カーネギーメロン大学発先進「触覚センシング技術」の社会実装を推進するFingerVisionが1億円のシード調達

カーネギーメロン大学発「触覚センシング技術」の社会実装を推進するFingerVisionが1億円のシード調達

FingerVisionは3月23日、シードラウンドとして、第三者割当増資による総額1億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII2号投資事業有限責任組合)。大学発の「視触覚」技術の実用化を通じロボット・機械の適用範囲を広げ、様々な社会課題を解決することを目指しており、調達した資金により経営・開発体制を強化し、触覚センシングデバイスやロボットハンド、業界向けソリューションを実用化するという。

今後、様々な分野においてロボット化・AI化の流れがさらに加速すると予想されるものの、「触覚」の⽋如が実世界におけるロボット・機械の適⽤範囲を限定されているという。そこでFingerVisionは、同社の触覚技術でロボットの⾏動⽣成能⼒を向上させることで、⼈⼿をかけて対応せざるを得なかったタスク(特に過酷・劣悪な労働環境、危険な作業など)をロボットが担えるようにする。

同社は、ロボットの活⽤範囲を広げることについて、社会システムにおける人の役割・ロボットの役割を再定義することにつながると指摘。より良い社会のあり方を実現するための具体的な解決策の1つとして、革新的かつ実用性の高い触覚技術・ロボット技術を提示し続けるとしている。

FingerVisionは、コア技術のコンセプトとして「画像(カメラ)をベースに触覚を再現する」を採用。ロボットハンドなどの指先に搭載することで、触覚(力や滑りの分布など)を知覚できるようになり、あたかも人が「手のひら」の感覚を使って物体を扱うような制御をロボットで実現できるという。

この技術は、カーネギーメロン大学において、同社取締役の⼭⼝明彦氏がロボットAIやAIベースドロボットマニピュレーションの研究を進める中で、食品など従来のロボットが扱うことが難しかった対象物を操作する研究の過程で、Christopher Atkeson教授とともに生み出したものがベースという。基礎的なアルゴリズムなどを研究をしつつ、実用性も強く意識し研究を進めた経緯から、高機能(高分解能・マルチモダリティ)でありながら、経済性に優れる実用性の高さを特徴とするそうだ。

「触覚」センサーとはいいつつも把持対象物を見る(視覚)モダリティも備えた、まったく新しいコンセプトの「視触覚センサー」であり、ロボットと組み合わせたプロセス自動化だけでなく、無限の応用可能性を持つとしている。
カーネギーメロン大学発先進「触覚センシング技術」の社会実装を推進するFingerVisionが1億円のシード調達

LiDARスタートアップLuminarがFreedom Photonics買収、高性能レーザーを手中に

自動運転車のためのビジョンベースのLiDAR(ライダー)と機械知覚技術を開発するLuminar(ルミナー)は3月21日、高性能レーザーメーカーのFreedom Photonics(フリーダムフォトニクス)を買収した。Luminarが自社の普通株式300万株(同日の株価で約4230万ドル[約51億円])を発行した。規制当局への提出書類によると、すべて株式による取引だ。

この買収は、LiDARの中核部品を垂直統合し、より正確で低コストの製品を市場に投入するためのLuminarの最新の試みだ。

「取引は第2四半期に完了する見込みで、Freedom Photonicsの高出力レーザーとその関連フォトニック集積回路技術が、当社の将来のセンサーの性能を最適化するとともに、コストロードマップを前進させることができます」とLuminarの共同創業者で最高技術責任者のJason Eichenholz(ジェイソン・アイヘンホルツ)氏はTechCrunchに語った。

市街地であれ高速道路であれ、自動運転車システムが直面する大きな問題は、遠距離にある物を見て認識する能力だ。アイヘンホルツ氏によると、AVシステムが300メートル先の道路にタイヤや人が見えるかどうかを判断するのに必要な点密度と解像度を得るためには、高出力レーザーパルスと高品質ビームが重要だが、いずれもFreedom Photonicsが得意とする部分だという。

両社の数年にわたる協力関係に続く今回の取引は、LuminarのLiDARの品質を向上させるだけでなく、同社がサプライチェーンにおけるコストをしっかりとコントロールすることを可能にする。これは、レーザーそのものが特に入手しにくいからではなく「自律性を発揮し、自動車に適した環境で求められる積極的な安全性を確保するための適切な性能パラメータを持つレーザーの入手が、かなり難しいからです」とアイヘンホルツ氏は話した。

LiDARは、自動運転システムの中で最も高価な部分の1つだ。そのため、商業化と規模拡大が難しい。コスト削減は不可欠であり、Luminarは積極的に進めている。同社は、アイヘンホルツ氏が「3本の脚」と呼ぶ3つの重要なLiDARハードウェアコンポーネント(受信機、ASICまたは処理能力、レーザー)の材料費を100ドル(約1万2000円)以下にするという目標を掲げている(レーザーは現在、Freedom Photonicsから調達している)。

Luminarはすでに、残る2本の脚のために、技術とチームを獲得済みだ。カスタム信号処理チップメーカーのBlack Forest Engineersを2017年に買収し、Luminarは受信機のコストを数万ドル(数百万円)から3ドル(約360円)に下げることができた。また、2021年のOptogrationとその受信機チップの買収も、アイヘンホルツ氏によると、同社の能力と経済性における制限を取り払った。

「Luminarとの全面的な協力は、Freedom Photonicsにとって完璧な機会であり、私たちの世界クラスのレーザーチップ技術の大規模商業化への道を加速します」とFreedom PhotonicsのMilan Mashanovitch(ミラン・マシャノビッチ)CEOは声明で述べた。「Luminarの自動車産業におけるリーダーシップ推進に役立つだけでなく、他の産業分野の顧客を同時にサポートし、顧客を拡大するためのより大きな機会となります」。

Freedom PhotonicsのスタッフもLuminarに買収された。経営陣は買収完了後も引き続きLuminarでこれまでと同様に事業をリードする。

Luminarの株価は時間外で約2%下がった。

画像クレジット:Luminar

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

タンポポの種のように風に乗せてばら撒ける超軽量センサーをワシントン大学の研究者が開発

100平方マイル(約259平方キロメートル)の森林で温度、湿度、日射量をモニターしようとしたら、さまざまな機器を結びつけてシステムの森を構築するのに長い時間がかかる。しかし、タンポポやニレの種を撒くように、センサーをばら撒くことができたらどうだろう?ワシントン大学の研究者は、必要な機器を風で運べるほど軽いデバイスにまとめあげた

このプロジェクトは、小規模で特定の目的に特化したコンピューティングの境界を押し広げるものだ。まだごく初期の試作品に過ぎないが、組込み電子機器が進むべき興味深い方向性を示している。

「私たちの試作品は、ドローンを使ってこれらの数千個のデバイスを、一度に投下できる可能性を示唆しています。これらのデバイスは、すべて少しずつ異なる方へ風で運ばれていき、基本的にはこの1回の投下で、1000個のデバイスネットワークを構築することができます」と、ワシントン大学の教授であり、多くのデバイスを製作しているShyam Gollakota(シャム・ゴラコタ)氏は語る。

この電子機器はバッテリーを一切使用しないため、全体の質量を大幅に削減することができる。数個の小さなセンサーと無線トランシーバー、そして数個の小さな太陽電池を搭載したこのデバイス自体の重さは、30ミリグラムにも満たない。

風を受ける部分の構造は何十回も試行錯誤を繰り返し、最終的にこの自転車の車輪の形に辿り着いた。これによってデバイスは、出発地点から遠くまで移動できるだけでなく、95%の確率でソーラーパネルを上向きにして着地できるという。ドローンでばら撒く場合は、100メートルほど移動して着地する。

一度着地すれば、明るいうちは常に動作し、後方散乱高周波信号を利用して周囲や互いに信号を跳ね返し、制御装置で収集することができるアドホックネットワークを構成する。

重さ1ミリグラムの驚異的に軽いタンポポの種が何キロメートルも移動できるのに比べれば、今はまだそれほどの機動力はない。しかし、自然界ではその設計を完成させるのに測り知れないほど長い年月がかかったが、ワシントン大学のチームは最近始めたばかりだ。もう1つの課題は、もちろん、本物の種はやがてタンポポになるか、朽ちて無に帰すという事実である。これに対し、1000個のセンサーは、拾われるか粉々に砕かれるまで残るだろう。生分解性エレクトロニクスの分野はまだ新しいが、研究チームはこの点に取り組んでいるという。

もし、電子機器廃棄物という観点(そして、おそらくそれを食べる動物という観点)を解決できれば、絶滅の危機に瀕した生態系を監視しようとする人々にとって、非常に有益なものになるはずだ。

「これは最初の一歩であり、だからこそ、とてもエキサイティングなのです。ここから私たちが進むことのできる道はたくさんあります」と、筆頭研究者のVikram Iyer(ヴィクラム・アイヤー)氏は語っている。この研究成果を記した論文は、米国時間3月16日発行の「Nature(ネイチャー)」誌に掲載された。

画像クレジット:Mark Stone/University of Washington

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

RFIDを利用した使い捨て可能な介護用排尿検知センサーC-Letter、介護現場での排尿記録を自動化し自立を支援

RFIDを利用した使い捨て可能な介護用排尿検知センサーC-Letter、介護現場での排尿記録を自動化し自立を支援

センサーを取り付けたオムツ。センサーは名刺サイズの大きさという

総合部品メーカーNOK(エヌオーケー)は3月16日、おむつに装着して排尿を検知し、無線で知らせる排尿検知センサー「C-Letter」を開発したと発表した。介護の現場での排尿記録を自動化し、要介護者の自立を支援するという。

人材不足が進む介護業界では、ITや介護ロボットといったテクノロジーの活用に期待が集まっている。特に、1日のうち何度も必要となる排泄ケアは、作業の効率化が求められる。また、介護される側の尊厳とプライバシーに大きく関与するデリケートなことでもある。テクノロジーをうまく使って排泄を検知し、記録をつけ、それを分析することで、要介護者の生活の質を高め、自立を促す介護計画の策定につなげることが重要となる。

NOKは、フレキシブルプリント基板(FPC)の技術を持つグループ会社の日本メクトロンと共同でC-Letterを開発した。濡れ検知機能とRFID(無線タグ)を組み合わせた濡れ検知デバイスを不織布で挟んだもので、両面テープでおむつに固定して使用する。これを介護施設の見守りシステムや記録システムと連動させれば、使用者の排泄タイミングを自動で記録できるようになる。

今後は介護現場での実証実験、連携する介護システムの拡大、収集した記録データを分析して排泄ケアに貢献するソリューションの開発を進め、事業化を目指すとしている。

ダイヤモンドの「NV中心」による温度計測に成功、高空間分解能で高感度な温度センサーに応用できる可能性を発見

ダイヤモンドの「NV中心」による温度計測に成功、高空間分解能で高感度な温度センサーに応用できる可能性を発見

研究に用いた実験装置の概略。左下図は、ダイヤモンド結晶中の窒素-空孔(NV)中心の原子構造を示す

筑波大学(長谷宗明教授)と北陸先端科学技術大学院大学(安東秀准教授)からなる研究グループは3月9日、ダイヤモンドの結晶に作られる格子欠陥を用い、非線形光学効果に基づいた、高空間分解能かつ高感度な温度センサーが実現可能であることを発見したと発表した。ナノメートルの超高速時間領域での量子センシングの実現につながるという。

非接触型の温度センサーには、おもに量子センサーが使われている。なかでもダイヤモンドの中に不純物として含まれる窒素(N)と、その隣にできる炭素原子の抜け穴(V)が対になった「NV中心」の、周辺の温度や磁場を敏感に検知して量子状態が変化する特性を活かした非接触型量子センサーは、高い空間分解能と感度が求められる細胞内計測やデバイス評価装置のセンサーなどへの応用が期待されている。

研究グループは、NV中心を人工的に作りダイヤモンド結晶の対称性を壊すことで、2次の非線形効果であり、入射光に対して2倍の周波数の光を放出する第二高調波発生(SHG)が発現することを以前に突き止めていた。今回の研究では、それを踏まえ、NV中心を含むダイヤモンドに赤外域の超短パルスレーザーを照射し、SHGおよび、3倍の周波数の光を放出する第三高調波発生(THG)の発光強度の温度依存性を調べ、非線形光学効果に基づく温度センサーの可能性を探った。

その結果、NV中心を含むダイヤモンドのSHGから得られる温度センサーとしての感度は、高純度ダイヤモンドのTHGから得られるものの3倍以上も大きいことがわかり、新しい温度センシング技術開発の可能性が示された。

今後は、ここで得られた技術を深め、ナノスケールで超高速時間領域(時空間極限領域)での量子センシングの研究を進めるという。研究グループは、ダイヤモンドのNV中心から引き出される非線形光学効果が、電場や温度のセンシングに幅広く応用できることを示してゆくと話している。

稲畑産業、インテル「RealSense」代替品となる3Dセンサー「LIPSedge」シリーズを発売へ―台湾LIPSが開発

稲畑産業、インテル「RealSense」代替品となる3Dセンサー「LIPSedge」シリーズを発売へ―台湾LIPSが開発

写真上がLIPSedge L210u。写真下はLIPSedge L215u

電子部品などを扱う専門商社、稲畑産業は3月2日、2021年8月に事業撤退がリリースされたインテルの3Dセンサー「RealSense」の代替品を販売すると発表した。インテルのパートナー企業である台湾のLIPS Corporationが開発製造する「LIPSedge L」シリーズと「LIPSedge S」シリーズだ。

LIPSは、産業向けの3Dビジョン技術やAIソリューションを提供するテック企業。インテルとパートナーシップ契約を結び、自社製品に「RealSense」を採用し、またSDKなどの互換ソフトウェアも提供してきた。LIPSedgeには、以前からRealSenseの課題とされてきた防塵(IP67)対応、IMU(ジャイロセンサー)の搭載、イーサネットへの対応を果たし、産業用に特化した機能が付加されている。また、SDK、3Dミドルウェア、3Dシステムなどのソフトウェアの互換性も高く、既存RealSenseを用いた開発環境のままで代替が可能とのことだ。

今回発売されるのは、インテルRealSenseのFシリーズ、Lシリーズ、Dシリーズ(産業用途以外)の代替となる「LIPSedge L」シリーズ。すでに開発が完了し、少量のサンプル出荷が可能な状態になっている。また、産業用途の「LIPSedge S」シリーズも開発中とのこと。

LIPSedge Lシリーズには、「210u」と「L215u」の2品番があり、これらは「RealSense F455/F450」と同等のスペックとなる。LIPSedge Sシリーズでは、「RealSense D455」と同等スペックの「S210」「S215」の2品番の開発を行っている。

「LIPSedge L210u/215u」と「RealSense F455/450」のスペック比較

「LIPSedge S210/215」と「RealSense D455」のスペック比較

さらにLIPSでは、「RealSense」シリーズよりも解像度や測定精度を高めたアップグレード品の開発も進めている。

開発中のアップグレード品

金属3Dプリンターで超硬合金の金型開発と連続成形に成功、冷却配管・センサー用内部構造を持たせ製造管理が可能に

金属3Dプリンターで超硬合金の金型開発と連続成形に成功、冷却配管やセンサーを組み込む内部構造を持たせ製造管理が可能に

名古屋大学は2月28日、金属3Dプリンターによる超硬合金製の金型の製造と、それを使った連続成形に成功したと発表した。これまで超硬合金の金型では製作が困難だった、冷却配管やセンサーを組み込むための内部構造を持たせることが可能になり、成形製品の性能と品質の向上や軽量化などが期待できる。

自動車のエンジンの酸素センサーやハイブリッド車のリチウムイオン電池用ケースなどは、1枚の金属板を型に押し込みながら成形する「深絞りプレス成形法」によって作られた、つなぎ目のない底付き容器が用いられるが、高精度な製品を高速で成形するために、その金型には超硬合金が使われる。しかし、超硬合金は大変に硬いために加工が難しく、複雑な形状が作りにくいという課題がある。その一方で、製造コストを抑えて製品の品質を保つためには、金型を効率的に冷却するための配管を配置したり、温度や荷重の状態をリアルタイムでモニターするセンサーを取り付けるための複雑な内部構造を設ける必要がある。

そこで、名古屋大学(小橋眞教授、高田尚記准教授、 鈴木飛鳥助教)を中心とする研究グループは、金属3Dプリンターに注目し、金属の粉末をレーザー光線で溶かして積層する「レーザー粉末床溶融結合」(LPBF。Laser Powder Bed Fusion)プリンターを使った超硬合金による3Dプリント技術の開発に着手した。まずは、精密研磨剤メーカーのフジミインコーポレーテッドが、3Dプリントに適した超硬合金の粉末について、最適な原材料の調合、粒度分布、粒子密度、流動性の調整などを経て開発した。そして名古屋大学とあいち産業科学技術総合センターは、造形条件と造形後の熱処理方法を検討。最適条件を見つけ出した。

これを受けて、フジミインコーポレーテッドは3Dプリンターによる造形試験を重ね、超硬エンドミルや超硬ラティス構造体など、さまざま形状を造形できるようにした。さらに、旭精機工業がこの成果をもとに、内部に冷却配管やセンサーを内蔵できる空間構造を持つ深絞りプレス成形金型を製作した。金属3Dプリンターで超硬合金の金型開発と連続成形に成功、冷却配管やセンサーを組み込む内部構造を持たせ製造管理が可能に

完成した金型を実際の製造ラインに組み込んで連続成形の試験を行ったところ、金型にも製品にも問題はなく、製品製造に適用可能であることがわかった。3Dプリントによる超硬合金金型の成功例は、世界にも類がない「非常に画期的な成果」とのことだ。これにより、金型の内部冷却による製品の品質向上と、プレス成形を行いながらインラインで金型の圧力や温度計測を行い成形工程に反映させ、稼働状況の把握による製品精度を向上させる画期的な製造管理が可能になるという。

エネルギー効率1000倍・ノイズ100分の1に改善、高感度で広帯域な計測が可能な低消費電力磁気センサーを開発

エネルギー効率1000倍・ノイズ100分の1に改善、高感度で広帯域な計測が可能な低消費電力磁気センサーを開発

(a)MI素子の概要図。(b)開発した磁気センサーのブロック図。(c)MI素子向け計測用ASICのチップ写真

産業技術総合研究所(産総研)は2月19日、低ノイズ、広帯域な磁気センサーを開発したと発表した。従来の方式であるフラックスゲート型磁気センサーと比較して、アナログ回路の動作エネルギー効率を示す性能指標「正規化エネルギー」が1000倍改善され、正規化エネルギーの低い(電気効率が高い)集積化フラックスゲート型磁気センサーに比べて、ノイズは1/100を実現した。生体磁気計測や産業用計測における、小型、高感度、低消費電力のセンシングシステムが期待できるという。

これは、産総研デバイス技術研究部門先端集積回路研究グループ(秋田一平氏)と愛知製鋼との共同研究。低ノイズで広帯域な磁気センサーは、脳磁図、筋磁図などの生体磁気、自動運転、非破壊検査、電流センシングといった多くの分野で求められているが、これまで使われてきた集積化フラックスゲート型の磁気センサーはチップサイズと小型ながら磁気ノイズが大きい。また、低ノイズな磁気センサーはサイズや駆動電流が大きくなるという難点がある。

エネルギー効率1000倍・ノイズ100分の1に改善、高感度で広帯域な計測が可能な低消費電力磁気センサーを開発

開発した磁気センサーの性能比較

そこで研究グループは、低ノイズ化、低消費電力化、小型化を同時に実現するものとして、愛知製鋼が開発した磁気インピーダンス素子(MI素子)に着目した。この素子を、産総研が研究してきた低消費電力で高精度な計測用のアナログ特定用途向け集積回路(ASIC)の知見を応用して実装したのが、今回開発された磁気センサーだ。

MI素子は、アモルファス合金ワイヤーの周りにコイルを形成したもの。このワイヤーに電流パルスを通すと、ワイヤー表層で外部磁気に比例した磁束が生じる。この磁束の変化をコイルを通じて誘導電圧として検出する。この誘導電圧は、適切なタイミングでサンプリングされた後、信号処理回路により増幅され、出力される。低ノイズ化を行おうとすると、信号処理回路に多くの電流が流れることになるが、回路構成と動作を最適化することで、低ノイズを低消費電力とを両立させることに成功した。

また、低ノイズ化と広帯域化のためには、誘導電圧のサンプリング処理をナノ秒単位で制御する必要がある。このサンプリングのタイミングが狂えば、MI素子の感度が低下し、ノイズや帯域にも影響が出る。そこでデジタル自動補正技術を開発し、高い時間分解能でサンプリングのタイミングを調整できるようにした。

今後は、さらなる高感度化と電力効率を向上させ、製品として組み込むための開発を進めるということだ。

スピントロニクス素子で従来品の500倍という世界最高感度のフィルム型ひずみゲージを製作、仮想現実などでの応用に期待

スピントロニクス素子で従来品の500倍という世界最高感度のフィルム型ひずみゲージを製作、スポーツ科学・仮想現実での応用に期待

(a)引っ張り試験機でプラスチックフィルム(フレキシブル基板)上の磁気トンネル接合を引っ張っている様子(上)と、試料の模式図(下)。(b)磁気トンネル接合の素子抵抗の引っ張りひずみによる変化。挿入図は磁気トンネル接合の模式図。ひずみが0.2%~0.4%の範囲で、素子抵抗が200%近く減少していることがわかる(つまり、ゲージ率が約1000)。同研究では、抵抗が変化し始める閾(しきい)ひずみ(図では0.2%程度)をゼロにする方法も提案

大阪大学産業科学研究所の千葉大地教授ら研究グループは2月16日、磁気トンネル接合素子を使った世界最高感度のフィルム型ひずみゲージを製作したと発表した。

ひずみゲージとは、材料が外力に比例して変形するひずみを電気信号として検出するセンサーのこと。構造物のひずみや圧力検出、人体の活動から生まれるデータのセンシングデバイスなどにも活用されている。今回製作したフィルム型ひずみゲージは、金属箔ひずみゲージに比べて感度が約500倍と高く、まったく新しいスピントロニクスの社会実装の道を拓くという。

磁気トンネル接合素子は、ハードディスクの読み取りヘッドや固体磁気メモリーなどに利用されているスピントロニクスデバイス。絶縁体ナノ薄膜を磁性ナノ薄膜で挟んだ構造をしており、2つの磁性体の角度がずれることで電気抵抗が変化するというもの。研究グループは、柔らかいプラスチックフィルム(フレキシブル基板)上にこの素子を形成した。このひずみゲージは、ひずみ検出感度の指標であるゲージ率が1000という非常に大きな値を示した。これは、現在普及しているフィルム型の金属箔ひずみゲージの500倍の感度に相当する。

今回製作したひずみゲージは、1mm四方の1/6800という小さなものだが、固体磁気メモリーで使われている素子は、さらにその数十万分の1のサイズとなっている。そのため、もっとずっと小さなひずみゲージを作ることも可能であり、これをフレキシブル基板上に集積化すれば、「緻密なひずみのマッピング」も実現するという。また、柔らかい基材にこの機能を持たせることで、生体親和性の高いひずみゲージを作ることができ、生体の動きの精密測定が求められる医療、スポーツ科学、仮想現実などの分野での応用も期待できる。

この成果は、スピントロニクスに「力学情報のセンシング」という新しい応用の道を拓くものであり、より解像度の高い力学情報の提供が可能となり、「新たな産業を生み出すキラーデバイス」になると研究グループは話している。

Electric Sheepが、既製の芝刈り機をロボット化するシステムを発売

iRobot(アイロボット)がTerra(テラ)を発表したのは、3年前のちょうど今頃だった。2020年に発売を延期するという厳しい社内決定が下された後、このロボット芝刈り機は未だMIA(作戦行動中行方不明)だ。草がたくさん生えていて時間があまりない人のために、他にもロボット芝刈り機は業務用と消費者用の両方で、いくつか販売されている。

しかし、Electric Sheep Robotics(エレクトリック・シープ・ロボティクス)という、Philip K. Dick(フィリップ・K・ディック)の小説を思い出させる会社のこの分野に対するアプローチは、John Deer(ジョン・ディア)傘下のBear Flag Robotics(ベア・フラッグ・ロボティクス)がトラクターに対して行っているのと同様に、少々斬新だ。米国時間1月25日より一般販売が開始された「Dexter(デクスター)」は、既存の業務用芝刈り機に、自律走行機能を搭載することができる。

芝刈り機にこの機械を取り付けた後、ユーザーはシステムを訓練するために、通常の草刈りのルートを一度通る。その後はシステムがLiDARやカメラ、GPSなど、搭載されたさまざまなセンサーを使って、衝突を避けながらナビゲーションを行う。Dexterは現在、RaaS(サービスとしてのロボット)モデルとして造園業者に提供されている。つまり、これはシステムを購入するのではなく、実質的にレンタルするという形だ。

画像クレジット:Electric Sheep Robotics

CEOのNaganand Murty(ナガナンド・マーティー)氏は、この機会に「米国にはたくさんの芝生がある」ということを強調した。

芝生のために使われている土地と水は、小麦とトウモロコシの合計よりも多く、米国では4000万エーカー(約16万2000平方キロメートル)を超える土地に何らかの形で芝生が敷かれていて、芝生の刈り込みだけで年間200億ドル(約2兆3000億円)が費やされています。Electric Sheep社のDexterロボットのようなソリューションは、お客様の需要を満たし、すでに不足している労働力をより効率よく配分するのに役立ちます。

今回の一般販売開始に合わせて、同社は2150万ドル(約24億6000万円)という大規模なシリーズA資金調達を実施し、現在までに調達した資金の総額は2570万ドル(約29億4000万円)となったことを発表した。このラウンドは、Tiger Global(タイガー・グローバル)が主導し(他に誰がいるだろうか?)、このベイエリアに拠点を置く会社が400万ドル(約4億6000万円)を調達したシードラウンドを主導したFoundation Capital(ファウンデーション・キャピタル)も参加した。

画像クレジット:Electric Sheep Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

1024個の長期安定型の分子センサーを1チップに集積化、空中の分子の空間濃度分布の可視化に成功

1024個の長期安定型の分子センサーを1チップに集積化、空中の分子の空間濃度分布の可視化に成功

開発したセンサーアレイの顕微鏡写真(右図)およびアナログフロントエンドセンサー計測回路システムの写真(左図)

東京大学と慶應義塾大学からなる研究グループは、気体に含まれる分子(揮発性分子)を電気信号として検出する分子センサー1024個を1チップに集積化したセンサーアレイ(センサー群)を開発し、揮発性分子の空間濃度分布の可視化に成功した。この分子センサーは金属酸化物ナノ薄膜を用いた堅牢なもので、従来技術では難しかった長期間の安定化と、高密度集積を可能にした。

分子センサーは、医療や食品管理など幅広い分野で注目を集めているが、実際に検出対象となるガスには数十から数百種類の分子が含まれているため、数多くのセンサーを集積したセンサーアレイが必要となる。また、小型、省電力であるうえに、長期間データを取得し続けられる長期安定性も求められる。だが従来技術では、高密度集積化と長期安定(堅牢性)という2つの条件を満たすセンサーアレイは作れなかった。

そこで、東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻の大学院生 本田陽翔氏、慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻の大学院生 椎木陽介氏らからなる研究グループは、金属酸化物半導体をクロスバー構造に配置したセンサーアレイを開発した。クロスオーバー構造とは、格子状にセンサーを配置するもので、これまで広く開発されている「縦型チャンネル構造」に比べて面積を大きくできる。研究グループは、1辺に32本の電極を設け、計1024個(32×32)の分子センサーを5mm四方の中に集積化した。

ただクロスオーバー方式は集積化に優れている反面、配線の電気抵抗がセンサーの電気抵抗に加わってしまうため正しい測定ができないという問題があるのだが、50nm(ナノメートル)という非常に薄い酸化スズの膜をセンサーに用いることでセンサー自体の電気抵抗を大きくし、配線の抵抗の影響を小さくすることでこれを解決した。またこの酸化スズは熱に強く、長期間安定した分子センサーも実現している。

(a)液滴をから蒸発・拡散させた分子をセンサーアレイで検出する実験の模式図と写真。(b)蒸発・拡散してきたエタノールに対するセンサー応答とセンサー列の関係。液滴に近いセンサーほど高い応答が得られている。(c)bのセンサー応答の勾配(傾き)と各種液滴滴下後の時間の関係。60s時点で液滴を滴下している。勾配の時間依存性が分子の種類に応じて異なる傾向を示している

(a)液滴をから蒸発・拡散させた分子をセンサーアレイで検出する実験の模式図と写真。(b)蒸発・拡散してきたエタノールに対するセンサー応答とセンサー列の関係。液滴に近いセンサーほど高い応答が得られている。(c)bのセンサー応答の勾配(傾き)と各種液滴滴下後の時間の関係。60s時点で液滴を滴下している。勾配の時間依存性が分子の種類に応じて異なる傾向を示している

このセンサーアレイの近くにアルコールを配置して蒸発し拡散する分子の検出を行ったところ、アルコールからの距離に応じてセンサーの反応に差異が出た。このことから、このセンサーアレイで分子の種類を判別できる可能性が示された。

この技術とセンサーチャンネル表面の化学物性を制御する技術を融合すれば、多種類のセンサーを高密度に集積化でき、「多種類の分子が混合された分子群の判別」ができるセンサーシステムの実現も期待されるとのことだ。

農作物の防虫をセンサーと機械学習で実現するFarmSense

かじる、潜る、感染させる。米国農務省農業研究局によると、マメコガネ(上記写真)などの害虫が農業に与える被害は毎年1000億ドル(約11兆6730億円)を超えるという。また、節足動物は植物の病気も媒介するため、世界の農業生産の年間40%が節足動物によって失われているといわれている。

カリフォルニア州リバーサイドに拠点を置くAgTechのスタートアップ企業、FarmSenseは、害虫問題の解決に挑んでいる。同社は、光学センサーと機械学習アルゴリズムに基づく新しい分類システムを構築し、リアルタイムで昆虫を識別・追跡する。ここでポイントとなるのは「リアルタイムの情報」だ。

彼らによると、センサーが提供するリアルタイムの情報は早期発見に役立ち、殺虫剤やバイオコントロールなどの害虫管理ツールをタイムリーに配備することができる。現在、モニタリングに使われている機械式トラップは、虫がやってきてから10〜14日後にしか重要な情報を得られない場合もある。

「このような虫の中には、成虫として5日間しか生きないものもあります。そのため、問題を発見したときには、すでに問題が根付いてしまっており、より大きな問題になっているのです」と、FarmSenseの共同設立者であるEamonn Keogh(イーモン・キーオ)氏はいう。「リアルタイムで知っていれば、介入する場所を1カ所に絞り、農薬の節約、労働力の節約、作物の損傷を防ぐなど、より良い結果を得ることができたはずです」。

より良い結果を得るための重要な情報の提供方法は、少し複雑だ。

ファームセンスの新型光学センサー「FlightSensor」の圃場での様子。このセンサーは、農家にとっての害虫の被害を軽減するために、リアルタイムのデータと管理戦略を提供することを約束する(画像クレジット:FarmSense)

現在、中小企業技術革新研究プログラムの助成を受け、南カリフォルニアのアーモンド園で試験・研究が行われているFlightSensorと呼ばれる同社の最新センサーは、キーオ氏がこのセンサーのアイデアを得た場所について考えると、最もわかりやすい。つまり、ジェームズ・ボンドと冷戦時代のスパイ活動だ。

キーオ氏は、ロシアのスパイがガラス窓にレーザーを当てて、人の声の振動を拾っていたことを説明した。そしてセンサーがその情報を翻訳し、部屋の中で何が起こっているのか、おおまかな情報を提供してくれる。

「同じような仕掛けを考えて、レーザーの前を虫が飛んだらどうなるかを想像してみました。虫の音だけが聞こえて、他の音は聞こえないでしょう」。

しかし、FlightSensorは振動を読み取るのではなく、小さなトンネル内のライトカーテンと影を利用し、誘引物質によって昆虫を引き込む。センサーの片側には光源、もう片側には光学センサーが設置されている。昆虫が飛んできたときに、どれだけ光が遮られたか、あるいはどれだけ光が通り抜けたかをセンサーが測定する。そのデータを音声にし、クラウド上の機械学習アルゴリズムで解析する。

このセンサーは生産者が使いやすいように昔のアナログ機器のようなデザインになっているが、FarmSenseによると、風や雨などの周囲の音は拾わない。

キーオ氏によれば「シグナルの質はとてもクリアで、通常畑で聞こえる周囲の音は聞き取りません。本質的には昆虫の音を聞く異なったモダリティですが、ヘッドフォンをつけてセンサーからの音声クリップを聞くと、まるで蚊や蜂が飛び回っているように聞こえます」。

カリフォルニア大学リバーサイド校のコンピューターサイエンスとエンジニアリングの教授であるキーオは、データマイニングを専門としており、FarmSenseが識別目的で採用した新しい機械学習アルゴリズムに取り組んでいる。共同設立者のLeslie Hickle(レスリー・ヒックル)氏をはじめ、昆虫学者や分野のスペシャリストが開発・配備を支援している。

ハードウェア面では、当社CEOであり、無線・携帯電話ネットワークやセキュリティのシステム開発を手がけるShailendra Singh(シャイレンドラ・シン)氏が担当している。シーズンごとに課金される各センサーの価格は300ドル(約3万4000円)とのことだ。

この技術がもたらすインパクトは明らかだ。大小の畑を管理する農家にとって、昆虫に関するリアルタイムの情報は経済的な安全性にとって重要なだけでなく、土壌の健康状態など重要な資源の保全・保護につながる可能性もある。

しかしFarmSenseは、昆虫による被害で不当に影響を受けているという地方の農家を支援したい考えだ。

だが、センサー1つにつき1シーズン300ドルというのは高額であり、この技術の採用にあたるリスク、ひいては虫害という問題をそもそも解決できるかどうかというリスクもある。

小規模農家にとって最も難しいことの1つはリスク管理だと語るのは、米国農務省が資金提供する「市場、リスク、レジリエンスのための未来のイノベーションラボ(Feed the Future Innovation Lab for Markets, Risk, and Resilience)」の所長で、カリフォルニア大学デービス校農業・資源経済学の著名教授であるMichael Carter(マイケル・カーター)氏だ。

「リスクは人々を貧しいままにしてしまうことがあります。リスクは将来を不透明にするため、平均所得を向上させる技術への投資を抑制します。富の少ない人々は、当然貯蓄が多くありません。しかし彼らは、彼らの収入を向上させるかもしれないし、彼らの家族を餓死させることになるかもしれないものに投資するために貯蓄を危険にさらすことはできません」とカーター氏はいう。

しかし彼は、FlightSensorのような技術が、特に小規模農家をさらに保護する保険のようなものとなる場合、小規模農家の投資の恐怖を軽減することができると考えており、この点に関しては楽観的であった。

シャイレンドラ・シン氏(左)とイーモン・キーオ氏は、カリフォルニア州リバーサイドで昆虫の監視に革命を起こそうとしているアグテックスタートアップ企業、FarmSenseの共同設立者だ(画像クレジット:FarmSense)

この技術について、こんな疑問も浮かぶ。リアルタイムでの識別は、害虫管理にとって本当に最良の選択なのだろうか?米国農務省森林局の昆虫学者Andrew Lieb(アンドリュー・リーブ)氏によれば、そうではないかもしれないとのことだ。リーブ氏は、農業や森林にとって最も破壊的な害虫である侵入昆虫の主な原因は、移動や貿易であると説明した。

彼は、昆虫の定着制御のためのテクノロジーに関しては賛成しているが、究極的には、この問題をより早期に解決することが最適な戦略であると考えている。現在の輸出入に関する法律や、害虫駆除製品の処理方法、さらには渡航の制限の制定などに取り組むべきだろう。

こうした懸念はあるものの、FarmSenseの技術がインパクトを与える態勢にあることは間違いない。農家の経済的な不安やグローバルなフードチェーンへの脅威だけでなく、蚊のような病気を媒介する昆虫の追跡や重要な情報の拡散に役立つかもしれない。

新型コロナウイルス感染症による混乱が続く中、バイオセキュリティの成功や失敗が、私たちの無数のシステムにどのように波及していくのか、それを強く意識しないわけにはいかない。

2050年までに外来種の昆虫の侵入が36%増加すると予測されていることや、人口増加により食糧生産がより一層圧迫されることを考えると、私たちが脅威を理解し思慮深く対応する能力を高めてくれるFlightSensorのような革新的技術は、むしろ歓迎すべきことだ。

カーター氏がアグテックが農業に恩恵をもたらす可能性のあるあらゆる方法について語る通り「私たちはその可能性においてクリエイティブになる必要がある」。

画像クレジット:Chris Sorge / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

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(文:Matt Marcure、翻訳:Dragonfly)

AIロボットが何をつかんだかを判別可能に―九州工業大学、マテリアルベースのリザバー演算素子を開発

AIロボットが何をつかんだかを判別可能に―九州工業大学、マテリアルベースのリザバー演算素子開発とロボティクスへの応用に成功

九州工業大学は1月6日、ロボットアームのハンド部分から得られる感触信号から、ロボットが何をつかんだかを判別(把持物体認識)することに成功したと発表した。把持物体認識には、人工ニューラルネットワークの一種であるリザバー演算(RC)が使われるが、九州工業大学は、そのリザバー演算を、「単層カーボンナノチューブとポルフィリン、ポリオキソメタレートの複合体」(SWNT/Por-POM)からなる素子で行わせるという、画期的なアプローチをとった。

人間の脳を人工的に模倣するには、ランダムに接続されたニューロンとシナプスの動的な貯蔵庫(リザバー)を模倣する必要があり、それを実現したのが人工ニューラルネットワーク(ANN)だ。その一種であるリザバー演算は、貯蔵庫内での信号のランダムなフィードバックを忠実に再現して時系列データの学習を可能にしており、深層ニューラルネットワークに比べて、効率的・高速・シンプルで、生物の脳の仕組みに近い機械学習アーキテクチャーとされている。

AIロボットが何をつかんだかを判別可能に―九州工業大学、マテリアルベースのリザバー演算素子開発とロボティクスへの応用に成功

ところが、リザバー演算を既存コンピューター上でソフトウェアだけで行うことは技術的に難しく、ハードウェアからアプローチするパラダイムシフトが不可欠とされる。そこで、ソフトウェアと並行して物理的な挙動を演算ツールとして用いる「物理リザバー」が研究されている。なかでも九州工業大学の手法は、物理的挙動を示すマテリアル自身に演算を担わせる「マテリオRC」という新しい試みだ。

研究では、SWNT/Por-POMによるリザバーからなるランダムネットワークを作り、トヨタ自動車の生活支援ロボット「ヒューマンサポートロボット」のロボットハンドから得られた物体把持のセンシングデータを入力信号として使用した。それにより、異なる物を正しく分類する「インマテリオRCタスク」に成功した。

現在、画像による物体認識は広く行われているが、光量が少ない暗い場所では誤判定が生じる。そのため、特に介護の現場などでは触覚センサーによる把持物体認識の併用が重要になってくる。九州工業大学では、「生物学的なインターフェースで効率的な計算を実現できる、マテリアルベースのRCが賢い選択だということが今回の結果で示されました」と話している。SWNT/Por-POMは近い将来、「脳と同等の情報処理能力を持つと期待され、時系列予測や音声認識など他の複雑なAI問題に応用すること」が可能になるということだ。

この研究は、九州工業大学ニューロモルフィックAIハードウェア研究センターの田中啓文教授、田向権教授らからなる研究グループと、大阪大学の小川琢治元教授、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のジムゼウスキー教授との共同によるもの。

イフティニーがmicro:bit向けプログラミング学習用製品「ワールド・オブ・モジュール・シリーズ」を販売開始

イフティニーがmicro:bit向けプログラミング学習用製品「ワールド・オブ・モジュール・シリーズ」を販売開始

プログラミング教育とIoT関連製品の企画開発・販売などを行うイフニティー(Iftiny)は12月21日、教育用マイクロコンピューターmicro:bitで制御できるビルディングブロックとブロック対応のモジュールセンサーがセットになった「ワールド・オブ・モジュール・シリーズ」の販売を開始した。ブロックで遊びながら、プログラミングやセンサーの知識を学べるというものだ。

micro:bitでプログラミングを行い、センサーやサーボでブロックを制御できる。あらかじめ21種類の制作例が用意されていて、簡単に学習を開始できる。基礎を学習したら、ブロックを組み立て直して発展させることが可能。ブロックは、有名ブランドのブロックとの互換性があり、それを取り混ぜて使うことができる。プログラミング言語はビジュアルプログラミング(MakeCode)とPythonに対応。ブロックの組み立ては「ブロック組み立て説明書」を見ながら行える。micro:bitへのプログラミングにはチュートリアルが用意されている。

キットの内容(micro:bit本体は別途購入)

  • micro:bit用拡張ボード:1
  • ブロック型サーボ:2個
  • センサーモジュール:10種類
    RGBライト、ボタン、ロッカー、環境光センサー、温度湿度センサー、赤外線人感センサー、色認識センサー、赤外線検出センサー、超音波距離センサー、LEDデジタルチューブ
  • ビルディングブロックパーツ:296個
  • 製品マニュアル(冊子)
  • ブロック組み立て説明書(PDF)
  • チュートリアル(ウェブ)

価格は1万7100円(税込)。購入は下記リンクから。
https://store.iftiny.com/products/yahboom-world-of-module-programmable-sensor-kit-for-microbit-v2

この他にも、音声合成モジュールやジェスチャー認識モジュールなど、単独でセンサーモジュールやサーボを購入することができる。現時点では、セットに入っているものも含めてセンサーモジュールが19種類、サーボが6種類となっている。単体の詳細は「micro:bit ビルディング ブロック」を参照してほしい。

大阪大学、磁気を使ったセンサーシステムによりコンクリートに埋蔵された鉄筋の透視に成功

大阪大学、コンクリートに埋蔵された鉄筋の磁気による透視に成功

大阪大学産業科学研究所は12月13日、磁気を使ったセンサーシステムにより、コンクリートに埋蔵された鉄筋の様子を透視することに成功した。また、2次元スキャンロボットによるコンクリート内部の鉄筋の状況を可視化する計測技術を確立。老朽化した建屋の検査、施工確認などが安価にスピーディーに行えるようになるという。

大阪大学産業科学研究所の千葉大地教授らによる研究グループは、2020年「永久磁石法」という手法を開発し、新たな鉄筋探査方法になり得ることを発表している。現在、鉄筋の探査方法として広く用いられている中でコンパクトなものに、電磁波レーダー法や電磁誘導法などがあるが、電磁波レーダーは深い鉄筋も検知できるものの精度が低く、コンクリートの湿り具合や空洞に影響を受けてしまう。電磁誘導法では深い場所にある鉄筋は探知できない。また、磁性のある鉄筋以外の金属の影響を受けてしまうといった欠点がある。

研究グループが開発した永久磁石法は、永久磁石と磁気センサーを組み合わせたシンプルなセンサーモジュールで、磁性を持たない金属には反応しないため、鉄筋のみを狙って検出できる。「磁気誘導法」により、深く埋まっている鉄筋も観測でき、コンクリートの湿潤状況に左右されない。

研究グループは、このセンサーモジュールを2次元スキャンロボットに搭載して、格子状鉄筋の配筋状況の可視化を行った。永久磁石法の場合、センサーモジュールからはコンクリートは完全に透明なものに見えるため、実験用にコンクリートに覆われた鉄筋のサンプルを用意する必要がなく、さまざまな太さの鉄筋や、深さ(距離)を変えて計測結果のデータベースを容易に蓄積できるというメリットがある。

この2次元ロボットの実験では、左上が右下に比べて壁面から数mm離れてしまうという事故があった。その計測結果、鉄筋との距離によってシグナル強度が変化したのだが、これを利用すれば、鉄筋の深さや太さの情報も得られるようになるとの期待が生まれた。

今後は、2次元スキャンロボットとは別に、タブレットやスマートフォンとワイヤレス接続できる小型のハンディーセンサーの開発を進めるという。プロトタイプ機は完成しており、さらなる軽量化と使い勝手の向上を目指すとのことだ。

北陸先端科学技術大学院大学が最先端ナノ素材を用いた電界センサー素子で雷雲の電界検出に成功、落雷予測の実現に期待

北陸先端科学技術大学院大学が最先端ナノ素材を用いた電界センサー素子で雷雲の電界検出に成功、襲雷予測・落雷検出の実現に期待

北陸先端科学技術大学院大学は11月26日、最先端のナノ素材グラフェンを用いた超小型電界センサー素子を開発し、雷雲が生み出す大気電界の検出に世界で初めて成功したことを発表した。襲雷予測のための広域雷雲監視ネットワークや落雷検出ネットワークの実現に期待が寄せられる。

グラフェンとは、炭素原子が蜂の巣状の六角形結晶格子構造で配列された単原子シートのこと。北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科のアフサル・カリクンナン研究員、マノハラン・ムルガナタン講師、水田博教授らによる研究グループは、音羽電機東京工業大学地球インクルーシブセンシング研究機構と共同で、これを使った微細センサー素子「グラフェン電界センサー」を開発。雷雲が生み出す大気電界(大気中の微弱な電流)の時間的変化を検出することに、世界で初めて成功した。大気電界の極性も判別できるため、雷雲内部の電荷分布も推定でき、「複雑な雷現象のメカニズム解明に大きく寄与する」という。

(a)フィールドテストの様子、(b)グラフェン電界センサーの検出信号と既存のフィールドミル電界計の検出信号の比較、(c)検出地点から10キロメートル以内での雷発生状況

研究グループは、このセンサーをモジュール化して屋外で雷雨時に動作試験を行ったところ、20km以上離れた地点での落雷を電界ピーク信号として捉えることができた。このとき同時に既存の電界検出装置(フィールドミル型)も使用したが、その検出タイミングの精度がほぼ一致した。また、測定結果の解析により、5km圏内の落雷を32分前に予測できることもわかった。重量が1kg以上と重く、外部電源も必要とするフィールドミル型と比較して、グラフェン電界センサーは太陽電池で駆動できる超小型であるため、これを広域に数多く配置すれば、落雷検出ネットワークが容易に構築できるという。

凸版印刷とハイフライヤーズが位置・映像・バイタルデータにより保育園での園児の居場所や健康状態を可視化する実証実験

凸版印刷は11月16日、位置情報データ、ネットワークカメラ、生体センサーを組み合わせたモニターシステム「ID-Watchy Bio」(アイディーウォッチーバイオ)を活用した、保育園の園児の居場所や健康状態を可視化する実証実験を、ハイフライヤーズが運営する保育園で実施し、データ活用の有効性を確認できたと発表した。

凸版印刷は、作業現場の作業員の労務状況や健康状態を、位置情報データ、ネットワークカメラ、生体センサーを使いクラウド上で可視化し分析する「ID-Watchy」(アイディーウォッチー)を展開。ID-Watchy Bioは、これに、ホシデン製のリストバンド型生体センサー「MEDiTAG」(メディタグ)を連携させて個人のバイタルデータ(脈拍、転倒検知、ストレスレベル、歩数検知)をリアルタイムで把握できるようにしたものだ。

実証実験は、2021年10月18日から11月12日にかけて、ハイフライヤーズの保育園2園で行われた。その結果、園児の保育中におけるストレスと脈拍データの取得、転倒検知による安全性や健康の可視化に有効であることが確認されたという。

ハイフライヤーズは、千葉県で保育園「キートスチャイルドケア」13園を運営する企業。保育園のICT化を進め、「人の目や経験だけに頼らない保育」を展開している。今後は、凸版印刷と共同で、このシステムを13園すべてに導入する予定とのこと。

北海道大学、太陽電池とプラズモンを結合させ光学的変化を電気的に検出するバイオセンサーを開発

糖尿病患者・予備軍向けに低侵襲・低コストで簡便に利用可能なIoT血糖管理サービスを目指すProvigateが9.1億円調達
北海道大学、太陽電池とプラズモンを結合させ光学的変化を電気的に検出するバイオセンサーを開発

太陽電池-プラズモン結合型バイオセンサー略図。ある条件で表面プラズモンが誘起されるとシリコン膜内を光が往復しないために電流値は小さい。抗体に抗原の新型コロナウイルスのタンパク質が結合すると、屈折率が変化し表面プラズモンが誘起されなくなり、シリコン膜内を光が往復して強い光電流が流れる

北海道大学は11月11日、太陽電池とプラズモンを結合させて光学的変化を電気的に検出する新原理を開発し、バイオセンサーの大幅なコンパクト化と高感度化を同時に実現したと発表した。抗原検査、抗体検査の両方に対応でき、ウェアラブル・バイオセンサーへの応用が期待されるという。

北海道大学電子科学研究所の三澤弘明特任教授と、同大学大学院理学研究院の上野貢生教授らによる研究グループは、石油科学や医薬品などの研究開発を行うイムラ・ジャパンと共同で、シリコン薄膜太陽電池内に閉じ込めた光とプラズモンとの相互作用を利用して電子信号を変化させる原理を発見し、革新的なバイオセンサーを開発した。

プラズモンとは、金属中の自由電子が集団的に振動することで生じる電子の波のこと。金の薄膜に抗体を配置しておくと、光が当たったとき、抗体だけのときと抗体に抗原が結合したときとでは、光の反射率が変化する。この原理を利用した表面プラズモン共鳴(SPR)センサーは、アレルギーやインフルエンザの検査などに使われているが、装置が大型になるという課題点があった。研究グループは、プラズモンを太陽電池と結合させ、金の被膜に光が当たったときに生じる屈折率の違いを発電量の変化として捉えることに成功。そのため、コンパクトなバイオセンサーへの道が拓かれた。

このセンサーでは、SPRの励起(エネルギーを高めること)にプリズムを使っているが、「センサー表面に規則的に配列したナノグレーティング構造を配置」することでも励起が可能であることがわかり、将来的にはLEDによるSPR励起と集積可能な電気検出を組み合わせたウェアラブルなバイオセンサーも可能になると期待されている。

悪条件下でも使える短波長赤外線を利用するセンサーの商業化を目指すTriEye、インテル、サムスン、ポルシェが支援

イスラエルのスタートアップ企業TriEyeは、悪条件下での自律走行システムや運転支援システムの視認性向上に役立つセンシング技術を商業化するため、7400万ドル(約84億円)を調達した。

その技術は、波長の短い赤外線、すなわち短波長赤外線(Short-wavelength infrared、SWIR)を利用する。赤外線なので人間の可視波長域にはない。SWIRによるセンシング技術は以前から存在するが、コストが高くつくため航空宇宙や防衛産業に限られていた。TriEyeによれば、同社はそのコストを大幅に下げて、今日のスマートフォンや自動車で使われているカメラ程度の費用にし、また市場にある他のタイプのセンサーよりも高性能だという。

そのイノベーションはCTOのUriel Levy(ウリエル・レビー)氏がヘブライ大学に在籍していた10在職中の10年以上の間に研究、開発したもので、TriEyeはそのSWIR技術の商用化と市場化を目指している。

CEOのAvi Bakal(アヴィ・バカル)氏によると、SWIRはこれまでの視覚システムにさらにもう1つの情報のレイヤーを加える(tri-eyeは「3つの目」の意)ので、それにより人は「可視物以上のもの」を見ることができる。

「センシングは至るところにあります。どのような産業でも、それは工程を編成し分析するための必須の部分です。しかし現在では、全体的なパフォーマンスと意思決定の向上に役に立つような、必要不可欠なデータの提供能力が視覚システムの市場にはありません」とバカル氏はいう。

TriEyeの創業者ウリエル・レビー氏、アヴィ・バカル氏、Omer Kapach(オメル・カパック)氏(画像クレジット:TriEye)

TriEyeはSWIRと同社独自の光源技術を使って、sedar(spectrum enhanced detection and ranging、 スペクトル強化検出測距)と呼ぶセンサーを開発した。同社によるとsedarは、高度な運転者補助や自動運転のシステムが必要とする像と深さに関するすべてのデータを提供する。ゆえにそれは、今日の高度な運転者補助や自動運転システムが利用しているカメラやレーダーやLiDARなどを使う従来的なセンシング系をリプレースできる。

TriEyeの技術は、カメラやライダーに比べてコストが安いことも大きなアドバンテージだ。バカル氏によると「マスマーケットが採用するためにはその点が欠かせません。最もシンプルなクルマから高級車まで、すべてに対応することが目標です」。

TriEyeのSWIRセンサーはCMOS半導体を使っている。同社はすでに大手のCMOSファウンドリ数社と提携して、今後の年産数百万という市場のニーズに備えている。また大手OEM数社とも、sedarを共同で商用化し搭載する具体的な車種の話し合いに入っているが、詳細はまだ明かされない。

同社のメインのターゲットは自動車業界だが、狙っているのは自動車だけではない。SWIRによるセンシングの性能は食品の検品や素材の検出にも向いている。また、バイオメトリクスや監視システムにも適している。

TriEyeがSWIRの市場を非常に大きく捉えているので、大手の投資家たちも関心を持ち始めた。その中にはIntelやPorscheの投資部門もいる。どちらも、2019年のTriEyeのシリーズAに参加した。

今回の最新の投資ラウンドはM&G InvestmentsとVarana Capitalがリードし、Samsung VenturesとTawazun SDF、Deep Insight、Allied Group、Discount Capital、そしてこれまでの投資家であるIntel CapitalやPorsche Ventures、Marius Nacht、そしてGrove Venturesが参加した。これでTriEyeの調達総額は9600万ドル(約109億円)になった。

画像クレジット:TriEye

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

NVIDIAがエッジコンピューティング向け超小型AIスーパーコンピューター「Jetson AGX Orin」を発表

NVIDIAは11月9日、ロボットや医療機器などのAIエッジコンピューティング機器に組み込める超小型の「AIスーパーコンピューター」Jetson(ジェットソン)シリーズの新世代機種「AGX Orion」(オライオン)を発表した。

前世代のAGX Xavier(ゼイビアー)とフォームファクター(100x87mm)は同じながら処理速度は6倍、200TOPS(1秒間に200兆回の命令処理が可能)という性能を誇る。NVIDIA AmpereアーキテクチャーGPUとArm Cortex-A78AE CPU、次世代の深層学習セラレーター、ビジョンアクセラレーターを搭載し、複数の並列AIアプリケーション・パイプラインにフィードできるため、高速インターフェース、高速なメモリー帯域、多彩なセンサーのサポートが可能になっている。消費電力は15W。最大でも50Wとのこと。

ソフトウェアは、NVIDIA CUDA-Xアクセラレーテッド・コンピューティング・スタック、NVIDIA JetPack SDK、クラウドネイティブな開発ワークフローを含むアプリケーション開発と最適化のための最新のNVIDIAツールが利用できる。また、トレーニング済みのNVIDIA NGCカタログもある。

またJetsonには、85万人の開発者、Jetson搭載製品を製造する6000社以上の企業からなる巨大なエコシステムがあり、センサー、キャリアボード、ハードウェア設計サービス、AIおよびシステムソフトウェア、開発者ツール、カスタムソフトウェア開発といったサービスや製品が利用できる。これにより、「かつては不可能と思われていた自律動作マシンとエッジAIアプリケーションを開発および展開できるようになる」と、NVIDIAのバイスプレジデント、ディープゥ・タッラ氏は話している。

NVIDIA Jetson AGX Orinモジュールと開発者キットの発売は、2022年第1四半期を予定している。

Jeston AGX Orionモジュール仕様

  • AI性能: 200 TOPS (INT8)
  • GPU:2048基のNVIDIA CUDAコアと64基のTensorコア搭載、NVIDIA Ampereアーキテクチャー
  • GPUの最大周波数:1GHz
  • CPU:12コア Arm Cortex A78AE v8.2 64ビットCPU 3MB L2+6MB L3
  • CPUの最大周波数:2GHz
  • DLアクセラレータ−:NVDLA v2.0×2
  • ビジョンアクセラレーター:PVA v2.0
  • メモリー:32GB 256ビットLPDDR5 204.8GB/秒
  • ストレージ:64GB eMMC 5.1
  • CSIカメラ:最大6台のカメラ(仮想チャネル経由で16台)。16レーン MIPI CSI-2。D-PHY 1.2(最大40Gbps)| C-PHY 1.1(最大164Gbps)
  • ビデオエンコード:2x 4K60 | 4x 4K30 | 8x 1080p60 | 16x 1080p30(H.265)
  • ビデオデコード:1x 8K30 | 3x 4K60 | 6x 4K30 | 12x 1080p60| 24x 1080p30(H.265)
  • UPHY:2 x8(または 1×8+2×4)、1 x4、2 x1(PCIe Gen4、ルートポート&エンドポイント)。USB 3.2×3。シングルレーンUFS
  • ネットワーキング:1GbE×1、10GbE×4
  • ディスプレイ:1x 8K60 マルチモードDP 1.4a(+MST)/eDP 1.4a/HDMI 2.1
  • その他の I/O:USB 2.0×4、4×UART、3×SPI、4×I2S、8×I2C、2×CAN、DMIC&DSPK、GPIOs
  • 消費電力:15W | 30W | 50W
  • サイズとコネクタ−:100mm×87mm、699ピンMolex Mirror Mezzコネクター、一体型熱伝導プレート