タッチで操縦する宇宙船Crew Dragon、僕らはまた一歩SF映画に近づいた

革新的に進めるか、それともこれまでに実証された方法に留まるかの判断ができずしてまったく新しい宇宙船を製造することはできない。Crew Dragonの製造にあたり、SpaceX(スペースX)はボタンやダイヤルを廃止し、全面的にタッチスクリーンを採用することにした。今月後半に飛行する宇宙飛行士も長年の訓練と筋肉の記憶を取り払う必要があるが、それほど悪くないと彼らは言う。

まもなくDragonカプセル乗り込んで国際宇宙ステーションに向かう2人の宇宙飛行士、Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグラス・ハーリー)氏は、同宇宙船を実際に操縦する最初の2人となる。

「新品の宇宙船で飛行することができるなんて、おそらくテストパイロット学校中の生徒の夢でしょう。良い友人と共にこのような機会を得ることができて私はとても幸運です」と、NASAが放送した記者会見でベンケン氏は言う。

もちろん、彼らは万全の準備を整えて飛行に臨んでいる。シミュレーターでは無数の時間を費やし、初期の段階からSpaceXと協働で取り組んできた。

「SpaceXに出向き、さまざまな制御メカニズムを評価したのは少なくとも5〜6年前のことです」とハーリー氏。「彼らは機体をどのように操縦するべきかを検討しており、最終的にタッチスクリーンインターフェイスが選ばれました」。

「もちろん、パイロットとしての私の全キャリアの中で身につけてきた機体のコントロール方法とは確かに異なりますが、我々はとてもオープンマインドな心持ちで取り組んだと思います。機体を正確に飛ばし、誤って触れたり間違った入力をしたりしないようにするため、彼らと協力して調和方法、つまり自分のタッチを実際にディスプレイと結び付ける方法を定義しました」。

同記事のトップの写真と以下の写真を比較してほしい。以下は宇宙飛行士がロシアのSoyuzカプセルの操縦を学ぶための物理シミュレーターの写真だ。

従来の操縦室

どちらも正直、足まわりのスペースがゆったりしているとは言えない

もちろん最新の航空機であってもいまだ非常に多くの物理的な制御装置が装備されている。パイロットは慣れているだろうが、設計は間違いなく古いと言える。

ベンケン氏によると、これらの宇宙船は、ISSに行きドッキングするという特定の目的を念頭に置いて作られている。この機体で火星に行くわけではないため、その事実が設計と操縦方法に影響しているのだ。

「この飛行タスクは非常にユニークなものです。宇宙ステーションに近づき、近接して飛行し、その後ゆっくりと接触。これはおそらくスペースシャトルや航空機の飛行で通常見られるものとは少し異なります」とベンケン氏は控えめな表現を用いて言う(実際は夜と昼ほどの明確な違いがある)。「タッチスクリーンインターフェイスを審査した際、我々は実際に目下のタスクに焦点を当て、この特定のタスクにおいて優れたパフォーマンスを発揮できるよう努めました」。

プロトタイプのCrew DragonはすでにISSに打ち上げられ帰還している。自律的かつ遠隔的に操縦されたものだ。

「我々にとっても彼らにとっても、当初はこういったさまざまな設計上の問題に取り組むことには困難がつきまといましたが、タッチスクリーンを用いた手動飛行の観点からすると、機体は非常にうまく飛ぶようになりました」とハーリー氏。

「違いとしては、スティックを使用する場合と比較して入力を行う際は非常に慎重に行う必要があるということです。たとえば飛行機を操縦している場合、スティックを前に押すと機体は下に下がります。タッチスクリーンで実際にそれを行うためには、スクリーンと私が調和しなければなりません」。

「タッチスクリーンへの切り替えが必ずしもすべての飛行タスクに適しているとは、私は思っていません」とベンケン氏。「しかし今回のタスクでISS近くまで安全に飛行するためには、タッチスクリーンが十分な機能を果たしてくれると思っています」。

ハーリー氏によると、操縦のための機構と読み出された情報がすべて同じ場所にあることは大きな利点だと言う。「たとえば、機体を飛ばすために見ているのと同じ場所に、ドッキングターゲットが表示されています。なのでこれまでとは少し異なる方法ですが、このデザインは全体的に非常にうまく機能しています」。

しかし、シミュレーターで学べることは限られている。この最初の有人飛行はまだテスト段階であり、カプセルの次のバージョンを完成させるには今回からのフィードバックが必要だ。結局のところ、数十年前に遡るシステム上で20もの異なるノブのポットを再配線するよりも、ソフトウェアの更新をプッシュする方が簡単なのだ。

「我々はこのテスト飛行の一部を担う者として、飛行前の段階や宇宙ステーション付近でも機体の実際の手動飛行能力をテストできるように設計しました」とハーリー氏は説明する。「期待どおりに作動するか、シミュレーターで見せた飛行通りかを確認するためです。将来の飛行士が手動で宇宙船を飛ばす必要が生じた場合に備え、飛行テストでは他の事項同様に用意周到でなければなりません。つまり、Crew Dragonのさまざまな機能をすべてテストするために、我々がやれることをすべてやっているわけです」。

すべてが計画どおりに進んだ場合、今月後半に飛行予定のCrew Dragonの同バージョンについて、今後さらなるニュースを耳にできることだろう。差し当たって、著者はSpaceXとNASAの両方に、制御方式とその開発に関する詳細情報を求めておいた。

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Tags:Crew Dragon SpaceX 宇宙船

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(翻訳:Dragonfly)

NASAがSpaceX、Blue Origin、Dyneticsの3社を月面着陸船の開発に指名

NASAがアルテミス計画で有人着陸システムを提供する企業を選出した。これには、1972年以降初めて宇宙空間から月面に宇宙飛行士を運ぶこととなる着陸船が含まれる。幅広い分野にわたる競合他社の中から選ばれたBlue Origin、SpaceX、Dyneticsは、月面着陸において初の女性飛行士と新たな男性飛行士を月面に運ぶための有人着陸システム(HLS)を開発および構築する予定だ。2024年までの達成を目指している。

SpaceXが提案したStarshipが、SpaceX Super Heavyロケットを用いて発射する着陸船として選ばれた。Starshipは同社が現在開発中の宇宙船で、軌道、月、火星へのミッションに完全再利用可能な宇宙船として設計されている。Super Heavyも現在開発中だ。これは完全再利用可能なブースターとして機能し、全ペイロードを搭載したStarshipを軌道に乗せることができる。Starshipは以前使用されたモデルやデザインとは非常に異なるため、着陸船として選出された事実は実に興味深い。

NASAによると、Starshipの柔軟な設計が長期的な目標に役立つようだ。OrionやGateway月軌道ステーションから月面までなどのより長い距離を移動する輸送乗務員に対し、地球軌道での燃料移送を提供できるようになる。SpaceXの提案には、宇宙空間における車両間の推進剤移送のデモンストレーションや、無人での月面着陸テストが含まれている。

興味深いことに、2024年までにOrionのクルーカプセルを月に運ぶために開発されたSpace Launch System(スペースローンチシステム、SLS)は人を輸送できる唯一の人間用ロケットとなるが、NASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官によると、必ずしも人が搭乗できる着陸船がSLSを使用して月に到達する必要があるわけではないと言う。理論的には、Super HeavyがStarshipを発射して月に運び、そこでオリオン(SLSを使用して移動)とドッキングして、月面への旅の最終行程にまでいたるというシナリオだ。

SpaceXによる有人Starshipのコンセプト

SpaceXによる有人Starshipのコンセプト

Blue OriginによるBlue Moonは、専用の着陸船に関してはより伝統的な設計になっており、Starshipほどは統合されていないマルチパートの降下および上昇システムを備えている。 昨年の国際宇宙会議でJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏は、Blue Originの入札の際、より詳細なデザインのほかパートナー企業やその役割を提示した。その「ナショナルチーム」では、Lockheed MartinがHLSを打ち上げる発射システムの「上昇要素」部分を構築し、Northrop Grummanが着陸船を打ち上げ機から降下位置に移送するシステムを提供。Blue Originは着陸船と実際に月面に降ろすための降下システムを開発する予定だ。また、Draperが航空電子工学と降下におけるガイダンスを提供。Blue Moonは、Blue OriginのNew GlennロケットとULAのVulcanの両方で打ち上げることができる。Starshipと同様に、Blue Moonの着陸システムも宇宙飛行士を運ぶ前に別の打ち上げ機を使って移動することが可能だ。

Blue OriginによるBlue Moonの着陸コンセプト

Blue OriginによるBlue Moonの着陸コンセプト

Leidos(旧SAIC)の子会社であるDyneticsは、宇宙と防衛の専門知識を実証してきた長い歴史を持ち、1969年に設立されている。上昇および降下の機能を備えた着陸船1機を含むDynetics Human Landing Systemを開発し、月旅行の際にはULAのVulcan発射システムに搭載されて、月に向かう。DyneticsはSierra Nevada Corpなど、多くの下請業者と共に同システムの開発に取り組む。

Dynetics Human Landing Systemのコンセプトデザイン

Dynetics Human Landing Systemのコンセプトデザイン

この契約で競い合う企業のリストには、業界全域におよぶ共同チームを率いるベゾス氏のBlue Origin、NASAのCommercial Crewプログラムのプロバイダーの1社でもあるBoeing、Commercial Crew用の別の輸送船を開発し、5月下旬に初の乗員飛行を目指すSpaceXのほか、宇宙ステーションの補給を含むさまざまなミッションで使用するための再利用可能な宇宙往還機を開発するSierra Nevada Corporationや、同レースで驚きの勝者となったDyneticsなどの中小企業が含まれていた。

ここでの契約は、複数のプロバイダーに少なくとも2つのシステムを並行して開発させるというNASAの目標を反映している。これにより、大きな挫折に直面した場合にも冗長性が生まれ、またNASAは理論上少なくとも今後2つの有人着陸システムから選択が可能となるわけだ。アルテミス計画の目的は人を月面に再度送り込む事だけでなく、火星やその先を含む有人探査を見据え、NASAが深宇宙を目指すための中継地として確立させるためのものである。

契約は合計9億6700万ドル(約1030億円)に上る。支払いは10カ月の工程におけるプロバイダーのマイルストーン達成度合いに応じて行われる。NASAは電話にて、同ミッションを行うために必要な技術の多くはすでに存在し、参加している企業の多くはすでに彼ら自身の輸送船開発の追求に多大な投資を行っているため、今回の取り組みは前回月に行った際とは非常に異なるシナリオである事を言及している。

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Category:宇宙

Tags:NASA SpaceX Blue Origin Dynetics

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(翻訳:Dragonfly)

トム・クルーズが宇宙での映画撮影についてSpaceXと交渉中か

長年に渡って活躍中のアクションスター、Tom Cruise(トム・クルーズ)氏は、ますます壮大で激しいスタントやアクションシーンを求め続けている。そして、そうしたものすべてを盛り込んだ最高のアクションムービーの集大成として、宇宙で映画を撮影することを目指しているのだろう。Deadlineによると、クルーズ氏がElon Musk(イーロン・マスク)氏のSpaceXと、宇宙で長編映画を撮影する可能性について話し合いを始めており、そこにはNASAも参加しているという。

これはまだ予定に組み込まれたプロジェクトではなく、話を始めたばかりだが、真剣な話し合いが行われているとのこと。この話はクルーズ氏の命知らずの性格からもうなずけるものだ。というのも同氏は、スタントシーンを自ら演じることが多い。「ミッション:インポッシブル」シリーズの、鳥肌の立つような見せ場のシーンのいくつかも、その例外ではない。

そのレポートによると、その映画は「ミッション:インポッシブル」の続編ではないようだが、本当に宇宙空間で撮影されるとすれば、人気シリーズでなくても、十分に聴衆を惹き付けるものになるはずだ。

実際にどうやって撮影するつもりなのか、ということについては何も明らかにされていない。しかしSpaceXは、まさに有人宇宙船を実用化しようとしているところだ。NASAの宇宙飛行士を乗せたCrew Dragonが、この5月27日に初めて打ち上げられようとしている。これは国際宇宙ステーションに対して、宇宙飛行士を輸送する宇宙船が、通常業務として運行可能になったことを示す最終準備段階のデモンストレーションとなるミッションだ。

SpaceXとNASAは、まさにCrew Dragonを開発するために官民のパートナーシップを締結した。計画では、契約によって他の民間のパートナーも利用できることになっている。NASAが民間業者と官民パートナーシップを結ぼうとしているのは、市場を開放することによって長期的にコストを賄うことができると考えているからだ。SpaceXは既に別のパートナーとの話し合いのもと、Crew Dragonに搭乗するプライベートな打ち上げの予約を募っている。

マスク氏が率いるSpaceXは、現在、完全に再利用可能な宇宙船であるStarshipの実現にも取り組んでいる。それが実際に飛行できれば、船内に撮影スタッフが乗り込むスペースもできるはずだ。実際に人間が搭乗できるようになるのはまだ数年先かもしれないが、将来の有人月面着陸ミッションの契約プロバイダーの1つとして、NASAに選ばれている。すべてがNASAの計画通りに進めば、このミッションは2024年に始まる予定だ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Netflixの『スペース・フォース』の予告第1弾が公開、『The Office』のスティーヴ・カレルが主演

Netflix(ネットフリックス)は、米軍をパロディ風に描いた最新シリーズ『Space Force(スペース・フォース)』の最初のトレーラーを公開した。このプロジェクトは、宇宙に焦点を当てた軍種が公式発表された直後に公開されたもので、実際の米国宇宙軍が発足したばかりであるにも関わらず、このように短期間のうちに洗練された作品のトレーラーが公開されたのは、非常に印象的だ。

シリーズは5月29日(ちょうど、NASAとSpaceXが初の民間宇宙船によるデモ飛行を行い、有人宇宙飛行を再開する予定日の2日後)から始まり、Steve Carell(スティーヴ・カレル)や John Malkovich(ジョン・マルコヴィッチ)、Diana Silvers(ダイアナ・シルバー)、Tawny Newsome(タウニー・ニューサム)、Lisa Kudrow(リサ・クドロウ)、Ben Schwartz(ベン・シュワルツ)が出演する。もしこのトレーラーから 『The Office(ジ・オフィス)』のような雰囲気を明らかに感じたら、それには正しい。同シリーズのクリエーターとなるGreg Daniels(グレッグ・ダニエルズ)を含め、クリエイティブチームの多くが『Space Force』に関わっている。

この雰囲気からこのシリーズを『The Office but with space army』と表現したくなるが、それはスティーヴ・カレルとMicheal Scott(マイケル・スコット)が演じる登場人物がしゃべっているとことから強力に連想させられるだけだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAはトム・クルーズの映画に協力、ISS宇宙ステーションで撮影する

噂は事実だった。TechCrunchはNASAはトム・クルーズの宇宙を舞台にした映画製作に協力していると報じたが、今朝、ジム・ブライデンスタインNASA長官がツイートでこれを確認した

NASAはクルーズに協力してISS(国際宇宙ステーション)で撮影を行う。このニュースはDeadlineが最初に報じ、SpaceXもパートナーとなる可能性があると書いていた。以前からNASAはISSの商業的利用への開放をさらに進めようと努力していた。大作映画のロケにISSを提供することはよい方法の一つだというのは間違いない。

ブライデンスタイン長官は、広く人気があるチャンネルを通じてISSのような科学的事業を紹介することは、「エンジニアや科学者の若い世代にインスピレーションを与え、NASAの意欲的な目標の達成に役立つ」と述べている。SpaceXのイーロン・マスクも「これは楽しそうだ」とツイートしている。

トム・クルーズがISSに乗り込むならSpaceXのCrew Dragonシステムを使うことになるはずだ(ハリウッドスターがISSに行くというのは突飛な仮定に聞こえるかもしれないが、クルーズが宇宙に飛び出せるチャンスを逃すとは私には想像しにくい)。SpaceXのCrew Dragonは、有人宇宙飛行能力を実証する最終的なデモの段階に来ており、NASA宇宙飛行士の2人を乗せてISSにむかうDemo-2ミッションが今月末に予定されている。

NASAとSpaceXでは、Crew Dragonの有人飛行能力を民間ビジネスが利用できるようにしようと計画している。Crew Dragonの定員は最大7人だが、NASAはこのうち4人分だけを自身のために予約している。つまり民間ビジネスによる予約によってNASAが負担する打上コストを節約しようという考えだ。

トム・クルーズ(プラス主演女優?)と撮影クルーにISSへの飛行のチケットを買ってもらえば、NASAの出費はだいぶ助かる。 もちろんこれは計画の初期段階であり、いつ、どのように実行されるのかについてはまだ何も発表されていない。SpaceXはCrew Dragonを一般ツーリストに開放する計画を発表しており、それによれば来年後半か2022年にはこの宇宙ツアーが開始される予定だ。

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滑川海彦@Facebook

Virgin GalacticとNASAが共同で2点間移動用の超音速機を開発へ

Virgin Galactic(バージン・ギャラクティック)は、米国時間5月5日にNASAとの新しい提携契約を公表した。地球上の2点間移動のための高速航空機の開発が目的だ。NASAはこれまでも、超音速航空機の開発を独自に行ってきた。Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)が製造した低衝撃波の超音速試験機X-59はその1つだが、今回のVirgin Galacticとその子会社The Spaceship Company(ザ・スペースシップ・カンパニー)との新たな提携契約では、特に持続可能な高速移動技術を民間および商用航空に適用する道を探る。

Virgin Galacticは、このプロジェクトで幸先のいいスタートが切れると確信している。その理由の筆頭に挙げられるのが、現在が保有している航空機の開発、エンジニアリング、試験飛行を行ってきた実績だ。同社にはWhiteKnightTwo(ホワイトナイトトゥー)母機や、その母機から発射されて大気圏と宇宙の境目まで到達できる有翼宇宙船SpaceShipTwo(スペースシップトゥー)がある。Virgin Galacticのシステムは、通常の滑走路から離陸しまたそこへ着陸できるように構成されている。ロケット推進式のSpaceShipTwoは、地球の大気圏と宇宙との境目をかすめて飛行でき、商用宇宙観光として客を乗せ、感動的な眺めや短時間の無重力体験を提供することになっている。

実際、Virgin Galacticの技術は2点間高速移動に最適なように思える。おそらくSpaceX(スペースエックス)とその建造中のStarship(スターシップ)を使った野心的な計画の数々によって一般に認知されるようになった2点間移動は、超高速で地球上の2点をつなぐという考え方だが、大気圏の非常に高い(現在の民間航空路線の高度よりもずっと高い)ところか、もしかしたら宇宙空間を通ることになる。高高度を飛行するのは、空気が薄く空気抵抗も低いために超高速で飛行できるからだ。例えば国際宇宙ステーションは、地球の周回軌道を90分で1周している。

SpaceXによると、Starshipならニューヨークから上海までの移動はわずか40分だという。今の飛行機なら16時間かかる。Virgin GalacticもNASAも、まだまだ所要時間を語れるような段階には至っていないが、単純に比較するならばSpaceShipTwoの最高速度はおよそ時速4000kmなのに対して、ボーイング747はおよそ988kmだ。

Virgin GalacticとNASAのこの新しい提携は、米国Space Act Agreement(宇宙法協定)に基づくものだ。これはそのさまざまな目標、ミッション、計画指令の達成に役立つとNASAが判断した団体の協力を得るためにNASAが利用するという形の協定だ。具体的にどんなものになるかを想像するのは時期尚早だが、Virgin Galacticはその広報資料の中で「乗客の満足度と環境への責任にを重視した、次世代の安全で効率的な高速航空移動のための航空機の開発を目指す」と述べている。そしてそれは「業界のパートナーたち」との共同で行われるとのことだ。

画像クレジット:Mark Greenberg / Virgin Galactic / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

中国が新型の長征5号Bロケットで次世代乗員カプセルのデモ飛行

中国が新型の長征5号Bロケットを利用した、次世代宇宙船の実証ミッションを打ち上げた。これは、中国の次世代宇宙ステーションの部品の打ち上げにも使用される、新型の長征ロケットの最初の打ち上げでもある。

今回のミッションでは、中国で最新のロケット射場となる文昌(ウェンチャン)から、乗員を乗せない宇宙船が打ち上げられた。長征5号Bは推進力を高める4つのブースターを装備した10基のエンジンを搭載したロケットで、中国にとってこれまでで最も強力なロケットだ。このロケットは第2段がなく、大型のペイロードを地球低軌道に運ぶために特別に設計されている。これはまさに、同国が2022年までの建設を計画している宇宙ステーションの組み立てに必要なものだ。

乗員カプセルは低軌道で短期間の実証ミッションを行うが、現時点では飛行証明の準備段階だ。最終的には、軌道上の宇宙ステーションとランデブーし宇宙飛行士を送り込むために中国が現在使用している宇宙船の神舟と代わることになる。現在は3人乗りだが、最終的には一度に最大6人を輸送することができ、また最終的には月まで宇宙飛行士を運ぶことも可能になる。

これは中国の宇宙開発にとって重要なミッションであり、現在進行中のNASAによる商業有人ミッションと比較すると興味深い。アメリカは5月27日にSpaceX(スペースX)の商業宇宙船が宇宙飛行士を乗せて初のデモ打ち上げを行うという、大きなマイルストーンに近づいている。また同社のCrew Dragonは、構成によって最大7人の乗員を輸送できる。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXとNASAの有人宇宙飛行「Demo-2」の詳細が明らかに、5月27日にライブ配信決定

NASAとSpaceXにとって宇宙開発の歴史を作る決定的な瞬間が今月末に迫ってきた。5月27日に実施されるDemo-2ミッションではSpaceXが初めて有人宇宙飛行に挑む。乗員はNASAの宇宙飛行士2名で、米国による有人飛行としては2011年に退役したスペースシャトル以来となる。

先週、SpaceXとNASAの代表がDemo-2の詳細を説明した。NASAの宇宙飛行士のBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏の2名はSpaceXのCrew Dragonに搭乗しFalcon 9でISS(国際宇宙ステーション)を目指す。

Demo-2というミッション名でも明らかなようにこのミッションはまだテストの一部だ。それでもSpaceXとNASAにとっては2名の宇宙飛行士を無事に帰還させることが至上命題であり、責任は重い。ちなみにDemo-1も今回同様Crew Dragon宇宙船をISSへ往復させるミッションだったが、飛行は無人で実施された

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Demo-2は当初の計画されていたよりもかなり長くなる。NASAの発表によれば。ミッションは30日以上、最長で119日継続される。その期間内でで必要に応じて実際のスケジュールが決定される。NASAにとって現在最も重要な目標は、商業有人飛行ミッションであるCrew-1の実施だ。このミッションではNASA、JAXAなどからの4名を宇宙に運ぶ予定だ。

【略】

発表されたタイムラインによれば、Falcon 9の1段目のブースターが点火されて打ち上げプロセスが開始される。上昇後、ブースターが分離されCrew Dragonを搭載した2段目ロケットが作動する。ブースターは前後を入れ替えるフリップ動作を行い、ブーストバックと呼ばれる噴射により、着陸に向けた軌道に入る。ブースターは大西洋を航行するSpaceXの回収艀に着陸する予定だ。

一方、Dragonカプセルは2段目ロケットから分離してISSに向かう。到着までの時間は打上時のISSの位置により、最短で2時間、最長48時間かかる。

打ち上げ予定日前後のフロリダの天候は予測しにくい。またDemo-2が有人飛行であるためDemo-1のときよりも天候条件はシビアなものとなるだろう。直前でスケジュールに変更が加えられる可能性はあるが、打上に適した「窓」はその後も多数ある。

Crew Dragonは2段目から離脱して飛行を開始した後、ISSに近づくために何回かロケットエンジンを作動させる。ドッキングそのものは自動操縦となる。Crew Dragonは完全に自動化されたドッキング機能を備えている。従来はカナダ企業が開発したためCanadarmと呼ばれるロボットアームを使ってISS側のオペレーターがカプセルを捕獲する必要性があった。

ドッキングが完了すると、Crew Dragonは与圧され、宇宙飛行士がISSに移乗できる。 ISSでは、ベンケンとハーリーは実験やメンテナンスなどの業務を行う。その後2名はCrew Dragon戻り、ドッキングを解除、貨物コンパートメントを投棄して軌道離脱のためにロケットを作動させる。大気圏再突入後、十分に減速した段階でパラシュートを展開して大西洋に着水するという予定だ。ISS離脱からから着水までには約24時間かかる。

地上支援チームは5月16日からクルーの厳重な隔離を開始する。これは打上まで続く。打上施設のスタッフは新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止のためのソーシャルディスタンスのルールに従い、互いに常に2mの距離を取る。飛行司令ステーションもこのため改装されスタッフの配置も変更される。

ミッションは各段階ごとにみればさほど複雑には見えない。 しかしすべての段階が完璧な信頼性をもって実施されねばならず、これはSpaceXとNASAの長年のハードワークの集大成となる。2011年のスペースシャトル退役以後、米国は国産ロケットでISSにクルーを送ることができなかった。米国が有人宇宙飛行の舞台に復帰する瞬間が近づいている。5月27日の米国東部夏時間正午(日本時間5月28日午前1時)にジョン・F・ケネディ宇宙センターで行われる打ち上げは、ぜひともライブ配信で楽しもう。

画像:NASA

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceXは最初の有人飛行の打ち上げ中脱出テストのビデオを公開

SpaceXは、人間を乗せる最初の宇宙船、Commercial Crew Demo-2ミッション(DM-2)を打ち上げる準備を整えている。5月27日にフロリダから発射する予定のフライトの前には、まだ仕上げなければならないことがいくつか残っている。その中には、米国時間4月30日に行われた最終的なパラシュートシステムのテストもあった。同社は、直近の無人のCrew Dragonの打ち上げの様子を要約したビデオを公開した。今年の1月19日の打ち上げで、飛行中の脱出の予行演習を撮影したもの。

このビデオは、今回のテストの進行状況を映し出している。実際に搭乗することになる宇宙飛行士のボブ・ベンケン(Bob Behnken)氏とダグ・ハーリー(Doug Hurley)氏が、管制センターで飛行の様子を見守る姿も捉えている。Crew Dragonは、SpaceXのFalcon 9ロケットに取り付けて打ち上げられた。打ち上げの初期段階で緊急切り離しが発生し、爆発が起こってロケットは火だるまとなる。もちろん意図的なものだ。その後カプセル自体はパラシュートで安全に海まで降下し、SpaceXの船に回収される。

これは、安全装備として設計された重要なシステムのデモンストレーションだ。打ち上げ時にロケットが重大な不具合を起こしながら、すでに離陸してしまったという、万が一の場合にのみ発動される。このシステムは、宇宙飛行士が乗っているCrew Capsule(クルーカプセル)を、ブースターと第2ステージからすばやく自動的に遠ざけ、爆発が発生した際にも乗員は安全な距離を確保できることを保証する。

離陸前に、カプセルと打ち上げエリアから素早く退去できるようにする地上脱出システムなど、宇宙飛行士が搭乗し、米国内で打ち上げる有人宇宙飛行に対して、NASAは多くの安全装備を必須のものと定めている。これまでのところSpaceXは、NASAを満足させる程度には、そうしたシステムの準備ができたことを実証してきた。そして今、残された飛行前のチェックとリハーサルの数は、わずかとなった。あとは、歴史的なものとなるはずの5月27日のミッションを待つ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASAの火星ヘリが地球外で最初に動力飛行する想像ビデオが公開

NASAは、今年後半に次期火星探査車を「赤い惑星」に送る準備を整えている。このミッションには、Ingenuityと呼ばれる新型ヘリコプターロボットも搭載される。地球以外の惑星の大気の中を動力飛行する最初の機体となることで、新たな歴史を刻むことを目指したもの。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

NASAのジェット推進研究所(JPL)は、そのフライトがどのようなものになるのかを示す、一種の予告編を作成した。実際には、Mars 2020ミッションとして、2021年の2月18日に火星に到着することを目標とし、その後に現実となるはずのことを映像化したものだ。

Ingenuityは、シンプルなデュアルローターを備えたドローンのように見えるだろう。しかし実際には、火星で低高度の「ホップ」を繰り返すというミッションを完遂するための、重大な技術的課題を克服する革新的なエンジニアリングの賜物なのだ。実は、それを唯一の目標としている。現に、この4ポンド(約1.8kg)の機体は、何の計測機器も搭載していない。これは基本的に、将来の火星研究に役立つ空中探査機の設計と開発を準備するためのデモ機なのだ。

現実的には、Ingenuityのソフトボールほどの大きさの本体を空中に浮かすだけでも、偉業と言える。というのも、火星での飛行には、地球上に比べてはるかに大きな揚力を必要とするからだ。それは大気の性質の違いによるもの。そのため、このヘリコプターのテスト飛行は、毎回約90秒しか持続せず、わずか16.5フィート(約5m)の高さまでしか上昇できない。地球上ならたわいもないことだが、地球上での高さに換算すると、だいたい10万フィート(約30km)に相当する。普通の旅客機よりもずっと高い。

NASAのMars 2020ミッションは、今のところ今年の7月17日から8月5日の間に打ち上げ予定となっている。NASAの長官、ジム・ブライデンスタイン(Jim Bridenstine)氏は、新型コロナ対策のために必要とされる制限や回避策にもかかわらず、このミッションが最優先事項であると、何度も繰り返し表明してきた。というのも、火星に向けて飛び立つのに最適な機会は、2年に1度ほどしか訪れないからだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASAやJAXAが5月末に新型コロナ対策ハッカソンを共同開催

NASAとESA(欧州宇宙機関)、JAXA(宇宙航空研究開発機構)は共同で、新型コロナウイルス(COVID-19)の抑制をテーマとするハッカソンを開催する。5月30日から31日にかけて、パンデミック対策で国際協力のモデルケースともなるべきバーチャルハッカソンになる。このプロジェクトはこれらの宇宙組織が保有する公開データを使用して新型コロナウイルスのパンデミックに対する画期的な解決策を開発することが目的だ。

これらの機関は宇宙事業で常に協力しているが、 「Space Apps COVID-19 Challenge」(新型コロナウイルスアプリ宇宙チャレンジ)と名付けられたプロジェクトでは共有されるデータをベースに48時間のダッシュで役立つ成果を得ようとしている。

衛星が宇宙から収集した観測データは、新型コロナウイルスの拡散経路や地球の生態系、都市にウイルスがどのような影響を与えているのかを推測するために役立つはずだ。

ハッカソン参加者は3宇宙機関が運用する衛星からのデータにアクセスできる。画期的ソリューションとプロダクト開発のためにNASAのデータの使用を奨励しようという目的でNASAがこれまでもSpace
Apps Challengeを定期的に開催してきた。Space Apps Challengeに地域等の制限はなく、実際世界の学生やデベロッパー、研究者が参加してきた。これに日本とヨーロッパの宇宙開発機関が協力し、世界的なスケールでバーチャルハッカソンを行うことになった。このような試みは今回が初めてだ。

またNASAは新型コロナウイルスの拡散に起因する諸問題に対する解決策を探るため部内のクラウドソーシング・プラットフォームを使っている。

画像:Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート
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(翻訳:滑川海彦@Facebook

NASAが太陽帆宇宙船のテストにリトアニアの大学からスピンオフしたNanoAvionicsの小型衛星を採用

NASAは小型衛星の操縦のための推進剤によるスラスターの代わり、あるいは深宇宙ミッション用宇宙船の低コストでの輸送の可能性を判断するために、新しいソーラーセイル(太陽帆)システムをテストする。同宇宙局は米国時間4月29日、イリノイ州をベースとする小型衛星開発会社であるNanoAvionics(ナノアビオニクス)を、ソーラーセイルシステムのテストのための宇宙船メーカーとして選定したと発表した。

Advanced Composite Solar Sail System(ACS 3)と呼ばれるNASAのミッションは、同宇宙局のAmes Research Systemが率いるもので、地球低軌道に展開される小型衛星に、ほぼ1ベッドルームのアパートに相当する約800平方フィートの面積のソーラーセイルが装着される。ソーラーセイルは太陽光発電ではなく、太陽からの光子がソーラーセイルに衝突して発生するエネルギーを利用して、宇宙船を推進する。この方法は非常に微力だが、摩擦の影響を受けずに真空中に放たれた光子の力を利用することで、最終的にこの方法で推進する宇宙船は、かなりの量のエネルギーを蓄積することになる。

NASAがこの種の推進システムを開発する理由は、推進剤をまったく必要としないため、打ち上げや運用コストを大幅に削減できるからだ。これにより同宇宙局は太陽系を旅するような長期間の科学ミッションを行うことができ、最終的には従来の燃料システムではコストやロジスティックの制約で実現不可能な、深宇宙での小惑星採掘のようなより複雑な作業に挑戦することができる。

ソーラーセイル技術は新しいものではなく、NASAは2011年にもソーラーセイルの試験飛行を行ったが、2014年のSunjammerと呼ばれる2回目の実証飛行は、飛行テストの前に中止された。非営利の科学団体である惑星協会は昨年、クラウドファンディングによるソーラーセイル宇宙船を独自に打ち上げ、太陽の力だけで小型衛星を推進させられることを実証した。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

イーロン・マスク氏が天文観測の邪魔をしないStarlink衛星の新機能を解説

今週開かれたバーチャル記者会見で、SpaceXの創設者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、同社のStarlink衛星のコンステレーションが夜間の天文観測を邪魔しないようにする新計画の詳細を解説した。マスク氏は、以前、衛星の視認性を低減させるための「サンバイザー」を作るつもりだとTwitterで明かしていたが、その仕組みや以前にSpaceXが試した黒く塗る方法と比較してどうなのか、詳しいことをマスク氏もまだわかっていなかった。

Space Newsの記事によると、SpaceXの新しい「VisorSat(バイザーサット)」のアイデアは、基本的にサンバイザーで太陽の直射光をブロックし、衛星に搭載されている反射率の高いアンテナに光が当たらないようにして、反射光が地上に届くのを阻止するというものだ。その反射光が、夜空の明るい光として見える原因になっている。

将来のStarlinkに追加予定のこの新しいハードウェアは、その他の対策を補完するものでもある。その1つが、打ち上げ後に目標の軌道にのるまで、特に地上から見えやすくなる期間に衛星の向きを変えるという対策だ。全体的なゴールは「1週間以内に衛星を肉眼では見えないようにして、天文学への悪影響を最小限にする」ことであり、コンステレーションによるいかなる影響も科学者や研究者による新発見を妨害しないよう重点的に取り組むことだと、マスク氏は言う。

Starlinkコンステレーションを見えにくくするSpaceXの最初のテストでは、反射しやすい表面を暗い色で覆う方法に重点が置かれていた。テスト当初はある程度の効果が示されたものの、VisorSat方式の方が効果的であり、明るさを少し下げるといった程度ではなく、大幅に低減してくれるものだとマスク氏は確信している。

今のところSpaceXは、次のStarlinkの打ち上げでVisorSatシステムをテストしたいと考えている。2020年に入ってからこれまで、月に1度のペースで打ち上げが行われてきた。だが、このシステムには機械工学上の問題が残されている。太陽の直射光を遮る日よけを飛行中に展開する必要があるのだが、それはまったく新しい装置だ。しかもStarlinkの本来の仕事を邪魔しないよう、日よけの素材は電波を通すものでなければならない。そうでなければ、地上の利用者に低遅延の高速ブロードバンドを提供できなくなってしまう。

これがうまくいけば、その後のStarlink衛星にはVisorSatが搭載されることになる。ちなみに、現在軌道上にある衛星は比較的寿命が短く、それらに対策を施さなくても、ほんの3、4年で運用を終えて軌道から落ちることになっているとマスク氏は話す。そのころには、さらに工学的に進歩した衛星に置き換わっているはずだという。

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceXはStarship試作機の最後の重要なテストに合格し初飛行へ

SpaceXは、次世代型ロケットStarship(スターシップ)の開発を始めてずいぶんになるが、テキサス州ボカチカで建造中の大型プロトタイプは、これまで「クライオ」と呼ばれる重要なテストになると決まって致命的なエラーに見舞われてきた。これは、宇宙の真空を再現した状態で燃料タンクに最大圧力で燃料を満たすというものだ。だが最新のプロトタイプSN4(シリアルナンバー4という意味)はこのテストに合格し、エンジン点火テスト、そしてそれに続く短距離飛行へと道が開かれた。

SpaceXのSN4プロトタイプは、同社が当初、新型Raptor(ラプター)エンジンの性能を披露するためだけに飛ばした小型の実験機Starhopper(スターホッパー)とは異なり、最終的なロケットの形に近い姿をしている。SN4もStarhopperと同じく、Raptorエンジンを1基だけ搭載していて、実験目的の短距離飛行が可能だ。次期バージョンのSN5は、SpaceXのCEOで創設者のElon Musk(イーロン・マスク)氏によると、Raptorエンジンを3基搭載し、実際に運用に使われる機体に搭載予定の6基には及ばないものの、軌道に載るデモ飛行に備えた長距離飛行が可能だという。

新しいロケットや打ち上げシステムのテストと開発には、どうしてもトラブルが付きまとう。世界中のどのシミュレーションも、現実の使用条件や物理法則を完全に再現できないからだ。しかし、これまでのStarshipのクライオ試験の段階での失敗は、もっと初歩的な問題によるものなのではないかと彼らは考えるようになった。結局それが、SN1からSN3までを失敗に追い込んだ原因だった。

これでSpaceXは、プロトタイプに搭載した形でRaptorエンジンの地上点火テストが行えるようになり、早ければ今週末にも実施される。その後は、高度150メートルほどの飛行が予定されている。これはStarhopperが実証飛行したときと同じ高さだ。もちろん、軌道までの距離からすれば足下にも及ばないが、これは実物大のロケットが低空でどのように挙動するかを確かめるためのものであり、高高度まで飛行できる、さらには軌道にのることができるプロトタイプの開発につながる鍵をSpaceXに渡すものとなるのだ。

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(翻訳:金井哲夫)

FCCが軌道デブリ規則を2004年以来初めて更新

FCC(米国連邦通信委員会)は、15年前に登場した軌道デブリ規則をようやく更新し、新しい要件を追加して承認プロセスを合理化した。毎年沢山の衛星が、ますます混雑する軌道に上がっていく中で、こうした規則はこれまで以上に重要になっている。

FCCは、軌道上に蓄積されたデブリ(軌道上のゴミ)の削減を行う必要性を述べる中で、問題を軽視したがる人はいるものの、すでに重大な危険が存在していると指摘している。

調査によれば、低軌道(LEO)の一部の領域では、衝突によって生成される新しいオブジェクトとフラグメントの数が、自然の空気抵抗によって取り除かれる数を超えている。他の地域では、軌道破片の密度が十分に高くなっているために、デブリオブジェクト間の衝突により、デブリの数が無期限に増加する「暴走」状態に近いか、すでにその状態に達していると結論付けているアナリストも存在する。

はっきりさせておきたいが、ここで言う規則とは「宇宙船は20個以上の破片に分解されてはいけない」というようなものではない。それらは、衛星事業者に対して、安全で持続可能な方法で運用していることを示すことを要求するというもので、問題が発生した場合には衛星を追跡または軌道から取り除く能力などを証明させるものだ。

新しい規則は、これまでのものと大きく異なるものではなく、むしろ、技術や打ち上げ方法の改善に起因する変化と、膨大な数の衛星配置の新しい現実を反映したものだ(2004年の規則はあちこちが微調整されてきたが、これは初めての「包括的な」更新なのだ)。

たとえば、SpaceXのStarlink衛星などの、複数の宇宙船の打ち上げでは、各衛星を一意に識別できて、地上レーダーやその他のテレメトリ方法などで追跡可能であることが重要だ。新しい規則では、衛星運用者は、そうした追跡が、どのようにどの程度行われているかを正確に開示し、また、軌道調整やその他の操作のようなものを、衛星追跡当局と共有するかどうか、またそれをどのように計画しているかを開示することも求められる。

また、大小の物体との衝突の可能性や、衛星が故障する可能性、地上にいる人にどのようなリスクがあるのかを推定しなければならない。

規則の最大の変更点は、おそらく、国際宇宙ステーションより高い高度に達する宇宙船は皆、衝突を回避するために何らかの操作を行えることが求められるという要件だ。

そうした軌道で何が行われているのかを考えるならば ―― 主に画像処理と通信だが ―― そうした操作はほとんどの衛星が既に行っているべきものだ。だが衛星とその打ち上げ価格が下がり続けている中で、もしこうした要件がなければ、他のものには絶対衝突しないという空虚な保証をつけて、数千の低性能の衛星を軌道にばらまいてしまう決定が下されるのは時間の問題だ。

そして問題は、FCCが規則を作らなければ、誰も規則を作らないということだ。同じ政府機関が、ブロードバンドの速度、TV番組の猥褻基準、そして軌道デブリに責任を負っているのは奇妙な話だが、それが事実なのだ。

新しい規則に付随する声明の中で、Jessica Rosenworcel(ジェシカ・ローゼンウォーセル)委員は「FCCにはユニークな権限があることを認識する必要があります。商業宇宙活動を管轄しているのは私たちだけです。これにより、FCCの2004年軌道デブリポリシーを更新する作業が非常に重要になりました」と語っている。

彼らは、NASA、NOAA、および国際的なベストプラクティスを開発しようとする国際機関と協力して作業しているが、今日の衛星の大多数に関して、規則を制定しているのはFCCなのだ。

今回は採用されなかったが、FCCが議論のために公表している提案の1つは、衛星が計画通りに回収されたときに償還できる債券の購入を、企業に対して要求する可能性だ。

その場合、衛星を打ち上げようとする企業は、軌道にのせる前に、たとえば国債を1万ドル(約108万円)購入することを求められる。数年後、衛星がその仕事を終えて解体する準備ができたとき、すべてが計画通りに進んでいた場合には、その1万ドルが償還される。しかし、衛星が失敗したり、制御不能になったり、その他計画から逸脱したりした場合には、1万ドルは没収される。

このアイデアは直感的には理にかなっている。いわば宇宙船に対する一種の保証金だ。しかし具体的な内容を詰めて行くのはとても難しい。そこでFCCは、この要件にどのようにアプローチするのがベストなのか、あるいはまったくアプローチしない方が良いのかに関して、コメントを募集している。

FCCのWebサイトで、新しい規則とその解説の完全版を読むことができる。

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(翻訳:sako)

SpaceXが60個以上のStarlink衛星の打ち上げに成功、2020年のサービス開始に布石

SpaceXは、新たにStarlink(スターリンク)衛星の一団を打ち上げた。地球低軌道に展開されたこれらの衛星は、地球全域での高帯域ブロードバンドのインターネット通信網の利用を可能にするものだ。今回の打ち上げで軌道上のStarlink衛星は合計422基となったが、SpaceXではそのうち2基(最初の2つのプロトタイプ)は早急に軌道から外すことにしている。

すでにSpaceXは、民間人工衛星運用企業としては世界最大規模になっているが、まだ余裕も伸びしろも十分にある。また、Starlinkの打ち上げ頻度も、世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)危機にも関わらず増加している。前回の打ち上げは3月18日だった。SpaceXは今年に入ってわずか4カ月の間に、トータルで4回の衛星打ち上げを実施している。

この攻めのペースを保つのには理由がある。打ち上げを行うごとに、この衛星がネットワークの屋台骨を構成するStarlinkブロードバンドサービスの開始が近づくからだ。SpaceXでは、今年後半のいずれかの時期に、カナダと米国北部をカバーするネットワークの提供を始めたいと考えている。さらに、この方式を有効に展開するためにも欠かせない。従来の静止インターネット衛星よりもずっと地表に近い軌道を回り、サービス提供地域の上空を通過する衛星同士で接続を引き継ぐ必要があるため、一般消費者や企業に安定的で信頼性が高く遅延の少ないインターネット接続を提供するためには、たくさんの衛星を飛ばす必要があるのだ。

Starlinkは、来年には全世界へサービスを拡大したいと考えている。そのためには、さらに多くの衛星を打ち上げ、ずっと大きなコンステレーションを構築しなければならない。SpaceXが公表した資料には、需要や性能に応じて、1万2000基から4万2000基の小型衛星を打ち上げてネットワークを完成させると記されている。

SpaceXのCEOで創業者のElon Musk(イーロン・マスク)氏は、Starlink衛星が地上からの夜間の天体観測を妨害するとの苦情への対処について詳しい説明も行った。その人工衛星が反射する光は、天体写真に点や筋となって現れる。それが地上の望遠鏡や天文台からの天文観測や研究に支障をきたすと天文学者は主張している。

今回の打ち上げには、使用を終えたFalcon 9(ファルコン9)ブースターロケットの回収も試みられた。これは、SpaceXのDemo-1 Crew Dragon(デモ1・クルー・ドラゴン)の打ち上げにも使用されたものだ。さらに2019年には2回使われている。Falcon 9は、大西洋上で待機していたSpaceXのドローン船に計画どおり着艦した。これで、今年の初めに数回あったFalcon 9ブースターの着陸失敗が挽回されることを願う。

SpaceXはまた、打ち上げの際にStarlink衛星を保護し、後に2つに割れるフェアリングの回収も試みることにしている。だが、システムのアップグレードにより、パラシュートで減速しながら降下してくるフェアリングを網で捕まえる方式は使えない。その代わりに、海に着水したところを拾い上げる方法が検討されている。SpaceXがその方法を確定し発表したときには、この記事を更新する予定だ。同社では、フェアリングももっと頻繁に再利用したいと考えているのだが、網で捕まえる方法のほうが再使用のための整備が楽になる。これも、現在建造中の完全に再利用可能なStarship(スターシップ)宇宙船を実現させるべく、事業を継続したいSpaceXのコスト削減策のひとつだ。

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(翻訳:金井哲夫)

Firefly AerospaceがSpaceflightと2021年のAlphaロケット打ち上げで契約

Firefly Aerospace(ファイアフライ・エアロスペース)はSpaceflight(スペースフライト)と契約を締結し、2021年に米国カリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地から打ち上げ予定のFireflyロケットのペイロードの大部分を、Spaceflightに提供する。Spaceflightはロケットのライドシェアサービスを提供しており、他の企業と1機のロケットを共有することで、ペイロード容量を最大限に利用しながら、顧客あたりの打ち上げコストを削減する。

FireflyのAlphaロケットは、同社初の衛星打ち上げロケットであり、太陽同期軌道に630kgのペイロードを投入できる。またSpaceflightは、そのスペースを満たすために多数の顧客からのペイロードを統合し管理する。この契約には、将来のミッションまで長期的に適用される条項も含まれており、Spaceflightは将来のAlphaの打ち上げに顧客が参加できるよう支援する。

Spaceflightはすでに、ロケットのライドシェア市場におけるリーディングカンパニーとして台頭しており、29機のロケット打ち上げにおける271機の衛星のペイロード管理サービスを提供している。FireflyのAlphaは現在テスト段階にあるが、1月のテストパッドでの火災を含むいくつかの障害や、新型コロナウイルスのパンデミックにもかかわらず、大いな進展を遂げ作業を続けている

Fireflyは今年後半にもAlphaを打ち上げる予定で、現在はテキサス州ブリッグスの同社の施設で、ロケットの第1段と第2段の最終受け入れ試験を行っている。そして最初のテスト飛行が成功すれば、Fireflyは2021年にも商業飛行が開始できる状態になるはずだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

「Starlink衛星打ち上げ時のトラブルはアルコール洗浄液の混入」とマスク氏がツイート

SpaceXの創業者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は4月22日、「今回のStarlink衛星の打ち上げの際にMerlinエンジンの1つが停止した原因が判明した」とツイートした。このトラブルは打ち上げそのものには影響せず、Starlink衛星は所期の軌道に乗った。「少量の洗浄液の混入が見過ごされた」ためにエンジン停止が起きたという。

SpaceX Falcon 9ロケットの一段目(ブースター)は9基のMerlinエンジンを搭載しており、うち1基が停止してもミッションを継続できるよう設計されている。実際、3月18日の打ち上げではブースターの作動中に1基が停止した。 このエンジン・トラブルが60基のStarlink衛星の軌道投入に影響を与えまなかったのは設計どおりだったが、SpaceXは原因の調査を開始し 、NASAもこれに加わった。5月27日にNASAとして初めての民間企業のロケットを利用した有人宇宙飛行が予定されており、これにはFalcon 9が使用される。

マスク氏は、Merlinエンジンの停止の原因は「少量のイソプロピルアルコール(洗浄液)がセンサーのデッドレッグに混入し、飛行中に発火したためだ)」とツイートした。イソプロピルアルコールはごく一般的な有機洗浄液で殺菌能力も高いため消毒用に薬局で自由に購入できる。マスク氏の説明からすると、Merlinロケットの液体燃料系の圧力バルブのセンサーハウジングにイソプロピルアルコールが少量誤って閉じ込められたものらしい。少量のアルコールの発火はエンジンの損傷には至らないはずだが、センサーに高熱を伝えたためエンジン停止が起きたようだ。

NASAとSpaceXは、商用有人宇宙飛行事業の実証ミッション、Demo-2の実施予定を公式に発表しているところから考えて、NASAはSpaceXによる原因の調査と原因の特定に納得した可能性が高い。SpaceXの発表どおりであれば、パーツの洗浄後のチェック手続きの改良により比較的簡単に防止できるだろう。万一同様の問題が発生した場合でも、Falcon 9のエンジンシステムに組み込まれた冗長性により、ロケットは正常な飛行を続けられる可能性が非常に高いことが示されたといえる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

民間弾道飛行での宇宙飛行士の訓練にNASAは期待を寄せる

宇宙を第二の故郷と呼ぶ宇宙飛行士でさえ、初飛行を経験している。NASAは、Virgin Galactic(バージン・ギャラクティック)やBlue Origin(ブルー・オリジン)に委託して宇宙飛行士たちを弾道飛行を体験させ、数々の挑戦的な宇宙計画に備えてもらおうと考えている。これは現在、芽生え始めている民間宇宙飛行業界に新たな巨大市場が開かれることを示唆している。

2020年3月に開かれたNext Generation Suborbital Researchers conference(次世代準軌道研究者会議)で、NASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官が演壇に立ち、NASAが現在民間ロケットの利用を検討しているのは、単にこれまでその可能性が存在していなかったからだと話した。

「それは、つい最近まで私たちが国として所有していなかった能力です」と彼は、Space.comの記事の中で語っている。

だが、現在その能力が確かにあると断言もできない。Virgin GalacticもBlue Originも、宇宙との境目をほんのかすった程度の弾道(準軌道)飛行を実証できただけで、試験飛行や商用飛行となると、まったく別の話だ。

関連記事:Virgin GalacticのSpaceShip2がマッハ2.9で宇宙の淵に到達(未訳)

Virginは既にチケットを発売しているが、客を乗せた初飛行の日程は決まっていない。2020年中に行われる公算は大きいが、信頼できるスケジュールを立て、ミッションの成功を記録しない限り、現時点ではただ熱望しているだけとしか見えない。それが宇宙旅行というものだ。その道の99パーセントは、まだ霧の中だ。

だがVirginにせよBlue Originにせよ、ロケットの打ち上げを請け負うその他の企業にせよ、今後数年以内に、ペイロードや人を乗せる能力を持つ宇宙船の弾道飛行を成功させることは間違いない。NASAが彼らの採用に熱心なのは、そのためだ。

それと同じぐらい避けられない現実として、奇妙に思えるのは宇宙飛行士の訓練をすべて地上で行わなければならないことだ。彼らはさまざまなシミュレーターで訓練を行う。いわゆる「嘔吐彗星」や、彼らが大好きなプールでのトレーニングなどだ。それでも宇宙を体験するには、宇宙に行くしかない。

Commercial Crewのデモミッションで最初にISSへ飛行する予定の宇宙飛行士Bob Behnken(ボブ・ベンケン)とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)。Crew Dragon宇宙船のシミュレーターを操作している。

つい最近まで、それは何億ドルもするロケットの先端に乗ってISSまで飛ぶことを意味していた。またはその昔は、オービターや着陸船で月へ行くことを意味していた。

その準備として可能なことはほんのわずかしかないが、ごく限られた中の1つとして、安価で一時的な宇宙飛行がある。それを実現するのが弾道飛行だ。

ロケットで大気圏外に出て、その結果として数分間の無重力を体験できる環境は、訓練や実験や、その他のこれ以外には軌道上でしか行えない活動にはうってつけだ。NASAはその実現を期待しているのだが、まだ実際の契約には至っていない。

VirginやBlue Originなどの企業は、最初の数回の弾道飛行によりチケットの完売をほぼ確実にしたが、宇宙ツーリズムには産業としての実績はなく、また現在のパンデミックやその後に予想される経済の落ち込みにより、そうした高額商品(または宇宙ツーリズムを提供する能力)は深刻なダメージを受ける恐れがある。そのためこうした政府との定期契約は、弾道飛行の提供や支援を行う企業にとっては、ほぼ間違いなく大きな安心となる。

「これはNASAにとって大きな移行ですが、重要な移行です」とブライデンスタイン長官は言う。この移行は、近年の政府事業がそうしているような、単に民間企業への委託を増やすという程度の話でなく、民間飛行を公式なトレーニングに利用するということだ。飛行は徹底的に安全でなければならないが、ISSへの飛行時と同じ厳格な基準に従う必要もないと長官は述べている。

実際にはNASAが運用しない飛行でのトレーニングやテストが増えることで、新しいミッションの準備が促進される。準備が加速されると同時に、その能力を唯一持っていたNASAによる飛行ミッションに依存するこれまでのようなプログラムの煩雑さが低減される。私は、この件に関する詳しい内容をNASAに問い合わせている。新しい情報が入り次第お伝えする予定だ。

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(翻訳:金井哲夫)

NASAとSpaceXによる初の有人宇宙飛行は5月27日に決定

NASASpaceX(スペースX)は、米国内から史上初めて民間宇宙船に宇宙飛行士を乗せて打ち上げる日時を決定した。米東部時間5月27日午後4時32分(日本時間28日午前5時32分)の予定だ。ケネディ宇宙センター内のSpaceXの39A発射施設から打ち上げる。以前、ミッションの予定時期は5月中旬から5月下旬と発表されていたが、ついに宇宙飛行士のRobert Behnken(ロバート・ベンケン)氏とDouglas Hurley(ダグラス・ハーリー)氏を国際宇宙ステーションへ送る最初の打ち上げ希望時刻が決まった。

この打ち上げは、NASAのコマーシャルクループログラムにおける最初の有人ミッションだ。民間との​​パートナーシップを通じて、米国の打ち上げ能力を取り戻すことを目指している。SpaceXとBoeing(ボーイング)の両社が参加し、それぞれ独自に打ち上げロケットと有人宇宙船を開発している。SpaceXはBoeingに先行し、この段階への到達に必要なすべてのステップを終えた。Demo-2と呼ばれるこのフライトは、厳密にはまだテストプログラムの一部だが、NASAの宇宙飛行士が長期滞在のために国際宇宙ステーション(ISS)を訪れる。滞在期間はまだ決まっていない。

今回の最終テストでは、ロケットの発射台、地上の運用施設、軌道システム、宇宙飛行士の手順など、「Crew Dragon」(クルードラゴン)と「Falcon 9」(ファルコン 9)の発射システムを一つ一つ検証する。すべての検証が正常に完了すると、クルードラゴンはフルオペレーションの認証を受け、ISSへの宇宙飛行士の定期的な移送サービスを開始できる。

ミッションでは、ベンケン氏とハーレー氏を乗せたCrew Dragonが打ち上げられて軌道に乗り、約24時間後にISSに接近する。宇宙船はステーションと完全に自動でドッキングするよう設計されている(前回までの無人デモミッションでも同じ)。その後、ベンケン氏とハーレー氏が下船してISSクルーのメンバーとして参加し、軌道科学プラットフォームの研究を行う。

ミッションを遂行するCrew Dragonは軌道上に約110日間滞在できるよう設計されているが、実際の滞在期間は打ち上げ時の準備状況よる。完全稼働バージョンのCrew Dragonは、少なくとも210日間の滞在を想定して設計されており、NASAの3人と日本の宇宙機関の1人を含む4人の宇宙飛行士がすでに決まっている。すべて順調に進めば今年後半となる見込みだ。

Demo-2のCrew Dragonは、ISSを出発する準備ができたら、ベンケン氏とハーレー氏を乗せてISSから自動的にドッキング解除し、地球の大気圏に再突入し、制御を保ちながら大西洋に着水する。SpaceXの船がCrew Dragonを回収し、フロリダに持ち帰る。

NASAとSpaceXは、新型コロナウイルスによる世界的な危機が進行する中で、すべての人と同様にさまざまな課題に直面している。だがNASAのアドミニストレーターであるJim Bridenstine(ジム・ブリデンスティン)氏は「 ISSにおける米国のアクセスとプレゼンスを保つことが非常に重要だ」と述べており、このミッションを継続するべく追加措置を講じている。

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(翻訳M:Mizoguchi