グーグルがpringを買収した理由とは? 「米IT大手が日本の決済市場を席巻」は本当か

グーグルがpringを買収した理由とは? 「米大手ITが日本の決済市場を席巻」は本当か7月13日、Googleはモバイル金融サービスを提供する「pring(プリン)」の全株式を取得するための契約に合意したことを発表した。

同社には親会社のメタップスをはじめ、ミロク情報サービス、日本瓦斯(ニチガス)、伊藤忠商事、ファミマデジタルワン、SBIインベストメント、みずほ銀行、SMBCベンチャーキャピタルなどメガバンクを含む複数の資本が入っており、株式譲渡が完了するとみられる8月中には実質的にGoogle傘下の企業となる。

Googleによる買収が発表された「pring(プリン)」

Googleによる買収が発表された「pring(プリン)」

pringでは買収後も既存のサービスに変更はないと説明しているが、同件の最初に報じた日本経済新聞では「Google、日本で金融本格参入へ 国内スマホ決済買収」のタイトルで、Googleがpringをベースに日本国内における送金・決済サービスの分野に本格参入することを伝えており、いわゆる「GAFA」などの名称で呼ばれる米IT大手の金融分野での日本進出が本格化しつつあることを予感させる流れになっている。

「pring(プリン)」とはどういうサービスか

pringの会社設立は2017年、サービス開始はiOS版アプリの登場した2018年3月と、「○○Pay」などが多数リリースされた時期に登場した金融スタートアップの1社となる。

pringに関してよく誤解されている1点を挙げれば、同社が志向しているのは「○○Pay」が提供しているような「QRコード(バーコード)決済サービス」ではなく、「送金」を中心とした「シンプルなお金の移動サービス」だ。

以前に筆者が同社代表取締役の荻原充彦氏にインタビューしたときに、同氏は「純粋に送金に特化しているサービスは少ない。目指すのは早くて便利でどこでも使えるSuicaのようなサービス」とpringの特徴を説明している。

JCBの提供しているSmartCodeの仕組みなどを通じてQRコード決済が行える機能もあるものの、主眼はあくまで「個人間送金」、あるいは企業が経費精算などで従業員への支払いなどに利用する「業務用プリン」といったサービスとなる。

「なぜGoogleはpringに興味を持ったか」「pringをどのようにGoogleの金融サービスに組み込んでいくのか」という2つの疑問があるかと思うが、後者については比較的簡単に説明できる。

pringをGoogle Payの「ウォレット(Wallet)」とし、ここを基点にして送金や、決済など他の金融サービスと連携していくのが将来的な計画だろう。

送金などで受け取ったお金はいったんウォレットにプールされ、再び他者に送金したり、そのまま買い物や銀行口座などから引き出すことができる。pringの場合は銀行口座と連携せずともセブン銀行ATM経由でウォレットへのチャージや現金の引き出しが可能なため、この仕組みを手軽に利用できる。

セブン銀行との提携で会見したpring代表取締役の荻原充彦氏(右)

セブン銀行との提携で会見したpring代表取締役の荻原充彦氏(右)

セブン銀行ATMでアプリから出金する

セブン銀行ATMでアプリから出金する

ただ興味深いのは、この送金機能が現在提供されているのは米国とインドの2ヶ国のみだ。Google Pay自体は本稿執筆時点で40ヶ国でのサービス提供が行われているにもかかわらず、2015年のサービス開始(当時は「Android Pay」の名称)から6年経過した現在においてなおこの状態となっている。

多くの国ではGoogle Payにカードを登録してオンラインやオフラインの店舗での支払いに利用できるのみだ。またインドで提供されているサービスは(2017年のサービス開始当初は「Tez」のブランド)、登録された銀行口座間の送金が基本となっており、いわゆるウォレット方式とは異なる。モバイル送金それ自体は非常に便利な仕組みだが、Google Payのような決済サービスと組み合わせることで残高の利用機会が増え、互いに相乗効果をもたらす。

日本におけるGoogle Payは登録可能な対応カードや決済手段が限られており、どちらかといえばFeliCaチップを使った「おサイフケータイ」に依存する部分が大きい。個人的意見でいえばGoogle Payを使う場面は自ずと限られているという認識だが、今後「送金」の仕組みが加わることで、より活用場面は増えるだろう。

Google Payの店頭決済において利用可能なカード一覧。選択肢としては決して多いとはいえない(出典:Google)

Google Payの店頭決済において利用可能なカード一覧。選択肢としては決して多いとはいえない(出典:Google)

金融端境期のGoogleによるpring買収

「送金」サービスと一口にいうが、実際に使い勝手のいいサービスを提供するのは難しい。「マネーロンダリング防止の観点から送金の監視が必要」という話に加え、「異なるサービス間でどのように送金を行うのか」という問題がある。

同一サービス間であればアカウント同士の残高を移し替えるだけなので問題ない。ところが送金先が同一サービスにアカウントを持っていない場合、異なるサービスのアカウントを指定して送金を行う必要がある。現状、そのような仕組みが実装されているケースはほとんどなく、例えば「割り勘」のような仕組みを実装する際の障壁となっている。

皆が皆使っているサービスなら問題ないが、そこまでユーザーを獲得しているサービスはそうない。Google Payがもし送金機能を標準で実装し、さらに日本において多数のユーザーが存在する“iOS向け”のGoogle Payアプリをリリースすれば、この問題を解消できるかもしれない。

pringアプリのメイン画面

pringアプリのメイン画面

送金サービス提供にあたってもう1つの問題が振込手数料の存在だ。前述のように同一サービス間であれば残高の付け替えだけで済み、ほとんどコストのかからない作業だが、アカウントへの出入金や他のサービス(あるいは銀行口座)への送金が発生した場合、振込手数料が必要となる。

pringを含む“送金”や“出入金”の機能を提供する「○○Pay」の金融サービス事業者は改正資金決済法における「資金移動業者」と定義される。資本規制を含むさまざまなルールが規定される免許事業者の銀行と比べて参入障壁は低いものの、100万円以上の資金の移動に制限を受けたり、「預金」にまつわるサービスが提供できないなど、決済や送金に特化した認可事業者の扱いだ。

位置付けとしては、資金移動業者は特定の銀行の支店に口座を持ち、そこを通じて他のサービスや銀行と精算業務を行っている。銀行間の資金決済処理は全銀システムを通じて行われているが、その際に必ず手数料が発生する。

一般に、銀行口座振込で1回あたり2百数十円の振込手数料が要求されるが、これは全銀システムを経由していることによる。近年、この全銀システムの手数料の高さや、システムへの接続が銀行以外のサービス事業者(資金移動業者など)に開放されていないことが問題視されており、手数料値下げや緩和の方向に向かいつつある。

また、全銀システムなどの利用料が1回利用あたりの一律料金で設定されていることにより、特に小額送金や決済において「手数料が相対的に非常に高くなる」という点も、キャッシュレス化の進展において小額決済が現金からキャッシュレス決済に移行する際の障害になっていると考えられている。

小額決済や送金を可能にする「ことら」という仕組みがメガバンクらを中心にJ-Debitの仕組みをベースに検討されており、こうしたニーズとのギャップを埋めるべく金融業界の新しい動きとなっている。つまり、オンラインシステムが稼働を開始してから長らく変化の少なかった銀行業界だが、ここ最近になり急速な変化が起きつつある。

これはインターネット事業者など業界外からの参入が増え、競争が激化しつつあることと無縁ではない。Googleのpring買収はこの日本での金融端境期の中で起きた大きなイベントの1つであり、2016年のApple Payの日本でのサービスインと合わせ、少なからぬ影響を業界に与えることになると考える。

米IT大手が日本の金融市場を席巻するという話は本当か

この手のニュースが報じられると、毎回話題になるのが「米国のIT大手が日本の金融市場も席巻し、銀行は過去のものになる」というテーマだ。

実際のところ、金融業界は規制に大きく縛られた業界であり、国ごとにルールや商習慣も大きく違う。仮に先進的で革新的なサービスであっても、そう簡単に複数の地域や国に一度に展開が可能なほど甘い世界でもない。

例えば、Googleがpringを買収したところで銀行の代わりにはなれないし、Google自身が銀行免許を取得して日本で自ら本格的な金融サービスを提供するような面倒な道は選ばないだろう。それよりは、すでに日本ですでに地場を固めている複数の金融機関と手を組み、すばやく必要で手軽なサービスを展開する方が効率がいい。

Appleがあくまで既存金融機関などとの提携で「Apple Pay」を日本に持ち込んだように、方法としてはそちらの方が圧倒的にスマートだ。一方で、今後給与デジタル払いが解禁されたタイミングで、pringのような仕組みを利用するケースはさらに増えるとみられ、“地ならし”という点で今回の買収は大きな意味を持つ。

実際のところ、こうした地域間でのルールや文化の違いが金融サービスの提供にあたっては大きな障壁となる。例えば、先日ゴールドマン・サックスの日本支社が国内で銀行業免許を取得したことが話題になったが、これが必ずしも「日本でのリテールバンク参入」や「Apple Cardの国内発行」に即つながるわけではない。

ゴールドマン・サックスは「Marcus」ブランドで2016年に米国でリテールバンク市場に参入しつつ、2019年にはカード発行の外販事業で初の顧客として「Apple Card」の発行を請け負った。

Apple Cardはスマートフォン(iPhone)利用に特化した分かりやすいUIと、最大3%の“キャッシュ還元”が特徴のクレジットカードだが、日本と米国でカード利用のビジネスモデルが大きく異なっていることから、同じ商品性で日本にサービスを投入するのは難しいと考えられている。将来的には分からないが、この仕組みが日本の消費者に受け入れられるかも含め、参入に時間のかかるビジネスと思われる。

Marcus by Goldman Sachsのページ

Marcus by Goldman Sachsのページ

また、Appleについては米国で「Buy Now, Pay Later(BNPL)」への市場参入が米Bloombergによって報じられている。これはApple Payの支払いオプションとしてクレジットカードやデビットカードによる一括決済だけでなく、「4回払い」の指定が可能になるもの。市場背景などの詳細は筆者の別の記事を参照いただきたいが、米国のクレジットカードでは一括決済後に弁済金を自ら少しずつ返済していく仕組みが一般的であり、指定期日を過ぎるとその分が利息として請求される。

「ミニマムペイメント」とは毎月やってくる返済期日に最低限弁済しないといけない金額のことであり、早めに返済すればするほど手数料は低くなる。いわゆる「リボ払い」と呼ばれるものだが、日本では分割払いの回数や手数料は最初の決済時に決定されるものなので、BNPLのような仕組みは馴染みにくいだろう。

近年、米国を含め欧米を中心にBNPLの仕組みがブームになっているが、その理由として「クレジットカードの与信枠が少ないので、それを超える買い物をしたい」「そもそもクレジットカードを使いたくない」といったユーザーのニーズを反映したものとなっている。

小売店側も販売機会の増加や決済単価を増やすため、本来のカード決済手数料よりも高い(米国ではクレジットカードと比較して1.5-2倍程度とされる)BNPLをあえて導入し、売上全体を伸ばすことに利用している。

BNPL市場興隆の例。オーストラリアでの調査報告で、クレジットカード発行枚数の減少とともにBNPLの決済額が増えつつある(出典:ネットプロテクションズ)

BNPL市場興隆の例。オーストラリアでの調査報告で、クレジットカード発行枚数の減少とともにBNPLの決済額が増えつつある(出典:ネットプロテクションズ)

このように、「GAFAが日本金融を席巻する」という話はそう単純なものではなく、これまで変化の少なかった金融業界のビジネスモデルに影響を与えつつも、あくまで相互関係に則って展開されるものだということが分かるだろう。

過度な警戒は必要ないが、これら米IT大手が日本の金融市場にサービスを提供することでどのような影響を与えるのか、自分の生活をどう変化させるのかを考えつつ、今後の思索につなげていきたい。

(鈴木淳也。Engadget日本版より転載)

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フィンテックM1 Financeがソフトバンク主導のシリーズEラウンドでユニコーンに

7500万ドル(約83億円)のシリーズDを発表してわずか4カ月、M1 Financeは米国時間7月14日、ソフトバンクのVision Fund 2が主導する1億5000万ドル(約165億円)のシリーズEを明らかにした。

既存投資家らも参加した最新ラウンドにより、シカゴ拠点のフィンテックM1は14億5000万ドル(約1595億円)というバリュエーションでユニコーンのステータスを獲得する。また今回のラウンドはわずか13カ月と少しという期間で4回目で、2015年半ばの創業からの累計調達額は3億ドル(約330億円)を超える。既存投資家にはCoatue Management、Left Lane Capital、Jump Capital、Clocktower Technology Venturesなどが含まれる。

M1の創業者でCEOのBrian Barnes(ブライアン・バーンズ)氏によると、3月のシリーズDの時点で同社は「ユニコーンに近いステータス」だった。

M1は従来型の3種のフィンテックサービス(自動投資、借入、預入・引出し)を1つに集約していて、ここ数年、急速に成長している。2021年3月初めの資金調達時点で、運用資産(AUM)は35億ドル(約3850億円)に達した。そしてバーンズ氏によると、現在のAUMは45億ドル(約4950億円)で、これは18カ月前の5倍超だ。

2020年7月1日以来、同社はユーザーベースを2倍超に、AUMを3倍に増やした。

画像クレジット:M1 Finance

人々が自分のお金を「無料のコントロールと自動化」で管理して増やせるようサポートするプラットフォームを構築するというミッションの下、M1は2016年後半にサービス提供を開始した(M1がどのように収益を上げているか、詳細はこちらのブログをチェックして欲しい)。

今では「数十万人」という顧客がM1のプラットフォームを通じて投資したり、デジタルチェッキングしたり、あるいは最大貸付金額のポートフォリオにアクセスしたりしている、と同社は話す。

他の多くの企業と同様、M1にとってもパンデミックは追い風となった。

特に、ミレニアル世代の投資への関心が高まったようだとバーンズ氏は指摘する。

M1 Financeの創業者でCEOのブライアン・バーンズ氏(画像クレジット:M1 Finance)

「ロックダウン(都市封鎖)により多くの人が支出を減らし、その一方で不確かな将来によって投資を通じて長期的に富を築くことへの関心が高まりました」とバーンズ氏はTechCrunchに語った。「M1はこれを直に体験しました。パンデミックが始まった2020年3月以来、当社の運用資産は4倍になりました。2021年1月の利用申し込みは前月の3倍超となりました」。

2020年12月、M1は「Plus」の顧客があらかじめ設定したルールに基づいて財政目標を自動化できるようにするSmart Transfersを立ち上げた。そして2021年2月には、M1 Plusの親や保護者が若いユーザーのためにポートフォリオに投資できるようにするCustodial Accountsをリリースした。6月にはM1 Plus顧客が物理的な小切手をM1 Spend Plus当座預金口座から送れるようにするSend Checkの展開も開始した。

「毎日の取引の手入力や画一的なポートフォリオに背を向けたように、当社は常に変化を追求する企業でありたいと考えています」とバーンズ氏は述べた。「投資、借入、支出を刷新し続けて複雑なプロセスをシームレスにする方法を模索するというのが当社の計画です」。

SoftBank Investment AdvisersのマネージングパートナーのMunish Varma(ミュニッシュ・バルマー)氏は、M1が「投資、支出、借入のプロダクトを持つワンストップのスーパーアプリでユーザーの財務管理を支えるのにいい位置につけている」と確信している、と話す。

M1は調達した資金を新たなプロダクトや機能、さらに「イノベーティブ」なプラットフォームの構築と人材採用に使う計画だ。同社の従業員数は2020年初めの40人から現在は250人に増えた。

筆者の同僚Alex Wilhelm(アレックス・ウィルヘルム)氏がM1のシリーズDをカバーした記事で指摘したように、貯蓄や投資、支出の分野で2020年成長したのは同社だけではない。投資分野ではRobinhoodやPublicが好調で、支出や貯蓄の分野ではChimeが急成長した

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タグ:M1 FinanceSoftBank Vision Fund資金調達ユニコーン企業

画像クレジット:Cattallina / Shutterstock

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルがApple Payに後払い決済機能を導入か

最近オンラインでショッピングをした人は、AffirmPayPalのPay in 4のようなサービスを目にする機会があっただろう。それらのサービスは、あなたが何かを買うと、その決済を後日の分割払いにしてくれる。

さまざまな状況から察するにApple(アップル)は、近くApple Payのユーザーに同様の機能を提供するらしい。Bloombergの記事によると、同社はGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)と組んで「Apple Pay Later」と呼ばれるサービスを開発中であり、その機能のあるデバイスのユーザーはネットショップだけでなく、実店舗での買い物も後払いにできる。

記事によると、このサービスを利用して決済をする方法は2種類ある。まず「Apple Pay in 4」というオプションでは、2カ月間に計4回の無利子決済ができる。

もう1つのオプションでは、決済期間を複数月に延ばせるが、この場合は利子が付く。Bloombergの記事では、サービス開始時にAppleが設定するであろう利子率は確認できなかったという。

現在、Appleにコメントを求めており、確認され次第、本記事をアップデートする。しかし、多くの点でこのApple Pay Laterは、同社がApple Cardで現在すでに行っていることの論理的な延長のようだ。Apple Cardの特典の1つは、Mac とiPadの分割払いプランだ。

【編集部注】 本記事はEngadgetから転載されている。

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タグ:AppleApple PayApple Card

画像クレジット:Apple

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Hiroshi Iwatani)

グーグルがQR決済・送金アプリの「pring」を買収

グーグルがQR決済・送金アプリの「pring」を買収

メタップスは7月13日、同日開催の取締役会において、同社持分法適用関連会社pringの全株式をGoogleに譲渡すると決定したと発表した。同社はpring株式を45.3%保有しており、譲渡額は約49億2000万円となっている。株式譲渡実行日は、7月下旬~8月下旬。同日、22.7%保有のミロク情報サービス、18.6%保有の日本瓦斯(ニチガス)も全株式譲渡を発表した。

pringは、友人・知人などと個人間送金が行える送金アプリを提供。経費精算・報酬支払いなど法人から個人に送金できる法人向けサービスや、QR決済事業なども展開している。

メタップスは今回、Googleによるpringの全株取得の意向を受け、メタップスが保有するpring全株式を譲渡する決定を行った。メタップスは、B2B事業およびストック型ビジネスに注力するための、事業ポートフォリオの見直しの一環としている。

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freeeとGMOあおぞらネット銀行が複数金融機関の事業用口座を一元管理できる法人向け入出金明細管理サービス

freeeとGMOあおぞらネット銀行が複数金融機関の事業用口座を一元管理できる法人向け入出金明細管理サービス開始

freeeGMOあおぞらネット銀行は7月12日、GMOあおぞらネット銀行の法人顧客に向けて、入出金明細管理サービス「freee入出金管理 with GMOあおぞらネット銀行」の提供を開始したと発表した。法人・個人事業主は無料で利用可能で、他行を含め複数の事業用口座の残高・入出金明細を一元管理できる。freeeが同サービスをネット銀行の顧客を対象に提供するのは初となる。

同サービスは、経営者自ら日々の入出金や資金繰り管理を行っている創業間もない企業やスモールビジネス企業にとって、いつでもどこでも入出金や残高確認・資金繰りの見える化を可能にするものという。

法人・個人事業主が複数の金融機関を利用している場合、各金融機関のオンラインバンキングに都度ログインし、入出金情報・残高確認を行う必要がある。ただこの際、金融機関ごとにログイン方式が違っていたり、利用する端末やOS・ウェブブラウザーの制約があったりと、ログイン時の作業などが負担になっているという課題があった。また、各金融機関に入出金明細や残高の情報がまたがっており、一覧性が確保されない点も課題となっているという。

freee入出金管理 with GMOあおぞらネット銀行では、同サービスにログインするだけで、他行を含めた複数口座の明細や残高を、場所を問わずスマートフォンやパソコンから確認できる。また、先々の入出金予定も登録・管理できるため、支払い漏れ防止や将来の口座残高を予測することも可能という。

これまでも、freeeとGMOあおぞらネット銀行は提携によりオンライン完結・決算書不要・保証&担保不要の資金調達サービス「GMOあおぞらビジネスローン freee会員向け」などの提供を行っており、同サービスにより資金繰りの見える化を支援することで、さらに法人・個人事業主のビジネスの成長に貢献するとしている。

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食材受発注サービス「クロスオーダー」が卸売業者・中小飲食店間の入金サイクルを早める「クロスオーダー決済」機能公開

食材受発注サービス「クロスオーダー」が卸売業者・中小飲食店間の入金サイクルを早める決済サービス「クロスオーダー決済」機能公開

XTechグループで、食品流通のDXを推進するクロスマートは7月8日、クレディセゾンおよびDGフィナンシャルテクノロジー(DGFT)と提携し、中小飲食店向けの決済サービス「クロスオーダー決済」を提供開始すると発表した。クロスオーダー決済により卸売業者・飲食店間の入金サイクルを早めることで、卸売業者の資金繰りを改善し、飲食店の経理業務を効率化できるという。

卸売業者が商品を仕入れて飲食店に納品を行う際、卸売業者・飲食店間では、納品月の翌月末に売掛金が振り込まれるというサイクルが一般的だ。ただ卸売業者側では、商品の仕入れ代金について、飲食店からの入金前である仕入れ後5営業日程度で支払っているため、キャッシュフローが悪化することが課題となっている。またコロナ禍の影響で飲食店の廃業が増加し、売掛金の未回収リスクが高まっているという。

一方飲食店側は、平均10社の卸売業者と取引があるため月末の請求が立て込み、1社ずつの支払い処理により経理業務が煩雑化していることが課題となっている。万が一支払い期日を過ぎてしまうと、卸売業者との関係性が悪化し、好条件で取引できなくなる。

このような背景を受け、クロスマートとクレディセゾン、DGFTが連携しクロスオーダー決済の提供を開始したという。

このクロスオーダー決済は、受発注サービス「クロスオーダー」のオプション機能にあたる。クロスオーダーを利用する飲食店は、クレジットカードを登録することで卸売業者への支払いにおいてカード決済が可能となる。なお決済用カードは、クレディセゾン発行のセゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードをはじめ、すべてのセゾンカードが対象。

例えば飲食店から30日後(翌月末払い)に入金される売掛金が、クロスオーダー決済を利用することで、売上計上日より最短1営業日後に入金可能という。代金の入金作業が不要となるため飲食店の業務効率化につながり、売掛金の代金回収をクレディセゾンが担うため卸売業者も未回収リスクがなくなるとしている。

卸売業者側のメリット

  • 経理業務を効率化できる:毎月の請求書発行や督促業務の負荷を低減できる。与信・代金回収はカード会社であるクレディセゾンが行うため、入金遅延や未回収のリスクがない
  • 入金サイクルが早い:納品後、最短1営業日で入金。そのため商品仕入れ代金支払いの前に回収が可能

飲食店側のメリット

  • カード決済でポイントが貯まる:飲食店様は日々の仕入れで「永久不滅ポイント」を貯められる。有効期限のないポイントなので、ポイント失効の心配はないとしている
  • 支払い業務の簡素化:セゾンカードの支払いとして口座引き落としができるので、月末の振り込み作業がなくなる。支払い期日を気にする必要がないという

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タグ:飲食業界(用語)クロスマート(企業)日本(国・地域)

予防接種などの健康診断サービスも提供するペット保険のWagmo、企業の福利厚生にも採用

ペットケア産業はここ数年ブームだ。ChewyのIPOから、さまざまな新興の獣医系スタートアップに至るまで、VCと消費者のお金がこの分野に大量に流れ込んだ。

Wagmoも、その例外ではない。ペット保険と各種サービスを提供する同社は、Revolution VenturesがリードするシリーズAの投資で1250万ドル(約13億8000万円)の調達を完了した。この投資ラウンドにはFemale Founders Fund、Clocktower Technology Ventures、そしてVestigo Venturesが参加した。またJeffrey Katzenberg(ジェフリー・カッツェンバーグ)氏やJim Grube(ジム・グルーブ)氏、Marilyn Hirsch(マリリン・ヒルシュ)氏、David Ronick(デビッド・ロニック)氏、そしてMichael Akkerman(マイケル・アッカーマン)氏らのエンジェルたちも参加した。

同社を創業したChristie Horvath(クリスティ・ホーヴァス)氏とAli Foxworth(アリ・フォックスワース)氏は、それぞれ金融と保険業界出身で、ペット保険にはまだ市場にギャップがあると実感していた。ペット保険の提供企業は、手術や骨折などの大きな緊急事態を対象にしていることが多い。しかしペット、特に私のように子犬を飼ってる人はよく知っているように、基本的なケアは積み重なって大きな額になる。

Wagmoは、通常のペット保険と同じ基本的な補償も提供しているが、ウェルネスサービスも提供しています。ウェルネスプログラムは、予防接種、グルーミング、定期的な獣医師の診察、糞便検査、血液検査など、より基本的なものをペットの飼い主たちに払い戻す

ユーザーの保険料は月額20ドル(約2200円)から59ドル(約6500円)で、レシートの写真がアプリで送られる。そして、対象科目に応じてVenmoやPayPal、あるいは24時間以内の直接送金で保険が下りる。

ここでの前提は2つある。健康な犬であれば、上に挙げた基本的なことをすべて知っていれば、後に大きな問題が起こる可能性は低くなる。第二に、犬を飼うことにともなう最も初期費用は、ワクチン接種、獣医の訪問、糞便検査、グルーミングなどの基本的な費用だ。

そこでWagmoは、保険プランのないウェルネスだけのプランを最初に提供する。ユーザーは最初に必要になるものだけを利用し、後で保険プランへアップグレードすることができる。

Wagmoはウェルネスと保険の両方から収益を得るが、他に大企業への売り込みも行っている。つまり、社員の福利厚生の一環として、ペット保険を採用してもらうのだ。

現在14名の同社チームは、数千のユーザーがいて、パンデミック以来ユーザー数は毎月20%増加している。ウェルネスの支払請求は、これまで3万件処理している。

チームの58%は女性で、黒人とアジア系とラテンアメリカ系を合わせると全ワークフォースの17%になる。

「今後の成長機会を正しく見極めることが、とても重要です。特に大きいのは、企業の福利厚生だと私は思います。最近は、どこから始めるべきか、優先度の高いものは何か、限られたリソースと時間をどう割り当てるべきかを考えて、夜遅くまで起きてることもあります」とホーヴァス氏はいう。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Wagmo資金調達ペット保険

画像クレジット:Wagmo

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(文:Jordan Crook、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【インタビュー】freee佐々木大輔CEO「こんなもの誰が欲しがるんだ」と自問した創業期を語る

2021年7月で創業10年目に突入するfreee。6月22日には新戦略発表会を開催し、新しいビジョン「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム」を発表。またロゴを変更し、最高限度額3000万円のビジネス向けクレジットカード「freeeカード Unlimited」も発表し、話題となった。この節目に際して同社CEOの佐々木大輔氏は何を考えているのか?創業から現在までを振り返りつつ、今後の展望について話を聞いた。

「会計にクラウドはいらない」と言われた10年前

「私は2012年に自宅の居間で創業しました。それから9カ月ほど2人のメンバーとプロダクト開発をしていたのですが、めちゃめちゃ辛かったですね」と佐々木氏は苦しげに振り返る。

2012年、創業初期のfreee

freeeが最初にリリースしたプロダクトは「クラウド会計ソフトfreee」。会計士など、ユーザーになりそうな人たちに意見を求めながら開発を進めた。しかし、反応は散々なものだった。

当時、会計作業のやり方は30年近く変わっていなかった。そのため、会計士に話を聞きに行っても「30年間このやり方だからこれから変わることもない」「ずっとこのやり方でやってきたから、新しいプロダクトを出されるとむしろ困る」「クラウド化する必要なんてない」といった厳しい言葉を投げつけられたという。

佐々木氏は「リーンスタートアップの手法でいえば、ピボットすべき時期でした。開発しながら『こんなもの誰が欲しがるんだ』なんて自問したこともありました。スタンダードな開発手法では『そういう時こそユーザーの意見を聞け』という話になりがちですが、私たちは違いました。専門家の意見を聞くのを止めて、自分たちが信じるプロダクトを追求しました。私自身、スタートアップで経理をしていたことがあり、会計作業の問題点も知っていましたし、『こうすれば会計が楽になる』という方向性もわかっていました。だから信じるものを追求することができました。王道なビジネスの手法、開発の手法からは外れているのですが」と振り返った。

フィンテックブームで実現した銀行とのAPI連携

こうして2013年、freeeは「クラウド会計ソフトfreee」をリリースする。開発中には酷評されていた同プロダクトだが、いざリリースしてみると、インターネット上で評価する声も聞こえてきた。ユーザーも増え始め、不具合が見つかったり、改善を求める声も聞こえるようになる。

2013年「クラウド会計ソフトfreee」リリース会見の様子

佐々木氏は「開発期間中は『ユーザーの声は聞かない』という方針を取ったのですが、リリースしてからは逆にユーザーの声に耳を傾け、片っ端から不具合に対応したり、改善していきました。この辺りの3年間は忙しくて記憶もありませんね」と語る。

2015年くらいになると「フィンテック(Fintech)」という言葉が浸透し始め、ブームのような様相を呈し始めた。同時に、freeeのようなフィンテックスタートアップにも注目が集まるようになった。こうした流れの中で2016年、freeeはみずほ銀行とAPI連携を開始。メガバンクとクラウド会計ソフトの国内初のAPI連携事例となった。

2015年に実施した会見で銀行データとの連携について話す佐々木氏

佐々木氏は当時を分析し「これは創業当時には考えられなかったオフィシャルな連携ですね。この背景には、フィンテックに対する期待の高まりがありました。タイミングに恵まれていたところもあるのだと思います。2020年にはほぼ全国の銀行とAPI連携をすることができました」と語った。

2018年頃からはスモールビジネスだけでなく、中堅規模の企業も視野に入れて対応してきた。そのため、上場準備中のスタートアップがfreeeを導入するケースも増えてきた。

2019年には「freeeアプリストア」を公開し、東京証券取引所マザーズへ新規上場。2020年には「プロジェクト管理freee」などベータ版を含め5プロダクトをリリース。2021年に入ってからはサイトビジットがfreeeグループに参入した。

創業から今までを振り返り、佐々木氏は「最近では、スタートアップや中堅規模企業で『経営のためのツール』としてfreeeが認識されるようになってきました。ここからがまた重要な局面ですね」と語った。

組織のあり方を考え直した「30人時代」

創業から今まで変化に富むfreeeだが、大きなターニングポイントはいつなのだろうか。

佐々木氏は「いろいろありますが、1つ挙げるとしたら、2014年頃ですね。それまでfreeeはインターネット上で見つけてもらって、ユーザーに直接買っていただいていました。ですが、2014年頃から営業人材を採用して、お客様の前でfreeeのデモンストレーションをするなど、攻めの動きに転じました。これがきっかけで組織のあり方を見直す必要が出てきたのです」と話す。

2014年頃のfreee

freeeはそれまでの数人程度の規模で動いてきた。しかしこの頃、freeeの社員数は30人程度に増えていた。それまではメンバーとのコミュニケーションも気軽にとれ、freeeの方向性や考え方についても、言葉にせずともなんとなく共有できていた。しかし、30人規模になるとそうはいかない。

「1人の人間の目が届くのは、せいぜい6人くらいまでです。30人はその5倍。組織のレイヤーを二段階くらい作らないと情報共有がうまくいかなくなります。また、私がいろいろ話に入って意見を出したり、決定を下そうとすると、数人ならスムーズに進むのですが、30人規模では『佐々木さんが来た方が逆に決定が遅くなる』ということも出てきてしまいます。こうした失敗から『カルチャーの明文化』を始めました」と佐々木氏。

今では週1回、全社員参加のイベントで話したり、今週の良かったことを社内コミュニケーションツールで共有しているという。

佐々木氏は「現在、freeeの社員数は500人弱です。自分から全社に話しかけることの重要性を感じます」と語った。

「統合型プラットフォーム」を宣言した理由

freeeは6月22日、新戦略発表会を行い、新ビジョンとして「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム」を掲げた。このビジョンにはどんな意味があるのか。

佐々木氏は「freeeには会計、労務、稟議などに関わるさまざまなプロダクトがあります。これまで出したプロダクトが統合されているのはもちろんですが、これからリリースするプロダクトもすべて統合された形でリリースします。つまり、この新ビジョンはユーザーに対する決意表明なのです」と解説する。

freeeのユーザーからすれば、自社が導入しているfreeeプロダクトが統合されている方が便利だ。例えば、ここにプロダクトAとプロダクトBがある。これらが統合されていれば、ユーザーはAのデータをBに送ったり、BのデータをAに送って手軽に資料を作ったり、経営判断を下したりできる。しかし統合されていなければ、AでデータをエクスポートしてからBにインポートしたり、その逆をしなければいけない。

前者の場合、プロダクト間でデータがシームレスにやり取りされるので、例えば「なぜこの数値はこうなっているか」などを追跡しやすい。しかし、後者の場合、数値がどこからきたのかなどをユーザー自身で考えなければならない。

「統合されている方がユーザーは便利ですが、開発の負担は上がります。それでも、これからのプロダクトをすべて統合した形でリリースする。この決定は重大なものなのです。また、プロダクトの統合だけでなく、freeeアプリストアを通したオープンプラットフォームでパートナーと繋がっていくことも重要です」と佐々木氏は補足した。

同発表会ではスモールビジネスの魅力を伝える「freee出版」の立ち上げと、スモールビジネス研究所の設立を発表した。創業からずっとスモールビジネスにこだわり続け、10年目のfreeeでもスモールビジネスにこだわるということだ。これにはどういう意味があるのか。

佐々木氏は「これまでスモールビジネスは大企業ほどのITを持てませんでした。freeeを使えば、手軽に大企業並みのITを導入できる部分が増えていきます。それができれば、働く場所としてのスモールビジネスの魅力も高まるでしょう。スモールビジネスで働く選択肢が現実的になれば、そこで働く人も増え、世の中の循環も良くなっていくはずです。一方で、統一規格による大量生産が主流の今、スモールビジネスのプロダクトの個性が光ります。スモールビジネスの誰と働くのかも重要になってきます。おもしろい世の中を作るには、スモールビジネスが必要不可欠なのです。だからこそスモールビジネスを今後ともサポートし続けていきます」とスモールビジネスへの期待と、今後の展望を語った。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:freeeインタビュー日本

個人向け銀行ローンマッチングの「クラウドローン」が累計1.56億円調達、オリコとの事前審査の連携開始も発表

個人向け銀行ローンマッチングプラットフォーム「クラウドローン」を運営するクラウドローンは7月1日、プレシリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による累計1億5600万円の資金調達を発表した。引受先はGenesia Venture Fund2号、LaunchPadFund。調達した資金により、組織体制の強化を行う。

また同社は、金融機関保証会社オリエントコーポレーション(オリコ)と提携し、事前審査の機能を備えた新バージョンのクラウドローンを開始すると明らかにした。サービス公開は2021年8月を予定。

一般的に、融資には審査が必要なため、当然ながら利用者側には事前に「借りられるローン」を選ぶ手段は用意されていない。従来の比較サイトでも数百ある商品から選ばせる機能があるのみで、利用者側には商品選択において「借りられる」という基準が用意されておらず、個別に申し込みと審査を経る必要がある。

クラウドローンとは、貸し手である銀行と借り手である個人を、オンラインでつなぐマッチングプラットフォームとなっている。クラウドローンと提携する銀行から直接融資の提案を受け取ることができ、自分に合ったローン選びが行えるという。

2020年1月リリースのクラウドローンベータ版では、銀行がユーザーの属性と希望条件に対し、絞り込みをかけて直接提案を行うフローを採用していたものの、自己申告による情報のみを提案の判断材料としていたため、まだ一定のミスマッチがあったそうだ。

そこで今回の新バージョンでは、金融機関が融資を実行する際に行う保証審査には、提携機関数570以上のオリコが対応。ユーザーは、クラウドローン上で情報の登録を行うことで、事前に提携先銀行の保証審査を一括で行えるようにした。

クラウドローンによると、ユーザーは、希望条件を銀行に情報開示する前にオリコによる事前審査を行うことで、マッチング後の銀行への本申し込みでは100%に近い確率で融資が実行されるという。事前審査により、銀行に本申し込を行う前に「借りられるローン商品」が分かるとしている(銀行の最終審査で否決となるケースもある)。

ベータ版リリース後1年5カ月の実績としては、2万3600件・総額270億円に上るユーザーからの依頼を獲得しており、特にマイカーローンの依頼が首位を占めているとした。車の購入費用など高額な資金を捻出する際、探しやすさにより「借りられる安心感」を担保するため、マッチング機能の向上とともに参画銀行の追加も進めるとしている。

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累計ユーザー数30万人超のポイント投資「STOCK POINT」が三菱UFJ銀行をスポンサーに迎え新サービス開発に着手

累計ユーザー数30万人超のポイント投資「STOCK POINT」が三菱UFJ銀行をスポンサーに迎え新サービス開発に着手

株価など金融商品連動型ポイント運用サービス「StockPoint」(Android版iOS版)を手がけるSTOCK POINTは7月2日、三菱UFJ銀行をスポンサーとして迎え、新サービスの開発に着手したと発表した。2021年秋、新しいポイント運用サービス「STOCKPOINT for MUFG」を提供開始予定。

STOCKPOINT for MUFGは、誰でも気軽に資産運用疑似体験をスタートできるポイント運用サービスという。「投資=難しい」という固定観念の壁を越える「楽しい世界観」を実現すべく、サービス提供に向けて開発を進めるとしている。

STOCK POINTのポイント運用サービスは、買い物などでたまった所持ポイントの運用を行えるというもの。個別企業株の株価など金融商品の価格に連動して所持ポイント数が上下に変動し、金融機関に口座を開くことなくポイントを使い投資運用を疑似体験できる。現在、会員の約80%が20代から40代の若年層、また30%は投資未経験の者という。2021年5月末時点で累計ユーザー数が30万人を突破しており、従来投資に馴染みのなかった方が貯蓄から投資への一歩を踏み出せるサービスとして広がっているとした。

また個別株、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)に関しては、1株、1口価格相当以上のストックポイントが貯まると、現物金融商品との交換も可能。同社は、ポイント運用サービスを通じて、生活者が投資についての正しい知識を得て、自分らしい資産形成を始めるサポートを行うとしている。

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2020年に辛うじて黒字化したRobinhoodが上場手続き開始、2021年第1四半期は売上高4倍

米国時間7月1日午後、消費者に人気の投資アプリRobinhood(ロビンフッド)が株式公開を申請した。同社は「HOOD」というシンボルでNASDAQに上場する予定だ。

Robinhoodが本日、S-1書式(上場申請書)提出を発表したことは驚きではない。同社は3月に非公開でIPOを申請しており、スタートアップウォッチングの世界では最終的な申請書のドロップを待っている状態だった。Robinhoodの公募書類には1億ドル(約112億円)の資金調達額が記載されているが、デビューに近づくにつれこの額は変化していくだろう。

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同社は急速な成長期を経て株式上場を目指している。Robinhoodの収益は2019年に2億7750万ドル(約310億円)だったものが、2020年には9億8580万ドル(約1100億円)にまで急増した。

同社の第1四半期の数字はさらに驚異的だ。2021年の最初の3カ月間に、Robinhoodは5億2220万ドル(約580億円)の収益を上げ、2020年第1四半期の実績である1億2760万ドル(142億円)から約4倍に増加した。TechCrunchは以前の記事で、RobinhoodがそのPFOF(payment for order flow)事業に関連して提出した過去の出願に基づいて、第1四半期に強い業績を上げると予想していた。

注目すべきは、Robinhoodは2020年に利益を上げており、1年間で約740万ドル(約8億円)の純利益を生み出したという点だ。しかし、同社の直近の期間には「転換社債およびワラント負債の公正価値の変動」に関連する14億9000万ドル(約1662億円)の壮大なコストが含まれており、同社は同年第1四半期に14億4000万ドル(約1607億円)という天文学的な純損失を計上するに至った。これに対し、2019年の純損失は1億700万ドル(約119億)となっている。

2021年3月31日までの3カ月間、Robinhoodは「仲介・取引」費用を含む4億6380万ドル(約518億円)の運用コストを計上している。とすれば同社のビジネスは、公正価値の変更を除けば、収益性の面では良いスタートを切ったといえるだろう。

2021年の第1四半期に、Robinhoodが年間売上にすると20億ドル(約2233億円)以上を達成したことは注目に値する。同社は、株式と暗号資産の両方への投資に対する消費者の関心の高まりを背景に、急速にマンモスサイズに成長した。

Robinhoodは2020年、監視罰金、集団使用、そしてカルチャーの避雷針であることを証明した。また、個人投資家に特に人気があった特定の銘柄の取引に関して運営上の問題が発生した後、2021年は数十億ドル(数千億円)の資金調達を行った。

投資家の結果に目を向けると、DST Global、Index Ventures、New Enterprise Associates、Ribbit capitalが、それぞれ5%以上の株式を保有する株主として記載されているが、これらのグループのほとんどの株式数など、S-1申請書の一部の情報はまだ記載されていない。ただし、DSTのクラスA株式5810万2765株は記載されていいる。

Robinhoodは、1票の議決権を持つクラスA株、10票の議決権を持つクラスB株、0票の議決権を持つクラスC株を含む、3つのクラスの株式を持っている。

TechCrunchはS-1を解析中、次の記事で詳細をお伝えする。【更新】アップデートはこちら

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Robinhood新規上場

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Aya Nakazato)

暗号資産で国境を越える面倒な「クロスボーダー決済」を簡単、迅速にできるようにするMercuryo

国境をまたぐ決済のネットワークを作ったMercuryoが、シリーズAのラウンドで750万ドル(約8億3000万円)を調達した。

ロンドン生まれの同社は、「デジタル資産の決済ゲートウェイ」によってブロックチェーンをビジネスにとって便利なものにすることを目的とする「暗号資産のインフラストラクチャ企業」と自らを説明している。具体的には同社は、さまざまな決済ソリューションを集積して、法定通貨と暗号資産による決済や支払を提供する。

もっと簡単にいうと、Mercuryoの狙いは、次世代の国境を越えた送金を暗号資産をツールとして使って推進することだ。同社はそれを「どんな企業でも金融業務の面倒な知識や経験なしでフィンテック企業になれる」と説明する。

Mercuryoの共同創業者でCEOのPetr Kozyakov(ペトル・コジヤコフ)氏は「迅速で効率的な国際決済を、特に企業はこれまで以上に必要としている」と語る。多国間決済サービスを提供している企業はすでにたくさんあるが、暗号資産をその軸に据えることが、同社の差別化要因だ。

コジヤコフ氏は「私たちのチームには、低料金の簡単な手続きで暗号資産を至るところで使えるようにする、という明確なプランがあります。そうなれば、暗号資産という資産を使って、グローバルな送金や大量一括支払などさまざまなサービスを得られるようになります」という。

左からAlexander Vasiliev(アレクサンドル・ワシリエフ)氏、Greg Waisman(グレッグ・ワイズマン)氏、ペトル・コジヤコフ氏(画像クレジット:MercuryO)

Mercuryoが営業を始めたのは2019年の初頭だが、それ以降大きく成長して、4月には年間経常収益が5000万ドル(約55億4000万円)を超えた。顧客ベースは100万に近く、また同社は、暗号資産の大手であるBinanceやBitfinex、Trezor、Trust Wallet、Bithumb、そしてBybitなどとパートナーしている。2020年に同社は売上が50倍に増加し、2021年4月には年商が25億ドル(約2770億円)を超えたという。

この勢いに乗じてMercuryoは、米国などに向けて新市場の開拓を開始し、特に米国では2021年初めにすべての州で、B2Bの顧客のための暗号資産による決済サービスをローンチした。今後は、アフリカや南米、東南アジアなどへの「漸進的」拡張を計画している。

Target GlobalがMercuryoのシリーズAをリードし、またエンジェル投資家たちのグループが投資に参加して、2018年の創業以来の総調達額は1000万ドル(約11億円)を超えた。

同社が今度の資金の用途として考えているのは、暗号資産のデビットカードを立ち上げることと、ラテンアメリカやアジア太平洋地区への市場拡大の継続だ。暗号資産のデビットカードがあれば、世界中どこでも自分のウォレットの暗号資産残高から直接、支出できる。

Mercuryoの多様なプロダクトの中には、複数通貨のウォレットがあり、それには暗号資産の取引機能が内蔵されている。他にもデジタル資産の購入機能やウィジェット、暗号資産の大量取得機能、そしてOTCサービスなどのプロダクトがある。

コジヤコフ氏によると、同社は複数通貨間の換金手数料を取らず、その他の「隠れ料金」もないという。

「パートナーにも、またその顧客にも、瞬間的で容易な、国境をまたぐ送金処理を提供できる。送金サービスには中間搾取者がおらず、取引終了までに余計な手続きがない。私たちが提供するサービスは、わずか2種類に絞られます。1つは送金時の法定通貨から暗号資産への交換であり、もう1つは資金を受け取る際の暗号資産から法定通貨へという変換です」とコジヤコフ氏はいう。

Mercuryoには、暗号資産のためのSaaSプロダクトもあり、そこでは顧客が自分の法定通貨の口座から暗号資産を手に入れ、そのデジタル資産の管理を同社に委託する。

コジヤコフ氏によると「それがバーチャルアカウントであっても、あるいは顧客のサードパーティのウォレットであっても、私たちが扱うのは銀行のための暗号資産関連処理のほとんどすべてであり、顧客は自分たちの本来の仕事に集中できます」という。

Target Globalの共同創業者であるMike Lobanov(マイク・ロバノフ)氏によると、彼の会社はBitcoinを購入する場合の各社のソリューションを実験的に試してみた。ロバノフ氏は「投資家のデューデリジェンスとして我々が計測したのは、暗号資産への変換に要する時間、すなわちApp Storeへ行ってアプリをダウンロードするところから、ウォレットにデジタル資産が収まるまでの時間を計測した」という。

トップはMercuryoの6分間だった。KYCに始まり、送金から暗号資産が得られるまでの時間だ、とロバノフ氏はいう。「2位は20分でしたが、我々のトランザクションを処理するのに時間が無限にかかっているアプリもあった。Mercuryoはこの分野のゲームチェンジャーです。私たちが初期から同社を支援してきたことは、本当に喜ばしいことです」。

同社が次のリリースとして予定しているプロダクトは、大量の複数の顧客とかギグワーカーなどに同時に一瞬にして大量決済ができるサービスだ。受取人は、地球上のどこにいてもよい。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Mercuryo資金調達暗号資産送金クロスボーダー決済

画像クレジット:Liyao Xie/Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Visaが欧州の主要フィンテック企業、オープンバンキングプラットフォームのTinkを約2380億円で買収

Visa(ビザ)は米国時間6月24日、Tink(ティンク)を18億ユーロ(約2380億円)で買収する計画を発表した。TinkはオープンバンキングAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)に注力している、欧州の主要フィンテックスタートアップだ。

今回の動きは、Visaが別の人気オープンバンキングスタートアップPlaid(プレイド)の買収を諦めてから数カ月後のことだ。元々VisaはPlaidの買収に53億ドル(約5880億円)を使う予定だった。しかし規制の壁に阻まれて買収を白紙に戻した。

関連記事:反トラスト法に阻まれてVisaがPlaid買収中止、フィンテック関係者に落胆の声が広がる

Tinkは顧客が銀行口座をアプリやサービスからつなげることができるAPIを提供している。例えばユーザーは取引明細書へのアクセス、支払い、銀行情報の取り込み、データ定期更新をするのにTinkのAPIを活用できる。

EUのPayment Services Directive PSD2によりすべての銀行や金融機関は現在、オープンバンキングのインターフェースを提供しなければならないが、統一基準はない。Tinkは3400の銀行と金融機関を統合している。

アプリデベロッパーは、さまざまな金融機関で銀行口座とやり取りするのに同じAPIコールを使うことができる。ご想像の通り、これはオープンバンキング機能の導入プロセスを大幅に簡素化する。

300の銀行とフィンテックスタートアップがサードパーティーの銀行情報にアクセスするのにTinkのAPIを使っている。クライアントにはPayPal、BNP Paribas、American Express、Lydiaなどがいる。Tinkは欧州で計2億5000万もの銀行顧客をカバーしている。

スウェーデン・ストックホルム拠点のTinkのオペレーションは買収後もこれまで通り続くとみられる。VisaはTinkのブランドと経営陣を保持するつもりだ。

Crunchbaseデータによると、TinkはDawn Capital、Eurazeo、HMI Capital、Insight Partners、PayPal Ventures、Creades、Heartcore Capitalなどから3億ドル(約330億円)超を調達している。

「過去10年、Tinkを欧州でトップのオープンバンキングプラットフォームにすべく懸命に取り組んできました。Tinkのチーム全体が一丸となって構築したものをとても誇りに思っています」とTinkの共同創業者でCEOのDaniel Kjellén(ダニエル・ケレン)氏は声明で述べた。「我々はすばらしいものを構築し、と同時に上っ面をなでたにすぎません」。

「Visaに加わることで、我々はこれまでよりも迅速に動き、さらにリーチを伸ばすことができます。次のステージに向けてVisaは最適なパートナーであり、今回の買収がTinkの従業員、顧客、そして将来の金融サービスにもたらすものに非常に胸躍らせています」。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:VisaTink買収API

画像クレジット:Tink

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

企業の銀行口座や財務データを1カ所に集約するサービス「Airbank」、目標はオールインワンの財務ハブ

Airbank(エアバンク)は、オープンバンキングの規制と関連APIを活用することで、企業の持つすべての銀行口座を1つにまとめるスタートアップだ。スタートアップや中小企業をターゲットに、この会社は財務データのアクセス、支払い、キャッシュフロー管理などを行うオールインワン・バンキング・インターフェイスを作ろうとしている。

つい最近Airbankは、250万ユーロ(約3億3000万円)のシードラウンドを完了した。リードしたのはNew Wave(ニュー・ウェーブ)のPia d’Iribarne(ピア・ジリバーン)氏とJean de la Rochebrochard(ジャン・ド・ラ・ロシャブロシャー)氏で、Speedinvest(スピードインベスト)とTiny VC(タイニーVC)も参加した。他にAccelの常任幹部であるCris Conde(クリス・コンデ)氏、AccellのスカウトであるLuca Ascani(ルカ・アスカーニ)氏、およびSequiaのスカウトであるMarc McCabe(マーク・マッケイブ)氏らのビジネスエンジェルが参加した。

この会社の価値提案はごく単純で、1枚のスクリーンショットで説明できる。Airbankでは、まず使っている銀行口座や関連するアカウントのログイン情報を入力する。その後はすべてをAirbankアカウントから確認することができる。

画像クレジット:Airbank

多くの企業が複数の銀行口座を使わなくてはならない理由はいくつかある。会社を登記したときに銀行口座を1つ開設し、融資を申し込むために別の口座を開き、海外取引手数料の安いWise Business(ワイズビジネス)の口座を開き、社員にデビットカードを作るためにRevolut(リボリュート)のビジネスアカウントを作る、といった具合だ。

銀行口座だけではない。Stripe(ストライプ)やPayPal(ペイパル)やShopify(ショッピファイ)で売上を立てている会社も多い。多くの会社幹部がウェブポータルに接続し、データをCSVファイルでエクスポートし、そのファイルをMicrosoft Excel(マイクロソフト・エクセル)にインポートして情報を統合するために多大な時間を費やしている。

Airbankは、複数の口座を横断して残高を自動的に最新状態に保つ。複数の通貨で合計残高を見ることもできる。複数口座にわたって検索ができるので、未処理伝票のある取引を一覧するのにも役立つ。

これは出発点にすぎない。Airbankは利用者のあらゆるバンキングニーズの唯一のインターフェイスになろうとしている。取引を分類し、サプライヤーごとの出費を確認し、定期的支払いを追跡し、すべてをGoogleスプレッドシートやExcelにエクスポートする。近々Airbankを使ってキャッシュフロー予測をしたり、Xero(ゼロ)やQuickBooks(クイックブックス)のデータを使って自動的に突き合わせを行うこともできるようになる。

オープンバンキングは口座統合だけのものではない。適切なAPIを使えば、サードパーティー製品から支払いを実行することができる。そしてAirbankはこれを利用して支払い機能を実現しようとしている。アクセス権を管理することで、Airbankは財務部門の支払いポータルの役割を果たすことができる。

「オープンバンキングのおかげで銀行とのスムーズな統合が可能になりました。私たちはこれを活用してより便利なバンキングと支払いの体験をユーザーに提供することができます。当社の目標はオールインワンの財務ハブを作り、すべての取引勘定を1か所にまとめることです。当社の統合システムを使えば、請求書の支払い、経費管理、FXまで、すべてをかんたんに使える1つのプロダクトの中で行なえます。

他のスタートアップでは、Agicap(アジキャップ)はキャッシュフロー管理に、Libeo(リベオ)とUpflow(アップフロー)はB2B決済に進出しようとしている。Airbankは口座の集約を手始めに、全体論的方法でB2B金融に取り組もうとしている。

このところバーティカルなSaaS(サーズ)製品が好調だ。そしてこの市場の競争が激しいのには理由がある。B2Bフィンテックと特化したSaaS(サービスとしてのソフトウェア)製品にはすべきことがまだ山ほどあるからだ。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Airbank資金調達

画像クレジット:Stephen Phillips / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nob Takahashi / facebook

家賃やローンの支払いでもポイントがもらえる報酬プログラム「Bilt Rewards」

Ankur Jain(アンカー・ジェイン)氏率いるスタートアップスタジオ「Kairos(カイロス)」は、新ブランドのBilt Rewards(ビルト・リワーズ)を米国時間6月22日に立ち上げた。Biltは、賃借人が家賃を払うたびに報酬をもらえるプログラムだ。

この会社を支援しているKairosは、他にもRhino(ライノ)、Alloy(アロイ)、Little Spoon(リトル・スプーン)などのブランドを管理しているスタートアップスタジオだ。

Biltは大きく2つの部分からなる。報酬ポイントプラットフォームとMastercard(マスターカード)と提携したクレジットカードだ。

報酬プログラムでは、不動産所有者やBlackstone Group(ブラックストーン・グループ)やThe Related Companies(リレーテッド・カンパニー)、Equity Residential(イクイティー・レジデンシャル)といった資産管理会社と提携している。対象となる物件を借りている人は、家賃を支払うたびにポイントが加算される、契約更新や新規契約などのときにはさらにボーナスを得られる。

共同ブランドのクレジットカードであるBilt Mastercardは、対象物件の借り手だけでなく賃借人なら誰でもこのカードで家賃を払うことができる。賃借人として未だに小切手の郵送を強いられている私自身にとっても、これはうれしいサービスだ。

Blit Mastercardの利用者は、家賃支払いでポイントが2倍になり、それ以外のカード利用では1ドル(約110円)につき1ポイント貯めることができる。

貯めたポイントは、カード利用によるものも提携パートナーの家賃支払いによるものも、航空会社やホテル、その他グループ・フィットネス・クラスなどの特典に利用することができる。しかし、ポイントの利用方法で最も大きいのは、ローンの支払いだろう。

Biltは規制当局やFannie Mae(ファニー・メイ、連邦住宅抵当公庫)、住宅都市開発省らと話し合い、報酬ポイントをローン支払いに使用する承認を取った。その結果、報酬ポイントを住宅ローンの頭金に使えるだけでなく、Bilt Mastercardの利用者は信用スコアと報酬ポイントを同時に得ることで、ローンの利率を下げることができる。

収益については、Biltクレジットカードを利用した購入の取引手数料をMastercardと分配する。さらに同社は、賃借人に配布したポイント分を物件管理者から受け取ることでも収入を得る。

「3年前だったら、不動産所有者と組んで統合報酬プログラムを作ることなど想像もできなかったでしょう」。とジェイン氏はいう。「もし私がクレジットカードや家賃の手数料で決済ネットワークと提携することを考えたなら、ほとんどの人が不可能だと言ったでしょう。米国政府から規制の承認を得ることは、越えなくてはならない膨大な障壁でした。航空会社やホテルとの提携も膨大な作業でした。3年かかったのはそのためです。これは私たちにとって史上最も困難なプロジェクトでした」。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Bilt Rewardsポイントクレジットカード

画像クレジット:Kairos

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(文:Jordan Crook、翻訳:Nob Takahashi / facebook

みんなの銀行とピクシブが連携、「ピクシブ支店」(仮称)独自銀行サービスでクリエイターの創作活動を支援

みんなの銀行ピクシブは6月21日、みんなの銀行が提供する金融機能・サービスの活用を通じて、「金融」と「非金融」を組み合わせた新たな価値共創に向けて基本合意を締結したと発表した。今後はピクシブのユーザー向け銀行サービスを開発することで、「金融」の側面からクリエイターの創作活動をサポートする。

今回の基本合意は、みんなの銀行によるBaaS(Banking as a Service)事業におけるアライアンス第1弾。ピクシブを利用するクリエイターやファン(pixivユーザー)向けの銀行サービスを提供することで、クリエイターが創作活動を行う上で生じる「お金」に対する漠然とした不安や負担を軽減する。さらに、ファンが楽しく「お金」を使ってより作品を楽しみ、クリエイターを応援できる仕組み作りをサポートし、「金融」の側面からpixivユーザーのコミュニケーション活性化に向けた価値共創への協議を開始する。

具体的には、ピクシブの世界観を盛り込んだ「ピクシブ支店」(仮称)を、みんなの銀行内に2021年中を目処に新設。みんなの銀行が提供するスマートフォン専用アプリを通じて、pixivユーザー向けオリジナル銀行サービスの提供に向けた協議を開始する。

さらには、みんなの銀行が今後公開予定とする金融APIを介した連携を通じて、ピクシブのサービス上でシームレスに金融サービスを利用できる仕組み作りを検討する。また中長期的な観点から、クリエーター作品の「価値」の流通を促進するために、最先端テクノロジーの研究に取り組み、みんなの銀行がミッションとして掲げる「みんなに価値あるつながりを。」の実現を目指す。

みんなの銀行は、デジタルネイティブな思想・発想でゼロベースから設計された国内初のデジタルバンク。最先端技術の活用とともに、スマートフォンを通じデジタルネイティブ世代の顧客ニーズに応える新たな金融機能・サービスの提供を目指し、2021年5月に個人顧客を対象とするサービス提供(B2C事業)を開始した。また、これらの金融・機能サービスをAPIを通じ事業者に提供することで、金融と非金融がシームレスに結び付いた新たな価値共創を目指す「BaaS事業」の構築に向けて、様々な事業パートナーとの検討を進めてきた。

ピクシブは「作品を介したコミュニケーション」にフォーカスしているクリエイターのためのSNS。「創作活動がもっと楽しくなる場所を創る」という理念の下、作品(イラスト・漫画・小説)の発表と交流に特化したサービスとして2007年9月に開始。登録ユーザーは6800万人を超え、作品総数は1億点以上。20代~30代のデジタルネイティブ世代をメインユーザーとする国内最大級のSNSとなっている。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:銀行(用語)ピクシブ(企業・サービス)みんなの銀行(企業)日本(国・地域)

英フィンテックRevolutの2020年売上高は前年比57%増の約398億円

フィンテックスタートアップのRevolut(レボリュート)が決算を発表し、報道機関にも詳細を明らかにした。同社の2020年の売上高は3億6100万ドル(約398億円)で、2019年の2億2900万ドル(約252億円)から57%増だった。

興味深いことに、そうした数字には暗号資産(仮想通貨)のアセットでの公正価格の上昇が反映されている。つまり、Revolutが貸借対照表上、暗号資産を有していることを意味する。同社は暗号資産アセットで5400万ドル(約60億円)増やした。

粗利益は1億7000万ドル(約187億円)に達した。と同時に、同社は損失も計上している。特に2020年第1四半期は不振で、調整後の営業損失は7600万ドル(約84億円)だった。

2020年の調整前の営業損失は2億7700万ドル(約305億円)に達した。他の多くのテック企業と同様、営業損失においては一般管理費が大きな割合を占める。従業員2200人を抱える同社は一般管理費だけで3億6700万ドル(約405億円)だった。しかし状況は改善しているようだ。

こうした傾向は、筆者が以前書いたように2020年にフィンテックスタートアップが収益性と利ざやの改善に注力していたことを考えると驚くことではない。2020年末時点でRevolutの個人顧客は1450万人で、50万社がRevolut Businessを活用していた。

「2020年の特殊な環境がデジタル金融管理へと駆り立てましたが、当社は顧客の財務面でのやり取りを簡単なものにして日常使用を加速させるべく、刷新を続けます。当社は新たに24のリテールとビジネスの商品を立ち上げ、米国、日本、オーストラリアに進出し、リトアニアで銀行サービスを開始しました。その間、収益性を大幅に改善しました」と創業者でCEOのNikolay Storonsky(ニコライ・ストロンスキー)氏は声明文で述べた。「急成長に向けた軌道をさらに確かなものにする、これまで以上に逆境に強く、生産的なビジネスで2021年をスタートさせました」。

2020年第1四半期と2021年第1四半期と比較したとき、様子は大きく異なる。2021年第1四半期の売上高は前年同期比130%増となり、粗利益は300%成長した。

Revolutは売上源を多様化するために数多くのプロダクトを立ち上げてきた。現在アカウント、デビットカード、取引サービス、保険商品、プレミアムサブスク、暗号資産取引などを展開し、金融スーパーアプリになりつつある。

カード決済の売上交換手数料からの収入が同社の売上高のかなりの割合を占めているのは興味深い。2020年のカードと手数料の売上高は1億3100万ドル(約140億円)だった。Revolutの顧客がカードで購入するたびに、カードスキーム(VisaあるいはMastercard)によってRevolutに手数料が入る。割合に基づく手数料はかなり少額だが、カードを使った購入件数が何百万となるとそれなりの額になる。

外国為替と資産の部門の売上高は1億1100万ドル(約120億円)で、もう1つの大きな収入源だ。そして最後にRevolut Plus、Revolut Premium、Revolut Metalといったサブスクの売上高は1億400万ドル(約115億円)だった。

これらが同社の収益に貢献している強力な3本柱だ。この3つで同社の全売上高の3分の1ほどを占めている。

Revolutは過去数年、積極的に英国外へ事業を拡大してきたが、それでも英国が圧倒的に最大のマーケットだ。2020年の売上高の88.4%が英国関連のものだった。英国を除く欧州経済エリアは売上高の10.2%を占めた。米国、日本、オーストラリア、他のマーケットの売上高はかなり少なかった。

Revolutはまた、2020年に巨額の資金を調達した。シリーズDラウンドで5億ドル(約550億円)を獲得し、累計調達額は5億8000万ドル(約640億円)となった。同社が今後12カ月以内に新規株式公開しても筆者は驚かない。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Revolut決算発表

 画像クレジット:Revolut

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

Tiger GlobalがフィンテックBharatPeへの投資に向け交渉中、バリュエーションは約2750億円

インドのフィンテックスタートアップのBharatPe(バラペ)は、Tiger Globalがリードする新たな資金調達ラウンドで約2億5000万ドル(約275億円)を調達する交渉が進んでいると、この件に詳しい2人の関係者がTechCrunchに語った。

消息筋によると、この新しいラウンドはシリーズEで、創業3年目のニューデリーに本社を置く同社のプレマネーのバリュエーションは25億ドル(約2750億円)とのことだ。同筋はこの件が非公開であることを理由に匿名を希望した。本ラウンドはまだ終了していないため、条件が変更される可能性があると同筋は注意を促した。

BharatPeは、今回のラウンド以前に、株式で約2億3300万ドル(約256億円)、負債で3500万ドル(約39億円)を調達した。バリュエーションは、2021年2月のシリーズDラウンドで約9億ドル(約990億円)、2020年は4億2500万ドル(約468億円)だった。

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インドのニュースサイトCapTableがTiger GlobalとBharatPeの交渉について最初に報じ、今回のラウンドでBharatPeの価値は20億ドル(約2200億円)以上になると述べた。BharatPeはコメントを控えた。同社は、Coatue、Ribbit Capital、Sequoia Capital Indiaなどを既存の投資家として抱えている。

BharatPeは、オフラインの加盟店がデジタル決済を受け入れ、運転資金を確保するための同名のサービスを運営している。インドはすでに6億人以上のユーザーを抱える世界第2位のインターネット市場として台頭しているが、国内の多くの地域ではまだオフラインのままだ。

その中には、道端のお茶屋や近所のお店など、インターネットが届かない場所で小さなビジネスを営む商人がいる。BharatPeは、こうした商人にデジタル決済を気持ちよく受け入れてもらうため、政府が支援するUPI決済インフラをサポートするQRコードとPOSマシンを利用している。

600万以上の加盟店にサービスを提供しているBharatPeは、2020年11月までに5万台以上のPOSマシンを導入し、毎月1億2300万ドル(約135億円)以上の取引を可能にしているという。同社は、ユニバーサルQRコードへのアクセスで加盟店に利用料金を請求しておらず、資金の貸し出しによって収益を得ようとしている。今や、その目標の多くを簡単に達成できるようになるはずだ。

銀行になる

インドの中央銀行RBIは現地時間6月18日、2021年初めに経営難に陥った銀行を買収したCentrum Financial Servicesに、小口金融銀行の設立を許可する仮ライセンスを付与した。Centrum Financial Servicesは、BharatPeと協力してこのライセンスを取得した。BharatPeは2社が「対等」なパートナーであると声明で述べた。

Centrumグループのエグゼクティブ・チェアマンであるJaspal Bindra(ジャスパル・ビンドラ)氏は声明で、2社は「新時代の銀行」の創造のために努力すると述べた。

BharatPeはさらに、2つの新しいアプリの立ち上げにも取り組んでおり、そのうちの1つ「PostPe」はQR UPIでの与信を可能にし、もう1つのB2Cアプリは最大12%の金利でピアツーピアの貸し出しを可能にするものだ(担保なし、ただしBharatPeが仲介役を務める)。消息筋によると、これらの新製品は早ければ6月中にも展開される。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Tiger GlobalインドBharatPe

画像クレジット:ANNA ZIEMINSKI / AFP / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

クロスボーダー送金のWiseがロンドン証券取引所に直接上場へ

TransferWise(トランスファーワイズ)として知られていたフィンテック企業Wise(ワイズ)はロンドン証券取引所に上場する計画を明らかにした。従来のIPOルートは取らず、直接上場で公開する。ロンドン証券取引所で最大の直接上場となる見込みだ。

Wiseのことを知らない人のために説明すると、同社はクロスボーダーの送金を専門としている。あなたが別の国に暮らしている人に送金する場合、従来のリテールバンクは為替手数料や外国取引手数料などかなりの手数料を取る。

もちろん、Western UnionやMoneyGramなどよく知られている別の選択肢もある。そうした企業は便利なオンランプとオフランプの手法を提供しているが、それでもWiseより手数料がかかる。

Wiseではユーザーはまず、銀行振替やデビットカードを使ってWiseアカウントに送金する。すると別の通貨で受け取り手の銀行口座に送金できるようになる。固定手数料や変動手数料に関し、Wiseは可能な限り透明かつ正直であろうとしている。

2011年創業のWiseはかなりの成長を遂げてきた。直近の会計年度では、売上高は前年の4億2200万ドル(約465億円)から5億8600万ドル(約646億円)に増えた。税引前利益は5700万ドル(約63億円)だ。同社によると、2017年から黒字となっている。

同社は毎月、約70億ドル(約7718億円)のクロスボーダー取引を行う顧客1000万人を抱える。直近では、新しいプロダクトを追加して売上を多様化させた。

例えば顧客はWiseアカウントにお金を56の通貨で保有できる。10の異なる通貨、そしてデビットカードで口座番号が発行される。この機能は、他国から支払いを受けたいフリーランサーや1、2年海外で過ごすという人にとって特に便利だ。

同社はWise BusinessでB2C以外にも事業を拡大してきた。そうした口座は通常のWise口座と少し似ているが、複数の人が使うことができ、また別の機能も持っている。Wiseはまた、MonzoやN26などサードパーティのサービスでのクロスボーダー取引も動かしている。

直接上場の選択は興味深い動きだ。米国ではSpotify、Coinbase、Slackなど数社が直接上場を行った。銀行がサポートしない直接上場を選択するというのは、投資家から十分な関心を集められると自信があることを意味する。

また、直接上場では追加の資金を調達できないため、Wiseがさらなる資金を必要としていないことにもなる。

他の多くのテック企業と同様、Wiseは2種類の株式を発行するデュアル・クラス・ストラクチャーを採用する計画だ。これによりWiseの既存の株主はしばらくの間、より多くの株式あたりの議決権を得ることになる。Wiseの直接上場は欧州のフィンテックシーン、そして英国のテックエコシステムにとって重要なものになる。投資家がWiseをどうとらえるか、見てみよう。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Wise送金ロンドンIPO

画像クレジット:Wise

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

相続による不動産の名義変更手続きをネット完結させる「そうぞくドットコム不動産」のAGE technologiesが2億円調達

相続手続きのDXに取り組むAGE technologies(旧マーク・オン)は6月16日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による2億円の資金調達を実施したと発表した。引受先はDGベンチャーズ、カカクコム。

AGE technologiesが運営する「そうぞくドットコム不動産」では、相続で発生した自宅や土地などの不動産の名義変更手続きサービスを提供する。戸籍の取得、申請書の自動作成など、あらゆる手続きがオンラインで完結でき、また煩雑な相続手続きをネットで簡単に、相続手続きの負担ゼロを目指した新しいウェブサービスだ。2020年の正式リリース以降1年で、登記された不動産の数は5000件を超えており、利用者の平均年齢は58歳、30代〜70代まで幅広い世代が利用しているという。

一方、所有者不明の土地の問題は年々深刻化しており、その面積は日本全体の2割に上るとされる。また2021年4月の国会では、「相続登記を義務化する法案」が参院本会議で可決、成立した。このような社会的背景により、今後手続きの義務化に伴う需要拡大が予想できることから、AGE technologiesは今回の資金調達を機に、さらなるマーケティングの拡大、新規プロダクト開発への先行投資を強化するとしている。

さらに、デジタルガレージグループが持つ顧客基盤を軸に、ライフエンディング領域事業者との連携や、銀行や自治体など手続きの対応機関へ向けたサービスの提供、また共同事業の開発推進などを通じ、既存事業領域の拡充、周辺領域への事業拡大を加速する。

2018年3月設立のAGE technologiesは、AgeTech(エイジテック)を最大市場と捉え、まずは国内における課題が最も強い「相続」から取り組んでいる。長期では「高齢社会にテクノロジー革命を起こす」というミッションの実現のため、人生100年時代を支えるNo.1テックカンパニーを目指すとしている。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:AGE technologies(企業)遺産相続(用語)資産管理(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)