンタルヘルスとウェルネスのプラットフォームであるModern Health(モダン・ヘルス)は、先週7400万ドル(約78億円)のシリーズDの資金調達を発表したが、数カ月前にシリーズCで5100万ドル(約53億8000万円)を調達したばかりだ。現在の評価額が11億7000万ドル(約1234億円)と報じられているこのスタートアップ企業は、これまでに約1億7000万ドル(約179億円)の資金調達を行っており、直近の2回のラウンドには01 Advisorsが参加している。

01 Advisors自体は、コストロ氏とベイン氏が個人と共同でスタートアップに投資を始めてから数年後の2019年8月に公開されて以来、ほぼ同じ規模を維持している。

同社には、コストロ氏とベイン氏、そして創業パートナーでありTwitterで4年間企業開発と財務に従事していたDave Rivinus(デイヴ・リヴィヌス)氏に加え、Kelly Kovacs(ケリー・コヴァックス)氏がパートナーとして参加している。コヴァックス氏はTwitterでコストロ氏のチーフスタッフを務めた後、Color Genomics(カラーゲノミクス)に入社し、その後、秘書の能力を高めるためのスタートアップを自身で起ち上げた。彼女は2018年に01 Advisorsにフルタイムで入社した。

Lacey Behrens(レイシー・ベーレンス)氏は、2019年から同社のオペレーションマネージャーを務めている。

01 Advisorsは最近、シニアアソシエイトの役職を求人している。

ミシガン州トロイ出身のコストロ氏は、2020年10月にCoinbase(コインベース)の創業者でCEOのBrian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏が従業員の社会運動や政治的な議論を職場で行うことを禁じた決定について扇動的なツイートをしたことで注目を浴びた。Coinbaseではその後、少なくとも60人の従業員が退職金を受け取ることになった。

一部のビジネスリーダーはすぐにアームストロング氏を称賛したが、コストロ氏はアームストロング氏の姿勢に嫌悪感を隠さなかった。「社会とビジネスを切り離せると考えている自己優先的な資本家は、壁際に並んで革命で撃たれる最初の人々になるでしょう」とコストロ氏はツイート。「喜んでビデオ解説を提供します」と発言した。

一方のベイン氏、長い間苦しんでいても慎重で楽観的なクリーブランド・ブラウンズのファンは、非常に忙しく過ごしている。スタートアップ企業のスカウトに加え、彼は現在、不動産テック企業のOpendoor(オープンドア)と宇宙観光企業のVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)という2つの公開会社で取締役に就いている。

クリーブランドで育った私たちブラウンズ・ファンは今、誰もが例のジンクスについて何かいうことを恐れているでしょう……。

01 Advisorsは、投資家のChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏とともに、Opendoorを上場させたSPAC(特別買収目的会社)の共同スポンサーを務めた。パリハピティヤ氏はまた、ヴァージン・ギャラクティックを上場させるためにSPACを起ち上げ、合併がまとまりつつある中でベイン氏を取締役に招聘した。

それ以前に2人がエンジェル投資家として行った投資には、法人旅行サイトのTripActions(トリップアクションズ)やコネクテッドフィットネスを手がけるスタートアップ企業のTonal(トーナル)などがある。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:01 Advisors

画像クレジット:01 Advisors

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(文:Connie Loizos、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

缶入り飲料水がLAベンチャー最大のイグジットとなるのか

ロサンゼルスに本社を置く創業10年のインキュベーター兼ベンチャー企業Science Incは2021年1月最終週の初めに3億1050万ドル(約378億円)を調達し、NASDAQにブランクチェックカンパニー(SPAC)を立ち上げた。創業者のPeter Pham(ピーター・ファム)氏とMike Jones(マイク・ジョーンズ)氏は、この資金をモバイル、エンターテインメント、消費者直接取引(D2C)サービスの分野で会社を上場させるために使用するとしている。

株式公開を考えている投資先企業があるとしても、先日の対談では語らなかっただろう。しかし、もしそうであれば、興味深い候補がいくつか存在するはずだ。ファム氏は、South by SouthwestフェスティバルのダンスフロアでアマチュアのeスポーツプラットフォームであるPlayVSの創業者であるDelane Parnell(デレイン・パーネル)氏に会ったことをきっかけに、同プラットフォームの育成に貢献した。同氏はまた、Credit Suisse(クレディ・スイス)との連携を報じられているマイクロモバイル企業Birdの出資者でもある。そして山の水をアルミ缶で売る、冗談混じりのマーケティング戦略を持つLiquid Deathの創設と成長にも貢献している。しかもファム氏によると、これはかなりの売り上げを出したようだ。

関連記事:「渇きを殺せ」などヘヴィメタルっぽいミネラルウォーターなどを販売するLiquid Deathが24.3億円調達

ただしこれはあながち冗談でもない。実際に飲料水は2016年以来米国で最も売れているパッケージ飲料なのだ。

両氏は長時間におよんだTechCrunchとの対談の中で、2021年に強力な消費者ブランドを構築する方法について分野を問わず語ってくれた。その対談の全容はこちらで聞くことができる。また長さとわかりやすさを考慮して軽く編集した大筋を以下に記載するので、参照いただけたらと思う。

TechCrunch(以下、TC):新しいSPACを設立しましたね。潜在的なターゲットについてお伺いします。ご自身がこれまでに関わった企業、あるいはScienceで資金を調達した企業を検討していますか?

マイク・ジョーンズ氏(以下、MJ):いいえ、SPACは独立した組織です。私たちは100社をはるかに超える企業群が、スタック内で私たちが求めている資質に適合すると考えています。これらの企業は私たちが(彼らに対する)投資エクスポージャーを持っているかもしれませんし、持っていないかもしれませんが、分析のプロセスはScienceのポートフォリオに依存していません。

TC:そうなるとその可能性は否定できないのですね。

MJ:独立した取締役を置いていますので、ポートフォリオ内の企業を検討する場合には異なるプロセスが実行されます。しかし現時点はターゲット候補となる適切な範囲を集積しているところです。その後正式なプロセスに進みます。

TC:どのような指標に注目していますか?あなたはD2Cをはじめとする企業に携わる専門家です。ターゲットとしている企業は収益性の高い企業である必要がありますか?

MJ:私たちが関心を寄せている多様な見込み企業は、特定のレベルの収益性や売上が必要条件となっているわけではありません【略】セクター内で成功する企業を生み出すと私たちが考える重要な指標や収益要因については公開していません。しかし、私たちはデータに特化したチームです。次世代を担うジェネレーションZとミレニアル指向のマーケティングの最前線にいます。大ブレイクするブランドになり得るための要素とは極めて特定的なもので、それを我々は求めているのです。

TC:お2人はソーシャルメディア分野に精通されています。Clubhouseのように多くの注目を集めている新しいソーシャルメディア事業が出現していますね。Scienceの中核事業に話を移しますが、この分野での投資は検討していますか?

ピーター・ファム氏(以下、PP):YouTubeがマーケティングのプラットフォームになったのは10年前です。そして6年か7年程前にInstagramが(マーケティングのプラットフォームになりました)。Snapchatに続いてInstagram Stories(が登場し)、次にTikTok、そしてさらに新たなプラットフォーム、それがClubhouseです。常に新しいものが現れています。

Facebook、Instagram、Snapchatから目を離すことはできませんが、Clubhouseはまるで別物です。ほとんどラジオのようなものですが、参加型です。South by Southwestに行くとまるで24時間SWSXパネルのようです。聴衆の中にいながら、手を上げて、ステージ上に引き上げてもらえば、あなたはパネルの一員になれる、という実に興味深い動的な体験ができます。それが多くの人々を魅了する理由であり、自分を知ってもらい、より多くの聴衆に自分の声を届ける機会が得られる場となります。

TC:その成長が持続可能だと思われる理由をお聞かせください。

PP:マーケターがプラットフォームに参入する瞬間です。本物のマーケター、つまりお金の稼ぎ方についての方法や不動産の手に入れ方、不動産を売って収入を得る方法などを販売するタイプのマーケターが現れたとき、それはアービトラージ(裁定取引) になります。基本的には非常にスマートな人たちで、費す時間ごとに多くのお金を稼ぐことができます。ROI、顧客獲得コスト、収益の面で他人がやっている他のことに時間を費やすよりも価値があることを認識しています。

TC:2021年、Scienceのポートフォリオ企業はこういったプラットフォームをどのように利用していくでしょうか?あなたはLiquid Deathの投資家です。2020年末に4000万ドル(約42億2200万円)を調達したサブスクリプション下着企業MeUndiesの成長を支援しました。また初期のDollar Shave Clubに関わっていました。水や下着、カミソリなどでどのようにして切り拓いていくのでしょうか。

PP:プラットフォームは、常に単なる踏み台に過ぎません。ゲームのルールやフィードは変化するので、長期的にこれらの場所を当てにすることはできません。10年前、Dollar Shave Clubをローンチしたとき、私たちのホームページにはYouTubeの動画が自動再生されていました。その当時は、誰かに何かを買ってもらうためにYouTube動画を投稿することについて考えた人はいませんでした。MeUndiesはInstagramを使っていました。サブスクリプション方式の下着を想像した人はいたでしょうか。けれどクリスマス、新年、バレンタインデー、セント・パトリック・デーなどの祝日が毎月のようにやってきます。そのときに合わせて着ることができる何かおもしろくて楽しいものがあったらいかがでしょうか?

Liquid Deathに関しては、まだInstagramとTikTokにフォーカスしています。しかし、どのようなケースにおいてもブランドは、誰かがそのブランドについて好意的に話し、支持してくれるような存在にならなければなりません。

マイクは私たちのデータ面を控えめに表現していますが、私たちは絶え間なく、それぞれのビジネスに関して起きているすべてのことを測定しています。それには、彼らのソーシャルリーチ、彼らのエンゲージメント、ビジネスの維持、顧客が戻ってくる頻度、私たちがそれぞれの個人からどれだけの収益を生み出しているかそしてそれぞれのマーケティングの価値が何に値するかなどが含まれます。これらはすべて(私たちが決定する)この複雑なエンジンにつながります。背後にビジネスは存在するのか。Facebookに頼らずに自力で成長できるのか。ほとんどの企業では、自分自身のコミュニティやブランド、オーディエンスを構築する方法を理解していなければ、最終的にはGoogleかFacebookが勝者となってしまいます。

TC:今はどのようにコミュニティを構築しているのですか?

私は個人的に4000缶を配りました。Liquid Deathの初期の頃は10代の若者たちに手渡していて、10人中6人が写真を撮って友達にスナップを配信しました。その瞬間を何度も目にして、これはうまくいくと確信しました。3月、4月、5月にInstagramのフィードがいかに退屈だったか気づいたと思いますが、それはみんなが家にいて何もすることがなかったからです。しかし私たちはコンテンツの一部を提供することができました。

TC:Liquid Deathは現在、セブン-イレブンを含むいくつかの店舗で販売されています。人々はオンラインで購入していますか?何パーセントの人がサブスクリプションを利用していますか?

PP:1 / 3の顧客がオンライン(サイト)で商品を購入しています。24ドル(約2500円)の帽子と45ドル(約4700円)のパーカーも扱っており、コンスタントに製品を提供しています。ブランドであり、ライフスタイルとも言えます。CEOのMike Cessario(マイク・セサリオ)は、お気に入りのバンドのようなものを作っていると表現しています。海に捨てられてしまう(ペットボトルのような)プラスチックではなく、砂糖も入っていません。また飲酒運転につながるお酒でもないため、この製品のファンになることができるのです。

絶妙なセンスがあり、誰かに伝えたくなる理由となります。アイスブレーカーにもなり得るし、楽しく、どうしようもなく、呆れてしまうけどおもしろい。それでこそみんあにとって話す価値があり、見る価値があります。

こういった軌道は測定するのが難しいかもしれませんが、実際に見てよく観察し、繰り返し見られるようなら結果は明らかだと言えます。

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タグ:Science Inc資金調達ロサンゼルスSPAC

画像クレジット:Liquid Death

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

株式取引スタートアップに注がれる無限の資金

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

先週の初めにTechCrunchは、消費者向け株式取引サービスのPublic(パブリック)がさらに資金調達を進めているという速報をお届けした。それに続けてBusiness Insiderが詳細に、そのラウンドの内容は12億ドル(約1259億円)の評価額の下で、2億ドル(約210億円)の調達になる可能性があると報じた。ラウンドを主導する可能性があるのはTigerだ。

関連記事:投資アプリPublicがライバルRobinhoodの苦境を尻目に連続して資金調達

PublicはRobinhood(ロビンフッド)とは違う方向を目指すつもりだ。Publicは、たとえばソーシャルに焦点を当てたり、Robinhoodのビジネスモデルを牽引すると同時に批判を集めてきた「Payment for order flow」(ペイメント・フォー・オーダー・フロー、PFOF、一般顧客の取引手数料を無料とする代わりにその取引情報を機関投資家に売り収益を上げる手法)を取り止めたりすることで、それを実現するつもりなのだ。投資家たちは、ライバルであるRobinhoodのトラブルを受けて、Publicをユニコーンにする準備を進めている。

このPublicのラウンドは、規模とスピードの両方で衝撃的だったRobinhoodの派手な34億ドル(約3568億円)の調達に続くものだ。Robinhoodの投資家たちは、消費者のトレードをサポートし続けるために必要な資本を、同社が確保できるように力を合わせたのだ。Robinhoodの2020年第4四半期の好調な業績と、2021年第1四半期の予想される成長のおかげで、こうした後押し投資が意味を持つことになった。

関連記事:株取引アプリRobinhoodが週末だけで合計3566億円の資金を獲得

Publicの場合も同様に(1)同社がユーザー数の大きな成長を見とおしていること、そして(2)タイミング良く永続的なビジネスモデルを見出せたことによって、資金が集まろうとしているのだろう。2点目についてはコメントできないが、1点目については少し話すことができる。

実際のところ、それはPublicの手柄ではなく、中西部に展開し株式投資機能を提供する消費者向けフィンテックM1 Financeが招いた結果だ(詳細はこちら)。同社はTechCrunchに対して、2020年12月に比べて1月のサインアップ数が4倍になったと語ったが、直近の2週間では、その前の2週間の6倍のサインアップがあったという。

関連記事:フィンテック企業M1 Financeが約35億円のシリーズB調達のわずか120日後に約47億円のシリーズCをクローズ

M1が株式の直接的な売買を提供していないことを考えると(このことは同社がTechCrunchに対して繰り返し強調した)、私たちはM1と、PublicならびにRobinhoodの間に完璧な線を引くことはできないが、最近の投資に対して消費者の巨大な関心があることは推定することができる。このことは、長期的な収益を得るための方法を模索しているPublicが、調達を完了したわずか数カ月後に、また別のラウンドを行うことができる理由を説明するのに役立つ。

フィンテックにとって、貯金と投資が2020年いかに新しい動きだったのかという私たちのノートは、偶然にも予想以上に真実味を帯びてきている。

マーケットノート

週の終わりを迎え、Coupang(クーパン)は公開を申請した。第一報はここで読めるが、大きなニュースになりそうだ。また、IPOの流れでは、Matterport(マターポート)がSPAC経由で公開を行おうとしている。私はまたMetromile(メトロマイル)のCEOであるDan Preston(ダン・プレストン)氏に対して、彼のインシュアランステックのSPAC経由の公開について話を聞いたし、他にも同じようなことは進んでいる。

Oscar Health(オスカー・ヘルス)も申請をしたが、並外れて強そうには見えない。なので、そのもうすぐ数字が出される評価額は、一般のトレーダーたちを試すことになる。それはBumble(バンブル)が先週レンジを超えた価格をつけ取引開始後に価格が急騰したときに抱えていたような問題ではない。Natashaと私(彼女はEquityにも出演している)は、BumbleのCEOであるWhitney Wolfe Herd(ホイットニー・ウルフ・ハード)氏からメモをいくつか受け取っているので、改めてご紹介する予定だ(また、私はBBCとこのIPOについて何度か話す機会があった、これはとても良かったが、その最初のものはここで聞くことができる)。

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差し迫ったRoblox(ロブロックス)の公開もまた、先週ニュースになっていた。同社は、2020年考えていたものよりも多少大きくなった(良い話)が、上場は3月まで遅れそうだ(残念な話)。

IPO関連の話題では、Carta(カルタ)が、その収益が約1億5000万ドル(約157億円)に増えているというニュースが出る中で、最近自社の株式の取引を行うようになった。Cartaは悪くないが、プライベートのままではなく、本当にIPOをしてみてはどうだろうか?同社の評価額は調達を重ねるうちに2倍以上になっている

さて、先週はとりあげることのできなかったクールなベンチャーキャピタルのラウンドがたくさんあった。たとえばこのKoa Health(コア・ヘルス)のラウンドだ。そして、中身は何であれこのSlync.io(スリンク.io)のニュースもそうだ(初期段階のものを知りたければ、Treinta(トレインタ)、Level(レベル)、Ramp(ランプ)、Monte Carlo(モンテ・カルロ)らの最近のラウンドをチェックしてほしい)。

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最後に、Ontic(オンティック)へも言及しておこう。同社は「保護インテリジェンスソフトウェア」を提供し、その収益は2020年 177%成長したと述べている。私は共有される数字には感謝しているので、ここではその数字を強調しておいた。

その他のことなど

最後のトピックとして、ノーコード、自動化、コラボレーションの市場で活躍する公開企業のSmartsheet(同社もかつてはスタートアップだった)のCEOであるMark Mader(マーク・メイダー)氏からのメッセージをご紹介しよう。これは、ざっくりとしたまとめである。自分が関心があるので、私は2021年のノーコードトレンドについてメイダー氏に聞いてみたのだ。彼からのメッセージはこんな内容だ:

もし突然のリモートワークへのシフトが、米国企業のデジタルへのシフトを加速させたと思っていたとしても、実はまだ何も目にしていないのです。2021年にはデジタルトランスフォーメーションがさらに加速しそうです。働く人たちは2020年、さまざまな異なる技術に、一挙に晒されることになりました。たとえば初めてZoom(ズーム)やDocuSign(ドキュサイン)を導入した企業もあるでしょう。しかし、このシフトの多くには、会議や、文書への署名・承認などの、アナログなプロセスをオンライン化することが関わっています。しかし、このようなことは、あくまでも第一歩に過ぎません。

2021年は、企業が大規模なデジタルイベントを、自動化と再現性のあるインフラに接続し始める年となります。1人がある書類に署名することと、何百人もの人がそれぞれルールの異なる何百種類もの書類に署名することは違います。それもまた単なる一例に過ぎません。その他のユースケースとしては、人事ソフトウェアとプロジェクト管理ソフトウェアを連携させて、自動化されたリアルタイムのリソース配分を実現することで、企業は両方のプラットフォームをより活用することができるだけでなく、人材もさらに活用することができるかもしれません。このような複雑なワークフローを自動化して簡素化できる企業は、効率性とテクノロジー投資からのリターンが劇的に向上し、真の変革と利益率の向上への道を歩むことになるでしょう。

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タグ:The TechCrunch Exchange

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

南アフリカのVC企業Knife Capitalが資金52.5億円確保、シリーズB10〜12社への投資を計画

南アフリカのベンチャーキャピタルであるKnife Capital(ナイフ・キャピタル)は、シリーズBの資金調達を目指すスタートアップ企業のために5000万ドル(約52億5000万円)の資金を調達している。同社のKnife Fund III(ナイフ・ファンドIII)はAfrican Series B Expansion Fund(アフリカのシリーズB拡張ファンド)と呼ばれ、南アフリカのスタートアップ企業の積極的な拡大に直接投資することを目指すものだ。また、同社はアフリカの他の地域を拠点とする企業に向けた共同投資も計画している。

その最初の投資ファンドは、Knife Capital Fund IまたはHBD Venture Capital(HBDベンチャー・キャピタル)として知られ、Eben van Heerden(エベン・ファン・ヘールデン)氏とKeet van Zyl(キート・ファン・ジル)氏が運営するクローズド・プライベート・エクイティ・ファンドだった。これによって同社はいくつかのスタートアップ企業に着手資金を提供した。また、そのポートフォリオからは、VISAによるフィンテック系スタートアップのFundamo(ファンダモ)の買収や、UberEats(ウーバーイーツ)によるorderTalk(オーダートーク)の買収など、重要なエグジットも生まれた。

2016年にこのVC会社は、Knife Capital Fund IIとして現在の所得税法第12J条(アーリーステージの企業に対するVCなどからの投資については100%の税控除を行う法案)を利用した投資オファーを開始。主にシリーズAステージに投資する同ファンド(KNF Ventures)は、8つのスタートアップをポートフォリオに抱えている。同社は2020年、このFund IIを拡張して新規投資家に開放する意図をTechCrunchに語っていた。その計画は、スタートアップ企業にネットワーク、資金、拡大の機会へのアクセスを与えることだった。

「南アフリカやアフリカの企業の国際化を支援したい」と、共同経営パートナーのAndrea Bohmert(アンドレア・ボーマート)氏は当時語っていた。その証拠に、同社のポートフォリオ企業の1つであるDataProphet(データプロフェット)は、米国と欧州に進出するために600万ドル(約6億3000万円)のシリーズAを調達している。

ボーマート氏がTechCrunchに語ったところによると、第3のファンドを設立した目的は、南アフリカのベンチャーキャピタルの資産クラスを特徴づけてきた深刻なシリーズBの資金調達ギャップに対処するためだという。この問題は、南アフリカのスタートアップ企業にとって、ビジネスの潜在能力を十分に発揮できなかったり、早期に撤退せざるを得なくなる結果を招くことがあった。

「最近では、200万ドル(約2億1000万円)から500万ドル(約5億2500万円)の資金調達が可能な企業が増えています。それらの企業は、自国内で事業を展開している限り、私たちの場合は南アフリカですが、現地のコスト構造から、それだけの資金があれば成功を収めることができるでしょう」と、ボーマート氏はいう。「しかし、これらの企業が国際的な牽引力を得て、母国以外の国でインフラを構築する必要が出てくると、そのためには多額の資金調達が必要になります。現在のところ、南アフリカ企業がより大きな市場に打って出るための資金調達を積極的に展開し、500万ドル以上の小切手を書ける南アフリカのVCファンドは、おそらくNaspers Foundry(ナスパーズ・ファンドリー)以外にはほとんど存在しません」。

その結果、アフリカは国際的なVCのインキュベーターになってしまったとボーマート氏は主張している。そのような国際的なVCは、高額の小切手を書くことはできるが、多くのスタートアップがまだ現地で必要とするサポートを提供することはできない。

同様に、国際的な投資家が南アフリカで積極的に現地の共同投資者を探してラウンド投資を行っている例もあるが、現地でそのような共同投資者が見つからない場合、投資を進めるチャンスを失うことになりかねない。Knife Capitalは、このファンドを立ち上げることで、このようなギャップを埋めたいと考えていると、ボーマート氏は語っている。

「私たちは、国際化を目指す南アフリカのテクノロジー企業のために、シリーズB投資の話し合いをリードできる国際的な投資家から、共同投資を行うために選ばれる地元のリード投資家になりたいと考えています」。

Knife Capitalは先週、南アフリカに拠点を置く投資会社のMineworkers Investment Company(MIC、マインワーカーズ・インベストメント・カンパニー)から1000万ドル(約10億5000万円)を確保した。この公約により、MICは他の国内外の投資家と並んで、このファンドのアンカー投資家となる。

MICのCIOであるNchaupe Khaole(チャウプ・カオール)氏は、地元の機関投資家がベンチャーキャピタル投資にアプローチする方法を変える動きは、以前からMICのパイプラインの中にあったと説明する。そしてKnife Capitalとの提携により、このアイデアは具体化し始めている。

「我々のコミットメントは、経験豊富なプレイヤーとして当社が持つ多くの強みとともに、今回の投資を実現するものになるでしょう。その1つは、我々と提携することで南アフリカ経済に実際に目に見える変化をもたらすと、ポートフォリオ内の企業を感化させる当社の能力です。今回の資金調達ラウンドの成功の鍵となる触媒となることを嬉しく思います」と、カオール氏は述べている。

その他の詳細としては、Knife Capitalは2021年5月までに最初のクローズを行い、年末までに最終クローズを行うことを目標としている。その大半は共同出資となり、10から12社の企業が資金を受ける計画だ。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Knife Capital南アフリカ資金調達アフリカ投資

画像クレジット:Knife Capital

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

この1年で急激に変化する教育に特化した3つめのファンドをReach Capitalが組成

Shauntel Garvey(シャウンテル・ガービー)氏と Jennifer Carolan(ジェニファー・カロラン)氏は、EdTechがヒートアップする前からこの部門が好きだった。2人は2015年に5300万ドル(約55億5000万円)の初ファンドを組成し、Reach Capital(リーチ・キャピタル)を共同で創業した。サンフランシスコ拠点のベンチャーファームであるReach Capitalは以来、Newsela、Sketchy、ClassDojo、Outschoolといった教育スタートアップに出資し、これまでに出資企業6社がイグジットした。

そして現在、新型コロナウイルスのためにポートフォリオ企業は増え、Reach CapitalはEdTechスタートアップ支援を目的とした3つめのファンドを発表した。Reach Capital IIIは1億6500万ドル(約172億円)のファンドで、同社のものでは最大規模となる。Chian Gong(チアン・ゴン)氏、Wayee Chu(ウェイー・チュー)氏、Esteban Sosnik(エステバン・ソスニック)氏を含むReachのチームは2020年夏に投資ビークルの資金調達を開始した。ファンドの新規LPにはSesame Workshop、National Geographic、Kaiser Foundation Hospitals、Goldman Sachsなどが名を連ねる。

Reach Capitalのチーム(画像クレジット:Reach Capital)

Reachはファンドの半分をスタートアップへの追加投資のために取っておき、残り半分を純新規投資に振り向ける計画だ。Reach Capital IIIを通じてスタートアップ20社に投資し、各ディールで15%保有を目標とする。

EdTechは2020年の世界のベンチャーキャピタル投資において100億ドル(約1兆500億円)超のマーケットとしてランクインした。しかし学生、親、教師にとって過去12カ月は急上昇というより慌てふためく日々だった。Reachそして他のベンチャーファームも、至難の技だがめちゃくちゃになった教育を変えることができそうなスタートアップに投資する機会を得ている。

Reachに加わる前、シカゴの公立学校で7年間教壇に立っていたカロラン氏は、全教育システムの再建がさらなるイノベーションとチャンスのためにドアを開いた、と話した。

「保護者がリモート学習で経験していることは、長期にわたるEdTech分野への過小投資の結果でした。目的を達成することを受け入れた企業は細分化され、プロダクトの多くが実行できるものではありませんでした。プロダクトの大半はホームスクールマーケット向けに構築され、学校向けに再利用されていました」と同氏は話した。今、学校で1対1のテックインフラが整い、より多くの生徒がデジタルデバイスを持っているという事実に同氏はチャンスを見出している。

「教育への投資が、こんなにもエキサイティングだった時期はかつてありませんでした」とも同氏は述べた。Reachは幼少期からK-12(幼稚園〜12年生)、大学生の学習に至るまで、EdTechのサブセクターの企業を支援する計画だ。同社はまた、従来の教室コンテンツ以外の教育機会である、多くの投資家が賭けている生涯学習への投資にも手を広げる。

ReachはEdTech企業の支援に特化している数少ないベンチャーキャピタルの1社だ。同業他社としては2020年9月に2つの投資ビークルで5億8500万ドル(約612億8000万円)をクローズしたOwl Ventures、2020年12月に1億3200万ドル(約138億3000万円)をクローズしたLearn Capitalがある。

「パンデミックは教育分野におけるソフトウェアマーケットを開き、我々はその開始時点にいます。教育は『10人の指導コーチを雇おう』から『指導をするソフトウェアを受け入れよう』に移行したのです」とカロラン氏は話した。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Reach Capital教育

画像クレジット:Georg Wendt/picture alliance via Getty Images / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソフトバンク・グループがビジョン・ファンド幹部へのインセンティブを半額に

Softbank Group(ソフトバンク・グループ)は米国時間2月8日、2021年3月期第3四半期の決算を発表した。その中には運用額986億ドル(約10兆370億円)のVision Fund(ビジョン・ファンド)の業績も含まれる。最近上場したDoorDash(ドアダッシュ)が数十億ドル(数千億円)の利益をもたらしたこともあり、その数字は魅力的なものだった。これは同ファンドにとって本当の意味での最初の大ヒット投資の1つである。同社は現在18件の投資を回収しており、そのうち10件は全部エグジットし、8件は現在公開市場で取引されている。

だが、同社の決算短信を注意深く見ると、ビジョン・ファンドのリーダーシップに割り当てられていたインセンティブを50億ドル(約5256億円)から25億ドル(約2628億円)に半減させたことが記されている。

この50億ドルのインセンティブ・スキームは、2018年4月にFinancial Times(フィナンシャル・タイムズ)などの出版物が最初に報じたときに物議を醸した。このモデルでは、基本的にソフトバンクが従業員に融資してビジョン・ファンドに出資させるという仕組みで、1000億ドル(約10兆5100億円)の資金調達のクロージングを加速させるためのものだった。同社は2018年第2四半期の決算で初めてインセンティブ・スキームに関する文言を追加し、こう記している。

2018年10月19日、ソフトバンク・ビジョン・ファンドは中間クロージングを行い、追加の出資コミットメント50億米ドルを取得しました。これにより同ファンドの累計出資コミットメント総額は967億米ドル(約10兆1470億円)となります。なお、当該追加出資コミットメントは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの運営に係るインセンティブ・スキームの導入に向けたものです。

それ以来、同社は四半期ごとの決算報告書で50億ドルという数字について一貫した表現をしてきた。しかし、今回の最新の2020年度第3四半期決算では、インセンティブは「25億米ドル(前回の50億米ドルから減額)」になったことが記されている。

ソフトバンクのインセンティブ・スキームは、業界関係者の間で大きな論点となっている。2週間前のフィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、ソフトバンクの4人のトップ幹部であるRajeev Misra(ラジーブ・ミスラ)氏、Marcelo Claure(マルセロ・クラウレ)氏、佐護勝紀氏、宮内謙氏は、ビジョン・ファンドに出資するために6億ドル(約631億円)をまとめて貸し付けられたという。その資金の一部は50億ドル(現在は25億ドル)のインセンティブ・スキームから出たものだが、全額がこの特定のプールからのみ充当されたのかどうかは明らかではない。

ソフトバンクがビジョン・ファンドのインセンティブを引き下げたのは、同ファンドの全体的な業績の低迷と、グループに大幅な損失をもたらしたWeWork(ウィーワーク)への悲惨な投資に対応したためと思われる。ビジョン・ファンドとしては最近のパフォーマンスははるかに良くなっているが、これらのインセンティブの一部を排除することで、ファンド全体の業績が向上し、最終的にはソフトバンク・グループの収益が改善されるはずだ。

ビジョン・ファンド1は2020年の時点で新規企業への投資を停止している。第2のファンドは、すべてソフトバンク・グループ自身からの出資で100億ドル(約1兆510億円)の資本を持ち、定期的に投資を行っている。ビジョン・ファンドはまた、2020年12月の1社目に続き、先週末に新たな2つのSPAC(特別買収目的会社)の申請も行っている

関連記事:ソフトバンクがSPACをさらに2社申請

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Softbank GroupSoftbank Vision Fund決算発表

画像クレジット:Carl Court / Staff / Getty Images / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

2つの新しい取り組みがベンチャーファンドに直接投資する人々の範囲を広げる可能性

Acrew Capitalのメンバー。彼らはDiversity Capital Fundと呼ばれる最初のグロースファンドのメンバーでもある

ベンチャーファンドは歴史的に自身の投資資本について限られた種類のリミテッドパートナー(LP)に頼ってきた。1つのグループは年金基金、大学基金、病院システムなどの機関投資家だ。2つ目は企業。3つ目は裕福な個人と、多くの場合そのファミリーオフィスだ。

つまり、かなり狭い世界だが、今週発表された新しい、非常に異なる2つのイニシアチブがいずれもその方程式を変えようとしている。そしてまもなく同様の取り組みの先駆けとなる可能性がある。

Arlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏が最初にニュースを発表した。同氏は有色人種、女性、LGBTQコミュニティのメンバーが創業したスタートアップへの投資に特化するベンチャーキャピタルのBackstage Capitalの創業者だ。要するに、Backstageの中心には多様性がある。しかし、自身が黒人であるハミルトン氏は、多様な創業者だけに資金を提供することに興味はない。社会経済的にもさまざまなバックグラウンドを持つ多くの人々が、アセットクラスとしてのベンチャーキャピタルに投資できる環境づくりにも関心を持っている。

そのために同氏は今週初め、未公開企業への投資プラットフォームのRepublicで新しいファンドを開いた。非適格投資家を含む誰もが、Reg CFまたはRegulation Crowdfunding(レギュレーションクラウドファンディング)と呼ばれる証券取引委員会の規則の下で投資できる。

ハミルトン氏は、Reg CFで企業が調達可能な上限、すなわち12カ月の期間内で107万ドル(約1億1300万円)に達した。わずか100ドル(約1万600円)の投資に招かれた2790人の投資家にとっては数時間に感じられたはずだ。しかし次の展開があるかもしれない。この規則は2020年11月に元SEC議長のJay Clayton(ジェイ・クレイトン)氏の下で変更され、2021年3月から企業は最大500万ドル(約5億3000万円)をクラウドソーシングできるようになる。

このプロセスは次期SECチーフの下で進みが遅くなる可能性がある。バイデン大統領は、規制当局出身で元ゴールドマンパートナーのGary Gensler(ゲイリー・ゲンスラー)氏を任命した。同氏は上院の承認を受ける必要がある。新政権はまた、トランプ政権の後半に進められた措置の多くを見直している。ただし、すべてのシステムが機能すれば、もうすぐ非適格投資家が他の大規模なベンチャーファンドに出資するよう招待されるだろうと容易に想像できる。

機会がやってきた

今週2つ目のイニシアチブは、ハミルトン氏にとって同じ目的を持っている。つまり多様な投資家をLPに迎えることができる。ただしアプローチは異なり、適格投資家のみを対象としている。適格投資家とは、基本的に年間20万ドル(約2100万円)の収入があるか100万ドル(約1億600万円)以上の純資産を持つ個人を意味する。

ベテランベンチャーキャピタリストのTheresia Gouw(テレジア・ゴウ)氏が率い、パロアルトとサンフランシスコを拠点とするアーリーステージのベンチャーキャピタルであるAcrew Capitalが始めたファンドが米国時間2月3日、従来のグロースステージのファンドにひねりを加えて立ち上げていると明らかにした。現在のLPに新しいファンドへの投資機会を与えることに加え、レイターステージのプライベートビークルに投資する機会が必ずしもなかった多くの女性、有色人種、過小評価された個人にビークルを開放する。

ここで重要なのは、グロースステージの投資にAcrewが力を入れていることだ。より多くの女性や有色人種がシードステージ投資の仲間入りをしている一方で、アーリーステージの資金調達から収益を生み出すには長い時間がかかる。一方、グロースステージのファンドは投資先企業が通常「エグジット」に近いため、より独占的だ。そのため、ミューチュアルファンドやヘッジファンドなどにとって非常に魅力的であり、Acrewが現在、招き入れようとしている種類の個人が入り込む余地はほとんどない。

Backstageと同様、多様性はAcrewのDNAに組み込まれている。Acrewは、ゴウ氏が以前在籍したファンドで、Aspect Venturesの同僚のLauren Kolodny(ローレン・コロドニー)氏、Vishal Lugani(ビシャル・ルガーニ)氏、Asad Khaliq(アサド・カリク)氏、Mark Kraynak(マーク・クレイナク)氏と共同で創業した。

Acrewはチーム全体の88%が女性で、63%が過小評価された経歴を持っているという。そんな同社が多様なエンジェル投資家、取締役会メンバー、経営幹部をレイターステージの投資の世界に引き込むことに率先して公に取り組むことに驚きはない。

新しい取り組みを通じて投資のための新たな資本を獲得するBackstageのように、フィンテックとサイバーセキュリティに焦点を当て、他の多くの中でも高いバリュエーションを得たチャレンジャーバンクのChimeに出資したAcrewの新しい取り組みは包摂的かつ戦略的だ。

関連記事:フィンテックのChimeが約1.5兆円のバリュエーションで510億円調達、EBITDA黒転を主張

コロドニー氏が説明するように、役員室の多様性を高めることに力を入れるスタートアップが増えている。多様な個人から成るLPの基盤を持ち、そうした個人を興味深い取締役会のポジションにつなげられれば、Acrewだけでなく、新しくLPになる企業にとっても、さらにすべての関係者にとって上手く機能するはずだ。

実際、Acrewのパートナーらはこのアプローチのために同社がこの先も他社と異なる存在でいることを望んでいない、とコロドニーはいう。「私たちの希望は、5年後、多様で独立した取締役会メンバーと多様な経営幹部が企業で増えることを支援するベンチャーキャピタルが他に例がない戦略になってしまわないことです」。

「その希望は」と同氏はつけ加えた。「この取り組みにより、ベンチャー企業への期待に関する新しい基準を人々が受け入れることです」。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Backstage CapitalAcrew Capital

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi