新型コロナ関連の研究も行うDNA分析の23andMeが約85億円調達

米証券取引委員会に提出された書類によると、DNAテストを行うテック企業23andMeが総株式額8500万ドル(約88億円)で新たに8250万ドル(約85億円)弱を調達した。Wall Street Journalが確認して報じた(Bloomberg記事)今回の資金調達にはSequoia CapitalやNewView Capitalといった投資家が参加した。23andMeがこれまでに調達した資金は累計8億5000万ドル(約880億円)となる。

Wall Street Journalに宛てた23andMeの声明によると、シリーズFラウンドに特定の意図はなく調達した資金は事業拡大に充てる。23andMeの事業は個人向けの在宅遺伝子テストキットの提供がメインで、このテストで個人は自身の健康について、そしてDNAに基づく家系図について知見を得ることができる。

健康増進と先祖や家系図についての情報獲得を個人向けに宣伝する一方で、同社は収集したデータに基づく研究にも注力してきた。自社による最近のデータ活用例としては遺伝子マーカーがいかに新型コロナウイルス(COVID-19)への感受性に影響を及ぼすか、というものがある。またサードパーティーの研究を支援するためにデータを使うこともある。ただし、データはそうした目的に限定し、集合・匿名化されたフォーマットで共有される、と同社は強調している。

23andMeは1月に従業員全体のおおよそ14%をレイオフしたことを認めた。ただしパンデミック、そして同様のグローバルな健康危機が将来起こりうるという可能性に直面する中で、新型コロナに関する2020年の取り組みで同社のプラッットフォームに新たな価値が見出された。

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(翻訳:Mizoguchi

2020年は大麻にとって決定的な年だった、今後の展開は

新型コロナウイルス(COVID-19)がこの1年を支配した、との表現は控えめだ。パンデミックは私たちのビジネス、他の人間、周りの世界との関わり方の方向性を変えた。eコマースからデジタル決済まで、ビジネスの多くのトレンドが数カ月で数年分進んだ。

大麻業界も例外ではない。大麻はすでに米国内で最も急速に成長している産業だが、2020年は次の段階へ進む年となった。現在、大麻の合法化を支持する米国人は記録的な割合に達している。

誰に聞いても、大麻は大統領選挙の日の最大の勝者の1つだった。アリゾナ州、モンタナ州、ミズーリ州、ニュージャージー州、サウスダコタ州で合法化されたのだ。現在、米国の3分の1以上(1億1100万人以上)が娯楽用の大麻が合法化された州に住む。合法的なこの業界の規模は2021年までに245億ドル(約2兆5000億円)になると見込まれている。

今や大麻が米国のメインストリームの定番となったことはかつてないほど明白だ。この上昇軌道は2021年に向け、業界だけでなく経済全体にも新たな扉を開く。イノベーション、投資、雇用の機会がこの分野に流れ込む。

「グリーン」エコノミー

3月以来、5700万人以上の米国人が失業保険を申請した。大麻に関連する経済的機会や雇用の機会は特効薬ではないが、無視すべきではないことは確かだ。

合法大麻の売上高は2019年に200億ドル(約2兆800億円)近くに達し、今後4年以内に年間400億ドル(約4兆1600億円)を超えると予想されている。業界の成長に合わせ、企業は採用を進めている。合法的な大麻の市場はフルタイム換算で24万3700人の米国人の仕事を支えている。その数は2018~2028年に250%の増加となる見込みだ。大麻業界は米国で最大の新規雇用を生み出す源となる。

大麻はまた、州の経済を強くする。特に州と地方の予算が減少する中で、税収を増やす機会を生み出すことができる。たとえばアリゾナ州は新しい合法化措置の下、大麻の販売に16%の税金を課す。この税金はコミュニティーカレッジ、警察、消防署、公衆衛生プログラムに向けられる。

大麻eコマースの進化

2020年に強まった傾向が1つあるとすれば、それは大麻の需要が非常に高く、不可欠な消費財だということだ。

この春の外出禁止令の広がりの中で食料品店、ガソリンスタンド、薬局と並んで、多くの州で大麻を扱う小売店が「エッセンシャル(生活に不可欠)」に分類された。デパートで買い物をしたり映画館に行ったりすることはできなかったが、大麻を扱う近くの小売店で買うことはできた。政府のこの承認は、大麻業界がメインストリームに引き上げられたという市場への強いシグナルとなった。

消費者からの強い反応が記録的な大麻の売り上げにつながった。前例のない需要により、大麻の小売業者はビジネスのやり方や顧客の商品購入方法に革命を起こすことを余儀なくされた。ウイルスを広める可能性のある人と人との直接の接触を最小限に抑えるため、大麻を扱う小売店ではビジネスを最新化するため、また従業員と消費者の安全のため、eコマースとデジタル決済ソリューションにすばやく目を向けた。

こうした業界全体での変化の結果、オンライン売上高は年末までに7億9450万ドル(約830億円)に達する。これは当初の見積もりをはるかに上回る。専門家はパンデミックがeコマースへのシフトを5年早めたと推測する。この傾向はDutchieでも見られた。3月以降、オンライン注文は700%増加し、平均注文数量は32%増加した。

2021年に向けて

こうした政治やビジネス上の変革は驚異的なスピードで早送りされたマイルストーンだった。では次に来るのは何か。

合法的な業界の最前線でテクノロジーの革新が進んでいる。大麻を扱う小売店は、コンプライアンスが不可欠であり高度に規制された業界における業務をテクノロジーにより合理化できる。次に、小売店がより積極的に情報に基づく意思決定を行うにはデータをもっと理解する必要があるため、データがますます重要になる。これは、あらゆる規模の小売店で重要になるが、特にオンライン体験をより高いレベルに引き上げたい大規模小売店で重要になる。

このニーズを満たす新しい法人向けソリューションがついに市場に登場しつつある。小売店はこうしたソリューションでデータをフル活用し、オンラインでの独自性をデザインすれば、もっと多くのプレーヤーが業界に参入したとしても競争力を維持できる。

合法化が広がるにつれ業界もさらに合法的になり、大麻の販売と使用は後ろめたいものではなくなる。大麻を扱う企業はメインストリームの様々な業界の最も著名な企業から多くの優秀な人材を引きつけるようになるはずだ。以前はこの分野への参入をためらっていたソフトウェアプラットフォーム、企業、投資家が大麻関連企業と協力し、投資を始めると思われる。また、大麻の連邦レベルでの合法化は流動性を高め、より多くの投資取引へ扉を開く可能性を秘めている。

さらに、すでに見え始めた動きとして、小売業者が大規模な買収や合併を続け、業界全体で統合の傾向が高まっている。複数の州で営業する多くの企業が小さなプレイヤーを飲み込む。小さなプレイヤーは力を合わせてまとまり、業界のプレイヤーは集約されていく。

大麻の未来

大麻産業はまだ揺籃期にあるが、その可能性は非常にはっきりしている。

より多くの州で合法化され、業界が成長・成熟するにつれ、方位磁針の向きは私たちが望む方向と近くなるだろう。合法的な大麻の産業は他のメインストリームの産業と同じようにテクノロジーと資金にアクセスできる業界になる。イノベーターはもっと自由に集まり、業界を前進させる最新のテクノロジーソリューションを開発できるようになる。そして、消費者と患者は望むものをもっと容易に手に入れられるようになる。

【Japan編集部注】筆者Ross Lipson(ロス・リプソン)氏はオンライン大麻市場であるDutchie(ダッチー)の共同創業者でCEO。同氏はオンラインでの料理の注文を含むさまざまな業界向けの高度で公平なデリバリーサービスで10年以上の経験を持ち、2つの事業のイグジットに成功した。

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(翻訳:Mizoguchi

Tencentが518億円のラウンドで中国のヘルスケアポータルDXYを支援

中国の消費者のためのオンラインヘルスケアコミュニティで、Pfizer(ファイザー)のようなヘルスケア企業でもある創業20年のDXYが今週、プライベートエクイティ企業Trustbridge Partnersが率いるシリーズEのラウンドで5億ドル(約517億9000万円)を調達したことを発表した。

このラウンドには、これまでの投資家であるTencent(未訳記事)と、Hillhouse Capitalのアーリーステージ部門であるGL Venturesが参加し、DXYの総調達額はこれで6億8000万ドル(約704億4000万)あまりになる。DXYの初期の投資家にはXiaomiの創業者Lei Jun(レイ・ジュン)氏のShunwei CapitalやLegend Capital、DCMがいる。

同社は医師同士が知識を共有するプラットフォームとしてスタートし、徐々に健康に関する一般向けのアドバイスや医療相談、病院へ行く前の自宅療養のやり方などを加えて、消費者向けのプラットフォームにもなったた。

パンデミックの長期化にともない、世界中の病院や人びとが大急ぎで活動をオンラインにシフトし、ヘルスケアアプリの需要が急増した。DXYもすばやく反応し、感染拡大の初期には中国でリアルタイムの新型コロナウイルス(COVID-19)検査を導入した初の企業になった。

今日では、ヘルスケア企業がDXYを広告のチャネルや学習のプラットフォーム、また求人サイトとして利用しており、それらが同社の売上に寄与している。

創業以来現在まで、同社のサイトはおよそ1億3000万人の消費者を惹きつけ、またオンラインのコンサルテーションを提供する医療機関や医師は累計で9000機関5万人に達している。同プラットフォームの現在のユーザーベースは2000万で、主要クライアントにはEli LillyやPfizer、AstraZenecaなどが含まれている。

DXYは今回新たに得られた資金を、ヘルスケアプロフェッショナルのサポートと消費者サービスという同社事業の2つの柱の補強に費やす計画だ。そのために、病院と消費者製品の企業、そして製薬企業との協力関係を強化し、プロダクトや新しい消費者アプリケーションの開発に共同出資していく。

消費者部門では、SoftBankが支えるPing An Good Doctor(Reuters記事)やAlibaba Health、JD Health、そして同じくTencentが支援するWeDoctorといった強力なライバルがいる。

【更新】この記事は米国時間2020年12月29日に、投資に関する詳報によりアップデートしている。

関連記事:中国で注目が集まるオンライン医療、AlibabaとJD.comのヘルスケア部門を比較する

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画像クレジット:DXYウェブサイト

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従業員コンディション分析のラフールが12.3億円調達、BtoE・BtoC事業展開を加速

従業員コンディション分析のラフールが12.3億円を調達、BtoE・BtoC事業への展開加速

「心理的安全性」と「エンゲージメント」を可視化する組織診断ツール「ラフールサーベイ」(Android版iOS版)を提供するラフールは12月28日、第三者割当増資による12.3億円の資金調達を発表した。引受先は、i-Lab3号投資事業有限責任組合、 Aslead Capital Pte. Ltd.、AGキャピタルをはじめとしたVC、ゼンリンデータコムなどの事業会社、個人投資家。累計資金調達額は約20億円となった。

調達した資金により、ラフールサーベイのプロダクト開発やセールスマーケティング活動、カスタマーサクセス体制、コーポレート機能をさらに充実させ、中期ビジョンである「BtoE」「BtoC」事業への展開を加速する。

ラフールサーベイは、企業の「健康経営」や従業員の心身の健康状態を可視化可能な、「個人が変われば、組織が変わる」組織診断ツール。約3000社の従業員18万⼈以上のメンタルヘルスデータから、⼤学や臨床⼼理⼠の知⾒を取り⼊れた独⾃の調査項⽬を従来のストレスチェックに加えることにより、多⾓的な分析が行える。組織エンゲージメント・ハラスメントリスク・離職リスクなども含めた包括的な診断が可能。

ラフールは、個人(働く従業員)、管理職、組織、あらゆる角度の意識を変え、寄り添うことではじめて、組織の健全化、良くしていくことができると考えているという。また、通常のストレスチェックだけでは見えづらい心の状態が可視化されることで、社員が安心して働ける職場環境をつくり、人材の定着と組織改善につなげられるとしている。

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合成麻薬中毒症をバーチャル治療で治すBicycle Health

2017年にローンチした合成麻薬オピオイドによる疾患を治療するスタートアップBicycle Healthは、創業者のAnkit Gupta(アンキット・グプタ)氏によると、近くそのサービスを米国のほぼ半分の州で展開する。

グプタ氏が過去に創業したPulse Newsは2013年にLinkedInに買収されたあと、同氏はLinkedInがマイクロソフトに買収された2016年に同社を去り、もっと有意義なことをしたいと考えていた。同氏は「合成麻薬の中毒という流行病を治すもっと良い方法を見つけたい」という考えにたどり着いた。同氏がLinkedInを去った年に、4万2000名あまりの死者の死因が合成麻薬の中毒だった。米国保険福祉省(HHS)のデータによると、2018年には過剰摂取による死者が4万7000名を超えた。

そしてこの問題は、解決に向かっていない。Bicycle Healthが集めた統計によると、9200万人の米国人に合成麻薬中毒になるリスクがあり、200万人が中毒と診断されている。

最初同社はカリフォルニア州レッドウッドシティのクリニックを拠点としていたが、新型コロナウイルスのパンデミックで医療施設が予防のための守りの姿勢に入ったため、Bicycle Healthはバーチャル治療に切り換えた。

HHSの新たな規制で、これまで患者本人に直接施療されていた治療や薬のうち、可能なものはリモートで交付できるようになった。この変更によってリモートケアサービスが爆発的に成長し、Bicycle Healthのような企業が我先にとその波に乗った。

同社は現在、18の州で治療を提供しており、2021年の第1四半期にはそれを25の州に拡大する予定だ。この成長を支えているのが個人および法人の多くの投資家で、彼らはSignalFireがリードするBicycle Healthのシードラウンドに参加した。

同社の調達額はほぼ550万ドル(約5億6900万円)に達し、投資家にはSignalFireのほかにHustle FundやRomulus Capital、そしてJeff Weiner(ジェフ・ウェイナー)氏などの個人投資家も含まれる。ウェイナ氏は以前、LinkedInのCEOを務めていた人物だ。そのほかの個人投資家は、Virta Healthの創業者Sami Inkinen(サミ・インキネン)氏、Iora Healthの創業者Rushika Fernandopulle(ラシカ・フェルナンドプルル)氏、そしてJohn Simon(ジョン・サイモン)氏だ。サイモン氏はGeneral Catalystの創業者だが、投資は彼のGreenlight Fundから行われた。

Bicycle Healthは治療としてブプレノルフィンの処方のうほか、指導員のチームが依存症の治療とそれに伴う行動的および精神的な健康問題への対策を提供している。現在は3名の健康指導員が同社のおよそ2000名の患者を担当し、またその3名を12名の臨床専門医が支えている。治療は同社のモバイルアプリから提供され、定期的な訪問診療により、患者の回復状態をチェックしている。

同社は処方薬のディスカウンターGoodRxを利用して、保険のない患者の負担を軽くしている。Gupta氏によるとBicycle Healthは今後、地方や全国規模のヘルスケアプロバイダーと協力して、治療費の患者負担ぶんのさらなる削減を目指していく。「患者の負担を軽減するありとあらゆる方法を見つけていきたい」とグプタ氏。

同氏によると、同社の目標は「患者を手詰まりの状態に放置するのではなく、このような業態が確実に、人が変わることを助けていけるようにすることだ」という。同氏がそれまでいたソフトウェア業界は、何でも速いことと、何かを壊して新しいものを創造することが尊ばれるが、ヘルスケアではそれが通用しないと同氏は悟った。「速いことと壊すことはヘルスケアにとって間違った考え方だ。安全な場所を築くことが第一だ。法的に安全という意味ではなくて、そこでは患者が確実にお世話をしてもらえる、という意味の安全だ」。

関連記事:脳内チップでオピオイド依存と闘う米国初の臨床試験が始まる

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ランナー向けSNSアプリを中心にメディア/ECサービスを運営するラントリップが6000万円を調達

ランナー向けSNSアプリを中心にメディア/ECサービスを運営するラントリップが6000万円を調達

ランナー向けSNS「Runtrip」(ラントリップ。Android版iOS版)を中心にメディア「Runtrip Magazine」/ECサービス「Runtrip Store」を展開するラントリップは12月25日、第三者割当増資による6000万円の資金調達を発表した。引受先はFFGベンチャービジネスパートナーズ、元ラグビー日本代表キャプテンの廣瀬俊朗氏(HiRAKU)、および既存投資家。累計調達総額は約2億円となった。調達した資金は、サービスのさらなるユーザー体験向上のための機能開発や、事業規模の拡大に向けた人材採用に活用していく。

コロナ禍において、世界中で「健康維持」や「リフレッシュ」などを目的にランニングを始める人が増加。これまで以上に「ココロ」と「カラダ」の健康に対する世の中の意識が向上し、ランニングをはじめスポーツの価値が改めて見直された1年となった。

一方ラントリップによると、ランニングは手軽に始められる反面「継続することが難しい」といった課題を抱えているという。同社はこうした課題を解決し、ひとりでも多くのランナーが楽しく走り続けられるよう「もっと自由に、楽しく走れる世界へ。」というビジョンを掲げてサービスを展開してきた。

2020年は多くのマラソン大会やイベントの中止が相次ぎ、オンライン上でランニングのモチベーションを維持するニーズが増加したことから、同社ランナー専用SNSアプリ「ラントリップ」では、ユーザーがお互いの走行履歴を賞賛する「Nice Run!」が毎月160万回以上送り合われた。また、新規ユーザーの約4割がアプリダウンロード後に運動頻度が向上しているそうだ。

10月提供開始の「オンラインランニングイベント」では、累計約2万9000人が参加する国内最大規模のイベントへと成長。同社ブランドを中心に取り扱うECサイト「Runtrip Store」ではコロナ前の平均売上げの26倍以上の規模に急拡大し、アパレルの観点からもランナーのモチベーション向上に寄与しているとした。

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Apple Fitness+はジムの代わりにはならないが汗を流すには十分

体が汗で光っている。この記事をタイプしているうちに、ようやく心拍数が少し下がってきた。ほんの少しだけ持病の喘息が出そうな兆候を感じたが、それも収まりつつある。気分が良いというつもりはない。このまったくひどい12か月の間にすべてが最悪の状態になった。徐々にそうなったようにも一瞬だったようにも思えるが、そんな年に気分が「良い」などと言えるはずもない。とはいえ、「悪い」気分でもないことは確かだ。

もちろん、この時期にFitness+がサービスを開始したのは、一種の幸運な偶然である。Appleという会社は先見の明という点では一目置かれているが、他の会社よりも機密情報に通じているというわけでもなかったのだろうし、この9か月でフィットネス業界がこれほど急激に様変わりするなど予想もできなかったに違いない。

新型コロナウイルス感染症がフィットネスジムに与える影響に関する情報の大半は、よく言っても近視眼的で裏付けに乏しいものだが、フィットネス業界がパンデミックの影響を大きく受けたこと、今後も影響を受け続けることは間違いなさそうだ。影響というより、壊滅的打撃と言ったほうが正確かもしれない。この記事を執筆している現在は12月半ばだが、ウイルス感染のリスクが高い場所としてジムが常に上位に入っている状態で、危険を冒してまで営業を再開するジムは少ない。まるで、毎日の運動をさぼるための口実が欲しい会員のニーズに応えているかのようだ。

ただ、確実に言えるのは、ウォールストリートとシリコンバレーはこれを大きなチャンスと捉えているということだ。6月後半、Lululemon(ルルレモン)がMirror(ミラー)を破格の5億ドル(約516億円)で買収した。その直後、バンク・オブ・アメリカは、ガイド付きワークアウトサービスを提供するルルレモンが2023年までに7億ドルを稼ぎ出し、その会員数は60万人に達するという予測を発表している。Peloton(ペロトン)の株価は、アップルが先週Fitness+のサービス開始を発表したことを受けて一時的に急落したが、それを除けば、2020年は家庭用トレッドミルとエアロバイクのメーカーであるペロトンにとってすばらしい年だったと言える。

もちろん、これらの企業がすでにすばらしい業績を築いていたことは分かっているが、熱血インストラクターのような言い方をすれば、今回のパンデミックでこれらの企業は確実に「パワーアップ」した。「パワーアップ」なんて、書いたそばから少し恥ずかしくなる言葉だが、そもそも、なぜエクササイズとかフィットネスのクラスではプライドを捨てることができるのだろう。

筆者はワークアウトのクラスに参加したことはあまりない。パンデミック以前は、週に5~7日はジムに通っていた。出張時は、ホテルのジムで、午前6時のFox Newsを映している大型ブラウン管テレビのチャンネルを変えるにはどうすればよいのだろう、などと考えている変人だった。別に政治の話には興味はないが、筆者の場合、コーヒーを飲んでジョギングに出かける前にフォックス・アンド・フレンドのようなトーク番組を観る気がしないだけだ。

パンデミック発生以来、筆者の選択肢は限られてきた。3月から4月にかけて筆者の地元のクイーンズでも脅威の新型コロナウイルスの感染が拡大した上、筆者自身が健康上の問題を抱えていたこともあり、トレーニングの選択肢は著しく限定されることになった。感染拡大から数か月の間に、いや応なく間に合わせのトレーニングメニューに戻り、最初はYouTubeでヨガを始めたが、今は毎日約8キロから24キロのウォーキングを行っている。

これは進歩だ。自分が恵まれていることすべてに感謝している。最悪の状況だと感じたとしても、実際はもっと悪くなっていた可能性があるということをよく分かっているからだ。しかし、現実的に考えて、大半の米国人(間違いなく米国人以外も)がそうだと思うが、現時点で費用をかけてジムに戻ってもメリットはまったくない。かといって、ニューヨークのアパートの狭いスペースを考えると、ペロトンを置くこともできない。

しかし、Apple Watchならすでに持っている。ヨガマットもある。ベッドルームにはちょうどヨガマットを敷けるくらいのスペースもある。ここ数日、1回10~20分くらいのワークアウトを1日2つほどやっている。先週、同僚記者のマシューがAirPods Maxの記事で書いていたように、筆者もこの記事を「レビュー」とは呼ばないことにした。レビューと呼ぶには製品に対してフェアではないし、何より、読者の皆さんに対してもフェアではない。

画像クレジット:Apple

はっきり言えるのは、筆者はこのサービスを最初の数日だけでなくそれ以降も使い続けてみるつもりだということだ。これは多分、このサービスにポテンシャルがあることの証しだろう。あるいは、筆者自身が、自分の体を生ぬるくてブヨブヨしたカッテージチーズで一杯のゴミ袋みたいだと感じている状態から何とか抜け出す方法を探しているというだけのことかもしれない。真実は、いつもそうだが、おそらく両者の中間あたりに存在するのだろう。

健康に関することは何でもそうだが、フィットネスも極めてパーソナル性の高いものだ。トレーニングの問題に対する万能の解決法などというものはいまだかつて存在したことがないし、今後も存在しないだろう。Fitness+は、最新流行の方法でこの問題に取り組もうとするものだが、やはり万能の解決策などではもちろんない。筆者が今できる最善のことは、筆者自身の個人的なニーズと体験を話すことだ。読者にとっては、どこかで聞いた話もあれば、まったくの初耳という話もあるだろう。

筆者にとって最大の問題は時間とスペースだ。時間については説明するまでもない。多くの人が同じように感じているはずだ。1年にもわたる自宅待機の間でさえ、どういうわけか十分な時間を確保できたことがない。スペースについては、ジャーナリストの給料でニューヨークに住むことを決断した影響が大きい(それが原因のすべてというわけではないが)。

選択肢の多様性の問題もある。筆者は特定のレストランでお気に入りのメニューを見つけると、飽きるまでその一品を注文し続ける。そして、その状態がかなりの期間続く。筆者の場合、これがトレーニングについても当てはまる(しかも体を壊すまでやり込んでしまうことが多い)。以前、ランニングなら続けられる(そして減量後の体重を維持できる)ことに気づいて、両膝を壊すまで走り続けたことがある。

先ほど書いたように、長距離の散歩をして橋を渡りクイーンズ以外の通りを歩くのは、ちょっとしたことだが、筆者にとっては、この大変な年に貴重な息抜きになった。この散歩をしているときは、Apple Watchのリングをいつも完成させることができた(仕事日には「スタンド」のリングを完成させるのは今でも苦労するが)。

Fitness+には、すぐに得られるメリットがいくつかある。1つ目は、そしておそらくこれが最も重要だと思うが、利便性だ。月10ドル(約1000円)で、毎週月曜日にアップルから新しいトレーニングビデオが配信されるという安心感が得られる。このビデオコンテンツは、iPhone、iPad、Apple TVなど、各種アップル製端末で視聴できる。

もう1つ筆者についてお知らせしたいのが(今回の記事はそんな内容ばかりのような気がする)、家にテレビがない変わり者だということだ。そのため、この記事で紹介する内容は、iPadとiPhoneで利用した場合のエクスペリエンスに限られる。Fitness+を利用するのにApple TVが適しているであろう理由はたくさんあるが、正直なところ、最も重要なのは画面の広さである。個人的には、近くで観るならiPad Airの11インチディスプレイでまったく問題ないと感じた。

一方、iPhoneだとトレーナーについていくのは結構大変だった。とはいえ、iPadとiPhoneの利点は柔軟性だ。立った姿勢と座った姿勢を繰り返すときに便利である。もう1つの利点は、コロナが収まって皆が旅行を再開したときに気づくだろう。iPadかiPhoneがあれば、ホテルの部屋で何気なく1つか2つトレーニングを始められるのは、確かに魅力だ。少なくともエリプティカルマシン(楕円形のトレーナー有酸素運動マシン)がホテルの部屋に置いてあるのを期待するよりもいいだろう(筆者の経験では、あのマシンが部屋に置いてある確率は50%くらいだと思う)。

少なくとも現時点では、Fitness+の単体アプリは用意されていない。これまでの他のプレミアムサービスと同様、アップルはFitness+用アプリを既存のアプリのアップデートにこっそり忍び込ませる方法をとった。これは、新しい有料サービスを何百万台もの端末上で今すぐに利用できるようにするためだ。iPhoneアプリでは、3つのタブの1つとしてFitness+が表示される。フィットネス、ヘルス、ウォッチに別々のアプリを用意するのは少し冗長ではないかといつも感じていたのだが、今、これらが別アプリになっている理由が分かったような気がする。また今回、iPadOS用の標準のFitnessアプリもリリースされた。この標準アプリのエクスペリエンスは、ほとんどFitness+そのものと言ってもいいくらいだ。

Fitness+を使うにはApple Watchが必須だ。Watchを自宅に忘れた場合やバッテリー切れになった場合の回避策は用意されているようだが、全体として見れば、WatchがなければFitness+は使えない。Watchはアップルのエコシステムの一部なのである。

こうした特定のハードウェアが必須になっていることは、それがいかに深く組み込まれているかを考えれば納得がいく。Watchはまさに、Fitness+エクスペリエンスの核心部分だ。WatchでFitness+を使うと、いつものように収集されたさまざまな測定値が、トレーニング中にリアルタイムで画面に表示される。すぐに使える主な情報として、アクティビティの進行状況と心拍数がある。心拍数は特に、多くの人にとって重要な情報のようだ。また、インターバルの合間に心拍数の増減を確認できるのもすばらしい。

画像クレジット:Apple

正直なところ、Apple WatchがFitness+エクスペリエンスに組み込まれていることは、Watchがトレーニングの開始ボタンと終了ボタンを兼ねていることも含め、このサービス全体で最もよく考えられた部分ではないかと思う。また、一日の終わりにトレーニング内容をうまく要約してくれるところもよい。ただ、アップルが認めるかはともかく、手首に装着するモニターが全身運動の際にうまく機能するかどうかという点については、実際に使ってみないと分からないというのが本当のところだ。

通常の使用時に、端末が、トレーニングを開始しますか、とか、トレーニングの種類を確認しますか、と聞いてくる最大の理由もそこにある。こうした製品で利用できる最新のセンサー技術をもってしても、体の動きを測定する際の精度には限界がある。一方、Watchを装着した状態で、事前に選択したFitness+のトレーニングを行っている場合、システムはトレーニングの全体状況をより正確に把握することができる。収集されたデータは「Burn Bar」にも集計され、同じ運動をした他の人と比較したときの自分の大体の順位が表示される(筆者はいつも真ん中あたりだった)。他の人と競争する気分ではないときは、この機能はオフにできる。

その上、Fitness+にはゲーミフィケーションの妨げとなる要素はほとんどない。アップルが厳選したトレーナーたちが目の前で一緒に運動してくれることは、「(Watchの)リングを完成させる」ための大きな励みになる。ユーザーを圧倒することなくモチベーションを与えるというバランスを取るのは難しい。どちらか一方に偏ってしまうと、ユーザーを失う危険がある。アップルはこのバランスをうまく取っていると思う。例えば、Fitness+のビデオには大抵3人のトレーナーが登場するが、それぞれ異なるレベルの運動強度を示してくれるので参考になる。

ただし、アップルは、対面のフィットネス教室やペロトンのようなライブのストリーム配信と比較して、1つ重要な点で劣っている。それは即時のフィードバックだ。アップルは、「オンデマンド」方式で、ユーザーに自分のペースでコースを完了してもらうアプローチを取っている。しかし、実際には即時フィードバック方式とオンデマンド方式を組み合わせるほうが、より理想的だろう。もちろんアップルには、両方を行うためのリソースがある。しかし、リアルタイムでバイオフィードバックを返してくれるライブストリーミング方式を選択するユーザーのほうがかなり多い。

これは筆者の推測だが、アップルはおそらく、いつかの時点でライブのフィットネス教室をサービスに追加してくるのではないかと思う。予約制にして、必ず出席しなければならないと感じさせることには価値がある。それから、Fitness+のすべてのトレーナーが「いいですよ。その調子!」と励ましてくれるのだが、これは、お芝居だ。実際には、数週間とは言わないまでも数日前に録画されたビデオでスタジオのカメラに向かってしゃべっているわけで、

ライブでない限り、ユーザーがどんな調子かなんて分かるはずもないのだ。

用意されているエクササイズは多様性に富んでいる。筆者は大抵、CoreとHIIT(high intensity interval training:高強度インターバルトレーニング)を交互にやっていた。ただ、いろいろなエクササイズが目に入ってきたので、いくつか新しいものも試してみた。その結果、自分は基本的にどんな形であれダンスはやはり嫌いということが分かったのだが、たまにやってみるのも悪くはないだろう。筆者にとって最大の制約は、器具である(これは、これまでに触れた点よりも大きい制約だ)。

筆者はエアロバイクやトレッドミルは持っていない。ケトルベルは持っているが、すべての重量が揃っているわけではない。ヨガマットは持っている。おそらく最も一般的な器具はヨガマットだろう。正直、Fitness+を試してみるつもりなら、25ドル(約2500円)でヨガマットを買うくらいはしてもいいと思う。ヨガマットなら、Fitness+を解約した後も使える。ビデオ画面下部に必要な器具についての簡単な説明が表示される。器具が必要なワークアウトが結構あることを考えると、必要な器具でビデオを簡単に絞り込めるようにすると便利だと思う。

エクササイズ音楽についても同じだ。アップルは選曲についてはかなり自信を持っているようだ(トレーナーも、選曲について語るように指示されている感じがする)。実際、各コースには、そのコースで使用している曲がApple Musicのプレイリストとして含まれている(これがAppleエコシステムの強みだ)。筆者は、音楽の選択は、フィットネスと同じくらい個人の好みの問題だと思っているので、お察しのとおり、個人的にはAppleの選曲はあまり好きではないが、皆さんも同意見だとは思っていない。

トレーナーとエクササイズによって例外はあるが、筆者のワークアウト中にかかった曲は、ジムでもよく使われていると思われる、アメリカのヒットチャート上位40曲に入っているやたらにテンションの高いくだらない曲がほとんどだった。そうした曲が好きなら結構だが、そうでないなら、数は少ないが別のエクササイズを探すことになる。音楽をオフにするオプションか、自分の好みの曲に変更するオプションを追加してくれれば、個人的には嬉しい。エクササイズの種類を選択した上で音楽のジャンルを絞り込むことはできるが、そうすると当然、ワークアウトの選択幅が狭くなってしまう。

コースを完了すると、隅に小さなチェックマークが表示される。このチェックマークはずっと付いたままなので、お気に入りのワークアウトを見つけたときには便利だが、アプリがもっと動的に過去データを処理して、過去に完了したワークアウトを簡単に参照できるようになれば便利だと思う。繰り返すが、筆者は3日ほどかけてワークアウトを6つほど完了しただけだ。アプリは使い込むほど、その人に合わせてカスタマイズされていく。筆者の場合は、まだまだ使い込みが足りないだけなのだろう。

画像クレジット:Apple

全体的な出来栄えはApple製品らしく洗練されており、トレーナーは、最初の挨拶や「さようなら」などの手話をいくつか使っていた(字幕も表示される)。アップルは製品の価値を高め、多様なトレーナーグループを揃えるために開発費用を投じたようだ。もちろん、YouTubeで無作為にエクササイズ動画を探すよりも、一貫したクオリティが得られることは確かだ。

しかし、これで月10ドル(年80ドル)の価値があるだろうか。筆者がここで迷ったのは、サブスクリプション経済が拡大を続け、月額料金を取るサービスが際限なく積み上がっている中、また1つサブスクサービスが増えることになると感じたからだ。当然だが、ジムよりはかなり安い。だが、アップルの場合、器具は自分で用意しなければならない。また、Watchがフィットネス教室の対面フィードバックの代わりになることはないし、フィットネス用の全身ミラーと同じサービスを提供することすらもできない。

冒頭に書いたとおり、筆者はこのアプリをしばらく使ってみるつもりだ。ジム通いにはまだ二の足を踏んでしまうし、そもそも他人の前でワークアウトすることが嫌いなのだ。幸運にも筆者の部屋は1階なので、最近筆者が部屋の中で跳び回っていることなど近所の住人は誰も気づいていない(ペットのうさぎは面白がっているようだが)。

米国では、間違いなく、あと4、5か月はパンデミックに対応しなければならないようだ。アップルにとっては、この期間は新しいサービスの新規登録ユーザーを獲得する絶好の機会だ。筆者にとっては、iPadの前でスクワットをする時間が十分に確保できるということになる。東海岸にはもうすぐ厳しい寒さがやってくることを考えるとなおさらだ。多分、数週間後あるいは数か月後にはトレーニングの効果をご報告できるだろう。そのときには、パンデミックも収まって、もっと気楽に自分の書いた記事を正式なレビューと呼べるようになっているかもしれない。

現時点で書けるのは、まぁ、こんなところだ。

関連記事:アップルが米国時間12月14日からフィットネスサブスク「Apple Fitness+」を提供、日本は未定

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タグ:Apple Fitness+ Apple

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(翻訳:Dragonfly)

TikTokの親会社ByteDanceがAI創薬チームを採用開始、多角化を目指しヘルスケア産業へ参入

TikTok(ティックトック)の親会社であるByteDanceは、広告やライブストリーミング販売に依存する事業の多角化を目指して、ヘルスケア産業へ参入する。コンテンツアルゴリズムを得意とする同社はマウンテンビュー、上海、北京全域でAI創薬の人材募集を開始したことが、同社の求人ページにて明かされた

求人情報には「弊社のチームに参加し、AIアルゴリズムを駆使した創薬と製造の最先端研究を行う人材を募集しています」と書かれている。

この創薬チームはインターンを含む少なくとも5つの職種で募集をしており、同チームはByteDance AI Lab所属する。AIに特化した研究開発部門はTikTokの中国版であるDouyinのように、ByteDanceのコンテンツサービスを提供するために2016年に設立されたが、ショート動画に応用される機械学習技術から恩恵を受けることができるため、医薬品にその範囲を広げたのは驚くことではない。

ByteDance AI Labのウェブサイトには、「AIの研究分野の数を考えると、これらの新技術の応用範囲は当社の製品ポートフォリオのあらゆる分野で見ることができる」と説明されている。

5つの創薬研究職はすべてコンピュータサイエンス、数学、計算生物学、計算化学などの関連分野の博士号を求めている。求人情報によると応募者はデザイン、識別、シミュレーションなどの創薬開発に携わることになるという。

この件に関するByteDanceからのコメントは得られていない。

他の中国の大手テクノロジー企業も、同様の動きをヘルスケア分野で見せているる。Tencent(テンセント)のAIを活用した薬剤チームは、同社のAI Labの下で少なくとも2019年8月以来、積極的に研究結果を発表してきた。Baidu(バイドゥ)は、創薬とAIを活用した診断に焦点を当てた新しいバイオテクノロジースタートアップのために20億ドル(約2070億円)を調達する計画だと、Reutersが9月に報じている。Huawei(ファーウェイ)もクラウドコンピューティング部門を通じて、創薬や医療画像の分野にも取り組んできた。

関連記事:TikTok事業売却を控えByteDanceの評価額に強い下げ圧力

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タグ:ByteDance創薬

画像クレジット:Mattza / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

社員健康管理システムのReturnSafeが3.4億円調達、新型コロナで需要急増

ReturnSafeは社員の症状調査と接触追跡を行う健康管理ツールキットを企業向けに提供している会社だ。このほど325万ドル(約3億4000万円)の資金をFifty Years、Active Capitalなどの投資家からの借り入れによって調達した。

事業を再開し、社員が職場に安全に戻れる方法を探る企業が増す中、社員の健康を追跡するさまざまな管理ツールキット製品が、安全な職場環境を維持するためのあらゆる戦略を提供して市場に殺到している。

その中には、WorkSafeの製品やMicrosoft(マイクロソフト)とUnitedHealthが提供するProtectWellのほかNSpaceは、同様の機能に加えてオフィスの予約を安全に行うためのスケジュール機能も提供している。

そんな中、ReturnSafeは6カ月前の開業以来、毎月6ケタ(数十万ドル)の収益を上げ、50以上の組織にサービスを提供している。

投資家や顧客に向けての謳い文句は、社員を管理し、職場の健康リスクを確実になくしたいというニーズは、新型コロナウイルスの流行以降高まるばかりだということだ。

もちろん、雇用者が社員の安全と安心を確実に守る最善の方法は、社員が病気のときに適切な休暇を与え、リモートワークが不可能な場合には全員が適切な頻度で検査を受けられるようにすることだ。

競合他社と同じく、ReturenSafeは症状検査システム、検査ダッシュボード、症例管理ダッシュボード、新たなワクチン管理サービスなどを提供している。こうしたソフトウェアツールに加えて、ソーシャルディスタンスアラームを内蔵したウェアラブルデバイスによって社員同士が安全な距離を保てるしくも提供していることをReturnSafeは強調している。

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タグ:ReturnSafe新型コロナウイルス資金調達

画像クレジット:Al Seib / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米大麻業界回復でラッパーのスヌープ・ドッグの投資ファンドCasa Verde Capitalが103億円調達

米証券取引委員会(SEC)に提出された書類によると、Calvin Broadus(カルビン・ブローダス)としても知られる大麻通のラッパーであるSnoop Dogg(スヌープ・ドッグ)が共同設立した投資ファンドであるCasa Verde Capitalが、第2の投資ファンドのために1億ドル(約103億円)を調達した。

同ファンドのマネージングディレクターであるKaran Wadhera(カラン・ワデラ)氏はこの記事へのコメントを控えたが、大麻関連製品市場が再び拡大期を迎えているように見える中、資金調達に成功した。

「大麻業界に対する一般の認識は、90年後半のドットコム・バブルと似ていないわけではありません。このバブルでは、誇大な宣伝がたくさん行われましたが、その多くは上場企業によって推進されました。また、多くの投機的な取引や評価は、実際には確立されていませんでした。(私たちが話しているのは)将来の予測と、その上での収益がクレイジーにも何倍にもなるということです」と、ワデラ氏は7月にTechCrunchと話した際、最後の破産について語った。「物事がバブルだらけになり、最終的には破裂しました。2019年4月か5月がその頂点でした。状況が悪化し始めたのはそのときです」。

それ以来、再び業界は活気づき始めている。

「新型コロナウイルスが蔓延してから4カ月以上経った現在、大麻は非循環型産業であることが証明されました。大麻は全米で重要なビジネスとみなされています。3月、4月、5月に記録的な売り上げを記録し、その傾向は続いています」とワデラ氏は7月に述べている。「政府が新たな税収源を求めている中、大麻合法化の潜在的な緊急性は業界にとって非常にポジティブなものになるでしょう」。

新しいベンチャーキャピタルファンドの目標は明らかにされていないが、新たな資金調達により、Casa Verdeは当初の投資ビークルの2倍以上の規模になった

ブロードス氏、ワデラ氏そして第3のパートナーであり、Cashmere AgencyとStampede Management Ted Chungの創設者でもあるTed Chung(テッド・チョン)氏が2018年にデビューファンドを立ち上げて以来、大麻ビジネスはブームと不況というジェットコースターのようなビジネスサイクルに耐えてきた。

こうした市場の気まぐれさにもかかわらず、Casa Verdeは現在、少なくとも2億ドル(約207億円)相当のポートフォリオを構築することに成功したと、同社に詳しい関係者は述べている。その資金はフラッグシップファンドとともに調達された、いくつかの特別目的会社や、その他の資金調達メカニズムを通じてもたらされている。

投資銀行のCowenから入手したアナリストレポートによると、大麻とカンナビノイド誘導体の市場規模は2025年までに340億ドル(約3兆5135億円)に達する見込みだ。

アリゾナ州、モンタナ州、ニュージャージー州、サウスダコタ州では、いずれも成人向け大麻の合法化法案が可決されており、Cowenの予測では、市場全体で約30%の成長が見込まれている。

Casa Verdeは、大麻とその化合物が獲得できる潜在的な市場について常に広い視野で見てきた。

同社による最近の睡眠企業Properへの投資以上に注目されているものはない。

「(大麻)はインプットであり、その使用例は、人々が大麻が汚名を着せられている方法を超えています」とワデラ氏は述べた。「Properは睡眠の流行をターゲットにした支援を行っている企業です。CBD(カンナビジオール)や大麻全般は、従来の製品では実現できなかった方法で、この問題に対処する際の大きな役割を果たせると考えています」。

ワデラ氏は過去に、睡眠に関していえることは、他のさまざまなアプリケーションにも当てはまると述べている。

Casa Verdeはすでに、デリバリー、サプライチェーン・ロジスティクス、ブランド、小売に至るまで大麻に特化した事業機会に対し多額の投資を行っている。

しかし、カンナビノイドがあらゆる種類の病気に対して持つ健康上の利点は、はるかに大きな市場を切り開くことになり、議会が米国の有権者の60%以上からの要望に応じて、レクリエーション用大麻の全国的な使用を合法化すれば、幅広い消費者機会を得ることができる。

そして、7月にワデラが語ったように、バイデン政権は、以前のトランプ政権よりもはるかにポジティブな規制環境を業界にもたらす可能性がある。

「バイデンはとても助けになると思います。彼は彼が望む多くのことを述べていて、それを全面的な合法化とまでは考えていないが、確実に全面的な非犯罪化に賛成している。(これは)州が自分たちのビジネスに何が起こるかについて完全な権限を持つようにすることと、現在のスケジュール1レベルから大麻のスケジュール変更をすることを意味する」とワデラ氏は述べている。「そのため、すべてのことは信じられないほど有益であり、より多くのプレーヤーがこの分野に対して潜在的に安心して投資し、いくつかのビジネスを買収してくれるだろう」。

関連記事:ラッパーのスヌープ・ドッグの大麻産業向け投資会社がProperを支援、睡眠産業に参入

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タグ:Snoop DoggCasa Verde Capital大麻資金調達

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(翻訳:TechCrunch Japan)

健康保険が適用可能な夜間・休日の往診サービス「コールドクター」が2億円調達、提供エリア拡大

健康保険が適用可能な夜間・休日の往診サービス「コールドクター」が2億円調達、提供エリア拡大

夜間・休日の往診サービス「コールドクター」(Android版iOS版)を運営するコールドクターは12月22日、第三者割当増資による総額2億円の資金調達を発表した。引受先はサイバーエージェント、XTech Venturesなど。

調達した資金により、東京・神奈川・福岡・佐賀に続くサービス提供エリアの拡大、新型コロナウイルスで利用者が増える中での安定した事業基盤の強化、採用強化などに取り組み、サービスの向上を目指す。

コールドクターは、健康保険が適用可能な夜間・休日の往診サービス。アプリで簡単に予約、最短30分で自宅に医師が診察に訪問し、その場で薬を渡す。医療機関との連携により約100名の医師が登録しており、急な体調不良時にも安心して相談できるとしている。

新型コロナウイルスの第三波の影響が広がる中、「病院での二次感染が心配」「外出もできるだけ控えたい」「もしかしてコロナでは?」といった新型コロナウイルスに関連した心配をされる方も増えており、コールドクターへの診察依頼件数も増加傾向にあるという。

健康保険が適用可能な夜間・休日の往診サービス「コールドクター」が2億円調達、提供エリア拡大

診察の流れ

  1. 診察予約の申し込み
  2. 医師が自宅へ訪問(医師の判断により、自宅に訪問せず直接医療機関を紹介する場合もある)
  3. 自宅で診察
  4. その場で薬をお渡し
  5. 後日郵送にて請求(NP後払い:コンビニ払い・銀行振込が選択可能)

診察エリア

  • 東京都:23区、武蔵野市、三鷹市、西東京市、稲城市
  • 神奈川県:川崎市(全区)、横浜市(青葉区/都筑区/港北区/鶴見区/神奈川区/緑区/旭区/保土ケ谷区/西区/中区)
  • 福岡県:福岡市(東区/博多区/中央区/南区/城南区/西区/早良区)、小郡市、春日市、大野城市、那珂川市、糟屋郡(志免町/須惠町/新宮町/粕屋町/宇美町/篠栗町/久山町)、久留米市、飯塚市、八女市、筑紫野市、古賀市、宮若市、朝倉市、糸島市、朝倉郡(筑前町)、三井郡(大刀洗町)、八女郡(広川町)
  • 佐賀県:鳥栖市、三養基郡(基山町/上峰町/みやき町)、神埼市、神埼郡(吉野ヶ里町)

コールドクターは、受診できる医療機関が限られている・診察まで長時間待たされてしまう・受診を断られてしまうこともある、といった夜間休日の診療を取り巻く課題を解決する医療サービスを目指している。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による新しい生活様式に適合した医療サービスとしてコールドクターを社会に根付かせることで、医療崩壊の回避に貢献できると確信している。

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タグ:コールドクター資金調達(用語)新型コロナウイルス(用語)日本(国・地域)

新型コロナで絶好調のPelotonが業務用フィットネスマシンメーカーPrecorを434億円で買収へ

Peloton(ペロトン)は世界最大の業務用フィットネスマシンサプライヤーの1社であるPrecor(プリコー)を買収する意向を発表した(Pelotonリリース)。もしあなたがホテルや商業ジムで過ごしたことがあるのなら、Precorブランドを知っているはずだ。だからこそ、特殊な時期にあってホットになっている在宅ワークアウトブランドがPrecorを買収するのはかなり理に適っている。

Precor買収は、同社のバリュエーションを4億2000万ドル(約434億円)とするディールとして進められる。買収によって商業事業の拡大に加え、トレッドミルやバイクといったハードウェアに対する需要が新型コロナパンデミックのために、かつてなく大きくなっているまさにこの時に製造能力アップを図れる。Precorは米国ですでにかなりの製造オペレーション、専門のR&Dチーム、施設を展開している。Pelotonは、買収によってPrecorのノースカロライナ州ウィットセットとワシントン州ウッディンビルにある製造施設の計62万5000平方フィート(約5万8000平方メートル)が加わることになる、とプレスリリースで述べている。

承認が得られれば2021年にクローズする見込みであるこの買収は、短期的には顧客へのマシーン配達のスピードアップに役立ち、長期的には業務用マーケットが成長路線に戻ったときにPelotonが同マーケットでシェア拡大を図るのに貢献する。Pelotonの在宅用マシーンとフィットネスサブスクサービスがパンデミックの恩恵を受けたのは明らかだが、その一方でジムのチェーンやホテル経営は壊滅的なダメージを受けた。つまりこれはPrecorの主要事業が過去数カ月、大打撃を受けていることを意味する。

今回の買収はPelotonにとって過去最大となるが、比較的お買い得価格でPrecorを手に入れることは可能だ。PrecorのオーナーであるAnta Sports(アンタスポーツ)は約5億ドル(約517億円)でのPrecor売却を模索していると2020年11月に報道されていた。Pelotonは買収の一環として、Precorの会長Rob Barker(ロブ・バーカー)氏を業務部門のゼネラルマネジャーとして迎える。これは、人々がパンデミック後にジムに戻るようになったときに世界中の商業ジムへのコネクテッドマシーン浸透を加速させるのに大きな助けとなるはずだ。

関連記事:Pelotonがエクササイズバイク上位モデルBike+とトレッドミルTreadを発売、価格はいずれも約26万円

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Peloton買収

画像クレジット:Peloton

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(翻訳:Mizoguchi

遠隔メンタルヘルスケアのLyra Healthが約180億円調達、新型コロナを背景に急成長

新型コロナウイルスの大流行は、世界中で精神衛生上の危機を強め、しばしば悪化させている。リモートワークの普及もその問題の一端を担っている。誰もが自宅に籠もり、人との交流がなく、オフィスでウォータークーラーの周りに集まっておしゃべりすることもできなくなった。

この問題の解決策が求められていることから、需要が高まったテック系メンタルヘルス・ソリューションは多くの資金を集めている。最近の例では、企業の従業員に遠隔メンタルヘルス・ケアを提供するLyra Healthが、22億5000万ドル(約23.2億円)の評価額で1億7500万ドル(約180億円)のシリーズEを調達するための書類を提出したことがわかった。

この書類の内容はPrime Unicorn Indexによって明らかになった。同社がラウンドを終えたかどうかは不明だが、デラウェア州での書類提出は通常、資金調達の一部または全部が確保された後に行われる。Prime Unicorn Indexは、このシリーズEラウンドを取り巻く条件には、「他のすべての優先株式とのパリパス残余財産優先分配権が含まれ、剰余金がある場合は普通株式に参加しない非参加型優先株式」であることに注目。また、Lyra Healthの直近の1株当たりの価格は27.47ドル(約2838円)であり、14.21ドル(1468円)で取引されたシリーズDからのアップラウンドであることにも言及している。

TechCrunchはLyra Healthと投資家に、この書類に対する回答を求めて連絡を取っている。ある投資家は、ラウンドはまだ終了していないと指摘している。

同社の過去の出資者には、Adams Street Partners、Tenaya Capital、Meritech Capital Partners、IVP、Greylockなどが含まれる。

我々は今、最も有望なスタートアップ企業のために、急速に成長するラウンドが連続して調達されている時期にいるようだ。1億ドル(約103.3億円)の資金調達からわずか6ヶ月後に1億ドルのラウンドを確認した(未訳記事)Discordと同様に、Lyra Healthも最近、シリーズDで1億1000万ドル(約113.7億円)の資金調達(Crunchbase News記事)を行い、評価額が10億ドル(約1033億円)を超えた。

これは事実上、このスタートアップがわずか数カ月で評価額を倍増させたことを意味し、急速な成長または重要な検証を示唆している。Forbes(フォーブス)が報じているように(Forbs記事)、Lyra Healthはその前の資金調達の時点で、今年中に約1億ドルの収益をもたらすことが予期されていた。

新型コロナウイルスが大流行している間に、多くのテクノロジーのカテゴリがその使用法で関心を集めた。そして悲しいことに、あるいは見方によってはありがたいことに、この試練の時に我々のウェルビーイング(良好な状態)を支援することを目的とした、メンタルヘルスとウェルネスのスタートアップも、それらの1つだ。瞑想アプリの「Calm(カーム)」が20億ドル(約2066億円)の評価で7500万ドル(約77.5億円)を調達したのは、ちょうど先週のことだ。

カリフォルニア州バーリンガムに拠点を置くLyra Healthは、どこのオフィスでも役に立ちたいと思っている。この会社は、企業が従業員のメンタルヘルスに必要な安全で信頼のおける高い一連のツールを、従業員に提供することを支援する。メンタルヘルスが職場でタブー視され、従業員が雇用主にサポートを求めるのは気が引けるかもしれないことを考えれば、これは難しい分野だ。それでも、オフィス内で人と触れあうことがもはやできなくなっている現在の世界においては、メンタルヘルスはスタートアップの成長を助ける重要な投資となり得るだろう。

契約企業のメンタルに悩みを抱えた従業員に対し、Lyraはまず調査に基づいて一連の推奨事項を作成する。その後、同社は患者を何千人ものセラピストのネットワークにつなぎ、患者は遠隔で予約、相談、および診察を受けることができる。

パンデミックの間、Lyra Healthは8万人の新規ユーザーを獲得し、直近の発表ではユーザー数が合計で150万人に達したという。

新型コロナウイルスの感染拡大が遠隔医療の急増(米国疾病予防管理センターの発表)につながったように、テクノロジーを使ったメンタルヘルスケアは需要が増えている。対面診察は患者にとって感染リスクを招くからだ。実際に、Lyra Healthでは「Lyra Blended Care」を開始した。これは、ビデオ療法とオンラインレッスンや認知行動療法に根ざしたエクササイズを組み合わせたものだ。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:遠隔医療、資金調達、メンタルヘルス

画像クレジット:Varijanta / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

新型コロナ検査の高速・高信頼化でポーランドのバイオテクノロジー企業GeneMeが6.6億円調達

ポーランドで新型コロナウイルス(COVID-19)検査を提供しているバイオテクノロジー企業のGeneMeが、Robin Tombs(ロビン・トムズ)氏がリードするシードラウンドで520万ユーロ(約6億6000万円)を調達した。トムズ氏はYotiの共同創業者で、以前はGamesysの共同創業者だった。この投資には、そのほかのエンジェル投資家たちも参加した。

同社はRT-LAMP検査のためのユニバーサルプロテイン(ポリメラーゼ)を開発して特許を取得している。これにより、極めて正確で迅速な分子遺伝学的新型コロナウイルス検査を可能にしている。これには3つの分子核酸増幅新型コロナウイルス検査であるFRANKD、SAVDおよびICEDがある。FRANKDはヨーロッパのCE IVD認可およびFDA(米食品医薬品局)のEUA(緊急時使用認可)を適用され、そのソリューションはすでに20か国以上で利用されている。FRANKDは、スコットランド政府による公的な研究で発見され、現在の市場では最も正確で迅速な新型コロナ検査とされている。FRANKDのソリューションはすでに、ヒースロー空港やVirgin Atlantic、テレビ番組「Britain’s Got Talent(ブリテンズ・ゴット・タレント)」などで使用された。

「私たちは健康の問題だけでなく、才能やスポーツの能力、学習障害、カフェインの代謝能力などなど、遺伝的資質にも関心がある。将来的には、誰もが自宅で遺伝子分析をできるようになるだろう」とGeneMeのCEOであるDawid Nidzworski(ダウィド・ニツヴォルスキー)氏と語る。

Yotiの共同創業者であるロビン・トムズ氏は「GeneMeの革新的なアプローチは今後何年にもわたり、高度にディスラプティブであり続け、ますます多くの検査が診療現場で行えるようになり、しかも低コストになるだろう」という投資家としての見解を出している

GeneMeは、独立のバイオメディカル研究機関であるBiotechnology and Molecular Medicineからのスピンアウトだ。

最近同社は、米国のBIOLYPHとのパートナーシップを発表した。後者は凍結乾燥サービスの世界的リーダーで、FRANKDとSAVDを大幅にスケールアップした。

GeneMeが特許を取った技術は、標準の検査機関ベースのRT-PCR検査に比べて、検査手続きの全体を単純化している。RT-LAMP検査はより効果的であり、結果の信頼性が高い。またGeneMeの検査技術は診療現場で実施でき、それにより高度に正確な検査を被検者の職場でできたり、国境などスループットの非常に高いところでも検査できる。

新型コロナウイルス診断のグローバルな市場は2020年で844億ドル(約8兆7200億円)と推計され、2021年から2027年までの年平均成長率は、Grand View Researchによると3.1%と予想されている。

関連記事:オフィスの新型コロナ対策を支援する空気品質監視プラットフォームのOpenSensorsが4.1億円調達

カテゴリー:ヘルステック
タグ:GeneMe新型コロナウイルスCOVID-19資金調達

画像クレジット:GeneMe FRANKD-Test

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

オフィスの新型コロナ対策を支援する空気品質監視プラットフォームのOpenSensorsが4.1億円調達

米国時間12月16日、2013年2月に小学校女子学童に起きた喘息発作は大気汚染が原因であったと英国の裁判所が裁定した(The Guardian記事)。これはこの種の裁定として世界初だと思われる。Ella Kissi-Debrah(エラ・キッシ-デブラ)さんが亡くなったわずか1年後、別の母親も自分の娘の喘息に対する空気汚染の影響を心配し、何か行動すべきだと決断した。

そして本日、Yodit Stanton(ヨディット・スタントン)氏は彼女の空気品質監視のスタートアップであるOpenSensorsのシード資金400万ドル(約4億1000万円)を、Crane Venture Partnersほか匿名投資家によるシードラウンドで調達した。当初このスタートアップは、顧客から得た売上による自己資金で設立された。

OpenSensorsは、センサーを使って空気品質と光強度を監視する。しかしそのデータプラットフォームは特別だ。同社のテクノロジーは職場と労働者の環境とパターンを明らかにすることを目的としている。競合にはCondeccoやWorkplace Fabricらがいるが、同社のアプローチの方が「全方位」だ。

現在複合施設をもつ30社以上の顧客が北米、アイルランド、英国およびヨーロッパにいる。業界は保険、金融、テクノロジーなどだ。

画像クレジット:OpenSensors

建物の費用は企業にとって2番目に大きい出費であり、英国の事務所コストは年間200億ポンド(約2兆8000億円)に上るが、スペースの半分は、通常のパンデミック以前の時期でさえ、一日中使われることがなく、利用率はピーク時でも55%にすぎない。また建物は全世界エネルギー利用の36%、二酸化炭素排出量の39%を占めている。OpenSensorsは湿度、二酸化炭素濃度なども測定してウイルス感染を減少させる最適環境へと導くことで、企業が社員と職場の安全を取り戻す手助けをする。

「私たちの仕事や生活のやり方は、誰もが想像できなかった速さで変わっています。いまは持続可能性を考えながら実世界をどのように使っていくのかを考え直し、職場をそこで働く人たちにとってよりよくするための、人類最大のチャンスが訪れています」とスタントン氏は語る。

Crane Venture PartnersのパートナーであるScott Sage(スコット・セージ)氏は「データに基づく予測、実世界における利用状況、および既存顧客の実績をもつOpenSensorshは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)環境下の信頼できるアドバイザーとソリューション提供者であるとともに、新型コロナの蔓延が加速した柔軟な働き方への転換を支援する会社です」と語っている。

スタントン氏は英国の Women In Dataイベントの設立と運営も行なっており、TechCrunchだけにこう話した。「当初は楽しい趣味のプロジェクトとして始まりました。私はIoTをいじっていて、娘が喘息なので近隣の大気品質を測定して、特定の変化が娘の発作と相関があるかどうかを調べてました。しかし、ビルディングを管理できるかとみんなから聞かれるようになった時、本物になったと思いました」。

彼女は、湿度の低下はウイルス伝染を促すという。「だから室内環境では湿度40%前後を保つべきであり、乾燥した空気は人間の免疫システムにも悪影響を与えます」。

これは、空気品質の管理が企業にとって重大問題になったことを意味している。だから、VCがOpenSensorsのような空気品質スタートアップを支援し始めたことは驚きではない。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:OpenSensors資金調達空気監視

画像クレジット:OpenSensors

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ChiliSleepの親会社が約38億円を調達しEbb Therapeuticsと合併

ChiliSleepブランド製品を提供するKryo(クライオ)は、別の睡眠テクノロジー企業Ebb Therapeutics(エブ・セラピュティクス)と合併し、Ebbの最大の支援者であるKKRから3700万ドル(約38億円)の新たな投資を獲得したと発表した。

2007年に創設されたKryo/ChiliSleepの製品には、ベッドの温度をコントロールして睡眠の質を高めるデバイスchiliPAD(チリパッド)などがある。共同創設者でCEOのTara Yougblood(タラ・ヤングブラッド)氏は、同社は常に「温度調節で睡眠を変える」ことに注力してきたが、近ごろではハードウェアを介さなくとも消費者にリーチできる「ソフトウェアに飢えている」と私に話してくれた。

一方、Ebbは、冷えるヘッドバンドを作っているが、これもやはり消費者の睡眠の質を高めるためのものだ。ヤングブラッド氏は、この2つの企業は「補完的アプローチ」で結ばれ、合弁によって特許を合体して強力なポートフォリオになると話している。

またヤングブラッド氏は、今後の経営はKryoの下に統合されるが、Ebbの人材が一緒に加わるかは明らかにしなかった。

計画としては、5月にSpeel.meというソフトウェア・プラットフォームを立ち上げる。そこでは睡眠関連のコミュニティー、コンテンツ、コーチング(この最後のひとつは今あるEbbのコーチングサービスをあてにしている)をひとつにまとめ、無料と有料の両方でサービスを提供する。ヤングブラッド氏によれば、同社はChiliSleep製品の販売はこのまま継続するという。その後、Kryoの広報担当者は、Ebbのブランドをどうするかは未定だと話していた。

KryoのCEO、タラ・ヤングブラッド氏

ヤングブラッド氏は、睡眠関連製品がこの数年で爆発的に増えていることをよく理解している。むしろ彼女が、人の健康にとって睡眠が重要であるとする研究が増え、意識が高まってきた要因でもある。

「私たちのプラットフォームが他と本当に違う点は、個人と話をすること」であり、個々に適したアドバイスをすることだと彼女は言う。「温度調節がパーソナライズされたアプローチに含まれることもあり、含まれないこともあります」

ヤングブラッド氏はまた、ChiliSleepには医療諮問委員会があることも話していた。同委員会には、アリゾナ大学のMichael Grandner(マイケル・グランドナー)博士、Chris Winter (クリス・ウィンター)博士、Kelly Starret(ケリー・スターレット)博士も参加している。

「不眠症と睡眠関連の問題は、残念ながら増加傾向にあります。しかし、幸いなことに効果的な対処法もあります」とKKR Health Care Strategic Growth(KKRヘルスケア・ストラテジック・グロウス)のグローバルヘッドAli Sarvat(アリ・サトバット)氏は声明の中で述べている。「私たちはChiliSleepとEbbが合弁して市場にイノベーションをもたらし、睡眠の質を向上させたい人たちの、今まで満たされてこなかった需要に対応できることを、大変に嬉しく思っています」

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(翻訳:金井哲夫)

アマゾンのボディスキャンもできるフィットネスバンド「Halo」が米国で販売開始

これまでにAmazon(アマゾン)が受け取ったさまざまなフィードバックを考えると、Haloが今日まで広く入手できなかったことがにわかには信じられない。2020年8月末に発表された同製品は、招待されたユーザー向けに「早期提供」された。しかし、それが変わる。米国時間12月14日、Haloは米国の誰もが入手できるようになる。

バンドの価格は100ドル(約1万400円)で、6カ月間のメンバーシップがついてくる。おそらくこの企業にとってフィットネス製品を出すことは不可避だったのだろうが、アマゾンは、フォームファクターに関しては、立ち遅れている。フィットネストラッキングのハイエンドではスマートウォッチが支配的存在となっている。バンドはその対極にある市場で存在感を保っているが、自由になるコストはほんの何分の一かだ。

Haloを際立たせているのは、ボイスインターフェイスと記録・処理できるデータの量だ。正直なところ、どちらも驚きではない。アマゾンだから。前者は、使用者の声のトーンを処理する機能を含んでおり、フィードバックはさまざまだ。アマゾンはその点についてこう説明している。

声のトーン分析は、利用者が家族や友だち、同僚からお気に入りのフードトラックの主人やその中間まで、誰とでも心のこもった会話をするのに役立ちます。

体脂肪測定にはさらに大きな疑問符がつけられている。早期のレビューはこのテクノロジーを「侵略的」と評した。立法府からも監視の目が向けられた。Amy Klobuchar(エイミー・クロブシャー)上院議員は米国保健福祉省にレターを送っている。

「この新しいウェフラブルフィットネスデバイスは、人々が自身の健康を容易にモニターできるようにする一方で、企業が個人のプライベートデータを十分な監視もないまま、かつてないほど利用できる機会を与えています」とクロブシャー氏は述べている。「健康に関わる消費者デバイスのプライバシーとセキュリティを守るために、まだするべきことがあります」。

アマゾンはプライバシーの懸念について積極的に反論し、特にボディスキャンは測定したデバイスの中だけに存在することを強調した。「プライバシーは私たちがAmazon Haloを設計、開発する上で基礎をなすものです」と広報担当者がThe Washington Postに話している。「ボディと声のトーンはどちらもオプション機能であり、本製品の利用に必須ではありません」。

アマゾンは消費者のプライバシー保護と飽和状態の市場で自社製品を差別化する、という二重の困難に直面している。

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タグ:AmazonAmazon Halo Band

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

低所得層に医療を提供するCityblock Healthの企業価値が1000億円超に

Cityblock Health(シティブロック・ヘルス)は低所得層に医療サービスを提供する会社だ。このほどベンチャーキャピタルから1億600万ドル(約110億円)の資金を獲得したことで、10億ドル(約1040億円)を超える高い会社価値を得た。

ラウンドをリードしたのは新たに出資者となったGeneral Catalystで、ほかにクロスオーバー投資家のWellington Management、Kinnevik AB、Maverick Ventures、Thrive Capital、Redpoint Venturesyらの既存出資者も参加したと、同社の声明に書かれている。

Cityblockは、地域の介護者や住民とともに、プライマリーケア(初期診療)、生活習慣改善などのサービスを提供することで、対面および増えつつあるバーチャル相談を通じて健康の社会的決定要因への取り組みに励んでいる。

同社は2017年にAlphabet(アルファベット)のSidewalk Labs(サイドウォーク・ラボ)のスピンオフとしてスタートし、当初はEmblemHealthとパートナーを組んでいた。主に認定臨床ソーシャルワーカーや地域の医療パートナー、臨床専門医らに頼って基本的プライマリーケアを提供し、医療サービスを支援することで、医療費を低減できるとCityblockは信じている。

米国の4つの主要都市で約7万人の患者がCityblockを利用していると同社はいっている。

Cityblockはこれまでに総額3億ドル(約312億円)の資金を調達した。

声明の中で同社は、新たな資金はCityblockがメディケイドおよび2種類の医療補助資格のある人々の支援をこの国で拡大していくほか、同社の製品、エンジニアリング、データサイエンス、診療、事業運営における人材確保、新規サービス群の開発、および同社の独自技術プラットフォームであるCommonsへの投資継続に使用されると語った。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Cityblock HealthMedicaid資金調達

画像クレジット:Irina_Strelnikova / iStock / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ファイザーの新型コロナワクチンが米FDAから緊急使用許可を取得、数日以内に配布開始

米国食品医薬品局(FDA)は、Pfizer(ファイザー)とそのパートナーであるBioNTechが開発した新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンの緊急使用許可(EUA)を付与したとThe New York Timesが最初に報じ、その後、The Wall Street Journalも続いた。今回の緊急使用許可は、FDAの委託を受けた独立専門家委員会がファイザーの申請を審査し勧告したことを受けたもので、同委員会は今週の初めに全会一致でこれを支持した。

今回の許可後、直ちにワクチンの出荷が始まり、初回分は290万回分となる見込みだ。医療従事者や長期療養施設の高齢者などの患者にはEUAの許可が出てから数日以内にワクチンが届くと予想されている。

この許可は、米国の治療薬規制当局による完全な承認ではない。4万4000人のボランティア参加者を対象にした第III相臨床試験に基づき、ファイザーが提供した情報を包括的に見直す必要がある緊急措置だ。

mRNAをベースとした治療薬であるファイザーのワクチンは、これまでの試験結果を最終的に解析した結果、95%の有効性を示したことがわかっており、ワクチンを接種した患者に重大な安全性の問題はないことも判明している。

最初の290万回分のワクチンに加えて、米国では2020年末までに約2500万回分の配布を行う予定だが、ファイザーのワクチンは最大の効果を得るために2回接種する必要があるため、実際に接種可能な人ははるかに少なくなる可能性がある。同社の生産ペースと米国での注文量を考えると、ほとんどの米国人は2021年第1四半期または第2四半期までワクチンを入手できないと考えるべきだ。

とはいえ、今回の許可は有望な第一歩だ。ファイザーはワクチン候補の研究を始めてから8カ月ほどしか経過しておらず、ワクチン開発期間の短縮という点においては記念碑的な成果だといえるだろう。またModernaはmRNA治療薬(人の細胞に指示を出してウイルスに効果的な対抗策を作り出す)でもあるワクチン候補のEUAも提出している。こちらもすぐに実現する可能性があり、2020年末までには米国内で2種類のワクチンがEUAで接種できるようになるかもしれない。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Pfizer新型コロナウイルスCOVID-19ワクチン

画像クレジット:JUSTIN TALLIS/AFP / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

放射線をブロックするファラデーケージより便利な木綿生地をドレクセル大学が開発

毎日浴びる放射線の量を少なくしたいからといって5Gの陰謀説に与する必要はない。放射線をブロックする方法のひとつがファラデーケージだが、通常は金属メッシュなので毎日使うのは困難だ。ィラデルフィアのDrexel University(ドレクセル大学)の研究者は、一般的の木綿生地にMXene(マキシン)と呼ばれる化合物を滲み込ませることによって、ファラデーファブリックを作ることに成功した。アルミ箔の帽子を愛用している人も、これからは毎日の生活がとても快適になるだろう。

ファラデーケージが有効なのは、一部の金属が高周波をブロックするからだが、波長が長いので金属は剛体でなくてもよい。しっかりしたケージや曲げられるメッシュでよい。測定を妨害されないために、このような素材を壁に張っている建物も少なくないが、しかし最近ではSilent Pocketなどの企業が、デバイスを外部の信号から完全に隔離するバッグやケースに金属のメッシュを組み込んでいる。

でもそれは一種の偏執症に近い。高周波の放射は、我々が日常触れる量と周波数では無害だし、デバイスがその閾値を超えないことをFCCが認定している。可能性としてあるのは、スマートフォンやラップトップをうっかり一般公開のWi-Fiに接続して、そのMAC番号を他のテバイスに読まれたり、良からぬ環境で対話をしたりすることだ。それに率直に言って、今や大量のデバイスが電波を放出しているから用心のために被曝量を少しでも減らしたいと思うのも当然だ。

その用心も、今後はもっと楽にできるだろう。ドレクセル大学ナノ素材研究所の所長Yury Gogotsi(ユーリー・ゴゴッツ)氏と彼のチームは、一般的な織物を金属性の化合物でコーティングしてファラデーケージの効果を得る方法を考案した。柔軟性と耐久性があり、洗濯もできる。

彼らがMXeneと呼ぶその素材は、単一の化合物ではなくて化合物の種類を指し、さまざまタイプと用途がある。ゴゴッツ氏のチームは、マキシンを扱った研究論文をすでに数十件発表しており、これはその最新の応用研究だ。

ゴゴッツ氏はニュースリリースで 「MXeneが電磁波の妨害をブロックすることは前から知っていたが、今回の発見はそれを織物に吸着させてそのユニークな遮断能力を維持できることを示した」。その織物を、このビデオで実際に見ることができる。

MXeneは伝導性のある金属と炭素の化合物で、剛体、液体、噴霧など、いろんな形状にできる。今回は液体で、MXeneの小さな破片の溶液をとても容易に織物に吸着でき、ファラデー効果を作り出して、テストではRF放射の99.9%をブロックした。研究室の引き出しの中などに2年間忘れて放置されても、効果の90%を維持し、MXene処理後の織物は洗ってもこすっても無事だ。

このMXene浸透織物で服を作りたい人はいないかもしれないが、高周波をブロックするポケットをジャケットやジーンズに付けたり、この素材でラップトップバッグを作っても、見た目に違和感はないだろう。もちろん陰謀説の信者たちの間では、この素材で帽子や下着を作ることが流行するだろう。

それらが店頭に並ぶのはまだ先でも、商用化に関してはゴゴッツ氏は楽観的だ。素材と使い方に関しては、ドレクセル大学に複数の特許がある。MXeneを織物に浸すという方法で、衣類にエネルギーの生産と保存をさせることも可能だ。

このようなMXeneの独特の応用については、Carbonに詳しい記事がある。

カテゴリー:ヘルステック
ファラデーケージ、ドレクセル大学、MXene

画像クレジット: Drexel University

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa