【コラム】次世代グローバル決済を生み出すAfterpayとSquareの融合

編集部注:本稿の著者Dana Stalder(ダナ・スタルダー)氏は、Matrix Partnersのパートナー。PayPalの元コマーシャルチーフ(製品、販売、マーケティング)で、現在Matrix Partnersでフィンテック投資をリードし、消費者市場やエンタープライズソフトウェアにも投資している。

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フィンテックにとって米国時間8月1日は重要な日となった。AfterPayがSquareと合併することに合意した。この合意により、近年最も高い評価を受けている2つの金融テクノロジー企業が1つの企業になる道を歩み始める。

AfterpayとSquareは、世界で最も重要な支払いネットワークの1つを構築するポテンシャルを有している。Squareは大規模なマーチャント決済ネットワークを確立しており、またCash Appを介して、成長著しい消費者向け決済サービスを提供している。しかし、歴史的にみてこの2つの事業は統合されていない。SquareとAfterpayは、これらすべてのサービスを1つの統合されたエクスペリエンスにまとめることができる。

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AfterpayとCash Appはそれぞれ数千万人の消費者を抱えており、SquareのセラーエコシステムとAfterpayのマーチャントネットワークは、いずれも年間数百億の決済ボリュームを記録している。オフラインレジとオンライン決済フローから、数タップで送金まで、SquareとAfterpayは次世代の経済的エンパワーメントの全容を物語ることになるだろう。

Afterpayの唯一の機関投資家として、私たちがどのようにしてここに至ったのか、そしてこの合併が消費者金融と決済業界の将来にとって何を意味するのかについて、いくつかの視点を共有したいと思う。

フィンテックにおける重大なイノベーション

世界の決済業界は、今後数十年間の勝者と敗者を決定する重大なイノベーションのサイクルを、5年から10年ごとに経験している。最近の大きな変化はNFCベースのモバイル決済へのシフトで、これについては2015年に寄稿しているが、主要なモバイルOSベンダー(VISA、マスターカードなど)はネットワークと消費者のニーズを巧みに橋渡しして、グローバルな決済スタックにおける地位を確固たるものにした。

AfterPayは、最新の決定的なイノベーションサイクルを引き起こした。シドニーのリビングルームでミレニアル世代のNick Molnar(ニック・モルナー)氏が構想したAfterpayには、ミレニアル世代はクレジットが好きではない、という重要な洞察がある。

ミレニアル世代は、2008年の世界的な住宅ローン危機の中で成人となった。彼らは若い頃、友人や家族が住宅ローンを積みすぎて家を失うのを目の当たりにしており、銀行に対する信頼はすでに薄れていた。また学生ローンもかつてない水準に達した。それゆえ、ミレニアル世代(そしてそのすぐ後に続くZ世代)がクレジットカードよりもデビットカードを強く好むのも不思議ではない。

しかし、パラダイムシフトを認識することと、それに対して何かを行うことは別物だ。ニック・モルナー氏とAnthony Eisen(アンソニー・アイゼン)氏は行動を起こし、最終的にそのコアプロダクトで歴史上最も急成長した決済スタートアップの1つを構築した。「Buy Now, Pay Later(BNPL、今買って後で支払う)」そして無利息のサービスだ。

Afterpayのプロダクトはシンプルだ。カートに100ドル(約1万1000円)分が入っていて、Afterpayでの支払いを選択した場合、銀行カード(通常はデビットカード)に対して2週間ごとに4回に分けて25ドル(約2730円)が請求される。無利息で、リボルビング債務もなく、適時支払いにかかる手数料もない。ミレニアル世代の消費者にとっては、高い金利やリボルビング債務といったクレジットカードの欠点を気にすることなく、デビットカードを使ってクレジットカードの第1のメリット(後で支払いができること)を享受できることを意味するものとなった。

良い面ばかりで、悪い面はない。誰が抗えるだろうか?ミレニアル世代を主な成長セグメントとしていた初期のマーチャントは、公正な取引を獲得した。Afterpayへの支払い処理にわずかな手数料を支払うだけで、かなり高い平均注文価値(AOV)と購入へのコンバージョンが得られる。これはwin-winの提案であり、多くの実績を得て、新しい決済ネットワークが生まれた。

画像クレジット:Matrix Partners

真似することが最もすばらしいお世辞となる

Afterpayは2016年から2017年にかけてはオーストラリア以外ではあまり知られていなかったが、2018年に米国に進出してビジネスを立ち上げ、2年目にして1億ドル(約110億円)の純収益を上げたことで注目を集めた。

Klarnaは米国でのプロダクト市場の適合性に苦慮していたが、Afterpayを模倣すべく事業を転換した。またAffirmは、従来からのクレジット事業を主な事業としており、売上の大部分を消費者利益から得ていたが、独自のBNPLオファリングに着目して導入した。その後PayPalが「Pay in 4」の提供を開始し、つい数週間前にはAppleがこの分野に参入するというニュースが報じられた。

Afterpayは世界的な現象を生み出し、今では業界のメインストリームプレイヤーに支持されるカテゴリーとなっている。このカテゴリーは今後10年間で世界の小売決済のかなりのシェアを獲得する軌道に乗っている。

Afterpayは、他とは一線を画している。同社は事実上あらゆる指標において常にBNPLのリーダーであるとともに、顧客のニーズに忠実であり続けることで、その地位を確立してきた。同社はミレニアル世代やZ世代の消費者をよく理解している。それはAfterpayユーザーとして人々が体験する、同社の声、トーン、ライフスタイルブランドに顕著に表れており、マーチャントネットワークにおいて戦略的に構築され続けている。それはまた、負債商品を旋回するユーザーに対して、Afterpayはクロスセルを意図していないという単純な事実からも明らかだ。

最も重要な点は、こうした消費者に対する理解の姿勢が、競合他社と比較した使用状況の測定基準に反映されていることにある。これは人々が愛着を持ち、利用し、信頼を寄せるようになったプロダクトであり、かつては得られなかった、伝統的な消費者信用を上回る良質で公正な条件を備えている。

Afterpay2021年度上半期業績発表

SquareとAfterpayの融合は完璧な調和

筆者はこれまで15年以上にわたって決済会社を手がけてきた。初期にはPayPalの黎明期を経験し、より直近ではMatrix Partnersのベンチャー投資家として活動している。しかしこれほどまでに、消費者やマーチャントに並外れた価値をもたらすポテンシャルを秘めた組み合わせは見たことがない。eBayとPayPalよりもはるかに優れている。

明確なプロダクトとネットワークの補完性を超えて、筆者とパートナーにとって最もエキサイティングな点は、価値と文化の整合にある。すべての人に向けられたより多くの機会があり、経済的なハードルが少ない未来のビジョンを、SquareとAfterpayは共有している。彼らがともにその未来に向かって前進する中で、筆者はこの組み合わせが勝者となることを確信している。SquareとAfterpayの融合により、世界の次世代決済プロバイダーが誕生するだろう。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:AfterpaySquare合併決済サービスBNPLオーストラリアアメリカミレニアルコラム

画像クレジット:charles taylor / Getty Images

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(文:Dana Stalder、翻訳:Dragonfly)

キノコ由来代替肉の豪スタートアップ「Fable Food」が米国へ進出

オーストラリアのシドニーを拠点とする新しい植物由来食品スタートアップのFable Foodが資金調達を発表した。キノコから代替肉を製造している同社はシードラウンドで650万オーストラリアドル(約5億2900万円)を調達した。このラウンドを主導したのはオーストラリアのVCでCanva、Culture Amp、SafetyCultureにも投資しているBlackbird Venturesで、他に農業・食品テックベンチャーファームのAgFunder、持続可能性に着目するAera VCとBetter Bite Ventures、さらにシンガポールを拠点とする農産物輸入業者のBan Choon MarketingとSequoia CapitalのパートナーだったWarren Hogarth(ウォレン・ホガース)氏も参加した。

Fableは2021年中の米国での販売開始に向けて準備をしている。オーストラリアでは同社製品をWoolworths、Coles、Harris Farm Marketsなどの小売店で購入できるほか、レストランのGrill’dでは最近136店舗でキノコ肉バーガーパティの提供を始めた。Fableの製品はシンガポールや英国のレストランでも味わえる。

Fableは高級レストランのシェフから化学系エンジニアで菌類学者(キノコ研究者)に転身したJim Fuller(ジム・フラー)氏、オーガニックキノコ農家のChris McLoghlin(クリス・マクラフリン)氏、以前にShoes of Preyを起業したMichael Fox(マイケル・フォックス)氏によって2019年に創業された。

FableのCEOであるフォックス氏はTechCrunchに対してメールで、自身は6年間をベジタリアンとして過ごした後に「健康、環境、倫理的な理由で」ヴィーガンになったと述べた。

フォックス氏は「友人や家族と話をすると、多くの人が同じ理由で肉の消費を減らしたがっていますが、肉の味や食感が好きなので難しいようです」と述べた。同氏は植物由来食品にもっと簡単に移行できるようにしたいと考え、数人のシェフからキノコをベースの食材にすることを勧められた。その後フォックス氏は、キノコから作る代替肉を開発していたフラー氏とマクラフリン氏と出会った。

フォックス氏は次のように語る。「出会ったときに、我々は同じ価値観とゴールを共有し、お互いに補完しあうスキルセットを有していることを確信しました。我々には工業型農業に終止符を打ち、食糧システムをもっと倫理的で健康で持続可能で温室効果ガスを削減するものにしたいという共通の願望がありました」。

Fableの最初の製品にはプルドポークや蒸し煮の牛肉、牛のブリスケット(肩バラ肉)の代替(フラー氏はテキサスでスロークックの食事を食べて育ち、その体験を再現したかった)と、調理済み食品のラインナップがある。使われているのは椎茸だ。フォックス氏は椎茸について「自然のうまみがあって味わい深く、成長が遅いキノコなので自然と肉のような食物繊維になり、動物性タンパク質と同様の肉っぽい噛みごたえが得られます。調理したときの化学的組成がちょうどよく、動物性食品のような風味になります」と説明する。

Fableの調理済み食品。画像クレジット:Fable

フラー氏はFableの最高サイエンス責任者を務めている。Fableは同氏のシェフ、化学系エンジニア、菌類学者としての経験を活かして、最小限の加工と原材料で優れた味、香り、食感の食品を作っている。例えば蒸し煮の牛肉の代替品は、椎茸以外は7種類の原材料と塩、コショウでできている。

米国時間8月11日、FableはDan Joyce(ダン・ジョイス)氏が最高事業成長責任者に就任しグローバルでのセールスとマーケティングの責任者になることも発表した。同氏は安全検査ソフトウェアのSafetyCultureでヨーロッパ、中東、アフリカの責任者を務めていた。Fableはレストランやミールキット企業との協業で米国での販売に乗り出す。

キノコをベースに代替肉を作っているスタートアップには他にMeatiAtLastがある。フォックス氏によれば、この2社は菌類の子実体であるキノコではなく、菌の構造である発酵した菌糸体を使っているのが大きな違いだという。

Fableは新たに調達した資金で研究開発とオーストラリアや他の国での製造能力の拡大を図る。同社は今後の製品の計画を明らかにしていないが、フォックス氏はキノコを使って豚肉、鶏肉、ラム肉といった植物性タンパク質の代替品を開発する予定だと述べた。

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画像クレジット:Fable Food

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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

代替タンパク質開発の豪v2Foodがアジアや欧州進出に向け約58億円調達

v2Food(ブイツーフード)は代替タンパク質分野で競争を展開している数多くの新規参入社の1社だ。創業地はオーストラリアだが、いま欧州やアジア、その他の地域に狙いをつけている。同社は競争においていくつかの鍵となる有利点を持っていて、新たに調達した4500万ユーロ(約58億円)でユーロ圏参入の道筋をつける。

同社はオーストラリアで大きく成長し、まず最初の目標は同国トップとなることだとCEOで創業者のNick Hazell(ニック・ハゼル)氏は話した。同氏はMasterFoodsとPepsiCoのR&D部門で働いた経歴を持つ。一方でv2Foodは、パートナー企業のBurger Kingがv2Foodのパティを使ったWhopperの提供を開始したアジア、そして疑わしい材料を最小限にすることが重要である欧州でも存在感を高める計画だ。

現在v2Foodは植物ベースの牛ひき肉とパティ、ソーセージ、調理済みのボロネーズソースを作っている。明らかに同社は、大半の代替タンパク質企業がまず参入するそうした部門で激しい競争に直面している。しかしv2Foodは2つの点で他社に優っている。

まず、v2Foodの製品は「どの基準の食肉生産施設」ででも作られる。少なくとも作ることができる。これは事業拡大するためには大きなプラス点であり、コストという点ではマイナスだ。というのもスケールメリットがすでに働いてきるからだ。植物ベースの物質や、代替タンパク質を構成する一般的な他の人工物質を作って混ぜる工程は、既存のインフラが受け入れることができたわけではない。これは工程の切り替えをしなければならないことに尻込みしてきた従来の食肉会社との提携に道を開いている(ちなみに、v2Foodが目指すのは、新たな地域でのマーケット成長であり、従来の肉の置き換えはさほどではない、とハゼル氏は指摘した)。

2つめは、資金調達発表のプレスリリースに書かれている点だ。「v2Foodの製品にはGMO(遺伝子組み換え作物)、防腐剤、着色剤、香料が含まれていません。そのため、欧州マーケットに理想的な製品となっています。多くの大手競合社が厳しい規制のために欧州マーケットに参入できていません」。これはまた店舗で2つの植物由来の製品のどちらにしようか迷う購入者を引きつけるのにも少なからず有利に働く。防腐剤などの不使用を誇らしげに宣伝する、ごく限られた材料から作られているものを最終的に選ばない人はいるだろうか。代替タンパク質を購入する層は特にこうしたことを考慮するだろう。

4500万ユーロのラウンドは欧州インパクトファンドのAstanorがリードし、Huaxing Growth Capitol Fund、Main Sequence、ABC World Asiaも参加した。調達した資金はR&Dと事業拡大にあてる。

「今回の資金調達は、世界が食糧を生産する方法を変革するというv2Foodの目標に向けた重要なステップです」とハゼル氏は話す。「こうしたグローバルの問題は早急な解決策を必要としているため、当社がすばやく事業を拡大するというのは責務でもあります」。

そのために、調達した資金のかなりの割合を、需要に応えるために十分な製品を作ることに向ける。v2Foodはまた新製品開発の加速と既存製品の改良のためにR&D支出を倍増させる。必要な材料をオーストラリアに輸入するより、同社はローカルの製造施設を建設できるか模索している。幸運と、植物由来のものの製造で、そうした地域は純輸出国となるかもしれず、そうなれば地域経済の下支え、v2Foodのレジリエンス強化やコスト削減につながる。

欧州への事業拡大は同社(とAstanor)にとってまだひらめきにすぎず、v2Foodの元来のシンプルさと非GMOでもってしても、欧州マーケットで新製品を展開するというのは簡単なことではない。

カテゴリー:フードテック
タグ:v2Foodオーストラリア植物由来肉タンパク質資金調達

画像クレジット:v2Food

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

Squareが3.19兆円で「今買って、後で支払う」後払いサービス大手Afterpayを買収

フィンテック界を揺るがす超大型案件として、Square(スクエア)は米国時間8月1日、オーストラリアの「後払い決済(BNPL、Buy Now, Pay Later)」サービスの大手Afterpay(アフターペイ)を290億ドル(3兆1900億円)で、すべて株式を対価として買収すると発表した。

買収価格は、7月30日のSquareの普通株式の終値247.26ドル(約2万7200円)をベースとしている。この買収は、一定の条件を満たすことを前提に、2022年第1四半期中に完了する見通しだ。Afterpayの直近終値96.66豪ドル(約7800円)に対し30%以上のプレミアムがついたことになる。

Squareの共同創業者でCEOのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は、2社のフィンテック企業が「共通の目的を持っている」と声明で述べた。

「私たちは、金融システムをより公平で、利用しやすく、包括的なものにするためにビジネスを構築します。Afterpayはその原則に従い、信頼できるブランドを構築しました」と同氏は声明で述べた。「力を合わせ、Cash AppとSellerのエコシステムを上手く結びつけ、店舗と消費者にさらに魅力的な製品とサービスを提供し、パワーを彼らの手に取り戻すことができます」。

両社の結合により、他に類を見ない巨大な決済企業が誕生する。この1年半の間に「後払い」サービスは爆発的に普及し、特に若い世代を中心に、クレジットカードを使わず、利息も払わず、オンラインや小売店でどこにでもあるような分割払いのローンを利用するという考えが広まっている。

6月30日時点でAfterpayはファッション、家庭用品、美容、スポーツ用品などの業界の大手小売業者を含め、全世界で1600万人以上の消費者と約10万の加盟店にサービスを提供している。

両社の声明には、AfterpayのSquareグループへの加入により、SellerおよびCash Appのエコシステムに関するSquareの戦略的優先事項が加速することになる、とある。Squareは、Afterpayを今のSellerおよびCash Appのビジネスユニットに統合する計画だ。それにより「小規模な加盟店」であっても、精算時に今すぐ購入して後で支払うという選択肢を提供できるようになる。また、この統合により、Afterpayの利用者は、Cash Appで直接分割払いを管理できるようになる。Cash Appの利用者は、アプリ内で直接、加盟店やBNPLが選べる。

Afterpayの共同創業者で共同CEOでもあるAnthony Eisen(アンソニー・アイゼン)氏とNick Molnar(ニック・モルナー)氏は、取引終了後にSquareに合流し、Afterpayのマーチャント事業とコンシューマー事業をそれぞれ統括する。Squareは、Afterpayの取締役 1名を同社の取締役として任命する予定だ。

Afterpayの株主は、保有する株式1株につき、SquareのクラスA株式0.375株を取得する。これは、Squareの7月30日の終値ベースで、Afterpayの株価が1株あたり約126.21豪ドル(約1万200円)だったことを意味する。

この分野での統合がさらに進むのだろうか。それはまだわからないが、Twitter(ツイッター)上では、次にどんな取引が行われるかが話題になっている。米国では、2021年初めにライバル企業のAffirm(PayPalの共同創業者であるMax Levchin[マックス・レヴチン]氏が創業)が上場した。7月30日の終値は56.32ドル(約6200円)で、初値や直近52週間の高値である146.90ドル(約1万6200円)を大きく下回った。一方、米国で急成長を遂げている欧州の競合企業Klarnaは、6月にさらに6億3900万ドル(約703億円)を調達し、資金調達後のバリュエーションは456億ドル(5兆160億円)という驚異的な数字になっている。

米国の消費者をめぐるBNPLの戦いは、今回の取引でますますヒートアップすることは間違いない。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:SquareAfterpay買収BNPL決済オーストラリア

画像クレジット:Smith Collection / Gado / Getty Images

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(文: Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラの大型バッテリーシステム「メガパック」がオーストラリアの蓄電施設で発火事故

現地時間7月30日、南東オーストラリアの蓄電施設で13トンのTesla(テスラ)Megapack(メガパック)が発火した。火災は現地時間午前10時から10時15分の間に起きたことを当事者であるVictorian Big Battery(ビクトリアン・ビッグ・バッテリー)は発表した。地元消防によるとビクトリア州ジーロングの現場には特殊消火班が出動した。消防士は危険化学物質流出に対応するために作られた装置を使用して消火にあたり、特殊ドローンが大気観測を行った、とFire Rescue Victoriaは伝えている。

現場から人々は避難し、けが人はなかったとVictorian Big Batteryは声明で語った。また、設備は電力網から遮断され、電力供給に影響はないことを同社は付け加えた。同施設を運営しているフランスのエネルギー会社Neoen(ネオエン)と請負業者であるTeslaは、救急救命サービスと協力して状況に対応している。

この火災を受け、有害ガス警報が近隣のベイツフォード、ベル・ボスと・ヒル、ラブリー・バンクス、およびムアアブール地区に発令されたとThe Sydney Morning Herald(シドニー・モーニング・ヘラルド)紙は伝えている。住民は屋内に避難して窓や換気口、暖炉の煙突を閉じ、ペットを家に入れるよう警告された。

Victorian Big Batteryの施設は、300MW / 450MWhのバッテリーストレージ設備で、ビクトリア州政府の立てた2030年までに再生可能エネルギー50%を目指す目標の鍵になると見られている。NeoenとTeslaが南オーストラリアのホーンズデールに建設した 100MW / 129MWhバッテリー設備が計画よりも早く完成し、市場関係者や消費者に数百万ドル(数億円)の節約をもたらした成功を受けたものだった。いずれの設備も再生可能エネルギーが得られない時に予備電力を提供するものであり、日が照っていないときや風が吹いていない時の隙間を埋める。

2021年2月にNeoenは、Victorian Big BatteryがTeslaのMegapack(同社のギガファクトリーで製造されている地域供給規模の大型バッテリー)とAutobidder(オートビダー)のソフトウェアを利用して電力網に電気を販売することを発表した。契約の一環として同施設は、さらに既存のビクトリアのピーク容量250MWをニュー・サウス・ウェールズ・インターコネクターに供給することで、向こう10年間オーストラリアの夏にエネルギーを安定供給する。

編集部注:本稿(原文)の初出はEngadgetに掲載されている。著者のSaqib Shah(サキーブ・シャー)氏はEngadgetの寄稿執筆者。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Teslaバッテリーオーストラリア火災Megapack

画像クレジット:Tesla

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(文:Saqib Shah、翻訳:Nob Takahashi / facebook

DTCブランドがビッグテックの顧客データから脱却するのを支援するOkendo

消費者直販(direct-to-consumer、D2C)が2020年伸びたが、一部のブランドは、顧客との直接的な関係を築く方法はもっと他にもあると気づき始めている。

シドニーのOkendoは、Shopifyのセラーのための顧客レビューシステムを作って人気を博したが、実はもっと大きな問題に挑戦したいという野望を持っている。それは、ブランドが自分独自のファーストパーティーデータのクオリティをもっと上げて、顧客の取得やエンゲージメントをテクノロジー広告(アドテック)の大手に頼らなくてもできるようにすることだ。

OkendoのCEOのMatthew Goodman(マシュー・グッドマン)氏は「DT2ブランドの多くが未だにビッグテックにとても依存している」という。

消費者から直接、なるべく多くの顧客レビューを集めることが、このパズルの最初の部分だ。同社のプロダクトはそのために、ブランドが顧客の格付けやレビュー、ユーザー生成のメディア、商品に関する質問などを管理し見せていく努力を助ける。そしてさらにOkendoは、企業が彼らが持っているクロスチャネルの顧客データの網をもっと多く管理できるようにし、その方法を標準化して、ショップに訪れた顧客により個人化された体験を提供する。

画像クレジット:Okendo

「マーチャントには目標があり、顧客をもっと良く理解したいと願っている。しかしブランドは、一定の規模に達すると急に、手に負えないほどのデータを扱うようになる」とグッドマン氏はいう。

同氏によると、AppleのApp Tracking Transparency機能やGoogleのサードパーティクッキーの追跡を終わらせるという誓いで、一部のブランドは自分のデータのスケーリングと、それらを突然の場所移動から隔離することに真剣になってきたという。

同社はこのようなチャレンジを収益化に結びつけるために資金を必要としており、2018年のローンチ以来初めての資金調達に取り組んでいる。今回は、Index Venturesがリードするシードラウンドで530万ドル(約5億8000万円)を調達した。2020年は、同社にとって大きな成長の年だった。eコマースへの支出が急騰し、売り手はスケーリングについて真剣に考えるようになった。その年同社のAPRは3倍増、社員数は倍増した。グッドマン氏によると、ずっと自己資金だけでやってきた同社も、調達時には黒字だった。

今日では、Shopifyでお店を開いているDTCブランドの内、3500あまりが同社の顧客だ。それ以外に、 NetflixやLego、Skims、Fanjoy、Crunchyrollなどの大物も顧客に顔を連ねている。次のプロダクトについてはまだ公表できないようだが、次の12カ月の間には2つの新分野を手がけるとグッドマン氏は言っている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:OkendoD2Cオーストラリア

画像クレジット:athima tongloom/Getty Images

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)

小さいほうがコストも下がる、小型ロケットに特化した豪スタートアップGilmour Spaceが約50億円調達

オーストラリアのロケット打ち上げスタートアップGilmour Space Technologies(ギルモア・スペース・テクノロジーズ)は、大きければいいとは限らない、という考えに賭けている。同社はErisと呼ぶ、最大215kgのペイロードを太陽同期軌道へと運ぶことができる小型の打ち上げビークルを開発した。そして現在、同社はErisを2022年に宇宙へと送るためにシリーズCラウンドで6100万豪ドル(約50億円)を調達した。

Gilmour Spaceの創業者、アダム・ギルモア氏とジェームズ・ギルモア氏(画像クレジット:Gilmour Space Technologies)

Erisは他の打ち上げ会社のロケットよりもずいぶん小さい。Relativity SpaceのTerran Oneの地球低軌道への最大ペイロードは1250kgで、SpaceXの初かつ最小の軌道ロケットFalcon 1ですら450kg運ぶことができた。Gilmour Spaceは、軽量のペイロードの方がスペースクラフトを軌道に送ろうとしている急増中の顧客のためにコストを下げることができると請け合っている。

調達した資金は、同社の従業員を70人から120人へとおよそ倍増させるのに、そしてオーストラリア・クイーンズランド州のアボットポイントに新規の商業スペースポートを設置するのにも使われる。オーストラリアの当局は5月に打ち上げサイトの建設を承認した。同社はまた、極軌道打ち上げを促進するために南オーストラリア州にある提案された打ち上げサイトを調査している。

Gilmour Spaceはすでに、将来のEris打ち上げのために見込み顧客との契約書にサインした。ここには、オーストラリアの宇宙スタートアップ2社との契約も含まれる。1社はEris初打ち上げで35kgのスペースクラフトを打ち上げる予定のSpace Machines Company、もう1社は2023年に小型衛星6基を運ぶ予定のFleet Space Technologiesだ。Gilmour Spaceは米国拠点のMomentusとも同社の軌道移行サービスの使用で契約書を交わした。

シリーズCラウンドはFine Structure Venturesがリードし、オーストラリアのVCであるBlackbirdとMain Sequence、豪州年金基金HESTA、Hostplus、NGS Superなどが参加した。BlackbirdはGilmour SpaceのシリーズAを、Main SequenceはシリーズBをリードした既存投資家だ。今回のラウンドは、オーストラリアの宇宙企業によるプライベートエクイティ調達額としては過去最高で、Gilmour Spaceの累計調達額は8700万豪ドル(約72億円)となった。

カテゴリー:宇宙
タグ:Gilmour Space資金調達オーストラリアロケット

画像クレジット:Gilmour Space Technologies

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

水素貯蔵・発電システムをディーゼル発電機の代わりに、オーストラリア国立科学機関の技術をEnduaが実用化

水素を利用する発電機は、従来のディーゼル燃料発電機に代わる環境に優しい発電機だ。しかし、その多くは太陽光や水力、風力に頼っており、いつでも利用できるとは限らない。ブリスベンに拠点を置くEndua(エンドゥア)は、電気分解によってより多量の水素を生成し、それを長期貯蔵することで、水素を利用する発電機をもっと使いやすくしようとしている。Enduaの技術は、CSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)によって開発されたもので、CSIROが設立したベンチャーファンドのMain Sequence(メイン・シーケンス)とオーストラリア最大の燃料会社であるAmpol(アンポル)によって商業化される。

Main Sequenceのベンチャーサイエンスモデルは、まず世界的な課題を特定し、次にその課題を解決できる技術、チーム、投資家を集めてスタートアップを起ち上げるというものだ。このプログラムを通じて設立されたEnduaの最高経営責任者には、電気自動車用充電器メーカーのTritium(トリチウム)の創業者であるPaul Sernia(ポール・セルニア)氏が就任し、Main SequenceのパートナーであるMartin Duursma(マーティン・ダースマ)氏とともに、CSIROで開発された水素発電・貯蔵技術の商業化に取り組んでいる。アンポルはEnduaの産業パートナーとしての役割を担うことになる。

関連記事:EV急速充電開発のオーストラリアのTritiumが約1310億円の評価額でSPAC上場へ

Enduaは、Main Sequence、CSIRO、アンポルから500万豪ドル(約4億2000万円)の出資を受けている。同社はまずオーストラリアで事業を展開し、それから他の国々へ拡大していく計画だ。

セルニア氏によれば、Enduaは「再生可能エネルギーへの移行が直面している最大の問題の1つである、再生可能エネルギーをいかにして大量に、長期間にわたって貯蔵するかという問題を解決するために設立された」という。

Enduaのモジュール式パワーバンクは、1パックあたり最大150キロワットの電気を出力できる。さまざまなユースケースに合わせて拡張することが可能で、ディーゼル燃料で稼働する発電機の代わりとして機能する。蓄電池は通常、停電時などに備えたバックアップとしての役割を果たすが、Enduaが目指しているのは、大量に貯蔵できる再生可能エネルギーを提供することで、送電網から切り離されたインフラや、電気が届いていない地域コミュニティが自立した電源を持てるようにすることだ。

「水素の電気分解技術はかなり前から存在していますが、商業市場の期待に応え、既存のエネルギー源と比較になるほどコスト効率を高めるには、まだ長い道のりがあります」と、セルニア氏は語る。「我々がCSIROと共同で開発した技術なら、化石燃料と比べてもコストを抑え、信頼性が高く、遠隔地でも容易に維持できるようになります」。

このスタートアップは、産業界の顧客に焦点を当てた後、小規模な企業や住宅にも手を広げていくことを計画している。「最大の好機の1つは、地域社会や鉱山、遠隔地のインフラなど、これまであまり取り組まれることがなかったディーゼル発電機のユーザーです」と、セルニア氏はいう。「農業分野では、Enduaのソリューションは、掘削機や灌漑用ポンプなどの機器の電源として使用できます」。また、同社のパワーバンクは、太陽光や風力などの既存の再生可能エネルギーシステムに接続することができ、ユーザーは経済的な切り替えが可能であると、同氏は付け加えた。電気分解のプロセスには水が欠かせないが、必要な量はわずかだ。

「電池は出力を調整しながら少しずつ電力を供給できる優れた方法であり、全体的なエネルギー移行計画を補完するものです。しかし私たちは、地域社会や遠隔地のインフラが、信頼できる再生可能エネルギーをいつでも利用できるように、大量かつ長期間にわたって貯蔵できる再生可能エネルギーの供給に注力しています」と、セルニア氏はTechCrunchの取材に語った。

アンポルは、同社のFuture Energy and Decarbonisation Strategy(未来のエネルギーと脱炭素化戦略)の一環として、Enduaと協力している。同社はEnduaの技術をテストして商品化し、その8万社にものぼるB2B顧客に提供する予定だ。ますば年間20万トンの二酸化炭素を排出しているオフグリッドのディーゼル発電機市場に焦点を当てている。

アンポルのマネージングディレクター兼CEOであるMatthew Halliday(マシュー・ハリデイ)氏は「Enduaと関わりを持てることに興奮しています。これは、エネルギー移行を後押しする新しいエネルギーソリューションを発見・開発することによって、顧客価値提案を拡大するという当社のコミットメントの一環です」と、プレスリリースで述べている。

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タグ:水素電力オーストラリアEnduaAmpolエネルギーエネルギー貯蔵

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

従業員のコミュニケーションをパーソナライズし本当に重要な社内メッセージを確実に送る「Pyn」

最近のマーケターのほとんどは、ターゲットを絞ったコミュニケーションを顧客に送信する方法を知っており、役立つツールもたくさんある。だがパーソナライズされたメッセージを社内で送信するとなると、選択肢はそれほど多くない。オーストラリアを拠点とするアーリーステージのスタートアップであるPyn(ピン)はそれを変えたいと考えており、現地時間5月28日、800万ドル(約8億8000万円)のシードラウンドを発表した。

Andreessen Horowitzが投資をリードし、Accel、BambooHRの共同創業者であるRyan Sanders(ライアン・サンダース)氏、Atlassianの共同創業者で共同CEOのScott Farquhar(スコット・ファクファー)氏が参加した。

最後の1社は偶然ではない。Pynの共同創業者でCEOのJoris Luijke(ジョリス・ルイク)氏は、Atlassianで人事を担当し、後にSquarespaceや他の会社でも人事を担当した。同氏は、社内コミュニケーションにおいてターゲットを絞ったメッセージを提供するという一般的な課題に気づいた。

「私はプロフェッショナルとしてのキャリアを通してこの問題に取り組み、人々が受け取るメッセージをパーソナライズしようとしてきました。つまりそれがPynが行おうとしていることです。ひと言でいえば、私たちは従業員のコミュニケーションを根本からパーソナライズします」とルイク氏は説明する。共同創業者であるJon Williams(ジョン・ウィリアムズ)氏は、従業員体験管理プラットフォームであるCulture Ampの共同創業者だった。同氏は2011年にCulture Ampの立ち上げを支援した(同社は1億5000万ドル、約165億円以上を調達した)こともあり、2人はこのアイデアに没頭した。

彼らはWorkday、BambooHR、Salesforce、Zendeskなど、企業がすでに使用している既存システムの情報を利用し、Pynにパーソナライゼーションをもたらした。そしてマーケターがさまざまなタイプの情報を活用してパーソナライズされたメッセージを顧客に送るのと同じように、彼らは既存システムのデータを利用する。

つまり、すべての人に関係があるわけではないのに社内の全員が受け取る電子メールを削減し、受信する人にとって本当に重要なメッセージを送信できるということだ。また、マーケティングコミュニケーションツールと同様に、メールを開いた人の数がわかるため、目的を達成できたかどうかを確認できる。

a16zのゼネラルパートナーであり、今回の取引のリードインベスターでもあるDavid Ulevitch(デービッド・ウレビッチ)氏は「Pynは組織全体の文化の構築とポリシーの設定に役立つ、カスタマイズ可能なコミュニケーション資料のライブラリーも提供しています」と指摘する。「Pynはまた、従業員のコミュニケーションチャネルを『レール』として扱います。レールの上で、管理のためのプレイブックのライブラリーを提供することにより、組織全体を管理することができます」と同氏は投資を発表したブログ投稿で述べた。

2019年に立ち上げられたこのスタートアップには現在10人の従業員がおり、チームはオーストラリアとカリフォルニアのベイエリアで働いている。ウィリアムズ氏によると、チームの半分はすでに女性であり、会社を拡大するにあたり多様性を最優先とする計画だ。

「ジョリスは『ラディカルなパーソナライズ』が私たちのマントラだと言っています。これを組織に当てはめると、つまり実際にはインクルージョン(包摂性)に関わることです。私たちが1人1人のニーズに応えたいなら、それを理解する必要があります。ですから、私たちにとって多様性は極めて重要です」とウィリアムズ氏は語った。

同社は顧客数の詳細を開示していないが、Shopify、Rubrik、Cartaを初期の顧客として挙げている。創業者らによると、2020年のパンデミックで多くの関心が寄せられ、頻繁で意味のあるコミュニケーションがさらに重要になったという。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Pyn資金調達オーストラリアAndreessen Horowitz

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

Facebookがオーストラリア政府と合意、ニュースコンテンツ共有の再開を発表

Facebook(フェイスブック)は、オーストラリア政府と合意に達したことから、同国のユーザーのフィードでニュースを共有することを「近日中に」復活させると発表した。このソーシャルメディアの巨人は米国時間2月17日、近々投票で成立が予想されるオーストラリアのメディア交渉規定法案を巡る討論の後、同国でニュースコンテンツを制限するという思い切った行動に出た。この規定は、FacebookやGoogle(グーグル)などの大手テック企業が、自社のソーシャルメディアプラットフォームに投稿されたニュースコンテンツに関して、ニュース発信元のメディア会社との間で収益分配契約を結ぶことを求めるものだ。

関連記事:フェイスブックが豪州ユーザーのニュースリンク共有・閲覧を禁止へ

Seven News(セブン・ニュース)の報道によれば、オーストラリアのJosh Frydenberg(ジョシュ・フライデンバーグ)財務大臣は、「ニュースメディア企業が公正に報酬を得られるようにするための枠組みを強化するこの規定について、デジタルプラットフォームとニュースメディア企業に対しその運用方法をより明確にする」修正が加えられたと語ったという。

今回の修正案は、Facebookのようなデジタルプラットフォームとニュースメディアが合意に達することができるように、強制的な仲裁に入る前に2カ月間の調停期間が規定に盛り込まれたことを意味する。オーストラリア政府はまた、この規制を適用すると決定する前に、テックプラットフォームがすでに地元のメディアと結んでいる商業契約を検討することになり、最終決定に達する前に1カ月間の観察期間が与えられることになった。

Facebookオーストラリア&ニュージーランドのマネージングディレクターであるWilliam Easton(ウィリアム・イーストン)氏は声明の中で、同社は今回の修正に「満足している」と述べ、それが「我々のプラットフォームがパブリッシャーに提供する価値と、我々がパブリッシャーから受け取る価値を相対的に認識する商業取引を可能にするための核心的な懸念事項に対処した」と続けた。

Facebookが先週行った制限は、オーストラリアのパブリッシャーがFacebookページでニュースを投稿・共有することできなくなり、オーストラリアのユーザーは自国や外国のニュースコンテンツを閲覧・共有することができなくなるというものだった。

オーストラリア政府は2020年4月、GoogleやFacebookなどの大手テック企業に対し、地元メディアにコンテンツの再利用料を支払うことを義務づける規制を採用すると発表した。それ以前にプラットフォーム企業と地元メディアの間では自主的な規定を作成する試みが行われていたものの、遅々として進まなかったためだ。

この法案に反対を表明する活動として、最初にFacebookは2020年9月、オーストラリアでニュースコンテンツの公開共有を制限せざるを得なくなると脅しをかけた。Googleもまた、オーストラリアにおけるユーザー体験が損なわれると主張し、同国で無料のサービスを提供することができなくなるかもしれないと示唆していた。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebookオーストラリア

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フェイスブックが豪州ユーザーのニュースリンク共有・閲覧を禁止へ

Facebook(フェイスブック)は米国時間2月17日、オーストラリアのユーザーがプラットフォーム上でニュースリンクを共有したり閲覧したりすることを禁止すると発表した。同国のFacebookユーザーはニュースを読むのに他のサイトを利用することを余儀なくされそうだ。この大胆な措置は、インターネットプラットフォーム(特に広告大企業であるFacebookとGoogle)が報道機関のコンテンツをシェアするためのアクセスに対して、その対価を報道機関に直接支払うようにしようとしている豪政府が提案した法案についての議論を受けてのものだ。

関連記事:豪州がフェイスブックとグーグルにニュース使用料支払いを義務付け

決断しかねていたFacebookにとって、完全禁止は最後の手段だった。ブログ投稿の中で同社はこのような動きはオーストラリア、そして世界のユーザーの利益を損なうものだと強調しつつ、決断による収益への実質的影響を最小限にしようとした。同社は、オーストラリアのユーザーのフィードにあるコンテンツのわずか4%がニュースだと明らかにしたが、ニュース消費に関連する他のエンゲージメント指標は示さなかった。

投稿の中で、Facebookはニュースコンテンツが同プラットフォーム上でユーザーによっていかに共有されているかについて、自社をGoogleと区別しようとした。Googleの検索では、コンテンツはアルゴリズムでGoogleによってキュレートされている。「Google検索はニュースと密接に絡み合っていて、報道機関は自由意志でコンテンツを提供していません」とFacebookオーストラリアのマネージングディレクターであるWilliam Easton(ウィリアム・イーストン)氏は書いた。「一方、報道機関はFacebook上にニュースを投稿することを自ら選んでいます。そうすることで報道機関は購読を売り込んで視聴者を増やし、広告売上も増やすことができます」。

Googleはすでにオーストラリアでニュースコンテンツを引き続き表示できるよう、対価支払いを進めるために報道機関との提携を開始した。同国でのサービスを停止するという先の脅しにも関わらず、まずはRupert Murdoch(ルパート・マードック)氏のNews Corpと契約を結んだ。Facebookの動きには、オーストラリアに拠点を置く報道機関へのリンクをプラットフォーム上で共有できなくなるという、同国外のグローバルユーザーへの予想外の影響が含まれる。

オーストラリアの法制化は、インターネットプラットフォームがいかに運営を継続するか、地域の法制化がグローバル規模で影響をおよぼす可能性があるという攻撃的な例だ。多くの国がこの法案がどのように影響するのか見守っているのは明らかだ。Googleが同国でサービスを維持するためにプライベートな取引の成立を模索している一方で、Facebookが強硬 なアプローチを取ったことは、将来どのように運営するかという計算を余儀なくされた、各プラットフォームの異なるアプローチを示している。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebookオーストラリア

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルが豪州における無料での検索エンジン提供停止と警告、デジタルニュース規則に対するロビー活動で

Google(グーグル)が、オーストラリアで検索エンジンを停止すると迫っている。コンテンツの再利用に関し、ニュース配信元への支払いを義務づける法案に反対するロビー活動を展開している。

Facebook(フェイスブック)も法律の対象となる。またFacebookは以前、法律が導入された場合にはニュースを自社のサービス上で共有することを禁止すると述べた一方で、法律から受けた脅威の結果として同国への投資が減少したと主張した。

「ウェブサイト間のリンク無制限の原則は、検索の基本です。規則がこのまま法制化された場合、金銭面および運営面で管理できないリスクが生じるため、オーストラリアでのGoogle検索の提供を停止せざるを得なくなります」とGoogleは米国時間1月22日に警告した

ハイテクの巨人であるGoogleは、2020年8月も政府の方針を攻撃した。政府が同社に対しメディア企業と広告収入をシェアする施策を進めた場合、オーストラリア内のサービスの品質が低下し、無料でなくなる可能性があると警告している。

2020年夏以来、Googleはロビー活動のやり方を変えたようだ。明らかに、金銭的影響を最小限にするよう法律を作り変えることを支持しており、法律を完全に脱線させる試みはあきらめたようだ。

最近のロビー活動は、法案の(Googleの視点からの)最も有害な要素を排除することに注力している。また、配信元への支払いの代替モデルとして、2020年に急ぎ立ち上げたニュースショーケースプログラムを推進している。Googleは代替モデルを規則の下で送金を受けるビークルにしたいと考えている。

現在、議会で審議されているオーストラリアのデジタルニュース規則法案には、テック大手のGoogleとFacebookがコンテンツの一部(スニペット)の表示に関してだけでなく、コンテンツへのリンクに関しても配信元に支払うという物議を醸す条件が含まれている。

それでもGoogleはオーストラリアに対し「リンクとスニペット」の代金を払うとなればインターネットの仕組みが壊れると警告した。

1月22日の上院経済委員会への声明で、オーストラリア・ニュージーランド担当副社長であるMel Silva(メル・シルバ)氏は次のように述べた。「規則に関するこの規定は、私たちのビジネスとデジタル経済にとって受け入れがたい前例となるでしょう。検索エンジンやインターネットの仕組みと相容れるものではありません。これはGoogleだけの見解ではありません。この審議に提出された多くの文書でも言及されています」。

「ウェブサイト間におけるリンク無制限の原則は、検索の基本です。規則がこのまま法制化された場合、金銭面および運営面で管理できないリスクが生じるため、オーストラリアでのGoogle検索の提供を停止せざるを得なくなります」。

リンクに対して支払いを要求するという提案に反論しているのは、確かにGoogleだけではない。

ワールドワイドウェブの発明者であるTim Berners-Lee(ティム・バーナーズ=リー)卿は、法案が「特定のコンテンツをオンラインでリンクすることに対して支払いを要求することは、ウェブの基本原則に違反するリスクがあります」と警告した

書面による証言で彼は続ける。

検索エンジンがウェブ上で有効になる前は、あるページから別のページへのリンクをたどることが資料を見つける唯一の方法でした。検索エンジンはそのプロセスに対し非常に効果を発揮します。ただし、重要なインプットとしてウェブのリンク構造がなければ検索エンジンは機能しません。つまり、リンクはウェブの基本です。

私が理解しているところでは、提案された規則は、指定したデジタルプラットフォームに対し、特定のニュースプロバイダーが提供するコンテンツへのリンクに関して、ニュースプロバイダーと交渉し、場合によっては支払うことを要求しようとしています。

ウェブ上のリンクに料金を請求すると、ウェブコンテンツの価値の重要な側面が妨げられます。私の知る限り、他のコンテンツへのリンクに対して法的に支払いを要求する例は現在ありません。自由にリンクできること、つまりリンク先のサイトのコンテンツにリンクの制限がなく、金銭的に料金がかからないことは、ウェブの運用方法、これまでの繁栄、そして今後数十年にわたる成長の根本です。

ただし、バーナーズ=リー氏の文書がスニペットについて言及していないことは注目に値する。一度もだ。触れたのはリンクについてのみだ。

一方、Googleはフランスの配信元と合意に達したばかりであり、Google自らがコンテンツのスニペットも支払いの範囲に含まれると述べている。

EUでは、Googleはすでに改訂された著作権指令の対象となっている。この指令はテキストのスニペットの再利用を範囲に含めるため、ニュースコンテンツの隣接領域にまで権利を拡張している。もっとも指令は、リンクまたは「非常に短い抜粋」を範囲に含めていない。

フランスでは、Googleは「リンクと非常に短い抜粋を超える」コンテンツにのみお金を払うという。しかし、その文脈でスニペットについては何も述べていない。

フランスの配信元は、Googleがニュースアグリゲーターに通常表示するそれほど短くないテキストスニペットをEU法は明確に範囲に含むと主張している。そして、指令は例外が隣接権の有効性に影響を与えるような方法で解釈されるべきではないとも指摘している。したがって、Googleがスニペットに関して支払いを拒否しようとすれば、フランスで大きな戦いになると思われる。

しかし、オーストラリアではまだ戦いが続いている。そのためGoogleは、実際には別の2つの問題(リンクへの支払いとスニペットに関する支払い)を混同しようとしている。EU法にすでに組み込まれたものに比べ、金銭的影響を軽減しようとしているのだ(これまでのところ指令はフランスでのみ積極的に施行されており、フランスは国内法に置き換えた点で他のEU諸国よりも進んでいる)。

オーストラリアでGoogleはまた、規則が「ニュースショーケースを指定すること」(ニュースショーケースは配信元への支払いに関する法案が審議され始めたときにGoogleが始めたプログラム)を強く求めている。そしてニュースショーケースを「オーストラリアのニュース配信元が提供する価値に対して支払う商業的合意」に達するための手段とするよう働きかけている。

もちろんGoogleにとっては、商業的な交渉プロセスは規則が提案する「最終オファー仲裁モデル」に拘束されるよりも望ましい(そしてなじみがある)。Googleは「最終オファー仲裁モデル」を「偏った基準」だとして攻撃しており、同社が「管理不能な金銭面および運営面のリスク」にさらされると主張している。

「これが類似の取引に基づく標準的な商事仲裁になるのであれば、誠実な交渉を促し、強力な紛争解決により私たちは確実に責任を問われることになります」とシルバ氏は主張する。

Googleが現在のドラフトから削除しようと躍起になっている第3の規定では、コンテンツが検索結果にどう表示されるかに影響を与えるアルゴリズムを変更する前に、Googleは配信元に通知する必要がある。

「アルゴリズム通知の規定は、本当に合理的な通知のみを求めるよう調整してもいいはずです。Googleのアルゴリズムに関する重要で対応可能な変更について通知を求めるのです。配信元は自身に影響がおよぶ変更に対応できます」とGoogleは提案している。

数年の間にGoogleの立場が、関連する法律成立前の「ニュースにお金を払うことは決してない」から「独自のライセンスプログラムを通じてニュースのライセンスにお金を払わせてください」へと変わったことを考れば確かに興味深い。EUが指令を採択し、現在フランスで競争法の助けを借りて)非常に積極的に施行され、オーストラリアでも同様の法律の制定に向けて動くようになってからそうなった。

法律がテックの巨人のマインドを変えられることが判明した。

もちろん、オンラインのコンテンツにリンクする人にお金を払わせるという考えは明らかにひどい。それはやめるべきだ。

しかし、草案のその部分が、配信元に何かを支払わなければならないことをGoogleに受け入れさせるためのオーストラリアの議員による交渉戦術であるならば、それは勝てる戦術だと思われる。

そして、シルバ氏が示唆するように、検索エンジンを停止するというGoogleの脅しは徹底しているように見えるかもしれないが、代替の検索エンジンがいくつ存在するかを考えると、かつてほどの脅威はほとんどない。

特に、代替の検索エンジンの多くは、ユーザーのプライバシー悪用がはるかに少ないからだ

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タグ:Google検索エンジンオーストラリア

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(翻訳:Mizoguchi

Facebookがユーザーを監視するVPNアプリ「Onavo」を使用したと豪州が提訴

Facebook(フェイスブック)にまたも頭痛の種ができた。オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)は、商業目的でユーザーを監視するOnavo(オナボ)のVPNアプリを2016年と2017年に使ったとしてフェイスブックを提訴する。

ACCCは、フェイスブックがOnavo Protectアプリを奨励し、多くのオーストラリアの消費者に対して虚偽、ミスリーディングあるいは欺瞞的な行動を取ったと主張している。同アプリは、フェイスブックの事業をサポートするためにデータを集めていたとき、ユーザーの個人アクティビティデータをプライベートに保って保護し、他の目的では使わないとうたっていた。

「Onavo Protectを通じてフェイスブックは何千人ものオーストラリアの消費者のかなり詳細で価値ある個人アクティビティデータを商業目的で収集し、使っていました。これは、フェイスブックがこのアプリ奨励の中心に据えた、保護と秘密保持、プライバシーという約束に完全に反しています」とACCC会長のRod Sims(ロッド・シムズ)氏は声明文で述べた。

「消費者はオンラインプライバシーを気にかけているため、往々にしてVPNサービスを使います。これはフェイスブックのプロダクトが提供するといっていたものです。しかし実際は、Onavo Protectはかなりの量の個人アクティビティデータをそのままフェイスブックに送っていました」。

「そうした行為は、フェイスブックとOnavoが個人アクティビティデータを収集して使用していると知らされる機会をオーストラリアの消費者から奪ったと確信しています」とシムズ氏は付け加えた。

ACCCは、2016年2月1日から2017年10月までフェイスブックと同社の子会社Facebook Israel Ltd、Onavo, Incがダウンロード無料のOnavo Protectアプリの機能を偽って表示することでオーストラリアの消費者をミスリードしたと主張している。

裁判上の命令と罰金を模索していると当局は話している。

裁判についてフェイスブックの広報担当は「人々がOnavo Protectをダウンロードしたとき、当社は収集する情報について、そしてどのように使用するかについて常にクリアにしていました」と述べた。

そして「当社はこの件についてのACCCの調査にこれまで協力してきました。ACCCの訴状をレビューし、この件に対する当社の考えを引き続き主張していきます」と語った。

フェイスブックは2019年、ユーザーを詮索するために2013年に買収したOnavo Protectアプリをいかに使用してきたかについて激しい反発を浴びたのちに、同アプリを閉鎖すると発表した。

合法の証拠収集で入手されたフェイスブックの内部資料では、フェイスブックのユーザーがどのサードパーティのアプリをダウンロードして使っているかを知ろうと、商業目的の情報分析ソースとしてOnavoのチャートをフェイスブックが使っていたことが示されている。この資料は英国議会がオンライン誤情報についての調査の一環として押収し、2018年に開示された(未訳記事)。

Onavo経由で集められたデータでは、WhatsApp(ワッツアップ)がフェイスブックのMessenger(メッセンジャー)アプリの脅威となりそうなことが明らかになった。このマーケット洞察を得て間もなく、フェイスブックはライバルのWhatsAppを買収するために190億ドル(約1兆9700億円)という大金を払った(未訳記事)。

フェイスブックは現在、米国で膨大な独禁法訴訟に直面している。2020年12月初めに46州が独占的な事業慣行を通じて競争を抑制していたとしてフェイスブックを提訴した。独占的な事業慣行の主な例としてInstagram(インスタグラム)とWhatsAppの合併を挙げた。

米連邦取引委員会と議員らはそうした合併の解消とフェイスブックのソーシャル帝国の解体が不可欠だと要求している。

このほか、フェイスブックはドイツでも訴訟を抱えている。連邦カルテル庁(FCO)は、所有するサービス間でフェイスブックがいかにデータを統合できるか、制限を設けることを検討している(未訳記事)。

FCOはまた、新規のOculusユーザーはキットを使うためにフェイスブックアカウントを持っていなければならないと指摘したうえで、フェイスブックが最新のOculus VRキットの使用をFacebookアカウントと紐付けている件も調査していると2020年12月に発表した。今夏、フェイスブックは既存のOculusアカウントのサポートを2023年までに終了すると明らかにしている。

関連記事:Facebookが全米46州からの大型反トラスト訴訟に直面

カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookOnavoオーストラリアプライバシー訴訟

画像クレジット:Onavo Protect

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(翻訳:Mizoguchi

新型コロナ追跡アプリのデータを豪情報当局が「付随的」に収集していたことが明らかに

オーストラリアの情報機関が、新型コロナウイルス接触追跡アプリCOVIDSafeの立ち上げから6カ月間にわたって「付随的」にデータを収集していたことを政府の監視当局が発見した。

政府のスパイ・盗聴機関を監督する豪政府の情報活動コミュニティ監察官が米国時間11月23日に公開したレポートには、アプリデータが「他のデータを合法的に収集する過程」で入手された、と書かれている。

しかし監視当局は、機関が「COVIDアプリのデータを暗号化前の状態に戻したり、アクセスしたり、使ったりした」という証拠はないと述べた。

付随的な収集は、故意に狙ってはいなかったものの幅広い情報収集の一環として入手したデータを表現するのにスパイがよく使う言葉だ。この手の情報収集はアクシデント的なものではなく、スパイ機関がたとえば膨大な量のデータを運ぶ光ファイバーケーブルに侵入した結果だったりする。豪政府の広報官はこのニュースを最初に報じたメディア(iTnews記事)に対し、付随的な収集は「令状執行」の結果としてもあり得ることだ、と語った。

報道では、付随的な収集がいつ止まったのかについては言及していなかったが、情報機関が「法を遵守するために積極的な行動を取り、データは実行可能になり次第、早急に削除される」と具体的な日付なしで報じた。

政府の情報機関がCOVID-19接触追跡データにアクセスできるかもしれない、というのはあり得る最悪の結果だ。

新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来、国々、そして米国などの国の各州はウイルス感染拡大を阻止するために接触追跡アプリの構築を急いだ。しかしこれらのアプリは機能とプライバシーという点においてかなり差がある。

大半のアプリは、ユーザーが接触したかもしれない感染者を追跡するのにBluetoothを使ったプライバシー尊重のアプローチを取った。またアプリの多くは、数百人もの学者が支援したApple(アップル)とGoogle(グーグル)のシステムを実装することを選んだ。しかしイスラエルやパキスタンのように一部の国は、位置情報を追跡するなどプライバシーを侵害するようなテクニックを活用している。この手法は、政府が人々の所在を監視するのに使うことができる。イスラエルの場合、追跡が大きな議論を巻き起こし、裁判所はアプリ閉鎖を命じた。

オーストラリアの監視当局は、どういうデータが情報機関によって収集されたのか具体的に示さなかった。アプリはBluetoothを活用しており、位置情報は使っていない。しかし、感染者と接触した可能性のある人に政府の衛生当局が連絡できるよう、アプリユーザーは名前や年齢、郵便番号、電話番号などの個人情報をアップロードする必要がある。

豪州ではこれまでに新型コロナの感染者2万7800人超、死者900人超が確認されている。

関連記事:AppleとGoogleが共同開発する新型コロナ追跡システムは信頼できるのか?

カテゴリー:セキュリティ
タグ:新型コロナウイルスCOVID-19オーストラリア個人情報プライバシー接触者追跡

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(翻訳:Mizoguchi

視力回復装置のための世界初のヒト臨床試験を豪州の研究チームが準備中

オーストラリア・メルボルンにあるモナシュ大学の科学者による10年以上にわたる研究の成果として、スマートフォンスタイルの電子機器と脳に埋め込まれたマイクロ電極の組み合わせで、視覚障がい者の視覚を回復させる初のデバイスを生み出した(モナシュ大学プレスリリース)。このシステムは、羊による前臨床試験で機能することがすでに示された。そしていま、研究者らはメルボルンで行われる最初のヒト臨床試験の準備中だ。

この新しいテクノロジーは、医学的失明と定義される状態の原因となっていることが多い損傷した視神経にバイパスを作ることができる。カメラによって収集しビジョンプロセッサユニットとカスタムソフトウェアによって解釈した情報を、脳内に直接埋め込まれたタイルのセットにワイヤレスで送る。タイルが画像データを電気信号に変換する。電気信号は人の髪よりも細い微小電極を通って脳のニューロンに送信される。

実際に生産され商業的に使用可能になるまでには、特に大規模なヒトの臨床試験プロセスには、まだまだ多くのステップが必要だ。テクノロジーを開発するチームは商業ベンチャーとして、デバイスの製造と流通を拡大するための追加資金の確保も目指している。羊に10セットを移植した初期の研究では、2700時間以上の継続的な刺激を与えたところ健康への悪影響はみられなかった。

動物の研究は人間のそれとは非常に異なるが、研究チームはこのテクノロジーの成果は視覚にとどまらないと考えている。同じアプローチは根本原因が麻痺などを含む神経系にある患者にメリットと治療の選択肢を提供できると予想する。

どこかで聞いたことがあると思うなら、それはおそらくElon Musk(イーロン・マスク)氏が最近、同氏創業の会社であるNeuralink(ニューラリンク)で同様の脳インプラント技術を使用して同種類の結果を達成するという野心を示したためかもしれない。最新のソフトウェアとテクノロジーを組み合わせたデバイスにより生物学的限界をどう克服できるかを想像させてくれるのは同氏のプロジェクトが初めてではない。モナシュ大学の取り組みは、この種の科学を人々の日常の生活に影響を与える何かに変えることに向けて取り組んできた長い歴史の延長線上にある。

画像クレジット:Monash University

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(翻訳:Mizoguchi