百貨店のリプレイス狙うギフト特化型EC「TANP」が1.2億円を調達

ギフトEC「TANP」を運営するGraciaは10月22日、複数のVCや個人投資家らを引受先とする第三者割当増資により1.2億円を調達したことを明らかにした。

同社では調達した資金を活用してロジスティクスやマーケティングの強化を進め、プロダクトのさらなる成長を目指す計画。なお今回のラウンドに参加している投資家陣は以下の通りだ。

  • ANRI
  • マネックスベンチャーズ
  • ベンチャーユナイテッド
  • ドリームインキュベータ
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • 中川綾太郎氏
  • 有川鴻哉氏
  • 河原﨑大宗氏
  • 坂本達夫氏

Graciaは2017年6月の創業。その直後にANRIとCandle代表取締役の金靖征氏から約1300万円を調達していて、今回はそれに続くシリーズAラウンドでの資金調達になるという。

特化型ECでオンライン上でも優れたギフト体験を

Graciaが手がけるTANPはギフトに特化したECサイトだ。

この領域に特化することで、誕生日や記念日、クリスマスなどの様々なシーンだけでなく、ギフトを渡したい相手の性別や年代に合わせてぴったりな商品を見つけやすい仕組みを設計。「何を贈ったらいいのかわからない」というユーザーの悩みをオンライン上で解決できる場所を目指している。

2017年9月のリリースから約1年が経った現在は約100社のメーカーとタッグを組み、取扱商品数は合計で860点を突破。Gracia代表取締役の斎藤拓泰氏の話では人気化粧品メーカーの「the body shop」や香水ブランド「JIMMY CHOO」など、知名度のあるメーカー・ブランドも徐々に増えてきているようだ。

特にクリスマスや母の日といったイベント時の利用が多いそうで、5月の母の日のピークには1日あたりの出荷数が800件を超えたという。

「特別なシーン用のギフトを買うとなると、多くの人が想起するのは百貨店。特に『何か特定なものを探している』というよりは『何かしら買いたい』というニーズに対して、オンライン上で応えられる場所がまだない。(ECというくくりでは)すでにビッグプレイヤーがいるが、自分たちはギフトに特化することで探すのが大変という悩みを解決しつつ、より優れたギフト体験を提供したいと考えている」(斎藤氏)

ギフト探しの悩みを解決するという点では、TANP上で細かい条件ごとに商品を探せるほか、LINE@を活用してチャットベースでの相談にも応じている。斎藤氏の話ではLINE@の登録者数は約6500人ほどだそう。記念日や特別なイベントに合わせて年に数回問い合わせをしてくるユーザーが多いようだ。

“良さそうな商品がオンライン上で見つかる”というのもTANPの特徴ではあるけれど、同サービスのウリはそれだけではない。斎藤氏によるとユーザーに評判がいい機能として「配送までのスピード」と「ラッピングなど独自のオプション」をあげる。

独自のロジスティクスを軸にギフトの商流を作る

TANPでは注文が入ってから最短で翌日届くような体制を構築している。シンプルながらこの点に関してはユーザーのニーズがかなりあるそうで「注文した商品が明日届くかどうか」といった問い合わせが多いという。

またラッピングなど独自のオプションも複数用意。ラッピングだけで約10種類ほどあり、それ以外にもブーケを同梱したり、段ボールの中を装飾したりといったことができる。7割くらいのユーザーが何かしらのオプションをつけていて、斎藤氏は「(ギフト探しの悩みを解決するだけでなく)配送期日やオプションといった要素を網羅していることがTANPの特徴」だと話す。

この点について課題意識を抱えているのは何もユーザー側だけではない。メーカー側もまた、同じようにギフトに関する悩みを持っているようだ。

「担当者の方と話していても、ギフトをやりたいという考えはある一方で、ギフト用のニーズに応えるためだけに自分たちでラッピングをしたり、(他の顧客よりも優先して)最短で届けるための仕組みを作ったりするのが難しいという声を聞く。双方の間に入って“ギフトの商流を作る”というのがTANPを通じてやりたいテーマだ」(斎藤氏)

このギフトの商流づくりのために、Graciaではロジスティクス周りの整備に力を入れてきた。自社で倉庫を保有し商品はそこから発送。その際に使う発送システムや在庫管理システムも独自で開発しているのだという。

特にギフトの場合は商品にさまざまなオプションがつくことが多いため「どの商品にどのオプションがつくか」を全部紐付ける必要がある。その作業に対応したシステムを自社で整えていることが、オペレーションを効率化しつつ、ユーザーのニーズに合わせたスピード感やオプションを実現できる要因にもなっているようだ。

ギフトを買う際に最初に想起してもらえるサービスへ

「ロジスティクスの強化」は今後のTANPの鍵を握るポイントであり、今回調達した資金もここに投資する計画。扱う商品の数を増やすべく倉庫を広げたり、ラッピングなどの質を改善することでサービスの拡大を目指していく。

また中長期的にはTANPに蓄積されるユーザーの購買データを活用することによって、ユーザーのギフト探しの悩みに対して適切な商品をレコメンドできるような仕組みも構築する予定だ。

Graciaのメンバー。写真前列中央が代表取締役の斎藤拓泰氏

Graciaは以前Candleで働いていた斎藤氏を含む3人の東大生によって設立されたスタートアップ。今後ECが伸びていく一方で、ギフトECの領域では「ファッションにおけるZOZOTOWN」のような巨大なプレイヤーがおらず、ユーザーの課題もあるためこの領域で事業を展開することを選んだ。

現在のユーザー層は20〜40代が中心。インターネットを普段そこまで利用していないようなユーザーも一定数いるが、そういった層のユーザーも含めて「オンライン上でギフトを買う体験」をさらに広げていくのが目標だ。

「(今回調達した資金も活用しながら)まずはギフトの領域をもっと掘り下げて、ギフト市場での第一想起の獲得を目指していきたい」(斎藤氏)

ネット広告のレポート作成を自動化する「Roboma」にROI運用支援の新機能

広告効果を最大化するためのAIマーケティング・広告運用自動化サービス「Roboma(ロボマ)」を提供するRoboMarketerは10月19日、マーケターがリアルタイムなROI(費用対効果)運用を実現できる「ROIレポート機能」を新たにリリースした。

また、併せてモバイルアプリにおけるユーザーの行動分析、広告の効果測定、および不正インストールの防止機能を有する総合的なモバイルアプリ計測プラットフォーム「Adjust」との連携を発表している。

以前にもTechCrunch Japanで紹介しているRobomaはグリーやミクシィ出身のマーケターによって作られたマーケティング自動化サービスだ。独自開発のAI技術により、誰でも簡単に本質的なマーケティング業務を行うことを可能にする。メルカリを含め業界問わず100社以上が導入しているという。

ネット広告のレポート作成を自動化するRobomaでは、Facebook、Instagram、Google Adwords、Twitterといったプラットフォームの広告アカウントを連携することが可能だ。連携した広告アカウントのレポートを自動し、費用やCPA(Cost Per Acquisition:ユーザー獲得コスト)などの指標をグラフ化できる。また、社内のメンバーや広告代理店の担当者ごとに閲覧権限を設定でき、同じ情報を共有することでスムーズな意思疎通をはかることが可能だ。

そして本日発表されたROIレポート機能を使うことで、ROIの低い媒体やキャンペーンに広告費用を大量投下しているケースを改善できたり、メディア・キャンペーン・広告単位で最適な予算配分ができるようになる。要するに、無駄な広告費用を削減でき、売り上げアップが期待できるということだ。

ROIレポート機能でできることは以下のとおりだ。

  • Adjustデータの自動取り込み
  • Facebook、Google、Twitter などの主要メディアのコストと売上データを自動マッチング
  • 経過日数別のROI、継続率を集計(コホート分析)
  • メディア、キャンペーン、広告単位でのROI横断比較
  • 課金コンバージョンの複数選択

新機能開発の背景について同社は「広告運用で本質的に大切なことはメディアやキャンペーンごとにROIを検証し、自社のサービス・商品に合ったターゲットユーザーに最適配信することで売上を最大化すること。だが個別のコストデータと計測された売上データをマッチングして集計する際に膨大なデータ処理が発生するため、非常に手間がかかりリスクも高かった」からだと説明している。

LINE上から手軽に資産運用できる「LINEスマート投資」開始、LINE FinancialとFOLIOがタッグ

つい先日、LINEアプリから損害保険に加入できるサービス「LINEほけん」を公開していたLINE Financial。今度はLINEの基盤を活用して“資産運用”を簡単にするサービスを始めたようだ。

LINE FinancialとFOLIOは10月18日、LINE上で約70のテーマに投資をできる新しいモバイル投資サービス「LINEスマート投資」の提供を開始した。

同サービスは過去にTechCrunchでも紹介しているテーマ投資型の資産運用サービス「FOLIO」を基盤としたもの。「ドローン」や「ガールズトレンド」、「VR」など厳選された約70のテーマに投資をする仕組になっていて、個別銘柄の専門的知識がない投資初心者でも自分の趣味や嗜好に合わせて投資できるのが特徴だ。

1テーマは10社で構成。1株から取引可能な単元未満株取引を導入することで、身近なテーマに対して10万円前後の金額から分散投資できる環境を整備している。テーマの売買で発生する手数料は銘柄ごとに売買代金の0.5%(税抜・最低手数料50円)となっていて、単元未満株取引としては業界最低水準だという(単元未満株取引を扱うネット証券大手4社と比較し、1銘柄あたりの約定代金が1万円以上の場合)。

なおLINEスマート投資はLINEほけん同様に、別のアプリを立ち上げることなくLINE上にあるLINEウォレットタブからアクセスすることができる。

2018年1月にLINEがFOLIOに出資したニュースを取り上げた際、両社では業務提携も締結していて「2018年下半期をめどにLINEアプリ上から直接FOLIOの資産運用サービスが利用できるようになる予定」であることが公にされていた。LINEスマート投資はまさにそれが形になったサービスと言えるだろう。

今後は簡単な質問に回答するだけで最適な資産運用が行える「おまかせ投資」の提供や「LINE Pay」との連携によるスムーズな資金決済などを予定しているという。

メルカリが車のコミュニティ「CARTUNE」運営を約15億円で子会社化

メルカリは10月18日、車のコミュニティサービス「CARTUNE」を運営するマイケルを簡易株式交換により子会社化することを明らかにした。

今回の株式交換ではマイケルの株主に普通株式1株に対して、メルカリの普通株式194.83株を割当て交付する。メルカリの株式価値を1株あたり3820.8円とした上で39万2582株を交付する予定としているので、金額に換算すると約15億円での買収になる。

マイケルは2016年12月設立のスタートアップ。創業者であるグーグル出身の福山誠氏は複数の事業を立ち上げてきた人物としても知られる。

グーグルを経て2011年に創業したシンクランチではランチマッチングサービス(現在は就活支援コミュニティ)の「ソーシャルランチ」を作り、2012年にDonutsへと売却。その後Donutsでは新規事業としてライブ・動画コミュニティアプリ「MixChannel」を立ち上げた。

そんな福山氏が今手がけているのが、車×コミュニティアプリの「CARTUNE」。車を趣味にするユーザーに特化したサービスで、愛車の写真やカスタム・ドレスアップパーツの写真・動画を投稿したり、他のユーザーの投稿を楽しめるのが特徴だ。

福山氏によると現在はアプリのダウンロード数が65万件を突破し、約30万人の月間アクティブユーザーを抱えるサービスに成長しているそう。「ユーザー同士でのオフ会が開催されたり、ユーザー同士でのパーツ売買が積極的に行われるなど、ユーザードリブンのコミュニティが出来上がってきている」という。

今回メルカリとタッグを組むに至った背景にも、個人間のパーツ売買をもっとサポートしていきたいという目論見があるようだ。

「パーツの売買はカスタマーサポートの体制などをしっかり整えないと、ユーザーにとって不安の残る形でしか提供できない。サービス間で何か連携できたらいいねという話は以前から出ていたけれど、メルカリが決済やサポート体制なども含めてCtoCのコマースをやっていく上でのアセットを持っていた点が(マイケルにとっては)重要だった」(福山氏)

一方のメルカリも、自動車関連カテゴリーにおいてパーツの出品を始め車体の出品にも取り組むなど流通量の拡大を進めてきた。「CARTUNE」に蓄積された自動車やパーツに関するデータやユーザー基盤、コミュニティと連携することで、同カテゴリーをさらに強化していく意図もあるようだ。

福山氏によると今後も同氏がマイケルの代表を勤め、独立的に運営していく方針とのこと。

「具体的な決定事項があるわけではないが、もっとパーツの個人間売買を円滑にしていきたい。車のカスタム自体がシュリンクしている部分はあると思うが、一方で車がEV化したりなどモビリティの新しい文脈がある。例えばEVのカスタムなど、CARTUNEが新しいカスタムの文化を作るような存在になれるように引き続き運営していく」(福山氏)

150万DL突破のコスメコミュニティ「LIPS」が10億円を調達、グリーや個人投資家から

コスメの口コミアプリ「LIPS(リップス)」を運営するAppBrew(アップブリュー)は10月18日、個人投資家およびグリーより総額10億円の資金調達を明らかにした。

同社は2月にもグリーのほかGunosyやANRI、個人投資家らから5億5000万円を調達。それ以前では2017年10月にANRI、Skyland Ventures、フリークアウト代表取締役社長の佐藤裕介氏、PKSHA Technology代表取締役の上野山勝也氏、ほか個人投資家から総額7600万円を集めている

以前LIPSを「SNSに近い使用感が特徴」と紹介したけれど、同サービスはコスメの口コミを軸に、コスメの特徴や使い勝手だけでなく、メイクアップの方法なども共有しあえるコミュニティだ。特に10代〜20代から支持を得ているようで、テキストだけでなく動画やイラスト、写真などをたっぷり使った投稿も多い。

サービスのリリースは2017年の1月。2018年6月には1年半で100万ダウンロードを超えたことを明かしていたが、そこから約4ヶ月でさらに成長し現在のダウンロード数は150万件を突破、クチコミ件数も50万件以上になっているという。

ユーザー数の増加に伴って広告出稿企業も増加し、これまで国内化粧品メーカーを中心に40ブランド以上の出稿実績があるようだ。

AppBrewではさらなるユーザー数の拡大を目指し、開発体制・組織体制の強化に向けた人材採用のほか、マーケティング活動などに調達した資金を用いるという。

副業系サービスをまとめたカオスマップの2018年度版が公開

副業したい人とスタートアップ企業のマッチングサービスなどを運営するシューマツワーカーは10月16日、副業系サービスをまとめた「副業サービスマップ 2018」を公開した。

同社は昨年にも同様のカオスマップを作成(2017年度版)しているが、それと比べるとこの1年で副業系サービスが大きく増えたことが分かる。シューマツワーカーはその理由として、1) 働き方改革により副業市場への注目度が上がったこと、2) どの業界・企業も人材不足により、企業の副業リソース活用が浸透し始めていることを挙げている。

2018年度の副業サービスマップでは、副業社員型と営業型が増えた一方、クラウドソーシング系サービスの数は減少した。シューマツワーカーはこれについて「“誰でもできる業務”よりも、より“高いスキルや専門性”を活かした副業が主になっている傾向がある」とコメントした。

なお、シューマツワーカーは副業社員の効果的な採用・活用法をまとめた「副業社員の活用ガイダンス」を同時に公開。副業社員とのコミュニケーションの仕方、効果的なMTGのセッティング方法をまとめている。

ドコモ、自社ユーザーを格付け 信用情報を金融機関に提供へ 希望者のみ

eng-logo-2015NTTドコモは、金融機関がドコモユーザーに融資サービスを提供するための「ドコモ レンディングプラットフォーム」を発表しました。2019年3月提供開始予定。

「ドコモ レンディングプラットフォーム」は、ドコモの各種サービスを使うユーザーの利用状況などを解析し、ユーザー毎に信用スコアを算出、金融機関に提供するもの。金融機関はこの信用スコアを活用した審査を行うことで、個々人に合わせた適切な金利・貸し出し枠を設定できるとアピールします。

なお、この信用情報は、融資サービスの申し込みの際にユーザーの同意のもとで算出し、手続きの中でのみ活用するとしています。

また、融資サービスを利用するユーザー向けに「レンディングマネージャー」アプリも提供します。金融機関での借入から返済までの全ての手続きをアプリ内で完結できるほか、ユーザー毎の家計と借入状況を可視化し、最適な返済計画をアドバイスするとしています。なお、返済計画のアドバイスは、マネーフォワードとの提携で実現しています。

未来の与信の形

登壇したNTTドコモの吉澤社長は、同プラットフォームについて『個人向けの無担保の融資サービス向け』であると強調。また、将来的にはレンタルサービスなど、融資以外のサービスにも同スコアを活用する可能性にも言及しました。

同プラットフォームには第一弾として新生銀行が参加を決定。参加銀行は順次拡大するとしています。

Engadget 日本版からの転載。

“義体”実現目指すサイボーグ技術のメルティンが総額20.2億円を資金調達

写真中央:メルティンMMI 代表取締役CEO 粕谷昌宏氏

サイボーグ技術の実用化を目指すメルティンMMIは10月17日、大日本住友製薬、SBIインベストメント、第一生命保険を引受先とした第三者割当増資を実施し、シリーズBラウンドとして総額20.2億円を調達したことを発表した。

彼らのコア技術であるサイボーグ技術は、生体信号を読み取り、人間の身体動作や意図を忠実に解析する「生体信号処理技術」と、それらを実空間で忠実に再現するための「ロボット機構制御技術」を融合させた技術だ。

これまでメルティンでは、サイボーグ技術を活用したアバターロボットのコンセプトモデル「MELTANT-α」および医療機器を開発してきた。

MELTANT-αは、人の手の動きを即座に模倣するリアルタイム性、小型・軽量ながら強力な動作が可能なパワー、「ジッパーを開ける」「ペットボトルのフタを開ける」「トランプを引く」といった繊細な動きの再現性を兼ね備える。また情報を送信するアルゴリズムを最適化することで、離れた場所にいても、遅延ストレスを感じさせず動作させることができる。

今回の調達資金をもとにメルティンでは、アバターロボットMELTANTの実用モデルや、医療機器の開発を加速させるとしている。

メルティンは、サイボーグ技術を活用したプロダクトの開発と実用化を進めることで、将来的にはこの技術を高度に発展させ、実用性の高い「Brain Machine Interface」や「義体」の実現を目指し、最終的には「人と機械を融合させ、身体の限界を突破することで、全ての人が何不自由なく幸せに生活できる世界を創る」ことを目標としている。義体化も脳直結の情報処理・機械制御も、近いうちに『攻殻機動隊』のようなフィクションではなくなっていくのかもしれない。

メルティンは2013年7月、CEOの粕谷昌宏氏とCTOの關達也氏、ほか数名のメンバーで創業した大学発のスタートアップだ。2016年1月にリアルテックファンド、グローカリンクより最初の資金調達を実施。2017年12月にはシリーズAラウンドで、リアルテックファンド、未来創世ファンド、日本医療機器開発機構を引受先とした第三者割当増資と助成金により、総額2.1億円を資金調達している。

サービス開始から7年、READYFORが初の外部調達で目指すのは“資金流通メカニズムのアップデート”

READYFORの経営陣および投資家陣。前列中央が代表取締役CEOの米良はるか氏

「今は変化するタイミングだと思っている。小規模な団体から国の機関まで、さまざまな資金調達のニーズが生まれていて、毎月何千件という相談が来るようになった。そこに対してどのようにお金を流していくのか。新たなチャレンジをするためにも資金調達をした」——そう話すのはクラウドファンディングサービス「Readyfor」を展開するREADYFOR代表取締役CEOの米良はるか氏だ。

これまでもCAMPFIREMakuakeといった日本発のクラウドファンディングサービスを紹介してきたけれど、Readyforのローンチはもっとも早い2011年の3月。今年で7周年を迎えた同サービスは、日本のクラウドファンディング領域におけるパイオニア的な存在とも言えるだろう。

そんなReadyforを運営するREADYFORは10月17日、同社にとって初となる外部からの資金調達を実施したことを明らかにした。調達先はグロービス・キャピタル・パートナーズ、Mistletoe、石川康晴氏(ストライプインターナショナル代表取締役社長兼CEO)、小泉文明氏(メルカリ取締役社長兼COO)。調達額は約5.3億円だ。

また今回の資金調達に伴い今年7月に参画した弁護士の草原敦夫氏が執行役員CLOに、グロービス・キャピタル・パートナーズの今野穣氏が社外取締役に就任。石川氏、小泉氏、Mistletoeの孫泰蔵氏、東京大学の松尾豊氏がアドバイザーとして、電通の菅野薫氏がクリエーティブアドバイザーとして加わったことも明かしている。

READYFORでは調達した資金も活用しながら、既存事業の強化に向けた人材採用やシステム強化を進める方針。また同社が取り組んできた「既存の金融サービスではお金が流れにくかった分野へ、お金を流通させるための仕組みづくり」をさらに加速させるべく、新規事業にも着手するという。

ここ数年で変わってきた日本のクラウドファンディング市場

Readyforはもともと東大発ベンチャーであるオーマの1事業として2011年3月にスタートしたサービスだ。

約3年後の2014年7月に会社化する形でREADYFORを創業。同年11月にオーマから事業を譲受し、それ以来READYFORが母体となって運営してきた。現在はサービスローンチから7年半が経過、会社としても5期目を迎えている。

初期のReadyfor

ローンチ当初は日本に同様のサービスがなかっただけでなく、そもそもクラウドファンディングという概念がほとんど知られていなかったこともあり「サービスのマーケティングというよりも、クラウドファンディング自体の世界観や認知を広げる感覚だった」(米良氏)という。

それから代表的なサービスが着々と実績を積み上げるとともに、国内で同種のサービスが次々と立ち上がったことも重なって、クラウドファンディングへの注目度も上昇。特に直近1〜2年ほどで状況が大きく変わってきたようだ。

「自社のデータではクラウドファングの認知率が60%くらいに上がってきている。実際、創業期の事業者や社会的な事業に取り組む団体など、“お金が必要だけど、金融機関から借り入れるのが簡単ではない人たち”にとっては、クラウドファンディングが1つの選択肢として検討されるようになってきた」(米良氏)

この仕組みが徐々に浸透してきたことは、いろいろなメディアで「クラウドファンディング」という言葉が詳しい説明書きもなく、さらっと使われるようになってきたことからも感じられるだろう。

また認知度の拡大と合わせて、クラウドファンディングを含むテクノロジーを使った資金調達手段の幅も広がった。たとえば国内のスタートアップが投資型クラウドファンディングを使って数千万規模の調達をするニュースも見かけるようになったし、賛否両論あるICOのような仕組みも生まれている。

そのような状況の中で、主要なクラウドファンディング事業者はそれぞれの強みや特色が際立つようになってきた。READYFORにとってのそれは、冒頭でも触れた「既存の金融サービスではお金が流れにくい領域」にお金を流すことだ。

「担保がなくてお金がなかなか借りられない創業期の事業者、ビジネスモデル的には難しいけれど社会にとって必要な事業に取り組む団体、あるいは公的な資金だけではサポートが十分ではない公共のニーズ。そこに対して民間のお金が直接流れるテクノロジーが生まれることで、しっかりお金が行き届いていく。Readyforではそういった世界観を作っていきたい」(米良氏)

ローンチから数年間がマーケット自体の認知を広げる期間だったとすれば、ここ2年ほどは今後作っていきたい世界の下地を作るための期間だったと言えるのかもしれない。

READYFORはNPOや医療機関、大学、自治体や地域の事業者など約200件のパートナーと連携し、お金を流通させる仕組みを広げてきた。

9000件超えの案件を掲載、約50万人から70億円以上が集まる

たとえば2016年12月には自治体向けの「Readyfor ふるさと納税」をローンチ。県や新聞社、地銀とタッグを組んだ「山形サポート」のような特定の地域にフォーカスした事業も始めた。

2017年1月に立ち上げた「Readyfor Colledge」は大学や研究室がプロジェクト実行者となる大学向けのサービスだ。筑波大学准教授の落合陽一氏のプロジェクトが話題になったが、同大学を含む国立6大学との包括提携を実施している。

これらに加えて、米良氏によると最近では国立がん研究センター国立成育医療研究センターのような国の研究機関からの問い合わせが増えているそう。イノベーションの種となる研究や、長期的に人々の生活を支えるような機関をバックアップするシステムとして、クラウドファンディングが使われるようになってきたというのは面白い流れだ。

このように少しずつ対象を広げていった結果、Readyforには7年で9000件を超えるプロジェクトが掲載。約50万人から70億円以上の資金が集まるプラットフォームへと成長した。

実行者と支援者双方に良いユーザー体験を提供するため、初期から重視していたという達成率は約75%ほど。全てのプロジェクトにキュレーターがついて伴走する仕組みを整えることで、規模が拡大しても高い達成率をキープしてきた。

それが良いサイクルに繋がったのか、支援金の約40%を既存支援者によるリピート支援が占める。個人的にもすごく驚いたのだけど、もっとも多い人は1人で800回以上もプロジェクトを支援しているそう。

支援回数が500回を超えるようなユーザーは他にも複数いるようで、一部の人にとってはクラウドファンディングサイトが日常的に訪れるコミュニティのような位置付けになってきているのかもしれない。

7月からは料金プランをリニューアルし、12%という手数料率の低さが特徴の「シンプルプラン」とキュレーターが伴走する「フルサポートプラン」の2タイプに分ける試みも実施した。

「これまで膨大なプロジェクトをサポートしてきた中で、どうやったら成功するかといったデータやノウハウが蓄積されてきた。その中には(ずっとキュレーターが伴走せずとも)サービスレベルでサポートできる部分もある。2つのプランを展開することで、より多くのチャレンジを支援していきたい」(米良氏)

これからREADYFORはどこへ向かうのか

1期目から4期目までは自己資金で経営を続けてきたREADYFOR。プロジェクトの数も規模も拡大してきているタイミングであえて資金調達を実施したのは、一層ギアを上げるためだ。

では具体的にはどこに力を入れていくのか。米良氏は「パートナーシッププログラムの強化を中心とした既存事業の強化と、これまで培ってきたリソースやナレッジを活用した法人向けの新規事業の2つが軸になる」という。

既存事業についてはシステム強化やプロモーション強化に加え、ローカルパートナーシップをさらに加速させる。

これまでもREADYFORは地域金融機関65行との提携を始め、自治体や新聞社といった地域を支えるプレイヤーとタッグを組んできた。この取り組みを進めることで、地域の活動に流れるお金の量を増加させるのが目標だ。

山形新聞社や山形銀行、山形県などと一緒に取り組む「山形サポート」

新規事業に関しては、現時点で2つの事業を見据えているそう。1つはプロジェクト実行者がより継続的に支援者を獲得できるSaaSの開発だ。こちらはまだ具体的な内容を明かせる段階ではないが、実行者と支援者が継続的な関係性を築けるような「ファンリレーションマネジメント」ツールを検討しているという。

そしてもう1つの新規事業としてSDGs(持続可能な開発のための2030アジェンダ)に関する事業も始める。READYFORではすでに社会性の高いプロジェクトを実施する団体と企業のCSR支援金をマッチングする「マッチングギフトプログラム」を整備。アサヒグループやJ-COMなどと連携を図ってきた。

今後社内で「ソーシャルインパクト事業部」を立ち上げ、企業とSDGs達成に寄与する活動を行う団体やビジネスとのマッチングなど、Readyforのデータを活用した事業に取り組む計画だ。

同社の言葉をそのまま借りると、READYFORのこれからのテーマは「社会を持続可能にする新たな資金流通メカニズム」を確立すること。既存の仕組みでは富が偏ってしまうがゆえに、本当に何かを実現したい人たちに対して十分なお金が流れていないので、その仕組みをアップデートしていこうというスタンスだ。

「今は自分たちのことを『本当に必要なところにお金が流れる仕組み』をいろいろな形で実装する会社と考えているので、クラウドファンディングというものを広義に捉えていきたい。お金を流すという役割を果たすべく、新しいやり方にもチャレンジしていく」(米良氏)

三菱UFJ子会社、キャッシュカードレスなATM展示「1年内に展開」

eng-logo-2015三菱UFJ銀行が株式の98%を保有するFintech子会社「Japan Digital Design」は、キャッシュカードレスなATMソリューション「CARD mini」を、千葉市で開催中のCEATEC Japan 2018に展示しています。

この「CARD mini」は、スマートフォンのNFCを利用して、キャッシュカード不要でATMから現金を引き出せるソリューションです。既存のATMにも外付け改修で対応できるといいます。

現在はコンセプト機の段階ですが、同社は『半年以内には難しいが、1年以内には世に展開していきたい』と導入時期を説明します。なお同社は三菱UFJ銀行の子会社ですが『事業は密接にはリンクしていない』(担当者)として、三菱UFJ銀行のATMに導入されるかは未知数です。

ATMのカードレスを巡っては、セブン銀行がQRコードを使った「スマホATM」を展開しています。筆者もスマホATMを利用していますが、物理的なキャッシュカードを持ち歩かなくても現金が引き出せるのは便利。ATMのカードレス化の広がりに期待したいところです。

Engadget 日本版からの転載。

最短60秒、100円から加入できる「LINEほけん」がスタート

最近「LINE」のチャットを活用して様々なサービスをスピーディーかつ手軽に提供する仕組みが増えてきた。つい先日もLINE上でテイクアウトサービスの注文から決済までが完結する「LINEテイクアウト」(LINEが開発、2019年春に開始予定)を紹介したばかりだけれど、今回のテーマは“保険”だ。

LINE Financialと損害保険ジャパン日本興亜は10月16日、LINEアプリから損害保険に加入できるサービス「LINEほけん」の提供をスタートした。

LINEほけんは専用のアプリをインストールことなく、LINE上で保険に加入できるサービスだ。LINE内のウォレットタブからLINEほけんを選択することでアクセスが可能。加入するにはLINEほけんと「LINE Pay」双方のユーザーの登録が必要にはなるけれど、登録が済んでいれば「最短約60秒で保険加入に必要な全ての事項の入力を完了」する手軽さがひとつの特徴だという。

現在は全59にわたる商品プランを用意。1日単位から加入できる短期型の保険をメインに、お花見や夏祭りなどの季節のイベント、台風などの悪天候の際の保険、ボランティアや野外フェスの際の保険といった商品のほか、自転車保険や弁護士相談費用保険など年単位の保険も提供する。

保険料についても100円からの手ごろなプランが準備されていて(期間選択型における1日あたりの保険料と1年型における月額保険料を100円から用意しているという)、ユーザーはLINE Payを通じて支払う。

LINE Financialと損保ジャパン日本興亜は2018年4月に損害保険領域において業務提携を締結。損保ジャパン日本興亜の持つ保険に関するノウハウやデジタル技術の知見と、LINEのユーザー基盤や若年層へのリーチ力を生かしてスマホ特化型の保険サービスを開発するとしていた。

今後はLINEほけんで加入できる商品のラインナップを充実させるとともに、LINEならではのコミュニケーションとInsurTech(Insurance + Technology)を融合させた新たな保険サービスの開発にも取り組むという。

企業と人材エージェントをつなぐ「JoBins」が資金調達ーーエージェント間の“求人票シェア”機能も搭載

中途採用を行っている企業と人材エージェントをつなぐ求人プラットフォーム「JoBins」。同サービスを展開するJoBinsは10月16日、栖峰投資ワークスが運営するファンドを引受先とする第三者割当増資により4000万円を調達したことを明らかにした。

JoBinsは人材紹介業における課題解決に取り組むサービスなのだけど、いわゆる“転職サイト”ではなくB2Bのプラットフォームだ。つまり転職希望者が登録するタイプのものではなく、企業とエージェントの2者のみが使うシステムになっている。

人材を採用したい企業はJoBinsに求人票を掲載し、同サービスに登録しているエージェントからの推薦を待つだけ。エージェントを自ら開拓する負担がなく、料金も完全成果報酬のため「転職者を採用できないのに費用だけがかかる」ということがない。

一方のエージェントにとってはコストをかけずに新規求人企業を手に入れられる点が特徴。求人の閲覧や転職者の推薦は無料ででき、自社が保有する案件だけでは転職に至らなかった人材に適した求人を紹介するチャンスを得られる。転職希望者の視点で考えても、エージェントの取り扱う求人数が増えることはメリットだと言えるだろう。

当初からある通常プランは、上述した通り採用が決まった際に企業側が転職採用者の年収の約13%を支払うモデル。内訳は約10%がエージェントの収入、残りの約3%がJoBinsのサービス利用料となる(サービス利用料の最低金額は15万円)。

一般的にエージェントを利用して転職希望者を採用する場合、企業が負担する利用手数料は転職者の年収の30~35%にも及ぶ。JoBinsの場合はそのコストを1/3近くの約13%まで抑えている点が特徴だ。

またJoBinsでは7月より月額15万円からのプレミアムプランもスタートした。これはエージェント同士が自社の保有する求人票をサービス上でシェアできる仕組みで、全国のエージェントから転職希望者を集客できるのがウリ。他のエージェントがJoBinsにシェアした求人案件を取得して求人成約した場合には、エージェント同士で報酬を分配する。

JoBinsというプラットフォームを通じて、人材エージェント間で連携しながら求人成約を目指し、その利益をお互いでシェアするという新しい概念のサービスと言えそうだ。

2018年10月時点で同サービスの累計登録社数は1000社を突破。今後はエンジニア採用を強化して機能拡充に取り組むほか、マーケティングにも予算を投じる方針だという。JoBinsでは「2019年6月までにオンライン人材紹介プラットフォーム求人掲載数および登録企業数No.1を目指してまいります」としている。

“ながらSNS”をスマホでも、モバイルブラウザ「Smooz」に分割・小画面機能が新登場

「動画を観ながらWikipediaで調べ物」、「ゲームをしながらSNS」。僕を含む“ながら族“の皆さんにとってはちょっと嬉しいニュースがあるので紹介したい。

2016年の「TechCrunch Tokyoスタートアップバトル」にも登場したスマホブラウザ「Smooz」に分割・小画面機能が新たに登場した。Smoozを提供するアスツールによれば、モバイルブラウザが分割機能・小画面機能の両方を備えるのはこれが世界初という。

横スワイプのワンアクションでタブを切り替えることができるSmoozは、スマホでもPCのようにタブを複数ひらいて調べ物をしたいという人に最適なブラウザだ。そんな特徴から、ブラウザゲームをプレイしながらSNSに投稿したり、動画を観ながらネットで調べ物をするというユーザーが多いという。

分割・小画面機能はそんなユーザーからの要望がきっかけで誕生した新機能。これがあれば、タブの切り替えなしに複数サイトを同時に閲覧することができる。画面を上下に分割するのが「分割画面モード」。そして、YouTubeのモバイルアプリのように、画面の片隅に小さくWebページを表示するのが「小画面モード」だ。

この新機能は月額380円の有料会員に加入することで利用できるようになる。ただ、1週間に5回までは無料で利用可能だ。有料会員には本機能のほかにも、広告ブロック機能、プレミアムジェスチャー機能(無料で使える標準ジェスチャー5個のほかに、追加的なジェスチャー5個が使用可能)、かざして検索機能などの恩恵がある。2017年9月に追加された広告ブロック機能とかざして検索機能の詳細についてはこちらの記事も参考にしてほしい。

アスツールは、2016年2月に元楽天社員の加藤雄一氏が設立したスタートアップ。2016年9月にSmoozをローンチして以来、同ブラウザのダウンロード数は累計60万件を超えた。課金比率などは非公開だが、加藤氏によれば「前年比で10倍に伸びている」という。SmoozはiOSAndroidの両方で利用可能だ。

“俺の嫁”ロボ「Gatebox」のハード設計者が作った、自動衣類折りたたみ家具「INDONE」

自動で衣類を折りたたみ、収納する家具……というとTechCrunch Japanの愛読者なら「ああ、laundroid(ランドロイド)のこと?」という反応になるかもしれない。だが、今日紹介するのは、ロボットやIoTデバイス開発を手がけるASTINAが発表した「INDONE(インダン)」のコンセプトモデルだ。

INDONEは、本体に設置された衣類カゴ(上の製品写真右下部分)に乾燥済みの衣類を入れるだけで、自動で衣類をたたんで、引き出しにしまってくれる“タンス”だ。INDONEには、特許出願中の独自技術が実装されているという。

ASTINAは2017年、代表取締役の儀間匠氏により、ロボット・IoTデバイスに特化した開発企業として設立された。儀間氏はウィンクル(現:Gatebox)で、バーチャルホームロボット「Gatebox」のハードウェア部門の開発リーダーとして、ハード設計とマネジメントに携わっていた人物だ。

ASTINAでは創業以来、1年ほどで約20種類のロボット・制御機器を開発してきた。その中で培われたノウハウを、今度はコンシューマ向け製品の開発へ投入。「ふだん使いのロボティクスを」というコンセプトのもと、INDONE開発・販売に着手した。

ASTINAは、INDONE発表と同時に、プレシードラウンドでウォンテッドリーほしのかけらAS-ACCELERATORおよび複数の個人投資家を引受先とする、2000万円の第三者割当増資の実施を明らかにしている。これまでの累計調達金額は約3500万円になるという。

写真左より、ほしのかけら代表社員 竹内秀行氏、ASTINA代表取締役CEO 儀間匠氏、ウォンテッドリー取締役CFO 吉田祐輔氏

語学アプリ「abceed」運営が資金調達、AI開発に加え“学習空間”設計を目指す

あまたある語学学習アプリの中で、「abceed(エービーシード)」はTOEIC教材を中心に提供するものなのだが、出版社から刊行されている紙の教材と連動している点が大きな特徴だ。

abceedを運営するGlobeeは10月15日、日本ベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資の実施を発表した。2014年設立のGlobeeはこれまでにエンジェル投資家から出資を受けているが、VCからの資金調達は初めて。今回の第三者割当増資による調達額は数千万円規模と見られ、同ラウンドで融資も合わせて総額1億円を調達予定だという。

Globeeは2014年6月、当時大学4年生だった代表取締役の幾嶋研三郎氏により設立された。幾嶋氏は留学生とのコミュニケーションを密にすることで、1年間でTOEIC 955点を獲得できた経験から、語学学習をサービスとすることを着想。創業当初は、留学生バイトを講師とした英語学校の運営を行っていた。

しかし語学学校といえば、競合がひしめくレッドオーシャン。うまく成長できたとしても5年後、10年後の行く先が見えないと幾嶋氏は考えた。当時の語学学校ではまだまだ、紙やオフラインでの教材提供や学習進捗管理が中心だったことから、「IT化の流れがこれから来る。そのときに変革する側にいたい」と2015年初頭に事業のピボットを決意。その後一旦、ピボット先となる事業を探しながらソフトバンクへ入社し、シェアサイクリングや保育園向けアプリなどの新規事業開発に携わっていた。そして2017年1月にソフトバンクを退社。まずは無料アプリとしてabceedの提供をスタートし、その年の10月にアプリ内課金を行う有料版をリリースした。

abceedは、初めからアプリとして完結するように開発されたわけではなく、書店にも並ぶ紙の本の教材と連動した“文房具”アプリとして誕生した。幾嶋氏は「紙の教材ありきで、そこへITの便利さを取り入れるという発想で開発・公開したところ、既存の教材を使っていた人が利用して、一気にユーザーを集めることができた」と話す。

文房具、すなわち英語教材に対する「鉛筆・消しゴム・マークシート」と「音声再生プレイヤー」の代わりとして機能するabceed。その使い方を見てみよう。

まずは音声を聞きたい問題集を、アプリの中から探して選択。音声はダウンロードして、再生することができる。

マークシートも問題集ごとに表示でき、紙の教材を見て、音声を聞きながら問題を解くことも可能だ。マークシートを利用すると、問題を解いた後に自動で採点をしてくれる。

また一部の教材については、紙の本がなくてもアプリ内で学習が完結する、アプリ学習機能が利用できる。単語帳教材の一部を“お試し”で使ってみたが、各単語ごとに1画面でディクテーション、解説確認ができるし、その後の理解度のテストもサクッとできる。リーディング系の問題では、紙の本併用のほうが良いかもしれないが、リスニング系の問題については特に、アプリ学習は手軽に進められて良いのではないかと感じた。

現在の対応教材数は131タイトル。そのうちアプリ学習機能付きの教材は45タイトルだ。音声ダウンロードとマークシートの利用は無料。アプリ学習機能は有料で、各学習コンテンツを電子書籍のようにアプリ内で購入する形となる。また、有料のプレミアムプランにアップグレードすると、自分用の単語帳への登録やディクテーション機能、お気に入り教材のオフライン利用、教材をまたいだ総合学習分析機能などが利用できるようになる。

幾嶋氏は「紙の本というオフラインのコンテンツをツール化することで、結果として大量の学習データが取得できた。このデータは電子コンテンツ(アプリ学習機能)開発にも役立っている」と述べている。

これまでにabceedで蓄積した学習データはユーザー50万人分、億単位になるとのこと。Globeeでは調達資金で、これらの学習データと、深層学習や位相的データ解析といった技術を組み合わせ、ユーザーに最適な学習コンテンツをレコメンドする「abseed AI」の開発を進めていく考えだ。

幾嶋氏はまた「既存のTOEICメインとする学習領域から、語学全般へ領域を広げたい」とも話している。さらにこれまで、紙とデジタルを併用することで効果的な学習を促してきた経験を踏まえ、「オフラインも含めた新しい学習体験ができる“空間”を設計・デザインするためにも投資していく」とのことだ。具体的には、AR/VR、スマートスピーカーなどを取り入れた語学プラットフォームの開発を検討。建築家・山之内淡氏を顧問に迎え、オンラインとオフラインを融合した新しい学習体験の設計・デザインを進めるという。

「現在は日本国内をメインにサービスを提供しているが、世界展開も視野に入れている」という幾嶋氏。「日本のアプリストアで1位を獲得したとしても、MAU(月間アクティブユーザー)は20万〜30万程度。海外にも展開することでMAUは100倍以上になる。ユーザー数100万を超える、使われるサービスを目指して今後も開発を進めていきたい」(幾嶋氏)

写真左から、日本ベンチャーキャピタル 劉宇陽氏、Globee CTO 上赤一馬氏、代表取締役 幾嶋研三郎氏、建築家 山之内淡氏(撮影:宇田川俊之氏)

最低月額500円で約600種類の家具をレンタル、「airRoom」が数千万円の資金調達

サードパーティ製のインテリア家具を月額定額で利用できる「airRoom」。同サービスを運営するElalyは10月12日、サムライインキュベートおよび河合聡一郎氏、三木寛文氏、水谷寿美氏、安田直矢氏ら複数の個人投資家を引受先とする第三者割当増資を実施したと発表した。調達金額は非公開だが、数千万円規模の調達とみられる。

本日より正式リリースしたairRoomは、2018年7月にベータ版をリリースしている(当時のサービス名は「SmartRoom」)。合計20ほどのブランドが販売する500〜600品目の家具を月額定額で利用できるサービスだ。ユーザーはそれらの家具を月500円〜借りることができ、1ヶ月単位で自由に家具の入れ替えを行うことができる。高い料金のものでも、月5000円程度で家具を使うことができる。

airRoom代表取締役の大藪雅徳氏によれば、同サービスのメインターゲットは20〜30代前半の女性として設定しているという。「家具のECといえば、『Roomclip』がユーザーに一番認識されていると思うが、そのユーザーの約8割が女性だという。また、その年代の女性は部屋の模様替えにも積極的」(大藪氏)

“家具のサブスク化”を行う日本のスタートアップはElalyの他にもある。過去にTechCrunch Japanで紹介したところで言えば、KAMARQCLASなどがその例だ。その背景には、サイズが大きい家具という商材を扱うブランドでは、売れ残った在庫が経営を圧迫しやすいというものがある。そういったブランドがairRoomなどのサービスを通して在庫を収益に変えるというニーズは一定数存在するわけだ。ユーザーにとっても、家具を引っ越しの度に移動したり必要がない、気にいるかどうか分からないので一度使ってみたいといったニーズがあることから、この種のサービスはここ数年で増えている。

では、airRoomは他社とどのように差別化を図るのだろうか。料金だけを考えると、各社最低月額500円〜と大差はない。大藪氏は、「airRoomのSKUは500〜600品目と同業他社のなかでもトップクラス。また、他社サービスでは家具を入れ替えるのに最低半年使用しなければならないなどの制約があることも多いが、airRoomでは1ヶ月単位でいつでも変更できる。もちろん、頻繁に家具の入れ替えをするユーザーが多ければ運送費が大きな負担となるが、実際には1ヶ月ごとに家具を入れ替えるユーザーはそう多くないとみている。家具のサブスクという市場全体を育てるためには、ユーザーにとっての使いやすさを最大限高める必要があると考えている」と話す。

また、20〜30代前半の女性とするairRoomでは、汎用性の高い家具を扱うのではなく、デザイン性の高い家具をラインナップに追加することに今後注力していくという。

IoTを駆使した狩猟罠センサーの新モデル、獣害対策とジビエ利用拡大を支援

狩られる側からすると決してスマートではないのだが、狩猟罠に装着できるIoT機器の新モデルが登場した。2017年9月創業のhuntechが開発した「スマートトラップ2」だ。3G通信モジュールの刷新などでバッテリー駆動時間が伸び、最長2カ月の連続利用が可能になったのが特徴。税別の販売価格は1台あたり3万3800円で、システム利用料は月額980円。同社のウェブサイトで注文できる。

スマートトラップ2は、ワイヤーで足を縛り付ける「くくり罠」や獲物が入ると檻が閉じる「箱罠」に取り付け可能で、罠が作動すると磁気センサーが検知して管理者に通知メールが送信されるという仕組み。もちろん、メールは複数人に送ることが可能。野生鳥獣による農作物の被害軽減に役立つほか、シカやイノシシなどを食材にする「ジビエ」の利用拡大にも寄与するという。

具体的には、罠の設置者に義務付けられている見回りの頻度を毎日から週1回~月1回程度にまで削減できることで、高齢化が進む猟師の負担軽減になる。また、捕獲後すぐに獲物を回収できるため、良好な状態で食用肉として流通させることが可能になる。

スマートトラップ2はGPSを内蔵しているので罠の設置場所も記録できる。3G回線を通じて気象情報なども取得可能だ。そして、これらのデータを組み合わせ、いつ、どこで、どんな状態で獲物を捕獲したかがデータベースに自動蓄積されていく。猟師の長年の経験を基に仕掛けていた罠を効率よく配置できるようになる。

現在、政府がジビエの利用拡大を推進しており、今年3月には捕獲から搬送・処理加工、販売を手がけるジビエ利用モデル地区を全国から17地区選定、2019年度にはジビエの消費量を倍増させる方針だ。huntechでは2019年夏までに、LPWA(Low Power Wide Area)通信への対応を予定、モバイル回線が届かない山間部などでの導入を目指すとのこと。また、捕獲後の食肉加工・流通プロセスのログを保存・管理するトレーサビリティ管理プラットフォームの開発など、ジビエの流通体制に関わる事業を拡大していく予定だ。

Gunosyがインドのオンラインレンタカー最大手「Zoomcar」に出資

Gunosyは10月10日、7月に設立した投資育成事業を担う子会社Gunosy Capitalを通じて、オンラインレンタカー事業を展開するインドのスタートアップ「Zoomcar」に出資したことを明らかにした。出資額などは非公開。Gunosy Capitalにとっては初めての投資になるという。

Zoomcarは現在インド内で25都市を超える拠点を持つ、同国では最大手のオンラインレンタカー事業会社だ。米国発の「Zipcar」に近いモデルで、Zoomcarに登録されている車を検索・予約、解錠、支払いまでアプリ上でできる仕組み。Gunosy Capitalによると、世界と比べても車の所有率が低いインドではオンラインのカーシェアリング事業が新しい解決策として受け入れられているという。

米国版のTechCrunchでは何度か取り上げているスタートアップで、2月の記事では29都市で展開、270万人のユーザーが登録し、クルマの保有台数は3500車にのぼると紹介している。これまで同社にはFord Smart MobilityやSequoia Capitalらが出資をしていて、Crunchbaseによると累計の調達額は1億ドルを超える。

インドと言えば経済の成長が著しい国としてよく知られるが、成長率は今後3年間で年率7%以上にまで上昇する見込み。2025年までに5兆ドルに達すると予想されているほか、その後も成長は続き2050年には米国を抜いて世界第2位になるとも言われている。

Gunosy Capitalでは注力領域のひとつに「シェアリングエコノミー」をあげているが、今回は車×シェアリングエコノミー(ちなみにZoomcarでは自転車のシェア事業も展開している)という領域に当てはまることに加え、インドという国自体もこれから大きな成長が見込まれることが出資の背景にあるようだ。

同社取締役の間庭裕喜氏は「カーシェアは今後大きな成長を遂げる可能性のある市場のひとつ」とした上で、今後インド以外の国で同様の事業を展開するスタートアップにも投資をする可能性はあると話していた。

資金に加えて採用も支援——ビズリーチがファンド開始、投資第1号は電話営業解析AIのRevComm

転職サイト「ビズリーチ」をはじめとした人材サービスを展開するビズリーチは10月11日、創業期のスタートアップを資金面・採用面から支援する「ビズリーチ 創業者ファンド(以下、創業者ファンド)」の立ち上げを発表した。この“ファンド”は投資組合として設立されたものではなく、同社の事業として企業へ直接投資する形。また投資第1号案件として、セールステック領域でAIを活用したサービスを提供するRevComm(レブコム)へ出資したことも明らかになった。

創業期の原体験をスタートアップコミュニティに還元

2017年版の中小企業白書によれば、起業家が創業初期・成長初期の課題として第1に挙げるのは、資金調達に関するもの。また、人材採用に関する課題も大きくのしかかっているという。

ビズリーチは、2009年の創業以来、転職サイトをはじめとしたサービスでスタートアップを含む企業の採用活動をサポートしてきた一方、自らもスタートアップとして人材採用に苦心した経験を持つ。これらの経験を創業期・成長初期のスタートアップ支援に生かすべく、資金と採用の両面をサポートするために立ち上げられたのが創業者ファンドだ。

ビズリーチ代表取締役社長の南壮一郎氏は「創業10年目の節目に、これまでを振り返る機会も多いのだが、正直、一番苦しかったことといえば、最初はひとりぼっちのところから、経営チームを組成するところだった。勉強会に参加したり、知り合いのつてをたどったりして、何とか人を探すところから始まった」と語る。

その後、創業期の原体験を元に何かスタートアップコミュニティに還元できないか、と考えるようになった南氏。海外で、投資家も含めたさまざまな人に会う機会が増えて感じたのは「シリコンバレーのVCの投資実績は、金銭だけでなく、補完的価値をどれだけ提供できて、出資先とどう向き合うかで見られている」ということだった。

「彼らはファンドの中に、創業期の経営者チーム組成のための採用支援を行う、プロのリクルーターを従業員として在籍させている。自分が創業当時なら受けたかった支援だ」(南氏)

こうした金銭面だけでない、事業への貢献・支援が世界中、特に米国のVCで広がっている、と南氏は言う。だが日本では、スタートアップと向き合い、事業にも踏み込んだ積極的なサポートはまだまだ浸透していない。そこで「自らの本業を、スタートアップ支援に生かせるのでは」と考え始めたのが、2017年秋のことだった。

「自分の創業期と違い、ビズリーチやキャリトレといった、企業からの声かけを待っている人材が何十万人も登録しているプラットフォームが、今はある。それに創業者としての考え方や、人材の採用テクニックも知っている。プラットフォームと採用活動のノウハウとを、資金と合わせて“投資”することができるのではないかと考え、1年ぐらい前から構想していた」(南氏)

そして構想だけではなく何らかの形で実現したい、そのためにプロトタイプとなるケースで実験できないか、と思っていた南氏に、ちょうど起業についての相談を持ちかけたのが、学生時代からの知り合いで、投資第1号案件となるRevCommを創業したばかりの會田武史氏だったそうだ。

會田氏の相談を受けて、南氏はまず「テクノロジードリブンのプロダクトを出そうとしているのに、エンジニアがいない。このままでは事業が立ち上がらないのではないか」と感じたという。そこで採用ノウハウと自社サービスを資金とともに提供する、というファンドの構想を會田氏に伝え、「モデルケースとしてサポートしていいなら、出資も含めて支援する」と申し入れた。

それからは「資金+付加価値を提供する、新しい日本のモデルケースとなる投資事業を一緒につくってきた」(南氏)というビズリーチとRevComm。ビズリーチの支援もあって、RevCommは3人のエンジニアを創業チームとして採用することに成功。2月には、プロダクト「MiiTel(ミーテル)」のプロトタイプを、6月にはクローズドベータ版をリリースした。

電話営業の可視化で生産性を向上させるMiiTel

RevCommは2017年7月、企業の生産性向上をフィロソフィーに掲げ、會田氏により設立された。會田氏は三菱商事の出身。商社マンとしていろいろな国の人と仕事をする中で、「日本の生産性はG7各国のうち最下位とされているが、果たしてこれは本当なのか」と疑問を持つに至る。「日本人のレベルは低くない。生産性=効率×能率としたら、日本人は教育水準も高く、能率は担保されているはず。では効率はどうか、と考えたときに、高いコミュニケーションコストに行き当たる」(會田氏)

「日本では『何を言ったか』ではなく『誰が誰に言ったか』『どう言ったか』に焦点が当たるようなコミュニケーションが多い。テクノロジーの力でコミュニケーションのあり方を変えたい」というのが會田氏の考えだ。

セールスやマーケティング畑が長い會田氏は、「マーケティングの世界は、かなりデータドリブンになってきているが、セールスはいまだに属人的。現状では気合いと根性で、とにかく数打ちゃ当たるという労働集約的な世界だからこそ、テクノロジーの力で生産性は大きく向上できる」と話す。

特に電話営業の分野では、営業と顧客が会話した内容が他の人には可視化されず、それが効率よく成果につながるものかどうかを知るすべがなく「ブラックボックス化」しやすい。そこで、AIによる音声解析を用いて電話営業を可視化しよう、と開発されたのが、AI搭載型クラウドIP電話サービスのMiiTelだ。

MiiTelはSalesforceと連携したIP電話で、営業トークの内容を録音し、ログを取得。AIでトークの音声を分析し、担当者自らが課題を確認してセルフコーチングできる。

會田氏も、自社プロダクトを営業する際にMiiTelを使ってみたところ、「話す・聞くの割合では、話す時間が長く、相手の話の途中で話をかぶせてしまう“発話かぶり”も多かった」とのこと。クセが可視化されたことで、意識して改善したところ、アポイント成立率や成約率が実際に向上したそうだ。「これなら、営業担当者自身のエンゲージメントも上がり、生産性が向上すると実感した」と會田氏は話している。

2月のプロトタイプからビズリーチでもテストを兼ねて活用されていたMiiTelは、6月リリースのクローズドベータ版がすでに有料で30社に利用されており、本日、正式版がリリースとなる。利用料金は月額4980円/ID。10 ID以下の場合は導入費用が8万9000円、11 ID以上では導入費は無料だ。

「5年後には、MiiTelの1万社への導入を目指す」という會田氏は、「生産性を向上するサービスを提供することで、(経営分析に必要な)ビッグデータを集め、将来的には経営判断を行うAIプラットフォームを開発したい」と話している。

資金+側面の支援で「アイデア」を「事業立ち上げ」へつなぐ

創業者ファンドでは「経営チーム組成のための採用ノウハウ・テクニックの提供」「転職サイトのビズリーチ、キャリトレのサービス1年間無償提供」「資金援助+調達ノウハウ、投資家ネットワークの紹介」「経営チームによるメンタリング」「プロダクトのプロトタイプのテスト利用とフィードバック」を出資先企業への支援内容としている。

対象企業は、企業の生産性向上をテクノロジーで促すSaaS型のB2B事業や、AI、ブロックチェーンなどの最新技術を活用した事業を営むスタートアップ。南氏は「ビズリーチの『働き方、経営の未来を支える』という理念に沿った事業を行うシード期の企業を対象とする。資金の他に採用ノウハウ・テクニックや自社サービスを“投資”することで、創業期の経営チーム組成を支援していく」と述べる。

會田氏は創業者ファンドについて、こう語る。「創業期は金も時間も足りない中で、マインドセットやスキルセットが合致したメンバー選びが重要になる。だが、ふつうに採用サービスを利用するとお金がかかる。ビズリーチのダイレクトリクルーティング機能を使い、『カジュアルでいいので会ってみませんか』と声をかけられたのは、非常に良かった」

南氏によれば、會田氏は「ビズリーチの登録データを何人も見て、数百人という相手に会っている」という。「創業前の企業でも興味を持つ人が、これだけいるのかと驚いた。スタートアップがキャリア選択の可能性のひとつになった。起業家もパッションさえあれば、データベースがあって、そこを探せば人材が見つかる、という状況になっている」(南氏)

南氏は「アイデアだけはある、というのが創業者でよくあるパターン。事業立ち上げまで支援できれば、それが自分が恩恵を受けてきた、スタートアップコミュニティへの恩返しになるのではないか」と考えている。

「スタートアップはやっぱり人。創業期は特にそうだ。自分の創業した時には人材のデータベースがなかったが、データベースからスタートアップ採用人材の情報が集められるというのは、衝撃的。これは起業家の諸先輩方を含め、みんなでつくってきたエコシステムだ。採用候補者が話を聞いてくれる、努力すれば見つかる、というところまでは来ている。創業者ファンドの支援によって、事業立ち上げの確度も上げていきたい」(南氏)

写真左から:ビズリーチ代表取締役社長 南壮一郎氏、RevComm代表取締役 會田武史氏

電子トレカでスポーツチームを支援できる「whooop!」が正式公開、7種目12チームから展開

スポーツチームやアスリートがオンライン上で電子トレーディングカードを発行することで、ファンと関係性を深めたり資金を集められる「whooop!」。TechCrunchでも5月に紹介した同サービスが、ベータ版を経て10月10日に正式リリースとなった。

ベータ版では3チームだったスポーツチーム数も7種目12チームまで拡大。まずは2018年末に50チーム以上での展開を目指していくという(後日トレカを販売することが決まっているチームも含めると15チーム。具体的なチーム名は記事末尾にて紹介)。

whooop!は各ユーザーがチームの発行した“電子トレカ”を購入・売買することで、そのチームを応援できるプラットフォームだ。

ユーザーがトレカを購入する方法は2パターン。チームのカードパックを直接購入するか(カードは1枚から購入でき、どのカードが当たるかはランダム)、オークション機能を使ってユーザー同士で特定のカードを売買する。

直接購入した場合にはカード代金の90%が、ユーザー間で売買した際にも取引額の2.5%がチームの収益となるので、カード集めを楽しみながら好きなチームを応援できるのが特徴だ。

チームは保有するカードの種類や量に応じた「特典」をつけることが可能。たとえばチームの運営方針に関する投票権を付与したり、e-sportsなどであれば「実際に好きな選手と1対1で対戦できるイベント」を設けるのもありだ。今後はファンクラブのような形でチーム側から情報を発信し、カードを持っているユーザーだけがその情報をチェックできるような仕組みも入れていくという。

運営元であるventus代表取締役CEOの小林泰氏と取締役COOの梅澤優太氏に近況を聞いてみたところ、実際に3チームで運用してみた中で「(好きなチームを応援できるような場所を求めているファンがいて)whooop!のようなプロダクトに対するニーズがあること、お金を払ってトレカを買ってくれる人が一定数いることは検証できた」(梅澤氏)という。

たとえば9月からカードを販売しているサッカー東海リーグ1部の鈴鹿アンリミテッドの場合、ホーム開催の試合に合わせて販売をスタートしたところ、3〜4時間で数百枚のカードが売れたそう。チームを応援したいと思っているコアなファンは試合会場に足を運んでいるケースが多いので、ホームゲームというリアルイベントに紐づけて会場でビラ配りなどをすると、関心を持つ人も多いようだ。

「現地でファンに話を聞いてみても『カードを集めること自体も楽しいけれど、それ以上に使ったお金がチームにしっかりと還元されるのがいい』という反応が多い。当初から、クラウドファンディングのようにモノの対価としてではなく、純粋な支援としてチームにお金が還元される仕組みを作りたいという思いがある。トレカを買うというよりも、好きなチームを支援した結果、それを証明するものとしてトレカがついてきたというような世界観を目指している」(梅澤氏)

スポーツチーム側にとっては、在庫がなく原価もかからないのが特徴。大きなリスクやコストなどの負担なく続けられ、トレカを軸にファンとの関係性も深められるような場所を意識しているという。

「チームが新しいチャレンジをするための“道具”になれそうな手応えはある。より深く掘り下げられるようなポイントにも気づけたので、今後は機能面をさらに拡充し、より面白い場所にしていきたい」(小林氏)

whooop!ではトレカを買った結果、どのくらいのお金がチームに還元されているかがわかるようなデザインになっている

冒頭でも触れた通り、正式リリースに合わせてチーム数も12チームまで拡大。種目数が広がったことに加え、筑波大学蹴球部(サッカー部)のように大学スポーツのチームもトレカの販売が決まっている。

2018年内に50チーム以上、2019年初頭には100チーム前後への展開を見込んでいて、すでにサッカーJリーグのクラブやラグビーチームとも話が進んでいるそう。国内だけなく欧州有名サッカーチームとの協業も予定しているという。今後もさまざまな種目・規模のチームを加えることで、「いろいろなチームやファンが集ったスポーツ横断型のコミュニティ」の形成を目指していく。

本日TechCrunchではスポーツチームに投げ銭をできる「Engate」も紹介しているけれど、スポーツチームやアスリートが収益源を確保したり、ファンとの関係性を築いたりする方法はもっとアップデートできる余地がありそうだ。

なお本日時点でwhooop!に参加することが決まっている15チームは以下の通り(鈴鹿アンリミテッド、宇都宮ブリッツェン、名古屋OJAはベータ版から参加)。

  • 東京武蔵野シティFC(サッカー/JFL)
  • コバルトーレ女川(サッカー/JFL、トレカ販売開始は後日)
  • 鈴鹿アンリミテッド(サッカー/東海リーグ1部)
  • 筑波大学蹴球部(サッカー/大学サッカー、トレカ販売開始は後日)
  • 琉球アスティーダ(卓球/Tリーグ)
  • 宇都宮ブリッツェン(サイクルロードレース)
  • 那須ブラーゼン(サイクルロードレース)
  • キナンサイクリング(サイクルロードレース)
  • ヴィクトワール広島(サイクルロードレース)
  • 名古屋OJA(e-sports)
  • CYCLOPS athlete gaming(e-sports)
  • 広島ドラゴンフライズ(バスケ/B2)
  • TOKYO DIME(バスケ3×3)
  • スタープラチナ(女子ゴルファーサポートチーム)
  • 埼玉アストライア(女子プロ野球、トレカ販売開始は後日)