Evincedはウェブのアクセシビリティー検査の迅速化に18億ドルを調達

アマゾンがスーパーボウルCMで人間型アレクサとの暮らしを映像化

ウェブのアクセシビリティーを確立し維持するのはフルタイムの仕事だ。他のあらゆる開発作業がそうであるように、アクセシビリティーのためのツールも時代に合わせて常に進化させなければならない。ウェブサイトのアクセシビリティー検査を、開発、発展の段階を問わず深く高速に行うことを約束するスタートアップEvinced(エビンスト)は、このほど、そのツールを次のレベルに引き上げるための資金1700万ドル(約18億円)を調達した。

アクセシビリティーの問題はさまざまな形で現れるため、手作業のコードレビューでエラーを探し出さなければならないこともしばしばだ。自社のサイトは、最初からアクセシビリティーが完ぺきに保たれた状態でなければなければいけないと考えていたEnvinceですら(どのサイトもそうあるべきなのだが)、このメニューを開いている間はこのスクリプトの変数が正しくフックされない、などといった事態が起こり得る。

コードレビューを自動で行う方法もあるが、遅かったり、システムが大きすぎたりする。Evincedは、ウェブサイトを使っている間でも数分の1秒で検査が行えるパワフルで洗練されたツールを作っている。発見された問題点は、開発者に便利な方法で、共有や対応が可能だ。今や無数の人たちが使っている、お洒落でJavaScript満載のウェブアプリにも物怖じしない。

ここに、現代的なウェブサイトの例がある。見た目はいいが、明らかにアクセシビリティーの問題を大量にはらんでいる(あくまでデモ用のもの)。下の動画では、Evincedの製品が何をしてくれるか、その一部がわかりやすく解説されている。

正直言って、とくに驚くような内容には見えないが、既存の法人向けツールはこれほど効率的ではない。ご覧のとおり、ユーザーが(と言うか開発者だが)このサイトに備わった機能を端から試してゆくにつれて、ツールはその場で処理を行っている。フォームの記入やプルダウンメニューを開くといった動作を実際に使ってもらう前に検査しても、紛らわしい部分を見落とす恐れがある、ということだ。

この検査ツールには、Smart Rulesやコンピュータービジョンなどの形でAIを少しだけ採り入れているため、ある要素がメニューやボタンに見えるのに正しくラベリングされていないといった問題も的確に見抜ける。こうした要素には、特有のスタイルや役割がある。何かをクリックすると選択項目のリストが現れる場合は、呼び方はどうあれ、プルダウンメニューと見なされる。

画像クレジット:Evinced

当然のことながら、応急処置方法を提案してくれたり、上司による正式な検査のために問題点を簡単に書き出せる他、ウェブ開発ツールに期待される機能もいくつか備わっている。これはChromeの拡張機能として、またはAPIやその他の分析やコミットアクションの自動化パーツとしても利用でき、それ以外の形式と同様に、エラーのリストを出力できる。

同社は、2018年、システムの開発開始と同時に創立された。翌年、大手企業数社と連携してそのエコシステム内での統合と検査の検証を行った。Capitol One(キャピタル・ワン)は、彼らの最大の顧客となり、今は投資者になっている。

「以来、私たちは開発した製品をCapital Oneなどの企業で展開してきました(つまり毎日利用していただき、エンドツーエンドのアクセシビリティー運用に役立っています。Capital Oneのブログをご覧いただきたい)。それらの企業は法人ライセンス契約の有償顧客です」と、創設者でCEOのNavin Thadani(ナビン・サダニ)氏は言う。

事実、Capital Oneもこう話している。

Capital Oneは早くからEvincedと提携し、その開発事業に特別な関心を持って指導してきました。それは、構築・展開のライフサイクルを通じて複数の自動検査工程を統合し、ウェブ資産全体(ログインから内部レポジトリを含む)にわたるアクセシビリティーのための自動スキャンを可能にする製品の開発とその高速化により、アクセシビリティーが確立されたコードをリリースできるよう開発者を支援するというものです。

私たちは、それまで自動検査のみで発見できた数の10倍もの致命的なアクセスビリティー上の問題を検出するEvincedを見てきました。サイトのインタラクティブ性が増すにつれ、キーボードや画面読み上げ機能の使い勝手など、さらに多くの問題が見つかりました。

大企業規模での自動検査は、きわめて複雑で時間のかかる作業になりがちです。Evincedは実行速度が40倍と高速で信頼性も高く、4〜5日間をかけていたものが3時間以内にまで処理時間を短縮できた例もありました(さらに最適化は進んでいます)。

投資者(正確にはCapital One Venturesだが)からのものだとしても、素晴らしい賞賛の言葉だ。

今回の18億円のシリーズA投資は、M12、BGV、Capital One Venturesが共同で主導し、以前からの投資者である Engineering Capitalも参加している。

デビュー記念のプレゼントとしてEvincedは、サービスの無料プランを発表した。これにはiOSアプリのアクセシビリティー・デバッガーも含まれる。WCAGガイドラインやARIAの役割を知らないすべてのアプリ開発者の助けになるはずだ。またサイト管理者が登録すると認証が受けられる無料のコミュニティー・エディションのサイトスキャナー、ちょっと試してみたい法人向けの無料試用プランもある。

画像クレジット:smartboy10 / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:金井哲夫)

Duality Labsはハードウェアアクセラレーション利用の準同型暗号テクノロジーで15.3億円のDARPA契約を獲得

現在、AIに適切な学習をさせることはテクノロジービジネスにとって不可欠の要素だが、そのために個人情報等を含む大量データを処理することには本質的に危険がつきまとう。米国防省のDARPA(国防高等研究計画局)がDuality Labsと1450万ドル(約15億3000万円)の調達契約を結んだのはデータを復号化せず、暗号化されたまま大量のデータを処理する新しいハードウェアアクセラレーションを開発しようと考えているためだ。

Dualityは完全準同型暗号化を採用したシステムを提供している。技術的な詳細に踏み込むことは避けるが、現在の暗号化手法の大きな問題点は、暗号化されたデータはまったく読み取れなくなることだ。読み取れなくすることがそもそも暗号化の目的だから当然だが、復号化鍵がない限り暗号化されたデータは無意味なノイズとなってしまう。大規模なデータセットをAI学習のために復号化すると膨大な処理コストがかかる。さらに平文は、外部のハッカーからの攻撃その他の悪用の危険に対して脆弱になる。

ただしデータを復号化せずにAI学習や分析のための処理ができるようにする方法がいくつか存在する。その1つが完全準同型暗号化(FHE)だ。ところがFHEは、通常の暗号化よりもさらに計算量が多くなる。このためギガバイト、テラバイト級の大きなデータが必要なアプリケーションではFHEは利用できなかった。同様の目的を達成する方法は他にもあるが、FHEが突然10倍も効率化されれば大変な朗報だ。

当然DARPAもこの分野に強い興味を抱いているが、暗号化分野の他の企業や組織に比べて桁違いに資金が豊富だ。今回の調達契約は、DPRIVE(仮想環境でのデータ保護)と呼ばれる広範な取り組みの一部だ。FHEを10倍からそれ以上高速に実行できるASICチップ(コードネーム「TREBUCHET」)を開発するという目標が発表されている。

Dualityチームは南カリフォルニア大学、ニューヨーク大学、カーネギーメロン大学、ドレクセル大学およびSpiralGen、TwoSix Labから人材を集めており、 この分野での経験も長い。実際、以前にもDARPAと協力したことがあり、熟知した領域だという。

Duality Labsのディレクターで主席研究員のDavid Bruce Cousins(デビッド・ブルース・カズンズ)氏はプレスリリースで次のように述べている。

Dualityは過去10年以上にわたってDARPAが資金提供するFHEの革新と応用に協力してきました。我々のメンバーは2010年にはDARPAのPROCEEDプログラムにおいて最初の準同型暗号化シのためのハードウェアアクセラレータのプロトタイプを開発しています。また2015年にはDARPAのSAFEWAREプログラムで最初に開発されたPALISADEオープンソースFHEライブラリの開発責任者でした。

ご覧のとおりDualityとDARPA頭字語には不足していないようだ。

開発、実用化のスケジュールは今のところ明確ではないが、完全準同型暗号処理の高速化はAIの利用に影響するところが極めて大きい画期的なテクノロジーであることを考えると、なんらかの結果が出るには少なくとも2、3年はかかると思われる。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Duality LabsDARPA機械学習暗号化資金調達

画像クレジット:Yuichiro Chino / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:滑川海彦@Facebook

アマゾンがスーパーボウルCMで人間型アレクサとの暮らしを映像化

アマゾンがスーパーボウルCMで人間型アレクサとの暮らしを映像化

米国では国民的スポーツイベントのスーパーボウルにあわせて、大企業が凝った特別なコマーシャルを放映するのが恒例となっています。

今年のアマゾンが公開したのは、もしデジタルアシスタントのアレクサの「ボディ」がスマートスピーカー Echo ではなく人間型だったら?という妄想をショートフィルム仕立てで映像化した「Alexa’s Body」。まずは映像をどうぞ。

「アレクサ」の新しい筐体?を演じるのは、若手俳優マイケル・B・ジョーダン。映画『クリード チャンプを継ぐ男』ではかつてロッキーのライバルだったアポロの遺児アドニス・クリード役を、映画『ブラックパンサー』ではメインの強敵キルモンガー役を演じました。

Twitterのほうが若干長い90秒バージョン、YouTubeバージョンは60秒。

アマゾンがスーパーボウルCMで人間型アレクサとの暮らしを映像化

お風呂で本を音読してくれるアレクサ。

アマゾンがスーパーボウルCMで人間型アレクサとの暮らしを映像化

明かりを暗くして、と言われればおもむろに服を脱ぎランプにかけて暗くするアレクサ。瞳の周りが青く、Echoのリングライトを再現しているのが芸が細かいところ。

映画俳優型ボディは妄想としても、アマゾンが開発する Echo スマートスピーカーの発想は初代から、マイクアレイと高度な信号処理で部屋中どこにいても声を聴き取ってくれること、ユーザーがPCに向かったりスマホ画面を注視やタップする必要なく、人間に話しかけるように自然な会話で使えること。

アマゾンがスーパーボウルCMで人間型アレクサとの暮らしを映像化

実際、最上位モデルの Echo Show 10 はカメラがAI 画像処理でユーザーの姿を追い、首振り追従してどこにいても画面を正面に見せ、ビデオ通話ではカメラの中心に捉えズームまでしてくれます。

人間型はそれはそれで問題がありそうですが、部屋ごとに置かなくても追従してくれる、置き忘れたらついてきてくれるデジタルアシスタントは意外と理想の姿かもしれません。

Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Amazon / アマゾン(企業)Amazon Alexa(製品・サービス)Amazon Echo(製品・サービス)音声アシスタント / Voice Assistant(用語)コマース

機械学習の実用ツールで急成長中のWeights&BiasesがシリーズBで47.2億円調達

機械学習の実用ユーザーのためのツールを開発するWeights&Biasesが、シリーズBで4500万ドル(約47億2000万円)を調達したことを発表した。

Weights&BiasesはLukas Biewald(ルーカス・ビーワルド)氏とChris Van Pelt(クリス・ヴァン・ペルト)氏、Shawn Lewis(ショーン・ルイス)氏の3人が創業した。ビーワルド氏とヴァン・ペルト氏は以前、CrowdFlower / Figure Eightを創業したが、同社はAppenが買収されてされている。Weights &Biasesはすでに200社以上の顧客、7万名以上のユーザーがいるという。

ビーワルド氏は大学で私と同級だったが、彼は「機械学習の実用ユーザーはある面ではエンジニアというよりもサイエンティストだ」といい、ソフトウェアの開発者に似ているという。

その工程の中には、数多くの実験がある。そしてWeights&Biasesのコアプロダクトは、実用ユーザーによるそれらの実験の追跡を助ける。またそれと同時に、同社はデータセットのバージョニングやモデルの評価、パイプラインの管理などのためのツールも提供している。

「たとえば自動運転車と衝突事故をコントロールするモデルがあるとすると、実際に何が起きたのかを知る必要がある。それが数年前に作ったモデルで、いろんな実験をやってきたのなら、何が起きたのかを体系的にたどることが困難なこともある」とビーワルド氏はいう。そうなるのを防ぐためには、実験の追跡をするツールが必要だ。

彼によると、Weights &Biasesはこの市場における「初期のリーダーだ」という。競合するツールが出回ってくると、それはトップダウンの企業のセールスではなく「MLの実用ユーザーに完全にフォーカス」して、他の製品から差別化しているという。同様に、機械学習が多くの分野で利用されてくるにつれて、Weights&Biasesもときどき「高度な問題」にぶつかることがあるとのことだ。

画像クレジット:Weights&Biases

「機械学習のために機械学習をやってるような企業に販売していくことに関心はありません。たとえばCEOの命令で会社のあちこちに機械学習をばらまいているような企業もあります。そういう企業には何のインパクトもないため、見てるだけで憂鬱になります。しかし、我々が話をしているような企業のほとんどは、何か有益なことのためにMLを利用しています」。

彼が挙げる大手農業企業のJohn Deereは、Weights&Biasesのプラットフォームを利用して、継続的にロボットによる肥料撒布方式を改良している。雑草や害虫を殺す農薬ではない。また一部の製薬企業はWeights&Biasesを使って、さまざまな分子の振る舞いをモデル化する方法を研究している。

Weights&Biasesはこれまで、2000万ドル(約21億円)の資金を調達している。今回のラウンドはInsight Partnersがリードし、Coatue、Trinity Ventures、Bloomberg Betaが参加した。またInsightのGeorge Mathew(ジョージ・マシュー)氏が、取締役会に加わる。

マシュー氏は、Weights&Biasesについて次のように述べている。「これだけNPS(ネット・プロモーター・スコア)が高く、カスタマーフォーカスの深いMLOpsのカテゴリーリーダーは他に見たことがありません。Insightによる最初の投資が、MLの実用ユーザーのユーザーベースに貢献するスタートアップであることを誇りに思います。この分野は、ここ2年間で60倍に成長しています」。

同社によると、今回の資金はエンジニアリングと成長、営業、そしてカスタマーサクセス方面の新規雇用に使われるという。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Weights&Biases資金調達機械学習

画像クレジット:Weights&Biases

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フォードが同社全体のデジタルトランスフォーメーション推進のためGoogle Cloud採用

Google(グーグル)とFord(フォード)は米国時間2月1日、2023年からFordとLincoln(リンカーン)ブランドの新型車にAndroid Automotive(アンドロイド・オートモーティブ)を搭載することを中心とした新たなパートナーシップを発表した。しかし、同時に両社は、Fordが優先的なクラウドプロバイダーとしてGoogle Cloud(グーグル・クラウド)を選択したことも発表した。

「Google Cloudによって、Fordはフロントオフィスから車両、製造工場の現場まで、デジタル変革を進めることになるでしょう」と、Google CloudのThomas Kurian(トーマス・クリアン)CEOは同日の記者会見で語った。「これによって、製品開発の現代化、製造・サプライチェーン管理の改善、従業員教育へのコンピュータビジョンAIの活用、組立ラインにおける機器の検査など、さまざまな応用が可能になります」。

GoogleとFordは、整備リクエストや下取りアラートのような機能を通じて、Fordのデータを収益化する新たな方法を模索していることも、クリアン氏は言及した。

「Fordは社内に世界クラスのデータインサイトとアナリティクスチームを持っています」と、Fordの戦略・パートナーシップ担当副社長であるDavid McClelland(デイビッド・マクレランド)氏は語った。「ソフトウェアの専門知識が豊富な人材を採用しており、この分野では大きな進歩を遂げています。そして、新しい自動運転事業の商業化に向けて急速に動いています。トーマス(・クリアン)と私が本日発表するこのニュースで、私たちはそのすべてにターボを効かせて加速化していきます」。

マクレランド氏は、Googleが「クラウド、Android、マップ、その他多くの分野を含め、同社のすべてを提供してくれた」と強調している。FordがGoogle CloudのAIツールを活用することも視野に入れているのは、この分野におけるGoogleの専門知識を考えれば当然のことだろう。この取り組みは、実際にクルマの運転に留まらず、Fordの製品開発、製造、サプライチェーンの近代化、Fordの工場における予知保全などにもおよぶ。

他の自動車メーカーと同様にFordもまた、収集したデータを利用して、クルマの購入時や整備のために時折(たぶん)ディーラーを訪れる体験を超えたドライバーとのつながりを作り出す方法を模索している。そのためには、顧客を理解し、パーソナライズされた体験を提供できる必要がある。

今回の発表は、Fordにとって多少の方向転換を意味する。これまでFordは、自動車業界におけるGoogleの役割を最小限に抑えるという明確な目標を持って、他の自動車メーカーと連合していたからだ。それからほんの数年後、今やFordとGoogleは自動車業界で最も深い絆で結ばれたパートナーとなった。

少し前には、FordがMicrosoft(マイクロソフト)と深いパートナーシップを結び、Fordの「Sync(シンク)」と呼ばれる車載情報技術を共同で開発していたことも、触れておくべきだろう。

「最初にベルトコンベアを導入した動く組み立てラインから、最新の運転支援技術に至るまで、Fordは約120年にわたり自動車業界のイノベーションを先導してきました」と、GoogleとAlphabet(アルファベット)のCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏は語った。「GoogleのAI、データ分析、コンピューティング、クラウドプラットフォームを最大限に活用できるパートナーを組めることを誇りに思います。これによってFordのビジネス変革と、人々が道路で安全につながることができる自動車技術の構築を支援していきます」。

関連記事:Fordがグーグルと提携、同社とリンカーンの全車両にAndroid Automotive OS搭載

カテゴリー:モビリティ
タグ:FordGoogleGoogle Cloud自動車

画像クレジット:Sean Gallup/Getty Images / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

AI・ディープラーニング技術のコンサルティングと開発を手がけるリッジアイが7.8億円を調達

AI・ディープラーニング技術のコンサルティングと開発を手がけるリッジアイが7.8億円を調達

AI・ディープラーニング技術のコンサルティングと開発を行うリッジアイ(Ridge-i)は2月1日、第三者割当増資による7億8000万円の資金調達を発表した。引受先は、オリックスと、グローバル・ブレイン、スパークス・グループ(スパークス)。累積資金調達額は約15億3000万円となった。

同社は、今回の資金調達は、これまで培ってきたAI技術と導入知見を、より多くのニーズへ届けられるように、プロダクト・AIエンジンの開発体制の強化およびその販売体制を構築するための事業戦略ラウンドと位置づけ。また、社会課題・SDGsに対する宇宙開発・衛星解析事業は投資フェーズであり、今回の調達により財務基盤を強化することで、より積極的な発信と研究開発を加速し、ニーズの創出を狙う。

調達した資金の投資先

  • 高度なカスタムAIの開発・提供の加速化:AIプロダクトの開発体制の拡充、販売展開の強化、計算資源の強化、少数データによる精度向上技術などAIのコア技術の研究開発、パートナー企業との強みを活かしたAI×αの共同ソリューション開発
  • 社会課題解決に向けた、衛星画像解析AIを中心とした技術・サービスの開発:衛星画像を使ったAI解析のポータルサービスの提供、土砂崩れや海の汚染など自然災害リスクに対する環境モニタリングAIの開発、人流動向や行動分析など社会活動モニタリングAIの開発、衛星画像解析に特化した、画像処理・信号処理技術の研究、衛星とドローンを組み合わせた、統合的な画像解析ビジネスの展開
  • 優秀な人材採用による組織力強化およびR&D研究の推進:採用活動の強化、点群データ処理、マルチモーダル技術など、AIの次を見据えた新たな研究開発の加速、大学との共同研究(東京大学と建築情報学について連携)

リッジアイは、AI・ディープラーニング領域において、社会課題・顧客課題に向き合い、最先端の技術を駆使して解決し、新しい社会を創造するテックイノベーションファーム。

特に、画像やセンサーデータの解析について、様々な技術とディープラーニングを始めとするAIを組み合わせた開発能力に強みを持ち、投資対効果が高く技術面において最適化されたソリューションの提供により、課題解決に取り組んでいる。

顧客課題だけでなく、多くの社会課題に取り組み、JAXAより受託した土砂崩れ解析ディープラーニングでは第4回宇宙開発利用大賞 経済産業大臣賞を受賞。今後も技術の実用と研究の両立を追求し、社会・顧客が持続的に効果を実感できる最高のソリューションを提供するとしている。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:資金調達(用語)ディープラーニング / 深層学習(用語)リッジアイ日本(国・地域)

MIT研究者が新たな情報に適応していく「流動」ニューラルネットワークを開発

最初の訓練を受けた後、その基礎となる動作を適応させることができる新しいタイプのニューラルネットワークは、自動運転やロボットの制御、病状の診断など、状況が急速に変化する状況において、大きな改善の鍵となる可能性がある。このようないわゆる「流動」ニューラルネットワークは、MITコンピュータ科学・人工知能研究所のRamin Hasani(ラミン・ハサニ)氏と彼のチームによって考案されたもので、訓練段階の後、実際に現場で行われる実用的な推論作業に従事する際に、AI技術の柔軟性を大幅に拡大する可能性を秘めている。

通常、ニューラルネットワークのアルゴリズムは、関連する大量のターゲットデータを与えられて推論能力を磨き、正しい応答に報酬を与えて性能を最適化する訓練段階を経ると、基本的には固定化される。しかし、ハサニ氏のチームは、彼の「流動」ニューラルネットが、新しい情報に反応して、時間の経過とともに「成功」のためのパラメータを適応させていく方法を開発した。これは、たとえば自動運転車の認知を担うニューラルネットが、晴天から大雪に変わった場合、状況の変化に対処して高いレベルの性能を維持できるようになることを意味する。

ハサニ氏とその共同研究者達が開発した方法が従来と大きく異なる点は、時系列的な適応性に焦点を当てていることだ。つまり、基本的に多数のスナップショットや時間内に固定された静的な瞬間からなる訓練データに基づいて構築されるのではなく、流動ネットワークは本質的に時系列データ、つまり孤立したスライスではなく、連続的なイメージを考慮しているということである。

このように設計されているため、従来のニューラルネットワークと比較すると、研究者による観察や研究がよりオープンになるということでもある。この種のAIは一般的に「ブラックボックス」と呼ばれている。なぜなら、アルゴリズムを開発している人たちは、入力したものや成功した行動を奨励して決定するための基準は知っていても、成功につながるニューラルネットワークの中では何が起こっているのかを正確に判断できないからだ。この「流動的」なモデルは、より透明性が高く、より少数の、しかし洗練されたコンピュートノードによって構成されるため、コンピューティングにかかるコストが低くなる。

一方、パフォーマンスの結果は、既知のデータセットから未来の値を予測する精度において、他のシステムよりも優れていることを示している。ハサニ氏と彼のチームの次なるステップは、このシステムをさらに優れたものにする最善の方法を明らかにし、実際の実用的なアプリケーションで使用できるように準備することだ。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:MITニューラルネットワーク

画像クレジット:imaginima / Getty Images

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

独Levityが誰でもワークフローオートメーションを作れる「ノーコード」AIツールを公開

ベルリンを拠点とする新しいノーコード企業のLevityは、これまでステルスで運営されてきたがこのほど製品を市場に投入した。同社はGil Dibner(ギル・ディブナー)氏のAngular Venturesが主導するプレシードラウンドで170万ドル(約1億7500万円)を調達している。LevityはAIを利用したワークフローオートメーションをあらゆる人にとって手の届くものにし、何度も繰り返される退屈な手作業をナレッジワーカーがコーディングを学ぶことなく自動化できるようにすることを目指している。

Levityは最初から幅広い分野にサービスを提供する方針で、カスタマーサービス、マーケティング、オペレーション、人事などに適している。自動化できる代表的な繰り返し作業には、書類や画像、テキストの確認と分類がある。このようなタスクは従来のルールベースのオートメーションソフトウェアでは自動化できない。認知機能が必要だからだ。そのため通常は手作業で行われている。このような場面では、もちろん機械学習が役に立つ。

Levityの共同創業者でCEOのGero Keil(ゲロ・ケイル)氏は「自動化できるような退屈な繰り返し作業に長い時間がかかるという問題を解決し、その分の時間で楽しくおもしろい仕事ができるようにしたいと思っています。AIならできると何十年も言われていたことなのにソリューションはほとんどありません。技術者でなくコードを書けない人々のためのものはなおさらです」という。

こうしたことから、Levity全体としてのミッションは技術者でないナレッジワーカーがこれまで自動化できなかったことを自動化できるようにすることだとケイル氏は語る。特に同社がターゲットとしているのは、画像やテキスト、PDFやその他のドキュメントなど、構造化されていないデータに関して判断することにかかわる仕事のプロセスだ。

ケイル氏はこう説明する。「たとえば会社に取引先や顧客からファイルが添付された膨大な数のメールが毎日届くとしたら、通常は誰かが添付ファイルをダウンロードし、それを見て、どうすればいいかを判断しなくてはなりません。Levityを使えば、これまでに蓄積されたすべてのデータからその会社に合わせてAIをトレーニングし、学習させた後はDropboxやGmail、Slackなど既存のツールやワークフローとシームレスに統合できます」。

同氏は広い意味で、「大量生産されたAI」に困っている多くの企業は「独自のAIソリューションを構築してプロセスに組み込むことのできる」エンド・ツー・エンドのプラットフォームがあれば恩恵を受けられるはずだと語る。

ケイル氏は、Levityの最大の競合は手作業で仕事をする人たちだというが、オートメーションの機械学習ツール、ワークフローオートメーション機能、ラベリングツールと競合することも認めている。

「我々は機械学習のバリューチェーンの1つひとつの分野を追求して大企業の開発者やデータサイエンティストを楽にするのではなく、最も重要な部分だけに集中してシンプルで楽しいUXにまとめ、そのほかの部分は省いています。これにより、これまで自動化できなかったプロセスをわかりやすい方法で自動化したい中小企業の非開発者にとって最適な製品になっています。自動化の問題を抱えている人が、自動化の問題を解決する人になります。これはWixやSquarespaceがウェブサイトにもたらしたのと同様のパラダイムシフトです」とケイル氏は語る。

Angular Venturesのゼネラルパートナーで創業者のギル・ディブナー氏は発表の中で「Levityはすべてのナレッジワーカーに影響を与える大きなシフトを起こしています。ナレッジワーカーが簡単にAIエンジンをトレーニングし、AIを利用したオートメーションを構築し、日常のワークフローにオートメーションを統合できるようにすることで、LevityはAIの恩恵を徹底的に民主化します」と述べた。

AngularのほかSystem.One、SumUp創業チームのDiscovery Ventures、Pipedrive創業者のMartin Henk(マーティン・ヘンク)氏、さらに匿名のエンジェル投資家もLevityを支援している。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Levityノーコード資金調達

画像クレジット:Levity

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Kaori Koyama)

ロビットが「雪国まいたけ」のまいたけカット工程自動化開発に成功、次世代パッケージングライン開発に合意

ロビットが「雪国まいたけ」のまいたけカット工程自動化開発に成功、次世代パッケージングライン開発に合意

AI技術をロボティクスに実装し社会課題の解決を進めるロビット(ROBIT)は1月27日、「プレミアムきのこ総合メーカー」の雪国まいたけにおける、まいたけカット工程の自動化技術の開発に成功し、次世代型パッケージライン開発に合意したと発表した。熟練作業員のカット技法をAI自動カットロボットが実現し、新人・中堅作業員の2~3倍の作業効率になった。

雪国まいたけでは、独自技術によって天然同様の900gを超える大きなまいたけ株を生産し、作業員がカットすることで、50gから500gまでの複数の商品ラインアップを販売。カット工程では、単に重量を合わせるだけでなく、部位によって異なる味わいや食感などを、1パックにバランスよく、かつ見栄えよくパック詰めするための独自のカット技法にこだわっているという。またこのため、自動化を進める生産工程の中でも非常に多くの人員を要しているそうだ。

ロビットが「雪国まいたけ」のまいたけカット工程自動化開発に成功、次世代パッケージングライン開発に合意

まいたけ株は、形状や茎の付き方がひとつひとつ異なるため、重量精度を出すことが最難度の農作物。そのため、熟練した作業員と経験が浅い作業員では2~3倍程度の作業効率差があり、将来的な人員確保の難しさやコロナ禍において様々な配慮が必要になる中で、カット工程の自動化の早期実現は不可欠となっていた。

ロビットは2014年6月に設立し、ロボット、精密機器、関連するハードウェア・部品およびソフトウェアの設計・製造・販売を手がけている。同社は、2019年より、雪国まいたけの独自のカット技法と高レベルの重量精度を両立するAIアルゴリズムの開発、そのAIアルゴリズムを実装する自動カットロボットの開発を進行。今回、雪国まいたけ社内で最も優れた熟練作業員と同等レベルでカットすることが可能なAIアルゴリズム搭載の自動カットロボットの開発に成功した。

AI自動カットロボットは、切断したまいたけ片が重量分布が正規分布に従っており、熟練した作業員以上に、後工程に質の良いまいたけ片を提供可能なことに加え、不定形で衝撃に弱いまいたけ株を安定的に把持し、AIアルゴリズムの推論結果通りに装置を制御・補正し、狙い通りのカットを実現する機能を備えており、生産工程への早期実装を可能にする。

上記結果を踏まえ、両社は、AIアルゴリズム搭載の自動カットロボットを核に、カット工程の前後においてもAIやロボティクスの実装を目指す次世代型のパッケージングライン(カットから包装までの工程)の開発を進めることに合意した。

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ノーコードのE2Eテスト自動化プラットフォーム「Autify」がモバイルアプリ対応版を提供

ノーコードのE2Eテスト自動化プラットフォーム「Autify」がモバイルアプリ対応版を4月から提供AIを用いたソフトウェアテスト自動化プラットフォーム「Autify」(オーティファイ)を提供するオーティファイは、検証端末がなくてもネイティブアプリのE2E(End to End)テストが自動で行える「Autify for Mobile」(β版)を4月から提供開始すると発表した。従来のAutify同様、プログラミングの知識がなくても、誰にでも簡単にテストシナリオを作成・実行できる「ノーコード」による自動化が可能。

また同社は、Autify for Mobile(β版)のオンライン事前申し込みを開始した。事前登録を行なっている場合、優先的に案内する。「βテスト申し込み」から行える。

オーティファイは、2019年にTechCrunch Japanが主催した「TechCrunch Tokyo 2019」の「スタートアップバトル」のファイナリスト。2020年4月にはローンチ半年で導入企業累計100社を突破したことを発表しており、現在ではECサイトやBtoB SaaS、エンタメコンテンツの配信プラットフォームなど、ウェブサービスを提供している300社以上の企業が導入済みという。

ノーコードのE2Eテスト自動化プラットフォーム「Autify」がモバイルアプリ対応版を4月から提供

代表取締役の近澤良氏がまず強調したのは、ソフトウェアテスト自動化は、企業におけるIT予算の1/3を占める超巨大マーケットであり、グローバルな市場規模が130兆円にもなるという点だ。

しかし、75%の企業が人手にソフトウェアテストを行っているのが現状だという。近澤氏は、その一方で、市場の変化に対応するというビジネス上の要請から7割以上のアジャイル開発チームが週1回以上のリリースを希望しており、リリースのたびにテスト量が増加していることから人手による検証は限界を迎えていると指摘。企業はリリースサイクルを遅くするか、障害発生のリスクを許容するか選択を迫られているとした。

そのため、ソフトウェアテストの自動化が必要とされているものの、「自動化を行う人手の不足」、「高いメンテナンスコスト」という課題があるという。近澤氏によると、自動化のためのコードを書くエンジニアがそもそも不足している上に、毎週など頻繁なリリースに追随できる自動テストのメンテナンスに関する負荷が高く、諦めてしまう企業が多いそうだ。

そこでAutifyでは、「ノーコード」「AIによるメンテナンス」というソリューションでこれら課題を解決するとした。

検証用のモバイル端末を用意する必要ナシ

Autifyは、開発したソフトウェアが期待通りに動くかどうかの検証作業をウェブブラウザー上で自動で行えるSaaS。プログラムコードを書く必要がなく、誰でも自動化のための設定や実行、運用までを行える。従来、手動で行ってきたE2Eテストの自動化により「大幅な時間短縮とメンテナンスコストの削減が実現できた」と評価されているそうだ。

今回同社が発表したAutify for Mobile(β版)は、Autifyのモバイルネイティブアプリ対応版。検証用のモバイル端末を用意する必要はなく、パソコン(Windows/Mac)のブラウザー上で、複数端末での動作検証が自動で行える。「モバイルネイティブアプリ対応版がほしい」という要望がかねてより寄せられていたことから、開発を進めている。β版の段階では、シミュレーターでの実行をサポートするものの、将来的にはOSバージョンなどを指定した上での実行も可能としたいという。

リモートワークがスタンダードになる中、「検証端末をいくつも用意するのが困難」「メンバー間で端末を郵送し合うなど手間がかかる」「検証端末の管理コストが高い」といった課題も解決するとした。

プログラミングの知識がなくても、ノーコードで自動化できる

従来、テスト自動化のためにはプログラミングの知識や自動化のスキルが必要だったが、Autifyではプログラミングの知識がなくても、誰にでも簡単にテストシナリオを作成・実行可能。QA(Quality Assurance)担当者が、テスト自動化の設定やメンテナンスを行えることで、より高い品質を保てるようになる。また、エンジニアは開発に集中できるため、リリースサイクルの高速化も期待できる。

ノーコードのE2Eテスト自動化プラットフォーム「Autify」がモバイルアプリ対応版を4月から提供

またエンジニア向けに、作成した自動化設定の一部をJavaScriptでカスタム化する機能も用意しているという。

任意のタイミングで定期テストを自動実行

Autifyにアップロードしたアプリ(ビルドファイル)を起動・操作し、記録した内容を保存するだけでテストシナリオが完成。「毎週土曜日の23時に実行」など任意のタイミングを設定すると定期テストが自動実行される。

ノーコードのE2Eテスト自動化プラットフォーム「Autify」がモバイルアプリ対応版を4月から提供

また、保存したテストシナリオを複製、一部を変更するだけで他のウェブサービスのテストにも活用可能。複数サービスを展開している企業からは「他部署の開発チームでも活用できて助かった」などの声もあるという。

アップデートによる差異をAIが検出し自動修復

従来は、アプリのUI変更や新機能の追加があった際は、テストのシナリオを手動で修正するのが一般的だったが、Autifyならその必要はない。

AutifyではAIがソースコードやUIの変化を検出し、シナリオの修正も自動で行う。シナリオを書き直したり、壊れたテストスクリプトを直す作業が発生しないため、メンテナンスの負担を軽減できる。

「テストの辛みを一気に解決したい」

近澤氏によると、エンジニアであれば「テストが辛い」「テストの市場が大きい」という点は肌感覚で分かる一方で、開発に関する知識がない方には限定的な市場しかない、ポテンシャルが限られていると見られがちだという。しかし、実はグローバルで同じ課題を抱えており、ビジネス上のポテンシャルも無限大だと指摘。

ソフトウェア企業やSaaSの数は増え続けており、アジャイル開発かつ週次レベルで改善し続けないと顧客が離れてしまう可能性は十分ある。ウォーターフォールで、1ヵ月後や半年後に新機能をリリースというスタイルではビジネスの継続は難しいと捉えている企業は多く、テスト自動化の需要はますます増えていくと考えているという。

近澤氏は、「Autify、Autify for Mobileでテストの辛みを一気に解決したい」としていた。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:アジャイル開発(用語)オーティファイ(企業)Autify for Mobileテスト自動化ノーコード(用語)日本(国・地域)

4大陸18カ国に展開しているAI農業プラットフォームの南アフリカ発Aeroboticsが17.6億円調達

予想される人口増加と食糧需要に応えるために世界中で農業が背伸びをし、地球温暖化によって食糧安全保障がより差し迫った課題となっている中、南アフリカ発のスタートアップが人工知能を使い農場や樹木、果物の管理をすることで農家を支援している。

世界の農業にインテリジェントなツールを提供する南アフリカのスタートアップ、Aeroboticsは応募超過となったシリーズBラウンドで1700万ドル(約17億6000万円)を調達した。

Aerobotics社によると、南アフリカの消費者向けインターネット大手Naspersの投資部門であるNaspers Foundryがこのラウンドを主導し、560万ドル(約5億8000万円)を出資したという。他にはCathay AfricInvest Innovation、オランダのFMO: Entrepreneurial Development BankPlatform Investment Partnersが参加した。

James Paterson(ジェームズ・パターソン)氏とBenji Meltzer(ベンジ・メルツァー)氏によって2014年に設立されたAeroboticsは現在、果樹農家のためのツールの構築に注力している。AI、ドローン、その他のロボットを使用した同社の技術は、樹木の病気の特定、害虫や病気の追跡、より良い収量管理のための分析など、これらの作物の健康状態の追跡と判定を支援している。

同社はその技術を発展させ、シーズンの早い段階で柑橘類の生産者から樹木と果実の両方の画像を収集・処理することで、農家に独立した信頼性の高い収量予測と収穫スケジュールを提供している。これにより農家は在庫を準備し、需要を予測し、顧客が最高の品質の農作物を手に入れることができるようになる。

Aeroboticsはここ数年で記録的な成長を遂げている。1つには、8100万本の樹木と100万個以上の柑橘類の果実を処理した実績から、世界最大の樹木と柑橘類の独自データセットを持っていると主張している。

設立して7年の同社は、南アフリカのケープタウンに拠点を置いている。アフリカ大陸の新興企業の多くが、主に国内での課題の特定と解決に注目している時期に、Aeroboticsは海外でもそのサービスに多くの牽引力を見出している。同社はアフリカと同様に世界の主要な農業経済の中心地である米国、オーストラリア、ポルトガルにオフィスを構えており、アフリカ・南北アメリカ・ヨーロッパ・オーストラリアの4大陸にわたり18カ国で事業を展開している。

画像クレジット: Aerobotics

その中でも米国が同社の主要市場であり、Aeroboticsによると同国では2つの仮特許を申請中であり、1つは樹齢を推定するシステムと方法、もう1つは収量を予測するシステムと方法だという。

同社は今回のシリーズB投資を利用して、米国とその他の市場向けに、より多くの技術と製品を開発し続ける計画だと述べている。

「当社はオートメーションを最適化し、インプットを最小限に抑え、生産を最大化するためのインテリジェントなツールを提供することに尽力しています。農産物業界のリーダーたちとのさらなる共同開発を楽しみにしています」とCEOであるパターソン氏は声明の中で述べている。

何世紀か前にはテクノロジーのフロンティアとして謳われていた農産物業界は、長い間その面で停滞していた。しかし気候に適した農業をサポートし、農家を支援するAeroboticsのようなアグリテック企業は、業界を過去の栄光に戻そうと躍起になっている。投資家は業界に注目しており、過去5年間、息を呑むような勢いで投資が行われてきた。

Aeroboticsの場合、2017年9月にシードラウンドの一環として4Di CapitalとSavannah Fundから60万ドル(約6200万円)を調達した。その後、2019年2月にはNedbank CapitalとPaper Plane Venturesが主導するシリーズAラウンドでさらに400万ドル(約4億2000万円)を調達した。

今回のシリーズBラウンドを主導したNaspers Foundryは、2019年にNaspersが南アフリカのテック系スタートアップのための14億ランド(104億円弱)のファンドとして立ち上げた。

Naspers South AfricaのCEOであるPhuthi Mahanyele-Dabengwa(プーティ・マハニエレ-ダベンガ)氏は、今回の投資についてこう述べている。「南アフリカでは食料安全保障が最も重要であり、Aeroboticsのプラットフォームは、それを維持するための支援に向けて積極的に貢献しています。この種の技術革新は社会的課題を解決するものであり、まさにNaspers Foundryが支援したいと考えているタイプのアーリーステージ企業です」。

Aeroboticsの他にも、Naspers FoundryはオンラインクリーニングサービスSweepSouthやフードサービスプラットフォームFood Supply Networkにも投資している。

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タグ:Aerobotics農業南アフリカ資金調達

画像クレジット:Aerobotics

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(翻訳:Nakazato)

FacebookとInstagramのAI生成画像キャプションがアップデート、より詳細な情報を提供

Facebook(フェイスブック)とInstagramに投稿された写真は、画像分析AIによって分析されキャプションが作成される。このAIがこのほど一段と強化された。新システムは視覚にハンデのあるユーザーを助けると同時に、将来は一般ユーザーが写真をすばやく見つけるのにも役立つようになるという。

AI分析によって「野原で人が馬の横に立っている」「ボートの上に犬がいる」のようなキャプションが生成され、画像のメタデータに保存される。これにより画像を見ることができない人も、どんな画像なのかを理解できるようになる。

これまで撮影者やメディアは、こうしたユーザー補助キャプションを手動で追加してきた。しかしソーシャルメディアに写真をアップロードする一般ユーザーは、いちいちキャプションを入力しないことが多い。Googleフォトのような画像をAIで分析して検索可能にするテクノロジーが、ここ数年で大きく進歩を遂げている。この機能がソーシャルメディアに導入されれば利便性が飛躍的にアップすることは明らかだった。

Facebookは、自動代替テキスト(Automatic Alt Text)システムを2016年に開発した。これは機械学習が普及し始めるよりずっと前のことだった。それ以来チームは、処理をスピードアップし内容を詳細にするため多くの改良を加えきた。最新のアップデートでは、詳細なキャプションをオンデマンドで生成するオプションが追加されている。

改良されたシステムは当初の10倍、約1200種類の対象、コンセプトを認識する。説明も詳細になっている。以前は「建物の側にいる2人」だったが、今では「エッフェル塔の側で2人が自撮り」というキャプションも可能だろう(実際のキャプションでは「かもしれない」と断りを入れるし、大胆過ぎる推測は避けられる)。

必ずしも大きな意味があるとは限らないが、たとえば下の例ではAIは人と物の相対的な位置を認識している。

画像クレジット:Facebook

人が立っているならドラムより背が高いし、帽子をかぶっているならそれは人の頭の上にある。こういう場合はいちいち位置関係を説明する必要はない。しかし「家と木と山」という場合はどうだろうか?そういう画像の場合、家は山の上にあるのか手前にあるのか?木の位置は家の手前か後ろか?それとも遠くの山に生えているのか?

つまり少ない語数で簡単に説明できる場合でも、背後で詳細な情報を生成しておく必要がある。我々は詳細な情報を求めて画像をクリックして拡大することがある。「詳細な画像の説明を生成」コマンドはキャプションで同様の役割を果たす(Androidアプリの場合は長押し、iOSならカスタムアクションで起動する)。

おそらく「雪が降っている山の手前に家と複数の木」というような説明になるのだろう。そうなるのであれば、画像理解のために便利だ (もちろんこの例は説明のために今考えついたものだが、おそらくそのような方向に改善されるのだろうと思う)。

この「詳細な説明」機能は、まずFacebookでテスト公開されるが、続いてInstagramでも行われるはずだ。キャプションは、すでにサポートされている他の言語に翻訳できる。ただしこの機能自体は当面多数の言語に拡張されることはないようだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookInstagram

画像クレジット:Facebook

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

レブコムがオンライン商談の会話をAIにより解析・可視化する新サービス「MiiTel Live」開始

レブコムがオンライン商談の会話をAIが解析・可視化する新サービス「MiiTel Live」開始

音声解析AI電話「MiiTel」(ミーテル)を提供するRevComm(レブコム)は1月20日、法人向け第2弾サービスとして、オンライン商談の会話内容をAIが解析・可視化するオンライン商談ツール「MiiTel Live」(ミーテルライブ)の提供を開始した。月額利用料は、1ユーザーあたり4980円(別途MiiTelの基本料金の契約が必要)。

レブコムがオンライン商談の会話をAIが解析・可視化する新サービス「MiiTel Live」開始

レブコムは、「コミュニケーションを再発明し、人が人を想う社会を創る」をミッションに、営業におけるトークの可視化とセルフコーチング、テレワーク化を実現する音声解析AI電話のMiiTelを提供。MiiTelは、2020年12月時点で約15万000名が利用している。

新たに開始したMiiTel Liveは、ビジネス電話における1対1の通話内容を解析するMiiTelの音声解析の技術はそのままに、ホストを含め最大8名までのオンライン商談に対応。MiiTelとMiiTel Liveにより、一貫した営業プロセスの実現と、一元管理が可能となっている。

レブコムがオンライン商談の会話をAIが解析・可視化する新サービス「MiiTel Live」開始
レブコムがオンライン商談の会話をAIが解析・可視化する新サービス「MiiTel Live」開始

MiiTel Liveでは、1ユーザーあたり月間50回まで、1回あたり最長3時間利用可能。音声認識AIが会話内容を解析・可視化できるほか、オンライン商談の参加者の話速や抑揚の強調・声の高低などの音声解析機能、文字起こし機能を合わせて利用することで、商談のブラックボックス化問題を解消。オンライン商談の振り返りなどに活用できる。

レブコムがオンライン商談の会話をAIが解析・可視化する新サービス「MiiTel Live」開始レブコムがオンライン商談の会話をAIが解析・可視化する新サービス「MiiTel Live」開始商談などを標準で自動録画するようになっており(録画保存期間は翌月末まで)、簡単に自らの商談を振り返りに利用可能。録画データはワンクリックで他部署へ共有したり、成約につながった商談の録画を新人の教育に活用したりもできる。成功事例を共有することで、営業部門全体の売上向上が促進されるほか、在宅勤務で希薄化しやすいコミュニケーションの活性化にも役立てられるとしている。

レブコムがオンライン商談の会話をAIが解析・可視化する新サービス「MiiTel Live」開始レブコムがオンライン商談の会話をAIが解析・可視化する新サービス「MiiTel Live」開始また文字起こし機能により、議事録を入力する側のインプット工数を削減可能。同時に顧客と担当者が「何を」「どのように」話したかの内容をニュアンスまで把握できるようになるため、成約率を上げ、解約率と教育コストの低下につなげられるという。

レブコムがオンライン商談の会話をAIが解析・可視化する新サービス「MiiTel Live」開始

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:セールステックRevComm(企業)MiiTelMiiTel Live日本(国・地域)

中⼩企業向け検品・検査⼯程用エッジAIをサブスクで提供するフツパーが約1億円を資金調達

中⼩企業向け検品・検査⼯程用エッジAIをサブスクで提供するフツパーが約1億円を資金調達

中⼩企業向けエッジAIシステムを提供するフツパー(Hutzper)は1月20日、プレシリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額約1億円の資⾦調達を発表した。引受先は、ANRI、広島ベンチャーキャピタル、GA投資組合、ちゅうぎんインフィニティファンド、East Venturesの5社。

同社は、2020年4月創業時より提供している画像認識用エッジAI「Phoenix Vision」と、AI導⼊後の継続⽀援を行うシステム(SaaS)「Phoenix Insight」を展開。食品など、関⻄エリアの製造現場での検品・検査⼯程の⾃働化を中心に導⼊が進んでいるという。今回調達した資⾦は、Phoenixシリーズのさらなる機能開発や導⼊企業の拡⼤、またエンジニア職、セールス職などの採⽤強化を早急に進めていく予定。

2020年4月創業のフツパーは、「最新テクノロジーを泥臭く⺠主化する」というミッション掲げ、製造業向け画像認識エッジAIサービスをサブスクリプション形態で提供するスタートアップ。社名のフツパー(Hutzper)は、ヘブライ語の「חוצפה」(英語:Hutzpah)を基としており、日本語で近い表現は「⼤胆さ、粘り強さ」となるという。ガッツあふれる「フツパー」な創業メンバーからHutzpahのつづりをHutzperに変えて社名にしたそうだ。

フツパーの黒瀬康太氏によると、ハードウェアに関してはNVIDIAや沖電気などの汎用製品を利用。顧客の環境に合わせて採用しているという。これに同社AIを組み合わせて導入しているそうだ。

また、エッジAIに取り組む企業は同社以外にも存在しているが、AIの研究開発などに資金を集中的に投入していることから、大手顧客を対象とした高価なものになりやすいという。

黒瀬氏は、これに対して「はやい・やすい・巧い AIを。」をコンセプトとして掲げており、顧客に求められる水準を基にリーズナブルかつ現場で「使える」ものを重視しているとした。食品の外観検査など製造業における検品は人手不足が課題になっており、その解決を求めている中小企業が多いためだ。

中⼩企業向け検品・検査⼯程用エッジAIをサブスクで提供するフツパーが約1億円を資金調達

中小企業の場合多種多様な製品を手がけており、その業務に合わせて同社Phoenix Visionをカスタマイズする形で開発・導入を行っている。場合によっては、半ばフルスクラッチに近いこともある。しかしそれでも、同様のことを行っている企業およびシステムにおける価格帯の中でも安価という。黒瀬氏は「初期費用なし、またサブスクリプションモデルにより安く提供して、導入数を増やしている」と明かした。

また導入時点から人件費より安価になることを重視しているそうだ。中小企業にとって、検品業務は売り上げ増加に直接関連するものではなく、AIが関わるプロジェクトが人件費より高額となる場合、費用対効果を高めるため完全無人化などの必要が出てくる。しかし完全無人化しても、費用対効果を得るには数年がかりとなる可能性がある。

そのためフツパーは、顧客に対し「AI+人間」のハイブリッドを推奨している。例えば食品の検品の場合、従来3名で行っているのなら、AI+1名に切り替えるといった体裁だ。Phoenix Visionで高速に検品を行ってPhoenix Insightで不良品を指示し、1名の人間が取り除く作業を行うという流れを提案する。AIというとSFのようなイメージを持たれることもあるが、同社は「表計算ソフトやプレゼンソフトなどと同様に、AIもあくまで道具として使ってほしい」という。

中⼩企業向け検品・検査⼯程用エッジAIをサブスクで提供するフツパーが約1億円を資金調達

また、すでに画像認識AI技術はコモディティ化していることから、資金調達による人員増を行い、面を取りに行くこと(導⼊企業の拡⼤)を狙っている。黒瀬氏は、AIの機能よりも、SaaSのPhoenix Insight導入先において、表示方法・指示の出し方によって現場の方がどれだけ作業しやすくなるのか研究開発を進めたいとした。実際に現場に入り込まないと「良いシステム」「現場の役に立つシステム」に落とし込むのは難しいため、その分難易度は高いという。黒瀬氏は、「フツパーのR&Dは机の上ではなく、現場で行う」としていた。

同社は今後も引き続き、より多くの企業が⼿軽にAIやロボットを利⽤することで⼈⼿不⾜を解消できるような世の中を⽬指し、日本の産業や地域社会の発展に貢献していけるよう、「フツパー」の精神を持って事業拡⼤に取り組でいくという。

AI系スタートアップというと、著名企業や東京中心のイメージがあるが、同社は、製造業の多い関西や各地方の中小企業、その現場の課題解決に取り組むとしている。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:AI / 人工知能(用語)エッジAI(用語)エッジコンピューティング(用語)資金調達(用語)フツパー日本(国・地域)

アマゾンが車やアプリ、ゲーム向けAlexaアシスタントを企業が独自開発するためのプロダクトを新たに提供

Amazon(アマゾン)は、企業がAlexaの基盤となっているテクノロジースタックを利用して独自の音声、スキル、ウェイクワードを持つインテリジェントアシスタントを開発できるようにする。これを最初に利用するのはFiat Chrysler Automobiles(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)だ。

米国時間1月15日に発表されたAlexa Custom Assistantという新しいプロダクトは、Alexaアシスタントと共存し、協調して動作する。理論的に自動車メーカーは、ドライバーがクルマと関連する特定の製品やサービスを使うときには自社製のアシスタントで操作し、他の用途ではAlexaの音声アシスタントと統合するように構築できる。Amazonは例として、ドライバーがAlexaに車の窓を開けるように頼むとそのリクエストは自動車メーカーのアシスタントに転送され、自動車メーカーのアシスタントにオーディオブックを読み上げるように頼むとそのリクエストはAlexaに転送されると説明している。

そう、つまり、あなたの次のクルマにはAlexaが2つあるかもしれない。

動作の様子を示す動画が公開されている。

Fiat Chrysler Automobiles(フィアット・クライスラー)はAlexa Custom Assistantを利用する初の企業だ。Amazonによれば、フィアット・クライスラーブランドのインテリジェントアシスタントは一部のモデルの車に統合されるという。

ただしAmazonが売り込もうとしている相手は自動車メーカーだけではない。Amazonは、モバイルアプリやスマートホーム、ゲーム、家電にインテリジェントアシスタントを組み込めると説明している。Alexa Custom AssistantはAlexaのテクノロジースタックをベースにしている。カスタムのウェイクワードは、Alexaのウェイクワードを開発するのと同じプロセスで作る。Amazonは、企業がAlexaの音声科学の専門家に相談しながら録音のプロセスや高度な機械学習アルゴリズムを使う音声の開発を進められるよう支援する。開発者はAlexaにあらかじめ組み込まれたコミュニケーション、ローカル検索、交通情報、ナビゲーションなどの機能を利用して商用化までの時間を短縮することもできる。

Amazonは、企業がインテリジェントアシスタントを自社の顧客に効率よく低コストで提供できるようにすることがこの新しいプロダクトの狙いだと述べている。インテリジェントなAIアシスタントの開発は複雑で、通常は開発サイクルが長く、ゼロからの開発にもその後のメンテナンスにもリソースが必要だとAmazonは説明する。

もちろんこれは、たとえAlexa以外の名前で呼びかけられるものだとしても、Alexa搭載デバイスを増やす方策の1つでもある。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:AmazonAlexa

画像クレジット:Emmanuele Contini / NurPhoto / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

中国最大級の顔認証ユニコーンMegviiが上海でのIPOを準備中

中国最大級の顔認証スタートアップであるMegviiは、上海での新規株式公開に向けて準備を進めている。中国時間1月12日に中国証券監督管理委員会が発表したところによると、同社はCITIC証券と協力して上場の準備を進めているという。

この動きは、顔認識プラットフォーム「Face++」で知られるMegviiが2019年8月に香港での株式公開を申請してから1年以上が経過してからのことだ。当時、ロイターは同社が5億ドル(約518億4000万円)から10億ドル(約1036億7000万円)を調達できるだろうと報じていた。しかし、香港での同社のIPO申請は非公開の理由で失効しており、現在は上海証券取引所ののSTAR Board(科創板)に焦点が当てられていると、この件に詳しい人物がTechCrunchに語った。

2019年、中国は長年にわたって米国に流出していた高成長で不採算の中国テックスタートアップを誘致するためにSTAR boardを設立した。一方、中国企業、特に政府との契約を頼りにしている企業や米中ハイテク競争に巻き込まれている企業にとっては、国内での新株発行がますます魅力的になってきている。

MegviiとそのライバルであるSenseTime、Yitu、CloudWalkは、その市場支配力と野心旺盛な投資家からの資金調達により、中国の「四大AIドラゴン」と総称されている。Megvii社の技術は、中国全土のスマートシティのインフラや、多くのスマートフォンやモバイルアプリの動力源となっている。創業以来10年の間にAlibaba(アリババ)、Ant Group、中国銀行などの投資家が、同社に約14億ドル(約1451億円)を出資している。

AIドラゴンズは、自国の市場以外ではあまり知られていない。2020年、Megvii、Yitu、SenseTimeは、中国西部のイスラム教徒少数民族に対する政府の大量監視を可能にする役割を果たしたとの疑惑で、米国の制裁対象リスト(エンティティリスト)に追加された。CloudWalkはその後、2020年に同じくブラックリストに追加され、米国のサプライヤーから切り離された。

中国の証券当局が掲示した通知によると、Megviiは米国の預託証券に似た、国内の投資家が海外の株式を保有できる中国預託証券(CDR)の発行を計画しているという。これは、北京に拠点を置くAIユニコーンが中国本土以外への上場を否定していないことを示唆している。

今週には、香港上場企業である世界トップPCメーカーのLenovo(レノボ)も、上海の科創板でCDRによる株式売却を計画していると発表した。

現在は申請前の段階でガイダンスを必要としており、Megviiの上場計画はまだ中国の規制当局の承認を必要としている。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:MegviiIPO顔認証

画像クレジット:Megvii

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(翻訳:Nakazato)

DeNA在籍の「Kaggle Grandmaster」が国内企業最多の3名に、「Kaggle Master」も16名

国内企業最多、DeNA在籍の「Kaggle Grandmaster」が3名・「Kaggle Master」も16名に

ディー・エヌ・エー(DeNA)は1月15日、日本国内に十数名しかいないとされる「Kaggle Grandmaster」の在籍人数が日本企業としては最多(2021年1月15日時点。DeNA調べ)の3名となったと発表した(Kaggle Rankings)。「Kaggle Master」も国内最多の16名(2021年1月15日時点。DeNA調べ)が在籍しているという。

同社データサイエンティストが、2020年10月から2021年1月にかけて行われたKaggleコンペティション「Riiid! Answer Correctness Prediction」に参加し、12位(日本チームとしては3位)となった。この結果により、Kaggle最高位である「Kaggle Grandmaster」2名が誕生し、同社所属のGrandmasterは計3名となった。

Kaggleは、2017年にGoogleが買収。世界中の統計家、データ分析家、研究者などのデータサイエンティストが登録しており、分析手法や最適モデルを競うプラットフォームの運営を行っている。コンペでは、主催者が投稿した課題に対し、参加者が最適なモデルを構築し競い合う。

DeNAでは、2018年4月より「Kaggle社内ランク」制度を導入し、様々な事業領域においてAI技術を活用した取り組みを積極的に行っているという。

同制度は、AI技術のサービス応用力強化のために、データサイエンス⼈材の積極的な採⽤と、データサイエンス⼈材のキャリア形成を⽀援することを⽬的とした制度で、一定の条件下で業務時間でのKaggleへの参加を推進しているそうだ。

すでにDeNA社内には多くの「Kaggler」が在籍しており、3名のKaggle Grandmasterのほか、「Kaggle Master」も国内最多の16名(2021年1月15日時点)が在籍している。

その知識やスキルなどは、DeNAが関わる様々なビジネス領域である、ゲーム、ライブストリーミング、スポーツ、ヘルスケア、オートモーティブなどで活かされており、DeNA以外の企業との取り組みにおいても活用されているという。

DeNAでは、今後も優秀なKagglerのデータサイエンス力が社内外の様々な企業や事業において社会に役立ち、活用されることを目指していくとした。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:KaggleDeNA日本(国・地域)

GoogleのAIが新たなハイブリッド焼き菓子のレシピを考案

2020年、みなさんの多くがクッキーやパン、ケーキなどのあらゆる種類のものを焼いてきたと思うが、驚くべきことにGoogle(グーグル)のAIが「breakie(ブレッキー)」と「cakie(ケーキー)」という2種類のハイブリッドスイーツのレシピを考案した。

これら新しいレシピの起源は、同社のツールAutoML Tablesのデモのようだ。AutoML Tablesはコードレスモデル生成システムで、「人工知能」というよりむしろ、スプレッドシートの自動化に近い。しかしそんな細かいことにこだわってると、レシピにたどり着けない。

昨年の春、Sara Robinson(サラ・ロビンソン)氏はこれらのツールで遊んでいた。機械学習とベーキングに興味があった彼女は、新型コロナウイルスの猛威を避けるために引きこもる間、いろいろと試し始めた。

そのとき彼女は、レシピ見てそれがパンなのか、クッキーなのか、ケーキなのかを自動的に判断しその理由も教えてくれるシステムを設計しようと思っていた。たとえばバターと砂糖の量が多いとクッキーに答え、イースト菌があればパンだと判断するような。

画像クレジット:Sara Robinson

もちろん、そんな単純でわかりやすいレシピばかりではないし、ツールも100%正確ではない。そこでソビンソン氏は考えた。それが何なのかをシステムが判断できないレシピは、どのようなものだろうか?と。

彼女はさまざまな材料を使って試し、ついに機械学習のシステムがきっちり50 / 50でクッキーでもあり、ケーキでもあると判断するレシピ「ケーキー」を考案した。

「ケーキー」(写真左)と「ブレイキー」(写真右)とロビンソン氏(画像クレジット:Sara Robinson/Google)

「おいしいです。不思議なことに、ケーキとクッキーのハイブリッドを作るようにマシンに命令したときに出来上がるだろうと私が想像していたような味がします」と彼女は書いている。

彼女が作ったもう1つのハイブリッドスイーツが、お察しのとおりパン(bread)が半分、クッキー(cookie)が半分の「ブレッキー」だ。「ふわふわのクッキー、マフィンのような触感」だという。確かにブレッキーは下の固いところがないマフィンのようだ。名前も「muffin tops(マフィントップ)」というよりもブレッキーのほうがいい(最初は「brookie(ブルーキー)」と名づけたとのこと)。

これらの材料とその比率はおそらく以前から存在していたか、試されていたものだが、古いレシピを使って新しいレシピを生み出す方法としては確かにおもしろい。

以下のレシピはそのまま使うことができるものだが、バニラやチョコチップはロビンソン氏が自身が加えたもので、アルゴリズムが考案したのは各材料の比率だけだ。また焼き方も人間が考える(AIは焼く温度や容器については何も把握していない)。いつもの週末スイーツとは違うものを作ろうとした場合、AIが考案したレシピのほうがおいしいかもしれない。

画像クレジット:Sara Robinson/Google

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Googleレシピ料理

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

サッカーなどのチームスポーツを記録し編集、配信できるAIカメラのVeoが約25.5億円を調達

スポーツの放送や配信は世界中で人気があって収益性が高く、放送局や広告主、視聴者にとって魅力があるため、お気に入りのチームやアスリートを見る(そしてスポンサードする)機会を確保するために巨額の金銭が動いている。

そして当然のことながらスポーツのコンテンツには一般に多額の費用がかかるため、制作と配信はさらに難しい。しかし米国時間1月6日、自律的なAIベースのカメラでチームが試合を録画、編集、配信できるようにして従来のモデルを打破しようとするスタートアップが、スポーツチームや試合のロングテールをターゲットにしたビジネスを構築するための資金調達について発表した。

Veoはコペンハーゲンのスタートアップで、ビデオカメラとクラウドベースのサブスクリプションサービスを開発している。このカメラとサービスを使って、録画した後に自動で試合のハイライトを選び出し、プラットフォーム上でそのビデオコンテンツを公開できる。このVeoがシリーズBで2000万ユーロ(約25億5000万円)を調達した。

このラウンドはデンマークのChr. Augustinus Fabrikkerが主導し、米国のCourtside VC、フランスのVentech、デンマークのSEED Capitalが参加した。VeoのCEOで共同創業者のHenrik Teisbæk(ヘンリック・タイスベック)氏はインタビューで同社の評価額を公表していないと語ったが、資金調達に近い情報筋によれば評価額は1億ドル(約104億円)を超えているという。

タイスベック氏は、調達した資金で事業を2つのレベルで引き続き拡張する計画だと述べた。その1つ目として、Veoはマイアミにオフィスを構え米国の事業を拡大していく。

もう1つの計画は、テクノロジーのさらなる充実だ。Veoは世界中で最も人気のあるチームスポーツであるサッカーの試合の録画と解析に合わせたコンピュータビジョンソフトウェアの最適化を始めており、同社のカメラ(販売価格800ドル、約8万3000円)と付随する必須のサブスクリプション(年間1200ドル、約12万5000円)を購入する顧客が、視聴者向けとトレーニングや選手の選考といった実用目的の両方で映像を使えるようにする。ポイントは、カメラをチーム自身がセットアップして使える点だ。いったん設置すれば、広角でサッカーのフィールドの大部分(あるいはプレイしている場所ならどこでも)を録画し、これをもとに後からズームや編集をすることができる。

画像クレジット:Veo Technologies

現在、Veoはコンピュータビジョンのアルゴリズムを構築して、ラグビーやバスケットボール、ホッケーなど多くのチームスポーツに提案の幅を広げようとしている。生成されるビデオクリップや試合に関する分析の種類も増やしている。

2021年は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響でスポーツに関する多くの活動が停滞するだろう。たとえば英国はまたロックダウンされ、プロリーグのチームスポーツは障がい者チームを除いて停止している。このような状況にも関わらず、Veoは成長を見せている。

同社のサービスは現在、プロのスポーツチームからアマチュアの子供のクラブまで世界中のおよそ5000チームに利用されている。2018年の事業開始以来、20万試合を録画し解析した。この20万試合の多くは2020年に米国で実施されたものだ。

参考までに紹介すると、TechCrunchは2019年にVeoが600万ドル(約6億2000万円)を調達したと報じたが、この時点では1000チームに利用され2万5000試合を録画したと発表されていたので、顧客数は5倍に増えたことになる。

2020年、新型コロナウイルス感染拡大はまさにスポーツのフィールドを変えた。文字通りの意味でも、比喩的な意味でも。観客、アスリート、サポートするスタッフも例外なく感染拡大に注意を払わなくてはならない。

試合数だけでなく観戦にも変化があった。2020年にNBAはシーズンの試合を最後まで実施するために大変な苦労をしてフロリダ州オーランドにバブルと呼ばれる大規模な隔離施設を用意した。ファンは観客席にはいなかったが、試合とファンはバーチャルのイベントに移行した。

NBAのこうした取り組みにはいうまでもなく大変な費用がかかり、規模の小さいリーグでは到底できない。この困難な状況が、Veoにとっては興味深いユースケースにつながっている。

感染拡大前のVeoは、順調なときでさえカメラを買ったり試合を撮影するビデオグラファーを雇ったりする費用を捻出するのが難しいスポーツ組織のロングテールにサービスを提供しようと、ひっそりとビジネスを構築していた。同社のサービスはスポーツイベントを楽しむのに重要な部分であるだけでなく、チームの育成にも役立つ。

タイスベック氏は「サッカーは録画して放送されるものという認識がありますが、(たとえば)英国で録画して放送されるのはプレミアリーグだけです。そこから1つか2つ下のリーグでは何も録画されていません」と語る。Veoが登場する前のサッカーの試合について「足場に上って撮影する人や、ハイライトを切り出す時間とお金が必要でした。これはあまりにも困難です。しかしビデオは才能を伸ばすための絶好のツールです。子供たちは見て学びます。そしてスカウトされることを目指して大学にビデオを送ることもできます」とも述べる。

こうしたユースケースが感染拡大とともに増えたと同氏はいう。「コロナ禍のルールで保護者は外出して子供の試合を見ることができないため、ビデオが試合を見るツールになっています」。

「我々はShopifyでありAmazonではない」

Veoのこれまでのビジネスモデルはタイスベック氏のいう「ロングテールのセオリー」によるものだった。スポーツに関して同氏は「1試合の視聴者は多くなくても、何百万もの試合が実施されています」と語る。しかし多くの高校生スポーツが在校生の枠を超え、卒業生のサポーターやファン、そして企業や近隣の人々といった地元のファンを魅了していることを考えれば、ロングテールのオーディエンスは想像より多いかもしれない。

Veoはロングテールを狙っているので、ターゲットユーザーは必然的に幅広いアマチュアやセミプロのクラブ、そしてそれに関連する人々ということになるが、実はビッグネームにも浸透している。

Veoのカメラはプレミアリーグ、スペインのラ・リーガ、イタリアのセリエA、フランスのリーグ・アンのほか、米国MLSのインテル・マイアミ、オースティンFC、アトランタ・ユナイテッドFC、FCシンシナティといったサッカークラブでも使われている。タイスベック氏は、メインの配信に使われるのではなくてもトレーニングを支援したり各組織に付随するアカデミーでも利用されていると述べた。

同氏は、長期的な計画として蓄積されたコンテンツでメディア帝国を築きたいわけではなく、顧客が望み通りに使えるコンテンツを作れるようにしたいのだという。同氏はこれを「ShopifyでありAmazon(アマゾン)ではない」と表現した。

「次のESPNを作ろうとしているのではなく、我々のテクノロジーを通じてクラブがこれまでのしがらみから解放されるようにサポートしているのです。クラブが試合やプレイを今ここにいるオーディエンスのために録画して配信できるようにしたいと思っています」(タイスベック氏)。

同氏は勝機をこのように見ているのかもしれないが、すでにもっと大きな成功を思い描いている投資家もいる。

Courtside VCのパートナーであるVasu Kulkarni(バス・クルカルニ)氏は、コスト効率の良い方法でスポーツを記録し解析するスマートなテクノロジーを開発するVeoのような企業を支援したいと述べている。Courtside VCは(その名が示すように)さまざまなスポーツ関連企業の支援に力を入れており、スポーツ情報サイトのThe Athletic、Microsoft(マイクロソフト)に買収されたゲームストリーミングサービスのBeamなど多くの企業に投資している。

クルカルニ氏は、そのような会社を見つけるのに4年近くを費やしたという。

「ロングテールで記録されるスポーツコンテンツの価値をずっと信じてきました」と同氏は語る。たまたま同氏自身が学生時代にスポーツのトレーニングを追跡して記録するKrossoverという企業を立ち上げていた。Krossoverは最終的に、Veoの競合であるHudlに買収された(Hudlリリース)。

「NBAファイナルがVeoで録画されることはないでしょう。それはリスクが大きすぎます。しかしマスメディアが人を雇って制作しライブ配信するほどではない分野では、コンピュータビジョンとAIが低コストで録画や配信をすることになるでしょう」(クルカルニ氏)。

経済性が重要であるとクルカルニ氏はいう。カメラは1000ドル(約10万4000円)未満で、「保護者がBest Buyで100ドル(約1万400円)で買ったビデオカメラ」よりも明らかに良いものが制作できなくてはならない。

クルカルニ氏は、長期的にはクラブがコンテンツをもっと幅広いオーディエンスに届けるにはどうすればいいかを検討するタイミングが間違いなくあるだろうと考えている。特にハイライトの活用やアマチュアのベストゲームのコンテンツで、そこに映っているプレイヤーの誰かが世界中に知られる一流アスリートになる前のものだ。学生時代のMichael Jordan(マイケル・ジョーダン)のプレイを見られたらどれほど興奮するか考えてみよう。同氏は「AIによってベストプレイを10〜15個を選んでつなぎ合わせ、ハイライト動画を作ることをができるだろう」という。そのようなハイライト動画は、選手の保護者にとどまらずもっと幅広いスポーツファンの市場を発見することにつながるかもしれない。

スポーツをもっと見たいと感じる人々の市場が大きくなって、このようなコンテンツが市場に提供されるようになるだろう。家で過ごしながらビデオを見る時間が増えて、オーディエンスは増える傾向にある。タイスベック氏は「スポーツを記録したビデオが増えれば、スポーツはプレイヤーにとってもファンにとってもより良いものになる」と述べた。

関連記事:サッカーの試合をAIカメラで全場面録画するVeoが米進出を狙う

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Veo資金調達スポーツコンピュータビジョン

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(翻訳:Kaori Koyama)

インターセクショナルなフレームワークを適応してAIを開発しよう

著者紹介:Kendra Gaunt(ケンドラ・ゴーント)氏は、LGBTQの若者の自殺防止と危機介入に取り組む世界最大の団体The Trevor Project(トレバー・プロジェクト)のデータ・AIプロダクト担当者。2019年のGoogle AI Impact Challengeで助成対象団体に選ばれたトレバー・プロジェクトは現在、サポートの提供範囲を広げてさらに多くの若者の命を救うために、新しいAIアプリケーションの導入を進めている。

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今や、テック業界で働く人の大部分は、我々の中に存在する潜在的な偏見がAIアプリケーションにも反映されてしまうことを理解している。AIアプリケーションは現在、日常生活を本質的に変えることができるだけでなく、人間の意思決定に影響を及ぼすことさえも可能なほどに高度な機能を有するようになっている。

AIシステムの普及と高性能化が進めば進むほど、テック業界は「不公平な偏見を示すAIモデルや機械学習(ML)モデルの使用を回避するには何をすべきか」という問題への取り組みを急がなければならない。

AIから受ける影響やAIとの関わり合い方は、個人が持つ複合的なアイデンティティーに左右されるため、各人各様である。このことを踏まえたうえで、インターセクショナルな枠組みを適用して万人に役立つAIを開発するには、どうすればよいのだろうか。

インターセクショナリティの意味と重要性

この難題に取り組むには、まず立ち止まって「インターセクショナリティ」の意味を定義することが重要だ。インターセクショナリティとは、Kimberlé Crenshaw(キンバリー・クレンショー)によって定義された用語で、人間は特有のアイデンティティーを複数持っており、それが組み合わさることによってどのような経験が生み出されるのか、また、その人に対する世間の見方がどのように形成されるのかを、深く理解するための枠組みである。

これには、個人特有のアイデンティティーに関連して発生する差別や特権も含まれる。多くの人は複数の周縁的アイデンティティーを有しており、それらが組み合わさることによって複合的な効果が生まれることを、我々はよく知っている。

The Trevor Project(トレバー・プロジェクト)は、LGBTQの若者の自殺防止と危機介入に取り組む世界最大の団体である。当団体は、助けを必要とするLGBTQの若者ひとりひとりをサポートすることを目指しており、トランスジェンダーやノンバイナリ―であることに加えて黒人、少数部族、有色人種などのアイデンティティーを持つ人々が、特有のストレスや問題に晒されている実情を目にしている。

そのため、当団体の技術チームが、この多様性に富むコミュニティでの使用を目的としたAI(具体的には、自殺リスクの判定精度を高めて常に効果的なサポートを提供するためのAI)の開発に着手する際、我々は、文化的な特性への理解が欠如しているせいでメンタルヘルス面でのサポートが受けにくくなるという現状をさらに悪化させたり、提出された連絡先情報だけでジェンダーを判別するという不公平な偏見をさらに助長したりすることのないよう、十分に注意する必要があった。

当団体がサポートを提供しているコミュニティは特に多様性に富んでいるとはいえ、潜在的な偏見というのはどんなコンテキストにおいても存在し、どの特性に属する人でも傷つける場合がある。だからこそ、どの技術チームも、公平でインターセクショナルなAIモデルを開発できるはずであり、そうすべきである。なぜなら、インターセクショナリティこそ、多様性を尊重するコミュニティを育て、どんな背景を持つ人にも対応できるツールを開発するための鍵だからだ。

そのためにはまず、開発するモデルを使用する人が持つ特性をできるだけ多く特定することが必要だ。加えて、それらの特性の交差部分に属するグループを判別する必要がある。誰がどんな理由でそのモデルを使用するのかを明確に定義することが第1段階である。誰がどんな問題で困っているのかが理解できれば、解決策を特定できるからだ。次に、各ユーザーがそのモデルを使用する状況を、最初から最後まで具体的にシミュレートしてみることだ。そうすれば、どの団体、スタートアップ、企業も、トレーニングからフィードバックまで、AI開発の各段階にインターセクショナリティを組み込むためにどんな戦略を実践すべきかが見えてくるだろう。

データセットとトレーニング

AIモデルの質は、トレーニングに使われるデータによって決まる。しかし、収集されたデータの内容、測定、アノテーション(タグ付け)はどれも、本質的に人間による意思決定に基づいているため、トレーニング用のデータセットに潜在的な偏見が含まれてしまう場合がある。例えば、2019年に行われた研究では、患者のニーズを判断するためのデータセットに欠陥があり、そのデータセットでトレーニングされた医療リスクの予測アルゴリズムが人種偏見を示したため、本来は治療対象となるはずの黒人患者のリスク度が白人患者よりも低いと判断され、その黒人患者が高リスク患者向けの治療を要する患者であると判定される確率が低くなってしまった例が報告されている。

公平なシステムを構築するには、そのモデルを使う人たちの特性を反映したデータセットを使ってトレーニングを行う必要がある。言い換えれば、データに十分反映されていない可能性があるのはどんな人たちなのかを見きわめるということだ。しかし、ここでさらに「周縁的な特性を持つ人に関するデータが全体的に不足している」という、もっと全般的な問題についても論じなければならない。これはシステム上の問題として対処すべきものである。なぜなら、データが希薄だと、システムが公平であるかどうかという点も、被差別グループのニーズが満たされているかどうかという点も、判断が難しくなるためだ。

自分の組織や会社で使用するトレーニングデータの質を分析するにはまず、データの量とソースについて検討して、どんな偏見、偏向、誤りが含まれているのかを特定し、データの質を改善する方法を見つける必要がある。

データセットに偏見が含まれている場合、その組織が「インターセクショナル」として定義する特定のデータを増幅させたり増加させたりすることによって、問題を解決できる場合もある。早い段階でこの措置を講じておけば、モデルのトレーニング関数に反映させることができ、システムの客観性を最大限に確保するのに役立つ。さもなければ、知らないうちにトレーニング関数が関連性の低い結果を算出するよう最適化されていた、というような事態になりかねない。

トレバー・プロジェクトの場合、他の層に比べてメンタルヘルスサービスを利用するのが困難な層や、他のグループよりもデータサンプルが少ない層から発せられるシグナルを増幅させる必要があるかもしれない。非常に重要なこの措置を講じなければ、当団体が開発するAIシステムのユーザーにとってはあまり役に立たない結果が算出されてしまうだろう。

評価

AIモデルの評価は継続的なプロセスであり、変化し続ける環境に組織が対応していくのを助けるものだ。公平性の評価はかつて、人種だけ、ジェンダーだけ、民族性だけ、というように、どれか1つの特性に関する公平性を調べるものだった。しかし、これからのテック業界は、複数の特性の組み合わせに基づいて分けたグループをどのように比較すれば、すべての特性に対する公平性を評価できるのか、その方法を考案しなければならない。

公平性を測定するにはまず、不利な立場に置かれる可能性のあるインターセクショナル集団と、有利な立場を得る可能性のあるインターセクショナル集団とを定義し、次いで、特定のメトリクス(例えば偽陰性率など)が両者の間で異なるかどうかを調べる。そして、そのメトリクスが両者の間で異なることが何を意味するのか、どのグループがシステムの中で差別されているのかをさらに調査する別の方法はないか、そのグループが差別されている理由は何か、といった点を開発段階で検討する必要がある。

公平性を確保し、不公平や偏見を軽減させるには、初めからそのモデルのユーザー層に基づいて開発し、モニタリングするのが最善の方法である。モデルの評価結果が出たら、次はそれに基づいて、統計上の被差別グループを意図的に優遇し、不公平な偏見が最少化されるようにモデルをトレーニングしてみることだ。アルゴリズムの公平性は社会的な状況の変化によって低下する可能性があるため、公平性を確保する設計を開発初期から組み込むことが、あらゆる層の人を公平に扱うモデルの構築につながる。

フィードバックとコラボレーション

AI製品の開発とレビューを行う際には、多様性に富む人々、つまりアイデンティティーだけでなく、所持スキル、製品の使用頻度、経験年数などの点でも異なる背景を持つ人々に参加してもらう必要がある。また、ステークホルダーと、問題や偏見を特定するシステムによって影響を受ける人たちの意見も聞く必要がある。

解決策のブレインストーミングにはエンジニアの力を借りよう。トレバー・プロジェクトでは、インターセクショナル集団を定義する際、当団体の危機介入プログラムに直接関与しているチームと、そのチームの成果を活用している人たち(研究チーム、危機サービスチーム、技術チームなど)と協力した。その後、システムの利用開始と同時に、ステークホルダーと、システムと実際にやり取りするユーザーからフィードバックを集めた。

結局のところ、インターセクショナルなAIを開発するために「これさえやっておけばいい」という画一的なアプローチ方法は存在しない。トレバー・プロジェクトでは、当団体の業務、現時点での知識、サポートを提供する特定のコミュニティを念頭に置いて開発方法を考案した。当団体は、モデルを一度作ったらそれで終わり、というアプローチではなく、知識の増加にともなって進化を続けていくアプローチを取っている。他の企業や組織は別のアプローチでインターセクショナルなAIを構築するかもしれないが、当団体には、より公平なAIシステムを構築すべき道義的責任がある。なぜなら、当団体が開発するAIは、社会に存在する不公平な偏見を強調する(最悪の場合は増幅させる)力を持っているからだ。

AIシステムが使用される事例やコミュニティにもよるが、特定の偏見が増幅されると、すでに差別的な扱いを受けている人々にさらなる悪影響が及ぶ可能性がある。同時に、インターセクショナルな枠組みに従って開発されたAIは、あらゆる人の生活の質を向上させる力を持つ。トレバー・プロジェクトは、テック業界の技術チーム、各分野の専門家、意思決定者が、業界全体の変化を促す指針を策定することについて真剣に考え、サポート対象のコミュニティの特性を確実に反映したAIモデルの開発を目指すことを強く願っている。

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(翻訳:Dragonfly)