日立ソリューションズ、熟練面談者のノウハウをノンコーディングでAIモデル化できる「面談支援AIサービス」開始

日立ソリューションズ、熟練面談者のノウハウをノンコーディングでAIモデル化する「面談支援AIサービス」を1月5日開始

日立ソリューションズは、熟練面談者のノウハウをノンコーディングでAIモデル化し、面談の課題解決支援に利用できる「面談支援AIサービス」を2022年1月5日から開始する。これは、スマートフォンやPCのブラウザー上において、熟練面談者のノウハウを学習したAIモデルが、面談を受ける被面談者の受け答えから表情や言葉を分析し、特性の評価予測が行えるというもの。

企業における面談には、採用面談のほかにも、事業の効率化を進めるために従業員に対して定期的に行うものもある。特に「ジョブ型人材マネージメント」では、人材の有効活用のために質の高い面談がさらに重要になってくる。しかし、面談者の経験や好みによって評価にばらつきが出たり、熟練面談者の都合がつかず、経験の浅い面談者が対応しなければならなかったり、面談者と被面談者とのスケジュールが折り合わないなど、様々な課題がある。

そこで日立ソリューションズでは、評価したい指標と、被面談者に対する熟練面談者の評価結果を学習させたAIモデルを作成可能となる「面談支援AIサービス」を開発した。これを使うことで、経験の浅い面談者でも熟練者に近い対応ができるようになるほか、被面談者の評価が定量化できるという。また、面談者が立ち会わない、アバターを使った「セルフ面談」も可能になる。日立ソリューションズは、製造や建設分野などの無期雇用派遣事業を展開するUTグループと概念検証(PoC)を行ったところ、「AIモデルの予測が熟練面談者の評価と比較しても大差なく、実用可能であることを確認」できたとのことだ。

「面談支援AIサービス」の特徴は次のとおり。

  • 定量的で高水準な評価支援:熟練面談者と同等の評価を行うAIモデルの評価予測を、面談者が参考にすることで、キャリア面談などの効率的な実施を支援
  • ノンコーディングでAIモデルを作成
    評価したい指標と、被面談者に対する熟練面談者の評価結果を学習させるだけで、効率的にAIモデルが作成できる。評価したい指標は、企業や組織、業務ごとに設定可能
  • AI育成による継続的な精度向上:AIモデルが熟練面談者の評価結果と異なる結果を出した場合は、業務のプロフェッショナルである熟練面談者が評価結果の違いをAIモデルにフィードバックすることによって、評価の精度を継続的に向上させることが可能(この機能は2022年春に導入予定)
  • 面談者の育成:経験の浅い面談者は、熟練面談者のノウハウを学習したAIモデルのスキル評価結果を活用することで、あたかも熟練面談者が寄り添うように面談を行うことができ、判断基準を学ぶことで、スキルアップを図れるという

これは、月額式のクラウドサービス。月額料金は、月あたり200回や1000回など、面談回数や用途・規模に応じて個別に見積もられる。また、画面カスタマイズ、API連携、動画の特徴量分析なども個別に対応可能とのことだ。

【コラム】テック企業は採用の場で恵まれた学生が持つ魅力とその潜在能力を混同するのをやめるべきだ

大学に通う低所得の学生の数は増加している。Pew(ピュー)研究所からの2016年のレポートによれば、低所得の家庭出身の各部学生が占める割合は、1996年の12%から2016年には20%に増加している。ただし、6年以内に学位を取得できるのは、収入が上位4分の1の学生の場合は58%に達しているのに対し、下位4分の1の学生の場合はわずか11%にとどまっている。

この不一致に対して思いを馳せる必要がある。なぜ低所得層の学生の多くが大学に進学しても学位を取得できず、労働力としての潜在能力を十分に発揮できないのだろうか?この疑問への手短な回答は、個別のターゲットを絞り込んだサポートとリソースの不足である。そして、特にテクノロジーの分野では、このようなサポートの欠如が存在する原因は、採用のエコシステムが、学生や将来の従業員候補者に対して、ある種の「特典」や豊かさを持っていることを仮定している問題ある構造になっているからなのだ。

こうした仮定(無意識的であるか否かに関わらず)は、門戸を開いてくれるはずの教育やキャリアの機会から、低所得の学生を間違ってそして一貫して排除してしまい、結果的にテック業界が重要で実りある人材プールにアクセスできない状況を続けさせている。

こうした技術系の教育からキャリアへのパイプラインが、学位を取得して私たちの経済の中で最も給料の高いセクター(この部分についてはここでは触れない)の1つに入ろうとしている低所得の学生を、途中で挫折へ追い込んでいるのは明らかだ。社会経済的地位は「多様性」の議論の一部でなければならないが、それは過小報告され、十分に議論されていない。

「特典」の産物と潜在能力を混同するとはどういう意味だろうか?

多くの業界と同様に、技術者の採用(インターンシップからフルタイムの仕事に至る)は卒業のかなり前の段階で行われる。この採用構造は、実際の才能や潜在能力よりも、環境的に恵まれていることとリンクしがちな特徴を過大評価し採用する傾向がある。しかし潜在能力が高いにも関わらず低所得の学生は、この採用構造が求める「理想的な候補者」の型には適合しないことがよくある。それはどのように発生し、どうすればそれを止めることができるのだろう?

たとえば採用担当マネージャーにテクノロジー業界で成功するために必要なスキルを尋ねてみよう。彼らは以下のような新しい候補者を探していると口にするかもしれない。

  • 優れた問題解決能力を持っている
  • 時間管理スキルを持つことが示されている
  • 勤勉である
  • トリッキーな問題に対して弾力的に粘ることができる
  • 適応性がある

こうしたスキルは、たくさんの異なる経験から得られる。例えば技術系学位を目指しつつフルタイムまたはパートタイムの仕事をしている学生は、強い労働倫理、時間管理能力、そして弾力性を身につける。また家族の知識や社会的ネットワークに頼ることなく、大学での経験を自力で切り開いている移民二世の学生は、優れた問題解決能力を身につけている可能性が高い。主観的ではあるが、これらはテクノロジー業界で成功するための非常に貴重なスキルである。

しかし、採用活動では、こうした実証されたスキルが実際に考慮されることはほとんどなく、次のような基準によって不平等の影が落とされているのだ。

  • 一流大学への進学へつながる、恵まれた環境にある高校における経験(テストの準備、質の高いアドバイス、高レベルの数学コースへのアクセスを含む)とそれに付随する多くの機会と支援
  • 大学のクラブやネットワークに参加したり、ハッカソンに参加したり、週末や夕方に会議やネットワークイベントに参加したりするための資金と時間(すなわち、自活のために働く必要がない、またはより少ない時間の労働で済ますことができる)
  • 面接のために旅行を実行したり、インターンシップのために転居したりするために必要な現金や知識
  • 高価なテスト準備コースへのアクセス、大学入学前の高度な数学の準備、そして何よりも、自分自身と家族を養うために働く必要がない人に与えられた勉強だけに集中できる自由などの恵まれた環境によって、大きく影響されるテストの点数、GPA、その他の定量的な指標
  • 社会経済的地位だけでなく、上記の多くの要因に基づいた受賞や表彰歴

先のスキルセット(問題解決、時間管理、回復力etc……)とは異なり、これらの基準は採用活動の世界では「潜在能力」のマーカーと見なされている。しかし、これらのマーカーを取得するには、多くの学生が利用できないある程度の特典と豊かさが必要なのだ。こうした経験はいずれも時間とエネルギーを必要とするため、家族の世話をしたり、学費を払うために働いたり、その他学校以外での重要な責任を果たさなければならない人間にとっては得ることが難しい。これらの経験の多くは個別に支出を必要とするし、またこれらの経験のほとんどは、課外ネットワーク、事前知識、準備を行うことができる恵まれた環境を必要とする。

だがこれは、企業にとって大きな機会損失であり、悲惨な結果がもたらされているのだ。テクノロジー業界は、イベントへの参加、受賞歴、そして通った学校という特性を、業界で実際に成功するための能力から切り離さなければならない。それらは同じものではないからだ。このまま恵まれた環境の産物と潜在能力を混同し続けると、実際に潜在能力の高い学生のコミュニティにアクセスできなくなり、人材不足が続き、技術セクターの多様性が低下する。

では、どうすればよいだろうか?

低所得の学生がその技術の旅全体を通して個別にサポートされるようにするためには、技術コースをどのように修正していけば良いのだろうか?

低所得の採用候補者の競争の場を平準化する

大学生の半数以上が住宅不安を経験していることを口にしている。率直な話、家賃を払えなければコンピュータサイエンスの試験で優をとるのは難しく、高速のインターネット接続がなければ課題を完了するのはほぼ不可能だ。

こうした積年の障壁に対処するには、それらをまず理解してから、解決するためのリソースに投資する必要がある。

まず、低所得のバックグラウンドを持つ学生のために、こうしたギャップを埋めるために働く組織を支援し投資する。次に、すべての新規採用者のための公平な競争条件を整える。テック企業の意思決定者または人事担当者である場合は、すべてのインターンと新規採用者に対して転居と採用のための移動費用を支援する。

学生がこれらの費用を前もってまかなうためのクレジットや家族の支援を持っていると仮定して、支給まで数週間待つべきではない。これを解決することで、候補者はベストな状態で訪問することができる。

多様性に投資するために大学生に投資する

テック業界はテクノロジーパイプラインの開始部分に投資する傾向がある。その結果、企業がK-12(幼稚園から高校まで)プログラムに慈善基金の66%を集中させているのに対し、大学レベルのプログラムに投下されているのはわずか3%である

K-12への投資は重要だが、必要な人材を生み出すには、高等教育レベルでのフォローも必要だ。私たちは、学生が学位を取得できるように支援する必要がある(そうするための過程全般を通してサポートを行う)。これによって、技術革新に貢献する準備ができた技術者と、私たち全員に利便性をもたらすより多様なマインドの形でリターンが得られるのだ。

これは実際にはどういう形をとるのだろう?1つの例を次に示そう。現在まだ学部4年生の新入社員を雇用する場合は、その春学期の間支援を行うのだ。つまり将来の従業員に投資するということだ。最終的な高レベルのクラスに集中するための余裕を提供することで、最後の数カ月の重要な時期に授業料、家賃、その他の費用を支払うことを心配するのではなく、仕事へとより良く備えることができるようになる。

コンピューティングの学位を取得して卒業する現在の学生の人口、およびテクノロジーセクター全体は、人種や性別だけでなく、社会経済的地位の観点からも、私たちの多様な社会を反映していないそしてそれは、テクノロジー業界が恵まれた環境により産まれたものと潜在能力を混同し続けているからなのだ。

その結果、重要なテクノロジーを生み出す役目を負いながら、決してすべての人に平等に役立つとは限らない、多様性に欠けたテクノロジーセクターが生まれるのだ。技術パイプライン全体を通じて低所得の学生を個別にサポートし投資していこう。

編集部注:執筆者のDwana Franklin-Davis(ドワナ・フランクリン=デイビス)氏は生涯現役の技術者だ、現在Reboot Representation(リブート・レプリゼンテーション)のCEOを務めている。同組織は、慈善活動のリソースをプールして、2025年までにコンピューティングの学位を取得する黒人、ラテン系、ネイティブアメリカンの女性の数を2倍にすることを目指しているテクノロジー企業の連合体である。もう1人の執筆者のRuthe Farmer(ルース・ファーマー)氏は、Last Mile Education Fund(ラスト・マイル・エデュケーション・ファンド)の創業者でCEOであり、テクノロジーとエンジニアリングにおける公平性とインクルージョンの世界的な擁護者であり伝道者である。

画像クレジット:PM Images / Getty Images

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(文: Dwana Franklin-Davis、Ruthe Farmer、翻訳:sako)

履歴書や面接ではわからない候補者の潜在的な強みや弱みがわかるSearchlightの人材採用ツール

学歴や職歴は、山積みになっている他の履歴書と同じようなものかもしれない。だが、Searchlight(サーチライト)という会社は、企業が個人のソフトスキルを測定する方法を改善することで、差別化要因を提供するだけでなく、その人が最終的に組織にどれだけ適合するかを示せるようにすることも目指している。

Kerry Wang(ケリー・ワン)氏と彼女の双子の姉妹であるAnna Wang(アンナ・ワン)氏は、同じ仕事に応募する際に自分たちを差別化しようとして、この問題に直面した。面接の過程では、自分たちがどう違うのかを十分にアピールする時間がないと感じることが多かったと、ケリー・ワン氏はTechCrunchに語った。

「企業が採用した全人材の半数近くが18カ月以内に辞めてしまうことからも、私たちを同一人物と決めつける現在の人材ソフトウェアを変えたいと思いつきました」と、ケリー・ワン氏はいう。「今、この『大退職時代』を考えると、人材獲得競争に勝つためには、早く採用するだけではなく、うまく採用しなければなりません。人材の質を測る方法に食い違いがある場合、これは難しくなります」。

彼女たちは2018年にSearchlightを起ち上げ、行動参照データとプリスクリプティブ分析を用いて、履歴書や面接時には現れない、候補者の潜在的な強みや弱みを、雇用者が360度見渡せるようにする技術を開発した。

Searchlightの新機能をベータ版として使用した企業は、過去12カ月間に数千人の候補者を採用しており、多くの場合、プロセスが迅速化され、偏りが少なく、定着率が向上したと、ワン氏は述べている。実際、ユーザー企業では、他の方法で採用した場合と比べて、定着率が45%向上し、採用までの時間が40%短縮され、採用した社員は平均で72%長く在籍しているという。

米国時間12月20日、SearchlightはシリーズAとして1700万ドル(約19億3000万円)の資金調達を発表した。同社はこの資金を活用し、提供するサービスを拡大していく。その中には、ワンクリックで作成できる推薦状、15分以内にできる候補者評価、今後の採用を改善するための可視性を高める採用品質ダッシュボード、採用前に収集した行動データを従業員の成果に結びつけることで、採用のベストプラクティスを示し、優秀者のプロファイルを強調する「ピープルサイエンスエンジン」などがある。

今回の資金調達は、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)が主導し、Accel(アクセル)、Shasta(シャスタ)、Kapor Capital(ケイパー・キャピタル)、Operator Collective(オペレーター・コレクティブ)の他、Coda(コーダ)、Confluent(コンフルエント)、Plaid(プレイド)などの企業の幹部を含むエンジェル投資家グループが参加した。これにより、同社が今まで調達した資金は、2019年に実施した250万ドル(約2億8000万円)のシードラウンドも含め、総額2000万ドル(約22億7000万円)となった。

人材にはさまざまな形や大きさがある。Searchlightはそのアプローチが、ベンチャーキャピタルに支援された最新の企業だ。他にも、最近資金調達を発表したリクルートテクノロジー企業には、フラクショナルワーカー(フルタイムではない人材)のマーケットプレイスであるContinuum(コンティニュアム)、Sense(センス)、Karat(カラット)などがある。

Searchlightによる行動データの収集(画像クレジット:Searchlight)

Searchlightの独自性として、ワン氏は、ユーザーに提供されるデータやインサイトのレベルが高く、より優れたレコメンデーションが可能であることを挙げている。また、同社は企業が候補者に求めるべき特性を示すこともでき、さらに企業が労働力の構成について抱いている仮定を否定することさえできるという。

「何が成功につながるかを認識する必要があるのですが、それは通常、直感に頼ることが多いものです」と、ワン氏は付け加えた。「当社ではソフトスキルに基づいて、定着率を高めることにつながる成功プロファイルを作成します」。

同社は現在、Udemy(ユーデミー)、Talkdesk(トークデスク)、Zapier(ザピアー)など100社以上の企業と取引しており、従業員は2020年の4人から15人に増えた。顧客数もこの1年で3倍以上に増えている。ワン氏によれば、多くの顧客はSearchlightを使用した後、この製品への投資を倍増させているという。

今回の資金調達により、Searchlightは、2022年に向けてチーム規模を2倍にするための追加雇用や、製品開発およびGo-to-Market戦略への投資が可能になる。

今回の投資の一環として、Founders FundのジェネラルパートナーであるKeith Rabois(キース・ラボイス)氏がSearchlightの取締役に就任した。

ラボイス氏は、テクノロジー企業の設立、資金調達、経営に携わってきた20年のキャリアの中で、共通していたのは優れた人材の必要性であると述べ「あなたが作るチームが、あなたが作る会社である」と語っている。

「Searchlightに共感しました」と、ラボイス氏は付け加えた。「私はこれまで15以上の役員を務めてきましたが、どの会社でも人材の定着と、定着率を高めるために何をすべきかについて話し合っています。常に人材を入れ替えていては、良い会社は作れません。私は常に自分自身を向上させたいと考えていましたし、自分が向上するためのデータやツールを持っています。Searchlightは、そのような採用の判断をするための最高のデータを提供しています」。

画像クレジット:Searchlight / Searchlight co-founders Kerry Wang and Anna Wang

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

リモートでのエンジニア発掘、採用、管理を支援するTuringが約98億円調達、転勤望まぬエンジニアからの需要急増

コーンフェリーの調査によると、テクノロジー業界のエンジニア人材を巡っては需要が供給を上回る深刻な状況が続き、2030年までに乖離は広がり、8500万件のポジションが埋まらない見通しだ。より包括的かつグローバルなアプローチで人材を発掘、採用、管理することでこの流れを食い止めることができると考えるスタートアップが、自社のプラットフォームの構築を継続するため、大規模な資金調達を米国時間12月20日に発表した。

AIを使ってエンジニアの発掘、評価、採用、入社、リモートでの管理(人事やコンプライアンスの面も含む)を「タレントクラウド」という大きなプラットフォームで行うTuring(チューリング)が、シリーズDラウンドで8700万ドル(約98億円)を調達した。このラウンドで11億ドル(約1250億円)のバリュエーションがついた。WestBridge Capitalがこのラウンドをリードし、前回の出資者であるFoundation Capital、新規投資家のStepStone Group、AltaIR Capital、戦略的投資家のHR Tech Investments LLC(Indeedの関連会社)、Brainstorm Ventures, Frontier Ventures, Modern Venture Partners, Plug and Play Scale Fundも参加した。このラウンドは応募超過となったため、同社はバリュエーション40億ドル(4520億円)でSAFEノートも募集した。こちらも応募超過となった。

今回の資金調達の背景には、Turingの力強い成長がある。世界各地にいる、転勤ができない、あるいは転勤を望まないエンジニアからの需要が急増したのだ。創業者でCEOのJonathan Siddharth(ジョナサン・シッダールト)氏はインタビューで、候補者総数が2020年1年間で9倍に増え、140カ国、100万人のエンジニアや開発者が、プロジェクトを探しているか、すでにプロジェクトに携わっていると話した。(2020年、同社が3200万ドル[約36億円]の資金調達を発表したとき、このプラットフォームには18万人の開発者がいるとのことだった)。現在、約100のテクノロジーと15の職種をカバーしており、エントリーレベルからエンジニアリング・ディレクター、CTO候補まで、幅広い職種をカバーしているとシッダールト氏はいう。

関連記事:エンジニアをリモートで調達・管理するAIベースのプラットフォーム開発のTuringが約33億円調達

人気の職種は、フルスタックエンジニア、フロントエンドやバックエンドの言語を専門とするエンジニア、そしてサイトの信頼性を高めるエンジニアだ。近い将来、Turingはプロジェクト管理などの隣接分野にも進出し、新製品への道を開く予定だ。企業がTuringを使って個々人をチームとして管理するのではなく、チーム全体を管理できるような製品だ。

このプラットフォームに対する需要も拡大している。顧客はテクノロジー企業から、ビジネスのさまざまな側面の運営や構築を支援するエンジニアを必要とする非テクノロジー企業まで、多岐にわたっており、Johnson & Johnson、Coinbase、Rivian、Dell、Disney、Plume、VillageMDなどが含まれる。

「私たちは今、リモートファーストの世界に生きており、誰もがその価値を享受しようと競っています」とシッダールト氏は話す。

Turingは、採用とリモートワークに関するいくつかの基本的な前提に基づいて設立された。その前提は現在の市場環境で受け入れられ、新型コロナウイルス感染症がおそらく恒久的に位置づけを変え、姿を変えた。パンデミック以前も、リモートワークが受け入れられることもあったが、多くの場合、企業は実際にインフラを整え、人々がオフィス環境で一緒に働けるようにするだけでなく、できるだけ多くの時間を過ごすよう奨励した。そのために、無料でおいしい食事、ビリヤード台やその他の娯楽、一眠りしたいときの仮眠室さえ用意した。

こうしたことは、オフィスカルチャーに関する凝り固まった考え方の中で広がっただけでなく、募集や採用にも影響を与えた。仕事のためには引っ越すものであったし、会社と従業員は大がかりなビザの手続きを経なければならなかった。しかも、ベイエリアのような特定のハイテク拠点への転居を求められることが多かった。これは、地域のインフラや家賃、市や町の大きな社会構成に大きな負担をかけることを意味した。

新型コロナがゲームを完全に変えた今、私たちはみな、仕事をするために、しかも仕事を首尾よく進めるために、そうしたことが本当に必要だったのかどうかを自問している。

Turingは、そのような問いかけに事実上、響き渡る声で「ノー」と答えるプラットフォームだ。

「Twitter、LinkedIn、Siemensはリモート化を進めており、その理由は明白です」とシッダールト氏は話す(いずれもTuringの顧客ではなく、リモート化を進める企業の例だ)。「今やエンジニアのプールを利用することができます。賢い人々は他の人がいないところに目を向けています。また、分散型チームの成功も証明されています」。

しかし、リモートマネジメントが簡単だというわけではない。エンジニアのパイプラインを構築し、彼らを評価する方法を考え、彼らと連絡を取り続ける必要がある。そのため、Turingが構築されたのは、発掘のためだけではなく、その他のハードスキルやソフトスキル支援のためでもある。シッダールト氏によると、ほとんどの人は有期のプロジェクトで登録するが、中には組織内のもっと長期的な、さらには正社員のポジションで働く人もいる。このような人材不足の問題に取り組んでいるのは、Turingだけではない。

Fiverr、Upwork、LinkedIn、その他多数のプラットフォームで、エンジニアがどこにいても簡単に探し出すことができる。Turingが構築したプラットフォームは、エンジニアと関わる際に生じる、より特殊なエンド・ツー・エンドのニーズに対応する(この点では、先にデザイナーやクリエイターの採用・管理プラットフォームで資金調達を行ったSupersideと少し似ている)。

StepStone GroupのパートナーJohn Avirett(ジョン・アビレット)氏は「世界中の開発者にすばらしい機会を提供するというTuringの野心的なビジョンは刺激的です」と声明で述べた。「『インテリジェント・タレント・クラウド』は、アクセスを民主化し、契約を結ぶ以上の永続的なつながりを作る驚くべき方法です。彼らは、そのプロセスを、個人と採用する企業のための長期的なキャリアプランにまで洗練させました」。

「Turingは、巨大な業界のあらゆる『脚』を製品化しており、その顔と認識を将来にわたって恒久的に変えました」とFoundation CapitalのAshu Garg(アシュ・ガルグ)氏は付け加えた。

画像クレジット:Busakorn Pongparnit / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

スカウト受領でトークンがもらえる、Web3エンジニア向け採用サービスGuildersが事前登録を受付開始

スカウト受領でトークンがもらえる、Web3エンジニア向け採用サービスGuildersが事前登録受付開始エンジニア特化型人材サービスやシステム開発受託を行うBranding Engineerは、ブロックチェーン、暗号資産といったWeb 3.0(Web3)に関するプロダクトの開発に携わるエンジニア向けの採用プラットフォーム「Guilders(α版)」の事前登録受付を開始すると発表した。サービス自体にもブロックチェーンやNFTの技術を活用するという。同社は2013年10月に設立し、2020年7月にマザーズに上場している。

採用コストが高いブロックチェーン業界エンジニア

スカウト受領でトークンがもらえる、Web3エンジニア向け採用サービスGuildersが事前登録受付開始ブロックチェーン関連のニュースは今も非常に多く、プロジェクトも新設され続け、Web3エンジニアへの需要は高まっている。しかし、プロジェクトの多さやエンジニアのスキル判断者不足から、Web3のプロダクト開発企業とエンジニア同士のマッチングには、工数がかかりがちだ。Guildersでは、求職者が職を探す、採用企業側が優秀なエンジニアを選ぶ、エンジニア同士のコミュニケーションが継続するという3フェーズに分けて、Web3エンジニアの採用を支える。

まず、求職者向けには、数あるプロジェクトの中でも、成長性の高いものや、著名VCから出資を受けているものなど、一定の信頼のおけるプロジェクトを中心に掲載することで、リサーチコストを削減することを目指す。

次に、採用企業側へは、エンジニアのスキルを可視化し採用工数を減らせるように、TOEICなど各種語学検定のような、エンジニアの検定・資格制度を導入していく予定であるという。現在、エンジニアの採用においては、開発チームが自らTwitterなどのSNS上で人材を探してくることが少なくない。さらに、経験年数よりもスキルが物を言う職種であるためプロフィールだけでは判断ができず、開発チームが自ら面談やコーディングテストを行い、本来の業務である開発の時間が奪われるという課題があった。採用・人事部門でもスキルチェックできるようになれば、既存の開発チームの負荷を減らすことができるという狙い。

プラットフォーム内でNFTを流通させコミュニティ化も

Guildersでは、これらのほかに、NFTによる資格証明書の発行や、エンジニアが同プラットフォーム上でスカウトを受けることで、独自トークンがもらえる仕組みを検討しているという。代表取締役の河端保志氏によれば「従来は、優秀な人ほどスカウトが過剰にくることを嫌ってサービスを積極的に利用せず、転職に困っている人ほどプロフィールの充実化を図る傾向がありました。これに対し、Guildersでは、優秀なエンジニアでもスカウトサービスを利用するモチベーションになるよう、エンジニアがスカウトを受けると、インセンティブとして独自トークンをもらえるように設計しようと考えております」とのこと。このほかに、プラットフォーム上でのトークンの流通、運営のDAO(自律分散型組織)化など、Web3に根ざしたコミュニティ化を進め、メタバース領域へも事業展開を考えているという。

同社初のグローバル展開へ

Branding Engineerはこれまで日本国内で事業展開をしてきたが、Guildersは日本国内に限らず、グローバルな展開を視野に入れているという。Web3のトレンドにあわせ、優秀なエンジニアと秀逸なプロダクトをマッチングするボーダレスな世界を生み出すことを見据えている。リモートワークによる就業機会の拡大をとらえ、既存のサービス利用者に対しても、新たな働き方の提供を目指す。

ブルーカラーに特化したHRテック企業のSenseにソフトバンク・ビジョン・ファンド2が出資

Sense(センス)は、世界最大級の人材派遣会社や人材紹介会社がタイムリーに人材を見つけて採用するための支援を行うHRテックのスタートアップ企業だ。同社が新たな資金調達ラウンドで評価額を5億ドル(約565億円)に拡大したと、関係者がTechCrunchに語った。

サンフランシスコに本社を置くこのスタートアップは、シリーズDの資金調達ラウンドで5000万ドル(約56億5000万円)を調達したという。SoftBank Vision Fund 2 (ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)が主導したこのラウンドは、創立から5年半の間にSenseが調達した資金の総額を9000万ドル(約101億7000万円)に押し上げた。シリーズCラウンドを終了してからわずか6カ月で、同社の評価額が何倍にもなったことがTechCrunchの取材で明らかになった。

Senseは、ブルーカラーの労働者の要求に応えることに注力し、企業が人材のライフサイクル全体を管理することを支援する。

ナレッジワーカー(知識労働者)の採用には半年もかかることがあるが「倉庫の梱包作業者を雇用するような世界では、企業はその日中にその人を入社させる必要に迫られています」と、Senseの共同設立者であり最高経営責任者であるAnil Dharni(アンリ・ダルニ)氏はTechCrunchによるインタビューで説明した。同氏は、評価額についてはコメントを避けた。

現在、プロフェッショナルソーシャルネットワークなどの採用プラットフォームの大半は、知識労働者向けに設計されていると、ダルニ氏はいう。「しかし、Uber(ウーバー)のドライバーやAmazon(アマゾン)の倉庫作業員のような人々に、そのようなプラットフォームは関係ありません」と同氏は述べ、課題を表現した。

人材の適格審査に、自動化や人工知能、パーソナライゼーションを活用しているというこのスタートアップ企業は、600以上の企業を顧客に持ち、Amazon、Sears(シアーズ)、Vaco(バコ)、Kenny(ケニー)などの企業が、Senseプラットフォームを使って採用規模を拡大しているという。

Senseの顧客は同社のプラットフォームを利用することで、選考できる候補者の数が平均で263%増加し、採用にかかる時間が最大で81%短縮されたと、Senseは社内数値を引用して述べている。

「今回の資金調達は、今日の売り手市場の世界で、パーソナライズされた人材エンゲージメントの必要性を検証するというだけでなく、私たちが将来の仕事の形を変える手助けをするために、当社のプラットフォームをグローバルに加速させるものです」と、ダルニ氏は述べている。

Senseは、チャットボットをはじめとするさまざまなサービスを提供しており、企業が雇用慣行からバイアスを取り除くのに役立っていると、ダルニ氏は語る。

ダルニ氏によれば、この1年半の間に、同社のプラットフォームは医療従事者の雇用にも利用されるようになっているという。

ダルニ氏は前職の会社で人材採用の課題に直面したことがきっかけで、Senseを起ち上げる着想を得たという。同氏は以前、ゲーム会社のFunzio(ファンジオ)を共同設立している。この会社はGREE(グリー)に2億1000万ドル(約238億円)で買収された。

「人材が企業を左右することを実感しました。適切な人々を集めることができなければ、その会社は成功しないでしょう。TAM(獲得可能な最大市場規模)やビジネスモデルがどうであるかは関係ありません」と、ダルニ氏は語った。

「このような認識のもと、私たちが次に起ち上げるスタートアップは、人材確保のためのソリューションを提供するものにしようと決めました」。

ダルニ氏によると、Senseは2000億ドル(約22兆6000億円)規模の機会を狙っているが、そのほとんどがまだ未開拓だという。

Senseは過去1年間で売上高と従業員数を2倍以上に増大させた。今後は、西ヨーロッパを含むいくつかの市場で事業を拡大していく計画であると、ダルニ氏は述べている。

SoftBank Investment Advisers(ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ)のマネージング・パートナーであるSumer Juneja(シュメール・ジュネジャ)氏は、声明の中で次のように述べている。「私たちは、顧客の企業が質の高い人材をより早く見つけて採用できるようにするために、Senseのプラットフォームが重要な役割を果たすことは明らかだと確信しています。それを国内およびグローバルに拡大していくとともに、企業がどうやって優れたチームを作り競争するかを、積極的に変革していく彼らの能力に疑いの余地はありません」。

画像クレジット:Sense

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ジョブシェアリングの人材をマッチングするマーケットプレイス「Roleshare」が約6300万円を調達

共同創業者、共同CEOのRoleshare – Dave Smallwood(ロールシェア・デイブ・スモールウッド)氏とソフィー・セターレ・スモールウッド)氏、CPOのPolly Howden(ポリー・ハウデン)氏、CTOのAhmad Mousavi(アフマド・ムーサビ)氏

現代の雇用動向や、パンデミックの影響もあり、従来のフルタイム雇用とフリーランスの間のギャップが大きくなっている。いわゆる「ジョブペアリング」は、フルタイムのポジションを2人で分割し、当事者のキャリアの継続性を犠牲にすることなく労働時間を短縮するというものだ。

Roleshare(ロールシェア)は、プロフェッショナル同士をマッチングする人材マーケットプレイスで、2人が1つのフルタイムの仕事に応募して共有することができる。Roleshareは、グローバルなロールシェアリング市場を構築するために、英国のスーパーエンジェル投資家を中心に55万ドル(約6300万円)以上のプレシード資金を調達しており、現在は「大規模な複数セクターの組織」との提携を開始することになった。

同社のアイデアは、企業が優秀な人材を維持すると同時に、新しい人材を獲得することができるというものだ。

Roleshareの共同創業者であり、共同CEOであるSophie Setareh Smallwood(ソフィー・セターレ・スモールウッド)氏は、電話で私にこう語ってくれた。「ジョブシェアリングは、以前から存在していました。女性が仕事に積極的に参加するようになった70年代に普及し始めました。民間企業ではこれまで、子育てとの両立など、限定的な目的で行われてきたことです」。

戦略的な役割を担う上級職は、実際には「パートタイムで働く」ことができないため、ジョブシェアリングが興味深い解決策になると彼女は話してくれた。

「しかし、簡単に解決できるものではありませんよね?2人の人間が一緒になって仕事の責任を分担するというのは、対人関係の要素がありますからね」。

Roleshareは、企業が自社の職務を「ジョブシェア」できるかどうかを調べ、候補者をマッチングすることで、これらを簡単に実現できるとしている。個人が自分の仕事を追加するのは無料(明らかに企業への「トロイの木馬」)だが、企業が追加するのは有料だ。つまり、一部の職務をジョブシェアにしようとしている企業にとって、人材の流動性を提供していることになる。

同社は、ワークライフバランスや仕事上のストレスを軽減することができるため、ジョブシェアをしている従業員はしていない従業員よりも30%生産性が高いという英国の研究結果を引用している。また、企業内の多様性やスキルを高め、ビジネスの継続性を高めることができるという。

「私たちのソリューションは、MIT Sloan Management Reviewで『第3の道』と評されました」とスモールウッド氏はメールで教えてくれた。

また「競合状況は幅広い(タレントマーケットプレイス / フレキシブルワーキング/ ナレッジワーカー+ギグエコノミー)」が「tandemploy(タンドゥエンプロイ)、duome(デュオーム)、jobpairingなどの一部のプレイヤーを除いて、直接的な競合企業はあまり多くありません」と付け加えた。

世界経済フォーラムによると、2027年には労働力の50%がフリーランスになると言われている。MIT Sloan Management Review/Deloitte(デロイト)の調査によると、経営者の約90%が外部の労働者を労働力の一部と考えているという。

また、セターレ・スモールウッド氏は「私たちをユニークにしているのは、私たちのチーム(元PayPal、Facebook、ebay)、そして私たちのストーリーです。Roleshareは、私が必要としていたときには存在していなかったので、それを構築するためにFacebookを辞めました。当社は、企業が社内外で特定の役割を担う人材をペアで調達できる唯一の人材マーケットプレイスであり、当社のプラットフォームは双方の人材をマッチングさせ、共同で応募して役割を共有します。また、人材が自分の既存の仕事をシェア可能な状態で掲載することで、ダイレクトソーシングの形をとることができるのもユニークな点です」。と付け加えた。

Roleshareは、Ian Hogarth(イアン・ホガース)氏、Azeem Azhar(アゼム・アジャール)氏、Gabbi Cahane(ギャビ・キャハーン)氏、Brendan Gill(ブレンダン・ギル)氏、Thish Nadessan(ティシュ・ナデサン)氏など、ヨーロッパの多くのエンジェル投資家が支援している。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ジョブシェアリングの人材をマッチングするマーケットプレイス「Roleshare」が約6300万円を調達

共同創業者、共同CEOのRoleshare – Dave Smallwood(ロールシェア・デイブ・スモールウッド)氏とソフィー・セターレ・スモールウッド)氏、CPOのPolly Howden(ポリー・ハウデン)氏、CTOのAhmad Mousavi(アフマド・ムーサビ)氏

現代の雇用動向や、パンデミックの影響もあり、従来のフルタイム雇用とフリーランスの間のギャップが大きくなっている。いわゆる「ジョブペアリング」は、フルタイムのポジションを2人で分割し、当事者のキャリアの継続性を犠牲にすることなく労働時間を短縮するというものだ。

Roleshare(ロールシェア)は、プロフェッショナル同士をマッチングする人材マーケットプレイスで、2人が1つのフルタイムの仕事に応募して共有することができる。Roleshareは、グローバルなロールシェアリング市場を構築するために、英国のスーパーエンジェル投資家を中心に55万ドル(約6300万円)以上のプレシード資金を調達しており、現在は「大規模な複数セクターの組織」との提携を開始することになった。

同社のアイデアは、企業が優秀な人材を維持すると同時に、新しい人材を獲得することができるというものだ。

Roleshareの共同創業者であり、共同CEOであるSophie Setareh Smallwood(ソフィー・セターレ・スモールウッド)氏は、電話で私にこう語ってくれた。「ジョブシェアリングは、以前から存在していました。女性が仕事に積極的に参加するようになった70年代に普及し始めました。民間企業ではこれまで、子育てとの両立など、限定的な目的で行われてきたことです」。

戦略的な役割を担う上級職は、実際には「パートタイムで働く」ことができないため、ジョブシェアリングが興味深い解決策になると彼女は話してくれた。

「しかし、簡単に解決できるものではありませんよね?2人の人間が一緒になって仕事の責任を分担するというのは、対人関係の要素がありますからね」。

Roleshareは、企業が自社の職務を「ジョブシェア」できるかどうかを調べ、候補者をマッチングすることで、これらを簡単に実現できるとしている。個人が自分の仕事を追加するのは無料(明らかに企業への「トロイの木馬」)だが、企業が追加するのは有料だ。つまり、一部の職務をジョブシェアにしようとしている企業にとって、人材の流動性を提供していることになる。

同社は、ワークライフバランスや仕事上のストレスを軽減することができるため、ジョブシェアをしている従業員はしていない従業員よりも30%生産性が高いという英国の研究結果を引用している。また、企業内の多様性やスキルを高め、ビジネスの継続性を高めることができるという。

「私たちのソリューションは、MIT Sloan Management Reviewで『第3の道』と評されました」とスモールウッド氏はメールで教えてくれた。

また「競合状況は幅広い(タレントマーケットプレイス / フレキシブルワーキング/ ナレッジワーカー+ギグエコノミー)」が「tandemploy(タンドゥエンプロイ)、duome(デュオーム)、jobpairingなどの一部のプレイヤーを除いて、直接的な競合企業はあまり多くありません」と付け加えた。

世界経済フォーラムによると、2027年には労働力の50%がフリーランスになると言われている。MIT Sloan Management Review/Deloitte(デロイト)の調査によると、経営者の約90%が外部の労働者を労働力の一部と考えているという。

また、セターレ・スモールウッド氏は「私たちをユニークにしているのは、私たちのチーム(元PayPal、Facebook、ebay)、そして私たちのストーリーです。Roleshareは、私が必要としていたときには存在していなかったので、それを構築するためにFacebookを辞めました。当社は、企業が社内外で特定の役割を担う人材をペアで調達できる唯一の人材マーケットプレイスであり、当社のプラットフォームは双方の人材をマッチングさせ、共同で応募して役割を共有します。また、人材が自分の既存の仕事をシェア可能な状態で掲載することで、ダイレクトソーシングの形をとることができるのもユニークな点です」。と付け加えた。

Roleshareは、Ian Hogarth(イアン・ホガース)氏、Azeem Azhar(アゼム・アジャール)氏、Gabbi Cahane(ギャビ・キャハーン)氏、Brendan Gill(ブレンダン・ギル)氏、Thish Nadessan(ティシュ・ナデサン)氏など、ヨーロッパの多くのエンジェル投資家が支援している。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Akihito Mizukoshi)

【コラム】社員を逃さないよう壁で取り囲むことはできない ──離職率を下げる方法を考えてみた

私は15年間テック企業のCEOをしてきたのだが、人々がさまざまな理由で当社に入社したり退職したりするのを見てきた。しかしこの4カ月の退職者数が過去2年間の退職者数の合計を上回る事態となり、我社は50人の社員のうち20%近くを失ってしまった。このため残った社員たちには大きな負担がかかっている。

こうした事態を引き起こしている原因はなにか?昨今の労働力不足で、今多くの優秀な労働者に前例のないチャンスが到来している。彼らは他社へ移ることでより高い給料を得ることができるのだ。全国的に見て労働力が3500万人目減りしたのだが、これは1970年代以来初めてのことだ。雇用される側は、近年の中で一番と言ってよいほど強気の交渉をすることができる。

大手企業は全国規模で在宅勤務の社員を探している。彼らは、小規模な市場を主戦場とする小規模企業が従来支払ってきた給与の20~30%増しの給料をオファーすることもある。

我社では、テック業界では常である人材の引き抜きを避けるため、社風の醸成に力をいれ社員に手厚い投資をしてきた。パンデミック前でさえ、2016年に立ち上げられた社員持ち株制度を通して社員たちは会社の40%を所有していた。しかしパンデミックの期間中、私たちは給与や福利厚生が適切なものになるよう継続的にこれを調整してきた。

我社の主だった取り組みの1つは、従来社員育成のために取り置いてあった資金を、社員の学生ローンの返済に当てられるようにしたことだ。社員は今までほどには人材育成講座を取らなくなっており、多額の人材育成費が未使用のままになっていた。パンデミックが続くなか、人々は専門的な会議などに行く時間も意欲もなくし、またそもそもそういった会議も開催されていなかった。

この資金を別の用途に回すことができのは、あまり知られていない、新型コロナウイルス経済救済法 (CARES)の条項のおかげである。私たちは社員があるツイートを見たことがきっかけでこれを知ったのだが、雇用者は2020年から2025年までの間、社員の収入とはみなさない形で、一年に5,250ドル(約58万円)まで社員のために学生ローンの返済をすることができるのだ。

これが我社にとって適切なものであるかを確認するため、実施する前に社員調査を行ったところ、40~45人の社員のうち、20人がこの払い戻しプログラムで恩恵を受けることがわかった。これに自信を得て、私たちはプログラムの立ち上げに踏み切った。

まずは試験プログラムを開始し、毎年各社員に1200ドル(約13万円)を払い戻すことにした。これがうまくいったので、今度は1年間の支給額を2倍の2400ドル(約26万円)に引き上げた。このようにすることで、私たちは他の雇用者との差別化を図っている。米国人材管理協会によると、2019年時点でこうした学生ローン返済プランを実施している雇用主は全体の8%に過ぎないとのことである。

このようなプログラムを実施するにはある程度の準備が必要だ。内国歳入法の第127条に則った教育支援プログラム(EAP)を実施しなければならない。しかも、このプログラムは一握りの社員ではなく、社員全員を平等に利するものではければならない。学生ローンの無い社員が資金を利用できるようにするため、私たちは引き続き人材開発プログラムも同時に実施している。どの社員も同じ資金プールから人材開発にかかった費用の払い戻しを受けることができる。

幸いなことに、プログラムの立ち上げにはそれほど時間がかからなかった。調査を終えてから1カ月たたないうちに学生ローンに関する規則の草稿を作成し、公開して、社員に告知した。

プログラムを実施にあたっては、社員とのウィークリービデオ会議でそれを発表した。申請手続きもシンプルなものにし、社員は申請用紙1枚に記入すればよい。払い戻しを受けるには、ローンの支払い内容がわかる過去12カ月の学生ローンの請求書のコピーを提出する必要がある。その後、会社側で払い戻しの小切手を切る。

現在までのところ、このプログラムは大変好評である。私たちの業界の社員は多くが若手で、多額の学生ローンの支払いに苦労している。学生ローンの支払い免除は当社の社員が必要としているものなのだ。

このプログラムには他にも節税というメリットがある。社員は自らの連邦税と給与税の支払い分を節税でき、雇用者も給与税を節税し、提供した払い戻し額に等しい補償控除を受けることができる。

私たちは学生ローン払い戻しプログラムに大きな手応えを得ているが、これだけでは人材獲得競争に打ち勝つことはできないと思っている。社員が何を必要としているかを知るにはただ彼らの発言に耳を傾けるしかない。そこで、私たちはニーズの聞き取りに多大な時間を費やしている。

社員の生活費への懸念に応えるため、私たちは現在残留特別ボーナスと勤続10年ボーナスの支給を検討している。問題は、私たちのような小さな企業がこうしたボーナスを支払うための資金をどこから捻出するかである。当社の顧客のほとんどは1年または2年契約を結ぶので、このようなプログラムを追加するには、料金の値上げをしなければならない可能性がある。料金の値上げをしたとしても、私たちの予算にその値上げの効果が現れるまでにはしばし時間がかかるだろう。

そうではあっても、私たちはクリエイティブな解決法を模索したいと思っている。社員には、私たちが手厚い配慮をしていることを知ってもらいたい。そうした配慮をするのは、それが正しい行いだから、というだけでない。社員が出勤する際ガゾリン代が払えるだろうかと心を煩わすことなく、最大限我社のために能力を発揮できるようにするためでもある。

社員が我社に腰を落ち着けてくれたら、今度はお金や福利厚生とは関係ないもの、つまりパンデミックの間に多くの人にとってより重要になった帰属意識や目的意識といったもので最高の人材を惹きつけられるようになりたいと願っている。

ここでは仕事は、単なる仕事以上のものだ。当社のように小さな会社では、全社員が大切な役割を担う。そして当社がいるような小さな街では、すべての雇用者が地域にとって重要な存在である。優れた人材が集いアイディアを交換し、人間関係を楽しみ、きついプレッシャーのかかるシリコンバレーの外で違いを生み出せるような場所を提供することで、こうしたことを求めている人々を持続的に惹きつけられたら、と考えている。

当社の社員は他社にまさる福利厚生や給与を得るだろう。しかし最終的には、こうしたものは、私たちが会社の繁栄と成長を維持を目指してたくさんの知恵を注ぎ込んで作り上げようとしている総合的な環境の一部にすぎないのだ。

編集部注:本稿の執筆者Delcie Bean(デルシー・ビーン)氏はParagus IT.の創業者兼CEO。

画像クレジット:Tetiana5 / Getty Images

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(文:Delcie Bean、翻訳:Dragonfly)

社員主導型「スクラム採用」システムのHERPが9.5億円調達、HRテック領域の新規事業開発・人材採用に積極投資

社員主導型「スクラム採用」システムのHERPが9.5億円調達、HRテック領域の新規事業開発・人材採用に積極投資HERPは10月6日、シリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資および融資による総額9億5000万円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のDNX Ventures、またDCM Ventures、マネーフォワードら。借入先は日本政策金融公庫。累積資金調達額は約15億円となった。

調達した資金により、人材採用プラットフォーム「HERP Hire」、タレント管理プラットフォーム「HERP Nurture」β版への事業投資に加えて、HRTech領域における新規事業開発とそれに伴う人材採用に積極的に取り組む。

HERP Hireは、同社が提唱する社員主導型の採用方式「スクラム採用」を推進したい経営者や、人事責任者向けの採用プラットフォーム。2019年3月の正式リリースから約2年半で累計導入企業数は900社を突破したという。IT系企業が利用する20以上の求人媒体からの応募情報の自動連携、Slackなどとの連携による現場メンバーへのスピーディな情報共有により、社員それぞれが積極的に採用に参画できる状態の実現をサポートする。

HERP Nurture β版は、企業の採用活動における潜在的な候補人材(タレント)の選考意欲およびアプローチを可視化し、最適なコミュニケーションを実現するスクラム採用向けタレント管理プラットフォーム。HERP Hireと合わせて利用されており、年内での正式リリースを目指しているという。

また、タレントに関する情報を企業が一元管理・活用できるようデータベース化したものがタレントプールと呼ばれており、HERP Nurtureは、2020年1月よりβ版としてタレントプール機能を提供している。

【コラム】増えてきたTikTokきっかけの就職、そこに潜むバイアスに注意

ソーシャルメディアは、その登場以来、成功への足がかりとなってきた。自作のYouTube(ユーチューブ)動画が話題を呼び、レコード会社との契約に至ったというストーリーは、ソーシャルメディアプラットフォームの神話となっている。それ以来、ソーシャルメディアは、テキストベースのフォーマットから動画共有のようなビジュアルメディアへと一貫して推移してきた。

ほとんどの人にとっては、ソーシャルメディア上の動画がスターダムに上がるためのチケットになるわけではないが、ここ数カ月、TikTok(ティックトック)に投稿した動画がきっかけとなって職に就いたという話が増えてきている。LinkedIn(リンクトイン)でさえ、最近「Cover Story(カバーストーリー)」という機能を追加し、ユーザープロフィールに動画を取り込めるようにした。これにより求職者は自身のプロフィールを動画で補強できるようになった。

テクノロジーが進化し続けると、正規の履歴書がTikTokの動画だというような世界も来るのだろうか。もしそうなった場合、労働力に及ぼすマイナスの結果や影響として、どのようなことが想定されるだろうか。

なぜTikTokが求職分野に向かっているのか

ここ数カ月、米国の求人数は1010万人と史上最高を記録している。パンデミックが始まって以来、求人数が労働者数を上回ったのは初めてのことだ。雇用側は、空いたポジションに見合った優秀な候補者を集めるのに苦労している。その点から見れば、多くの採用担当者が人材を見つけるためにTikTokのようなソーシャルプラットフォームや動画の履歴書に頼っているのもうなずける。

しかし、労働者が不足しているからといって、その職務に適した人材を見つけることの重要性を疎かにしてよいわけではない。採用担当者にとって特に重要なことは、ビジネスの目標や戦略に合致したスキルを持つ候補者を見つけることだ。例えば、ビジネスを遂行するうえでデータ駆動型のアプローチを採用する企業が増えると、収集したデータの意味を理解するために、アナリティクスや機械学習のスキルを持つ人材がより多く求められる。

採用担当者は、このような新しい候補者を見つけるのに役立つイノベーションに前向きであることがわかっている。採用活動は、以前のように人事チームが紙の履歴書や正式なカバーレターの束をより分けて、適格な候補者を見つけ出すような手作業ではなくなった。また、LinkedInの台頭にともない、オンラインでのつながりを活用するようになり、GlassDoor(グラスドア)のようなサードパーティの求人サイトを利用して有望な求職者を引き寄せることもできるようになった。バックエンドでは、多くの採用担当者が高度なクラウドソフトウェアを使って、受け付けた履歴書を精査し、職務内容に最も適した候補者を見つけ出している。しかし、これらの方法はいずれも、依然として従来のテキストベースの履歴書やプロフィールをアプリケーションの中核としている。

ソーシャルメディア上の動画では、候補者の口頭でのコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力など、書面では簡単に伝わらないソフトスキルをアピールすることができる。また、採用担当者が候補者の個性をより詳しく知り、自社の文化にどのように適合するか判断する手段にもなる。このようなことは多くの人にとって魅力的なことかもしれないが、その結果に対する準備はできているだろうか。

クローズアップに対する準備不足

採用活動におけるイノベーションは、仕事の未来にとって重要な位置を占めるが、TikTokや動画の履歴書による過剰なアピールは、採用環境を後退させる可能性がある。求職者が企業に自分を売り込むための新しい手段を提供する一方で、求職者、採用担当者、ビジネスリーダーが注意すべき潜在的な落とし穴があるのだ。

動画履歴書の可能性を広げる最大の要素は、同時に最大の問題点でもある。動画は、スキルや実績よりも人物そのものを必然的に強調してしまうのだ。採用担当者が候補者について最初の評価をまとめるとき、候補者が人種、障害、性別などに基づき保護されたクラスに属しているかどうかなど、通常であれば評価プロセスのかなり後にならないと目にすることのない情報に直面することになる。

ここ数年、雇用主が職場の多様性をどのように優先しているか、あるいは優先していないかに対する意識や監視の高まりとともに、多様性、公平性、インクルージョン(DEI)への関心が急速に高まってきている。

しかし、動画によって候補者を評価することは、無意識、あるいは意識的なバイアスがかかる機会を増やすことにつながり、これまでのDEIにおける成果を台無しにしてしまう可能性がある。慎重に対処しないと、企業イメージに傷をつけたり、差別訴訟のような深刻な事態を招いたりする可能性があり、企業にとっては危険な状況となる。

多様性に対する実績が乏しい企業では、候補者の動画を観たという事実が訴訟で不利に働く可能性がある。動画を見ている採用担当者は、候補者の人種や性別が自分の判断にどのような影響を与えているか気づいてさえいないかもしれない。そういった理由から、筆者が見てきた多くの企業では、採用フローに動画のオプションを導入しても、採用担当者は採用プロセスの後半まで動画を見ることはできない。

しかし、たとえ企業が保護されたクラスに対する偏見を管理しDEIの差し迫った問題に対処したとしても、採用活動に動画を利用することで、神経多様性や社会経済的地位など、十分に保護されていないクラスでは問題が残る。優れたスキルと豊富な実績を持つ候補者が、動画では自分をうまく表現できず、動画を観る採用担当者には頼りない印象を与えるかもしれない。その印象は、たとえ仕事とは関係なくても、採用担当者の意識に影響を及ぼす可能性がある。

また、裕福な環境にある候補者は、優れた機材やソフトウェアを利用して魅力的な動画履歴書の録画や編集ができるだろう。そのような環境にない他の候補者の動画は、採用担当者の目には、洗練されたプロフェッショナルなものとは映らないかもしれない。しかしそれでは、チャンスを得るうえで新たな障壁となってしまう。

職場でのDEIの対処について重要な岐路に立たされている今、雇用主と採用担当者は、候補者を見つけて採用するプロセスにおいて、バイアスを低減する方法を確立することが急務だ。業界を前進させるにはイノベーションが重要だが、最優先事項が損なわれてはいけない。

ボツにされないために

このような懸念にもかかわらず、ソーシャルメディア、特に動画ベースのプラットフォームは、ユーザーがパーソナルブランドを拡大し、雇用の可能性につながる新たな機会を生み出している。これらの新しいシステムは、求職者と雇用者の両方にメリットをもたらす可能性がある。

まず、採用活動で使う従来のテキストベースの履歴書やプロフィールを置いておく場所を常に確保する必要がある。たとえ採用担当者が候補者の能力に関する情報をすべて動画から得られたとしても、カメラに映らない方が自然と安心できる人もいる。採用プロセスでは、書面であれ、ビデオであれ、できるだけ良い印象を与えようとする気持ちが重要だ。それは、自分以外の力を借りても構わない。

その代わりに、候補者や企業は、過去の同僚や上司が候補者を推薦する場として動画を利用することを検討すべきだ。他者による推薦は、単に自分自身で長所をアピールするよりも、応募者の能力に信頼を置いている人がいることも示すため、応募において大きな効果がある。

企業が優秀な人材を獲得しようと躍起になっている昨今、動画の履歴書は、これまで以上に簡単に作成や共有できるため注目を集めている。しかし、この目新しい履歴書の共有方法に飛びつく前に、成功のための準備を確実に整えておく必要がある。

新しい採用活動のテクノロジーの目標は、新たな障壁を作ることなく、求職者が自分自身を輝かせる機会をより簡単に見つけられるようにすることだ。動画の履歴書がそれを実現するには、いくつかの対処すべき重大な懸念があり、雇用主は、今までのDEIへの取り組みの成果を損なう前に、動画履歴書の弊害について考慮することが重要だ。

編集部注:本稿の執筆者Nagaraj Nadendla(ナガラジ・ナデンドラ)氏は、Oracle Cloud HCMの開発担当SVPで、Oracle RecruitingやTaleoなどのクラウド採用ソリューションの開発を担当している。

画像クレジット:C.J. Burton / Getty Images

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(文:Nagaraj Nadendla、翻訳:Dragonfly)

【インタビュー】デロイトトーマツのテクニカル・ディレクターが語る「データは客観的」の嘘

DXを語る上で無視できないデータ活用。業界を超えて先進企業が取り組んでいるが、Deloitte Tohmatsu(デロイト トーマツ)でテクニカル・ディレクターを務めるIvana Bartoletti(イヴァナ・バートレッティ)氏は「盲目的なデータ活用は課題解決につながりません」と警鐘を鳴らす。データはどう使われるべきなのか。現在のデータ活用方法にどのような問題があるのか。同氏が詳しく語った。

本記事はB’AIグローバル・フォーラム主催「Power, Politics, & AI:Building a Better Future
の講演をもとに編集・再構成したものである。

「データは客観的」なのか?

近年、DXの必要性が叫ばれ、データとAIの活用を進めようとする機運が高まるばかりだ。AIの機械学習により病気の症状が表出する以前に病気を発見するなど、前向きなデータ活用が拡大している。しかしバートレッティ氏は危機感を覚える。

「多くの人が『データは客観的なものだ』と思っています。だからこそ、意思決定や法整備にデータを活用すべきだという声が上がります。しかし、それではうまくいかないのです」と同氏は話す。

データを読み込んだAIが意思決定に活用されることで、結果として差別が再生産されることがあるからだ。

例えば、銀行などの金融機関が既存のデータをAIに学習させ、顧客の信用を予測させるとしよう。すると、男性の方が女性よりも高い信用があると結論され、その金融機関は男性に有利な方針を採用することがあり得る。なぜなら、これまでビジネス活動の重要ポジションの多くは男性により占有され、それにより女性の収入は男性の収入よりも一般的に少なかったからだ。同様の問題は人種の異なる者の間でも起きるだろう。

バートレッティ氏は「データの問題は、実は政治的な問題なのです」と指摘する。

差別をするのはアルゴリズムか、人間か

こうした議論を聞くと「差別的な結果が出てしまうのはアルゴリズムの問題だから、アルゴリズムを改善すれば良い」と考える人もいるかもしれない。

しかし、バートレッティ氏は「アルゴリズムは差別をしません。差別をもたらすのはシステムを作る人間です」と断言する。

ここで同氏は1つの例を挙げた。大きな都市の中心に1つの会社がある。この会社のCEOが自分の側近を社員の中から選ぼうと考えた。CEOはソフトウェアを使って自分の条件に合う社員を検索した。CEOは自分が午前7時に出勤するので、同じ時間に出勤する社員に絞り込んだ。

これだけでは「午前7時に出勤する社員」というのが検索の条件であるように見える。しかし、実際にはそうではない。

「朝早くに都市の中心の会社に出社できるのはどんな人でしょう?街中にアパートを借りる財力がある若い男性社員でしょうか?あるいは2人の子どもがいる郊外在住の女性社員でしょうか?この場合は若い男性社員でしょう」と同氏はCEOが気づいていない隠れた条件を説明する。その上で「重要なのは、差別やステレオタイプ、バイアスを自動化してしまうシステムに注意を払うことです」と話す。

データで未来は予測できるのか?

「AIは『客観的な』データを摂取することで答えを導き出すと思われています。しかし、客観的なデータ、中立的なデータなどというものは存在しません」とバートレッティ氏はいう。

なぜなら、データというものは「現在」という瞬間の写真でしかないからだ。つまり、データはこれまで積み重ねられてきたあらゆる差別や不平等が「今」どうなっているかということを見せるだけだ。こうした「今」や「今まで」をAIに取り込ませ、未来を予測しようとすれば、今現在起きている問題や差別を自動化し、継続させることしかできない。

「既存のデータで未来を予測することは、今、弱い立場にいる人々を抑圧することにつながります。AIの機械学習は今までのデータをもとにパターンを見つけ出し、方針を決定します。これは未来のあるべき姿を創造することとは異なります」とバートレッティ氏。

同氏はまた「システムは選択されるもので、自然とでき上がるものではありません。先程の金融機関の男女の信用の例で言えば、『データを活用する金融機関が女性に大きな信用を置く』というような状況は自然ともたらされることはないのです」という。

ダイバーシティを取り入れたデータ活用、AI活用に向けて

では、どうすれば前向きに、既存の差別構造を持ち込まずにデータやAIを活用できるのだろうか。

バートレッティ氏は「今、データ活用に関わる決定の場にいる女性の数は多くありません。女性などのマイノリティが意思決定の場にいなければ『これは問題ですよ』という人がいないということです。組織はデータ活用やアルゴリズムに関して公平・公正でなければなりません」と答える。

しかし、これには大きな課題が立ちはだかる。男性が多数派の意思決定の場に女性などのマイノリティを増やすということは、意思決定の場に今いる人々からすれば、自分の特権を手放すことを意味するからだ。既存の意思決定者たちが得るものもなく特権を手放すことは考えにくい。彼らがマイノリティの意思決定の参加を加速させることで得る利益はあるのだろうか。

バートレッティ氏は「彼らには2つの利益があります」という。

1つは自社の評判確保による利益の確保だ。データ活用の場、意思決定の場にマイノリティが参加していなければ、その事実が自社の評判を下げる。評判が下がれば、顧客が自社の商品やサービスを利用しなくなり、経済的な損失になるというのだ。そのため、自身の特権を手放してでも、意思決定の場にマイノリティを呼ぶことで、評判と利益を守る必要がある。

もう1つは人材確保だ。同氏は「IT企業に勤める人々は、テクノロジーを使って社会的に正しいことをしようと思っています。最近では、自社の方針が倫理的でない場合に、デモなどの行動に出る人たちもいます。つまり、優秀な人材に自社に居続けてもらうために、企業は倫理的でなければならないのです」と話す。

IT企業だけではない。例えば建設業界のエンジニア採用にAIを使う場合、これまでのデータをもとに良い人材を探すことになる。エンジニアには男性が多いため、AIは「良い人材=男性」という図式を踏襲してしまう。実際の能力ではなく、性別によって人材が選別されてしまうのだ。意思決定の場に女性が居れば、どのデータをどのように使うのか、良い人材の定義は何かなどを設定し、より適切なデータ活用をできるようになり、より良い人材を確保できる。

最後にバートレッティ氏は「データは万能、テクノロジーは万能と思わないでください。『適切なデータセットとは何か』という問いは政治的なものです。AIを有意義に使うためには、哲学者、歴史家など、多様なバックグラウンドの人材が必要です。『データ活用はすばらしい』かもしれませんが、誰にとって都合が良いのか考えてください。知らないうちに『自分にとって都合が良い』『男性にとって都合が良い』になっているかもしれませんよ」と語った。

【コラム】カナダ人は穏やかながらも積極的に米国のバイオテクノロジー人材をリクルートしている

本稿の著者はMichael May(マイケル・メイ)氏とJayson Myers(ジェイソン・マイヤーズ)氏。マイケル・メイ氏はCentre for Commercialization of Regenerative Medicineの社長兼CEO。ジェイソン・マイヤーズ氏はNext Generation Manufacturing CanadaのCEO。

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米国のトランプ大統領の任期中、カナダはSTEM(科学、技術、工学、数学)分野の労働者を自国に呼び寄せようと注力し、大きなニュースになった。トランプ氏は退任したが、カナダは隣国から人材をリクルートすることをやめてはいない。そして、この人材確保の戦いで最もホットな前線の1つがバイオテクノロジーだ。

関連記事:米テック企業のモラルが損なわれている今、カナダは正しい価値観の中でテックを構築するのに最適の場所だ

何世代にもわたり、カナダのエンジニアやプログラマー、研究者たちにとってシリコンバレーの給与水準と天候は魅力的なものだった。しかし、トランプ大統領による移民排斥の発言、政策、ビザ規制が行われた4年間は、カナダのテクノロジー企業や政府に競争上の優位性をもたらした。

2016年のトランプ大統領就任後、カナダ連邦政府は移民の受け入れを促進するプログラムを立ち上げ、トロントやモントリオール、バンクーバーといった都市のテクノロジーエコシステムを後押しした。カナダのテクノロジー界のリーダーたちは、より多くの労働者を同国に呼び込むキャンペーン乗り出した。ケベックでは、移民排斥的な空気が高いことで知られる同州政府に業界が働きかけ、新規移住者を14%増やすことに成功している。

パンデミックによるシリコンバレーからの大規模な流出により、多数の国外移住カナダ人が故郷に押し寄せている。米国のH-1 Bプログラム(特定のスキルを備えた外国人労働者のためのビザプログラム)に応募するカナダ人の数は劇的に減少しており、10年にわたる傾向に拍車をかけている。

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を抑え、新しい経済への移行を促進する政府支出は、カナダ国民に広く支持されている。

それでも、カナダのテクノロジー界や政治界のリーダーたちは依然として、先進的な製造、クリーンテクノロジー、バイオテクノロジーといった主要セクターの人材のインバウンドフローについて懸念している。彼らは、米国の長年の優位性を切り崩すためにあらゆる手段を講じている。

その活動の大半はバイオテクノロジー分野におけるものだ。新型コロナウイルス感染症はワクチン製造能力の不足を露呈させたが、カナダには優れた大学のエコシステムと最先端の研究を行う数千のベンチャー企業が主導する、活気に満ちたバイオテクノロジーおよび生命科学の研究セクターが存在する。これらの企業の多くは、パンデミックに端を発するバイオテクノロジーへの投資ブームに乗じて、2020年には記録的な額のベンチャー資金を調達している。

しかし、この財源流入は資金調達の展望を変えたものの、多くのカナダ企業はなおも規模の拡大を模索している。カナダのテクノロジーエコシステムは人材に満ちているが、伝統的には、これらの企業がグローバルな強豪企業に成長するために必要な、十分な数の上級人材を育成、採用、保持していない。

科学者のみならず、ビジネスリーダーも必要とされている。トロント地域のハブやベンチャー企業を対象とした最近の調査によると、生物医学工学、再生医療、その他の関連企業は、米国産業界のより良い賃金と機会に引き寄せられる上級幹部、最高経営責任者、科学専門家といった人材の大幅な不足に苦しんでいる。

我々双方の組織も属するカナダのイノベーション経済協議会(IEC)の最近のサミットでは、産業界のリーダーたちが、世界的な規制問題やビジネス開発における未充足の仕事、さらには最高医療責任者について議論を交わした。これらは、学問的な訓練と職場での進歩的なリーダーシップの任務の両方から培われた、技術的およびビジネス的な洞察力を必要とするハイブリッドな役割を担っている。

カナダの大学、ハブ、ベンチャーキャピタル企業は、専門の研修機関やプログラムを設立することでこのニーズに対応している。また、規模拡大を目指すカナダ企業は、新たに調達した資金を使って米国内外で大量の人材を採用することでこのギャップを埋めようとしており、パートナーシップを構築し、未開発の人材プールを精査しつつ、リモートワークや柔軟な勤務時間を提供している。

このような背景の中、カナダの連邦政府は2年ぶりに予算を執行した。これは、同国がこれまでに展開した中で最も積極的なテクノロジー支出計画の1つであり、世界市場が同国の伝統的なエネルギー輸出や天然資源、工業製品から離れつつある中で、連邦政府が先進産業の育成とSTEM分野の雇用創出に真剣に取り組んでいることを物語っている。予算には、大学研究パートナーシップ、雇用奨励金、助成金、インキュベーターやハブへの支援が含まれている。重要なのは、ライフサイエンス分野の人材パイプラインを構築するための22億ドル(約2400億円)のコミットメントがあることだ。

新型コロナの影響を抑え、新しい経済への移行を促進する政府支出は、カナダ国民に広く支持されている。4月初旬に行われたIECとCampaign Researchによる世論調査では、中等後のSTEM教育への投資に対して3対1の支持が示され、バイオテクノロジーを含む先進的な製造業への政府投資に対しても同様に強い支持が見られた。10倍の広さの隣国と競争するには、まさに必要とされることである。

カナダの研究者や大手製薬企業のCEOの米国流出がすぐになくなるとは言い難い。しかし、投資資金の流入、テクノロジーエコシステムの急成長、自律的な人材エコシステムの構築、採用、維持に向けた協調的な政策努力などにより、カナダは業界が望むような存在になりつつある。

言い換えれば、米国は、自国のバイオテクノロジーの人材がカナダに積極的に惹きつけられようとしていることに留意すべきであろう。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:コラムカナダバイオテックアメリカ人材採用

画像クレジット:Ivan-balvan / Getty Images

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(文:Michael May、Jayson Myers、翻訳:Dragonfly)