LGがマスク型空気清浄機を発表、H13グレードHEPAフィルターを搭載

率直に言ってLGのPuriCareで一番意外なのは、最近の数カ月で他のテクノロジー企業がどこも類似製品を出さなかったことだ。LGは近くドイツ・ベルリンで開催されるIFAの記者発表の一部としてこれを披露したのだが、同社自身は今年のショーはバーチャル出展を選んだ。

この「ウェアラブルの空気清浄機」の記者発表は、話題も豊富だ。同社によると「LGのウェアラブル空気清浄機であるPuriCareは、手作りのマスクの品質が均一でないことと、使い捨てマスクの品不足というジレンマを解決する。ウェアラブル空気清浄機のPuriCare(LGプレスリリース)はH13グレードのHEPAフィルターを採用しており、それはLGの家庭用空気清浄機で使われているフィルターと同じである」と説明している。

同社は、あえて新型コロナウイルスには言及しなかったようだ。具体的な疾病や健康問題を取り上げると、具体的な規制の問題にも触れざるを得ない。しかしもちろん、このパンデミックではマスクが各所で入手不足になった。LGがこのアイデアの実装に本気になったのも、そのせいに違いない。

しかしマスクは、その世界のプロが作ったものでもウイルスの遮断性能にはバラツキがある。そしてLGのこのフィルターに関しても同様の疑問がある。まず、着用者とそのまわりの人々とでは、ウイルスの出入りに対する遮断性能は同じなのか?特に、まわりにいる人を保護できないのならいい製品とは言えない。

新型コロナウイルスに関連した質問へのLGの回答は今後の承認の問題にすり替わった。「今後さらなる試験を重ねたうえで、詳細を話したい」とのこと。「一部の市場では第4四半期に発売する」そうだが、それまでに具体的な回答を聞きたい。ただしマスクを着用する動機は新型コロナウイルスだけではない。空気の汚染など、環境汚染もマスクを着ける重要な動機だ。

LGにもう1つ聞きたいのは「電池が消耗したらどうなるのか」。この空気清浄機マスクは820mAhのバッテリーを内蔵しており、「低」で8時間、「高」で2時間動くという仕様だ。しかしそれでも、長時間使って電池切れとか、家を出るとき充電を忘れたなど、現実のさまざまな問題がある。

H13のHEPAフィルターが2つ使われている。それは同社が家庭用空気濾過システムで使っているのと同じ種類だ。細菌を殺すための紫外線LEDライトも備える。これももちろん、ユーザーを保護するだろう。LGは家庭用空気濾過システムに加えて、消毒用に紫外線照射棒も作っている。同社はこちらも開発に熱心だったから、マスク製品に添えるという発想も自然だ。

実装の技術、かなり凝っている。着用者の呼吸に合わせて空気濾過の速度を変えるなど、やりすぎなところもあるかもしれないが、全体的にもっとすっきりしたデザインにすべきではないか。それに、価格が未定という問題もある。

画像クレジット:LG

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

新型コロナと戦う500 Kobe Accelerator 2020の参加スタートアップ17社が決定、国内からは6社が選出

神戸市は8月27日、米国・シリコンバレーのベンチャーキャピタル「500 Startups」と共同開催の 「500 KOBE ACCELERATOR」の2020年の参加チームが決定したことを発表した。5回目となる今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止をテーマに「500 KOBE Accelerator 2020 for COVID-19 Emerging Technology」という名称で、社会課題の解決を目指すスタート アップを募集した。

プログラムをすべてオンラインで実施され、9月7日から10月30日の8週間に渡ってメンタリングや講義、コミュニティ形成支援などを実施。11月12日に開催するデモデイで投資家や事業会社に成果を発表することになる。

今回は応募総数は 237社で、国内は75社、海外は162社という内訳となった。今回参加企業に選ばれたのは17社で、国内6社、海外 11社となった。以下、参加スタートアップを国別に紹介する。

なお、メンターは500 Startupsが担当するが、神戸市からはスペシャルメンターとしてビジョンケア代表取締役社長の高橋政代氏が加わる。

日本

Sportip
AIによる動作解析やコミュニティ機能を備えた、フィットネスクラブ・整体医院向けの指導効率化サー ビス「Sportip Pro」および個人向けサービス「Sportip Meet」の提供。

Zenu
スマートフォンで飲食店での注文や決済が可能となる飲食店向けの簡易デジタルメニュープラット フォームを提供。飲食店は購買データの分析も可能。

Pocket Passport
オンラインで特別な英語レッスンを簡易に作成しスケジュール管理も行える教育者向け授業管理プラッ トフォームの提供。

Kalkul
空間音を活用してデジタルとフィジカルを融合を図る新たなオーディオ機器の提供。

Dream Drive
カスタムキャンピングカーのオンラインリースサービスの提供や日本国内のロードトリップ情報を発信。

Langualess
動物の心拍を計測し、心拍データをアルゴリズム解析することで、動物の状態や感情を読み取ることの できる機器の開発・販売。

米国

Humaxa
AIによるチャットボットやレコメンド機能を活用し、従業員の定着率向上や管理の効率化を実現するリ モートワーク向けAIアシスタントツール「Max」の提供・開発。

LearningPal
AIの活用により事務作業の80%を削減可能とする、紙資料のデジタル化と文書管理のための企業向けプ ラットフォームを提供・開発。

台湾

AESOP Technology
過去の処方箋データを用いた機械学習システムにより、投薬誤りを特定する精度を向上させ、医療に関 わる不必要なコストの削減を図る。

Brain Navi Biotechnology
AIによるデータ解析、コンピュータビジョン、ロボットアームを活用した手術ナビゲーションシステム 「NaoTrac」や感染症の検査ロボット「Nasal Swab Robot」など医療機器の開発。

インド

Health Sensei
バイタルデータの遠隔モニタリングと患者データのオンライン管理を行える遠隔治療プラットフォーム の提供。

Chezuba
60か国以上のNGOと100か国以上の専門的なスキルを持つ個人をつなぐオンラインボランティアプラッ トフォームの提供。

シンガポール

Meracle
薬の管理と投薬効果のデータの解析により慢性呼吸器疾患の治療効果を高める治療ツール「Meracle」 の提供・開発。

SenzeHub
体温、心拍数、血中酸素量、血圧など、バイタルデータのリアルタイムモニタリングによる健康管理を 行う、ウェアラブルデバイスの販売・開発。

アルゼンチン

Osana Salud
オフラインとオンラインの双方で日々の健康管理を行う、サブスクリプション型プライマリーケアサー ビスの提供。

フィリピン

Parmazip
薬局向けのオンライン無料POSおよび在庫管理システムの提供を通じ、薬データをオンラインで共有 し、薬のオンライン受注と配送を可能にする。

オーストラリア

Yondo
1対1のビデオ通話やグループウェビナー、オンデマンド動画など、様々な業種に向けオンライン動画に よるセールスソリューションを提供するEコマースサービスを提供。

AIが専門医並みの精度で不整脈診断を支援、カルディオインテリジェンスが資金調達

写真左から:カルディオインテリジェンス代表取締役社長CEO田村雄一氏、取締役CTO高田智広氏、取締役COO波多野薫氏

がんの画像診断など、AI、ディープラーニングの医療への応用が進んでいる。ヘルステックスタートアップのカルディオインテリジェンスが手がけるのは、心電図をもとに、専門医並みの精度で心臓病の予測・発見を行うAI自動診断支援システムだ。

8月27日、カルディオインテリジェンスはANRIが運営する4号ファンドから、シードラウンドで3500万円の資金調達を実施したことを発表した。

発作時でなくても不整脈を予測できるAI

カルディオインテリジェンスが開発した心電図のAI自動診断支援システムは、ディープラーニングを活用し、不整脈の一種である心房細動を専門医並みの精度で予測・発見するシステムだ。

心房細動は不整脈の中でも特に患者数が多く、日本の患者数は2020年現在、80万〜100万人と推定されている。しかも心房細動は放っておけば、後遺症を残すことが多い脳梗塞の原因ともなる。心房細動を早期に見つけることができれば、脳塞栓の予防薬の投与などにより疾患の進行を抑えることができるのだが、心臓の専門医でなければ診断を付けることは非常に難しいとされる。

また、患者も常に不整脈の発作が起きているわけではなく、動悸(どうき)で困っているときと困っていないときがある。より正しい診断のためにはホルター心電計を身に付けて、24時間生活しながら心電図を記録する方法があるが、専門医であっても24時間の測定では、必ずしも異常を見つけられないことも多いという。

カルディオインテリジェンスが2019年10月の創業後、第1弾プロダクトとして開発したのは、クリニックにおけるパッチ型心電計やホルター心電計などの長時間心電図測定結果と組み合わせることで、従来は見つけられなかった心房細動を特定する、心房細動診断AIだ。

実は従来から、ホルター心電計用のAI自動診断技術は国内外で研究・開発されている。特に近年、欧米を中心にAIの診断制度が向上、技師や医師の作業効率化に貢献している。カルディオインテリジェンスのAIは精度の高さに加えて「説明可能なAI」をプロダクトに搭載している点が特徴だ。

ディープラーニングには、AIの予測結果がどのようにもたらされたか、その根拠が分からず、モデルがブラックボックス化するという課題がある。診断に当たっては、医師自身が納得してデータを使う必要があるが、従来システムでは、医師が患者に何を根拠に診断を下したかを説明できなかった。カルディオインテリジェンスのAIは、高精度で心房細動を検出するだけでなく、診断根拠を可視化。非専門医であっても、診断根拠になる特徴を知っていれば説明ができ、確実な診断につなげることを可能とした。

カルディオインテリジェンスでは、第1弾プロダクトの臨床現場での実用化にめどがついたとして、早期事業化を進めるために今回の資金調達を実施した。同社は、6月に第二種医療機器製造販売業、医療機器製造業を取得。8月21日には「隠れ心房細動人工知能の開発研究」において日本医療研究開発機構(AMED)が公募した「医療機器開発推進研究事業」に採択され、2022年度までの間でAI医療機器の実用化開発と医師主導の知見を実施する予定だ。

遠隔医療や創薬、スマートデバイス連携などへの応用目指す

カルディオインテリジェンス代表取締役の田村雄一氏は、循環器内科を専門とする医師でもあり、心臓難病治療に詳しい人物だ。

「心房細動は頻度が高い不整脈だが、半数しか診断がつかない。間違いがあっては困るので、非専門医はなかなか診断したがらないが、専門医へのアクセスは限られている」という田村氏は、「心房細動が早期に、専門医以外のいろいろなチャネルで発見可能になれば、専門医は治療により多く関われて、忙殺されずに治療に集中することができる」と同社のプロダクト開発の動機について語る。

近い将来には「専門医でも見つけられない、非発作時の心電図波形から心房細動の存在を検知するAIの開発も目指す」という田村氏。心電図は今のところ、いろいろな環境で連続的に、簡単に取れる状況ではないが、スマートデバイスの進化でこれが実現すれば、AI×心電図がさまざまな場面で社会を変える力を持つだろう、と話している。

例えば、医療過疎地での非専門医による高度な診断や、創薬の現場での活用、自動車運転中の発作を検知して自動ブレーキを作動させるといったケースへの対応が想定できると田村氏はいう。今後Apple Watchのようなウェアラブルデバイスとの連携が拡大できれば「さらなる技術の広がりが期待できる」と田村氏は述べている。

カテゴリー:ヘルステック

タグ:カルディオインテリジェンス 資金調達

幻覚剤を使った精神科治療のための臨床管理とデータ解析を提供するOsmind

最先端の幻覚剤治療に特化した精神障害のための臨床診療管理とデータ解析の新しいプラットフォームを共同創設したJimmy Qian(ジミー・キアン)氏とLucia Huan(ルシア・ホアン)氏の出会いはスタンフォード大学だった。

2人はどちらも医療分野の経歴を持つ。ホアン氏は生物医学エンジニアを母に持つ。彼は、Warburg Pincus(ウィーバーグ・ピンカス)の医療部門に勤務経験があり、スタートアップのVerge Genomics(バージ・ジェノミクス)で働いた後に、キアン氏がスタンフォード大学医学部で勉強していた時期に、スタンフォード・ビジネススクールに入学した。

2人はともにサンフランシスコ・ベイエリアの高校を出ていたため、シリコンバレー周辺のコミュニティーで発生していたメンタルヘルスの危機的状況に精通していた。

キアン氏は、ペンシルベニア大学の学部生だったとき、メンタルヘルス関連のいくつかの非営利団体で働いていたが、スタンフォードに入学して、再びベイエリアに戻ってきた。

若いスタートアップOsmind(オズマインド)の2人の創設者が目指すのは、臨床医と製薬会社に治療提供と治療効果の証明を可能にするソフトウェアとサービスを提供し、精神障害患者が革新的な治療を受けられるようにすることだ。

ホアン氏とキアン氏によれば、米国人の約1100万人が精神障害のほとんどの治療法に耐性を持っているという。こうした患者たちの治療費は、2億5000万ドル(約265億円)にものぼると彼らは話す。「これらの患者層を救済できる人はいませんでした」とホアン氏はインタビューで語った。「彼らのための薬は、製薬会社は作ってくれません」。

Y Combinator(ワイ・コンビネーター)の最新のコホートとして修了を間近に控える公益法人Osmindが目指すのは、最も重度な患者層からデータを集め、それを医薬品開発企業の臨床試験用に提供し、患者を治療提供者のもとへ確実に送り届け、最大の恩恵が得られるようにすることだとキアン氏は語る。

同社は2カ月前からサービスを開始しているが、すでに3000人ぶんの患者データをカバーするソフトウェアを使い、30件の治療にあたっている。

「全体的にこの利点は、すべての人にとってウィンウィンであることです」とホワン氏は言う。医療提供者は、管理業務を効率化し、患者への働きかけや遠隔モニター・サービスを可能にするソフトウェア・プラットフォームが利用できるようになる。さらに、患者の治癒状況が見られるウェブポータルもある。

これは、必ずしもテクノロジーに明るくない医師のためにデザインされたサービスだとキアン氏は言う。また、幻覚剤やケタミンを用いるなどの実験的な治療法の臨床実証に利用できるデータセットも提供可能だ。「私たちは、医療の旅を改善します」とキアン氏。「そこは人材が不足している臨床分野です。患者を毎日往診するのは不可能です」と続ける。
画像クレジット:DrAfter123 / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

微⽣物ゲノム解析の早大発スタートアップbitBiomeが7億円を調達、疾患と微生物の関連について大規模研究を開始

微⽣物ゲノム解析技術の早稲田大発スタートアップbitBiomeが7億円を調達、疾患と微生物の関連性に関する大規模研究を開始

微⽣物のシングルセルゲノム解析技術「bit-MAP」を⽤い、微⽣物の産業応⽤を⽬指すbitBiomeは、シリーズBラウンドにおける第三者割当増資として総額7億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は東京⼤学エッジキャピタルパートナーズ、ユニバーサル マテリアルズ インキュベーターを含む複数企業(既存・新規)。累計資金調達額は10.5億円となった。

今回調達した資金は、さらなる飛躍に向け、自社起点の研究、最新機器の購入、米国展開など5つの重点テーマに投資し、爆発的な事業成長を促すとしている。

  • 疾患と微生物の関連性を解析する自社研究
  • さらなる研究開発力強化に向けたウェットラボ設備導入(次世代シーケンサーなど)
  • ⽶国での研究・事業活動の加速化
  • 特許の出願・維持
  • 人材採用

またbitBiomeは、先に挙げた自社研究として、がん、腸内疾患、自己免疫疾患、神経精神疾患などを含む20を超える疾患について患者の便および唾液サンプルを取得し、種々の疾患と腸内細菌・⼝腔内細菌の関連性を明らかにする大規模研究を開始する。

患者検体についてはQLifeと協⼒し、同社パネルに登録している患者から取得する。疾患ごとに、医薬品研究開発・新規バイオマーカー探索を⽬指したパートナリング・共同研究、解析データの共有および独占販売などを検討しているという。

bitBiomeは2018年11月創業の早稲田大学発スタートアップ企業。bitBiome開発のゲノム解析技術bit-MAPは、世界唯一の微生物を対象としたシングルセルゲノム解析技術で、地球上のあらゆる環境に生息する微生物のゲノム情報をひとつの細胞から高精度に解読することを可能とする。

bit-MAPによって、従来のマイクロバイオーム研究で必要とされてきた煩雑な単離・培養、あるいは複雑なシーケンスデータの計算処理の必要なく、未知の微生物ゲノム情報を高速・網羅的に獲得可能となった。

同技術を次世代のマイクロバイオーム解析サービスとして提供し、医療・農業領域を中心にあらゆる微生物関連の企業・アカデミアとの協業を通じて、同社のミッション「Unlock the Potential of Microbes」を実現し、社会へこれまでない価値を提供するとしている。

オンライン薬局運営の「ミナカラ」が3億円調達、製薬メーカーとPB医薬品の共同開発強化へ

オンライン薬局を運営するミナカラは8月24日、3億円の資金調達を発表した。第三者割当増資による調達で、引受先は、既存投資家のSpiral Innovation Partners、インキュベイトファンド、STRIVE、カイゲンファーマ、新規投資家として朝日メディアラボベンチャーズが加わった。なお、製薬会社のカイゲンファーマ以外は、VCもしくはCVCだ。今回の調達により同社の累計調達額は10億円となった。前述した以外の既存投資家は以下のとおり。

  • AGキャピタル
  • グロービス経営大学院
  • ジャパンメディック
  • 千葉道場
  • 本田 圭佑氏(プロサッカー選手・個人投資家)

同社は今回調達した資金を、集合調剤・物流施設としてのセントラル薬局の開発、製薬メーカーとの共同開発医薬品(PB医薬品)の企画開発、製薬メーカーのD2C展開の各種支援を行う事業に投下する。

同社が運営するオンライン薬局の「minacolor」(ミナカラ)は、一般的な対面式の薬局と同様に自分の症状にあった薬を薬剤師のアドバイスを受けながら、薬の代金をネット決済後、自宅まで届けてくれるサービス。ネット経由で薬剤師による服薬管理もサポートしてくれる。具体的には、薬剤師とは無料チャットで相談ができ、OTC薬の購入も薬剤師と相談のうえで自分にあったものを購入可能だ。現在提供している薬を中心とした商品の取り扱い点数は800種類(SKU)とのこと。

ミナカラで代表取締役を務める喜納信也氏

現在、一部の医薬品は販売許可を得たECサイトから手軽に購入できるが、本当に自分の病状・症状に合っているかどうかは、購入者自身が各ECサイトの説明文を読み込んで納得するか、CMなどで認知度の高い医薬品を選ぶというの現状だ。minacolorでは、こういった購入者の独自判断だけでなく、薬剤師の的確なアドバイスを基に最適な医薬品を購入できるのが最大の特徴となっている。

現在、オンラインで販売可能なのは、第一類医薬品まで。要指導薬医薬品などは販売できないが、多くの患者は病院の医師や薬剤師の適切指導を受けた後、2年程度で処方薬から手に入りやすい第一〜三類に移行するケースがほとんどとのこと。

ミナカラで代表取締役を務める喜納信也氏によると、前述の薬剤メーカーとのPB医療に品の共同開発については、オンラインとの相性がいい疾患・テーマから先行して製品開発を開発しているとのこと。具体的には、しみ治療、痔、いぼ、女性用薬、水虫、カンジダなど、対面で相談しにくいテーマや継続的に使用する必要のあるテーマだ。元々運営しているメディアコマースのユーザーデータやマーケデータで把握できており、勝算の高いテーマから展開できているというのが同社PB展開の強みだ。

「風邪などのすぐ治したいというニーズが高い急性疾患などは配送時間のかかるECが出遅れているが、こちらについても将来的には配置薬、つまり富山の配置薬のネット版のようなサービスでカバーしたい」喜納氏。

気になる薬が届くまでの時間だが、同社によると注文時間にもよるが現状は沖縄などの一部地域を除けば、土日休日を問わず翌日到着になるという。また喜納氏は、今回の資金調達に加わっているSpiral Innovation Partnersには、LPとしてセイノーホールディングス(西濃運輸)が入っており、西濃運輸とはファイナンスとセットで事業提携が決まっていることを教えてくれた。物流大手の西濃運輸を組み、オンラインで医薬品を配送するのに最適な物流拠点の確保など、物流周りの課題解決も継続的進めていく。

画像提供:ミナカラ

病理AIソリューション「PidPort」開発のメドメインが11億円調達、病理医不足をAIと画像認識で支援

病理AIソリューション「PidPort」を開発するメドメインは8月24日、総額11億円の資金調達を発表した。第三者割当増資による調達となる。

写真中央がメドメインの代表取締役兼CEOの飯塚 統氏(提供:メドメイン、2019年11月に撮影)

なお同社の今回の資金調達で、同社への出資を目的とした専用ファンドをHike Venturesが組成し、病院経営者をはじめとした複数のリミテッドパートナーから調達するSPV(Special Purpose Vehicle)スキームを採用している。最近でSPVスキームといえば、HRテックのSmartHRがシリーズBの調達ラウンドでリード投資家のCoral Capitan(旧・500 Startup Japan)が採用した手法として有名だ。

関連記事:SmartHRが15億円調達、東京海上日動火災保険との連携も視野に

今回の調達ラウンドに加わったの以下の複数の病院グループ、ベンチャーキャ ピタル、事業会社、個人投資家。このスキームによる調達額が一気に増え、既存調達額の1億円を加えると累計調達額は約12億円となった。

関連記事:病理医不足をAI画像診断サービスで改善、九大発メドメインが1億円を調達

  • 病院グループ:福岡和白病院グループ ・国際医療福祉大学・高邦会グループ
  • 既存投資家:ディープコア、ドーガン・ベータ
  • 新規投資家:QTnet、Hike Ventures、みらい創造機構、個人投資家(非公開)

同社は今回調達した資金を、独自開発の病理AIソリューション「PidPort」の開発、デジタル化領域への設備投資、営業・開発体制の強化、マーケティング費用に投資する予定だ。 PidPortは2020年2月の正式リリース後、国内外で50施設以上の医療機関と共同研究を実施。共同研究施設および新規の施設への製品導入を進めてきた。

PidPortは、クラウドストレージ、遠隔病理診断、AI画像解析の機能を提供。病理診断用のプレパラートをデジタル化する「イメージングセンター」も社内を設置しており、病理診断の現場におけるさまざまな問題解決をメドメイン内でサポートできる体制も整えている。まだ実証実験段階だが、日本国内においてはAI解析に関する機能について薬事申請を進めており、将来的な提供も計画している。

同社によるとPidPortは現在、臨床的に症例数の多い、胃・大腸・乳腺・肺の腫瘍性病変における組織判定および、子宮頸部や尿の細胞判定(腫瘍性判定の有無)に対応しているとのこと。今後は膵臓・肝臓・皮膚などほかの臓器における腫瘍性病変を含む疾患などもカバーしていくだけでなく、人工知能の特徴を生かした疾患予測モデルを創出するための研究開発を進めていきたいとしている。

画像提供:メドメイン

富士フイルムが出資する医療画像スタートアップNanoxがナスダック上場、175億円調達

イスラエル拠点の医療画像スタートアップNanox(ナノックス)が5900万ドル(約62億円)を調達して1カ月もたたないが、その際間もなく上場すると明らかにし、そして実行した。Nanoxは8月21日、IPOで1億6520万ドル(約175億円)を調達したと発表した。ティッカーシンボルNNOXNasdaq Global Market(ナスダック・グローバル・マーケット)にIPO価格18ドル(約1900円)でデビューを果たし、取引開始時は13%上昇し20.34ドル(約2150円)をつけ、そして20.6%アップの21.70ドル(約2300円)で取引を終えた。

1株あたり18ドルという価格は、NanoxF-1フォームの中で設定していた16〜18ドルというレンジで最も高く、バリュエーションは10億ドル(約1060億円)となった。

Nanoxの事業は垂直統合型となっている。大型で高価なレントゲン装置に対抗する最先端の小型スキャナーをデザインし、最初のモデルはNanox.ARCだ。CTスキャナーの平均的な重さ2000kgに対してARCは70kgで、製造コストはCTスキャナーが100〜300万ドル(約1〜3億円)、ARCは1万ドル(約105万円)だと同社は話す。テクノロジー、システムサイズ、価格と三拍子揃っていて、これは幅広い研究、臨床や診断の一環としてスキャニングを従来よりも多く活用できることを意味する。

同社はまた、スキャン、そしてスキャンで得られた画像の処理と評価で課金するクラウドベースのサービスを構築し、Nanox.CLOUDとして販売している。スキャン装置は、Nanoxに投資しているFoxconn(フォクスコン)のようなメーカー大手との提携で製造し、サービスは医師や学者、研究者に販売する。

Nanoxは提出したF-1書類の中で、保有する現金と合わせて上場で調達する資金を、「グローバル展開する予定のNanox.ARC装置の提供に使い、また製造能力、出荷、設置、Nanox System展開にもあてる。そしてNanox.ARCのR&D、Nanox.CLOUDの展開、様々な地域での規制当局からの承認取得、マーケティング費用、一般管理費用、他の一般的な企業目的にも使う」としている。

Nanoxは業界をディスラプトする可能性を秘めている最先端技術に取り組んでいる。すでに多くの大企業が同社の取り組みをサポートしている(Foxconnに加え、富士フイルムやSK Telecomなどが投資している)。

しかし、全てうまくいくかどうかはギャンブルだ。Nanoxはどのマーケットでも規制当局から装置の承認をまだ得ていない。また、2020年上半期は1380万ドル(約14億円)の赤字となった。この数字は昨年同期の170万ドル(約1億8000万円)から増えている。

F-1書類の中で、同社はこれまでの売上高を示さなかったが、創業者でCEOのRan Poliakine(ラン・ポリアキン)氏は7月にTechCrunchに対し、売上高の大半はライセンス契約によるものだと話した。FoxconnやSK Telecom、富士フイルムがNanoxのコンセプトに基づいて装置を製造するが、こうした企業にIPを提供する。

Nanoxは、2020年2月にNanox.ARCスキャナーのプロトタイプに取り組み始め、「全てがうまくいけば、最初のNanox.ARCを2021年上半期に展開する」とF-1書類に書いている。順調にいった場合、2021年下半期に少なくともNanox System(スキャナーとさまざまな画像サービスを組み合わせたもの)1000件のインストールを目指す。長期的には、2024年までに1万5000件のNanox System展開が目標だ。

しかし同社はまた、新型コロナウイルスパンデミックによって規制当局からの承認取得がずれ込んでいることを認識している。ただ、新型コロナは医療テクノロジー会社に多くの関心が寄せられている理由の1つでもある。

画像クレジット: Nanox

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(翻訳:Mizoguchi

患者エンゲージメントのスタートアップ「Klara」がグーグルのファンドなどから約15.9億円を調達

ニューヨークを拠点とするヘルスケアのスタートアップで、医院など診療の現場で患者のエンゲージメントを高めるツールとしてアピールしているKlaraが、1500万ドル(約15億9000万円)を新たに調達した。

患者がバーチャルなケアの選択肢を求めている中、医療機関向けのコミュニケーション、診断、マネージメントの新しいツールを開発している企業には、投資家から資金が次々に投入されている。

Simon Bolz(サイモン・ボルツ)氏と共同創業者のSimon Lorenz(サイモン・ローレンツ)氏からすると、Klaraのビジネスと多くの競合との違いは、患者とのコミュニケーションをユーザーインターフェイスの中心として重視している点だ。

「他社の製品はおそらく受付や支払からスタートして、アドオンとしてメッセージ機能を追加している。そのように製品を作るのは、他社がそうであるように魅力的な方法ではない」とボルツ氏はいう。

Klaraはまず皮膚科の個人医院や診療グループに的を絞っているが、同社のサービスは他の医療業務でも利用できる。

最近の患者エンゲージメントサービスにはEHR(電子健康記録)やコミュニケーションの履歴との統合が求められており、Klaraはこれを提供している。同社のサービスはモバイルのウェブブラウザ上のポータルから利用できる。患者にはテキストメッセージでリンクが送信され、その後はテキストメッセージでサービスを利用する。

ボルツ氏によれば、Google(グーグル)のベンチャーファンドであるGradient Venturesが魅力を感じたのは、このテキストメッセージのコンポーネントだという。Klaraは医療のプロセスをもっと自動化したいと考えており、そのために自然言語処理技術を活用するつもりだ。

「我々は自動化をさらに推し進めていく。多くのプロセス、EHRとの統合、診療管理システムの自動化にすでに取り組み始めている」とボルツ氏は述べた。

Gradient VenturesのゼネラルパートナーであるDarian Shirazi(ダリアン・シラジ)氏とFrist Cressey VenturesのパートナーであるNavid Farzad(ネービッド・ファルザド)氏がKlaraの役員となる。

ファルザド氏は発表の中で「これまでの診療業務は、特にポストコロナの世界においては、コミュニケーションを向上し患者のエンゲージメントを獲得するよう変革されなくてはならない。既存の診療技術インフラでは不十分だ。Klaraのシームレスなソリューションは、ワークフローを混乱させることなく診療インフラをモダナイズする」と述べた。

カテゴリー:ヘルステック

タグ:Klara Gradient Ventures

画像クレジット:grivina / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

医療用の携帯型圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ開発のExoが42.2億円調達

医療機器のコストと複雑さを削減する新しい企業を支援し続ける投資家たちの後押しを受け、医療業界向けの新しい診断ハードウェアを開発するExo(エクソ)が、新しい資金ラウンドで4000万ドル(約42億2000万円)を調達した。

同社の声明によれば、これまではコスト、携帯性、画像品質の悪さ、高密度の身体組成を画像化できないことなどによって、超音波などの診断ツールが世界中の患者ケアに与えられる影響が限定されていた。

Exoは、特許取得済の圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ(圧電マイクロマシン超音波変換器)を開発したことで、この問題を解決できたと発表した。デバイス自身が画質を改善する一方で、付属のソフトウェアツールキットがデバイスの診断機能を向上させる。

Exoは、2024年には世界のPOC(臨床現場即時検査)超音波市場が15億ドル(約1580億円)に達し、年間10%近くの成長を続けると予想している。

「世界中の救急治療室の医師は、診断と治療を行うまでに数分しか許されない患者をはっきりと診察することができないまま、新型コロナウィルスの診断や合併症、心不全、内出血など、極めて緊急な医療上の問題を解決しなければならないことが多いのです」とExoの最高経営責任者であるSandeep Akkaraju(サンディープ・アカラジュ)氏は語る。

声明によれば、同社の技術を支えるための新たな4000万ドルのラウンドは、2019年に行われた3500万ドル(約37億円)の投資に続くものであり、同社の総資本を1億ドル(約106億円)近くに引き上げた。今回のラウンドを主導したのは、Fiscus Ventures、Reimagined Ventures(両社ともMagnetar Capitalの関連会社)、そしてAction Potential Venturesである。そこにTDK Ventures、Solasta Ventures、およびIntel CapitalとApplied Venturesを含む、以前からのすべての投資家が参加した。

Exoのチームは、アップルやグーグルなどの消費者向けテクノロジー大手企業出身者と、GE、Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン)、Maxim(マキシム)、Medtronic(メドトロニック)、Siemens(シーメンス)などの大手医療機器企業の出身者で構成されている。

「救急治療室の医師でありベンチャーキャピタリストでもある私は、Exoの製品が市場にもたらす変革の可能性を直接知っています」と声明で述べるのは、FiscusおよびReimagined VenturesのTed Koutouzis(テッド・クートウジス)博士だ。「Exoのチームは、しばしば混乱し、無秩序で緊急を要することが多い病院の環境内でシームレスに機能するデバイスの開発に焦点を当てていて、これまで医師が手の中に持つことを夢見ていた、高い画質、整ったインターフェース、ならびに診断を行えるツールを提供してくれます」。

Exoハードウェアには、既存のワークフローと統合できるように設計された、一連のソフトウェアツールが付属している。また、同社は医療画像処理への進出を足がかりに、病院や救急医療環境向けの幅広いツールスイートの提供を行うことを計画している。同社が構想するのは、1台でさまざまな診断を行える多機能デバイスだ。

「Exoは、救急治療室や集中治療室で、臨床即時画像診断の導入を真に推進できるプラットフォーム技術を開発しています。それは高度な外科用ロボットや内視鏡手術を促進し、非侵襲的な神経調節(ニューロモデュレーション)や医薬品のデリバリーを活用した治療を可能にします」と語るのは、Action Potential Venture Capital (生物電子工学技術に焦点を当てたGlaxoSmithKlineの企業ベンチャー部門)の Juan Pablo Mas(ファン・パブロ・マス)氏だ。

画像クレジット: Busakorn Pongparnit / Getty Images

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(翻訳:sako)

老化速度のモニターと対策を可能にするHumanity

いまやほとんどの人が、歩いた歩数、心拍数、体重などを記録できるウェアラブルデバイス、いわゆる「デジタル・バイオマーカー」を監視するアプリに慣れ親しんでいる。近年では比較的簡単な方法で、コレステロールのレベルなどの「生物医学マーカー」の監視を可能にするというスタートアップも現れている。まだ数は少ないが、彼らはバイオマーカーと生物医学マーカーの両方を監視することで、私たちの体の状態を全方位の視野で監視できる手段を探っている。

その中間の位置に、まさにその2つの合体を目指すHumanity(ヒューマニティー)が躍り出た。2人の経験豊富な起業家によって創設された同社は、デジタルおよび生物医学のバイオマーカーを統合した一般消費者向けアプリを、来年本格的にローンチさせる予定だ。

米国時間8月20日、同社は最初のシード投資となる250万ドル(約2億6000万円)を調達したと発表した。このラウンドは、ボストンのファンドOne Way Venturesと、長年のヘルステック系エンジェル投資家として高名なEsther Dyson(エスター・ダイソン)氏をはじめとする投資家たちが主導している。

歴史あるソーシャルネットワークWAYN(ウェイン)の共同創設者でもあり、多くの企業を立ち上げてきた起業家Peter Ward(ピーター・ウォード)氏と、元Badoo(バドゥー)のMichael Geer(マイケル・ギア)氏は、AIを駆使して人の健康寿命を最大限に延ばす健康と長寿のための企業で「人類の生活をより健康に、より長生きにしたい」と考えている。

彼らの狙いは「実際の老化速度」をモニターできる能力をユーザーに与え、どの行動が有効でどれが無意味かを示し、どうすれば老化プロセスを逆転させられるかを教えることにある。

彼らは、George Church(ジョージ・チャーチ)氏やAubrey de Grey (オーブリー・デ・グレイ)氏など、遺伝学と老年学の世界的権威をも引きつけ、同社の科学諮問委員会に招き入れた。

デ・グレイ氏は、老化防止技術の研究を奨励するMethuselah Mouse Prize(メトセラマウス賞)の運営団体Methuselah Foundation(メトセラ財団)の共同創設者として有名だ。

声明の中で、デ・グレイ氏は「世界の科学者は、ますます老年学に注目するようになっています。そのお陰で、画期的な大発見が加速度的に増えています。しかしながら、我々にはまだ、それらの発見を人々に直接届ける手段がありません。それを解決しようとしているのがHumanityであり、私が勇んで彼らの使命を支援するのは、そのためです」と語る。

Humanityの筆頭投資企業であるOne Way Venturesの業務執行社員Semyon Dukach(セミョーン・ドゥカチ)氏は「我々はこのラウンドを、一般消費者向け技術と健康分野の主要ファンドやエンジェルといった数多くの素晴らしい投資家とともに主導できたこと、そしてこの類い希なチームを支援できることを誇りに思います。我々はHumanityの使命を信じ、人々にこうした製品を提供するには今以上の好機はないと確信しています」とコメントしている。

ウォード氏は「病気を避けて老化を遅らせることに関して、多くの人が無力感を覚えています。世界に新型コロナウイルスが蔓延する中で、老化と体の不調がリスクを大幅に高めることを、我々はみなはっきりと認識しました。人々の最大の関心は、日々どのような行動をとれば健康を長期にわたって維持できるのか? という当然のものです」と付け加えた。

ギア氏は「人はこれまで、健康のために行っていることが本当に役に立っているのかどうかを知るための、正確で明確なフィードバック・ループを手にしたことがありません。我々は、まさにそのスーパーパワーを提供したいのです」と説明する。

Humanityは現在、その製品のアルファ版を「数百人のユーザー」を対象にテストしているところであり、いち早く使いたい人たちが「数千人」待っているという。アプリは、2021年の早い時期に英国と米国でローンチされる。2020年には世界医展開される予定だ。
画像クレジット:Humanity

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(翻訳:金井哲夫)

レーダー用いた高齢者見守りデバイスの米Tellusが7.3億円を調達、日本出荷とともに高齢者施設への普及目指す

高齢者見守りデバイスの米Tellusが7.3億円を調達、日本出荷とともに高齢者施設への普及目指す

レーダー技術を用いた高齢者向け見守りデバイス開発の米スタートアップ「Tellus You Care」(Tellus、テラス)は8月20日、シリーズAラウンドとして総額7.3億円の資金調達を実施したと発表した。

引受先は、リード投資家の東京大学エッジキャピタルパートナーズ、NTTドコモ・ベンチャーズ、環境エネルギー投資、DG Daiwa Ventures、All Turtles LLC、個人投資家。今回の調達を経て累計調達額は10.5億円となった。

調達した資金は、研究開発、SaaSプラットフォーム開発、マーケティングなどに投資し、Tellusの事業基盤をさらに強固なものとする。日本国内の高齢者施設へのデバイス導入に注力し、在宅介護、将来的にはコンシューマー向けへの商品開発も計画。サンフランシスコ本社に加え、2020年2月に設立した日本法人でも多くのポジションを強化。パートナー企業とともに日本での事業展開を進めるとしている。

Tellusは、自動運転に使われる最新のレーダー技術をいち早く活用し、プライバシーを守る非接触な方法で人のバイタル(心拍・呼吸)情報を測定する研究を進行。2019年夏にNTTドコモと実施した実証実験など、複数・長期のテストを経て開発した最新デバイス「Tellus」は、室内の壁に設置するだけで対象者のバイタルや活動状況(在室・歩行・睡眠・転倒など)の情報を収集できるという。

これら情報はクラウドで管理・分析を行い、どこからでもアクセスが可能。高齢者などの長期的な健康管理や介護の負担軽減、さらには施設の経営支援に貢献するという。測定したバイタルデータを分析するアルゴリズムなどについては、すでに複数の特許を取得済みで、その他多くの特許も申請中。

高齢者見守りデバイスの米Tellusが7.3億円を調達、日本出荷とともに高齢者施設への普及目指す

Tellusの見守りデバイスは、手のひらサイズの90×90×32mm。使いやすさ・設置の容易さを重視しており、国内外での受賞歴のあるプロダクトデザイナー、鈴木元氏がデザインしている。設置についても、業者などによる工事は不要。ひとつの部屋に1デバイスを壁に掛けてコンセントに挿すだけで、対象者を見守り続ける。

介護施設向けの管理画面では、日本国内の複数施設での試用を繰り返し、使いやすさを追求。介護士の携帯電話に対して、転倒や離床などの事態にアラートが送られる。

高齢者見守りデバイスの米Tellusが7.3億円を調達、日本出荷とともに高齢者施設への普及目指す

Tellusは、スタンフォード大卒でGoogleなどでの事業経験を持つ2名が、遠方に住む祖父母の介護という原体験をきっかけに、最先端の技術でエルダー・ケア(高齢者介護)を革新的に変えることを目指し2017年7月創業。2018年からは All Turtlesの支援を受け、研究開発、日本市場へのフォーカス、事業提携や資金調達を行っている。

2020年7月31日、Tellusの見守りセンサーは、日本の介護保険制度における「要介護者等の日常生活の便宜を図るための用具」として認定された。これによって利用者は介護保険の補助を受けて、費用の1割~3割の自己負担(所得に応じて変動)でTellusをレンタルすることが可能となった。

JD.comの創業1年のヘルスユニコーンがHillhouseから876億円調達

近年、中国のオンラインショッピングの巨人が処方薬マーケットに食い込んで来ている。Alibaba(アリババ)の最大のライバルであるJD.com(京東商城)は、ヘルスマーケットが小売マーケットをはるかに上回っていることに気付き、先々のIPOを目指して2020年5月にヘルスケア部門を子会社化した。そのスタートアップであるJD Health(JDヘルス)は、2019年11月に10億ドル(約1060億円)のシリーズAラウンドを経た後、今回70億ドル(約7400億円)という驚異的な評価額を得ている。

1年足らずで、プライベートエクイティ企業のHillhouse Capitalとの間で、シリーズBとして8億3000万ドル(約876億円)を超える調達計画の最終合意に達したことを、JD Healthが発表(JDリリース)したことで、再び多額の資金調達が行われることが明らかになった。

JD.comの初期からの支援者であり、ヘルスケアへの機会を積極的に推す(The Information記事)Hillhouseとの取引は、今年の第3四半期に行われる予定だ。JD.comは、この取引後も過半数の株主の地位に留まる。

いまやJD Healthは多機能ヘルスプラットフォームになった。30分以内の薬局への配達(JDリリース)、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック中に急増した遠隔医療サービス(JDリリース)、遺伝子検査などの消費者関連のヘルスサービスなどから、病院システムのデジタル化ソリューションに至るまで、すべてを提供している。その事業は2019年に「黒字化を達成しました」と同社の最高経営責任者Xin Lijun(シン・リジャン)氏は主張(QQ記事)している。

このヘルスユニットは、サプライチェーンを支配するという意味では中国ではAmazon(アマゾン)に最も近い存在であるJD.comが、オンライン小売からは分岐して行うまた別の取り組みである。JD.comはまた、独立したフィンテック子会社(未訳記事)と、また別のロジスティクス事業(未訳記事)も統括しており、どちらも上場を予定している。

ライバルのアリババもヘルスケアセクターで似たような動きを見せている。現在株式時価総額が約340億ドル(約3兆5900億円)の香港上場企業であるAlibaba Healthの一部を所有しているのだ。

同社の収益報告書は、その手広さの一部を明らかにしている。オンラインドラッグストアの年間アクティブユーザーは、5月の時点で1億9000万人(Alibaba Healthサイト)を超えているが、最近の成長はパンデミックによって押し上げられたものだ。

一方、JD Healthが、CEOの発言によればその「中心ビジネス」であるオンラインドラッグストアに、何人のユーザーを集めているのかは不明だが、他のセグメントに関する統計情報は公開している。新型コロナウィルス感染症の発生以来、170万人を超える患者がその診断サービスを利用しており、現在では毎日10万件を超える問い合わせが寄せられている。今週発表(JDリリース)されたJD Healthによる最新の目標は、最大5000万家族を目指す、オンラインのホームドクターサービスを構築することだ。

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(翻訳:sako)

従業員コンディション分析のラフールがデジタル身分証アプリxIDと連携、データ閲覧を明確化

従業員コンディション分析のラフールがデジタル身分証アプリxIDと連携、データ閲覧を明確化

ラフールと、GovTech領域に取り組むxID(旧社名:blockhive)は8月19日、ラフールの「心理的安全性」と「エンゲージメント」を可視化するツール「ラフールサーベイ」と、xIDのデジタルID(身分証)アプリ「xID」(クロスID。iOS版Android版)との連携を発表した。xIDを利用してラフールサーベイにログインすることで「本当にユーザー本人がログインしているのか」「許可がおりている人間だけが結果を閲覧できているのか」を明確化できる。

従業員コンディション分析のラフールがデジタル身分証アプリxIDと連携、データ閲覧を明確化

2015年改正の「労働安全衛生法」から導入されたストレスチェック制度では、50人以上の労働者がいる企業と地方公共団体は1年に1回のストレスチェックの実施が義務づけられている。しかし、その結果は一般に個人ではなく企業に帰属しており、「個人データは、実施者である資格のある産業医・実施事務従事者だけが本当に閲覧しているのか」「不当に情報が共有され、人事評価などに用いられていないか」など、データ閲覧の明確化が行われていなかった。

ラフールサーベイは、2019年4月のサービスローンチから1年で550社の企業が導入しており、取り扱うメンタルヘルスデータが膨大になっているという。その中で、ラフールサーベイの認証をよりセキュアに構築することを考えた際、マイナンバーカードと連携した公的個人認証による本人確認や、多要素認証によるログインを可能とするxIDがあることの親和性を確認。今回の提携を機に、ラフールサーベイへのログインにxIDを採用し、不正アクセスやなりすまし被害からユーザーを守るとしている。

xIDを利用してラフールサーベイにログインすることで「本当にユーザー本人がログインしているのか」「許可がおりている人間だけが結果を閲覧できているのか」の明確化が可能となる。将来的には、以前受診したサーベイの結果をユーザー側の任意で医師に共有することも可能となり、初診であってもこれまでのデータをもとに最適な治療案を提案できるようになるという。

ラフールサーベイは、社員の心理的安全性とエンゲージメントを可視化できるツール。約3000社の従業員18万⼈以上のメンタルヘルスデータから、⼤学や臨床⼼理⼠の知⾒を取り⼊れた独⾃の調査項⽬を従来のストレスチェックに加えることにより、多⾓的な分析が可能。組織エンゲージメント・ハラスメントリスク・離職リスクなども含めた包括的な診断も行えるという。

2015年より長時間労働や職場環境による労働者のメンタル不調の予防を目的に施行されたストレスチェック項目も加味されており、かつ通常のストレスチェックだけでは見えづらい心の状態が可視化されることで、社員が安心して働ける職場環境を作り、人材の定着と組織改善につなげられるとしている。

xIDは、マイナンバーカードと連携することで、手軽に本人認証ができるデジタルIDアプリ。初回登録時にマイナンバーカードに格納されている基本4情報(氏名、住所、性別、生年月日)をスマートフォンのNFC経由で読み取り、マイナンバーカードとxIDを紐付ける。その後、連携するオンラインサービスのログイン用の暗証番号と電子署名用の暗証番号を設定し、利用時に認証・電子署名することで本人確認を完結。様々なオンラインサービスの安全な利用を実現する。

ラフールおよびxIDは、今回の協業によって、メンタルヘルス領域における安全性や利便性、そして相互運用性を大きく向上させることが可能となり、様々な社会課題を解決できると考えているという。

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AI応用のMRIは1/4の時間で従来と同等の結果を得られることが盲検法で判明

AI技術を応用したMRI検査が、従来の方法と同等以上の結果をもたらすことが放射線治療専門家による盲検法によってわかった。そのシステムは、通常の半分から1/4の時間で画質を損なうことなく良好なMRIスキャン結果を出すことが可能であり、待ち時間とそれにともなうコストを減らすことが期待できる。

FastMRIは2015年にNYU(ニューヨーク大学)で開始したプロジェクトで、今からちょうど2年前にFacebook AI Research(FAIR、フェイスブックAI研究所)との共同研究になった(未訳記事)。NYUの医療および画像処理の専門知識がFAIRのAI専門技術と合わさった結果、共同研究は大きな成果をあげた。

背景にある考え方は、実は単純だ。MRIの撮像には必要なデータ量や撮影する角度に応じて15分から1時間くらいかかる。これは患者にとって非常につらい時間であり、巨大でうるさい機械の中で身動きせずにいなければならない。もちろんこれは、1台の機械が1日にスキャンできる人数が限られ、コストも待ち時間も多いことを意味している。

関連記事:NYU and Facebook team up to supercharge MRI scans with AI(未訳記事)

FastMRIのチームは測定データの一部が本質的に冗長であり、よく訓練された機械学習システムならもっと少ないデータから情報を補完できるという理論を立てた。この場合の膝のMRIスキャンは非常に秩序正しく、多くの場合に予測が可能であり、かつAIが学習するためのデータが膨大に存在しているために実現できる。

過去2年間、チームは臨床放射線医師が従来のMRI画像と、AIがはるかに(約75%)少ないデータから生成した画像を比較することで研究を行った。どちらがどちらの画像かはもちろん知らされず、1カ月以上間隔があけれらた。

結果は極めて有望なものだった。

研究の結果、放射線医師の評価に有意な差は見られなかった。MRI画像が従来方式によるものかAI生成であるかによらず、医師は同じ異常や病変を見つけた。参加者全員が、AI利用のMRIの方が従来方式より全体的品質が高いと評価した。6人中5人の放射線医師が、どちらの画像がAIを使って生成されたものか正しく判別できなかった。

AI生成画像が全体的に通常画像よりも高く評価されたのは興味深いが、ただ1人の医師だけはどちらがどちらであるか、偶然以上の確率で指摘した。

「AI生成と従来型MRIとの間で『ノイズ』の量とタイプがわずかに異なることを、1人の放射線医師が認識した可能性がある」と論文の共著者の1人であるFAIRのLarry Zitnick(ラリー・ジトニック)氏が語った。私はAIがどうやって「より良い」画像を作るのか興味を持ったところ、ジトニック氏が詳しく説明してくれた。

「AIは以前の膝MRI、すなわち典型的な膝がどう見えるかを学習しているため、ノイズやその他の人工生成物を除去することによってMRIの画質を向上させることができる」とLarry Zitnick氏は語った。「例えば、ホワイトノイズはAIにとってランダムパターンに見えるので再現する方法を学習するのが難しい。しかし、人間の膝はどの患者も似ているので学習で再現するのが容易だ。その結果AIが膝を再現するとき、ノイズ(学習が困難)を減らし、構造(学習済み)が強調される」。

従来のMRI(左)とAIが1/4のデータから生成したMRI(右)。画像クレジット:NYU/Facebook

この研究にはいくつか但し書きがつく。例えば、現時点では膝についてのみ有効であることを示している。しかし、次は脳のスキャンで実験する予定であり、脳やほかの部分でうまく「いかない」と考える理由はない。

またこの研究で使用したデータは、実際に現場で使われているものと厳密には同じではなく、スキャン量の少ないデータというのは、従来方式のスキャン結果からデータを削除したもの(AIバージョンをオリジナルと比較しやすくなるため)であり、初めから少ないデータをスキャンしたものではない。しかし、MRIの性質上、情報を削除することと初めからデータを収集しないことはほとんど同じなので、実際には問題にならないかもしれない。それでも病院としてフルスキャンしないためには、一定の確証が必要だ。なぜなら、その時がMRIを撮る唯一のチャンスかもしれないからだ。

この研究は、実際に急を要する患者がいる医療現場で、この方法を実際に使えるようにするための重要一歩だ。もしこれが可能になれば、患者が機械の中で過ごす時間を著しく短縮できるだけでなく、放射線医師は診断の回転率が高くなり、多くの患者を救えるようになる。

カテゴリー:ヘルステック

タグ:FastMRI ニューヨーク大学 Facebook AI Research Facebook

画像クレジット:Facebook

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ジョリーグッドがVRで遠隔臨床実習を行える「多接続リモートVR臨床システム」を開発

ジョリーグッドがVRで遠隔臨床実習を行える「多接続リモートVR臨床システム」を開発

ジョリーグッドは8月17日、物理的に単一の場所に集まらずに一対多のVR臨床実習を可能にする「多接続リモートVR臨床システム」を開発したと発表した。

また日本臨床救急医学会と共同で、全国6拠点の病院と会場を「多接続リモートVR臨床システム」でつなぐ、医療業界初の遠隔VR医療セミナーを8月27日に実施すると明らかにした。多接続リモートVR臨床システムの導入を検討している方対象としている。

ジョリーグッドがVRで遠隔臨床実習を行える「多接続リモートVR臨床システム」を開発

現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、全国の医療施設で高度な医療技術が求められているものの、その技術を学ぶための医療学会も医師が集まる形でのリアルな開催ができなくなっているという。なかでも、COVID-19重症患者向けの人工肺ECMOや救命救急の治療は、必要性が高まっている一方で、習熟度を上げるための経験値を積むことが難しく、より効率的な臨床教育のニーズが全国各地で高まっているとした。

多接続リモートVR臨床システムは、講師の医師と臨床体験を積みたい医療従事者が、どこか1ヵ所に集まることなく、治療スタッフそれぞれの360度視野を、任意の場所からVRで一斉に臨床学習できる次世代型医療教育システム。

同システムは、オンライン講義の中で、VRによる臨床実習を一斉に提供することで、講義参加者全員が手術室など治療現場に立ち会っているかのようなバーチャル臨床体験を実現。講師のタブレットアプリと受講者のVRゴーグルは、インターネット経由で接続されており、講師は体験させたい症例のVRを一斉に提供したり、注視してほしいポイントをタブレット上に描画することで、VR受講者の視線を誘導したりなど、スムーズなリモートVR授業を進行できる。

なおジョリーグッドは、新型コロナウイルスの影響で大学や病院に通うことができない医学生向けに、同システムを利用したオンラインリモートVR臨床授業を先行して実施済み。

8月27日の遠隔VR医療セミナーでは、これまでジョリーグッドが医療VRの開発を共同で行ってきた、日本医科大学の横堀將司教授と、ECMOの第一人者である済生会宇都宮病院 救命救急センター長、小倉崇以先生らが講師として登壇。会場である国士舘大学と、愛知・大阪・京都・福岡・茨城・富山の病院計7拠点の医師・看護師らがオンラインとVRで臨床実習する医療セミナーの実証を行う。参加は、申し込みページを参照。

ジョリーグッドがVRで遠隔臨床実習を行える「多接続リモートVR臨床システム」を開発

ジョリーグッドは、高精度な「プロフェッショナルVRソリューション」と、VR空間のユーザー行動を解析するAI エンジンなどを開発するテクノロジーカンパニー。医療、障害者支援、介護教育、外国人教育など、成長を加速し生きがいを支援するVR・AIサービスを開発、提供している。

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スマートシューズ「ORPHE TRACK」の最新版が登場、Androidアプリもリリース

スマートシューズ「ORPHE TRACK」の最新版が登場、Androidアプリもリリース

no new folk studioは8月17日、スマートシューズ「ORPHE TRACK」(オルフェ トラック)の対応シューズ・対応センサー最新版として、「SHIBUYA 2.0」および「ORPHE CORE 1.2」を発売した。「ORPHE TRACK センサーキット(SHIBUYA 2.0 + ORPHE CORE 1.2)」の価格は税込み3万2780円。従来のiOS対応アプリに加え、Android対応のアプリもリリースした。

ORPHE TRACKは、専用シューズに専用センサーをセットし、履いて走るだけでランニングフォームを分析可能。ペースや着地をリアルタイムに音声でコーチングし、フォームの課題や改善点もアドバイスする。怪我のリスクを軽減し、理想の走り方を身に着けるサポートを行う。

専用シューズのSHIBUYA 2.0は、通気の必要な箇所のパターンを改善して通気性を確保。構造の変更により、前バージョンSHIBUYA 1.1の同サイズと比べ、最大30gの軽量化に成功した。耐久性も改善し、SHIBUYA 1.1では60km時点でソール体積の減少が起きていたところ、SHIBUYA 2.0では100km以上走行しても顕著な減りが見られなくなったという。

スマートシューズ「ORPHE TRACK」の最新版が登場、Androidアプリもリリース

ORPHE CORE 1.2は、スマートシューズORPHE TRACKシューズ内にセットして使用する専用センサー。足の動きを精密に解析し、アプリと連携して走り方を分析可能。着脱式のため、専用シューズを交換しても継続して使用できる。充電はUSB対応。対応OSは、iPhone 6 以降およびiOS 12 以降、Android 8.0 以降。

スマートシューズ「ORPHE TRACK」の最新版が登場、Androidアプリもリリース

2014年10月設立のno new folk studioは、スマートシューズを開発するスタートアップ。2020年現在、フットウェアにおけるセンシング技術を応用し、高度な行動解析を簡単に可能にするスマートシューズのプラットフォーム「ORPHE」シリーズを開発中。

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抜け毛や偏頭痛、消化不良の治療薬を患者に直接提供するThirty Madisonが約50億円調達

ニューヨークを拠点とするThirty Madisonが、新たに4700万ドル(約50億円)の資金調達を行った。同社は、抜け毛や偏頭痛、慢性的な消化不良の人に、治療薬を直接提供している。

先のTeladocとLivongoの約190億ドル(約2兆250億円)の合併後、ヘルスケア産業ではリモート療法とバーチャルケアの企業が大流行しており、Thirty Madisonの事業もその例外ではない。

これらの企業がヘルスケアビジネスの未来にとってどれだけ重要なのか、それは先日のThirty Madisonのへの投資にJohnson & Johnson Innovationが加わっていたことからもわかる。

このラウンドをリードしたのはPolaris Partnersだが、既存投資家であるMaveronNorthzoneも参加した。Thirty Madisonの総調達額はこれで7000万ドル(約75億円)になる。

ちょうど3年前にSteven Gutentag(スティーブン・グテンタグ)氏とDemetri Karagas(デメトリ・カラガス)氏が創業したThirty Madisonは、2018年まではKeepsというブランドで抜け毛の治療を提供していたが、2019年前半には偏頭痛治療のCove、後半には胃食道逆流症治療のEvensをローンチした。

Thirty Madisonは最近、患者が払いたいだけ払うというモデルで緊急治療相談を始めている(Thirty Madisonサイト)。

同社の創業者は、資金状態のいい競合他社であるHimsやRoと比較して、一度診療が終わっても継続的にケアを提供することと、症状に応じて多様な治療オプションから選べることを、Thirty Madisonの差別化要因として挙げている。また、さまざまな症状の特性に合わせて的を絞った治療法を提供できることが他社と違うところだという。

Polaris PartnersのパートナーでこのたびThirty Madisonの取締役会に加わったAmy Schulman(エイミー・シュルマン)氏は、「米国人の59%以上が1つ以上の慢性症状を抱えているが、彼らの医療の点と点を結びつけるリソースはほとんど存在しない」という。

カテゴリー:ヘルステック

タグ:資金調達 Thirty Madison

画像クレジット:OstapenkoOlena / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

がんの標的治療の開発を改善するMission Bioが約75億円を調達して技術のスケールアップを目指す

カリフォルニアのMission Bioが、シリーズCで7000万ドル(約74億6000万円)を調達した。このラウンドはNovo Growthがリードし、Soleus Capitalと前からの投資家であるMayfield、Cota CapitalおよびAgilentが参加した。Mission Bioはこの資金を使って同社のTapestriプラットフォームを拡大していく。このプラットフォームは、単一細胞マルチオミクス解析の技術における同社の取り組みを利用して、標的化された精密ながん治療の最適化を支援している。

Mission Bioの単一細胞マルチオミクス解析プラットフォームは、治療産業の中でもユニークだ。臨床試験中のさまざまな治療を使用した場合の遺伝子型(完全に遺伝的なもの)と表現型(遺伝やその他の要因に由来する形質)両者への影響を観察できるという点で単一細胞に的を絞ることができる。Mission BioのTapestriは同一細胞内のDNAとタンパク質の変化の両方を検出可能で、バルク分析(細胞群をまたいだ分析)ではコントロール不能な他の要因の影響を除外することができるため、標的とする治療法の効果判定において重要だ。

2012年にUCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)で行われていた研究からスピンアウトして創業されたMission Bioは、今日まで1億2000万ドル(約127億9000万円)の資金を調達している。同社の技術はAgios、LabCorp、Onconova Therapeuticsなどさまざまな大手製薬企業や治療技術企業で利用されてきた。またUCSFやスタンフォード、スローンケタリング記念がんセンターなどのがん研究センターでも利用されている。

Mission Bioの技術は、血液のがや腫瘍などの治療のための臨床試験の最適化を支援するだけでなく、ゲノム編集の検証にも利用できる。それは、CRISPRをベースとする治療アプリケーションの台頭により、次の数年間で大きな成長が見込まれる可能性の大きな市場だ。

画像クレジット: Mission Bio

カテゴリー:ヘルステック

タグ:Mission Bio がん治療 資金調達

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Oura Ringは今の時代を生き抜くための指輪型健康トラッカー、睡眠分析機能はwatchOS 7を凌ぐ

Oura Ringは、新型コロナウイルスのさまざまな研究に貢献しているだけでなく、新型コロナウイルスの蔓延を防ぐための潜在的なツールとしてNBAとWNBAに採用され、これら2つのリーグの試合を定期的なスケジュールに戻すために役立っているという点でも最近注目を集めている。Ouraはこれまで、Oura Ringを数世代をリリースしている。これは健康状態と運動量を計測するトラッカーで、私はこの1カ月間にわたってOura Ringを使ってきた。

Oura Ringとは何か?

Oura Ringは、似たような目的を持ったほかのウェアラブルとは似ても似つかないヘルストラッカーだと言える。このリングは、一般的な指輪、すなわちスマートな機能を持たない指輪とほとんど区別がつかない。また、いくつかの異なるデザインと複数の仕上げ加工の製品がラインアップされている。リングの内側にはセンサーが付いているが、全体的な厚みはほとんどなく装着すると完全に隠れる。

小型でスリムだがバッテリーを内蔵しており、Bluetooth経由でスマートフォンと通信して指輪内蔵センサーが収集したデータを送信する機能を備える。Oura Ring専用の充電ドックにはUSB-Cを備えたスタンドがあり、非接触で充電できる。

内蔵バッテリーは、睡眠中に装着したままでもフル充電状態で7日間の連続使用が可能だ。バッテリーの持ちは一般的に考えて十分に長い。充電時間も短くて済むので気が付いたときに充電ドックに入れるのを忘れないようすれば、バッテリー切れは防げるだろう。私の場合、デスクでの仕事中は充電ドックにOura Ringを入れていた。またOura Ringの専用アプリは、バッテリー残量が残り少なくなったときに、寝る前に充電を促す通知を送ってくれるので安心だ。

ボディーにはチタンを採用

最新のOura Ringは「Balance」と「Heritage」の2つのデザインを用意しており、どちらもメタリック仕上げだ。さらに、光沢のあるシルバーと光沢のあるブラックの2つのオプションがあり、「Balance」にはダイヤモンドがちりばめられたプレミアムバージョンもある。なお、私が試用したのはマットブラック仕上げのものだ。

本体の金属素材は軽量なチタンで、内部側はセンサーを保護するためにプラスチック素材が使われている。外側はキズがつきにくいコーティングが施されているものの、ほかの金属製ジュエリーと同様にキズがつかないというわけではない。私が試用したマットブラック仕上げのOura Ringは何週間か使用したあとに確かに多少の摩耗などが見られたが想定内の範囲で、驚くほどの弾力性がある。個人的な意見だが、外見上の小さなキズはデザインを損なわず、逆にいい味わいを醸し出してくれる。

Oura Ringはサイズやフィット感が非常に重要で、ユーザーの指にフィットするよう工夫されている。無料のサイズ計測キットを提供しており、まずはどのサイズが最適かをユーザーが判断し、どの指を装着するかを決めればいい。Oura Ringはモニタリングのために指にぴったりとフィットさせる必要がある。

実際のところOura Ringのデザインは魅力的で、1日中、そしてひと晩中着けていられる信じられないほど快適なデバイスだ。Apple Watchやそのほかの手首装着型のウェアラブル端末とは異なり、睡眠中の装着やさまざまなタイプのバンドの不快感に慣れる必要もない。私は装着していたことを忘れてしまったほどだし、一般的な指輪のようなので他人からもOura Ringを付けていることを気付かれることはないだろう。

watchOS 7を超える睡眠監視機能

Oura Ringは何を追跡しているのだろうか?具体的には、睡眠のほか待ち受け状態と活動状態に分けてさまざまな数値を測定している。「Sleep」「Readiness」「Activity」はいずれも、総合的なサマリースコアを100点満点で示し、ユーザーは現在の状態を把握できる。なお実際には内蔵センサーが取得したさまざまスコアを掛け合わせて算出している。

Oura Ringの睡眠トラッキング機能は、アップルが今秋にリリースするwatchOS 7に備わるApple Watchの睡眠トラッキングよりもはるかに詳細だ。眠りについた時間、どのくらいの時間寝ているか、どれくらいが眠りが深いか、レム睡眠かどうかなどをモニタリングしてくれる。取得したデータから、睡眠効率、ベッドで過ごした時間、合計睡眠時間なども算出可能だ。特になにも行動していない、いわゆる待ち受け状態のときは、体温、心拍変動、呼吸数、安静時の心拍数などをトラッキングする。運動しているときは、自動的にカロリー消費量、非アクティブな時間、歩数、全体的なアクティビティの目標にどれだけ近づいているかを測定する。

これら3カテゴリーすべてについて、個々の活動量を分析して時間の経過や1日あたりのスコアの推移、そして全体的なスコアを見ることができる。アプリ内ではフィードのようなダッシュボードが表示され、そのスコアとトレンドに基づいて、1日の行動や睡眠習慣をどうすべきかについての実用的なアドバイスを受けられる。

これは、私が使った中で最も理解しやすい健康トラッカーであると同時に、何が実際に追跡されているのか、そしてそれが何を意味するのかを深く掘り下げてくれるアプリでもある。このアプリは、ユーザー各自の基準値を定め、その基準値からの逸脱を常に監視し、それに基づいてアドバイスを提供してくれるので、具体性と有用性が高い使用感を得られるはずだ

個人の健康状態を長期的に見守ってくれる

Apple Watchをはじめとするほとんどのウェアラブル端末は「邪魔くさい」「使い続けるのが面倒くさい」という人も多い。Oura Ringは指輪形状なので邪魔にならないデザインであり、利便性と実用性を兼ね備えた健康モニタリング機器としはトップクラスの製品だろう。

Oura Ringが実際に新型コロナウイルスへの感染を正確に検出できるのか、あるいは症状の発現を予測できるのかどうかについてはまだ結論は出ていない。しかし、このデバイスは個人の健康状態を常時モニタリングでき、日々の体調を管理するには素晴らしいプロダクトだ。個々の基準値を定め、実際の全体的な状態を基準値と毎日比較することによって、個人の長期的な健康状態を見守ってくれるのだ。

画像クレジット:Darrell Etherington

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(翻訳:TechCrunch Japan)