D2C(消費者直接取引)事業の興隆が直近10年の大きなeコマーストレンドの1つであるなら、D2Cプレイヤーを統合するための巨大な資金を調達するスタートアップの成長は間違いなく2020年のテーマだった。
その最新の動きとして、Berlin Brands Group(ベルリンブランドグループ、BBG)というドイツのスタートアップは中小企業の買収・統合に2億5000万ユーロ(約318億円)を投資する計画であることを発表した。
統合レースにおける競合相手となりそうな企業の多くが、流通とロジスティックでAmazon(アマゾン)のフルフィルメント(配送センター)に頼っているAmazon Marketplaceに主にフォーカスしている一方で、創業者でCEOのPeter Chaljawski(ピーター・チャルジャウスキー)氏は欧州の既存のターゲットマーケットにおいては少し状況は異なる、と話す。
「M&Aマーケットでの米国と欧州の大きな違いの1つは、欧州の方がより細分化されていることです」と同氏は述べた。「米国ではD2CセラーはAmazonをかなり利用しています。欧州では代替の選択肢が多くあります。フランスような一部のマーケットでは消費者はAmazonに対して好意的ですらありません」。もちろんこれは消費者に直接販売し、またすべてのマーケットプレイスを迂回することに加わる要素であり、BBGにとって大きなフォーカスであり続けるエリアだと同氏は述べた。BBGはプロダクトを販売するのに計100のチャンネルを使っている。
BBGはほぼ自力で巨大で儲けの多い事業を構築したという点で、消費者にとって典型的なeコマーススタートアップではない。ベルリンで大きなeコマースプレイヤーであるにもかかわらず、BBGはベルリンで創業された有名なeコマース事業インキュベーターであるRocket Internet(ロケットインターネット)とつながりはない。
買収に割り当てた2億5000万ユーロはBBGの懐から拠出される。TechCrunchが把握しているところでは、同社が成長を続けるために自社外でかなりの額の資金を調達するのに先駆けて行う。BBGは過去に資金を調達しているが(PitchBookによると額は非公開)、今回のものはクローズすれば初の大きなエクイティラウンドになる。
BBGは収益を上げている自前のD2C事業をゼロから構築した。2005年に創業された当初はオーディオ機器を専門とし(チャルジャウスキー氏は過去にDJになるという野望を抱いていた)、いまでは14ブランドの2500ものアイテムを扱っている。順調に成長を続け、28のマーケットで販売している。
BBGがとってきたコングロマリットモデルはさまざまな部門を網羅している。その多くは電化製品(オーディオ機器やフィットネス機器、家電を含む)で、auna、Klarstein、Capital Sportsといったさまざまなブランドの下で販売されている。これまでに1000万点超のプロダクトを販売し、収益を上げていて、2020年の売上高は3億ユーロ(約380億円)だったと同社は話す。
新たな買収ではガーデニング、家庭リビング用品、スポーツ、電化製品、家電のブランドやプロダクトに注力し、50万〜3000万ユーロ(約6300万〜38億円)の売上を目指す。
BBGはほぼオーガニック成長してきた一方で、2020年12月に家庭用品ブランドSleepwiseを買収し、非オーガニックの事業拡大に初めて足を踏み入れた。チャルジャウスキー氏いわく、Sleepwiseは「とてもすてきな毛布」を作っているとのことだ。
すてきな毛布の快適さは、助けになるかもしれない。これまでの成功にかかわらず、多くの難題がBBGを待ち受けている。
まずは競争だ。BBGの戦略変更と買収計画は、この分野における統合が始まろうとしている最中でのものだ。Amazonのようなマーケットプレイスで成功を収めたものの拡大に向けはっきりとした道筋を描けていない小さなブランドを統合するのにひと握りの資金を用意している。
競合相手にはThrasio(最近企業を買収するのに借金で5億ドル=約524億円を調達した)、SellerX、Heyday、Heroes、Perchなどがある。
ファイナンシャルタイムズ紙が2020年12月に報じた記事では、これら企業がこのモデルに基づいて新しいオンライン消費者帝国を築くのに合計で少なくとも10億ドル(約1047億円)を調達したと推測している。
これら企業のビジョンは実に明快だ。次のUnilever、あるいはP&G、Sony(ソニー)を作り出したいのだ。そして実現するために製造やロジスティック、規模の経済、セールス分析、マーケティングにおける新たなイノベーションに新経済モデルやテクノロジーを活用している。
別の難題は、これまで意図的にそしてオーガニックな道をとってきた同社が多くの新ブランド統合でいかに成功し、効率的に統合を行うかだ。そうしたブランドにはカルチャーがあり、事業提携の関係もともなう。
そして3つめの難題は、高品質ブランドのソーシングだ。以前TechCrunchが指摘したように、Amazonを例にとると、そこでは膨大な数のどうしようもないようなものが売られている。卸売サイトを買い取ってAmazonで再販するような人たちの産業も含まれる。これが、多くの販売業者が特定の部門で似たようなプロダクトを販売する1つの理由だ。こうしたマーケットプレイスのセラーは、検索結果の長いリストのトップに自分たちのプロダクトがくるようにSEOやたくさんのレビューのようなものを活用している。消費者にとっては実際にいい買い物ではなくてもだ。つまり、手に入れたいホットな企業を探している企業にとって誤解を招くようなシグナルとなることを意味する。
マーケットプレイスにいかに力を加えるか、そしてどれくらいのブランドやそれらのオーナーがこうしたものを自前で構築するのか。その間のバランスは今後数年興味深いものになりそうだ。Amazonやそれに近い企業は成長を続け、かなり効率的になった。しかし、これはそうした企業がサードパーティにとって使い勝手がいいというより、あまりにもパワフルすぎることをときに意味する。
一方で我々は別の永続的なテーマを目の当たりにしている。スタートアップと大手企業の存在が小規模のプレイヤーがゲームに参戦し続けられるようサポートするためにツールを作り続けているということだ。ここにはShopifyのような大手企業だけでなくGoSiteやShogun、Xentralといった新手のプレイヤーも含まれる。
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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi)