建設職人向け情報サイト「職人さんドットコム」が1.45億円を資金調達

IT活用が遅れているといわれ続けてきた建設業界だが、多くの人・モノ・金がかかわる業界だけあってこの数年、仕事の受発注マッチングアプリ「助太刀」や写真管理アプリ「Photoruction」など、スタートアップの動きが活発になった分野でもある。

そんな中で、建設職人向けの情報サイト「職人さんドットコム」を運営する職人さんドットコムは、2006年3月設立と界隈の中では“老舗”と言える企業だろう(何しろTwitterと同じ年の設立だ)。同社は12月3日、大和企業投資、サムライインキュベート、三菱UFJキャピタル、みなとキャピタルを引受先として、総額1.45億円の第三者割当増資を実施したと発表した。

2006年の創業当初は、建築業界向けにホームページ作成サービスを提供していた職人さんドットコムだが、2013年4月に職人のスマートフォン向け情報発信サービスとして、自社サイト運営を開始。創業者で代表取締役の猪澤幸男氏が、職人として働いていた時代に建設現場で感じた「情報不足」「情報化の遅れ」を解消し、職人が働きやすい現場を実現したい、という思いから、情報流通の場として運営してきた。

2018年5月にサイトをリニューアルし、現在は求人情報や、プロ向け資材・工具のショップ検索、工具・資材のメーカー検索などのサービスを、職人向けに無料で提供。また、2017年からスタートした「工具防犯登録」では、電動ドリルやレーザー測定器など、高額なプロ工具の盗難を防ぐための防犯登録システムを提供する。

同社では資金調達により、工具防犯登録システム、サービスの拡充に向けた社内体制の強化や、職人向けSNSなどの新事業展開のため、マーケティングや人材採用、セキュリティ強化などへ投資を行うとしている。

建設業マッチングアプリ「助太刀」で職人が代金を即日受け取れるサービス開始、セブン銀とも提携

建設業の仕事を受発注できるアプリ「助太刀」を運営する助太刀は、アプリを利用して仕事をした職人が代金を即日受け取れる「即日受取サービス」を5月7日からスタートした。同サービスはセブン銀行子会社のセブン・ペイメントサービスが運営する「現金受取サービス」との提携によるもの。決済にはGMOペイメントゲートウェイのサービスを利用する。

助太刀は建設現場と職人をつなぐマッチングアプリ。職人はアプリに職種と居住地を登録すれば、条件に合った仕事の案件をプッシュ通知で受け取ることができる。また仕事を発注する側の現場監督は、現場ごとの細かい条件を指定することで、適した職人に仕事を依頼できる。

建設業界では、現場で働く職人に仕事の代金が支払われるまでの期間が長い場合が多い。助太刀の即日受取サービスを使えば、その日の仕事が終わった時点で職人が工事代金を発注者に申請し、セブン銀行のATMから即時現金で受け取ることができるようになる。

助太刀は4月に、伊藤忠テクノロジーベンチャーズやジェネシアベンチャーズなどから5億3000万円を調達している。調達を機に同社では、職人と現場のマッチング機能に加えて、職人への支払いに関わるペイメント機能を提供する予定があると言及していた。

ITで建設業界の「人」と「お金」の課題解決へ、ローカルワークスが住友林業などから約2.1億円を調達

建設・リフォーム業界の課題解決に向けて複数のサービスを展開するローカルワークス。同社は4月10日、日本ベンチャーキャピタル住友林業SMBCベンチャーキャピタルオークファンを割当先とする第三者割当増資により、総額約2.1億円を調達したことを明らかにした。

ローカルワークスは2014年2月の創業。2015年9月にCOENT VENTURE PARTNERSから約4000万円を、2016年7月に日本ベンチャーキャピタルとニッセイキャピタルから約1億円を調達。今回の調達により同社の資本金は3.6億円になるという。

ローカルワークスではリフォーム・修理事業者の価格比較サービス「リフォマ」、建設事業者同士のマッチングサービス「Local Works Search」、施工業者向けの決済代行サービス「Local Works Payment」という3つのサービスを手がける。

これらのサービスを通じて、施工業者の稼働状況や信頼性、施工単価、取引実績といった情報をデータベースに集積。建設業界の2大課題である「人手不足」と「中小零細施工店が抱える資金繰り問題」の解決を目指している。

2016年2月にリリースしたリフォマには約1000店の施工店が加盟。リフォームや修繕依頼をしたいユーザーは、エリアやメニューから該当する施工店を比較し見積もりが可能。リフォマは双方をマッチングする役割を果たす。

ローカルワークス代表取締役の清水勇介氏によると「テクノロジーとアイデアで建築業界の非効率を変える」というテーマで事業を開始。約2年間リフォマを展開する中で業者とのネットワークも徐々に構築してきた。その過程で事業者間のマッチングや、決済のニーズを強く感じ、Local Works SearchやLocal Works Paymentに着手したという。

もともと清水氏はリフォーム関連のベンチャー企業で副社長として事業に携わってきた人物。現場での経験から建設業界が抱える課題を解決したいという思いがあったそうだ。

「特にこの業界は小規模の事業者が多い一方で、一件あたりの単価は大きくなりがち。報酬の未払いや支払いの遅延が原因で連鎖倒産が起こることもある。また4次受けや5次受けのように何社も介在するケースが多く、発注の内容があいまいだとトラブルも発生する。それを解決するためには、決済代行やバックオフィス部分のサポートが必要だ」(清水氏)

Local Works Paymentではローカルワークスが施工元請け事業者と下請け事業者に間に入り決済を代行する。報酬の未払いや遅延を防ぐほか、工事瑕疵保証をパック化して提供。2017年10月より取引顧客を限定した上で運営したところ、11月半ばまでで数千万円の利用申込実績もあったという。

同サービスは人手不足を解消するLocal Works Searchとともに、現在クローズドで展開中。正式なリリースは9月ごろを予定している。

これから同社が目指していくのは施工会社のデータベースの構築と、それを活用したサービスの展開だ。たとえばLocal Works Paymentを通じて蓄積される取引データや決済データ、信用情報。このデータを基に「建設業界に特化したレンディングサービス」などFinTechサービスの開発を考えているという。

今回のラウンドにはVCやIT系の事業会社に加えて、業界大手の住友林業が株主に加わった。今後は住友林業とも協業しながら、業界の課題解決に取り組む意向だ。

「建設業界は52兆円の規模があるといわれる大きな市場だが、まだまだテクノロジーの活用が進んでいない。その点では住友林業のような業界を代表する企業にも出資をしてもらい、一緒にチャレンジをしていけるのは大きい。先方からも『従来整備されてこなかったデータベースで、いろいろな展開ができる』と期待してもらっている。すでに顧客の紹介など連携は進めているが、今後もデータベースの活用や事業上の連携も深めつつ、業界の課題解決に取り組みたい」(清水氏)

大工ロボットと一緒に家を建てよう

大工仕事の新参者(おんぼろだが頑丈な納屋を作ったことがある)として、私は良きパートナーのありがたみをよく知っている。測ったり、切ったり、押さえたりするのを手伝って第3第4の手になってくれる。人間に頼む場合の欠点は、お礼にお金や食事が必要なことだ。そんな私がチューリッヒ工科大学が作ったこのロボット大工アシスタントを見つけたときの喜びを想像してほしい。

複数機関の連携によるSpatial Timber Assemblies DFAB Houseプロジェクトは、家屋の枠組みだけでなく、設計の効率も上げようという取組みだ。

誰もが想像するように、プロジェクトのロボット部分を作るのは簡単ではなかった。作業場の天井に設置された1対のロボットアームが、木材を決められた長さに切断し、しかるべき位置においてドリルで穴をあける。

ほとんどの作業は人間の介入なしに行われ、何よりも補強材や足場を必要としない。これらのモジュール(部屋の大きさのバリエーションに応じて組み合わせが可能)は、事実上自立できるように特別な設計で作られていて、荷重や剛性は梁材の組み合わせによって対応されている

事前にCAD作業が行われ、ロボットは設計図に沿って、お互いぶつからないように気をつけて、ゆっくりとしかし効率的に作業する。

「プロジェクトに変更が加わると、コンピューターモデルが調整されて常に新しい要求に対応する」とプロジェクトを率いるMatthias Kohlerが説明した。こうした統合デジタル建築技術は、設計、計画、実施の隙間を埋める役目を果たす。

ボルト止めは人間の作業員が担当している。これも自動化できそうに思えるが、現在のロボットには作業に必要なセンサーやツールが備わっていないのかもしれない。

最終的に柱や梁は、これもプレハブ製のコンクリート柱で補強され、正確にこの配置に合わせて砂ベースの3Dプリンティングで作られた「スマート・スラブ」 に組み込まれる。3階建ての家は秋には完成して見学のために公開される予定。詳しくはプロジェクトのウェブページで。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

建設プロジェクトSaaS「ANDPAD」開発のオクトが4億円を資金調達、経営プラットフォームへの進化目指す

ANDPAD」は、工程表や写真・図面資料など、建設現場で必要な情報をクラウド上で一括管理することができる建設・建築現場のプロジェクト管理ソフトウェアだ。職人や現場監督など、建設現場で働く人が使いやすいようスマートフォンアプリも提供されていて、現場での利用が広がっている。

そのANDPADを運営する建設サービスのスタートアップ、オクトは3月6日、Draper Nexus VenturesSalesforce VenturesBEENEXT、および個人投資家を引受先とした総額約4億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。資金調達に合わせて、Draper Nexus Venturesのマネージングディレクター、倉林陽氏が社外取締役に就任する。

オクトは2012年9月、代表取締役社長である稲田武夫氏が前職のリクルート在席時に設立した。2016年11月には個人投資家数名から数千万円規模の資金調達を実施している。

創業当初はリフォーム会社選びのポータルサイト「みんなのリフォーム」を立ち上げて運営してきたオクト。ユーザー企業であるリフォーム施工会社から「現場の工程管理ができるサービスがほしい」という声が多く寄せられ、開発したのが「ReformPad」、ANDPADの前身となるサービスだ。

2015年9月にサービスを開始したReformPadは、リフォームの施工管理に特化していた。その後サービスを新築や商業施設など、さまざまな建設現場に対応するよう機能拡張を行い、2016年3月にANDPADとしてリリース。その時にスマホアプリの提供も始めている。

2017年1月のTechCrunchの取材では、ANDPADの導入社数は350社という話だったが、それから1年後の2018年1月時点では800社を超え、現場管理アプリのシェアNo.1となっているという。稲田氏によれば、この社数は「契約・登録ベースでの数字」だとのこと。「GitHubやBacklogなどのプロジェクト管理ツールと同じで、ANDPADは契約企業が取引先にアカウントを発行すれば他社でも使える。だから利用企業数でいうと10倍の8000社ぐらいになっているはずだ」(稲田氏)

今回の調達により稲田氏は「営業やマーケティングの強化のほか、プロダクト開発によりさらにANDPADを進化させたい」と話す。「施工管理アプリとして認知が広まった今、『現場を管理したい』というニーズに加えて、経営者層から『経営指標を見える化したい』との声が増えている。経営者向けダッシュボードを提供するなど、建設業界の経営プラットフォームとなるようプロダクト強化を図る」(稲田氏)

これは建設業向けにERPシステムを提供したい、ということだが、この分野には大手システム会社をはじめ、既存プレーヤーがひしめいている。それらのサービスと比べたときのANDPADの強みは何だろうか。稲田氏に聞いてみた。

稲田氏はこう説明する。「建設業界は、元請け企業から各種施工を行う取引先へ仕事が委託される多重構造となっている。経営分析を行う基幹システムは元請け企業が利用するもの。しかし既存システムでは、セキュリティに関する不安や取引先企業のIT対応の遅れなどが理由で、取引先も含む複数社でコラボレーションして経営数値を把握できるものはなかった」

例えば予算1000万円の工事があって、800万円が原価として想定されていたとする。複数の取引先のどこにいくらで発注したのか、また各社が担当する施工が終わって最終的にいくらが請求されるのか、従来のシステムではこれらの数字を途中で把握することは困難だった。

「ANDPADは既存ERPと必ずしも競合するものではなく、連携できるのが強みだ」と稲田氏は言う。「ANDPADなら、現場の職人までIDを持っているし、受発注もリアルタイムに把握できる。ERPシステムでコラボ機能がないものでも、ANDPADと連携すれば、指標もリアルタイム化できる。ERPとANDPADは共存・補完できるシステムだと考えている」(稲田氏)

今回株主となった3社のVCは海外に拠点を持ち、SaaSベンチャーにも詳しい。稲田氏は3社について「建設業界の働き方を変え、労働環境も変えるのが我々の目的。ただ、米国でIndustry Cloudと呼ばれているような業界特化型のクラウドサービスを提供するスタートアップは、日本では先行事例があまりない。だからその部分に詳しい投資家を選んだ」と言い、「SaaS三銃士ともいうべき3社に知見をもらいながら、成長を図りたい」と述べている。

オクトでは、ANDPADを早期に1万社へ導入することを目指す。「ANDPADは法人向けサービスではあるが、現場で毎日アクティブに使われているアプリでもある。1日に登録される写真は2万枚にも及ぶ。ユーザーが求めるサービスを今後も提供して、建設業界という巨大市場を担っていきたい」(稲田氏)

写真左から、オクト取締役兼CTO 金近望氏、代表取締役社長 稲田武夫氏、Draper Nexus Venturesマネージングディレクター 倉林陽氏

【3月6日 10:32】倉林陽氏の肩書きに誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

建設プロジェクトのコラボレーションプラットホームAconexをOracleが$1.2Bで買収

Oracleが今日(米国時間12/17)、建設工事におけるコラボレーションを支える、建設プロジェクト管理クラウドプラットホームAconexを12億ドルで買収することを発表した。メルボルンに本社を置くAconexは、クラウドベースのソフトウェアによって、建築工事に関わるチームのコラボレーションと文書管理を支える。買収価額は一株あたりオーストラリアドルで7ドル80セント(USドルで5ドル97セント)となり、トータルで12億ドルになる。この価額はAconesの金曜日(米国時間12/15)の終値AUD$5.29(USD約$4.05)の47%プレミアムとなる。

Oracleがクラウドベースの建設業ソフトウェアを買収するのは、これで二度目だ。昨年同社は、建設業における契約と決済を管理するプラットホームTexturaを6億6300万ドルで買収し、同社自身の建設管理ソフトウェアPrimaveraと組み合わせてOracle Construction and Engineering Global Business Unit(建設エンジニアリンググローバルビジネスユニット)と呼ばれる事業体を作った。

建設のプロジェクトは、可動部品が多い。下請けもサプライヤーも複数おり、建設関連の法規は複雑、そして山のように大量の紙の文書が作られる。それらすべてを正しく管理しようとすると、その金額費用と時間費用は膨大なものになる。しかしそのことは、テクノロジー企業にとっては機会でもある。過去数年間でも、建築産業を現代化しようとするスタートアップがFieldwire, PlanGrid, Net30, UpCodesなど続出した。

2000年に創業されたAconexは現在30か国にオフィスがあり、これまでに総額1兆ドルあまりの建設プロジェクトの管理に利用されてきた、という。これまで同プラットホームを利用して管理された建設プロジェクトはおよそ550万件、建設の進捗やさまざまな文書、安全性チェックリスト、などなどの管理がデスクトップとモバイル上で行われてきた。OracleによるとAconexは同社のクラウドベースの建設ソフトウェアの足りなかった部分を補うことになり、とくにプロジェクトの企画、管理、そして支払い決済の面でエンドツーエンドのソリューションを提供していく。買収の完了は2018年の前半を予定しているが、それ以降Acoenxは、Oracleの上述、建設エンジニアリングユニットの一部となる。

Aconexの顧客への書簡で協同ファウンダーでCEOのLeigh Jasperは、“AconexへのOracleの継続的投資により、機能性と能力容量の迅速な増強が期待される。また、Oracleのそのほかのプロダクトとのより有意義な統合や連携が可能になる”、と述べている。

世界最大のソフトウェア企業のひとつであるOracleは、1年に何度か買収を行う。Crunchbaseによると、Oracleは2017年にほかにも3社の買収の合意に達している: (1)API設計プラットホームのApiary、(2,3)デベロッパーツールのWerckerMoatだ。後者は広告のエンゲージメントを測定する。しかし昨年は93億ドルのNetSuiteやTextura(前述)など、計9社を買収しているから、もっとすごい。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

建設現場と職人をマッチングする「助太刀くん」iOS版アプリが登場——TC Tokyo 2017でも受賞

今年も熱気あふれるイベントとなった、TechCrunch Tokyo 2017。中でもイベントの目玉、スタートアップバトルはファーストラウンドから大盛況で、応募113社の中からファイナリストとして選ばれた6社のスタートアップは、いずれ劣らぬすばらしいピッチを繰り広げた。そのファイナリストのうちのひとつで、審査員特別賞をはじめ3つの賞を受賞した東京ロケットが11月29日、建設現場と職人をマッチングするアプリ「助太刀くん」のiPhone版をリリースした。Android版のリリースも数週間以内に予定しているという。

助太刀くんは、建設現場での仕事を受発注できる、現場と職人のマッチングアプリだ。職人は「職種」と「居住地」を入力するだけで、自分の技能に適した仕事の案件をプッシュ通知で受信することができる。また、現場監督は、現場ごとの細かい条件を指定すれば、職種やスキルなどが合った最適な職人に仕事を依頼することができる。

工事完了後は、現場・職人がお互いに5段階評価を行い、評判のよい業者・職人が評価される仕組みになっている。ほかにも、現場の勤怠管理や、勤怠データをもとにした請求書発行の代行サービスも提供。取引があった相手との連絡のためのリスト(電話帳)やメッセンジャー機能も備えている。

料金は、マッチングの基本機能が月2回までに制限され、メッセンジャーと電話帳機能が使える「助太刀ベーシック」は無料。ベーシックに加えて、マッチング回数が無制限で、勤怠管理、請求書代行、現場を優先表示できる「助太刀プロ」が月額1980円となっている。

東京ロケットは、自身も長らく建設業界にいたという代表取締役CEOの我妻陽一氏が、2017年3月に設立。8月にはジェネシア・ベンチャーズとKLab Venture Partnersから総額5000万円を調達している。

建設業の『人』の100%有効活用めざす――職人の手配アプリ「助太刀くん」が5000万円調達

建設現場ではたらく職人を手配するアプリ「助太刀くん」を開発する東京ロケットは8月21日、リード投資家であるジェネシア・ベンチャーズKLab Venture Partnersから総額5000万円を調達したと発表した。

同社は調達した資金を利用して、エンジニアの採用を積極的に行い開発・運営体制の強化を図る。

助太刀くんは2017年9月にWeb版が先行リリースされる予定だ。

写真左より、COOの謝宣真氏、CEOの我妻陽一氏、CTOの金田悠一氏。

旧態依然とした建設業に注目

「2020年といえば?」と聞かれたら、東京オリンピックと答えるか、ドラマ「Doctor Who」でサイルリアンが覚醒する年だと答える人がほとんどだろう。

その東京オリンピックを控えた日本では今、建設需要が活発だ。

しかし同時によく聞くのが、建設業界の人手不足という問題。つい先日の7月14日には、建設業の「人手不足倒産」が高水準に達しているというニュースもあった。

東京ロケット代表の我妻陽一氏は、「建設業界で働く人の絶対数は足りていない。でも、今あるリソースを100%有効活用できていないのもたしか。助太刀くんは、そのためのアプリだ」と語る。

現状のリソースを100%有効活用できていないのは、この業界に古くから存在する「囲い込み」という慣習が原因だ。

我妻氏によれば、建設業界のいわゆる「元請け」は、繁忙期に必要な職人を確実に確保するために職人を囲い込み、他の元請けからの仕事の情報が職人に届きにくいような構造ができてしまっている。

これは、職人が契約上そのように縛られているということではない。職人は社員ではないが、社員集会のようなものを開いて「仲間意識」を高めるというような方法で囲い込みが行なわれているそうだ。

そんななか、職人が幅広い案件の情報にリーチできるようにすることを目的に生まれたのが助太刀くんだ。

2つの情報入力で簡単登録、案件がプッシュ通知で届く

助太刀くんの機能は大きく分けて2つある。建設現場の監督が職人を募集する機能と、職人が募集中の案件に応募する機能だ。

職人がアプリをダウンロードして自分の「職種」と「居住地」を入力するだけで、仕事の案件がプッシュ通知で届く仕組みだ。

また、助太刀くんには現場監督と職人がおたがいを評価するシステムや、請求書代行サービスなどの機能も備えている。

「建設業界では、基幹システムや現場管理のICT化は進んでいるが、最大のリソースである『人』に関わるシステムは昔から変わっていない。人や仕事を探すのは仲間からの紹介が頼りで、仕事の依頼は電話で連絡するのが通常だ」(我妻氏)

東京ロケット提供資料より

でも、そもそも高齢化が進む建設業界でスマホアプリなんかウケるのかと疑問に思うTechCrunch Japan読者もいることだろう。

それについて我妻氏は、「メインターゲットとなる20代から40代の職人は、建設業従事者全体の約55%ほどを占める。その年代のスマホ普及率は高い。また、最近では50代のスマホ普及率も約49%ほどにまで上がっている」と答えた。

また、アプリの離脱率を限りなく減らすために、「居住地」と「職種」の2つの情報を入力するだけで登録が完了するようにしたのだそう。

助太刀くんのマネタイズ方法は3つ。仕事の発注に対する課金、広告収入、そしてペイメントだ。

「当初は助太刀くんが請求書を送付し、発注者が職人に直接支払うというかたちだが、将来的にはエスクローやファクタリング機能を取り入れて、そこでもマネタイズしていく」と我妻氏は説明する。

我妻氏は東京ロケットを創業する以前、大手電気工事会社で現場監督として働いたあと、電気工事会社を11年経営した経験をもつ。

これは僕も取材して分かったことなのだけれど、建設業界は古くからの慣習や“しきたり”に溢れていて、複雑だ。その点、この業界に長年関わってきた我妻氏の知見は、東京ロケットがもつ強みの1つになるだろう。

日本の建設業は生産額が29.4兆円、就業者数が500万人の巨大マーケット。そして、このマーケットに狙いを定めたスタートアップも近年増えてきている。これまでにTechCrunch Japanで紹介したものだけでも、写真管理アプリの「Photoruction」、チャットアプリの「stacc」、施工管理アプリの「ANDPAD」などがある。

建設企業の請求決済事務をオンライン化して中小下請け孫請けの苦境を救うNet30

建築業界の請求と決済の処理は、今や破綻している。実際に払ってもらえるまで70日ぐらいかかるので、建設業者の多くは運転資本が枯渇する。そこで、Y Combinatorで育ったNet30は、その問題を解決しようと志(こころざ)した。

このプラットホームの上で建設企業は請求書を処理し、下請け企業などの銀行口座にオンラインで支払いを行う。これにより、今でも紙を使っていることの多い事務処理がデジタル化される(今はまだ、請求書をFAXで送り、支払いは小切手が普通郵便で送られてくるパターンも少なくない)。実はNet30のファウンダーは、実際に建設企業でプロジェクトマネージャーをやっていたCasey BellとAnthony Cirinelliで、元々は決済を早めるためのプラットホームとしてNet30を作った。

しかし実際に建設業者たちの話を聞いてみると、建設業界の請求決済問題には改善すべき点がたくさんあることが分かってきた。問題は非常に深刻であり、決済の遅れが建設企業の倒産の原因になることも多いのだ。

“すごく大きな問題だし、しかも業界全体に血液を送る心臓の部分だ。それなのに、請求と決済の業務を簡素化することに、誰も取り組まなかった”、とBellは語る。

建設のプロジェクトは通常、数十社もの下請け〜孫請けが関わり、各社が請求書を発行する。しかし個々の請求書は、複数の文書の束であることが多い。そこには、完了した仕事の詳しい科目分類や、署名入りの法的文書、コンプライアンス関連の文書などがある。そこに日付の間違いなど誤記がひとつでもあると、決済が遅れたりする。

建設業者が操業を続けるためにはキャッシュフローが必要だから、ちょっとした遅れが悪夢を招くこともある。Net30はひとつのプロジェクトに関わる企業をすべて集めて、すべての請求書が最初から確実に正しい、という状態を作り出す。そして下請け孫請けの透明性を高める。

建設業界の既存の請求事務ソフトウェアには、昨年Oracleが買収したTexturaなどがあるが、それなどはエンタープライズ級の企業が対象で、請求決済事務の現代化を誰よりも必要としている、膨大な数の中小建設企業のニーズに対応していない、とBellは語る。

中小建設企業向けのスタートアップとしては、青写真アプリのPlanGridや、コンプライアンス関連のソフトウェアを作るUpCodesなどがあり、とくに後者は、Y Combinatorの今のバッチの同窓生だ

“一般的に建設業界は、ディスラプト(破壊的改革)が非常に後れている業界だし、テクノロジーの採用も遅い。でも最近では、ソフトウェアの実装と利用がそんなに難しくないことを、彼らは理解し始めている”、とBellは述べる。“これらのソリューションを利用すれば、建設業界はもっと先進的で生産性の高い産業になるはずだ”。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

建設業のための写真管理アプリ「Photoruction」を運営するコンコアーズが1億円を調達

CONCORE’S(コンコアーズ)は、建設現場向けの業務改善プラットフォーム「Photoruction(フォトラクション)」を提供しているスタートアップだ。コンコアーズは本日、総額1億円となる第三者割当増資を実施した。引受先は、ジェネシア・ベンチャーズ、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、個人投資家、既存株主のプライマルキャピタルだ。また、調達と同時にフォトラクションの正式版リリースも発表している。

フォトラクションは専用アプリから建設現場の状況をスマホで撮影し、管理できるようにするサービスだ。撮影した写真には工種や種別などの情報を登録する。撮影場所は予め取り込んでおいた図面の場所をプロットして登録する。

Photoructionアプリ

フォトラクションでは写真を撮影者、場所、日時、工事内容などの項目別にフィルタリングすることが可能だ。また、写真はアルバムにまとめ、印刷用にPDFやエクセルでダウンロードしたり、他のユーザーと共有したりすることができる。

建設現場では現場監督らが建設途中の様子を撮影し、記録を取っているとコンコアーズの代表取締役CEOを務める中島貴春氏は説明する。施工が完了すると内部の構造などがどうなっているか分からなくなるため、記録と報告のための写真を残すのだ。例えば、渋谷ヒカリエのような大型の建設現場では、建物が完成するまでに15万枚以上の写真を撮影するという。

これまで現場監督は黒板にチョークで必要事項を書き込み、デジカメで撮影した後、パソコンに取り込んで報告書を作成したり、職人に変更や指示を伝える書類を作成したりしていた。フォトラクションは現場監督がすでに持っているスマホから現場を撮影し、簡単に写真を整理できるようにすることで、こうした作業の非効率を解消する。

中島氏は前職で大手建設会社に勤めていたそうだ。「現場の業務が分かるので、求められている機能を先回りして作ることができます」と中島氏は話す。例えば、建設現場には電波が届かない場所もあるので、アプリはオフラインでも使えるようにした。また、建設現場の写真には機密情報も含まれている。端末を紛失した場合でも情報漏洩を防ぐため、遠隔からアプリ内のデータを消す機能も実装しているそうだ。

今回の資金調達はサービス開発に充てる予定だ。フォトラクションは建設現場での写真整理を切り口としたサービスだが、今後は図面や工程表管理といった建設現場の他の業務にも対応していく予定だという。また、手で入力しなくとも写真の撮影場所を正確に特定したり、図面をより賢く理解できるAIの開発も進めると中島氏は話している。

コンコアーズは2016年3月に創業し、2016年12月にはプライマルキャピタルから1500万円を調達している。

今年に入ってから建設現場向けのチャットアプリ「stacc」小柳建設がマイクロソフトのAR端末「Microsoft HoloLens」の活用を進めるといった建設業でのITニュースを紹介した。建設業界でも少しつづテクノロジーが浸透し、人々の働き方を変えつつあるのかもしれない。

建設業のデジタル化にHoloLens―、小柳建設と日本マイクロソフトが連携を発表

ポケモンGOで一気にARに注目が集まるようになったが、ARをゲームではなく仕事の効率化にも役立てようとしている企業も出てきているようだ。本日、小柳建設は、ホログラフィックコンピューター「Micorosoft HoloLens」の活用したプロジェクトを推進すると発表した。このプロジェクトは日本マイクロソフトと連携して進めていくという。

TechCrunchの読者はご存知かと思うが、HoloLensはWindows 10を搭載したメガネ型の端末で、拡張現実(AR)や複合現実(MR)を体験できる。HoloLensは世界で9ヵ国で展開し、日本では2017年1月に開発者向けと法人向けに提供を開始している。現在ダウンロード可能なアプリは150以上あり、「世界の中でも日本のHoloLensへの注目度が高い」と本日の会見で、日本マイクロフトの代表取締役を務める平野拓也氏は話した。

小柳建設と日本マイクロソフトは、建設業にHoloLensを活用するプロジェクトを「Holostruction」と銘打つ。このプロジェクトには日本マイクロソフトのみならず、米国本社も協力して進めるそうだ。具体的には3つのコンセプトでHolostructionプロジェクトを推進する。

1つ目は、建築計画から施工、修繕までの計画を可視化し、業務の透明性を図るプロジェクトだ。建設計画の進捗や設計変更の履歴などもトラックし、情報を一元管理できるようにする。

2つ目は建造物を建てたあとでも、建造物に関わる情報を活用できるようにする。建造物に関する書類や写真といった情報を格納することで、例えば建物の検査時に活用し、検査員の負担を軽くすることなどに役立てるという。

3つ目は、コミュニケーションを効率化することだ。1つの建物を建てるにも、多くの業者が関わっている。HoloLensを使うことで関係者が一箇所に集まらなくても情報が共有できるようになる。視界を共有することで、現場に行かなくても現場判断や事業判断ができるようになるだろう。こうした機能で業務を効率化し、働き方改革を促進したい考えだ。

今回の会見に伴い、体験会も実施された。デモはHoloLensを装着した4人が同時に橋の建設に関わる工程表を見るという内容だった。工程表の各段階を選択すると、建築途中の橋の様子が表示される。橋は縮小サイズでも実物大でも表示できるため、実物大表示をするとまるで橋の上に立っているかのように見えた。紙の図面で橋を見ても分かりづらいが、HoloLensで全員が同じように実物を見れるということは、仕事を進める上で共通認識を持つのに役立ちそうだ。

小柳建設は今回の会見で、建築業のデジタル化で情報の透明化を図り、建築業に関わる人々の働き方を刷新したいと話していた。小柳建設の代表取締役社長を務める小柳卓蔵氏は、「建設業界では少子高齢化で担い手が減っている上、3K(きつい、汚い、危険)のイメージがある。建設に携わる人々の負担を下げ、建設をかっこいい仕事、尊敬される仕事にしたい」と言う。

日本マイクロソフトの平野氏は、今後さらにAIやコグニティブコンピューティングなどの技術面で働き方やデジタルトランスフォメーションを支援することを視野に入れているという。また使い方や運用面での支援など、協業パターンを広げていきたいと話している。

施工管理アプリで建設現場のIT化を加速するオクトが資金調達、元ミクシィ朝倉氏が顧問に

オクト代表取締役社長の稲田武夫氏

オクト代表取締役社長の稲田武夫氏

リフォーム・新築・建設業界は、政府の投資額48兆円の大きな市場だ。しかし、建設現場の実態はファックスや電話、コピーした要件書を紙で管理するアナログな業界。案件数が増えても、煩雑な管理に業者の担当は手が回らず、ミスが多発する原因にもなる。さらに労働者人口も減っており、課題は深刻になる一方だ。そんなアナログな市場の課題を、ITで解決するためにサービスを開発する会社がある。それが建設現場の施工管理アプリ「ANDPAD(アンドパッド)」を運営する「オクト」だ。

ローンチから1年が経ち、導入企業数が350社を突破したANDPADのさらなる加速を目指し、2016年11月28日、同社は元スポットライト代表取締役柴田陽氏をはじめとする個人投資家数名から資金調達(金額非公開だが関係者によると数千万円程度)を完了していたことを明らかにした。また、2016年9月以前より元ミクシィ代表取締役社長朝倉祐介氏が、戦略顧問として就任しているという。

リアルタイムで施工情報を共有

オクトは2012年9月の創業。代表取締役社長である稲田武夫氏が前職のリクルート在席時に立ち上げた。稲田氏は当時、新規事業室で多くのサービス立ち上げに携わっていた。しかしその一方で「IT化の促進されていない、大きな市場で勝負したい」(稲田氏)という思いがあったという。

「リフォーム会社を選ぶときにどこがいいのかわからない。もっと業界を透明化する必要を感じていた」——最初はそんな課題を解決するために、リフォーム会社の業者検索サイト「みんなのリフォーム」を立ち上げた。現在は600社を超えるリフォーム会社が掲載されている。

同サービスを運営している中で、ユーザー企業から「現場の工程管理をすることができるサービスがほしい」という声が多く寄せられたことから開発したのが施工管理アプリのANDPADだった。

ANDPADは、スマートフォンアプリ上で利用することができる施工管理アプリ。施工工事情報、図面資料管理、工程表、現場の写真情報などをクラウド上で一括管理することができる。「建設現場の就労者は高齢化が進んでいます。その中でも無理なく利用することができるように、アプリベースでの展開をしています」(稲田氏)

プロジェクトごとに施工現場のスタッフでグループを開設することができ、チャットや日報報告など、リアルタイムのやり取りができる。

建設市場の労働生産性課題をITで解決する

稲田氏はオクトの今後の方針、目標についてこのように語る。

「僕らの事業は、労働問題の解決だと思っています。建設産業は労働者がすごく減っている。さらに他業種と比較すると50歳以上の人口が30%を超えていて、逆に30歳以下は12%しかいない。就職人気の無さや高齢化が問題ですが、建設業界は市場規模、GDP率を見てもインパクトの大きな産業なので、労働人口の減少に伴う生産性の低下は大きな課題だと思っています」

「労働人口の減少は抑えられないので、国交省も言っているように“ITを活用して生産性を上げる”ことをしたい。我々はここに寄与できると考えています。なので、ANDPADは建設現場の課題を解決し、インフラになることを目指します。当たり前に現場の方や職人さんが使っていただけるっていうことを愚直に目指したい。まずはそこが当面の目標です」(稲田氏)

市場の課題を解決するために、愚直な事業展開を行っているオクト。2015年11月にはリノべるとのOEM提携を、2016年11月にはTOTOとのサービス提携なども行っている。