Pew Research Center(ピュー研究所)の最新の調査によると、米国成人の約4分の1にあたる約26%がYouTube(ユーチューブ)動画でニュースを確認しているという。同研究所は、Google(グーグル)傘下の動画プラットフォームであるYouTubeの利用状況だけでなく、米国でのニュース配信への高まる影響力についても調査した。驚くほどのことではないが、この調査結果によると、既成の報道機関はもはや、米国民が見るニュースを完全に支配することはできなくなっている。既成の報道機関に関連するチャンネルで「頻繁に」ニュースを視聴していると答えたのは、YouTube利用者の5人に1人(23%)にすぎなかった。これと全く同じ割合の利用者が、代わりに独立系チャンネルで「頻繁に」ニュースを確認していると答えている。
この調査でいう独立系チャンネルとは、外部との明確な提携がないものと定義される。一方、報道機関のチャンネルは、例えばCNN(シーエヌエヌ)やFox News(フォックスニュース)のような、外部報道機関と提携している。
このような2つの異なるタイプのニュースチャンネルはどちらも一般的に視聴されており、ピュー研究所によると、よく視聴されるチャンネルの、49%が報道機関と関連があり、42%は関連がない。
そして残りのわずか(9%)は、行政機関や研究組織、支援組織など、ニュースを公開している「その他の」組織のチャンネルだ。
Image Credits: Pew Research
ピュー研究所は、調査結果を検証するために、2020年1月6日~1月20日まで、1万2638人の米国成人を対象としたパネル調査を実施した。
このパネル調査の結果、米国民の大多数、すなわち72%がYouTubeは重要(59%)、もしくは最も重要(13%)なニュース視聴の手段だ、と答えた。また、ほとんどの人が、YouTubeでニュースを確認することになんら大きな問題があるとは思っていないと答えたが、誤情報、政治的偏見、YouTubeによる自動CMの遮断や検閲に対してはある程度の懸念を示した。
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共和党支持者や共和党寄りの無党派層の多くは、検閲やCMの遮断、政治的偏見がYouTubeの最大の問題だと述べたが、一方、民主党支持者や民主党より無党派層には、最大の問題は誤情報とハラスメントだという人が多かった。
調査の後半では、2019年11月にYouTubeで最も人気が高かった377のニュースチャンネルと、2019年12月に再生回数の中央値が最も高かった100のチャンネルで公開された、YouTube動画のコンテンツ分析が実施された。ピュー研究所によると、この分析は人間とコンピューターの利用を組み合わせた方法で行われたという。
この分析で、10のうち4(44%)の人気YouTubeチャンネルが「個性重視」という特色を持っている、つまり、チャンネルが個人に関するものであることがわかった。これは既成の報道機関に雇われたジャーナリストである可能性もあるし、独立したホストである可能性もある。
しかし、実際は後者であることが多い。独立系チャンネルの70%が個人を軸としており、主にフォロワーを獲得した「ユーチューバー」である。実際、独立系チャンネルの57%はユーチューバーによるものであるのに対し、YouTubeで注目される前から著名だった人物を軸としたものは13%となっている。
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今回は、YouTubeのニュース環境や扱われるトピックという、別の側面についても調査が実施された。
YouTubeのニュース視聴者によると、圧倒的過半数(66%)の人がYouTubeのニュース動画を見ると時事問題の理解を深めることができると述べている。また、73%が動画の大部分の情報が正確であると信じていると述べており、BGMのようにバックで流すのではなく、注意深く視聴する傾向がある(68%がそうしている)。
約半数(48%)はYouTubeで「まともな報道」、つまり、情報と事実のみを得ようとしていると答えた。一方で、51%は主に意見や解説を求めてYouTubeでニュースを視聴しているという。
あえてYouTubeでニュースを視聴する理由について問う自由回答式の質問に対する答えには、動画のコンテンツに関連するものが最も多かった。例えば、主流のニュース以外を扱っているから、とか、さまざまな意見や見解が含まれるものがあるから、といった理由があった。
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ピュー研究所はまた、QAnon(キューアノン)やJeffrey Epstein(ジェフリー・エプスタイン)氏、反ワクチン運動に関する説など、ニュースチャンネルがどのくらいの割合で陰謀説に触れているかも調査した。
この調査は2019年12月に行われた。再生回数上位100のYouTubeチャンネルに投稿された3000近い動画の分析の結果、独立系チャンネルの動画の21%が陰謀説に触れていることがわかった。これに対して既成の報道機関のチャンネルが陰謀説に触れている割合はわずか2%だった。キューアノンは最もよく扱われていた陰謀説で、独立系チャンネルの動画の14%がこれについて議論している。既成の報道機関は2%である。
さらに、独立系チャンネルは、既成報道機関の約2倍の確率で、ニュースを否定的なトーンで伝えていた。
全体として、2019年12月に調査された、YouTubeのニュースチャンネルで再生回数上位100本の動画は、否定的すぎることも好意的すぎることもなかった(69%)。しかし、タイプ別に分けると、独立系チャンネル動画の37%は否定的なもので、これに比べ既成報道機関では17%だった。また、否定的な動画は好意的な動画よりも人気が高かった。すべてのチャンネルで、否定的な動画の再生回数は平均18万4000回であるのに比べ、中立的または両方が混在するトーンの動画は平均17万2000回、好意的な動画は平均11万7000回だった。
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一方、2019年12月の動画再生回数に占める割合が最も大きかったのはトランプ政権に関する動画で、およそ3分の1(36%)が弾劾に関するもの、31%が銃規制や中絶手術、移民などの国内問題に関するもの、9%は国際情勢に関するものだった。他のトピックに関する動画の平均再生回数が12万2000回であるのに対し、トランプ政権に関する動画は平均約25万回再生されている。トランプ氏は調査対象の動画の中で最も注目を集めており、約4分の1となる24%の動画で取り上げられていた。
それに比べて、2020年の選挙に関する動画は、調査当時は民主党予備選が中心だったが、このトピックはニュース動画全体のわずか12%を占めただけだった。
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YouTubeのニュースチャンネルが自身をどのように紹介しているのか、という点についても調査が行われた。この調査により、自身がイデオロギー的偏向を持っていることが動画コンテンツを通して明らかになっている場合ですら、圧倒的多数は政治的イデオロギーを持つことを明言していないことがわかった。
YouTubeのニュースチャンネルのうち、自身の政治的イデオロギーを説明文に紹介していたのは約12%だけで、そのうち、8%は右派寄り、4%は左派寄りだった。独立系ニュースチャンネルは党派的な言葉を使って自己アピールし、自分が右寄りであると語る傾向が強かった。
また、YouTubeのニュースの典型的な視聴者に関する人口動態も調査に含まれていた。ピュー研究所の調査によると、ニュース動画視聴者は若い男性が多く、米国成人全体の割合で比較すると、白人が少ない傾向にあることがわかった。30歳未満が米国成人全体に占める割合は21%であるのに対し、同視聴者全体に占める割合はおよそ3分の1(34%)だ。また、50歳未満は米国成人全体の55%であるのに対し、同視聴者の71%を占めている。
そして男性は、米国成人全体の48%であるのに対し、YouTubeのニュース視聴者の58%を占めていると考えられる。同視聴者のうち、半分(50%)が白人、14%がアフリカ系、25%がスペイン系である。米国では成人の63%が白人、12%がアフリカ系、16%がスペイン系だ。
今回の調査結果はすべてピュー研究所ウェブサイトから閲覧できる。
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(翻訳:Dragonfly)