徳島大学発スタートアップが6300万円調達、ゲノム編集受託サービス提供のセツロテック

セツロテック

ゲノム編集受託サービスを提供する徳島県拠点のセツロテックは7月1日、第三者割当増資による6300万円の資金調達を発表した。引受先は、えひめ地域活性化投資事業有限責任組合(えひめ活性化ファンド)、産学連携1号投資事業有限責任組合、産学連携キャピタル。2020年4月以降の累積調達額は総額5億2900万円となった。

セツロテックはゲノム編集技術を提供する徳島大学発のスタートアップ企業。徳島大学で受精卵エレクトロポレーション法(GEEP法)による高効率ゲノム編集技術を開発した徳島大学教授の竹本龍也氏(代表取締役会長CTO)と、培養細胞のゲノム編集技術を開発した徳島大学特任講師の沢津橋俊氏(取締役CSO)らの技術を事業化し、2017年2月に会社設立を行った。

創業以来同社は、ゲノム編集技術を活用した研究支援事業において、大学などの研究機関や製薬会社の研究開発部門に対しゲノム編集マウスやゲノム編集培養細胞を提供。また、ゲノム編集基盤技術を発展させ、畜産分野における新品種開発の事業も進展している。海外でもゲノム編集技術に対するニーズがあることから、調達した資金により海外展開も強化していく。

えひめ活性化ファンドは、愛媛銀行、ゆうちょ銀行、ひめぎんリースおよびフューチャーベンチャーキャピタルが共同で設立。愛媛県内の創業・第二創業期および成長性の高い未上場企業など。

産学連携1号投資事業有限責任組合は、徳島大学発ベンチャー企業の創業・経営支援を目的として、徳島大学、阿波銀行、地域経済活性化支援機構(REVIC)および大学支援機構の協力により設立されたファンド。

産学連携キャピタルは、阿波銀行および大学支援機構の出資により、産学連携1号投資事業有限責任組合の運営母体として設立された。徳島大学発ベンチャーや大学が保有する人的資源、研究シーズを発掘し、投資と事業化へ向けたハンズオン支援を行うことで、徳島から新産業創出の実現を目指している。

OSS開発者を暗号資産で支援するフレームダブルオーがインフルエンサーマーケティングのFISMと地域活性化推進

FRAME00 FISM

フレームダブルオー(FRAME00)は7月1日、インフルエンサーマーケティングのFISMとの業務提携開始を発表した。

今回の提携によりFISMは、フレームダブルオーのDev(Devプロトコル)初の公式アプリケーションパートナーとして参画。FISMが開発・提供するインフルエンサーマーケティングのプラットフォーム「SPAD」(スペード)と連携し、研究開発を推進する。

今回の協業により、SPADとDevを連携するDApp(ブロックチェーンアプリ)を共同開発する。同DAppでは、地域事業者が扱う商品・サービスを資産としてトークン化し、ステーキングを通じて同地域の商品・サービスが受けられるといった、経済が循環する持続可能な仕組みの構築を目指す。アフター・コロナにおける大量生産・大量消費の対極で発展する新しい経済システムの創造を推進するという。

フレームダブルオーは、クリエイターを暗号資産で支援するプロジェクト「Dev」を展開(ホワイトペーパーはこちら)。クリエイターは、自分のプロダクトやサービスを登録しておくと、同社独自暗号資産「Dev」(暗号資産イーサリアムのERC-20規格準拠トークン)を入手数・利用数などに応じ報酬として獲得できる(クリエイターの活動成果を、暗号資産のマイニング・新規発行に見立てている)。またユーザーは、登録済みプロダクトを入手したり、Devを売買することでクリエイターをDevで支援できる。

FISMは、価値観やライフスタイルの多様化を前提に、趣味や嗜好性、哲学などの精神的距離をベースとしたコミュニティの在り方を探究。これまで国内外に広がる独自のインフルエンサーネットワーク(主に日本、中国、台湾、香港、東南アジア)に加え、同社SPADによるデータ解析技術を強みとしてきた。

SPADでは、情報発信者(インフルエンサー)、情報受信者(フォロワー)それぞれの属性をプロファイリングし、テキストマイニング、画像解析、ネットワーク分析などのデータ解析技術を用いて、インフルエンサーマーケティングの最適化を推進。現在、SPADアプリには1万人超のインフルエンサーが登録しており、これまでに300社を超える企業に活用されているという。

今回の協業におけるステーキングとは、ブロックチェーンにおけるガバナンス手法およびマイニング手法のひとつ。一般的には、自分が保有している暗号資産を任意のサービス・個人・組織などに預ける体裁で、その運営・管理を委任するという仕組みとなっている。またユーザーは、預け入れた見返りとして利子・配当などの報酬を得られる。

さらにステーキングは、暗号資産を一定期間「ロック」する状態にすぎず、ユーザーにとっては、自分の暗号資産をクリエーター側などに支払っているわけではない点も特徴だ。

フレームダブルオーは、この点が従来の寄付と異なっており、ユーザーが自分のための利益を得る資産運用の一種として、クリエイターを支援できるものとしている。

また同社は、オープンソースソフトウェア(OSS)を資産として見立て、OSS開発者支援およびステーキングによる収益化を図れる「Stakes.social」サービスをすでに開発している。

関連記事:オープンソース開発者を暗号資産で支援するフレームダブルオーが資金調達

テックワンがSIMフリー対応の7型ゲーミングUMPCを8月中旬から発売

テックワン One-Netbook OneGx1

テックワンは6月30日、深圳One-Netbook Technology製7型ポータブルゲーミングUMPC「OneGx1 国内正規版」の発表会を開催した。この国内正規版は8月中旬発売予定で、One-Netbook公式サイトや量販店サイトで予約受付を開始済み。参考価格は、第10世代Intel Corei5-10210Y/8GB/256GBモデルが税別8万9800円から。SIMフリー/LTE対応のnanoSIMカードスロット搭載モデルは税別9万9800円から用意されている。

テックワン One-Netbook OneGx1

OneGx1は、7型IPS液晶ディスプレー(Gorilla Glass 4)を搭載するポータブルゲーミングUMPC。サイズW173×D136×H21mm、重量約625gというコンパクトかつ軽量ながら、アルミニウム合金(6000番台)CNC削り出しボディ、2台の内蔵ファンや純銅ヒートパイプによる排熱構造などゲーミングPCならではの機構を採用している。

テックワン One-Netbook OneGx1

内蔵バッテリーの容量は1万2000mAh。最大12時間駆動可能なほか、USB PD(5V/9V/12V/15V)対応モバイルバッテリーによる充電も行える。このほか別売オプションとして、2048段階筆圧検知タッチペン、着脱可能なゲームパッドも用意されている。

  • CPU:第10世代Core i5-10210Y(1GHz)
  • グラフィックス機能:Intel UHD Graphics 615(CPU内蔵)
  • メインメモリー:8/16GB(オンボード)
  • ストレージ:256/512GB SSD(オンボード)
  • 液晶ディスプレー:7型IPS(Gorilla Glass 4)
  • 最大解像度:1920×1200ドット(323PPI)、10点マルチタッチ対応
  • インターフェース:USB 3.0 Type-A、USB 3.2 Gen2 Type-C(USB PD 2.0対応)、USB 3.0 Type-C端子、Micro HDMI、Bluetooth 5.1など
  • 無線LAN機能:Wi-Fi 6(2×2、11ax)、IEEE802.11a/b/g/n/ac
  • カードスロット: microSD(SDXC対応)
  • バッテリー駆動時間:最大12時間
  • バッテリー容量:1万2000mAh。USB PD(5V/9V/12V/15V)充電対応
  • サイズ、重量: 幅173×奥行き136×高さ21mm、約625g

発表会では、One-Netbook社長のJack Wang氏が中国からリモートで登場。日本市場は海外市場のうち最も重視している地域と説明するとともに、OneGx1 国内正規版については、日本のファンによる投票により日本語106/109配列キーボード、本体カラー配色が決まったことを明かした。

One-Netbook社長 Jack Wang氏

テックワン One-Netbook OneGx1

テックワン代表取締役 中林秀仁氏は、OneGx1 国内正規版をはじめ、One-Netbook製品群を紹介。One-Netbookは自社工場を持ち、エンジニアを内部に抱え研究開発を行っている点を特徴として挙げた。

テックワン代表取締役 中林秀仁氏

日本国内の従来UMPC市場は、30~50代の男性に強い人気があり、ユーザーの9割に上るという。メインPCとは別に、出張時やプレゼンなどに利用したいという声が多いそうだ。One-Netbookのビジネス面でのコンセプトは、この層にフィットするものとしている。

またテックワンとしては、国内代理店としてサポートエンジニアを抱えており、安心してOne-Netbookを購入・利用できるようサポート体制を強化しているとした。UMPCに関するマーケティング活動の強化も行っていく。

最新ラインアップとしては、OneMix 1S+ 国内正規版、OneGx1 国内正規版を紹介。OneGx1の性能・特徴について、正統派のUMPCとして進化している製品として触れた。ゲーミングUMPCということで、実際に膝上に載せて動作させ、発熱の状態をチェックするなども行ったそうだ。

また発表会には、OneMix 1S+ 国内正規版のゲストプレゼンターとしてモデルの竹内佳菜子さんが登場。竹内さんは、小型サイズかつ軽量のためカバンに入れやすいこと、どこでも資料などを確認しやすいことなどを特徴として挙げた。

竹内佳菜子さん

OneMix 1S+ 国内正規版

OneGx1 国内正規版のゲストとしては、女性アイドルグループ「フィロソフィーのダンス」メンバーの十束おとはさんが登場した。実際にPCゲームで遊んだところ、手が小さいのだが、キーがフィットして操作しやすかったなどとコメントしていた。

竹内佳菜子さん

ポータブルで超低コストなMRIシステムを開発するベルリン発のDeepSpinがシード資金を調達

「次世代AI搭載MRIイメージングマシン」と自らが呼ぶシステムを開発するベルリンを拠点とするスタートアップのDeepSpin(ディープスピン)が、シード資金として60万ユーロ(約7300万円)を調達した。

ラウンドを後押しするのはAPEX Digital Healthで、既存の投資家であるEntrepreneur First(EF)とSOSVが参加し、多くの無名のエンジェル投資家も参加している。助成金と以前の投資を含めると、ローンチ前の総調達額は100万ユーロ(約1億2000万円)となった。

DeepSpinはEFの企業ビルダープログラムを卒業した企業で、そこで出会った2人の創業者、元マッキンゼーのコンサルタントであるClemens Tepel(クレメンス・テペル)氏とカールスルーエ工科大学(KIT)のPhD研究者であるPedro Freire Silva(ペドロ・フレイレ・シルバ)氏が2019年9月にパートナーを組んで始まった会社だ。フレイレ・シルバ氏は、彼の研究を小規模で大量生産可能なMRIシステムへと活用するアイデアを、未来の共同創業者に対してプレゼンした。

「当初から、このアイデアは非常に興味深かったので、その実現可能性の証明作業に飛び込みました」とテペル氏は言う。「4週間以内に私たちはシミュレーションで実現可能性を証明することができ、業界をリードするアドバイザーを迎え、関心を示した臨床医たちから最初のLOI(契約基本合意書)を得ることができました」。

まだリリースされておらず開発段階にあるDeepSpinは、既存システムを「コスト、重量、サイズ」の点ではるかに下げた新しいタイプのMRIシステムを構築することを目指している。これを可能にするためにスタートアップはAI制御と組み合わせた新しいアンテナ技術を開発したが、これは現在特許申請中だ。

「私たちが解決しようとしているのは、最先端の医用画像診断法であるMRIが非常に高価で、専門のオペレーターが必要であり、そして特別にシールドされた部屋が必要であるために、現在は簡単に利用できないという問題です」とテペル氏は説明する。「私達は独自技術に基いて、これらすべての制約を取り除き、MRIを世界中のどこにいてもあらゆる患者が普通に利用できるようにします」。

フレイレ・シルバ氏がこれに付け足す。「従来のMRIスキャナーで行われているように、非常に高価なハードウェアに標準的なソフトウェアと組み合わせる代わりに、単純化されたハードウェアに非常に洗練されたアルゴリズムを適用することによって、同じ臨床情報を得ることができます。このことによって、私たちのシステムのコストを桁違いに削減することができました」。

テペル氏は私に対して、2つの主要な実現技術(高度なAIアルゴリズムと特定のアンテナデザイン)が利用可能になったのはごく最近なので、このアプローチはこれまでとられて来なかったのだと語った。

シミュレーションを使ってDeepSpinのメソッドを証明した後、次のステップとチームの現在の焦点は、完全にAI駆動する最初のプロトタイプを開発することだ。「それに基づいて医療機器認定に進む前に、試験臨床適用を目的とした初期製品バージョンを開発します。これにより幅広い医療分野にわたる臨床用途の製品を販売できるようになり、従来のシステムを購入する余裕のなかった新たな場所を開拓できます」とテペル氏は言う。

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(翻訳:sako)

ヘッドレス電子商取引プラットフォームのNacelleが約5.2億円を調達

eコマース企業が自宅隔離にともなうオンライン買い物ブームを活用し、物理的な小売店舗が再開することで盛り上がりを見せる中、より多くの企業が注目しているのが、オンライン店舗の機能性を高め、買い物客の体験を向上させるにはどうすればよいのかということだ。そこに登場したのが、ロサンゼルスを拠点とするスタートアップのNacelle(ナセル)だ。同社は急成長している「ヘッドレス」eコマーススペースに参入する。

このスタートアップは自分自身をeコマースのためのJAMstack(JavaScript、API、Markupを組み合わせた新しいウェブアプリケーションアーキテクチャ)と呼び、オンラインストアフロントに対して優れたパフォーマンスとスケーラビリティを提供する開発者プラットフォームを開発している。Nacelleは、これまでにIndex VenturesとAccompliceの主導で約480万ドル(約5億2000万円)を調達した。同社の他のエンジェル投資家には、Shopify(ショッピファイ)のJamie Sutton(ジェイミー・サットン)氏、Klaviyo(クラビヨ)のCEOであるAndrew Bialecki(アンドリュー・ビアレッキ)氏そしてAttentiveのCEOであるBrian Long(ブライアン・ロング)氏などが含まれている。

Nacelleはヘッドレス構造を採用したいeコマースブランドのための、より簡単な方法を構築した。ヘッドレスウェブアプリとは、本質的にはサイトのフロントエンドがバックエンドインフラストラクチャから切り離されていることを意味している。そのため、コンテンツをユーザーに届けるためには、専用のフレームワークに完全に頼ることになる。サイトをヘッドレス化することには、パフォーマンスの向上、スケーラビリティの向上、ホスティングコストの削減、開発者エクスペリエンスの合理化などの、いくつかの顕著な利点がある。eコマースサイトの場合、ストアフロントの動作やヘッドレスCMSが動的な在庫やユーザーのショッピングカートの取り扱いに対応する必要があるため、注意すべき複雑さもある程度含まれている。

「私たちは、非常に動的な要件を、JAMstackが提供する通常は静的なシステムとどのように組み合わせるかを自問しました。そうして出来上がったのがNacelleだったのです」とTechCrunchに語ったのはCEOのBrian Anderson(ブライアン・アンダーソン)氏だ。

アンダーソン氏は以前、カスタムストアフロントを開発するShopify Plusの顧客向けの技術代理店を経営していた。このベンチャーが現在の会社の初期顧客の多くになった。Nacelleは最近、同スタートアップの初のマーケティング担当副社長としてKelsey Burnes(ケルシー・バーンズ)氏を採用した。彼女はeコマースプラグインプラットフォームのNosto(ノスト)からやってきた人物だ。

アンダーソン氏はNacelleのプラットフォームの利点を立て続けに説明したが、多くはレイテンシ(待ち時間)の削減の結果であり、その結果でより多くのユーザーが購入を行い、より多くの支払いをするのだと語った。このスタートアップは特にモバイルストアフロントに重点を置いている。アンダーソン氏によれば、ほとんどのデスクトップストアフロントがモバイル版のストアフロントを大幅に上回る性能を提供しているが、モバイル上でNacelleがロード時間を高速化することで、この問題を克服することができると述べている。

画像クレジット:Nacelle

ヘッドレス構造を採用するブランドが増える中で、Nacelleはエクスペリエンスの管理を目指している。NacelleはShopifyユーザーならば、最も迅速に準備して運用できるように最適化されている。ユーザーは、システムをContentful(コンテントフル)やSanity(サニティ)などの一般的なCMSと簡単に統合することもできる。全体として決済プラットフォーム、SMSマーケティングプラットフォーム、分析プラットフォームなど、30を超えるサービスをNacelleは統合している。目標はユーザーがデータを移行したり、新しいワークフローを学習したりする必要性を最小限に抑えることだ。

同社は当然のことながら、D2Cブランドをかなり重視している。Nacelleの初期の顧客には、D2C寝具のスタートアップであるBoll & Branch(ボール&ブランチ)、心地良いものマーケットプレイスであるBarefoot Dreams(ベアフット・ドリームス)、ファッションブランドのSomething Navy(サムシング・ネイビー)などがある。Nacelleの全体機能のほとんどは、この夏の後半にリリースされる。2020年5月にNacelleを使った男性用トイレタリーのスタートアップであるBallsy(ボルジー)の運用が始まり、コンバージョン数が28%増加したといわれている。

Nacelleだけが、このスペースの新参者というわけではない。2020年5月にCommerce Layer(コマース・レイヤー)が、Benchmarkから600万ドル(約6億5000万円)の資金を調達したと発表した(未訳記事)。

関連記事:Italy’s Commerce Layer raises $6M led by Benchmark for its headless e-commerce platform(未訳記事)

画像クレジット:John Lamb / Getty Images

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(翻訳:sako)

人の顔を入れ替えた映画で使える高解像動画が作れるディスニー・リサーチのニューラルフェイススワッピング技術

ディズニー・リサーチがチューリッヒ工科大学(ETH Zurich)と共同で発表した新しい論文で、写真やビデオの顔を入れ替えるための完全に自動化されたニューラルネットワークベースの方法について述べられている。研究者たちによれば、それはメガピクセルレベルの高解像度で最終結果を生み出す初の手法だという。現実世界の出来事だと視聴者を納得させるのに高解像度であることが鍵となる映画やテレビでの使用に、最終結果は適している可能性がある。

研究者はこの技術を使って、既存の俳優が演技している顔を置き換えることを考えている。例えば若返らせたり老化させたり、あるいは亡くなった俳優を描写したりするといった用途だ。彼らはまた、シーンによってはスタントマンの顔を置き換えることにも利用できると示唆している。

この新しい方法は、様々な点で既存の手法とは異なっている。例えば記録されたパフォーマンス中の顔を自由に入れ替えることで、必要に応じて比較的簡単に俳優のイメージを入れ替えることができる。また、俳優が実際にシーンと同じ条件の場所にいたように、合成ステップでコントラストと光の条件を調整することができる。

以下のビデオで成果を確認することができる(研究者が指摘しているように、静止画よりも動画の中の方が、はるかに優れた結果を得られている)。まだ「不気味な谷」の雰囲気が残っているものの、研究者たちはそれを認めた上で、これを「不気味の谷にうまく橋をかけてくれるフォトリアルフェイススワッピングへの大きな1歩」だという。基本的に、これまでの手法よりも「悪夢度」ははるかに少ない。特に他の手法で生成された動画と並べて比較してみると、それははっきりする。最も注目すべき点は、それがはるかに高い解像度で動作するということだ。これは実際のエンターテインメント業界採用されるための鍵である。

提示されている例は非常に小さなサンプルに過ぎないので、これがどれだけ広く適用できるかはまだ不明だ。例えば使用されている被写体は主に白いように見える。また特にビデオの場合、フェイススワッピング技術の使用は倫理的影響があるという懸念が常につきまとう。これは、実際には起こらなかった何かに対する、ビデオまたは写真の「証拠」を捏造するために使用できるからだ。

とはいえ、こうした技術が今や多方面から開発されていることを考えると、技術の研究と探究の倫理に対して議論する段階は基本的に過ぎている。その代わりに、ディズニー・リサーチのような組織が学術的な道筋をたどり、彼らの仕事の結果を共有することは歓迎される。そうすることで、悪意のある使用の可能性を懸念している他の人たちが、悪意のある利用者にフラグを立て、特定し、対抗する方法を決定できるからだ。

画像クレジット:Disney Research

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(翻訳:sako)

Lululemonが新型コロナで需要が高まるホームフィットネス用の鏡を販売するMirror買収へ

Lululemon(ルルレモン)は米国6月29日、ホームエクササイズのスタートアップであるMirror(ミラー)を5億ドル(約540億円)で買収する計画を発表した(Business Wire記事)。フィットネスアパレルのLululemonは、今会計年度第2四半期末までに買収を完結させるつもりだとプレスリリースに記している。

この買収は、在宅ワークアウトのソリューションに対して大きな需要がある中で行われる。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより、世界中ででワークアウトの選択肢が大きく制限されるようになり、現在も続くジム閉鎖でこの問題は長引いている。たとえ各都市でジムが再オープンし始めても、新型コロナの感染が広がっている限り、多くの人がリスクが高いと思われる密室空間に戻ることに躊躇するだろう。

関連記事:Fitness startup Mirror nears $300M valuation with fresh funding(未訳記事)

「2019年に我々は人々が汗をかいて、成長し、コネクトすることを通じてスウェットライフを過ごすようたきつける実験的なブランドになるビジョンの詳細を語った」とLululemonのCEOであるCalvin McDonald(カルヴァン・マクドナルド)氏はプレスリリースで述べた。「Mirrorの買収はそうしたビジョンに基づいて構築する素晴らしい機会であり、我々のデジタルでインタラクティブな能力を推進し、スウェットライフの根を張るものとなる。パーソナライズされた在宅フィットネスの成長を促進するためにBrynn Putnam(ブリン・プットナム)氏、そしてMirrorのチームから学びつつともに働くことを楽しみにしている」。

両社は、LululemonがMirrorの投資家となった2019年後半から関係がある。ガイド付きのワークアウト用ミラーを1495ドル(約16万円)で販売するニューヨーク拠点のMirrorのシリーズBラウンドでLululemonが3400万ドル(約37億円)を出資し、Mirrorのバリュエーションは3億ドル(約320億円)近くになった。MirrorはこれまでにPoint72 Ventures、Spark Capital、First Round Capital、Lerer Hippeau、BoxGroupなどの投資家から7480万ドル(約80億円)を調達した。 Karlie Kloss(カーリー・クロス)氏と、Creative Agency創業者のKevin Huvane(ケヴィン・フベイン)氏も同社に出資している。

Mirrorは広く人気を集めているPeloton(ペロトン)のコネクテッドマシーンの代わりの選択肢として多くの人に考えられている。TonalやTempoなどコネクテッドフィットネス分野では激しい競争が展開されているが、Mirrorはその中で先頭を走る存在だ。同社は2018年にTechCrunch Disruptのステージにステルスモードから登場した。

画像クレジット:Steve Jennings / Stringer / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Reddit創業者のアレクシス・オハニアン氏がInitialized Capitalを去ることに

Reddit(レディット)の共同創業者であるAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏が、2011年にGarry Tan(ギャリー・タン)氏と共同設立した投資会社であるInitialized Capital(イニシャライズド・キャピタル)を去る。ニュースサイト「Axios」が最初に報じ、TechCrunchが確認した。オハニアン氏がRedditの取締役会から公に退任した数週間後の動きで、後任にはY Combinator(Yコンビネーター)の社長Michael Seibel(マイケル・サイベル)が就いた

オハニアン氏は、2011年に700万ドル(約7億5000万円)の投資ビークルとともにInitialized Capitalを立ち上げた。サンフランシスコに拠点を置く同社はそれ以降大きく成長し、Flexport、Instacart、Cruise、Coinbase、Codecademyなどのアーリーステージで投資した。最近では2018年に同社の4号ファンドとなる2億2500万ドル(約240億円)の投資ビークルを立ち上げた(未訳記事)。

Initialized CapitalはTechCrunchへの声明で、オハニアン氏が同社を去るのは「テクノロジーの分野に限らず創業者らをサポートする新しいプロジェクト」に取り組むためだと述べた。Axiosによると同氏はInitializedを離れて、プレシードの案件への関与を深める。Ititializedはウェブサイトで、同社が関わる多くのチームがすでに製品を発売していたり、収益を上げる計画を持っていたりすると説明している。

「当社は製品とビジネスモデルが進化することは理解している。だが、チームがどのように製品を出荷し、協働できるかを非常に具体的に見るのは良いものだ」と同社は書いている。オハニアン氏がプレシードファンドを立ち上げた後に、この方法にどう変革をもたらすかが興味深いところだ。

オハニアン氏はコメントの要求に対し直接の回答を控えた。

これは言及する価値があると思うが、ベンチャーキャピタルでパートナーが離脱しても、それが明確な分裂につながることはほとんどない。Initializedは、オハニアン氏が法的関係により同社の既存の投資ビークルとポートフォリオ企業に引き続き関与すると確認した。同氏が現在取締役として名を連ねる会社の取締役会に今後も残るかは不明だ。取締役を務めるRo(ロー)は、コメントの要請に対しすぐには回答しなかった。

大きな問題の1つは、オハニアン氏の退任により会社のリミテッドパートナーシップ契約のキーマン条項が発動されるかどうかだ。リミテッドパートナーシップ契約で一般的な「キーマン」条項は、特定の人(通常は会社にとって重要な人材)が会社に継続的に所属し、積極的な投資家であることを求める。キーマン条項が発動されると、リミテッドパートナーには自らのファンドへの投資を守るために、新規雇用に関する権限からファンドへの投資の引き上げまで、さまざまな手段が利用可能になることが多い。

今回の場合、オハニアン氏がキーマンでなかったとしたら驚くべきことだ。同氏は主要なゼネラルパートナーの1人であり、会社の創業者でもあるからだ。

同氏は2018年にRedditの日常業務への関与をやめ、最近は警察の残虐行為に抗議した後、同社の取締役を退任した。同氏は、Redditに対して黒人の取締役を指名するよう要望した。Redditは最終的にY CombinatorのCEOであるマイケル・サイベル氏を選任してポジションを埋めた。

Initializedのもう1人の設立パートナーであるタン氏は、YCの初期の成長に貢献した。有名なアクセラレーターの内部ソフトウェアシステムとレイターステージの資金調達プログラムの開発を支援した。「タン氏はInitialized Capitalを今後もリードし続け、これまでの約10年と同様、優れた起業家を見つけて資金を提供していく」と同社はTechCrunchへの声明で明らかにした。「ギャリーとアレクシスは、長年の友人でありビジネスパートナーとして互いにコミットし続ける。同社はアレクシスの将来の活動を全面的にサポートしていく」。

Initialized Capitalは現在5億ドル(約540億円)の資産を管理しており、これまで200を超える企業に投資している。

追記:Danny Crichton

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

ACALLが5億円を資金調達、累計調達額は7億円に

ACALL アコール

神戸市拠点のACALL(アコール)は6月29日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による5億円の資金調達実施を発表した。引受先はジャフコとDBJキャピタル。これまでの累計調達額は7億円となった。

ACALLは、さまざまなワークスペース、ハードウェア、ソフトウェアを統合・一元管理することで、スマートなワークスタイルを実現できるプラットフォーム「WorkstyleOS」を開発・提供。

ACALL WorkstyleOS

オフィスのセキュリティゲートや会議室などへのチェックインを実現するアプリケーション群「ACALL applications」と、データ連携基盤としての「WorkstyleOS」により、これまで約3600社のオフィスやビルのスマートオフィス化を支援してきた。

また、6月30日リリース予定のリモートワークチェックインアプリ「ACALL WORK」では、Withコロナ・Afterコロナのワークスタイルを見据え、オフィスワークとリモートワークのベストミックスの実現を目指すとしている。

ACALL WorkstyleOS WORK

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クリストファー・ノーラン監督のアクション映画「TENET テネット」の公開が8月12日に再延期、米国での新型コロナ感染者再拡大で

アクション映画「TENET テネット」はハリウッドの重要な指標と見られている。クリストファー・ノーラン監督は長年の確実なヒットメーカーであり、「ダークナイト・トリロジー」「インセプション」「インターステラー」などの作品を成功させてきた。今回のミステリアススリラーは、新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中で拡大を続けるなか、観衆に屋内の劇場に来場する勇気があるかどうかの明確なテストになるはずだ。

今週にワーナー・ブラザーズは、同作品の公開日を8月12日に延期すると発表した。一部の州で感染者の拡大が続いていることを受けたものだ。これはこの映画にとって2度目になる2週間の遅延であり、当初の公開予定日は7月17日だった。

「ワーナー・ブラザーズは、TENETの劇場の大画面での公開を、劇場の準備が整い、衛生当局の了解を得られた時に行うことを約束する」と同社が報道機関向けの声明で語った。「この時期に必要なのは柔軟な行動であり、通常の映画公開と同じには考えていない。自由時間に見てもらうために公開は週の半ばとし、通常よりずっと長い期間上映することで、これまでと大きく異なりかつ成功する上映戦略をつくっていく」。

ためらいを見せている映画会社は同社だけではない。ディズニーも「Mulan」(ムーラン)の公開日を延期し 、TENETの1週間前に設定した。感染拡大のためにフロリダ州、テキサス州などの再開が遅れている中の出来事だ。ニューヨーク州も再開フェーズ4からスポーツジムやショッピングモールとともに映画館を除外した。

これは規模の大小にかかわらず映画館に課せされた大きな問題だ。TechCurnchは7月15日に数百カ所の映画館を再開予定(マスクの着用を義務付けている)のAMCに話を聞いた。映画館はVOD(ビデオ・オン・デマンド)で公開済みの短編や、「ジュラシックパーク」などの旧作に頼ることになるだろう。30年近く前の同作は、この週末に51万7000ドル(約5545万円)という北米トップの興行成績を上げた。

AMCには、今回の公開延期が劇場再開に与える影響について質問している。

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画像クレジット:Warner Bros.

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Fleetsmithユーザーがアップルによる買収後、アプリへのサポートが失われたことに対して不満

Apple(アップル)が、米国時間6月24日にモバイルデバイス管理ベンダーのFleetsmith(フリートスミス)を買収したことを発表したとき、それは自然な買収のように思えた。だが、Fleetsmithのユーザーたちは、すぐに機能の主要な部分が動作しなくなったことを知り、大多数はそのことについて満足していない。

アップル製品を扱うシステム管理者たちは、買収が発表された朝からFleetsmithがサードパーティのアプリケーションへの接続を許可しなくなったという不満を、ソーシャルメディア上に書き込み始めた。

「本来Fleetsmithは、サードパーティーのアプリカタログを管理していました。このおかげで管理者はChromeやZoomのようなツールをMacに展開することができ、Fleetsmithはそれらのアプリのセキュリティ更新を続けていたのです。これがFleetsmithを購入した主な理由でした」と、FleetsmithのあるユーザーはTechCrunchに語った。

この顧客は、同社がこの機能を会社のブログ投稿で、主要な機能として説明しているのだと付け加えた。

Fleetsmithカタログを通じて管理されるChromeのようなアプリに対して、私たちはテスト、パッケージ化、トリアージ、展開のすべての側面を自動的に処理いたします。(セキュリティパッチを含む)アップデートがある場合には、いつでも迅速にそれらをカタログに追加して、お客様が最新バージョンを適用できるようにいたします。今回のケースでは、アップデートが発表されてから数時間以内にChrome 78.0.3904.87パッチを登録いたしました。

あるシステム管理者が指摘したように、自動化された方法でChromeブラウザーのセキュリティを管理できることは、非常に大切な部分だったのだが、それもまたサードパーティのアプリのサポートとともに削除された。

結局アップルは、移行当日にFleetsmithのユーザーへの電子メールで、この機能を中止することを明らかにした。このメールには、管理者の移行に役立つことを意図したいくつかのヘルプ記事へのリンクが含まれていた。(メール全文は本記事の最後に掲載)。

私が話を聞いた管理者たちの一般的なコンセンサスは、これらのヘルプ記事はまったく役に立たなかったというものだった。課題を解決する方法を説明はしているが、アップルは高度な自動化されたエクスペリエンスを高度な手動化へと変え、更新機能が組み込まれているという対応の早さと使いやすさの利点を、実質的に排除したのだと管理者たちは述べている。

アップルは今週行われた変更後に、ヘルプチケットのリクエストに対応したことを認め、カタログアプリの一部の設定をほどなく復元し、影響を受けた顧客に対して必要に応じて対応していると述べた。しかし、なぜこの機能をまず削除してしまったのかの理由については、同社は明らかにしていない。

Fleetsmithは、Macシステム管理者にとって魅力的ないくつもの重要機能を提供していた。手始めは、箱から出して立ち上げるだけで自動的に新しいMacがセットアップされる機能だ。これにより、新しいMacまたはその他のアップル製デバイスが従業員の手元に届き従業員が電源を入れてWi-Fiに接続すると、すぐにそれはFleetsmithに接続し、システム管理者が使用状況と更新を追跡できるようになる。さらにFleetsmithを使うことで、システム管理者は会社のデバイスに、アップルのセキュリティとOSのアップデートを実施することが可能になる。

そしてさらには、Google Chrome、Zoomなどのサードパーティ製アプリケーションでも同じことが可能だった。そうしたサードパーティーが新しいアップデートをリリースしたときには、システム管理者はすべてのユーザーがそれぞれのマシンで、最新バージョンを実行していることを確実なものとすることができた。だが、この最後のものが今週削除された重要な機能なのだ。

アップルがなぜこの機能を削除したのかは、顧客へのメールの中からははっきり読み取ることはできない。しかしカタログアプリの一部の設定を復元することを除いて、この機能のほとんどは戻ってこないようだ。

買収の日にFleetsmithの顧客に送信された、変更の概要を示すメールは以下のとおりとなる。

Fleetsmithの創業者にコメントを求めたが、回答はない。何か動きがあれば記事を更新する。

画像クレジット:Ron Miller / TechCrunch

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(翻訳:sako)

マイクロソフトがほとんどの実店舗を永久に閉鎖

他の小売業者たちが、ゆっくりと慎重に再開の動きを始める中で、Microsoft(マイクロソフト)はその小売店の大多数を永久に閉鎖することを発表した。ロンドン、ニューヨーク、シドニーなどの主要都市にある旗艦店やワシントン州レドモンドの自社キャンパス内の店舗など、いくつかの例外はあるものの残りの場所は廃止される。

そしてマイクロソフトは続けて、残される少数の場所も今後、普通の店舗ではなく「Microsoftエクスペリエンスセンター」に生まれ変わることを明言している。基本的にそこでは販売ではなく、製品を試用したり学習したりするための場所となる。

「Microsoftストアは小売への新しいアプローチを発表します」といういささか楽観的なタイトルがつけられた投稿(Microsoftリリース)の中で、マイクロソフトは同社がこれまでは自社の実店舗でApple(アップル)との競争を模索してきた小売へのアプローチが、大幅に変化したことを説明している。

そこでは新型コロナウイルス(COVID-19)による計画的な一時的閉鎖にも言及している。しかしパンデミックは間違いなくその部門に影響を及ぼしたものの、長期的にはそうなる流れだったようだ。2019年6月には、同社は米国の小規模な専門店とキオスクを閉鎖している(Windows Central記事)。

「当社の製品ポートフォリオが主にデジタル製品として進化し、当社の売上はオンラインで成長してきました。また私たちの有能なチームは、どんな物理的な場所からよりも顧客にサービスを提供して成功を収めています」と投稿で語るのは、同社の副社長であるDavid Porter(デビッド・ポーター)氏だ。

こうした動きの中でのまずまずのニュースは、マイクロソフトがリソースをオンラインコマースに戻すために、小売の従業員たちを新しい販売やその他の役割に移行することを約束しているということだ。

投稿には「我が社の小売チームのメンバーは、マイクロソフトの施設から顧客に対してサービスを継続しリモートでセールス、トレーニング、サポートを提供します」と書かれている。「マイクロソフトは引き続きMicrosoft.com上のデジタルストアフロントと、XboxならびにWindowsの中のストアに投資し、190の市場で毎月12億人以上の人々にリーチします」。

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(翻訳:sako)

Salesforceがデータの共有に重点を置いたモバイルコラボの営業ツール「Anywhere」を発表

パンデミックでほとんどの従業員が自宅で仕事をするようになる前も、営業担当者はほとんどオフィスの外で働いていた。Salesforce(セールスフォース)は米国時間6月25日、Trailheadx Conference(Salesforce主催の開発者向けカンファレンス)でSalesforce Anywhereという新しいツールを紹介した。チームメンバーがどこにいても共同作業やデータ共有ができるツールだ。

Salesforceの製品担当副社長であるMichael Machado(マイケル・マチャド)氏は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大前から、どこからでも作業できるというテーマについて考えていたと述べた。「当社は、エンドユーザーにとってのモバイルエクスペリエンスが何なのかを考え抜いた。それは高度な独自性があり、なすべき仕事にしっかりと焦点を当て、ユーザーのニーズに応え、ユーザーエクスペリエンスをどう変革できるのかに最適化されている」とマチャド氏は説明した。

パンデミックが常態化し、デジタル技術による協業の重要性が高まるのを目の当たりにした同社にとって、上述したようなアプリは早急に実現すべきアイデアとなった。「新型コロナの出現により勢いがついた。市場を見渡してみると、大きな変革を求める顧客のニーズもそこにあるとわかった。当社はネイティブエクスペリエンスで顧客をサポートしたいと考えた」とマチャド氏は語った。

単なるデータベースとしての役割にとどまらず、個々の営業担当者の状況に基づき最も重要な情報を提供するという構想だ。「ユーザーが欲しい独自のアラートをリアルタイムで提供する。アラートは、ユーザーが使うSalesforceのリストやレポートがベースで、Salesforceのフィールド単位で提供される」と同氏は述べた。

従業員はチーム全体で情報を共有し、その情報に関してチャットできる。マチャド氏によると、他社製品にもチャットツールはあるが、Salesforceのツールはデータの共有に重点が置かれている。Slackや他のビジネスチャットツールのような汎用的なものではない。

画像クレジット:Salesforce

Salesforceは、このツールがCRMでの作業の複雑さを解消する手段になるとみている。営業担当者がCRMツールへの顧客情報入力を好まないのは秘密でも何でもない。だからSalesforceは営業担当者が費やした時間を価値あるものにするために、入力された情報をうまく活用したいと考えている。データ入力作業のためだけにツールが存在するのではなく、営業に関する重要な情報を営業担当者が必要なときに利用できるなら、データ入力はもっと魅力的になるはずだ。また、共有した情報についてお互いにコミュニケーションできることは、もう1つの利点だ。

これにより、在宅勤務の労働者にとって重要性が増している新しいコラボレーションレイヤーが生まれる。新型コロナ前の状態に戻ったとしても、出張中の営業担当者はAnywhereでコラボレーションやコミュニケーションを行い、自分のタスクを管理できる。

新しいツールは2020年7月にベータ版で利用可能になる。同社は今年の第4四半期に一般に利用可能になると見込んでいる。

画像クレジット:Lilly Roadstones / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

Safariの次期バーションではFace IDとTouch IDでウェブログインが可能に

Apple(アップル)のFace IDとTouch IDは、ユーザーがiPhoneやiPadなどのモバイルデバイスにログインすることを簡単にしてきた、また一部のMacにはTouch IDボタンが搭載されている。さらに同社は、Face IDとTouch IDをウェブの世界に持ち込もうとしている。

今週開催された同社のオンラインWWDC(世界開発者会議)で、ウェブ開発者がFace IDとTouch IDのサポートをウェブサイトに追加する方法を紹介した。この方法によって、Safariのユーザーはユーザー名とパスワードを入力することなくウェブサイトにログインすることが可能になる。

アップルは、ウェブ開発者向けのWWDC セッションで、ユーザーに「スムーズな体験」を提供できるようにするために、同社が開発者たちに強く推奨する新しい機能を披露した。iOSアプリでFace IDとTouch IDが機能するやり方と同様に、新しいテクノロジーの実装を選択したウェブ開発者は、ユーザーが次にウェブサイトにアクセスしたときに、生体認証方式を選択できるようにすることができる。

このテクノロジーはWeb Authentication(WebAuthn)APIを介して構築されたものだ。このAPIを使うことによって、開発者はFIDO Allianceによって開発されたFIDO2仕様を介して認証システムを構築することができる。FIDOによれば、Safari14からmacOSとiOS向けに利用可能になるという。

CNETが説明しているように、このブラウザ技術を使用するのはアップルが最初ではない。例えば、Firefox、Chrome、Microsoft Edgeなどではすでに利用可能だ。

しかしアップルによる採用は、バイオメトリクスの動きをより広範囲に押し進める可能性がある。これは、一部には同社が複雑なテクノロジーを消費者にとって使いやすくし、ユーザー教育の仕事を引き受けるやり方に影響されるからだ。また同社、自社開発の最新テクノロジーを展開することに興奮する、かなりの規模の開発者コミュニティも抱えている。

新しいシステムは、その成り立ちから考えればデフォルトで多要素システムとなる。

アップルのプラットフォーム認証システムは、iPhoneまたはiPadのセキュア・エンクレーブを使用して秘密鍵を提供しており、またその秘密鍵がデバイスから外に出ることが決してないことを保証している。またそれは、指紋または顔認識によってユーザーを認証している。これにより、ユーザーが所有しているもの(iPhone)と、ユーザー自身の一部であるもの(バイオメトリクス情報)が組み合わさることで多要素となる。

またBiometric Updateのレポートによれば、同じWWDCのセッションの中でアップルが独自の認証サービスを開発していることも明らかにされた。このサービスは、例えば銀行のように特に高度なセキュリティ要件を持つところへのオプションサービスとなる。こうしたテクノロジーはプライバシーを侵害するために使用される可能性があるため、同社は個別認証情報ごとに固有の証明書を生成する独自のバージョンを構築したのだ。これにより、ウェブサイトはウェブを横断してユーザーを追跡することができなくなる。このサービスはまだ利用できないが、まもなく利用できるようになる予定だ。

アップルは今年初めにFiDO Allianceに参加し、現行のパスワード方式を、信頼できるデバイスとバイオメトリクスで置き換える方式に向けて取り組む意向を表明している。また同社は、MacでFace IDを使用する手法の特許も取得しているものの、そちらはまだリリースされていない。

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(翻訳:sako)

レシカがブロックチェーン活用の医療データ共有サービス開発、千葉大医学部附属病院と共同研究

レシカ ブロックチェーン 分散型医療データ共有サービス

ブロックチェーン(分散型台帳技術)基盤のソリューションを提供するレシカは6月26日、千葉大学医学部附属病院検査部遺伝子診療部研究チームとの共同研究により、医療従事者間または医療従事者と患者間において、患者の診療データを所有・共有する仕組みを開発した。研究内容は、文部科学省基盤研究事業・研究課題の「中央集約型と分散型の併用による医療情報共有のためのトラスト(信頼関係)の評価法」(研究代表者:松下一之)。また今回の検証では、千葉大学医学部発のゲノム・DNA解析ベンチャーのゲノムクリニックが遺伝子データを提供した。

同研究では、将来的に医療業界において医療従事者同士や医療従事者と患者間での医療データの情報共有が進んでいくこと、さらに診療情報のデータ化に伴う患者自身による診療データの保持が進められていくとしている。今回の取り組みの初期段階において、レシカは、秘匿性の高い診療情報が改ざんされることなく、限定された者のみが情報にアクセスできること、また誰がアクセスしたかという履歴について透明性を持って検証できる仕組みとして、ブロックチェーン技術を活用したPoC(概念実証)アプリケーションラットフォームを開発した。

ブロックチェーン技術について、患者自身による医療データの安全な管理、かつ第三者との共有を両立可能にするインフラと位置付けており、医療情報へのアクセス権限に関して、医療従事者などへの信頼度(トラスト)を患者本人が設定することを特徴として挙げている。

今後レシカは、同プラットフォームをベースとした医療現場への実サービス活用、医療に限らず患者のクオリティオブライフ(QOL)を高めるユースケースを検討していく。外部の医療機関および企業の関係者と新たなアプリケーションを開発し、患者の幅広い診療データの有効活用と安全な共有を目指していく。

凸版印刷が次世代IoT通信LPWA対応のキット一式をサブスクで提供

凸版印刷 ZETADRIVE ZETAスターターパック

凸版印刷は6月26日、次世代LPWA(低消費電力広域ネットワーク)規格ZETA(ゼタ)対応サーバーと、データ集積・閲覧可能なプラットフォーム「ZETADRIVE」(ゼタドライブ)の提供開始を発表。あわせて、その利用権と関連ハードウェア一式をセットにした「ZETAスターターパック」を明らかにした。7月1日より、月額3万8500円のサブスクリプションモデルで提供する。

ZETAは、超狭帯域(UNB: Ultra Narrow Band)による多チャンネル通信、メッシュネットワークによる広域・分散アクセス、双方向の低消費電力通信が可能な、LPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク規格のひとつ(ZiFiSense開発)。ZETAは、中継器を多段経由するマルチホップ形式の通信を行うことで基地局の設置を少なくでき、低コスト運用が可能となっている。

凸版印刷のZETADRIVEは、デバイス管理を行うクラウド上のZETAサーバーと、収集したセンサーデータの閲覧システムで構成。データの収集・管理から見える化までを一貫したサービスとして提供する。データ取得、機器制御などのAPIを用意しており、ユーザーのニーズに合わせたシステムやアプリケーションの連携が可能。また、アプリケーションのカスタム開発もサポートする。

凸版印刷 ZETADRIVE ZETAスターターパック

また、凸版印刷が提供する暗号鍵・証明書のネットワーク配信や管理を行う「トッパンセキュアアクティベートサービス」とも連携予定。

ZETAスターターパックは、ZETA通信に必要な「アクセスポイント(基地局)」、「中継器(Mote)」「通信モジュール搭載評価ボード」、「Grove-高精度温度センサー」からなるハードウェアと、ZETAサーバーおよびZETADRIVE利用権などをスターターパックとしてまとめたもの。サーバー構築の負荷がなく、ネットワーク構築に必要なハードウェアの初期投資を抑え、通信評価や実証実験、およびZETA対応IoTデバイスの開発環境構築などがスピーディに行える。また別売のセンサーも順次用意する予定。

凸版印刷 ZETADRIVE ZETAスターターパック

凸版印刷によると、スマートシティなどIoTの本格普及に向け、多数のセンサー端末からのデータ収集方法として、省電力性・広域性および低コストでネットワーク構築が可能なZETAが注目を集めているという。

しかし、LPWAやZETAを含めIoT活用のビジネスを始める際、サーバー構築における負荷やネットワーク構成機器への初期投資が必要なため、スピーディな展開を行いにくく課題となっていた。

凸版印刷は、サブスクリプションモデルのZETAスターターパックの提供により、ソフトとハード両面で初期費用や導入負荷を低減可能にするという。LPWAニーズが高い、スマートビルやオフィス管理、農水産業、社会インフラ、獣害・防災対策といった自治体向けのソリューションなどに展開し、2025年度までにZETA関連事業で約50億円の売上げを目指す。

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今週の記事ランキング(2020.6.21〜6.25)

今週もTechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。ランキングの1位と2位は、やはり今週に開催されたAppleの開発者向け年次イベント「WWDC20」に関連する記事だった。なかでも「WWDC関連記事まとめ」では、当日公開されたTechCrunch Japanの記事をまとめているので、まだWWDCの情報を整理しきれていない読者のみなさんにぜひ読んでいただきたい。

セグウェイが20年続いた生産を終了するというニュースも大いに注目されている。そのほかにも、企業向けチャットツールのSlackが、企業内だけでなく企業外の人とも繋がれる機能「Connect」を発表したニュースも同様に注目されている。いよいよ電子メールの時代も終わりを迎えるのかも?

それではまた来週!

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佐賀県が「SAGA′n START起業支援金」の対象スタートアップなどを募集開始

SAGA′n START起業支援金

地方創生ソリューション事業を手掛けるエスビージャパンは6月26日、佐賀県主催の起業家支援プロジェクト「SAGA′n START起業支援金」事業説明会を開催すると発表した。開催日時は7月11日13時30分から。開催場所は佐賀市駅前中央にあるマイクロソフトAI&イノベーションセンター佐賀(佐賀市駅前中央1丁目8-32)。最大200万円(補助率2分の1)の起業支援金に対する支給対象者募集について説明する。

事業説明会は専用サイトから申し込める。なお、事業説明会への参加は補助金申請に関して必須ではない。

SAGA’n START 起業支援金は、佐賀県(地域交流部さが創生推進課)が主催する令和2年度佐賀県地域活性化等起業支援事業。佐賀県内において、地域課題解決に向けた起業を考えている個人や事業者などを対象に最大200万円(補助率2分の1)を支援する(審査あり)。募集期間は7月1日〜8月7日(17時必着)。対象経費は、人件費、店舗・事務所など賃借料・設備費・原材料費・賃借料、謝金、旅費、知的財産権など関連経費、外注費、委託費、広報費、マーケティング調査費など。

また起業資金だけでなく、商品開発、販路開拓、広報・プロモーション、資金計画、労務管理など、補助事業者の要望に合わせて全5回のワークショップも実施する。

支援対象資格は以下のとおり。

  • 交付決定日から完了日までに個人事業または株式・合同・合名・合資・企業組合・共同組合・特定非営利活動法人の設立を行うこと
  • 佐賀県内に居住する、補助事業完了日までに佐賀県内に居住を予定している方
  • 開業届け出、法人登記を佐賀県内で行うこと
  • 申請者、または設立される法人の役員が、暴力団などの反社会的勢力または反社会的勢力との関係を有する者ではないこと

マーケットプレイスの階層、レベル2ティッピングとは

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説する ポッドキャスト「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。

自己紹介

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきて、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicでは、D2C企業の話、マーケットプレイスの作り方、最新テックニュースの解説をしている記事やポッドキャストもやってます。まだ購読されてない方はチェックしてみてください!

はじめに

今回も引き続き、Sarah Tavel(@sarahtavel)さんから許可をいただき、「Hierarchy of Marketplace Level 2」を翻訳させていただきました。前回を読まれてない方はこちらから読めます。

レベル2のティッピングとは?

前回の記事「マーケットプレイスの階層、レベル1キックスタートとは?」では、マーケットプレイスの最も重要なこと、最も長続きできて勝ち筋を作れる方法ははGMVではなく満足度を向上させることを解説しました。

これはマーケットプレイスを作るうえでグロースに専念しないということではないが、そのグロースは満足度を向上させるためのグロースではなければならない。今回のレベル2はまさにその話を解説します。

レベル1での目標がトランザクションをキックスタートさせて「Minimum Viable Happiness」を(実用最小限の満足度)達成することだった。レベル2の「ティッピング」ではその満足度をさらに上げて、市場が自社のマーケットプレイスに傾き始めるぐらい競合・代替品より良いものを提供するのが目標。

「ティッピング」とは、ネットワーク効果が作動し始める瞬間で、新しい満足度レベルになるタイミング。「ティッピング」状態になるとグロースするのが急に楽になり始める。既存コホートのリテンション数字が上がり、各ユーザーからの平均トランザクション数も増える。新規の売手・買手は広告チャネルではなく、オーガニックで入り始める。

これは競合と比べてどれほど市場に入り込めたかによって達成する(ある程度の規模がないとネットワーク効果が生まれないので)。このタイミングでグロースにフォーカスするべき。

レベル1ではスケールしないことをやるべきだったのが、レベル2ではスケール方法を考えるタイミング。

これはやるには売手と買手のマッチングをどんどん良くする継続的、そしてスケール出来るグロース戦略が必要となる。そのグロース戦略とは「ティッピングループ」、いわゆるシステマチックに勢いをつけてくれるループを探して、最大化すること。

このループとは2つの種類がある。

  1. グロースループ:既存の売手と買手を活用してユーザー獲得コストを下げるもの
  2. 満足度ループ:サプライ側の仕分け機能であり、より売手が良い買手を探しやすくするもの

注意したいのは、すべての市場はこのティッピングポイントに至らないこと。傾かないハードルを6つほど後ほど説明する。

グロースループ事例

グロースループは既存の売手と買手を活用してユーザー獲得コストを下げるもの。

Uber

  1. ドライバーが運転を楽しむ
  2. ステップ2:友達をリファーラルする
  3. ステップ3:新規ドライバー獲得

Hipcamp

  1. Hipcamperで予約する
  2. 友達を予約に招待する
  3. 新規ユーザー獲得

満足度ループ事例

Uber Eats

  1. ユーザーがレストランを検索
  2. より早いデリバリー時間のレストランが高くランキングされ、より多くのユーザーから注文を受ける
  3. ユーザーはより早くデリバリーを受ける
  4. ユーザーは体験に満足して、離脱しない

Airbnb

  1. ユーザーがホストの家に泊まる
  2. ユーザーがレビューを書く
  3. レビューの応じてホスト側の評価が変わる(上がる・下がる)
  4. より多くのユーザーがより評価が高いホストとマッチングされ、より良い体験に繋がる

満足度ループは非常に重要で便利。マーケットプレイスに残したい、デマンド側の体験を良くしようとしているサプライサイドをより高く評価する仕組み。そして買手にとってはより良いマッチングに繋がり、最終的には満足度向上と買手側のリテンションにも影響する。

ループを見つけて最大化するのがマーケットプレイスの役割

マーケットプレイスを作っている企業の仕事はこのループを見つけ出して、早いスピードで回すことです。Uberのグロースループを見ると、お金(リファラル)でより早く回すようにした。

Airbnbではホストへ「スーパーホスト」バッジを作ることによって、「評価」ループをより早く回せた。

  1. ホストが実績を積む
  2. ホストが「スーパーホスト」バッジを獲得
  3. より高いコンバージョン率を得られて、ユーザーはより良い体験を

Airbnbの「スーパーホスト」バッジは、もともとはホストがきちんと認められている感覚をもたらせるために作ったものだった。そして、同時に「良いホスト」とは何か定義付けた。これを実行したおかげでグロースループを加速させる3つの効果があった。

まずはAirbnb上での期待値コントロールができた。ホストとしてはゲストの体験を良くするための行動や評価ポイントがわかった。次にバッジを獲得したホストはちゃんとしたバリューを得られているので、そのバッジをなくしたくなく、離脱しなくなる。このように差をつけることによってリテンションを向上させる仕組みを作った。そして最後に、旅行者側はレビューをいっぱい読まなくてもいいホストの区別がしやすくなり、それでサービス全体の満足度が上がる。

ループを加速させるためにはトランザクションの摩擦を減らし、流動性を上げなければいけない。これはマーケットプレイスをやっている以上、常に流動性を向上させる方法を探さなければいけない。以下いくつかの事例を紹介を紹介する。

サプライ側

  • オンボーディングの難しさ
  • 在庫の管理の難しさ
  • キャッシュコンバージョンサイクル
  • トランザクションフィーは正しいのか?

デマンド側

  • 取引・マッチする難しさ
  • 検索がコンバージョン率、もしくは検索から結果ゼロの割合
  • エラー率(サプライヤーから反応がない、もしくは期待外れの回答)
  • 求めてた結果を得られて、満足しているのか?

トランザクションフィーに関しては、以下事例を見るのがいいだろう(元データはBill Gurleyさんの記事)。

引用:Reforge

その他、下図でなんとなくマーケットプレイスの種類によっての平均トランザクションフィーをJackson Square VenturesのJosh Breinlingerさんがまとめている。

そして、マーケットプレイスの流動性についてもっと知りたい場合は以下のTwitterスレッドを参照してほしい。

ティッピングのハードル

すべての市場がティッピング対象とはならない。本記事ではティッピングをしにくくする6つの要素をまとめておく。

まずは競合。競合がいるとループだけで市場を傾けさせるのは難しい。マーケットプレイスのデザインを改善し続けて、満足度の向上を少しずつ上げる様にしよう。その中、UberとLyftみたいにお金で解決できるかもしれないが、お金は競合も同じ様に使えるので気をつけるべき。出来るだけ継続的に活用できるものを選ぼう。

競合を避けるためにDoorDashは田舎や郊外を選んだ。マーケットプレイスを作る上では競合がいないニッチな市場を選ぶのも立派な作戦だろう。

そして長期的に考えるのが重要。最初から高いフィーを要求するのは短期的にいいかもしれないが、より競合が入りたくなる要素にも繋がる。

マーケットプレイスの両サイドが断片化されてなく、片方でも数名や数社に力や権利が集まっていると、その人や会社にかなり頼らなければいけない。そのため、彼らに自社マーケットプレイスに入り込んでコミットしてもらえない可能性がある。これは旅行系のマーケットプレイスを見るとわかりやすい。旅行系マーケットプレイスのほとんどは断片化されているホテル業界からマネタイズして、断片化されてない航空会社からお金をとっていないのはこの理由。

マーケットプレイスはバランスが大事。サプライサイド、デマンドサイド、両方の満足度を常に気をつけなければいけない。片方でも見失うと、一気にすべてが崩壊する可能性がある。

Grouponが良い事例だ。サプライサイドのレストランが期待していたユーザーからのリピート率が思った以上に低かったため離脱するレストランが多かった。同じく、ClassPassもサプライサイドの理想的な在庫数を見つけるまでは似たような問題を抱えていた。

マーケットプレイスはレギュレーション(規制)や法律をうまく活用して成長できるとともに、逆に成長を止めることもできる。加速させた事例としてはAirbnbの初期はホテルとして認識されなかったため、宿泊税を負わなかった。逆にUberやLyftでは今年話題になったギグエコノミー法「AB5」の影響で成長が止まる可能性がある。なお、AB5について詳しく知りたい読者は、以前ポッドキャストで解説したのでチェックしてほしい。

Airbnbだと各ユーザー(買手)は違う好みがあるため、サプライサイドを増やすことによって買手側の満足度を増やせる。逆にMechanical Turkみたいなマーケットプレイスだと各サプライが似ているため、他のマーケットプレイスが同じ満足度レベルを作る障壁はそこまで高くない。

結局、マーケットプレイスを数々見たBill Gurley(ビル・ガーリー)さんの考えとしては、マーケットプレスで最終的に一番大事なのはデマンド側の集められるか。サプライ側は初期に必要だったりするが、意外と集まりやすいケースが多い。短期的にはサプライ、長期的にはデマンドが重要。デマンド・買手側をコントロールできないと、ただの送客ツールにプロダクトデザインにしかならない。

使われる頻度が低いマーケットプレイスは特にここを気にしなければいけない。ZocDocは数千人の医者を集められたが、デマンドサイドと関係性を作れなかったため、市場を彼らの方向に傾けられなかった。

次回記事はレベル3の「支配」するため、いわゆる「勝つ」ための最後のステップとなります。

AWSのノーコードツール「Amazon Honeycode」はなぜ生まれたのか?

米国時間6月24日、AWSはAmazon Honeycode(アマゾン・ハニーコード)を リリースした。これはAmazon(アマゾン)クラウドサービスへのちょっとした迂回路を提供する、スプレッドシートのようなインターフェースを中心に構築されたノーコード環境だ。

結局のところAWSの目的は、開発者にアプリケーションを構築するために必要なすべてのツールを提供することだが、最終的には開発者がすべての要素を組み合わせなければならない。

一方でHoneycodeは、基本的な業務アプリケーションを開発したい非プログラマーにアピールすることを目的としている。もしスプレッドシートの操作方法を知っていて、それをアプリにしたい場合には、Honeycodeが要求に応えてくれるだろう。

このサービスの背後にあるAWSの動機を理解するために、AWSのVPであるLarry Augustin(ラリー・オーガスティン)氏とAWSのゼネラルマネージャーであるMeera Vaidyanathan(ミラ・ベイディアネイサン)氏に話を聞いた

「私たちにとって、これはAWSのパワーをお客さまの中のより多くのユーザー方々に拡大することなのです」とオーガスティン氏は説明する。「私たちはお客様から、常に解決したい課題があるのだという声を聞いています。そうしたお客様は、ご自身のITチームや、アウトソーシングを含む他のチームに対して、その課題を解決するアプリケーションの開発を任せたいとお考えです。しかし、問題はそれを解決できる開発者の数よりも、カスタムアプリケーションへの要求数の方が、とにかく上回っているということなのです」と続ける。

画像クレジット:Amazon

そうした点ではHoneycodeの背後にある動機は、Microsoft(マイクロソフト)がPowerAppsローコードツールで行っていることとそれほど異なっているわけではない。PowerAppsも結局のところ、Azureプラットフォームを必ずしもフルタイムの開発者ではないユーザーに開放するものなのだ。しかし、AWSはここでは少しだけ異なるアプローチをとっていてHoneycodeのノーコードの部分を強調している。

「Honeycodeに対する私たちの目標は、ビジネスの中心で基幹業務に関わる人、ビジネスアナリスト、プロジェクトマネージャー、プログラムマネージャーといった人たちが、自分たちの問題を解決できるカスタムアプリケーションを、コードを書く必要なく、簡単に作成できるようにすることでした」とオーガスティン氏は語る。「それが重要な要素でした。コーディングは必要とされていないのです。そこで私たちは、出発点として多くの人々がなじみのあるスプレッドシートのようなインターフェースを提供することで、それを実現することを選択しました」。

多くのローコード、ノーコードツールたちは、開発者に「コードに逃げ込む」(オーガスティンの言葉)ことも許すが、それはここでは意図されていない、例えばHoneycodeからコードをエクスポートして他の場所に移動するためのメカニズムは存在していない。

「Honeycodeを開発しているときに、私たちの心をよぎったのは、ああ、もし人々にやりたいことがあって、私たちが彼らにコードに逃げ込むことを許すことでそれ実現できるようになるのならという考えでした。私たちは何度も振り出しに戻って『うーん、じゃあどうやってコードに逃げ込むことを強制せずにそれを可能にできるのだろう』という問に答えようと努力し続けたのです。そこで私たちは、コードに逃げ込むことなく、大きな力を人びとに与えたいというマインドセットへと、自分たちを真剣に追い込んだのです」と彼は述べた。

画像クレジット:Amazon

とはいえ、経験豊富な開発者が他の場所からデータを取り込むためのAPIは用意されている。オーガスティン氏とベイディアネイサン氏は、企業たちがプラットフォーム上のユーザーのためにこれを行うか、AWSパートナーがこれらのインテグレーションを作成することも期待している。

ただし、こうした制限があったとしても、かなり複雑なアプリケーションを作成できるとチームは主張している。

「私たちはAmazon内で、さまざまなアプリを構築している多くの人々と話し合ってきました。そして私たちのチームの中でさえ、私は正直に言えば、まだ不可能だと思える事例に出会ったことはありません」とベイディアネイサン氏は言う。

「複雑さのレベルは、あなたがビルダー(構築者)としてどれくらいの専門家であるかどうかに本当に依存していると思います。アプリの中でデータを特定の形式で表示しようとすると、(スプレッドシートの中に)非常に複雑な式が現れることがあります。そして、決して作り話ではありませんが、入れ子に入れ子がひたすら重なって30行にも及ぶ複雑な式を書く人を見たこともあります。ですから、それはビルダーのスキルに依存していると私は本当に思っています。また、一度Honeycodeでビルドを開始すると、私自身もそうですが、単純なものから始めてだんだんと野心的になって、このレイヤーを追加したい、そしてあんなこともしたい、という具合になることに気が付きました。それは本当に私が目にしてきた、ビルダーたちの進歩の旅なのです。たった1つのテーブルと2、3の画面から始めて、意識しないうちに、ニーズに合わせて進化し続けるはるかに堅牢なアプリが得られるのです」。

Honeycodeを際立たせるもう1つの機能は、スプレッドシートがユーザーインターフェイスの中央に配置されることだ。そうした点からは、このサービスはAirtableのように見えるかも知れないが、その先それぞれのスプレッドシートがまったく異なる方向へ向かっていくことを考えると、見かけ上の比較は意味がないと思う。Retoolも比較の観点からも眺めてみた。こちらの方がより意味のある比較だと思う。しかしRetoolが相手にしているのはもっと高度な開発者であり、コードを隠すこともしない。とはいえ、これらのサービスがスプレッドシートを中心に構築されたのには理由がある。それは、誰もがそれらの使用方法に精通しているからだ。

「人びとは何十年もの間スプレッドシートを使用してきました」とオーガスティン氏は語る。「誰でも良く知っています。また、非常に複雑で、深く、非常に強力な式を記述して、とても強力なスプレッドシートを作成することができます。Honeycodeでも同じことができるのです。人びとがその比喩に十分に精通していることを私たちは感じたので、それをアプリに変える能力とともに、そのフルパワーを彼らに与えることができたのです」。

チーム自身もHoneycodeのリリースを管理するために、そのサービスを利用しているということを、ベイディアネイサン氏は強調した。そして製品名を投票するためにも用いたことも(ベイディアネイサン氏とオーガスティン氏は他にどんな候補があったのかは明かしてくれなかったが)。

「AWSの力を引き出し、それをプログラマーではない人びとの手に渡せるという点で、私たちはある意味、本当に革新的な製品を手に入れたのだと思います」とオーガスティン氏は語った。

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(翻訳:sako)