食領域特化のCVC「Future Food Fund」1号ファンドが20億円で組成完了

食領域特化のCVC「Future Food Fund」1号ファンドが総額20億円で組成完了

オイシックス・ラ・大地の投資子会社Future Food Fundが運営するフードイノベーション領域特化CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ファンド「Future Food Fund 1号投資事業有限責任組合」(FFF1号)は12月14日、食品業界以外の業界からの応募を含め総額20億円に到達、2020年12月をもって組成完了したと発表した。

FFF1号は、日本の食文化や食品業界の発展への貢献を視野に入れ、食領域に特化したスタートアップ企業を中心に投資する目的をもって設立。新たに西松建設、コメダホールディングス、国分グループ本社、オレンジページ、セブン&アイ・ホールディングスより出資を受け、募集を完了した。

FFF1号は、食領域に特化したファンドとしては日本国内で初の設立であること、リミテッドパートナー(LP)が14社加入したことから、多種多様な業界が食領域への関心を高く持っている結果と考えているという。

食領域特化のCVC「Future Food Fund」1号ファンドが総額20億円で組成完了

投資先の企業に対しては、LPとして参加する事業会社のプラットフォームを最大限に活用し、継続的な幅広い実行支援により、エコシステムを構築。スタートアップの持つ新技術や新サービスをより早く実用化・事業化していくことを目指す。

ファンド立ち上げからの実績としては、投資先企業の商品の販売やマーケティングサポートなどをすでに数社へ実施。投資先企業には、サブスクリプションで離乳食販売事業をしているMiL、畜産業にAI技術を用いているFarmnote、素材や製法にこだわったクラフトアイスクリーム製造事業をしているHiOLIなどがある。

これらの企業は、食領域における社会課題に取り組む事業を展開しているスタートアップ企業が中心。投資以外にも、企業間の連携や販売サポートなど様々な形での連携に取り組んでいく。

食領域特化のCVC「Future Food Fund」1号ファンドが総額20億円で組成完了

オイシックス・ラ・大地は、有機・特別栽培野菜、添加物を極力使わない加工食品など安心・安全に配慮した食品の宅配サービスを「Oisix」(おいしっくす)、「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」の3ブランドで展開。

Oisixでは2013年7月に、必要量の食材とレシピがセットになった、主菜と副菜の2品が20分で完成するミールキット「Kit Oisix」を販売。2020年10月時点で、シリーズ累計出荷数は6500万食を突破した。

同社は「これからの食卓、これからの畑」を理念に掲げ、食に関する社会課題をビジネスの手法で解決する事業を推進していくとしている。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:食品(用語)農業(用語)ファームノートFuture Food FundMiL日本(国・地域)

ウミトロンが水中にいる魚のサイズを自動測定するシステム「UMITRON LENS」を発表

ウミトロンが水中にいる魚のサイズを自動測定するシステム「UMITRON LENS」を発表

水産養殖業が抱える課題の解決を目指すウミトロンは12月10日、新サービスにあたるスマート魚体測定システム「UMITRON LENS」の開発を発表した。UMITRON LENSはAIおよびIoT技術を活用し、ポータブルの撮影用カメラとスマートフォンアプリでの操作によって、水中にいる魚のサイズを自動で測定し、クラウドにおいてデータ管理が可能な水産養殖向けスマート魚体測定システムとなっている。

魚の成長サイズは、水産養殖における重要な経営指標となっているものの、手作業での計測は労務の負荷が高く、計測中に魚を傷つけることで資産価値が落ちるといった課題があるという。そのためこれまでは、十分な魚の数・頻度で計測することが困難だった。

UMITRON LENSは、小型ステレオカメラとAIを活用し、水中の魚のサイズを自動計測。また、通信機能によってクラウドとデータ連携することで、魚の成長確認を容易にし、労働の省力化や収益性の向上、経営安定性に貢献する。

UMITRON LENSをブリの生け簀にて使用する様子(大分県臼杵市)

UMITRON LENSをブリの生け簀にて使用する様子(大分県臼杵市)

UMITRON LENSスマートフォンアプリサンプル画像

UMITRON LENSスマートフォンアプリサンプル画像

同システムは、2018年より大分県で開発を実施。実際の生産現場における計測作業のユーザビリティーや、生育管理に役立つデータや推定精度への改善を続けてきたという。

従来は、ユーザービリティーを高めるために小型ステレオカメラ活用をする場合、測定精度の低さが課題となっていたが、独自の解析アルゴリズムを開発し、高い測定精度を実現した。

ブリ(左)とマダイ(右)の解析イメージ

ブリ(左)とマダイ(右)の解析イメージ

また同事業(プロジェクト名:IoT/AI技術を活用した水産養殖管理サービスの事業化)は、2020年6月に経済産業省 関東経済産業局より「異分野連携新事業分野開拓計画」に認定。大分県のブリ養殖事業者「重宝水産」と愛媛県のマダイ養殖事業者「赤坂水産」と連携し、新サービスの開発と市場開拓を進めている。

ウミトロンは、成長を続ける水産養殖にテクノロジーを用いることで、将来人類が直面する食料問題と環境問題の解決に取り組むスタートアップ企業。

シンガポールと日本に拠点を持ち、IoT、衛星リモートセンシング、機械学習をはじめとした技術を用い、持続可能な水産養殖のコンピュータモデルを開発している。同社は、世界中の養殖ノウハウを集積したコンピューターモデルを開発・提供することで、より安全で、人と自然に優しい「持続可能な水産養殖を地球に実装する」ことを目指している。

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カテゴリー:IoT
タグ:IoT(用語)ウミトロン(企業)食品(用語)水産養殖日本(国・地域)

農林水産省が農林水産業のDXに向けビズリーチで人材公募、先進モデルとして官公庁全体への波及目指す

農林水産省が農林水産業のDXに向けビズリーチで人材公募、先進モデルとして官公庁全体への波及目指す

Visionalグループのビズリーチが運営する、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」は、農林水産省が取り組む農林水産業・食品産業のDXを推進できる人材の公募を発表した。期間は2020年12月8日から2021年1月4日まで。

農林水産省は、2019年に「デジタル政策推進チーム」を新設。同年に初めて農林水産分野のDXを推進できる人材をビズリーチ上で募集し、約900名の応募の中から2名を採用した。農林水産省では、この8月、省内のDX推進体制をより一層強化するため、「デジタル政策推進チーム」を含めた新たな組織として「デジタル戦略グループ」を設置。さらに民間のDX人材を採用することにより、農林水産業・食品産業におけるDXの早期実現を目指す。

日本の農林水産業を成長産業にするDX

日本の農林水産業は、農林漁業従事者の高齢化(基幹的農業従事者数140万人のうち7割が65歳以上)や労働力不足などに直面しており、生産基盤を強化し、生産性を向上させることが課題となっている。

今後、農林水産業を成長産業とするためには、労働集約型の「人手に頼る農業」から、デジタル技術を活用したデータ駆動型経営を通じて新たな農林水産業への変革(DX)を実現することが必要となる。

また、農林水産業のDX実現のためには、農林水産物の生産現場のほか、流通、加工、小売、外食・中食の各段階や、農山漁村を含めた「現場」におけるDXと、現場のDXを支える農林水産政策や行政内部の事務の効率化・利便性向上など、農林水産省の「業務」のDXを速やかに進めることが不可欠とした。

省内のデータサイエンティストを2024年までに100人に

政府発表の経済財政白書によると、官公庁や学校など公的機関で働くIT人材は、IT産業以外の産業全体の1%未満にすぎず、民間企業でもIT人材の獲得競争が激化している中で、優秀な人材をいかに採用するかが公的機関の課題となっている。

そのような中、農林水産省では2019年に初めて農林水産業分野のDXを推進できる人材をビズリーチで募集し、約900名の応募者の中から2名のDX人材を採用。

そして現在、民間人材の知見・経験を十分に活用して農林水産業分野のDX実現に向けたプロジェクトの企画・立案のほか、省内の業務のデジタル化や情報システムの高度化に向けた取り組みを実施。

また、データに基づく行政の推進のため、職員のデータサイエンティスト教育にも取り組んでいるという。農林水産省は、2024年までに省内のデータサイエンティストを100名に増やすことを目指しており、外部からDX人材を採用するだけでなく、組織内育成にも力を入れることでデータ活用に強い組織に成長することを目標にしているそうだ。

そして、今回新たに、農林水産業分野のDX実現を一層強力に進めるため、多様なプロジェクトの企画・立案・実行に携わる人材を公募するとともに、省内の情報システム開発に必要なIT関連業務に特化した人材を公募することとなった。今回の公募が行政のデジタル化に向けた先進モデルとなり、官公庁全体に波及していくことを目指す。

公募概要

募集職種名:「デジタル戦略グループ」配属 デジタル政策プロデューサー

  • 業務内容:農林水産業・食料産業の現場におけるDX実現に向けたプロジェクトの企画・実行。データに基づく農林水産政策の効果検証・企画立案への変革および行政事務の見直しによる国民の利便性向上・業務の効率化。その他、農林水産業のDX推進に対して有益な施策の立案等
  • 応募資格:「デジタル分野での事業推進・管理等に関する専門的知識を有すること」「デジタル分野での事業推進・管理等に従事した実務経験を5年以上有すること」「民間企業のプロジェクトでデジタル分野の知見を生かして企画・推進等の業務に携わり、成果を出した方」「大学卒業または同等の教養を有し、一定の事務調整能力(文章作成能力および関係機関との調整能力)を有すること」「当該任期を継続して勤務が可能であること」の5条件を満たす方

募集職種名:「デジタル戦略グループ」配属 システムプロデューサー/システムディレクター

  • 業務内容:DXの重要政策に係る情報システムの構築。農林水産省の重要プロジェクトに関わるシステム開発における、要件定義・工程の適正化。システム構築・運用業者および工程管理業者との調整。その他、多様な政策の遂行に必要な情報システムの構築等
  • 応募資格:「民間企業等において、情報システムに関わる企画立案、構築、管理等に携わった経験を有すること」「民間企業等において、情報システムのプロジェクトリーダーとして情報システムの内容、スケジュール管理、予算管理に携わった経験を有すること」「情報処理技術者試験のうち応用情報技術者試験(レベル3)以上の資格を有すること」「大学卒業または同等の教養を有し、一定の事務調整能力(文章作成能力および関係機関との調整能力)を有すること」「当該任期を継続して勤務が可能であること」の5条件を満たす方

労働条件

  • 任期付きの常勤の国家公務員としての採用を基本とするが、昨今の働き方を見据え、希望により、非常勤職員や業務委託契約での採用にも対応
  • 「給与」「就業時間」「待遇・福利厚生」などの詳細は公募ページに記載

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カテゴリー:GovTech
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米の銘柄判定をAI搭載スマホアプリで実現する「RiceTagプロジェクト」の実証実験が成功

米の銘柄判定をAI搭載のアプリで実現するRiceTagプロジェクトの実証実験が成功

総合米穀卸業のKAWACHO RICEと、東北地方の企業・サービスのクラウド化およびDX化を支援するヘプタゴンは12月7日、米の銘柄をAIで判定するスマートフォンアプリを開発し、実証実験に成功したと発表した。

米の流通過程において、異品種混入(コンタミ)を防止するための銘柄チェックは、資格を有した検査員が目視で行われているものの、現在の検査方法では、具体的なデータを示せないという課題があるという。

そこでKAWACHO RICEは、プタゴンと協力して、2019年夏頃にAIを用いた米の銘柄判定を行う「RiceTagプロジェクト」を立ち上げ。約1年をかけてAIの開発・実証実験を行い、検査対象からサンプリングで無作為に抽出した複数の米粒をスマートフォンのアプリで撮影するだけで銘柄を判定することに成功した。実証実験は、青森県産米4銘柄および秋田県産米4銘柄に対して行い、資格を有する検査員と同等以上の正解率を得られた。

今後は、さらなる精度の向上や判定できる銘柄を増やしていき、検査員の負担を減らすとともに、流通の過程でより正確に銘柄のチェックができるように実用化に向けて開発を進める。

KAWACHO RICEは、「すべては米からはじまる」を理念に、産地プラットフォーム米穀卸として、生産から消費までの米流通を総合的にコーディネート。

検査米をはじめ備蓄米や輸出米など多種多様な実績とノウハウを持ち、産地の有力生産者との強固な信頼関係の構築など、米作りを第一に、常にリスクヘッジを考えた栽培プランの提案・支援を実施。流通業者としても、時代の流れを敏感に察知し、取引先に最適なプランをご提案すると同時に、消費者ニーズに合わせた商品開発・販売活動も積極的に進めている。

ヘプタゴンは、「世界中の顔を知らない100万人よりも自分たちの身近な100人をクラウドで幸せにする」を経営理念に掲げ、主に東北地方の企業/サービスのクラウド化やDXの支援を実施。

地方ならではの課題を地方のことをよく知る地方の企業が解決する「ビジネスの地産地消」というビジネスモデルで、これまで200プロジェクトを超える実績を東北であげており、東北エリア初のAWS Partner Network(APN)アドバンストコンサルティングパートナーにも認定されている。

近年では、AI/IoT技術を用いた地方の企業/自治体のDX化にも力を入れており、先端技術を取り入れ成長する意欲的な企業とヘプタゴンが協力して、生産性の向上や業務の改善、新しい働き方の導入支援などを進めている。

なお、今回のAIおよびシステムのプラットフォームには、Amazon SageMakerを採用。開発環境や推論環境の構築が非常に簡単に行えるため、モデル開発に注力でき、また、KAWACHO RICEへ迅速に結果のフィードバックを行えたとしている。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Amazon Web Services / AWS(製品・サービス)KAWACHO RICE機械学習(用語)食品(用語)農業(用語)ヘプタゴン日本(国・地域)

セブン&アイが大豆たんぱく活用の代替肉を使ったハンバーグ商品をイトーヨーカドーなど約500店で発売

セブン&アイが大豆たんぱく活用の代替肉を使ったハンバーグ商品をイトーヨーカドーなど約500店で発売

セブン&アイ・ホールディングスは12月7日、大豆の加工品と畜肉原材料(牛肉)を原材料として使用した「セブンプレミアム 大豆ミートと牛肉のハンバーグ デミグラスソース」「セブンプレミアム 大豆ミートと牛肉のハンバーグ トマトチーズソース」(それぞれ税抜き298円)の発売を開始した。イトーヨーカドー、ヨークベニマル、ヨーク マート・ヨークフーズなど、傘下のスーパー約500店(2020年11月末時点)において順次発売する。

昨今、健康志向や環境意識の高まりに応えるため、畜肉に代わりうる原材料として「大豆ミート」を使用した商品の市場が拡大。大豆は栄養価が高く、植物性たんぱく質を手軽に摂取できる食材としても注目を集めているという。

ただし一方で、「大豆ミート」を使用した商品の味・食感に満足できず、よりおいしい商品を探しているという方も多いとしている。

今回の新商品は、本来の肉を食べているような味・食感・口当たりを再現した大豆たんぱくを活用した代替肉と、牛肉を使用することで、大豆ミートを食べたことがない方や、味に満足できなかった方にもおいしく食べられるよう、ふっくら、ジューシーに仕上げたとしている。

セブン&アイが大豆たんぱく活用の代替肉を使ったハンバーグ商品をイトーヨーカドーなど約500店で発売

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カテゴリー:フードテック
タグ:食品(用語)セブン&アイ・ホールディングス代替肉(用語)日本(国・地域)

洋菓子大手ユーハイムがバウムクーヘン専用AIオーブン開発、「職人のためのフードテック」掲げる

洋菓子大手ユーハイムがバウムクーヘン専用AIオーブン開発、「職人のためのフードテック」掲げる

洋菓子メーカー大手「ユーハイム」は11月30日、画像センサーを搭載し職人の技術を機械学習する、バウムクーヘン専用AIオーブン「THEO」(テオ)の開発を発表した。2021年3月4日に名古屋で開業する食の未来をテーマにした複合施設「バウムハウス」(BAUM HAUS)への実装に向け、年明けより実証実験を開始する。

ユーハイムは2020年3月、菓子製造工程に添加物を使わないため、材料メーカーと共に、加工材料から添加物の排除を実践する「純正自然宣言」を発表。純正自然の菓子作りを進めつつ生産性を高めるには、添加物のなかった頃の職人の技術の復活・継承、新たな職人の育成が欠かせないという。時間と手間を要するそれら過程のブレイクスルーとして、技術革新が相次ぐIoTやAIの技術を活用したと明らかにした。

ユーハイムが開発したTHEOは、職人が焼く生地の焼き具合を各層ごとに画像センサーで解析することで、その技術をAIに機械学習させデータ化。無人で職人と同等レベルのバウムクーヘンを焼き上げることができるとしている。

ユーハイムは、THEOをアバターインと共同開発することで、今後、菓子店間の遠隔操作や、消費者によるアバターを通じた焼成体験などの実証実験を行なう。これにより、従来の流通体系とは違うスタイルの販売ネットワークづくり、職人の技術継承、地位向上などを模索していく。

また、2021年3月開業のバウムハウスにおいてTHEOを実装したショップをオープンし、THEOで焼き上げたバウムクーヘンの販売も行う予定。国内外のフードテック系スタートアップ企業をサポートする会員組織「フードテックイノベーションセンター」(FIC)とも連係し、他社のフードテック機器との共同開発や、実証実験にも参加していく予定という。

洋菓子大手ユーハイムがバウムクーヘン専用AIオーブン開発、「職人のためのフードテック」掲げる

FICでは、会員となったスタートアップ企業のフードテック機器や新たなサービスの営業や販売を請負い、ユーハイムが得意とするお菓子や飲食のBtoB市場において展開。

FIC本部を神戸本社に設置し、洋菓子の街・神戸からフードテック機器を発信。FICに参加するメンターや大手企業からのサポートを受け、ユーハイムが用意するフードトラックにフードテック機器を載せて街の洋菓子店などに出向き、試験販売やフードテック機器のデモンストレーションを行うなどの取り組みを始めていく。

2021年には日本におけるバウムクーヘン生誕102年を迎え、ユーハイムは今まで以上に「純正自然」の菓子作りに邁進するために、「化学(添加物)の時代から、工学(IoTやAI)の時代へ」の変化を見据えて、「職人のためのフードテック」を掲げていくとしている。

カテゴリー:フードテック
タグ:IoT(用語)機械学習(用語)食品(用語)バウムハウスユーハイム日本(国・地域)

友人とのつながり・会話を楽しみつつグループ購入できる「シェア買い」の「カウシェ」が約1.8億円調達

友人とのつながり・会話を楽しみつつグループ購入できる「シェア買い」の「カウシェ」が約1.8億円調達

友人や家族などとコミュニケーションを楽しみながらグループ購入を行える「シェア買い」アプリ「カウシェ」(KAUCHE。Android版iOS版)開発・運営のX Asiaは11月30日、約1.8億円の資金調達を発表した。取引先はANRI、グローバル・ブレイン、千葉道場ファンド。調達した資金は、カウシェの機能開発、人材採用などの強化に用いる。

また、11月30日のAndroid版リリースを記念し、「Androidアプリ リリース記念キャンペーン」も開始した。先着300名限定の特別クーポン(1人1回利用可能)のプレゼントを行っている。期間は12月6日23時59分まで。

友人とのつながり・会話を楽しみつつグループ購入できる「シェア買い」の「カウシェ」が約1.8億円調達

カウシェは、ショッピングの醍醐味ともいえるコミュニケーションをオンラインで実現するアプリ。買い物可能な商品は食品や酒類を含む飲料など。

X Asia 代表取締役CEO 門奈剣平氏によると、従来ECサービスのように(ひとりだけで)目的の商品を購入できればよいという形態ではなく、ショッピングセンターやデパ地下などで魅力的な商品を偶然見つけて、「この商品、よくない?」「一緒に買おうよ!」といったやり取りやつながりを楽しみつつ、購入できるショッピング(醍醐味)アプリを目指しているという。買い物ならではの楽しさの実現のため、あえて検索機能を用意していないそうだ。

カウシェでは、購入したい商品を選び、割引価格での購入を決定後に、「シェア買いURL」情報をLINE・Twitter・InstagramなどのSNS上でシェアすることになる。この時、24時間以内に(自分以外の購入者として)友人・家族など1人以上が商品の購入を決めると「シェア買い」が成立し、価格の最大70%引きの値段で商品を入手できる(商品により割引率は異なる)。24時間以内に「シェア買いが成立しなかった場合」は、全額返金となる。なお、シェア買いは匿名参加も可能で、個人情報を他の希望購入者に明かすことなく買い物を行うこともできる。

シェア買いが成立した製品については、個別決済・個別配送が行われるため、集金や割り勘などの手間がない。9月25日よりApple Payに対応し、iOS版の場合よりスムーズに買い物を楽しめる。

友人とのつながり・会話を楽しみつつグループ購入できる「シェア買い」の「カウシェ」が約1.8億円調達

2020年4月創業のX Asiaは、カウシェ(iOS版)を2020年9月より提供開始。リリース初日に1000リットル以上の水が「シェア買い」されたという。iOS版リリースから現在までに、購買者数が約4倍に増えたほか、カウシェ掲載商品数は1500点以上に到達。より多くの方に「シェア買い」購入体験を届けたいとしている。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:X Asiaカウシェ資金調達(用語)食品(用語)ネットショッピング / eコマース(用語)日本(国・地域)

新方式植物工場のプランテックスが農業機械大手クボタから資金調達、大規模マザー工場を建設

新方式植物工場のプランテックスが農業機械大手クボタから資金調達、大規模マザー工場を建設

人工光型植物栽培装置「Culture Machine」および植物成長管理システム「SAIBAIX」の開発を手がける植物工場スタートアップのプランテックスは11月30日、第三者割り当て増資による資金調達を発表した。引受先は、農業機械メーカー大手のクボタ

今回調達した資金は、同社事業の旗艦となる新方式植物工場(マザー工場)を建設・運営するための資金として活用。マザー工場の建設・運営を通じて、同社植物生産システムが、効率的・安定的であることを実証する。またクボタとの連携を強めることで、植物工場の企画・建設事業を国内外で推進する。

同社では、2019年より東京都中央区京橋に密閉方式の大型栽培装置を設置し、葉物野菜を生産。その野菜は、東京都内の大手スーパーマーケットで販売され、買い物客から高い評価を得ているという。今回調達した資金を活用してマザー工場を建設・運営し、野菜の生産量を拡大する。

世界初のクローズド・タイプ(密閉方式)の植物栽培装置「Culture Machine」。物の量産に最適な型装置タイプの「Type M」

世界初のクローズド・タイプ(密閉方式)の植物栽培装置「Culture Machine」。物の量産に最適な型装置タイプの「Type M」

棚ごとに機密・断熱されており、環境パラメーターを個別に制御可能

棚ごとに機密・断熱されており、環境パラメーターを個別に制御可能

密閉方式の栽培装置のプロトタイプ

密閉方式の栽培装置のプロトタイプ

また同社では、小型栽培装置を多数設置した植物栽培研究所(仮称)の設立を予定。大学、企業、研究機関と連携し、栽培品種の多様化、機能性野菜や薬用植物などの高付加価値植物の栽培に関する研究開発を加速。プランテックスは、密閉方式の栽培装置を用いて、従来の植物工場にはできない植物生産を実現し、植物工場産業を革新するとしている。

Culture Machineの小型装置「Type XS」。サイズは1.8×2.0×1.6mで、植物の栽培環境の条件の研究開発を小回りよく進める際に最適

Culture Machineの小型装置「Type XS」。サイズは1.8×2.0×1.6mで、植物の栽培環境の条件の研究開発を小回りよく進める際に最適

小型栽培装置を多数設置した植物栽培研究所(仮称)のイメージ

小型栽培装置を多数設置した植物栽培研究所(仮称)のイメージ

クボタは2019年6月、「イノベーションセンター」を立ち上げ、国内外のスタートアップ企業への出資や、協業交渉などを推進。プランテックスとの連携を強め、人工光型植物工場の事業化を共に推進することで、食料生産の効率化・供給安定化の実現に貢献する。

プランテックス独自開発の栽培装置Culture Machineは、栽培棚ごとに独立した密閉方式を採用し、装置内部に空調や養液循環システムを組み込んでおり、これにより各棚の栽培環境を高精度に制御可能。同社では、用途別に植物工場向けの大型栽培装置Type M、研究開発向けの小型栽培装置Type XSの2種類を提供する。

まず、大型栽培装置を用いることで、一般的な人工光型植物工場に比べ、生産の安定性と面積あたりの生産性を同時に高めることが可能。また、栽培装置を複数台並べることで、同一工場内で複数の栽培環境を設定できるため、一般的な人工光型植物工場では難しかった多品種栽培に対応できる。

また小型栽培装置を用いて、機能性野菜や薬用植物などの高付加価値植物の栽培に関する研究開発を実施。栽培環境を高精度に制御することで、植物の栄養成分や薬用成分を高めることを目指しているという。

さらにプランテックスの小型栽培装置と大型栽培装置とは、独自開発の植物成長管理システムSAIBAIXと連動することで、栽培環境および植物生育に高い再現性を備える。その結果、小型栽培装置で見出した高付加価値植物の栽培条件を、大型栽培装置による植物生産にただちに適用可能という。これら同社の栽培装置を用いることで、研究開発から生産までをシームレスにつなげられるとしている。

センサー、ソフトウェア、コントローラーからなる、植物成長制御システム「SAIBAIX」を開発。電気・種・CO2・肥料・水といったインプットと、植物成長というアウトプットを紐付けたシステムとなっており、センサー測定値・コスト指標値・植物の成長指標値をリアルタイムでコントロールできる

センサー、ソフトウェア、コントローラーからなる、植物成長制御システム「SAIBAIX」を開発。電気・種・CO2・肥料・水といったインプットと、植物成長というアウトプットを紐付けたシステムとなっており、センサー測定値・コスト指標値・植物の成長指標値をリアルタイムでコントロールできる

植物工場は、「省スペース・省資源で農村・都市を問わず、異常気象等の外部環境に左右されることなく、食と健康と安全・安心を提供できる」能力を特徴としている。食糧不足や環境問題など人類が抱える諸課題の解決に貢献する可能性を持つ一方、実用化して間もないことがありその生産技術は発展途上にあるという。

プランテックスは、高度なスキルを持つエンジニアリング企業として、植物工場の可能性を引き出した植物栽培装置と植物成長管理システムを開発するとともに、植物生産事業および研究開発事業の両面で利用されるプラットフォームを、様々な産業界に提供する。

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カテゴリー:フードテック
タグ:クボタ(企業)資金調達(用語)食品(用語)農業(用語)プランテックス日本(国・地域)

フェイクミートの「ネクストミーツ」が焼肉チェーン49店舗で日本初の焼肉用代替肉として販売開始

フェイクミートの「ネクストミーツ」が「焼肉ライク」で日本初の焼肉用代替肉として販売開始

「焼肉のファストフード」をコンセプトにした「焼肉ライク」は11月26日、ネクストミーツによる大豆を用いた焼肉用代替肉「NEXTカルビ 50g 290円(税抜)」と「NEXTハラミ 50g 310円(税抜)」を国内全49店舗で販売すると発表した。販売開始は12月14日から。焼肉店での焼肉用代替肉の取扱いは日本初。

「NEXTカルビ」と「NEXTハラミ」は、10月23日から渋谷宇田川町店で先行販売。11月1日から新橋本店、新宿西口店、赤坂見附店、上野店でも販売開始したところ、想定以上の反響を得たことから全店舗でも販売を決定した。

焼肉ライクは、未来の焼肉を考えた時に、1カテゴリーとして代替肉があってもおかしくないと考えているという。代替肉について聞いたことがあったり、興味があっても実際に食べたことがないという方は多く、お肉が食べれない方でも気軽に焼肉を楽しめるよう提供するとしている。

今回の焼肉用代替肉(フェイクミート)は、ネクストミーツが開発。植物性タンパク質(大豆)を原料としたプラントベース食品で、一般的な焼肉と比べると脂質が半分以下で、タンパク質は約2倍になるとしている。

2019年4月設立の焼肉ライクは、「1人1台の無煙ロースター」を導入し、自分のペースに合わせて好きな部位を好きなだけ自由に楽しめる焼肉ファストフード店。「1人でも色々な部位を注文できる」「女性1人でもお店に入りやすい」「提供3分以内だから時間に余裕がなくても行ける」といった焼肉の常識を覆す、まったく新しい焼肉の楽しみ方を提供するとしている。国内49店舗、海外9店舗展開(12月7日オープンの名古屋伏見店含む)

フェイクミートの「ネクストミーツ」が「焼肉ライク」で日本初の焼肉用代替肉として販売開始

「NEXTカルビ 50g 290円(税抜)」と「NEXTハラミ 50g 310円(税抜)」販売店舗

  • 東京都:新橋本店/赤坂見附店/田町芝浦店/渋谷宇田川町店/新宿西口店/新宿南口店/五反田西口店/目黒東口店/上野店/池袋東口店/秋葉原電気街店/神保町店/御茶ノ水店/飯田橋店/高円寺店/吉祥寺南口店/立川南口店/町田北口店/北千住店/東久留米店/立川通り店/八王子楢原店
  • 千葉県:松戸南花島店/船橋ららぽーと前店
  • 神奈川県:横浜鶴屋町店/海老名さがみ野店/横浜荏田店/川崎店/溝の口店/平塚四之宮店/相模原若松店
  • 埼玉県:大宮西口店/大宮東口店
  • 群馬県:前橋天川店
  • 茨城県:守谷サービスエリア店上り店
  • 京都府:京都河原町蛸薬師店
  • 大阪府:天満橋店/天満関テレ前店/大阪福島駅前店/近鉄鶴橋駅店/堺東店
  • 兵庫県:神戸三宮店/尼崎店
  • 静岡県:静岡呉服町店
  • 愛知県:名古屋伏見店
  • 新潟県:新潟駅前店
  • 岡山県:さんすて岡山店
  • 熊本県:熊本下通店
  • 福岡県:天神西通り店

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カテゴリー:フードテック
タグ:食品(用語)代替肉(用語)ネクストミーツ日本(国・地域)

おやつのサブスク「snaq .me」のスナックミーがおつまみサブスク「otuma .me」をローンチ

おやつのサブスク「snaq .me」のスナックミーがおつまみサブスク「otuma .me」をローンチ

おやつのサブスクサービス「snaq .me」(スナックミー)を運営するスナックミーが、11月23日よりおつまみのサブスクリプションBOX「otuma .me」(オツマミー)の販売を開始した。

otuma .meは新型コロナウイルスの感染拡大により、自宅での「宅飲み需要」が増えたことがきっかけで誕生したサービス。2週間または4週間に1度、おつまみ7種類の入ったBOXが自宅のポストに送付される。現在用意しているおつまみは全50種類。理論上の組み合わせは1000万通りあるため、お酒の種類と掛け合わせれば長期的にも飽きずに楽しめそうだ。ちなみに会員登録時に「嫌いな食べ物」を入力できるため、それを避けたラインナップで届けてもらえるのもうれしいポイント。価格は1BOXあたり税込1980円(送料込み)。

おやつのサブスク「snaq .me」のスナックミーがおつまみサブスク「otuma .me」をローンチ

扱っている商品はsnaq .me同様、素材にこだわり人工添加物を使用せずオールナチュラルがメイン。たとえばドライスライスサーモンは北海道産の新鮮な鮭を味わえるよう、昆布・かつお・しいたけの3種の出汁と、さんま魚醤・米黒酢といったナチュラルな調味料で味付けしている。現在はジャーキーやドライフルーツなどの乾き物がメインだが、今後はレトルトや缶詰などのおつまみも加わる予定だ。

同サービスの今後の展開についてスナックミー代表取締役の服部慎太郎氏は、「snaq .meと同様にブランドを育てていきながら、食品・飲料メーカーとのコラボレーションなどとの共同開発も検討している。お酒とのペアリングに最適なおつまみやアルコールドリンクなどを開発し、晩酌の楽しみを広げていきたい」と話す。

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カテゴリー:フードテック
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暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.11.8~11.14)

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.11.8~11.14)

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年11月8日~11月14日の情報をまとめた。岩手銀行のマイナンバーカードとスマホによる電子契約実証実験、GaudiyとMantraがブロックチェーンを活用したマンガAI翻訳システムを共同開発、大手オリーブオイルブランドがトレーサビリティにIBM Food Trustを採用について取り上げる。

岩手銀行、マイナンバーカードとスマホによる電子契約実証実験にIBM Blockchain Platformを採用しブロックチェーン技術を拡充

岩手銀行は11月13日、ブロックチェーン技術を活用したマイナンバーカードとスマートフォンによる電子契約の実証実験を開始したことを発表した。法人、個人を問わず幅広い顧客を対象とする、マイナンバーカードを活用した電子契約環境の構築を目指し、その有効性の検証を行っていく。

菅新政権の発足により高まるペーパーレス、押印レス、非対面ビジネスへの社会的ニーズに対応するため、岩手銀行は、政府が普及促進を進めるマイナンバーカードを活用した電子契約環境の提供を目指す。

実証実験は、フィッティング・ハブ(FTH)日本IBM日本電気(NEC)が提供する電子契約実証実験環境において行われる。FTHが実証実験のスキーム全体を管理し、電子契約にはHyperledger FabricをベースにIBMが提供するIBM Blockchain Platformと、NECが提供するマイナンバーカード認証サービスを利用する。

電子契約にブロックチェーン技術(スマートコントラクト)を活用し、スマートフォン上で契約可能とするマイナンバーカードで法人契約を実現する。法人と法人、法人と個人の契約、各種申込など、幅広い契約形態に対応する。実証実験の環境構築を2020年11月から2021年3月までに行い、2021年4月から検証を実施する予定となっている。

マイナンバーカードを活用した法人契約では、法人から特定の個人(法人代表者など)へ電子契約権限を委任する。委任された個人のマイナンバーカードによる電子署名で法人契約を締結し、契約者の厳格な本人確認も同時に行うという。

電子契約は、金銭消費貸借契約などの当事者の一方だけが相手方に対して債務を負う片務契約、当事者双方に履行責任が発生する売買契約、請負契約などの双務契約に対応する。法人と法人、法人と個人など、顧客相互の契約や各種申込にも利用できる。片務契約スキームに対応することで、各種サービス申込など幅広い電子化にも対応可能という。

実証実験では、従来のICカードリーダーに替えてスマートフォンアプリでも電子契約を実現する。PCとスマートフォンアプリの連携により、必要に応じてPCで細かな契約内容を確認するなど、よりスマートな契約手続きが行えるようになる。

電子契約にブロックチェーン技術を活用することで、スマートコントラクトによる契約処理が可能になる上、契約の改ざんが極めて困難になり、契約当事者以外の第三者による閲覧を防止できるという。

今回の実証実験では、具体的には「事業性融資における金銭消費貸借契約証書」「個人ローンにおける金銭消費貸借契約証書」「法人、個人間(お客さま間)の双務契約」に対応するという。マイナンバーカードによる電子契約に関する法的課題解決に向けたシステム要件を検証する。また、ペーパーレス融資スキームの実現可能性、その他の各種契約の実現可能性を検証していく。

岩手銀行は、ICカードや電子証明書の管理を不要とする独自のスキームを提唱し、他行、他社、関係機関への参加を広く呼びかけ、検証を進めていく予定という。

岩手銀行、マイナンバーカードとスマホによる電子契約実証実験にIBM Blockchain Platformを採用しブロックチェーン技術を拡充岩手銀行と日本IBMは、ブロックチェーン活用の実証について2017年から共に取り組んでおり、電子交付サービスにおいてブロックチェーン技術を活用している。今回の実証実験は、電子書類の署名付与にマイナンバーカードを利用する方式を検証するもの。

IBM Blockchain Platformは、エンタープライズ用途を意図したオープンソース・ブロックチェーン。Hyperledger Fabricの商用配布として、SLA(サービス品質保証)と24時間365日サポートを提供する。また開発向けに、Visual Studio Code(VS Code)拡張機能を使用し、スマートコントラクト開発とネットワーク管理をスムーズに統合。スマートコントラクトは、JavaScript、Java、Go言語で開発できるという。

GaudiyとMantraがブロックチェーンを活用したマンガAI翻訳システムを共同開発、日本のマンガの多言語翻訳と海外販売のコストを低減

エンターテインメント業界のDXを推進するGaudiy(ガウディ)は11月12日、マンガ特化の機械翻訳技術やマンガ専用の多言語翻訳システム「Mantra Engine」を開発するMantra(マントラ)との業務提携を発表した。AIとブロックチェーンを活用し、マンガの多言語翻訳と海外販売を低コスト・高速に実現するサービスの共同開発を開始する。

Gaudiyは、週刊少年ジャンプ(集英社)で連載された人気マンガ「約束のネバーランド」へのブロックチェーン活用の公式コミュニティサービスの提供など、人気マンガや有名キャラクターなどIP(Interllectual Propery。知的財産権)独自のコミュニティを提供する事業や、ブロックチェーンを活用したNFT(Non Fungible Token。ノン ファンジブル トークン)電子書籍を展開している。

GaudiyとMantraがブロックチェーンを活用したマンガAI翻訳システムを共同開発、日本のマンガの多言語翻訳と海外販売のコストを低減
今回の業務提携では、GaudiyはマンガAI翻訳技術を持つMantraと共同で、コミュニティを活用したマンガ翻訳サービスの共同開発を開始する。日本のマンガは、アジア・欧州・米国など海外で人気が高まっているものの、現状、翻訳される作品は一部の人気マンガのみ、かつ翻訳言語も英語が中心であり、海外では海賊版の翻訳マンガが多く出回っているという。これは、日本のIPビジネスとしても大きな機会損失であることから、両社はどんな作品でも即時性の高い多言語翻訳と海外販売が簡単に実現できる仕組みを構築し、日本のIPビジネスのさらなるグローバル成長の後押しを目指すとした。

共同開発するサービスの概要

GaudiyとMantraがブロックチェーンを活用したマンガAI翻訳システムを共同開発、日本のマンガの多言語翻訳と海外販売のコストを低減
両社の目指すサービスは、マンガAI翻訳技術とトークンエコノミー(コミュニティ)を通して、即時性の高い、マンガの多言語翻訳と海外販売までを一貫して実現するという。

固有名詞が多く、また作品特有の言い回しが多いマンガの翻訳は、通常の翻訳よりも難易度が高く、Mantraが提供するMantra Engineの翻訳精度でも30~70%程度のため(言語や作品にもよる)、修正が欠かせないそうだ。そこで同プロジェクトでは、コミュニティを通して、海外ファンが様々な形で翻訳結果の修正に参加・協力できる仕組みを作り、Mantra Engineの精度を向上させていくという。

さらに、翻訳に貢献したファンには、マンガの販売収益の一部を貢献度に応じて分配するなど、トークンエコノミーを活用する。ブロックチェーンを活用し、適正な価値還元を実現させていく、海外ファンが販売にも積極的に参加・貢献が可能なエコシステムを構築する。

Gaudiy-DID-System

これらの貢献は、Gaudiy提供の「Gaudiy-DID-System」において、個人の貢献スコアにも反映されるという。

Gaudiy-DID-Systemは、ブロックチェーンを活用した分散ID(DID。Decentralized IDentity)管理システム。Gaudiy-DID-Systemを導入しているサービスの場合、新規システム開発などを行うことなく異なる企業・サービス間の相互連携が可能になり、特定のIPコンテンツのクロスメディア施策を実施できる。また、IPが提供する他サービスにおいても貢献スコアに応じた異なる体験が提供可能という。

Mantraは、出版社やマンガ(コミック)の制作・配信事業者を対象にした法人向けクラウドサービスMantra Engineを開発・提供するAIスタートアップ。東京大学情報理工学系研究科出身で、機械翻訳や自然言語処理が専門の石渡祥之祐CEOと、画像認識が専門の日並僚太CTOが、2020年1月に設立した。

法人設立前の2019年には、東京大学FoundX Founders Program、IPA未踏アドバンスト事業、東大IPC 1st Round(東京大学協創プラットフォーム開発の起業支援プログラム)、AIスタートアップの登竜門であるHONGO AI 2019ファイナリスなどに採択・選出された。

2018年5月設立のGaudiyは、「IPコンテンツがライフインフラになる『ファン国家』を共創する」をミッションに掲げ、エンターテインメント業界にイノベーションを起こすことを目指す、ブロックチェーンスタートアップ。音楽・ゲーム・マンガ・アニメ・アイドルなど、日本の代表的なエンタテイメント領域のDXを推進し、日本が誇るIPコンテンツから世界規模のビジネス展開を目指している。

両社は共同で、多言語翻訳と海外販売を低コスト化するサービスを提供し、日本のIPビジネスを海賊版から守り、さらなる海外市場の発展と成長を目指していく。

大手オリーブオイルブランドが、トレーサビリティ・真贋・品質の保証のため、ブロックチェーン利用の食品追跡システム「IBM Food Trust」を採用

オリーブオイルブランド大手、スペインのConde de BenaluaとアルゼンチンのオリーブオイルサプライヤーRolar de Cuyoは11月11日、ブロックチェーンを活用したIBMの食品追跡システム「IBM Food Trust」を利用し、オリーブオイル製品のトレーサビリティ・正規品であること(偽造品ではないこと)を示す真正性(Authenticity)・品質などの情報を消費者に提供するサービスの提供開始を発表した

IBM Food Trust

IBM Food Trustは、IBMとWalmart(ウォルマート)の取り組みによりスタートした食品トレーサビリティシステム。ブロックチェーン技術であるHyperledger Fabricをベースに開発された。国内でも伊藤忠が同システムを用いたコーヒー豆のサプライチェーンに利用するなど、様々な食品の由来と流通経路を明らかにするために用いられている。

オリーブオイル業界では、「TERRA DELYSSA」ブランドを製造するチェニジアを拠点とするCHOと、2020年に参加したイタリアの製油工場I Potti de FratiniがすでにIBM Food Trustを活用しており、両社はこれに追従する形になる。グローバル展開をするオリーブオイル大手ブランドは、ブロックチェーン技術を用いて自社オリーブオイルに対する消費者の信頼を高め、より効率的で透明性の高いサプライチェーンの構築に取り組み始めているという。

大手オリーブオイルブランドが、トレーサビリティ・真贋・品質の保証のため、ブロックチェーン利用の食品追跡システム「IBM Food Trust」を採用

消費者は、各ボトル付属のQRコードをスキャンするだけ

IBM Food Trustにより、消費者は、オリーブオイルの各ボトルに付いているQRコードをスキャンすることで、オリーブの栽培場所、オイルに加工した製油工場、流通経路、販売店舗といった、オリーブオイルの生産・流通行程を確認できる。また、オリーブがどこで収穫され、搾油されたかを画像で見ることが可能なほか、農家や作業員などの生産者を知ることもできる。

さらには、各ボトルに入っているオイルがどのような基準を満たしているかを確認できる。例えば、オリーブがエキストラバージンオリーブオイルのラベル付けに必要な基準に沿って加工されているかどうかや、オーガニックであることなどをトレース可能だ。

生産者側のメリット

IBM Food Trustは、生産者側にもメリットがある。サプライチェーンメンバーは、より信頼性と効率性を高めた協力作業のもと、取引の永久的なデジタル記録を作成し、許可された関係者間で情報を共有可能となる。IBM Food Trust内のデータを共有することで、食品の鮮度保証、保管時間の管理、無駄な廃棄物の削減に活用可能になるという。

Bolar de Cuyoディレクター、Guillermo Jose Albornoz(ギレルモ・ホセ・アルボルノス)氏は「私たちの使命は、消費者に高品質のオリーブオイルを提供し、本物の健康的な製品を楽しんでいただくこと。我々がブロックチェーン技術を利用する目的は、世界中のオリーブオイルパッカーの信頼を得て製品を選んでもらうようにすることです」と述べている。

また、IBM Food Trustを先行導入したCHOアメリカのセールスマネージャーであるChris Fowler(クリス・ファウラー)氏は、「年初にQRの付いたトレーサブル・オリーブオイルのボトルを店頭に並べるようにしてから、当社プレミアム・オリーブオイルのTERRA DELYSSAブランドは需要が急増している。米国とカナダの消費者は現在、1万軒を超える食料品店やオンラインショップでTERRA DELYSSAのプレミアムエキストラバージンオリーブオイルを購入できるようになった」と語っている。

最近のIBM Institute for Business Valueの調査によると、73%の消費者が、購入製品の完全な透明性にプレミアムを支払うことを明らかにしているという。

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カテゴリー: ブロックチェーン
タグ: 岩手銀行オープンソース / Open Source(用語)Gaudiy(企業)食品(用語)DID / Decentralized IDentityHyperledger Fabricマンガ(用語)Mantra(企業)

新興市場の貧困と食糧安全保障に食糧保存技術で戦いを挑むApeelが31億円の増資を獲得

社会を変革するほどのパワーを秘めた食糧保存技術の本格テストとして、カリフォルニア州サンタバーバラを拠点とする Apeel Sciences(アピール・サイエンセズ)は、アジア、アフリカ、中南米の選ばれた市場の配送センターに、革新的な食品処理とサプライチェーン管理サービスを提供する。

その目標は、栄養失調に最も陥りやすい地域住民の一員である農家の食糧不安を軽減することだと、Apeelの最高責任者James Rogers(ジェイムズ・ロジャーズ)氏は言う。

「地球上で栽培されている果物と野菜の大半を生産しているのは小規模な農家ですが、食糧不安を抱える人たちの3分の2も、やはり農家なのです」とロジャーズ氏。

その他の人たちに比べて農家の生活が厳しい原因は、自分たちが育てた作物から最大の対価を得る能力を彼らが持たないことにあり、それは農作物が傷みやすいだめだと、ロジャーズ氏は語る。

食品廃棄を少なくする同社の保存技術を導入し、米国、デンマーク、ドイツ、スイスといった市場のApeelの既存顧客で、購入を望むバイヤーにそれを提供する。それが予想を超えるインパクトを引き起こし、大量の金が農家のポケットに入るよう改善が促されるとロジャーズ氏はいう。

「国際金融公社との共同計画は、サプライチェーンを構築することです」と彼は話す。「これには単に長持ちする農産物というだけでなく、長持ちする農産物の市場アクセスという価値があります」。

当初の市場はメキシコ、コスタリカ、ペルー、南アフリカ、ケニヤ、ウガンダ、ベトナムとなる。そこではアボカド、パイナップル、アスパラガス、そしてレモン、ライム、オレンジといった柑橘系果物がApeelの技術によって処理される。

ある意味これは、世界中の食料品店に廃棄物削減のための同社のアプローチを受け入れてもらうという、この数年間のApeelの取り組みの集大成となる。

同社は、Bill & Melinda Gates Foundation(ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団)と英国際開発庁と共同で創設されて以来ずっと、その企業理念の中心に小規模農家を据えてきた。その目的は、最新の冷蔵サプライチェーンに頼ることなく、農家が生産した果物や野菜を店頭に置ける時間を長くすることで一貫している。だがそのためには、数年間かけて技術を洗練させ、小売りネットワークを構築する必要があった。

目指す未来のために、Apeelはこれまでに3億6000万ドル(約380億円)を調達した。その中には、2020年の初めにクローズした2億5000万ドル(約260億円)のラウンドも含まれる。

ロジャーズ氏は、国際市場からの需要を、地元の輸出業者を通じて地域の生産者に届けることを夢見ている。

冷蔵サプライチェーンを使わなければ、小規模農家は供給過多の地元の市場でしか作物を売ることができない。農作物は痛みやすいため、果物や野菜を輸出することができず、それが農業で生活を支えている人たちの貧困を悪化させ、食品ロスや食品廃棄を助長する市場力学を生み出してしまうのだとApeelは話す。

「持続時間を延ばすことで、小規模生産者は国際市場に道を拓き、その天然資源が本来的に持つ経済的価値を獲得できるようになります」とロジャーズ氏。

国際市場からの新たな需要を呼び込み、Apeelの技術で処理した農作物でそれを満たすことができれば、農作物の価格は理想的に引き上げられ、農家の収入が増えるという好循環が生まれる。少なくともそれが、つい最近、地域流通センターにApeelの技術を導入したロジャーズ氏のビジョンだ。

Apeelの技術導入で最も儲かるのは、海外のバイヤーに農作物を販売する中間業者ではないかとの心配もあるが、ロジャーズ氏はそのシナリオを否定する。

「この取り組みの目的は、小規模生産者を直接的に輸出業者のサプライチェーンに組み込むことです。共同対価を創出するためのテクノロジーは一般化してきましたが、その協力体制を使うことで、ごく小規模な生産者の対価を引き出すことができます」と彼は話す。「供給品をどこか別の場所から調達しなければならない市場で、農作物の需要を高めるのです。輸出業者は、数量ごとの割り前を得ています。対価を増やすには、取り扱う数量を増やすしかありません。彼らは、輸出に適した品物の量と需要を増やしたいと考えます。そこで流れが逆転します。需要の問題から、供給の問題に切り替わるのです。そして彼らは、商品をどんどん送り込むよう人々に奨励せざるを得なくなります」

この国際的な役割を果たすための資金として、Apeelはおよそ3000万ドル(約31億3000万円)の資金を International Finance Corp.、Temasek、Astanor Venturesなどの投資会社から新たに調達した。

「革新的な技術は、新興市場の発展の流れを変え、生活、経済、そしてこの場合は食糧が守られます」と国際金融公社の暫定業務執行取締役および上級副社長および最高執行責任者のStephanie von Friedeburg(ステファニー・フォン・フリードバーグ)氏は声明の中で述べている。「私たちはApeelとパートナー関係を結び、食糧廃棄を半分まで減らし、持続可能性を高め、気候変動を緩和できる画期的な技術に投資できることを嬉しく思っています」。

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カテゴリー:フードテック
タグ:Apeel Sciences資金調達食品

画像クレジット:Getty Images under a Mariana Greif Etchebehere/Bloomberg license.

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(翻訳:金井哲夫)

エビ・甲殻類の細胞培養肉開発スタートアップShiok Meatsに東洋製罐グループが出資

エビ・甲殻類の細胞培養肉開発スタートアップShiok Meatsに東洋製罐グループが出資

総合包装容器メーカーの東洋製罐グループは10月8日、エビ・甲殻類の細胞培養開発に取り組むシンガポールのスタートアップ企業Shiok Meats(シオック・ミーツ)に出資したと発表した。

Shiok Meatsの今回の資金調達はシリーズAで、調達総額は1260万ドル(約13億3500万円)。リード投資家は、オランダの投資ファンドAqua Spark。また東洋製罐グループのほか、SEEDS Capital(シンガポール企業庁Enterprise Singaporeの投資部門)、リアルテックホールディングスなどが参画した。

Shiok Meatsは2022年に培養エビのミンチ肉の商業販売を目指しており、今回調達した資金は、シンガポールに建設予定となっている世界初・商用規模の細胞培養パイロットプラントの建設、運営資金にあてられる予定。

また東洋製罐グループは、食生活を支えるインフラ企業として、今回の出資によってShiok Meatsや他の共創パートナーとともに、培養エビ・甲殻類の商用生産・供給を進め、アジア地域における豊かで持続可能な食生活の実現を目指す。

Shiok Meatsの培養エビのミンチ肉を使用したシュウマイ

Shiok Meatsの培養エビのミンチ肉を使用したシュウマイ

Shiok Meatsは、幹細胞の研究者Dr. Sandhya Sriram(CEO)とDr. Ka Yi Ling(CTO)が2018年8月に共同設立した、シンガポールのフードテック・スタートアップ。エビ・甲殻類から幹細胞を分離する独自技術を有しており、クリーンなエビ・甲殻類の細胞培養製造によって、アジア地域が抱える食糧・タンパク質危機や気候変動、海洋汚染の社会課題解決を目指している。

東洋製罐グループは、1917年(大正6年)創業以来100年間で培った容器の技術やノウハウを活用し、ひとりひとりが抱える社会課題を解決し、持続可能な未来の暮らしを創るオープンイノベーションプロジェクト「OPEN UP! PROJECT」を2019年より実施。2年目となる2020年は、共創プロジェクトを促進するため、共に社会課題の解決に取り組むスタートアップ企業への投資を開始しており。今回のShiok Meatsへの投資は、その1号案件となる。

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タグ: Shiok Meats東洋製罐グループバイオテックシンガポール細胞培養食品

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お寿司で食べれる細胞培養サーモンの予約受付を限られたシェフに対してWildtypeが開始

培養サーモンのスタートアップであるWildtype(ワイルドタイプ)は、選ばれたシェフに対して予約注文の受付を始めた。

同社創設者の話では、商品化されるのはまだ5年も先の話だが、生食可能な寿司グレードのサーモンをメニューに加えたいと考える世界の選りすぐりのシェフをパートナーにしたいと考えている。

「今すぐ発売するわけではありません。次なる試行段階に入ったというニュースを発信しているのです」と、共同創設者のJustin Kolbeck(ジャスティン・コルベック)氏はいう。彼は米国の元外交官で、アフガニスタン駐在中にまず目にした食料安全保障の問題に対処したい(未訳記事)と、この会社を立ち上げた。

「寿司屋でみなさんが注文するのは巻物、握り、刺身です」と彼は話す。そのため、Wildtypeの製品は、寿司用に寿司職人が準備する柵の形でサーモンを提供することになる。「寿司職人は280グラムから400グラムほどのサクを魚から切り出します」とコルベック氏。「そこから少しずつ握り用に切り出し、残りは巻物に使います。私たちは最初の製品を、この3つすべてのフォームファクターに対応できる形にデザインしました」。

その工程は、単に細胞を培養するよりも難しい。コルベック氏ともう1人の共同創設者Arye Elfenbein(アリー・エルフェンベイン)氏によれば、同社は、天然サーモンの味と食感を再現するための、筋肉組織と脂肪の両方が成長できる足場材料構築技術を独自に開発したという。

「私たちは、細胞株を自社で開発しようとしています。足場材料を開発し、培養に必要な栄養素を開発し、細胞を成長させるための培養装置も開発しています」とコルベック氏は話す。

Wildtypeの寿司グレードの培養サーモン。画像クレジット:Arye Elfenbein/Wildtype

培養肉産業が、その可能性を最大限に引き出せるようになるには、各企業はサプライチェーンの中の1つの要素に特化したビジネスを進める必要があると、彼らは話す。

すでに、Future Fields(フューチャー・フィールズ)などは、培養食品サプライチェーンの特定の用例に集中するための資金を調達している。Wildtypeもその路線でいくと、エルフェンベイン氏はいう。

「私たちが作り上げたものには、組織化と成熟のための適正な信号を細胞に与える能力に特殊性があります」とエルフェンベイン氏。「これは、今私たちが取り組んでいるサーモンだけでなく、他の種にも適用できます。基本的に私たちは、場所ごとに細胞が脂肪を蓄えられるよう、つまり、線状になるように、場所ごとに適正な誘導が行える足場材料を作っているのです」。

すでにWildtypeは、栄養素の面で、そして利用者がより健康であるとの理由でサーモンを選ぶ根拠となるオメガ3脂肪酸の面で引けを取らない寿司グレードのサーモンの培養に成功している。

現在Wildtypeはサンフランシスコ、ポートランド、シアトルのレストランと協力関係にあるが、米国の他の地域でもシェフを探している。

コルベック氏は、今が同社の培養肉には最良の時期だと考えている。現在の消費者は、海産物のサプライチェーンが崩壊し、店ではより多くの人たちが食肉コーナーから海産物コーナーへ引き寄せられるようになっている現状に気づき始めているからだ。

魚の不正表示から陸上養魚、海洋養殖、環境劣化に関連する問題、さらには魚に含まれる化学物質の危険性などが影響し、魚を買い求める客たちは、自分が口にする魚の出所の情報に気を遣うようになってきた。

「このニュースは、私たちは産業としての寿司に賭けている、そしてそこで大きな波紋を起こす(洒落ですが)ということを伝えるものです」とコルベック氏は話していた。

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カテゴリー:フードテック

タグ:Wildtype 細胞培養 食品

画像クレジット:Arye Elfenbein / Wildtype

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(翻訳:金井哲夫)

Shelf Engineはスーパーの食品廃棄を減らすアイデアで13億円を調達

シアトルを拠点とするShelf Engine(シェルフ・エンジン)は、最初の数カ月間、スーパーや食料品店での在庫処理の最適化を業務としてきたが、まったくの無名だった。

4年ほど前、共同創設者のStefan Kalb(ステファン・キャルブ)氏とBede Jordan(ビード・ジョーダン)氏がソルトレークシティーの外れにスキー旅行に出かけたときから、米国の食品廃棄問題に何か具体的な手立てはないものかと話し合うようになった。

キャルブ氏は、いくつもの企業を創設してきた起業家だ。最初に立ち上げたのはMolly’s(モリーズ)という食品流通企業だった。それは2019年に、HomeGrown(ホームグロウン)という会社に買収された。

ウェスタン・ワシントン大学で保険数理学の学位を取得したキャルブ氏は、世界を変えようと食品会社を立ち上げたと語る。実際、Molly’sでは健康的な食事を提唱していた。しかし、キャルブ氏とMicrosoft(マイクロソフト)のエンジニアであったビード氏がShelf Engineで取り組んでいることは、むしろインパクトというべきかも知れない。

食品の無駄は、米国民に安全で安価な食料が行き渡らないという大きな問題を助長するばかりか、環境にも悪い。

Shelf Engineは、生鮮食料品の需要予測を提供することで、この問題に対処しよう計画している。そうすることで、発注システムから非効率性を閉め出そうという考えだ。パン売り場と、特に足が早い生鮮食品の売り場では、一般的におよそ商品の3分の1が廃棄されている。Shelf Engineは店に売上げを保証し、売れ残りについてはすべて同社が代金を支払うことにしている。

画像クレジット:OstapenkoOlena/iStock

Shelf Engineは店に並ぶ特定商品の普段の売上げに関する情報から、その商品の需要がどれほどあるかを予測する。同社の利益は、供給業者に支払う商品代金と、食料品店に卸す価格との差額から得られる。

こうすることで、食料品店は食品廃棄量を減らせるのと同時に、より豊富な種類の商品を棚に並べることができるようになる。

当初Shelf Engineは、食料品店向け商品の販売で市場に乗り込んだのだが、マーケットプレイスに転向し、店の棚に陳列される特定商品の需要を予測するモデルを完成させたときから注目を集めるようになった。

ビード氏とキャルブ氏の次なる計画は、規格外農産物の小売り業者や食料品のアウトレット販売業者などの二次的販売経路の見識を高めることだ。

同社のビジネスモデルは、すでに米北西海岸地区の400ほどの店舗で実証済みであり、市場に打って出るための新たな資金1200万ドル(約13億円)も獲得したと、キャルブ氏は話す。

この資金はGaryy Tan(ゲイリー・タン)氏のInitialized、GGVからの出資だ。ちなみにGGVの業務執行取締役Hans Tung(ハンス・タン)氏はShelf Engineの役員に加わった。さらにFoundation Capital、Bain Capital、1984 Ventures、Correlation Venturesといった企業も参加している。

Shelf Engineへの投資は、Signia VenturesのパートナーSunny Dhillon(サニー・ディロン)氏がTechCrunch Extraに寄稿していたように、食料品店に新しいテクノロジーを活用するという流れに乗っている。

「食料品の利幅は常にカミソリの刃のように薄く、儲かっている食料品店と儲かっていない食料品店の差は、1ドルあたりほんの数セント程度だ」とディロン氏は書いている。「従って、食料品の電子商取引がますます受け入れられるようになるにつれ、小売業者はフルフィルメント業務(マイクロフルフィルメントセンターなど)だけではなく、顧客の玄関先まで配達してスピードと品質を確かなものにするロジスティックス(ダークストアなど)の最適化も図らなければならない」。

しかしディロン氏が提唱する、マイクロフルフィルメントセンターやダークストアを活用した配達に限った食料品ネットワークだけがすべてではない。既存の不動産や注文に応じたショッピング方法を有するチェーンにも、生鮮食料品の利益を高める道はまだまだある。

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(翻訳:金井哲夫)

細胞培養で作られた研究室育ちの豚バラとベーコンをHigher Steaksが初公開

細胞培養肉ビジネスにおいて、何が商品化の号令となるかという問いに、新興培養肉企業であるHigher Steaks(ハイヤー・ステーキス)が出した答えは、最初の製品サンプルをなんとか作り上げることだった。同社の場合それは、研究室で細胞を培養して作られたベーコンのスライスと豚バラ肉だ。

英国のケンブリッジで自己資金による運営を続けるHigher Steaksは、このサンプルを示したことで、数多ある巨額投資を受けたずっと大きな企業と台頭に張り合える地位に一気に躍り出た。

「商品化までには、まだまだやるべきことが数多くあります」とHigher Steaksの最高責任者であるBenjamina Bollag(ベンジャミナ・ボーラグ)氏は話す。「しかし、培養細胞を50パーセント使用した豚バラ製品と、研究室で細胞素材から培養した肉70パーセントを含むベーコン製品を提示できたことは、この業界に大きな意味をもたらしたはずです」。

Higher Steaksのベーコンと豚バラ肉の残りの材料は、植物由来のタンパク質と脂肪とデンプンを混ぜ合わせたもので、これが細胞素材のつなぎになっている。商品化までの第一段階に漕ぎ着けるために、Higher Steaksは、匿名のシェフの専門知識を借りて、培養肉を本物の豚バラ肉とベーコンの味に近づける調合法を編み出した。

Higher Steaksの研究開発責任者ラス・ヘレン・ファラム氏(左)と、最高責任者のベンジャミナ・ボーラグ氏(右)。画像クレジット:Higher Steaks

現段階では、この試験品はHigher Steaksが将来何をするかというより、今何ができるかを示すためのものだとボーラグ氏はいう。

「これが将来の足場材料になります」とボーラグ氏。「これは私たちの肉に何ができるのか、私たちが今何をしているのかをはっきりと示すものです。将来、それが私たちの足場材料となります」。

Tantti Laboratories(タンティ・ラボラトリーズ、台湾創新材料会社)、Matrix Meats(メイトリックス・ミーツ)、 Prellis Biologics(プレリス・バイオロジックス)など数多くの企業が、同様にバイオ素材を使ったナノスケールの足場材料を開発している。それは、筋肉の繊維組織に相当する培養構造体の骨組として利用できる。

Higher Steaks、Memphis Meats(メンフィス・ミーツ)、Aleph Farms(アレフ・ファームズ)、Meatable(ミータブル)、Integriculture(インテグリカルチャー)、Mosa Meat(モサ・ミート)、Supermeat(スーパーミート)といった企業は、その製品を商業展開するにあたりTantiiやMatrixなどの企業の力を借りる必要があるのだが、動物の細胞を育てるために必要な細胞培養のコストを下げるためには、その他にThermo Fisher(サーモ・フィッシャー)、Future Fields(フューチャー・フィールズ)、Merck(メルク)といった企業の技術にも頼らざるを得ない。

2014年以降、世界全体で30社あまりの細胞ベースの食肉スタートアップが起業し、1兆4000億ドル(約150兆円)規模の市場の一角を狙っている。

その一方で、2019年にはアフリカ豚熱ウイルスの流行により中国では全飼育数の40パーセントにあたる豚が失われたとされ、供給量が減少しているにも関わらず、豚肉の需要は高まり続けている。

「私たちの使命は、消費者が味を我慢することなく、健康的で持続可能な肉を供給することにあります」とボーラグ氏は語っている。「世界初の培養豚バラ肉とベーコンの製造は、世界中で供給不足になっている豚肉の需要に、新技術で対応が可能であることの証明になります」。

巨額の資本金を有する企業と競合することを想定してHigher Steaksは、現在、その技術の商品化を手助けしてくれる業界内のパートナーを探している。

競争力を高めるためにHigher Steaksは先日、PredictImmune(プレディクトインミューン)の元最高技術責任者であるJames Clark(ジェイムズ・クラーク)博士を招いた。

「私はずっと以前から、科学と食糧生産のミックスである培養肉に強い興味を抱いていました。2013年に私はMark Post(マーク・ポスト)氏が開発した25万ポンド(約3400万円)という世界初の培養肉でハンバーガーを調理するBBCのテレビ番組を見ました」とクラーク氏。「私は2020年の初め、Higher Steaksから声を掛けられ、何よりもその科学技術と、同社の創設者ベンジャミナ・ボーラグ氏の情熱とエネルギーに魅了されて入社したくなりました。Higher Steaksには、培養肉分野に改革を引き起こす技術があると私は確信しています。私は今のキャリアステージに達して、挑戦を求めていたのです」。

培養肉製造工程をスケールアップする目的でHigher Steaksに採用されたクラーク氏は、バイオテクノロジーと製薬分野のアーリーステージや上場企業で製品開発を指揮してきた経歴を持つ。

「ジェイムズ・クラーク博士がチームに加わったことで、Higher Steaksは大変な優位性を得ました」と、研究開発責任者のRuth Helen Faram(ラス・ヘレン・ファラム)博士は話す。「培養豚バラ肉もベーコンも、これまで一度も実際に提供されたことがありません。ウシ血清を使わない豚の培養筋肉を70パーセント含むプロトタイプの開発に世界で初めて成功したのがHigher Steaksです」。

だが、Higher Steaksの豚バラ肉やベーコンが店の棚に並んだりレストランで食べられるようになるのは、まだ先のことなので期待し過ぎないようにとボーラグ氏は釘を刺す。「今はまだ値段が1キログラムあたり数千ポンドという段階です」。

同社は2020年の末に、大規模な試食イベントを計画している。

画像クレジット:cookbookman Flickr under a CC BY 2.0 license

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(翻訳:金井哲夫)