新技術で天然ガスから水素を生産するC-Zeroがビル・ゲイツ氏の気候テック基金から資金を調達

4年前、Zach Jones(ザック・ジョーンズ)氏はカリフォルニア州サンタバーバラで新しい水素生産技術の商用化を目指すスタートアップC-Zero(シーゼロ)の適正調査に向かった。小さな家族経営の事務所に勤めていた彼は、いずれそのスタートアップの最高経営責任者になろうとは思ってもみなかった。

また、その会社でBreakthrough Energy Ventures(ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ)から資金を調達するようになるなどとは考えもしなかった。それは、主に温室効果ガス削減のための技術を開発する企業や世界最大級の工業、石油、ガス企業を対象にしたかの大富豪が支援する投資団体だ。

当時、ジョーンズ氏は、サウスダコタの小さな投資会社Beryllium Capital(ベリリウム・キャピタル)に勤めており、C-Zeroへの投資機会の可能性を確認していた。C-Zeroは、カリフォルニア大学サンタバーバラ校のEric McFarland(エリック・マクファーランド)教授が開発した新しい水素生産方法の商用化を進めていた。

ただ、1つ問題があった。マクファーランド氏は研究者であり、会社経営については素人である点だ。そこでジョーンズ氏は一歩踏み込んだ。彼の会社は投資を行わなかったが、エコノミスト誌で科学ライターもしていたジョーンズ氏が会社経営を引き受けることになり、PG&E(パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック)とSoCal Gas(サザン・カリフォルニア・ガス)という、カリフォルニアの二大電気ガス事業者からの投資を獲得したのだ。

これらの企業が投資を決めた理由は、後にBreakthrough Energy Venturesがこの新しい会社に興味を示すようになった理由と一致する。再生可能エネルギーの生産が、首をへし折るほどの急加速で台頭し始めたとはいえ、世界の大部分が、まだ当分は化石燃料を使い続ける気でいる。それでも、化石燃料からの温室ガスの排出はゼロにしなければならない。

C-Zeroが開発したのは、天然ガスを水素に変換する技術だ。天然ガスは大変にクリーンな燃料源であり、発電に利用した際に排出されるのは固体炭素のみ。熱触媒で処理することで、水素やアンモニアといった有用な化学物質が抽出できる。

「私たちのCTOは、炭鉱を反転させるのだといっています」とジョーンズ氏は話す。

工業製造プラントの夜景(画像クレジット:Getty Images)

同社の技術は、メタン熱分解というかたちをとっている。独自の化学触媒を使い、他の粒子から水素ガスを抽出する。後に残る廃棄物は固体炭素だ。この処理方法は、廃棄物ゼロでななく(固体炭素が出る)、再生可能でもない(天然ガスが原料)が、現在の低コストな水素生成方法よりもクリーンであり、再生可能性が高い水素生産方法よりもずっと安価だ。

再生可能な水素を生成するには、水に電荷をかけて酸素と水素に分解する必要がある。しかも、酸素分子から水素分子を引き離すために使われるエネルギーは、炭素分子から水素分子を取り出す場合よりもずっと多い。

「水素がおもしろいのは、断続的な再生可能エネルギーの補てん役になるという点です」とジョーンズ氏。「つまりエネルギー貯蔵の問題です。日々または季節ごとの長期的貯蔵には、途方もないコストがかかります。化学燃料は、あらゆるものから炭素排出をなくす上で欠かせない存在です」。

ジョーンズ氏はこの技術を「燃焼前の炭素回収」と説明し、大型車両の燃料、公共電力網と製造業向け産業用電力の発電などの幅広い分野に水素の恩恵を広げるためには必要不可欠と考えている。

そう考えるのは彼だけではない。

「年間1000億ドル(約10兆4543億円)を超える水素が商品として生産されています」と、C-Zeroへの1150万ドル(約12億円)の投資で新たな主導者となったBreakthrough Energy VenturesのCarmichael Roberts(カーマイケル・ロバーツ)氏は話す。「残念なことに、その生産量の圧倒的な大部分が、大量の二酸化炭素を排出する蒸気メタン改質という方法によるものです。C-Zeroが開発したような、低コストで炭素排出量の少ない水素生産方式を探し出すことは農業、化学、製造、輸送などの主要セグメントの脱炭素化に水素分子を主要な担い手として役立てるために、どうしても欠かせません」。

Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏が支援するBreakthrough Energy Ventures主導の今回の新ラウンドにはイタリアの石油、ガス、電力企業の投資部門であるEni Next、三菱重工業、水素技術に特化したベンチャー投資企業AP Venturesが参加している。

三菱重工業は、すでにC-Zeroの技術を利用している。同社は現在、今ある石炭火力発電所を、2025年までに天然ガスと水素で運転できるよう改装している。その目標達成に、C-Zeroの技術が活かされることだろう。

製造業向け水素の低コストな生産方法を開発しただけでなく、C-Zeroは米国税庁が2021年の初めに導入した炭素隔離のための税額控除が適用される初の企業になる可能性がある。これが適用された企業は、隔離された固体炭素1トンにつき20ドル(約2100円)が控除される。固体炭素は、まさにC-Zeroの処理で排出されるものだ。

だがたとえC-Zeroがその技術の商用展開を開始できたとしても、そこでは世界の最大手化学企業との厳しい競争が待ち受けている。

ドイツの大手化学企業BASF(ビーエーエスエフ)は、独自のメタン熱分解方式をほぼ10年をかけて開発し、そのクリーンな水素の生産規模拡大のための試験施設を建設中だ。

さらにヨーロッパの2つの大手企業も水素生産ゲームに加わった。フランスの化学企業Air Liquide(エア・リキード)は、Siemens Energy(シーメンス・エナジー)と水素生産の合弁事業を発表した。

C-Zeroの技術は、今のところは単なる場つなぎのソリューションに過ぎないとジョーンズ氏は自認している。だが彼は、廃棄物から再生可能な天然ガスを生産できる体制に移行した世界では、循環型の水素経済が可能になると展望している。

「100年後、この技術は使われているか?もしそうなら、それは再生可能な天然ガスのおかげです」とジョーンズ氏はいう。そこに至るまでに踏破すべきステップは山ほどある。しかし、ジョーンズ氏は同社のプロジェクトの短期的成功に自信を見せる。

「エネルギー密度の高い燃料の需要はなくなりません。液体水素は、核エネルギーを除けば事実上も最もエネルギー密度が高い燃料です」と彼はいう。「水素は長続きすると思います。最終的に、最も低コストにCO2を排除できる、最も低コストなエネルギーが勝利するのです」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:C-Zeroビル・ゲイツ水素再生可能エネルギー

画像クレジット:Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

再生可能ジェット燃料LanzaJetが英国航空と提携、年間7500トン供給へ

再生可能ジェット燃料のスタートアップLanzaJet(ランザジェット)は、British Airways(ブリティッシュ・エアウェイズ、英国航空)に年間7500トンの燃料添加剤を供給することで同航空と契約をかわした。LanzaJetは長年、再生可能・合成燃料に取り組んでいるLanzaTech(ランザテック)のスピンオフだ。

今回の契約は英国企業とのものとしては2件目で、その前の2019年8月にLanzaJetは英国企業Velocysとも契約を結んでいる。また、LanzaJetにとって2つめのオフテイク契約(長期供給契約)だ。同社は全日本空輸(ANA)との提携も発表している。

契約を通じて英国航空は、額は非公開ながらLanzaJetのジョージアにある初の商業規模施設に投資する。両社によると、2022年末までにLanzaJetが製造した燃料がフライトに使われるようになる。

LanzaJetが数年内に英国航空のために米国に商業施設を設置するという広範な拡張に向けた取り組みの一環だ。

2021年後半にジョージアの施設の建設が始まる計画で、同施設では化学反応を使ってエタノールをジェット燃料添加剤に変える。

植物由来の燃料は、従来のジェット燃料に比べ温室効果ガスの排出を70%減らす。同社によると、これはガソリンあるいはディーゼルで走るクルマ2万7000台を毎年減らすのに相当する。

契約は、LanzaJetの親会社LanzaTechと米エネルギー省のパシフィックノースウェスト国立研究所が数年にもわたって努力した結果だ。

2020年6月にスピンオフしたLanzaJetは親会社LanzaTech、三井物産、Suncor Energy(サンカー・エナジー)などから投資を受けている。そしてLanzaJetが2025年までに大規模展開するという野心的なプログラムを視野に入れている現在、英国航空が他の戦略的投資家2社に加わる。LanzaJetは再生可能燃料のパイプラインを作る大規模プラント4カ所を立ち上げる計画だ。

「低コストで持続可能な燃料のオプションは航空部門の未来にとって重要です。廃棄物や残留物を化石燃料を使用しないSAF(持続可能な航空燃料)にリサイクルすることで、LanzaJetのプロセスは最もフレキシブルな原料溶液を大規模に提供します。英国航空は英政府とともに長らく廃棄物を燃料に変える取り組みを展開してきました」とLanzaJetのCEOであるJimmy Samartzis(ジミー・サマーティス)氏は述べた。「廃棄物ベースの燃料への適切なサポートにより、英国はLanzaJetプラントを商業展開する上で理想的なロケーションになります。これを実現するために英国航空ならびに英政府と引き続きやり取りすることを、そして首相のJet Zeroビジョンを現実のものとすべくサポートを続けることを楽しみにしています」。

LanzaJetの燃料は従来の灯油に最大50%混ぜて商業フライトに使用することが認められている。「航空マーケットが年間900億ガロンのジェット燃料を使っていることを考えると、その半分の450億ガロンの生産能力、そして最大ブレンドレベルに達することは大きな問題です」とLanzaTechのCEOであるJennifer Holmgren(ジェニファー・ホルムグレン)氏は電子メールで述べた。

ホルムグレン氏によると、LanzaJetのジョージア州にある製造施設はゼロウェイスト燃料を生産するためのものだ。英国航空は今後5年間、LanzaJetのバイオ精製所から毎年7500トンの持続可能航空燃料の提供を受ける。

提携は英国航空、Hangar 51(国際航空グループのアクセラレーター)、その他の間でのものだ。

バイオ燃料の取り組みに加え、英国航空は水素燃料企業ZeroAvia(ゼロアビア)のような企業とも協業している。ZeroAviaはAmazon(アマゾン)、Shell(シェル)、Breakthrough Energy Ventures(ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ)から出資を受けている。

「過去100年、我々は英国と世界を、世界と英国を結んできました。そして今後100年の成功を確かなものにするために、我々は持続可能な方法でそれを行わなければなりません」と英国航空CEOのSean Doyle(ショーン・ドイル)氏は述べた。

「持続可能な航空燃料の開発と商業展開の推進は航空産業の脱炭素化にとって重要であり、LanzaJetとの提携はネットゼロ(温室効果ガス排出ゼロ)に向けた英国航空の取り組みの前進を示しています」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:LanzaJet再生可能エネルギーBritish Airwaysイギリス

画像クレジット:Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

太陽光発電に融資するLoanpalが約834億円調達、再生エネルギーへの投資の波は続く

億万長者で投資家のChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏が太陽光発電および住宅改修への融資事業を営むSunlight Financialの13億ドル(約1350億円)での買収への関与を発表してから数日後、複数の投資家が再生可能エネルギーおよび住宅改修への別の融資業者であるLoanpal(ローンパル)への約10億ドル(約1043億円)の現金注入を発表した。

Loanpalへの8億ドル(約834億円)のコミットメントは、世界最大の投資家らが気候へのコミットメントを急ぐ動きと歩調を合わせるかたちとなった。

9兆ドル(約940兆円)の投資運用会社であるBlackrock(ブラックロック)のCEOであるLarry Fink(ラリー・フィンク)氏は米国時間1月26日、気候データのより厳格な会計と報告を求める年次書簡を発表した。Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)も、国際ビジネス委員会と世界経済フォーラムが承認した気候と持続可能性に関する新しい報告基準に取り組むために他の60社とともに加わった。同氏は、Task Force on Climate Related Financial Disclosures(TCFD、気候関連の財務情報開示に関するタスクフォース)という別の報告スキームも承認した。このスキームは世界最大の金融投資家らが支援している。

こうした新しい基準は、温室効果ガス排出量を削減する企業への投資額を増やすだろう。温室効果ガスは地球全体の気候変動に影響している。そして、エネルギー効率がより高い機器や再生可能な設備への切り替えを奨励する融資プログラムは、金融サービス業界にとっておそらく最も成果を得やすい分野だ。

これがNEA、WestCap Group、Brookfield Asset Management、巨大なプライベートエクイティエネルギー投資ファンドのRiverstone Holdings(リバーストーンホールディングス)などの投資家がLoanpalを支援する理由の1つだ。

戦略的投資家に事業の持ち分を与えるセカンダリートランザクション(株主間の株式売買)だったこの取引は、実際には2020年に完了した。取引の結果、NEAのマネージングゼネラルパートナーであり、投資家としての長い経歴も持つScott Sandell(スコット・サンデル)氏と、WestCap GroupのマネージングパートナーであるLaurence Tosi(ローレンス・トシ)氏が同社の取締役会に加わった。

「私たちは多くのプレイヤーを会社に招待しました」と、Loanpalの創業者で会長兼最高経営責任者のHayes Barnard(ヘイズ・バーナード)氏は述べた。Tesla(テスラ)に買収される前のSolarCity(ソーラーシティ)の元最高収益責任者であるバーナード氏は、太陽エネルギー開発で長い経験を持つ。Loanpalでは投資家になる可能性のある人々の中から選べるだけのバランスシートを持っていた。「私たちは数十億ドル(数千億円)規模の企業です」とバーナード氏は述べた。

Loanpalの創業者で会長兼最高経営責任者のヘイズ・バーナード氏(画像クレジット:Loanpal)

「戦略的投資家を招き、彼らにどこで助けてもらえるか、そして彼らにどのように助けてもらえるかについて考えていたのは私たちです」とバーナード氏は語った。

Loanpalは収益性が高く、負債もなく、投資家に毎月配当している。「現在、私たちはバッテリーシステムと組み合わせた約1万5000のソーラーシステムに月額4億ドル(約420億円)の資金を融資しています」とバーナード氏はいう。同社は2018年の立ち上げ以来、合計で59億ドル(約6140億円)の消費者金融ローンを手がけた。同社はまた、ベンダーであるトップソーラー企業の約85%を顧客に数え、約1万2000人のセールスプロフェッショナルを擁している。

こうした数字により、同社は数十億ドル(数千億円)規模の金融サービス会社であるBlackstoneの元最高財務責任者だったトシ氏のような取締役を迎え入れることができた。「彼は資本市場を大規模に招き入れる方法を本当に理解しています」とバーナードは述べた。

とにかくBlackrock、Blackstone、Riverstone、および名前に石(ストーン)や岩(ロック)が入っていないあらゆる金融サービス会社からの注目は、これが大規模な資本の問題であることを示している。世界経済フォーラムによると、世界経済の脱炭素化は10兆ドル(約1040兆円)規模のビジネスだ。または、個人投資を行う人々にとっては、米国時間1月26日の株価で約667億ドル(約7兆円)のGamestopに相当する。

「私たちが今、参入しようとしている短期の市場は、1000億ドル(約10兆4000億円)の市場である持続可能な家庭向けソリューションです」とバーナード氏は述べた。

その10兆ドル(約1040兆円)のかなりの部分は、エネルギー消費を削減するための新しい消費者向け機器とハードウェアの開発・統合からもたらされる予定だ。「バッテリーストレージ市場、スマートサーモスタット市場、ソーラー市場はすべて絡み合い、統合されていると私たちは信じています」とバーナード氏は話した。「全体として最も重要なことは、これがより優れたテクノロジーにすぎないということです。ホワイトハウスに誰がいるかに関係なく、規模は拡大する予定でした。こういったテクノロジーは優れており、住宅所有者のお金を節約します。住宅所有者がやりたいのであれば、これは一種のIQテストです」。

関連記事:SPACで知られるVCの最新の合併はSunlight Financial、再生可能エネルギーブームの兆しか

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Loanpal資金調達再生可能エネルギー

画像クレジット:Will Lester/Inland Valley Daily Bulletin / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラが第4四半期の決算を発表、蓄電池・太陽光発電事業に急成長の兆し

Tesla(テスラ)が最新の決算報告書を発表した。そこには蓄電池と太陽光発電に対するElon Musk(イーロン・マスク)氏の賭けが実を結び始めていることが示されている。

蓄電池事業はこの第4四半期に同社の攻撃的戦略における主役となり、四半期ごとの前年同期比成長率は200%に近づいている。テスラは株主向けプレゼンテーションで「(蓄電池事業の)市場展開は2019年から2020年にかけて大幅に成長しました。当社の蓄電池の総配備量は初めて単年度で3GWhを超え、前年比83%増となりました」と述べている。

太陽光発電事業にも陽光が射し込んだ。年間の太陽光発電の設置量は205MWに増加し、前年比18%増となった。「この成長は製品の簡素化、コスト削減、業界をリードする価格設定など、当社の太陽光発電設備戦略を大幅に改善した結果です」とマスク氏は語った。

Teslaの第4四半期における発電・蓄電事業の収益は7億5200万ドル(約784億円)と、前年同期の4億3600万ドル(約455億円)、第3四半期の5億7900万ドル(約604億円)から増加した。

これは、Teslaの電力事業における急成長の始まりに過ぎないと思われる。同社は長い間、世界最大の電力会社や公益事業会社の1つになりたいと公言しており、世界中の資本が再生可能エネルギーへのシフトを促進するために資源を集めている。

バイデン政権の再生可能エネルギー計画が、その目標に向けて太陽光発電の開発や建造を劇的に推し進めることで、Teslaは大きな恩恵を受ける可能性がある。この大規模なインフラ投資では、再生可能エネルギーを蓄えるために大容量のバッテリーが必要になるだろう。また、大規模な太陽光発電設備も必要になるだろう。

米連邦政府が再生可能エネルギーに資金を移す間にも、民間資本が太陽光発電やエネルギー貯蔵を劇的に後押しするために流入してきている。

先週だけでも、投資家は住宅所有者に太陽光発電設置やオール電化リフォームのために資金を貸す企業に、20億ドル(約2085億円)近くを投入した。SolarCity(ソーラーシティ)の元幹部が設立したある会社は、8億ドル(約834億円)の資金を調達したと米国時間1月27日発表したばかりだ。

少なくとも、これらの資金の一部は、テスラの蓄電池事業と太陽光発電設置事業のキャッシュレジスターを鳴らすことになるだろう。

関連記事:バイデン次期大統領の気候変動対策はグリーンニューディールに依存しない

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Tesla太陽光発電イーロン・マスク再生可能エネルギー決算発表

画像クレジット:Patrick T. Fallon / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

東工大と三菱電機が需要家の取引ニーズに応じP2P電力取引を最適化するブロックチェーン技術開発

東工大と三菱電機が需要家の取引ニーズに応じP2P電力取引を最適化するブロックチェーン技術開発

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、過去1週間分について重要かつこれはという話題をピックアップしていく。今回は2021年1月17日~1月23日の情報から。

東京工業大学三菱電機は1月18日、P2P電力取引を最適化する独自のブロックチェーン技術を開発したと発表した。4月から、同ブロックチェーン技術を用いたP2P電力取引システムの性能評価と探索処理の改良を行い、早期実用化を目指すとした。

売り注文と買い注文の最適な組み合わせを探索する、計算量の少ないブロックチェーン技術開発により、需要家(電力の売り手)の取引端末など小型計算機でもP2P電力取引が可能。また、余剰電力を最大限に活用したい場合は需要家の剰余電力を最大化、需要家の利益を優先させたい場合は需要家全体の利益を最大化するなど売買注文の最適な組み合わせを探索することで、様々な取引ニーズに柔軟に対応可能な取引環境を実現するという。

同P2P電力取引は、三菱電機がP2P電力取引システムの設計と約定機能の設計を担当。東京工業大学がブロックチェーン技術の研究開発、最適約定アルゴリズムの設計を担当している(東京工業大学 科学技術創成研究院 先進エネルギーソリューション研究センターの小田拓也特任教授、情報理工学院 数理・計算科学系の田中圭介教授、同学院 情報工学系のデファゴ・クサヴィエ教授、環境・社会理工学院 イノベーション科学系の梶川裕矢教授らの研究グループ)。

2009年11月から始まった、国によって制定された再生可能エネルギーによって発電された電力の固定価格買取制度「FIT」は、買取期間が2019年より順次終了し、2023年までにすぺての電力が買取期間満了を迎える。そのため、買い取りが終了した再生可能エネルギーは余剰電力となる。

余剰電力となった再生可能エネルギーは、電力の需要家(工場や店舗などの電力使用者)間で余剰電力をその時々の最適な価格で直接融通しあうP2P電力取引が、余剰電力の新たな取引手段として注目を浴びている。

そのような背景のもと、三菱電機と東京工業大学は、P2P電力取引に適した独自のブロックチェーン技術を開発した。

独自ブロックチェーン技術で柔軟な電力取引を実現

Pow(Proof of Work。プルーフ・オブ・ワーク)に代表される、暗号資産(仮想通貨)のコンセンサスアルゴリズムでは、膨大な計算処理を必要とするマイニングが一般的で、多数の高性能なコンピューターが必要となっている。また、売買の注文の約定方式は、条件の合った売り注文と買い注文から取引を順次成立される方式などが採用されており、売買注文の組み合わせの最適化などは行われていなかった。

今回開発した独自ブロックチェーンでは、これらとは異なり、需要家の計算機が取引の目標やデータを共有して、売買注文の最適な組み合わせを少ない計算量で探索する、分散型の最適化アルゴリズムを採用している。この方式を新たなマイニングとして導入し、小型計算機上で動作可能な取引の最適化を実現したという。

独自ブロックチェーンを用いたP2P電力取引では、余剰電力を最大限に活用したい時は需要家の余剰電力の融通量を最大化し、需要家の利益を優先させたい時は需要家全体の利益を最大化するなど、売買注文の最適な組み合わせを探索することで、取引ニーズに柔軟に対応するという。

東工大と三菱電機が需要家の取引ニーズに応じP2P電力取引を最適化するブロックチェーン技術開発

独自ブロックチェーンは、所定時間ごとに締め切られる需要家の売り注文と買い注文の情報と取引の目標をすべての計算機で共有する。それぞれの計算機は、取引目標に適した売買注文の組み合わせを探索し、探索結果を互いに提示する。他からの探索結果を受け取った各計算機は、受け取った中で最も目標に適した取引を選んで新たなブロックを生成し、ブロックチェーンに追加するという。

同P2P電力取引の取引価格は、売り注文の入札価格よりも高い価格、買い注文の入札価格よりも安い価格で約定する。また、入札は繰り返し行われ、取引が成立しなかった需要家は、次回の入札において前回の取引価格を参考に入札価格や入札量を変更することで、取引を成立させる可能性を高めることができる。取引の探索結果が公平になるよう、複数の同等な入札がある場合には無作為に選択するなど、探索過程にランダム性を採り入れているという。

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タグ:再生可能エネルギー(用語)東京工業大学三菱電機日本(国・地域)

日立が設備・サービスごとの再生可能エネルギー使用状況をスマートメーターとブロックチェーンで見える化

日立が設備・サービスごとの再生可能エネルギー使用状況をスマートメーターとブロックチェーンで見える化

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、過去1週間分について重要かつこれはという話題をピックアップしていく。今回は2021年1月17日~1月23日の情報から。

日立製作所(日立)は1月22日、再生可能エネルギー由来の電力で稼働する建物・設備やサービスなどの電力使用状況を、スマートメーターとブロックチェーン技術を活用し見える化するシステムの開発を発表した

また同システムを中央研究所内に導入し、設備やサービス単位での使用電力が100%再生可能エネルギーであることを「Powered by Renewable Energy」として証明するシステムの運用を2月1日より開始する。

同社が開発したシステムは、スマートメーターとブロックチェーン技術を活用し、個々の建物や設備等製造ラインごとの単位まで、再生可能エネルギーの使用量を見える化できるというもの。企業全体として再生可能エネルギーのみでの事業運営の早期実現が困難な場合でも、企業の環境意識の向上や再生可能エネルギー利用の普及に貢献できるという。ちなみにスマートメーターとは、電気使用量をデジタルで計測するほか通信機能を備える電力メーター。スマートメーターを導入することで自動検針と電気使用量のデータ通信が可能になる。

日立は、中央研究所内の「協創棟」と呼ばれる特定の建物やエレベーターなどの特定の設備に対して同システムを導入。使用電力が100%再生可能エネルギーであることを「Powered by Renewable Energy」として証明していく。

日立が設備・サービスごとの再生可能エネルギー使用状況をスマートメーターとブロックチェーンで見える化
同システムにより「Powered by Renewable Energy」を証明できることで、将来的には、個々の製品・サービスが100%再生可能エネルギーで稼働していることを訴求した付加価値の高いサービスが提供可能という。

例えば、再生可能エネルギーで100%充電された電気自動車によるタクシー事業者が、車両に「Powered by Renewable Energy」マークを表示させて乗車サービスを提供することで、環境価値を訴求したサービスの提供が可能になる。

国際的な地球温暖化対策「パリ協定」では、温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質ゼロにすることなどを目標に掲げている。これを受けて、世界の主要国政府および地域が2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという目標の達成を掲げたカーボンニュートラルを宣言している。1月20日には、トランプから政権を引き継いだジョー・バイデン大統領によって、アメリカのパリ協定への復帰が表明され、注目を浴びている。

また企業や団体においては、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的環境イニシアチブ「RE100」(Renewable Energy 100%)に加盟するなど、脱炭素社会の実現に向けた活動が進みつつある。

日立は、同システムの提供により、事業者への再生可能エネルギーの導入を支援し、企業の脱炭素化を促進していく。今後は、様々な業界のパートナー企業と協力し合い、同システムおよび証明コンセプトを活用したサービスの提供に向けた検討を進め、脱炭素社会の実現への貢献を目指すという。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:SDGs(用語)カーボンニュートラル環境問題(用語)再生可能エネルギー(用語)スマートメーター日本(国・地域)

SPACで知られるVCの最新の合併はSunlight Financial、再生可能エネルギーブームの兆しか

元フェイスブック幹部であり、現在はハイファイナンス界のお騒がせ者Chamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏は、太陽エネルギーの融資会社、Sunlight Financialの13億ドル(約1348億円)のSPACとPIPE(限られた投資家を対象に行う私募形式の株式の売出)一石二鳥取引で再びニュースになっている。

Sunlight Financialは、基本的には太陽光発電やバッテリーの設置、その他の住宅改善プロジェクトに資金を提供するために、太陽光発電の設置業者が住宅所有者にローンを提供する方法を与える融資会社だ。

これは世界的な金融システムの壊滅的なメルトダウンの始まりで、狂騒の20年代の再来を示しているかもしれないが、少なくともSunlight取引の狂気には一理ある。

太陽光発電、エネルギー貯蔵、エネルギー効率のアップグレードへのより良いアクセスを提供するために融資を行っているビジネスの背後には、大きな追い風があるからだ

Coatue、Franklin Templeton、BlackRockとともに同氏が主導したこの投資で、Sunlight社の評価額は13億ドル(約1348億円)となる。CrunchbaseによるとSunlight Financialがこれまでに調達した資金は7億500万ドル(約731億円)となっており、それを考えると健全な数字だが、桁外れというわけではない。

Alex Wilhelmの記事が先がけて指摘したように、同社のかなり堅実な財務パフォーマンスを考えると、Sunlight Financialはパンデミックの中でも、遅かれ早かれ公開市場に参入した可能性が高い。

数字を見ると、同社は1、2年で株式を公開できたであろうことはいささか明らかで、もう1年成長すれば、普通に上場するのに十分な収益があったと思われる。このSPAC主導の取引により、より早く上場し、スケールしながらより多くの現金を手にすることができる。おそらくそれがSunlight社にとってのこのSPACの価値だろう。

またSunlightは、機関投資家からの需要が高く同様の企業が不足しているときに、再生可能エネルギー企業として公開されているというメリットも得る。

2020年の間に、気候変動の影響を緩和したり、地球の急速な温暖化を遅らせたりするのに役立つビジネスを支援する方法を見つけるために、大金が動いた

CPP Investmentsのマネージング・ディレクターでサステイナブル投資の責任者であるRichard Manley(リチャード・マンリー)氏は昨年のインタビューでこう語っている。「気候変動リスクを軽減するための業界のコミットメントは、意思決定者の間で変革を推進する機運が高まっていることを投資家に示すものです」。「株式市場では、中核事業子会社や企業のVC部門への投資によるエキサイティングな移行ソリューションは、パブリック・エクイティ投資家が求めてきた、真に焦点を絞った投資機会を提供していないとの評価が高まっています」とも。

パリハピティヤ氏の最新のSPACの立ち上げで、その傾向は2021年にも続きそうだ。Spring Lane Capitalのゼネラルパートナーで長年気候技術に投資してきたRob Day(ロブ・デイ)氏は、昨年末にダイレクトメッセージで以下のように書いていた:

デイ氏によると、「現在の(SPACの)波は、機関投資家の世界がこの24ヶ月間に、気候ソリューションが2020年代以降の主要な成長分野になると確信するようになったにもかかわらず、投資先として利用可能なオプションが見当たらなかったからです」とのこと。

「公開されている『グリーン』企業はすでに買収されており、プライベート・エクイティの選択肢も同様に迫力にかけていました(VCの場合は小規模で、大規模プロジェクトの場合は低リターン)。そこにEVなどへの熱意を持った個人投資家のロビンフッド市場を投入すれば、このようなことが起こるためのちょうどいいレシピができあがるわけです」。

関連記事:chaintopeが佐賀市ごみ発電の環境価値をブロックチェーンで記録・電子証書化するシステムを開発

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:再生可能エネルギー

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(翻訳:Nakazato)

chaintopeが佐賀市ごみ発電の環境価値をブロックチェーンで記録・電子証書化するシステムを開発

chaintopeが佐賀市ごみ発電の環境価値をブロックチェーンで記録・電子証書化するシステムを開発

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、過去1週間分について重要かつこれはという話題をピックアップしていく。今回は2021年1月10日~1月16日の情報から。

chaintopeみやまパワーHDは1月12日、佐賀県佐賀市における「地域循環共生圏」構想の一環として、佐賀市内でのエネルギーなどの地域内循環を可視化し、ごみ発電電力の地産地消による環境価値を電子証書化するシステムを試作し、「地域循環共生圏」の具体化可能性の検証作業を行うことを発表した

2050年脱炭素社会の実現を推進する佐賀市は、2010年に環境都市宣言を行い「地域循環共生圏」を推進。「資源循環」「炭素循環」「人の循環」「経済循環」をキーワードに、地域の資源や可能性について再考・有効活用しながら環境・経済・社会を改善し、資源を融通し合うネットワークをつくろうと、市民と共に取り組んでいる。

みやまパワーHDとchaintopeは、このような地域循環共生圏内での価値の循環を、ブロックチェーン技術により可視化し、さらに多くの市民の行動変容を促し、脱炭素と地域経済活性化につながることを期待し、同検証作業の実施を行っていく。

chaintopeが佐賀市ごみ発電の環境価値をブロックチェーンで記録・電子証書化するシステムを開発

佐賀市は、ごみ処理を佐賀市清掃工場に集約し、清掃工場で生み出されるごみ発電による電気(再生可能エネルギー)の量を増やした。ごみ発電による再生可能エネルギーは、市内の公共施設に供給できるようになっており、「電力の地産地消」を行っている。ちなみに清掃工場で生み出される電力量は平成30年度実績で3203万kWh/年、そのうちの1568万kWh/年が佐賀市内の小中学校および公共施設112カ所にて利用され、1700万kWh/年は他に売却されたという実績をあげている。

また、同清掃工場は、ごみを焼却した際に発生する排ガスから二酸化炭素(CO2)のみを分離回収する設備を設置。回収したCO2を利活用する日本初CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)プラントという。CO2を野菜や藻類培養に利用する「炭素循環」も行っている。

再生可能エネルギーの発電・利用実績をブロックチェーンに記録し、電力が地産地消された証明として「資源循環証書」を発行

しかし、こうした活動によって生まれた環境価値は、誰が見ても正しいと認められる形で公開することが難しいのが課題という。そこで、Chaintopeが開発したブロックチェーン「Tapyrus」(タピルス)を用いて、誰もがその真正性を確認できる電子証書として公開する取り組みを開始する。環境価値を電子証書として公開することで、環境価値取引などの新しいビジネスの創造や、将来は地域通貨との連携による地域経済活性化につながることも見込まれるとしている。

chaintopeが佐賀市ごみ発電の環境価値をブロックチェーンで記録・電子証書化するシステムを開発
同取り組みは、第1段階として、佐賀市清掃工場でのCO2排出削減量の見える化、価値化から開始する。具体的には、清掃工場による再生可能エネルギー発電実績と公共施設での再生可能エネルギー電気供給サービス利用実績をブロックチェーンに記録し、佐賀市内にて電力が地産地消された証明として「資源循環証書」を発行する実証実験を行っていく。

またChaintopeは、資源循環証書の実証実験を足がかりに、将来的には、地域循環共生圏づくりにおける「炭素循環」「人の循環」「経済循環」の取り組みについてもTapyrusを利用した地域通貨の仕組みなどを使い、持続可能なまちづくりへの貢献を目指す。

「J-クレジット制度」との連携も視野

さらに、国家の新たな成長戦略として位置づけられたエネルギー・環境分野における「J-クレジット制度」との連携も視野に入れていく。J-クレジット制度は、再生可能エネルギー設備や省エネルギー機器の導入などによる、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度。同制度により創出されたクレジットは、低炭素社会実行計画の目標達成やカーボンオフセットなど、様々な用途に活用できる。

エンタープライズ向けブロックチェーン「Tapyrus」(タピルス)

今回の取り組みで活用するブロックチェーンTapyrusは、Chaintopeが独自に研究開発をしてきたエンタープライズ向けブロックチェーンおよび、最先端のブロックチェーン関連技術を統合的に利用できるシステム開発プラットフォーム。同社はTapyrusをオープンソースとして提供しており、ソースコードはGitHubで公開している。

Tapyrusは、誰でもネットワークに参加でき自由に分散台帳を閲覧できる透明性を持つパブリックチェーンでありながら、複数法人で共同運営するコンソーシアムの方針に合わせて、新しい記録を分散台帳に書き込む際のルールを設計できる。また、開発者はTapyrusプラットフォームの各種サービス(特許技術を含む)を利用し、ブロックチェーンの複雑な要素技術を意識することなく、安全かつ高信頼のアプリケーションを開発できるという。

chaintopeが佐賀市ごみ発電の環境価値をブロックチェーンで記録・電子証書化するシステムを開発

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:オープンソース / Open Source(用語)環境問題(用語)再生可能エネルギー(用語)J-クレジット
Tapyruschaintope日本(国・地域)

AI駆動エネルギースタートアップの英オクトパスが、東京ガスから208億円の投資を受けて評価額2000億円超え

チャレンジャーバンクという言葉を耳にしたことはあるだろうか?今度はチェレンジャーエネルギーサプライヤーの登場だ。英国のOctopus Energy(オクトパス・エナジー)は、合弁会社の立ち上げに向けて、9.7%の株式と引き換えに東京ガスから1億5000万ポンド(約208億円)の出資を受けた。この結果同社の評価額は15億ポンド(約2082億円)となった。合弁会社の株式の30%はOctopusが保有し、過半数を東京ガスが保有する。これまでの5年間の運営を経て、Octopusは、British Gas(ブリティッシュ・ガス)のオーナー企業であるCentrica(セントリカ)の評価額に近づいている。

Octopusは、革新的なAIとデータベースのプラットフォームを使ってグリッド周りの負荷をバランスさせる100%再生可能電力運用をトレードマークに、日本でのブランドをスタートする。同社のソフトウェアであるKraken(クラーケン)は、Origin Energy(オリジン・エナジー)、nPower(エヌパワー)、E.On(イーオン)、Good Energy(グッド・エナジー)、Hanwha Corporation(ハンファ・コーポレーション)などにもライセンスされており、世界中で1700万のエネルギーアカウントにサービスを提供している。

「この合弁会社は、当社の再生可能エネルギーと技術に関するエキサイティングなアプローチを、世界最大の競争の激しいエネルギー市場に持ち込みます。また今回の投資は、世界的なエネルギー革命を起こすという当社の使命をさらに加速するものです」とOctopus CEOのGreg Jackson(グレッグ・ジャクソン)氏は声明の中で語っている。

オーストラリアのOrigin Energyもまた、2020年4月に株式の20%を購入した際の大きな投資に続き、Octopusの3700万ポンド(約51億4000万円)分の株式を購入する。

Octopusは2027年までに全世界で1億人の顧客を目指す意志を表明しており、最近では米国、オーストラリア、ドイツ、ニュージーランドでもサービスを開始している。

同社によれば、英国では、Octopusはエネルギー供給市場で5%のシェアを持ち、小売ポートフォリオには180万世帯が含まれているという。

東京ガスの内田高史社長は「本提携を通じて、お客さま1人ひとりに合わせて価値を創出・提供し、お客さまの豊かな暮らしに貢献してまいります」と述べている。

日本の再生可能エネルギーの普及は英国の半分ほどであり(2019年時点での電力に占める日本の再生可能エネルギーは18.9%なのに対し、英国では37.9%)、成長の可能性は大きい。日本の菅義偉首相は、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという目標を掲げている。

また、英国においてOctopusは、電気自動車のローミングネットワークElectric Juice(エレクトリック・ジュース)を立ち上げ、Tesla(テスラ)と提携してTesla Power(テスラ・パワー)を立ち上げている。

【参考】東京ガスプレスリリースをここで確認できる。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:Octopus Energy東京ガス再生可能エネルギー電力網資金調達

画像クレジット:Octopus

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(翻訳:sako)

電気自動車を活用した電力需給調整とカーシェアを展開する「REXEV」が約7.4億円調達

電気自動車を活用した電力需給調整とカーシェアを展開する「REXEV」が約7.4億円調達

電気自動車(EV)を活用した電力需給調整およびカーシェアリング事業を行う「REXEV」(レクシヴ)は12月21日、第三者割当増資による総額約7.4億円の資金調達を発表した。引受先は、リードインベスターのジャフコ グループ、三井住友ファイナンス&リース、エースタート、大阪ガス、京セラ、東芝など。

調達した資金は、さらなる技術開発、MaaSとの連携、地域レジリエンス向上のためのEV活用の検討、サービス開発に利用する。また引受先企業とは、技術面・営業面でも協力していく。

REXEVは、EVが備えるモビリティと蓄電池の二面性に着目し、これらの価値総和を最大化することにより、環境と経済のどちらも持続可能となるソリューションの実現を目指しているという。またe-モビリティへの充電電力を再生可能エネルギーの普及に合わせ転換していくことで、経済的かつ社会全体での環境対策に資する、「Well-to-Wheel」(WtW。油田からタイヤまで。資源の採掘から車が走るところまでの意)の考え方を取り入れた事業展開を行っていくとしている。

REXEVは、持続可能な社会の実現を目指し、エネルギー企業の新規事業開発、企業のコスト削減および環境対策を支援。またカーシェアリングサービス「eemo」(イーモ。Android版iOS版)を神奈川県小田原市を中心に2020年6月に開始。全車EVを採用しており、カーシェアリングで貸し出す一方、貸し出されていないEVは電力の調整力として電力需給調整などに活用している。

小田原市および湘南電力と協定を締結し事業を行っており、再生可能エネルギー利用の最大化と、電力の安定化を目指して独自のエネルギー・マネジメント技術を開発。

また小田原市とは防災に関する協定を結び、災害時にはEVを電源として利用し、避難所などでの電力供給を無償で行う。現時点で小田原・箱根地域で34台が稼働しており、2022年度末までの実証期間中に100台まで規模を拡大する予定。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:eemoWell-to-Wheel再生可能エネルギー(用語)資金調達(用語)電気自動車 / EV(用語)REXEV日本(国・地域)

アップル共同創業者ウォズニアック氏がエネルギー効率化投資を支援するブロックチェーン基盤サービス開始

アップル共同創業者ウォズニアック氏がエネルギー効率化投資を支援するブロックチェーン基盤サービス開始

Apple(アップル)の共同創業者であるSteve Wozniak(スティーブ・ウォズニアック)氏は、マルタ島において新会社EFFORCE(エフォース)を共同設立し、エネルギー効率化プロジェクトへの投資に特化したブロックチェーン基盤プラットフォーム「EFFORCE」を開始した。

アップル共同創業者ウォズニアック氏がエネルギー効率化投資を支援するブロックチェーン基盤サービス開始
EFFORCEは、ブロックチェーンと暗号資産(仮想通貨)WOZXを活用したウェブプラットフォームを介して、投資家が世界中のエネルギー効率化プロジェクトに対して投資・支援できるサービス。

同社は12月3日、WOZXが暗号資産取引所HBTC.COMに上場をはたし、上場後わずか13分でその時価総額を上場価格の10倍となる9億5000万ドル(988億円相当)に達したことを発表した。また、新たに12月7日にも取引所Bithumb GlobalでWOZXが上場をはたしたことを報告している。ちなみに両取引所におけるWOZXの取引は、いずれもステーブルコインUSDTでのみ売買可能。

企業がコストをかけずにエネルギー効率化対策に取り組めるようにする

EFFORCEは、企業がコストをかけずにエネルギー効率化対策に取り組めるようにし、その節約により生まれた流動性をより他の重要な業務に投資できるようにする。EFFORCEによって、エネルギー効率化市場は、小規模な個人投資家から大規模な投資機関まで国境を問わず参加可能となるという。投資家は、WOZXトークンにより譲渡可能になったエネルギー節約分を収益化できるとしている。

同社によると、エネルギー効率化対策における事業は、金融や規制上の課題が複雑に絡み合い資金調達が難しいことが課題となっており、経済成長のブレーキになっているという。

Wozniak氏がAppleを立ち上げた当初の目標は、より小さくて効率の良い機械(コンピューター)を作り、誰もが手に入れられるようにすることだったという。Wozniak氏はEFFORCEへの参加を通じて、引き続き効率性に焦点をあてて、エネルギー改善へのビジネスアクセスを広げ、エネルギー効率化投資への一般の参加を拡大させることを目標とするそうだ。

「世界のエネルギー消費量とCO2排出量は指数関数的に増加し、気候変動と環境への深刻な影響をもたらしている。私たちは習慣を変えることなく、エネルギー使用量を改善し、エネルギー消費量を減らせる。より多くのエネルギーを改善するだけで環境を救える」とWozniak氏。「私たちは、世界中のエネルギー効率化プロジェクトに誰もが参加し、資金的な利益を得るとともに、有意義な環境変化を生み出せる最初の分散型プラットフォームを目指し、EFFORCEを立ち上げた」と語っている。

エネルギー効率化対策に立ち向かう多くの中小企業は苦戦する中、EFFORCEのプロジェクトリーダーで共同設立者のJacopo Visetti氏は「EFFORCEを利用することで、事業主はエネルギー改善プロジェクトをウェブ上で安全に登録し、世界中の投資家から資金を確保できる。そうすることで、事業主はインフラ整備や雇用など、他の重要なプロジェクトに使える資金を増やせる」と発言している。

EFFORCEにより、資金調達やプロジェクトの実施プロセスを合理化

現在、エネルギー効率化プロジェクトの市場規模は、2500億ドル(26兆円相当)という驚異的な規模に達しているという。市場は民間企業が貢献しているだけでなく、様々な政府もエネルギー効率化に向け多額の投資・資金提供を行っている。しかし、国際エネルギー機関(IEA)の「効率的な世界シナリオ」の達成には、このセクターの投資規模を2025年までに2倍以上の5800億ドル(60兆円相当)に拡大させる必要があるという。

その実現において、エネルギーサービス企業(ESCO)と呼ばれる投資家グループは、エネルギー効率改善に向け多額の資金を用意する必要があるものの、従来の銀行チャネルに頼ることができないケースが少なくないという。銀行には、投資収益率を適切に評価する技術的な専門知識が不足しているためだ。

対照的に、EFFORCEのプラットフォームは市場を民主化し、それを補っていく。EFFORCEを使用することで、資金調達やプロジェクトの実施プロセスを合理化する。ESCO企業は、エネルギー効率化を目的としたプロジェクトをEFFORCEに登録し、それをEFFORCEチームが検証していく。

投資の必要性評価、予想されるリターンの計算など記載したエネルギー性能契約書(EPC)の作成

EFFORCEは、投資の必要性の評価、予想されるリターンの計算、企業と投資家のための節約量とリターンの期間を詳細に記載したエネルギー性能契約書(EPC)の作成など、企業と共にプロジェクトを開発する。その後に、プラットフォームは、クラウドファンディングに向けてプロジェクトをリストアップする。プラットフォームの参加者は、WOZXを使ってプロジェクトを購入できる。

EFFORCEは、ブロックチェーンに接続されたスマートメーターを通じて、これらのプロジェクトの省エネ性能を測定する。節約によって蓄積されたデータは、投資家が使用または販売できる投資家節約エネルギークレジットとしてプロフィールに利益として分配される仕組みを備えるという。

なお、EFFORCEについては同社よりホワイトペーパーが公開されている。詳細については、そちらを参照されたし。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:環境問題(用語)再生可能エネルギー(用語)steve wozniak

ブロックチェーンを活用した、次世代電力システムにおけるP2P電力取引の事業成立要因を検証開始

ブロックチェーンを活用した、次世代電力システムにおけるP2P電力取引の事業成立要因を検証開始

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、過去1週間分について重要かつこれはという話題をピックアップしていく。今回は2020年11月29日~12月5日の情報から。

KDDIグループのエナリスauフィナンシャルホールディングスauペイメントディーカレットの4社は12月4日、次世代電力システムにおけるP2P電力取引プラットフォームの社会実装を目指し、P2P取引事業が成立する要因を検証する共同実証事業を開始した

同実証実験は、東京都が実施する「令和2年度 次世代電力システムにおけるP2P電力取引プラットフォーム構築実証事業」に採択されたエナリスとマルイファシリティーズ、戸田建設の共同プロジェクトの一環として行う。「スマート東京」の実現に貢献していくという。

今回の実証では、エナリスの「ブロックチェーン上で電力取引を管理するプラットフォーム」でトラッキングした電力取引結果を基に、ディーカレットの「ブロックチェーン上でデジタル通貨を発行・管理するプラットフォーム」を利用し環境価値トークンの発行・管理を行う。これにより、P2P電力取引スキームにおける将来的なトークン活用実用化に向けた課題を洗い出していく。実施期間は、2020年11月20日~2021年2月末。

実施内容

  • エナリスが卒FITプロシューマー(生産消費者)から環境価値が含まれた電力を調達し、真に再エネ価値を求めるRE100企業へ電力とともに環境価値を供給。卒FITとは、FIT(固定価格買取制度)による電力の買取期間が満了した太陽光発電のこと。プロシューマーは、「プロデューサー」(producer。生産者)と「コンシューマー」(consumer。消費者)を組み合わせた造語
  • auフィナンシャルホールディングスの子会社かつ資金移動業登録業者であるauペイメントが、実証事業用の環境価値トークンを発行し、発行されたトークンをエナリスがRE100企業に配布
  • RE100企業は、卒FITプロシューマーから譲渡された再生可能エネルギーの環境価値に対する謝礼として、環境価値トークンを譲渡
  • 実証事業終了後、卒FITプロシューマーは提供した環境価値の謝礼として受け取るauペイメント発行のau PAY残高を決済に利用できる
  • ディーカレットは自社で構築した「ブロックチェーン上でデジタル通貨を発行・管理するプラットフォーム」を活用し、環境価値トークンの発行、流通、償却を行う

検証内容

  • 環境価値に対するトークンでの謝礼譲渡:「卒FIT電力に含まれる環境価値」および「太陽光発電自家消費分の環境価値」への謝礼支払手段としてのトークン活用の課題を洗い出す
  • 現行制度に基づいたP2P電力取引の検証:エナリスの持つ小売電気事業に関する豊富なノウハウを活かして現行の電気事業法に準拠した形態でP2P取引を行い、業務上・制度上の課題を検証
  • 非FIT電源とRE100企業需要家が実際に取引に参加する実証:手軽に集められるFIT電源を利用せず、非FIT電源(卒FITプロシューマー)から環境価値が付与された電力を調達し、真に再エネ価値を求めるRE100企業へ供給するスキームの検証

エナリスは、2017年から新しいエネルギーシステムの構築を目指し、ブロックチェーンを使った実証事業に取り組んでいる。2019年にはセキュアかつオープンに電力取引を行うブロックチェーンプラットフォームを開発し、電力のトラッキングを可能にした。さらにエリナスは、同プラットフォームと分散電源エネルギーマネジメントシステム(DERMS)を統合し、分散電源の制御と余剰電力の取引ができる仕組みの構築に取り組んできた。

国内においては、これまでもP2P電力取引に関する実証事業が実施されてきたが、「小売電気事業者」が想定されていないため、現行制度においては実現は難しいとされていた。エナリスの実証実験では、P2P電力取引による小売電気事業者側のメリットを検証し、現在の電気事業法下で実現可能な電力と環境価値のP2P取引システムを構築していくという。

「令和2年度 次世代電力システムにおけるP2P電力取引プラットフォーム構築実証事業」に採択された実証事業では、「RE100」に加盟する丸井グループの小売電気事業者マルイファシリティーズと、同じくRE100に加盟する戸田建設と共同で実施。電源トラッキングやP2P取引の契約・記録などを行うP2P電力取引プラットフォームには、実際にエナリスのブロックチェーンプラットフォームを活用している。RE100は、事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる国際イニシアチブを指す。

エナリスは同取り組みにて、国によって制定された再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の買取期間が2019年に終了したことにより発生した太陽光発電による大量の余剰電力、いわゆる卒FITプロシューマーから環境価値が含まれた電力を調達し、真に再エネ価値を求めるRE100企業へ電力とともに環境価値を供給する。

一方のKDDI、auフィナンシャルグループは、スマホ・セントリック(中心)な決済・金融体験を提供する「スマートマネー構想」の実現に向けて、ディーカレットに出資するなどフィンテックを活用する研究を推進。今回は「デジタル通貨ビジネスの推進および新たな顧客体験価値の創出」に関する取り組みの一環として実証事業に取り組む。

同実証実験においてauフィナンシャルホールディングスの子会社かつ資金移動業登録業者であるauペイメントは、実証事業用の環境価値トークンを発行し、それをエナリスがRE100企業に配布する。RE100企業は、卒FITプロシューマーから譲渡された再生可能エネルギーの環境価値に対する謝礼として環境価値トークンを譲渡していく。

実証事業終了後、卒FITプロシューマーは環境価値の謝礼をとして受け取るauペイメント発行のau PAY残高を決済利用できる。

これらの環境価値トークンの発行・流通・償却については、ディーカレットが自社構築する「ブロックチェーン上でデジタル通貨を発行・管理するプラットフォーム」を使用する。

今回検証する内容は、環境価値に対するトークンでの謝礼譲渡において「卒FIT電力に含まれる環境価値」および「太陽光発電自家消費分の環境価値」への謝礼支払手段における課題を洗い出すこと。また、現行制度に基づいたP2P電力取引の検証として、現行の電気事業法に準拠した形態でP2P取引を行い、業務上・制度上の課題について検証するとともに、加えてRE100企業が実際に卒FITプロシューマーから環境価値が付与された電力を調達する電力供給スキームを検証していく。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:auフィナンシャルホールディングスau PAYauペイメントエナリス再生可能エネルギー(用語)ディーカレット

2020年に全世界で増えた発電能力の約90%が再生可能エネルギー

国際エネルギー機関(IEA)によると、新型コロナウイルスのパンデミックへの対応によって引き起こされた電力セクターにおける減速にも関わらず、再生可能エネルギーは2020年にしっかりと成長し、2020年増えた発電能力の約90%を占めた。

IEAの「Renewables 2020」によると、中国と米国で新しい再エネプロジェクトが急増し、世界の新規電力のうち約200ギガワットを占めた。

増加したのは主に水力、太陽光、風力だ。風力と太陽光の発電資産は中国と米国の両方で30%増加する見込みで、これは開発業者が期限切れ予定のインセンティブを利用するためだ。

IEAはインドと欧州連合でも再エネ発電能力が10%増加すると見込む。これは2015年以来業界で最も速い成長だ。

供給増加の一因は新型コロナのパンデミックにより遅延していたプロジェクトの試運転開始であり、これによりサプライチェーンが混乱し、建設が停止された。

IEA事務局長のFatih Birol(ファティ・ビロル)博士は声明で「再生可能エネルギーは、パンデミックが引き起こした困難に立ち向かい、力強い成長を示しました。他のエネルギーは苦戦しています」と述べた。「このセクターの回復力と前向きな見通しは、投資家からの継続的な強い意欲にはっきりと反映されています。今年と来年、発電能力の増加により新たな記録が樹立され、将来はさらに明るいものになるでしょう」。

2020年1月から10月までの10カ月間で、中国、インド、EUでオークションにかけられた再エネの発電能力が15%増えた。IEAによると、上場再生エネ機器メーカーやプロジェクト開発業者の株価は、ほとんどの株価指数やエネルギーセクター全体を上回った。

IEAは、この成功の多くが続くためには継続的な政治的支援が必要だと指摘する。インセンティブの期限切れにともない需要が減る可能性があるが、政府が補助金プログラムの継続についてある程度の確実性を示せば、太陽光と風力は2022年までにさらに25%増加する可能性がある。適切な政策があれば、太陽光発電設備は2022年までに記録的な150ギガワットに達する可能性がある。わずか約3年で40%の増加だ。

「再生可能エネルギーは、新型コロナ危機に対しては回復力がありますが、政策の不確実性に対しては回復力がありません」とビロル博士は声明で述べた。「政府がこれらの問題に取り組めば、持続可能な回復をもたらし、クリーンエネルギーへの移行を加速することができます。例えば米国で次期政権が提案するクリーン電力政策が実施されれば、太陽光発電と風力発電のより迅速な展開につながり、電力セクターのより迅速な脱炭素化に貢献する可能性があります」。

ビロル博士によると、IEAの予測通りなら再エネは2025年までに世界最大の電力源になる可能性がある。

「その時までに再生可能エネルギーは世界の電力の3分の1を供給すると予想されており、その発電能力は現在の中国における総発電能力の2倍になるでしょう」とビロル博士は声明で述べた。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:再生可能エネルギー

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

AIによるダイナミックプライシング活用の電力サービス開始、電気自動車の充電シフト実証実験も

AIによるダイナミックプライシング活用の電力サービス開始、電気自動車の充電シフト実証実験も

デジタルイノベーションで脱炭素化社会の実現を目指すCleanTech(クリーンテック)企業のアークエルテクノロジーズは11月5日、業界初のAIによるダイナミックプライシングを活用した電力サービス「アークエルエナジー」を発表した。AIを活用し、変動する価格で電力を購入できる「DPプラン」、100%クリーンなCO2フリー電気だけを使用した基本料金無料の従量料金プラン「フラットプラン」を用意。両プランともすでに開始済みで、九州エリアより順次全国展開予定。

また、経済産業省・資源エネルギー庁の実証事業「令和2年度 ダイナミックプライシングによる電動車の充電シフト実証事業」に採択され、電力卸取引市場の動きによって価格が変動する「ダイナミックプライシング」による電気自動車(EV)の充電シフトに関する実証実験を、11月1日より開始したと明らかにした。

AIによるダイナミックプライシングを活用した電力サービス「アークエルエナジー」

アークエルエナジーは、利用者のニーズに合わせて「DPプラン」(ディーピープラン)と「フラットプラン」というふたつの料金プランからCO2フリーなクリーン電力の購入方法を選べる電力サービス。

DPプランは、AIを活用し、変動する価格で電力を購入できる業界初のダイナミックプライシングを活用したプラン。税別1000円の月額利用料を支払うことで、30分ごとに変動する電気料金を原価で購入可能となる。利用者は、事前にLINEで通知された電気料金を参考に安いタイミングで電気を利用することで、家庭の電気料金を1〜3割節約できるという。AIによるダイナミックプライシングを活用した電力サービス「アークエルエナジー」

AIによるダイナミックプライシングを活用した電力サービス「アークエルエナジー」

電力小売市場では、クリーン電力の供給量が増加する昼の時間帯に電気料金が安くなる傾向にあるため、同サービスが普及し安価な電力の利用を促進することで、クリーン電力の有効活用促進を狙う。

DPプランは、30分ごとに変動する日本電力卸売市場(JEPX)の価格によって電気料金(従量料金の部分)を決定。託送料と電気料金はアークエルテクノロジーズが原価で提供する。また、アプリからマイページを参照することで、EVの充電履歴や料金を確認できる。

料金の概要は、サービス料(月1000円固定)+託送料(kWhあたり固定)+電気料金(kWhあたり変動)の合計(再エネ賦課金は別途発生)となっている。

例えば、一般的な戸建て3人世帯の電気代(九州電力の従量電灯B 40A契約で、毎月556kWh使用の場合)では、毎月約5164円(約35%)節約可能としている。AIによるダイナミックプライシングを活用した電力サービス「アークエルエナジー」AIによるダイナミックプライシングを活用した電力サービス「アークエルエナジー」

フラットプランは、100%クリーンなCO2フリー電気だけを使用。基本料金無料で、使用量に応じて電気料金を支払う従量料金プランとなっている。一般的な電力会社とは異なり、どれだけ電力を使用しても1kWhあたりの単価が変わらないため月々の支払い料金を抑えられる(九州電力管内においては、一律1kWhあたり税込23.3円で提供)。

例えば、一般的な戸建て3人世帯の電気代(九州電力の従量電灯B 40A契約で、毎月556kWh使用の場合)では、毎月約1745円(約11%)節約可能としている。AIによるダイナミックプライシングを活用した電力サービス「アークエルエナジー」

「ダイナミックプライシング」による電気自動車(EV)の充電シフトに関する実証実験

今回の実証実験では、EVやPHV(プラグインハイブリッド自動車)がさらに普及した未来社会に向け、クリーンエネルギーを有効活用した電力供給をどのように実現していくかの検証を行う。令和2年(2020年)9月から九州電力エリアで実証実験を開始し、令和3年度(2020年度)以降は全国に拡大予定。

アークエルテクノロジーズが小売電気事業者として、日本卸電力取引所(JEPX)での取引を活用し、電力市場価格に連動した料金契約サービスを提供。30分ごとに電気料金が変化している中、同社が料金情報をLINEやウェブ上から利用者に通知することで、電気料金が安い時間帯での充電を促進できるとしている。

実証実験における利用者への情報通知は、同社が開発を進めるエッジAIとIoT機器を活用した「充電を最適化するアルゴリズム」をもとにして行う予定。現在、東京大学先端科学技術研究センターと連携し、同センターの特任助教である辻真吾氏を中心とした学術指導のもと、開発を進めている。

また実証実験にともない、同社ではモニターを募集。モニターは、同社開発のIoT機器をEV(ダッシュボード)と自宅(ブレーカー周辺)に設置する。

実証実験で使用する車載器

実証実験で使用する車載器

実証実験で使用する検定なしメーター(自宅/事務所に設置)

実証実験で使用する検定なしメーター(自宅/事務所に設置)

電気料金が安い時間帯の充電とクリーンエネルギーの有効活用

同社は、電気が安い時間帯に充電することがクリーンエネルギーの有効活用となる理由として、再生可能エネルギーの導入が拡大すると、季節・時間帯によっては電気が余る時間帯が出てくる点を指摘。すでに九州では、よく晴れた春と秋に太陽光発電の出力を制御することが多くなっており、2019年は出力制御が48日(一般家庭約年間1万世帯分に相当)発生しているという。「ダイナミックプライシング」による電気自動車(EV)の充電シフトに関する実証実験

発電量が需要量を上回る場合、まず火力発電の出力抑制、揚水発電のくみ上げ運転による需要創出、連系線を活用した他エリアへの送電を行う。それでも解消されない場合、バイオマス発電の出力制御の後、太陽光発電、風力発電の出力制御を実施する。水力・原子力・地熱は「長期固定電源」と呼ばれ、出力の小刻みな調整が技術的に難しく、最後に抑制するという。これを「優先給電ルール」と呼び、手順が法令で定められているそうだ。

電力は日本電力卸取引市場(JEPX)を通じて電力会社間で30分単位で取引されている。九州において太陽光発電の出力制御が行われている時間帯では、その取引価格が急激に下がり、通常5円~7円/kwhのところ0.01円(1銭)/kwhに貼りつく状況が見られるという。

またこの時市場では、電力供給に余裕のある時間帯は取引価格が安く、需給が逼迫している時間帯は取引価格が高いという特徴が見られるとした。これらの理由から、市場価格と連動するダイナミックプライシングによる充電シフトは、クリーンエネルギーの有効活用に寄与すると考えているという。「ダイナミックプライシング」による電気自動車(EV)の充電シフトに関する実証実験

2018年8月設立のアークエルテクノロジーズは、ソーシャルアントレプレナー精神とともに「デジタルイノベーションで脱炭素化社会を実現する」をミッションとして掲げ、福岡・東京の企業を中心に「脱炭素化プラットフォームサービス事業」「DXコンサルティング事業」などのサービスを提供。

脱炭素化社会に向けては、化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトが重要である一方、再生可能エネルギーは変動が大きく余剰になることも多いという課題がある。この解決に向け同社はテクノロジーを活用し、クリーンエネルギーを最適に利用できる社会システムの構築を目指している。

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カテゴリー: 人工知能・AI
タグ: アークエルテクノロジーズ環境問題(用語)再生可能エネルギー(用語)電気自動車 / EV(用語)モビリティ日本

電気の生産者や空気の「顔の見える化」で社会をアップデートする「みんな電力」が15億円を調達

電気の生産者や空気の「顔の見える化」で社会をアップデートする「みんな電力」が15億円を調達

電気の生産者や空気の「顔の見える化」で社会をアップデートする、みんな電力は10月26日、プレシリーズCラウンドにおいて、新株予約権付転換社債発行などで総額15億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、ディップのCVCであるDIP Labor Force Solution 投資事業有限責任組合、丸井グループ、日本政策金融公庫など。今回の資金調達により、現在まで累計調達額は約30億円となる。

調達した資金により、みんな電力は、気候変動など地球規模での問題解決に向けて、脱炭素社会の実現に貢献していく。

具体的には、再生可能エネルギー由来の電気の生産者と購入者をつなぎ、CO2削減アクションのひとつでもある「顔のみえる電力」の普及に努めるとともに、脱炭素化社会の実現を目指す様々な企業と積極的に連携することで、再エネ電気の利用を促進。

また、みんな電力独自のブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティシステム「ENECTION2020」の書き込み機能の高速化、低コスト化をより一層進めることで、空気、リチウムイオンバッテリー、土、住居など電力以外の領域へ拡大を図り、「顔の見えるライフスタイル」の実現を目指す。

みんな電力は、大手印刷会社で新規事業を担当していた大石英司氏が、再生可能エネルギー事業会社として2011年に設立。2016年に発電者と生活者をつなぐ電力小売りサービス「顔の見える電力」を始めるなど、「納得感を持って選択する」という体験の提供にこだわり、2020年には清潔な空気環境の選択につながる空気環境改善事業「みんなエアー」を開始。今後もソーシャル・アップデート・カンパニーとして、独自のブロックチェーン技術を基盤とした「顔の見えるライフスタイル」の実現を目指す。

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カテゴリー: シェアリングエコノミー
タグ: みんな電力
再生可能エネルギーブロックチェーン資金調達日本

気候テクノロジーへのVC投資はVC全体の5倍の速さで成長、PwC最新レポート

気候テクノロジーへのVCおよび企業の投資は、2013年から2019年にかけてVC全体を上回るペースで成長しており、アーリーステージの資本は600億ドル(約6兆2700億円)に上ることが主要な最新レポートで明らかになった。

PwCによる最新の調査「The State of Climate Tech 2020」では、VC市場全体から見ると気候テクノロジー分野へのVC投資はまだ黎明期であるが(2019年の総投資額の約6%)、急速に成長しており、2013年の年間4億1800万ドル(約440億円)から2019年には163億ドル(約1兆7200億円)に増加したことが示されている。同レポートによると、これは同時期のAIへのVC投資の成長率の約3倍で、VCの平均成長率の5倍になるという。

その理由に市場の経済性が関係していることは想像に難くない。関連する技術の証明とその規模の拡大において資本効率が急速に向上しており、カーボンニュートラル、さらにはカーボンネガティブのソリューションでさえ、炭素を排出するソリューションより低コストになっている。

このベンチャー資金600億ドルの半分近くを占める290億ドル(約3兆円)がアメリカとカナダの気候テクノロジー系スタートアップに流れており、中国は200億ドル(約2兆1100億円)で2位となっている。欧州市場は70億ドル(約7400億円)を集めた。米国と中国向けの投資の大半は、モビリティと輸送ソリューションに向けられている。

サンフランシスコベイエリアの気候テクノロジー系スタートアップへの投資額は117億ドル(約1兆2300億円)で、直近のライバルである上海の75億ドル(約7900億円)より56%多い。欧州は再生可能エネルギー発電(主に太陽電池)と蓄電池により多くの投資が行われている。

PwC UKでイノベーション&サステナビリティのグローバルリーダーを務めるCeline Herweijer(セリーヌ・ヘルヴェイェール)氏は声明で、「この分析により、気候危機に対処する革新的な技術やビジネスモデルを支援し拡大させる事業機会と、そこに存在する埋めるべきギャップについて、緊迫感が示されました。気候テクノロジーは2020年代のベンチャー投資における新たなフロンティアです」と述べた。

「この変革を導くのに欠かせない技術やソリューションのいくつかは実証済みで、迅速な商業化が求められています。そこでベンチャーキャピタルが鍵となります。効果を上げる目的でスタートアップに何兆もの投資をする必要はないでしょう。しかし、より複雑な技術や市場においては、研究開発を推進するターゲットを絞った支援が政府からも含めて必要であり、アーリーステージを超えてから資本がますます集まります」と同氏は続ける。

同報告書によると、気候テクノロジーの成長を促す最大の要因は、モビリティと輸送、重工業、温室効果ガス(GHG)の回収と貯留に関係しているという。次いで、食料、農業、土地利用、建築環境、エネルギーと気候、地球上で生成されるデータなどが挙げられている。

TechCrunchの読者であれば、ここ数年起きている電動スクーターと電動自転車の戦いを知っているだろう。実際、このレポートでも、マイクロモビリティスタートアップへの投資は劇的に成長し、過去7年間でCAGR151%、気候テクノロジーへの全投資額の63%に相当する374億ドル(約4兆3950億円)に達していることが報告されている。

Exponential Viewの創設者であり、レポートの共同執筆者でもあるPwC UKのシニアアドバイザーAzeem Azhar(アジーム・アジャール)氏は次のように述べている。「気候テクノロジー市場は成熟しつつあります。より多くの起業家がスタートアップを立ち上げ、より多くの投資家がそれを支援し、高い拡大可能性を有するレイターステージの事業に向けた大型の資金調達ラウンドの数が増加していることが、社会的な動きとして顕著になっています。しかし、PwCの分析で、同市場のエコシステムに関してはまだ萌芽期にあり、創業者が利用できる資金の深さとその性質に重要なギャップが存在し、事業を拡大していく上で慎重に対処すべき構造的障害を抱えていることが認められました」

投資はどこから来ているだろうか。幅広い資金源から集まっている。伝統的なベンチャーキャピタルや持続可能性に特化したベンチャーファンド、エネルギー大手を含む企業投資家、世界的な消費財企業や大手テクノロジー企業、政府が支援する投資会社、プライベートエクイティプレーヤーなど多岐にわたる。

同報告書によると、このセクターではコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)が増大しており、特にエネルギー、重工業、運輸などの参入障壁が高い既成産業への進出を目的とした高資本コストのスタートアップが目立っている。モビリティと輸送に関しては、気候テクノロジー事業の30%にCVCファームが含まれ、エネルギーに関しては、導入資金の32%がCVCからとなっている。全体では、気候テクノロジー事業のほぼ4分の1(24%)に企業投資家が含まれている。

「企業の関与は気候テクノロジーの継続的な成功の鍵となるでしょう。新ソリューションへの需要を駆り立てるネットゼロのコミットメントと、イノベーションの商業化への投資の両方の観点からそのことが言えます。スタートアップが新たなイノベーションを迅速に展開し、市場拡大を図るには、単に資金面の手段だけでなく、商業的なノウハウや業界の知識も必要です」とヘルヴェイェール氏は説明する。

気候テクノロジーへの新規投資において、アメリカと中国以外で上位10都市に入っているのは、ベルリン、ロンドン、ラベージュ(フランス)、インドのバンガロールで、主にエネルギー、農業、食料、土地利用分野で13億ドル(約1370億円)の資金を集めている。

おそらくTechCrunch読者に最も関係の深いセクションは44ページ以降だろう。そこでは、気候テクノロジー市場が、急成長を続けるテクノロジー系スタートアップの軌跡と似た様相を呈し始めていることが記されている。技術的リスク、製品リスク、市場リスクといった既存の障壁に対処しており、Sequoia、GV、Kosler、Horizons、YC、USVなどの有名なVCが揃って関与しているという。

また、300社ものグローバル企業が、2050年までにネットゼロエミッションを達成することをコミットしている。「気候テクノロジーは、地球の温室効果ガス排出量の半減を10年ほどで実現し、地球温暖化を1.5°Cに抑えることを見据えています。その可能性を確実なものとし、より迅速かつ大胆なイノベーションを構築し加速するために、資本、人材、官民の支援を速やかに投入する必要があります」とヘルヴェイェール氏は付け加えた。

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カテゴリー:VC / エンジェル

タグ:環境問題 再生可能エネルギー

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(翻訳:Dragonfly)