グーグルを解雇されたティムニット・ゲブル氏、自らAI研究所「DAIR」を設立

ちょうど1年前、Google(グーグル)のAI倫理チームの共同リーダーの1人であり、このテーマの第1人者であるTimnit Gebru(ティムニット・ゲブル)氏は、チームのメンバーに懸念を示すメールを送った後に解雇された。そのゲブル氏が自ら仕事場を構え、Googleで敬遠されていると感じていた論題に焦点を当てたまったく新しい研究機関「DAIR」を設立した。

関連記事:GoogleのAI倫理研究チームの共同リーダーが部下宛てメールが原因で解雇されたと語る

発表されたプレスリリースによると、この「Distributed Artificial Intelligence Research Institute(分散型人工知能研究所)」は「AIの研究、開発、展開における巨大テクノロジー企業の広範な影響力に対抗するための、独立した、コミュニティに根ざした研究所」であるという。

DAIRは、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)、Facebook / Meta(フェイスブック / メタ)などの企業で使用されているプロセスに疑問を持ち、多様な視点を取り入れ、強調することを目的として設立された機関で、独立資本で運営される。その焦点は、学術的な領域における論文発表に置かれているものの、伝統的な学会の絶え間ないプレッシャーや、グローバル企業のパターナリスティック(父権主義的)な干渉を、研究者に与えることはない。

ゲブル氏はThe Washington Post(ワシントン・ポスト紙)の取材に対し「私は長い間、現在の私たちが置かれているインセンティブ構造に不満を感じていました。そのどれもが私のやりたい仕事には適していないように思えたのです」と語っている。

この研究所は現在までに、Ford Foundation(フォード財団)、MacArthur Foundation(マッカーサー財団)、Kapor Center(ケイパー・センター)、Open Society Foundation(オープンソサエティ財団)などから、370万ドル(約4億2000万円)を調達している。これだけあれば十分に運営を開始できるだけでなく、研究者にも十分な報酬を支払うことで、この種の仕事が、AI研究に頻繁に資金を提供している大企業で働くよりも現実的な選択肢であると保証できる。

TechCrunchでは、これまでさまざまな論題について語ってもらったことがあるゲブル氏に、DAIRの将来的な研究に関する方法や方向性について尋ねてみたので、返事があればこの記事を更新する予定だ。しかし、DAIRに関わる2人の人物から、我々が何を期待できるかを知ることができる。

「Algorithms of Oppression(抑圧のアルゴリズム)」の著者で、Macarthur Genius Grant(マッカーサー天才賞)を受賞したSafiya Noble(サフィヤ・ノーブル)氏は、DAIRの諮問委員会に参加する予定だ。我々は先日、「TC Sessions:Justice」の公開討論で同氏をお迎えした。そこで彼女は、テクノロジーが広く使われるようになって「ありふれたもの」になった時に、それを中立的で価値があると考えることの危険性について語った。実際には、そうなった時にこそ、より厳しい目で見られるべきなのだ。

また、DAIRの最初の研究員であるRaesetje Sefala(ラエセチェ・セファラ)氏は、南アフリカにおける地理的・経済的な分離を、衛星画像を用いて定量化する研究を行っている。

「AIは地に足をつける必要があります。AIは超人的なレベルにまで高められており、それが必然で人間の制御を超えたものであると、私たちは信じ込まされています」と、ゲブル氏は発表の中で述べている。「AIの研究、開発、展開が最初から人やコミュニティに根ざしたものであれば、これらの弊害に先手を打ち、公平性と人間性を尊重した未来を創造することができます」。

画像クレジット:Photo by Kimberly White/Getty Images for TechCrunch / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ZOZO研究所のマーケティング施策論文がAI分野の国際会議NeurIPS 2021で採択、 ZOZOTOWN実データとソフト実装公開

ZOZO研究所のマーケティング施策論文がAI分野の国際会議「NeurIPS 2021」で採択、 ZOZOTOWN実データとソフト実装公開

ZOZOグループの新規事業開発などを行うZOZO NEXTは12月2日、同社の研究機関ZOZO研究所の所員らが執筆したマーケティング施策に関する論文が、機械学習分野の国際会議「NeurIPS 2021」(12月6日から14日にかけてオンライン開催)の投稿論文を扱う一部門「Datasets and Benchmarks Track」で採択されたことを発表した。タイトルは「再現可能かつ実データに基づいたオフ方策評価に向けた大規模データセットとソフトウェアの構築」。NeurIPSは、ICML、ICLRなどと並ぶ、機械学習の分野で権威あるトップカンファレンスの1つ。

この論文は、ZOZO研究所研究員の松谷恵氏、コーネル大学に在学する齋藤優太氏、粟飯原俊介氏、イェール大学助教授の成田悠輔氏の共著。研究所では、深層学習などのAI技術を研究しているが、その一環として、ZOZOTOWNにおけるマーケティング施策の意志決定に活用するアルゴリズムの評価と検証を効果的・効率的に行うための研究に着手し、その手法の提案に至った。

これまでは、新しく開発した意志決定アルゴリズムを評価するには、実際のサービス環境に実装し、ユーザーの反応を見ることが必要だった。しかしそれには、膨大な実装コストが必要なことに加えて、動作実績のある既存アルゴリズムとの入れ替えなどによりユーザー体験が悪化するという課題がある。

これに対して、実サービス環境に実装しない形でアルゴリズムの性能を予測できる手法として、蓄積されたデータセットを利用する「オフ方策評価」が研究されてきたが、実用性の高いオープンなデータセットが存在していないために、研究は進んでいなかった。

そこで同研究所は、ZOZOTOWNで実際の推薦アルゴリズムで取得された2600万件の推薦データからなる大規模実データ「Open Bandit Dataset」と、その実装基盤となる独自開発のソフトウェア「Open Bandit Pipeline」を、論文発表にともないオープンソースとして公開することにした。これらを使うことで、他の研究機関でもオフ方策評価や意志決定アルゴリズムの性能評価が行えるようになる。

論文で提案された手法は、ZOZOTOWNのマーケティング施策にも実際に導入され、クリック率や購買率の向上に貢献しているとのことだ。

ソフトバンク出資のユニコーンPicsArtがR&D企業DeepCraftを買収、AI・動画編集機能の強化狙って

ソフトバンクが出資しているデジタルクリエイションプラットフォームで、2021年8月にユニコーン企業の仲間入りを果たしたPicsArt(ピクスアート)は、米国時間12月2日、R&D企業であるDeepCraftを買収することを発表した。今回の買収は、現金と株式の組み合わせで、7桁(数百万ドル、数億円)規模の金額とのことだが、正確な条件は公表されていない。

PicsArtは現在、コンシューマーとプロ両方に向けて、写真やビデオ編集をより楽しく、親しみやすいものにするためのさまざまなデジタル制作・編集ツールを提供している。PicsArtは、DeepCraftが持つAI技術分野の人材と、同社のコンピュータービジョンおよび機械学習(ML)における画期的な技術が、PicsArtのAI技術を強化し、近年のPicsArtのサービスにおける動画作成の成長をサポートするものと考えている。また、チームは、PicsArtのAI研究開発部門であるPAIR(PicsArt AI Research)にシニアレベルのリソースを追加して補完するのにも役立つとしている。

アルメニアに拠点を置くDeepCraftは動画・画像処理に特化した企業で、2017年に設立された。ちなみに、PicsArtは同国初のユニコーンだ。DeepCraftの共同創業者であるArmen Abroyan(アルメン・アブロヤン)CEOとVardges Hovhannisyan(ヴァルジス・ホフハニシャン)CTOは、AIと機械学習に20年以上を費やしており、その専門性は地元コミュニティでよく知られている。アブロヤン氏はこれまで、アルメニア共和国ハイテク産業省の副大臣、RedKiteのリードAIアーキテクト、Synopsys(シノプシス)のシニアソフトウェア開発者などを歴任してきた。一方、ホフハニシャン氏は、Synopsysで13年間、シニアR&Dエンジニアとして活躍した。

DeepCraftでは、Krisp、PatriotOne、さらにはアルメニア政府など、多くのクライアントと契約ベースで仕事をしていた。これらの仕事は終了し、チームはエレバンにあるPicsArtのオフィスで仕事を始めることになる。今回の買収により、DeepCraftの機械学習および映像分野のシニアエンジニア8名が、PicsArtに正社員として入社する。

PicsArtは、2018年にEFEKT(旧D’efekt)を買収して動画市場に参入し、近年、利用者が急増している。特に、動画を利用するソーシャルメディアのクリエイターやECショップに同社のアプリが採用されている。2021年、PicsArtのアプリで編集された動画は1億8千万本を超え、前年比で70%増となっている。現在、数千種類のエフェクトと数十種類の動画編集ツールを提供しており、AIやクラウド技術の進化に合わせてこのラインナップを増やしていく予定だという。

PicsArtは、DeepCraftのスキルセットと技術的な専門知識が、2022年に重要な焦点となるであろう動画のサポートを前進させるのにどう役立つかに特に関心を寄せている。

ただし、PicsArtは、今回の買収でDeepCraftから特定のIPを取得するわけではない、と同社はTechCrunchに語っている。

PicsArtは、DeepCraftとはさまざまな技術開発で協力関係にあったため、今回の買収に先立ち、すでに関係を築いていた。

PicsArtの共同設立者兼CTOであるArtavazd Mehrabyan(アルタバズド・メフラビヤン)氏はこう述べている。「DeepCraftはユニークで高度な技術を持つエンジニアのチームであり、当社はすでに1年以上彼らと協力して当社のコア技術を構築してきました。当社の動画機能を進化させるためにさらなる投資を行うにあたり、DeepCraftのチームが動画の未来を築く上で重要な役割を果たすことを確信しています」。

DeepCraftとの取引は、8月に同社がソフトバンク・ビジョン・ファンド2(SVF2)主導で1億3000万ドル(約146億9000万円)のシリーズCラウンドを調達して以来、PicsArtにとって初の買収となる。そのラウンドにより、同社は2019年に約6億ドル(約678億円)だった評価額からユニコーンの地位に引き上げられた。

画像クレジット:PicsArt

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

トロントのVFXスタートアップMARZが約5.9億円を調達し、AI技術ソリューションを開発へ

テクノロジーとビジュアルエフェクト(VFX)のスタートアップであるMonsters Aliens Robots Zombies(モンスター・エイリアン・ロボット・ゾンビ – MARZ)は、シリーズA資金として530万ドル(約5億9800万円)を調達した。この投資は、Round13 Captial(ラウンド13・キャピタル)が主導し、Rhino Ventures(ライノ・ベンチャーズ)とHarlo Equity Partners(ハーロ・エクイティ・パートナーズ)が参加した。MARZは今回の資金調達を、中核となるVFX事業の成長と、「 VFX用AI」技術ソリューションの開発を加速させるために使用する予定だ。

トロントを拠点とするこのスタジオは2018年に立ち上げられ、ストリーミング戦争に拍車をかけたVFXのキャパシティ不足や、それに伴うオンデマンドコンテンツの爆発的な増加、加入者数の増加を促進する上でのVFXの重要性など、エンターテインメント業界が直面するいくつかの課題に対処することを目的としたAIソリューションを開発している。

MARZの共同創業者兼共同社長のJonathan Bronfman(ジョナサン・ブロンフマン)氏は、TechCrunchにメールで「今回の資金は、現在開発中の2つのAI製品を含む 『VFX用AI』ソリューションの研究開発を加速するために使用します。これに伴い、資金はそれぞれ当社の研究、エンジニアリング、製品組織における主要な人材の採用に充てられます。また、この資金は、当社のハードウェア能力とインフラストラクチャの成長にも使用され、AIの研究開発を有意義に短縮するとともに、当社の両AI製品のキャパシティ効率を向上させるのに役立ちます」と述べている。

ブロンフマン氏は、資金の大半を独自のAIソリューションの開発に充てる一方で、従来のVFXサービス事業の成長を加速させるための資金でもあり、MARZのAI事業との相乗効果が期待できると述べている。

同社は、立ち上げから3年間で、Marvel(マーベル)の 『ワンダビジョン』、HBOの 『ウォッチメン』、Netflix(ネットフリックス)の『アンブレラ・アカデミー』、Apple TV+の 『インベージョン』など、88のプロジェクトを手がけてきた。MARZは、1年目に13件、2年目に21件、3年目に54件のプロジェクトを完了した。

MARZは、2019年に45人だった従業員が現在194人にまで増え、今後1年間でチームを300人にまで増やす予定だ。現在の従業員のうち、4分の1以上が機械学習や人工知能に注力している。MARZはトロントを拠点としているが、バンクーバー、ウィニペグ、モントリオール、マドリッド、ロサンゼルス、メルボルン、ロンドン、モスクワ、ムンバイ、メキシコシティなど、世界の各都市に拠点を置く分散型の従業員を擁するリモートファーストの企業だ。

「私たちの使命は、VFXを一般化させることであり、そうすることで、世界中のクリエイターが可能な限り野心的なビデオコンテンツを制作できるようにすることです。それが、ストリーミングサービスやハリウッドスタジオ、ゲームスタジオ、メタバース開発者、あるいはソーシャルメディアのコンテンツにVFXを統合したいと考えている才能ある新進気鋭のクリエイターであっても同様です」とブロンフマン氏は綴っている。

同社は、VFXとゲーム技術の両方に統合された、自動化されたAI駆動の製品群を作る予定だ。ハリウッドに対しては、MARZの製品でより野心的なコンテンツを作成できるようにすることを目指している。最終消費者のような他の市場について、MARZのソリューションは、VFXを史上初めてアクセス可能なものにすることを目指している、とブロンフマン氏は述べている。

Round13 CapitalのパートナーであるBrahm Klar(ブラーム・クリア)氏は、「MARZは、業界で最も急速に成長しているVFXスタジオのひとつであり、テクノロジーを活用して、最高の製品を記録的なタイムラインで提供することで定評があります。カナダで最も成功している投資家たちと一緒にMARZと提携することで、我々はチームと密接に協力して、これまでのような同社の並外れた成功を築くことができるのです。」と述べている。

画像クレジット:MARZ

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(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

AWSが機械学習をより簡単に拡張できるSageMakerの新機能をリリース

米国時間12月1日、AWSは毎年恒例のre:Inventカンファレンスで、機械学習(ML)モデルを構築、トレーニング、デプロイするマネージドサービスSageMakerに対する多数の新機能を発表した。Amazon(アマゾン)の機械学習担当副社長であるSwami Sivasubramanian(スワミ・シバスブラマニアン)氏は、今回の新機能は、ユーザーが組織内で機械学習を簡単に拡張できるようにすることを目的としていると述べている。

まず第一にAWSは、専門家を使って高品質のトレーニングデータセットをより迅速に提供する新しいSageMaker Ground TruthPlus(セージメイカー・グラウンド・トゥルースプラス)サービスを開始した。SageMaker Ground Truth Plusは、アクティブラーニング、事前ラベリング、機械検証のための機械学習技術などのラベリングワークフローを使用する。同社によれば、この新しいサービスはコストを最大40%削減し、ユーザーが機械学習に関する深い専門知識を持っている必要はないという。このサービスにより、ユーザーはラベリングアプリケーションを構築しなくてもトレーニングデータセットを作成できるようになる。SageMaker Ground Truth Plusは現在、Northern Virginia(バージニア北部)リージョンで利用できる。

同社はまた、ユーザーが最適なパフォーマンスとコストで機械学習モデルをデプロイするために、利用可能な最適なコンピューティングインスタンスを選択することを助ける新しいSageMaker Inference Recommender(セージメイカー・インファレンス・レコメンダー)ツールを開始した。AWSによると、このツールは適切なコンピューティングインスタンスのタイプ、インスタンスカウント、コンテナパラメーター、モデルの最適化を自動的に選択するという。Amazon SageMaker Inference Recommenderは、AWS China(AWSチャイナ)リージョンを除く、SageMakerが利用可能なすべてのリージョンで利用可能だ。

さらにAWSは、新しいSageMaker Serverless Interface(セージメイカー・サーバーレス・インターフェース)オプションのプレビューをリリースした。これによって、ユーザーは基盤となるインフラストラクチャを構成または管理しなくても、推論のための機械学習モデルを簡単にデプロイすることができる。この新しいオプションはNorthern Virginia、Ohio(オハイオ)、Oregon(オレゴン)、Ireland(アイルランド)、Tokyo(東京)、Sydney(シドニー)の各リージョンで利用可能だ。

画像クレジット:TechCrunch

AWSはまた、GPUインスタンスをより効率的に使用することで、ディープラーニングモデルのトレーニングを最大50%高速化できる新機能SageMaker Training Compiler(セージメイカー・トレーニング・コンパイラー)をリリースした。この機能は、高級言語表現からハードウェアに最適化された命令に至る、ディープラーニングモデルをカバーしている。この新機能は、Northern Virginia、Ohio、Oregon、Irelandで利用できる。

最後にAWSは、Amazon Elastic MapReduce(EMR、アマゾン・エラスティック・マップレデュース)で実行されているApache Spark(アパッチ・スパーク)ジョブを、SageMaker Studio(セージメイカー・スタジオ)ノートブックからユーザーがクリックするだけで、直接監視およびデバッグできるようになったと発表した。同社は、EMRクラスターをSageMaker Studioから直接発見、接続、作成、終了、および管理できるようになったと述べている。

「したがって、EMRとの統合が組み込まれたことで、単一のユニバーサルSageMaker Studioノートブック内から、ペタバイトスケールでインタラクティブなデータ準備と機械学習を行うことができるのです」とAWSはブログ投稿の中で説明している。

このSageMaker Studioの新機能はNorthern Virginia、Ohio、Northern California(カリフォリニア州北部)、 Oregon、 central Canada(カナダ中央)、 Frankfurt(フランクフルト)、 Ireland、 Stockholm(ストックホルム)、 Paris(パリ)、 London(ロンドン)、 Mumbai(ムンバイ)、 Seoul(ソウル)、 Singapore(シンガポール)、 Sydney(シドニー)、 Tokyo(東京)、Sao Paolo(サンパウロ)の各リージョンで利用できる。

これに関連したノートの中で、AWSは開発者が機械学習技術を学び、その技術を実験することを支援する無料サービスであるSageMaker Studio Labを立ち上げたことを発表した。また米国時間11月30日には、AWSはAmazon SageMaker Canvasと呼ばれる新しい機械学習サービスを発表した。新しいサービスによって、ユーザーはポイントアンドクリックインターフェイスを使って、機械学習予測モデルを構築できるようになる。

関連記事:AWSがノーコードのMLサービス「Amazon SageMaker Canvas」を発表

画像クレジット:AWS

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(文: Aisha Malik、翻訳:sako)

AWSが機械学習を学ぶための無料ツール「SageMaker Studio Lab」を発表、奨学制度も立ち上げ

AWSは米国時間12月1日のre:Inventカンファレンスで、SageMaker Studio Labを発表した。デベロッパーは、この無料サービスを利用して機械学習の技術を学び、実験をすることができる。Studio Labはユーザーに、最初に必要な基礎をすべて、JupyterLab IDE、CPU上とGPU上のモデルの訓練、そして15GBの永続的ストレージを提供する

またAmazonは同時に、AWS AI & ML Scholarship Program(AIとMLの奨学事業)を立ち上げた。1000万ドル(約11億3000万円)の奨学金をAmazonが提供し、授業はIntelとUdacityの協同で行われる。それにより2000名の生徒がUdacity Nanodegree(得られる奨学金をもらい、またAmazonとIntelの社員たちがメンター役を引き受ける。

AWSの機械学習担当副社長であるSwami Sivasubramanian(スワミ・シバスブラマニアン)氏は次のように述べている。「本日発表した2つの企画は、機械学習を学ぶための教育機会を大きく開き、この技術に関心のある人なら誰でも勉強できるようになります。機械学習はこの世代にとって、最高に重要な変革的技術の1つです。この技術のポテンシャルを全開にできれば、世界の困難な問題の一部も解決できます。そのためには、あらゆるバックグラウンドの体験知識と人生経験を持つ、最良の心の持ち主たちに参入して欲しい。私たちはこの奨学制度によって多様な未来のワークフォースに閃きを与え、心を動かしていただきたい。多くの人の機械学習の開始を妨げていた費用という壁は壊れるでしょう」。

画像クレジット:AWS

Studio Labで勉強を始めるためには、登録をして無料のアカウントを取得しなければならい(2000名という制限がある)。ただし、アクセスのためのその他の要件はまだ不明だ。

AWSのAntje Barth(アンティエ・バース)氏が、発表で次のように述べている。「AWSでの私たちのミッションは、機械学習を誰にでもアクセスできるものにすることです。過去数年間のいろいろな会話から、MLの初心者が直面する壁がわかってきました。現在のMLの環境は初心者にとって難しすぎるものが多く、また制約が多くて現代的なMLの実験をサポートできません。また初心者たちは、今すぐにでも勉強を始めたいと思っており、インフラストラクチャや、サービスの構成、予算超過を防ぐための警告的請求などと関わりたくありません。登録の際に要求される請求やクレジットカード関連の情報提示もまた、険しい壁の1つです」。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ソラコム、LinuxおよびLTE通信機能採用のAIカメラS+ Cameraの新モデルS+ Camera Design発売

ソラコム、LinuxおよびLTE通信機能採用のAIカメラS+ Cameraの新モデルS+ Camera Design発売

「IoTテクノロジーの民主化」を掲げるIoT企業ソラコムは12月1日、IoTカメラ「S+ Camera」の新型モデル「S+ Camera Design」の発売を開始した。従来製品の約半分にスリム化され、公共施設などに設置しても違和感のない丸みを帯びたデザインになっている。ソラコム、LinuxおよびLTE通信機能採用のAIカメラS+ Cameraの新モデルS+ Camera Design発売

「S+ Camera」シリーズは、Linuxベースの小型コンピューターとセルラー通信(LTE)を搭載したIoTカメラ。AIアルゴリズムをインストールすれば、用途に合わせたAIカメラソリューションが実現する。専用コンソールを使って映像を確認したり、AIアルゴリズムをリモートで更新するなどが可能。汎用マウントで簡単に設置が行える。

S+ Cameraは、商業施設の混雑度チェック、街中の交通量調査、電気や空調設備のモニタリング、工場や倉庫の入退室管理などに利用されているが、公共の場所で使われることを考え、厚さ5cmという、コンパクトで洗練されたパッケージに収めたのがS+ Camera Designだ。デザインは、プロダクトデザインを手がける日南とのコラボによるもの。 ソラコム、LinuxおよびLTE通信機能採用のAIカメラS+ Cameraの新モデルS+ Camera Design発売

「S+ Camera Design」の特徴は次のとおり。

  • セルラー回線標準搭載:
    データの送受信にセルラー回線を利用するため、ネットワーク環境の構築が不要
  • アルゴリズムの遠隔更新:
    エッジ処理ができ、専用のコンソールからアルゴリズムを遠隔操作で更新可能
  • かんたん設置:
    電源に接続するだけですぐに利用できる。汎用マウントを利用すれば設置も容易
  • AIアルゴリズムをインストールして独自のAIカメラソリューションを実現:
    アルゴリズムはソラコムが提供する「リファレンス アルゴリズム」(無償提供)、自社で独自に開発できる「自社開発アルゴリズム」、パートナー企業が提供する「3rd party アルゴリズム」(有償提供)のいずれかが使える。

概要

  • 外形:164×50×187mm
  • 重量:305g(本体のみ)
  • F値:2.8
  • カメラ角度調整機構:縦横斜めのいずれか一方向に調整可能(手動)
  • 内容:本体、ACアダプター(ケーブル長3m)、汎用型マグネットマウント、SORACOM特定地域向けIoT SIMカード plan-D サイズ:マイクロ(データ通信のみ)、六角レンチ(角度調整用)、IMEIシール
  • 直販価格:4万9800円(税込。送料別)

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AWS第3のカスタムチップ「Trn1」は機械学習モデルのトレーニングを高速化

顧客のワークロードのパフォーマンスを上げるためにカスタムチップに頼る企業が増えているが、Amazonもその例外ではない。同社は2019年に、機械学習の推論学習を高速化するためにInferentiaチップを導入した。その後、同社は2020年に機械学習のモデルの学習専用である第2のTrainiumチップをローンチした。そして本日、AWSはこれまでの流れの続きとして、最新の機械学習チップ「Trn1」を発表した。

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AWSがカスタム推論チップのInferentiaを発表
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初めてAWS re:Inventのキーノートを担当するAdam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏は米国時間11月30日、最新のチップに関する発表を行った。

「Trainiumからパワーをもらっている新しいチップ、Trm1を発表できることに、私はワクワクしています。Trm1はクラウドでディープラーニングモデルをトレーニングするための最高のコストパフォーマンスと、EC2での最速のパフォーマンスを提供してくれるでしょう」とセリプスキー氏は語った。

続けて「Trn1はEC2のインスタンスとしては初めて、最大で毎秒800ギガバイトの帯域を提供します。そのため、大規模なマルチノード分散型トレーニングのユースケースには絶対に最適です」という。これは画像認識、自然言語処理、不正検知、予測などのユースケースに有効なはずだとのことだ。

さらに、これらのチップをネットワーク化して「ウルトラクラスター」とすることで、より強力なパフォーマンスを発揮することができる。

「これらを一緒にネットワーク化して、何万もの訓練アクセラレーターがペタバイト規模のネットワーキングへ相互接続した状態を、私たちは『ウルトラクラスター』と呼んでいます。そうしたウルトラクラスターの訓練を、強力な機械学習スーパーコンピューターが行い、パラメータが何兆個もあるような複雑な深層学習のモデルでも快速で訓練できます」とセリプスキー氏はいう。

セリプスキー氏によると、同社はSAPなどと協力して、この新しい処理能力の利用を追究していく計画だとのことだ。

画像クレジット:Ron Miller

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

デジタルヒューマンやAIトレーニングデータなど合成データを生み出すシンセティックAIのデータグリッドが3億円調達

デジタルヒューマンやAIトレーニングデータなど合成データを生み出すシンセティックAIのデータグリッドが3億円調達

デジタルヒューマンやAIトレーニングデータなどの合成データを生み出すシンセティックAIの社会実装に取り組むデータグリッドは11月29日、第三者割当増資および融資による3億円の資金調達を実施したことを発表。引受先は、先端技術共創機構、アエリア、Deep30、京信ソーシャルキャピタル、フューチャーベンチャーキャピタル、池田泉州キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、京銀リース・キャピタル、中信ベンチャーキャピタル、京都エンジェルファンド。累計資金調達額は約6億円となった。

データグリッドは「すべてのデータに、命を与える」をミッションに掲げ、2017年の創業以来、シンセティックAIの技術開発によって製造・通信・教育・アパレル・エンターテインメントなど多岐に渡る分野でプロジェクトを実施。同社開発のバーチャル試着技術を活かしたAIプロダクト「kitemiru」の提供や、シンセティックAIで自動生成したバーチャルアンバサダーの動画も公開している。

シンセティックデータ領域の技術成熟や、技術開発フェーズから実用化フェーズへの移行を背景に、今後も需要の拡大が見込まれるデジタルデータやコンテンツを生み出すAIソリューションを提供することで、データグリッドは人々がよりクリエイティビティを発揮できる社会を目指す。今回調達した資金は技術開発と新規事業開発の強化に充当し、シンセティックAIの社会実装をより加速させたいという。

Verbitの文字起こしプラットフォームは人工知能と人間の知能を組み合わせて高い精度と早い納期を実現

1億5700万ドル(約178億6000万円)を調達したシリーズDラウンドからまだ半年足らずにもかかわらず、AIを活用したトランスクリプション&キャプションのプラットフォームであるVerbit(ヴァービット)は、同社を20億ドル(約2275億円)と評価するシリーズE投資ラウンドを、2億5000万ドル(約284億3000万円)でクローズしたと発表した。今回の資金調達により、同社の資金総額は5億5000万ドル(約625億6000万円)を超えた。

この新たな投資ラウンドは、Third Point Ventures(サード・ポイント・ベンチャーズ)が主導し、既存投資家であるSapphire Ventures(サファイヤ・ベンチャーズ)、More Capital(モア・キャピタル)、Disruptive AI(ディスラプティブAI)、Vertex Growtht(ヴァーテックス・グロース)、40North(フォーティノース)、Samsung Next(サムスン・ネクスト)、TCPが参加した。

VerbitのCEO兼創業者であるTom Livne(トム・リブン)氏は、この資金を製品開発への投資と、垂直方向および地理的な拡大の継続に使用すると述べ、買収戦略も倍増させると付け加えた。

シリーズEをクローズしたことで、Verbitは近い将来に予定されているIPOに一歩近づいたと、上場計画について訊かれたリブン氏は答えた。

Verbitは、それまで法律の分野でキャリアを積んでいたリブン氏によって2017年に設立された。リブン氏は、テープ起こしの納期の遅さに不満を感じることが多かったが、弁護士としてその問題に正面から取り組むためのツールを持っていなかった。そこで同氏は、AIを活用したトランスクリプションとキャプションのプラットフォームを提供するスタートアップを設立し、AI駆動の自動トランスクリプションサービスとプロのトランスクリプターを結合させた。

約300億ドルと推定されるトランスクリプション業界は、非常に細分化されており、小さな家族経営の会社がたくさんある。この市場は統合の準備ができていると、リブン氏はTechCrunchにメールで語り、Verbitは5月に、2番目の買収先であるVITACを5000万ドル(約56億7000万円)で買収完了したと付け加えた。

Verbitのプラットフォームの特徴は、人工知能と人間の知能の両方の力を利用して、業種に特化したトランスクリプションやキャプションを提供し、各業界に適したソリューションを構築していることだと、リブン氏はいう。

「当社のAIは、特定の業種や顧客に基づいてトレーニングされているので、当社のプラットフォームは、時間の経過とともに改善されるカスタムモデルを構築することができます。つまり、Verbitの顧客は、法律、教育、メディア、企業などの分野にいて、それぞれに、HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)やSOC IIコンプライアンスなど、独自の業界固有の規制や基準に準拠したトランスクリプションやキャプションを提供することができるということです」と、リブン氏は述べている。

さらに、機械学習と自然言語処理(NPL)を用いたモデルにより、99%以上の精度と、業界標準より10倍も早い納期を実現していることも、同社の大きな差別化要因であると、リブン氏は語った。

Verbitは、メディア、教育、企業、法律、政府機関など、2000社以上の顧客にサービスを提供している。リブン氏によれば、その顧客の中には、CNN、Fox(フォックス)、Disney(ディズニー)、Coursera(コーセラ)、Stanford(スタンフォード)、Harvard University(ハーバード大学)、Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、AT&Tなどが含まれるという。

同社は急速に成長しており、前年同期比で6倍の収益成長を遂げ、年間の経常収益は1億ドル(約113億円)を超えていると、リブン氏は続けた。また、同社はキャッシュ効率に優れ、163%という高い顧客維持率を誇っており、これらは顧客からの信頼を示す重要な指標であると、同氏は付け加えた。

同社がトランスクリプションの分野で競合する企業として、リブン氏はRev.com(レブ)や3Play Media(スリープレイ・メディア)の名前を挙げた。

英国とオーストラリアで強い存在感を示しているVerbitは、ドイツ、フランス、スペインなど、欧州へのさらなる拡大を計画していると、リブン氏は述べている。これらの国々は、かなりのインバウンド関心が見られるため魅力的であると、リブン氏は付け加えた。

「市場機会は非常に大きく、業界リーダーとしての当社の立場を考えれば、我々はこれらの市場に迅速に参入することができます」と、リブン氏はいう。

Verbitは、ニューヨーク、コロラド、ピッツバーグ、パロアルト、カナダ、テルアビブ、キエフの470人を超える従業員と、世界中に3万5000人のフリーランスのトランスクリプターと600人のプロのキャプション担当者を擁している。

「今回の資金調達は、トランスクリプション分野におけるマーケットリーダーとしての地位を確固たるものにする当社の能力に対する信頼の証です」と、リブン氏は語る。「この業界を近代化するための強力な技術プラットフォームを構築し、垂直統合された音声AIソリューションを構築する当社の戦略は、私たちのお客様に多大な価値をもたらし、お客様のビジネスをよりわかりやすいものにしてきました」。

「Verbitは、トランスクリプション市場において卓越した技術によるオーガニックとインオーガニックの成長を兼ね備えた特別な企業です」と、Verbitの取締役会に加わるThird Point Venturesのマネージングパートナー、Rober Schwartz(ローバー・シュワルツ)氏は述べている。「このような大規模で断片化された市場で、デジタルトランスフォーメーションと同時進行の統合の機が熟している時に遭遇できるチャンスは、滅多にありません」。

画像クレジット:Verbit

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(文:Kate Park、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

英国のメンタルヘルス企業iesoが10年間も蓄積した患者セラピスト間のテキストを武器に約60.9億円調達

英国を拠点とするデジタルセラピー企業ieso(イエソ)は、米国時間11月23日に5300万ドル(約60億9600万円)のシリーズBラウンドを発表した。このラウンドは、より直感的な自律型テキストセラピーを実現するという、まったく新しい方向に進むために同社が必要とする資金だ。

つまり、何千時間もの現実世界でのセラピーに基づいて訓練されたAIが、チャットでパーソナライズされたセッションを提供できるということだ。

iesoは10年ほど前から、英国の国民健康保険サービスを通じて、テキストのみのセラピーサービス(片方は人間のセラピストが担当)を行ってきた。同社のCEOであるNigel Pitchford(ナイジェル・ピッチフォード)氏は、これまでに約8万人の患者にテキストベースのセラピーを提供してきたが、積極的にセラピーを受けている人は6000人だとTechCrunchに語った。これまでのセラピー時間は合計で46万時間にもなるという。

ピッチフォード氏は「今晩、我々のネットワークを介して、400時間の治療を行う予定です」と述べている。

今回の資金調達は、Morningside(モーニングサイド)が主導し、Sony Innovation Fund(ソニー・イノベーション・ファンド)が参加した。また、既存の投資家であるIP Group(IPグループ)、Molten Ventures(モルテン・ベンチャーズ)、Ananda Impact Ventures(アナンダ・インパクト・ベンチャーズ)も参加している。

iesoは最終的に、人間ベースのセラピストシステムから、スケールアップした自律的なシステムへと発展させることを目指している。AIベースのチャットセラピーというアイデアは、この分野では特別なものではないが(これを追求している他の企業についても紹介している)、iesoのアプローチの背景にあるデータは、同社が秘密のソースと考えているものだ。

iesoの「圧倒的な強み」は、ピッチフォード氏が「トランスクリプト・オブ・ケア」と呼ぶ、患者とセラピストの間で交わされた10年間の現実のテキストベースの会話だ。このデータセットは、患者の臨床結果に関するリアルタイムのデータとセットになっており、同社はそれらのチャット内容と合わせて収集している。

Morningsideの投資パートナーであるStephen Bruso(スティーブン・ブルーソ)氏は「iesoは、テキストセラピーのデータセットで、この分野で最もすばらしいデータ資産を構築してきました」と述べている。このデータセットは、投資家としての彼にとっては最も魅力的なiesoの一面であり「前例のない」ものだと述べている。

このデータセットは、ある治療上の会話や技術が、患者の改善にどのように結びついているか(あるいは結びついていないか)を追跡するために使用されている。そして、同社がそのデータを利用して洞察を得ることができたという証拠もある。例えば、同社は2019年に9万時間のセラピーを分析した論文を「JAMA Psychiatry」ジャーナルに発表した。この論文では「将来の計画を立てる」といったセラピーの側面や、特定の認知行動療法の手法が、患者の改善につながることを発見した。

同社のグループ・チーフ・サイエンス&ストラテジー・オフィサーであるAndy Blackwell(アンディ・ブラックウェル)氏は「データでは1時間のセラピーのうち28分は、患者の転帰に『直接影響を与える』会話やエクササイズが含まれていることが示唆された」と述べている。

また、直感に反しているかもしれないが、この論文では、治療上の共感が患者の転帰にマイナスの影響を与えることがわかったという。しかし、他の研究では、セラピストが自分のことを理解してくれていると感じたとき、患者はより良い結果を得ることができるとも言われている。ブラックウェル氏は、この共感に関する発見を、共感は他の治療技術と一緒に用いるべきだという証拠だと解釈した。

ピッチフォード氏は最終的に、このデータセットとJAMAの論文で行われたような分析は、AIベースのセラピストがどのようにトレーニングされ、パーソナライズされるかを示すロードマップであると捉えている。

「つまり、私たちは、最高のセラピストが何をしているのかを非常に大きなスケールで研究し、それを再構築することで、世界中で大きな問題となっている、人間による心理療法を受けることができない人々に治療を届けることができるのです」とピッチフォード氏は述べている。

このようなデータセットをもってしても、iesoはますます混み合った領域での活動を強いられているようだ。第3四半期のSilicon Valley Bank(シリコンバレー・バンク)のトレンドレポートによると、メンタルヘルス関連のスタートアップ企業への資金提供は、2021年に30億ドル(約3400億円)を突破すると予想されている。つまり、従来のセラピーに関連する問題に注目している人が、今たくさんいるということだ。

ブルーソ氏は、iesoを、少なくとも自社のデータセットを使って実際の健康状態を示すことができる、数少ないメンタルヘルス企業の1つだと考えている。

「私たちは、実世界のデータに基づいて構築されたiesoのデジタル製品と、これらの製品を既存のユーザーベースで試用して初日から成果データを得ることができる同社の能力との間に、ユニークな相乗効果があると信じています。最終的には、個人の健康と社会的な成果の両方に測定可能な影響を示すことができる製品が、この分野で生き残ることができるでしょう」と述べている。

ブラックウェル氏は、この分野がいかに混み合っているかを認識しており、実際、消費者にとってこれは問題だと考えている。iesoのリーダーたちは、これらのアプリは、自助努力か、マインドフルネス、または軽度のメンタルヘルス診断を受けている患者のためにデザインされていることが多いと見ている。

iesoも、軽度のメンタルヘルスの苦悩を抱える人々を治療することができるものの、同社は中等度から重度の診断にも焦点を当てている。彼の言葉を借りれば、ただの「ウェルネス・ソリューション」ではなく、より集中的なケアを必要とするグループにも利用できるのだ。

このような観点から、自傷行為に対する安全対策を特に強化する必要がある。ブラックウェル氏によると、同社の人間ベースのセラピーモデルには、英国最大級のメンタルヘルスプロバイダーとして10年間かけて磨いてきたリスクエスカレーションプロトコルが導入されている。将来的には、それらのプログラムを自律型セラピー製品に組み込むことを計画している。

今のところ、同氏は、より困難な規制の道を想定していない。それは、より高いレベルのメンタルヘルス診断を扱うことを考えているからだ。

「良い点は、市場に投入する際に利用できる前例や前提条件があることです。しかし、重要なのは、実証的に安全で効果的な製品を作ることです」と述べている。

同社はすでに大量のデータを収集しているため、通常の臨床試験よりも「何倍も早く」有効性と安全性に関する知見を得ることができると、ブラックウェル氏は主張している。

iesoは今後、今回のラウンドを利用して、AIベースのセラピー部門を構築し、米国での知名度を強化する予定だ。チームは来年までに約200人に拡大する予定で、今後2年間での市場投入を目指す。

画像クレジット:Feodora Chiosea / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Akihito Mizukoshi)

英国のメンタルヘルス企業iesoが10年間も蓄積した患者セラピスト間のテキストを武器に約60.9億円調達

英国を拠点とするデジタルセラピー企業ieso(イエソ)は、米国時間11月23日に5300万ドル(約60億9600万円)のシリーズBラウンドを発表した。このラウンドは、より直感的な自律型テキストセラピーを実現するという、まったく新しい方向に進むために同社が必要とする資金だ。

つまり、何千時間もの現実世界でのセラピーに基づいて訓練されたAIが、チャットでパーソナライズされたセッションを提供できるということだ。

iesoは10年ほど前から、英国の国民健康保険サービスを通じて、テキストのみのセラピーサービス(片方は人間のセラピストが担当)を行ってきた。同社のCEOであるNigel Pitchford(ナイジェル・ピッチフォード)氏は、これまでに約8万人の患者にテキストベースのセラピーを提供してきたが、積極的にセラピーを受けている人は6000人だとTechCrunchに語った。これまでのセラピー時間は合計で46万時間にもなるという。

ピッチフォード氏は「今晩、我々のネットワークを介して、400時間の治療を行う予定です」と述べている。

今回の資金調達は、Morningside(モーニングサイド)が主導し、Sony Innovation Fund(ソニー・イノベーション・ファンド)が参加した。また、既存の投資家であるIP Group(IPグループ)、Molten Ventures(モルテン・ベンチャーズ)、Ananda Impact Ventures(アナンダ・インパクト・ベンチャーズ)も参加している。

iesoは最終的に、人間ベースのセラピストシステムから、スケールアップした自律的なシステムへと発展させることを目指している。AIベースのチャットセラピーというアイデアは、この分野では特別なものではないが(これを追求している他の企業についても紹介している)、iesoのアプローチの背景にあるデータは、同社が秘密のソースと考えているものだ。

iesoの「圧倒的な強み」は、ピッチフォード氏が「トランスクリプト・オブ・ケア」と呼ぶ、患者とセラピストの間で交わされた10年間の現実のテキストベースの会話だ。このデータセットは、患者の臨床結果に関するリアルタイムのデータとセットになっており、同社はそれらのチャット内容と合わせて収集している。

Morningsideの投資パートナーであるStephen Bruso(スティーブン・ブルーソ)氏は「iesoは、テキストセラピーのデータセットで、この分野で最もすばらしいデータ資産を構築してきました」と述べている。このデータセットは、投資家としての彼にとっては最も魅力的なiesoの一面であり「前例のない」ものだと述べている。

このデータセットは、ある治療上の会話や技術が、患者の改善にどのように結びついているか(あるいは結びついていないか)を追跡するために使用されている。そして、同社がそのデータを利用して洞察を得ることができたという証拠もある。例えば、同社は2019年に9万時間のセラピーを分析した論文を「JAMA Psychiatry」ジャーナルに発表した。この論文では「将来の計画を立てる」といったセラピーの側面や、特定の認知行動療法の手法が、患者の改善につながることを発見した。

同社のグループ・チーフ・サイエンス&ストラテジー・オフィサーであるAndy Blackwell(アンディ・ブラックウェル)氏は「データでは1時間のセラピーのうち28分は、患者の転帰に『直接影響を与える』会話やエクササイズが含まれていることが示唆された」と述べている。

また、直感に反しているかもしれないが、この論文では、治療上の共感が患者の転帰にマイナスの影響を与えることがわかったという。しかし、他の研究では、セラピストが自分のことを理解してくれていると感じたとき、患者はより良い結果を得ることができるとも言われている。ブラックウェル氏は、この共感に関する発見を、共感は他の治療技術と一緒に用いるべきだという証拠だと解釈した。

ピッチフォード氏は最終的に、このデータセットとJAMAの論文で行われたような分析は、AIベースのセラピストがどのようにトレーニングされ、パーソナライズされるかを示すロードマップであると捉えている。

「つまり、私たちは、最高のセラピストが何をしているのかを非常に大きなスケールで研究し、それを再構築することで、世界中で大きな問題となっている、人間による心理療法を受けることができない人々に治療を届けることができるのです」とピッチフォード氏は述べている。

このようなデータセットをもってしても、iesoはますます混み合った領域での活動を強いられているようだ。第3四半期のSilicon Valley Bank(シリコンバレー・バンク)のトレンドレポートによると、メンタルヘルス関連のスタートアップ企業への資金提供は、2021年に30億ドル(約3400億円)を突破すると予想されている。つまり、従来のセラピーに関連する問題に注目している人が、今たくさんいるということだ。

ブルーソ氏は、iesoを、少なくとも自社のデータセットを使って実際の健康状態を示すことができる、数少ないメンタルヘルス企業の1つだと考えている。

「私たちは、実世界のデータに基づいて構築されたiesoのデジタル製品と、これらの製品を既存のユーザーベースで試用して初日から成果データを得ることができる同社の能力との間に、ユニークな相乗効果があると信じています。最終的には、個人の健康と社会的な成果の両方に測定可能な影響を示すことができる製品が、この分野で生き残ることができるでしょう」と述べている。

ブラックウェル氏は、この分野がいかに混み合っているかを認識しており、実際、消費者にとってこれは問題だと考えている。iesoのリーダーたちは、これらのアプリは、自助努力か、マインドフルネス、または軽度のメンタルヘルス診断を受けている患者のためにデザインされていることが多いと見ている。

iesoも、軽度のメンタルヘルスの苦悩を抱える人々を治療することができるものの、同社は中等度から重度の診断にも焦点を当てている。彼の言葉を借りれば、ただの「ウェルネス・ソリューション」ではなく、より集中的なケアを必要とするグループにも利用できるのだ。

このような観点から、自傷行為に対する安全対策を特に強化する必要がある。ブラックウェル氏によると、同社の人間ベースのセラピーモデルには、英国最大級のメンタルヘルスプロバイダーとして10年間かけて磨いてきたリスクエスカレーションプロトコルが導入されている。将来的には、それらのプログラムを自律型セラピー製品に組み込むことを計画している。

今のところ、同氏は、より困難な規制の道を想定していない。それは、より高いレベルのメンタルヘルス診断を扱うことを考えているからだ。

「良い点は、市場に投入する際に利用できる前例や前提条件があることです。しかし、重要なのは、実証的に安全で効果的な製品を作ることです」と述べている。

同社はすでに大量のデータを収集しているため、通常の臨床試験よりも「何倍も早く」有効性と安全性に関する知見を得ることができると、ブラックウェル氏は主張している。

iesoは今後、今回のラウンドを利用して、AIベースのセラピー部門を構築し、米国での知名度を強化する予定だ。チームは来年までに約200人に拡大する予定で、今後2年間での市場投入を目指す。

画像クレジット:Feodora Chiosea / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Akihito Mizukoshi)

北極圏にデータセンターを構えて実質無料で冷却、Neu.roはゼロエミッションの機械学習モデル構築ソリューションを発表

企業が機械学習を活用してビジネスをより効率的に運営しようとする動きはますます活発になっているが、機械学習モデルの構築、テスト、稼働には膨大なエネルギーを必要とすることも事実だ。アーリーステージのスタートアップ企業でフルスタックのMLOps(エムエルオプス、機械学習運用基盤)ソリューションを手がけるNeu.ro(ニューロ)は、より環境負荷の少ないグリーンなアプローチに取り組んでいる。

同社は米国時間11月22日、フィンランドのクラウドインフラストラクチャパートナーであるatNorth(アトノース)とともに、ゼロエミッションのAIクラウドソリューションを発表した。

同社によると、atNorthはティア3に適合するISO 27001認定のデータセンターを提供し、そこでNVIDIA(エヌビディア)A100を搭載したDGXおよびHGXシステムを稼働させるという。80MWの電力容量を持つこのデータセンターは、すべて地熱と水力エネルギーで稼働している。さらに、北極圏に位置しているため、実質的に無料で冷却することができ、Neu.roのソリューションを使用して機械学習モデルを構築する顧客に、エネルギー効率の高いソリューションを提供できる。

Neu.roの共同設立者であるMax Prasolov(マックス・プラソロフ)氏によると、この問題を調査した結果、コンピューティングとテレコミュニケーションが世界の総エネルギー消費量の約9%を占めており、この数字は今後10年間で倍増する可能性があることがわかったという。プラソロフ氏らは機械学習モデルの構築がその中でも重要な役割を果たすと考え、自社の二酸化炭素排出量を削減するために、atNorthと提携することを決めた。

「当社ではすべてのオペレーションとすべての実験を、ゼロエミッションのクラウドに移行することに決めました。目標は、クレジットを購入して使用量を埋め合わせることができるカーボンニュートラルではありません。問題は、どうやってゼロエミッションを達成するかです。私たちは、顧客のために機械学習モデルをトレーニングする際に、非常に多くのエネルギーとコンピューティングパワーを費やしていることに気づきました。それこそが、間違いなく、我々が排出している最大のカーボンフットプリントであることを理解したのです」と、プラソロフ氏は述べている。

その一方で、同社はソフトウェアソリューションを通じて、より効率的な方法でモデルを構築する方法を考え出した。これによって必要なエネルギー量を削減し、さらに持続可能なソリューションを提供することが可能になる。

製品自体については、同社は柔軟性のあるクラウドネイティブなサービスを提供しており、そこでツールの一部を提供するものの、企業が自分たちにとって最適と考える方法で補う余地を十分に残している。

「当社のアプローチは、データの取り込みから、モニタリング、説明可能性、パイプラインエンジンなど、構築が必要なツールをすべて1つずつ構築するのではなく、相互運用性を重視しています。まだ構築されていないものを構築し、すでに存在するKubernetes(クバネティス)によるツールのユニバースに接続します」と、同社の共同設立者である Arthur McCallum(アーサー・マッカラム)氏は説明する。

このスタートアップ企業は現在、商用のソリューションを提供しているが、オープンソース版のスタックにも取り組んでおり、まもなく、おそらく年内にはリリースされる見込みだ。同社の目標は、Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)というビッグ3以外の小規模なクラウドベンダーに、クラウドベースのAIソリューションを提供することである。これには世界各地の地域的なベンダーも含まれるだろう。

Neu.roは2019年に創業し、2020年にソリューションの最初のバージョンを公開した。これまでにシード資金として230万ドル(約2億6500万円)を調達しているという。

画像クレジット:a-image / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中国のAI・顔認識大手SenseTimeが香港でのIPOを準備中

中国最大級のAIソリューションプロバイダーであるSenseTime(商湯科技開発有限公司、センスタイム)は、IPOに向けて一歩前進した。メディアの報道によると、SenseTimeは香港証券取引所に上場するための規制当局の承認を受けた

2014年に設立されたSenseTimeは、Megvii、CloudWalk、Yituと並んで中国の「四大AIドラゴン」と総称されている。2010年代後半、SenseTimeのアルゴリズムは、現場のデータを実用的な洞察力に変えることを望む企業や政府から多くの需要があった。同社のAIモデルを組み込んだカメラは、24時間体制で街を監視している。ショッピングモールでは、同社のセンシングソリューションを利用して、施設内の混雑状況を追跡・予測している。

SenseTimeのライバル企業3社は、いずれも中国本土か香港での株式売却を検討している。Megviiは、香港証券取引所への申請が失効した後、中国のNASDAQ式証券取引所、STAR Board(科創板)への上場を準備している。

関連記事:中国最大級の顔認証ユニコーンMegviiが上海でのIPOを準備中

中国のデータリッチなテック企業が海外で上場する道は狭まっている。北京は、機密データを持つ企業が中国国外で上場することを難しくしており、欧米の規制当局は、大量監視を助ける可能性のある顔認証企業に対し慎重な姿勢をとっている。

しかしここ数年、中国のAI新進企業は世界中の投資家から求められていた。2018年だけで、SenseTimeは20億ドル(約2300億円)以上の投資を集めた。これまでに同社は、12回のラウンドを通じて52億ドル(約5982億円)という驚異的な額の資金を調達している。最大の外部株主には、SoftBank Vision Fund(SVF、ソフトバンク・ビジョン・ファンド)とAlibaba(アリババ)のTaobao(淘宝、タオバオ)が含まれている。ロイター通信によると、SenseTimeは香港での株式公開にあたり、最大20億ドル(約2300億円)の資金調達を計画しているという。

目論見書によると、SenseTimeは資本の大部分を研究開発に費やしており、2018年から2020年の間に50億元(7億8000万ドル、約897億円)以上の費用がかかっている。同社は過去4年間、純損失を計上しており、その主な原因は「優先株式の公正価値損失」である。その純損失は2021年の上半期に37億元(約666億円)に達した。6月時点での赤字総額は230億元(約4139億円)に迫る。

同業他社と同様に、SenseTimeは「スマートシティ」プロジェクトを収益化の柱としており、6月までの半年間の総売上高16億5000万元(約297億円)のうち、47.6%を占めている(2020年同期は27%)。同社の目論見書によると、SenseTimeのソフトウェアプラットフォームを利用している都市の数は、6月までに119に達した。

商業施設や賃貸マンションなど、企業のニーズに合わせた「Smart Business」ラインは、2021年上半期の収益の約40%を占めた。同社は残りの収益を、IoTデバイスに供給する「Smart Life」部門と、知覚知能を自律走行ソリューションに適用する「Smart Auto」から得ている。

画像クレジット:Gilles Sabrie/Bloomberg via Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

キーワード検索を超える「ニューラル検索プラットフォーム」開発のJina.aiが約34億円調達

ベルリンを拠点とするJina.ai(ジナエーアイ)は、ニューラル検索を利用して、ユーザーが非構造化データ(動画や画像を含む)から情報を見つけ出すことをサポートしているオープンソースのスタートアップだ。同社は現地時間11月22日、Canaan PartnersがリードしたシリーズAで3000万ドル(約34億円)を調達したことを発表した。このラウンドには、新規投資家のMango Capitalの他、既存投資家のGGV Capital、SAP.iO、Yunqi Partnersも参加し、Jina.aiの資金調達総額は3900万ドル(約44億円)となった。

Nan Wang(ナン・ワン)氏、Bing He(ビン・ヘ)氏とともにJina.aiを創業したCEOのHan Xiao(ハン・シャオ)氏は、深層学習ニューラルネットワークを使って、従来のキーワードベースの検索ツールを超えるというのがニューラル検索だと説明する。伝達学習表現学習などの比較的新しい機械学習テクノロジーを利用することで、同社の中核のJinaフレームワークはデベロッパーが特定のユースケースに応じた検索ツールを迅速に構築するのに役立つ。

「画像、音声、動画などの場合、まずディープニューラルネットワークを使って、このデータフォーマットを普遍的な表現に変換します」とシャオ氏は説明する。「ここでは、ほとんどが数学的なベクトル、つまり100次元のベクトルです。そして、マッチングアルゴリズムでは、一致する文字数を数えるのではなく、数学的な距離、つまり2つのベクトル間のベクトル距離を数えます。このようにして、基本的にこの種の方法論を使って、あらゆる種類のデータ検索問題や関連性の問題を解決することができるのです」。

シャオ氏は、Jinaが検索のためのTensorFlowに似ていると表現した(TensorFlowはGoogleのオープンソースの機械学習フレームワークだ)。人々がAIシステムを設計する際のデザインパターンをTensorFlowやPyTorchが定義したように、Jinaは人々がニューラル検索システムを構築する方法を定義し、その過程で事実上の標準となることを目指している。

しかしJinaは、同社が現在展開する製品の1つにすぎない。Jinaベースのニューラル検索アプリケーションの構成要素を開発者が共有・発見できるマーケットプレイスであるJina Hub、あらゆるディープニューラルネットワークを微調整するためのツールである、最近立ち上げたFinetunerなども提供している。

「この1年半、我々は巨大なニューラル検索タワーの基盤となる中核インフラの構築に多大な労力を費やしてきましたが、その作業は終えました。今、我々はこの大きな建物の1階と2階を少しずつ構築しており、エンド・ツー・エンドの開発体験を提供しようとしています」とシャオ氏は話す。

同社によると、Jina AIの開発者コミュニティには現在約1000人のユーザーがいる。ビデオゲーム開発者がゲームエディターの右クリックメニューに関連するゲームアセットを自動入力するために使用したり、リーガルテックのスタートアップがPDF文書のデータを利用したQ&A体験をチャットボットで提供できるようにするために使用したりと、さまざまな用途がある。

オープンソースのJinaフレームワークには、2020年5月の発表以来、すでに200人近くの外部貢献者が参加していて、同社はこのプロジェクトに関するSlackコミュニティもホストしている。

「我々がオープンソースを採用している大きな理由は、オープンソースの速度にあります。私は開発の速度がソフトウェアプロジェクトの成功の鍵を握ると考えています。多くのソフトウェアは、この速度がゼロになってしまうことでダメになるのです」とシャオ氏は説明する。「我々はコミュニティを構築し、高速に反復するためにコミュニティを活用してフィードバックを集めています。我々のようなインフラソフトウェアにとってこれは非常に重要なことです。すばやく改善するには、使いやすさやアクセシビリティなどについて、一流の開発者たちにフィードバックしてもらう必要があります」。

Jina.aiは、今回調達した資金でチームを倍増させ、特に北米での事業を拡大する計画だ。増強したチームで、Jinaエコシステム全体を広げるための研究開発に投資し、新しいツールやサービスを立ち上げる。

「テキストデータ用に構築された従来の検索システムは、画像や動画、その他のマルチメディアがあふれる世界では機能しません。Jina AIは、企業をモノクロからカラーに変え、高速で拡張性があり、データにとらわれない方法で非構造化データを解き放ちます」とCanaan PartnersのJoydeep Bhattacharyya氏は話す。「オープンソースのフレームワークを使った初期のアプリケーションでは、意思決定の改善や業務の改善、さらには新たな収益源の創出などの機会をニューラル検索が支えており、未来の兆しがすでに見えています」。

画像クレジット:Jina.ai

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

データ活用支援のDATAFLUCTが2.5億円の資金調達、マルチモーダルデータプラットフォーム開発を強化

画像や動画、音声、文書などの異なる様式のデータを統合的に処理する「マルチモーダルデータ」の活用サービスを提供するDATAFLUCT(データフラクト)は11月22日、日本政策金融公庫の融資により2億5000万円を資金調達したことを発表。今回の資金調達は、「新株予約権付融資制度」を活用した融資により実施した。同制度は、新たな事業に取り組み株式公開を目指すベンチャー企業を対象に、融資と同時に日本政策金融公庫が新株予約権を取得することで無担保で資金を供給するというもの。これによりDATAFLUCTの資本性および負債性資金の累計調達金額は6億9000万円となった。

DATAFLUCTは2019年の創業以来、「データを商いに」というビジョンのもと、社会課題の解決を軸に各業界に特化したデータサイエンスサービスを展開。11月時点で公開したサービス数は20を超える。スタートアップの活躍が期待されるESGやSDGsの視点からも新たな課題に取り組み、7月には「脱炭素」を事業機会に変えるアイデアとして、決済データから消費のカーボンフットプリントを可視化するサービスを公開し、事業化に向けた取り組みを進めている。

企業の9割以上の企業がDXに着手できていないという現状の中(経済産業省「DXレポート2(中間取りまとめ)」)、DATAFLUCTは多数の大手企業のDXを支援してきた。今回調達した資金は、マルチモーダルデータプラットフォームサービスを中心とした新規サービス開発および既存サービスの強化、マーケティング強化にあてられる。構造化・非構造化を問わず、あらゆる種類のデータをつなげて資産化し、ノーコード、エンドツーエンドで活用できる環境を提供する「マルチモーダルデータプラットフォーム構想」の実現に向け、新規サービスの投入および既存サービスの強化に順次取り組む予定。

11月下旬には、ノーコードのエンドツーエンド機械学習プラットフォーム(マルチクラウドAutoML)「DATAFLUCT cloud terminal.」をリニューアル。12月中旬には新規サービスとして、社内に散在するデータや外部のオープンデータの集約のほか、非構造化データの構造化などの前処理をAI技術で実行しカタログ化するデータレイク/データウェアハウス「AirLake」(エアーレイク)を提供開始する予定。データ活用支援のDATAFLUCTが2.5億円の資金調達、マルチモーダルデータプラットフォーム開発を強化

今後も、SCM(サプライチェーンマネジメント)のための需要予測プラットフォームサービスやノーコード対話型BIプラットフォームサービスを投入し、オールインワンでソリューションを提供するため事業の強化を目指す。これまでに分析の材料とされていなかったデータを利用したり、データ同士を新たに組み合わせられる環境を提供することで、これまでにない洞察を獲得できる「データの資産化」を推進するサービスを継続的に開発し、専門知識や技術の有無にかかわらず利用できるUI/UXの採用によってデータ活用人材の拡張を図りたいという。

電気通信大学、「つるつる」「さらさら」などオノマトペ・擬態語で画像内のモノの質感を表現するAIを開発

電気通信大学は11月17日、「つるつる」や「さらさら」といったオノマトペ(擬態語)で画像に写っているモノの質感を表現できるAIの開発を発表した。オノマトペという人によって感覚の異なるあいまいさを機械学習させることに成功したということだ。

電気通信大学大学院情報理工学研究科および人工知能先端研究センターの坂本真樹教授らによる研究グループは、1946枚の画像に写っているものの質感を、100人の被験者にオノマトペで表現してもらい、そのデータから深層学習モデルを作り出した。

ここで使われたのが、人の神経細胞をモデルにしたニューラルネットワークだが、特に物体認識の分野で注目されている畳み込みニューラルネットワークの中でも、さらに多層の構造を持つ深層畳み込みニューラルネットワーク(DCNN)を採用した。DCNNには、画像の特徴量を学習の過程で自動で検出できる利点があるからだ。そのため、ものの質感のように「着眼点が人によって異なる」ものにも適用できる。しかし、そもそもAIは曖昧な学習が苦手なので、学習手法になんらかの工夫が必要だった。

そこで研究グループは、音韻が触覚や視覚などの感覚的印象と結びつく現象である「音韻徴性」が強く表れるオノマトペに着目した。これを使えば人の印象を定量化しやすい。研究では、繊維、ガラス、金属、プラスチック、水、葉、革、紙、石、木の10のカテゴリーに分類される1946枚の画像と、これらに対応する3万138語のオノマトペを用意し、100人の被験者に画像を見て表現してもらった。そして、1枚の画像に複数のオノマトペを正解として学習させることで、曖昧さを考慮したDCNNモデルを作ることができた。画像を入力するとオノマトペが出力されるこのモデルでは、約80%の正解率を達成できたという。

「人間のように質感を表現できるコンピューターが実現すれば、人とロボットが共存するといわれる将来、たとえば、ロボットが目の不自由な人に質感を教えるといったことが可能になると期待されます」と研究グループは話している。

機械学習運用基盤(MLOps)スタートアップの話をよく聞くようになってきた

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

ああ、先週の金曜(米国時間11月19日)の午後はちょっと苦労していた。米国にいない人には、ちょっと説明が難しい。簡単に言えば、先週の終わりになって、私たちの警察と司法のシステムのある種の欠陥が明るみに出たのだ(訳注:警察のヘリコプターから撮影されたとみられる大量の監視映像が米国で流出した)。というわけで、今回のExchangeニュースレターは予定よりも短くなる。

DevOps(デブオプス)の市場は多忙で、資金も豊富だ。例えば先日はOpslyft(オプスリフト)の話を聞いた。インドと米国にまたがるこの企業は、ソフトウェアを作成する際のポストデプロイメント側のツールをまとめた統合DevOpsサービスを開発している。すばらしい企業なので、もし資本調達を発表したら、もっと時間をかけて記事を書くことになるだろう。最近の記憶に残る別の例を挙げるなら、先日公開されたプレデプロイメントDevOpsサービスであるGitLab(ギットラボ)がある。

つまり、大小を問わずのハイテク企業はDevOpsツールを構築しているということだ。そして、機械学習運用基盤(MLOps、エムエルオプス)の市場は、大きな兄弟(DevOps)と同じように急速に成長し始めている。TechCrunchは、MLOpsスタートアップのComet(コメット)が今週資金調達したことを記事にしたが、これを読んでThe Exchangeは、MLOpsスタートアップの別の資金調達イベントであるWeights & Biases(ウエイツ&バイアス)のラウンド、を取り上げたことを思い出した。

関連記事:企業の機械学習利用の空隙を満たすMLOpsのスタートアップCometが約57億円調達

こんな話を持ち出したのは、先日私たちがSapphire VenturesのJai Das(ジェイ・ダス)氏にインタビューを行い、AIによる資金調達のトレンドについての情報を収集したからだ。その対話の中で、私はAIOps(エーアイオプス)のアイデアを持ち出し、それが私たちが注目すべき第3の「Ops」カテゴリーになるのではないかと口にした。しかし、ダス氏によれば「MLOpsは基本的にAIOpsです」ということなので、2つの大きなカテゴリーに考え方をほぼ限定することができる。

とはいえ、AI(人工知能)とML(機械学習)は正確には同じものではない(ここであまり争うつもりはない、大まかな話なので)よって、2つの異なるタイプの仕事が、同じソフトウェアの中に収まるかどうかは興味深いところだ。

さらにAIについて

AIのテーマに沿って、今回はAI市場についてもう少し触れてみよう。Anna(アンナ)記者が、世界の人工知能投資の動向を論じた最近のエントリーを踏まえて、メモを用意した。彼女は、今日のAIファンドがどこに使われているのか、また「AI」という呼び名にふさわしいものの定義が変わることで、スタートアップ活動のための資金量がどのように増えていくのかについて考えている。

地理的な格差が私たちの注意を引いたが、AIの定義や応用が広がれば、資金はより均等に分配されると考えている。例えば第3四半期に新たにラテンアメリカのAIユニコーンに選ばれたのは、フードテックのNotCo(ノットコ)とデジタルIDを提供するUnico(ユニコ)の2社だった、またメキシコの融資会社Kueski(キュースキー)も大規模なラウンドを行った。私たちはこれをフィンテックと呼んでいたが、これもまたAIを活用したも企業だ。それがAIの新たな現実だとすれば、ラテンアメリカやアフリカなど、世界のあらゆる場所で、AIを活用して現実の問題に取り組むスタートアップに資金が集まるようになるのも不思議ではない。

来週はカナダにお住まいの方にはぜひ読んでいただきたいものがあるのだが、今回のAI記事の締めくくりとして前回のAI記事には少し遅れてしまったPoint72 VenturesのSri Chandrasekar(スリ・チャンドラセカール)氏からの回答をご紹介しよう。

AIに特化したスタートアップの経済性についての質問に答えて、投資家であるチャンドラセカール氏は以下のようなコメントを寄せてきた。

最近のAIへの関心のほとんどは、大規模なラウンドを調達している企業たちの収益の成長によってもたらされているのだと思います。しかし、その増収の背景にあるのは、商品の需要の高さと労働参加率の低さという極めてシンプルなものなのです。これは、Point72 Venturesのディープテック・ポートフォリオ全体に見られることです。AIは人間を補強して生産性を向上させ、場合によっては自動化に適した作業を人間に代わって行い、人間はより付加価値の高い戦略的な活動に専念できるようになります。これまでは、こうした自動化を導入するための労力が大きかったのですが、(人材不足によって)カスタマーサービスのリクエストに対応する人や受付を担当する人を雇うことができなくなると、自動化が俄然意味を持ち始めます。

最近私たちは、マクロ環境がスタートアップにどのような影響を与えるかについて、多くのことを学んでいる。インフレの進行でインシュアテックの利益が損なわれたり、「the Great Resignation(大退職時代)」が進んだりすることで、AIソフトウェアの需要が高まっているのだ。心に留めておきたい。

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その他のあれこれ

  • ユタ州を拠点とするPodium(ポディウム)の最近の巨額ラウンドを受けて、私たちは同州のより大きなスタートアップシーンを掘り下げたPitchBookの最新記事をご紹介する。ご想像の通り、数字は上向いている。
  • また、巨額ラウンドといえば、Faire(フェア)が今週、シリーズG調達を行った。だから?紹介したい興味深い成長の統計データがあったのだ。Faireは、自らの表現では「オンライン卸売市場」であり、かなり急速に成長しているビジネスだ。同社が「3倍」の収益成長と「年間10億ドル(約1141億円)以上のボリューム」を自己申告したことで、私たちの注目を集めた。もし非公開市場が、この会社をベンチャーキャピタルのフォアグラにしようと太らせているのでなければ、この会社はIPOの候補になるだろう。
  • さて他には?OKRスタートアップのKoan(コーアン)は、シリーズA調達に失敗した後、Gtmhub(ジーティーエムハブ)に売却されることになった。私たちは長年にわたってOKRソフトウェア市場について多くの記事を書いてきたので、この出来事を紹介しておきたいと思う(KoanのCEOは、公の場とメールの両方で、会社の終わりについてのメモを共有してくれたので、この件については、時間があれば来週お伝えすることになるかもしれない)。
  • そして、最後はBraze(ブレーズ)だ。ニューヨークを拠点とするソフトウェアのユニコーン企業であるBrazeは先週上場した。The Exchangeは上場日に同社のリーダーにインタビューを行った。すべてのIPO発表会と同様に、対象となる会社は、発言できること(あまり多くない)とできないこと(ほとんどすべて)に関して、かなり厳しい指導を受けていた。それでも、IPOの準備を始めたのは数年前で、実際に上場するためのプロセスを開始したのは約1年前であったという、準備プロセスについての情報を得ることができた。私たちは、2018年以降資金調達の必要がなかった同社が、なぜ直接上場を目指さなかったのかを知りたいと思った。BrazeのBill Magnuson(ビル・マグナソン)CEOは興味深い話をしてくれた。つまり最近の変化を踏まえれば、従来のやり方のIPOは一部の人々が考えているほど柔軟性に欠けるものではないというのだ。これから数週間、2021年の最後の公開を眺めながら、そのことを考える価値はあると思っている。なお、Brazeは、1株あたり65ドル(約7415円)で上場した後、現在は1株あたり94.16ドル(約1万700円)となっている。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

企業の機械学習利用の空隙を満たすMLOpsのスタートアップCometが約57億円調達

機械学習がビジネスを動かすための欠かせない技術になっているが、その中でモデルを構築する工程は今なお、反復と実験を必要としている。それに対しCometは、モデルをアイデアからプロダクトまで仕上げるための全体的なプラットフォームを作り、米国時間11月18日は5000万ドル(約57億円)のシリーズBを発表した。これに先立つシリーズAは、4月の1300万ドル(約15億円)だった。

OpenViewがリードしたこのBラウンドには、これまでの投資家であるScale Venture PartnersやTrilogy Equity Partners、そしてTwo Sigma Venturesが参加した。Crunchbaseのデータによると、同社の累積調達額は7000万ドル(約80億円)近くになる。

共同創業者でCEOのGideon Mendels(ギデオン・メンデルス)氏によると、プロダクトはノートパソコンでもクラウドでも、あるいはオンプレミスのクラスター上でも、どのようなプラットフォームでも使える。「Cometは実験の追跡調査からモデルのプロダクションのモニタリングまで、機械学習の全ライフサイクルを管理し最適化します。そのためデータサイエンティストに力をつけ、機械学習の技術者が開発を加速できるプラットフォームだ」とメンデルス氏はいう。

メンデルス氏によると、そのアプローチは実績を出し、同社の年間経常収益は2021年5倍になり、UberやZappos、Etsyなど150社がCometを利用している。またOpenViewのパートナーでリード投資家のMackey Craven(マッキー・クレイヴン)氏によると、彼がCometに惹かれたのは、同社が大きなチャンスを抱えた新興市場のための有効なプロダクトを作っているからだ。「私たちが今、目にしているのは、彼らを十分サポートできる大きくて永続性のある市場機会のコアとなりうるような傑出した創業チームと、そしてその市場における変化との稀なる組み合わせです。その変化の理由は、新しい市場の創造または、技術の転位によって新規参入者たちが、私たちが作り出す今後の大きな市場における価値を創造し捉えているからです」とクレイヴン氏はいう。

現在、同社の社員は50名で、4つの大陸の9カ国から来ている。計画では、2022年は100名になる予定だ。メンデルス氏によると、ダイバーシティとインクルージョンは同社の価値システムの重要部分だ。氏は「実はそれこそが、弊社の企業文化の核であり、今でも従業員の35%はマイノリティの人たちであり、今後の雇用でもそれに配慮していく」という。

同社の新製品であるArtifactsは、文書のバージョニングと同じように動作し使えるデータのバージョニングツールだ。それはデータの変更履歴を知るために、データサイエンティストたちが利用する。

メンデルス氏によると「機械学習のパイプラインで仕事をしているときCometのArtifactsがあれば、データの各回のスナップショットを自動的にバージョン化できます。変更を加えるたびに、そのバージョンができます」。そのアドバンテージはいろいろあるが、その主なものは、モデルの訓練に使っているデータがどう変わってきたか、データサイエンティストにわかることであり、訓練時のモデルのデータと最終プロダクションのデータを比べられる。

画像クレジット:yucelyilmaz/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

LED一体型ネットワークカメラによる鉄道車両内のリアルタイム監視に向けMOYAIがエッジAIを開発、ギリアのAI技術を採用

凸版印刷とハイフライヤーズが位置情報・映像・バイタルデータにより保育園での園児の居場所や健康状態を可視化する実証実験

MOYAI(モヤイ)は11月19日、LED一体型ネットワークカメラ「IoTube Pro.W6」「IoTube Pro.4G」においてエッジAIを実現するための開発を、ギリア(Ghelia)のAI技術を用いて行なうことを発表した。IoTube Pro.W6は2022年4月より、またIoTube Pro.4Gは2022年6月より納品開始予定。

IoTube model Pro.シリーズは、遠隔地からのリアルタイム監視と双方向通話が可能なLED一体型製品。鉄道車両内搭載に向け各必要適合規格をすべて取得し、2020年7月に東急電鉄が導入したモデルの製品品質をベースにしたものという。魚眼カメラで撮影した動画をSDメモリーカードに保存可能なほか、通信方式は用途に合わせてWi-Fi 6とLTE/4Gの2種類から選択できる。サーモセンサー・マイク・スピーカー・煙感知センサー・温湿度センサー・3D加速度センサー・BLEビーコン・CO2センサーも搭載している。

また、エッジAI機能により、防犯カメラおよび行動解析が可能なほか、社会的弱者(車椅子・白杖・ベビーカーなど)の発見と見守りや、アフターコロナに向けた密度測定、マスク判定検知、行動分析にも利用できる。鉄道車両内での異常事態検知や非常通報ボタンとの連携、リアルタイム監視による現場状況の可視化、乗客への誘導指示といった活用を想定しており、鉄道車両内での問題発生の抑止力や有事の対応力の強化においても期待されているという。

ギリアでは、AIの社会実装で培った独自技術をベースに、「人物検出」「姿勢検出」「視線検出」など様々な利用シーンに特化したAIソリューションを提供。ギリアのAIモデルを搭載したIoTubeを利用することで、公共空間の安心安全を守るだけではなく、マーケティングや様々なソリューションへの活用が可能としている。

鉄道車両内での応用による異常事態検知では、「視線推定による異常事態感知」(複数の乗客が異常者・事態を凝視する行動)、「動線感知による異常事態感知」(複数の乗客が一定方向に逃げる行動)、「一定もしくは複数の警戒閾値を超えた場合に司令・運転士・車掌にアラートが発報」「AIによる避難者数・転倒者数の把握」などを挙げている。さらに、マイクセンサーの集音データをAIが解析し、通常騒音以外の音域、異常な足音・悲鳴・怒号などを検知するという。

鉄道車両内での応用による異常事態検知〜リアルタイム監視(イメージ)

鉄道車両内での応用による異常事態検知〜リアルタイム監視(イメージ)

このプロダクトで使用されるAI技術を開発したギリアは、「ヒトとAIの共生環境の実現」を目指して、社会や暮らしの中でAIによる能力拡張を実現し、課題解決や効率化に加えてAI技術による歓び・発見・感動体験を提供することをビジョンとするスタートアップ。同社CEOの清水亮氏が創業したUEI(2020年9月解散)とソニーコンピュータサイエンス研究所、ベンチャーキャピタルWiLが2017年に共同設立した。