Grab(グラブ)は米国時間8月4日、これまで主に起業家や零細事業者向けのサービスにフォーカスしていた金融部門が、マイクロ投資やローン、健康保険、後払いプログラムなどを含む消費者向けプロダクトを立ち上げると発表した。
シンガポールに拠点を置くGrabは2012年に配車サービス会社として創業し、その後オンデマンド配達などの分野へとサービスを拡大した。そして、デジタル保険マーケットプレイスを構築するために2019年1月にZhongAn Insurance(ゾンアン・インシュアランス)と合弁会社を立ち上げた。以来、金融サービスのポートフォリオは提携やBento(ベント)買収を通じて増加した。Bentoの買収によって投資や資産管理のサービスも提供できるようになった。
2020年2月にGrabは決済と金融サービスの開発をスピードアップするために8億5600万ドル(約905億円)を調達したと発表した。
8月3日にBloomberg(ブルームバーグ)はGrabが韓国のプライベートエクイティ会社であるStic(スティック)から2億ドル(約212億円)を調達したと報じた。これにより累計調達額は100億ドル(約1兆577億円)、バリュエーションは143億ドル(約1兆5124億円)となった。Grabの広報担当は今回の資金調達について、TechCrunchのコメントの求めに応じなかった。
成長マーケットへの参入
記者会見での黒字化達成タイムラインについての質問に対し、Grab Financial Group(グラブ・ファイナンシャル・グループ)のシニアマネジングディレクターであるReuben Lai(ルーベン・ライ)氏は、タイムラインはまだないが「今日立ち上げようとしているプロダクトに対する真の需要があることが調査でわかった。消費者にフォーカスし、彼らが使うプロダクトを届けたい。収益性や持続性は後からついてくると考えている」と話した。
Grab Financial Groupの新プロダクトには、消費者がGrabのアプリを通じて小額を投資できるプラットフォーム、消費者ローン、後払いプログラムそしてまずはインドネシアで立ち上げる入院保険を含む保険関連商品などがある。
Grabの新たな消費者プロダクトの取り組みは新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック前に始まっていたが、新型コロナ危機でオンラインショッピング、デジタル決済、保険のようなサービスに対する需要が加速した、とライ氏は話している。
Grabの消費者プロダクトは、シンガポール拠点のオンライン投資プラットフォームStashAway(スタッシュアウェイ)のようなサービスと競合する。しかしライ氏は、Grab Financial Groupの強みは数百万人ものGrabユーザーが東南アジアにいることだと述べた。つまり、信用力を決定するのに使うスコアリングモデルを絶えず最新のものにするための消費者ベースとデータがすでにある。
Google(グーグル)とTemasek(テマセク)による研究プログラムであるe-Conomy Asiaの2019年レポートによると、東南アジアの人口の70%が「underbanked(銀行口座を開設できない貧困層)」だ。これはクレジットカードや長期貯蓄プロダクトへのアクセスがないことを意味する。アジアの金融センターの1つであるシンガポールですら消費者の約40%がunderbankedだ。Bainとe-Conomyは東南アジアのデジタル金融サービスの売上高が2025年までに600億ドル(約6兆2460億円)となると予想しており、Grabにとって儲かるマーケットとなる。
マイクロ投資と保険
Grab Financial Groupの保険の大半はこれまでGrabプラットフォームのドライバーや販売事業者など社内エコシステムを専門としていた。しかし、まずインドネシアで立ち上げられる同国のヘルスケアシステムを補完する入院費用保険などの新たなプロダクトは消費者をターゲットとしている。
2016年にBentoを設立し、現在はGrabInvestの責任者であるChandrima Das(チャンドリマ・ダス)氏は、Grabの新マイクロ投資ソリューションはGrabのデジタルウォレットを通じて利用できる、と話した。ユーザーは Fullerton Fund ManagementとUOB Asset Managementが管理する流動債券ファンドに1シンガポールドル(約77円)から投資し、利率1.8%でリターンを得ることができる。こちらは9月初めにまずはシンガポールで提供が始まる。
Grab Financial Groupはすでにドライバー向けに運転資金ローンを、プラットフォーム上の小売業者に融資を提供しているが、新たな消費者クレジットプロダクトにはPayLaterが含まれる。このサービスはユーザーがGrabサービスの支払いを月末にすることができるというもので、最初にシンガポールとマレーシアで利用可能になる。
また、認可を受けたサードパーティーの銀行や金融機関の消費者ローンも提供する。Grab Financial Groupの貸付部門責任者、Ankur Mehrotra(アンクール・メロトラ)氏は、手続きはシンプルで「ソファに座ってNetflixを観ながらできる」と話す。
メロトラ氏は、小売事業者向けのプログラムのメリットとして、流通取引総額や1回の取引量の増加、カート離脱(商品をカートに入れても購入に至らないこと)率の低下を挙げた。
画像クレジット:SOPA Images / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)