地図と連携したモバイルCRMで“訪問営業”を最適化、セールステックのUPWARDが5.5億円調達

フィールドセールス領域に特化したモバイルCRM「UPWARD」を開発するUPWARDは3月13日、DBJキャピタル、三菱UFJキャピタル、DNX Ventures、日本ベンチャーキャピタルを引受先とした第三者割当増資により総額で5.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

UPWARDにとっては2018年5月にDNX Ventures(当時はDraper Nexus Venture Partners)や日本ベンチャーキャピタルなどから3億円を調達して以来の、シリーズEラウンドでの資金調達となる。今後はプロダクトの改良やマーケティングへの投資に加えて、新サービスとなるパーソナルアシスタント機能の開発にも力を入れていく計画だ。

マップを見るだけで顧客情報や営業状況がわかるモバイルCRM

UPWARDはフィールドセールス担当者の訪問営業活動を支援するCRMだ。特徴は地図とCRMが組み合わさっていること。Salesforce連携することで同サービスに登録している顧客情報とUPWARD上から入力した営業情報を合わせてマップ上に可視化する。

訪問状況や重要度に応じて顧客を色分けして表示する機能(たとえば担当者と会えたら赤色、商談が発生したら黄色に変えるなど)を使えば、地図を見るだけで営業状況を把握することが可能。一定期間訪問していない顧客を自動でアラート表示する仕組みもあり、これらの機能によって過去の営業活動を踏まえた上で「今優先してフォローすべき顧客」を簡単に割り出せる。

結果的に営業の質の向上を見込めるほか、最適な訪問ルートを自動作成する機能を用いることで1日の訪問量を最大化したり、そもそも訪問計画の作成にかかっていた時間を削減したりする効果もある。

”データドリブンな訪問営業”を実現するためには、そもそも日々の営業活動をしっかりと記録していくことが不可欠だが、UPWARD代表取締役社長CEOの金木竜介氏によると多くの企業にとってそれが1つのネックになってきたという。

「企業としては顧客データベース自体はあるものの、現場の担当者によるラストワンマイルの訪問情報が会社に入ってきていないことを課題に感じている。つまり日々の顧客接点情報が会社の資産になっておらず、属人的な営業活動になってしまっている」(金木氏)

UPWARDの場合は各営業パーソンが簡単に記録を残せるような仕組みを構築。位置情報を基にスマホからワンタップでチェックインする機能や音声入力など、移動時間やちょっとした空き時間を使ってスマホだけでデータエントリーできるようにした。

リアルタイムに各メンバーの訪問履歴が収集されていくことで、全体の訪問計画を最適化することにも繋がる。金木氏の話では従来でもトップセールスと言われるような一部のセールスパーソンは個人的にデータを記録して営業活動をしていたようだが、それをチーム全員で実行できている企業はまだまだ多くはない。

特に大企業などフィールドセールスを担当するメンバーが多いような企業ではオペレーションで苦しんでいるところも多かったそう。現在UPWARDは約300社に導入されているが、メインは製造業などをはじめとしたエンタープライズの顧客だ。

たとえば訪問内容の共有によってナレッジの浸透や営業効率がアップしたことで導入1年で売上実績が5.5倍になったダイハツ工業の事例をはじめ、実際に売上増加や業務効率化に大きく貢献できた事例も積み上がってきているとのこと。最近ではPayPayの加盟店開拓における訪問営業でもUPWARDが使われたという。

新サービスとして「パーソナルセールスアシスタント」機能を予定

今回の資金調達はUPWARDをさらに使いやすくするための機能拡張に向けた人材採用とマーケティングへの投資が主な目的。機能改善や連携CRMの拡充(現在はSalesforceのみ)なども随時行っていくほか、4月にベータ版ローンチを予定している新サービス「AGENT」の開発にも力を入れていく。

UPWARDではAGENTを「パーソナルセールスアシスタント」と表現しているが、このサービスでは大きく2つの観点から各セールス担当者を今まで以上に支援する。

1つはデータエントリーの自動化。モバイルGPSを軸にセンサー情報なども用いて、担当者がスマホを持ってさえいればCRM上に顧客訪問日時やこれまでの訪問回数などが自動で入力される仕組みを作る。

そしてもう1つがデータを基にした営業アプローチ方法の提案(インサイトの提供)だ。すでに接点のある顧客への営業についてはCRMの情報を参照して「最適な訪問タイミング」や「次の訪問先」をレコメンドしたり、自動で訪問計画に組み込むことで営業活動における漏れをなくす。新規顧客の開拓においては過去の営業データを基に「上手くいく可能性の高い見込み顧客」を発掘し、提案するような機能も計画しているようだ。

「フィールドセールスにおけるラストワンマイルのパーソナライズを加速させていく。ここ数年、顧客からは個別最適化したCRMが求められてると感じている。『CRM3.0』という言葉を使われることもあるが、プラットフォームに蓄積してきたデータをどのようにフロントエンドで、現場で使いこなせるような形で提供していくか。CRMの活用部分がより重視されるようになってきた。自分たちはフィールドセールスという領域において、そこを追求していきたい」(金木氏)

蚕を原料とした“シルクフード”の普及目指すエリーが約4500万円を調達、5月末まで表参道で実店舗も運営

将来の食料不足やタンパク質危機への解決策となる次世代食品として、植物由来のものをベースにした代替肉や昆虫食などの“代替タンパク質”を手がける企業が注目を集めている。

本日3月12日に4500万円の資金調達を発表したエリーもまさにこの領域に取り組む1社。日本に馴染みのある「蚕」を原料としたシルクフードを開発するスタートアップだ。

今回のラウンドにはibis partners、三井住友海上キャピタル、京葉瓦斯の3社が投資家として参加した。エリーはこれまで昨年10月に紹介した東大IPCのインキュベーションプログラムのほか、伊藤忠商事やキリン、大正製薬などが実施するアクセラレータプログラムに参加した経験はあるものの、本格的な外部調達は初めてとなる。

高栄養価の食品として大きな可能性を秘める「蚕」

エリーによると、京都大学との共同研究を通じて蚕にはタンパク質やビタミンといった基本的な栄養素だけでなく、50種類を超える多くの機能性成分が含有されていることが判明したそう。中には希少性の高い機能性成分も多数含まれるため、蚕は高栄養価の健康食品として大きな可能性を秘めているという。

また日本ではかつて全農家の1/3が養蚕業を営んでいたほど馴染みがあるもので、なおかつ「世界的に見ても日本の研究はかなり進んでいる」ことから、エリー代表取締役の梶栗隆弘氏いわく日本の強みも活かせる領域とのことだ。

同社では現在も京都大学や東京大学の研究室とタッグを組みながら蚕×食の切り口で研究を継続中。蚕の持つ機能性成分に関するものだけでなく、食品科学的なアプローチで風味成分を分析したり、蚕に違う餌を食べさせることで栄養分や味をデザインしたりするような研究にも取り組む(一部は今後計画中のものも含む)。

研究開発と並行して1月からは期間限定のリアル店舗「シルクフードラボ」を東京・表参道にオープンした。パテの50%に蚕を使用したシルクバーガーやおやつ代わりにもなるシルクスナック、シルクシフォンケーキなど、各分野の料理人の協力のもと開発したメニューを現地で販売している。

元々は3月末までの予定だったが、5月末まで期間を延長。最近ではシルクピッツァやシルクてりやきバーガーなどの新メニューを追加したほか、Uber Eatsを通じたデリバリーも始めている。僕もシルクスナック(600円)を食べたことがあるのだけど、いい感じに塩も効いていて想像以上に食べやすくどんどん食べてしまった。

ただ現在は顧客の反応を確かめるための試験店舗的な意味合いが強く、さらに表参道という立地も影響してか全体的に「少し値段が高め」だと感じる人もいるだろう。今後エリーでは一般加工食品の規格の商品を開発し、Webなどを始めとしたチャネルで本格的に販売することを計画しているそうで、そのタイミングではもっと安い価格で提供できる予定だという。

シルクフードの社会実装目指す

冒頭でも触れた通り、メディアなどでも“代替タンパク質”に関連する話題が取り上げられることが増えてきたように思う。

海外ではビヨンド・ミート(Beyond Meat)やインポッシブル・フーズ(Impossible Foods)、メンフィス・ミーツ(Memphis Meats)などを筆頭にさまざまな企業が代替肉を手がける。現時点では試行錯誤の段階ではあるようだけれど、米国ではこうした企業の開発した代替肉がマクドナルドやケンタッキーフライドチキン、デニーズなど大手飲食チェーン店で取り扱われる事例も増えてきているようだ。

国内でも日本ハムが3月より「NatuMeat」ブランドで大豆やこんにゃくなど植物由来の原料を使用した商品の展開を開始。1月にニチレイフーズと資本業務提携を締結したDAIZや2018年5月に3億円を調達したインテグリカルチャーなど複数のスタートアップも生まれている。

昆虫食に関しても食用の昆虫を導入する動きが徐々に活発化。EUでは2018年に取引が自由化され、代替タンパク質としての摂取を前提とした制度整備が進み、フィンランドでは大手食品メーカーのファッツェルがコオロギの粉末を用いて作った「コオロギパン」などの事例もある。

コオロギは昆虫食の中でも社会実装が進みつつある分野かもしれない。米国のExoがコオロギ粉末を活用したプロテインバーを開発するほか、良品計画も2020年春を目処に「コオロギせんべい」を無印良品の一部店舗とネットストアで販売することを発表している。

こうした動きはエリーにとっても追い風で、梶栗氏も「特に大企業が昆虫食を取り入れるのはもっと時間がかかると思っていた」と話す。実際エリーの元にも「原料としての蚕」に興味を示した大企業から問い合わせも来るようになったそうだ。

同社では今回の資金調達を機にさらに食品研究および商品開発、マーケティングなどに投資をして、シルクフードの社会実装を目指していく方針。並行して実施しているクラウドファンディングでも実店舗の運営費などを集める考えだという。

「最終的には原料メーカーとしてのビジネスも考えている。そのためにはまず全国の人に食べてもらって『シルクフードありだよね』『昆虫食ありだよね』と思ってもらうことが必要だ。そこで成果を出せれば、食料メーカーや飲食店にも関心を持ってもらい、シルクフードを広げていくことにも繋がる。まだまだ研究開発段階で、フードテックと言えるほど“テック”の部分を確立できている状態ではないが、数年かけてシルクフードをしっかりと世界へ普及させられるように事業を成長させていきたい」(梶栗氏)

会議や講演の音声をAIで自動的に文字起こしする「Smart書記」が8500万円を調達

会議や商談、インタビュー、記者発表などにおける会話や音声をテキストに変換したいと思った場合、ICレコーダーやスマホのボイスレコーダーアプリなどを使って録音し、人力で文字起こしをすることが多いのではないだろうか。

一方でエピックベースが手がける「Smart書記」は、AI音声認識技術を用いてマイクが拾った音声をリアルタイムに自動で文字に起こす。ユーザーはその内容を基に編集を加えるだけでいいので、ゼロから文字起こしをしていた時に比べて手間が少ない。

Smart書記は電子書籍の流通事業などを手がけるメディアドゥの新規事業として2018年6月にスタート。無料のトライアル利用も含めて累計で800社以上に活用されてきた。今後の成長を見据えた上でメディアドゥから切り出すことを決め、現在はカーブアウトする形で2020年1月に設立されたエピックベースが運営を担っている。

そのエピックベースは3月12日、メディアドゥからの独立とともに、メディアドゥホールディングス、Coral Capital、三木寛文氏、宮田昇始氏(SmartHR代表取締役)、内藤研介氏(SmartHR取締役副社長)より総額8500万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

音声データをリアルタイムでテキストに変換

Smart書記はマイクから集音した音声をAIによる音声認識技術によって自動で文字に起こしてくれるSaaS型のプロダクトだ。大きく「収録・文字起こし」「編集」「出力」の3つの機能を通じて、会議の議事録や講演録などを作成する際のユーザーの文字起こし業務を支援する。

まずユーザーはICレコーダーなどで録音する代わりに、Smart書記を開き音声を吹き込む。たとえば会見であれば発表者が装着したワイヤレスピンマイクを通じてバックヤードのPCで音声を取得する、会議であれば参加者が自分のPCにピンマイクを指して収録する、取材や商談であればスマホやタブレット(Smart書記のiOSアプリ)を机に置いて会話をする、そんなイメージだ。

そうやって音声を入力していくと、“発言ごとに細かく区切った状態で”リアルタイムにどんどんテキスト化されていく。この細かく区切るというのが1つの特徴で、これによって各パートごとにテキストを編集することはもちろん、後から確認したいと思った時にその部分だけをピンポイントで再生することもできる。

会議など複数人の会話を文字に起こしたい場合、各々がマイクをつけた状態で収録すれば発言者の名前(音声入力した人の名前)が自動で入力され、誰がどの発言をしたのかがわかるのも使いやすいポイントだ。テキスト化する際には、辞書登録を行うことで誤り語句を自動的に訂正語句へと置き換えてくれる「訂正学習機能」や会話を自動翻訳してくれる「同時翻訳機能」も役に立つ。

そのほかにもセクションを分けたり補足のコメントを追加したりする機能、重要な箇所をハイライトするマーカー機能などを搭載。テキストデータはExcel、Word、テキストファイル形式でダウンロードできる。

料金体系は月額10万円からの定額制。文字起こしをした時間の合計時間が200時間を超える場合には、1時間あたり500円の追加料金がかかる仕組みだ。

エンタープライズや自治体を中心に活用進む

もともとSmart書記はメディアドゥと徳島県が2017年10月から6ヶ月に渡って行った実証実験を機に生まれたプロダクトだ。

これは県知事による記者会見の議事録を作成する際、AIを活用して文字起こしとテキストの要約を効率化することを目的として実施したもの。開発前の段階ではAI要約の方のニーズが強かったそうだが、実際にやってみると文字起こしの方により大きな効果があったという。その後展示会に出してみても反響が良かったため、2018年6月に自動文字起こしサービスとして正式にリリースした。

たとえば徳島県庁の事例では議事録作成までにかかっていた工数を約10時間から約2時間にまで減らすことができたそう。知事の発言をWebサイト上で公開するまでのスピードも、約4日ほどかかっていたところが即日になった。

エピックベース代表取締役の松田崇義氏によると導入企業の約8割がエンタープライズや自治体関係とのこと。会議の議事録作成が義務化されていたり、会見の内容をテキストで発表したりするなど文字起こしのニーズが高く、なおかつその頻度も多い大企業・自治体からは特にニーズが高い。多い時には1日で10件前後の問い合わせもあるそうだ。

この「音声データを手間なくテキストにしたい」というニーズは国内外で共通するものだろう。国内では音声認識技術を手がけるアドバンストメディアなど複数社が文字起こしシステムを展開しているほか、海外でも1月にNTTドコモが協業を発表したOtter.aiなど複数のプレイヤーが存在する。

現在Smart書記では音声認識と翻訳の技術についてはGoogleのAPIを活用。一方で同じエンジンを使っていても「どれだけクリアな音声を入れるかによって精度はかなり変わってくる」ので、その質を高めるための運用サポートや、編集のしやすさを中心としたプロダクダクトの使い勝手の改善に力を入れてきた。

同時翻訳機能を使えば、文字起こししたテキストの下に自分が設定した言語へ翻訳した内容が一緒に表示される

「精度はもちろん高い方がいいが、100%の精度を求められているというよりも、80〜90%くらいで運用負荷が少なく確実に文字起こしの業務効率化に繋がるサービスが必要とされている。実際に導入検討頂く際にはある程度の精度を担保しているという前提で、運用の負荷が1つめのポイント、その次に情報セキュリティの観点も入ってくる。同じ領域のサービス自体はいくつかあるものの、これらの要件を満たしたものはまだ少ない」(松田氏)

音声データをビジネスシーンで有効活用できる基盤に

今回調達した資金は主にプロダクト開発やサポート体制を強化するための人材採用に用いる。まずは文字起こしの作業負担削減を支援するプロダクトとしてアップデートをしつつ、そこで取得した音声データをビジネスの現場でもっと有効活用できるような基盤を整えていく計画だ。

「2000年前半にブロードバンドやWindowsが本格的に普及した結果、PCを使って仕事をする人が増えた。そして2010年前半にはスマホやタブレットが登場し、チャットやクラウドサービスがビジネスの現場で広がった。これまでテクノロジーやネットワーク回線の進化がビジネスシーンにも大きな影響をあたえてきたが、今後キモになるのは『音声』。音声を取得するための高品質なデバイスや5Gの登場によって、ここからまたビジネスが変わると考えている」

「まずは目の前にある『文字起こしの作業負担を軽減したい』という顧客の課題をしっかり解決する。その上で音声データが溜まってきたフェーズでは、たとえば音声ファイルを検索して移動中などにすぐ聞けるようにするなど、ビジネスの現場で音声を活用できる基盤を作っていく。企業が音声という資産をSmart書記に蓄積していくことで、もっと有効活用できるようにしていきたい」(松田氏)

エピックベース代表の松田氏はSmart書記ローンチ時からのメンバーではなく、2019年7月よりメディアドゥに加わり事業部長として同サービスの成長を牽引してきた。

もともとは新卒入社した楽天を経てデジタルガレージに転職し、スタートアップへの投資やアクセラレータプログラム「Open Network Lab(オンラボ)」の運営を担当。その後参画したフーモアでは取締役COOも務めた人物だ。

ちなみに今回のラウンドにはSmartHRの宮田氏や内藤氏も個人投資家として参加しているが、彼らとはオンラボ時代からの縁(同社はオンラボの卒業生)もあり、“エンジェル投資”という形で一緒にチャレンジすることになったという。

チャットでのやり取りを自然言語処理で可視化するLaboratikが2.1億円を調達

Laboratik(ラボラティック)は3月10日、プレシリーズAラウンドで2.1億円の資金調達を明らかにした。第三者割当増資による調達で、引受先はArchetype Ventures、DEEPCORE、みずほキャピタル、エルテスキャピタル、​​PARTY、オーストラリア拠点のArtesian。

同社は、自然言語処理を活用してチャット中のやり取りを解析するサービス「We.」を開発しており、同サービスを利用することで会話量や関与度といったチームのエンゲージメントや問題点を可視化できる。現在ベータ版を提供中で、有料課金含めると約40社、数千人規模のユーザーが利用しているという。

チームのエンゲージメントをリアルタイム解析するプロダクト・サービス開発を手掛ける。今回調達した資金は、海外展開も含めた開発・営業体制の強化を図るとのこと。さらに一部の投資家とは国内市場で協業していく計画だ。

インスタ投稿からユーザー属性を分析するAIQが11億円を資金調達

InstagramなどのSNS投稿を分析するプロファイリングAIを開発し、サービスを提供するAIQ(アイキュー)は3月9日、シリーズBラウンドで総額約11億円の資金調達を実施したことを明らかにした。2019年7月に発表した総額約2億円の資金調達に続くもので、創業からの累計調達額は約13億円となる。

インスタ投稿からユーザー属性が見えるプロファイリングAI

AIQが開発するプロファイリングAIは、画像解析エンジンとSNSに特化した自然言語処理エンジンを組み合わせることで、SNSに投稿された写真や動画、テキストなどの情報から、投稿者の性別・年代・地域・趣味嗜好などの属性を、高い精度で分析できるというものだ。

このプロファイリングAIを活用し、AIQでは以前の記事でも紹介したInstagramアカウント運用ツール「AILINK(アイリンク)」のほか、2019年8月にはInstagramへの投稿ごとに効果測定ができ、ハッシュタグ提案などの機能も持つ「AISIGHT(アイサイト)」をローンチしている。

AILINKの上位プロダクトとも言えるAISIGHTは、Instagram版のプロファイル分析サービスで、ハッシュタグレコメンドと流入効果の可視化が主な機能だ。時系列のフォロワー増減がひと目で分かるほか、男女比や属性などを分析した上でのアカウント運用・育成が可能となっている。

特にAIQが注力するのが、2019年12月に追加されたハッシュタグレコメンド機能。この機能では、従来のInstagramアカウントでは捉えづらいユーザーの年代や属性を、AIが投稿などの行動から推論。フォロワーの動向に合わせてハッシュタグ傾向をレポートし、投稿ごとにおすすめのハッシュタグを提案してくれる。

「投稿したいハッシュタグから共起ワードをリストアップするだけなら、他社サービスにも同様の機能はあるが、アカウント特性から関連性を見てレコメンドをする点が、AISIGHTの特徴」とAIQは説明する。

操作は、投稿したいハッシュタグをAISIGHTの画面に入力するだけ。入力してしばらく待っていると、Instagramでハッシュタグ検索をした際の「人気投稿」9枚に掲載される確率、掲載時間、インプレッション数をリアルタイムで予測し、アカウントの特性に合った関連ハッシュタグが、ランキング形式で提案される。この際、アカウント特性に沿わず、掲載確率を下げるようなワードには警告も表示される。

AISIGHTは投稿ごとの効果測定、分析も行う。フォロワーだけでなく、フォロー外ユーザーのエンゲージメントも可視化されるので、新規ユーザー獲得時の投稿と、既存ユーザーを満足させる投稿を使い分ける、といった利用も可能だ。

またAIQでは2019年9月、Instagram/Twitter上のUGC(User Generated Contents)分析に、投稿者の属性情報を掛け合わせて可視化するマーケティングサービス「SOCIAL PROFILING(ソーシャルプロファイリング)」の提供も開始している。

コンサルティング領域のサービスとして提供されているSOCIAL PROFILINGは、画像×自然言語分析により、UGCのハッシュタグやテキスト情報だけでなく、「期間限定商品のパッケージ写真が、ユーザーにどう取り上げられているかを見る」といったコンテンツ抽出が可能となっている。

さらに、プロファイリングAIを活用することで、「ライフステージが色濃く出るUGC分析が可能」とAIQでは述べている。例えば20代女性をターゲットにしたある製品では、UGC分析により「小さな子どもを持つお母さん」がユーザーに多く見られたことから、プロモーション手法を変えたケースもあるという。

また「インターネットでのアンケート調査だけでは毎年結果に変化がなく、気付きが得られない」としてSOCIAL PROFILINGを利用した、ある宝飾品ブランドの例では、UGC抽出・分析により「プロポーズ用途には、指輪ではなくネックレスが買い求められている」というリアルな状況が分かったという。「婚約指輪はプロポーズにOKがもらえて、サイズが分かってから2人で一緒に買いに行くもの」という実情が分かり、このブランドでは分析結果を店頭での接客などに生かすことにしたそうだ。

SOCIAL PROFILINGにより抽出されたUGCは、コンテンツデータそのものが提供されるパターンのほか、プロファイリングデータやレポーティングまで実施して提出されるパターンも選択できる。ポイント制度を運営する企業など、データを保有する企業と連携して、分析実施などを進める予定もあるという。

博報堂G傘下のスパイスボックスと資本業務提携 、新規事業開発も

今回の資金調達では、博報堂グループ傘下のスパイスボックスをリード投資家として、SMBCベンチャーキャピタル、and factory、みずほキャピタル、北海道ベンチャーキャピタル、東京大学松尾豊研究室発のVCであるDeep30と、個人投資家らなどが引受先に加わっている。また商工組合中央金庫とコミットメント型タームローンによる金銭消費貸借契約を締結し、事業規模の拡大に応じて資金供給を受ける。

スパイスボックスはもともと、代理店としてAIQのプロダクトを取り扱っており、事業の親和性が高いことから、今回、資本業務提携を行うことになったという。AIQが持つAI技術、データ資産と博報堂グループ傘下のスパイスボックスが有するノウハウを融合し、新規プロダクトを共同で開発していく。

またDeep30の資本参加により、今後AIQでは、松尾豊教授からAI分野で助言を得て、技術レベルの向上、新規事業・プロダクト開発に生かしたい考えだ。

調達資金についてAIQでは、既存プロダクト強化のための人材への投資、採用強化と、スパイスボックスとの協業も含めた新規事業開発に投資していくとしている。

IT活用で“運転代行業界”の適正化へ、沖縄のAlpaca.Labが7000万円を調達

運転代行のマッチングプラットフォーム「AIRCLE」を開発するAlpaca.Labは3月9日、シードラウンドでXTech Ventures、すこやかホールディングス、BORベンチャーファンド1号投資事業有限責任組合、沖縄振興開発金融公庫を引受先とした第三者割当増資により総額約7000万円を調達したことを明らかにした。

同社は2018年2月設立の沖縄発スタートアップ。県内で必要不可欠の交通インフラとなっている「運転代行」の課題解決に向けて、調達した資金を基にエンジニアを始めとした人材採用の強化を進めていく計画だ。

運転代行を効率化するマッチングプラットフォーム

Alpaca.Labが手がけるAIRCLEは、わかりやすく言えば「タクシー配車サービスの運転代行版」だ。

運転代行とは代行業者がドライバーの代わりに車を運転して目的地まで送り届けるサービスのことで、飲食店でお酒を飲んだ後などに使われる。マイカーを運転して飲食店まで行き、食後は代行業者を呼んで車と自分を家まで送ってもらうようなイメージだ。代行業者は予約が入ったら自社の随伴車で現地へ向かい、到着後は1人が顧客の車を運転し、もう1人が随伴車で目的地まで一緒に行く。

都市部など公共交通網が発達している地域ではあまり馴染みがないかもしれないが、地方では日常的に利用される交通サービスだ。全国的には約8850ほどの代行業者が存在し、中でも沖縄は約737業者と全都道府県でも最多。この業界はアナログな要素が多くITの活用で改善できる余地は大きい。

運転代行は飲食店を通じて手配されることも多いため、Alpaca.Labでは2020年1月より独自のオペレータAI(配車最適化アルゴリズム)を基に飲食店と代行業者を効率よくマッチングするサービスから始めた。

飲食店向けにはデジタル端末から「テーブル番号、車両数、顧客の行き先」を入力するだけで代行業者を発注できる仕組みを提供。従来電話で行っていた発注作業をラクにするだけでなく、位置情報を基に近くにいる業者を優先的にマッチングするため顧客の待ち時間も短縮できる。

一方の代行業者向けには随伴車の管理や受発注の仕組みをIT化することによって、配車効率を上げるための基盤を開発。日報・運行管理や車両管理など日常業務をサポートする業務支援システムも合わせて提供する。

「飲食店にとっては発注作業が大きな負担になっている。忙しい時間帯だと電話がつながらない業者も多く何件も電話をかけ続けなければならないし、到着までに時間がかかるとなればそれだけお店の回転率も悪くなる。そもそも飲食店にとっては本業ではないため、ここにリソースを割きたくはない」

「代行業者としては受発注を最適化して少しでも多くの顧客を獲得したい。ITを活用することで随伴車の位置情報をリアルタイムに確認しながら効率よく配車手配を行えるだけでなく、ミスマッチの解消も見込める。たとえばこれまでは現地に着くまで顧客の情報がわからず、行ってみたら担当者が運転できない車だったり(左ハンドルの外車など)、目的地が遠すぎて自社の方針に合わなかったりすることも度々あった」(Alpaca.Lab代表取締役の棚原⽣磨氏)

今夏を目処に個人向けアプリのローンチも控えていて、個人が自らのスマホから簡単に代行業者を呼べるようにする計画。その際には「左ハンドルの車を運転できる人」などユーザーが条件を設定できる機能や相互評価の仕組みも搭載し、スムーズかつ安心して運転代行を使える環境を整備していくという。

現在は随伴車約60台(数十業者)、飲食店約150店舗を対象にサービスを展開。ビジネスモデルは代行業者から売上の10%をシステム利用料として受け取る形だ。

沖縄の課題解決を全国に課題解決へ

Alpaca.Lab創業者の棚原氏は沖縄県の出身。北陸先端科学技術大学院大学を経て教育系のコンサルティング会社に務めた後、沖縄に戻り沖縄科学技術振興センターで産学連携プロジェクトの推進を担当した。

具体的には大学の先生が持つ技術と県内外の企業をマッチングすることで新しい事業を生み出す支援をしていたそう。現在Alpaca.LabではAIRCLEのキモとなるオペレータAIを琉球大学の研究室と共同で研究開発しているが、その研究室とも前職で出会ったそうだ。

「産学連携のプロジェクトをいくつもやる中で、これは面白い技術だなと。沖縄で起業するなら沖縄の課題解決をしたい、地域の課題解決が全国の課題解決にも繋がる事例を作りたいという思いがあり、その観点でも運転代行はやりがいのある領域だと考えた」(棚原氏)

運転代行の概念自体は数十年前から存在し、2002年に「自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律」が施行されてからも20年近くになる。過去にはITを活用して業界の課題を解決しようとしたプレイヤーもいたが、どれも大きな成果を出すまでには至らなかった。

棚原氏がその原因にあげるのが業界内で「4/5の課題」と呼ばれる課題だ。これはざっくり言うと4/5の業者が表示義務違反や保険未加入、無許可の運行などによって「適切に運行することが困難」な状態にあることを指す。運転代行業界をアップデートするためには、そもそもこの状況を変えていく必要があるというのが棚原氏の考えだ。

「代行業者も必ずしも好きこのんでそうしているのではなく、金銭的に入る余裕がないことも多い。それは勘や経験に頼った非効率な配車オペレーションなど業務形態の課題だけでなく、行政側が実態をほとんど把握できていない状態や過度な価格競争により業界全体が疲弊してしまっていることなど、様々な要因が絡み合っている」(棚原氏)

そこでAlpaca.LabではオペレータAIを軸としたマッチングプラットフォームによって業務形態の効率化をサポートしつつ、全国運転代行協会とタッグを組みながら安全基準の策定や代行業者へのレクチャーなど業界全体を適正化する取り組みも進めてきた。

その上でゆくゆくは相互評価の仕組みを取り入れた個人向けアプリで、個人と代行業者を直接繋いでいく。これによってユーザーは安心して運転代行を手配でき、質の高い代行業者はきちんと評価され適正な価格で受注できる環境を整えていくのが目標だ。

運転代行の余剰リソース活かした新たなビジネス創出目指す

今回の資金調達はその動きを加速させるためのもので、エンジニアを中心とした人材採用に投資をする計画。今後は他業界のプレイヤーなどとも協業しながら「酔客に依存しないビジネスモデルの確立」に向けたプロジェクトにも取り組んでいきたいという。

「たとえば飲食店以外にも観光客や病院などを中心に新しい利用者の獲得や、日中使っていない随伴車の貸出(カーシェアリング)、配送業者とのコラボによる夜間・深夜帯の貨物輸送など、運転代行の余剰リソースを上手く活用することで人やモノの移動に関わる課題を解決できるチャンスもある。運転代行業界を良くしていくには酔客だけに依存しない仕組みが必要だ」(棚原氏)

上述したように運転代行業者は過疎地域を含め全国の市町村にすでに存在する上、日中はそのリソースが余っていることも多い。使い方次第では地域の課題解決インフラの1つとして強力なツールになりうるかもしれない。

棚原氏はMaaSならぬ「DaaS(代行 as a Service)」なんて表現もしていたけれど、テクノロジーを取り入れることで運転代行業界がどのように進化していくのか、今後の動向が気になるところだ。

ウェブサイト構築にマイクロサービスを導入したNetlifyが約57億円調達

ウェブサーバーというものをなくして、ウェブサイトの作り方を変えたいと願うNetlifyは米国時間3月4日、5300万ドル(約57億円)のシリーズC調達を発表した。

EQT Venturesがラウンドをリードし、既存の投資家であるAndreessen HorowitzとKleiner Perkins、そして新規にPreston-Werner Venturesがこのラウンドに参加した。並行してEQT Venturesの投資アドバイザーであるLaura Yao(ローラ・ヤオ)氏がNetlifyの取締役会に加わる。同社によると、これで同社の調達総額は9700万ドル(約104億円)になる。

最近は多くのスタートアップがそう言うが、Netlifyの共同創業者であるChris Bach(クリス・バッハ)氏もまた、「新しい資金を求めてはいなかったが、会社が急速に成長しているので、その成長の継続のためにお金をもらっておくのが賢明と判断した」と述べる。

バッパ氏とCEOのMatt Biilmann(マット・ビルマン)氏は評価額を明かさなかったが、「それはとっても気前のいい額だったが、Netlifyの現状にはふさわしい」とだけ語った。売上の額も公表しないが、創業後3年で売上は3倍になったという。

その成長を支えているのが、このプラットホームに参加するデベロッパーの数だ。2018年のシリーズBのとき30万人だった登録ユーザーが、今では80万人と大幅に増えている。

2018年にTechCrunchが取材した際に同社は「ウェブサイトの作り方を変えたい」と語っていた。以下に、そのときの記事から引用しよう。

「Netlifyはウェブサーバーの概念を抽象化してしまった。彼らによると、ウェブサーバーはデプロイに時間がかかりすぎるし、セキュリティもスケールも困難だ。一枚岩的なウェブサイトから、スタティックなフロントエンドとバックエンドのマイクロサービス群へ移行すれば、セキュリティとスケーリングの問題は解決するし、サイトをもっと速く完成できる」と同社は語る。

デベロッパーに人気があることはいい出発点だが、もっと大型の顧客を獲得していかないと売上は伸びないだろう。そこで同社は今回得られた資金を、同社のエンタープライズ対応を構築するために使いたいという。現在のエンタープライズ顧客には、GoogleやFacebook、Citrix、Unileverなどがいる。

社員数は、昨年初めの38名から今では97名に増えている。「そして今年中に180名ぐらいにしたい」と同社は語る。

関連記事:Netlify just got $30 million to change the way developers build websites(ウェブサイトの作り方を変えるNetlifyが3000万ドルを調達、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

4億回ダウンロードされた音楽アプリの販売元MWMが約60億円調達

人気の音楽アプリの販売元であるMWMが、5000万ユーロ(約60億円)の資金調達ラウンドを完了した。Blisce/がラウンドを主導し、Idinvest Partners、Bpifrance(フランスの大規模ベンチャーファンド)、AglaéVenturesそしてXavier Nielも参加した。

MWMが提供するアプリにはedjing Mix、Beat Maker Pro、Drum Machine、Beat Snap 2、TaoMix 2、Guitar、Drumsなどがある。同社は制作から学習、ゲームそしてユーティリティに至るまで、音楽のより広い分野をカバーするために徐々に拡大してきた。

次の段階でMWMは音楽を超えて拡大し、クリエイティブな分野の新しい領域に取り組みたいと考えている。そして何年もかけて4億回を超えるアプリダウンロードを達成したMWMは、その成功を重ねることができる絶好の立ち位置にいるようだ。

クリエイティブな分野にはビデオや写真の編集といった、すでにかなり混み合っているカテゴリーもある。しかしMWMは、モバイルクリエイティビティアプリのためのAdobeのような存在になることを狙っている。

なお、このスタートアップはハードウェア製品も発売した。最新の製品Phaseを使えば、旧来のターンテーブルをデジタルDJコントローラーに変身させることができる。受信機をミキサーに接続したら、2つのターンテーブル上にセットしたレコードの中央に小さな送信機をそれぞれ置くだけでいい。

MWMの創業は2012年だ。これで合計6000万ユーロ(約72億円)の資金を調達したことになる。同社は現在、パリとボルドーにオフィスを構え、70人の従業員を擁している。

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(翻訳:sako)

DX支援やスタートアップスタジオ事業のSun Asteriskが10億円を追加調達

企業の事業開発支援やIT人材育成など複数の事業を手がけるSun Asteriskは3月3日、事業会社やVCを引受先とする第三者割当増資と金融機関からのデットファイナンスにより総額で10億円を調達したことを明らかにした。

今回は昨年12月に実施したラウンドの追加調達という位置付け。前回の農林中央金庫に続いて複数社が新規投資家として参画し、本ラウンドの累計調達額は20億円となった。Sun Asterisk代表取締役CEOの小林泰平氏によると各投資家とは今後積極的に事業連携を進めていくという。

  • ソニーネットワークコミュニケーションズ
  • Sony Innovation Fund by IGV(Innovation Growth Ventures)
  • 加賀電子
  • リバネスキャピタル
  • 15th Rock Ventures

Sun Asteriskは現在4ヶ国6都市にて1500名以上のエンジニアやクリエイターが在籍するデジタル・クリエイティブスタジオだ。

これまでスタートアップから大企業まで300社以上の事業創出やプロダクト開発をサポート。スタートアップ支援の文脈では昨年6月よりスタートアップスタジオ事業を本格的にスタートし、エンジニアリソースや蓄積してきたナレッジを武器にスタートアップの成長に伴走している。昨年11月に6000万円の資金調達を実施したテナンタなどが支援先だ。

また事業開発の担い手となるテクノロジー人材の育成にもかなり力を入れてきた。ベトナムのトップ大学と産学連携したIT選抜コースの運営や、日本国内でのエンジニアスクールなどを通じて常時2000名以上の人材育成を行なっているという。

Sun Asteriskの事業内容や現状については前回の記事で詳しく取り上げているので、そちらも合わせて参照いただきたい。

投資家と連携し「イノベーションのタネ」の社会実装へ

冒頭でも触れた通り、今回のラウンドではすでに発表されていた農林中央金庫に加えて5社が新たに投資家として参画した。

各社は分野こそ異なれど「イノベーションに繋がるタネ」を保有しているという観点では共通する部分も多い。彼らが掘り起こしてきたものにSun Asteriskの持つテクノロジー人材や事業開発ナレッジを掛け合わせることで、社会実装や事業育成に繋げていきたいという狙いがあるようだ。

ソニー関連ではソニーネットワークコミュニケーションズおよびSony Innovation Fundから資金を調達しているが、これは「ソニーグループと組んで大きなチャレンジをする」ことを見据えたもの。ソニーが持つさまざまな要素技術をプロダクトに落とし込み、社会へ届けていくことを大きな目的とする。

リバネスキャピタルと15th Rock Venturesの2社は共に先端領域の研究やアイデアを社会実装する役割を担っている企業だ。リバネスはバイオを始めディープテックやリアルテックの研究開発に強く、15th Rock VenturesはHuman Augmentation(人間拡張)領域のスタートアップを支援している。

まさに両社ともイノベーションに繋がるタネを多数持っているため、その事業化をSun Asteriskがテックパートナーとして一緒に進めていく形だ。

電子部品などエレクトロニクス分野に強い加賀電子とは、IoT分野での事業拡大に向けて協業する。たとえば最近ではIoT関連の取り組みでエッジコンピューティングの話を聞く機会が増えてきたが、そのためにはエッジデバイスについての専門的な知見が欠かせない。Sun Asteriskでもこれまで複数のIoTプロジェクトに取り組んできたものの、同社は必ずしもハードウェア領域に強みを持つ企業ではない。ハードウェアの知見や技術を持つ加賀電子とタッグを組むことでIoT分野の事業を加速させる計画だ。

スタートアップスタジオでは数億円規模の予算で10数社を支援

上述した取り組みを含め、Sun Asteriskでは今後エンタープライズ企業とのデジタル技術を用いたプロジェクトに力を入れていく方針。単なる業務効率化ではなく業務プロセスの変革やデジタル企業へのアップデートに向けたビジネスモデルの創出を目指し、たとえばジョイントベンチャーの立ち上げなど、より密に連携した新たな協業モデルも視野に入れているという。

スタートアップスタジオに関しても数億円規模の予算を設け、10〜20社に対して出資と技術支援をしていく方針。教育事業ではベトナムに加えマレーシア、インドネシアへも進出済みで、産学連携モデルをグローバル規模に広げていきたいとのことだ。

エンジニアやデザイナーと企業をつなぐ副業・複業採用プラットフォーム「Offers」運営が1億円調達

エンジニアやデザイナーに特化した副業・複業採用プラットフォーム「Offers」を運営するoverflowは3月3日、複数の投資家よりシードラウンドで1億円を調達したことを明らかにした。

2017年6月創業の同社にとっては今回が初めての外部調達。調達した資金は主に人材採用に用いる計画で、Offersのさらなる機能拡充やサポート体制の強化を進めていく。なお今回overflowに出資した投資家陣は以下の通りだ。

  • East Ventures
  • DNX Ventures
  • 名村卓氏(メルカリ執行役員CTO)
  • 佐久間衡氏(ユーザベース取締役候補 B2BSaaS事業 CEO)
  • 永見世央氏(ラクスル取締役CFO)
  • 朝倉祐介氏(シニフィアン共同代表)
  • 胡華氏(メルカリ / Advanced Technology)
  • その他複数の投資家

約2年の「正社員ゼロ、副業・複業経営」経験を活かして開発

Offersは2019年5月にα版リリース以降、現在までに累計で50社以上が活用し、数千人規模の個人ユーザーが登録している副業・複業採用プラットフォームだ。

企業が求人を出して応募を待つのではなく、登録されているエンジニアやデザイナーにオファーを送って採用するダイレクトリクルーティング型のサービス。各ユーザーのプロフィールページを通じて「定量(スキル偏差値)」「定性(ソーシャル)」「レファレンス(共通の知人)」という3つの情報をチェックし、自社にマッチした人材と接点を持てることが企業にとっての特徴になる。

個人ユーザーは、複数のSNSアカウントを連携することによっていちいち手打ちで入力せずとも自動で履歴書を作ることが可能。GitHubやQiitaのアカウントを紐付けておけば、言語ごとのスキル偏差値も算出される。

偏差値は自分の書いコードや記事の量、他者からの評価などから割り出されるもので、参照ソースや算出ロジックに違いはあれど「Findy」や「LAPRAS」と似ている部分もある。良質なアウトプットをしていればスコアが高くなり、それだけ採用担当者の目にも留まりやすい。

このように生成されたプロフィールを基に企業は候補者を絞り込んでいく。スキルや経歴だけでなく、連携しているSNSの投稿なども踏まえて定性的な部分の相性を確かめたり、社員と候補者との共通の繋がりをチェックすることもできる。気になるユーザーが見つかれば企業側からオファーを送り、マッチングした場合にはチャット形式でのコミュニケーションが始まる仕組みだ。

overflow代表取締役CEOの鈴木裕斗氏によると、企業からはオファーの簡単さや返信率の高さが好評なのだそう。Offersでは副業が軸になっているため、正社員採用と比べてユーザー側の敷居が低いのが1つのポイントだ。転職や副業の意欲を示しているユーザーを絞り込めるほか、プロフィールページの豊富な情報から自社に合いそうな候補者を探せるので“明らかなミスマッチ”を事前に防げるのも大きい。

料金体系は成約時に20〜80万円の手数料を得るモデルで、企業と個人ユーザーの契約内容(月間の稼働時間)によって具体的な金額が決まる。

副業プラットフォーム自体はすでにいくつかあるものの、Offersが面白いのは運営のoverflow自体が創業から約3年にわたって「正社員ゼロの副業・複業経営」を実践し続けてきたこと。これまで同社には累計270名のメンバーが携わっているが、創業者を除く全員がフリーランスや本業を別に持つ副業メンバーたちだ。

この少々特殊なチーム編成はサービスにも活かされていて、たとえばつながりを可視化する機能は自社の経験も踏まえて実装したもの。overflowの副業メンバーは約8割が紹介経由でチームに加わっているそうで、共通の知人や人の繋がりを見える化することにはこだわりがあるようだ。

また企業をサポートするカスタマーサクセスチームはエンジニアないしエンジニア採用経験があるメンバーのみで構成され、現場経験と副業採用の実体験を合わせることでクライアントの「エンジニア・デザイナー×副業(複業)採用」を支援している。

複数回のピボットの末にたどり着いた副業プラットフォーム

overflowはサイバーエージェント時代の同僚だった鈴木氏、田中慎氏(代表取締役CPO)、大谷旅人氏(共同創業者 CTO)の3人が2017年6月に立ち上げた。

田中氏と大谷氏はともにエンジニアとしてサイバーエージェントなどで活躍。鈴木氏は同社のAmebaプラットフォームの管轄責任者を経て、iemoの代表取締役やDeNAキュレーションプラットフォームの広告部長などを務めてきた人物だ。

そんな3人が創業したoverflowのテーマは「時間を増やす」こと。人々が自由に使える本質的な時間を増やすべく、その障壁となるものや、世の中の非効率をなくす事業を考えた結果、最初に着目したのが「お金の問題」だった。

そこでoverflowではライフプランを作ると専門家からそれに沿ったアドバイスをもらえる「お金のパーソナルトレーナー」サービスを考案。会社としてはPMFを達成するまで外部調達を実施しないことを決めていたため、同サービスを開発する傍らキャッシュを稼ぐ事業としてコンテンツ制作やメディア運営に関するコンサルティング事業も手がけた。

最終的には事業の将来性などを検討した結果、お金のサービスからのピボットを決断。そこから現在のOffersに至るまでにも「4〜5個のプロダクトを試した」(鈴木氏)そうだ。

「(金融サービスの運営を通じて)たくさんの相談を頂いたが、ほとんどのアドバイスは収入を増やすか支出を減らすかになる。支出を減らす施策は結果的に本人の自由を制限する方向に向かいやすいこともあり、個人の収入を増やせる仕組みを次の事業を通じて作りたいと思った」

「その時ふと自分たちの2年間を振り返って気づいたのが『正社員ゼロ』でずっと会社を作ってきたということ。副業・複業メンバーだけでも色々な新規事業にチャレンジできていたし、コンサルティング事業では成果も出せていた。副業のインパクトの大きさや、働き方を自由に選択できる環境の必要性を自社の経験を通じて感じていたことに加え、ちょうど副業がトレンド化し始めたタイミングでもあったので、この領域で新しい事業を作ってみようと開発したのがOffersだ」(鈴木氏)

目指すのは「フレキシブル経営」のインストール

そのような背景で2019年5月にα版リリースを迎えたOffersは、上述した通り1年間で累計50社に導入。プロダクトやCS体制の作り込みも進み、クライアントの反応も含めて手応えを掴めたため、さらなる事業拡大に向けて初の外部調達に踏み切った。

調達した資金は社内の体制強化に用いる計画。Offersには現在20名近くのコアメンバーがいるが(もちろん正社員メンバーはゼロだ)、新たに人員を加えてプロダクトの機能拡充なども進めていく。

鈴木氏によるとOffersでは「3次元構想」を掲げていて、今後は大きく3つの方向に拡張する方針。別職種への拡張やグローバル展開など市場拡大を狙うほか、副業にチャレンジしたい人のボトルネックを解消する新規事業(たとえば確定申告を簡単にするサービスなど)、個人のパフォーマンスデータを活用した採用モデルの構築などに取り組む予定だ。

「自分たちが目標としているのは雇用形態にとらわれない人材採用により、経営スピードを最大化するとともに個人の働き方を自由にする『フレキシブル経営』を多くの企業に広げていくこと。企業がその経営スタイルをインストールするための手段を探した際、Offersが1番使いやすいサービスになっている状態を目指してプロダクト開発を進めていく」(鈴木氏)

ビジネスでリアルに使えるスペースを時間単位で簡単予約できるPit inが資金調達

写真右端:Pit in代表取締役CEO・中村知良氏

空間を時間単位で提供するサービスといえば、古くからある貸し会議室から「スペースマーケット」のようなマッチングプラットフォームまで、今や、さまざまな選択肢が選べるようになっている。2019年4月に創業したPit in(ピットイン)が提供するのも、時間・分単位で多目的に使えるスペースのサービスだ。

「あらゆる空間をレスポンシブにする」をビジョンに掲げるPit inは、ソフトバンク出身の代表取締役CEO・中村知良氏が、不動産系スタートアップのイタンジ創業者である伊藤嘉盛氏と共同創業した会社。彼らの「レスポンシブスペース」とは、不動産の非稼働在庫を「年契約」ではなく「時・分単位」で利用可能にする“フラグメント化”と、単一の事業所によるシングルユースから複数業態で利用できる“マルチユース化”により、ユーザーの多目的なニーズに応えようというものだ。

2020年2月現在、渋谷、六本木、新橋で計7拠点を自社で開発・運営するPit in。テナントが決まりづらい、築年数が古いビルでサービスを展開しており、オープンから累計で、延べ1万3000名超のユーザーに利用されているという。

冒頭に挙げたように、コワーキングスペースや貸し会議室、あるいはスペースシェアのプラットフォームなど、「時間単位でスペースを借りる」というニーズに対しては、既に対応するサービスがいくつもある。そうした中でPit inが特徴とする点について、中村氏は「内装デザインから清掃・管理などのオペレーション、予約まで、顧客体験を一気通貫で提供できるところだ」と説明する。

「スペースマーケットなどのマッチングプラットフォームは、物件を持たない“メディア”だと捉えている。我々は物件を借り上げて開発し、オペレーターとして運営する。また、格安のレンタルスペースでは、Wi-Fiの速度などが、ビジネスで利用する際に必要なレベルになかったり、無人で運営する前提となっていて、清掃やメンテナンスが行き届いていなかったりすることも多い。Pit inでは、社外でも安心してビジネスユースで使えるスペースの提供を行っている」(中村氏)

また、予約の簡単さも特徴だというPit in。コワーキングスペースはファシリティや環境面では安心できるが、予約が完了するまでに事前契約や見積もりなど、手間がかかることも多い。Pit inでは、オプションや清掃料などの複雑な料金体系を排除し、5分ほどで予約完了できるサイトを自社で開発。ユーザー予約体験にも自信があるという。

創業のきっかけについて中村氏は「自分たちが手軽に使える打ち合わせ場所がなくて、自分たちが欲しかったサービスを作った」と話している。「世の中にはまだ、ビジネスで安心して使えるスペースが不足している。自分たちのオフィスとして使える場を、もっと増やしたい」(中村氏)

Pit inは2月28日、伊藤氏が代表を務めるトグルのグループ企業・社員と不動産テックVCのデジタルベースキャピタルを引受先として、総額約3000万円の資金調達を実施したことを明らかにしている。

調達資金は新規拠点の開発、予約サービスの開発に充てるというPit in。中村氏は「都内のほかの地域にまずは拠点を展開し、その後大阪など各都市部にも進出したい」と話しており、2020年内に全国50拠点の開発・運営を目指すとしている。

GraphQLの開発を単純化するHasuraが約10億円調達

デベロッパーがオープンソースのGraphQLツールを使ってデータベースへの接続をしようとするときに遭遇する問題の、解決方法を提供するHasuraが、シリーズAのラウンドで990万ドル(約10億円)を調達した。

Vertex Ventures USがこのラウンドをリードし、SAP.iO Fundと既存の投資家Nexus Venture PartnersおよびStrive VCが参加した。多くのエンジェル投資家も参加している。これで同社の調達総額はおよそ1150万ドル(約12億6700万円)になる。

GraphQLは、最初は2012年にFacebookで開発され、数年後にオープンソースになった。HasuraのCEOで創業者のTanmai Gopal(タンマイ・ゴパル)氏によると、同社はこれまでKubernetesを使用する開発を単純化するサービスをデベロッパーに提供していたが、その後、データアクセスのほうが大きな問題だと気づいた。そこでその問題を解決するために、GraphQLで使えるオープンソースのツールを開発した。

ゴパル氏はTechCrunchに「アプリケーションのデベロッパーは多くの場合、データベースのデータにアクセスする必要がある。Hasuraはデベロッパーに代わって、データベースを見つけ、多少の構成をセットアップし、それから高性能で安全なGraphQL APIを生成する」とコメントした。

その結果は一種のDaaS(Data as a Service)のAPIのようなかたちになり、GraphQLのユーザーの大きな問題を解決する。それは主にバックエンドのデベロッパーの問題だが、彼らはそれまで、長時間を費やして、GraphQLを使うフロントエンドのデベロッパーのために手作業でアプリケーションをデータソースに接続していた。しかしこのDaaS APIを呼び出す場合は、フロントエンドのデベロッパーがほんの数行のコードをアプリケーションに挿入するだけでデータベースへ簡単に接続できる。

Hasuraはこれまで、2900万回以上ダウンロードされており、人気が高い。同社は今回得られた資金でエンタープライズバージョンを作りたいと言う。そのバージョンは現在すでにテスト中で、間もなくリリースできる。現在、このサンフランシスコの企業には社員が40名が在籍している。この数字も、新たに得た資金で増えるだろう。同社はツールの能力アップを望んでおり、またサポートするデータベースのタイプも増やしたいと考えている。

関連記事:KubernetesのデベロッパーソリューションでHasuraが160万ドルのシード資金を調達(未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

オンラインゲームプラットフォームのRobloxがAndreessen Horowitzから165億円調達、評価額4400億円に

オンラインゲームのプラットフォームであるRoblox(ロブロックス)は、Z世代を中心に月あたり1億1500万人のプレイヤーが集う場だが、米国時間2月26日にAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のLate Stage Ventureファンド率いる1億5000万ドル(約165億円)のシリーズG投資を獲得したことを発表した。同社はまた、最大3億5000万ドル(約385億円)の普通株と優先株の株式公開買い付けを開始すると話している。

同社は以前、長期的な可能性を信じて、株主と従業員に定期的な売り出しを行い流動性を提供した。またCFOのMichael Guthrie(マイケル・ガスリー)氏によれば、Robloxのキャッシュフローはポジティブだとのこと。

このシリーズG投資には、新規の投資会社としてテマセクとテンセント・ホールディングスのほか、これまでの投資会社Altos Ventures、Meritech Capital、Tiger Global Managementが参加している。

今回の投資は、このゲーミングプラットフォームの急成長期と重なることとなった。2019年には、訪問者数がMinecraft(マインクラフト)を超えて1億人となった。200万アクティブユーザーを擁する開発者コミュニティーは、1億1000万ドル(約120億円)の収益を上げた。2018年の収益は7000万ドル(約77億円)強、2017年は4000万ドル(約44億円)強だった。

以来、Robloxは開発者事業への投資をさらに増やし、よりリアルな3D体験が得られる新しいツールとマーケットプレイスを立ち上げた。そこでは、クリエイターは自分が開発したアセットやツールなどを他人に売ることができる。

Robloxは、App Storeに似た、それを利用してゲームが構築できるプラットフォームを提供している。人気の高いゲームは多くが無料だが、ゲーム内アイテムをRobuxとう仮想キャッシュでプレイヤーに買ってもらうことで利益を得ることができる。最大クラスのゲームとなると、月平均のプレイヤー数が1000万人に上るものもある。訪問者数が10億人を超えるゲームは10本以上を数える。

Robloxのプレイヤーは、単にゲームのゴールやタスクのコンプリートを目指しているだけではない。ゲーム環境の中で、友だちとオンラインでつながり遊んでいるのだ。週間のアクティブユーザーの半数は、友だちと遊ぶためにRobloxを訪れている。さらに、Robloxユーザーの半数は毎月自分のアバターを変更している。

この数カ月間、Robloxはそのプラットフォームを米国外に広げてきた。中でも注目すべきは中国だ。昨年、Robloxはテンセントとの戦略的提携を行い、プラットフォームとコーディングカリキュラムを中国で展開することを決めた。中国語に対応するばかりか、コーダーキャンプも開催する。現在Robloxには、200を超える国々のプレイヤーと開発者がいると同社は話している。

去年の時点でRobloxの評価額は25億ドル(約2750億円)あり、コムスコアによると、そのプラットフォームでは9歳から12歳の米国の子どもたちのおよそ半数が遊んでいたという。今もその数値は維持されている。しかもそのユーザーベースは、13歳以上が40%と若年層に傾いている。

ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、現在のRobloxの評価額は40億ドル(約4400億円)となっている。同社はコメントを控えているが、TechCrunchはそれが本当であると強く信じている。

Robloxによると、現在のユーザーベースは1カ月に延べ15億時間をそのサービス上で費やしているという。プラットフォーム間で行き来が可能なため、パソコンからスマートフォンへ移動してプレイを続けるユーザーも多い。これはオンラインゲームの新しいトレンドだ。フォートナイトやPUBGといったゲームが人気を集めている一因でもある。

「私たちは、Robloxの長期ビジョンを強く信じており、次なる変曲点に突入する彼らを支援することに自信を持っています」と、Andreessen Horowitzの無限責任パートナーを務めるDavid George(デイビッド・ジョージ)氏は、今回の投資に関連して話していた。「Robloxは、強力なトラクションと、会社を前進させ、長年にわたり業界を押し上げる、有機的で成長率の高いビジネスモデルを併せ持った、非常に珍しいプラットフォーム企業のひとつです」と彼は言い添えた。

Robloxは、新しく調達した資金を使って海外進出を含めた成長を継続させ、さらなる開発用ツールとエコシステムを構築し、エンジニアリングの人材とインフラに投資する計画を立てている。

「私たちは、人々が集まり、創造し、学び、楽しむための安全な公共の場を作り上げるというビジョンに忠実に従っていきます。これまで世界のクリエイターコミュニティーとともに築いてきたものを振り返ると、まさに感無量です」とRobloxの共同創設者でCEOのDavid Baszucki(デイビッド・バスズキー)氏は声明の中で述べている。「将来に向かっては、私たちは、クリエイターとプレイヤーを未来のメタバースへと導く最先端のツールとテクノロジーの構築に、今まで以上にしっかりと関与してまいります」。

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(翻訳:金井哲夫)

“副業型クラウドキッチン”で飲食店のキッチン稼働率を上げる「クラウドフランチャイズ 」が資金調達

飲食店のアイドルタイムと人気のフードデリバリーブランドを繋ぐ「クラウドフランチャイズ」事業を展開するCLOUD FRANCHISEは2月26日、THE SEED、野口圭登氏、西尾健太郎氏を引受先とする資金調達を実施したことを明らかにした。具体的な金額は非公開だが、数千万円規模の調達になるという。

ここ数年、「クラウドキッチン」と呼ばれるネット注文特化型のキッチンしか保有しない店舗や、デリバリーに注力した「ゴーストレストラン」タイプの飲食店に注目が集まっている。日本国内でもUber Eatsを含むデリバリープラットフォームの広がりに伴い、デリバリー専業ないしデリバリーを主力とした飲食店が登場し始めた。

CLOUD FRANCHISEではその中でも人気を集めるフードデリバリーブランドと、キッチンの稼働率を上げたい飲食店をフランチャイズのスキームを用いて繋ぐことで双方の成長を後押しする。

飲食店の空き時間をクラウドキッチンに変える

具体的には飲食店の空き時間にフードデリバリーブランドを導入し、飲食店スタッフがデリバリーメニューを調理した上でUber Eatsなどを通じて顧客に届ける。たとえば夜だけ営業をしている焼肉屋や居酒屋が、お昼の空き時間を使って“副業的に”ゴーストレストランを経営するようなイメージだ。

デリバリー用のメニューは冷凍もしくは冷却(チル化)された状態で飲食店に届き、電子レンジで温めたりなど簡単な調理だけで完成するため飲食店側の負担が少ないのが特徴。飲食店は空き時間で新たな収益源を作れる。

一方のデリバリーブランドにとってはフランチャイズ形式を採用しているため、自社ブランドの店舗をコストを抑えながらスピーディーに拡大できるのがメリットだ。各飲食店が自社のクラウドキッチンとしてデリバリー拠点の役割を果たすため、複数のエリアに一気に進出することもできる。

CLOUD FRANCHISEは両者をマッチングする立場だが、マッチングといってもWeb上でプラットフォームを提供している訳ではなく、現在は1つ1つの飲食店とブランドを手動で繋いでいる。販売データやUber Eatsなどのプラットフォーム上で公開されているデータを分析し、エリアごとの特性などを見極めた上で、どの飲食店にどのブランド(メニュー)を導入するかを決めているそうだ。

「キッチンスペースや冷蔵庫などの大きさなど飲食店側の設備の特徴に加えて、たとえばカレーがよく売れるエリアなどエリアごとの特性も踏まえて提案している。あくまで本業に支障が出ない範囲という前提で、最初はだいたい5つのメニューで毎日20食の注文が入るようなイメージで導入してもらっている」(CLOUD FRANCHISE代表取締役の桑原竣亮氏)

年内に100店舗以上の出店目指す

現在ベースとなっている副業キッチンプランではCLOUD FRANCHISEが仕入れ費用(ブランド側からメニューを購入する費用)を負担するため、飲食店側の初期費用や手数料などはゼロ。実際に売れた金額の内15%が飲食店に支払われ、残りの85%からデリバリープラットフォームの手数料や仕入れコストを引いた金額が同社の収益となる仕組みだ。

仮に月の売上が100万円だったとすると、飲食店に入ってくるお金は15万円になる計算。これが大きいか小さいかは飲食店ごとによっても捉え方が変わってきそうだけれど、ある店舗では撤退を検討しているタイミングでサービスを導入したところ「導入初月で100万円の売上を達成できたために運営の継続に繋がった」事例もあるとのこと。

桑原氏の話では特に小規模な飲食店や一等地から少し離れた店舗などには相性が良い反面、大規模な駅近くの一等地などの飲食店とは合わずメインターゲットにはならないという。

現時点では究極のブロッコリーと鶏胸肉など複数のブランドと都内を中心に約10店舗の飲食店が集まっている状況。今回の資金調達では主に人材採用を強化し、飲食店数を年内に100店舗以上へ拡大することを目指す。

CLOUD FRANCHISEは2018年4月の創業。代表の桑原氏が最初にビジネスに触れたのは10代の頃にライフネット生命保険創業者の出口治明氏らの講演会を企画・運営したこと。その後インスタグラマーのアパレルブランド作りを支援する事業を立ち上げ、売却を経験した。

これまでの事業を通じて人のブランドやIPを適切な形で届けることができれば多くの人に喜んでもらえることを体感したそうで、それが今回の事業にも繋がっている。「強いIPを最大限活かせる事業を考えた時に行き着いたのがフランチャイズのモデル。中でも1番参入しやすいと感じたのがフードデリバリーだったため、クラウドキッチンやゴーストレストランの文脈からスタートした」(桑原氏)

疾患特化型ソーシャルデータプラットフォーム「Activaid」が1億円の資金調達、“患者向け”に続き“医療機関向け”プロダクトのリリース目指す

疾患特化型ソーシャルデータプラットフォーム「Activaid(アクティヴェイド)」運営のActivaidは2月26日、アーキタイプベンチャーズ、ジェネシア・ベンチャーズを引受先とする1億円の資金調達を実施したことを発表。

2018年4月に設立されたActivaidのミッションは「人々が医療の発展に参加できる未来を作る」こと。同社は「これからの医療は個人の参加がなければ発展しない」と考えている。

Activaidは2019年2月より、「炎症性腸疾患」に特化した形で、患者向けソーシャルデータプラットフォームのActivaidを運営。Activaidでは、「慢性疾患を抱える患者同士がお互いに支え合い、病気を管理することを通じて、慢性疾患に対する新しい治療法の発見に貢献していく」。

患者向けプロダクトでは、同じ疾患を持つ患者コミュニティでサポートを得ながら情報交換、医師が診療で重視するポイントに沿った疾患管理やメンバー同士による情報の参照ができる。

2019年9月にはActivaidが正式リリースされ、患者が医療の発展に参加できる「臨床試験(治験)のマッチング機能」も提供開始された。Activaidいわく、このマッチング機能により、ユーザーは「日々の疾患を管理する」以外にも、「必要に応じて臨床試験という治療の新たな選択肢を能動的に検討すること」が可能になった。

Activaidでは、利用者がPRO(Patient Reported Outcome:患者の主観的な症状やQOLに関連する指標)を共有し評価する仕組みが整っているため、創薬研究にとって重要な情報となる「患者自身の主観的なデータ」を蓄積することが可能だ。2020年2月現在、3万9千件を超えるデータが蓄積されているという。

そして同社は今回調達した資金1億円を使い、「医療機関向けのプロダクト」の開発を進める。既に患者によって入力されている症状などのPROを中心としたデータを医療機関と共有することで、「QoLの改善」や「医師患者間のコミュニケーションの促進」をサポートするプロダクトとしていく予定だ。

Activaidは2019年6月、ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長兼所長の北野宏明氏、TomyK代表の鎌田富久氏、その他3名の個人投資家を引受先とする第三者割当増資による、エンジェルラウンドの資金調達を発表。調達額は非公開となっている。

お金の専門家に無料で質問できる「おかねアンサー」運営が1.6億円を資金調達

写真左から、SMBCベンチャーキャピタル次長 西田光佑氏、KVPパートナー 御林洋志氏、セオリア取締役CTO 造田知宏氏、代表取締役 堤健正氏、W ventures代表パートナー 東明宏氏、三菱UFJキャピタル主任 山本弘樹氏

お金に関する専門家への無料Q&Aサービス「おかねアンサー」を運営するセオリアは2月26日、プレシリーズAラウンドで総額約1.6億円の資金調達を実施したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先はW ventures、KVP、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタルの各社で、実施日は2月17日。今回の調達により、同社の累計調達額は約2億円となった。

お金の悩みや疑問について相談する相手を誰にするか、というのは意外に難しい問題だ。知識のある人に聞きたいのはやまやまだが、専門家に相談すると費用がかかるのではないか、あるいは手数料などの儲けを目的に都合の良いサービスや商品を売りつけられるのではないか、といった心配も付きまとう。また、あまり生々しいお金の話は身近な人には相談しにくいが、かといって、匿名掲示板で正確かどうか分からない回答を得るのも避けたいところだ。

2018年9月に正式リリースされたおかねアンサーは、一般消費者がお金に関する悩みを専門家に相談できるサービスだ。お金の管理や資産運用・投資、保険や税金、年金、相続、暗号資産など、多様なカテゴリについて、無料で質問を受け付けている。また他の人の質問と専門家の回答を閲覧して、参考にすることもできる。

回答者として参加する専門家はファイナンシャルプランナー、社会保険労務士、税理士や、相続アドバイザー、保険アドバイザー、司法書士、宅地建物取引士など。さまざまな角度から質問に対応することが可能だ。

幅広い専門家が質問をカバーするスタイルとなっているのは、セオリア代表取締役の堤健正氏の会社設立時の原体験から着想されたもの。社会保険労務士への相談で悩みが即解決したことから、専門家といってもどの分野でも良いわけではないこと、「適切な専門家に相談すれば早く解決する」という知見が、おかねアンサーには反映されている。

おかねアンサーは、正式リリースから約1年で月間ユーザー数が数十万人規模となったという。前回取材時、収益化については「アスクドクターズや弁護士ドットコムのような個人課金(既存のQ&A閲覧への課金)や事業者への広告、ユーザーと専門家との面談のマッチング手数料など、いくつか検討している」としていた堤氏。マネタイズ手段についての具体的な発表はまだないが、「現在はサービスグロースに注力している」(堤氏)とのことだ。

セオリアは今回の調達により、おかねアンサーの人材採用、プロモーション、コンテンツ制作への投資を強化を図る。また今後、日本の生活者のお金に関する動向・データを蓄積し、データをもとにした解決策としてのサービス展開を検討。Q&Aサービスにとどまらず、国内一の「お金の悩み解決プラットフォーム」を目指すとしている。

文章解析AIのストックマークがWilから資金調達、企業内に眠る紙文書をデータ化し経営判断や営業施策に活用

紙文書のデジタル(テキストデータ)化などによって、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援するストックマークは2月25日、ベンチャーキャピタルのWilから資金調達したことを明らかにした。

同社は2015年4月設立の東大発スタートアップ。東京大学大学院情報理工学研究科でのテキストマイニング・ディープラーニングの研究をベースしたAIを開発している。今回調達した資金は、研究開発費やサービスの認知向上のための広告宣伝費に当てられるとのこと。

日本語の文章を解析する独自のAI技術により、各企業に眠っている紙で記録されたデータをテキストデータ化・解析し、経営判断や営業施策に活用できるようにする。同社によると、企業が所有するデータのうち90%は企画書やメモ書きといった主に文章で構成された非構造化データで、これテキストデータ化することで、顧客ニーズのくみ取りや類似書類レコメンドに企画書作成の効率化、トレンドや動向といった各種データの可視化が可能になるという。

AIが数秒で契約書をレビューする「LegalForce」が10億円を調達、導入企業は250社を突破

AIを活用した契約書レビュー支援サービス「LegalForce」を提供するLegalForceは2月21日、WiLなど複数の投資家から総額10億円を調達したことを明らかにした。

LegalForceにとっては2018年に実施したシリーズAに続くシリーズBラウンドという位置付けで、同社の累計調達額は約16億円となる。なお今回新規の投資家はWiLのみ。エンジェル投資家を除く全ての既存投資家が本ラウンドで追加投資を行った。投資家リストは以下の通りだ。

  • WiL
  • ジャフコ
  • 三菱UFJキャピタル
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • みずほキャピタル
  • ドリームインキュベータ
  • 京都大学イノベーションキャピタル

契約書のリスクを数秒でチェック、導入企業社数は250社超え

LegalForceはAIを含むテクノロジーの活用によって、契約書のレビューやそれに紐づく業務を効率化するプロダクトだ。

細かい機能については昨年4月の正式ローンチ時に紹介したのでそちらを参照してもらえればと思うけれど、軸となる契約書レビュー機能だけでなく、過去の契約書をデータベース化して有効活用できるようにする「ナレッジマネジメント」の仕組みも備える。

LegalForceではWordやPDFの契約書をアップロードして契約の類型と自社の立場を選択するだけで、数秒〜数十秒後にはリスクを洗い出し、不利な条文や欠落条項を指摘。リスクのある部分については確認すべきポイントとともに修正文例を表示する。正式ローンチ後のアップデートとして「なぜこの論点を確認した方がいいのか」を解説してくれる機能も加わった。

レビュー前の画面。過去の似ている契約書やひな形と差分を比較することもできる

実際のレビュー結果。確認した方がいい箇所がハイライトされ、コメントや修正文例、解説が表示される

現在は業務委託契約を含めて22類型をカバーするほか、英語の契約書への対応も進めている。今の所はNDAに限られるものの「英語の契約書をアップロードすれば問題点は日本語で解説し、修正文例は英語で表示する」こともできるようになった。

レビュー画面では自社のデータベース(ライブラリ)に保存されている類似の契約書と照らし合わせて差分を表示したり、自社の用途に合わせてレビューの重要度をカスタマイズすることが可能。これらの機能を法務担当者や弁護士が使い慣れた“Word”でも同じように使えるのも大きな特徴だ。

Wordのアドイン機能を使うことで、普段から使っているWord上でそのままレビューや条文検索ができる

料金は月額10万円からの定額制で、現在までに250社以上の法務部や法律事務所が導入済み。業界問わず幅広い企業で使われていて、顧客の4割近くが上場企業だという。

今後はナレッジマネジメント機能と英文対応を強化へ

LegalForceのメンバー。中央が森・濱田松本法律事務所出身で代表取締役CEOを務める角田望氏。

LegalForce代表取締役CEOの角田望氏によると昨年4月の正式ローンチ以降、細かいものも含めて40以上のアップデートを実施してきたという。上述したもの以外だと民法改正への対応や法律の専門家が作成したひな形(LegalForceライブラリ)の追加、OCR機能の強化などがその一例だ。

レビュー精度の向上と対応類型の拡充も含めてプロダクトが進化したことで「以前はトライアル後に正式導入には至らなかった企業と契約に繋がるケースも出てきている」とのこと。導入企業社数の拡大だけでなく、規模の大きい企業や法律事務所が複数アカウントを契約するなどボリュームの大きい顧客も増えているそうだ。

今回の資金調達はこの勢いをさらに加速させるべく人材採用を強化することが主な目的となるが、特に今後は2つの領域にリソースを投下していく。

1つは英文契約書への対応だ。「留学経験がある人ならストレスなく読めるが、それでも日本語のものに比べると時間がかかる。慣れていない人だと数倍〜10倍くらいの時間が必要になり負担も大きい」と角田氏が話すように、英文契約書のレビューに対するニーズは高い。

そしてもう1つがナレッジマネジメント機能の拡張。これまでもLegalForceではライブラリという形で、社内の契約書をデータベースとして蓄積できる仕組みを提供してきた。これによって契約書をアップロードしておけば、キーワードに応じて条文単位で欲しい情報を引っ張ってきたり、同じような契約書と比較しながら重要な論点を確かめたりすることができる。

データベースでは自社で保有する過去の契約書だけでなく、LegalForce側で用意したひな形(LegalForceライブラリ)も含めて横断検索・活用ができる

「レビューした契約書自体に価値があるというのが自分たちの考え方。共有フォルダを作れば過去の契約書を共有して蓄積することまではできたが、それを有効活用するのは難しかった。LegalForceではファイルをアップロードするだけで情報が整理され、必要な時に資産として活用できる。共有・蓄積のストレスを軽減しつつ、活用の幅を広げていきたい」(角田氏)

たとえば過去に誰かが同様の契約書を作ってレビューしていれば、それはとても重要な参考資料になる。ただし他の人がどんな契約書をレビューしたかを全て把握するのは困難な上に、ファイルの数が増えてくれば探し出すのも大変だった。レビューを効率化するだけでなく「人間だけでは気づけない、たどり着けない自社に眠るナレッジ」に素早くアクセスできるのもLegalForceの強みの1つだ。

今後はこのナレッジマネジメント機能をアップデートしていく計画で、直近ではバージョン管理機能を搭載する予定とのこと。機能追加に加え、新しいプロダクトラインとして締結した契約書を効率よく管理できる仕組みも開発中だという。

「今まではレビューをメインにしていたが、自分たちがやりたいのは法務業務を総合的に支援すること。現在のレビュー機能だけでは十分ではないので、レビュー業務から派生するナレッジマネジメント機能などにも拡張していくことで、法務担当者や弁護士への提供価値をあげていきたい」(角田氏)

チームの目標達成や事業成長を支えるOKRサービス「Resily」が5億円調達

Resilyのメンバーと投資家陣。左から3人目が代表取締役の堀江真弘氏

SaaS型のクラウドOKRサービス「Resily」を展開するResilyは2月20日、DNX Venturesとセールスフォース・ドットコムを引受先とする第三者割当増資により総額約5億円を調達したことを明らかにした。

同社では2019年2月にDNX Venturesより5000万円を調達済みで今回はそれ以来の資金調達となる。今後はプロダクトの機能拡充や顧客拡大に向け、エンジニアやカスタマーサクセスを中心に人材採用を強化していくという。

OKRを軸にチーム状態を可視化し、目標達成をサポート

Resilyは2017年8月にSansan出身の堀江真弘氏(代表取締役)らが創業したスタートアップだ。

創業から半年ほどはOKRのコンサルティングなどを通じて、いろいろなチームが目標管理や目標達成において課題に感じていることを探ってきた。そこで行き着いたのが、組織としてボトルネックにもテコにもなりえるミドルマネジメント層が抱える「チームの状態がわからない」という課題だ。

「既存のツールだけでは『チームの状態がなぜ良いのか、なぜ悪いのか』の原因が正確に把握することは難しい。チーム全体で何が起こっていて、どこにズレが生じているのか。これをシンプルに可視化して、必要な情報を流通させる仕組みが必要だと感じた」(堀江氏)

その解決策として2018年8月にローンチしたResilyは、チーム内でのOKR管理とそれにまつわるコミュニケーションをスムーズにすることで、チームの目標達成や事業成長を後押しする。

OKRマップ

マップ型のUIでチームと個人それぞれの目標(Objectives)および成果指標(Key Results)を階層に分けて可視化。会社と各部署、各メンバーの目標がそれぞれきちんと結びついているか、個人個人がどんなどんな目標を掲げていて現在どのような進捗状況なのかが一目でわかる。成果指標は問題のある箇所や達成の自信がない箇所が“信号”のように色分けされていくため、早い段階で課題を特定し対策を打ちやすい。

全体を把握した上で1つ1つのOKRについて掘り下げたい場合には「ミーティングボード」を用いる。これは各OKRごとに用意された掲示板のようなもので、目標に対するアクションやそこから得られた考えなどを蓄積していくことができる。OKRを上手く運用していくためには定期的な振り返りとアップデートが不可欠であり、それを支えるための役割とも言えるだろう。

その他マネージャー向けの機能として、各メンバーのOKRや進捗率、成果指標の変更履歴などを確認するためのダッシュボード(以前はタイムラインと呼んでいたもの)も備える。

ミーティングボード機能

ダッシュボード

事業成長を支援する「経営管理ツール」へ

Resilyではこれらの機能を月額3万円からのSaaSとして、IT系の企業を中心に累計約100社へ提供してきた。堀江氏の話では、特に上場を控えたフェーズのスタートアップや上場後のベンチャー企業をメインターゲットになるそう。導入企業の約8割はOKR未経験であり、導入や運用の伴走支援にも力を入れている。

ORKに関連するプロダクト自体は日本国内でもいくつか存在するが、人事評価の文脈でOKRを取り入れているものが多い。たとえば過去に紹介した「HRBrain」や「カオナビ」といったサービスは目標管理手法の1つとしてOKRに対応している。

一方でResilyが狙っているのは事業成長を支援する「経営管理ツール」としてのポジションだ。先月米国ではWorkBoardというスタートアップが事業を大きく成長させ、3000万ドルの資金調達に成功した。同社が手がけるプロダクトはOKR管理を軸とした経営管理ツールであり、Resilyでもこの方向性にプロダクトをアップデートさせていく方針だという。

「(WorkBoardのようなプロダクトは)経営陣や事業責任者が経営のヘルスチェックに使うツールだと捉えている。事業KPIの予実ギャップを埋めるアクションをどの部門がどのように進めているかを確認したり、注力ポイントにきちんとリソースを注げているかをチェックしたり。これはHRというよりは経営管理側のプロダクトに近く、自分たちもResilyをその方向に尖らせていきたい」(堀江氏)

そのためにはさらなる進化が必要だ。昨年の調達以降Resilyではいくつか新機能などを試したものの、なかなか仮説通りにはいかない部分もあったそう。現在もリニューアルに向けて開発に取り組んでいる。

今検証を進めているのは、データを軸にチームの課題をプロダクト側で提示する機能。今までは各メンバーが入力したKRの状況を色を使って分類していたが、今後は入力されたデータの標準偏差や平均値を用いて「今のチーム状況を踏まえると、ここに課題がありそうです」というレベルまでResilyが教えてくれる状態を目指している。

「まずは経営者がデータを基にチームの状況や課題を正しく理解した上で、ミドルマネジメントを中心に素早くメンテナンスできるような基盤を作る。その1つのアプローチとして、プロダクト側から優先的にやるべきことを教えてあげることで、スムーズに対策が進められるような仕組みを用意していきたい」(堀江氏)

HRテックのROXXがサイバーエージェントなどから総額5億円を資金調達

写真左から、サイバーエージェント社長室 投資戦略本部 本部長 近藤裕文氏、同社経営本部 M&A・投資育成部 関口秀明氏、ROXX代表取締役 中嶋汰朗氏、サイバーエージェント社長室 投資戦略本部 藤田ファンド担当 坡山里帆氏

人材採用関連サービスを提供するROXXは2月19日、サイバーエージェント、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、三菱UFJキャピタルを引受先として、総額5億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。今回の資金調達は、2019年7月発表のパーソルキャリアと既存株主からの約3.7億円の調達に続く、シリーズBラウンドに当たり、同社の累積調達額は約12億円となった。

ROXXは現在、月額制のリファレンスチェックサービス「back check」と、求人流通プラットフォーム「agent bank」を提供している。

2018年5月に正式リリースされたagent bank(旧SARDINE)は、人材紹介会社のための求人データベースと業務管理ツールのクラウドサービスだ。月額利用料のみ、成功報酬に対する手数料が不要で、2000件以上の求人に対して転職者を紹介することができる。利用ハードルの低さから、累計400社以上のエージェントがagent bankを利用しているという。

また求人企業の側も、完全成功報酬型で募集求人を何件でも無料で掲載可能。成功報酬は求人ごとに自由に設定でき、従来の人材紹介より低コストで採用が可能になっている。このため、大手企業からスタートアップまで、幅広い規模と業種の求人を集めるようになっている。

リファレンスチェックのback checkは、面接や書類からだけでは見えにくい採用候補者の経歴や実績に関する情報を、候補者の上司や同僚といった一緒に働いた経験のある第三者から取得できるサービスだ。採用予定の職種・ポジションに合わせて数十問の質問を自動生成し、オンライン上でリファレンスチェックを実施できる。

back checkには、候補者の前職における勤怠・対人関係といった基本的信頼性を可視化するスコアリングや、性格診断による職務適性チェックといった機能が備わっており、独自のデータ分析により、入社後のパフォーマンスを総合的、客観的に分析・予測することが可能となっている。レポートに表示される適正を踏まえて、面接での確認事項や、配属先検討の際の組織やメンバーとの相性を考えるための参考とすることができる。

back checkの利用料は月額定額制で、従来のリファレンスチェックサービスに比べて10分の1程度の費用でチェック実施が可能。2019年10月の正式リリースから、2020年2月現在、累計導入企業数が300社を超えた。今回、藤田ファンドからROXXに出資を行うサイバーエージェントも、サービス利用企業の一社だ。

今回の資金調達により、ROXXではagent bank、back checkの各プロダクトの強化と、これにともなう採用強化を図るとしている。ROXX代表取締役の中嶋汰朗氏は「昨年比でagent bank事業は主要KPIがすべて300%超の成長を実現していることに加えて、新規事業のback check事業においては導入企業様の採用フローにリファレンスチェックが確実に浸透している」として、「今回の資金調達は両事業のさらなる成長を加速させることを目的としたラウンドと位置づけている」と述べている。

今後、agent bank事業については、前回のリード投資家で資本提携先でもあるパーソルキャリアのアセットと自社の事業開発力を掛け合わせ、人材紹介の領域拡大を牽引するサービスとなるよう、投資を行うと中嶋氏。「2030年には640万人もの人手が不足すると予測されている中で、中長期で成長し続けるROXXの主力事業とする」(中嶋氏)

またback check事業については、「タクシーCMの公開や導入実績の増加により、リファレンスチェックそのものの認知が拡大されているのを感じているだけでなく、実際に採用のミスマッチを防ぐことができたという事例が日々増えている」と中嶋氏はいう。「日本全体で転職へのネガティブなイメージが払拭され、キャリアの多様化が進むに伴って、採用企業において必要とされるツールになると確信し、事業部全体に対して投資を強化する判断をした」(中嶋氏)

中嶋氏は「前回の調達をきっかけに大手人材会社の経営や事業構造に数多く触れる機会を得て、業界構造の負をインターネットサービスで解決できる領域がまだまだ残されていることに気づいた」と述べ、「決して既存の文化を壊すのではなく、踏襲した上でより良い形を実現することが私たちROXXの役割だと認識した。20年、30年とサービスの価値が上がり続ける事業になるよう、引き続き尽力する」とコメントしている。