アドフラウド対策ツール提供のPhybbitが6500万円を調達、検出を自動化し担当者の負担を削減

クリックやインストールを不正な方法で作り出し、広告収益を得るアドフラウド。人工的ないしbotを使って広告費を搾取するこの手法は「広告詐欺」などとも呼ばれ、広告主や広告配信事業者を悩ませている。

そのアドフラウド検出における業務を自動化・可視化することで、アドフラウド対策の敷居を下げる「SpiderAF」。同サービスを提供するPhybbitは4月17日、大和企業投資フリービットインベストメント、川田尚吾氏、佐伯嘉信氏を引受先とする第三者割当増資資により6500万円を調達したことを明らかにした。

調達した資金をもとにSpiderAFの営業やサポート体制の強化、マーケティングの強化を進める方針だ。

多様化するアドフラウド、近年はアプリ広告がターゲットに

冒頭でも触れたように、ネット広告の課題としてアドフラウドが取り上げられるシーンが増えてきた。Phybbit代表取締役の大月聡子氏によると、近年ではアプリ広告に対する不正行為が目立つという。

「アドフラウドの手法もどんどん多様化している。アプリ広告ではインストール単価が1000円を超えるものなどもあり高額。その一方で新しい手法ということもあり対策が十分に進んでいない」

「ばらつきはあるが、平均して(配信した広告のコンバージョンの)1〜2割はアドフラウド。条件によっても大分変わるが、海外でも2割くらいになっている」(大月氏)

広告配信事業者としては、月々数10~100TBを超える広告データを担当者が逐一分析するというのは難しい。加えて巧妙なアドフラウドに対応するには、相応のノウハウも必要になる。仮に不正なアカウントを発見できたとしても、アカウントを変えて再び不正を受ければ毎回同じ作業を続けなければならない。

このように担当者がアドフラウドに人力で対応するには、かなりの時間とナレッジが必要になりハードルが高かった。

アドフラウドの検出を自動化し対策にかかる負担を削減

SpiderAFはそんな業務を自動化し、非エンジニアでもアドフラウド対策をできるようにサポートするサービスだ。配信された広告のログを自動で収集、解析するとともに広告が配信されたサイトのコンテンツを監視する。これらを不審なIPなど独自のブラックリストと照合し、広告出稿先ごとにスコアを付与。この数値が高くなるほどアドフラウドの可能性が高くなる。

現在PhybbitではWeb広告用の「SpiderAF for web」とアプリ広告向けの「SpiderAF for app」を提供。たとえばSpiderAF for appではスコアの他にインストール件数、データセンター経由の有無、端末の種類なども確認できる。

「一定数のインストールがあっても、それが全てデータセンターからきていれば人間がインストールしていないことがわかる。ほかにも日本国内で販売されていない端末がインストールの大半を占めている場合、国内向けのアプリなのに言語設定が英語になっていたり文字化けしていたりする場合はアドフラウドのケースが多い」(大月氏)

この広告枠から発生しているインストールの端末言語設定では、多くが文字化けと英語で、日本語は1件だけ。これは海外のクリックファームによる不正の可能性がある。

SpiderAFではこれらの作業を自動化しつつ、スコアリングのブラッシュアップにはAIも活用。スコアが低い場合などは人間が目視で確認、フィードバックを重ねていくことで学習し、スコアリングの精度を向上させていく。

競合プロダクトにはリアルタイムでデータを解析するものもあるが、SpiderAFでは、蓄積されたデータを用いてアドフラウドを判定している。もちろんリアルタイムにアドフラウドを検出できるに越したことはない。だが、一定期間のデータをまとめて解析しないと検出しにくいアドフラウドがあるからだという。また、コスト面でもリアルタイム検出に比較して安価に提供できるとしている。

「広告をクリックしてからアプリストアに接続後、インストールして起動する。その間がわずか10秒しかかかっていない場合などもあるが、これは明らかにおかしい。最近では夜は寝ているかのように偽装したりなど、不正の手口が高度化していて判別が難しくなってきている。ただ1ヶ月など一定のスパンで解析してみると、実は5秒おきにクリックしていることがわかるなど、怪しい挙動を判別できる」(大月氏)

この広告枠の例では、6秒ごとにクリックが発生しているのを確認できる。このような周期的なパターンは、ボットなどによる不正なクリックだと考えられるという。

2018年内に50社、2019年内に200社の導入を目指す

今後の方向性としては特にSpiderAF for appの拡大に力を入れていく方針。これまでは広告配信事業者向けに提供を進めてきたが、これからは広告主向けのサービス展開も強化する。

Phybbitは2011年の設立。大学院で原子物理学の研究をしていた大月氏が卒業後に仲間とともに立ち上げたスタートアップだ。当初は受託開発に取り組んでいたが、アドテク企業のデータ解析や開発を引き受けていた際に、アドフラウドの課題を知ったそうだ。

それまで属人的に行っていた広告ログの解析、異常値の抽出作業をシステム化したところ、反響があったために製品化。2017年6月にSpiderAF(現在のSpiderAF for web)を、2018年2月にSpiderAF for appをリリースしている。Phybbitでは引き続きプロダクトの改良を重ねながら2018年内に50社、2019年内に200社の導入を目指すという。

人の代わりにAIが採用面接してくれるサービス「SHaiN」の運営が3000万円を資金調達

人間の代わりにAIが採用面接をする、と聞くと、あなたはどう感じるだろう。ちゃんと人間性まで見てくれるのか不安に感じる人も、中にはいるかもしれない。一方で、一定の基準に従って公平に見てくれそう、と期待を持つ人もいるだろうか。

AI面接サービス「SHaiN」を提供するタレントアンドアセスメントは4月16日、三菱UFJキャピタルが運営するファンドを引受先とした第三者割当増資を実施し、3000万円を調達したことを明らかにした。

タレントアンドアセスメントは2014年10月の設立。2017年10月に正式リリースされたSHaiNは、同社が独自開発した「戦略採用メソッド」をもとに、スマートフォンアプリなどを介してAIが面接を行うというサービスだ。

SHaiNを利用することで、候補者一人ひとりが面接で話す時間は従来より長く取れて、24時間いつでも、世界中のどこからでも面接に参加することができる。また、企業が求める人物像や採用基準に沿って、AIが応募者の資質を分析して診断結果データを出してくれるので、採用担当者のほうは一次選考に使っていた時間や労力を削減でき、本来行うべき採用業務に充てる時間を確保することができるようになる。

また人による評価のばらつきが改善されるほか、候補者が他社選考とバッティングして参加できない、といった機会損失を減らすことができる。

SHaiNはリリースから半年で、大手から中小まで20社以上の企業で導入され、検討の引き合いも増えているという。大学でのキャリア教育への活用や、地方行政での導入も始まっているそうだ。利用価格は標準プランで面接評価レポート料金1件当たり1万円となっている。

タレントアンドアセスメントでは調達資金について、SHaiNの機能増強や管理システムの充実化、評価判定AIの開発などに充てるとしている。

売り手市場の拡大で応募が特定の企業に集中し、かえって面接の機会が得られない学生が増えている状況に対し、同社はAI面接によって、全ての学生が公平に面接を受けられる機会を提供したいという。今後、面接のビッグデータ活用、中途採用や企業内面談などでの活用も検討。海外展開も視野に入れ、多言語対応などのサービス拡大も図っていく考えだ。

VR空間のモノに触れるデバイス「EXOS」開発のexiiiが8000万円を資金調達

VR/AR空間でバーチャルなモノに触れることができる、触覚ウェアラブルデバイス「EXOS」を開発するexiii(イクシー)。同社は2017年7月に大成建設と共同で、遠隔操作システム開発を発表。また今年2月には「CADデータに触れる」3Dデザインレビューシステム開発と、ビジネス向け開発者キット「EXOS DK1」の受注開始を発表している。

そのexiiiが4月16日、グローバル・ブレインが運営するファンドを引受先とした第三者割当増資の実施を明らかにした。調達金額は約8000万円だ。

2月に発表された3Dデザインレビューシステムは、VRにEXOSを組み合わせることで、視覚と触覚を合わせた直感的なレビューを目指したもの。製作に時間のかかるモックアップに代えて、データでデザイン検証ができるようになるもので、日産自動車のグローバルデザイン本部による活用検討が明らかになっている。

またEXOS DK1シリーズでは、手のひらを前後・左右に動かしたときの力触覚を提示してVR内のオブジェクトに「触れる」感じを再現する「EXOS Wrist」と、指の開閉の力触覚を提示することでオブジェクトを「つかむ」感じを再現する「EXOS Gripper」の2種類を製品として提供。製造・シミュレーション・エンターテインメントなど、さまざまな分野でパートナーデベロッパーを募っている。

「EXOS Wrist」(左)と「EXOS Gripper」(右)イメージ

exiiiは今回の資金調達で、EXOS DK1の販路拡大と、中長期的な触覚再現のための研究開発体制強化や次世代デバイスの開発を視野に、グローバル・ブレインと協力していくという。

exiii代表取締役社長の山浦博志氏は、「今後ますます普及していくVR/ARにおいて、触覚提示は人間とコンピューティングをより直感的に繋ぐために不可欠な技術。触覚デバイスを世界の当たり前にできるよう、チーム一同一層精進していく」とコメントしている。

Slackの会話データで社員のエンゲージメントを可視化、Laboratikが8000万円調達

写真左がLaboratik代表取締役の三浦豊史氏

Slackなどのコミュニケーションツールから得た会話データをもとに、社内のエンゲージメントを可視化するボットの「A;(エー)」を提供するLaboratikは4月16日、Archetype VenturesみずほキャピタルエルテスキャピタルZeroth AI、ほか個人投資家を引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は8000万円だ。

Slackと連携して利用するエンゲージメント可視化ボットのA;は、自然言語処理を介してチャット中の会話を解析し、チームのエンゲージメント(関与度や熱意)を可視化するサービスだ。会話のポジティブ/ネガティブ度を解析したり、メンバーのチャット上での発話数や、メンタルのバイオリズムを把握したりすることができる。

また、Slackを経由してGoogleカレンダーやGitHubなど他サービスとも連携でき、スケジュールや開発進捗を自動で記録することも可能だ。現在、A;は日本語と英語の2言語版が提供されている。Laboratikは2017年6月よりA;のオープンβ版を公開している。

A;は現在までに約800社の企業をβ版のユーザーとして獲得。これまでに蓄積した会話データは100万件を超える。Laboratikはこれらの会話データの組織名、チーム名、日時など匿名化した状態で保存し、解析にかけているという。

今回の調達を期に、同社はA;の次期バージョンの開発を進める。現在、A;が連携しているコミュニケーションツールはSlackのみだが、次期バージョンでは主に大企業で使われることの多いという「Microsoft Teams」との連携をめざす。また、サーベイ機能を追加し、会話データから得た定性データとサーベイから得た定量データを組み合わせることで新たなインサイトを提供する。

Laboratikは2015年7月の創業。同社は以前に行なわれたエンジェルラウンドで3000万円の資金調達を実施しており、今回を含む累計調達金額は1億2000万円となる。

山登りの地図アプリ「YAMAP」が12億円調達、業界で連携し登山者の裾野を広げる

登山者向けの地図アプリ「YAMAP」を運営するヤマップは4月13日、ICI石井スポーツや九州広域復興支援ファンドなど合計14社を引受先とする第三者割当増資を実施した。調達総額は12億円だ。

投資家リストは以下の通り:

YAMAPは、電波が届かない山の中でも、スマートフォンのGPSを使って現在地が確認できる登山者向けアプリだ。道中であった出来事や危険な場所などを日記のように残し、他のユーザーに共有するというSNS的な機能もある。YAMAPでは、国土地理院の地図データにユーザーの軌跡データを重ねて”山専用”の詳細な地図を独自に作成。これにより、自分が山のどの部分にいるのか、コース上のどの辺りにいるのかを確認することが可能だ。下にあるちょっと奇妙な見た目の写真は、YAMAPが対応する山を日本地図上にマッピングしたもの。これを見ていただくと分かるように、国内にある山の大半はカバー済みだ。

2013年のTechCrunch TokyoファイナリストでもあるYAMAPのダウンロード数は、現時点で80万件を超え、アクティブユーザー数は50万人、月間のPV数は1億回に達した。ユーザーが投稿する活動日記の数は約155万件だ。

YAMAPはフリーミアムのマネタイズモデルを採用していて、地図アプリやSNS機能など基本的な機能は無料で提供している。月額480円〜の有料会員では、フルカラーの立体プレミアム地図を利用できたり、「YAMAP年次総会」という名のリアルイベントに参加できるなどの特典がある。

特徴的なのは、ヤマップはこの有料会員制度のことを、まるでサッカーチームのファンクラブのように「YAMAPサポーターズクラブ会員」と呼んでいることだ。ヤマップ代表取締役の春山慶彦氏によれば、登山という趣味をあつかうYAMAPでは、よりコミュニティ性を持たせた現在の呼び方の方が良いと判断し、2017年8月に「プレミアム会員」から名称を変更したという。実際、いまの名称に変更したあと課金率が上昇したのだとか。

取材のなかで春山氏は、「登山業界は高齢化が進んでいる。若い登山者を増やし、登山業界の裾野を広げるためには、業界で連携しながら登山の良さを伝えていかなければならない」と、登山業界が抱える課題について触れた。

本ラウンドの投資家リストには、地銀系のベンチャーキャピタルが多く名を連ねている。登山は観光と結び付けられることが多く、地銀と連携することで得られる地方の観光団体とのコネクションが重要だと判断したようだ。そのほか、登山グッズを取り扱う大手スポーツ用品店のICI石井スポーツと手を組み、両社の会員連携や割引特典などを用意する。おしるこやラムネなど、登山者に重宝される食品を取り扱う森永製菓とは、「食×登山」という文脈で連携を進めるという。

ヤマップは今後もこのように業界内外との連携を進め、登山業界の活性化、ひいてはYAMAPのユーザー基盤の拡大をめざす。

アジア人特化のマッチングサービス「EastMeetEast」が約4億円を調達、東南アジアで新サービスも

英語圏在住のアジア人に特化したマッチングサービスを提供するEastMeetEastは4月13日、DG Daiwa Venturesモバイル・インターネットキャピタルセプテーニ・ホールディングス朝日メディアラボベンチャーズAPAMANグループなどを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達総額は400万ドル(約4億円)だ。

「サービスを始めたきっかけは、自分自身の婚活経験からきている」と、EastMeetEast代表取締役の時岡真理子氏は話す。時岡氏はロンドンに拠点を置く教育アプリ「Quipper」の共同創業者兼COOを務めた人物。スタートアップの経営で毎日忙しく働いていた彼女は当時、プライベートでは真剣に結婚相手を探していたという。

時間の制約があるなか、時岡氏が選んだのは大手のマッチングサービスだった。時岡氏が結婚相手として望んでいたのは、両親と会話ができ、食の好みも共通する日本人男性だった。しかし、海外のマッチングサービスでは、日本人や韓国人、インド人などを“アジア人”として一括りにしてリコメンドされるという課題があったそうだ。

「そもそも単一民族の日本とは異なり、人種のるつぼである欧米では、結婚の価値観の合う人を見つけるのが難しい。そのため、海外ではユダヤ人向けのJDate.comやインド人向けのShaadi.comが成功している。私と同じく婚活に苦労しているアジア人女性を助けたいという思いでEastMeetEastを立ち上げた」(時岡氏)

そんな思いで作られたEastMeetEastは、アジア人が同じ人種やバックグランドをもつパートナーを探しやすいように設計されている。人種や言語、移民した年齢などで細かく検索できる機能を備えるほか、学歴や職歴を重視するアジア人の特性に合わせてプロフィール項目の内容を調整した。

ニューヨークに本社を構えるEastMeetEastの主戦場はアメリカだ。同サービスは現在、ニューヨークやロサンゼルスなどの米国主要8都市でよく利用されている。カナダやイギリスなどの他の英語圏に住むユーザーも多い。国籍は、多い順から中国人、ベトナム人、フィリピン人、韓国人、日本人だという。ユーザー数自体は非公開であるものの、時岡氏によれば「2016年1月から2017年12月までの約2年間でユーザー数は800%、売上は1200%」伸びたという。

EastMeetEastは今回の調達を期に、フィリピンでリリースした新サービス「WestEastDating」の展開を進めていく。同サービスは、アジアの文化や言語などに興味のあるユーザー全員を対象とした、異人種間マッチングサービスだ。「アジア地域の人口は現在45億人を超え、世界人口の60%を占めている。そういった巨大なマーケットで恋活・婚活を支援することにより、弊社のビジョンである、より多くのアジア人に幸せなご縁をもたらすということが実現できると考えている」と時岡氏は話す。

WestEastDatingは今後、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムなど他の東南アジア諸国での展開をめざす。

孫の動画を実家のテレビに自動配信、「まごチャンネル」のチカクが野村HDらから1.2億円を調達

スマホアプリで撮影した動画や写真を実家のテレビに直接送信できる「まごチャンネル」。同サービスを提供しているチカクは4月13日、野村ホールディングスのCVCと既存株主であるインキュベイトファンドを引受先とした第三者割当増資により、1.2億円を調達したことを明らかにした。

チカクは2017年12月にインキュベイトファンドから1.5億円2016年12月には500 Startups Japanおよび個人投資家から総額1億円を調達するなどしていて、累計の調達額は4.1億円となる。

過去の記事でも紹介してきたように、まごチャンネルはインターネットやスマホの利用が得意ではないシニア世代でも使いやすいように設計されたIoTサービス。離れて暮らす孫の動画や写真を、自宅のテレビを通じて楽しむことができる。

操作に必要なのはテレビのリモコンだけ。家族がスマホから専用アプリから撮影した動画と写真が自動配信される。データをアップロードすると祖父母宅のデバイスが光り、彼ら彼女らが視聴すればアプリに通知が届く仕様で、お互いの距離が近く感じられる点が特徴だ。

チカクではWebサイトや通販サイト経由でプロダクトを販売するほか、他社との連携も強化。今回の調達先である野村ホールディングスとは、同社のアクセラレータープログラム「VOYAGER」を通じてテストマーケティングを行ってきた。

具体的には野村証券の支店も巻き込み、営業員がシニア顧客を対象にまごチャンネルをプレゼント。一緒に動画や写真を見て関係性を深めた事例など、金融商品の提案以外で関係性を育むきっかけにもなっている。

チカクでは今回の資金調達を受け「引き続きシニア世代の生活を豊かにするサービスの提供を行って参ります」としている。

おつり投資の「トラノコ」が楽天、東海東京FHなどから資金調達、異業種間での連携進める

買い物のおつりで投資ができる「トラノコ」を運営するTORANOTECは4月12日、楽天キャピタル東海東京フィナンシャル・ホールディングスだいこう証券ビジネスパラカ東京電力エナジーパートナーを引受先とする第三者増資を実施したと発表した。金額は非公開(2017年6月のサービスリリース時の資本金1億3100万円から、現在は7億3788万円に増えている)。

先日、20代後半で同年代の友人たちと話していたら、「資産運用は、必要なのは分かるけど、難しいよね」という話になった。トラノコは、そんな資産運用のハードルを下げてくれるサービスだ。

トラノコでは、クレジットカードや電子マネーなどを使った買い物の“おつり”を、最低5円から1円単位で資産運用にまわすことができる。このおつりは仮想的なもので、サービスであらかじめ設定した金額(100円、500円、1000円)から、実際の支払額を引いた金額を資産運用に回せるという仕組み。たとえば、設定額が100円で、10円のお菓子を買ったら90円だ。

実際の資産運用は、100%子会社のTORANOTEC投資顧問が行う。同社はユーザーのリスク特性に応じて3種類のファンドを用意。組み入れアセットも米国株式や新興国債券など多岐にわたり、気軽に分散投資ができるようになっている。トラノコの利用料金は月額300円。そのほか、投資ファンドの運用に対する信託報酬の年率0.3%、ファンドの監査費用などの手数料(年率0.1%が上限)、ファンドの組み入れ証券の売買委託手数料がファンド資産から控除される。

事業会社との連携進める

今回の資金調達ラウンドで特徴的なのは、投資家リストに多くの事業会社を含む点だ。証券会社である東海東京フィナンシャル・ホールディングスなどをはじめ、コインパーキングのパラカ、東京電力エナジーパートナーなど、異業種の事業会社の名前もある。

TORANOTECはこれまでにも、ANAとのコラボレーションNTT東日本との提携など、異業種とのパートナーシップを積極的に推進し、トラノコユーザーに限定で割引特典を提供するなどのメリットを打ち出してきた。今回の資金調達後も、そのようなサービス連携がさらに進むことが予想される。

TORANOTEC代表取締役のジャスティン・バロック氏は、「「事業間協力および事業連携は、フィンテックの成功には欠かせない重要な要素。資産形成を人びとの日々の生活の一部にしていく上で、様々な業種の事業会社および金融機関との連携を幅広く深めていくことが大いなる力を発揮するものと確信している」と語る。

AI活用で「報道の機械化」進めるJX通信社、テレビ朝日やフジらから数億円を調達

AIニュースサービスを展開する報道ベンチャーのJX通信社は4月12日、テレビ朝日ホールディングスフジ・スタートアップ・ベンチャーズ、既存株主等を割当先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。具体的な金額は非公開だが、数億円規模の調達になるという。

JX通信社が現在力を入れているのが「FASTALERT」や「News Digest」など、ニュース速報の分野でAIを活用した事業だ。FASTALERTはSNS上の事件、事故などの緊急情報をAIが自動収集・解析するサービス。従来は報道機関が警察や消防に取材をして集めていたような情報を、SNSを通じてよりスピーディーに収集できるのが大きな特徴だ。

すでに在京の民放キー局とNHKが導入しているほか、地方のテレビ局でも活用が進んでいる状況。JX通信社の代表取締役を務める米重克洋氏によると「(具体的な数までは言えないが)全国の大半のテレビ局に採用されている」という。

もうひとつのNews Digestは報道価値の高いニュース速報をAIが検知、配信するアプリ。速報スピードがウリだ。JX通信社ではこれまでも報道現場でのAI活用を進めてきたが、今後も世論調査の自動化や記事の自動生成など「報道の機械化」に向けて各社と連携して取り組む方針だ。

「報道産業は何から何まで人間がやるビジネスという側面が強く、労働集約的になりがちだった。実際のところデジタルシフトも遅れていて、現場ではコストの削減とともに付加価値をあげた収益性の向上が求められている」(米重氏)

米重氏の話では、速報レベルの情報はかなり機械化できる要素があるという。記者の業務には人間が仕方なくやっているものも多いのが現状。これらをシステムに任せることができれば、コストを下げることに加えて、記者が本来やるべきことにより多くの時間を使えるようにもなる。

JX通信社はこれまでも共同通信社や、大手金融情報サービス事業者QUICKらから資金調達を実施。今回のラウンドで、新たに民放キー局が2社株主に加わった。

「今回の調達は組織基盤の強化の目的もあるが、報道機関との連携をより強めていきたいという意図が大きい。報道の機械化というのは、現場の理解があってこそ実現できる。今後はもっと報道の現場に貢献できる総合通信社を目指してチャレンジを続けていきたい」(米重氏)

スマホ特化の短尺縦型動画「30」運営のFIREBUGがAOI TYOなどから資金調達

コンテンツプロデュース事業やスマホ向け短尺動画の制作・配信を行うFIREBUGは4月11日、AOI TYO Holdingsアカツキ、読売新聞東京本社を引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達金額は非公開(増資後の資本金は前回資金調達時の1億8940万円から2億8120万円に増えている)。

FIREBUGは2016年2月の設立。代表の佐藤氏は吉本興業でマネージャー業を経験した後、2015年1月にクリエーターのエージェント会社であるQREATOR AGENTを立ち上げた(同社は現在FIREBUG子会社)。2017年7月にはRKB毎日放送およびエイベックス・ベンチャーズ、個人投資家などから、数億円規模の資金調達を行っている。

FIREBUGでは設立後、テレビ番組やウェブ動画、イベントなどの企画やプロデュース、PRなどを手がけていたが、2017年9月に新事業として、スマートフォン向け短尺縦型動画配信サービス「30(サーティー)」を開始し、アプリを公開した。またFIREBUGでは、企業のブランド向上を目的とした、オウンドメディアやYouTube、SNS広告掲載用の短尺動画制作も行っている。

30は、その名の通り30秒ほどの短尺の縦型動画を配信する無料の動画アプリ。ユーザー登録不要で利用できる。バラエティやニュース、マンガ、ライフスタイルといったカテゴリでコンテンツを展開。オリジナル動画を月間数百本配信している。スマホに特化した動画を短尺で配信することで、ユーザーの「スキマ時間」の視聴を狙う。

30では、動画の視聴率や視聴完了率などのデータを蓄積しており、時間帯やユーザーの操作、位置情報により、ユーザーごとのコンテンツ編成が変化する。このコンテンツ配信システムと配信方法は、現在特許出願中という。

今回の資金調達でFIREBUGは、30事業の運営体制を強化し、システム開発やコンテンツ制作の充実を図る。また、今回投資を行う各社とは、30だけでなく、既存のコンテンツ制作事業の分野でも共同制作をはじめとした事業提携を行っていく予定だ。

ITで建設業界の「人」と「お金」の課題解決へ、ローカルワークスが住友林業などから約2.1億円を調達

建設・リフォーム業界の課題解決に向けて複数のサービスを展開するローカルワークス。同社は4月10日、日本ベンチャーキャピタル住友林業SMBCベンチャーキャピタルオークファンを割当先とする第三者割当増資により、総額約2.1億円を調達したことを明らかにした。

ローカルワークスは2014年2月の創業。2015年9月にCOENT VENTURE PARTNERSから約4000万円を、2016年7月に日本ベンチャーキャピタルとニッセイキャピタルから約1億円を調達。今回の調達により同社の資本金は3.6億円になるという。

ローカルワークスではリフォーム・修理事業者の価格比較サービス「リフォマ」、建設事業者同士のマッチングサービス「Local Works Search」、施工業者向けの決済代行サービス「Local Works Payment」という3つのサービスを手がける。

これらのサービスを通じて、施工業者の稼働状況や信頼性、施工単価、取引実績といった情報をデータベースに集積。建設業界の2大課題である「人手不足」と「中小零細施工店が抱える資金繰り問題」の解決を目指している。

2016年2月にリリースしたリフォマには約1000店の施工店が加盟。リフォームや修繕依頼をしたいユーザーは、エリアやメニューから該当する施工店を比較し見積もりが可能。リフォマは双方をマッチングする役割を果たす。

ローカルワークス代表取締役の清水勇介氏によると「テクノロジーとアイデアで建築業界の非効率を変える」というテーマで事業を開始。約2年間リフォマを展開する中で業者とのネットワークも徐々に構築してきた。その過程で事業者間のマッチングや、決済のニーズを強く感じ、Local Works SearchやLocal Works Paymentに着手したという。

もともと清水氏はリフォーム関連のベンチャー企業で副社長として事業に携わってきた人物。現場での経験から建設業界が抱える課題を解決したいという思いがあったそうだ。

「特にこの業界は小規模の事業者が多い一方で、一件あたりの単価は大きくなりがち。報酬の未払いや支払いの遅延が原因で連鎖倒産が起こることもある。また4次受けや5次受けのように何社も介在するケースが多く、発注の内容があいまいだとトラブルも発生する。それを解決するためには、決済代行やバックオフィス部分のサポートが必要だ」(清水氏)

Local Works Paymentではローカルワークスが施工元請け事業者と下請け事業者に間に入り決済を代行する。報酬の未払いや遅延を防ぐほか、工事瑕疵保証をパック化して提供。2017年10月より取引顧客を限定した上で運営したところ、11月半ばまでで数千万円の利用申込実績もあったという。

同サービスは人手不足を解消するLocal Works Searchとともに、現在クローズドで展開中。正式なリリースは9月ごろを予定している。

これから同社が目指していくのは施工会社のデータベースの構築と、それを活用したサービスの展開だ。たとえばLocal Works Paymentを通じて蓄積される取引データや決済データ、信用情報。このデータを基に「建設業界に特化したレンディングサービス」などFinTechサービスの開発を考えているという。

今回のラウンドにはVCやIT系の事業会社に加えて、業界大手の住友林業が株主に加わった。今後は住友林業とも協業しながら、業界の課題解決に取り組む意向だ。

「建設業界は52兆円の規模があるといわれる大きな市場だが、まだまだテクノロジーの活用が進んでいない。その点では住友林業のような業界を代表する企業にも出資をしてもらい、一緒にチャレンジをしていけるのは大きい。先方からも『従来整備されてこなかったデータベースで、いろいろな展開ができる』と期待してもらっている。すでに顧客の紹介など連携は進めているが、今後もデータベースの活用や事業上の連携も深めつつ、業界の課題解決に取り組みたい」(清水氏)

SalesforceのBenioffが語る:シリコンバレーのすべてのVCが私たちを追い返した

先月行われた、Business InsiderのJulie Bortとのインタビューの中で、Parker HarrisとMarc Benioffは、初めて会社を立ち上げたとき、彼らがどのようにお金を稼ぐ努力をして、それにも関わらず一銭も手に入れることができなかったかを語った。Benioffは、シリコンバレーのあらゆるベンチャーキャピタルに行ったものの、毎回拒否されて終わったのだ。

これはビジョンを持ちながら、通常のやり方でアイデアに対する資金調達を行うことができない、スタートアップたちのための教訓となるだろう。Salesforceは資金を調達できたが、それは伝統的なVCルートではなく、投資家たちと1対1での資金調達だった。

同社はBenioffが借りていたアパートで起業したことは有名だが、同社の最初のコンピュータを購入するために、彼は自分のポケットマネーを供出した。それから、街に出てVCにお金を頼む段階となったが、それはうまくいかなかった。

「まるでハイテク乞食のように、私は帽子を手にして、資金調達のためにシリコンバレーに行きました…そして、私はベンチャーキャピタリスト、次のベンチャーキャピタリスト、また別のベンチャーキャピタリストと訪ね歩きました。多くは私の友人たちで、一緒にランチに行きました。でもことごとく全員がNOと言ったのです」とBenioffは語る。「Salesforceはベンチャーキャピタリストから1ドルたりとも調達することはできなかったのです」と彼は付け加えた。

彼はそれには多くの理由があったことを示唆した。その中には、彼とのミーティングの後に相手に電話を掛けて意図的に妨害した競合相手の存在や、単純にクラウドがソフトウェアの未来だと信じない人びとなども含まれている。

その理由が何であれ、結局Salesforceは2004年に株式公開を果すまでに、個人投資家たちから6000万ドルを調達することができた。現在のようなベンチャーキャピタル環境の中では、Benioffのような人物が、ただ1社の引受先も見つけられないなどとは想像しにくい。特に彼が全く未知数の人間ではないと考えられている場合にはなおさらである。それでも当時彼に小切手を渡すVCは誰もいなかったのだ。

しかし、当時は今とは違っていた。それは1990年代後半で、クラウドコンピューティングについて考えている者はなく、インターネット上のソフトウェアという発想はまだはるかに遠いものだった。Benioffは全く違うものを想像していたものの、何が来ようとしているのかを見極めるビジョンをもつVCはいなかったのだ。いまやSalesforceは100億ドル企業であり、それを追い返した人びとは、その時自分たちが一体何を考えていたのかを振り返る必要がある。

「Salesforceのようなものを始めるときには、自分を信じてくれている人たちや、自分が成功すると思ってくれている人たちに囲まれていたいものです。なにしろ、いやでもお前は成功しないという大勢の人間に囲まれることになるのですから」とBenioffは語った。

すべての起業家が心に留めておくべきことだろう。

[原文へ]
(翻訳:Sako)

月額3980円から使えるVR制作システム「スペースリー」が1億円を調達、VR×AIの研究開発ラボも開設

360度VRコンテンツの制作編集サービス「スペースリー」を運営するスペースリーは4月9日、Draper Nexus 、Archetype VenturesDBJキャピタル、事業会社を引受先とする第三者割当増資により、総額約1億円を調達したことを明らかにした。

スペースリーが手がけているのは、VRコンテンツの制作編集をシンプルにするクラウドサービスだ。ユーザーは市販の360°カメラで撮影した画像をクラウド上にアップロード。キャプションの追加などちょっとした編集を加えるだけで、気軽にVRコンテンツを制作できる。

特徴はブラウザベースに特化していて、作るのも見るのもデバイスを問わないこと。PCやタブレット、スマホから同じように制作・閲覧することができ、サイトに埋め込んだりURLを共有したりと使い勝手がいいのがウリだ。

ビジネスモデルは月額課金制のいわゆるSaaS型。保存できる画像の上限数や機能などに応じて3つのプラン(無料、3980円のBASICプラン、12980円のPROプラン)がある。スペースリー代表取締役社長の森田博和氏によるとPROプランの利用者が多いそうだ。

2016年11月のリリース以降、不動産業界を中心に650以上の事業者が活用。ユーザーの多くは「問い合わ数や成約率の向上」や「業務効率化」の目的でスペースリーを導入している。

「不動産賃貸の場合では(サイト上にコンテンツを埋め込んでおくことで)オンラインからの問い合わせ率が2倍になったという事例や、成約率が4割から6割に上がった事例もでてきている。また内見が減ることで業務効率化に繋がるため、それを見込んで導入に至るケースも多い」(森田氏)

主な利用シーンはWebサイトに埋め込むほか、オフラインでの接客時など。スペースリーでは不動産内見などの営業や、イベントでのプロモーション時に使える小型のVRグラス「カセット」も提供している。

蓄積した空間データを解析して、デジタルアセットに

これまでスペースリーでは不動産物件管理の基幹システムや、ハウスメーカーなどに利用されている3D CADシステムとの連携を推進。合わせて東京都防災事業への採択、旅行業界への導入など、不動産以外への展開も進めてきた。

森田氏によると、この「他システムとの連携」がユーザーの使い勝手にも大きく影響するらしく、今後の強化ポイントのひとつだという。

「ユーザーの反応も含めて実感したのが『業務上でVRが独立して使われるケースは少ない』ということ。あくまで既存の業務の一部分や、成約にいたるまでのひとつの導線として使われていることがほとんどだ。それを踏まえると、普段使っているシステムと連携していた方が使い勝手がいい。ここをどれだけ進められるかが事業上のポイントになる」(森田氏)

不動産の場合であれば、上述した物件管理の基幹システムや3D CADシステムとの連携がまさにその一例だ。API連携の形で、すでに顧客が使っているサービスとシームレスに繋がる世界観を目指していくという。

合わせてスペースリーでは蓄積されてきた「データの活用」にも取り組む。資金調達を機にデータ分析や画像解析など、VR分野におけるAIの実用化を推進する施設としてSpacely Lab(スペースリーラボ)を設立した。

「約1年半ほどサービスを提供してきた中で、かなりのデータが貯まってきた。特に重要なのがコンテンツを閲覧しているユーザーの行動データだ。これを解析することで『よく見られているコンテンツの改善案を提示』したり、『適切なタイミングでメッセージをレコメンド』したりといった、効果的なアクションを提案できるようになる」(森田氏)

もともと森田氏は航空宇宙工学を学んだ後、経済産業省に入省。アメリカでMBAを取得して起業したというユニークな経歴の持ち主。現代アートのオンラインレンタルサービス「clubFm」に次いで立ち上げたのが、現在の主力サービスであるスペースリーだ(旧 3D Stylee)。

発想の原点にあるのは「空間をアーカイブすることで、それ自体がデジタルアセットになりえる」ということ。今後は蓄積された空間データを活かしながら「より多くの利用事業者が効果を実感できる360度VRのサービス」を目指していく。

スペースリーのメンバーと投資家陣。写真中央が代表取締役の森田博和氏

3Dモデル技術や顔認識システム開発のサイトセンシング、ニッセイキャピタルから1億円を調達

計測技術をベースに、顔認識システムなど複数の事業を展開するサイトセンシング。同社は4月6日、ニッセイキャピタルを引受先とする第三者割当増資により1億円を調達したことを明らかにした。

サイトセンシングは2012年6月の創業。同年10月に産業技術総合研究所技術移転ベンチャーの称号を与えられ、本格的に事業展開を始めた。

もともと企業が持っていた顔認識の技術を産総研が継承、それを事業化する形でスタート。現在は計測技術を核として、顔認識システム「Face Grapher」のほか、自律航法測位システム「PDRplus」や3Dモデル作成サービスを開発している。

Face GrapherではWebカメラで撮影した映像から顔を検出。性別や見た目年齢のほか、笑顔度合いを判定する。デジタルサイネージの効果測定や来店者の満足度計測などが主な活用シーンだ。

人や物の移動を自動で計測し可視化できるPDRplusも、Face Grapherと同じくリアルな空間におけるデータを取得、分析できるサービス。自律型センサに基づいて基準点からの相対移動を計測する技術を活用しているため、GPSの利用できない環境でも測位が可能。消費者や現場の従業員の行動を分析することで、マーケティングや業務改善に活用できる。

サイトセンシングによると、3Dモデル事業と自律航法事業について利用者からの支持が集まったこともあり、今回の資金調達を実施。事業の拡大に向けてより力を入れていく方針だ。

同社は今後の展開について「三次元モデル事業はモデル作成業務の生産性の大幅な向上・自動化を進め、高品質なデジタルモデルを大量且つスピーディーに提供可能な体制を構築いたします。また、自律航法事業は、計測システムの大規模化に加え、更なる付加価値向上を目指して行く計画です」としている。

WiFi自動接続アプリのタウンWiFiが2.5億円を資金調達、電通・国際航業との提携でマーケティングツール開発へ

接続可能な無料の公衆WiFiを探して自動で接続・認証してくれる「タウンWiFi」は、スマホの通信量を削減して、通信キャリアの速度制限を気にせずにネットが利用できるようになるアプリだ。

2016年5月にリリースされ、2016年11月に開催されたイベント「TechCrunch Tokyo 2016」のスタートアップバトルでは審査員特別賞を受賞したこのWiFi自動接続アプリは、2018年4月現在、ダウンロード数が250万以上となった。現在、国内外200万以上のWiFiスポットにログインが可能で、日本以外では、韓国、アメリカ、台湾、香港、マカオでサービスを展開している。

アプリを運営するタウンWiFiは4月4日、総額2.5億円の資金調達実施を発表した。第三者割当増資はセプテーニ・ホールディングス電通日本アジアグループベクトル、千葉功太郎氏などを引受先として行われた。そして既存株主のインキュベイトファンドからも新たに追加増資を受けている。

同社は資金調達と同時に、電通および日本アジアグループ傘下の国際航業とそれぞれ業務提携契約を締結した。提携により、WiFiオーナーのマネタイズを実現するマーケティングツール開発に取り組んでいく。

タウンWiFi代表取締役の荻田剛大氏は「世界中のWiFiに自動的につながるサービスを目指そうとしたときに、ネックとなるのが、小売店などのオーナーがWiFi設置への意欲が湧かないこと。月額1000円、1500円と通信費もかかり、『インバウンド需要で集客ができる』などと言われても、設置効果に実感がないのが実情だ。そこで、WiFiを活用したマーケティングツールを用意して、店舗への集客の仕組みを作ろうと考えた。その仕組みづくりのパートナーとして、今回2社との提携に至った」と提携の目的について説明する。

電通には、位置情報を活用した広告プラットフォームに、WiFiでの端末の接続履歴など、タウンWiFiが収集する情報を提供して連携。ユーザーが小売店などに来店したときの接続状況を検知し、来店頻度などによるセグメントで広告を配信できるようなサービスを開発し、より効率的な集客につなげていく。

国際航業は、地理情報データを使った出店コンサルティングや、ポスティングチラシなど広告の配布プランの支援などを行っているが、今までは静的な情報を元にサービスを提供してきた。提携により、ユーザーの現在位置での分布や移動経路など、タウンWiFiがリアルタイムで集計する動的なユーザー情報に基づき、小売店向けの新しい商圏分析などのマーケティングツールを共同で開発していく。

調達資金は、ユーザー獲得のためのマーケティングに使うと荻田氏は話している。ユーザーの行動データを増やすことで、WiFiオーナーがよりWiFiを使ったマーケティングをやりやすくして、WiFi設置数を増やし、日本のWiFi環境をさらに良くしたいとの考えだ。

また、これまで接続可能なWiFiを拡大する際、一つ一つ人力で調査していたWiFiの情報収集と解析をAIで実現するシステム「WiFi認証AI」の開発も加速する。

荻田氏は「我々は通信サービスだと考えている。WiFiをアグリゲートして、世界中のどこでもネットが使える環境を実現したい」と語る。

タウンWiFiでは近々、世界30カ国のWiFiサービスに対応する予定だということだ。荻田氏は「現地のユーザーもネットが使えて、旅行者も現地SIMがなくてもWiFiでネットを利用できる、というようなグローバル通信サービスを目指す」として、「その実現には、WiFiを設置してもらうためのモチベーションを上げる仕組みが必要。他の国でも、WiFiオーナーの集客につながるマーケティングツールは提供していくつもりだ」と話している。

ソーシャルギフトのgiftee運営が総額5.84億円を資金調達、ASEAN展開も視野に

メールやSNSでURLを送るだけで手軽にギフトが贈れるソーシャルギフトサービス「giftee」。運営元のギフティは4月2日、ジェーシービー(JCB)未来創生ファンド丸井グループを引受先とする第三者割当増資と、三菱UFJ銀行からの融資により、総額約5億8400万円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回の資金調達はシリーズCラウンドに当たる。

ギフティは2010年8月に設立されたスタートアップ。Open Network LabのSeed Accelerator Programの第1期、KDDI ∞ Labo (ムゲンラボ)の第1期に参加した経験を持つ。2016年4月には三越伊勢丹イノベーションズとの資本業務提携を実施。2017年8月にはトヨタ自動車のオープンイノベーションプログラム「TOYOTA NEXT」で協業企業に選定されている。

ギフティが提供するサービスには、2011年3月にローンチしたソーシャルギフトサービスのgifteeのほか、2014年1月に法人向けに提供開始したオリジナルギフトの販売システム「e-Gift System」、2016年4月にスタートした粗品や景品の配布に使えるデジタルチケット販売サービス「giftee for business」がある。また、2016年5月にはスマホで使える電子地域通貨システム「Welcome! STAMP」を、JCBグループの傘下でギフトカードオペレーション業務などを営むJ&Jギフトと共同で提供開始している。

資金調達の発表と同日、ギフティではJCBとの資本業務提携契約の締結も発表した。提携により、JCBが提供するプリペイド型カード「JCBプレモ」のスキームを活用し、協業に取り組むことが決まっている。JCBでは今春、JCBプレモをカードレスで発注・納品可能なソーシャルギフト「JCB PREMOデジタル」のリリースを予定している。

今回調達した資金についてギフティでは、ASEANを中心としたeギフト事業の海外展開を見据え、サービス開発と事業体制の強化に充てるとしている。また、JCBとの業務提携プロジェクトの推進資金、未来創生ファンドの出資者であるトヨタ自動車のTOYOTA NEXTでの協業プロジェクト資金などにも充当する予定だ。

AIを用いて法務の仕事をスマートに——弁護士起業家が立ち上げたLegalForceが8000万円を調達

業界の課題を現場で体験した専門家が起業し、テクノロジーを駆使して新しいソリューションを提供する。近年のスタートアップをみるとそんなケースが増えたきたように思う。

今回紹介するLegalForceもそのひとつ。もともと森・濱田松本法律事務所で働いていた2人の弁護士が2017年4月に設立した、「テクノロジーの活用で企業法務の効率化」を目指すスタートアップだ。

同社は4月2日、京都大学イノベーションキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、京都大学学術情報メディアセンター/情報学研究科知能情報学専攻兼担 森信介教授を含む複数名の個人投資家から8000万円の資金調達を実施したことを明らかにした(資金調達は2018年2月〜3月にかけて実施)。

条文の内容をAIがレビューし、修正案を提案

LegalForceが現在開発を進めているのは、自然言語処理を用いた契約書レビュー支援サービス「LegalForce」。同サービスではAIやクラウドによって契約書のレビューにかかる負担と、それにまつわるコミュニケーションや情報管理の手間を削減する。

大きな特徴となりえるのがAIによる修正案のサジェスト機能だ。これは契約書内の条項を選択すると、過去の修正履歴やLegalForceのデータベースをもとに修正内容が提案されるというもの。イメージとしては「ここの箇所に漏れがあるので、○○のように修正してはどうですか?」といった具合だ。従来は担当者がフォルダを引っ張り出して、手作業で行っていた業務を自動化する試みとなる。

開発中のサジェスト画面のイメージ

LegalForce代表取締役の角田望氏によると、この機能はレビュー業務の効率化はもちろん、担当者が気づいていなかった要素を“発見”できるメリットもあるという。「すでに記載のある内容を修正することは、そこまで難易度は高くない。一方で『もともと書かれていないが、本来は書いておくべきこと』をゼロから発見することは難しい」(角田氏)

これまでであれば、担当者の経験や知識レベルに依存する部分もあっただろう。だからこそ過去のデータを基に、抜け漏れも含めてAIが修正案のチェックをサポートする利点も大きい。

ただ角田氏の話では「技術的にチャレンジングな領域」であり、同社の株主で自然言語処理技術の専門家の森教授と開発を重ねている段階だという。契約書は企業ごとに色があるため、ユーザーごとにデータを蓄積していき、個々に最適な提案をする必要もある。今後のステップとしては、企業の法務部や法律事務所とパートナーシップを組み、実証実験という形から始める方針だという。

法務担当者の負担を削減する業務支援サービス目指す

また上述した通り、LegalForceは契約書レビュー時のオペレーションを効率化する機能も備える。これは角田氏の言葉を借りると「(契約書に特化した)グーグルドキュメントとチャットワークを足したようなもの」に近い。

開発中の契約書レビュー画面のイメージ

ドキュメントの共有やステータスの管理、関連するコミュニケーションをクラウドに一元化。各条文ごとにチャット機能を備えることで、従来はWordのコメントやメール、ビジネスチャットで行っていたコミュニケーションをLegalForce上だけで完結できるようにする。

「実際に現場でレビューしていて、コミュニケーションの部分で課題を感じることが多かった。たとえばチャットでやりとりする場合は情報がどんどん流れてしまうし、メールでは話が混線してしまう。大事な内容を見落とす原因にもなるので、やりとりを一元化したいという思いがあった」(角田氏)

まずは4月末を目処にベータ版の公開、そして複数社との実証実験にも着手する予定。ベータ版にはAIを活用したサジェスト機能は搭載されず、正式版からの提供になるという。

「契約書×テクノロジー」といえば、弁護士ドットコムの「CloudSign(クラウドサイン)」やリグシーの「Holmes(ホームズ)」など契約書の作成や締結をスムーズにするサービスの印象が強い。LegalForceのようにレビュー支援に着目したサービスはあまりなかったように思う。

「弁護士や法務部の担当者に聞いても(レビューを含む)契約書業務が大変という話をよく聞く。なにより自分自身もそうだったので、自然言語処理の技術をはじめとするテクノロジーによってもっと便利にできるのではないかと感じていた。最近はAIというと『仕事を奪う』という文脈で捉えられることもあるが、そうではなく弁護士や法務担当者の負担を削減し、自分の価値を発揮できる仕事、クリエイティブな仕事により多くの時間を使ってもらえるような業務支援サービスを目指したい」(角田氏)

「パズドラのようなゲームを、サーバの知識なしで作れる環境を」ゲームインフラのGS2が8000万円を調達

「パズドラやモンストのようなゲームを、サーバの知識がなくても作れるような環境を整えていきたい」——ゲームサーバのクラウドサービスを提供するGame Server Services(GS2)で代表取締役社長CEOを務める丹羽一智氏は、同社の展望についてこう話す。

GS2が手がけているのはゲームサーバの開発・運用を行わずにゲームを作れるようにする、開発者向けのインフラサービスだ。同社は丹羽氏がセガや任天堂を経て2016年に創業。同年12月にワンダープラネットから資金を調達し、サービスのベータ版を公開している。

そんなGS2は3月30日、4社を引受先とした第三者割当増資により8000万円を調達したことを明らかにした。引受先となったのは大和企業投資GameWithKLab Venture Partnersディー・エヌ・エーだ。今回調達した資金を基に開発体制を強化し、サービスの拡充を目指すという。

サーバの保守、管理、運用が不要に

同社が手がけるプロダクトや、背景にある近年の技術トレンドについては前回の調達時に詳しく紹介している。ポイントとなるのは2015年ごろから注目されている「サーバレスコンピューティング」や「FaaS」と呼ばれる技術だ。

サーバレスというのは「サーバが一切必要ない」ということではなくて、「サーバの保守、管理、運用がいらなくなる」という意味。代表的なのはAmazonが手がけるAmazon Lambdaで、「API Gateway にHTTP リクエストが届いたら○○を実行せよ」というように、イベントが発生した際にあらかじめ登録しておいた関数を実行できる。

このFaaSによって開発者の負担も減った。プログラムの実行時間に対して課金されるので「利用した分だけ払う」ということができるようになる。従来はサーバの起動時間に対して課金されていたため、アクセスが少なくてもサーバを起動していれば費用が発生する点がネックになっていた。

このような概念をゲーム分野に持ち込んだのがGS2のサービスだ。GS2自身もサーバレスコンピューティングを活用して設計。低価格ながら大量のアクセスを捌けるスケーラビリティと、サーバダウンが発生しない高可用性を併せ持ったサービスを目指している。

具体的にはゲーム専用のSDKとAPIを開発。「ゲーム内通貨(魔法石)の管理機能」や「チャット機能」など、ゲームに必要な各要素を細かく切り分けて提供する。2016年12月の取材時には9個だったAPIの数は、現在21個になったそうだ。

初期費用は一切不要。1時間あたり数円〜数十円、ゲームサーバへのAPIリクエスト1000回〜10000回あたり数円というように、各サービスごとに使用時間またはAPIのリクエスト回数に応じて料金を支払う。「APIをたたくだけで使えるが、裏側ではすごいデータベースが動いている。使う側はシンプルで、かつ大量のアクセスにも耐えられる」(丹羽氏)サービスだ。

「FaaSは便利な一方で使いこなすのが難しいという側面もある。たとえばamazonが提供しているフルマネージドサービスは、独自のアーキテクチャで作られていて流儀を覚えるのに学習コストがかかる。サーバの基本的な知識ですら学習コストがかかるのに、FaaSの学習コストまでをみんなが支払う必要はない」(丹羽氏)

サーバのノウハウがなくてもゲームを作れる環境

GS2のサービスによって大きく2つの変化が起きる。1つはサーバを開発・運用するノウハウがない人でもゲームを作れるようになること。もう1つは従来に比べて開発の効率化が見込めるということだ。

「たとえばこれまで家庭用ゲーム機の開発をやってきた開発者たち。その中には面白いゲームを作ることはできるが、サーバには詳しくないという人も少なくない。そんな開発者が自分たちだけでもモバイルゲームを作れるようになる、というのを1つの目標にしている」(丹羽氏)

昨今ではモバイルゲームの配信開始時やイベント実施時に、サーバ障害が発生したというニュースもよく目にする。丹羽氏によると、これらは「設計ミス」「実装ミス」「キャパシティ予測ミス」のいずれかが原因となっているケースが多いそうだ。GS2であればゲーム毎にサーバシステムを都度開発する必要はないし、サーバ開発の経験や専門知識は必須ではなくなる。

「任天堂プラットフォームでは、ゲームサーバの開発・運用をせずともネットワーク対応のゲームを作れるような環境を実現できていた。一方でモバイルゲームにおいてはそれができていないため、開発効率の面で課題があったり、サーバ知識のない開発者が困ったりしている」(丹羽氏)

開発費の高騰や開発規模の大規模化、期間の長期化などはモバイルゲーム業界の課題。これらを解決するためには、開発効率向上を避けては通れない。

「Unityのようなゲームエンジンが開発効率を向上させ広がっていったように、サーバ側でこのような環境を提供していきたい。サーバのノウハウがないためにモバイルゲームを作れなかった開発者がチャレンジできるようになった結果、ユニークな発想の新しいゲームが生まれてくると嬉しい」(丹羽氏)

住宅ローン借り換え支援のMFSが3.3億円調達、BtoBtoC型サービス開始でユーザーリーチ拡大めざす

住宅ローンの借り換え支援サービス「モゲチェック」などを提供するMFSは3月30日、YJキャピタルゴールドマン・サックスを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達総額は3億3000万円だ。

写真左より、MFS代表取締役の中山田明氏、COOの塩澤崇氏、CTOの大西貴之氏

低金利が続く日本では、以前に組んだ住宅ローンを借り換えることで金銭的なメリットを得られることが多い。MFSが提供するモゲチェックでは、ユーザーが11項目の質問に答えるだけで、借り換えによる金銭的メリットの総額と、融資を受けられる確率を判定する。また、MFSは同じく11項目の質問に答えることでユーザーの信用度をスコアリングして推定の融資可能額を表示するという、新規で住宅ローン借り入れるユーザーに向けた「モゲスコア」も提供している。

MFSはこれら2つのサービスを無料で提供している。マネタイズポイントは、その後に提供する手続き代行サービスだ。融資が完了したときのみ、住宅ローンの支払い削減額の10%を成功報酬として受け取る。MFSはこれまでに3000件の借り換え相談を受け、うち約440件ほどが成約しているという。

そして、そのMFSが今回の資金調達とともに発表したのが、BtoBtoC型サービスの「モゲチェックPLUS(以下、PLUS)」だ。同サービスは不動産会社向けのサービスで、不動産会社は不動産を購入しようとしている消費者のデータをPLUSに入力することで、融資確率を判定し、最適な住宅ローンを推薦することができる。また、PLUS上でローン申し込みの手続きが可能で、ユーザーが銀行に来店する必要がなくなる。

少し考えてみると、PLUSが提供する機能は従来サービスのモゲチェック、モゲスコアと大差ない。重要なのは、これまでC向けにしか展開してこなかったサービス群を、B向けにも展開することを決断した点だ。その理由として、MFS代表取締役の中山田明氏は、住宅ローンの借り換えメリットをエンドユーザーに直接説明するのは非常に難しかったと話す。また、もともとMFSはエンドユーザーとの接点として来店型の相談窓口を展開していたが、これも現在はコールセンターに相談と手続き代行の機能を集約し、今後は直接店舗を増やす予定はないという。

MFSと同じく住宅ローンの借り換え支援サービスを提供するWhatzMoneyは、2016年6月に不動産会社向けのローン仲介サービスとして一足早くBtoBtoC型サービスを提供開始した。そのことからも分かるように、住宅ローンの借り換えメリットをエンドユーザーに直接説明するのは非常に難しいようだ。

2009年に創業のMFSは、2015年9月にマネックスベンチャーズなどから9000万円を調達。つづいて2016年6月には2億円を、2017年8月には2億5000万円を調達している。今回のラウンドを含む累計の調達金額は8億7000万円となる。

AIの活用で介護領域の課題解決へ、エクサウィザーズが産業革新機構などから8.9億円を調達

医療・介護領域を中心に、AIを活用して様々な業界の課題解決を目指すエクサウィザーズ。同社は3月29日、産業革新機構など合計8社から総額8.9億円を調達したことを明らかにした。今回のラウンドに参加したのは以下の企業だ。

  • 産業革新機構
  • 三菱東京UFJ銀行
  • SOMPOホールディングス
  • D4V
  • iSGSインベストメントワークス
  • Scrum Ventures
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • IDATEN Ventures

エクサウィザーズは「介護×AI」分野でサービス展開をしていたデジタルセンセーションと、大手クライアント向けにAIソリューションを提供していたエクサインテリジェンスが2017年10月に経営統合してできたスタートアップだ。

デジタルセンセーションはリクルートでAI研究所を立ち上げた石山洸氏がジョインした際にTechCrunchでも紹介。一方のエクサインテリジェンスも京都大学等の研究者・学生と、ディー・エヌ・エー元取締役会長の春田真氏らが運営するベータカタリストが共同で立ち上げたスタートアップとして2016年に取り上げた(エクサウィザーズでは春田氏が代表取締役会長、石山氏が代表取締役社長を務める)。

これまで同社では認知症ケア技法「ユマニチュード」の普及や、熟練者のケア技能を解析することで特徴を抽出し、介護者の育成を促進する「コーチングAI」の開発に力を入れてきた。これらの活動には今後も力を入れつつ、今回の調達を機に新しい取り組みも始めるという。

AIを活用した科学的裏付けに基づくケアの確立(ケアのエビデンス・ベースド化)はそのひとつ。介護領域ではケアの内容を科学的に評価・検証することが難しかったが、現場にあるデータをAIで解析することで、新たな評価手法の確立を目指すという。

構造化されたデータだけではなく、動画や音声、テキストなどのデータも合わせて解析。この結果から優れたケアの動作や対話を可視化できるようにれば、それをケアの内容に反映することもできそうだ。今後は産業革新機構や政府機関、地方自治体と連携を強化し、実証実験や事業化を進めるという。

またエクサウィザーズではAIを活用して、自治体が保有する介護データの無料解析サービスも始める。こちらについては認知症ケアの現場などが抱える課題の解決を目的としている。

認知症は時間の経過と共に症状が進行していくため、ケアの介入効果を検証することが困難だった。同サービスを活用すれば事前に適切な介入タイミングを予測し、予測結果に対する介入効果の比較検証ができるようになる。症状進行前に介入することも可能で、予防介護にも繋がるという。

なお直近では今回の資金調達先でもあるSOMPOホールディングス、三菱UFJフィナンシャル・グループと業務提携を締結(三菱UFJフィナンシャル・グループについては、子会社であるJapanDigitalDesignと提携)。SOMPOホールディングスとは介護や認知症の領域おける取り組みを、JapanDigitalDesignとはオンラインファイナンス関連商品やHR Techサービスの開発検討を進めていく方針だ。