なお「Long Range Ver.」と「Short Range Ver.」の2種類があり、Long Range Ver.では、1141km離れた土地からも遠隔操作が可能だ(実証実験を伴う接続可能距離の最大実測値)。過去に富士建と行った共同の実証実験では、東京・佐賀間で遠隔操作に成功しており、離れた県での使用も問題なく行なえるという。
Short Range Ver.では、100kmまでの接続・操作が可能としている。これは、「現場と本社」「現場と操作者がいる場所」などの距離が100km圏内であることが前提の場合に適しているそうだ。
今回の実証実験の目的は、「屋内外の大規模・複雑な構造を備える建設現場において、汎用単眼カメラを装着して巡視する職員の移動経路を3次元の動線として把握できるか」「BIM/CIMを含むデジタルツイン・プラットフォームとSLAMで取得した3次元位置情報を統合することで、安全管理や労務管理のためのツールとして発展する可能性があるか」を検証するものだ。BIM(Building Information Modeling)は、3次元の形状情報、材料・部材の仕様・性能・コスト情報など建物の属性情報を備える建物情報モデル。CIM(Construction Information Modeling)は、土木分野において国交省が提言した建設業務の効率化を目的とした取り組み。計画・調査・設計段階から3次元モデルを導入し、施工・維持管理の各段階でも連携・発展させ、事業全体で関係者間で情報を共有するというもの。
一般に、レーザーや赤外線を活用するSLAM技術(自己位置推定と周辺環境の地図を同時に実行する技術。Simultaneous Localization and Mapping)は、専用センサーを必要とすることから、デバイス費用が高額、かつセンサーの設置のためのスペースや電源供給に課題があった。またセンサーの代わりに画像データを活用する研究も進められているものの、膨大な計算負荷に加え、現場での活用に耐える精度の確保が難しく、実装には至っていないという。
建設DXはスパイダープラスの独壇場というわけではない。Forbes JapanのCloud Top 10に選出されたアンドパッドをはじめ、今後さらに競合が増える可能性は十分にある。しかし、アプリ開発前より行う保温断熱工事業を「祖業」として継続するスパイダープラスの視線の先にあるのは、あくまで顧客だ。同社は「建設業者」として顧客と同じ目線に立ち続けることで、他のSaaS企業との差別化を図る。上場企業となった今こそ、現場を重視するスパイダープラスの姿勢は大きな強みになるだろう。