アフリカでAPIフィンテックを展開するStitchがステルスから脱して4.3億円を調達

この数年、世界中でフィンテックインフラストラクチャー企業が多数出現している。アフリカでは、過去3年の間に、フィンテックインフラストラクチャーを提供するスタートアップがいくつか誕生している。南アフリカのフィンテックスタートアップStitch(スティッチ)もその1つだ。このほど、Stitchはステルスモードから脱して、400万ドル(約4億3000万円)のシードラウンドを発表した。これは現時点で、アフリカのAPIフィンテックスタートアップによる最高額の資金調達ラウンドだ。

Kiaan Pillay(キアーン・ピレイ)氏、Natalie Cuthbert(ナタリー・カスバート)氏、およびPriyen Pillay(プリエン・ピレイ)氏によって創業されたStitchは、アフリカ全土の金融口座にAPIのみでアクセス可能にしたいと考えており、まずは、最初のマーケットである南アフリカからサービスを開始する予定だ。開発者はStitchのAPIを使用すると、アプリを金融口座に接続できる。これにより、利用者は、取引履歴と残高の共有、本人確認、決済の開始といった処理を行うことができる。

APIを利用した金融サービス企業が世界中で多数出現している。Plaid(プレイド)は米国の市場をリードしている。スウェーデンに本拠地を置くフィンテックTink(ティンク)は欧州全体を席巻しており、Truelayer(トゥルーレイヤー)とBelvo(ベルボ)はそれぞれ、英国と中南米で確固とした地位を築いている。

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こうした企業は、エンジニアおよび開発者向けに、アプリからユーザーの金融口座に接続する際に必要な技術面および運用面での操作を軽減するツールを提供している。APIを使うことで、通常ならゼロから構築する必要のある複雑なサービスを数行のコードを追加するだけで組み込むことができる。

企業や開発者は他の金融インフラストラクチャー同様、Stitchのサービスを使用すると、パーソナルファイナンス、融資、保険、決済、資産管理などの他のサービスにイノベーションを起こすことができる。

Stitchの創業者たちは南アフリカのマーケットでAPI製品を構築した経験に基づいて起業した。キアーン・ピレイ氏は、2017年、南アフリカの保険APIプラットフォームRoot(ルート)の運用リーダーとして勤務していた。しかしその後、サンフランシスコに本拠地を置く、ID APIを開発する企業Smile Identity(スマイルアイデンティティー)に転職する。そこで同氏は、アフリカ全土のフィンテックに取り組み、コンプライアンスとアイデンティティー周りのインフラストラクチャーに問題があることを発見する。

Stitchのチーム(画像クレジット:Pang Isaac)

この頃、ピレイ氏、カスバート氏(前職はRootのソフトウェアアーキテクト)、およびプリエン・ピレイ氏は、サイドプロジェクトとして、アフリカ向けにVenmo(ベンモ)式のウォレットを構築する作業を行っていた。そして、銀行に接続しようと8カ月間試みた結果、アフリカのフィンテックはインフラストラクチャーが欠如しているために進歩のスピードが遅いことに気づいた。

「我々はユーザーが現金をウォレットから銀行口座に移せるようにする方法を考えていた」とピレイ氏はいう。「最初は手作業でやっていたが、その後、一時しのぎの策として、このプロセスを画面スクレイピングを使って自動化してみた。そして、この手作業を自動化するという解決策自体を製品化できること、なおかつもっと洗練された方法があることに気づいた」。

そのような経緯で、ピレイ氏をCEO、カスバート氏をCTO、プリエン・ピレイ氏をCPOとして、Stitchの立ち上げに向けてチームが結成された。2019年10月にはこのアイデアに本格的に取り組み始め、1カ月後にはプレシードラウンドを確保した。Stitchによると、ステルス状態で運営している間に、 Intelligent Debt Management(インテリジェント・デット・マネジメント)、Momentum Velocity Club(モメンタム・ベロシティ・クラブ)、FlexClub(フレックスクラブ)など、数社の顧客を獲得したという。その後、Stitchは消費者向け製品を扱う企業からも注目されるようになる。

Stitchは現時点で、データおよび本人確認用API製品を提供しているが、今月には、決済用製品もラインナップに追加する予定だ。大半のAPIフィンテックスタートアップと同様、StitchもAPIコール1回ごとに課金する。ただし、予算作成やパーソナルファイナンス管理アプリなど、一部の製品では、固定料金制も導入している。

Stitchは、投資家たちから幅広く深い支援を受け、資金を調達して南アフリカで確固とした成長基盤を築くつもりだ。また、アフリカ西部や東部でも事業を展開する予定だという。

活況を呈するアフリカの金融インフラストラクチャー

アフリカの金融インフラストラクチャー市場にはすでに、APIフィンテック領域のプレイヤー(主にナイジェリアのスタートアップ)が存在している。そうした企業は大規模なラウンドで資金調達しており、うらやましいほどの支援も受けている。Mono(モノ、半年前に起業したばかりのスタートアップ)はYCの支援を受けている。また、Okra(オクラ)はアフリカ全土に展開するVC企業TLcom Capital(TLcomキャピタル)の支援を、OnePipe(ワンパイプ)はTechstars(テックスターズ)の支援を受けている。米国に本拠地を置くがアフリカに注力しているPngme(プングメ)は、アフリカ全土に展開するVC企業EchoVC(エコーVC)、とLateral Capital(ラテラルキャピタル)から投資を誘致している。

現時点では、これらのスタートアップは3か国以上には事業展開していない。例えばモノ、オクラ、ワンパイプはナイジェリア国内のみを拠点としており、プングメはナイジェリアとケニア、Stitchは南アフリカのみでサービスを提供している。こうした企業がマーケットを拡大していったとき、どのような競合関係および協力関係が展開されていくのかを見るのは興味深い。これは、そんなに先の話ではない。オクラは現在、ケニアと南アフリカで試験的にサービスを提供しているし、モノは2021年末までには、ガーナとケニアにマーケットを拡大する予定だからだ。

これらのスタートアップの創業者に以前話を聞いたところ、アフリカの市場では健全な競争が展開されると思うと答えてくれた。キアーン・ピレイ氏は次のように付け加えた。「長期的な展開としては、各企業がそれぞれ得意な分野でニッチな機能を実現していく形になるだろう」。

「プレイドが席巻している米国とは違い、アフリカのフィンテック業界には複数のプレイヤーが必要だと思う。欧州が良い例だ。多くのかなり大規模な企業が同じようなバンキングAPIサービスを提供している。アフリカでは、複数の企業が特定の機能(決済、データのエンリッチ化、店舗IDなど)を提供する形になるのではないかと思う」。

画像クレジット:Stitch

Stitchの今回のシードラウンドには錚々たる参加者が名を連ねており、主導するのは、ロンドンに本拠地を置くVC企業firstminute Capital(ファーストミニッツ・キャピタル)と米国に本拠地を置く投資会社The Raba Partnership(ラバ・パートナーシップ)だ。その他の出資者にはファンドとエンジェル投資家の両方がいる。

ファンドとしては、CRE、Village Global(ビレッジグローバル)、Norrsken(ノースケン、Klarna(クラーナ)の共同創業者Niklas Adalberth(ニクラス・アダルバース)氏が設立したファンド)、Future Africa(フューチャーアフリカ、Flutterwave(フラッターウェーブ)の共同創業者Iyinoluwa Aboyeji(リノウワ・アボイェジ)氏が設立したファンド)、500 Fintech(ファイブハンドレッド・フィンテック)などがいる。エンジェル投資家としては、ベンモの共同創業者Iqram Magdon-Ismail(イクラム・マグドンイズメール)氏、プレイドの何人かの創業メンバー、およびCoinbase(コインベース)、Revolut(レヴォルート)、Fast(ファスト)、Paystack(ペイスタック)の経営幹部らがいる。

ステルス状態のスタートアップがこれだけの投資家たちの支援を受けることができた理由について「Stitchの米国でのネットワークと各投資家の当社の製品に対する信頼が大きい」とピレイ氏はいう。

「スマイルアイデンティティーで仕事をしていたときサンフランシスコでかなりの期間過ごしたため、こうした世界クラスの創業者や投資家たちと接触することができた」とキーアン・ピレイ氏はいう。「我々にはアフリカ全土の市場で新世代の金融サービスを提供するチャンスがある。これだけの投資家たちの支援を受けることができて本当に幸運だと思う」。

ファーストミニッツ・キャピタルの共同創業者兼ジェネラルパートナーBrent Hoberman(ブレント・ホバーマン)氏によると、同社がStitchを支援する決定を下したのは、アフリカのほとんどのオンラインビジネスは、Stitchを介して自社のアプリケーションにフィンテック機能(シンプルなオンライン決済、融資能力の向上、本人確認の簡素化など)を組み込むようになると信じているからだという。

「南アフリカ人の同胞として、アフリカ全土のマーケットへの進出を見据える、優れた才能を持つ同胞エンジニアのチームと仕事ができることにワクワクしている」とホバーマン氏は付け加えた。

この1月、アフリカのVC市場は、アグリテックとクリーンテックセクターが資金調達ラウンドを席巻しており、フィンテックセクターは低調だったが、その後、フィンテックセクターが活気を呈しつつある。今週、南アフリカのデジタルバンクTymeBank(タイムバンク)が1億900万ドル(約118億1600万円)という巨額の資金を調達し、南アフリカ全土およびアジアへの進出を目論んでいる。大規模ラウンドといえばVC資金の30%以上を獲得した特定のセクターの大規模ラウンドを見たことがあるが、今回のラウンドはそれを上回る規模になっている。

過去2年間のアフリカにおけるAPIフィンテック領域で注目すべき、一連の投資案件では、すべての主要スタートアップが50万ドル(約5400万円)から400万ドル(約4億3300万円)を調達しているが、今回のStitchのシードラウンドはその中の最新の案件だ。

ブレント・ホバーマン氏のファーストミニッツ・キャピタルでの役職とラバ・パートナーシップの本拠地を更新しました。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Stitchアフリカ資金調達南アフリカ

画像クレジット:Pang Isaac

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

「昭和」な方法が残る債権管理・督促業務のDXを進めるLectoが総額1.1億円調達

債権回収のDXを進める

債権管理・督促業務のDXを進めるスタートアップLecto(レクト)は3月22日、第三者割当増資によって総額1億1000万円の資金調達を行ったと発表した。

Lectoは今回の調達で、債権管理・督促回収業務を一貫して支えるSaaS(Software as a Service)プロダクトの開発を進める。金融事業者がユーザーにサービスを提供した後に発生する請求通知や督促連絡、債券譲渡など、さまざまな業務をワンストップで管理できるようにする。また、2021年7月を目途に債権回収を自動化する機能を開発して提供する見通し。

金融事業にはさまざまな業務フローがある

金融事業にはさまざまな業務フローがある

なお、引受先はシンガポールに本社を置くBEENEXTが運営するALL STAR SAASFUNDのほか、East Venturesやラクマ(フリル)創業者の堀井翔太氏、コネヒト創業者の大湯俊介氏らとなる。

Lectoは2020年11月に会社を設立後、2021年1月から債権管理などにおけるハンズオン支援のコンサルティングサービスを提供している。すでにyupナッジに同サービスを提供しており、今後は複数社でのサービス導入が決まっている。

レガシーな金融業界と新たな動き

金融業界では債権管理業務自体をMicrosoft Excelなどのアナログ管理で行っている事業者が少なくない。また、既存事業者には督促回収を電話や個別訪問で行うなど、昭和から続くアナログな方法が残っているという。

金融業界には現在、ITを活用した決済テクノロジーが進歩し、決済サービスなどが多様化している側面もある。このため政府は2021年4月から、改正割賦販売法を施行し、新しい決済テクノロジーやサービスに対応するための環境を整えている。

改正法では、限度額10万円以下となる少額の分割後払いサービス提供事業者に対する登録制度を創設する。また、限度額審査については、AI技術などによる新たなテクノロジーに基づく審査手法を許容するとしている。改正法が施行されれば、少額の分割後払いサービスを提供する事業者が多く金融市場に参入することになる。

Lectoでは、既存事業者に対しては債権管理・督促回収のDXを展開し、スタートアップをはじめとした新規参入事業者にはゼロベースからの債権管理・督促回収の支援サービスを提供していく考えだ。

Lectoは「金融サービスの裏側を変えていくことは一見地味な取り組みだが、我々の取り組みこそが金融ビジネスを成長させるキモだと考えている。債権管理・督促回収のアップデートが金融市場に与える影響は大きく、我々はARR(年間経常利益)で1000億円以上を目指せると試算している」と述べた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:LectoSaaS資金調達日本DX

不動産DXのWealthParkが25億円調達、オルタナティブ投資のプラットフォーム目指す

株式や仮想通貨を運用する人にとって、アプリやウェブで資産管理をすることは、いまや常識となった。しかし現在、不動産オーナーの多くは「紙」で資産管理を行っている。この状況を変えようとするスタートアップがWealthParkだ。

2021年3月22日、WealthParkはJICベンチャー・グロース・インベストメンツから25億円を調達したと発表した。同社は、不動産オーナーと不動産管理会社をデジタルにつなぐシステム「WealthParkビジネス」を提供している。

収支報告書をワンクリックで送信

不動産管理会社は、オーナーが所有する物件の管理を委託されている。入居者からの家賃回収や部屋の修繕依頼への対応などに加えて、毎月、オーナーに収支報告を行う。いわばオーナーと管理会社は「経営パートナー」のような間柄といえる。問題は、大半の管理会社とオーナーのコミュニケーションの方法が「電話・FAX・紙」であることだ。例えば管理会社は、毎月の収支報告書を郵送してオーナーに届けている。その数が多ければ印刷代や人件費は馬鹿にならないものであり、オーナー側としても書類の保管・整理に手間がかかってしまう。

WealthParkは不動産管理会社向けのシステム「WealthParkビジネス」を提供することで、この課題の解決を目指す。同システムを利用すると、管理会社は管理物件別の賃料・共益費・駐車場代などをダッシュボードで一覧することができる。毎月の収支報告書は自動で作成され、ワンクリックでオーナーのスマホに送信可能だ。また、オーナーとシステム内のチャット機能で会話ができるため、工事の見積もり費などの確認作業がスピーディに完結できる。つまり、管理会社とオーナー双方が、従来よりシンプルかつ気軽にコミュニケーションをとれるというわけだ。

画像クレジット;WealthPark

不動産小口化商品の取り扱いも

2014年にローンチされたWealthParkビジネスは着実な成長を見せている。現在、国内大手の東急住宅リース三菱地所ハウスネットを含む80の不動産管理会社が同システムを導入しており、約1万7000人の不動産オーナーが利用する。管理戸数は10万室を超え、同社CEOの川田隆太氏は「ようやく基盤が固まってきた」と自信をのぞかせる。

WealthParkのビジネスモデルは、管理会社から毎月のサブスクリプション手数料を得るというもの。管理会社は、WealthParkビジネスを自社のコスト削減に加え、顧客である不動産オーナーへの「CRMツール」として活用できるため、顧客満足度向上の観点でも導入するメリットは大きい。

またWealthParkは今回の資金調達により、不動産小口化商品の取り扱いもスタートする。川田氏によると「不動産オーナーには、毎月数十万円から数百万円という家賃収入があります。しかし、その利息分をそのまま眠らせてしまっていることが多い」。そのようなオーナーに対して、管理会社から不動産小口化商品を提案する。オーナーはすでに現物資産(不動産)をWealthParkのシステム上で運用しているため、小口化商品も同一ダッシュボード上でシームレスに管理できるのがメリットだ。オーナーにとっては資産運用の効率化につながり、管理会社にとっては新たなビジネスチャンスになる。

Amazonや楽天で売っていないもの

「賃貸管理業務のDX」という分野で存在感を放つWealthPark。CEOの川田氏がこのサービスを始めた理由は、以前経営したスタートアップでの「苦い経験」にある。同氏は若年層の女性向けアパレルECを4年半経営するなかで、リーマンショックや東日本大震災を経験し「資金があと3、4カ月で底をつく」という状況に陥ったことがある。株主からの資金援助はすべて断られ、自分自身の手持ち資金だけでは足らず、親・親戚・友人を回り、会社を存続させるための資金をかき集めた。その後同業大手による買収提案があり、川田氏の経営者としての最初のキャリアは幕を閉じた。

酸いも甘いも知った川田氏はこう振り返る。「前の会社の経営では、『マーケット選定の重要さ』を思い知りました。IPOを目指してあらゆる手段を講じましたが、結局はターゲットのTAM(獲得可能な最大市場規模)が小さかったので採算が合わなかった。だからこそ、次の事業はこの反省を活かそうと思ったのです」。

川田氏は、次のビジネスのマーケットを選ぶために「Amazonや楽天で売っていないもの」は何かと考えた。そのなかでも、TAMが大きく、かつDXが遅れている不動産を次のステージに選んだ。「不動産を含むオルタナティブ資産は、株や債券にはない『期中管理』が付き物です。例えば不動産であればトイレや水道の故障を直したり、アートやワインであれば適切な温度・湿度で保管したりなど、『管理の仕方』で資産の価値が大きく変わります。だからこそ、管理会社へのDXソリューションを提供することで、道が開けると考えたのです」。

川田氏は将来への想いを語る。「WealthParkは不動産に限らず、あらゆるオルタナティブ投資をサポートする存在になりたいと考えています。例えば、クリスティーズでレオナルド・ダ・ヴィンチの絵が100億円で売りに出されたとしても、今はアラブの石油王みたいな人しか買えないですよね。でもWealthParkを通して、10万人が10万円ずつ出資してオーナーになり、それをデジタルに管理できたらカッコいいじゃないですか。そんな世界をつくっていきたいと思っています」。

オルタナティブ資産とは「代替資産」を意味し、株式や債券などの「伝統的資産」の対になる存在として考えられてきた。しかし、WealthParkが推進する不動産小口化商品をはじめ、ワインやアート、金、仮想通貨、NFTなどが今後メインストリームに躍り出ることで、オルタナティブ資産がもはや「代替」ではなくなるということも、十分にありえる未来だろう。

関連記事:不動産管理会社・不動産投資家向け資産運用・管理のWealthParkが9億700万円を調達

カテゴリー:フィンテック
タグ:WealthPark資金調達不動産DX日本賃貸

英フィンテックInvstrが21.8億円を追加調達、ライバルRobinhoodとの競合戦線が激化

投資アプリに対する最大の不満は、ユーザーを適切に指導せず自力で何とかさせようとする無責任な態度だ。その結果多くの人々がお金を失っていることは、Robinhoodを(ロビンフッド)相手取った訴訟が数多くあることが証明している。

現地時間3月18日、これまで8年間金融教育「だけ」に焦点を当ててきた企業が、証券取引と銀行サービスを米国で開始した。

英国・ロンドン拠点のInvstrは、教育プラットフォームを何年にもわたって運営し、投資アカデミーなどのサービス提供してきた。同社が作ったFanatsy Finance(ファンタジー・ファイナンス)ゲームは、ユーザーが100万ドル(約1億1000万円)の架空ポートフォリオを管理して、実際に自分のお金をリスクに晒す前に市場について学ぶことができる。ソーシャルゲーム化することで、Invstrは学習プロセスを楽しみに変えようとした。

さらに同社はコミュニティを作ってユーザーが互いに学びあえるようにしている(別のRobinhood競合であるGatsbyも行っている)。

これまでに全世界で100万人以上のユーザーがInvstrをダウンロードした。

CEOでファウンダーのKerimDerhalli(ケリム・デルハリ)氏によると、Invstrは教育・学習ツールを前面に出すことでライバルとは異なるアプローチをとっている。また、ユーザーに手数料無料の株取引サービスを提供するだけでなく、Invstr+口座を使うことでデジタルバンキングと投資を1カ所で行えるので「お金をあちこち移動する必要がない」。

Invstrは、サブスクライバー向けサービスをさらに一歩進めて、実績データと行動分析などを示す「Invstr Score」を提供している。

会社をこの方向に進めることは、設立当時から彼のビジネスプランの一部だった、とデルハリ氏はいう。

「米国で最も強力なトレンドは、自律志向型投資だと思っています」とデルハリ氏がTechCrunchに語った。「若い世代はアプリの世界で育ち、アプリが自動的に何でも自分のためにやってくれることを期待しています。若者の多くがバンキングシステムを信用しておらず、親のバンキングや金融のやり方を真似たくないと思っています。これは巨大なチャンスだと私たちは思いました」。

新サービスの提供にあたり、3月17日にInvstrは、2000万ドル(約21億8000万円)のシリーズAラウンドを転換社債形式で完了したことを発表した。これまで2度のシードラウンドで計2000万ドルを調達しており、Ventura Capital、Finberg、ヨーロッパのエンジェル投資家であるJari Ovaskainen(ヤリ・オヴァスカイネン)氏、元MastercardのグローバルチェアマンであるRick Haythornthwaite(リチャード・ヘイソーンスウェイト)氏らが出資した。

デルハリ氏は、知識と自信がないために投資を始められない人を間近に見てきたことで、Invstrを設立することを決意したと語った。同氏は30年にわたり、ドイツ銀行、リーマン・ブラザーズ、メリルリンチ、JPモーガンなどの上級幹部を務めた後、「誰でも、どこででも、投資のやり方を学べるように」Invstrを設立した。

Invstrは、新たな投資サービスをApex Clearingとの提携によって提供している。かつて約定・決済サービスをRobinhoodに提供していた企業だ。デジタルバンキングサービスはVast Bankとの提携による。セキュリティ面を強化するために、InvstrはユーザーデータがOktaのテクノロジーによって保護されていると語った。

同社はニューヨークとイスタンブールにもオフィスがあり、新たな資金を元に新たな仲介・分析ツールとポートフォリオビルダーを開発する予定だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Invstr資金調達

画像クレジット:Somyot Techapuwapat / EyeEm / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nob Takahashi / facebook

株式管理プラットフォームのCapdeskが約7.6億円調達 Fidelity International Strategic Venturesがリード

株式管理プラットフォームを提供するCapdeskは、Fidelity International Strategic VenturesMiddleGame VenturesがリードするシリーズAラウンドで500万ポンド(約7億6000万円)を調達した。これは、2020年にFuel Venturesが主導した300万ポンド(約4億6000万円)の最初のラウンドに続くもので、シリーズAの総額は800万ポンド(約12億円)、調達資金総額は1170万ポンド(約18億円)となった。

CapdeskのクライアントにはGousto、Secret Escapes、Privitar、Voi Technology、Billieなどのスタートアップ企業が含まれる。

このプラットフォームでは創業者、従業員、投資家が自分の株式、オプション、ワラント取引をデジタル化できる。これにより株主はクラウドエクイティプラットフォームであるSeedrsとの提携を通じて、プライベートなセカンダリーマーケットにアクセスできるようになる。

Capdeskは現在、既存の非公開企業や上場企業に投資することで、十分なサービスが提供されていない欧州向けに 「シードからポストIPOまで」 の株式プラットフォームを構築したいと考えている。

CapdeskのCEO兼共同創業者であるChristian Gabriel(クリスチャン・ガブリエル)氏は声明で「本日の発表により、Capdeskはヨーロッパで最も資金力のある株式管理ソリューションとなりました。さらに重要なのは、MiddleGame VenturesとFidelityによるフィンテックの専門知識と資本支援を組み合わせることで、Capdeskがこれまでヨーロッパでは見られなかった株式ソリューションを構築する道を開いたことです」と述べている。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Capdesk資金調達

画像クレジット:Capdesk

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(文:Zack Whittaker、翻訳:塚本直樹 / Twitter

「eBayとネオバンクの融合」したフィンテックDiemが約6億円調達、Fasanara Capitalがリード

英国・ロンドンに拠点を置くフィンテックスタートアップのDiemが、Fasanara Capitalとエンジェル投資家であるOutrun Venturesの創業者となるChris Adelsbach(クリス・アデルスバッハ)氏がリードするシードラウンドで、550万ドル(約6億円)を調達した。その他の投資家には、Farfetchの初期投資家であるAndrea Molteni(アンドレア・モルテニ)氏、ファッションテック企業のPlatformEの共同会長であるBen Demiri(ベン・デミリ)氏、ブランドの創始者であるNicholas Kirkwood(ニコラス・カークウッド)氏が含まれる。

Diemはデビットカードで、アプリを使えばすぐに現金にアクセスでき、従来の銀行サービス(デビットカード、国内および海外への銀行送金)が利用できるだけでなく、消費者が商品を処分して最終的に再販することもできる。これはいわゆるサーキュラーエコノミー(循環型経済)につながるもので、エコの観点からも魅力的だ。過去15年間に廃棄された商品の価値は69億ドル(約7500億円)ともいわれている。

その仕組みは次のようなものだ。例えば古い服や携帯電話、本、バッグなどのアイテムをアプリ読み込むと、アプリはその品物の価値を提示する。そしてそれを受け入れるとアカウントに現金が入り、そのアイテムを購入するための環境が整い、再販される。アイテムを捨てて埋立地に加えるのではなく、現金に代えるというインセンティブが働くのだ。「eBayとネオバンクの融合」と考えればいい。

Geri Cupi(ジェリ・キューピ)氏は声明の中で「Diemのミッションは消費者が今まで知らなかった富に価値を見出し、それを開放し、楽しめるようにすることです。これらは循環型経済を促進し、私たちの重要なバリュー・プロポジション(価値提案)である持続可能性へのコミットメントをサポートしながら行われます。Diemは、資本主義と持続可能性の共存を可能にします」と述べた。

Fasanara Capitalのリードインベスター兼CEOのFrancesco Filia(フランチェスコ・フィリア)氏は次のように述べている。「FasanaraはDiemとキューピ氏とのパートナーシップを発表することに興奮しています。【略】(この会社は)循環型経済の原則を原動力とする新世代のフィンテックであり、その成長をサポートすることを楽しみにしています」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Diem資金調達循環型経済サステナビリティ

画像クレジット:Diem

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(文:Mike Butcher、翻訳:塚本直樹 / Twitter

海外送金サービスのWiseが「根拠のない」不正告発をされたとブラジルの元銀行パートナーを非難

国際的な送金サービスで有名になり、IPOを計画中と報じられているロンドンに本社を置く企業Wise(ワイズ)は、ブラジルの元銀行パートナーが同社に詐欺の疑いがあると主張し「中傷キャンペーン」を行っていると非難している。この詐欺の疑いについて、Wiseは「虚偽であり、根拠がない」と述べている。

ブラジルのMS Bank(MSバンク)とWiseの間における舌戦は、Wiseが2021年1月にブラジル中央銀行から独自のFX事業免許を取得したため、MSバンクとの提携は間もなく終了することになった後で始まったようだ。その翌月である2021年2月、MSバンクは予告なしにWiseとの契約を打ち切り、独自の送金サービス「CloudBreak(クラウドブレーク)」を開始すると顧客に伝えた。

銀行のパートナーを失ったWiseは、ブラジルのコリドーを一時的に停止せざるを得なくなった。現地時間3月12日、Wiseは独自のライセンスのもと、ブラジルレアル(BRL)から米ドル(USD)へのコリドーを再び開設することができたが、その後、事態は一転した。

同日に顧客に送られたメール(今週初めにTechCrunchに提供された)の中で、MSバンクはWiseが顧客口座を介して詐欺行為を行っていたと主張している。この主張は、YouTubeの動画やMSバンクのウェブサイトに掲載された文章でも繰り返されており、顧客の口座とブラジル中央銀行に登録された取引方法の食い違いに焦点を当てている。

関連記事:IPOに先立ち国際送金のTransferWiseが「Wise」に社名変更

Wiseは、その後のブログ記事で、記録された取引方法の不一致について詳細かつ堅実に説明し、不正行為を明確に否定するとともに、MSバンクが「中傷キャンペーン」を行ったと主張している。

TechCrunchに提供された声明の中で、Wiseはこの非難が「元パートナーが発売した競合商品に対する認知度を高めるためにタイミングを合わせたもの」であり「当社はブラジルやその他いかなる国の規制当局または機関によるWiseに対する調査や告発も認識していません」と述べている。そして「当社は顧客データおよび / または資金を利用したいかなる詐欺的または不適切な活動にも責任がないことを確信しています。Wiseはこの問題に対処するために法的手段を講じています」と、このフィンテック企業は続けた。

以下はWiseの声明全文だ。

ここ数週間、Wiseはブラジルの元ビジネスパートナーによる中傷キャンペーンの対象となっていました。この告発は、元ビジネスパートナーによる競合商品の発売を意識させるタイミングで行われました。当社はブラジルやその他いかなる国の、いかなる規制当局または機関も、Wiseに対する調査や告発を行っていることを認識していません。

Wiseは、世界中の1000万人以上のお客様のために、事業の透明性と安全性に対するコミットメントを維持しています。当社は顧客データおよび / または資金を利用したいかなる詐欺的または不適切な活動にも責任がないことを確信しています。Wiseはこの問題に対処するために法的手段を講じています。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Wise銀行ブラジル

画像クレジット:MS Bank

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

メキシコのチャレンジャーバンクFondeadoraがシリーズAを延長しさらに約15.3億円調達

メキシコシティに拠点を置き、チャレンジャーバンクを構築しているフィンテックスタートアップのFondeadora(フォンデアドラ)が、シリーズAの資金調達ラウンドを延長した。筆者は2020年8月に、同社のオリジナルのラウンドを取材しているが、今回はすでに調達していた当初の1400万ドル(約15億3000万円)に加え、さらに1400万ドルを追加。現在は2800万ドル(約30億5000万円)の資金調達ラウンドとなっている。

関連記事:14.7億円超を調達したメキシコのチャレンジャーバンクFondeadoraとは?

この延長でPortag3 Ventures(ポーテージ・ベンチャーズ)がFondeadoraに投資した。以前から投資していたGoogle(グーグル)のGradient Ventures(グラディエント・ベンチャーズ)は、さらに資金を投入している。Gokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏とAnatol von Hahn(アナトールフォン・ハーン)氏も、ビジネスエンジェルとして投資を行っている。

なお、シリーズAの初回には、Y Combinator(ワイ・コンビネーター)、Scott Belsky(スコット・ベルスキー)氏、Sound Ventures(サウンド・ベンチャーズ)、Fintech Collective(フィンテック・コレクティブ)、Ignia(イグニア)も参加していた。

「シリーズAの3カ月後に、予想外のタームシート(投資条件の概要書)が送りつけられてきたのです」と、Fondeadoraの共同創業者で共同CEOを務めるNorman Müller(ノルマン・ミュラー)氏は筆者に話してくれた。同社の評価額も、ラウンド延長によって倍増している。

画像クレジット:Fondeadora

メキシコでは、いまだに多くの人々が現金に頼っているため、チャレンジャーバンクの設立は好機といえる。レガシーバンクの顧客に加え、多くの人にとってFondeadoraが初めての銀行口座となる可能性もあるからだ。

Fondeadoraは、銀行サービスのための支店は一切構えていない。口座を開設すると、数日後にはMastercard(マスターカード)のデビットカードが届く。月々の会費や外国為替手数料は不要だ。

他のチャレンジャーバンクと同様、口座残高は瞬時に更新される。取引の際にプッシュ通知を受信する選択もできる。また、アプリを使ってカードのロックとロック解除も可能だ。

最近では、ちょうど米国のApple Card(アップルカード)のように、個人情報やカード番号のないカードをFondeadoraは発行した。カードの裏面にはQRコードがあるだけなので、誰かに見せても番号を知られることはない。このQRコードをスキャンすると、個人間送金を行うことができる。

Venmo(ベンモ)も米国でQRコードつきのクレジットカードを発行している。この方法は、物理的な世界とアプリとの間のすばらしい架け橋となるので、世界中のチャレンジャーバンクやピア・ツー・ピアの決済アプリはすべてやるべきだと思う。

Fondeadoraは銀行の認可を取得し、今ではその銀行口座にたくさんの預金がある。これまでのところ順調にいっているようで、改めて銀行はグローバルな産業ではないことを証明している。つまり、世界中にたくさんのローカルなプレイヤーが参入する余地があるということだ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Fondeadoraメキシコチャレンジャーバンク資金調達

画像クレジット:Fondeadora

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投資プラットフォームのeToroがSPAC経由で1兆円企業として上場へ

各種の資産管理と投資のプラットフォームでRobinhoodのライバルであるeToroがSPAC(特別買収目的会社)を利用する上場を行うと米国時間3月16日に発表した。

eToroとFinTech Acquisition Corp. Vとの合併は104億ドル(約1兆1300億円)という巨額となる見込みだ。合併は第3四半期に完了し、新会社はeToro Group Ltd.としてNASDAQに上場される予定だ。

「資本市場のオープン化」をモットーとするeToroがイスラエルで設立されたのは14年前に遡る。同社は2年前に米国にサービスを拡大し、その後、急速な成長を遂げた。2020年にはeToroは500万人以上の新規登録ユーザーを獲得し6億500万ドル(約66億円)の収入を計上した。これは前年比で147%の成長となる。2021年1月だけで新たなユーザーを120万人以上の増やしており、このプラットフォーム上での取引は7500万回以上あったという。月次登録者数平均は2019年には19万2000人だったのに対して2020年に44万人と倍増している。

eToroによれば「我々のプラットフォームの成長は、デジタル資産管理プラットフォームの台頭、個人投資の増加、仮想通貨のメインストリーム化多くの長期的なトレンドを追い風としてている」という。同社は最近の小口投資への関心の高まり、特に一般個人投資家向けアプリ、サービスの普及の恩恵を受けていることは間違いない。最近も機関投資家がいわゆる「ミーム株」の急伸に不安を感じてショート(空売り)ポジションを取った。これに対しRedditの一部ユーザーがGameStop株にさらなる高値誘導策をぶつけて機関投資家と正面から対立したことが注目を浴びた。

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eToroはソーシャル株式取引と仮想通貨にまたがるプラットフォームだが、2019年11月に暗号資産のポートフォリオ管理アプリであるDeltaを買収している。eToroはよればこのプラットフォームは公的規則に従って暗号資産を提供するパイオニアの1つだという。規制に適合するアプリは英国、ヨーロッパ、オーストラリア、米国、ジブラルタルで提供されている。

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タグ:eToroSPAC

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:滑川海彦@Facebook

企業のカード決済を支援するSumUpが977億円を調達して成長を加速

ロンドンを拠点とするスタートアップSumUp(サムアップ)は、物理的なカードリーダー、オンラインでの支払い、請求書払いなどに対するカード決済の提供によって、企業の収益向上を支援しているが、同時にSumUp自身も大きくパワーアップさせている。英国時間3月16日、同社は7億5000万ユーロ(約976億5000万円)の資金調達を発表した。新しい資金は事業の継続的な拡大に投入されるが、具体的には買収や、欧州、ラテンアメリカ、アジアの新市場への参入、一連の企業向けサービスの構築に利用される。同社はすでに33カ国で活動していて(最新のところではチリ、コロンビア、ルーマニア)、約300万社の企業を顧客として抱えている。

資金を提供しているのはGoldman Sachs、 Temasek、Bain Capital Credit、Crestline、そしてOaktree Capital Managementが管理するファンドだ。SumUpに確認したところ、今回の資金調達は株式ではなく融資のかたちで行われたため、公開できる正式な評価額はない。これまでのところ、この地域のスタートアップ企業(つまり、未上場のハイテク企業)にとって、融資であるかどうかの形式を問わず、最大の資金調達の1つとなっている。

注目すべきは、Goldman SachsとBain Capitalが2019年にも同社のために3億7100万ドル(約405億3000万円)の融資ラウンドを主導したことだ。

SumUpの共同創業者の1人であるMarc-Alexander Christ(マーク=アレクサンダー・クライスト)氏(同社は「CEO」のような正式な肩書きは使用していないようだ)は、同社が株式ではなく融資を選択したのは、それが可能だったからだと述べている。

彼は「借金をすることができるのは、私たちに非常に安定したキャッシュフローがあるからです」とインタビューに答えている。融資という手段は、より大きく成長していて、特に多くの現金を生み出している企業が採用することの多い手段だ。希釈化しないということは、資本コストも低くなるということである。

この会社は、いわゆるSquare(スクエア)クローンの1つとして2012年にスタートした企業だ。そうした米国内外で設立された「クローン」たちは、携帯電話やタブレットに取り付ける小型のカード決済ドングルを中心にサービスを提供しており、それまでコストがかかりすぎるとか、複雑すぎるといった理由でカード決済を採用してこなかった企業や、銀行が提供する高額な代替手段を使っていた企業たちに訴求してきた。

SquareやiZettle(アイゼットル、後にPayPalに買収された)などの同業他社と同様に、SumUpは時が経つにつれて、オンライン取引、請求書作成、ギフトカード、より幅広いPOSソリューションなど、ビジネス向けの他のカードや決済関連サービスにも手を広げて行った。

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また同社は、この分野での統合者としての顔も見せ始めている。2016年には、より大きな競合他社であるRocket Internet(ロケット・インターネット)傘下のPayleven(ペイレブン)を買収したことで、幅広い市場への進出が後押しされている。ここ数年にわたって、同社は数多くのスタートアップを買収してきたが、たとえば最近では、リトアニアでビジネス向けのモバイルバンキングプラットフォームを提供するPaysolut(ペイソルート)や、より大きな会場でのPOS展開を目的としたGoodtill(グッドティル)やTiller(ティラー)などを買収している。

こうした取引は、SumUpの製品拡大戦略への取り組みも物語っている。同社のビジネスモデルは、主にプラットフォーム上で行われる取引から手数料を徴収することを前提としている。そのため現在のところ、同社は企業向けのサービスを充実させ、その取引の割合の拡大というの戦略をとっている。消費者向けの金融サービス拡大ではない。

これは、Square Cash(スクエア・キャッシュ)によってこれまでに700万人以上の消費者を獲得したSquareや、消費者向けサービスを直接には開始しなかったものの、消費者向けデジタルウォレットの最大手であるPayPal(ペイパル)に買収されたiZettle(アイゼットル)などとは対照的だ。

また、SumUpは、他の2社が積極的に取り組んでいる仮想通貨にも関心がない。

クライスト氏は「Bitcoin(ビットコイン)投資についていえば、Squareは最も容易な入門体験手段となりました」という。「でもそれは、主にお客さま獲得のためのツールの1つなのです。彼らはBitcoinである程度のお金を稼いではいますが、それほど多くはありません。お客様にとって価値のあるものではないので、私たちがすぐにそこに手を出すことはありません。ユーザーの方々はアカウントが気になってログインするだけで、他のことは何もなさらないのです」。

こうした姿勢は、多くの取引がオンラインに移行し現金が忘れられていく流れの中で、同社の着実な成長を助けた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが引き起こしたこの2つの大きな流れは、多くの国で商店の閉店を余儀なくし、人びとに対面での購買を控えさせ、コミュニティへの感染を抑制するために現金使用を控えるようになったからだ。また同社の姿勢は今回の資金調達にも役立った。

Bain Capital Credit のTom Maughan(トム・モーガン)氏は声明の中で「過去2年間にSumUpが遂げた、目覚ましい発展を知っている私たちは、こうしてSumUpを再び支援できることを誇りに思っています。SumUpが、想像し得る限り最も困難な経済状況の中で、世界中の中小企業のために行っている、取引を継続し繁栄するための支援に、大きな賞賛を捧げます」と語っている。「今回、SumUpへの投資額を倍増させたのは、同社の現在の状況と強い将来性への信頼を示しています」。

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タグ:SumUp資金調達イギリス

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

決済サービスStripeが評価額10兆円超で約655億円調達、欧州事業の拡大に注力

資金を調達中との報道のすぐ後に、決済大手のStripe(ストライプ)はその詳細を明らかにした。同社は950億ドル(約10兆3680億円)の評価額で6億ドル(約655億円)の調達を完了した。

調達した資金は欧州本社を中心に欧州での事業拡大と、グローバルの決済・財務ネットワークの強化に使う、と同社は述べている。

「当社は2021年、欧州、特にアイルランドにかなり投資します」とStripeの共同創業者で最高責任者のJohn Collison(ジョン・コリソン)氏は声明で述べた。「フィンテック、モビリティ、小売、SaaSであろうとなかろうと、欧州のデジタル経済の成長機会は巨大です」。

資金調達は大手保険会社2社からの出資が含まれるとStripeは述べた。Allianz X fundを通じたAllianz(アリアンツ)とAxa(アクサ)が、Baillie Gifford、Fidelity Management & Research Company、Sequoia Capital、そして米国の投資家らやアイルランド国債管理庁(NTMA)とともに本ラウンドに出資した。

保険会社の出資はStripeが次に進もうとしている方角をおそらく示している。結局、フィンテックと保険は緊密に連携している。

「Stripeは世界経済成長のアクセラレーターであり、持続可能な金融のリーダーです。過去10年、大きな進歩を遂げたにもかかわらず、Stripeの成長のほとんどはまだこれからです」とNTMAのCEOであるConor O’Kelly(コナー・オケリー)氏は声明で述べた。「アイルランドと欧州の最も傑出した成功物語を支援し、そうすることで何百万という野心を持つ企業がグローバル経済においてこれまで以上に競争力を持つのをサポートすることをうれしく思います」。

評価額を増やした大きなラウンド、そして拡大している資本政策表は必然的にStripeの次のステップがどのようなものになるのか、そこには上場が含まれているのかといった疑問につながる。同社はユーザー数や売上高、利益といった詳細についてはこれまでずっと隠してきた。そして今回のニュースでも明らかにせず、IPO計画についてコメントもしなかった。

とりわけ、米国時間3月14日のニュースにあった評価額は同社がセカンダリーマーケットで取引されていると報じられた中での評価額1150億ドル(約12兆5520億円)より小さい。そして評価額950億ドルでクローズしたラウンドは1000億ドル(約10兆9150億円)超となるだろうとも噂されていた。

そうした数字が正確ではなかったのか、あるいは新型コロナウイルスが評価額に影響を与えたのか、欧州の投資家が単にかなり値切ったのかははっきりとしない。

欧州での成長への注力はまた、EMEA(欧州、中東、アフリカ)のGoogleのコミュニケーション担当副社長でジャーナリストだったPeter Barron(ピーター・バロン)氏の採用にある意味つながっている。

ジョン氏と、CEOである兄Patrick Collison(パトリック・コリソン)氏が創業したStripeは、デジタル決済、特にオンライン決済が軌道に乗り始めたときに、デベロッパーがいくつかのラインのコードで決済をアプリやサイトに盛り込めるようにするシンプルな方法を構築する価値を認めた一連のコマーススタートアップの1社だ。

そのコードの裏で、Stripeは国内外で機能する決済に必要とされるあらゆる複雑な要素を統合する困難な作業を行った。これまで同社は、事業者が法人化や不正管理、キャッシュフロー管理などを含む事業の商業的な業務を行うのを単にサポートするだけでなく、自社をワンストップショップにするために一連のサービスをを提供し、プラットフォームを成長させてきた。

そうした中で同社は欧州で事業を拡大し、今では欧州42カ国中31カ国に顧客を抱える。同社は当初スタートアップ(特に小規模で新しいスタートアップ)への決済インフラ提供で事業を開始して成長してきたが、今日同社の顧客リストには多くの大手企業も含まれる。欧州の顧客としては、Axel Springer、Jaguar Land Rover、Maersk、Metro、Mountain Warehouse and Waitrose、Deliveroo (英国)、Doctolib(フランス)、Glofox(アイルランド)、Klarna(スウェーデン)、ManoMano(フランス)、N26(ドイツ)、UiPath(ルーマニア)、Vinted(リトアニア)などがある。

決済とその周辺サービスにおける競争は激しいが、さらに成長するチャンスはまだ大いにある。新型コロナの発生と、実在店舗よりウェブやアプリで買い物する人が増えたことで、現在コマースの14%ほどがオンライン上でのもので、1年前は10%だったことを考えると大きなシフトだとStripeは指摘している。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Stripe資金調達

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

現金があるのにローンを組めない人向けサービスを提供するTomoCreditが約7.4億円調達

クレジット履歴がないと、クレジットカードを作るのは難しい。

この問題を解決しようとしているのが、スタートアップのTomoCreditだ。共同創業者兼CEOのKristy Kim(クリスティー・キム)氏が同社のコンセプトを考えついたのは、まだ20代の初め頃、立て続けに自動車ローンの審査に落ちたことがきっかけだった。

幼い頃、家族とともに韓国から米国へ移民したキム氏は、仕事に就いていて、しかも「キャッシュフローは黒字」だったにも関わらず、クレジット履歴がないことがこれほど大きな障害になると知り、落胆したのだ。

そこで、ロシア移民のDmitry Kashlev(ドミトリ・カシュレフ)氏と組んで2019年1月に、同じようにローンを組めない外国生まれの個人と若者向けのソリューションを立ち上げた。同年の秋、このスタートアップ(名前は「Tommorow’s Credit(明日のクレジット)」に由来する)は、Techstarsが支援するBarclays Acceleratorに選出された。

サンフランシスコを拠点とするこのフィンテックは、初めて借り入れをする人がFICOやクレジットレポートの評価ではなく、キャッシュフローに基づいてクレジット履歴を作りやすくなるよう、クレジットカードを提供している。

米国時間2月10日、TomoCreditは700万ドル(約7億3700万円)のシード資金調達ラウンドを行ったと発表した。これには韓国の消費者銀行Kookmin Bankの子会社であるKB Investment Inc.(KBIC)に加え、Barclays、Knollwood Investment Advisory、BAM Ventures、Passport Capital、Ulu Ventures、Strong Venturesが参加している。

エンジェル投資家と個人投資家たちもこのラウンドで資金提供をしている。Backstage Capitalの創業者Arlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏、Venmoの元COOである Michael Vaughan(マイケル・ボウハン)氏、Tinderの前財務責任者James Kim(ジェームス・キム)氏などである。

消費者金融保護局(CFPB)によれば、3000万人もの「キャッシュリッチ」な若者が、限られたクレジット履歴しか持たないために、デビットカードしか使えないという。

TomoCreditはデビットカードモデルで運用しているクレジットカードで、発行元はFDICに加盟しているCommunity Federal Savings Bankだ。利用者は7日後に自動支払いを行うスケジュールならば手数料無料で、それを過ぎるとAPR(金利)が適用される条件で返済を行う。与信限度額は平均3000ドル(約31万5700円)だが、最高で1万ドル(約105万2500円)まで増額できる。借り手がクレジットカードに自分の投資口座を紐づけることで、与信限度額を増額できる仕組みだ。

「当社は、ただインクルーシブなだけでなく、既存のクレジットカードが提供するサービスとは根本的に違うものを創り出そうとスタートしました」とキム氏は語る。

このカードは移民だけではなく、誰であれ、クレジット履歴に関して「履歴がないか、わずかしかない」と判断される人を対象にしているのだと、同氏ははっきり述べている。

自動車ローンの審査に落ちたことで、キム氏は米国という国で「クレジットスコアなしでは何もかもが難しい」ことを実感した。

「収入、貯金の有無は無関係なのです」と同氏は言い、こう続ける。「クレジット履歴の代わりに別のデータソース、特にキャッシュフローデータを活用できたらいいのにと思っていました。今、私たちが生きているのは2021年で、オープンバンキングが普及しており、オープンバンキングのデータには簡単にアクセスできるのです。当社はみなさんのキャッシュフローデータを利用して支払い保証を行います」。

TomoCreditのモデルが持つもう1つのユニークな側面は、カードを使う消費者からではなく、加盟店手数料から収益を得ている点だ。

「現在クレジットカードを発行しているカード会社とは違って、当社は借り手の支払いが遅れた時の遅延賠償金を収益源としていません。カード保有者の支払額に応じて収益を得ています。お客様のご利用が増えると当社も成長する、ということです」とキム氏は付け加えた。

TomoCreditは2020年の夏の終わりころにカードの発行を開始した。

「正直、あまり期待していませんでした。当社にとって初のローンチで、マーケティングも何もしませんでしたから」と同氏は当時を振り返る。「ところが、30万人以上の申し込みがあり、そのうち半分は当社で事前承認できました。それ以来、積極的にカードを発行し続けています。」

同社が発行するカードの需要が急増したのは、2020年YouTubeとRedditで「バズった」からだとキム氏はいう。

「ローンチの直後、大量のアクセスがありました。大勢のYouTuberがTomoCreditについてコメントしたりレビューをしたりしていて、クレジットスコアを速く効率よく作るために当社のソリューションを求めている人たちのコメントもありました。」

現在、TomoCreditのアクティブユーザー数は1万人を超え、同社は2021年の夏までに残りの事前承認済みの申込者のカードを発行する計画だ。

筆者は、TomoCreditが負うリスクを懸念する投資家を説得するのに苦労したかに興味があった。

クレジット履歴を持たない人々にカードを発行するリスクという「感情的、心理的ハードル」を乗り越えられるよう、投資家たちを説得する必要があったとキム氏は感じている。

「環境が変化していることを理解してもらえるよう、説明する必要がありました」と同氏は語る。「新しい世代の消費者、特にZ世代やミレニアルを見れば、そうした人たちのほとんどがわずかな履歴しかないか、まったく履歴がないことがわかります。これは彼らのせいではありません。人々の個人的なお金に関する行動様式が、過去とは違っているのです。そのために、従来型の貸し手が彼らを査定することが難しくなっているのです。」

Backstage Capitalの創設者アーラン・ハミルトン氏は、TomoCreditが獲得した投資家の1人だ。

同氏からのメールによれば「最近、自分が子供だったころに家族やその他大勢の人たちが理不尽な思いをした不都合なやり方を正してくれる製品に投資したり世に出したりすることに、自分の時間をたっぷり使っています」とのことだ。「こうしたテーマの1つに、良好なクレジットスコアを確立し、法外な金利のローンを借りずに済む手段を持つことが挙げられます。Tomo Creditはこの課題に対し、非常にスケーラブルで、メインストリーム的なやり方で取り組んでいると感じます。」

Barclaysのグループ最高イノベーション責任者のMariquit Corcoran(マリキット・コルコラン)氏は「ローンへのアクセスと財務プロファイルの形成において伝統的に困難を抱えてきた多くの人々が、実際の生活で直面しているある1つの問題」を解決するのだというキム氏の最初のプレゼンテーションを聞いて、その「粘り強さとパッション」に非常に強い印象を持ったという。

「彼らの成長と、個人のローン適格性を判定する方法が変化することのインパクトを見届けるのを楽しみにしています」と、同氏はメールで述べた。

今後について、TomoCreditは新たに調達した資金を使って、現在15名の人員を3倍に増やすことを計画している。そのほとんどはフルスタックエンジニアとデータエンジニアの採用が目的だ。最近同社は、LendingClubの元役員であるChaomei Chen(チャオオメイ・チェン)氏を最高リスク責任者代行に迎えている。また、同社は今回の資金の一部を使用して、インタラクティブ機能のいっそうの充実など、製品開発も行う計画だ

TomoCreditが代替クレジットモデルを備える唯一のフィンテックというわけではない。X1 Cardクレジットスコアの代わりに現在と将来の収入に基づいて限度額を設定している。また、Grow Creditは2019年に創業したスタートアップで、SpotifyやNetflixなどのオンラインサブスクリプションを対象とした与信限度枠を提供することで、顧客がクレジットスコアを構築できるようにしている。

関連記事:クレジットスコアではなく収入に応じて限度額を決めるクレカX1 Card

カテゴリー:フィンテック
タグ:TomoCreditクレジットカード資金調達

画像クレジット:TomoCredit

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

インドのモバイル決済PaytmがAndroidスマホをPOS端末に変え事業者ユーザー獲得を狙う

インドのモバイル決済企業Paytmが米国時間3月9日に発表したところによると、同社は多くの商業者を顧客として獲得する努力の過程で、NFCを搭載したAndroidスマートフォンをPOS端末にするという。モバイル決済に関しては、インドは世界最大の市場の1つだ。

Paytmと提携する事業者は今後、Paytm Businessアプリでカード受け入れ機能を有効にできる。有効にすることで、スマートフォンにプラスチックのカードでタップするだけで決済処理できる。

同社によると、Paytm Smart POSアプリはVisaとMastercardとRupeekをサポートしている。1一回の利用限度額は5000インドルピー(約7470円)だ。ただしインドでは利用の90%以上が69ドル(約7490円)に満たない額だと推計されている。

現在、市場にある決済デバイスは中小の店舗があまり利用されておらずその多くがオフラインだ、とPaytmの創業者でCEOのVijay Shekhar Sharma(ヴィジャイ・シェカール・シャルマ)氏は、バーチャルで行われた記者会見で述べている。

そんな事業者をユーザーにしたいPaytmは近年、複数の決済ネットワークで使えるQRコードを展開し、ジュークボックスのような装置で商業者がデジタルの決済に慣れるように努めている。

シャルマ氏によると、スマートフォンがPOS端末になれば「もうPOS端末を買わなくてもよい」。しかも最近のAndroidスマートフォンは、ほどんどのモデルにNFCが搭載されている。

Paytmが披露した新世代のジュークボックスPOSは、QRプラカードに似ている。「今あるPOS端末を積極的に採用しない事業者が多いのは、使っていて快適でないからだ」と決済機関NPCIのトップであるDilip Asbe(ディリップ・アスベ)氏はバーチャル記者会見で語った。

インドのスタートアップであるPaytmは2021年2月に、12億回超の決済を処理し、インドのモバイル決済でトップだと主張している。サービスを利用する商業者は、小額の会費をPaytmに払う。

関連記事:Paytmがインドのモバイル決済市場で過去最高12億件の月間取引を記録しトップの座を獲得

これによりPaytmは、Sequoia Capitalが投資しているPOSのマーケットリーダーであるPine Labsとまともに競合することになるが、相手はかなり小さなスタートアップであり、むしろ、Paytmなどの大手の決済企業が商業者の獲得に積極的であることを示す好例ともいえる。

以下は、最近Bank of Americaのアナリストがクライアントに送ったメモの一部だ。「携帯電話がフィーチャーフォンからスマートフォンへ進化したように、インドのマーチャントPOSの市場は従来のダムPOSからスマートPOSに進化するポイントにきている。従来のPOSはデビットカードやクレジットカードを使えるだけだったが、スマートPOSには、消費税対応の請求書、スキャナーやプリンター、UPIを含むすべての決済の処理、Bluetooth、商業者各自によるカスタマイズなど、多様な機能がある。現在はフィンテックの企業がそうしたデバイスを提供しているが、いずれ銀行も追いつくだろう」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Paytmインド

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

香港のフィンテックユニコーンWeLabが保険大手Allianzなどから約82億円調達

新型コロナウイルス危機の恩恵を受けた数少ない産業の1つはオンライン金融だ。パンデミックにより世界中の消費者はデジタルバンキングの受け入れを余儀なくされた。2013年に創業されたフィンテック企業である香港のWeLab(ウィラボ)は2020年にユーザー数が20%成長し、累計ユーザーベースは5000万人に達した。

消費者にさらなる利便性や透明性、手頃価格を提供しようとしているWeLabのようなイノベーティブなプレイヤーに接すると、従来の金融機関は自らを一新せざるを得ない。これは、131年の歴史を持つ欧州の金融コングロマリットAllianzのベンチャーキャピタル部門であるAllianz XがWeLabの7500万ドル(約82億円)の最新ラウンドをリードした理由の1つだ。他の投資家も参加したシリーズC1は、1億5600万ドル(約170億円)を調達した2019年のシリーズCラウンドに続くものだ。

「明らかにAllianzは世界で最大の資産運用・保険会社の1社であり、強力な存在感と確固たる実績を持っています」と共同創業者でCEOのSimon Loong(サイモン・ルン)氏はTechCrunchとのインタビューで語った。

同氏はWeLabの直近の評価額を公開するのは却下したが、10億ドル(約1092億円)のユニコーンステータスに達して以来、その数字は大きくなっていると語った。

WeLabが2020年香港で立ち上げたデジタルバンクを設置しようとしたとき、同社が描いていたプロダクトの1つは「デジタルバンクでの新世代の資産アドバイス」だった。

「Allianzは当社が過去数年に行ったことをみて、デジタルバンク向けの資産テクノロジーを共同開発するためにかなり興味深い機会ととらえました。そしてAllianzは当社に近寄ってきました。それで、ラウンドをリードするのはどうか、と言ったのです」とルン氏は説明した。

戦略的投資を通じて、パートナーたちは投資や保険のソリューションをアジアで共同開発して展開する。そうしたプロダクトは、香港でのバーチャルバンクやレンディングプロダクト、中国本土やインドネシアでのいくつかの種類のレンディングサービスを含む、WeLabの現在のサービスを多様化する。全ユーザーのうち約4700万人が中国本土、250万人がインドネシア、そして100万人弱が人口750万人の香港の住人だ。

資産運用・保険会社としてのAllianzの役割について、そして銀行・フィンテックソリューションプロバイダーとしてのWeLabについて「興味深い4方向の法人です」とルン氏は述べた。「当社が事業を拡大するのに本当におもしろいターニングポイントになると考えています」。

巨人との協業

WeLabのチーム

ルン氏によると、WeLabの売上高にとって同様に重要なのは、既存の銀行や金融機関のデジタルの取り組みをサポートする法人向けサービスだ。この戦略は、従来の金融プレイヤーの「後援者」になるというAnt Groupの取り組みと大して違わない。

中国のフィンテックマーケットではAntとTencentの2社が巨大なマーケットシェアを握っているにもかかわらず、WeLabのような小規模で専門性を持つプレイヤーが参入する余地は残っている。これまでにWeLabは法人顧客約600社をひきつけ、その大半は中国本土の顧客だ。

WeLabがAntのような巨大企業といかに戦うのか尋ねると「Antとの間には興味深い力学があります」とルン氏は話した。Ant傘下のeコマース企業AlibabaはAlibaba Hong Kong Entrepreneurs Fundを通じてWeLabの投資家だ。

「我々が競っている事業があり、そしてともにうまく取り組んでいる分野もあります」と同氏は付け加えた。例えばWeLabはサードパーティの金融プロダクトやエンド消費者にとってマーケットプレイスのように機能するAntの旗艦アプリAlipayで初のスマホリースサービスを導入した。しかしAntも自前の金融プロダクトを持っていて、これはAntのマーケットプレイスで商品を販売している外部サプライヤーと衝突するかもしれない。

「要するに、当社はかなり独立した企業であるため、誰とでもうまくいくのだと思います」とルン氏は主張した。

グレイターベイをつなぐ

香港で創業した会社として、WeLabはグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)と命名された地域を統合する中国政府の動きに積極的に参加している。このエリアは中国の2つの特別行政区である香港とマカオ、そして深圳を含む広東省の9市にまたがる。

グレーターベイエリアの青写真の目的はクロスボーダーの人材の流れを促進することだ。ある意味、このエリアはフィンテックスタートアップを運営するのに必要なすべての条件を満たしている。テックの人材は深圳、そして金融の人材は香港と、隣接している2つの都市で人材を獲得できる。WeLabはまさにそれを地で行っている。テック系のスタッフを香港よりも多く深圳に置き、香港オフィスには金融のプロを抱えている。同社は2021年100人ほど新たに採用して従業員数を800人に増やす計画だ。

人材源の共有はさておき、中国政府はまたグレーターベイエリアで金融の統合を促進したい考えだ。WeLabは政府の意向に留意し、今後展開する資産運用プロダクトをまず香港で、その後、資産運用コネクトという政府支援のスキームを通じてグレーターベイエリアの他の地域で展開する計画だ。資産運用コネクトでは香港とマカオの住人はグレーターベイエリアにある本土の銀行が提供している資産運用プロダクトに投資ができる。その逆もまた然りで、中国本土側のグレーターベイエリアの都市の住人も香港とマカオの資産運用プロダクトを購入できる。

「香港はすばらしいテストベッドですが、オンライン事業者にとっては成功しているビジネスモデルを多くの人々に適用する必要があります」とルン氏は同社の事業拡大計画について説明した。「グレーターベイエリアは我々にそのチャンスを提供しています。このエリアの人口は7200万人で、GDPは1兆7000億ドル(約185兆6264億円)と韓国を超えます。当然のことながら事業を拡大するのに良いエリアです」。

WeLabは2018年に上場を模索していたが「正しい時期だとは思っていなかった」ために計画を中止した、とルン氏は回顧した。同社はまた、銀行免許を取得する過程にあったため、上場前に重要な認可に取り組むことに決めた。

「現状を見れば、明らかに株式市場という点ではかなりホットです。ですので当社は多くの人と話をしています。この件については目を光らせていて、次の正しい時期の模索に我々は常に前向きです」とルン氏は述べた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:WeLab資金調達香港

画像クレジット:WeLab CEO Simon Loong

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

英国のチャレンジャーバンクStarlingが約4.4億円を調達、評価額は2063億円に

小規模で動きの速いテック系銀行スタートアップのチャレンジャーバンクに、多額の資金注入が続いている。強気の投資家たちが、そうしたチャレンジャーバンクには大手のライバル銀行から顧客を引きつけるチャンスがあると考えているからだ。その最新の動きとして、英国に拠点を置くStarling(スターリング)が、11億ポンド(約1653億7000万円)の事前評価額で、2億7200万ポンド(約408億9000万円)を調達したことを発表した。

このシリーズDラウンドによって、同社の事後評価額は13億7200万ポンド(約2063億円)となった。

旧来の銀行だけでなく、Monzo(モンゾ)やRevolut(リボルト)のような他のチャレンジャーバンクとも競合しているStarlingは、調達した資金を成長の継続のために使うと述べている。Starlingはすでに利益を出している。米国時間3月8日に投稿された最新の財務書類では、Starlingは2021年1月の収益が1年前に比べて400%増加した1200万ポンド(約18億円)だったと報告している。これは1年分に換算すると1億4500万ポンド(約218億2000万円)となる。4カ月連続で営業利益を計上し、1カ月あたりの純利益は現在150万ポンド(約2億3000万円)を超えている。

2017年に設立されたStarlingは、現在200万以上の口座を保持しており、その中にはビジネスアカウントも30万口座含まれている。これらの口座のうち、どれくらいの数がアクティブかははっきりしない。Starlingによれば、上の数字は開設された口座数だ。貸出残高は20億ポンド(約3010億円)を超え、預金残高は54億ポンド(約8126億円)となっている。

Starlingは、調達した資金を、英国での融資業務の拡大、欧州の他の地域への拡大、戦略的買収のために使用する予定だと述べている。

Starlingの創業者でCEOのAnne Boden(アン・ボーデン)氏は声明の中で「デジタルバンキングは転換点に達しました」と語る。「今やお客様は、これまでの銀行に代わるより公平で、よりスマートで、より人間的な代替手段を期待しています。それこそが、成長を続け新しいプロダクトやサービスを加える私たちが、ご提供しているものなのです。新しい投資家のみなさまは、次の成長段階に入る当社に豊富なご経験をもたらして下さいますし、既存の支援者のみなさまの継続的なご支援は、多大な信頼をお寄せ頂いている証拠です」。

今回のラウンドはFidelity Management & Research Companyが主導し、そこにQatar Investment Authority (QIA)、310億ポンド(約4兆6650億円)規模のRailways Pension Schemeの投資マネージャーであるRPMI Railpen (Railpen)、国際投資企業のMillennium Managementが参加している。またこのラウンドは私たちが11月に報告した少なくとも2億ポンド(約300億円)の調達に続いて行われた。

今回の資金調達は、消費者バンキングにとって非常に重要な時期に行われた。Starlingが活動している市場である英国では、ここ数年の傾向として、オンラインバンキングやモバイルバンキングへの移行が徐々に進んでいたが、それらの傾向が、新型コロナウイルス(COVID-19)の拡大を抑えるためのロックダウンや強制的なソーシャルディスタンスによって急速に加速した。

チャレンジャー(ネオ)バンクは、進化している消費者行動の中にあって、最大の勝者となっている。チャレンジャーバンクたちは、バンキングインフラプロバイダー(Rapyd、Plaid、Mambu、CurrencyCloudといった企業が含まれるまた別のスタートアップカテゴリー)から、APIを介してホワイトラベルサービスとして提供される手段を利用し、引き出しや預金などの基本的なサービスを提供するが、通常はその柔軟性はかなり高く、追加の貯蓄や財務のヒント、顧客への貯蓄サービスなどを、デジタルプラットフォーム上で提供している。

旧来の大手銀行たちは、こうしたイノベーションに追いつこうと躍起に努力してきたが、とりわけ過去10年間の銀行危機によって、既存銀行が世間で思われていたほど強力でも盤石でもなかったことが顕になったことによって、新しい世代のユーザーたちはそのブランドや権威への信頼感を弱めている。

またその大きな市場イメージによって、多くのネオバンクの急増も予想されている、つまりStarlingは旧来の銀行以外とも競合していくということになる。そうした競合相手には、Monese(マネーズ)、Revolut、Tide(タイド)、Atom(アトム)、Monzoなどがあるが、特に最後の企業はStarlingの元CTOによって設立された、手強い競争相手だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Starlingイギリスチャレンジャーバンク資金調達

画像クレジット:Starling

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

年金基金の透明性プラットフォームを構築するClearGlass Analyticsが約3.9億円調達

フィンテックスタートアップであるClearGlass Analytics(クリアグラス・アナリティクス)は、自社のプラットフォームのために260万ポンド(約3億9000万円)の資金調達ラウンドをクローズした。このプラットフォームは、年金やより広範なアセットマネジメント市場のような長期貯蓄市場における手数料の透明性を高めることを目的としている。

この260万ポンドのシードラウンドには、欧州のVCであるLakestarOutward VCの他、資産運用と年金基金の両方の世界からのエンジェルが数名含まれている。年金受託者であるRuston Smith(ラストン・スミス)氏、英国の年金業界団体PLSAの議長であるRichard Butcher(リチャード・ブッチャー)氏、JPモルガンアセットマネジメントの元グローバルヘッドであるChris Wilcox(クリス・ウィルコックス)氏、さらに元JPモルガンの従業員のRob O’Rahilly(ロブ・オライリー)氏、Sikander Ilyas(シカンダー・イリヤス)氏、Alex Large(アレックス・ラージ)などだ。

ClearGlassは、1兆5000億ポンド(約225兆円)の成熟した「確定給付」年金制度市場をターゲットにしており、現在500を超える確定給付年金基金と連携していると主張する。今回の資金を使って英国の確定拠出年金市場に進出し、欧州とアフリカでの基盤強化に動く。

ClearGlassはアセットマネージャーとそのクライアントとの間でデータインターフェイスとして機能する。次に、年金基金はプラットフォーム上ですべての投資コストを1カ所で確認できるため、より多くの資産運用会社や他のサプライヤーから通常よりも多くのデータを取得できる。これは、ファンドが投資の管理に支払っている金額の「真のコスト」を確認するのに役立つ。同社は、場合によっては予想の2倍以上になる資産管理のコストを明らかにできると主張している。

同社は最近、400以上の資産運用会社のコストとパフォーマンスの分析を行った。ほとんどの英国の資産運用会社はデータの配信、品質、精度の最低基準を満たしていたが、30社(一部の大手プレイヤーを含む)はテストに合格しなかったことがわかった。

同社は、FCA(英金融行為規制機構)の要請により以前、コスト透明性基準を開発した世界銀行およびFCAの専門家であるChristopher Sier(クリストファー・シエール)氏と、共同創業者のRitesh Singhania(リテシュ・シンガニア)氏およびKunal Varma(クナル・バルマ)氏が創業した。

創業者でCEOのシエール氏は次のように述べた。「コストが思っていたよりずっと大きかったというのは衝撃だと思います。しかし、そうした増分コストは常に存在し、公開されてこなかっただけです。今ではそれを特定して変化をもたらすことができます。測定していないものは管理できません」。

TechCrunchとのインタビューでCOOのシンガニア氏は、年金基金に関するデータを取得することは通常「非常に困難で複雑です。そして第2に、データを取得したとしてもファンド間で比較ができないため、データを見ても何だかさっぱりわからないという状態でした。私たちがやったことは、私たちがマネージャーと年金基金の間のコミュニケーションラインになるということです。資産運用会社と年金基金の間のコミュニケーションを支援するテクノロジーを開発し、そのデータを収集して確認できるようにしました。そして最後に、理解するのに20時間も費やす必要がないものを提供します」と述べた。

ClearGlassは、Founders Factoryアクセラレーターによってインキュベートされた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:ClearGlass Analytics資金調達年金

画像クレジット:ClearGlass Analytics

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

Symendが顧客を債務不履行から救うプラットフォーム事業に45.3億円を調達

パンデミックにより不確実性が増した2020年の経済状況から、消費者の債務不履行率は2021年も引き続き雲行きが怪しいと予測する人が増えている。返済が困難な消費者の状況を緩和するプラットフォームを構築したスタートアップが米国時間2月9日、サービスの需要の高まりを背景とした資金調達を発表する。

Symendが構築した行動アナリティクスは、カスタマーエンゲージメント製品に統合し、支払いに困窮する顧客を識別して、全額が債務不履行とならないよう代替の支払い手段を提案する。同社は4300万ドル(約45億3000万円)の資金調達に成功している。

この資金は2020年5月に完了したシリーズBに続いて調達されたもので、ラウンドの総額は9500万ドル(約100億1000万円)に達し、2016年の創設以来1億ドル(約105億4000万円)を突破した。

今回の資本注入はInovia Capitalが主導し、複数の氏名非公表の投資家が参加している。

Symendは時価総額を公表していないが、CMOのTiffany Kaminsky(ティファニー・カミンスキー)氏と共同で同社を創業したCEOのHanif Joshaghani(ハニフ・ジョシャハニ)氏によれば、今回の資金調達には、支払いに間に合わない顧客をサポートするソリューションに投資したい企業の間で「大幅な価値上昇」があったという。

同氏はインタビューで「顧客が支払いに不安を覚えているケースは非常に高く、サービス提供者は大量の問い合わせが殺到する中、顧客に効果的に寄り添い、安心させるような方法で対応できる余裕を持ち合わせていないのです」と語っている。

このスタートアップは主に電気通信、金融サービス、ユーティリティ、メディア業界のクライアントにサービスを提供しており、北米の大手電気通信サービス事業者の3分の2に加え、ある多国籍の銀行も顧客に名を連ねるとされている。

2020年、Symendは2020年末までに顧客数1億人(クライアントの顧客を含む)を目指すと発表した。この数字が達成されたかについては現在確認を求めているところである。

同社が目指すことは2つある。顧客が支払いに困窮しているときにそれを識別すること、さらにそうした顧客に対して、ほとんど問題の先送りにしかならないような単なる繰り延べ返済とは異なる代替の手段を提供することだ。

同時に、Symendのソリューションは支払いの遅延を防ぐだけではない。同社のソリューションは、カスタマーサービスの運用で圧倒的な量のトラフィックが発生している企業に対して支援と代替手段を提供することを目的としている。

それでも、返済の繰り延べはやはり重要な意味を持つ。2020年、債務不履行を回避するための最初のアプローチとして、多くのサービス提供者が返済繰り延べ期間の設定を申し出た。ただし、ジョシャハニ氏によればそのような返済繰り延べが「資金面での安定について、顧客に誤った感覚を与えかねない」のだという。

その理由の少なくとも一部に、こうした顧客が通常、複数の借り入れを延滞しているという事情がある。

同社が500名の利用者を対象として7月に実施した調査によれば、2020年の4月から7月までの期間に支払いが遅れた人は27%増加した。延滞者が遅延させている支払いの件数は平均3件で、うち55%は少なくとも1件のローンを、37%は住宅ローンまたは家賃を、21%は与信限度額相当を、52%がクレジットカードの支払いを延滞していた。

支払いができないことやお金にまつわる個人的なトラブルは、一般的に言ってお金がないことだけが原因ではない。失業、病気、家族の問題など、期日までに支払えなくなってしまう背後にはさまざまな事情がある。

このためSymendは、問題が生じていることを識別する作業とその対処の両方にきめ細やかアプローチを取ろうと努めている。

「Symendの最大の目標は顧客を不幸な結果から救い出すことであり、顧客がサポートされていると感じられるよう、そして行動できるよう手段を整え、返済期間の繰り延べで支払いが溜まっていくことを避けられるように力を貸すことを、当社の戦略としてクライアントと協働しながら展開したのです」とジョシャハニ氏は説明し、こう続けた。「共感的なコミュニケーションや、セルフサービスツール、柔軟な返済オプションを利用して顧客と関わることで、Symendはこれまで、ひどく不確実でストレスフルな状態にある顧客にポジティブな体験を提供できるよう、大手企業を支援してきました。デジタルツールを利用して行動する手段を顧客に提供したことで、Symendは目がくらむほどの業務量のプレッシャーからコールセンターを解放し、顧客満足度を高め、オペレーション費用を低減し、返済期限を超過した債権が回収会社に渡る前に顧客が支払いを解決できるようにしています」。

以前にも紹介したとおり、Symendのスタッフの約25%は行動科学のPh.Dであるが、そのことは同社の仕組み、あるいは顧客を評価する際のアプローチにあまり影響していない。スタッフは案件のデータそのものから得られるデータを使用し、それをサードパーティーが提供するリソース(AIを基盤とする多くのフィンテックが使用するような、ある人物がある金利のローンに対して適格かどうかを査定するといった目的に使用するデータの宝庫と似たようなもの)と組み合わせている。

カミンスキー氏によれば、同社は2020年度、アルゴリズムとアナリティクスへの投資を増やしたという。

「行動科学的な情報を与えられたアルゴリズムを使用することで、Symendは顧客の行動の主なバリエーションを弁別でき、個人が持つ独特の嗜好に基づいてインタラクションのパーソナライズと最適化を実行します」と同氏は語る。「SymendのAI・機械学習モデルでは、顧客インタラクションと取られたアクションの履歴から得られる洞察を組み合わせることで、これを一歩先へ進めています。こうした洞察は、当社が背後にある心理的、行動的傾向を発見し、どういったエンゲージメント戦略がポジティブな行動を形成するかを判断することに役立っています」。

顧客の感情を捉え、こうした戦略をさらに反復継続するために、同氏によればSymendはNLP処理モデルを使用し、コミュニケーションに対する反応とセルフサービスツールでの応答に基づいて自動的に感情を分類するという。「当社のメトリクスは、期日超過の債務をはるかに超えて、持続的にポジティブなブランド体験を構築することを最終ゴールとしてかたち作られています。当社のAI・機械学習モデルに感情分析とエンゲージメントスコアリングを使用するのはこうした理由によるものです」と同氏は語る。「これによって最終的には顧客の独自のニーズの変化に寄り添い、顧客を繋ぎとめる一貫したポジティブな体験を生み出すことが確実になるのです」。

同社はこの先、今回調達した資金を使って、特に国際的な人材採用をラテンアメリカ諸国とアジア太平洋地域に焦点を合わせて行っていくという。また、人々が債務不履行に陥るのを防ぐ製品の拡大にさらなる投資を行いつつ、カスタマーリテンションの導入とツールの買収をはじめとする製品の拡張にも投資を行う予定だ。

Inovia CapitalのパートナーであるDennis Kavelman(デニス・カベルマン)氏は声明で「私たちはSymendが掲げる、債権回収の回避に向けて顧客を助けることで企業に持続的な価値を与える、というミッションを強く信じています」と発言している。「行動科学とデータサイエンスを組み合わせ、それぞれの顧客向けにパーソナライズされたアプローチを推進する点に、彼らのアプローチの差別化要因と有効性があるのです。今回の新規投資で、Symendはグローバルな拡大に向けた戦略を実行し、多くの産業の大手企業とパートナーシップを締結するための十分な資金を獲得しています」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Symend資金調達

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

現代のカップルに合わせた銀行サービスの形

Zeta(ゼタ)共同創業者Aditi Shekar(アディチ・シェカール)氏は3年間にわたって、カップルがカード決済や割り勘などで財布を共有して管理する方法を追跡してきた。その努力の結果、何万組ものカップルが無料の家計簿アプリ体験に登録するまでになった。こうして収集した情報が、ベンチャー支援のスタートアップとして結実した。

カップルが財布をひとまとめにできる新しいフィンテックプラットフォームのゼタは、共同名義の銀行口座というコンセプトを作りたいわけではない。口座を現代の家族に合わせた形にしようとしているのだ。現在、共同名義の口座というものには透明性が欠けており、人生におけるさまざまな関係から生じた複数のユーザーを口座に追加するオプションが欠けている。一般的な共同名義口座はほとんどの場合、お互いの口座に全面的にアクセスできるようにしているだけで、支払いを細かく分けることはできない。

付き合っている相手との割り勘や支払いにストレスを経験した彼女自身の経験から、起業したシェカール氏は「カップルが支払いに関してあれこれ考えずに済むようにすることが、ゼタの目標だ」と説明する。

シェカール氏と共同創業者のKevin Hopkins(ケヴィン・ホプキンス)氏はこのビジョンを背景に、Deciens Capital(デサイエンス・キャピタル)とPrecursor(プレカーサー)が率いるラウンドで150万ドル(約1億5740万円)を調達した。また、Chime(チャイム)、Square(スクエア)、PayPal(ペイパル)、Venmo(ベンモ)、Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、Weight Watchers(ウェイトウォッチャーズ)の幹部も出資した。シェカール氏によると、資本政策表の57%は女性または有色人種だという。

「当社はある意味で、ベンモが対応できない分野にマッチする存在だと考えている。ベンモを使って、ときには1日に6回も互いにお金を送金し合っているカップルがいる。こうした面倒なやり取りを肩代わりしてあげたい」とシェカール氏は言う。ゼタはカップル向けのツールとして市場に参入したが、シェカール氏は、現代のあらゆる世帯が安心して運用できる口座になるという壮大な構想を練っている。

ゼタのようなツールは、毎日のお金の管理を簡単に済ませることが目的だ。つまり、家賃の支払いに必要な小切手の発行、食費の分割、ディナーの割り勘、お小遣いの支払いなどだ。

つまり、ゼタは既存の銀行口座にバンキングサービスを統合できるデジタルな部分を加えることで、First Republic(ファーストリパブリック)やChase(チェイス)に取って代わる存在となる。カップルがゼタをダウンロードすると、2人が持っている既存の口座をまとめるゼタの共同カードと共同名義の口座が用意される。共同カードを使用すると、カップルが同じ口座から支払うことが可能だ。

今のところ、ゼタの口座の主な使い方は2つだ。まず、家賃や住宅ローンなどの固定費を支払う際に使う方法。もう1つは、2人の目標(コロナ収束後の旅行や車や家など2人で共有する大きな買い物など)を達成するための預金口座として使う方法だ。利用者は自分のメイン口座からゼタに必要な額だけ入金しておき、2人の出費を支払う時にゼタのデビットカードで決済する。個人的な買い物には使用しない。

「直接振り込めるフィンテックは無数に存在するが、ゼタは既存の口座を基盤として利用できるため、残高を全額送金する必要はない」とシェカール氏は言う。

ゼタは手数料(マーチャントが支払いを処理するのに要する費用)から収益を得る。チャイムと同じ手法だ。手数料の一部がゼタに、一部が銀行に支払われる。

「付き合っている相手と一緒に家賃を支払ったり、請求書の支払いを共有したりする場合は、ゼタが自然な選択になる」と同氏は言う。

「率直にいって、従来の金融機関はユーザーをバラバラにしか見てこなかった。フィンテックは我々が思っているよりも社会の現状に合わせようとしている」とシェカール氏は言う。

ゼタが成功した理由には、多くの人が自分の口座を継続的かつ有意義な方法で共有したいと考えているということがある。また、銀行のサービスが個人よりもグループを重視する方向に、早期かつ大々的に移行する準備が整っているという理由もある。こうした移行は困難に思えるが、ベンモやSplitwise(スプリットワイズ)などのアプリ、また数週間前のGameStop(ゲームストップ)騒動のような現象が示すように、すでにソーシャルファイナンスが大きな流れであることを認識している。

マルチプレーヤーフィンテック(現状にフォーカスした消費者にやさしい銀行サービスを分類する用語)に参入することで注目を集めているスタートアップは他にもある。グループファイナンスプラットフォームであるBraid(ブレイド)は、同居世帯やサイドビジネス、創造的なプロジェクトまで、さまざまな利用者向けの取引に対応しようと考えている。

ブレイドの創業者Amanda Peyton(アマンダ・ペイトン)氏が説明するように、複数の人が共有できるソーシャルファイナンスという概念を2つのフェーズに分割すると、フェーズ1.0がVenmoである。フェーズ2.0では、「口座レベルと取引レベルでお金を共有できるようになる」と同氏は言う。

「現在、主流となっているさまざまな銀行サービスは、自分とパートナーのお金を別々に管理している。ソーシャルファイナンス2.0では、双方のお金という考え方が導入される」とペイトン氏は言う。

「銀行はこれまで、自行の顧客ベースを拡大することを優先させてきた。銀行はZelle(ゼル)のサービスを除いて、メインの預金口座が他行でもお金を共有できるサービスにはあまり投資してこなかった」と同氏は説明する。「そのような製品に投資しても、銀行は目に見える利益をほとんど得られないからだ」

「ゼタは、支払いや将来のための貯蓄など、カップルやファミリーに特化することでブレイドとの差別化を図っている。シェカール氏によると、税金の支払いや婚前契約など、さらに広範にわたってファミリー向けのサービスを今後サポートしていく予定だという。現時点では、ゼタの1口座につき2人までしか参加できないが、ブレイドの共同名義口座には複数のユーザーを追加する機能が用意されている。

ゼタにとって最大の課題は、利用するカップルが2人で運用する口座を共有できるほど充分に信頼し合っているかどうかという点だ。個人主義というのは、ツールが不足しているからという銀行側の手抜きの結果ではなく、自分のお金を自分で管理したいという利用者の選択の結果である。もちろん、お金を共有することの裏返しとして、カップルの関係が終わってしまったときのやり取りが面倒という問題がある。

画像クレジット: Zeta

「我々が構築した最初の機能は、口座の分割だった」とシェカール氏は言う。カップルが別れてしまったとき、共有口座のお金がどうなるのかについて、ゼタには明確な規定がない(というより、お金の折半を必要とする条項がない)。

ゼタは今後、「関係が終わってしまったときに」口座をどうするかについて、登録時に利用者に尋ねる機能を追加することを考えている。

「口座を共同で作る際には、相手を心から信頼している必要がある」と同氏は言う。「相手を信頼していないなら、ゼタを使う準備ができていないということだ」。

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関連記事:仮想通貨取引所Bitfinexがオンラインショップ向け仮想通貨決済ゲートウェイをローンチ

カテゴリー:フィンテック
タグ:資金調達

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)

仮想通貨取引所Bitfinexがオンラインショップ向け仮想通貨決済ゲートウェイをローンチ

仮想通貨取引所のBitfinexが、仮想通貨決済ゲートウェイBitfinex Payをローンチする。この新サービスにより、オンラインショップはさまざまな仮想通貨での支払いを受け付けることができる。特に、国境を越えた取引が容易になるはずだ。

暗号化された決済ゲートウェイはすでにいくつか存在する、Bitfinex PayはBitfinexの取引所とシームレスに連携するという利点がある。売り手はウィジェットを作ってEthereum(イーサリアム)やBitcoin(ビットコイン)での支払いを受け付ける。支払いは取引所のウォレットに入金される。

Bitfinexのウィジェットは「Buy Now with PayPal(PayPalで今すぐ購入)」ボタンのような動作をする。Bitfinex Payボタンをクリックすると、仮想通貨取引所のウェブサイトにリダイレクトされる。そして支払いが承認されると、元の加盟店のウェブサイトにリダイレクトされる。支払いの上限は仮想通貨で1000ドル(約10万8000円)に設定されている。

Bitfinex Payでの取引では、手数料は一切かからない。もちろん、暗号トークンの送信にはいくらかのネットワーク手数料がかかる。取引所で保有する仮想通貨を変換し、口座から現金を引き出したりしようとすると、売り手も手数料を支払うことになる。

Bitfinex PayではTether(テザー)での支払いも受け付ける。Tetherは安定していて、Tetherの1単位は1米ドルの価値があるとされており、時間とともに変動しない。

なお、ニューヨークの司法長官がTetherは常に銀行口座にある米ドルによって完全に裏づけられていないと結論づけ、この声明に異議を申し立てている。ある時点で、Bitfinexはパナマの銀行にある8億5000万ドル(約920億3000万円)にアクセスできなかった

結果、TetherとBitfinexは現在ニューヨーク州で禁止されている。そのため、ウェブサイトのチェックアウトプロセスの一部としてBitfinexを使用するには、Bitfinexを十分に信頼できるかどうかを判断する必要がある。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Bitfinex仮想通貨

画像クレジット:Chesnot / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:塚本直樹 / Twitter

銀行の顧客満足度向上を支援するスタートアップ「Flourish」が1.6億円を調達

昨今、米国拠点の投資家がラテンアメリカのスタートアップを支援する話は珍しくない。

しかし、ラテンアメリカのVCが米国拠点のスタートアップに投資する話を聞くのは毎日のことではない。

カリフォルニア州バークリー拠点のフィンテックFlourish(フローリッシュ)は調達ラウンドで150万ドル(約1億6000万円)を獲得した。ラウンドはブラジルのベンチャーキャピタル、Canaryがリードした。Pedro Moura(ペドロ・モウラ)氏とJessica Eting(ジェシカ・エティング)氏が設立したこのスタートアップは銀行、フィンテック、信用組合などに「エンゲージメントと健全な金融」のためのソリューションを提供し、顧客の獲得、維持を支援することを目標にしている。

ラウンドにはXochi Ventures、First Check Ventures、Magma Capital、およびGV Angelsの他、元ブラジルBank of AmericaのCEOであるRodrigo Zavier(ロドリゴ・ザビエル)氏、元ScwabのBeth Stelluto(ベス・ステルト)氏、The People Fundのプレジデント兼CEOであるGustavo Lasala(グスタボ・ラサラ)氏、およびViva RealのファウンダーであるBrian Requarth(ブライアン・レクォース)氏といった戦略的エンジェル投資家も参加した。

米国、ボリビア、ブラジルに顧客を有するFlourishは、3つの柱からなるソリューションを開発した。

  • ユーザーが資産を蓄えあるいは投資することを動機づける報奨機構
  • ユーザーがルールをカスタマイズできる(好きなスポーツチームが勝った時は積立預金に15ドル入金するなど)自動化された少額貯金機能
  • 個人の入出金や消費パターンをQ&Aゲームにする金融知識モジュール

Flourishはまず米国で、CommonWealth and Opportunity Fundなどの組織と協力してエンドユーザー機構をテストすることから始めた。2019年に、SDKまたはAPI経由で銀行と統合可能なバンキングプラットフォームのパイロット版としてB2CバージョンのFlourishアプリ(Flourish Savings App)を公開した。現在は米国全土の銀行、小売店、フィンテック向けにエンゲージメントテクノロジーのライセンス供与も行っている。Flourishは自社のソリューションを、米国拠点の信用組合やSicoob(ブラジル最大の信用組合)およびボリビアのBancoSolにライセンスあるいはパイロット提供している。

同社は、ユーザーの活性化とエンゲージメントに焦点を合わせたパートナーシップモデルを通じて収益を上げている。

ともに移民であるモウラ氏とエティング氏は、カリフォルニア大学バークレー校のハースビジネススクールで出会った。モウラ氏は10代のときにブラジルから米国に渡り、エティング氏はフィリピン人の父とメキシコ系の母の娘だ。

2人は、前向きな金銭感覚を持ち、自分の財産を理解する能力を人々に与えるビジネスを構築する、という共通のミッションで繋がった。

現在11名からなるチームが米国、メキシコ、およびブラジルで働いている。新たな資金はラテンアメリカの顧客増加、追加雇用、およびFlourishプラットフォームの新機能開発に使う計画だ。

具体的には、ブラジル市場に焦点を当て、中南米のいくつかの国で規模を拡大する。

「ラテンアメリカ、より具体的にはブラジルが今我々にとって魅力的である理由が3つあります」とモウラ氏は語った。「現在B2B金融テクノロジーは生まれたばかりです。これに銀行規制の緩和、および責任あるプロダクトの需要が合わさって、ブラジルはFlourishにユニークなチャンスをもたらしているのです」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Flourish資金調達

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nob Takahashi / facebook